説明

波長可変干渉フィルター、光モジュール、及び光分析装置

【課題】可動ミラーと固定ミラーが接触するスナップダウン現象を防止し、且つ、低消費電力も実現できる波長可変干渉フィルター、光モジュール、及び光分析装置を提供すること。
【解決手段】固定ミラー56と可動ミラー57は所定のギャップGをもって対向配置されており、固定ミラー56と可動ミラー57の外側には、ギャップGよりも大きな電極間距離G1が設定され、G1が設定された部位から更に外側には、ギャップGよりも小さな電極間距離G2が設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入射光から所望の目的波長の光を選択して出射する波長可変干渉フィルター、この波長可変干渉フィルターを備えた光モジュール、及びこの光モジュールを備えた光分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一対の基板の互いに対向する面に、それぞれ反射膜を対向配置した光フィルター(波長可変干渉フィルター)が知られている(例えば、特許文献1参照)。このような波長可変干渉フィルターでは、一対の反射膜間で光を反射させ、特定波長の光のみを透過させて、その他の波長の光を干渉により打ち消し合わせることで、入射光から特定波長の光のみを透過させている。
【0003】
特許文献1の図14Kに示される波長可変干渉フィルターでは、ミラー474の表面よりも垂直方向に隙間を有して電極490が配置されている。これにより、上部電極と下部電極の間の距離は上部ミラーと下部ミラーの間の距離よりも大きく設定されている。電極間距離を短く設定すると、可動ミラーと固定ミラーがパチンと接触するスナップダウンの現象が発生しやすくなる為、所望の精度の高いミラーギャップを維持することが難しくなる場合がある。特許文献1の技術は、このスナップダウン現象を防止する技術である。
【0004】
また、特許文献1では、スナップダウン現象と呼んでいるが、電極同士の引き合いに関してはプルイン現象と呼ぶ場合もある。これによって、ギャップ精度の維持が困難であるだけでなく、ミラー同士を貼り付かせてしまう場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2006/0054795号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記特許文献1の波長可変干渉フィルターでは、電極間距離が広い為、ミラー可動に大きな電圧を要し、低消費電力の波長可変フィルターを得ることが難しい。
そこで、本願発明の目的は、可動ミラーと固定ミラーがパチンと接触するスナップダウン現象を防止し、且つ、低消費電力も実現できる波長可変干渉フィルター、光モジュール、及び光分析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の波長可変干渉フィルターは、
第1基板と、前記第1基板と対向して位置する第2基板と、前記第1基板の前記第2基板に対向する面に設けられた第1反射膜と、前記第2基板の前記第1基板に対向する面に設けられ、前記第1反射膜と所定の隙間をもって位置する第2反射膜と、前記第1基板に前記第1反射膜から離れて設けられた第1電極と、前記第2基板に前記第2反射膜から離れて設けられた第2電極と、を備え、前記第1反射膜に対して垂直方向で、前記第1電極と前記第2電極との距離は部分的に異なる距離に設定され、前記第1電極の第1の部分と前記第2電極との距離は前記所定の距離よりも大きく、前記第1電極の第2の部分と前記第2電極との距離は前記所定の距離よりも小さいことを特徴とする。
上記発明によれば、第1電極の第1の部分と第2電極との距離を大きく設定することができ、スナップダウン現象を防止することができる。更に、第2電極との距離が小さい、第1電極の第2の部分を設けることによって、駆動電圧の低電圧化ができる。すなわち、省電力で、且つ、精度の高い波長可変フィルターを得ることができる。
【0008】
(2)更に、本発明の波長可変干渉フィルターは、
(1)の構成に加えて、前記第2反射膜と前記第2電極は、前記第2基板の同一平面に設けられ、前記第1電極の前記第1の部分は、前記第1反射膜の垂直方向に、前記第1反射膜の表面とオーバーラップして前記第2電極に近づく位置にあることを特徴とする。
上記発明によれば、第1電極の第2の部分を第1反射膜の表面よりも第2反射膜の方向に近づけることができ、確実に、第1電極の第2の部分と第2電極との距離を小さく設定することができる。
【0009】
(3)更に、本発明の波長可変干渉フィルターは、
少なくとも(1)の構成に加えて、前記第1電極は前記第1反射膜の外側に環状に位置し、前記第2電極は前記第2反射膜の外側に環状に位置していることを特徴とする。
上記発明によれば、第1反射膜と第2反射膜は、それぞれ、外側に位置する環状の電極によって、相互に引き合うことになるので、第1反射膜と第2反射膜のギャップは平行状態を維持し、バランスの良い変位が可能になる。
【0010】
(4)更に、本発明の波長可変干渉フィルターは、
少なくとも(1)の構成に加えて、前記第1電極の前記第2の部分は、前記第1電極の前記第1の部分よりも前記第1反射膜から遠くに位置することを特徴とする。
上記構成によれば、静電引力が最も作用する部分は、第1反射膜と第2反射膜から遠くに位置するので、静電引力によって、第1反射膜と第2反射膜の平行度を変形させる作用が少ない。
【0011】
(5)更に、本発明の波長可変干渉フィルターは、
少なくとも(1)の構成に加えて、前記第1電極の前記第2の部分は、前記第1電極の前記第1の部分よりも前記第1反射膜の近くに位置することを特徴とする。
上記発明によれば、静電引力が最も作用する部分は、第1反射膜と第2反射膜から近くに位置するので、静電引力によって、効率良く第1反射膜と第2反射膜を近づけることができる。
【0012】
(6)更に、本発明の波長可変干渉フィルターは、
(5)の構成に加えて、前記第2反射膜は前記第1反射膜よりも大きく設定され、前記第2反射膜と前記第1電極の前記第2の部分とが当接する状態において、前記第1反射膜と前記第2反射膜とは離隔していることを特徴とする。
上記構成によれば、前記第1電極の前記第2の部分はストッパーとして働き、第1反射膜及び第2反射膜の破損を防止できる。
【0013】
(7)更に、本発明の光モジュールは、
少なくとも(1)の構成の波長可変干渉フィルターと、前記波長可変干渉フィルターを透過した検査対象光を受光する受光手段と、を備えることを特徴とする。
上記発明によれば、省電力で、且つ、精度の高い光モジュールを得ることができる。
【0014】
(8)更に、本発明の光分析装置は、
(7)の構成の光モジュールと、前記光モジュールの前記受光手段により受光された光に基づいて、前記検査対象光の光特性を分析する分析処理部と、を備えることを特徴とする。
上記発明によれば、省電力で、且つ、精度の高い光分析装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る第1実施形態の測色モジュールの概略構成を示す図。
【図2】前記第1実施形態のエタロンの概略構成を示す平面図。
【図3】前記第1実施形態のエタロンの概略構成を示す断面図。
【図4】前記第1実施形態のエタロンの詳細を説明する要部断面図。
【図5】本発明に係る第2実施形態のエタロンの概略構成を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[第1実施形態]
以下、本発明に係る第1実施形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
〔1.測色装置の概略構成〕
図1は、本発明に係る第1実施形態の波長可変干渉フィルターを備える測色装置1(光分析装置)の概略構成を示す図である。
この測色装置1は、図1に示すように、被検査対象Aに光を射出する光源装置2と、測色センサー3(光モジュール)と、測色装置1の全体動作を制御する制御装置4とを備えている。そして、この測色装置1は、光源装置2から射出される光を被検査対象Aにて反射させ、反射された検査対象光を測色センサー3にて受光し、測色センサー3から出力される検出信号に基づいて、検査対象光の色度、すなわち被検査対象Aの色を分析して測定するモジュールである。
【0018】
〔2.光源装置の構成〕
光源装置2は、光源21、複数のレンズ22(図1には1つのみ記載)を備え、被検査対象Aに対して白色光を射出する。また、複数のレンズ22には、コリメーターレンズが含まれてもよく、この場合、光源装置2は、光源21から射出された白色光をコリメーターレンズにより平行光とし、図示しない投射レンズから被検査対象Aに向かって射出する。なお、本実施形態では、光源装置2を備える測色装置1を例示するが、例えば被検査対象Aが液晶パネルなどの発光部材である場合、光源装置2が設けられない構成としてもよい。
【0019】
〔3.測色センサーの構成〕
測色センサー3は、図1に示すように、エタロン5(波長可変干渉フィルター)と、エタロン5を透過する光を受光する受光素子31(受光手段)と、エタロン5で透過させる光の波長を可変する電圧制御部6とを備えている。また、測色センサー3は、エタロン5に対向する位置に、被検査対象Aで反射された反射光(検査対象光)を、内部に導光する図示しない入射光学レンズを備えている。そして、この測色センサー3は、エタロン5により、入射光学レンズから入射した検査対象光のうち、所定波長の光のみを分光し、分光した光を受光素子31にて受光する。
【0020】
受光素子31は、複数の光電交換素子により構成されており、受光量に応じた電気信号を生成する。そして、受光素子31は、制御装置4に接続されており、生成した電気信号を受光信号として制御装置4に出力する。
【0021】
(3−1.エタロンの構成)
図2は、エタロン5の概略構成を示す平面図であり、図3は、エタロン5の概略構成を示す断面図である。なお、図1では、エタロン5に検査対象光が図中下側から入射しているが、図3では、検査対象光が図中上側から入射するものとする。反対に図3における下側から入射する構成でも良い。
【0022】
エタロン5は、図2に示すように、平面視正方形状の板状の光学部材であり、一辺が例えば10mmに形成されている。このエタロン5は、図3に示すように、第1基板51及び第2基板52を備え、これらの基板51,52が接合層53を介して互いに接合されて構成される。これらの2枚の基板51,52は、それぞれ例えば、ソーダガラス、結晶性ガラス、石英ガラス、鉛ガラス、カリウムガラス、ホウケイ酸ガラス、無アルカリガラスなどの各種ガラスや、水晶などにより形成されている。そして、これらの2つの基板51,52は、外周部近傍に形成される後述する接合部513,524が、例えば常温活性化接合やプラズマ重合膜を用いたシロキサン接合などにより、接合されることで、一体的に構成されている。
【0023】
また、第1基板51と第2基板52との間には、固定ミラー56(第1反射膜)、及び可動ミラー57(第2反射膜)が設けられる。ここで、固定ミラー56は、第1基板51の第2基板52に対向する面(後述するミラー固定面512A)に固定され、可動ミラー57は、第2基板52の第1基板51に対向する面(後述する可動面522A)に固定されている。また、これらの固定ミラー56及び可動ミラー57は、ミラー間ギャップGを介して対向配置されている。
さらに、第1基板51と第2基板52との間には、固定ミラー56及び可動ミラー57の間のミラー間ギャップGの寸法を調整するための静電アクチュエーター54が設けられている。
【0024】
(3−1−1.第1基板の構成)
第1基板51は、厚みが例えば500μmの石英ガラス基材(SiO2:二酸化珪素)をエッチングにより加工することで形成される。図3に示すように、電極形成溝511と、ミラー固定部512と、接合部513とが形成される。
電極形成溝511は、図2に示すようなエタロン5を厚み方向から見た平面視(以降、エタロン平面視と称す)において、平面中心点を中心とした円形に形成されている。
ミラー固定部512は、エタロン平面視における電極形成溝511の中心位置から、第2基板52側に突出して乗り上げるように形成される。これは、電極を斜面にのみ形成することが困難な為である。
【0025】
電極形成溝511には、ミラー固定部512の外周縁から、当該電極形成溝511の内周壁面までの間に、リング状(環状の)の平坦な電極固定面511Aが形成され、当該電極固定面511Aのリングの外側には、電極固定面511Aに対して折れ曲がった位置に電極固定面511Bが形成されている。本実施形態では、電極固定面511Bは断面が曲線状に形成されているが、電極固定面511Aに対して直角の直線状に形成してもよい。この電極固定面511Aと電極固定面511Bには、第1電極541が形成される。ここで、この第1電極541は、電極形成溝511の内周壁面にまで形成され、更に外側に延びて第1電極541Cを形成している。
この第1電極541は、導電性を有し、後述する第2基板52の第2電極542との間で電圧を印加することで、第1電極541及び第2電極542間に静電引力を発生させることが可能なものであれば、特に限定されないが、本実施形態では、接合用の膜として使用可能なITO(Indium Tin Oxide:酸化インジウムスズ)を用いる。また、Au/Crなどの金属積層体を用いてもよい。
【0026】
なお、第1電極541の表面には、図示を省略したが、第1電極541及び第2電極542の間の放電等によるリークを防止するために絶縁膜が形成されている。この絶縁膜としては、SiO2やTEOS(Tetra Ethoxy Silane)などを用いることができ、特に第1基板51を形成するガラス基板と同一光学特性を有するSiO2が好ましい。絶縁膜として、SiO2を用いる場合、第1基板51及び絶縁膜の間での光の反射等がないため、第1基板51上に第1電極541を形成した後、第1基板51の第2基板52に対向する側の面の全面に絶縁膜を形成することができる。
【0027】
第1電極541の外周縁の一部からは、図2に示すエタロン平面視において、エタロン5の右上方向に向かって、第1電極引出部541Lが延出して形成されている。さらに、第1電極引出部541Lの先端には、第1電極パッド541Pが形成され、第1電極パッド541Pが電圧制御部6(図1参照)に接続される。
そして、静電アクチュエーター54を駆動時には、電圧制御部6(図1参照)により、第1電極パッド541Pに電圧が印加される。
ミラー固定部512は、電極形成溝511と同軸上で、電極形成溝511よりも小さい径寸法となる略円柱状に形成され、第2基板52に対向する側の面にミラー固定面512Aを備えている。
そして、ミラー固定面512Aには、直径が約3mmで円形状の固定ミラー56が固定されている。この固定ミラー56は、TiO2−SiO2系の誘電体多層膜により形成されるミラーであり、スパッタリングなどの手法によりミラー固定面512Aに形成されている。
【0028】
なお、本実施形態では、固定ミラー56として、TiO2−SiO2系の誘電体多層膜のミラーを用いる例を示すが、例えば分光可能な波長域として可視光全域をカバーできるAg合金単層のミラーを用いる構成などとしてもよい。
なお、本実施形態では、図3に示すように、ミラー固定部512の第2基板52に対向するミラー固定面512Aが、電極固定面511Aよりも第2基板52に近接して形成される。
【0029】
また、ミラー固定部512のミラー固定面512Aは、エタロン5を透過させる波長域をも考慮して、溝深さが設計されることが好ましい。例えば、本実施形態では、固定ミラー56及び可動ミラー57の間のミラー間ギャップGの初期値(第1電極541及び第2電極542間に電圧が印加されていない状態のミラー間ギャップGの寸法)が450nmに設定され、第1電極541及び第2電極542間に電圧を印加することにより、ミラー間ギャップGが例えば120nmになるまで可動ミラー57を変位させることが可能となっており、これにより、第1電極541及び第2電極542間の電圧を可変することで、可視光全域の波長の光を選択的に分光させて透過させることが可能となる。この場合、固定ミラー56及び可動ミラー57の厚み寸法、ミラー固定面512Aや電極固定面511Aの高さ寸法は、ミラー間ギャップGを120nm〜450nmの間で変位可能な値に設定されていればよい。
ここで、第1基板51の接合部513における第2基板に対向する面が第1基板51の接合面513Aとなる。この接合面513Aには、図3に示すように、接合用の接合層53が膜状に形成されている。この接合層53には、主材料としてポリオルガノシロキサンが用いられたプラズマ重合膜などを用いることができる。尚、この接合面513Aの範囲を規定すべく、溝部514が第1基板51に形成されている。
【0030】
(3−1−2.第2基板の構成)
第2基板52は、厚みが例えば200μmの石英ガラス基材(SiO2:二酸化珪素)をエッチングにより加工することで形成される。具体的に、図2に示すように、第2基板52には、エタロン平面視において、HF(フッ化水素)等で等方性ウェットエッチングすることにより、基板中心点を中心とした円形の変位部521と、接合部524とが形成される。そして、この変位部521は、図3に示すように、円柱状の可動部522と、可動部522に同軸であり、エタロン平面視で円環状に形成され、可動部522を第2基板52の厚み方向に移動可能に保持する連結保持部523とを備えている。
【0031】
変位部521及び接合部524は、第2基板52の形成素材である平板状のガラス基材をエッチングにより溝部を形成することで形成される。具体的に、変位部521及び接合部524は、第2基板52の第1基板51に対向する第1面52Aに円環状の第1溝部521A、及び第2基板52の第1基板51とは反対側の第2面52Bに円環状の第2溝部521BをHF等のエッチング液により等方性ウェットエッチングして形成することで形成されている。
ここで、第1溝部521Aは、可動面522Aと平行で円環状に形成された第1底面521A1と、可動部522及び接合部524の一部である第1内側面521A2とで構成される。また、第2溝部521Bは、可動面522Aと平行で円環状に形成された第2底面521B1と、可動部522及び接合部524の一部である第2内側面521B2とで構成される。
【0032】
可動部522は、連結保持部523よりも厚み寸法が大きく形成され、例えば、本実施形態では、第2基板52の厚み寸法と同一寸法である200μmに形成されている。この可動部522の径寸法は、第1基板51のミラー固定部512の径寸法よりも大きく形成されている。また、可動部522の第1基板に対向する第1面52Aには、第1基板51のミラー固定面512Aに平行な可動面522Aを備え、この可動面522Aには、可動ミラー57及び第2電極542が固定されている。
ここで、この可動ミラー57は、前述の固定ミラー56と同一の構成のミラーであり、例えば直径が3mmの円形状で、本実施形態では、TiO2−SiO2系の誘電体多層膜のミラーが用いられる。
【0033】
第2電極542は、リング状に形成され、第1電極541と所定寸法を有して対向している。ここで、第2電極542と前述の第1電極541とにより、本発明に係るギャップ可変部としての静電アクチュエーター54が構成される。この第2電極542は、本実施形態では、接合用の膜として使用可能なITO(Indium Tin Oxide:酸化インジウムスズ)を用いる。また、Au/Crなどの金属積層体を用いてもよい。
第2電極542の外周縁の一部からは、図2に示すエタロン平面視において、エタロン5の左下方向に向かって、第2電極引出部542Lが延出して形成されている。さらに、第2電極引出部542Lの先端には、第2電極パッド542Pが形成され、第1電極パッド541Pと同様に、電圧制御部6に接続される。
そして、静電アクチュエーター54の駆動時には、電圧制御部6(図1参照)により、第2電極パッド542Pに電圧が印加される。
【0034】
連結保持部523は、可動部522の周囲を囲うダイアフラムであり、エタロン平面視において、第1溝部521Aの第1底面521A1及び第2溝部521Bの第2底面521B1が重なる領域で構成される。また、各底面521A1,521B1の面積が同一となるように形成され、各底面521A1,521B1間の厚み寸法が連結保持部523の厚み寸法であり、例えば30μmに形成されている。この連結保持部523は、第1溝部521A及び第2溝部521Bの深さ寸法D1,D2が同一寸法となるように形成されることで、第2基板52の厚み方向の中央位置に形成されるように構成されている。すなわち、このような連結保持部523を形成するために、本実施形態では、各溝部521A,521Bの開口面積が同一となるように形成され、エタロン平面視において、各溝部521A,521Bの開口端縁521A3,521B3が重なるように形成されている。
ここで、第2基板52の接合部524における第1基板51の接合面513Aと対向する面が接合面524Aとなる。この接合面524Aには、第1基板51の接合面513Aと同様に、主材料としてポリオルガノシロキサンを用いた接合層53が設けられている。
【0035】
(3−1−3.ミラー及び電極の位置関係)
図4は、固定ミラー56、可動ミラー57、第1電極541、及び第2電極542の位置関係を詳細に説明する要部説明図である。平坦な可動面522Aに可動ミラー57が固定され、当該可動ミラー57の外側にリング状(環状)の第2電極542が固定されている。可動ミラー57と第2電極542とは同一平面上に固定されている。これにより、可動ミラー57の表面57Aと第2電極542の表面542Aは略同一平面に配置されることになる。
【0036】
一方、ミラー固定面512Aには、固定ミラー56が固定されており、可動ミラー57と固定ミラー56には所定のギャップ(隙間)Gが設けられている。ミラー固定面512Aに対して垂直方向に、可動ミラー57から、固定ミラー56が固定されるミラー固定面512Aよりも更に遠く離れて電極固定面511Aが形成される。そして、当該電極固定面511Aと連続して、電極固定面511Aに対して折れ曲がった位置に電極固定面511Bが形成されている。第1電極541は、この電極固定面511Aと511Bを跨いで、固定ミラー56の外側にリング状(環状)に固定される。すなわち、第2電極542の断面は平坦な板形状をしているが、第1電極541は、図4に示すように、断面形状が折れ曲がった形状をしている。
【0037】
固定ミラー56の表面56Aと、電極固定面511Aに位置する部分の第1電極541の表面541Aとは同一平面に配置されておらず、固定ミラー56の表面56Aの同一平面Pから、当該表面56Aの垂直方向に隙間Sをもって、第1電極541の表面541Aが位置している。なお、この表面541Aの部分を、第1電極541の第1の部分と呼ぶことにする。この第1の部分541Aは、リング状の第1電極541の内周側、或いは、固定ミラー56の側(固定ミラー56の方向)に位置する部分と言うこともできる。
【0038】
上述した構成によって、固定ミラー56の垂直方向で、第1電極541の第1の部分541Aと第2電極542とのギャップ(隙間)G1の距離は、ミラー間ギャップGよりも長い距離であるところの「略(G+S)」の距離になる。ここで、「略」としているのは、可動ミラー57と第2電極542の厚みが正確に同じ厚みにならない設定の場合もある為である。可動ミラー57と第2電極の厚みが正確に同じであれば、当然ながら、ギャップG1=G+Sとなる。このように、本実施形態では、電極形成溝511を深くすれば、ギャップG1を大きく設定することができる。ギャップG1を大きくすることで、可動ミラーと固定ミラーがパチンと接触するスナップダウン現象の発生は防止できる。
【0039】
なお、電極固定面511Bに位置する部分の第1電極541の表面541Bは、固定ミラー56の表面56Aの垂直方向に、固定ミラー56の表面56Aと同一平面である平面Pにオーバーラップした位置にある。即ち、表面541Bは第1電極541の第1の部分541Aよりも第2電極542に接近して位置することになる。なお、この表面541Bの部分を、第1電極541の第2の部分と呼ぶことにする。この第2の部分541Bはリング状の第1電極541の外周側、或いは、固定ミラー56から離れる方向に位置する部分と言うこともできる。
【0040】
上述した構成によって、固定ミラー56の垂直方向で、第1電極541の第2の部分541Bと第2電極542とのギャップ(隙間)G2の距離は、ミラー間ギャップGよりも短い距離に設定される。
電極間のギャップを短くすると、一般に、電極同士のプルイン現象が発生しやすくなるが、本実施形態では、固定ミラー56と可動ミラー57に近い位置では、電極間のギャップはG1という大きな距離に設定され、電極間のギャップが短い部分は、固定ミラー56と可動ミラー57から十分に遠い位置になっていることから、少なくともミラー同士の接触を回避することができる。
【0041】
更に詳細に説明すると、第1電極541は、前記固定ミラー56に対して垂直方向に見た平面視において、前記第2電極542よりも外側に大きい形状になっており、固定ミラー56の水平方向で、第1電極541の第2の部分と第2電極542とのギャップ(隙間)G3が設けられている。この構造によって、ミラー間ギャップGを小さい距離に変位させても、第1電極541と第2電極542が貼り付く現象(スティッキング現象)を防止することができる。
【0042】
(3−2.電圧制御部の構成)
電圧制御部6は、制御装置4からの入力される制御信号に基づいて、静電アクチュエーター54の第1電極541及び第2電極542に印加する電圧を制御する。
【0043】
〔4.制御装置の構成〕
制御装置4は、測色装置1の全体動作を制御する。この制御装置4としては、例えば汎用パーソナルコンピューターや、携帯情報端末、その他、測色専用コンピューターなどを用いることができる。
そして、制御装置4は、図1に示すように、光源制御部41、測色センサー制御部42、及び測色処理部43(分析処理部)などを備えて構成されている。
【0044】
光源制御部41は、光源装置2に接続されている。そして、光源制御部41は、例えば利用者の設定入力に基づいて、光源装置2に所定の制御信号を出力し、光源装置2から所定の明るさの白色光を射出させる。
測色センサー制御部42は、測色センサー3に接続されている。そして、測色センサー制御部42は、例えば利用者の設定入力に基づいて、測色センサー3にて受光させる光の波長を設定し、この波長の光の受光量を検出する旨の制御信号を測色センサー3に出力する。これにより、測色センサー3の電圧制御部6は、制御信号に基づいて、利用者が所望する光の波長のみを透過させるよう、静電アクチュエーター54への印加電圧を設定する。
【0045】
測色処理部43は、測色センサー制御部42を制御して、エタロン5のミラー間ギャップを変動させて、エタロン5を透過する光の波長を変化させる。また、測色処理部43は、受光素子31から入力される受光信号に基づいて、エタロン5を透過した光の光量を取得する。そして、測色処理部43は、上記により得られた各波長の光の受光量に基づいて、被検査対象Aにより反射された光の色度を算出する。
【0046】
前述した実施形態では、本発明の光モジュールとして、測色センサー3を例示し、光分析装置として、測色センサー3を備えた測色装置1を例示したが、これに限定されるものではない。例えば、センサー内部にガスを流入させ、入射光のうちガスにて吸収された光を検出するガスセンサーを本発明の光モジュールとして用いてもよく、このようなガスセンサーによりセンサー内に流入されたガスを分析、判別するガス検出装置を本発明の光分析装置としてもよい。さらに、光分析装置は、このような光モジュールを備えた分光カメラ、分光分析器などであってもよい。
【0047】
また、各波長の光の強度を経時的に変化させることで、各波長の光でデータを伝送させることも可能であり、この場合、光モジュールに設けられたエタロン5により特定波長の光を分光し、受光部で受光させることで、特定波長の光により伝送されるデータを抽出することができ、このようなデータ抽出用光モジュールを備えた光分析装置により、各波長の光のデータを処理することで、光通信を実施することもできる。
【0048】
[第2実施形態]
以下、本発明に係る第2実施形態を図5に基づいて説明する。
第1実施形態のエタロン5では、第1電極541の断面形状がミラー固定部512から遠ざかる方向で曲がった形状の実施形態であったが、本発明は必ずしも、この形態に限定されるものではない。第2実施形態では、ミラー固定部側に第1電極を形成することで、固定ミラーに近い位置に第1電極を配置する形態について説明する。
【0049】
第1基板61は、ミラーと電極を配置する為の凹部611が形成されている。凹部611の中央部には、第1の実施形態と同様の円形の固定ミラー66(第1反射膜)を固定するミラー固定部612が隆起した形状で形成されている。ミラー固定部612の外周部から更に外側にかけて、リング状の第1電極641が形成されている。即ち、第2実施形態のエタロンを平面視した状態では、固定ミラー66を第1電極641が囲む形になる。
【0050】
第2基板62は、接合層63を介して、第1基板61と接合されている。この第2基板62は、可動部622と連結保持部623が設けられている。第1の実施形態と同様に、可動部622が垂直方向に移動可能な構成になっている。可動部622の同一平面上には、円形の可動ミラー67(第2反射膜)と可動ミラー67を囲むリング状の第2電極642が固定されている。可動ミラー67の直径は固定ミラー66の直径よりも大きく、エタロン平面視において、可動ミラー67の中心と固定ミラー66の中心は一致する位置で、且つ、可動ミラー67の面積内に固定ミラー66の面積が完全に含まれる位置関係となっている。
【0051】
可動ミラー67と固定ミラー66は所定のギャップ(隙間)Gをもって、対向配置されている。可動ミラー67と固定ミラー66の外側には、ギャップGよりも大きな距離であるG1なる距離を隔てて、第1電極641と第2電極642とが対向配置されている。このギャップ(隙間)G1となる第1電極641の部分を第1電極641の第1の部分641Aとする。
【0052】
更に、第1電極641は、図5に示すように、断面が曲がった形状をしており、ミラー固定部612に位置する第1電極641の部分を第1電極641の第2の部分641Bとする。この第1電極641の第2の部分641Bと第2電極642とは垂直方向に、ギャップ(隙間)G2の距離が隔てられている。ここで、可動部622が移動しても、第1電極641の第2の部分641Bと第2電極642は、接することがない位置関係になるように設定されている。
【0053】
第2実施形態では、固定ミラー66の厚みt1に対して、第1電極641の第2の部分641Bの厚みt2は大きく設定されている。例えば、固定ミラー66の厚みt1と可動ミラー67と第2電極642は全て100nmと設定し、第1電極641の厚みt2のみ200nmと設定する。正常動作では、可動部622は所定範囲内で移動し、可動部622が第1基板61と接することがないように制御されるが、異常時等で、可動部622が固定ミラー66方向に大きく移動した場合、可動ミラー67と第1電極641の第2の部分641Bとが当接する位置関係になっている。これにより、可動部622の異常動作があった場合でも、第1電極641の第2の部分641Bはストッパーの役割を持ち、可動ミラー67と固定ミラー66が衝突することがなく、可動ミラー67と固定ミラー66の破損の防止となる。
【符号の説明】
【0054】
1…測色装置(光分析装置)、3…測色センサー(光モジュール)、5,5A,5B、
5C…エタロン(波長可変干渉フィルター)、31…受光素子(受光手段)、43…測色処理部(分析処理部)、51…第1基板、52…第2基板、52A…第1面、52B…第2面、54…静電アクチュエーター(ギャップ可変部)、56…固定ミラー(第1反射膜)、57…可動ミラー(第2反射膜)、521A…第1溝部、521A1…第1底面、521A3…開口端縁、521B…第2溝部、521B1…第2底面、521B3…開口端縁、522…可動部、522A…可動面、523…連結保持部、541…第1電極、541A…第1電極の第1の部分、541B…第1電極の第2の部分、542…第2電極。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板と、
前記第1基板と対向して位置する第2基板と、
前記第1基板の前記第2基板に対向する面に設けられた第1反射膜と、
前記第2基板の前記第1基板に対向する面に設けられ、前記第1反射膜と所定の隙間をもって位置する第2反射膜と、
前記第1基板に前記第1反射膜から離れて設けられた第1電極と、
前記第2基板に前記第2反射膜から離れて設けられた第2電極と、を備え、
前記第1反射膜に対して垂直方向で、前記第1電極と前記第2電極との距離は部分的に異なる距離に設定され、前記第1電極の第1の部分と前記第2電極との距離は前記所定の距離よりも大きく、前記第1電極の第2の部分と前記第2電極との距離は前記所定の距離よりも小さい
ことを特徴とする波長可変干渉フィルター。
【請求項2】
請求項1に記載の波長可変干渉フィルターにおいて、
前記第2反射膜と前記第2電極は、前記第2基板の同一平面に設けられ、
前記第1電極の前記第1の部分は、前記第1反射膜の垂直方向に、前記第1反射膜の表面とオーバーラップして前記第2電極に近づく位置にある
ことを特徴とする波長可変干渉フィルター。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の波長可変干渉フィルターにおいて、
前記第1電極は前記第1反射膜の外側に環状に位置し、
前記第2電極は前記第2反射膜の外側に環状に位置している
ことを特徴とする波長可変干渉フィルター。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の波長可変干渉フィルターにおいて、
前記第1電極の前記第2の部分は、前記第1電極の前記第1の部分よりも前記第1反射膜から遠くに位置する
ことを特徴とする波長可変干渉フィルター。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の波長可変干渉フィルターにおいて、
前記第1電極の前記第2の部分は、前記第1電極の前記第1の部分よりも前記第1反射膜の近くに位置する
ことを特徴とする波長可変干渉フィルター。
【請求項6】
請求項5に記載の波長可変干渉フィルターにおいて、
前記第2反射膜は前記第1反射膜よりも大きく設定され、前記第2反射膜と前記第1電極の前記第2の部分とが当接する状態において、前記第1反射膜と前記第2反射膜とは離隔している
ことを特徴とする波長可変干渉フィルター。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の波長可変干渉フィルターと、
前記波長可変干渉フィルターを透過した検査対象光を受光する受光手段と、を備える
ことを特徴とする光モジュール。
【請求項8】
請求項7に記載の光モジュールと、
前記光モジュールの前記受光手段により受光された光に基づいて、前記検査対象光の光特性を分析する分析処理部と、を備える
ことを特徴とする光分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−141348(P2012−141348A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−292056(P2010−292056)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】