説明

波長可変干渉フィルター、光モジュール、及び光分析装置

【課題】電極間の絶縁を維持しつつ、低コストで、構造を簡素化できる波長可変干渉フィルター、光モジュール、及び光分析装置を提供すること。
【解決手段】第1基板51に設けられた固定ミラー54と、第2基板52に設けられ、固定ミラー54と所定のギャップGを介して対向する可動ミラー55と、第1基板51に設けられた第1電極561と、第2基板52に設けられ、第1電極561に対向する第2電極562と、を備える。第1基板51は、第2基板52に接合される第1接合面513を有し、第2基板52は、第1接合面513に接合される第2接合面524を有する。第1基板51には、第1接合面513、及び第1電極561の第2電極562に対向する面に絶縁性を有する第1接合膜531が形成され、第1接合面513及び第2接合面524は、第1接合膜531により接合された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長可変干渉フィルター、この波長可変干渉フィルターを備える光モジュール、及びこの光モジュールを備える光分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、互いに金属層を介して接合された一対の基板の互いに対向する面に、それぞれ反射膜を所定のギャップを介して対向配置した干渉フィルターが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載のファブリペロー型素子(干渉フィルター)では、互いに対向する第1の基板および第2の基板を備えている。第1の基板の中心部には、第1の光学反射膜が設けられ、両端部にシリコン膜と第1の金属膜の積層体が設けられている。また、第2の基板には、第1の光学反射膜に対向する第2の光学反射膜と、第1の金属膜に対向する第2の金属膜が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−076749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1のような波長では、互いに対向する反射膜のギャップ寸法が一定であり、予め設定された一定の波長のみ取り出す構成となる。
これに対して、例えば互いに対向する基板間に互いに対向する電極を設け、これらの電極間に電圧を印加することで静電引力により反射膜間のギャップ寸法を変更し、所望の波長を取り出すことが可能な波長可変干渉フィルターがある。このような波長可変干渉フィルターでは、ギャップを調整した際に、ギャップが小さくなって、対向する駆動電極同士が近接すると、電極間の放電やリーク等が発生するおそれがある。このため、駆動電極の表面に絶縁膜が形成されることが一般的である。これにより、電極間の放電やリーク等の発生を防止している。
しかしながら、上述したように、一対の基板を接合するための金属層を形成し、さらに、絶縁膜を形成する構成では、波長可変干渉フィルターの製造工程に絶縁膜を形成するための工程が別途必要となり、構造が複雑化し、製造コストがかかるという課題がある。
【0006】
本発明の目的は、低コストで、構造を簡素化できる波長可変干渉フィルター、光モジュール、及び光分析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の波長可変干渉フィルターは、第1基板と、前記第1基板に対向する第2基板と、前記第1基板の前記第2基板に対向する面に設けられた第1反射膜と、前記第2基板に設けられ、前記第1反射膜と所定のギャップを介して対向する第2反射膜と、前記第1基板の前記第2基板に対向する面に設けられた第1電極と、前記第2基板に設けられ、前記第1電極と対向する第2電極と、前記第1基板の前記第2基板に対向する面に設けられた第1接合領域、および前記第2基板の前記第1接合領域に対向する第2接合領域を接合する第1接合膜と、備え、前記第1接合膜は、絶縁性を有し、前記第1接合領域および前記第1電極の前記第2電極に対向する面に設けられたことを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、第1基板と第2基板とを接合する絶縁性の第1接合膜が、第1接合領域だけでなく、第1電極の第2電極に対向する面にも形成される。このため、この第1接合膜は、第1基板および第2基板の接合の他、電極間の絶縁も兼ねることができる。従って、第1電極及び第2電極間の放電やリークを確実に防止でき、静電引力による反射膜間のギャップの調整を高精度に行うことができる。また、絶縁層および接合膜をそれぞれ別構成の膜を形成する場合に比べて、一度の工程で、絶縁層および接合膜として機能する第1接合膜を形成することができるため、製造コストを低減でき、かつ構造を簡素化できる。
【0009】
本発明の波長可変干渉フィルターでは、前記第2基板には、前記第2接合領域、及び前記第2電極の前記第1電極に対向する面に絶縁性を有する第2接合膜が設けられ、前記第1接合領域及び前記第2接合領域は、前記第1接合膜及び前記第2接合膜により接合されたことが好ましい。
【0010】
本発明によれば、各接合面が第1接合膜及び第2接合膜により接合されるので、接合する前の接合膜表面に例えば凹凸ムラが生じていたとしても、双方を接合することで接合面を均一にでき、第1基板および第2基板の接合信頼性を高めることができる。また、第2電極上にも絶縁性の第2接合膜が積層されることで、第1電極及び第2電極間の放電やリークをより確実に防止することができる。
【0011】
本発明の波長可変干渉フィルターでは、前記第1接合膜及び前記第2接合膜は、シロキサン接合により接合されたことが好ましい。
【0012】
本発明によれば、第1接合膜及び第2接合膜は、シロキサン接合により接合されている。このようなシロキサン接合は、紫外線照射やプラズマ等、活性エネルギー照射線により第1接合膜および第2接合膜の表面を活性化させて接合することで容易に接合膜同士を接合することができ、かつ各接合面同士の接合信頼性も高くなる。このため、接合信頼性が低いと生じる接合面の剥離が発生することがない。従って、反射膜間のギャップを高精度に維持できる。
【0013】
本発明の光モジュールは、上述の波長可変干渉フィルターと、前記波長可変干渉フィルターを透過した検査対象光を受光する受光部とを備えることを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、上述したように、波長可変干渉フィルターにおいて、構造を簡単にできるため、光モジュールの構造の簡略化にも貢献できる。さらに、接合膜をシロキサン接合により接合させる場合では、上述のように、ギャップを高精度に維持することができるので、このような波長可変干渉フィルターを備えた光モジュールにおいても、受光部により精度の高い光量測定を実施することができる。
【0015】
本発明の光分析装置は、上述の光モジュールと、前記光モジュールの前記受光部により受光された光に基づいて、前記検査対象光の光特性を分析する分析処理部とを備えることを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、上述した波長可変干渉フィルターを有する光モジュールを備えるので、精度の高い測定を実施でき、この測定結果に基づいて光分析処理を実施することで、正確な分光特性を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る第1実施形態の測色装置の概略構成を示すブロック図。
【図2】前記第1実施形態のエタロンの概略構成を示す断面図。
【図3】前記第1実施形態のエタロンの第1基板の製造工程を示す図。
【図4】前記第1実施形態のエタロンの第2基板の製造工程を示す図。
【図5】本発明に係る第2実施形態のエタロンの概略構成を示す断面図。
【図6】他の実施の形態における光分析装置の一例であるガス検出装置の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[第1実施形態]
以下、本発明に係る第1実施形態を図面に基づいて説明する。
〔1.測色装置の概略構成〕
図1は、第1実施形態の測色装置1(光分析装置)の概略構成を示すブロック図である。
測色装置1は、図1に示すように、検査対象Aに光を射出する光源装置2と、測色センサー3(光モジュール)と、測色装置1の全体動作を制御する制御装置4とを備える。そして、この測色装置1は、光源装置2から射出される光を検査対象Aにて反射させ、反射された検査対象光を測色センサー3にて受光し、測色センサー3から出力される検出信号に基づいて、検査対象光の色度、すなわち検査対象Aの色を分析して測定する装置である。
【0019】
〔2.光源装置の構成〕
光源装置2は、光源21、複数のレンズ22(図1には1つのみ記載)を備え、検査対象Aに対して白色光を射出する。また、複数のレンズ22には、コリメーターレンズが含まれてもよく、この場合、光源装置2は、光源21から射出された白色光をコリメーターレンズにより平行光とし、図示しない投射レンズから検査対象Aに向かって射出する。なお、本実施形態では、光源装置2を備える測色装置1を例示するが、例えば検査対象Aが液晶パネルなどの発光部材である場合、光源装置2が設けられない構成としてもよい。
【0020】
〔3.測色センサーの構成〕
測色センサー3は、図1に示すように、エタロン5(波長可変干渉フィルター)と、エタロン5を透過する光を受光する受光素子31(受光部)と、エタロン5で透過させる光の波長を可変する電圧制御部6とを備える。また、測色センサー3は、エタロン5に対向する位置に、検査対象Aで反射された反射光(検査対象光)を、内部に導光する図示しない入射光学レンズを備えている。そして、この測色センサー3は、エタロン5により、入射光学レンズから入射した検査対象光のうち、所定波長の光のみを分光し、分光した光を受光素子31にて受光する。
受光素子31は、複数の光電交換素子により構成されており、受光量に応じた電気信号を生成する。そして、受光素子31は、制御装置4に接続されており、生成した電気信号を受光信号として制御装置4に出力する。
【0021】
(3−1.エタロンの構成)
図2は、エタロン5の概略構成を示す断面図である。なお、図1と同様に、エタロン5に検査対象光が図中下側から入射しているが、図2においても、検査対象光が図中下側から入射するものとする。
エタロン5は、平面視正方形状の板状の光学部材であり、一辺が例えば10mmに形成されている。このエタロン5は、図3に示すように、第1基板51、及び第2基板52を備えている。これらの2つの基板51,52は、第1接合面513(第1接合領域)及び第2接合面524(第2接合領域)が後述する絶縁性の接合膜531,532により接合されることで、一体的に構成されている。そして、これらの2枚の基板51,52は、それぞれ例えば、ソーダガラス、結晶性ガラス、石英ガラス、鉛ガラス、カリウムガラス、ホウケイ酸ガラス、無アルカリガラスなどの各種ガラスや、水晶などにより形成されている。
【0022】
また、第1基板51と第2基板52との間には、固定ミラー54(第1反射膜)、及び可動ミラー55(第2反射膜)が設けられる。ここで、固定ミラー54は、第1基板51の第2基板52に対向する面に固定され、可動ミラー55は、第2基板52の第1基板51に対向する面に固定されている。また、これらの固定ミラー54及び可動ミラー55は、ミラー間ギャップGを介して対向配置されている。
さらに、第1基板51と第2基板52との間には、固定ミラー54及び可動ミラー55の間のミラー間ギャップGの寸法を調整するための静電アクチュエーター56が設けられている。
【0023】
(3−1−1.第1基板の構成)
第1基板51は、厚みが例えば500μmの石英ガラス基材をエッチングにより加工することで形成される。この第1基板51には、図2に示すように、エッチングにより電極形成溝511及びミラー固定部512が形成される。そして、第1基板51において、電極形成溝511及びミラー固定部512が形成されていない部分が第1基板51の第1接合面513となる。
【0024】
電極形成溝511には、ミラー固定部512の外周縁から、電極形成溝511の内周壁面までの間に、リング状の電極固定面511Aが形成される。この電極固定面511Aには、リング状の第1電極561が形成される。
この第1電極561は、導電性を有し、後述する第2基板52の第2電極562との間で電圧を印加することで、第1電極561及び第2電極562間に静電引力を発生させることが可能なものであればよい。ここで、詳細は後述するが、本実施形態では、第1電極561を第1接合膜531で覆う構成となる。したがって、第1電極561の材料としては、第1接合膜531と密着性の高い材料である事が望ましい。第1接合膜531として、ポリオルガノシロキサンを主材料として用いたプラズマ重合膜を用いる場合、一般に金属よりも金属酸化物との方が密着性は高くなり、第1接合膜531を絶縁膜として機能させる上で、絶縁性確保に対する信頼性が高くなる。この場合、第1電極561として、例えばITO(Indium Tin Oxide:酸化インジウムスズ)等を用いることができる。
【0025】
ミラー固定部512は、図2に示すように、電極形成溝511と同軸上で、電極形成溝511よりも小さい径寸法となる略円柱状に形成され、第2基板52に対向する側の面にミラー固定面512Aを備えている。
そして、ミラー固定面512Aには、直径が約3mmで円形状のTiO−SiO系の誘電体多層膜により形成された固定ミラー54が固定されている。なお、本実施形態では、固定ミラー54として、TiO−SiO系の誘電体多層膜のミラーを用いる例を示すが、誘電体多層膜を構成する材料としてAl等、他の誘電体材料を用いてもよく、また、分光可能な波長域として可視光全域をカバーできるAg合金単層のミラーや、Ag合金と誘電体材料とを積層した複合膜を用いる構成としてもよい。
【0026】
第1接合面513には、絶縁性を有する第1接合膜531が設けられている。この第1接合膜531は、主材料としてポリオルガノシロキサンが用いられたプラズマ重合膜であり、後述する第2基板52の第2接合面524に形成された第2接合膜532に、シロキサン接合により接合されている。
この第1接合膜531は、第1接合面513から電極形成溝511の内周壁面を辿って、第1電極561の上面(第2電極562に対向する面)まで延びて形成されている。これにより、第1接合膜531は、第1電極561の第2電極562に対向する面全体を覆うことになり、第1電極561および第2電極562間の放電等によるリークを防止する。
【0027】
(3−1−2.第2基板の構成)
第2基板52は、厚みが例えば200μmの石英ガラス基材をエッチングにより加工することで形成される。
第2基板52には、例えば平面視で基板中心点を中心とした円形の変位部521が形成される。この変位部521は、第1基板51に向けて進退可能に移動する円柱状の可動部522と同軸であり、エタロン平面視で円環状に形成されて可動部522を第2基板52の厚み方向に移動可能に保持する連結保持部523を備える。また、第2基板52の第1基板51に対向する面において、第1基板51の第1接合面513と対向する領域が、第2基板52における第2接合面524となる。
【0028】
変位部521は、第2基板52の第1基板51に対向しない面に、連結保持部523を形成するための円環状の円環溝部523Aをエッチング形成することで形成されている。
【0029】
可動部522は、連結保持部523よりも厚み寸法が大きく形成され、例えば、本実施形態では、第2基板52の厚み寸法と同一寸法である200μmに形成されている。この可動部522の径寸法は、第1基板51のミラー固定部512の径寸法よりも大きく形成されている。
可動部522の第1基板51に対向する面には、第1基板51のミラー固定面512Aに平行な可動面522Aを備え、この可動面522Aには、固定ミラー54と同一構成の可動ミラー55が形成される。
【0030】
連結保持部523は、可動部522の周囲を囲うダイヤフラムであり、厚み寸法が例えば50μmに形成されている。連結保持部523の第1基板51に対向する面には、リング状の第2電極562が形成される。この第2電極562は、第1電極561と必ずしも同材料である必要はないが、第1電極561の場合と同様の理由で、第2接合膜532と密着性の高い金属酸化物を材料として用いることが好ましい。本実施形態においては、第2電極562は、第1電極561と同じITOで形成され、第1電極561とで、静電アクチュエーター56が構成される。
【0031】
第2接合面524には、主材料としてポリオルガノシロキサンが用いられたプラズマ重合膜である絶縁性の第2接合膜532が形成されている。このため、第2接合膜532は、上述したように、第1基板51の第1接合面513に形成された第1接合膜531と、シロキサン接合により接合される。
この第2接合膜532は、第2接合面524から第2電極562の上面(第1電極561に対向する面)まで延びて形成されている。これにより、第2接合膜532は、第2電極562の第1電極561に対向する面全体を覆い、第1電極561および第2電極562間の放電等によるリークを防止する。
【0032】
(3−2.電圧制御部の構成)
電圧制御部6は、制御装置4からの入力される制御信号に基づいて、静電アクチュエーター56の第1電極561及び第2電極562に印加する電圧を制御する。
【0033】
〔4.制御装置の構成〕
制御装置4は、測色装置1の全体動作を制御する。この制御装置4としては、例えば汎用パーソナルコンピューターや、携帯情報端末、その他、測色専用コンピューターなどを用いることができる。
そして、制御装置4は、図1に示すように、光源制御部41、測色センサー制御部42、及び測色処理部43(分析処理部)などを備えて構成されている。
【0034】
光源制御部41は、光源装置2に接続されている。そして、光源制御部41は、例えば利用者の設定入力に基づいて、光源装置2に所定の制御信号を出力し、光源装置2から所定の明るさの白色光を射出させる。
測色センサー制御部42は、測色センサー3に接続されている。そして、測色センサー制御部42は、例えば利用者の設定入力に基づいて、測色センサー3にて受光させる光の波長を設定し、この波長の光の受光量を検出する旨の制御信号を測色センサー3に出力する。これにより、測色センサー3の電圧制御部6は、制御信号に基づいて、利用者が所望する光の波長のみを透過させるよう、静電アクチュエーター56への印加電圧を設定する。
測色処理部43は、測色センサー制御部42を制御して、エタロン5のミラー間ギャップを変動させて、エタロン5を透過する光の波長を変化させる。また、測色処理部43は、受光素子31から入力される受光信号に基づいて、エタロン5を透過した光の光量を取得する。そして、測色処理部43は、上記により得られた各波長の光の受光量に基づいて、検査対象Aにより反射された光の色度を算出する。
【0035】
〔5.エタロンの製造方法〕
次に、上記エタロン5の製造方法について、図3及び図4に基づいて説明する。
エタロン5を製造するためには、第1基板51及び第2基板52をそれぞれ製造し、製造された第1基板51と第2基板52とを貼り合わせる。
【0036】
(5−1.第1基板製造工程)
まず、第1基板51の製造素材である厚み寸法が500μmの石英ガラス基板を用意し、この石英ガラス基板の表面粗さRaが1nm以下となるまで両面を精密研磨する。そして、第1基板51の第2基板52に対向する面に電極形成溝511形成用のレジスト61を塗布して、塗布されたレジスト61をフォトリソグラフィ法により露光・現像して、図3(A)に示すように、電極形成溝511が形成される箇所をパターニングする。
次に、図3(B)に示すように、電極形成溝511を所望の深さにエッチングし、電極固定面511Aを形成する。なお、ここでのエッチングとしては、HF等のエッチング液を用いたウェットエッチングが用いられる。
そして、第1基板51の第2基板52に対向する面にミラー固定面512A形成用のレジスト61を塗布して、塗布されたレジスト61をフォトリソグラフィ法により露光・現像して、図3(B)に示すように、ミラー固定面512Aが形成される箇所をパターニングする。
次に、ミラー固定面512Aが所望の位置までエッチングした後、図3(C)に示すように、レジスト61を除去することで、電極固定面511A及びミラー固定面512Aが形成され、第1基板51の基板形状が決定される。
【0037】
次に、図3(D)に示すように、電極固定面511Aに第1電極561を形成し、ミラー固定面512Aに固定ミラー54を形成する。
具体的に、電極固定面511AにITO膜をスパッタリング法により成膜する。そして、ITO膜の上に、所望の電極パターンとなるレジストを形成し、ITO膜をフォトエッチングすることで、図3(D)に示すように、電極固定面511Aに第1電極561が形成される。この後、第1基板51の第2基板52に対向する面に残ったレジストを除去する。
さらに、固定ミラー54は、リフトオフプロセスにより成膜される。すなわち、フォトリソグラフィ法などにより、第1基板51上のミラー形成部分以外にレジスト(リフトオフパターン)を形成し、TiO−SiO系の薄膜をスパッタリング法または蒸着法により成膜する。そして、固定ミラー54を成膜した後、リフトオフにより、ミラー固定面512A以外の薄膜を除去する。
【0038】
次に、図3(E)に示すように、フォトリソグラフィ法などにより、第1基板51上の第1接合膜531形成部分以外にレジスト61(リフトオフパターン)を形成し、厚さ約100nmのポリオルガノシロキサンが用いられたプラズマ重合膜をプラズマCVD法等により成膜する。そして、レジスト61を除去することで、図3(F)に示すように、第1接合膜531が第1接合面513から第1電極561の上面に亘る領域に形成される。
以上により、第1基板51が形成される。
【0039】
(5−2.第2基板製造工程)
まず、第2基板52の形成素材である厚み寸法が200μmの石英ガラス基板を用意し、このガラス基板の表面粗さRaが1nm以下となるまで両面を精密研磨する。そして、第2基板52の全面にレジスト62を塗布し、塗布されたレジスト62をフォトリソグラフィ法により露光・現像して、図4(A)に示すように、連結保持部523が形成される箇所をパターニングする。
次に、石英ガラス基板をウェットエッチングすることで、図4(B)に示すように、厚さ50μmの連結保持部523が形成されるとともに、可動部522が形成される。そして、図4(C)に示すように、レジスト62を除去することで、可動部522及び連結保持部523が形成された第2基板52の基板形状が決定される。
【0040】
次に、図4(D)に示すように、連結保持部523の第1基板51に対向する側の面に第2電極562を形成し、可動面522Aに可動ミラー55を形成する。
具体的に、第2基板52の第1基板51に対向する面にITO膜をスパッタリング法により成膜する。そして、ITO膜の上に、所望の電極パターンとなるレジストを形成し、ITO膜をフォトエッチングすることで、図4(D)に示すように、連結保持部523の第1基板51に対向する側の面に第2電極562が形成される。この後、第2基板52の第1基板51に対向する面に残ったレジストを除去する。
さらに、可動ミラー55は、リフトオフプロセスにより成膜される。すなわち、フォトリソグラフィ法などにより、第2基板52上のミラー形成部分以外にレジスト(リフトオフパターン)を形成し、TiO−SiO系の薄膜をスパッタリング法または蒸着法により成膜する。そして、可動ミラー55を成膜した後、リフトオフにより、可動面522A以外の薄膜を除去する。
【0041】
次に、図4(E)に示すように、フォトリソグラフィ法などにより、第2基板52上の第2接合膜532形成部分以外にレジスト62(リフトオフパターン)を形成し、厚さ約100nmのポリオルガノシロキサンが用いられたプラズマ重合膜をプラズマCVD法により成膜する。そして、レジスト62を除去することで、図4(F)に示すように、第2接合膜532が第2接合面524から第2電極562の上面に亘る領域に形成される。
以上により、第2基板52が形成される。
【0042】
(5−3.接合工程)
次に、前述の第1基板製造工程及び第2基板製造工程で形成された各基板51,52を接合する。具体的には、各基板51,52の接合面513,524に形成された第1接合膜531及び第2接合膜532を構成するプラズマ重合膜に活性化エネルギーを付与するために、Oプラズマ処理またはUV処理を行う。Oプラズマ処理は、O流量30cc/分、圧力27Pa、RFパワー200Wの条件で30秒間実施する。また、UV処理は、UV光源としてエキシマUV(波長172nm)を用いて3分間処理を行う。プラズマ重合膜に活性化エネルギーを付与した後、2つの基板51,52のアライメントを行い、各接合膜531,532を介して各接合面513,524を重ね合わせて、接合部分に荷重をかけることにより、基板51,52同士を接合させる。
以上により、エタロン5が製造される。
【0043】
〔6.第1実施形態の作用効果〕
上述の第1実施形態に係るエタロン5によれば、以下の効果を奏する。
本実施形態によれば、第1基板51の第1接合面513と第2基板52の第2接合面524とを接合する第1接合膜531が第1電極561の第2電極562の対向する面に形成される。そして、この第1接合膜531は、絶縁性を有するので、各接合面513,524の接合の他、各電極561,562間の絶縁も兼ねることができる。従って、第1電極561及び第2電極562間の放電やリークを確実に防止でき、静電引力によるミラー間ギャップGの調整を高精度に行うことができる。さらに、上述した従来の接合膜及び絶縁膜をそれぞれ成膜形成する必要がなく、いずれかの膜を成膜形成すればよいので、低コストで、かつ構造を簡素化できる。
【0044】
また、各接合面513,524が第1接合膜531及び第2接合膜532により接合されるので、各接合面513,524同士の接合信頼性を高めることができる。また、第2電極562上にも絶縁性の第2接合膜532が積層されることで、第1電極561及び第2電極562間の放電やリークをより確実に防止することができる。
さらに、第1接合膜531及び第2接合膜532にポリオルガノシロキサンを用いたので、Oプラズマ処理またはUV処理により容易に第1接合膜531及び第2接合膜532同士を接合でき、かつ各接合面513,524同士の接合信頼性も高くなる。そのため、接合信頼性が低いと生じる接合面の剥離が発生することがない。従って、反射膜間のミラー間ギャップGを高精度に維持できる。
【0045】
[第2実施形態]
図5は、第2実施形態に係るエタロン5Aの概略断面図である。
第2実施形態での第2接合膜532は、次の方法により、図5に示すように、第2接合面524にのみ形成されており、第2電極562に形成されていない。まず、フォトリソグラフィ法などにより、第2基板52上の第2接合膜532形成部分以外にレジスト(リフトオフパターン)を形成し、次に、厚さ約100nmのポリオルガノシロキサンが用いられたプラズマ重合膜をプラズマCVD法等により成膜する。そして、レジストを除去する。
【0046】
上述した第2実施形態によれば、前記第1実施形態と同様の効果を奏する他、以下の効果を奏する。
本実施形態によれば、第2電極562には、第2接合膜532が形成されていないため、連結保持部523の第1基板51に対向する側の面には第2電極562のみが形成される。これによれば、第2接合膜532を成膜形成する際に生じる膜応力が連結保持部523に生じないため、前記第1実施形態のエタロン5に比べて、連結保持部523の撓みを抑制できる。従って、ミラー間ギャップGが膜応力により変動することを防止でき、所望のギャップに精度良く設定できる。
【0047】
[実施形態の変形]
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0048】
例えば、上記各実施形態において、ミラー固定部512の可動基板52に対向するミラー固定面512Aが、電極固定面511Aよりも可動基板52に近接して形成される例を示したが、これに限らない。電極固定面511Aおよびミラー固定面512Aの高さ位置は、ミラー固定面512Aに固定される固定ミラー54、および可動基板52に形成される可動ミラー55の間のギャップの寸法、第1電極561および第2電極562の間の寸法、固定ミラー54や可動ミラー55の厚み寸法等により適宜設定される。したがって、例えば、電極固定面511Aとミラー固定面512Aとが同一面に形成される構成や、電極固定面511Aの中心部に、円筒凹溝上のミラー固定溝が形成され、このミラー固定溝の底面にミラー固定面が形成される構成などとしてもよい。
【0049】
また、電極561,562間のギャップ(電極間ギャップ)が、ミラー54,55間のギャップ(ミラー間ギャップ)よりも大きい場合、ミラー間ギャップを変化させるために大きな駆動電圧を必要となる。これに対して、上記のように、ミラーギャップが、電極間ギャップよりも大きくなる場合、ミラー間ギャップを変化させるための駆動電圧を小さくでき、省電力化を図ることができる。また、このような構成の波長可変干渉フィルターは、ミラー間ギャップが大きいため、特に長波長域の分光特性測定に対して有効であり、例えば、上述したようなガス分析等に用いる赤外光分析や、光通信を実施するためのモジュールに組み込むことができる。
【0050】
前記実施形態では、本発明の光モジュールとして、測色センサー3を例示し、光分析装置として、測色センサー3を備えた測色装置1を例示したが、これに限定されるものではない。例えば、センサー内部にガスを流入させ、入射光のうちガスにて吸収された光を検出するガスセンサーを本発明の光モジュールとして用いてもよく、このようなガスセンサーによりセンサー内に流入されたガスを分析、判別するガス検出装置を本発明の光分析装置としてもよい。さらに、光分析装置は、このような光モジュールを備えた分光カメラ、分光分析器などであってもよい。
また、各波長の光の強度を経時的に変化させることで、各波長の光でデータを伝送させることも可能であり、この場合、光モジュールに設けられたエタロン5により特定波長の光を分光し、受光部で受光させることで、特定波長の光により伝送されるデータを抽出することができ、このようなデータ抽出用光モジュールを備えた光分析装置により、各波長の光のデータを処理することで、光通信を実施することもできる。
【0051】
その他、本発明の波長可変干渉フィルターを備えた装置の一例として、図6に示すようなガス検出装置が挙げられる。
図6は、波長可変干渉フィルターを備えたガス検出装置の一例を示す概略図である。
【0052】
このガス検出装置100は、センサーチップ110と、吸引流路120等の検出の度に交換する消耗品と、繰り返し使用可能な本体部130と、から構成されている。
本体部130は、消耗品を格納及び交換できるように開閉可能なセンサー部カバー131、排出手段133、筐体134、光源135、レンズ136、137、139、フィルター140、エタロン5、受光素子141等を含む検出部(光モジュール)と、検出された信号を処理し、検出部を制御する信号処理制御部142、電力を供給する電力供給部143、外部とのインターフェイスを取るための接続部144等から構成されている。
【0053】
このガス検出装置100では、排出手段133を作動させると、吸引流路120、センサーチップ110内に、被検出物質を含んだガスが吸引される。このセンサーチップは、金属ナノ構造体が複数組み込まれ、局在表面プラズモン共鳴を利用したセンサーであり、光源135からの光により金属ナノ構造体間に増強電場が形成される。そして、増強電場内に検出ガス分子が入り込むと、分子振動の情報を含んだラマン散乱光が発生する。
センサーチップ110で発生した散乱光は、フィルター140に入射し、フィルター140によりレイリー散乱光が分離されて、ラマン散乱光がエタロン5に入射する。そして、エタロン5により検出ガス分子に対応したラマン散乱光を分光し、分光した光を受光素子141で受光して光量を取得する。
【0054】
その他、本発明の実施の際の具体的な構造および手順は、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造などに適宜変更できる。
【符号の説明】
【0055】
1…測色装置(光分析装置)、3…測色センサー(光モジュール)、5,5A…エタロン(波長可変干渉フィルター)、31…受光素子(受光部)、43…測色処理部(分析処理部)、51…第1基板、52…第2基板、54…固定ミラー(第1反射膜)、55…可動ミラー(第2反射膜)、100…ガス検出装置(光分析装置)、513…第1接合面、524…第2接合面、531…第1接合膜、532…第2接合膜、561…第1電極、562…第2電極。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板と、
前記第1基板に対向する第2基板と、
前記第1基板の前記第2基板に対向する面に設けられた第1反射膜と、
前記第2基板に設けられ、前記第1反射膜と所定のギャップを介して対向する第2反射膜と、
前記第1基板の前記第2基板に対向する面に設けられた第1電極と、
前記第2基板に設けられ、前記第1電極と対向する第2電極と、
前記第1基板の前記第2基板に対向する面に設けられた第1接合領域、および前記第2基板の前記第1接合領域に対向する第2接合領域を接合する第1接合膜と、備え、
前記第1接合膜は、絶縁性を有し、前記第1接合領域および前記第1電極の前記第2電極に対向する面に設けられた
ことを特徴とする波長可変干渉フィルター。
【請求項2】
請求項1に記載の波長可変干渉フィルターにおいて、
前記第2基板には、前記第2接合領域、及び前記第2電極の前記第1電極に対向する面に絶縁性を有する第2接合膜が設けられ、
前記第1接合領域及び前記第2接合領域は、前記第1接合膜及び前記第2接合膜により接合された
ことを特徴とする波長可変干渉フィルター。
【請求項3】
請求項2に記載の波長可変干渉フィルターにおいて、
前記第1接合膜及び前記第2接合膜は、シロキサン接合により接合された
ことを特徴とする波長可変干渉フィルター。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の波長可変干渉フィルターと、
前記波長可変干渉フィルターを透過した検査対象光を受光する受光部と、を備えた
ことを特徴とする光モジュール。
【請求項5】
請求項4に記載の光モジュールと、
前記光モジュールの前記受光部により受光された光に基づいて、前記検査対象光の光特性を分析する分析処理部と、を備えた
ことを特徴とする光分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−159564(P2012−159564A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−17626(P2011−17626)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】