説明

波長可変干渉フィルター、光学フィルターデバイス、光学モジュール、及び電子機器

【課題】簡単な構成で、反射膜間のギャップ寸法を変化させた場合でも分解能の低下を抑制できる波長可変干渉フィルター、光モジュール、及び光分析装置を提供する。
【解決手段】波長可変干渉フィルター5は、固定電極541及び可動電極542を備えた静電アクチュエーター54を具備する。そして、固定電極541は、複数の固定部分電極543を備え、可動電極542は、複数の可動部分電極544を備え、互いに対向する固定部分電極543及び可動部分電極544により部分アクチュエーター55が構成される。そして、これらの部分アクチュエーター55は、同一面積を有し、重心点が可動部521の中心点Oを中心とする仮想円P上で等角度間隔に配置され、電圧印加用部分電極間で電気的に直列に接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長可変干渉フィルター、光学フィルターデバイス、光学モジュール、及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数波長の光から、特定波長の光を取り出す波長可変干渉フィルター(光フィルター素子)が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1に記載の波長可変干渉フィルター(光学フィルタ装置)は、可動部(第1部分)、及び可動部を支持するダイヤフラム(第2部分)を備えた第1基板と、第1基板に対向する第2基板とを備えている。また、第1基板の可動部には、可動ミラーが形成され、第2基板の可動部に対向する面には、固定ミラーが形成されている。そして、第1基板及び第2基板には、それぞれリング状の電極が設けられ、静電アクチュエーターが構成されている。このような波長可変干渉フィルターでは、電極間に電圧を印加することで、静電引力によりダイヤフラムを撓ませて、固定ミラー及び可動ミラーの間のギャップを変動させることができ、所望波長の光を取り出すことができる。
【0004】
また、静電アクチュエーターに複数の部分アクチュエーターが設けられ、これらの複数の部分アクチュエーターをそれぞれ制御可能な波長可変干渉フィルターが知られている(例えば特許文献2)。
【0005】
この特許文献2の波長可変干渉フィルターは、導電性の可動部を有する第1の基板と、第2の基板とを備え、第1の基板の可動部と、第2の基板の可動部に対向する位置とにそれぞれ反射膜が設けられている。そして、これらの第2の基板の可動部に対向する位置には、円弧状の2つの駆動電極を設けられている。このような波長可変干渉フィルターでは、2つの駆動電極のそれぞれに異なる電極を印加することで、各駆動電極と可動部との間に、それぞれ異なる静電引力を作用させることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−251105号公報
【特許文献2】特開2007−086517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記特許文献1に記載の波長可変干渉フィルターにおいて、第1基板に設けられた電極と第2基板に設けられた電極との間の電極間ギャップが均一である場合、これらの電極間に電圧を印加すると、ダイヤフラムが均一に撓む。したがって、可動部は、姿勢を維持した状態で、第2基板側に移動する。しかしながら、ダイヤフラムに僅かな傾斜があり、電極間ギャップが不均一である場合では、電極間ギャップが小さいほど大きな静電引力が作用するため、ダイヤフラムの傾斜が大きくなる。つまり、初期状態において、ダイヤフラムの傾斜が分光精度に影響を与えない許容値以内のものであっても、電極間に電圧を印加した状態では、ダイヤフラムの傾斜が大きくなり、分光精度が悪化してしまう場合がある。
【0008】
一方、特許文献2では、静電アクチュエーターを構成する駆動電極が2つ以上に分割されている。このため、これらの駆動電極に印加する電圧を制御することで、ダイヤフラムの傾斜が大きくなった場合でも、それを補正することもできる。しかしながら、この場合、ダイヤフラムの傾斜状態を判別して、それに応じた電圧を各駆動電極に与える必要がある。したがって、ダイヤフラムの傾斜状態や、電極間ギャップを測定するためのセンサーを設ける必要があるなど、構成が複雑化するという課題がある。また、測定したダイヤフラムの傾斜状態や電極間ギャップから、各駆動電圧に印加するための駆動電圧を算出する必要があるので、静電アクチュエーターの駆動制御が複雑化するという課題もある。
【0009】
本発明は上述のような課題に鑑みて、簡単な構成で、反射膜間のギャップ寸法を変化させた場合でも分解能の低下を抑制できる波長可変干渉フィルター、光学フィルターデバイス、光学モジュール、及び電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の波長可変干渉フィルターは、第一基板と、前記第一基板に対向して配置された第二基板と、前記第一基板に設けられた第一反射膜と、前記第二基板に設けられ、前記第一基板に対して進退可能な可動領域と、前記第二基板の前記可動領域に設けられ、前記第一反射膜とギャップを介して対向する第二反射膜と、前記第一基板に設けられた第一電極、及び前記第二基板に設けられて前記第一電極に対向する第二電極を備え、電圧印加により前記可動領域を前記第一基板に対して進退させる静電アクチュエーターと、を具備し、前記第一電極は、複数の第一部分電極を備え、前記第二電極は、複数の第二部分電極を備え、前記第二部分電極は、それぞれ、前記複数の第一部分電極のいずれか一つに対応して設けられており、前記第一基板及び前記第二基板を基板厚み方向から見た平面視において、前記第二部分電極は、少なくとも一部が対応する前記第一部分電極に重なり、前記静電アクチュエーターは、前記平面視において、前記第一部分電極及び当該第一部分電極に対応する前記第二部分電極が重なる領域により構成された部分アクチュエーターを複数備え、前記第一部分電極及び前記第二部分電極のうちのいずれか2つにより電圧印加用部分電極が構成され、これらの複数の部分アクチュエーターは、前記平面視において同一面積を有し、かつ、各部分アクチュエーターの重心点が、前記可動領域の重心点を中心とした仮想円上において等角度間隔で配置され、前記静電アクチュエーターにおいて、前記電圧印加用部分電極間で、前記複数の部分アクチュエーターが電気的に直列に接続されたことを特徴とする。
【0011】
ここで、複数の部分アクチュエーターが電気的に直列に接続されるとは、第一部分電極同士の接続、第二部分電極同士の接続が交互に繰り返されて接続される構成を指すものである。例えば、第1〜第4部分アクチュエーターの4つの部分アクチュエーターが、この順で電気的に直列接続される場合では、第1部分アクチュエーターの第一部分電極と第二部分アクチュエーターの第一部分電極とが接続され、第2部分アクチュエーターの第二部分電極と第3部分アクチュエーターの第二部分電極とが接続され、第3部分アクチュエーターの第一部分電極と第4部分アクチュエーターの第一部分電極とが接続される。
【0012】
一般に静電アクチュエーターで発生する静電引力Fは、その静電アクチュエーターにより保持される電荷量と電極の面積とに基づいて変化する。また、この電荷量は、電極の面積が増大するに従って、また、電極間の距離が小さくなるに従って増大する。
これに対し、本発明では、部分アクチュエーターが、電気的に直列に接続されているので、2つの電圧印加用部分電極間で電圧Vを印加すると、それぞれ容量リアクタンスに応じた分圧が印加されることとなり、かつ、各部分アクチュエーターにおいて保持される電荷量は同一となる。また、各部分アクチュエーターは、平面視において同一面積を有しているため、これらの各部分アクチュエーターで作用する静電引力は、電極の面積、及び保持される電荷量が同値となるため、同一の大きさとなる。
【0013】
したがって、本発明では、第一基板または第二基板の傾斜により、各部分アクチュエーターにおける部分電極ギャップに差があった場合でも、各部分アクチュエーターに同じ大きさの静電引力を作用させることができる。これにより、第二基板の可動領域を第一基板側に変位させて第一反射膜及び第二反射膜の間のギャップを変更した際に、第一基板または第二基板の一部に大きい静電引力が作用して第一及び第二反射膜の平行関係を維持できなくなる不都合を防止でき、分解能の低下を抑えることができる。
また、本発明では、2つの電圧印加用部分電極間に駆動電圧を印加するだけで、上述のように、各部分アクチュエーターに作用させる静電引力を均一にすることができ、分解能の低下を抑えることができる。このため、各部分アクチュエーターに印加する電圧を制御するための複雑な回路を不要にでき、各部分アクチュエーターに対する個別の電圧制御をも行う必要がないので、静電アクチュエーターの制御も容易に実施できる。
【0014】
本発明の波長可変干渉フィルターでは、前記平面視において、前記部分アクチュエーターを構成する前記第一部分電極及び前記第二部分電極のうちいずれか一方の外周縁は、他方の外周縁の内側に位置することが好ましい。つまり、前記平面視において、第一部分電極及び第二部分電極のうち一方は、他方よりも大きいサイズに形成されている。
このような構成では、各部分アクチュエーターの面積を精度よく同一面積に揃えることができる。つまり、例えば第一部分電極及び第二部分電極が同一形状に形成され、平面視において、これらの外周縁を一致させて部分アクチュエーターを形成する場合、平面視において、第一部分電極の外周縁と第二部分電極の外周縁とを一致するように、アライメント調整する必要があり、高精度なアライメント調整工程が必要となる。
これに対して、本発明では、第一部分電極及び第二部分電極のうち、一方の外周縁が他方の外周縁よりも内側に位置する構成であるため、サイズが小さい一方の外周縁が他方の外周縁の内側に位置するようにアライメント調整すればよく、各部分アクチュエーターの平面視における面積を容易に揃えることができる。
【0015】
本発明の波長可変干渉フィルターでは、複数の前記第一部分電極は、前記平面視においてそれぞれ同一形状であり、複数の前記第二部分電極は、前記平面視において、それぞれ同一形状であることが好ましい。
本発明によれば、各第一部分電極が同一形状であり、各第二部分電極が同一形状であるため、第一部分電極及び第二部分電極の位置合わせ(アライメント調整)がより容易となる。したがって、より製造効率性を向上させることができる。
【0016】
本発明の波長可変干渉フィルターでは、2つの前記電圧印加用部分電極は、前記仮想円上で、互いに隣り合って配置され、前記静電アクチュエーターにおいて、2つの前記電圧印加用部分電極間で、前記仮想円の周方向に沿って配列された前記部分アクチュエーターが順に電気的に直列に接続されたことが好ましい。
【0017】
この発明では、部分アクチュエーターは、仮想円の円周方向に並ぶ順に直列に接続されている。このような構成であれば、各部分アクチュエーター間を接続する接続電極部を短くすることができ、抵抗を低減させることができる。
【0018】
本発明の波長可変干渉フィルターでは、前記静電アクチュエーターが複数設けられ、これらの静電アクチュエーターが電気的に並列に接続されたことが好ましい。
【0019】
この発明では、上述にように、部分アクチュエーターが等角度間隔で配置されていた静電アクチュエーターが複数設けられている。上述したように、各部分アクチュエーターには分圧された電圧が印加されるため、1つの静電アクチュエーターを構成する部分アクチュエーターの数が多ければ、各部分アクチュエーターに印加される分圧値が小さくなる。この場合、部分アクチュエーターで作用する静電引力も小さくなってしまい、所望の静電引力を得るために、駆動電圧を大きくする必要がある。これに対して、本発明では、上述のような静電アクチュエーターを並列接続にすることで、少なく駆動電圧で所望の静電引力を得ることができる。
例えば、2つの部分アクチュエーターにより構成された静電アクチュエーターを2つ並列接続する波長可変干渉フィルターと、4つの部分アクチュエーターにより構成された1つの静電アクチュエーターとを比較した場合、前者の波長可変干渉フィルターは、後者の波長可変干渉フィルターの略半分の駆動電圧で、後者の波長可変干渉フィルターと同じ静電引力を得ることができる。
【0020】
本発明の光学フィルターデバイスは、第一基板、前記第一基板に対向して配置された第二基板、前記第一基板に設けられた第一反射膜、前記第二基板に設けられ、前記第一基板に対して進退可能な可動領域、前記第二基板の前記可動領域に設けられ、前記第一反射膜とギャップを介して対向する第二反射膜、及び前記第一基板に設けられた第一電極、及び前記第二基板に設けられて前記第一電極に対向する第二電極を備え、電圧印加により前記可動領域を前記第一基板に対して進退させる静電アクチュエーターを備えた波長可変干渉フィルターと、前記波長可変干渉フィルターを収納する筐体と、を具備し、前記第一電極は、複数の第一部分電極を備え、前記第二電極は、複数の第二部分電極を備え、前記第二部分電極は、それぞれ、前記複数の第一部分電極のいずれか一つに対応して設けられており、前記第一基板及び前記第二基板を基板厚み方向から見た平面視において、前記第二部分電極は、少なくとも一部が対応する前記第一部分電極に重なり、前記静電アクチュエーターは、前記平面視において、前記第一部分電極及び当該第一部分電極に対応する前記第二部分電極が重なる領域により構成された部分アクチュエーターを複数備え、前記第一部分電極及び前記第二部分電極のうちのいずれか2つにより電圧印加用部分電極が構成され、これらの複数の部分アクチュエーターは、前記平面視において同一面積を有し、かつ、各部分アクチュエーターの重心点が、前記可動領域の重心点を中心とした仮想円上において等角度間隔で配置され、前記静電アクチュエーターにおいて、前記電圧印加用部分電極間で、前記複数の部分アクチュエーターが電気的に直列に接続されたことを特徴とする。
【0021】
本発明では、上述したようは波長可変干渉フィルターが筐体内部に収納されるため、波長可変干渉フィルターを外部からの衝撃から保護することができる。また、筐体により外部からの帯電粒子の侵入を抑制でき、各部分アクチュエーターを構成する第一部分電極や第二部分電極が帯電粒子により帯電することを防止できる。したがって、帯電によるクーロン力の影響で、静電引力のバランスが崩れる不都合を回避でき、第一反射膜及び第二反射膜の平行関係をより確実に維持することができる。
【0022】
本発明の光学モジュールは、第一基板と、前記第一基板に対向して配置された第二基板と、前記第一基板に設けられた第一反射膜と、前記第二基板に設けられ、前記第一基板に対して進退可能な可動領域と、前記第二基板の前記可動領域に設けられ、前記第一反射膜とギャップを介して対向する第二反射膜と、前記第一基板に設けられた第一電極、及び前記第二基板に設けられて前記第一電極に対向する第二電極を備え、電圧印加により前記可動領域を前記第一基板に対して進退させる静電アクチュエーターと、前記波長可変干渉フィルターにより取り出された光を検出する検出部と、を具備し、前記第一電極は、複数の第一部分電極を備え、前記第二電極は、複数の第二部分電極を備え、前記第二部分電極は、それぞれ、前記複数の第一部分電極のいずれか一つに対応して設けられており、前記第一基板及び前記第二基板を基板厚み方向から見た平面視において、前記第二部分電極は、少なくとも一部が対応する前記第一部分電極に重なり、前記静電アクチュエーターは、前記平面視において、前記第一部分電極及び当該第一部分電極に対応する前記第二部分電極が重なる領域により構成された部分アクチュエーターを複数備え、前記第一部分電極及び前記第二部分電極のうちのいずれか2つにより電圧印加用部分電極が構成され、これらの複数の部分アクチュエーターは、前記平面視において同一面積を有し、かつ、各部分アクチュエーターの重心点が、前記可動領域の重心点を中心とした仮想円上において等角度間隔で配置され、前記静電アクチュエーターにおいて、前記電圧印加用部分電極間で、前記複数の部分アクチュエーターが電気的に直列に接続されたことを特徴とする。
【0023】
この発明では、光学モジュールは、上述したような波長可変干渉フィルターと同様の構成を備えている。したがって、第一反射膜及び第二反射膜の間のギャップを変更した場合でも、各部分アクチュエーターに同一の大きさの静電引力を作用させることができ、分解能の低下を抑えることができる。したがって、このような高分解能で取り出された光を検出部で検出することで、高精度な検出結果を得ることができる。
【0024】
本発明の電子機器は、第一基板と、前記第一基板に対向して配置された第二基板と、前記第一基板に設けられた第一反射膜と、前記第二基板に設けられ、前記第一基板に対して進退可能な可動領域と、前記第二基板の前記可動領域に設けられ、前記第一反射膜とギャップを介して対向する第二反射膜と、前記第一基板に設けられた第一電極、及び前記第二基板に設けられて前記第一電極に対向する第二電極を備え、電圧印加により前記可動領域を前記第一基板に対して進退させる静電アクチュエーターと、を具備し、前記第一電極は、複数の第一部分電極を備え、前記第二電極は、複数の第二部分電極を備え、前記第二部分電極は、それぞれ、前記複数の第一部分電極のいずれか一つに対応して設けられており、前記第一基板及び前記第二基板を基板厚み方向から見た平面視において、前記第二部分電極は、少なくとも一部が対応する前記第一部分電極に重なり、前記静電アクチュエーターは、前記平面視において、前記第一部分電極及び当該第一部分電極に対応する前記第二部分電極が重なる領域により構成された部分アクチュエーターを複数備え、前記第一部分電極及び前記第二部分電極のうちのいずれか2つにより電圧印加用部分電極が構成され、これらの複数の部分アクチュエーターは、前記平面視において同一面積を有し、かつ、各部分アクチュエーターの重心点が、前記可動領域の重心点を中心とした仮想円上において等角度間隔で配置され、前記静電アクチュエーターにおいて、前記電圧印加用部分電極間で、前記複数の部分アクチュエーターが電気的に直列に接続されたことを特徴とする。
【0025】
ここで、電子機器としては、第一反射膜及び第二反射膜により取り出された光に基づいて、測定対象光の色度や明るさなどを分析する光測定器、ガスの吸収波長を検出してガスの種類を検査するガス検出装置、受光した光からその波長の光に含まれるデータを取得する光通信装置などを例示することができる。
この発明では、電子機器は、上述したような波長可変干渉フィルターと同様の構成を備えている。したがって、第一反射膜及び第二反射膜間のギャップの寸法を変更した場合でも、各部分アクチュエーターに均一な静電引力を作用させることができ、高分解能で所望の光を取り出すことができる。したがって、電子機器において、このような高分解能で取り出された光に基づいて、高精度な各種処理を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る第一実施形態の測色装置(電子機器)の概略構成を示す図。
【図2】第一実施形態の波長可変干渉フィルターの概略構成を示す平面図。
【図3】図2をIII−III線で断面した波長可変干渉フィルターの断面図。
【図4】第一実施形態の波長可変干渉フィルターの固定基板を可動基板側から見た平面図。
【図5】第一実施形態の波長可変干渉フィルターの可動基板を固定基板側から見た平面図。
【図6】第一実施形態の静電アクチュエーターの配線図。
【図7】第二実施形態の波長可変干渉フィルターの概略構成を示す平面図。
【図8】第二実施形態の波長可変干渉フィルターの固定基板を可動基板側から見た平面図。
【図9】第二実施形態の波長可変干渉フィルターの可動基板を固定基板側から見た平面図。
【図10】第二実施形態の波長可変干渉フィルターにおける配線図。
【図11】第三実施形態の光学フィルターデバイスの概略構成を示す断面図。
【図12】本発明の変形例における波長可変干渉フィルターの概略構成を示す平面図。
【図13】他の変形例における波長可変干渉フィルターにおける配線図。
【図14】更に他の変形例における波長可変干渉フィルターにおける配線図。
【図15】本発明の波長可変干渉フィルターを備えたガス検出装置を示す概略図。
【図16】図15のガス検出装置の制御系の構成を示すブロック図。
【図17】本発明の波長可変干渉フィルターを備えた食物分析装置の概略構成を示す図。
【図18】本発明の波長可変干渉フィルターを備えた分光カメラの概略構成を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
[第一実施形態]
以下、本発明に係る第一実施形態について、図面に基づいて説明する。
〔測色装置の全体構成〕
図1は、本発明に係る実施形態の測色装置(電子機器)の概略構成を示す図である。
この測色装置1は、本発明の電子機器であり、図1に示すように、測定対象Aに光を射出する光源装置2と、本発明の光学モジュールである測色センサー3と、測色装置1の全体動作を制御する制御装置4とを備えている。そして、この測色装置1は、光源装置2から射出される光を測定対象Aにて反射させ、反射された測定対象光を測色センサー3にて受光し、測色センサー3から出力される検出信号に基づいて、測定対象光の色度、すなわち測定対象Aの色を分析して測定する装置である。
【0028】
〔光源装置の構成〕
光源装置2は、光源21、複数のレンズ22(図1には1つのみ記載)を備え、測定対象Aに対して白色光を射出する。複数のレンズ22には、コリメーターレンズが含まれていてもよく、この場合、光源装置2は、光源21から射出された白色光をコリメーターレンズにより平行光とし、図示しない投射レンズから測定対象Aに向かって射出する。
なお、本実施形態では、光源装置2を備える測色装置1を例示するが、例えば測定対象Aが液晶パネルなどの発光部材である場合、光源装置2が設けられない構成としてもよい。
【0029】
〔測色センサーの構成〕
測色センサー3は、本発明の光学モジュールを構成する。この測色センサー3は、図1に示すように、波長可変干渉フィルター5と、波長可変干渉フィルター5を透過した光を受光して検出する検出部31と、波長可変干渉フィルター5に駆動電圧を印加する電圧制御部32と、を備えている。また、測色センサー3は、波長可変干渉フィルター5に対向する位置に、測定対象Aで反射された反射光(測定対象光)を、内部に導光する図示しない入射光学レンズを備えている。そして、この測色センサー3は、波長可変干渉フィルター5により、入射光学レンズから入射した測定対象光のうち、所定波長の光を分光し、分光した光を検出部31にて受光する。
検出部31は、複数の光電交換素子により構成されており、受光量に応じた電気信号を生成する。そして、検出部31は、制御装置4に接続されており、生成した電気信号を受光信号として制御装置4に出力する。
【0030】
〔波長可変干渉フィルターの構成〕
図2は、波長可変干渉フィルター5の概略構成を示す平面図であり、図3は、図2をIII−III線で断面した波長可変干渉フィルター5の断面図である。
波長可変干渉フィルター5は、図2に示すように、例えば平面正方形状の板状の光学部材である。この波長可変干渉フィルター5は、図3に示すように、本発明の第一基板である固定基板51、及び本発明の第二基板である可動基板52を備えている。これらの2枚の基板51,52は、それぞれ例えば、ソーダガラス、結晶性ガラス、石英ガラス、鉛ガラス、カリウムガラス、ホウケイ酸ガラス、無アルカリガラスなどの各種ガラスや、水晶などにより形成されている。そして、これらの固定基板51及び可動基板52は、固定基板51の第一接合部513及び可動基板の第二接合部523が、例えばシロキサンを主成分とするプラズマ重合膜などにより構成された接合膜53により接合されることで、一体的に構成されている。
【0031】
固定基板51には、本発明の第一反射膜を構成する固定反射膜56が設けられ、可動基板52には、本発明の第二反射膜を構成する可動反射膜57が設けられている。ここで、固定反射膜56は、固定基板51の可動基板52に対向する面に固定され、可動反射膜57は、可動基板52の固定基板51に対向する面に固定されている。また、これらの固定反射膜56及び可動反射膜57は、所定の反射膜間ギャップg1を介して対向配置されている。
さらに、固定基板51と可動基板52との間には、固定反射膜56及び可動反射膜57の間のギャップの寸法を調整するために用いられる静電アクチュエーター54が設けられている。この静電アクチュエーター54は、固定基板51側に設けられる本発明の第一電極としての固定電極541と、可動基板52側に設けられる本発明の第二電極としての可動電極542とを備えている。ここで、これらの電極541,542は、それぞれ固定基板51及び可動基板52の基板表面に直接設けられる構成であってもよく、他の膜部材を介して設けられる構成であってもよい。
また、波長可変干渉フィルター5を固定基板51(可動基板52)の基板厚み方向から見た図2に示すような平面視において、固定基板51及び可動基板52の平面中心点Oは、固定反射膜56及び可動反射膜57の中心点と一致し、かつ後述する可動部521の中心点と一致する。
なお、以降の説明に当たり、固定基板51または可動基板52の基板厚み方向から見た平面視、つまり、固定基板51、接合膜53、及び可動基板52の積層方向から波長可変干渉フィルター5を見た平面視を、フィルター平面視と称する。
【0032】
〔固定基板の構成〕
図4は、第一実施形態の波長可変干渉フィルター5における固定基板51を可動基板52側から見た平面図である。
固定基板51は、厚みが例えば500μmに形成されるガラス基材を加工することで形成される。具体的には、図3に示すように、固定基板51には、エッチングにより電極配置溝511及び反射膜設置部512が形成されている。この固定基板51は、可動基板52に対して厚み寸法が大きく形成されており、固定電極541及び可動電極542間に電圧を印加した際の静電引力や、固定電極541の内部応力による固定基板51の撓みはない。
また、固定基板51の頂点T1(図2参照)には、切欠部514が形成されており、波長可変干渉フィルター5の固定基板51側に、後述する可動電極パッド547Pが露出する。
【0033】
電極配置溝511は、図4に示すように、フィルター平面視で、固定基板51の平面中心点を中心とした円形に形成されている。反射膜設置部512は、前記フィルター平面視において、電極配置溝511の中心部から可動基板52側に突出して形成される。ここで、電極配置溝511の溝底面は、固定電極541が配置される電極設置面511Aとなる。また、反射膜設置部512の突出先端面は、反射膜設置面512Aとなる。
また、固定基板51には、電極配置溝511から、固定基板51の外周縁の頂点T1,頂点T2に向かって延出する電極引出溝511Bが設けられている。
【0034】
電極配置溝511の電極設置面511Aには、固定電極541が形成されている。
この固定電極541は、図4に示すように、平面中心点Oを中心とした仮想円Pの円周に沿う円弧状の複数の固定部分電極543(543A,543B,543C)により構成されている。これらの固定部分電極543は、本発明の第一部分電極を構成する。
本実施形態では、フィルター平面視において、各固定部分電極543の仮想円Pの円周方向に沿う長さ寸法L1が同一寸法に形成され、仮想円Pの接線に直交する方向(仮想円Pの径方向)に沿う幅寸法D1が同一寸法に形成される。また、固定部分電極543A,543B,543Cは、それぞれの重心点Ga1,Gb1,Gc1が仮想円Pの円周上において等角度間隔(120度間隔)となるように配置される。また、各固定部分電極543の厚み寸法は、同一厚み寸法に設定されることが好ましい。
【0035】
ここで、3つの固定部分電極543のうち、固定部分電極543Aは、固定電極引出線545を備えている。この固定電極引出線545は、固定部分電極543Aの外周縁から、頂点T2方向に延出し、その先端部には、電圧制御部32に接続される固定電極パッド545Pが設けられている。
また、固定部分電極543B及び固定部分電極543Cは、固定電極接続線546により接続されている。
そして、これらの固定部分電極543上には、固定電極541及び可動電極542の間の放電を防止するための絶縁膜(図示略)が積層されている。
【0036】
反射膜設置部512は、上述したように、電極配置溝511と同軸上で、電極配置溝511よりも小さい径寸法となる円柱状に形成されている。なお、本実施形態では、図3に示すように、反射膜設置部512の可動基板52に対向する反射膜設置面512Aが、電極設置面511Aよりも可動基板52に近接して形成される例を示すが、これに限らない。電極設置面511A及び反射膜設置面512Aの高さ位置は、反射膜間ギャップg1の寸法、固定電極541及び可動電極542の間の寸法、固定反射膜56や可動反射膜57の厚み寸法、測定対象波長域等により適宜設定される。したがって、例えば、電極設置面511Aと反射膜設置面512Aとが同一面に形成される構成や、電極設置面511Aの中心部に、円柱凹溝上の反射膜固定溝が形成され、この反射膜固定溝の底面に反射膜固定面が形成される構成などとしてもよい。
【0037】
そして、反射膜設置面512Aには、円形状に形成される固定反射膜56が固定されている。この固定反射膜56としては、例えばAg等の金属膜や、Ag合金等の合金膜を用いることができる。また、例えば高屈折層をTiO、低屈折層をSiOとした誘電体多層膜を用いてもよい。さらに、誘電体多層膜上に金属膜(又は合金膜)を積層した反射膜や、金属膜(又は合金膜)上に誘電体多層膜を積層した反射膜、単層の屈折層(TiOやSiO等)と金属膜(又は合金膜)とを積層した反射膜などを用いてもよい。
【0038】
さらに、固定基板51は、可動基板52に対向する面とは反対側の面において、固定反射膜56に対応する位置に反射防止膜(AR)を設ける構成としてもよい。この反射防止膜は、低屈折率膜及び高屈折率膜を交互に積層することで形成され、固定基板51の表面での可視光の反射率を低下させ、透過率を増大させる。
【0039】
そして、固定基板51の可動基板52に対向する面のうち、エッチングにより、電極配置溝511、反射膜設置部512、及び電極引出溝511Bが形成されない面は、第一接合部513を構成する。この第一接合部513は、上述したように、接合膜53を介して可動基板52の第二接合部523に接合される。
【0040】
〔可動基板の構成〕
図5は、第一実施形態の波長可変干渉フィルター5における可動基板52を固定基板51側から見た平面図である。
可動基板52は、厚みが例えば200μmに形成されるガラス基材をエッチングにより加工することで形成される。
具体的には、可動基板52は、図2、図5に示すようなフィルター平面視において、基板中心点(平面中心点O)を中心とした円形の可動部521と、可動部521と同軸であり可動部521を保持する保持部522と、を備えている。ここで、可動部521及び保持部522により本発明の可動領域が構成され、当該可動領域の重心点は、平面中心点Oと一致する。
また、可動基板52は、図2及び図5に示すように、頂点T2の位置に切欠部524を備えており、波長可変干渉フィルター5の可動基板52側に、固定電極パッド545Pが露出する。
【0041】
可動部521は、保持部522よりも厚み寸法が大きく形成され、例えば、本実施形態では、可動基板52の厚み寸法と同一寸法である200μmに形成されている。また、可動部521は、反射膜設置部512に平行な可動面521Aを備え、この可動面521Aに、可動反射膜57、及び可動電極542が設けられている。
なお、固定基板51と同様に、可動部521の固定基板51とは反対側の面には、反射防止膜が形成されていてもよい。このような反射防止膜は、低屈折率膜及び高屈折率膜を交互に積層することで形成することができ、可動基板52の表面での可視光の反射率を低下させ、透過率を増大させることができる。
【0042】
可動反射膜57は、可動部521の可動面521Aの中心部に、固定反射膜56と反射膜間ギャップg1を介して対向して設けられる。この可動反射膜57としては、上述した固定反射膜56と同一の構成の反射膜が用いられる。
【0043】
可動電極542は、固定電極541に対向して設けられ、固定電極541とともに静電アクチュエーター54を構成する。
この可動電極542は、図5に示すように、仮想円Pに沿った円弧状の複数の可動部分電極544(544A,544B,544C)により構成されている。これらの可動部分電極544は、本発明の第二部分電極を構成する。
本実施形態では、フィルター平面視において、各可動部分電極544の仮想円Pの円周方向に沿う長さ寸法L2は同一寸法に形成されており、この長さ寸法L2は、固定部分電極543の長さ寸法L1よりも小さい寸法となる。また、フィルター平面視において、各可動部分電極544の仮想円Pの径方向に沿う幅寸法D2は同一寸法に形成されており、この幅寸法D2は、固定部分電極543の幅寸法D1よりも小さい寸法となる。また、各可動部分電極544の厚み寸法は、同一厚み寸法に形成されることが好ましい。
そして、フィルター平面視において、これらの可動部分電極544A,544B,544Cは、それぞれの重心点Ga2,Gb2,Gc2が仮想円Pの円周上において等角度間隔(120度間隔)となるように配置される。また、これらの各重心点Ga2,Gb2,Gc2は、それぞれ、固定部分電極543A,543B,543Cの重心点Ga1,Gb1,Gc1と一致する。すなわち、フィルター平面視において、各可動部分電極544の外周縁は、各固定部分電極543の外周縁の内側に位置する。言い換えれば、各可動部分電極544は、各固定部分電極543よりも小さいサイズに形成されている。
そして、フィルター平面視において、可動部分電極544と、固定部分電極543とが重なる領域により、本発明の部分アクチュエーター55が構成される。
【0044】
また、可動部分電極544のうち、可動部分電極544Cは、可動電極引出線547を備えている。この可動電極引出線547は、可動部分電極544Cの外周縁から、頂点T1に向かって延出し、その先端部には、電圧制御部32に接続される可動電極パッド547Pが設けられている。
さらに、可動部分電極544A及び可動部分電極544Bは、可動電極接続線548により接続されている。
【0045】
保持部522は、可動部521の周囲を囲うダイヤフラムであり、例えば厚み寸法が50μmに形成され、可動部521よりも厚み方向に対する剛性が小さく形成されている。
このため、保持部522は可動部521よりも撓みやすく、僅かな静電引力により固定基板51側に撓ませることが可能となる。この際、可動部521は、保持部522よりも厚み寸法が大きく、剛性が大きくなるため、静電引力により可動基板52を撓ませる力が作用した場合でも、可動部521の撓みはほぼなく、可動部521に形成された可動反射膜57の撓みも防止できる。
【0046】
〔静電アクチュエーターの構成〕
図6は、第一実施形態の静電アクチュエーター54の配線図である。
静電アクチュエーター54は、図2に示すように、フィルター平面視において、固定部分電極543A及び可動部分電極544Aが重なる領域により構成される部分アクチュエーター55Aと、固定部分電極543B及び可動部分電極544Bが重なる領域により構成される部分アクチュエーター55Bと、固定部分電極543C及び可動部分電極544Cが重なる領域により構成される部分アクチュエーター55Cとを備えている。
ここで、上述したように、フィルター平面視において、可動部分電極544の外周縁は、当該可動部分電極544に対向する固定部分電極543の外周縁よりも内側に位置しているため、フィルター平面視における部分アクチュエーター55の面積は、可動部分電極544の面積と同じ面積となる。また、本実施形態では、各可動部分電極544が同一形状に形成されるので、各部分アクチュエーター55のフィルター平面視における面積も同一面積となる。さらに、フィルター平面視における各可動部分電極544の重心点Ga2,Gb2,Gc2は、各部分アクチュエーター55における重心点G,G,Gと一致し、仮想円Pの円周上で、等角度間隔(120度間隔)に配置される構成となる。
【0047】
また、上述したように、固定部分電極543Aに固定電極引出線545が形成され、可動部分電極544Cに可動電極引出線547が形成され、これらの固定電極引出線545及び可動電極引出線547は、それぞれ電圧制御部32に接続されている。すなわち、固定部分電極543A,及び可動部分電極544Cが本発明の電圧印加用部分電極を構成する。
そして、部分アクチュエーター55A,55Bは、可動電極接続線548により接続され、部分アクチュエーター55B,55Cは、固定電極接続線546により接続されている。つまり、静電アクチュエーター54を構成する各部分アクチュエーター55(55A,55B,55C)は、図6に示すように、電気的に直列接続されている。
【0048】
このような構成の静電アクチュエーター54では、固定電極パッド545P及び可動電極パッド547P間に駆動電圧Vが印加されると、各部分アクチュエーター55A,55B,55Cには、容量リアクタンスに応じた分圧V,V,Vが印加される。
また、各部分アクチュエーター55A,55B,55Cにおける固定部分電極543と可動部分電極544との間の寸法(部分電極間ギャップ)をそれぞれd、d、d、フィルター平面視における各部分アクチュエーター55A,55B,55Cの面積をS、誘電率をεとすると、各部分アクチュエーター55A,55B,55Cの静電容量C,C,Cはそれぞれ、以下の式(1)〜(3)で表される。
【0049】
[数1]
=εS/d …(1)
=εS/d …(2)
=εS/d …(3)
【0050】
ここで、各部分アクチュエーター55A,55B,55Cは、電気的に直列接続されているため、これらの部分アクチュエーター55A,55B,55Cで保持される電荷量Qは同値となり、以下の式(4)が成立する。
【0051】
[数2]
Q=C=C=C …(4)
【0052】
一方、各部分アクチュエーター55A,55B,55Cに作用する静電引力F,F,Fは、各部分アクチュエーター55A,55B,55Cの固定部分電極543と可動部分電極544との間の電界E,E,Eと、各部分アクチュエーター55A,55B,55Cで保持される電荷量Qとの積EQ,EQ,EQとなる。
したがって、静電引力F,F,Fは、上記式(1)〜(4)を代入すると、以下の式(5)〜(7)のように表せる。
【0053】
[数3]
=EQ=Q/εS …(5)
=EQ=Q/εS …(6)
=EQ=Q/εS …(7)
【0054】
すなわち、上記式(5)〜(7)に示されるように、各部分アクチュエーター55A,55B,55Cに作用する静電引力F,F,Fは、部分電極間ギャップd、d、dの値によらず同値となる。
したがって、例えば、初期ギャップにおいて、部分電極間ギャップd、d、dの値に、例えば測定精度に影響しない程度の僅かな差があり、静電アクチュエーター54に電圧を印加した場合であっても、これらの部分電極間ギャップd、d、dの差が開くことがなく、保持部522を均一に撓ませることができる。
【0055】
〔電圧制御手段の構成〕
電圧制御部32は、制御装置4からの入力される制御信号に基づいて、静電アクチュエーター54に印加する電圧を制御する。
【0056】
〔制御装置の構成〕
制御装置4は、測色装置1の全体動作を制御する。
この制御装置4としては、例えば汎用パーソナルコンピューターや、携帯情報端末、その他、測色専用コンピューターなどを用いることができる。
そして、制御装置4は、図1に示すように、光源制御部41、測色センサー制御部42、及び本発明の分析処理部を構成する測色処理部43などを備えて構成されている。
光源制御部41は、光源装置2に接続されている。そして、光源制御部41は、例えば利用者の設定入力に基づいて、光源装置2に所定の制御信号を出力し、光源装置2から所定の明るさの白色光を射出させる。
測色センサー制御部42は、測色センサー3に接続されている。そして、測色センサー制御部42は、例えば利用者の設定入力に基づいて、測色センサー3にて受光させる光の波長を設定し、この波長の光の受光量を検出する旨の制御信号を測色センサー3に出力する。これにより、測色センサー3の電圧制御部32は、制御信号に基づいて、利用者が所望する光の波長のみを透過させるよう、静電アクチュエーター54への印加電圧を設定する。
測色処理部43は、検出部31により検出された受光量から、測定対象Aの色度を分析する。
【0057】
〔本実施形態の作用効果〕
上述したように、上記実施形態の波長可変干渉フィルター5は、可動部521を固定基板51に向かって進退させるための静電引力を発生させる静電アクチュエーター54を備えている。そして、この静電アクチュエーター54は、複数の固定部分電極543により構成された固定電極541と、複数の可動部分電極544により構成された可動電極542とを備えている。そして、フィルター平面視において、これらの固定部分電極543及び可動部分電極544が重なる領域により構成される部分アクチュエーター55が構成される。これらの部分アクチュエーター55は、フィルター平面視において同一面積を有する。そして、各部分アクチュエーター55の重心点G,G,Gは、平面中心点Oを中心とした仮想円Pの円周上で等角度間隔に配置され、電気的に直列接続されている。
このような構成では、静電アクチュエーター54に駆動電圧を印加した際に、上記式(5)〜(7)に示すように、各部分アクチュエーター55に同一大きさの静電引力が作用する。また、上述のように、各部分アクチュエーター55が等角度間隔に配置されているので、保持部522は、等角度間隔に配置されたこれらの部分アクチュエーター55により、均一な静電引力を受けて、固定基板51側に均一に撓み、可動部521も、初期状態の姿勢を保ったまま固定基板51側に移動可能となる。
したがって、固定反射膜56及び可動反射膜57間のギャップを変動させた場合でも、固定反射膜56及び可動反射膜57の平行性を維持することができ、分解能の低下を抑えることができる。
また、このような波長可変干渉フィルター5を備えた測色センサー3では、検出部31にて、高分解能で分光された光を検出することができ、正確な光量検出結果を得ることができる。さらに、測色装置1では、この測色センサー3により検出された光量により、測定対象Aの測色を行うことで、精度の高い測色処理を行うことができる。
【0058】
また、電圧印加用部分電極である固定部分電極543A及び可動部分電極544C間に駆動電圧を印加するだけで、各部分アクチュエーターの静電引力を容易に同値にすることができる。したがって、各部分アクチュエーター55を制御するために、各部分アクチュエーター55に印加する電圧をそれぞれ制御するなどといった複雑な制御方法を不要にでき、部分アクチュエーターを制御するための制御回路等も不要にできる。すなわち、簡単な構成及び電圧制御で、反射膜56,57間のギャップを変動させた場合でも分解能の低下を抑えることができる。
【0059】
そして、静電アクチュエーター54の部分アクチュエーター55A,55B,55Cは、一方の電圧印加用部分電極である固定部分電極543Aから、他方の電圧印加用部分電極である可動部分電極544Cまで、仮想円Pの周方向に沿って配設される順に電気的に直列接続されている。
このような構成では、固定電極接続線546、可動電極接続線548の距離を短くすることができ、抵抗の増大を防止することができる。特に、静電アクチュエーター54を構成する部分アクチュエーターの個数が4つ以上となり、部分アクチュエーターの個数が増えるほど、各部分アクチュエーターを接続する接続線の本数が増える。このような場合、部分アクチュエーターが、不規則な順番で電気的に直列に接続される場合、固定電極接続線546や可動電極接続線548の構成も複雑化し、抵抗が増大するが、上記のように、仮想円Pの周方向に沿って配置される順に電気的に直列に接続される場合、効果的に抵抗増大を防止することができる。
【0060】
本実施形態の波長可変干渉フィルター5では、各固定部分電極543の長さ寸法L1が各可動部分電極544の長さ寸法L2よりも大きく、各固定部分電極543の幅寸法D1が各可動部分電極544の幅寸法D2よりも大きく形成されている。すなわち、フィルター平面視において、可動部分電極544の外周縁は、当該可動部分電極544に対向する固定部分電極の外周縁の内側に位置している。
このような構成では、各部分アクチュエーター55の面積を精度よく同一面積に設定することができる。
本発明では、例えば、固定部分電極543と可動部分電極544とを同一形状に形成してもよく、このような場合であっても、フィルター平面視においてこれらの外周縁が一致するようにアライメント調整を行うことで、本発明の波長可変干渉フィルターを構成することができる。しかしながら、この場合、フィルター平面視において、固定部分電極543の外周縁と、可動部分電極544の外周縁との位置を一致させるアライメント調整が困難となることが考えられる。これに対して、本実施形態のように、固定部分電極543のサイズを可動部分電極544のサイズより大きくすることで、フィルター平面視において、可動部分電極544が固定部分電極543の内側に位置するようにアライメント調整を実施すればよく、容易に同一面積を有する各部分アクチュエーター55を形成することができる。したがって、製造効率性を向上させることができる。
【0061】
なお、本実施形態では、固定部分電極543と可動部分電極544の重心点を一致させたが、上記のように、可動部分電極544により部分アクチュエーターの位置が規定されるので、必ずしも固定部分電極543の重心点と及び可動部分電極544の重心点を一致させる必要はない。上述のように、各可動部分電極544により部分アクチュエーターの位置が規定される場合、各可動部分電極544の重心点が仮想円Pの円周上において等角度間隔で配置されていれば、各部分アクチュエーター55の重心点も仮想円Pの円周上において等角度間隔で配置されることになる。
したがって、上記のように、可動部分電極544の外周縁が、固定部分電極543の外周縁の内側に位置する構成では、可動部分電極544の形状や位置を精度よく形成することで、固定部分電極543の形状や位置に製造誤差等が含まれる場合であっても、各部分アクチュエーター55の位置や面積を正確に設定することができる。
【0062】
また、可動部分電極544が固定部分電極543よりも小さいサイズに形成されるため、可動部分電極544による膜応力も小さくなり、可動基板52の膜応力による撓みを軽減することもできる。
【0063】
各固定部分電極543がそれぞれ同一形状に形成され、各可動部分電極544がそれぞれ同一形状に形成される。
このような構成では、部分アクチュエーター55を形成するための、固定部分電極543及び可動部分電極544の位置合わせが容易となり、製造効率性をより向上させることができる。
【0064】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態について図面に基づいて説明する。
上述した第一実施形態の波長可変干渉フィルター5では、複数の部分アクチュエーター55が電気的に直列接続された静電アクチュエーター54を1つ設ける構成例を示した。
これに対して、第二実施形態の波長可変干渉フィルター5Aでは、複数の静電アクチュエーター(第一静電アクチュエーター54A,第二静電アクチュエーター54B)が設けられ、これらが電気的に並列接続される構成となる。以下、このような波長可変干渉フィルター5Aの構成について詳述する。
図7は、第二実施形態の波長可変干渉フィルター5Aの概略構成を示す平面図である。図8は、波長可変干渉フィルター5Aの固定基板51を可動基板52側から見た平面図である。図9は、波長可変干渉フィルター5Aの可動基板52を固定基板51側から見た平面図である。図10は、波長可変干渉フィルター5Aにおける配線図である。なお、上記第一実施形態と同一の構成については同符号を付し、その説明を省略または簡略化する。
【0065】
〔固定基板の構成〕
波長可変干渉フィルター5Aの固定基板51には、第一実施形態と同様に、エッチングにより電極配置溝511及び反射膜設置部512が形成されている。また、第二実施形態の固定基板51には、切欠部514が形成されない。
【0066】
そして、固定基板51の電極配置溝511の溝底部には、第一静電アクチュエーター54Aを構成する第一固定電極541Aと、第二静電アクチュエーター54Bを構成する第二固定電極541Bと、が形成されている。
第一固定電極541Aは、図8に示すように、仮想円Pに沿った円弧状の複数(第二実施形態では2つ)の第一固定部分電極543D(543D1,543D2)により構成されている。これらの第一固定部分電極543Dは、第一静電アクチュエーター54Aにおける本発明の第一部分電極を構成する。
第二固定電極541Bは、図8に示すように、仮想円Pに沿った円弧状の複数(第二実施形態では2つ)の第二固定部分電極543E(543E1,543E2)により構成されている。これらの第二固定部分電極543Eは、第二静電アクチュエーター54Bにおける本発明の第一部分電極を構成する。
【0067】
これらの第一固定部分電極543Dは、フィルター平面視における平面形状が同一であり、かつ同一厚み寸法に形成されている。そして、これらの固定部分電極543Dは、フィルター平面視において、仮想円Pの円周に沿って配置され、かつ、各第一固定部分電極543Dの重心点Gd11,Gd12が仮想円P上で、等角度間隔(180度間隔)で配置されている。
第二固定部分電極543Eも、それぞれ、同一形状、同一厚み寸法に形成される。そして、これらの第二固定部分電極543Eは、フィルター平面視において、仮想円Pの円周に沿って配置され、かつ、各第二固定部分電極543Eの重心点Ge11,Ge12が仮想円P上で、等角度間隔(180度間隔)で配置されている。
また、第一固定部分電極543D及び第二固定部分電極543Eは、それぞれ、フィルター平面視における平面形状が同一であり、同一厚み寸法に形成されることが好ましい。さらに、これらの第一固定部分電極543D及び第二固定部分電極543Eは、仮想円Pの円周方向に沿って等角度間隔(90度間隔)で配置されることが好ましい。
【0068】
第一固定部分電極543D1と第二固定部分電極543E1とは、固定電極接続線545Aにより接続されている。この固定電極接続線545Aからは、頂点T2(図7、図8における左下方向)に向かって固定電極引出線546Aが延出形成されている。この固定電極引出線546Aの先端部には、電圧制御部32に接続される電極パッド546P1が設けられている。
また、第一固定部分電極543D2と第二固定部分電極543E2とは、固定電極接続線545Bにより接続されている。この固定電極接続線545Bからは、頂点T1(図7、図8における右上方向)に向かって固定電極引出線546Bが延出形成されている。この固定電極引出線546Bの先端部には、電圧制御部32に接続される電極パッド546P2が設けられている。
さらに、これらの第一及び第二固定部分電極543D,543E上には、絶縁性を確保するための絶縁膜が積層されている。
【0069】
反射膜設置部512及び固定反射膜56の構成は、上記第一実施形態と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0070】
〔可動基板の構成〕
波長可変干渉フィルター5Aの可動基板52は、第一実施形態と同様、エッチングにより形成される可動部521と、保持部522とを備えている。
また、波長可変干渉フィルター5Aの可動基板52は、図7及び図9に示すように、固定基板51の電極パッド546P1、546P2に対応する位置に、それぞれ切欠部524を備えている。これらの切欠部524により、波長可変干渉フィルター5Aの可動基板52側の面に電極パッド546P1、546P2が露出する。
【0071】
可動部521及び保持部522の構成は、上記第一実施形態と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0072】
保持部522の固定基板51に対向する面には、第一固定電極541A及び第二固定電極541Bと対向する、第一可動電極542A及び第二可動電極542Bが形成されている。ここで、第一固定電極541A及び第一可動電極542Aにより第一静電アクチュエーター54Aが構成され、第二固定電極541B及び第二可動電極542Bにより第二静電アクチュエーター54Bが構成される。
【0073】
第一可動電極542Aは、図9に示すように、円弧状の複数(第二実施形態では2つ)の第一可動部分電極544D(544D1,544D2)により構成されている。これらの第一可動部分電極544Dは、第一静電アクチュエーター54Aにおける本発明の第二部分電極を構成する。
第二可動電極542Bも、同様に、円弧状の複数(第二実施形態では2つ)の第二可動部分電極544E(544E1,544E2)により構成されている。これらの第二可動部分電極544Eは、第二静電アクチュエーター54Bにおける本発明の第二部分電極を構成する。
【0074】
そして、2つの第一可動部分電極544Dは、それぞれ、フィルター平面視における平面形状が同一であり、同一厚み寸法に形成され、仮想円Pに沿って配置される。また、第一可動部分電極544D1,544D2の重心点Gd21,Gd22は、それぞれ、仮想円P上において等角度間隔(180度間隔)で配置され、第一固定部分電極543D1,543D2の重心点Gd11,Gd12と重なる。
第二可動部分電極544Eも、同様に、それぞれ、フィルター平面視における平面形状が同一であり、同一厚み寸法に形成され、仮想円Pに沿って配置される。また、第二可動部分電極544E1,544E2の重心点Ge21,Ge22は、仮想円P上において等角度間隔(180度間隔)で配置され、第二固定部分電極543E1,543E2の重心点Ge11,Ge12と重なる。
なお、第一可動部分電極544D及び第二可動部分電極544Eは、それぞれ、フィルター平面視における平面形状が同一形状に形成されることが好ましい。
【0075】
ここで、第一実施形態と同様に、フィルター平面視において、これらの第一可動部分電極544D及び第二可動部分電極544Eの外周縁は、それぞれ、第一固定部分電極543D及び第二固定部分電極543Eの外周縁よりも内側に位置している。つまり、フィルター平面視において、第一可動部分電極544Dが配置される領域が、第一静電アクチュエーター54Aにおける第一部分アクチュエーター55Dとなる。また、フィルター平面視において、第二可動部分電極544Eが配置される領域が、第二静電アクチュエーター54Bにおける第二部分アクチュエーター55Eとなる。
【0076】
さらに、可動基板52には、平面中心点Oを中心点としたリング状の内側可動接続電極547Aと、内側可動接続電極547Aと同心となるリング状の外側可動接続電極548Aと、を備えている。
内側可動接続電極547Aは、仮想円Pの内周側に形成され、第一可動部分電極544D1及び第一可動部分電極544D2を接続する。外側可動接続電極548Aは、仮想円Pの外周側に形成され、第二可動部分電極544E1及び第二可動部分電極544E2を接続する。
【0077】
〔静電アクチュエーターの構成〕
図10は、第二実施形態の静電アクチュエーター54A,54Bの配線図である。
第一静電アクチュエーター54A及び第二静電アクチュエーター54Bは、図10に示すように、電気的に並列に接続される。したがって、電極パッド546P1,546P2間に駆動電圧を印加すると、これらの第一静電アクチュエーター54A及び第二静電アクチュエーター54Bに同じ駆動電圧が印加される。
【0078】
一方、第一静電アクチュエーター54Aに着目すると、互いに対向する第一固定部分電極543D(543D1,543D2)及び第一可動部分電極544D(544D1,544D2)により、第一部分アクチュエーター55D(55D1,55D2)が構成される。そして、これらの第一部分アクチュエーター55D1及び第一部分アクチュエーター55D2は、上記第一実施形態と同様、電気的に直列に接続されている。
第二静電アクチュエーター54Bにおいても同様であり、互いに対向する第二固定部分電極543E(543E1,543E2)及び第二可動部分電極544E(544E1,544E2)により、第二部分アクチュエーター55E(55E1,55E2)が構成される。そして、これらの第二部分アクチュエーター55E1及び第二部分アクチュエーター55E2は、上記第一実施形態と同様、電気的に直列に接続されている。
【0079】
したがって、上記式(5)〜(7)に示されるように、第一静電アクチュエーター54Aの各第一部分アクチュエーター55D1,55D2に作用する静電引力は、部分電極間ギャップの値によらず同値となる。第二静電アクチュエーター54Bにおいても同様であり、各第二部分アクチュエーター55E1,55E2に作用する静電引力は、部分電極間ギャップの値によらず同値となる。
これにより、例えば、初期ギャップにおいて、部分電極間ギャップの値に、例えば測定精度に影響しない程度の僅かな差があり、静電アクチュエーター54A,54Bに電圧を印加した場合であっても、これらの部分電極間ギャップの差が開くことがなく、保持部522を均一に撓ませることができる。
【0080】
〔本実施形態の作用効果〕
第二実施形態の波長可変干渉フィルター5Aは、第一静電アクチュエーター54A及び第二静電アクチュエーター54Bを備え、これらが電気的に並列に接続されている。また、第一静電アクチュエーター54Aは、第一部分アクチュエーター55D1,55D2が直列に接続されることで構成され、第二静電アクチュエーター54Bは、第二部分アクチュエーター55E1,55E2が直列に接続されることで構成されている。また、第一部分アクチュエーター55D1,55D2は180度間隔で配置され、すなわち、基板中心に対して点対称となる位置に配置されている。同様に、第二部分アクチュエーター55E1,55E2は、180度間隔で配置され、すなわち、基板中心に対して点対称となる位置に配置されている。さらに、第一部分アクチュエーター55D1,55D2を構成する第一固定部分電極543D1、543D2及び第一可動部分電極544D1,544D2は、フィルター平面視において、同一形状に形成されており、第一固定部分電極543D1と第一可動部分電極544D1とが互いに対向し、第一固定部分電極543D2と第一可動部分電極544D2とが互いに対向して配置されている。第二部分アクチュエーター55E1,55E2を構成する第二固定部分電極543E(543E1,543E2)及び第二可動部分電極544E(544E1,544E2)も、フィルター平面視において、同一形状に形成され、互いに対向して配置されている。
【0081】
このため、上記第一実施形態と同様に、電極パッド546P1,546P2間に駆動電圧を印加すると、第一静電アクチュエーター54Aの各第一部分アクチュエーター55D1,55D2での静電引力が同値となり、第二静電アクチュエーター54Bの各第二部分アクチュエーター55E1,55E2での静電引力が同値となる。したがって、固定反射膜56及び可動反射膜57間のギャップを変動させた場合でも、固定反射膜56及び可動反射膜57の平行性を維持することができ、分解能の低下を抑えることができる。
また、このような波長可変干渉フィルター5を備えた測色センサー3では、検出部31にて、高分解能で分光された光を検出することができ、正確な光量検出結果を得ることができる。さらに、測色装置1では、この測色センサー3により検出された光量により、測定対象Aの測色を行うことで、精度の高い測色処理を行うことができる。
【0082】
そして、第二実施形態の波長可変干渉フィルター5Aでは、第一静電アクチュエーター54A及び第二静電アクチュエーター54Bが並列に接続されている。このような構成では、例えば、4つの部分アクチュエーターが直列に接続されている場合に比べて、各部分アクチュエーター55D,55Eに印加される電圧を大きくすることができ、省エネルギー化を促進できる。
【0083】
[第三実施形態]
次に、本発明の第四実施形態について、図面に基づいて説明する。
上記第一実施形態の測色装置1では、光学モジュールである測色センサー3に対して、波長可変干渉フィルター5が直接設けられる構成とした。しかしながら、光学モジュールとしては、複雑な構成を有するものもあり、特に小型化の光学モジュールに対して、波長可変干渉フィルター5を直接設けることが困難な場合がある。本実施形態では、そのような光学モジュールに対しても、波長可変干渉フィルター5を容易に設置可能にする光学フィルターデバイスについて、以下に説明する。
図11は、本発明の第三実施形態に係る光学フィルターデバイスの概略構成を示す断面図である。
【0084】
図11に示すように、光学フィルターデバイス600は、波長可変干渉フィルター5と、当該波長可変干渉フィルター5を収納する筐体601と、を備えている。
筐体601は、ベース基板610と、リッド620と、ベース側ガラス基板630と、リッド側ガラス基板640と、を備える。
【0085】
ベース基板610は、例えば単層セラミック基板により構成される。このベース基板610には、波長可変干渉フィルター5の可動基板52が設置される。ベース基板610への可動基板52の設置としては、例えば接着層等を介して配置されるものであってもよく、他の固定部材等に嵌合等されることで配置されるものであってもよい。また、ベース基板610には、波長可変干渉フィルター5の反射膜(固定反射膜56,可動反射膜57)に対向する領域に、光通過孔611が開口形成される。そして、この光通過孔611を覆うように、ベース側ガラス基板630が接合される。ベース側ガラス基板630の接合方法としては、例えば、ガラス原料を高温で熔解し、急冷したガラスのかけらであるガラスフリットを用いたガラスフリット接合、エポキシ樹脂等による接着などを利用できる。
【0086】
このベース基板610のリッド620に対向するベース内側面612には、波長可変干渉フィルター5の各電極パッド545P,547Pと接続される内側端子部615が設けられている。なお、各電極パッド545P,547Pと内側端子部615との接続は、例えばFPC(Flexible Printed Circuits)615Aを用いることができ、例えばAgペースト、ACF(Anisotropic Conductive Film)、ACP(Anisotropic Conductive Paste)等により接合する。なお、内部空間650を真空状態に維持する場合は、デガス(ガスの放出)が少ないAgペーストを用いることが好ましい。また、FPC615Aによる接続に限られず、例えばワイヤーボンディング等による配線接続を実施してもよい。
また、ベース基板610は、各内側端子部615が設けられる位置に対応して、貫通孔614が形成されており、各内側端子部615は、貫通孔614に充填された導電性部材を介して、ベース基板610のベース内側面612とは反対側のベース外側面613に設けられた外側端子部616に接続されている。
そして、ベース基板610の外周部には、リッド620に接合されるベース接合部617が設けられている。
【0087】
リッド620は、図11に示すように、ベース基板610のベース接合部617に接合されるリッド接合部624と、リッド接合部624から連続し、ベース基板610から離れる方向に立ち上がる側壁部625と、側壁部625から連続し、波長可変干渉フィルター5の固定基板51側を覆う天面部626とを備えている。このリッド620は、例えばコバール等の合金または金属により形成することができる。
このリッド620は、リッド接合部624と、ベース基板610のベース接合部617とが、接合されることで、ベース基板610に密着接合されている。
この接合方法としては、例えば、レーザー溶着の他、銀ロウ等を用いた半田付け、共晶合金層を用いた封着、低融点ガラスを用いた溶着、ガラス付着、ガラスフリット接合、エポキシ樹脂による接着等が挙げられる。これらの接合方法は、ベース基板610及びリッド620の素材や、接合環境等により、適宜選択することができる。
【0088】
リッド620の天面部626は、ベース基板610に対して平行となる。この天面部626には、波長可変干渉フィルター5の各反射膜56,57に対向する領域に、光通過孔621が開口形成されている。そして、この光通過孔621を覆うように、リッド側ガラス基板640が接合される。リッド側ガラス基板640の接合方法としては、ベース側ガラス基板630の接合と同様に、例えばガラスフリット接合や、エポキシ樹脂等による接着などを用いることができる。
【0089】
〔第三実施形態の作用効果〕
本実施形態の光学フィルターデバイス600では、筐体601により波長可変干渉フィルター5が保護されているため、異物や大気に含まれるガス等による波長可変干渉フィルター5の特性変化を防止でき、また、外的要因による波長可変干渉フィルター5の破損を防止できる。また、帯電粒子の侵入を防止できるため、固定電極541や可動電極542の帯電を防止できる。したがって、帯電によるクーロン力の発生を抑制でき、反射膜56,57の平行性をより確実に維持することができる。
【0090】
また、例えば工場で製造された波長可変干渉フィルター5を、光学モジュールや電子機器を組み立てる組み立てライン等まで運搬する場合に、光学フィルターデバイス600により保護された波長可変干渉フィルター5では、安全に運搬することが可能となる。
また、光学フィルターデバイス600は、筐体601の外周面に露出する外側端子部616が設けられているため、光学モジュールや電子機器に対して組み込む際にも容易に配線を実施することが可能となる。
【0091】
[他の実施の形態]
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0092】
例えば、上記第一及び第二実施形態では、フィルター平面視において、可動部分電極544の外周縁が固定部分電極543の外周縁の内側に配置される例、つまり、可動部分電極544が固定部分電極543よりも小さいサイズに形成される例を示したが、これに限らない。例えば、図12に示すように、固定部分電極543及び可動部分電極544が同一形状に形成され、フィルター平面視において、外周縁が完全に一致するように配置される構成としてもよい。
また、本発明では、各部分アクチュエーター55のフィルター平面視における面積が同一面積で、かつ、各部分アクチュエーター55の重心点が仮想円Pの円周上において等角度間隔で配置される条件が満たされていれば、固定電極541や可動電極542の形状は特に限定されない。
例えば、固定部分電極543の長さ寸法L1が可動部分電極544の長さ寸法L2よりも大きく、固定部分電極543の幅寸法D1が可動部分電極544の幅寸法D2より小さい構成であってもよい。また、各固定部分電極543がそれぞれ異なる形状に形成され、各可動部分電極544がそれぞれ異なる形状に形成される構成であってもよい。これらの場合でも、上記条件が満たされていれば、各部分アクチュエーターに作用する静電引力Fを均一にすることができ、可動部521の傾斜を抑制できる。
【0093】
上記第一及び第二実施形態では、本発明の第二基板の可動領域として、可動部521及び保持部522により構成される例を示したが、これに限定されない。例えば、第二基板として、保持部522が設けられない、均一厚みの板状部材であってもよい。この場合、第二基板の基板厚み方向から見た平面視において、可動反射膜58の中心点を中心に、第二基板が第一基板側に撓むように、静電アクチュエーターが設けられることが好ましい。すなわち、可動領域の重心点を、可動反射膜58の中心点に設定することが好ましい。
【0094】
また、上記第一及び第二実施形態では、ダイヤフラム状の保持部522を例示するが、例えば、可動部の中心に対して等角度間隔に配置された複数の梁構造を有する保持部が設けられる構成などとしてもよい。
この場合、梁状保持部が等角度間隔で配置される構成とすることで、保持部が撓んだ際の応力バランスを均一にでき、可動部の傾斜を抑えることができる。また、この場合、静電アクチュエーターは、各梁状保持部の位置に対応して部分アクチュエーターが配置される構成とすればよい。
【0095】
第一実施形態において、部分アクチュエーター55が3つ設けられる構成例を示したが、更に多くの部分アクチュエーター55が直列接続される構成としてもよい。
同様に、第二実施形態において、第一静電アクチュエーター54A及び第二静電アクチュエーター54Bが、それぞれ2つの部分アクチュエーター55を有する例を示すが、例えば、図13に示すように、さらに多くの部分アクチュエーター55を有する構成としてもよい。図13に示す例では、第一静電アクチュエーター54Aは、第一固定部分電極543D1及び第一可動部分電極544D1により構成される第一部分アクチュエーター55D1、第一固定部分電極543D2及び第一可動部分電極544D2により構成される第一部分アクチュエーター55D2、及び第一固定部分電極543D3及び第一可動部分電極544D3により構成される第一部分アクチュエーター55D3を有する。また、第二静電アクチュエーター54Bは、第二固定部分電極543E1及び第二可動部分電極544E1により構成される第二部分アクチュエーター55E1、第二固定部分電極543E2及び第二可動部分電極544E2により構成される第二部分アクチュエーター55E2、及び第二固定部分電極543E3及び第二可動部分電極544E3により構成される第二部分アクチュエーター55E3を有する。
【0096】
また、第二実施形態において、第一静電アクチュエーター54Aと第二静電アクチュエーター54Bとが、並列に接続される例を示したが、更に多くの静電アクチュエーターが並列接続されてもよい。例えば、図14に示すように、第一静電アクチュエーター54A、第二静電アクチュエーター54B、及び第三静電アクチュエーター54Cが並列に接続されていてもよい。この図14に示す例では、第三静電アクチュエーター54Cは、第三固定部分電極543F1及び第三可動部分電極544F1により構成される第三部分アクチュエーター55F1、及び第三固定部分電極543F2及び第三可動部分電極544F2により構成される第三部分アクチュエーター55F2を有する。
【0097】
第二実施形態において、第一静電アクチュエーター54Aの第一部分アクチュエーター55D1,55D2と、第二静電アクチュエーター54Bの第二部分アクチュエーター55E1,55E2とが、同一形状となる構成を示したが、これに限定されない。例えば、第一部分アクチュエーター55D1(55D2)と、第二部分アクチュエーター55E1(55E2)とが、フィルター平面視において異なる形状、面積に形成されていてもよい。
【0098】
上記第一及び第二実施形態では、波長可変干渉フィルター5、5Aとして、第二基板である可動基板52に可動部521が設けられ、可動基板52の可動部521が固定基板51側に向かって変位する例を示したが、これに限らない。例えば、固定基板51にも可動部が設けられ、この可動部が可動基板52側に変位可能な構成などとしてもよい。
【0099】
上記第二実施形態において、第一可動部分電極544D同士を接続するために、リング状の内側可動接続電極547Aを用い、第二可動部分電極544E同士を接続するために、リング状の外側可動接続電極548Aを用いたがこれに限定されない。すなわち、第一可動部分電極544D同士が接続される構成、第二可動部分電極544E同士が接続される構成であれば、いかなる形状の接続電極が形成されていてもよい。ただし、保持部522上に接続電極を形成する場合、保持部522の撓みを均一にして、可動部521を平行に維持する必要がある。したがって、基板中心(可動部521の中心)に対して点対称となる形状に接続電極を設けることが好ましく、上記第二実施形態のように、仮想円Pと同心となるリング状に形成することで、保持部522に対する応力バランスを均一に保つことができる。
【0100】
上記第一実施形態及び第二実施形態において、可動電極542が可動部521の可動面521Aに設けられる例を示したが、これに限定されない。例えば、可動電極542が保持部522の固定基板51に対向する面に設けられる構成としてもよい。ただし、保持部522上に可動電極542を形成すると、可動電極542の膜応力の影響により撓むことが考えられる。この場合、保持部522の可動電極542を設けた面とは反対側面に、可動電極542の膜応力を相殺するための撓み防止膜を設けたり、可動電極542として、膜応力の作用方向が異なる複数の電極層(引張応力を有する電極層及び圧縮応力を有する電極層)により構成したりすることで、膜応力の影響を低減すればよい。
【0101】
また、本発明の電子機器として、第一実施形態において測色装置1を例示したが、その他、様々な分野により本発明の波長可変干渉フィルター、光学フィルターデバイス、光学モジュール、電子機器を用いることができる。
例えば、特定物質の存在を検出するための光ベースのシステムとして用いることができる。このようなシステムとしては、例えば、本発明の波長可変干渉フィルターを用いた分光計測方式を採用して特定ガスを高感度検出する車載用ガス漏れ検出器や、呼気検査用の光音響希ガス検出器等のガス検出装置を例示できる。
このようなガス検出装置の一例を以下に図面に基づいて説明する。
【0102】
図15は、波長可変干渉フィルターを備えたガス検出装置の一例を示す概略図である。
図16は、図15のガス検出装置の制御系の構成を示すブロック図である。
このガス検出装置100は、図15に示すように、センサーチップ110と、吸引口120A、吸引流路120B、排出流路120C、及び排出口120Dを備えた流路120と、本体部130と、を備えて構成されている。
本体部130は、流路120を着脱可能な開口を有するセンサー部カバー131、排出手段133、筐体134、光学部135、フィルター136、波長可変干渉フィルター5、及び受光素子137(検出部)等を含む検出装置と、検出された信号を処理し、検出部を制御する制御部138、電力を供給する電力供給部139等から構成されている。また、光学部135は、光を射出する光源135Aと、光源135Aから入射された光をセンサーチップ110側に反射し、センサーチップ側から入射された光を受光素子137側に透過するビームスプリッター135Bと、レンズ135C,135D,135Eと、により構成されている。なお、波長可変干渉フィルター5の代わりに、波長可変干渉フィルター5Aや光学フィルターデバイス600を配置してもよい。
また、図16に示すように、ガス検出装置100の表面には、操作パネル140、表示部141、外部とのインターフェイスのための接続部142、電力供給部139が設けられている。電力供給部139が二次電池の場合には、充電のための接続部143を備えてもよい。
さらに、ガス検出装置100の制御部138は、図16に示すように、CPU等により構成された信号処理部144、光源135Aを制御するための光源ドライバー回路145、波長可変干渉フィルター5を制御するための電圧制御部146、受光素子137からの信号を受信する受光回路147、センサーチップ110のコードを読み取り、センサーチップ110の有無を検出するセンサーチップ検出器148からの信号を受信するセンサーチップ検出回路149、及び排出手段133を制御する排出ドライバー回路150などを備えている。
【0103】
次に、上記のようなガス検出装置100の動作について、以下に説明する。
本体部130の上部のセンサー部カバー131の内部には、センサーチップ検出器148が設けられており、このセンサーチップ検出器148でセンサーチップ110の有無が検出される。信号処理部144は、センサーチップ検出器148からの検出信号を検出すると、センサーチップ110が装着された状態であると判断し、表示部141へ検出動作を実施可能な旨を表示させる表示信号を出す。
【0104】
そして、例えば利用者により操作パネル140が操作され、操作パネル140から検出処理を開始する旨の指示信号が信号処理部144へ出力されると、まず、信号処理部144は、光源ドライバー回路145に光源作動の信号を出力して光源135Aを作動させる。光源135Aが駆動されると、光源135Aから単一波長で直線偏光の安定したレーザー光が射出される。また、光源135Aには、温度センサーや光量センサーが内蔵されており、その情報が信号処理部144へ出力される。そして、信号処理部144は、光源135Aから入力された温度や光量に基づいて、光源135Aが安定動作していると判断すると、排出ドライバー回路150を制御して排出手段133を作動させる。これにより、検出すべき標的物質(ガス分子)を含んだ気体試料が、吸引口120Aから、吸引流路120B、センサーチップ110内、排出流路120C、排出口120Dへと誘導される。なお、吸引口120Aには、除塵フィルター120A1が設けられ、比較的大きい粉塵や一部の水蒸気などが除去される。
【0105】
また、センサーチップ110は、金属ナノ構造体が複数組み込まれ、局在表面プラズモン共鳴を利用したセンサーである。このようなセンサーチップ110では、レーザー光により金属ナノ構造体間で増強電場が形成され、この増強電場内にガス分子が入り込むと、分子振動の情報を含んだラマン散乱光、及びレイリー散乱光が発生する。
これらのレイリー散乱光やラマン散乱光は、光学部135を通ってフィルター136に入射し、フィルター136によりレイリー散乱光が分離され、ラマン散乱光が波長可変干渉フィルター5に入射する。そして、信号処理部144は、電圧制御部146を制御し、波長可変干渉フィルター5に印加する電圧を調整し、検出対象となるガス分子に対応したラマン散乱光を波長可変干渉フィルター5で分光させる。この後、分光した光が受光素子137で受光されると、受光量に応じた受光信号が受光回路147を介して信号処理部144に出力される。
信号処理部144は、上記のようにして得られた検出対象となるガス分子に対応したラマン散乱光のスペクトルデータと、ROMに格納されているデータとを比較し、目的のガス分子か否かを判定し、物質の特定をする。また、信号処理部144は、表示部141にその結果情報を表示させたり、接続部142から外部へ出力したりする。
【0106】
なお、上記図15及び図16において、ラマン散乱光を波長可変干渉フィルター5により分光して分光されたラマン散乱光からガス検出を行うガス検出装置100を例示したが、ガス検出装置として、ガス固有の吸光度を検出することでガス種別を特定するガス検出装置として用いてもよい。この場合、センサー内部にガスを流入させ、入射光のうちガスにて吸収された光を検出するガスセンサーを本発明の光学モジュールとして用いる。そして、このようなガスセンサーによりセンサー内に流入されたガスを分析、判別するガス検出装置を本発明の電子機器とする。このような構成でも、波長可変干渉フィルターを用いてガスの成分を検出することができる。
【0107】
また、特定物質の存在を検出するためのシステムとして、上記のようなガスの検出に限られず、近赤外線分光による糖類の非侵襲的測定装置や、食物や生体、鉱物等の情報の非侵襲的測定装置等の、物質成分分析装置を例示できる。
以下に、上記物質成分分析装置の一例として、食物分析装置を説明する。
【0108】
図17は、波長可変干渉フィルター5を利用した電子機器の一例である食物分析装置の概略構成を示す図である。
この食物分析装置200は、図17に示すように、検出器210(光学モジュール)と、制御部220と、表示部230と、を備えている。検出器210は、光を射出する光源211と、測定対象物からの光が導入される撮像レンズ212と、撮像レンズ212から導入された光を分光する波長可変干渉フィルター5と、分光された光を検出する撮像部213(検出部)と、を備えている。なお、波長可変干渉フィルター5に代えて、波長可変干渉フィルター5Aや光学フィルターデバイス600が配置されてもよい。
また、制御部220は、光源211の点灯・消灯制御、点灯時の明るさ制御を実施する光源制御部221と、波長可変干渉フィルター5を制御する電圧制御部222と、撮像部213を制御し、撮像部213で撮像された分光画像を取得する検出制御部223と、信号処理部224と、記憶部225と、を備えている。
【0109】
この食物分析装置200は、システムを駆動させると、光源制御部221により光源211が制御されて、光源211から測定対象物に光が照射される。そして、測定対象物で反射された光は、撮像レンズ212を通って波長可変干渉フィルター5に入射する。波長可変干渉フィルター5は電圧制御部222の制御により所望の波長を分光可能な電圧が印加されており、分光された光が、例えばCCDカメラ等により構成される撮像部213で撮像される。また、撮像された光は分光画像として、記憶部225に蓄積される。また、信号処理部224は、電圧制御部222を制御して波長可変干渉フィルター5に印加する電圧値を変化させ、各波長に対する分光画像を取得する。
【0110】
そして、信号処理部224は、記憶部225に蓄積された各画像における各画素のデータを演算処理し、各画素におけるスペクトルを求める。また、記憶部225には、例えばスペクトルに対する食物の成分に関する情報が記憶されており、信号処理部224は、求めたスペクトルのデータを、記憶部225に記憶された食物に関する情報を基に分析し、検出対象に含まれる食物成分、及びその含有量を求める。また、得られた食物成分及び含有量から、食物カロリーや鮮度等をも算出することができる。さらに、画像内のスペクトル分布を分析することで、検査対象の食物の中で鮮度が低下している部分の抽出等をも実施することができ、さらには、食物内に含まれる異物等の検出をも実施することができる。
そして、信号処理部224は、上述のようにして得られた検査対象の食物の成分や含有量、カロリーや鮮度等の情報を表示部230に表示させる処理をする。
【0111】
また、図17において、食物分析装置200の例を示すが、略同様の構成により、上述したようなその他の情報の非侵襲的測定装置としても利用することができる。例えば、血液等の体液成分の測定、分析等、生体成分を分析する生体分析装置として用いることができる。このような生体分析装置としては、例えば血液等の体液成分を測定する装置として、エチルアルコールを検知する装置とすれば、運転者の飲酒状態を検出する酒気帯び運転防止装置として用いることができる。また、このような生体分析装置を備えた電子内視鏡システムとしても用いることができる。
さらには、鉱物の成分分析を実施する鉱物分析装置としても用いることができる。
【0112】
さらには、本発明の波長可変干渉フィルター、光学モジュール、電子機器としては、以下のような装置に適用することができる。
例えば、各波長の光の強度を経時的に変化させることで、各波長の光でデータを伝送させることも可能であり、この場合、光学モジュールに設けられた波長可変干渉フィルターにより特定波長の光を分光し、受光部で受光させることで、特定波長の光により伝送されるデータを抽出することができ、このようなデータ抽出用光学モジュールを備えた電子機器により、各波長の光のデータを処理することで、光通信を実施することもできる。
【0113】
また、電子機器としては、本発明の波長可変干渉フィルターにより光を分光することで、分光画像を撮像する分光カメラ、分光分析機などにも適用できる。このような分光カメラの一例として、波長可変干渉フィルターを内蔵した赤外線カメラが挙げられる。
図18は、分光カメラの概略構成を示す模式図である。分光カメラ300は、図18に示すように、カメラ本体310と、撮像レンズユニット320と、撮像部330(検出部)とを備えている。
カメラ本体310は、利用者により把持、操作される部分である。
撮像レンズユニット320は、カメラ本体310に設けられ、入射した画像光を撮像部330に導光する。また、この撮像レンズユニット320は、図18に示すように、対物レンズ321、結像レンズ322、及びこれらのレンズ間に設けられた波長可変干渉フィルター5を備えて構成されている。なお、波長可変干渉フィルター5に代えて、波長可変干渉フィルター5Aや光学フィルターデバイス600が配置されてもよい。
撮像部330は、受光素子により構成され、撮像レンズユニット320により導光された画像光を撮像する。
このような分光カメラ300では、波長可変干渉フィルター5により撮像対象となる波長の光を透過させることで、所望波長の光の分光画像を撮像することができる。
【0114】
さらには、本発明の波長可変干渉フィルターをバンドパスフィルターとして用いてもよく、例えば、発光素子が射出する所定波長域の光のうち、所定の波長を中心とした狭帯域の光のみを波長可変干渉フィルターで分光して透過させる光学式レーザー装置としても用いることができる。
また、本発明の波長可変干渉フィルターを生体認証装置として用いてもよく、例えば、近赤外領域や可視領域の光を用いた、血管や指紋、網膜、虹彩などの認証装置にも適用できる。
【0115】
さらには、光学モジュール及び電子機器を、濃度検出装置として用いることができる。この場合、波長可変干渉フィルターにより、物質から射出された赤外エネルギー(赤外光)を分光して分析し、サンプル中の被検体濃度を測定する。
【0116】
上記に示すように、本発明の波長可変干渉フィルター、光学モジュール、及び電子機器は、入射光から所定の光を分光するいかなる装置にも適用することができる。そして、本発明の波長可変干渉フィルターは、上述のように、1デバイスで複数の波長を分光させることができるため、複数の波長のスペクトルの測定、複数の成分に対する検出を精度よく実施することができる。したがって、複数デバイスにより所望の波長を取り出す従来の装置に比べて、光学モジュールや電子機器の小型化を促進でき、例えば、携帯用や車載用の光学デバイスとして好適に用いることができる。
【0117】
その他、本発明の実施の際の具体的な構造は、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造などに適宜変更できる。
【符号の説明】
【0118】
1…電子機器としての測色装置、3…光学モジュールとしての測色センサー、5…波長可変干渉フィルター、31…検出部、51…第一基板である固定基板、52…第二基板である可動基板、54…静電アクチュエーター、54A…第一静電アクチュエーター、54B…第二静電アクチュエーター、55(55A,55B,55C)…部分アクチュエーター、55D(55D1,55D2)…第一部分アクチュエーター、55E(55E1,55E2)…第二部分アクチュエーター、56…第一反射膜である固定反射膜、57…第二反射膜である可動反射膜、100…電子機器としてのガス検出装置、200…電子機器としての食物分析装置、300…電子機器としての分光カメラ、521…可動領域を構成する可動部、522…可動領域を構成する保持部、541…第一電極である固定電極、542…第二電極である可動電極、543(543A,543B,543C)…第一部分電極である固定部分電極、543D(543D1,543D2)…第一部分電極である第一固定部分電極、543E(543E1,543E2)…第一部分電極である第二固定部分電極、544(544A,544B,544C)…第二部分電極である可動部分電極、544D(544D1,544D2)…第二部分電極である第一可動部分電極、544E(544E1,544E2)…第二部分電極である第二可動部分電極、600…光学フィルターデバイス、601…筐体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一基板と、
前記第一基板に対向して配置された第二基板と、
前記第一基板に設けられた第一反射膜と、
前記第二基板に設けられ、前記第一基板に対して進退可能な可動領域と、
前記第二基板の前記可動領域に設けられ、前記第一反射膜とギャップを介して対向する第二反射膜と、
前記第一基板に設けられた第一電極、及び前記第二基板に設けられて前記第一電極に対向する第二電極を備え、電圧印加により前記可動領域を前記第一基板に対して進退させる静電アクチュエーターと、を具備し、
前記第一電極は、複数の第一部分電極を備え、
前記第二電極は、複数の第二部分電極を備え、
前記第二部分電極は、それぞれ、前記複数の第一部分電極のいずれか一つに対応して設けられており、
前記第一基板及び前記第二基板を基板厚み方向から見た平面視において、前記第二部分電極は、少なくとも一部が対応する前記第一部分電極に重なり、
前記静電アクチュエーターは、前記平面視において、前記第一部分電極及び当該第一部分電極に対応する前記第二部分電極が重なる領域により構成された部分アクチュエーターを複数備え、
前記第一部分電極及び前記第二部分電極のうちのいずれか2つにより電圧印加用部分電極が構成され、
これらの複数の部分アクチュエーターは、前記平面視において同一面積を有し、かつ、各部分アクチュエーターの重心点が、前記可動領域の重心点を中心とした仮想円上において等角度間隔で配置され、
前記静電アクチュエーターにおいて、前記電圧印加用部分電極間で、前記複数の部分アクチュエーターが電気的に直列に接続された
ことを特徴とする波長可変干渉フィルター。
【請求項2】
請求項1に記載の波長可変干渉フィルターにおいて、
前記平面視において、前記部分アクチュエーターを構成する前記第一部分電極及び前記第二部分電極のうちいずれか一方の外周縁は、他方の外周縁の内側に位置する
ことを特徴とする波長可変干渉フィルター。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の波長可変干渉フィルターにおいて、
複数の前記第一部分電極は、前記平面視においてそれぞれ同一形状であり、
複数の前記第二部分電極は、前記平面視において、それぞれ同一形状である
ことを特徴とする波長可変干渉フィルター。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の波長可変干渉フィルターにおいて、
2つの前記電圧印加用部分電極は、前記仮想円上で、互いに隣り合って配置され、
前記静電アクチュエーターにおいて、2つの前記電圧印加用部分電極間で、前記仮想円の周方向に沿って配列された前記部分アクチュエーターが順に電気的に直列に接続された
ことを特徴とする波長可変干渉フィルター。
【請求項5】
請求項1からは請求項3のいずれかに記載の波長可変干渉フィルターにおいて、
前記静電アクチュエーターが複数設けられ、これらの静電アクチュエーターが電気的に並列に接続された
ことを特徴とする波長可変干渉フィルター。
【請求項6】
第一基板、前記第一基板に対向して配置された第二基板、前記第一基板に設けられた第一反射膜、前記第二基板に設けられ、前記第一基板に対して進退可能な可動領域、前記第二基板の前記可動領域に設けられ、前記第一反射膜とギャップを介して対向する第二反射膜、及び前記第一基板に設けられた第一電極、及び前記第二基板に設けられて前記第一電極に対向する第二電極を備え、電圧印加により前記可動領域を前記第一基板に対して進退させる静電アクチュエーターを備えた波長可変干渉フィルターと、
前記波長可変干渉フィルターを収納する筐体と、
を具備し、
前記第一電極は、複数の第一部分電極を備え、
前記第二電極は、複数の第二部分電極を備え、
前記第二部分電極は、それぞれ、前記複数の第一部分電極のいずれか一つに対応して設けられており、
前記第一基板及び前記第二基板を基板厚み方向から見た平面視において、前記第二部分電極は、少なくとも一部が対応する前記第一部分電極に重なり、
前記静電アクチュエーターは、前記平面視において、前記第一部分電極及び当該第一部分電極に対応する前記第二部分電極が重なる領域により構成された部分アクチュエーターを複数備え、
前記第一部分電極及び前記第二部分電極のうちのいずれか2つにより電圧印加用部分電極が構成され、
これらの複数の部分アクチュエーターは、前記平面視において同一面積を有し、かつ、各部分アクチュエーターの重心点が、前記可動領域の重心点を中心とした仮想円上において等角度間隔で配置され、
前記静電アクチュエーターにおいて、前記電圧印加用部分電極間で、前記複数の部分アクチュエーターが電気的に直列に接続された
ことを特徴とする光学フィルターデバイス。
【請求項7】
第一基板と、
前記第一基板に対向して配置された第二基板と、
前記第一基板に設けられた第一反射膜と、
前記第二基板に設けられ、前記第一基板に対して進退可能な可動領域と、
前記第二基板の前記可動領域に設けられ、前記第一反射膜とギャップを介して対向する第二反射膜と、
前記第一基板に設けられた第一電極、及び前記第二基板に設けられて前記第一電極に対向する第二電極を備え、電圧印加により前記可動領域を前記第一基板に対して進退させる静電アクチュエーターと、
前記波長可変干渉フィルターにより取り出された光を検出する検出部と、
を具備し、
前記第一電極は、複数の第一部分電極を備え、
前記第二電極は、複数の第二部分電極を備え、
前記第二部分電極は、それぞれ、前記複数の第一部分電極のいずれか一つに対応して設けられており、
前記第一基板及び前記第二基板を基板厚み方向から見た平面視において、前記第二部分電極は、少なくとも一部が対応する前記第一部分電極に重なり、
前記静電アクチュエーターは、前記平面視において、前記第一部分電極及び当該第一部分電極に対応する前記第二部分電極が重なる領域により構成された部分アクチュエーターを複数備え、
前記第一部分電極及び前記第二部分電極のうちのいずれか2つにより電圧印加用部分電極が構成され、
これらの複数の部分アクチュエーターは、前記平面視において同一面積を有し、かつ、各部分アクチュエーターの重心点が、前記可動領域の重心点を中心とした仮想円上において等角度間隔で配置され、
前記静電アクチュエーターにおいて、前記電圧印加用部分電極間で、前記複数の部分アクチュエーターが電気的に直列に接続された
ことを特徴とする光学モジュール。
【請求項8】
第一基板と、
前記第一基板に対向して配置された第二基板と、
前記第一基板に設けられた第一反射膜と、
前記第二基板に設けられ、前記第一基板に対して進退可能な可動領域と、
前記第二基板の前記可動領域に設けられ、前記第一反射膜とギャップを介して対向する第二反射膜と、
前記第一基板に設けられた第一電極、及び前記第二基板に設けられて前記第一電極に対向する第二電極を備え、電圧印加により前記可動領域を前記第一基板に対して進退させる静電アクチュエーターと、を具備し、
前記第一電極は、複数の第一部分電極を備え、
前記第二電極は、複数の第二部分電極を備え、
前記第二部分電極は、それぞれ、前記複数の第一部分電極のいずれか一つに対応して設けられており、
前記第一基板及び前記第二基板を基板厚み方向から見た平面視において、前記第二部分電極は、少なくとも一部が対応する前記第一部分電極に重なり、
前記静電アクチュエーターは、前記平面視において、前記第一部分電極及び当該第一部分電極に対応する前記第二部分電極が重なる領域により構成された部分アクチュエーターを複数備え、
前記第一部分電極及び前記第二部分電極のうちのいずれか2つにより電圧印加用部分電極が構成され、
これらの複数の部分アクチュエーターは、前記平面視において同一面積を有し、かつ、各部分アクチュエーターの重心点が、前記可動領域の重心点を中心とした仮想円上において等角度間隔で配置され、
前記静電アクチュエーターにおいて、前記電圧印加用部分電極間で、前記複数の部分アクチュエーターが電気的に直列に接続された
ことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2013−88468(P2013−88468A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−225892(P2011−225892)
【出願日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】