説明

波長変換装置、固体レーザ装置およびレーザシステム

【課題】安定したレーザ光を得る。
【解決手段】波長変換装置は、入射する第1のレーザ光を第2のレーザ光に波長変換して出力する波長変換部と、前記波長変換部を当該波長変換部の少なくとも1つの面側から冷却する冷却機構と、を備えてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、波長変換装置、固体レーザ装置およびレーザシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体リソグラフィプロセスに使用される典型的な紫外線光源エキシマレーザは、波長がおよそ248nmのKrFエキシマレーザと波長がおよそ193nmのArFエキシマレーザである。
【0003】
そうしたArFエキシマレーザの殆どは発振段レーザと増幅段を含む2ステージレーザシステムとして市場に供給されている。2ステージのArFエキシマレーザシステムの発振段レーザと増幅段の共通する主要な構成を説明する。発振段レーザは第1チャンバを有し、増幅段は第2チャンバを有する。それらの第1、第2チャンバ内にレーザガス(F、Ar、Ne、Xeの混合ガス)が封入されている。発振段レーザと増幅段はまた、前記レーザガスを励起するために電気エネルギーを供給する電源を有する。発振段レーザと増幅段とはそれぞれ電源を有することができるが、1台の電源を共有することもできる。前記第1チャンバ内には、それぞれが前記電源に接続された第1アノードと第1カソードとを含む第1放電電極が設置され、前記第2チャンバ内にも同様にそれぞれが前記電源に接続された第2アノードと第2カソードとを含む第2放電電極が設置されている。
【0004】
発振段レーザ特有の構成は、例えば狭帯域モジュールである。狭帯域モジュールは典型的にはひとつのグレーティングと少なくともひとつのプリズムビームエキスパンダとを含む。半透過ミラーと前記グレーティングとが光共振器を構成し、これらの半透過ミラーとグレーティングとの間に発振段レーザの前記第1チャンバが設置されている。
【0005】
前記第1放電電極の第1アノードと第1カソードとの間に放電が発生されると前記レーザガスが励起されて、その励起エネルギーを放出する際に光が発生する。その光が前記狭帯域モジュールによって波長選択されたレーザ光となって発振段レーザから出力される。
【0006】
増幅段が共振器構造を含むレーザである場合の2ステージレーザシステムをMOPOと言い、増幅段が共振器構造を含まずレーザではない場合の2ステージレーザシステムをMOPAと言う。前記発振段レーザからのレーザ光が前記増幅段の第2チャンバ内に存在するときに、前記第2放電電極の第2アノードと第2カソードとの間に放電を発生させる制御が行なわれる。これにより前記第2チャンバ内のレーザガスが励起されて、前記レーザ光が増幅されて増幅段から出力される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第6859305号明細書
【概要】
【0008】
本開示の一態様による波長変換装置は、入射する第1のレーザ光を第2のレーザ光に波長変換して出力する波長変換部と、前記波長変換部を当該波長変換部の少なくとも1つの面側から冷却する冷却機構と、を備えてもよい。
【0009】
本開示の他の態様による固体レーザ装置は、レーザ光を出力するレーザと、前記レーザ光を増幅する増幅部と、増幅後の前記レーザ光を波長変換する上述の波長変換装置と、を備えてもよい。
【0010】
本開示の他の態様によるレーザシステムは、上述の固体レーザ装置と、前記固体レーザ装置から出力されたレーザ光を増幅する増幅装置と、を備えてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本開示のいくつかの実施形態を、単なる例として、添付の図面を参照して以下に説明する。
【図1A】図1Aは、本開示の実施の形態1による2ステージレーザ装置の一例の概略構成を示す。
【図1B】図1Bは、図1Aに示す増幅装置の一例の概略構成を示す。
【図2】図2は、本開示の実施の形態2による波長変換装置の概略構成を模式的に示す。
【図3】図3は、実施の形態2の第1例による冷却機構の概略構成を模式的に示す。
【図4】図4は、実施の形態2の第2例による冷却機構の概略構成を模式的に示す。
【図5】図5は、図4におけるヒートシンクの概略構成を示す斜視図である。
【図6】図6は、実施の形態2の第3例による冷却機構の概略構成を模式的に示す。
【図7】図7は、実施の形態2の第4例による冷却機構の概略構成を模式的に示す。
【図8】図8は、図7におけるヒートシンクおよび高熱伝導部の概略構成を示す斜視図である。
【図9】図9は、実施の形態2の第5例による冷却機構の概略構成を模式的に示す。
【図10】図10は、本開示の実施の形態3の第1例による波長変換装置の概略構成を模式的に示す。
【図11】図11は、本開示の実施の形態3の第2例による波長変換装置の概略構成を模式的に示す。
【図12】図12は、本開示の実施の形態3の第3例による波長変換装置の概略構成を模式的に示す。
【図13】図13は、本開示の実施の形態4による波長変換装置の概略構成を模式的に示す。
【実施の形態】
【0012】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。以下に説明される実施形態は、本開示の一例を示すものであって、本開示の内容を限定するものではない。また、各実施形態で説明される構成及び動作の全てが本開示の構成及び動作として必須であるとは限らない。なお、同一の構成要素には同一の参照符号を付して、重複する説明を省略する。なお、以下の説明では、下記目次の流れに沿って説明する。
【0013】
目次
1.概要
2.用語の説明
3.波長変換素子を有する固体レーザ装置とArF増幅器とを備えたレーザシステム(実施の形態1)
3.1 構成
3.2 動作
4.非線形結晶の少なくとも1面の一部に冷却機構を設置した波長変換装置(実施の形態2)
4.1 構成
4.2 動作
4.3 作用
4.4 冷却機構の例
4.4.1 空冷方式(第1例)
4.4.2 周辺冷却方式(第2例)
4.4.3 少なくとも高反射膜を介した直接冷却方式(第3例)
4.4.4 高熱熱伝導性膜を介した冷却方式(第4例)
4.4.5 高反射膜と高熱熱伝導性膜を介した冷却方式(第5例)
5.複数のプリズムと冷却機構を組みあわせた波長変換装置(実施の形態3)
5.1 入射プリズムと出射プリズムと冷却機構の組合せ(第1例)
5.2 入射プリズムと出射プリズムと冷却機構の組合せ(第2例)
5.3 入射プリズムと出射プリズムと冷却機構の組合せ(第3例)
6.非線形結晶の端面から入射または出射させる場合の冷却機構を組合せた波長変換装置(実施の形態4)
【0014】
1.概要
以下で例示する実施の形態では、非線形光学結晶の表面が膜によりコートされ得る。この膜は、プリズムの表面にオプティカルコンタクトさせられ得る。
【0015】
2.用語の説明
KBBF結晶とは、化学式KBeBOで表される非線形光学結晶である。バースト発振とは、所定の期間に、所定の繰返し周波数で、パルスレーザ光を出力することである。光路とは、レーザ光が伝搬する経路のことである。
【0016】
3.波長変換素子を有する固体レーザ装置とArF増幅器とを備えたレーザシステム(実施の形態1)
3.1 構成
図1Aに本開示の実施の形態1による2ステージレーザ装置の一例の概略構成を示す。図1Bに、図1Aに示す増幅装置の一例の概略構成を示す。なお、図1Bは、図1Aに示す増幅装置3の断面とは異なる断面の概略構成を示す。
【0017】
図1Aおよび図1Bに示すように、2ステージレーザ装置(以下、レーザシステムという)1は、固体レーザ装置2と、増幅装置3とを含んでもよい。固体レーザ装置2は、たとえば波長変換素子を有してもよい。増幅装置3は、たとえば放電励起式ArFエキシマ増幅器であってよい。固体レーザ装置2と増幅装置3との間には、低コヒーレンス化光学システム4が設置されてもよい。低コヒーレンス化光学システム4としては、光学パルスストレッチャーやランダム位相板等のシステムを使用してよい。
【0018】
次に、固体レーザ装置2について説明する。固体レーザ装置2は、ポンピングレーザ5と、Ti:サファイアレーザ6と、増幅器7と、ビームスプリッタ81と、高反射ミラー82と、波長変換装置9と、高反射ミラー11とを含んでもよい。
【0019】
ポンピングレーザ5は、たとえば半導体レーザ励起Nd:YAGレーザの第2高調波光を出力するレーザであってもよい。Ti:サファイアレーザ6は、Ti:サファイア結晶と光共振器を含んでもよい。増幅器7は、Ti:サファイア結晶を含む増幅器であってよい。波長変換装置9は、第一波長変換素子91と第二波長変換素子92とを備えてもよい。第一波長変換素子91は、波長変換素子としてLBO結晶を含んでもよい。第二波長変換素子92は、波長変換素子としてKBBF結晶を含んでもよい。
【0020】
次いで、増幅装置3について説明する。増幅装置3は、チャンバ20と、一対の放電電極(アノード21およびカソード22)と、出力結合ミラー14と、高反射ミラー15、16、および17とを含んでもよい。チャンバ20内には、レーザガスが封入されていてもよい。このレーザガスは、Ar、Ne、F、またはXeの混合ガスでもよい。アノード21およびカソード22は、チャンバ20内に設置されてもよい。アノード21およびカソード22は、図1Bに示すように、紙面に沿った方向に間隔を開けて配置されてもよい。アノード21およびカソード22は、図1Bの紙面に対して垂直方向に間隔を開けて配列されてもよい。アノード21およびカソード22の間は、放電空間23であってよい。チャンバ20には、パルスレーザ光32を透過するウィンドウ18および19が取り付けてあってもよい。また、図示を省略した電源がチャンバ20の外に設置されていてもよい。
【0021】
出力結合ミラー14と高反射ミラー15、16、および17とは、リング光共振器を構成してもよい。出力結合ミラー14は、一部の光を透過し、一部の光を反射する素子であってもよい。
【0022】
3.2 動作
固体レーザ装置2は、波長がおよそ193nmのパルスレーザ光31を出力してもよい。低コヒーレンス化光学システム4は、パルスレーザ光31のコヒーレンシーを低下させてもよい。増幅装置3は、コヒーレンシーの低下したパルスレーザ光32を増幅してパルスレーザ光33として出力してもよい。パルスレーザ光33は、例えば図示していない半導体露光機へ送られて、露光処理に使用されてもよい。
【0023】
ポンピングレーザ5からは、波長がおよそ532nmの励起光(ポンピング光ともいう)51が出力されてもよい。励起光51の一部は、ビームスプリッタ81を透過してもよい。励起光51の他の一部は、ビームスプリッタ81で反射してもよい。ビームスプリッタ81を透過した励起光51aは、Ti:サファイアレーザ6のTi:サファイア結晶を励起してもよい。励起されたTi:サファイアレーザ6からは、波長がおよそ773.6nmのパルスレーザ光31aが出力されてもよい。Ti:サファイアレーザ6は、図示しない波長選択素子を備える光共振器を含んでもよい。このTi:サファイアレーザ6からは、波長選択素子によってスペクトル幅が狭帯域化されたパルスレーザ光31aが出力されてもよい。
【0024】
一方、ポンピングレーザ5から出力された励起光51のうち、ビームスプリッタ81で反射した励起光51bは、さらに高反射ミラー82で反射されてもよい。この反射された励起光51bは、Ti:サファイアの増幅器7に入射し、これが備えるTi:サファイア結晶を励起してもよい。増幅器7はその励起エネルギーによってTi:サファイアレーザ6から出力されたパルスレーザ光31aを増幅してもよい。この結果、増幅器7からは、波長がおよそ773.6nmのパルスレーザ光31bが出力されてもよい。
【0025】
Ti:サファイアの増幅器7から出力されたパルスレーザ光31bは、波長変換装置9に入射してもよい。波長変換装置9に入射したパルスレーザ光31bは、まず、第一波長変換素子91に入射してもよい。そして、パルスレーザ光31b、非線形光学結晶であるLBO結晶を透過することで、波長がおよそ386.8nm(前記773.6nmの1/2)のパルスレーザ光31bに変換されてもよい。つぎに、波長変換後のパルスレーザ光31bは、第二波長変換素子92に入射してもよい。そして、パルスレーザ光31bは、非線形光学結晶であるKBBF結晶を透過することで、波長がおよそ193.4nm(前記386.8nmの1/2)のパルスレーザ光31にさらに変換されてもよい。
【0026】
KBBF結晶を透過後のパルスレーザ光31は、高反射ミラー11によって進行方向を変えられて、低コヒーレンス化光学システム4に入射してもよい。パルスレーザ光31のコヒーレンスは、低コヒーレンス化光学システム4を透過することによって低下してもよい。そのコヒーレンスが低下したパルスレーザ光32は増幅装置3に入射してもよい。
【0027】
チャンバ20内のアノード21とカソード22に電気的に接続された電源は、アノード21およびカソード22間に電位差を加えてもよい。これにより、アノード21およびカソード22間で放電が発生してもよい。この電位差は、パルスレーザ光32が放電空間23内に存在するときに放電空間23に放電を生じさせることが可能なタイミングで、アノード21およびカソード22間に与えられてもよい。
【0028】
低コヒーレンス化光学システム4を出射したパルスレーザ光32の一部は、出力結合ミラー14を透過して、高反射ミラー15を反射してもよい。このパルスレーザ光32は、ウィンドウ18を透過して、アノード21とカソード22との間の放電空間23へ進行してもよい。パルスレーザ光32が放電空間23内に存在するときに放電空間23に放電を生じさせる制御が行われることによって、そのパルスレーザ光32が増幅されてもよい。増幅されたパルスレーザ光32は、ウィンドウ19を介してチャンバ20から出射してもよい。出射したパルスレーザ光32は、高反射ミラー16および17を高反射して、再びウィンドウ19を介して、チャンバ20内の放電空間23へ進行してもよい。そして、このパルスレーザ光32は、今度はウィンドウ18を介してチャンバ20から出射してもよい。出射したパルスレーザ光32は、出力結合ミラー14に入射してもよい。このパルスレーザ光32の一部は、出力結合ミラー14を透過して、パルスレーザ光33として増幅装置3から出射してもよい。パルスレーザ光32の他の一部は、出力結合ミラー14で反射することで、フィードバック光として、再びリング光共振器中に戻されてもよい。
【0029】
本説明では、増幅装置3がリング光共振器を含む場合を例示したが、この例に限定されるものではない。たとえば、増幅装置3は、増幅器に光共振器が配置されたファブリーペロー型共振器を含んでもよい。
【0030】
なお、実施の形態1では、固体レーザの波長変換装置9及びそれを用いたレーザシステム1が例示されている。したがって、図1Aにおける低コヒーレンス化光学システム4及び増幅装置3等は、本開示の必須の構成ではない。また、波長変換装置9によって波長変換する前のパルスレーザ光31bは、Ti:サファイアレーザ6を含むレーザ装置から出力されたレーザ光でなくともよい。
【0031】
4.非線形結晶の少なくとも1面の一部に冷却機構を設置した波長変換装置(実施の形態2)
つぎに、本開示の実施の形態2による波長変換装置について、図面を用いて詳細に説明する。ただし、実施の形態2では、実施の形態1において第二波長変換素子92として例示した部分をピックアップし、その構成をより具体的に説明する。なお、第一波長変換素子91についても、以下で例示する構成と同様としてもよい。
【0032】
4.1 構成
実施の形態2では、波長変換素子(たとえばKBBF結晶)の片面に少なくとも屈折率調節用の光学素子が接触する波長変換装置を例示する。屈折率調節用の光学素子としては、プリズムを例に挙げる。図2は、実施の形態2による波長変換装置101の概略構成を模式的に示す。図2に示すように、波長変換装置101は、プリズム110と、KBBF結晶120と、冷却機構130とを含んでもよい。
【0033】
プリズム110の材料は、たとえば合成石英であってもよい。その他にも、SiO結晶、溶融石英ガラス、CaF結晶、またはMgF結晶が用いられてもよい。特に、プリズム110の材料には、紫外レーザ光に強い、フッ化物系の材料が用いられるとよい。
【0034】
プリズム110は、たとえば垂直面および底面が直角三角形の直角プリズムであってもよい。以下では、説明の都合上、このプリズム110の3つの側面のうち、直角三角形の斜辺を含む側面をコンタクト面という。また、残りの2つの側面のうち、一方を入射面といい、他方を出射面という。
【0035】
プリズム110の入射面には、パルスレーザ光31bの反射を低減する反射防止膜(ARコート)111がコーティングされていてもよい。プリズム110の出射面には、少なくともパルスレーザ光31の反射を低減する反射防止膜(ARコート)112がコーティングされていてもよい。
【0036】
プリズム110のコンタクト面には、KBBF結晶120が設けられてもよい。プリズム110とKBBF結晶120との接触は、オプティカルコンタクトであってもよい。KBBF結晶120は、プリズム110に直接接触していてもよいし、不図示の膜を挟んで接触していてもよい。この膜は、プリズム110側に形成されていてもよいし、KBBF結晶120側に形成されていてもよい。また、この膜は、SiO、MgF、LaF、およびGdFのうち少なくとも1つを含む膜であってもよい。特に、膜の材料には、紫外レーザ光に強い、フッ化物系の材料が用いられるとよい。また、膜の材料には、プリズム110の材料と同系の材料が用いられるとよい。
【0037】
KBBF結晶120は、波長変換素子としての非線形結晶である。このKBBF結晶120は、波長変換素子としての他の非線形結晶に置き換えられてもよい。KBBF結晶120は、結晶軸D1がプリズム110のコンタクト面に対して略垂直となるように、プリズム110に対して固定されてもよい。以下では、説明の都合上、KBBF結晶120におけるプリズム110側の面を第1面といい、第1面と反対側の面を第2面という。
【0038】
KBBF結晶120の第2面側には、冷却機構130が設けられてもよい。冷却機構130は、KBBF結晶120を、これの少なくとも1つの面側から冷却すればよい。本例では、冷却機構130は、第2面側からKBBF結晶120を冷却する。
【0039】
4.2 動作
つづいて、図2に示す波長変換装置101の動作を説明する。図2に示す例では、パルスレーザ光31bが、反射防止膜111を介してプリズム110に入射してもよい。パルスレーザ光31bは、たとえば波長が386.8nmの2ω光であってもよい。また、パルスレーザ光31bは、偏光方向がKBBF結晶120の結晶軸D1に対して垂直(図2の紙面に対して垂直)な直線偏光の光であってもよい。プリズム110に入射したパルスレーザ光31bは、プリズム110を透過した後、KBBF結晶120に入射してもよい。ただし、プリズム110とKBBF結晶120との間に不図示の膜が介在する場合、パルスレーザ光31bは、この膜を透過した後、KBBF結晶120に第1面から入射してもよい。
【0040】
第1面からKBBF結晶120に入射したパルスレーザ光31bの一部は、KBBF結晶120中を伝播する途中で、たとえば波長が193.4nmの4ω光であるパルスレーザ光31に変換されてもよい。パルスレーザ光31は、偏光方向がKBBF結晶120の結晶軸D1と平行(図2の紙面に対して平行)な直線偏光の光であってもよい。変換されたパルスレーザ光31および残りのパルスレーザ光31bは、KBBF結晶120の第2面で高反射してもよい。たとえばKBBF結晶120の第2面が真空、気体(大気を含む)接触している場合、パルスレーザ光31bおよび31は、KBBF結晶120中のパルスレーザ光31bおよび31が第2面で高反射する角度で、KBBF結晶120の第1面に入射するとよい。なお、第2面における真空、気体(大気を含む)接触している領域は、少なくともパルスレーザ光31bおよび31を反射する領域であればよい。
【0041】
第2面で反射したパルスレーザ光31bおよび31は、再び、KBBF結晶120中を伝播してもよい。この際、2ω光であるパルスレーザ光31bと4ω光であるパルスレーザ光31との光路は、波長に対する屈折率の違いによって分離されてもよい。KBBF結晶120中を伝播する反射後のパルスレーザ光31bの一部は、パルスレーザ光31に変換されてもよい。
【0042】
その後、パルスレーザ光31bおよび31は、再びプリズム110に入射してもよい。この際、パルスレーザ光31bおよび31は、異なる光路でプリズム110に入射してもよい。その結果、パルスレーザ光31bおよび31は、異なる光路でプリズム110から反射防止膜112を介して出射してもよい。
【0043】
ここで、たとえばプリズム110をCaF結晶とした場合、その屈折率は1.44程度である。この場合、プリズム110のコンタクト面に対する入射面の仰角θ1を58°とし、コンタクト面に対する出射面の仰角θ2を32°とするとよい。このプリズム110の入射面に対してパルスレーザ光31bを0.9°の入射角φ1で入射させると、パルスレーザ光31bおよび31の両方がKBBF結晶120の第2面で高反射または全反射し得る。なお、この場合、反射後のパルスレーザ光31bは、40.3°の出射角φ3で、プリズム110の出射面から出射し得る。また、反射後のパルスレーザ光31は、30.2°の出射角φ2で、プリズム110の出射面から出射し得る。
【0044】
4.3 作用
実施の形態2によれば、KBBF結晶120の片面側を冷却機構130によって直接冷却できる。これにより、KBBF結晶120の冷却効率が改善され得る。その結果、光強度の高いパルスレーザ光31bを波長変換できるので、波長変換の効率が向上し得る。また、波長変換効率の低下を抑制し得る。さらに、KBBF結晶120の温度上昇を抑制できるので、KBBF結晶120の寿命を延ばすことが可能となる。
【0045】
4.4 冷却機構の例
つづいて、上述した冷却機構130を、具体的な構成を例に挙げて説明する。なお、以下の説明において、上記と同様の構成については、同一の符号を付し、その重複する説明を省略する。
【0046】
4.4.1 空冷方式(第1例)
まず、冷却機構130の第1例として、空冷式の冷却機構230を説明する。図3は、第1例による冷却機構230の概略構成を模式的に示す。図3に示すように、冷却機構230は、温度センサ231と、温度コントローラ232と、電源233と、モータ234と、ファン235とを備えてもよい。また、KBBF結晶120の第2面は、気体に触れていてもよい。この気体は、たとえば空気、窒素、HeおよびAr等の不活性ガスなど、清浄な気体であってもよい。
【0047】
温度センサ231は、KBBF結晶120の第2面に設けられてもよい。この際、温度センサ231は、第2面におけるパルスレーザ光31bおよび31を反射する領域以外の領域であってその近傍に配置されるとよい。温度センサ231で検出された温度値は、温度コントローラ232に入力されてもよい。
【0048】
モータ234の回転軸には、ファン235が取り付けられてもよい。ファン235は、KBBF結晶120の第2面に面するように配置されてもよい。モータ234は、電源233から供給された電力にしたがって、ファン235を回転させてもよい。これにより、KBBF結晶120の第2面へ、風FLが吹き付けられてもよい。
【0049】
温度コントローラ232は、入力された温度値に基づいて、電源233からモータ234へ電力を供給してもよい。温度コントローラ232は、KBBF結晶120による波長変換効率の低下が抑制できる温度、または、KBBF結晶120による波長変換効率が向上する温度となるように、電源233からモータ234へ電力を供給してもよい。
【0050】
第1例によれば、KBBF結晶120の反射面である第2面を気体との接触面とすることが可能となるため、第2面でのパルスレーザ光31bおよび31の反射率を向上させることができる。また、KBBF結晶120を第2面側から空冷できるので、KBBF結晶120の温度上昇を抑制できる。
【0051】
4.4.2 周辺冷却方式(第2例)
つぎに、冷却機構130の第2例として、液冷式の冷却機構330を説明する。図4は、第2例による冷却機構330の概略構成を模式的に示す。図5は、図4におけるヒートシンク331の概略構成を示す斜視図である。なお、以下の説明において、上記と同様の構成については、同一の符号を付し、その重複する説明を省略する。
【0052】
図4に示すように、冷却機構330は、温度センサ231と、温度コントローラ232と、チラー333と、配管334とを備えてもよい。配管334内には、たとえば液体状の冷却媒体335が流れてもよい。冷却媒体335は、たとえば純水であってもよい。
【0053】
ヒートシンク331は、KBBF結晶120の第2面に接触していてもよい。このヒートシンク331は、KBBF結晶120を冷却する冷却部材である。ヒートシンク331は、KBBF結晶120よりも高い熱伝導率を備えているとよい。ヒートシンク331は、たとえば銅、アルミニウムなどの金属製であってもよい。もしくは、ヒートシンク331は、たとえばダイヤモンドや炭化珪素などの材料を用いて構成されていてもよい。
【0054】
チラー333は、水などの冷却媒体335を冷却し、冷却後の冷却媒体335を配管334へ送り出してもよい。チラー333は、温度コントローラ232からの制御の下で、配管334内に送出する冷却媒体335の温度および流量の少なくとも一方を制御してもよい。配管334は、複数本であってもよい。配管334は、ヒートシンク331内部に配設されていてもよい。配管334内に送出された冷却媒体335がヒートシンク331内部の配管334を通ることで、ヒートシンク331が冷却され得る。この結果、KBBF結晶120が冷却され得る。チラー333は、配管335を循環して戻ってきた冷却媒体335を再び冷却して、配管334内へ送り出してもよい。
【0055】
図5に示すように、ヒートシンク331は、KBBF結晶120との接触面に、凹部331aを有してもよい。凹部331aは、窪みに限らず、ヒートシンク331を貫通する貫通孔であってもよい。凹部331aの開口形状は、パルスレーザ光31bおよび31のビーム断面形状と近似しているとよい。
【0056】
凹部331aは、KBBF結晶120の第2面における少なくともパルスレーザ光31bおよび31を反射する領域と対応する領域に設けられていてもよい。ヒートシンク331をKBBF結晶120に接触させることで凹部331a内に形成された空間内には、たとえば空気、窒素、HeおよびAr等の不活性ガスなど、清浄な気体が存在してもよい。もしくは、この空間内は、真空に保たれていてもよい。第2面における少なくともパルスレーザ光31bおよび31を反射する領域と接触する空間を気体雰囲気または真空とすることで、パルスレーザ光31bおよび31を第2面で高反射し得る。
【0057】
また、図5に示すように、ヒートシンク331におけるKBBF結晶120との接触面には、温度センサ231を収容する凹部231aが形成されていてもよい。
【0058】
第2例によれば、KBBF結晶120の第2面におけるパルスレーザ光31bおよび31を反射する領域以外の領域がヒートシンク311と接触しているため、KBBF結晶120を直接的に冷却し得る。これにより、KBBF結晶120の冷却効率を向上することができる。また、KBBF結晶120を主面である第2面側からヒートシンク331で直接冷却できるので、KBBF結晶120の温度上昇を効果的に抑制できる。
【0059】
4.4.3 少なくとも高反射膜を介した直接冷却方式(第3例)
つぎに、冷却機構130の第3例として、第2例による冷却機構330を変形した冷却機構430を説明する。図6は、第3例による冷却機構430の概略構成を模式的に示す。なお、以下の説明において、上記と同様の構成については、同一の符号を付し、その重複する説明を省略する。
【0060】
図4と図6とを比較すると明らかなように、第3例による冷却機構430は、第2例による冷却機構330と同様の構成を備えてもよい。ただし、冷却機構430では、第2例によるヒートシンク331が、凹部331aの無いヒートシンク431に置き換えられてもよい。また、冷却機構430は、高反射膜121をさらに備えてもよい。
【0061】
高反射膜121は、KBBF結晶120とヒートシンク431との間に設けられてもよい。高反射膜121は、KBBF結晶120の第2面に形成されたコーティング膜であってもよい。この場合、高反射膜121とヒートシンク431とは、オプティカルコンタクトを形成していてもよい。ただし、これに限定されない。たとえば、高反射膜121は、ヒートシンク431に形成されたコーティング膜であってもよい。この場合、高反射膜121とKBBF結晶120とは、密着しているとよい。さらに、高反射膜121は、ヒートシンク431にコーティングしてもよい。この場合、高反射膜121とKBBF結晶120とはオプティカルコンタクトを形成し、高反射膜121とヒートシンク431とは密着しているとよい。
【0062】
高反射膜121は、波長が386.8nm程度のS偏光のレーザ光(パルスレーザ光31b)と、波長が193.4nm程度のP偏光のレーザ光(パルスレーザ光31)とを高反射してもよい。この高反射膜121は、誘電体多層膜であってもよい。
【0063】
温度センサ231は、高反射膜121とヒートシンク431との間に設置されてもよい。この際、温度センサ231は、パルスレーザ光31bおよび31を反射する領域以外の領域であってその近傍に配置されるとよい。
【0064】
第3例によれば、パルスレーザ光31bおよび31の反射面であるKBBF結晶120の第2面に高反射膜121が設けられているため、より高い反射率でパルスレーザ光31bおよび31を反射し得る。これにより、より高いエネルギーのパルスレーザ光31を生成し得る。また、KBBF結晶120の第2面全体が比較的薄い高反射膜121を介してヒートシンク431と接触しているため、KBBF結晶120をより効率的に冷却し得る。これにより、KBBF結晶120の冷却効率を向上し得る。さらに、KBBF結晶120を主面である第2面側からヒートシンク431で冷却できるので、KBBF結晶120の温度上昇を効果的に抑制できる。
【0065】
4.4.4 高熱熱伝導性膜を介した冷却方式(第4例)
つぎに、冷却機構130の第4例として、第2例による冷却機構330を変形した冷却機構530を説明する。図7は、第4例による冷却機構530の概略構成を模式的に示す。図8は、図7におけるヒートシンク331および高熱伝導部122の概略構成を示す斜視図である。なお、以下の説明において、上記と同様の構成については、同一の符号を付し、その重複する説明を省略する。
【0066】
図4と図7とを比較すると明らかなように、第4例による冷却機構530は、第2例による冷却機構330と同様の構成を備えてもよい。また、冷却機構530は、高熱伝導部122をさらに備えてもよい。
【0067】
高熱伝導部122は、KBBF結晶120とヒートシンク331との間に設けられてもよい。高熱伝導部122は、KBBF結晶120の第2面に形成された膜であってもよい。この場合、高熱伝導部122とヒートシンク331とは、密着しているとよい。ただし、これに限定されない。たとえば、高熱伝導部122は、ヒートシンク331に形成された膜であってもよい。この場合、高熱伝導部122とKBBF結晶120とは、密着しているとよい。さらに、高熱伝導部122は、フィルム状のシート部材、板状の部材などであってもよい。この場合、高熱伝導部122は、KBBF結晶120およびヒートシンク331それぞれと密着しているとよい。
【0068】
高熱伝導部122は、KBBF結晶120よりも高い熱伝導率を有しているとよい。高熱伝導部122の材料は、ダイヤモンド、ダイヤモンドライクカーボン等であってもよい。
【0069】
図8に示すように、高熱伝導部122は、ヒートシンク331の凹部331aと位置整合する貫通孔122aを有していてもよい。高熱伝導部122をKBBF結晶120およびヒートシンク331でサンドウィッチすることで貫通孔122aおよび凹部331a内に形成された空間内には、たとえば空気、窒素、HeおよびAr等の不活性ガスなど、清浄な気体が存在してもよい。もしくは、この空間内は、真空に保たれていてもよい。貫通孔122aの開口形状は、パルスレーザ光31bおよび31のビーム断面形状と近似しているとよい。
【0070】
なお、第4例では、ヒートシンク331の代わりに、第3例による凹部331aの無いヒートシンク431を用いてもよい。この場合、貫通孔122aは、KBBF結晶120の第2面における少なくともパルスレーザ光31bおよび31を反射する領域と対応する領域に設けられていてもよい。また、貫通孔122aは、高熱伝導部122を貫通する孔に限らず、窪みであってもよい。
【0071】
第4例によれば、ヒートシンク331が、熱伝導率の高い高熱伝導部122を介してKBBF結晶120に密着しているため、KBBF結晶120をより効率的に冷却し得る。また、KBBF結晶120の温度分布を均一にすることができる。これにより、温度分布の偏りにより生じるクラックなどの破損を低減し得る。
【0072】
4.4.5 高反射膜と高熱熱伝導性膜を介した冷却方式(第5例)
つぎに、冷却機構130の第5例として、第3例による高反射膜121と第4例による高熱伝導部122とを組み合わせた冷却機構630を説明する。図9は、第5例による冷却機構630の概略構成を模式的に示す。なお、以下の説明において、上記と同様の構成については、同一の符号を付し、その重複する説明を省略する。
【0073】
図6、図7および図9を比較すると明らかなように、第5例による冷却機構630は、第3例による冷却機構430と同様の構成に加え、高熱伝導部122とをさらに備えてもよい。
【0074】
高反射膜121は、KBBF結晶120の第2面に設けられてもよい。高熱伝導部122は、高反射膜121とヒートシンク431との間に設けられてもよい。この高熱伝導部122は、第4例による高熱伝導部122と同様であってもよい。ただし、高熱伝導部122では、高熱伝導部122の貫通孔122aが省略されてもよい。
【0075】
第5例によれば、第3例による効果に加え、KBBF結晶120をより効率的に冷却し得る。また、第4例と同様に、KBBF結晶120の温度分布を均一にすることができるため、温度分布の偏りにより生じるクラックなどの破損を低減し得る。
【0076】
5.複数のプリズムと冷却機構を組みあわせた波長変換装置(実施の形態3)
つぎに、本開示の実施の形態3による波長変換装置について、図面を用いて詳細に説明する。実施の形態3では、実施の形態2と同様、実施の形態1において第二波長変換素子92として例示した部分をピックアップし、その構成をより具体的に説明する。なお、第一波長変換素子91についても、以下で例示する構成と同様としてもよい。
【0077】
上記した実施の形態2では、KBBF結晶120へ入射するパルスレーザ光31bに対する屈折率調節用の光学素子と、KBBF結晶120から出射するパルスレーザ光31bおよび31に対する屈折率調節用の光学素子とに、共通のプリズム110を用いた。これに対し、実施の形態3では、KBBF結晶120へ入射するパルスレーザ光31bと、KBBF結晶120から出射するパルスレーザ光31bおよび31とに対し、それぞれ個別の屈折率調節用光学素子を設けてもよい。以下、具体的な構成を例に挙げて説明する。
【0078】
5.1 入射プリズムと出射プリズムと冷却機構の組合せ(第1例)
図10は、実施の形態3の第1例による波長変換装置201の概略構成を模式的に示す。図10に示すように、波長変換装置201は、入射プリズム211と、出射プリズム221と、KBBF結晶120と、冷却機構130とを備えてもよい。
【0079】
入射プリズム211へは、パルスレーザ光31bが外部から入射してもよい。入射プリズム211は、入射したパルスレーザ光31bをKBBF結晶120へ導いてもよい。出射プリズム221へは、KBBF結晶120から出射したパルスレーザ光31bおよび31が入射してもよい。出射プリズム221は、入射したパルスレーザ光31bおよび31を外部へ出射してもよい。
【0080】
第1例では、KBBF結晶120に第1面から入射したパルスレーザ光31bが、KBBF結晶120の第2面で高反射した後、第1面から出射してもよい。そこで、入射プリズム211および出射プリズム221は、共にKBBF結晶120の第1面に配置されてもよい。
【0081】
KBBF結晶120に入射したパルスレーザ光31bの光路は、第2面への入射位置を含み且つ第2面と垂直である線を対称軸とした線対称となる。そこで、入射プリズム211と出射プリズム221とは、KBBF結晶120の第1面と垂直な面を鏡映面とした面対称となるように、第1面に配置されてもよい。
【0082】
入射プリズム211の入射面には、パルスレーザ光31bの反射を低減する反射防止膜(ARコート)212がコーティングされていてもよい。出射プリズム221の出射面には、少なくともパルスレーザ光31の反射を低減する反射防止膜(ARコート)222がコーティングされていてもよい。入射プリズム211および出射プリズム221とKBBF結晶120との接触は、オプティカルコンタクトであってもよい。KBBF結晶120は、入射プリズム211および出射プリズム221に直接接触していてもよいし、不図示の膜を挟んで接触していてもよい。この膜は、SiO、MgF、LaF、およびGdFのうち少なくとも1つを含む膜であってもよい。特に、出射プリズム221側の膜の材料には、紫外レーザ光に強い、フッ化物系の材料が用いられるとよい。また、膜の材料には、入射プリズム211および出射プリズム221の材料と同系の材料が用いられるとよい。
【0083】
第1例によれば、入射プリズム211および出射プリズム221を面対称に配置すればよいため、設計が容易となり得る。
【0084】
5.2 入射プリズムと出射プリズムと冷却機構の組合せ(第2例)
図11は、実施の形態3の第2例による波長変換装置202の概略構成を模式的に示す。図11に示すように、波長変換装置202は、入射プリズム211と、出射プリズム221と、KBBF結晶120と、冷却機構131および132とを備えてもよい。
【0085】
第2例では、KBBF結晶120に第1面から入射したパルスレーザ光31bが、KBBF結晶120の第2面で高反射し、さらにKBBF結晶120の第1面で高反射した後、第2面から出射してもよい。そこで、入射プリズム211は、KBBF結晶120の第1面に配置されてもよい。また、出射プリズム221は、KBBF結晶120の第2面に配置されてもよい。
【0086】
KBBF結晶120の第1面のうち、入射プリズム211が設けられていない領域には、冷却機構131が設けられてもよい。冷却機構131は、上述の冷却機構130と同様であってよい。また、KBBF結晶120の第2面のうち出射プリズム221が設けられていない領域には、冷却機構132が設けられてもよい。冷却機構132は、上述の冷却機構130と同様であってよい。
【0087】
第2例によれば、KBBF結晶120内を進行するパルスレーザ光31bの光路を長くすることが可能となるため、波長変換効率を向上することが可能となる。また、KBBF結晶120を第1面と第2面との両方から冷却することが可能となるため、効率よくKBBF結晶120を冷却することが可能となる。
【0088】
5.3 入射プリズムと出射プリズムと冷却機構の組合せ(第3例)
図12は、実施の形態3の第3例による波長変換装置203の概略構成を模式的に示す。図12に示すように、波長変換装置203は、入射プリズム211と、出射プリズム221と、KBBF結晶120と、冷却機構130および131とを備えてもよい。
【0089】
第2例では、KBBF結晶120に第1面から入射したパルスレーザ光31bが、KBBF結晶120の第2面で高反射し、さらにKBBF結晶120の第1面で高反射し、さらにまた第2面で高反射した後、第1面から出射してもよい。そこで、入射プリズム211および出射プリズム221は、KBBF結晶120の第1面に離間して配置されてもよい。
【0090】
KBBF結晶120の第1面のうち、入射プリズム211と出射プリズム221との間の領域には、冷却機構131が設けられてもよい。冷却機構131は、上述の冷却機構130と同様であってよい。また、KBBF結晶120の第2面には、上述の冷却機構130が設けられてもよい。
【0091】
第3例によれば、KBBF結晶120内を進行するパルスレーザ光31bの光路をより長くすることが可能となるため、波長変換効率を向上することが可能となる。また、KBBF結晶120を第1面と第2面との両方から冷却することが可能となるため、効率よくKBBF結晶120を冷却することが可能となる。
【0092】
6.非線形結晶の端面から入射または出射させる場合の冷却機構を組合せた波長変換装置(実施の形態4)
つぎに、本開示の実施の形態4による波長変換装置について、図面を用いて詳細に説明する。実施の形態4では、実施の形態2と同様、実施の形態1において第二波長変換素子92として例示した部分をピックアップし、その構成をより具体的に説明する。なお、第一波長変換素子91についても、以下で例示する構成と同様としてもよい。
【0093】
図13は、実施の形態4による波長変換装置301の概略構成を模式的に示す。図13に示すように、波長変換装置301は、KBBF結晶120と、冷却装置130Aおよび130Bとを備えてもよい。
【0094】
パルスレーザ光31bは、KBBF結晶120の端面から入射してもよい。以下、説明の都合上、この端面を入射端面という。KBBF結晶120内に進入したパルスレーザ光31bの一部は、KBBF結晶120内を伝播中にパルスレーザ光31に波長変換されてもよい。生成されたパルスレーザ光31および残りのパルスレーザ光31bは、KBBF結晶120の第1面および第2面で反射し、その後、入射端面と反対側の出射端面から出射してもよい。なお、入射端面および出射端面は、それぞれ第1面および第2面に対して略垂直であってもよい。
【0095】
KBBF結晶120の入射端面には、この端面に対してS偏光である波長が386.8nm(2ω)程度のパルスレーザ光31bの反射を抑制する反射防止膜(ARコート)321が設けられてもよい。一方、KBBF結晶120の出射端面には、この端面に対してS偏光であるパルスレーザ光31bと、この端面に対してP偏光であるパルスレーザ光31との反射を抑制する反射防止膜(ARコート)322が設けられてもよい。
【0096】
冷却装置130Aは、KBBF結晶120の第1面全体に設けられてもよい。冷却装置130Bは、KBBF結晶120の第2面全体に設けられてもよい。冷却装置130Aおよび130Bは、それぞれ上記の冷却装置130と同様であってもよい。
【0097】
実施の形態4によれば、KBBF結晶120内を進行するパルスレーザ光31bの光路をより長くすることが可能となるため、波長変換効率を向上することが可能となる。また、KBBF結晶120を対向する両主面全体から冷却することが可能となるため、効率よくKBBF結晶120を冷却することが可能となる。
【0098】
上記の説明は、制限ではなく単なる例示を意図したものである。従って、添付の特許請求の範囲を逸脱することなく本開示の実施形態に変更を加えることができることは、当業者には明らかであろう。
【0099】
本明細書及び添付の特許請求の範囲全体で使用される用語は、「限定的でない」用語と解釈されるべきである。例えば、「含む」又は「含まれる」という用語は、「含まれるものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。「有する」という用語は、「有するものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。また、本明細書、及び添付の特許請求の範囲に記載される不定冠詞「1つの」は、「少なくとも1つ」又は「1又はそれ以上」を意味すると解釈されるべきである。
【0100】
上述の実施形態においては、増幅器7が1つである例を示したが、増幅器7を複数使用してもよい。また、Ti:サファイアレーザ6と増幅器7は共通のポンピングレーザ5によってポンピングしているが、別々のポンピングレーザを使用してもよい。また、ポンピングレーザ5としてNd:YLFレーザあるいはNd:YVOレーザの第2高調波光を出力するレーザを使用してもよい。また、Ti:サファイアレーザ6の代わりにエルビウムドープト光ファイバレーザの第2高調波光を発生するレーザを使用してもよい。このレーザは、半導体レーザによってポンピングしてもよい。また、波長変換装置9は、本開示の構成に限定されるものではなく、波長変換装置9に入射される光を増幅装置3の増幅波長帯域の波長、例えば略193nmの波長の光に変換するものであればよい。例えば、波長変換装置9に含まれる非線形光学結晶としては、LBO結晶の代わりにCLBO結晶を使用してもよい。
【符号の説明】
【0101】
1 2ステージレーザ装置(レーザシステム)
2 固体レーザ装置
3 増幅装置
31、31a、32、33 パルスレーザ光
31b パルスレーザ光
4 低コヒーレンス化光学システム
5 ポンピングレーザ
51、51a、51b 励起光
6 Ti:サファイアレーザ
7 増幅器
81 ビームスプリッタ
82 高反射ミラー
9 波長変換装置
91 第一波長変換素子
92 第二波長変換素子
101、201、202、203、301 波長変換装置
110 プリズム
111、112、212、222、321、322 反射防止膜
120 KBBF結晶
121 高反射膜
122 高熱伝導部
122a 貫通孔
130、130A、130B、131、132 冷却機構
230、330、430、530、630 冷却機構
231 温度センサ
231a 凹部
232 温度コントローラ
233 電源
234 モータ
235 ファン
331、431 ヒートシンク
331a 凹部
333 チラー
334 配管
335 冷却媒体
D1 結晶軸
FL 風

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射する第1のレーザ光を第2のレーザ光に波長変換して出力する波長変換部と、
前記波長変換部を当該波長変換部の少なくとも1つの面側から冷却する冷却機構と、
を備える波長変換装置。
【請求項2】
前記波長変換部は、前記第1のレーザ光を前記第2のレーザ光に波長変換する非線形結晶を含み、
前記非線形結晶は、当該非線形結晶中を伝搬する前記第1および第2のレーザ光を少なくとも1回反射する少なくとも1つの反射面を備え、
前記冷却機構は、前記非線形結晶を前記反射面のうち少なくとも1つの反射面側から冷却する、
請求項1記載の波長変換装置。
【請求項3】
前記非線形結晶は、KBBFである、請求項1記載の波長変換装置。
【請求項4】
前記非線形結晶に対して前記第1のレーザ光が入射する入射面に接触する屈折率調節素子をさらに備える、請求項2記載の波長変換装置。
【請求項5】
前記非線形結晶は、前記屈折率調節素子との接触面にコーティング膜を備え、
前記接触面は、前記屈折率調節素子と前記コーティング膜とのオプティカルコンタクト面である、
請求項4記載の波長変換装置。
【請求項6】
前記屈折率調節素子は、プリズムを含む、請求項4記載の波長変換装置。
【請求項7】
前記波長変換部の温度を検出する温度センサと、
前記温度センサで検出された前記波長変換部の温度に基づいて、前記冷却機構を駆動する温度制御部と、
をさらに備える請求項1記載の波長変換装置。
【請求項8】
前記冷却機構は、前記波長変換部の少なくとも1つの面へ気体を吹き付ける空冷装置を含む、請求項1記載の波長変換装置。
【請求項9】
前記冷却機構は、
前記波長変換部の少なくとも1つの面と接触し、前記波長変換部よりも熱伝導率が大きい冷却部材と、
前記冷却部材を冷却する冷却装置と、
を備える、請求項1記載の波長変換装置。
【請求項10】
前記冷却部材は、内部に管を備え、
前記冷却装置は、前記管内に冷却水を流す、
請求項9記載の波長変換装置。
【請求項11】
前記波長変換部は、前記第1のレーザ光を前記第2のレーザ光に波長変換する非線形結晶を含み、
前記非線形結晶は、当該非線形結晶中を伝搬する前記第1および第2のレーザ光を少なくとも1回反射する少なくとも1つの反射面を備え、
前記冷却部材は、前記非線形結晶の前記反射面のうち少なくとも1つの反射面に接触する、
請求項9記載の波長変換装置。
【請求項12】
前記冷却部材は、前記非線形結晶との接触面の一部に凹部を有する、請求項11記載の波長変換装置。
【請求項13】
前記凹部は、前記非線形結晶の前記反射面における少なくとも前記第1および第2のレーザ光を反射する領域と対応する領域に設けられている、請求項12記載の波長変換装置。
【請求項14】
前記波長変換部は、前記非線形結晶の前記反射面における少なくとも前記第1および第2のレーザ光を反射する領域に高反射膜を備える、
請求項11記載の波長変換装置。
【請求項15】
前記波長変換部は、前記非線形結晶と前記冷却部材との間に、該非線形結晶よりも熱伝導率が大きい高熱伝導性部を備える、
請求項11記載の波長変換装置。
【請求項16】
前記高熱伝導性部は、コーティング膜、シート部材および板部材のいずれか1つを含む、請求項15記載の波長変換装置。
【請求項17】
前記高熱伝導性部は、前記非線形結晶と接触し、且つ前記非線形結晶との接触面の一部に凹部を有する、請求項15記載の波長変換装置。
【請求項18】
前記凹部は、前記非線形結晶の前記反射面における少なくとも前記第1および第2のレーザ光を反射する領域と対応する領域に設けられている、請求項17記載の波長変換装置。
【請求項19】
前記波長変換部は、前記非線形結晶の前記反射面における少なくとも前記第1および第2のレーザ光を反射する領域に高反射膜を備える、
請求項15記載の波長変換装置。
【請求項20】
前記非線形結晶に対して前記第1のレーザ光が入射する領域に接触する第1屈折率調節素子と、
前記非線形結晶から前記第2のレーザ光が出射する領域に接触する第2屈折率調節素子と、
をさらに備える、請求項2記載の波長変換装置。
【請求項21】
前記第1屈折率調節素子は、前記非線形結晶に対して前記第1のレーザ光が入射する面の一部に接触し、
前記第2屈折率調節素子は、前記非線形結晶から前記第2のレーザ光が出射する面の一部に接触し、
前記冷却機構は、前記非線形結晶に対して前記第1のレーザ光が入射する前記面および前記非線形結晶から前記第2のレーザ光が出射する前記面の両方から前記非線形結晶を冷却する、
請求項20記載の波長変換装置。
【請求項22】
前記第1屈折率調節素子と前記第2屈折率調節素子とは、前記非線形結晶の同一面に離間して接触し、
前記冷却機構は、前記非線形結晶における前記第1および第2屈折率調節素子が接触する前記面と反対側の面側から前記非線形結晶を冷却し、且つ前記非線形結晶における前記第1屈折率調節素子および前記第2屈折率調節素子の間から当該非線形結晶を冷却する、
請求項20記載の波長変換装置。
【請求項23】
前記非線形結晶は、
前記第1のレーザ光が入射する入射面と、
前記入射面と略直交して交わり、互いに対向する2つの反射面と、
を備え、
前記冷却機構は、前記2つの反射面それぞれから前記非線形結晶を冷却する、
請求項2記載の波長変換装置。
【請求項24】
レーザ光を出力するレーザと、
前記レーザ光を増幅する増幅部と、
増幅後の前記レーザ光を波長変換する、請求項1記載の波長変換装置と、
を備える固体レーザ装置。
【請求項25】
請求項24記載の固体レーザ装置と、
前記固体レーザ装置から出力されたレーザ光を増幅する増幅装置と、
を備えるレーザシステム。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2013−41051(P2013−41051A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−177036(P2011−177036)
【出願日】平成23年8月12日(2011.8.12)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成21年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「省エネルギー革新技術開発事業/先導研究/リソグラフィ用ハイブリッドArFレーザシステムの研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(300073919)ギガフォトン株式会社 (227)
【Fターム(参考)】