説明

泥水濃縮システム及び濃縮泥水の制御方法

【課題】供給泥水の性状に合わせてアンダー泥水を貯留、搬出可能な高比重になるように調整し、デカンタの濃縮効率を向上させて、処理費を低減できる泥水濃縮システムを提供する。
【解決手段】供給泥水Bを濃縮デカンタ14内で分離し、オーバー泥水Cを排出し、アンダー泥水Aを濃縮スラリーとして再利用する泥水濃縮システム10において、オーバー泥水Cの排出側に設けられてオーバー泥水Cを常時満水状態に維持しつつ排出する満水調整管22と、供給泥水Bの供給側で供給泥水Bの流量Qfと密度ρsとを計測する第1の流量計Fx1及び密度計Dx1と、満水調整管22に設けられてオーバー泥水Cの流量Qoと密度ρoを計測する第2の流量計Fx2及び密度計Dx2と、供給泥水BのQf及びρsとオーバー泥水CのQo及びρoとに基づき、アンダー泥水Aの流量を演算し、かつ、アンダー泥水Aの密度を演算する演算部32とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、濃縮デカンタを用いた泥水濃縮システム及び濃縮泥水の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、地中連続壁工法や泥水式シールド工法等においては、地盤を掘削する際に、掘削壁面の安定を図る目的で、掘削部内に安定液として泥水を満たしながら行う泥水掘削工法が採用されている。
【0003】
このような泥水掘削に用いられる泥水は、掘削土砂と共に回収された後、その土砂混合泥水から土砂分を分離させ、土砂分を除去された泥水の一部は安定液として再利用されるようになっている。
【0004】
この土砂分離能が低いと、回収した泥水の再利用効率が低くなり、廃棄泥水が多くなり、この廃棄泥水は汚泥として扱われ、産業廃棄物として処分しなければならず、廃棄コストが高くつくこととなる。
【0005】
そのため、30ないし400Gの低遠心力で運転される低遠心分離器、すなわちデカンタにより土砂混合泥水から土砂礫等の固形物のみを分離させて、ベントナイト等有効泥水材料のみを含んだ安定液を回収することにより、泥水掘削工法における土砂分離を沈砂槽に頼ることなく効果的にかつ高レベルで行え、かつ大きな設備スペースを必要としない安定液の回収方法が提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平2−24476号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような安定液の回収方法に用いられるデカンタは、アンダー泥水が大気開放で、スラリー状から濃縮ケーキ状まで変化するため、直接アンダー泥水の比重、流量を計測するのが困難である。
【0007】
そのため、アンダー泥水の比重をマッドバランス計で適宜サンプリング計測し、流量は安濃宿スラリー槽の水位の変化を計測する方法を採用しているが、デカンタの運転制御が厳密に行えず、供給泥水の性状に合わせてアンダー泥水を貯留、搬出可能な高比重になるように制御するのが困難で、デカンタの濃縮効率を向上させ、電力等の運転費用、運搬費、処理費の低減を図るのが困難である。
【0008】
本発明の目的は、供給泥水の性状に合わせてアンダー泥水を貯留、搬出可能な高比重になるように調整し、デカンタの濃縮効率を向上させて、電力等の運転費用、運搬費、処理費の低減を図ることのできる泥水濃縮システム及び濃縮泥水の制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)前記目的を達成するため、本発明の泥水濃縮システムは、供給泥水を濃縮デカンタに供給し、前記濃縮デカンタ内で前記供給泥水をオーバー泥水とアンダー泥水とに分離し、前記オーバー泥水を排出し、前記アンダー泥水を濃縮スラリーとして再利用する泥水濃縮システムにおいて、
前記オーバー泥水の排出側に設けられて前記オーバー泥水を常時満水状態に維持しつつ排出する満水調整管と、
前記供給泥水の供給側に設けられて供給泥水の流量Qfと密度ρsとを計測する第1の流量計及び密度計と、
前記満水調整管に設けられてオーバー泥水の流量Qoと密度ρoを計測する第2の流量計及び密度計と、
前記供給泥水の流量Qf及び密度ρsと前記オーバー泥水の流量Qo及び密度ρoとに基づき、前記アンダー泥水の流量Quを、式:Qu=Qf−Qoにより演算し、かつ、アンダー泥水の密度ρuを、式:ρu=(Qf ρs−Qo ρo)/(Qf−Qo)により演算する演算部と、
を有することを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、大気開放となるオーバー泥水の排出側に満水調整管を設けてオーバー泥水を常時満水状態で排出可能とすることにより、オーバー泥水の流量及び密度をリアルタイムで計測することが可能となり、供給泥水の供給側に設けた第1の流量計及び密度計にて計測した供給泥水の流量及び密度と、満水調整官に設けた第2の流量計及び密度計にて計測したオーバー泥水の流量及び密度とからアンダー泥水の濃縮比重及び流量をリアルタイムで演算し、計画の濃縮比重と量になるように調整することが可能となり、濃縮デカンタの濃縮効率を向上させて、電力等の運転費用、運搬費、処理費の低減を図ることが可能となり、濃縮スラリー槽の貯留量も小さくなり、設備面積も小さくすることができる。
【0011】
(2)本発明の濃縮泥水の制御方法は、(1)記載の泥水濃縮システムにより演算されたアンダー泥水の流量Quと密度ρuとに基づき、
制御部により前記濃縮デカンタの内胴と外胴の差速を調整して、前記アンダー泥水の流量と密度を調整することを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、濃縮デカンタの内胴と外胴の差速を調整することにより、アンダー泥水が計画の濃縮比重と量になるように調整することができる。
【0013】
例えば、比重が小さい場合には差速を小さくなるように調整し、逆に比重が大きい場合には差速が大きくなるように調整すればよい。
【0014】
(3)本発明の他の濃縮泥水の制御方法は、(1)記載の泥水濃縮システムにより演算されたアンダー泥水の流量Quと密度ρuとに基づき、
制御部により前記濃縮デカンタへの前記供給泥水の供給量を調整して、前記アンダー泥水の流量と密度を調整することを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、濃縮デカンタへの供給泥水の供給量を調整することにより、例えば供給量を増やすと濃縮比重を小さく調整でき、逆に供給量を減らすと濃縮比重を大きく調整することができることとなる。
【0016】
(4)本発明のさらに他の濃縮泥水の制御方法は、(1)記載の泥水濃縮システムにより演算されたアンダー泥水の流量Quと密度ρuとに基づき、
制御部により前記濃縮デカンタの外胴の回転遠心力を調整して、前記アンダー泥水の分級点を調整することを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、濃縮デカンタの外胴の回転遠心力を調整することで、アンダー泥水の分級点を調整することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0019】
図1〜図3は、本発明の一実施の形態にかかる泥水濃縮システムを示す図である。
【0020】
図1は、本実施の形態にかかる泥水濃縮システムの概略図で、この泥水濃縮システム10は、例えば泥水式シールド工法に用いられるもので、図示せぬ送泥管からシールド掘進機のシールドチャンバー内に泥水が供給されて切羽の安定を図りながら掘削が行われ、掘削に用いられた泥水は掘削土砂と共に排泥管により泥水処理設備の振動ふるいに送られて土砂が除かれ、調整槽12に貯留されるようになっている。
【0021】
調整槽12内の泥水は、ポンプPにより供給泥水Bとして濃縮デカンタ14に送られ、濃縮デカンタ14によってオーバー泥水Cとアンダー泥水Aに分級され、オーバー泥水Cは調整槽12に戻され、濃縮スラリー槽16に貯留されて再利用されるようになっている。
【0022】
濃縮デカンタ14は、外胴18内にスクリューコンベア付きの内胴20を配設し、これら外胴18及び内胴20を電動機Mにて回転させて遠心力を生じさせると共に、内胴20を制動機Gにて制動して外胴18と内胴20に回転差を生じさせ、差速によって泥水を分級するようになっている。
【0023】
この濃縮デカンタ14に対する供給泥水Bの供給側には、第1の電磁流量計Fx1及びγ線密度計Dx1を設けて、図3(1)に示す供給泥水Bの流量Qfと密度ρsとを計測するようにしている。
【0024】
また、濃縮デカンタ14のオーバー泥水Cの排出側及びアンダー泥水Aの排出側は大気開放状態になっており、オーバー泥水Cの排出側には満水調整管22を配設している。
【0025】
この満水調整官22は、図2に示すように、オーバー泥水Cの受け口24と、調整槽16への排出口26の手前部28とが中間部30よりも高く、しかも、受け口24が手前部28よりも若干高く形成され、オーバー泥水Cを常時満水状態に維持しつつ排出し得るようになっている。
【0026】
そして、この満水調整管22の途中に第2の電磁流量計Fx2及びγ線密度計Dx2を設けて、図3(1)に示すオーバー泥水Cの流量Qoと密度ρoを計測するようにしている。
【0027】
そしてさらに、この供給泥水Bの流量Qf及び密度ρsと、オーバー泥水Cの流量Qo及び密度ρoとに基づき、演算部32において、図3(1)に示すアンダー泥水Aの流量Qu及びアンダー泥水Aの密度ρuを演算するようにしている。
【0028】
この演算部32では、アンダー泥水Aの流量Quを、図3(2)に示す式:Qu=Qf−Qoにより演算し、かつ、アンダー泥水Aの密度ρuを、図3(3)に示す式:ρu=(Qf ρs−Qo ρo)/(Qf−Qo)により演算するようにしている。
【0029】
このように、大気開放となるオーバー泥水Cの排出側に満水調整官22を設けてオーバー泥水Cを常時満水状態で排出可能とすることにより、オーバー泥水Cの流量Qo及び密度ρoをリアルタイムで計測することが可能となり、供給泥水Bの供給側に設けた第1の電磁流量計Fx1及びγ線密度計Dx1にて計測した供給泥水Bの流量Qf及び密度ρsと、満水調整官22に設けた第2の電磁流量計Fx2及びγ線密度計Dx2にて計測したオーバー泥水Cの流量Qo及び密度ρoとからアンダー泥水Aの流量Qu及び密度ρuをリアルタイムで演算し、計画の濃縮比重と量になるように調整することが可能となり、濃縮デカンタ14の濃縮効率を向上させて、電力等の運転費用、運搬費、処理費の低減を図ることが可能となる。
【0030】
この濃縮デカンタ14での濃縮泥水の調整は、制御部34において行うようになっている。
【0031】
まず、第1の濃縮泥水の制御方法は、演算部32において演算されたアンダー泥水Aの流量Quと密度ρuとに基づき、制御部34が制動機Gを調整することで行われる。
【0032】
すなわち、制御部34が制動機Gを調整することにより、濃縮デカンタ14の内胴20と外胴18の差速を調整して、アンダー泥水Aの流量Qu及び密度ρuを調整する。
【0033】
このように、濃縮デカンタ14の内胴20と外胴18の差速を調整することにより、アンダー泥水Aが計画の濃縮比重と量になるように調整することができる。
【0034】
例えば、比重が小さい場合には差速を小さくなるように調整し、逆に比重が大きい場合には差速が大きくなるように調整すればよい。
【0035】
次に、第2の濃縮泥水の制御方法は、演算部32において演算されたアンダー泥水Aの流量Quと密度ρuとに基づき、制御部34がポンプPを調整することで行われる。
【0036】
すなわち、制御部34が制動機Gを調整することにより、濃縮デカンタ14への供給泥水Bの供給量を調整して、アンダー泥水Aの流量Qu及び密度ρuを調整する。
【0037】
このように、濃縮デカンタ14への供給泥水Bの供給量を調整することにより、例えば供給量を増やすと濃縮比重を小さく調整でき、逆に供給量を減らすと濃縮比重を大きく調整することができることとなる。
【0038】
さらに、第3の濃縮泥水の制御方法は、演算部32において演算されたアンダー泥水Aの流量Quと密度ρuとに基づき、制御部34が電動機Mを調整することで行われる。
【0039】
すなわち、制御部34が電動機Mを調整することにより、濃縮デカンタ14の外胴18の回転遠心力を調整して、アンダー泥水Aの分級点を調整する。
【0040】
このように、アンダー泥水Aの分級点を調整することで、濃縮比重を調整することができる。
【0041】
また、これら第1〜第3の濃縮泥水の制御方法は、適宜組み合わせて行うことでより細かな調整を行うことが可能となるものである。
【0042】
本発明は、前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々の形態に変形可能である。
【0043】
例えば、前記実施の形態では、泥水濃縮システムを泥水式シールド工法における泥水処理設備に用いる場合を示したが、この例に限らず、地中連続壁工事等の泥水処理設備に用いることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の一実施の形態にかかる泥水濃縮システムの概略図である。
【図2】図1の満水調整管の拡大図である。
【図3】(1)は泥水の計測、演算の状態を示す図、(2)はアンダー泥水の流量演算式を示す図、(3)はアンダー泥水の密度演算式を示す図である。
【符号の説明】
【0045】
10 泥水濃縮システム
12 調整槽
14 濃縮デカンタ
16 濃縮スラリー槽
18 外胴
20 内胴
22 満水調整管
32 演算部
34 制御部
A アンダー泥水
B 供給泥水
C オーバー泥水
Fx1 第1の電磁流量計
Fx2 第2の電磁流量計
Dx1 第1のγ線密度計
Dx2 第2のγ線密度計
G 制動機
M 電動機
P ポンプ
Qf 供給泥水の流量
Qo オーバー泥水の流量
Qu アンダー泥水の流量
ρs 供給泥水の密度
ρo オーバー泥水の密度
ρu アンダー泥水の密度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給泥水を濃縮デカンタに供給し、前記濃縮デカンタ内で前記供給泥水をオーバー泥水とアンダー泥水とに分離し、前記オーバー泥水を排出し、前記アンダー泥水を濃縮スラリーとして再利用する泥水濃縮システムにおいて、
前記オーバー泥水の排出側に設けられて前記オーバー泥水を常時満水状態に維持しつつ排出する満水調整管と、
前記供給泥水の供給側に設けられて供給泥水の流量Qfと密度ρsとを計測する第1の流量計及び密度計と、
前記満水調整管に設けられてオーバー泥水の流量Qoと密度ρoを計測する第2の流量計及び密度計と、
前記供給泥水の流量Qf及び密度ρsと前記オーバー泥水の流量Qo及び密度ρoとに基づき、前記アンダー泥水の流量Quを、式:Qu=Qf−Qoにより演算し、かつ、アンダー泥水の密度ρuを、式:ρu=(Qf ρs−Qo ρo)/(Qf−Qo)により演算する演算部と、
を有することを特徴とする泥水濃縮システム。
【請求項2】
請求項1記載の泥水濃縮システムにより演算されたアンダー泥水の流量Quと密度ρuとに基づき、
制御部により前記濃縮デカンタの内胴と外胴の差速を調整して、前記アンダー泥水の流量と密度を調整することを特徴とする濃縮泥水の制御方法。
【請求項3】
請求項1記載の泥水濃縮システムにより演算されたアンダー泥水の流量Quと密度ρuとに基づき、
制御部により前記濃縮デカンタへの前記供給泥水の供給量を調整して、前記アンダー泥水の流量と密度を調整することを特徴とする濃縮泥水の制御方法。
【請求項4】
請求項1記載の泥水濃縮システムにより演算されたアンダー泥水の流量Quと密度ρuとに基づき、
制御部により前記濃縮デカンタの外胴の回転遠心力を調整して、前記アンダー泥水の分級点を調整することを特徴とする濃縮泥水の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−283269(P2007−283269A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−116419(P2006−116419)
【出願日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【出願人】(000166432)戸田建設株式会社 (328)
【出願人】(392000408)サンエー工業株式会社 (4)
【Fターム(参考)】