説明

洗浄処理方法および洗浄処理装置

【課題】 薬剤を効率的に基板表面に供給することでその消費量を抑制することができる洗浄処理方法および装置、ならびに基板の表面に発生する洗浄痕(ウォーターマーク)を低減することが可能な洗浄処理方法を提供すること。
【解決手段】 外側チャンバと内側チャンバからなる処理チャンバ内に保持された半導体ウエハWの洗浄処理における薬剤を用いた乾燥処理を、半導体ウエハWを停止または低速回転させた状態において、薬剤を吐出するノズルに薬剤を供給する薬剤供給管77に薬剤(IPA)を滞留させた後に薬剤供給管77に高温のガスを供給することにより、薬剤を蒸気状として蒸気状の薬剤を基板に供給する工程と、薬剤の供給を停止した後に前記基板を前記低速回転よりも高い回転速度で高速回転させることにより前記基板に付着した薬剤を振り切る工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハやLCD基板等の各種基板に所定の処理液を供給して行う洗浄処理方法と洗浄処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、半導体デバイスの製造工程においては、基板である半導体ウエハ(ウエハ)を所定の薬液や純水等の洗浄液によって洗浄処理し、ウエハからパーティクル、有機汚染物、金属不純物等のコンタミネーションや有機物、酸化膜を除去している。このような洗浄処理は、通常、薬液による洗浄処理、純水による洗浄処理、揮発性薬剤例えばイソプロピルアルコール(IPA)を用いた乾燥処理、ガスを供給して行うブロー乾燥処理またはスピン乾燥処理の順序で行われる。
【0003】
このうちIPA乾燥処理は、例えば、IPAが貯留されたタンク内にウエハを浸漬させた後にウエハを引き上げる方法、またはウエハを低速回転状態として液状のIPAをウエハに供給し、その後にウエハを高速で回転させてウエハに付着したIPAを振り切る方法等を用いて行われている。
【0004】
しかしながら、IPAが貯留されたタンク内にウエハを浸漬させる方法では、経時的にIPAの汚れが進むためにIPA内のパーティクルがウエハに付着する問題がある。さらに、停止または低速回転状態にあるウエハに液状のIPAを供給した場合には、IPAを多量に消費するために処理コストが嵩み、製品コストが高くなるという問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はこのような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、薬剤を効率的に基板表面に供給することでその消費量を抑制することができる洗浄処理方法とその洗浄処理方法を行う洗浄処理装置を提供することにある。
【0006】
また本発明の他の目的は、基板の表面に発生する洗浄痕(ウォーターマーク)を低減することが可能な洗浄処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明の第1の観点によれば、処理容器内に保持された基板の洗浄処理方法であって、前記基板を停止または低速回転させた状態において、蒸気状の薬剤を前記基板に供給する第1工程と、前記薬剤の供給を停止した後に前記基板を前記低速回転よりも高い回転速度で高速回転させることにより前記基板に付着した薬剤を振り切る第2工程と、を有し、前記第1工程では、薬剤を吐出するノズルまたは前記ノズルに薬剤を供給する薬剤供給管に前記薬剤を滞留させた後に前記薬剤供給管に高温のガスを供給することにより、前記薬剤を蒸気状として基板に供給することを特徴とする洗浄処理方法が提供される。
【0008】
本発明の第2の観点によれば、基板に洗浄液を供給して洗浄処理を行う洗浄処理装置であって、基板を収容する処理容器と、前記処理容器内で基板を保持する保持手段と、前記保持手段を回転させる回転機構と、前記洗浄液を前記基板に向けて吐出する洗浄液供給機構と、薬剤をミスト状または蒸気状として前記保持手段に保持された基板に供給する薬剤供給機構と、を具備し、前記薬剤供給機構は、前記薬剤を吐出する吐出ノズルと、前記吐出ノズルに前記薬剤を送液する薬剤供給管と、前記吐出ノズルまたは前記薬剤供給管に前記薬剤を滞留させる機構と、前記薬剤供給管に高温のガスを供給するガス供給機構とを有し、前記吐出ノズルまたは前記薬剤供給管に滞留された前記薬剤が前記ガス供給機構から供給された高温ガスにより加熱されて蒸気状となり、この蒸気状の薬剤が前記吐出ノズルから吐出されることを特徴とする洗浄処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、薬剤供給管に前記薬剤を滞留させた後に前記薬剤供給管に高温のガスを供給することにより、薬剤を蒸気状として供給することにより、薬剤の使用量を低減して、処理コストを低減することができる。また、供給された薬剤は基板にむらなく付着して、例えば基板表面に水分が残留していた場合には水分と揮発性薬剤が置換されて振り切りが容易となり、基板の表面に発生する洗浄痕(ウオーターマーク)が低減される。こうして、基板を高い品質に維持することが可能となる。
【0010】
さらに、本発明の洗浄処理装置は、薬剤を用いた乾燥処理工程前に純水によるリンス処理等の他の液処理を行っている場合にも、基板を移動させることなく処理を行うことができるために、装置の構造が複雑とならない。これによって、装置の大型化も抑制される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の態様について具体的に説明する。本実施態様では、半導体ウエハ(ウエハ)の搬入、洗浄、乾燥、搬出をバッチ式に一貫して行うように構成された洗浄処理システムとその洗浄処理システムを用いた洗浄処理方法について説明する。また、本実施態様においては、洗浄処理工程の中の1工程である薬剤を用いた乾燥処理について、揮発性溶媒であるイソプロピルアルコール(IPA)を用いた場合について説明することとする。
【0012】
図1は洗浄処理システム1の斜視図であり、図2はその平面図である。これら図1および図2に示されるように、洗浄処理システム1は、ウエハWを収納可能なキャリア(基板収納容器)Cの搬入出が行われるイン・アウトポート(容器搬入出部)2と、ウエハWに対して洗浄処理を実施する洗浄処理ユニット3と、
イン・アウトポート2と洗浄処理ユニット3との間に設けられ、洗浄処理ユニット3に対してキャリアCの搬入出を行うためのステージ部4と、キャリアCを洗浄するキャリア洗浄ユニット5と、複数のキャリアCをストックするキャリアストックユニット6とを備えている。なお、参照符号7は電源ユニットであり、8は薬液貯蔵ユニットである。
【0013】
イン・アウトポート2は、4個のキャリアCを載置可能な載置台10と、キャリアCの配列方向に沿って形成された搬送路11と、載置台10のキャリアCをステージ部4に搬送し、かつステージ部4のキャリアCを載置台10に搬送するためのキャリア搬送機構12とを有している。キャリア搬送機構12は、搬送路11をキャリアCの配列方向に沿って移動可能である。
【0014】
キャリアC内には、例えば、25枚または26枚のウエハWが収納可能となっており、キャリアCはウエハWの面が略垂直(略鉛直)となるように載置台10に配置される。
【0015】
ステージ部4は、キャリアCを載置するステージ13を有しており、ステージ13にはスライドステージ32が設けられている。イン・アウトポート2からこのスライドステージ32に搬送され、載置されたキャリアCは、スライドステージ32を駆動することによって洗浄処理ユニット3内に搬入され、洗浄処理ユニット3内のキャリアCはこのスライドステージ32によりステージ13に搬出される。
【0016】
なお、ステージ13には、載置台10からキャリア搬送機構12のアームを回転させてキャリアCが載置されるため、載置台10とは逆向きにキャリアCが載置される。このため、ステージ13にはキャリアCの向きを戻すための反転機構(図示せず)が設けられている。
【0017】
ステージ部4と洗浄処理ユニット3との間には仕切壁14が設けられており、仕切壁14にはキャリアCの搬入出用の開口部14aが形成されている。この開口部14aはシャッター15により開閉可能となっており、処理中にはシャッター15が閉じられ、キャリアCの搬入出時にはシャッター15が開けられる。
【0018】
キャリア洗浄ユニット5は、キャリア洗浄槽16を有しており、後述するように洗浄処理ユニット3においてウエハWが取り出されて空になったキャリアCが洗浄されるようになっている。
【0019】
キャリアストックユニット6は、洗浄前のウエハWが入ったキャリアCや洗浄前のウエハWが取り出されて空になったキャリアCを一時的に待機させるためや、洗浄後のウエハWを収納するための空のキャリアCを予め待機させるためのものであり、上下方向に複数のキャリアCがストック可能となっており、その中の所定のキャリアCを載置台10に載置したり、その中の所定の位置にキャリアCをストックしたりするためのキャリア移動機構を内蔵している。
【0020】
次に、洗浄処理ユニット3について説明する。図3は洗浄処理ユニット3の内部を示す断面図、図4および図5は洗浄処理ユニット3の洗浄処理部20を示す断面図である。
【0021】
図3は、ロータ24とウエハ保持部材42との間でウエハWの受け渡しができるように、外側チャンバ26と内側チャンバ27を退避位置(図3において実線で示される位置)へ移動させた状態を示している。また、図4は、外側チャンバ26を用いてロータ24に保持されたウエハWの洗浄処理を行うために、外側チャンバ26が処理位置にあり、内側チャンバ27が退避位置にある状態を示している。さらに、図5は、内側チャンバ27を用いてロータ24に保持されたウエハWの洗浄処理を行うために、内側チャンバ27が処理位置にある状態を示している。なお、内側チャンバ27が処理位置にあるときには、外側チャンバ26も処理位置にある。
【0022】
洗浄処理ユニット3の内部には、図3に示すように、洗浄処理部20と、洗浄処理部20の直下にキャリアCを待機させるキャリア待機部30と、キャリア待機部30に搬入されたキャリアCと、洗浄処理部20に設けられたロータ24との間でウエハWを搬送するウエハ移動機構40とが設けられている。
ステージ13上に設けられたスライドステージ32は、例えば、3段に構成されており、上方の2段をそれぞれキャリア待機部30側にスライドさせることで、最上段のステージに載置されたキャリアCをキャリア待機部30におけるロータ24の直下に搬入して待機させることが可能となっている。
【0023】
図3に示すように、キャリア待機部30上方のウエハ移動路の途中には、ウエハ移動路を挟んで前後に発光子および受光子が配置された複数対の光学センサーからなるウエハ検知部31が設けられており、このウエハ検知部31をウエハが通過することにより、ウエハWの枚数確認および正規に保持されていないウエハ(いわゆるジャンプスロット)の有無の確認が行われる。
【0024】
ウエハ移動機構40は、ウエハWを保持するウエハ保持部材41と、鉛直に配置されウエハ保持部材41を支持する支持棒42と、支持棒42を介してウエハ保持部材41を昇降する昇降駆動部43とを有している。昇降駆動部43によりウエハ保持部材41を昇降させることで、キャリア待機部30にあるキャリアCに収納された洗浄処理前のウエハWを上方の洗浄処理部20のロータ24内に移動させ、またはロータ24内の洗浄処理後のウエハWをキャリア待機部30にあるキャリアCに移動させるようになっている。
【0025】
このような動作を実現するために、キャリアCが載置されたスライドステージ32の最上段のステージは額縁状に形成されおり、ウエハ保持部材41がこの最上段のステージを通過することができるようになっている。
【0026】
ウエハ保持部材41にはウエハWを保持するための保持溝が所定のピッチで、例えば、52箇所形成されている。洗浄処理前のウエハWをロータ24へ搬入するために使用する保持溝と、洗浄処理が終了した後のウエハWを保持するための保持溝とを区別して用いることができるように、ウエハWはこれらの保持溝に1箇所飛ばしに保持される。こうして、洗浄後のウエハWへのパーティクル等の付着を防止することができる。
【0027】
洗浄処理部20は、ウエハWのエッチング処理後にレジストマスク、エッチング残渣であるポリマー層等を除去するものであり、鉛直に設けられた支持壁18と、回転軸23aが水平となるように支持壁18に固定部材18aによって固定されたモータ23と、モータ23の回転軸23aに取り付けられたロータ24と、モータ23の回転軸23aを囲繞する円筒状の支持筒25と、ロータ24に保持されたウエハWに対して所定の洗浄処理を施す外側チャンバ26および内側チャンバ27とを有している。
【0028】
ロータ24は、所定間隔で配置された一対の円盤70a・70bと、円盤70a・70b間に架設された係止部材71a・71b(71bは71aの背面に位置する)・72a・72b(72bは72aの背面に位置する)と、円盤70a・70b間に設けられた開閉動作を行うことができるウエハ保持部材83a・83b(83bは83aの背面に位置する)とを有する。ロータ24においては、ウエハWは係止部材71a・71b・72a・72bによって係止され、かつ、ウエハ保持部材83a・83bにより保持される。こうして、ロータ24は、例えば、複数(例えば26枚)のウエハWを略垂直な姿勢で水平方向に所定間隔で並べて保持することができる。モータ23を駆動すると回転軸23aを介してロータ24が回転し、ロータ24に保持されたウエハWも回転する。
【0029】
外側チャンバ26は円筒状をなし、処理位置(図3において二点鎖線で示される位置または図4および図5に示す位置)と退避位置(図3において実線で示される位置)との間で移動可能に構成されており、ウエハWの搬入出時には図3に示すように退避位置に位置される。図4に示すように、外側チャンバ26が処理位置にあり、内側チャンバ27が退避位置にある際には、外側チャンバ26と、モータ23側の垂直壁26aと、先端側の垂直壁26bとで処理容器が構成され、その中に処理空間51が規定される。
【0030】
垂直壁26aは支持筒25に取り付けられており、支持筒25と回転軸23aとの間にはベアリング28が設けられている。また、垂直壁26aと支持筒25の先端部はラビリンスシール29によりシールされており、モータ23で発生するパーティクル等が処理空間51に侵入することが防止されている。支持筒25のモータ23側端部には外側チャンバ26、内側チャンバ27を係止する係止部材25aが設けられている。
【0031】
内側チャンバ27は外側チャンバ26よりも径が小さい円筒状の形状を有する。内側チャンバ27は図5に示す処理位置と図3と図4に示す支持筒25の外側の退避位置との間で移動可能であり、ウエハWの搬入出時には外側チャンバ26とともに退避位置に保持される。また、図5に示すように内側チャンバ27が処理位置にある際には、内側チャンバ27と垂直壁26a・26bによって処理容器が構成され、その中に処理空間52が規定される。処理空間51および処理空間52はシール機構により密閉空間とされる。
【0032】
外側チャンバ26の上壁部には、多数の吐出口53を有する2本(図3から図5において1本のみ図示)の吐出ノズル54が、吐出口53が水平方向に並ぶようにして取り付けられている。吐出ノズル54からは、図示しない供給源から供給された純水、IPA等の揮発性薬剤、各種薬液や、窒素(N)ガス等が吐出可能となっている。吐出ノズル54から吐出される上記液体は、例えば、吐出口53から円錐状に裾拡がりに拡がる液膜の形で吐出され、ウエハWに均一に液体が当たるように吐出することができるようになっている。
【0033】
内側チャンバ27の上壁部には、多数の吐出口55を有する2本(図3から図5において1本のみ図示)の吐出ノズル56が、吐出口55が水平方向に並ぶようにして取り付けられている。吐出ノズル56からは、図示しない供給源から供給された各種薬液、純水、IPA、Nガス等が吐出可能となっている。吐出ノズル56から吐出される上記液体は、例えば、吐出口55から扇状に拡がる液膜の形で吐出され、1箇所の吐出口55から吐出される液体が1枚のウエハに当たるように吐出することができるようになっている。
【0034】
これらの吐出ノズル54・56は外側チャンバ26・内側チャンバ27にそれぞれ2本より多く設けることが可能であり、また、吐出ノズル54・56の他にも、処理液の種類に応じて異なる構造のノズルを、各チャンバの上部以外の場所に設けることもできる。これら吐出ノズル54・56としては、例えば、PTFEやPFA等のフッ素樹脂製のものや、ステンレス製のものが好適に用いられる。
【0035】
内側チャンバ27の上部内壁には、円盤70a・70bの内側面(ウエハWに対向する面)を水洗等するために純水等を吐出する図示しない吐出ノズルが配置されている。また、垂直壁26a・26bには、円盤70a・70bのそれぞれ垂直壁26a・26bと対向する外側面を水洗等するための純水等を吐出する吐出ノズル74a・74bが設けられている。
【0036】
図6の(a),(b)に、外側チャンバ26が有する各種吐出ノズルの取り付け位置を示す正面図と展開図を示す。外側チャンバ26の斜め上方には3個のIPA吐出ノズル76aが水平方向1列に配置され、外側チャンバ26の横方向(水平方向)には3個のIPA吐出ノズル76bが水平方向1列に配置されている。IPA吐出ノズル76aと76bとは、同じ構造を有している。
【0037】
上述したように、吐出ノズル54からもIPAを吐出することが可能であるが、吐出ノズル54からはIPAは液膜状で吐出されるのに対し、IPA吐出ノズル76a・76bからはIPAはミスト状(霧状)として吐出されるという相違点がある。
【0038】
IPA吐出ノズル76a・76bからは、ミスト状のIPAがウエハW全体に散布されるように、略三角錐状等のように裾拡がりにミスト状のIPAが吐出されることが好ましい。
【0039】
IPA吐出ノズル76a・76bは、IPAをミスト状として吐出することができる限りにおいて、その形状が限定されることはない。例えば、先端部に小孔や幅の狭いスリット等を形成して、その小孔等からIPAが吐出される構成とすることができる。
【0040】
水平方向に1列に配置された3個のIPA吐出ノズル76aから吐出されるミスト状のIPAがウエハWに散布される前に互いにぶつかり合うことがないように、個々のIPA吐出ノズル76aの間隔とIPAが拡がる角度が調節されている。
【0041】
また、IPA吐出ノズル76a間の間隔DとIPA吐出ノズル76b間の間隔Dは同じであるが、IPA吐出ノズル76aとIPA吐出ノズル76bは、外側チャンバ27の長手方向においてD/2ずれた位置に配置されている。このようにIPA吐出ノズル76a・76bを互いにずらして配置することで、ウエハWに均一にミスト状のIPAを散布することができる。
【0042】
図7の(a),(b)は、IPA吐出ノズル76aを例として、IPA吐出ノズルからミスト状IPAを吐出させる機構の態様を示す模式図である。IPA吐出ノズル76aからミスト状のIPAを吐出させるためには、IPA吐出ノズル76aの吐出口に小孔やスリット等を形成した所定の形状とし、図7の(a),(b)に示すようにガス圧を利用してIPAを吐出口に衝突させる。これにより、容易にIPAをミスト状とすることが可能である。
【0043】
IPA吐出ノズル76aにはIPA供給管77が取り付けられ、IPA供給管77の他端にはNガスとIPAの切替とこれらの供給/停止を制御する切替制御弁78aが設けられている。また、切替制御弁78aは配管81を介してIPA供給源79と連通し、Nガスを供給/停止を制御するN制御弁78bとも連通している。N制御弁78bにはNガス供給源80から配管82を介してNガスが供給される。
【0044】
IPAの供給の方法としては、例えば図7の(a)に示されるように、切替制御弁78aを操作して所定量(例えば100ml)のIPAをIPA供給管77内に滞留するように供給しておき、その後にN制御弁78bおよび切替制御弁78aを開いてNガス供給源80から所定の圧力でIPA供給管77にNガスを供給し、そのガス圧でIPAをIPA吐出ノズル76aからミスト状に吐出させる方法を採用することができる。
【0045】
また、図7の(b)に示されるように、例えば、合計100mlのIPAと所定量のNガスが交互にIPA供給管77内に滞留するように切替制御弁78aとN制御弁78bを操作した後に、NガスをIPA供給管77に導入することにより、IPA供給管77内に滞留しているIPAをIPA吐出ノズル76aからミスト状として間欠的に吐出させることもできる。図7の(b)ではIPAがほぼ等量に分割されてIPA供給管77内に滞留している状態が示されているが、IPAは等量に分割される必要はなく、分割されたIPA間のNガスの量もそれぞれ異なっていてもよい。
【0046】
このようなIPAの吐出方法を用いた場合には、供給するIPAの量が例えば100mlと少量であっても、ウエハWの表面に均一にIPAのミストを付着させことができるため、従来のようにIPAを液状でウエハWに供給、塗布する場合と比べると、IPAの使用量を著しく減少させることが可能となる。こうして、IPAの消費量が低減されれば処理コストが低減される。
また、ウエハWをIPA貯留槽中に浸漬する方法を用いる方法と比較すると、IPA貯留槽を設ける必要がなく、IPA貯留槽を用いた場合に生ずる経時的なIPAの汚れによるパーティクル等のウエハWへの再付着の問題も生じない。
【0047】
なお、IPA吐出ノズル76a・76bからは純水をも吐出することができるようにすることも好ましい。この場合には、例えば、ミスト状の純水をウエハWに供給してウエハWの表面を均一に濡らした後に、ミスト状のIPAをウエハWに供給する。その後にロータ24を回転させてウエハWからIPAを振り切ることで、ウエハWの表面をより均一に乾燥させることができる。
【0048】
垂直壁26bの下部には、図4の状態において処理空間51から使用済みの洗浄液を排出する第1の排液ポート61が設けられており、第1の排液ポート61の上方には図5の状態において処理空間52から使用済みの洗浄液を排出する第2の排液ポート62が設けられている。また、第1の排液ポート61および第2の排液ポート62には、それぞれ第1の排液管63および第2の排液管64が接続されている。
【0049】
また、垂直壁26bの上部には、図4の状態において処理空間51を排気する第1の排気ポート65が設けられており、第1の排気ポート65の下方には図5の状態において処理空間52を排気する第2の排気ポート66が設けられている。また、第1の排気ポート65および第2の排気ポート66には、それぞれ第1の排気管67および第2の排気管68が接続されている。
【0050】
次に、上述した洗浄処理システム1を用いたウエハWの洗浄処理方法について説明する。まず、載置台10の所定位置に処理すべきウエハWが収容されたキャリアCを載置する。続いて、キャリア搬送機構12を用いてこのキャリアCをステージ部4へ搬入して、ステージ13上に設けられたスライドステージ32上に載置する。続いて、スライドステージ32をキャリア待機部30側へ移動させ、また、外側チャンバ26および内側チャンバ27を待避位置にスライドさせた状態とする。この状態で昇降駆動部43によりウエハ保持部材41を上昇させると、ウエハ保持部材41は上昇途中でキャリアC内のウエハWを保持して、ウエハWを洗浄処理部20のロータ24内に移動させる。ウエハ保持部材41に保持されたウエハWの枚数が、上昇の途中にウエハ検知部31によって検査される。ロータ24にウエハWを保持させた後にウエハ保持部材41を降下させる。
【0051】
次に、外側チャンバ26を処理位置に戻し、続いて内側チャンバ27も処理位置にスライドさせて処理空間52を形成する。モータ23による回転駆動によりロータ24を所定回転速度で回転させて、ウエハWを回転させながら吐出ノズル56から、例えば、所定の薬液を吐出してレジスト除去処理を行う。この処理は1回または複数回行う。
【0052】
続いて、内側チャンバ27を待避位置へスライドさせて外側チャンバ26による処理空間51を形成し、純水によるリンス処理を行う。このリンス処理に際しては、モータ23による回転駆動によりロータ24を所定速度で回転させ、ウエハWを回転させながら、吐出ノズル54から純水を吐出させる。
【0053】
このリンス処理が終了した後にIPA乾燥処理を行う。IPA乾燥処理の最初の工程は、IPA吐出ノズル76a・76bから所定量のミスト状のIPAをウエハW全体に散布するIPA供給工程である。このとき、ロータ24は停止した状態であってもよく、またウエハWの表面にIPAのミストが付着することができる程度に低速で回転させておいてもよい。ここで、「低速で回転」とは、ミスト状の薬剤がウエハWの表面に十分接触可能な回転速度で、後述する中速回転、高速回転よりも低い回転速度で回転させることを意味する。IPA供給工程においてロータ24を回転させる場合には、その回転速度は100rpm以下とすることが好ましい。
【0054】
IPA吐出ノズル76a・76bからミスト状のIPAを吐出させる方法としては、先に図7の(a),(b)を参照しながら説明したように、所定量のIPAをIPA供給管77内に滞留させて、Nガスによるガス圧でIPA吐出ノズル76a・76bから吐出させる方法が挙げられる。
【0055】
ウエハWの表面に付着したIPAのミストは、容易にウエハW上の水分と置換されるために、IPA供給工程後には、IPAの供給を停止してロータ24およびウエハWを中速回転させることにより水分およびIPAを振り切る第1乾燥処理を行う。ここで、中速回転とは、ミスト状の薬剤や、これが混入した水分を遠心力で振り切ることが可能な回転速度で、前述の低速回転より高い回転速度をいう。具体的には、第1乾燥処理におけるロータ24の回転速度は約100rpm以上300rpm以下とすることが好ましい。
【0056】
この第1乾燥処理工程をこのような中速回転で行う主な理由は、高速回転は、ウエハWやロータ24から振り切られて飛ばされた水分やIPAが、外側チャンバ26の内壁等に当たって跳ね返り、再びウエハWに付着してウエハWを汚染するといった事態を生じるので、これを防止するためにある。このことを考慮すると、ウエハWやロータ24から振り切られた水分やIPAの跳ね返り等によるウエハWの汚染がない限りにおいて、上記範囲より高速でロータ24を回転させることも可能である。
【0057】
第1乾燥処理工程が終了した段階では、ウエハWやロータ24から大部分の水分およびIPAが振り切られていることから、次に、ウエハWを高速回転させてウエハWをほぼ乾燥した状態とする第2乾燥処理を行う。この第2乾燥処理工程においてロータ24やウエハWから飛散する水滴等は大きなものではないことから、外側チャンバ26の内壁等からの跳ね返り等が起こらず、良好な乾燥状態を得ることが可能となる。ここで、高速回転とは、前述の低速および中速回転に比べて回転速度が大きいことを意味し、約300rpm以上800rpm以下の回転速度が好ましい。このような第1乾燥工程と第2乾燥工程は、回転速度を連続的にまたは段階的に上げることによって連続して行っても構わない。
【0058】
このようなIPA乾燥処理、つまり、ロータ24に保持されたウエハWにミスト状のIPAを供給してウエハWを乾燥する方法を用いた場合には、IPA乾燥処理工程の前後でウエハWを他の装置へ搬送する必要がないために、装置の構造が簡単となり、また、ウエハWの搬送に伴って生ずるパーティクルの付着等の問題も回避される。さらに、ウエハWの搬送に要する時間を必要としないことから、スループットを上げることができる。
【0059】
なお、IPA吐出ノズル76a・76bからIPAのみならず、純水をも吐出することができる場合には、吐出ノズル54から純水をロータ24に保持されたウエハWに供給してリンス処理を行った後に、ミスト状の純水をウエハWに供給することによってウエハWの表面を均一に濡らし、その後にIPA乾燥処理を行うことで、ウエハWの表面をより均一に乾燥させることができる。こうして、ウォーターマークの発生をより効果的に防止することができる。
【0060】
IPA乾燥処理が終了した後には、吐出ノズル54から、例えばNガスを吐出させながらウエハWをより完全に乾燥させるガス乾燥処理を行う。このガス乾燥処理においては、ロータ24およびウエハWは静止した状態でもよく、また、例えば高速回転させる等、所定の回転速度で回転させてもよい。このガス乾燥処理により、IPA乾燥処理後にウエハWの表面に微量に残留するIPAがほぼ完全に除去される。
【0061】
その後、外側チャンバ26を待避位置へスライドさせて図3に示した状態とし、先にウエハWをロータ24内へ搬入した際に使用された保持溝とは異なる保持溝でウエハWを受け取るようにウエハ保持部材41を上昇させる。洗浄処理が終了したウエハWを保持したウエハ保持部材41を降下させる際に、ウエハ検知部31により再びウエハWの枚数等が確認される。
【0062】
ウエハ保持部材41がキャリア待機部30に待機しているキャリアCを通過する際に、ウエハWはキャリアCに収納される。スライドステージ32の駆動によってウエハWが収納されたキャリアCはステージ部4へ搬出され、次いでキャリア搬送機構12によりイン・アウトポート2の載置台10に載置され、作業者または自動搬送装置により搬出され、一連の洗浄処理が終了する。
【0063】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。
上記実施態様では、リンス処理が終了した後のIPA乾燥処理における最初の工程として、IPA吐出ノズル76a・76bからミスト状のIPAをウエハW全体に散布するようにしたが、本実施形態では蒸気状のIPAを供給する。
【0064】
本実施形態においても、上記実施形態と同様、図6の(a),(b)に示すように配置されたIPA吐出ノズル76a・76bから蒸気状のIPAが吐出される。本実施形態においては、IPA吐出ノズル76a・76bからは、蒸気状のIPAがウエハW全体に散布されるように、略三角錐状等のように裾拡がりに蒸気状のIPAが吐出されることが好ましい。IPA吐出ノズル76a・76bは、IPAを蒸気状として吐出することができる限りにおいて、その形状が限定されることはない。
【0065】
図8、図9は、IPA吐出ノズル76aを例として、IPA吐出ノズルから蒸気状IPAを吐出させる機構の態様を示す模式図である。図8、図9の機構は図7の(a),(b)の機構と類似しており、図7と同じものには同じ符号を付している。
【0066】
図8の機構は、IPA供給管77のIPAが滞留する部分の周囲にヒータ90が設けられている他は図7の機構と同様に構成されている。このような機構によりIPA吐出ノズル76aから蒸気状のIPAを吐出させる方法としては、切替制御弁78aを操作して所定量(例えば100ml)のIPAをIPA供給管77内に滞留するように供給しておき、ヒータ90によりIPA供給管77内のIPAを加熱して蒸気状とし、その後にN制御弁78bおよび切替制御弁78aを開いてNガス供給源80からIPA供給管77にNガスを供給することが挙げられる。これにより、IPA供給管77内のIPA蒸気がIPA吐出ノズル76aから吐出される。この場合に上述の実施形態のようにIPAをミスト化する必要はないので、Nガスの供給はゆっくりと行えばよい。
【0067】
図9の機構は、Nガス供給源80の代わりに高温Nガス供給源91が設けられている他は図7の機構と同様に構成されている。このような機構によりIPA吐出ノズル76aから蒸気状のIPAを吐出させる方法としては、切替制御弁78aを操作して所定量(例えば100ml)のIPAをIPA供給管77内に滞留するように供給しておき、その後にN制御弁78bおよび切替制御弁78aを開いて高温Nガス供給源91からIPA供給管77に高温のNガスを供給することが挙げられる。これにより、IPA供給管77内のIPAが高温のNガスによって蒸気状となり、この蒸気状のIPAがIPA吐出ノズル76aから吐出される。
【0068】
このように蒸気状のIPAにより乾燥処理する場合にも、上記実施態様と全く同じ手順でウエハWの洗浄処理が行われる。
【0069】
このようなIPAの吐出方法を用いた場合にも、供給するIPAの量が例えば100mlと少量であっても、ウエハWの表面に均一にIPAの蒸気を付着させことができるため、従来のようにIPAを液状でウエハWに供給、塗布する場合と比べると、IPAの使用量を極端に減少させることが可能となる。こうして、IPAの消費量が低減されれば処理コストが低減される。
【0070】
次に、本発明のさらに他の実施態様について説明する。
上記2つの実施態様では、複数枚のウエハを一度に処理する場合について説明したが、本発明の洗浄処理方法は、1枚のウエハを洗浄処理する場合にも適用することができる。
【0071】
図10は枚葉式の洗浄処理ユニット100の概略平面図であり、図11はその概略断面図である。例えば、ウエハWは、ウエハWが略水平となるように載置されたキャリアCと洗浄処理ユニット100との間で搬送装置によって搬送される。
【0072】
洗浄処理ユニット100には、処理カップ122と、ウエハWを略水平に保持するスピンチャック123と、スピンチャック123に保持されたウエハWの下側に位置するように設けられたステージ124と、スピンチャック123に保持されたウエハWの表面に所定の洗浄液を供給する洗浄液供給機構180と、ミスト状または蒸気状のIPAをウエハWに供給するIPA供給機構190と、を有している。
【0073】
処理カップ122は、固定されたアウターカップ122bと、昇降可能なインナーカップ122aからなり、スピンチャック123へウエハWが搬入され、またはスピンチャック123からウエハWが搬出される際には、図11の点線位置へ降下した状態に保持され、一方、洗浄処理中は図11の実線位置へ上昇した状態に保持される。アウターカップ122bの底部には、排気および洗浄液を排出するためのドレイン132が設けられている。
【0074】
スピンチャック123は、スピンプレート126と、スピンプレート126の周縁の3箇所にそれぞれ等間隔に取り付けられた保持部材125aおよび支持ピン125bと、図示しない回転機構によって回転自在である中空状の回転軸127とを有している。スピンチャック123へウエハWが搬入される際には、ウエハWは支持ピン125bに支持される。
【0075】
保持部材125aは、スピンプレート126に固定された支柱164と、支柱164に釣支された保持ピン165と、保持ピン165の下部に取り付けられた重錘163とからなり、スピンチャック123を回転させた際には、重錘163が遠心力によって回転の外側へ移動することで保持ピン165全体が傾斜して、保持ピン165の上部がウエハWの端面を保持する。
【0076】
スピンプレート126の下方には、回転軸127を囲繞するように階段状のカバー128が設けられており、このカバー128は台座129に固定されている。カバー128の内周側には排気口131が形成されており、図示しない排気ポンプ等によって処理カップ122内の空気を吸引できるようになっている。
【0077】
ステージ124は枢軸137によって支持されており、この枢軸137の下方には図示しない昇降機構が取り付けられている。この昇降機構を動作させることで、ステージ124を所定の高さ位置に上下させて、保持することができるようになっている。
【0078】
例えば、スピンチャック123へウエハWが搬入され、またはスピンチャック123からウエハWが搬出される際には、ステージ124の下面に形成された円環状の突起部124aがスピンプレート126の上面に当接し、かつ、スピンプレート126の上面に形成された円環状の突起部126aがステージ124の下面に当接する位置にステージ124を降下させた状態とする。このようにステージ124とウエハWとの間隔を拡げることで、ウエハWの搬入出を容易に行うことができる。
【0079】
ステージ124のほぼ中央を貫通するように、洗浄液供給孔141とガス供給孔142が設けられており、洗浄液供給孔141には洗浄液供給管141aが、ガス供給孔142にはガス供給管142aがそれぞれ取り付けられている。
【0080】
洗浄液供給管141aを通して、各種の薬液や純水、IPA等の洗浄液が洗浄液供給孔141からウエハWの裏面に向けて吐出可能となっている。また、ガス供給管142aを通して、Nガスがガス供給孔142からウエハWの裏面に向けて吐出可能となっている。つまり、洗浄処理ユニット100においては、ウエハWの裏面の洗浄と乾燥をも行うことができる。
【0081】
洗浄液供給機構180は、スピンチャック123に保持されたウエハWの表面に各種の薬液や純水、IPA等の洗浄液またはNガスを供給する洗浄液吐出ノズル181と、洗浄液吐出ノズル181を保持する保持アーム182と、洗浄液吐出ノズル181がウエハWの表面の所定位置に移動するように、保持アーム182を支持して保持アーム182を回動させる支持回転軸183と、洗浄液吐出ノズル181に所定の洗浄液等を供給する図示しない洗浄液供給管と、を有している。支持回転軸183を所定角度回動させることによって、洗浄液吐出ノズル181をウエハW上の所定位置へ移動させて、また、ウエハW上をスキャンさせることができる。
【0082】
IPA吐出機構190は、スピンチャック123に保持されたウエハWの表面にミスト状または蒸気状のIPAを供給するIPA吐出ノズル191と、IPA吐出ノズル191を保持する保持アーム192と、IPA吐出ノズル191がウエハWの表面の所定位置に移動するように、保持アーム192を支持して保持アーム192を回動させる支持回転軸193と、を有している。支持回転軸193を所定角度回動させることによって、IPA吐出ノズル191をウエハW上の所定位置へ移動させて、また、ウエハW上をスキャンさせることができる。
【0083】
このような洗浄処理ユニット100を用いて、例えば、以下に記す洗浄処理を行うことができる。最初に、ウエハWをスピンチャック123に保持させ、スピンチャック123を静止させた状態または低速で回転させた状態で、洗浄液吐出ノズル181からウエハWの表面および裏面に向けて所定の薬液を供給し、ウエハWの表裏面が薬液に接した状態を所定時間保持する。こうして薬液処理が行われる。
【0084】
続いて、ウエハWから薬液を振り切るようにスピンチャック123を所定の回転速度で回転させる。このときに、回転するウエハWの表裏面に純水を供給して、ウエハWのリンス処理を行う。スピンチャック123の回転速度を下げて、ノズル保持アーム192をウエハW上で回動させながら、IPA吐出ノズル191からミスト状または蒸気状のIPAをウエハWの表面に向けて供給する。これと同時に、洗浄液供給孔141からはIPAをウエハWの裏面に向けて吐出する。
【0085】
こうして、ウエハWの表面に供給するIPAの量を低減することができる。また、高い洗浄精度が要求されるウエハWの表面にウォーターマークが発生することを防止することができる。
【0086】
その後、IPAのウエハWへの供給を停止して、スピンチャック123に保持されたウエハWを3000rpm〜5000rpmの高速で回転させる。こうして、ウエハWからIPAを振り切り、ウエハWを乾燥させることができる。このとき、NガスをウエハWに向けて供給することも好ましい。
【0087】
以上、本発明の実施の態様について説明してきたが、本発明が上記実施の態様に限定されるものでないことはいうまでもなく、種々の変形が可能である。例えば、上記実施の態様では、IPAをミスト状または蒸気状にしてウエハWへ供給したが、IPAに代えて界面活性剤を添加した薬剤を用いることができる。このような界面活性剤が添加された薬剤をミスト状または蒸気状にしてウエハWに供給することで、ウエハWにウォーターマークが発生することを有効に防止することができる。界面活性剤が添加された薬剤のベースとなる溶剤は、水であってもよく、エーテル等の有機溶剤であってもよい。
【0088】
また、上記実施の態様では外側チャンバ26および内側チャンバ27の2つの処理チャンバを用いて洗浄処理を行う場合について説明したが、チャンバは1つであってもよいし、3つ以上あってもよい。さらに、洗浄処理ユニット100にウエハWの表面に当接するブラシを設けて、ウエハWの表面をスクラブ洗浄することも可能である。上記実施の態様では本発明を半導体ウエハの洗浄処理に適用した場合について示したが、これに限らず、本発明は、液晶表示装置(LCD)用基板等、他の基板の洗浄処理にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の一実施形態に係る洗浄処理装置を具備する洗浄処理システムを示す斜視図。
【図2】図1に示した洗浄処理システムの概略構成を示す平面図。
【図3】図1の洗浄処理システムの一構成要素である本発明の一実施形態に係る洗浄処理ユニットを示す断面図。
【図4】図3に示した洗浄処理ユニットにおいて、内側チャンバを外側チャンバの外部に出した状態を示す概略断面図。
【図5】図3に示した洗浄処理ユニットにおいて、外側チャンバの内部に内側チャンバを配置した状態を示す概略断面図。
【図6】外側チャンバに設けられた各種の吐出ノズルの取り付け位置を示す正面図および展開図。
【図7】図3に示した洗浄処理ユニットにおいて、IPA吐出ノズルからミスト状IPAを吐出させる機構の例を示す模式図。
【図8】図3に示した洗浄処理ユニットにおいて、IPA吐出ノズルから蒸気状IPAを吐出させる機構の一例を示す模式図。
【図9】図3に示した洗浄処理ユニットにおいて、IPA吐出ノズルから蒸気状IPAを吐出させる機構の他の例を示す模式図。
【図10】本発明の別の実施態様に係る洗浄処理ユニットを示す概略平面図。
【図11】図10に示した洗浄処理ユニットに設けられた洗浄処理カップとその内部構造を示す概略断面図。
【符号の説明】
【0090】
1;洗浄処理システム
2;イン・アウトポート
3,100;洗浄処理ユニット
4;ステージ部
20;洗浄処理部
23;モータ
24;ロータ
26;外側チャンバ
27;内側チャンバ
30;キャリア待機部
40;ウエハ移動機構
51;処理空間
53・55;吐出口
54・56;吐出ノズル
76;IPA吐出ノズル
77;IPA供給管
78a;切替制御弁
78b;N制御弁
79;IPA供給源
80;Nガス供給源
91;高温Nガス供給源
122;処理カップ
123;スピンチャック
180;洗浄液供給機構
190;IPA供給機構
W;半導体ウエハ(基板)
C;キャリア(基板収納容器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理容器内に保持された基板の洗浄処理方法であって、
前記基板を停止または低速回転させた状態において、蒸気状の薬剤を前記基板に供給する第1工程と、
前記薬剤の供給を停止した後に前記基板を前記低速回転よりも高い回転速度で高速回転させることにより前記基板に付着した薬剤を振り切る第2工程と、
を有し、
前記第1工程では、薬剤を吐出するノズルまたは前記ノズルに薬剤を供給する薬剤供給管に前記薬剤を滞留させた後に前記薬剤供給管に高温のガスを供給することにより、前記薬剤を蒸気状として基板に供給することを特徴とする洗浄処理方法。
【請求項2】
前記薬剤は、揮発性薬剤であることを特徴とする請求項1に記載の洗浄処理方法。
【請求項3】
前記薬剤は、界面活性剤を含む溶剤であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の洗浄処理方法。
【請求項4】
前記処理容器内には、複数の基板が略垂直な状態で水平方向に並べられて保持されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の洗浄処理方法。
【請求項5】
前記高速回転は300rpm以上800rpm以下の回転速度で行われることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の洗浄処理方法。
【請求項6】
前記低速回転は100rpm以下の回転速度で行われることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の洗浄処理方法。
【請求項7】
前記第1工程の後、基板にNガスを吹き付けて乾燥することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の洗浄処理方法。
【請求項8】
基板に洗浄液を供給して洗浄処理を行う洗浄処理装置であって、
基板を収容する処理容器と、
前記処理容器内で基板を保持する保持手段と、
前記保持手段を回転させる回転機構と、
前記洗浄液を前記基板に向けて吐出する洗浄液供給機構と、
薬剤をミスト状または蒸気状として前記保持手段に保持された基板に供給する薬剤供給機構と、
を具備し、
前記薬剤供給機構は、前記薬剤を吐出する吐出ノズルと、前記吐出ノズルに前記薬剤を送液する薬剤供給管と、前記吐出ノズルまたは前記薬剤供給管に前記薬剤を滞留させる機構と、前記薬剤供給管に高温のガスを供給するガス供給機構とを有し、前記吐出ノズルまたは前記薬剤供給管に滞留された前記薬剤が前記ガス供給機構から供給された高温ガスにより加熱されて蒸気状となり、この蒸気状の薬剤が前記吐出ノズルから吐出されることを特徴とする洗浄処理装置。
【請求項9】
前記薬剤は、揮発性薬剤であることを特徴とする請求項8に記載の洗浄処理装置。
【請求項10】
前記薬剤は、界面活性剤を含む溶剤であることを特徴とする請求項8または請求項9に記載の洗浄処理装置。
【請求項11】
前記保持手段には、複数の基板が略垂直な状態で水平方向に並べられて保持されることを特徴とする請求項8から請求項10のいずれか1項に記載の洗浄処理装置。
【請求項12】
前記処理容器は、外側チャンバと内側チャンバにより、別個に略密閉された処理室を形成することができる二重チャンバ構造を有することを特徴とする請求項8から請求項11のいずれか1項に記載の洗浄処理装置。
【請求項13】
前記保持手段は1枚の基板を略水平に保持することを特徴とする請求項8から請求項12のいずれか1項に記載の洗浄処理装置。
【請求項14】
前記処理容器は、前記保持手段に保持された基板を囲繞するように配置された処理カップであることを特徴とする請求項13に記載の洗浄処理装置。
【請求項15】
前記ミスト状または蒸気状の薬剤が供給された基板にNガスを吐出する吐出ノズルをさらに具備することを特徴とする請求項8から請求項14のいずれか1項に記載の洗浄処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−34872(P2008−34872A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−260618(P2007−260618)
【出願日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【分割の表示】特願2001−221274(P2001−221274)の分割
【原出願日】平成13年7月23日(2001.7.23)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】