説明

洗浄液噴射装置

【課題】洗浄液を良好に発泡させることができ、しかも取扱性に優れた洗浄液噴射装置を提供する。
【解決手段】発泡性の洗浄液を貯留する容器1と、圧縮空気を一定方向に流通させ、その圧縮空気の負圧で前記容器1内の洗浄液を吸引する吸引管2と、該吸引管で吸引された洗浄液を圧縮空気とともに噴射口17から噴射するノズル3とを具備し、前記ノズル3は、吸引管側から噴射口側に向かって、吸引管よりも内径が大きい大径部18a、吸引管の断面中心と噴射口の断面中心とを結ぶ直線19から内壁面までの距離が噴射口側ほど小さいテーパ部18bが順に形成され、該テーパ部内に多孔質な発泡促進部材20が装入されている構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、発泡性の洗浄液を良好に泡立てて噴射することができ、洗車等に使用するのに好適な洗浄液噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガソリンスタンド、洗車場等において、洗剤、ワックス等を含む発泡性の洗浄液を泡立てた状態で車体に噴射して洗車することが行われている。その際に使用される洗浄液噴射装置は、大別すると、据付型洗車機に組み込まれているような大型のものと、人手で操作するガンタイプのような小型のものとになる。このうち小型のものは、場所を取らず比較的安価であるという利点がある反面、洗浄液が良好に発泡せず洗浄力を充分に発揮できないという難点があった。
【0003】
この難点に対する一つの対策が特許文献1に記載されている。それは、ミスト状の洗浄液を圧縮ガスとともに多孔質部材を通過させることにより、洗浄液と圧縮ガスとを混ざり合わせてクリーム状に発泡させるというものである。
【特許文献1】特開2001−347238号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の装置(「発泡洗浄装置」)には、下記の問題点があると思われる。
【0005】
第一の問題点は、発泡作用についてである。この装置のケーシングは、多孔質部材が収納されている拡大部の断面積が導入部及び導出部に比較して極端に大きく、しかも拡大部と導入部、及び拡大部と導出部の断面積変化が急である。ケーシングがこの形状であると、多孔質部材を通過するミスト状洗浄液及び圧縮ガスの流れが、導入部と導出部とを結ぶ中心部では速く、そこから遠ざかるほど遅くなるので、流速の違いによる発泡状態の差異が生じ、全体的に均一な滑らかさに欠けるとともに、拡大部の導入部周辺域および導出部周辺域で乱流が生じることにより、泡の状態が不安定であると推測される。
【0006】
第二の問題点は、装置の取扱性についてである。すなわち、第一の問題点で指摘したように、ケーシング拡大部が極端に大きいので、発泡した洗浄液を洗浄対象物に噴射するときに、ケーシングが邪魔になって噴射位置を視覚認識しにくく、作業を行うことの障害になることが予想される。
【0007】
本発明は、従来装置にみられる問題点を解消し、洗浄液を良好に発泡させることができ、しかも取扱性に優れた洗浄液噴射装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は次のように構成した。すなわち、請求項1に記載の洗浄液噴射装置は、発泡性の洗浄液を貯留する容器と、圧縮空気を一定方向に流通させ、その圧縮空気の負圧で前記容器内の洗浄液を吸引する吸引管と、該吸引管で吸引された洗浄液を圧縮空気とともに噴射口から噴射するノズルとを具備し、前記ノズルは、吸引管側から噴射口側に向かって、吸引管よりも内径が大きい大径部、吸引管の断面中心と噴射口の断面中心とを結ぶ直線から内壁面までの距離が噴射口側ほど小さいテーパ部が順に形成され、該テーパ部内に多孔質な発泡促進部材が装入されていることを特徴としている。
【0009】
この構成によれば、吸引管を一定方向に流通する圧縮空気の負圧によって容器内の洗浄液が吸引され、その吸引された洗浄液がノズルの大径部に放出されることにより拡散して霧状化し、その霧状化した洗浄液が多孔質な発泡促進部材を通過する際に洗浄液と圧縮空気とが混じり合って発泡する。発泡した洗浄液は、ノズルの噴射口から噴射される。テーパ部が前記形状であるので、発泡促進部材を通過する洗浄液の流れが円滑であり、通過位置の違いによる速度差がなく、また噴出口付近での乱流も生じない。このため、発泡が均等に効率良く行われる。
【0010】
また、上記のように洗浄液の流れが円滑で発泡の効率が良いので、ノズルの外形を小さくすることが可能である。
【0011】
請求項2に記載の洗浄液噴射装置は、請求項1に記載の構成に加えて、前記噴射口と前記発泡促進部材との間に、同一形状及び同一寸法の複数の連通孔が整列状態に配置された網状の発泡安定化部材が装入されている構成とした。
【0012】
この構成とすると、発泡した洗浄液が発泡安定化部材の連通孔を通り抜ける際に泡の大きさや並びが揃えられるので、噴射される洗浄液の泡が均一化かつ安定化する。
【発明の効果】
【0013】
本発明にかかる洗浄液噴射装置は、霧状の洗浄液が発泡促進部材を円滑に流れて通過するとともに、発泡した洗浄液が発泡安定化部材の連通孔を通過する際に泡の大きさや並びが揃えられることにより、均一で安定した洗浄液の泡が噴射されるようになった。また、ノズルの外形を小さくすることが可能であるので、洗浄液噴射作業を行いやすくなった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
発泡性の洗浄液を貯留する容器と、圧縮空気を一定方向に流通させ、その圧縮空気の負圧で前記容器内の洗浄液を吸引する吸引管と、該吸引管で吸引された洗浄液を圧縮空気とともに噴射口から噴射するノズルとを具備する。前記ノズルは、吸引管側から噴射口側に向かって、吸引管よりも内径が大きい大径部、吸引管の断面中心と噴射口の断面中心とを結ぶ直線から内壁面までの距離が噴射口側ほど小さいテーパ部が順に形成されている。そして、該テーパ部内に多孔質な発泡促進部材が装入されている。また、前記噴射口と前記発泡促進部材との間に、同一形状及び同一寸法の複数の連通孔が整列状態に配置された網状の発泡安定化部材が装入されている。
【実施例】
【0015】
図1及び図2は上記最良の形態の実施例を表わしており、図1はその全体図、図2はその主要部の断面図である。図におけるAは洗浄液噴射装置である洗浄液噴射ガン、1は容器、2は吸引管、3はノズルである。
【0016】
また、4は洗浄液噴射装置Aを把持するグリップを兼ねる空気導入管で、その一端部には図示しない圧縮空気供給手段につながる空気ホース5が接続され、他端部には吸引管2が接続されている。噴射レバー6を操作すると開閉弁7が開き、空気ホース5を通って供給される圧縮空気が空気吐出口8から吸引管2内へ吐出されるようになっている。空気ホース5との接続部には、圧縮空気の供給を遮断する元栓9が設けられている。
【0017】
吸引管2は、細長い空気通路10を有する管で、その空気通路10の内部に挿入されている空気導入管4の端部に前記空気吐出口8が開口している。また、空気吐出口8よりも空気吐出方向下流側の側壁に、洗浄液容器1内と連通する洗浄液吸引口11が開口している。
【0018】
容器1は、容器本体12と、該容器本体の上部にねじによって着脱自在に取り付けられる蓋13とからなり、蓋13と一体に形成された連結部14により吸引管2に対し回動自在に連結されている。前記洗浄液吸引口11に接続された吸引ホース15が容器1内に垂下し、その下端部に洗浄液取込部材16が取り付けられている。なお、容器1の内外を連通する空気孔(図示せず)が蓋13に形成されている。容器1に入れる洗浄液Bとしては、洗剤単独もしくは洗剤とワックスの混合液が用いられる。蓋13に対して容器本体12を外すことにより、洗浄液の補充、交換が可能である。
【0019】
ノズル3は、一端が吸引管1に連結され他端に噴射口17が形成されたケーシング18を備えている。このケーシング18は、吸引管1の断面中心と噴射口17の断面中心とを結ぶ直線19を中心軸とする断面円形の筒状体で、吸引管側から噴射口側に向かって、吸引管1よりも内径が大きく拡張した大径部18a、該大径部に連続して内径が噴射口側へいくほど次第に小さくなるテーパ部18bが順に形成されている。ケーシング18は、大径部18aを構成する部材とテーパ部18bを構成する部材とに2分割されており、両部材をねじにより一体化している。
【0020】
20は発泡促進部材で、テーパ部18b内に、内壁との間にほとんど隙間がなく、かつ噴射口17との間に空間21が開くように装入されている。この装入状態においては、Oリング22によって発泡促進部材20の吸引管の側への移動が規制されている。発泡促進部材20は、スポンジ等のように多数の孔が密集している多孔質材料が適している。孔の大きさ(目の粗さ)は使用する洗浄液の種類に応じて選択するとよい。例えば、洗浄液として洗剤を単独使用する場合には比較的目の粗い発泡促進部材が好ましく、洗浄液として洗剤とワックスの混合液を使用する場合には比較的目の細かい発泡促進部材が好ましい。ケーシング18は大径部18aとテーパ部18bとに分離可能であるので、発泡促進部材20の交換は容易である。
【0021】
23は発泡安定化部材で、前記空間21に該空間を発泡促進部材側と噴射口側に分断するように設けられている。発泡安定化部材23は、同一形状及び同一寸法の複数の連通孔23a,…が整列状態に配置された網状になっている。連通孔23aの大きさは、発泡促進部材20の目の粗さに合わせて選択するとよい。例えば、図3に示すように、発泡安定化部材23を籠形に成形して発泡促進部材20に取り付けておけば、発泡安定化部材23の位置決め及び交換が容易である。
【0022】
この洗浄液噴射ガンAは以上の構成で、使用に際しては、ノズル3を洗浄対象物に向けて噴射レバー6を操作する。すると、圧縮空気供給手段から供給される圧縮空気が空気導入管4に導入され、該空気導入管の空気吐出口8から吸引管2の空気通路10へ圧縮空気が吐出される。圧縮空気が空気通路10を一定方向に流通することにより、その負圧によって容器1内の洗浄液Bが吸引される。吸引された洗浄液は、圧縮空気とともにノズル3の大径部18aに放出される。これにより、洗浄液が拡散して霧状化する。
【0023】
その霧状化した洗浄液が多孔質な発泡促進部材20を通過する際に、洗浄液と圧縮空気とが混じり合って発泡する。発泡促進部材20が装入されているケーシング18のテーパ部18bは断面円形で、噴射口側へいくほど次第に内径が小さくなっているので、発泡促進部材20を通過する洗浄液及び圧縮空気の流れは、各部ほぼ均等に吸引管1の断面中心と噴射口17の断面中心とを結ぶ直線19に向かって集まってゆく円滑な流れになる。このため、通過位置の違いによる速度差がなく、発泡が均等に効率良く行われる。
【0024】
発泡促進部材20で発泡した洗浄液は、発泡安定化部材23の連通孔23a,…を通り抜けて噴射口17側へ移動する。このとき、泡の大きさや並びが揃えられるので、発泡洗浄液が均一化かつ安定化する。そして、この発泡洗浄液が、噴射口17から洗浄対象物に向けて噴射される。
【産業上の利用可能性】
【0025】
上記実施例はガンタイプの洗浄液噴射装置であるが、本発明は据付型洗車機等に設けられる大型の洗浄液噴射装置にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】洗浄液噴射装置の全体図である。
【図2】洗浄液噴射装置の主要部の断面図である。
【図3】発泡促進部材及び発泡安定化部材の斜視図である。
【符号の説明】
【0027】
A 洗浄液噴射ガン(洗浄液噴射装置)
B 洗浄液
1 容器
2 吸引管
3 ノズル
4 空気導入管
17 噴射口
18 ケーシング
18a 大径部
18b テーパ部
19 噴射口の断面中心とを結ぶ直線
20 発泡促進部材
23 発泡安定化部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡性の洗浄液を貯留する容器と、圧縮空気を一定方向に流通させ、その圧縮空気の負圧で前記容器内の洗浄液を吸引する吸引管と、該吸引管で吸引された洗浄液を圧縮空気とともに噴射口から噴射するノズルとを具備し、前記ノズルは、吸引管側から噴射口側に向かって、吸引管よりも内径が大きい大径部、吸引管の断面中心と噴射口の断面中心とを結ぶ直線から内壁面までの距離が噴射口側ほど小さいテーパ部が順に形成され、該テーパ部内に多孔質な発泡促進部材が装入されていることを特徴とする洗浄液噴射装置。
【請求項2】
前記噴射口と前記発泡促進部材との間に、同一形状及び同一寸法の複数の連通孔が整列状態に配置された網状の発泡安定化部材が装入されている請求項1に記載の洗浄液噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−346611(P2006−346611A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−177388(P2005−177388)
【出願日】平成17年6月17日(2005.6.17)
【出願人】(505230456)宝来産業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】