説明

洗浄装置とこれを備える粉粒体処理装置

【課題】 湿潤状態のまま投入される円柱状造粒品を球形とする球形整粒機は、整粒円板の上面の凹凸が、特に外周部において詰まり易い。そこで、整粒円板に付着した湿粉を、迅速かつ確実に除去する。
【解決手段】 洗浄装置32は、回転する整粒円板17の外周部の一部に被さるカバー33を備える。このカバー33には、ノズル39が設けられており、このノズル39は、カバー33が被せられた洗浄対象面へ流体を噴射させる。カバー33が洗浄対象面との間で形成する空間内の流体は、真空接続口36から外部へ吸引排出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉粒体(粉体および/または粒体)を取り扱う各種装置と、その装置に付着した粉粒体を除去する洗浄装置とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に代表されるように、湿潤状態の円柱状粒を球形とする球形整粒機が知られている。球形整粒機では、円筒状の中空ケース内に、原料として円柱状粒が湿潤状態のまま投入される。中空ケース内の底部では、凹凸が刻まれた円板が回転している。これに伴い、投入された湿潤状態の円柱状粒は、破砕されつつ球形に整えられる。
【0003】
球形整粒機の使用に伴い、回転円板の凹凸は、原料から発生する湿粉で詰まるおそれがある。特に、下記特許文献2に記載のように、回転円板の外周部の凹凸は詰まり易い。凹凸が詰まった回転円板は、球形への整粒作用が劣るので、その洗浄が必要となる。
【0004】
従来、洗浄は、整粒機の運転を止めた状態で、回転円板の凹凸に詰まった湿粉を、ヘラやブラシで擦り剥して行われている。しかしながら、その作業には多大な労力と時間を要する。また、ヘラやブラシによる擦り剥しは、金属などの破片を生じさせて、それが製品に混入されるおそれもある。一方、水による洗浄の併用は、効果的ではあるが、乾燥または拭き取りが必要で、作業に長時間を要する。しかも、万一、水や薬液が残留した場合には、不良製品を生むことになる。
【0005】
このような事情を考慮し、下記特許文献2では、回転円板の外周部には凹凸を形成しないことが提案されている。最も詰まり易い箇所には、凹凸を形成しないで対処しようとするものである。
【特許文献1】特公昭41−563号公報
【特許文献2】特許第3886165号公報 (請求項1、段落番号[0006]−[0008])
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
回転円板の外周部は、最も湿粉が詰まり易いが、逆にいうと、球形への整粒作用を最も果たしている箇所といえる。従って、前記特許文献2に記載の発明のように、回転円板の外周部に凹凸を形成せずに対処するのではなく、回転円板の外周部に凹凸を形成しつつ、その凹凸に湿粉が詰まった場合に、迅速で確実にその除去を行う方が好ましい。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、球形への整粒作用を落とすことなく、迅速で確実に、回転円板に付着した湿粉を除去することにある。また、球形整粒機に限らず、他の粉粒体処理装置においても同様の問題があることに鑑み、装置に付着した湿粉を迅速かつ確実に除去できる洗浄装置と、その洗浄装置を備える粉粒体処理装置とを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記課題を解決するためになされたもので、粉粒体が付着しているかその可能性のある洗浄対象面に被せられるカバーと、このカバーが被せられた前記洗浄対象面へ流体を噴射させるノズルと、前記カバーが前記洗浄対象面との間で形成する空間内の流体を、外部へ吸引排出する真空引き手段とを備えることを特徴とする洗浄装置である。
【0009】
本発明はまた、前記構成に加えて、前記カバーは、前記洗浄対象面に近接するが接触しないで配置され、前記洗浄対象面に対し相対移動することを特徴とする洗浄装置である。
【0010】
本発明はまた、前記構成に加えて、前記洗浄対象面は、円板または円筒に存在し、この円板または円筒の周方向一部に、前記カバーが配置され、前記円板または円筒の軸心を中心として、その円板または円筒に対し前記カバーが相対回転されることを特徴とする洗浄装置である。
【0011】
本発明はまた、前記いずれかの洗浄装置を備えることを特徴とする粉粒体処理装置である。
【0012】
本発明はまた、より具体的には、前記粉粒体処理装置は、湿潤状態のまま投入される円柱状粒を球形とする球形整粒機とされ、円筒状の壁面を有するケースと、上面に凹凸が形成された円板から形成され、その外周縁が前記ケースの内周面に近接して回転する整粒円板と、この整粒円板の外周部の一部において、その整粒円板の上面に近接するが接触しないで配置される洗浄位置か、それよりも上方または外方へ移動した収納位置かに択一的に配置される前記カバーと、前記整粒円板の上面の内、前記カバーが被せられた箇所へ流体を噴射させる前記ノズルと、前記カバーが前記整粒円板の上面との間で形成する空間内の流体を、外部へ吸引排出する前記真空引き手段とを備えることを特徴とする粉粒体処理装置である。
【0013】
本発明はまた、前記構成に加えて、前記カバーは、前記洗浄位置では、前記ケースの周側壁から内方へ突出される一方、前記収納位置では、突出側端面を前記ケースの内周面と連続的に配置する位置まで後退されることを特徴とする粉粒体処理装置である。
【0014】
本発明はまた、前記ケースの内周面と前記整粒円板の外周縁との隙間へ空気を噴射させる補助ノズルをさらに備えることを特徴とする粉粒体処理装置である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、粉粒体処理装置に付着した湿粉を、迅速かつ確実に除去することができる。たとえば球形整粒機に適用した場合、球形への整粒作用を落とすことなく、迅速で確実に、回転円板に付着した湿粉を除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
つぎに、本発明の実施の形態について説明する。
本発明の洗浄装置は、粉粒体を取り扱う各種装置(粉粒体処理装置)において、その装置に付着した粉粒体を除去するのに用いられる。粉粒体処理装置としては、特に問わないが、たとえば、整粒機、湿式または乾式の造粒機、乾燥機、混練機、混合機、流動層装置、コーティング機が含まれる。特に、本発明の洗浄装置は、湿潤状態の円柱状粒を球形とするための球形整粒機に好適に用いられる。
【0017】
本発明の一実施形態では、図1に示すように、洗浄装置1は、カバー2、ノズル3および真空引き手段4を備える。カバー2は、少なくとも一面へ開口した中空ボックス状に形成されている。図1において、カバー2は、下方へ開口した中空ボックス状に形成されている。このカバー2は、その開口部を洗浄対象面5へ向けて、粉粒体処理装置の壁面などに配置して用いられる。洗浄対象面5とは、粉粒体(乾粉および/または湿潤粉末)6の付着面であり、粉粒体6が現に付着しているか、または付着している可能性のある面である。洗浄対象面5は、凹凸のない平面であってもよいし、規則的または不規則な凹凸のある面であってもよい。
【0018】
カバー2は、洗浄対象面5に被せられるが、洗浄対象面5のすべてを覆う必要はなく、洗浄対象面5の一部を覆うもので足りる。カバー2が洗浄対象面5を局所的に覆う場合も、カバー2と洗浄対象面5とを相対移動させることで、幅広い面積を洗浄することができる。
【0019】
カバー2には、その開口部へ向けて流体を噴射させるノズル3が設けられる。ノズル3には加圧流体が供給され、その流体はカバー2の開口部へ向けて噴射される。従って、洗浄対象面5にカバー2を被せた状態でノズル3から流体を噴射させると、ノズル3からの流体で洗浄対象面5に付着した粉粒体6の剥離が図られる。ノズル3から噴射させる流体としては、特に問わないが、たとえば、水、蒸気、空気、アルコール、または洗剤である。なお、加熱された流体をノズル3から噴射させてもよい。たとえば、温水もしくは熱水、または、温風もしくは熱風を、ノズル3から噴射させてもよい。
【0020】
ノズル3は、一種類の流体(所望の液体または気体)を噴射する構成であってもよいし、二種類以上の流体(所望の液体と気体など)を噴射する構成であってもよい。後者のような複合ノズルを用いる場合、たとえば水と空気、または水と洗剤を、ノズル3から噴射させることができる。但し、複合ノズルを用いることに代えて、一つのカバー2に複数のノズル3を設けてもよい。
【0021】
カバー2が洗浄対象面5との間で形成する空間7内の流体は、真空引き手段4により、外部へ吸引排出される。これにより、カバー2内の空間は、カバー2外の空間よりも負圧に維持される。従って、ノズル3から噴射された流体(液体および/または気体)や、その流体によって洗浄対象面5から剥離された粉粒体6が、カバー2外へ飛散するのが防止される。つまり、ノズル3から噴射された流体や、その流体によって洗浄対象面5から剥離された粉粒体6は、真空引き手段4により吸引排出される。
【0022】
真空引き手段4は、特に問わないが、典型的には真空ポンプから構成される。カバー2と真空引き手段4とを接続する排気路8に、吸引された粉粒体6を除去するストレーナやフィルタを設けてもよい。また、それに代えてまたはそれに加えて、その排気路8に、気水分離器を設けてもよい。なお、カバー2には、複数の真空接続口9を設けてもよい。
【0023】
このような構成の洗浄装置1は、洗浄対象面5に対し相対移動可能とされるのがよい。その際、位置決めされた洗浄対象面5に対し、カバー2を移動させてもよいし、逆に、位置決めされたカバー2に対し、洗浄対象面5を移動させてもよい。あるいは、カバー2と洗浄対象面5との双方を移動させてもよい。カバー2と洗浄対象面5とを相対移動させることで、コンパクトな構成で、広範囲の洗浄が可能となる。
【0024】
カバー2と洗浄対象面5とを相対移動させる場合、カバー2は、洗浄対象面5に可能な限り近接するが接触しないで配置するのがよい。これにより、ノズル3から噴射される流体とその流体により剥離される粉粒体6のカバー2外への漏れを防止すると共に、カバー2と洗浄対象面5との相対移動を円滑に行うことができる。但し、図1において、カバー2の下端部に車輪などを設け、それが洗浄対象面5に接触しつつ相対移動する構成としてもよい。
【0025】
本実施形態の洗浄装置1によれば、洗浄対象面5にカバー2を被せて、ノズル3から流体を噴射することで、洗浄対象面5に付着していた粉粒体6を剥離除去できる。その際、ノズル3からの噴射流体とそれにより剥離される粉粒体6とは、真空引き手段4により吸引され、カバー2外へ飛散することが防止される。また、カバー2は、洗浄対象面5に局所的に設けられるが、洗浄対象面5と相対移動させることで、洗浄対象面5の全体の洗浄が可能となる。
【0026】
本実施形態の洗浄装置1は、カバー2内が負圧に保たれ、ノズル3からの洗浄用加圧流体と、それにより洗浄対象面から剥離される粉粒体6とが回収される構成であればよい。従って、洗浄対象面5は、図1に示すような水平面ではなく、図2に示すような傾斜面、または図3に示すような垂直面であってもよい。また、洗浄対象面5は、図1に示すような上面ではなく、図4に示すような下面であってもよい。このように、洗浄装置1は、カバー2の開口部を任意の方向へ向けて、使用することができる。
【0027】
洗浄対象面5は、平面でなく、円筒面や球面などの任意の曲面であってもよい。たとえば、図5に示すような円弧上の曲面、図6に示すような球面、または図7に示すようなその他の曲面であってもよい。また、図8および図9に示すように、カバー2の一または複数の側壁を省略または切り欠いて、角部の洗浄を可能とすることもできる。
【0028】
上述したとおり、カバー2は、洗浄対象面5と相対移動する。この相対移動は、たとえば、ロボットアームやテーブルなどを用いてなされる。回転円板の表面が洗浄対象面である場合、回転円板の周方向一部にカバー2を配置するだけで、周方向全域の洗浄が可能となる。この場合において、カバー2を円板の半径方向へ移動させつつ洗浄すれば、円板の全体の洗浄が可能となる。図10に示すように、回転円筒10の底面が洗浄対象面5である場合も同様である。
【0029】
図10では、回転円筒10の周側面が洗浄対象面5である場合も示しており、その場合も、回転円筒10の周方向一部にカバー2を配置するだけで、周方向全域の洗浄が可能となる。この場合において、カバー2を円筒10の軸方向へ移動させつつ洗浄すれば、円筒10の周側面全体の洗浄が可能となる。
【0030】
円板を回転させる代わりに、図11に示すように、カバー2を軸まわりに回転させてもよい。また、円筒を回転させる代わりに、図12に示すように、カバー2を軸まわりに回転させてもよい。
【0031】
その他、ロボットアームなどを用いて、カバー2が洗浄時以外は洗浄対象面5から離れる構成としてもよい。また、一つの粉粒体処理装置内に、複数のカバー2を設置してもよい。また、ロボットアームなどを用いて、一つのカバー2を、複数の粉粒体処理装置に使用してもよい。さらに、洗浄時以外は、カバー2が粉粒体処理装置に収納されてもよい。この場合、エアシリンダなどを用いて、カバー2は、洗浄位置と収納位置とのいずれかに、択一的に配置される。
【0032】
洗浄装置1は、粉粒体処理装置に組み込むことができる。その場合、洗浄装置付きの粉粒体処理装置となる。たとえば、湿潤状態のまま投入される円柱状粒を球形とするための球形整粒機に、上述した洗浄装置1を組み込むことができる。
【0033】
本発明の一実施形態の球形整粒機は、処理容器として、円筒状の壁面を有するケースを備える。円筒状ケース内の底部には、整粒円板が回転可能に保持されている。この整粒円板は、その外周縁がケースの内周面に近接して回転する。整粒円板の上面には、凹凸が形成されている。
【0034】
整粒円板の外周部の一部には、前記ノズル付きのカバーが設けられる。このカバーは、整粒円板の上面に近接するが接触しないで配置される洗浄位置と、それよりも上方または径方向外方へ移動した収納位置との内、いずれかに択一的に配置される。たとえば、カバーは、洗浄位置では、ケースの周側壁から内方へ突出される一方、収納位置では、突出側端面をケースの内周面と連続的に配置する位置まで後退される。
【0035】
カバー内には、前述したとおり、ノズルが設けられている。このノズルは、整粒円板の上面の内、カバーが被せられた箇所へ流体を噴射可能である。また、カバーには、前述したとおり、真空引き手段が接続されている。この真空引き手段は、カバーが整粒円板の上面との間で形成する空間内の流体を、外部へ吸引排出する。
【0036】
球形整粒機は、ケースの内周面と整粒円板の外周縁との隙間へ、下方へ向けて空気を噴射させる補助ノズルをさらに備えてもよい。整粒円板の上方から補助ノズルを用いて前記隙間へ空気を噴射させる際には、整粒円板の下方から真空引きを図るのがよい。これにより、ノズルからの水が、万一カバー外に漏れ出て、整粒円板の回転による遠心力によりケースの内周面に付着しても、上方からの加圧空気と、下方からの真空引きとで、整粒円板の下方へ円滑に排出することができる。
【実施例】
【0037】
以下、本発明の具体的実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
図13および図14は、粉粒体処理システムの一例を示す図であり、図13は正面図、図14は側面図である。粉粒体処理システムは、複数の粉粒体処理装置を組み合わせて構成される。どのような粉粒体処理装置をどのように組み合わせるかは、適宜に設計されるが、図示例の粉粒体処理システムは、原料供給機11、押出造粒機12、ホッパー13、および球形整粒機14を備える。
【0038】
原料供給機11は、混練物を押出造粒機12へ供給する。押出造粒機12は、原料供給機11から混練物を供給され、その混練物から造粒品を製造する。具体的には、湿潤状態の円柱状造粒品を製造する。ホッパー13は、押出造粒機12からの造粒品を一時的に蓄え、その造粒品を必要に応じて球形整粒機14へ供給する。球形整粒機14は、湿潤状態の円柱状造粒品をホッパー13から供給され、その円柱状造粒品を適宜破砕しつつ球形に整える。この球形整粒機14には、以下に述べるように、本発明の洗浄装置の一実施例が組み込まれている。
【0039】
図15および図16は、本発明の洗浄装置の一実施例を備える球形整粒機14の一例を示す図であり、図15は縦断面図、図16は平面図である。本実施例の球形整粒機14は、処理容器として、上方へ開口した円筒状のケース15を備える。ケース15内には、ケース15の底壁16から上方へ離隔して、整粒円板17が回転可能に水平に保持される。
【0040】
整粒円板17は、上面に適宜の凹凸が形成された円板である。図示例では、格子状に細かな溝18,18,…を形成しているが、同心円状の溝と径方向へ延びる溝との組合せでもよい。また、溝を形成する代わりに、突起を形成してもよい。整粒円板17の上面にどのような溝または突起を形成するかは、適宜に設計される。溝または突起の断面形状は、特に問わないが、本実施例では、図17に示すように、断面逆三角形状の溝18とされている。
【0041】
整粒円板17の外周面19は、上方へ行くに従って径方向外側へ傾斜して形成される。整粒円板17の最外径(上面の外径)は、ケース15の内径よりも僅かに小さい。これにより、整粒円板17の上面の外周縁は、ケース15の内面にほぼ密接するよう配置される。
【0042】
整粒円板17は、モータ20により回転可能とされる。モータ20は、ケース15の下部に設けられる。モータ20の回転駆動力は、減速機21を介して、駆動軸22に伝達される。駆動軸22は、ケース15の底壁16を上下に貫通し、整粒円板17の中央部と接続される。これにより、モータ20を駆動させると、駆動軸22が整粒円板17を回転させる。
【0043】
ケース15の上部開口には、蓋板23が設けられ、この蓋板23の中央部には、原料投入筒24が設けられる。この原料投入筒24を介して、ケース15内に原料が供給可能とされる。すなわち、押出造粒機12からの湿潤状態の円柱状造粒品は、ホッパー13および原料投入筒24を介して、ケース15内へ供給可能とされる。
【0044】
整粒円板17を高速回転させた状態で、ケース15内へ湿潤状態の円柱状造粒品を供給すると、その円柱状造粒品は適宜破砕されつつ球形に成形される。球形とされた整粒品は、排出装置25を介して取り出される。
【0045】
排出装置25は、ケース15の周方向一部に設けられる。具体的には、ケース15の周側壁26の一部には、整粒円板17の上面と対応した高さに、排出口27が形成されており、この排出口27は排出蓋28にて開閉可能とされる。排出蓋28は、エアシリンダ29にて、ケース15の径方向へ進退可能とされる。エアシリンダ29のロッド30を伸長した状態で、排出蓋28は排出口27を閉じる。その状態では、排出蓋28の先端面は、ケース15の内周面と連続的に配置される。一方、エアシリンダ29のロッド30を短縮した状態では、排出蓋28がケース15の径方向外側へ後退して、排出口27を開ける。従って、整粒円板17を回転させた状態で、排出口27を開けると、遠心力で整粒品を排出口27からケース15外へ排出することができる。
【0046】
球形整粒機14を運転するに伴い、整粒円板17の凹凸(本実施例では溝18)は、原料から発生する湿粉31(図17)で詰まるおそれがある。特に、整粒円板17の外周部において、凹凸は詰まり易い。この詰まりを解消するために、球形整粒機14のケース15には、排出装置25と対向した箇所に、洗浄装置32が設けられる。球形整粒機14は、バッチ運転されるので、そのバッチ間に洗浄装置32にて整粒円板17の洗浄を図ることができる。
【0047】
図17および図18は、洗浄装置32の一実施例を示す縦断面図であり、図17はカバー33が洗浄位置にある状態、図18はカバー33が収納位置にある状態を示している。ケース15の周側壁26には、整粒円板17の上面と対応した高さに、矩形の貫通穴34が形成されている。より具体的には、矩形の貫通穴34は、その下辺が整粒円板17の上面と対応した高さに配置される。この貫通穴34を介して、洗浄装置32のカバー33は、ケース15内へ突出可能とされる。カバー33は、下方および基端側(図17において右側)へ開口した矩形ボックス状とされている。
【0048】
ケース15の外周部には、前記貫通穴34が形成された位置と対応して、中空ボックス状の外カバー35が固定されている。この外カバー35は、真空接続口36を介して真空引き手段(不図示)に接続される。真空引き手段として、本実施例では真空ポンプ(不図示)が使用される。従って、真空ポンプを作動させることで、外カバー35内、ひいてはカバー33内の流体が外部へ吸引排出される。
【0049】
カバー33は、エアシリンダ37にて、ケース15の径方向へ進退可能とされる。エアシリンダ37のロッド38を伸長した状態(洗浄位置)では、図17に示すように、カバー33の先端部はケース15内へ突出される。その状態では、カバー33の先端部は、整粒円板17の外周部の一部に被さる。一方、エアシリンダ37のロッド38を短縮した状態(収納位置)では、図18に示すように、カバー33は、その先端面がケース15の内周面と連続する位置まで後退される。その状態では、ケース15の周側壁26に設けた貫通穴34は、カバー33の先端面にて閉塞される。
【0050】
カバー33内の上部には、下方へ向けて流体ノズル39が設けられる。カバー33が洗浄位置にある状態で、ノズル39には加圧流体が供給され、カバー33で覆われた箇所の整粒円板17へ噴射される。本実施例のノズル39は、円錐状ではなく、整粒円板17の径方向へ沿う垂直平面内において、扇形に流体を噴射する。ノズル39から噴射する流体としては、特に問わないが、本実施例では水とされる。
【0051】
洗浄作業は、図17に示すように、整粒円板17を回転させた状態で、カバー33を洗浄位置に配置して行われる。その際、真空ポンプを作動させた状態で、ノズル39から下方へ水を噴射する。これにより、ノズル39からの水により、整粒円板17に付着していた湿粉31が剥離され、その剥離物と、ノズル39からの水とは、真空ポンプにより外部へ吸引排出される。これにより、カバー33外への水の飛散を防止しつつ、整粒円板17を洗浄できる。
【0052】
但し、整粒円板17には凹凸があり、かつ水を用いて洗浄するため、設計条件によっては、整粒円板17の凹部に入り込んだ水の全てを真空ポンプで回収できないおそれもある。この場合、少量ではあろうが回収できない水は、整粒円板17の回転による遠心力で、ケース15の内周面に付着するおそれがある。そこで、ケース15の内周面に付着した水を除去するために、補助ノズル40を設けてもよい。
【0053】
本実施例では、ケース15内の上部に、円環状のマニホールド41が設けられる。このマニホールド41は、中空パイプ状とされており、その外周部には、周方向等間隔に、複数の補助ノズル40が設けられる。このような構成であるから、マニホールド41へ供給された空気は、各補助ノズル40から下方へ噴射される。具体的には、ケース15の内周面に沿って下方へ、空気が噴射される。また、これと平行して、ケース15の下部からは、真空ポンプにより真空引きが図られる。具体的には、ケース15の底壁16の真空接続口42に真空ポンプを接続して、真空引きが図られる。
【0054】
このようにして、整粒円板17の上方からの加圧空気と、整粒円板17の下方からの真空引きとで、短時間でケース15に付着した水を排出することができる。なお、整粒円板17の凹凸が小さかったり、凹凸がなかったり、あるいはノズル39からの洗浄流体が空気などの場合には、補助ノズル40による水切りは不要である。ところで、図18では、ケース15を収納位置にした状態で作業しているが、図17における洗浄時にも、補助ノズル40を用いた水切り作業を平行して行うこともできる。
【0055】
以上のとおり、本実施例の洗浄装置32とこれを備える球形整粒機14によれば、球形整粒機14を分解することなく、簡易に、迅速確実に洗浄を図ることができる。また、球形整粒機14の運転を止めることなく、洗浄作業を行うことができる。
【0056】
本発明の洗浄装置32とこれを備える粉粒体処理装置は、前記実施例の構成に限らず適宜変更可能である。たとえば、前記実施例では、球形整粒機14に洗浄装置32を設けたが、その他の粉粒体処理装置に洗浄装置を設けてもよい。また、洗浄装置32は、洗浄対象面に局所的にカバー33を被せて、そのカバー33内からの真空引きを図りつつ、ノズル39から洗浄対象面へ流体を噴射すると共に、カバー33と洗浄対象面とを相対移動させればよく、その構成は適宜に変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の洗浄装置の一実施形態の使用状態を示す概略縦断面図である。
【図2】図1の洗浄装置を傾斜面で使用した図である。
【図3】図1の洗浄装置を垂直面で使用した図である。
【図4】図1の洗浄装置を上向きで使用した図である。
【図5】図1の洗浄装置を円弧状の曲面で使用した図である。
【図6】図1の洗浄装置を球面で使用した図である。
【図7】図1の洗浄装置を任意の曲面で使用した図である。
【図8】図1の洗浄装置の変形例の使用状態を示す図である。
【図9】図1の洗浄装置の他の変形例の使用状態を示す図である。
【図10】図1の洗浄装置を回転円筒で使用した図である。
【図11】図1の洗浄装置を固定円板で使用した図である。
【図12】図1の洗浄装置を固定円筒で使用した図である。
【図13】本発明の洗浄装置の一実施例が適用された粉粒体処理システムの一例を示す正面図である。
【図14】図13の粉粒体処理システムの側面図である。
【図15】本発明の洗浄装置の一実施例を備える球形整粒機の一例を示す縦断面図である。
【図16】図15の球形整粒機の平面図である。
【図17】図15の球形整粒機の洗浄装置を示す縦断面図であり、カバーが洗浄位置にある状態を示している。
【図18】図15の球形整粒機の洗浄装置を示す縦断面図であり、カバーが収納位置にある状態を示している。
【符号の説明】
【0058】
1 洗浄装置
2 カバー
3 ノズル
4 真空引き手段(たとえば真空ポンプ)
5 洗浄対象面(たとえば整粒円板の上面)
6 粉粒体(湿粉、付着物)
7 空間
14 球形整粒機(粉粒体処理装置)
15 ケース
17 整粒円板
18 溝(凹凸)
31 粉粒体(湿粉、付着物)
32 洗浄装置
33 カバー
39 ノズル
40 補助ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉粒体が付着しているかその可能性のある洗浄対象面に被せられるカバーと、
このカバーが被せられた前記洗浄対象面へ流体を噴射させるノズルと、
前記カバーが前記洗浄対象面との間で形成する空間内の流体を、外部へ吸引排出する真空引き手段と
を備えることを特徴とする洗浄装置。
【請求項2】
前記カバーは、前記洗浄対象面に近接するが接触しないで配置され、前記洗浄対象面に対し相対移動する
ことを特徴とする請求項1に記載の洗浄装置。
【請求項3】
前記洗浄対象面は、円板または円筒に存在し、
この円板または円筒の周方向一部に、前記カバーが配置され、
前記円板または円筒の軸心を中心として、その円板または円筒に対し前記カバーが相対回転される
ことを特徴とする請求項2に記載の洗浄装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の洗浄装置を備える
ことを特徴とする粉粒体処理装置。
【請求項5】
前記粉粒体処理装置は、湿潤状態のまま投入される円柱状粒を球形とする球形整粒機とされ、
円筒状の壁面を有するケースと、
上面に凹凸が形成された円板から形成され、その外周縁が前記ケースの内周面に近接して回転する整粒円板と、
この整粒円板の外周部の一部において、その整粒円板の上面に近接するが接触しないで配置される洗浄位置か、それよりも上方または外方へ移動した収納位置かに択一的に配置される前記カバーと、
前記整粒円板の上面の内、前記カバーが被せられた箇所へ流体を噴射させる前記ノズルと、
前記カバーが前記整粒円板の上面との間で形成する空間内の流体を、外部へ吸引排出する前記真空引き手段と
を備えることを特徴とする請求項4に記載の粉粒体処理装置。
【請求項6】
前記カバーは、前記洗浄位置では、前記ケースの周側壁から内方へ突出される一方、前記収納位置では、突出側端面を前記ケースの内周面と連続的に配置する位置まで後退される
ことを特徴とする請求項5に記載の粉粒体処理装置。
【請求項7】
前記ケースの内周面と前記整粒円板の外周縁との隙間へ空気を噴射させる補助ノズルをさらに備える
ことを特徴とする請求項6に記載の粉粒体処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2009−183892(P2009−183892A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−27799(P2008−27799)
【出願日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願人】(000236632)不二パウダル株式会社 (9)
【Fターム(参考)】