説明

洗浄装置

【課題】洗浄槽に形成される開口部を塞ぐのに適した蓋部材を備える洗浄装置を提供すること。
【解決手段】洗浄装置は、被洗浄物を出し入れするための開口部が形成される洗浄槽3と、洗浄槽3に洗浄液を供給するための配管部材22a1、22a2、22b1、22b2と、開口部を塞ぐ蓋部材40とを備え、開口部には、配管部材22a1、22a2、22b1、22b2の一部が配置されている。蓋部材40は、一端が開口するとともにY方向に向かって配管部材22a1、22a2、22b1、22b2が通過可能な第1スリット41aが形成される第1蓋部材41と、一端が開口するとともにX方向に向かって配管部材22が通過可能な第2スリット42aが形成される第2蓋部材42とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の被洗浄物を洗浄するための洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電子部品、金属部品あるいはプリント配線基板等の各種の被洗浄物(ワーク)を洗浄処理するための洗浄装置が知られている。この種の洗浄装置として、ワークの洗浄を行うための洗浄槽と、ワークに対して洗浄液を噴射するノズルと、ノズルが先端側に固定されたシャワー配管とを備える洗浄装置が本願出願人によって提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1に記載の洗浄装置では、洗浄槽の上方にワークを出し入れするためのワーク出入口が形成されている。また、このワーク出入口には、シャワーヘッドの一部が配置されている。なお、この洗浄装置では、洗浄液として揮発性を有するフッ素系溶剤、塩素系溶剤、臭素系溶剤等が使用されている。
【0004】
【特許文献1】特開2007−152231号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1等に記載された洗浄装置を使用するユーザによっては、所定の時間帯(たとえば、夜間)、洗浄装置の操業が停止して、ワークの洗浄が行われないことがある。しかしながら、特許文献1に記載の洗浄装置では、洗浄槽の上部に開口部が形成されており、かつ、揮発性を有する洗浄液が使用されているため、操業停止中でも洗浄槽内の洗浄液が開口部から蒸散していくおそれがある。また、特許文献1に記載の洗浄装置では、洗浄槽の上部に開口部が形成されているため、操業停止中に開口部から塵埃等が洗浄槽の中に入り込むおそれがある。したがって、これらの問題を解消するため、特許文献1に記載の洗浄装置では開口部を塞ぐことが好ましい。
【0006】
そこで、本発明の課題は、洗浄槽に形成される開口部を塞ぐのに適した蓋部材を備える洗浄装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明の洗浄装置は、被洗浄物を出し入れするための開口部が形成される洗浄槽と、洗浄槽に洗浄液を供給するための配管部材と、開口部を塞ぐ蓋部材とを備え、開口部には、配管部材の一部が配置され、蓋部材は、一端が開口するとともに所定の第1方向に向かって配管部材が通過可能な第1スリットが形成される第1蓋部材と、一端が開口するとともに第1方向と異なる第2方向に向かって配管部材が通過可能な第2スリットが形成される第2蓋部材とを備えることを特徴とする。
【0008】
本発明の洗浄装置では、蓋部材を構成する第1蓋部材に、一端が開口するとともに所定の第1方向に向かって配管部材が通過可能な第1スリットが形成され、蓋部材を構成する第2蓋部材に、一端が開口するとともに第1方向と異なる第2方向に向かって配管部材が通過可能な第2スリットが形成されている。
【0009】
そのため、配管部材の一端が洗浄槽の内部に配置されている場合であっても、配管部材が第1スリットを通過するように第1方向へ向かって第1蓋部材を移動させ、かつ、配管部材が第2スリットを通過するように第2方向へ向かって第2蓋部材を移動させて、第1蓋部材と第2蓋部材とを重ね合わせることで、開口部を塞ぐことが可能になる。また、第1スリットの形成方向と第2スリットの形成方向とが異なるため、第1蓋部材と第2蓋部材とを重ね合わせることで、配管部材の一端が洗浄槽の内部に配置されている場合であっても、蓋部材の開口面積を減少させることが可能になる。
【0010】
このように、本発明では、配管部材の一端が洗浄槽の内部に配置されている場合であっても、第1蓋部材と第2蓋部材とによって、開口面積を減少させつつ、容易に開口部を塞ぐことが可能になる。また、洗浄装置の操業停止中には、蓋部材で開口部を塞ぎつつ、配管部材の一端を洗浄槽の内部に配置しておくことが可能となるため、洗浄装置の操業再開時の準備運転の時間を短縮することが可能となる。したがって、操業を再開する際、早期に被洗浄物の洗浄を始めることが可能になる。
【0011】
本発明において、第1蓋部材または第2蓋部材のいずれか一方には、第1蓋部材または第2蓋部材のいずれか他方に形成される第1スリットまたは第2スリットに嵌合可能な突起部が形成されていることが好ましい。このように構成すると、第1蓋部材と第2蓋部材とを重ね合わせたときに、第1蓋部材と第2蓋部材との間でずれが生じない。したがって、第1蓋部材と第2蓋部材とによって、より容易に開口部を塞ぐことが可能になる。
【0012】
本発明において、洗浄装置は、被洗浄物に向かって洗浄液を噴射するための複数の噴射孔が形成されるとともに所定の隙間を介して対向配置される複数のシャワー部材を備え、複数のシャワー部材のそれぞれには、配管部材が接続されていることが好ましい。このように構成すると、複数のシャワー部材を用いて、複数の方向から被洗浄物を洗浄することができる。また、複数のシャワー部材のそれぞれに配管部材が接続されている場合であっても、本発明では、第1蓋部材と第2蓋部材とによって、蓋部材の開口面積を減少させつつ、容易に開口部を塞ぐことが可能になる。
【0013】
本発明において、洗浄装置は、被洗浄物に向かって洗浄液を噴射するための複数の噴射孔が形成されるシャワー部材を備え、シャワー部材には、複数の配管部材が接続されていることが好ましい。このように構成すると、複数の配管部材によって、シャワー部材を安定した状態で保持することが可能になる。また、シャワー部材に複数の配管部材が接続されている場合であっても、本発明では、第1蓋部材と第2蓋部材とによって、蓋部材の開口面積を減少させつつ、容易に開口部を塞ぐことが可能になる。
【0014】
本発明において、複数の配管部材は所定の配置方向に一列で配置され、第1スリットまたは第2スリットのいずれか一方は、配置方向と略平行な方向に直線状に形成され、第1スリットまたは第2スリットのいずれか他方は、配置方向に略直交する方向に直線状に形成されていることが好ましい。このように構成すると、配管部材の周囲の開口面積を減少させることが可能になる。また、第1蓋部材および第2蓋部材の構成を簡素化することが可能になる。
【0015】
本発明において、洗浄液は、たとえば、フッ素系溶剤、塩素系溶剤あるいは臭素系溶剤である。このように、本発明の洗浄装置では、被洗浄物の仕様等によって、各種の洗浄液が選択される。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明にかかる洗浄装置では、配管部材の一端が洗浄槽の内部に配置されている場合であっても、開口面積を減少させつつ、容易に開口部を塞ぐことが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
(洗浄装置の概略構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかる洗浄装置1の概略構成を説明するための概略図である。図2は、図1に示すワーク保持治具7の昇降機構19およびシャワー手段8の昇降機構24を説明するための模式図である。図3は、図1に示すシャワー手段8の斜視図である。図4は、図1に示すワーク保持治具7を説明するための正面図である。
【0019】
本形態の洗浄装置1は、電子部品、金属部品、プリント配線基板あるいはガラス基板等の各種の被洗浄物(ワーク)2を洗浄処理するための装置である。たとえば、洗浄装置1は、ワーク2となるカメラに搭載される撮像モジュールを洗浄処理するための装置である。
【0020】
この洗浄装置1は、図1に示すように、ワーク2を洗浄液に浸漬するための洗浄槽3と、洗浄槽3の上部側へ蒸気化された洗浄液を供給するための蒸気発生槽4と、洗浄槽3の上端側に取り付けられ洗浄液の蒸気を冷却して液化させるための冷却手段5と、冷却手段5で液化された洗浄液を回収して水と分離するための水分離槽6と、ワーク2を保持するワーク保持治具7と、洗浄槽3に洗浄液を供給するシャワー手段8と、洗浄槽3から排出される洗浄液をシャワー手段8まで循環させるための循環経路9とを備えている。
【0021】
洗浄装置1で使用される洗浄液は、揮発性を有する有機溶剤であり、たとえば、HFC(ハイドロフルオロカーボン)やHFE(ハイドロフルオロエーテル)等のフッ素系溶剤、ジクロロメタンやトリクロロエチレン等の塩素系溶剤、あるいは、1−ブロモプロパン等の臭素系溶剤である。本形態の洗浄装置1では、洗浄液としてHFEが使用されている。
【0022】
洗浄槽3は、ワーク2が浸漬される本槽11と、本槽11の周囲に配置され本槽11から溢れ出した洗浄液が流れ込むオーバーフロー槽12と、本槽11に浸漬されたワーク2を超音波を用いて洗浄するための超音波振動子13とを備えている。また、洗浄槽3では、蒸気発生槽4で発生させた洗浄液の蒸気を用いてワーク2を蒸気洗浄するための蒸気洗浄空間14が本槽11の上部に形成されている。
【0023】
洗浄槽3の上面には、洗浄槽3内にワーク2を挿入し、かつ、洗浄槽3内からワーク2を取り出すための(すなわち、ワーク2を出し入れするための)開口部15が形成されている。ワーク保持治具7は、ワーク2を出し入れするため、開口部15を通過する。また、開口部15には、シャワー手段8を構成する後述の配管部材22a、22bの長手方向(軸方向)の一部が配置される。そのため、開口部15は、配管部材22a、22bが配置可能になるとともに、ワーク保持治具7が通過可能となる大きさで形成されている。
【0024】
本槽11は、洗浄液で満たされている。この本槽11の底面には、循環経路9の一端側の一部が接続されている。また、オーバーフロー槽12の底面にも、循環経路9の一端側の一部が接続されている。本形態では、ワーク2を洗浄する際には、オーバーフロー槽12に溢れ出した洗浄液(すなわち、オーバーフロー槽12から排出される洗浄液)が循環経路9を介してシャワー手段8に供給される。超音波振動子13はたとえば、本槽11の内部の底面に取り付けられている。
【0025】
蒸気発生槽4の内部には、洗浄液を温めて蒸気化させるためのヒータ16が配置されている。このヒータ16はたとえば、蒸気発生槽4の底面側に配置されている。蒸気発生槽4の上端は、蒸気洗浄空間14に接続されており、ヒータ16によって蒸気化された洗浄液は、蒸気洗浄空間14に供給される。また、図1に示すように、蒸気発生槽4には、本槽11から溢れ出した洗浄液の一部が流れ込む。
【0026】
冷却手段5は、たとえば、水道水を利用するものであり、洗浄槽3の上端側の周囲を囲むように配置されている。具体的には、冷却手段5は、蒸気洗浄空間14の上端の周囲を囲むように配置されている。この冷却手段5は、洗浄槽3の、蒸気洗浄空間14の上端側の内壁を冷却する。そのため、蒸気洗浄空間14内の洗浄液の蒸気は、冷却手段5によって冷却され液化されて蒸気洗浄空間14の上端側の内壁につく。本形態の洗浄装置1では、蒸気洗浄空間14の上端側の内壁についた液体状の洗浄液は、内壁に沿って流れ落ちて、その後、水分離槽6に流れ込む。
【0027】
また、冷却手段5が蒸気洗浄空間14の上端側の内壁を冷却するため、蒸気洗浄空間14の上側に行くほど蒸気密度が下がる。したがって、後述のように、蒸気洗浄が行われた後のワーク2が冷却手段5の内周側まで上昇すると、蒸気密度の低い領域に入るため、結果として、ワーク2が乾燥することになる。すなわち、冷却手段5は、洗浄液の蒸気を冷却して液化させる機能に加え、ワーク2を乾燥させる機能を果たしている。
【0028】
なお、冷却手段5は、上端部近傍の空気も冷却するため、内壁が飽和水蒸気圧温度以下になると空気中に含まれる水分も内壁に結露する。結露して内壁に付着した水滴は、洗浄液と同様に内壁に沿って流れ落ちて水分離槽6に流れ込む。
【0029】
水分離槽6の内部には、仕切壁17が配置されている。具体的には、図1に示すように、仕切壁17の下端と水分離槽6の底面との間に所定の隙間をあけた状態で、かつ、仕切壁17の上端が水分離槽6の液面よりも上側へ突出するように、仕切壁17が配置されている。この仕切壁17によって、水分離槽6の内部には、冷却手段5で液化された洗浄液等が流入する流入部6aと、水と分離された洗浄液がオーバーフロー槽12に向かって流出する流出部6bとが形成されている。本形態では、上述のように、洗浄液としてHFEが使用されている。HFEは、水よりも比重が大きいため、このように構成された水分離槽6で、水と洗浄液とを分離することが可能となっている。
【0030】
ワーク保持治具7は、図2に示すように、吊下げ部材18を介して昇降機構19に連結されている。昇降機構19はたとえば、図示を省略する駆動用モータやタイミングベルト等を備え、ワーク保持治具7を昇降させる。具体的には、ワーク保持治具7に保持されたワーク2が洗浄槽3に対して出し入れ可能となるように、昇降機構19は、ワーク保持治具7を昇降させる。
【0031】
また、ワーク保持治具7は、図2、図4に示すように、吊下げ部材18に固定される吊り軸91と、吊り軸91の下端側に略平行に固定される2枚の支持板92と、支持板92に取り付けられるとともにワーク2を保持するための複数の保持部材93とを備えている。支持板92は略L形状に形成され、保持部材93は段付の略円柱状に形成されている。本形態では、図4に示すように、ワーク2の下端部が支持板92によって支持され、ワーク2の両側端部(図4の紙面垂直方向の両端部)が保持部材93によって保持されている。また、ワーク保持治具7に保持されるワーク2が後述のシャワーヘッド20A、20Bに形成されたシャワー面20a、20aと対向するように、ワーク2はワーク保持治具7に保持されている。
【0032】
シャワー手段8は、図3に示すように、ワーク2に向かって洗浄液を噴射するシャワー部材としてのシャワーヘッド20A、20Bと、循環経路9の他端側が接続される分岐管21と、シャワーヘッド20A、20Bと分岐管21とを繋ぐとともにシャワーヘッド20A、20Bへ洗浄液を供給するための配管部材22a、22bと、循環経路9と分岐管21とを繋ぐための継手23とを備えている。本形態のシャワー手段8は、2個のシャワーヘッド20A、20Bと2個の分岐管21とを備えている。また、シャワーヘッド20A、20Bと分岐管21とは、所定の間隔で配置される各2本の配管部材22a(22a1、22a2)、22b(22b1、22b2)で接続されている。
【0033】
また、シャワー手段8は、図2に示すように、昇降機構24に連結されている。昇降機構24はたとえば、図示を省略する駆動用モータやタイミングベルト等を備え、シャワー手段8を昇降させる。具体的には、シャワーヘッド20A、20Bが洗浄槽3の上端側から下端側まで移動可能となるように、昇降機構24は、シャワー手段8を昇降させる。
【0034】
シャワーヘッド20A、20Bはたとえば、ステンレス鋼等の金属部材からなる扁平な直方体状の中空部材であり、ワーク2に対向するシャワー面20a、20aを備えている。シャワー面20a、20aには、洗浄液を噴射するための複数の噴射孔20b、20bが所定の間隔で形成されている。また、2個のシャワーヘッド20A、20Bは、シャワー面20a、20aが互いに対向するように配置されている。
【0035】
上述のように、1個のシャワーヘッド20A(20B)には、所定の間隔で配置される2本の配管部材22a(22b)が接続されている。具体的には、2本の配管部材22a(22b)は、シャワー面20a、20aに直交する面であってシャワーヘッド20A(20B)の長手方向に平行な面に接続されており、シャワーヘッド20A(20B)の長手方向に一列で配置されている。
【0036】
循環経路9は、図1に示すように、洗浄槽3から排出される洗浄液をシャワー手段8に向かって送るポンプ26と、洗浄槽3から排出される洗浄液をろ過して洗浄液に含まれる塵埃等の不純物を取り除く2個のフィルター28と、所定位置に配置されるバルブ29と、分岐管21に一端が接続される2本の配管部材30と、2本の配管部材30の他端が接続される分岐管31とを備えている。上述のように、循環経路9の一端側は、洗浄槽3の底面に接続され、循環経路9の他端側は、シャワー手段8に接続されている。
【0037】
(ワークの洗浄方法)
以上のように構成された洗浄装置1では、たとえば、以下のように、ワーク2の洗浄が行われる。
【0038】
まず、ワーク2を保持したワーク保持治具7を下降させて、シャワーヘッド20A、20Bが内部に配置され洗浄液で満たされた本槽11の中にワーク2を浸漬する。このワーク2の下降時には、シャワーヘッド20A、20Bから洗浄液を噴射させても良いし、噴射させなくても良い。その後、超音波振動子13を用いてワーク2の超音波洗浄を行うとともに、シャワーヘッド20A、20Bから洗浄液を噴射する。なお、超音波洗浄を行わずに、シャワーヘッド20A、20Bから噴射される洗浄液のみでワーク2を洗浄しても良い。また、ワーク2の洗浄時には、オーバーフロー槽12から排出される洗浄液が循環経路9を通過してシャワーヘッド20A、20Bに供給される。
【0039】
本槽11内でのワーク2の洗浄が終わると、ワーク保持治具7を上昇させ、ワーク2を本槽11から引き上げて、ワーク2を蒸気洗浄空間14に配置する。この状態で、蒸気発生槽4から供給される洗浄液の蒸気によって、ワーク2の蒸気洗浄を行う。なお、ワーク2の引上げ時には、ワーク保持治具7とともにシャワーヘッド20A、20Bを上昇させても良いし、シャワーヘッド20A、20Bを上昇させなくても良い。
【0040】
蒸気洗浄空間14でのワーク2の蒸気洗浄が終わると、さらに、ワーク保持治具7を上昇させ、冷却手段5の内周側にワーク2を配置してワーク2を乾燥させる。ワーク2の乾燥が終わるとワーク2の洗浄が完了する。
【0041】
(蓋部材の構成)
図5は、図1に示す洗浄槽3の上面側を模式的に示す斜視図である。図6は、図1に示す洗浄装置1の操業停止時に使用される蓋部材40の構成を説明するための斜視図である。図7は、図6に示す第1蓋部材41と第2蓋部材42とを重ね合わせた状態を示す平面図である。なお、以下の説明では、図6のX方向を左右方向とし、左右方向および上下方向に直交するY方向を前後方向とする。また、以下の説明では、X1方向を「右」、X2方向を「左」、Y1方向を「前」およびY2方向を「後(後ろ)」とする。また、本形態では、前後方向が第1方向となり、左右方向が第2方向となる。
【0042】
本形態の洗浄装置1では、操業停止時(所定時間、ワーク2の洗浄を行わないとき)に、洗浄槽3の上面に形成された開口部15が蓋部材40によって覆われる。すなわち、洗浄装置1は、操業停止時に開口部15を塞ぐための蓋部材40を備えている。なお、本形態では、洗浄装置1の操業停止時には、ワーク保持治具7は洗浄槽3の外部に引き上げられている。一方、操業停止時であっても、シャワーヘッド20A、20Bは洗浄槽3の内部に配置されている。すなわち、操業停止時であっても、図5に示すように、配管部材22a1、22a2、22b1、22b2の軸方向の一部は開口部15に配置されている。
【0043】
蓋部材40は、図6、図7に示すように、上下方向で重ね合わせられる2枚の第1蓋部材41と第2蓋部材42とによって構成されている。本形態では、第1蓋部材41と第2蓋部材42とが下側からこの順番に重ね合わされている。
【0044】
第1蓋部材41は、略長方形の平板状部材であり、洗浄装置1の操業停止時には、その長手方向を左右方向(X方向)に向けた状態で洗浄装置1の上面に載置されている。この第1蓋部材41には、2本の直線状の第1スリット41aが前後方向(Y方向)に延びるように形成されている。2本の第1スリット41aは、互いに平行で、幅が一定の直線状に形成されている。また、第1スリット41aの後端は開口している。すなわち、第1スリット41aは、第1蓋部材41の後端から前側に向かって形成されている。
【0045】
第1スリット41aには、図6等に示すように、配管部材22a、22bの一部が配置される。具体的には、第1スリット41aのそれぞれに2本の配管部材22a(22a1、22a2)、22b(22b1、22b2)の軸方向の一部が配置される。そのため、第1スリット41aの幅は、配管部材22a、22bの径よりも大きくなっている。具体的には、第1スリット41aの幅は、配管部材22a、22bの径よりもわずかに大きくなっている。
【0046】
また、本形態では、左右方向(X方向)とシャワーヘッド20A、20Bの長手方向(図4の紙面垂直方向)とが略一致する。そのため、シャワーヘッド20A、20Bの長手方向と第1スリット41aの形成方向とが略直交する。したがって、1個のシャワーヘッド20A(20B)に接続される配管部材22a1、22a2(22b1、22b2)の配置方向と第1スリット41aの形成方向とが略直交する。すなわち、第1スリット41aは、配管部材22a(22b)の配置方向に略直交する方向に向かって形成されている。また、2本の第1スリット41aの形成ピッチは、1個のシャワーヘッド20A(20B)に接続される2本の配管部材22a1、22a2(22b1、22b2)の配置ピッチと略等しくなっている。
【0047】
第2蓋部材42は、第1蓋部材41と同様に、略長方形の平板状部材であり、洗浄装置1の操業停止時には、その長手方向を左右方向(X方向)に向けた状態で第1蓋部材41の上面に載置されている。本形態では、第2蓋部材42の大きさと第1蓋部材41の大きさとが略等しくなっている。
【0048】
この第2蓋部材42には、2本の直線状の第2スリット42aが左右方向(X方向)に延びるように形成されている。2本の第2スリット42aは、互いに平行で、幅が一定の直線状に形成されている。また、第2スリット42aの左端は開口している。すなわち、第2スリット42aは、第2蓋部材42の左端から右側に向かって形成されている。
【0049】
第2スリット42aにも、図6等に示すように、配管部材22a、22bの一部が配置される。具体的には、第2スリット42aのそれぞれに2本の配管部材22a(22a1、22a2)、22b(22b1、22b2)の軸方向の一部が配置される。そのため、第2スリット42aの幅は、配管部材22a、22bの径よりも大きくなっている。具体的には、第1スリット41aの幅と同様に、第2スリット42aの幅は配管部材22a、22bの径よりもわずかに大きくなっている。
【0050】
上述のように、左右方向(X方向)とシャワーヘッド20A、20Bの長手方向とが略一致する。そのため、シャワーヘッド20A、20Bの長手方向と第2スリット42aの形成方向とは略一致する。したがって、1個のシャワーヘッド20A(20B)に接続される配管部材22a1、22a2(22b1、22b2)の配置方向と第2スリット42aの形成方向とは略一致する。すなわち、第2スリット42aは、配管部材22の配置方向と略平行な方向に向かって形成されている。また、2本の第2スリット42aの形成ピッチは、2個のシャワーヘッド20A、20Bの配置ピッチと略等しくなっている。
【0051】
洗浄装置1の操業が停止されると、まず、第1蓋部材41によって開口部15を覆う。具体的には、4本の配管部材22a1、22a2、22b1、22b2が第1スリット41aを前後方向(Y方向)に向かって通過するように、第1蓋部材41を前側から後側に向かって移動させて、開口部15を覆う。その後、第2蓋部材42を第1蓋部材41に重ねる。具体的には、4本の配管部材22a1、22a2、22b1、22b2が第2スリット42aを左右方向(X方向)に向かって通過するように、第2蓋部材42を右側から左側に向かって移動させた後に、第2蓋部材42を第1蓋部材41に重ねる。
【0052】
第1蓋部材41と第2蓋部材42とが重なった状態では、図7に示すように、わずかな開口43が形成されている。すなわち、この状態では、蓋部材40にわずかな開口43が形成されている。具体的には、配管部材22の周囲に矩形状のわずかな開口43が形成されている。
【0053】
なお、図7に示すように、第1蓋部材41と第2蓋部材42とを重ね合わせたときに、右側に形成される第1スリット41aの右側壁41cよりも右側に第2スリット42aの右端42cが配置されるように、第1スリット41aおよび第2スリット42aが形成されても良いし、右側壁41cと右端42cとが略一致するように、第1スリット41aおよび第2スリット42aが形成されても良い。
【0054】
同様に、第1蓋部材41と第2蓋部材42とを重ね合わせたときに、前側に形成される第2スリット42aの前側壁42dよりも前側に第1スリット41aの前端41dが配置されるように、第1スリット41aおよび第2スリット42aが形成されても良いし、前側壁42dと前端41dとが略一致するように、第1スリット41aおよび第2スリット42aが形成されても良い。
【0055】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、第1蓋部材41には、後端が開口するとともに前後方向(Y方向)に向かって配管部材22a、22bが通過可能な第1スリット41aが形成され、第2蓋部材42には、左端が開口するとともに左右方向(X方向)に向かって配管部材22a、22bが通過可能な第2スリット42aが形成されている。そのため、洗浄装置1の操業停止時にシャワーヘッド20A、20Bが洗浄槽3の内部に配置されている場合であっても、第1蓋部材41と第2蓋部材42とを重ね合わせることで、蓋部材40に形成される開口43の開口面積を減少させつつ、容易に開口部15を塞ぐことができる。その結果、操業停止中の洗浄液の蒸散を抑制することができる。また、操業停止中に塵埃が洗浄槽3の内部に入り込むのを抑制することができる。
【0056】
また、本形態では、洗浄装置1の操業停止中に、蓋部材40で開口部15を塞ぎつつ、シャワーヘッド20A、20Bを洗浄槽3の内部に配置しておくことができるため、洗浄装置1の操業再開時の準備運転の時間を短縮することが可能となる。すなわち、シャワーヘッド20A、20Bを洗浄液に浸しておくことで、操業再開時の空運転の時間を短縮することができる。その結果、操業再開時に、早期にワーク2の洗浄を始めることが可能になる。
【0057】
本形態では、対向配置される2個のシャワーヘッド20A、20Bのそれぞれには、2本の配管部材22a1、22a2、22b1、22b2が接続されている。そのため、2個のシャワーヘッド20A、20Bによって、2方向からワーク2を洗浄することが可能になる。また、2本の配管部材22a1、22a2、22b1、22b2によって、シャワーヘッド20A、20Bを安定した状態で保持することが可能になる。さらに、シャワー面20a、20aからの洗浄液の噴射量を均一化することが可能になる。また、2個のシャワーヘッド20A、20Bのそれぞれに2本の配管部材22a1、22a2、22b1、22b2が接続されている場合であっても、本形態では、第1蓋部材41と第2蓋部材42とによって、蓋部材40に形成される開口43の開口面積を減少させつつ、容易に開口部15を塞ぐことができる。
【0058】
本形態では、第1スリット41aが配管部材22a、22bの配置方向に略直交する方向に直線状に形成され、第2スリット42aが配管部材22の配置方向と略平行な方向に直線状に形成されている。すなわち、第1スリット41aと第2スリット42aとが略直交するように形成されている。そのため、配管部材22a、22bの周囲に形成される開口部43の開口面積を効果的に減少させることができる。また、第1蓋部材41および第2蓋部材42の構成を簡素化することが可能になる。
【0059】
本形態では、第1蓋部材41および第2蓋部材42を、配管部材22a、22bの軸方向に略直交する方向に差し込むことができる。そのため、洗浄装置1を構成する他の部材を取り外す等の作業をしなくても、第1蓋部材41および第2蓋部材42を取り付けることが可能になる。また、配管部材22a、22bの軸方向のスペースが取れない場合であっても、第1蓋部材41および第2蓋部材42を取り付けることが可能になる。
【0060】
(他の実施の形態)
上述した形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
【0061】
上述した形態では、第1蓋部材41は平板状に形成されている。この他にもたとえば、図8に示すように、第1蓋部材41の上面に、第2蓋部材42の第2スリット42aに嵌合可能な突起部41bが形成されても良い。すなわち、第1蓋部材41と第2蓋部材42とを重ね合わせたときに、2本の第2スリット42aのそれぞれに嵌まり込む突起部41bが第1蓋部材41の上面から突出するように形成されても良い。この場合には、たとえば、突起部41bの厚さは第2蓋部材42の厚さと略同じになり、突起部41bの幅は第2スリット42aの幅よりもわずかに狭くなっている。
【0062】
このように構成すると、第1蓋部材41と第2蓋部材42とを重ね合わせたときに、第1蓋部材41と第2蓋部材42との間でずれが生じない。したがって、第1蓋部材41と第2蓋部材42とによって、より容易に開口部15を塞ぐことができる。また、第2スリット42a内に配置される突起部41bによって、操業停止中の洗浄液の蒸散や、洗浄槽3の内部への塵埃の侵入を効果的に抑制することができる。
【0063】
なお、一方の第2スリット42aのみに突起部41bが嵌まり込み、他方の第2スリット42aには突起部41bが嵌まり込まないように、突起部41bが形成されても良い。すなわち、図8において前側に配置される突起部41bあるいは後側に配置される突起部41bのいずれかが形成されなくても良い。
【0064】
上述した形態では、第1蓋部材41には、前後方向に平行な2本の直線状の第1スリット41aが形成されている。この他にもたとえば、図9に示すように、前後方向に対して所定角度(ただし、90°を除く)だけ傾斜した方向に平行な3本の直線状の第1スリット41aが第1蓋部材41に形成されても良い。すなわち、第1スリット41aが形成される方向と、第2スリット42aが形成される方向とが略直交していなくても良い。同様に、左右方向に対して所定角度(ただし、90°を除く)だけ傾斜した方向に平行な3本の直線状の第2スリット42aが第2蓋部材42に形成されても良い。
【0065】
これらの場合であっても、上述した形態と同様に、操業停止時に開口43の開口面積を減少させつつ、容易に開口部15を塞ぐことが可能になる。すなわち、第1蓋部材41と第2蓋部材42とが重ね合わされたときの第1スリット41aの形成方向と第2スリット42aの形成方向とが異なっていれば、上述した形態と同様の効果を得ることができる。
【0066】
上述した形態では、第1スリット41aおよび第2スリット42aは直線状に形成されている。この他にもたとえば、第1スリット41aおよび/または第2スリット42aは、曲線状に形成されても良い。
【0067】
上述した形態では、第1蓋部材41と第2蓋部材42とが下側からこの順番に重ね合わされているが、第1蓋部材41と第2蓋部材42とが上側からこの順番に重ね合わされても良い。また、上述した形態では、第1蓋部材41と第2蓋部材42とによって蓋部材40が構成されているが、3枚以上の平板状部材あるいは3個以上のブロック状部材によって蓋部材40が構成されても良い。
【0068】
上述した形態では、シャワー手段8は2個のシャワーヘッド20A、20Bを備えているが、シャワー手段8が備えるシャワーヘッド20A、20Bの数は、1個でも良いし、3個以上でも良い。また、上述した形態では、1個のシャワーヘッド20A(20B)に2本の配管部材20a1、22a2(22b1、22b2)が接続されているが、1個のシャワーヘッド20A(20B)に接続される配管部材20a1、22a2(22b1、22b2)の本数は、1本であっても良いし、3本以上であっても良い。また、シャワー手段8は、シャワーヘッド20A、20Bに代えて、上述の特許文献1に記載されているようなノズルを備えていても良い。
【0069】
上述した形態では、洗浄槽3は、1個の本槽11と、本槽11の周囲に配置されるオーバーフロー槽12とを備えている。この他にもたとえば、洗浄槽3は、粗洗浄槽、仕上洗浄槽等の複数の本槽と、その周囲に配置されるオーバーフロー槽とを備えていても良い。また、洗浄槽3は、オーバーフロー槽を備えていなくても良い。
【0070】
なお、上述した形態では、配管部材22a、22bの長手方向の一部は、開口部15に配置されているが、図10に示すように、配管部材22a、22b用の貫通孔45を洗浄槽3の上面に形成することも可能である。このように構成すると、配管部材22a、22bの配置スペースを考慮することなく、ワーク保持治具7が通過可能となる大きさで開口部15を形成すれば良いため、開口部15を小さくすることができる。また、この場合には、操業停止時に一枚の蓋部材を用いて、開口部15を確実に塞ぐことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の実施の形態にかかる洗浄装置の概略構成を説明するための概略図である。
【図2】図1に示すワーク保持治具の昇降機構およびシャワー手段の昇降機構を説明するための模式図である。
【図3】図1に示すシャワー手段の斜視図である。
【図4】図1に示すワーク保持治具を説明するための正面図である。
【図5】図1に示す洗浄槽の上面側を模式的に示す斜視図である。
【図6】図1に示す洗浄装置の操業停止時に使用される蓋部材の構成を説明するための斜視図である。
【図7】図6に示す第1蓋部材と第2蓋部材とを重ね合わせた状態を示す平面図である。
【図8】本発明の他の実施の形態にかかる第1蓋部材を示す斜視図である。
【図9】本発明の他の実施の形態にかかる第1蓋部材を説明するための平面図である。
【図10】本発明の他の実施の形態にかかる洗浄槽の上面側を模式的に示す平面図である。
【符号の説明】
【0072】
1 洗浄装置
2 ワーク(被洗浄物)
3 洗浄槽
15 開口部
20A、20B シャワーヘッド(シャワー部材)
20b 噴射孔
22a(22a1、22a2)、22b(22b1、22b2) 配管部材
40 蓋部材
41 第1蓋部材
41a 第1スリット
41b 突起部
42 第2蓋部材
42a 第2スリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被洗浄物を出し入れするための開口部が形成される洗浄槽と、前記洗浄槽に洗浄液を供給するための配管部材と、前記開口部を塞ぐ蓋部材とを備え、
前記開口部には、前記配管部材の一部が配置され、
前記蓋部材は、一端が開口するとともに所定の第1方向に向かって前記配管部材が通過可能な第1スリットが形成される第1蓋部材と、一端が開口するとともに前記第1方向と異なる第2方向に向かって前記配管部材が通過可能な第2スリットが形成される第2蓋部材とを備えることを特徴とする洗浄装置。
【請求項2】
前記第1蓋部材または前記第2蓋部材のいずれか一方には、前記第1蓋部材または前記第2蓋部材のいずれか他方に形成される前記第1スリットまたは前記第2スリットに嵌合可能な突起部が形成されていることを特徴とする請求項1記載の洗浄装置。
【請求項3】
前記被洗浄物に向かって洗浄液を噴射するための複数の噴射孔が形成されるとともに所定の隙間を介して対向配置される複数のシャワー部材を備え、
複数の前記シャワー部材のそれぞれには、前記配管部材が接続されていることを特徴とする請求項1または2記載の洗浄装置。
【請求項4】
前記被洗浄物に向かって洗浄液を噴射するための複数の噴射孔が形成されるシャワー部材を備え、
前記シャワー部材には、複数の前記配管部材が接続されていることを特徴とする請求項1から3いずれかに記載の洗浄装置。
【請求項5】
複数の前記配管部材は所定の配置方向に一列で配置され、
前記第1スリットまたは前記第2スリットのいずれか一方は、前記配置方向と略平行な方向に直線状に形成され、前記第1スリットまたは前記第2スリットのいずれか他方は、前記配置方向に略直交する方向に直線状に形成されていることを特徴とする請求項4記載の洗浄装置。
【請求項6】
前記洗浄液は、フッ素系溶剤、塩素系溶剤あるいは臭素系溶剤であることを特徴とする請求項1から5いずれかに記載の洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−131754(P2009−131754A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−308728(P2007−308728)
【出願日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(000002233)日本電産サンキョー株式会社 (1,337)
【Fターム(参考)】