説明

洗浄装置

【課題】故障の可能性が低く、安価であり、洗浄の均一性が高い洗浄装置を提供する。
【解決手段】複数のインジェクタ5B,5L,5R,5Tは、気泡BBを含む流れを洗浄液7中に発生させることができ、この流れがコンベア3に向かうようにコンベア3の周囲に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄装置に関し、特に、洗浄液によって被洗浄物を洗浄するための洗浄装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
これまで、工業的な脱脂洗浄の分野では、洗浄液として、フロン系溶剤、有機系溶剤、石油系溶剤などが多用されてきた。しかし、これらの物質はオゾン層の破壊、河川、海洋、地下水の水質汚染などの環境破壊を引き起こす原因物質であることが明らかにされてきた。このため、これらの溶剤を用いた洗浄方法に替わる、環境負荷の小さい洗浄技術の開発が望まれている。
【0003】
洗浄液中に油分を溶解させる従来の溶解洗浄では、洗浄処理数の増加に従って洗浄力が低下するという問題があった。これは、被洗浄物に付着している油が洗浄液中に溶かされることで脱脂洗浄が行なわれるため、洗浄液中の油分濃度がその飽和濃度に近づくに従って、洗浄液が油分を溶かす能力が落ちるためである。このため、この能力の低下にあわせて、定期的に洗浄液を交換する必要があった。
【0004】
また、被洗浄物をバレルなどの回転体に投入し脱脂洗浄する洗浄装置は、バッチ処理で洗浄を行なうものである。すなわち、バレルに収容可能な量の被洗浄物が一度に洗浄槽に投入され、洗浄が終了してから被洗浄物が取り出される。この際、バレルを洗浄槽に対して出し入れする装置が必要になるため、設備が大型化するという問題点があった。さらに、バッチ処理での洗浄では洗浄工程の前後で被洗浄品の滞留が生じる。すなわち仕掛品が増大する。この結果、製造コストが増大するという問題も生じていた。
【0005】
一方、たとえば(特許文献1)に、バレルを用いていない連続式洗浄装置が開示されている。この公報によれば、設備を小型化することができ、かつ連続的な洗浄を行なうことができるとされている。
【特許文献1】特開2000−218246号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記公報の洗浄装置では、加振体によって加振された洗浄液が被洗浄物に作用する。この作用によって被洗浄物の位置が所定の搬送座標からずれることを防止するため、被洗浄物を載せて搬送するためのメッシュコンベアに加えて、さらに被洗浄物を上から押さえ付けるメッシュコンベアが別途必要となる。すなわちメッシュコンベアが2つ必要になる。このため、以下のような問題が生じていた。
【0007】
まず装置が複雑となることで、故障の可能性が高くなっていた。また装置の部品点数が増えるため、装置の価格が高くなることがあった。また被洗浄物とメッシュコンベアとの接触面積が大きいので、洗浄物の表面において洗浄液が作用できない部分が大きくなっていた。このため、洗浄の不均一性が大きくなるという問題があった。
【0008】
それゆえ、本発明の目的は、故障の可能性が低く、安価であり、洗浄の均一性が高い洗浄装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の洗浄装置は、気泡を含む洗浄液によって被洗浄物を洗浄するための洗浄装置であって、洗浄槽と、コンベアと、複数のインジェクタとを有している。洗浄槽は洗浄液を保持するためのものである。コンベアは、被洗浄物を洗浄液中で搬送するためのものである。複数のインジェクタは、気泡を含む流れを洗浄液中に発生させることができ、この流れがコンベアに向かうようにコンベアの周囲に配置されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の洗浄装置によれば、流れを洗浄液中に発生させるインジェクタが複数設けられているので、方向の異なる流れを発生させることができる。よって、洗浄液の流れによる被洗浄物のズレを、一の方向に偏らせないようにすることができる。このため、ズレを防ぐために被洗浄物を押さえ付けるためのメッシュコンベアが不要となる。よって、故障の可能性が低く、安価であり、洗浄の均一性が高い洗浄装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図に基づいて説明する。
(実施の形態1)
はじめに、本実施の形態の洗浄装置の概略的な構成について説明する。図1は、本発明の実施の形態1における洗浄装置の構成を模式的に示す図である。図2は、図1の洗浄槽およびその周辺の構成を概略的に示す断面図である。図3は、図2のIII−III線に沿った概略断面図である。図4は、本発明の実施の形態1における洗浄装置が有する支持体の構成を概略的に示す平面図である。図5は、本発明の実施の形態1における洗浄装置が有する洗浄槽およびオーバーフロー槽の構成を概略的に示す平面図(A)および正面図(B)である。なお図1においては搬送系を図示していない。
【0012】
主に図2および図3を参照して、本実施の形態の洗浄装置は、被洗浄物8(図2の左端)をコンベア3によって洗浄液7中へ搬送し、搬送された被洗浄物8(図3)に対して複数のインジェクタ5により微細気泡BBを含んだ洗浄液7の流れを噴き付けることで被洗浄物8を洗浄し、洗浄済みの被洗浄物8(図2の右端)を得るものである。この洗浄装置は、洗浄槽1と、コンベア支持具2と、コンベア3と、シュート4と、複数のインジェクタ5と、支持体6と、ネジ9と、オーバーフロー槽13と、回収槽15と、循環ポンプ16と、水分岐用マニホールド17と、空気導入部18と、空気分岐用マニホールド19とを有している。
【0013】
洗浄槽1は洗浄液7を保持するためのものである。洗浄液7は、主成分としての水と、微細気泡の生成に必須な極少量の添加剤とからなる。
【0014】
コンベア3は、シュート4から投入された被洗浄物8を洗浄槽1中へ搬送する部分(図2の左側部分)と、被洗浄物8を洗浄槽1中の洗浄液7に浸漬させつつ搬送方向(図2の左から右に向かう方向)に搬送する部分(図2の中央部分)と、洗浄槽1から被洗浄物8を搬出する部分(図2の右側部分)とを有している。またコンベア3は、気泡BBを通すことができ、たとえばステンレス製のメッシュコンベアである。メッシュコンベアのメッシュ径は、被洗浄物8が落下しない程度に、できるだけ大きいことが好ましい。これによりコンベア3の下方からの微細気泡BBが被洗浄物8に効率よく到達することができる。またコンベア3が洗浄液7に浸漬される深さはコンベア支持具2により一定に保たれている。またコンベア3は、被洗浄物8が傾斜部分(図2の斜めの部分)にて転がり落ちることを防止するため、搬送方向に対して垂直な方向で、かつ鉛直方向に沿った板状の突起物(図示せず)を一定間隔で有することが好ましい。
【0015】
インジェクタ5は、洗浄液7中に浸漬され、かつ噴出口がコンベア3の方を向くように、コンベア3の周囲に設けられている。またインジェクタ5は、水分岐用マニホールド17(図1)から供給された洗浄液7と、空気分岐用マニホールド19(図1)から供給された空気との混合体を、噴出口から噴出すことができるように構成されている。これにより、洗浄液7中にコンベア3に向かう、気泡BBを含む流れを発生させることができる。インジェクタ5は、より詳しくは、インジェクタ5B、5T、5L、および5Rを有している。インジェクタ5Bは、コンベア3の下方に位置し、洗浄槽1の底部に直接取り付けられている。インジェクタ5T、5L、および5Rは、コンベア3の上方に位置し、その位置は、コンベア3に固定された支持体6に取り付けられることで保持されている。
【0016】
主に図4を参照して、支持体6は、ブロック体10と、架橋体11と、メッシュ12とを有している。ブロック体10は、インジェクタ5T、5L、5Rが取り付けられるための雌ネジを有している。架橋体11は、ブロック体10を被洗浄物8から適切な位置に保持している。メッシュ12は、隣り合う架橋体11同士を繋いでおり、ステンレス製のメッシュからなる。また支持体6はその側面に上下方向の長穴を有し、図3に示すように、この長穴を貫通するネジ9を用いてコンベア3に固定されている。
【0017】
また側面に位置するブロック体10は、搬送方向に向かって左右対称に配置されている。これにより、図3に示すように、被洗浄物8に左右対称に微細気泡BBを含む流れが作用するように、インジェクタ5Lおよび5Rの対が配置されている。また上面に位置するブロック体10は、インジェクタ5Bと上下方向に対向する位置に配置されている。これにより、被洗浄物8に上下対称に微細気泡BBを含む流れが作用するように、インジェクタ5Tおよび5Bの対が配置されている。
【0018】
1対のインジェクタ5L、5Rの傾斜角度は、鉛直方向から15°〜75°の範囲が、特には30°〜60°の範囲が好ましい。また、複数対のインジェクタ5L、5Rを、各対ごとの傾斜角度が異なるように搬送方向に沿って配置することによって、被洗浄物8全面をより均一に洗浄することができる。
【0019】
なお、本実施の形態の洗浄装置は、微細気泡BBを含む洗浄液7の流れを被洗浄物8に作用させて脱脂洗浄するものである。このことから、インジェクタ5の設置位置によって、洗浄力が大きく変化する。インジェクタ5から被洗浄物8までの距離が近ければ、被洗浄物8に対して微細気泡BBを含む流れを強く作用させることができるが、作用を受ける面積が小さくなる。逆に、インジェクタ5から被洗浄物8までの距離が遠ければ、微細気泡BBを含む流れの被洗浄物8に対する作用は弱くなるが、作用を受ける面積は大きくなる。
【0020】
コンベア3上を搬送される被洗浄物8は、洗浄に有効な搬送領域において、微細気泡BBを含む流れの作用を均一に、かつ強く受けることが好ましい。この作用の均一さと強さとのバランスを考慮すると、各インジェクタ5に洗浄液7が4〜10リットル/分供給されるような一般的な洗浄液供給条件のもとでは、搬送方向に沿ったインジェクタ5の配置間隔は30〜100mmの範囲が、インジェクタ5の噴出口から被洗浄物8までの距離は20mm〜100mmの範囲が好ましい。より具体的には、たとえば被洗浄物8の搬送方向に沿ったインジェクタ5の配置間隔を70mmとし、インジェクタ5の噴出口から被洗浄物8までの距離を50mmとすることができる。
【0021】
次に本実施の形態の洗浄装置における洗浄液7の再供給部について詳しく説明する。
主に図1を参照して、この再供給部は、オーバーフロー槽13と、回収槽15と、循環ポンプ16と、水分岐用マニホールド17と、空気導入部18と、空気分岐用マニホールド19とからなる。
【0022】
オーバーフロー槽13は、図5に示すように、トイ状の部分と、排水穴14とを有している。トイ状の部分は、洗浄槽1からオーバーフローした洗浄液7を回収するために、洗浄槽1の全周囲を囲んでいる。このトイ状の部分の底面は、排水穴14に向かって低くなるような傾斜を有している。
【0023】
排水穴14の下方には、排水穴14からの排水を回収することができるように、回収槽15が配置されている。また、回収槽15の側面の下側に、循環ポンプ16の吸水側が接続されている。そして循環ポンプ16の排水側に水分岐用マニホールド17が接続されている。この水分岐用マニホールド17に複数のインジェクタ5が接続されている。これによりインジェクタ5は、水分岐用マニホールド17から、洗浄液7の流れを発生させるための洗浄液7の供給を受けることができる。また、各インジェクタ5は空気分岐用マニホールド19を介して空気導入部18に接続されている。これによりインジェクタ5は、空気分岐用マニホールド19から、気泡BBを発生させるための空気の供給を受けることができる。
【0024】
次に本実施の形態の洗浄装置を用いた洗浄方法について説明する。
まず洗浄方法における被洗浄物8の取り扱いについて説明する。
【0025】
図1を参照して、被洗浄物8がシュート4に投入される。被洗浄物8は、たとえば、銅系のプレス加工品、切削加工品、鉄系のプレス加工品、または切削加工品である。これらは、加工時に使用されたプレス油、切削加工油、さらには加工時に生じた加工粉が付着物として付着している。この付着物が、洗浄により除去される対象となる。
【0026】
被洗浄物8は、シュート4を伝い、コンベア3上に投入される。そして被洗浄物8はコンベア3により搬送されて、洗浄槽1内の洗浄液7に浸漬される。被洗浄物8はコンベア3上により洗浄液7に浸漬されながら水平に搬送される間に、コンベア3の周りを取り囲む形で取り付けられた複数のインジェクタ5より噴射された、微細気泡BBを含む洗浄液7の流れにさらされることで、脱脂洗浄される。
【0027】
図3を参照して、一対のインジェクタ5Lおよび5Rのそれぞれは、コンベア3上において互いに対抗する1対の力FLおよびFRを被洗浄物8に与えるような洗浄液7の流れを発生させる。すなわち、被洗浄物8はコンベア3上において、図中の右方向の力FLおよび左方向の力FRを受ける。この2つの力FLおよびFRが拮抗することにより、被洗浄物8の左右方向の位置はほぼ安定に保持される。また一対のインジェクタ5Bおよび5Tのそれぞれは、図3に示す断面視において、互いに対抗する1対の力FBおよびFTを被洗浄物8に与えるような洗浄液7の流れを発生させる。すなわち、被洗浄物8は、コンベア3から上方に離される力FBと、コンベア3に押し付けられる力FTとを受ける。力FBに対して力FTが拮抗することにより、被洗浄物8がコンベア3から浮いてしまうことが防止されている。
【0028】
図2を参照して、洗浄された被洗浄物8は、そのままコンベア3によって洗浄槽1の外へ搬出される。これにより洗浄済みの被洗浄物8(図2の右端の被洗浄物8)が得られる。
【0029】
次に上記洗浄方法における洗浄液7の取り扱いについて説明する。
主に図1を参照して、インジェクタ5から洗浄槽1内に噴射された洗浄液7中に含まれる微細気泡BBは、被洗浄物8に衝突することで、被洗浄物8に付着している様々な汚染物、特には油分、を気泡BB表面に吸着させる。そしてこの気泡BBは、自身の浮力により浮上して、洗浄液7の表面に至る。液面に至った気泡BBは、空気層との接触により破泡する。この結果、被洗浄物8に付着していた汚染物は、洗浄槽1内の洗浄液7の表面層に含有される。
【0030】
この洗浄液7の表面層は、オーバーフロー槽13へオーバーフローする。オーバーフローした洗浄液7は、排水穴14を経由して、回収槽15に回収される。回収槽15では、比重差により汚染物と洗浄液7とが分離する。これにより、回収槽15内の洗浄液7の表面側には汚染物を多量に含む上層が形成され、その下には汚染物を含まない、あるいは汚染物の含有量が少ない下層が形成される。この下層の洗浄液7は、循環ポンプ16により吸い上げられて、水分岐用マニホールド17に供給される。そして水分岐用マニホールド17によりインジェクタ5に洗浄液7が供給される。
【0031】
また空気導入部18から取り込まれた空気は、空気分岐用マニホールド19を経由して各インジェクタ5に送られる。この空気による微細気泡BBを含む洗浄液7が、インジェクタ5から洗浄槽1内に噴射される。
【0032】
本実施の形態によれば、図3に示すように、流れを洗浄液7中に発生させるインジェクタ5が複数設けられているので、方向の異なる流れを発生させることができる。よって、洗浄液7の流れによる被洗浄物8のズレを、一の方向に偏らせないようにすることができる。このため、ズレを防ぐために被洗浄物8を押さえ付けるためのメッシュコンベアを、コンベア3に加えてさらに設ける必要がない。よって、装置構成を単純化でき、結果、故障の可能性が低く、安価であり、洗浄の均一性が高い洗浄装置を得ることができる。
【0033】
たとえば、支持体6にブロック体10が左右対称に設置されることで、インジェクタ5Lおよび5Rが左右対称に取付けられている。これにより、洗浄液7に対称的に微細気泡BBを含む流れが作用し、被洗浄物8の全面を均一に洗浄することができるできるとともに、被洗浄物8の搬送座標からのズレを最小限にとどめることができる。
【0034】
また、図3に示すように、被洗浄物8が洗浄液7の流れを受ける領域において、コンベア3の両脇に支持体6が配置されている。この支持体6により、被洗浄物8がコンベア3から落下することが防止される。
【0035】
また洗浄液7として、微細気泡の生成に必須な添加剤がごく少量だけ投入された水を使用するため、リンス工程が不要である。このため、リンス槽が不要であり、単一槽での脱脂洗浄が可能である。さらに、洗浄液7はほぼ水であることから、コンベア3の劣化速度が非常に遅く、また、コンベア3や洗浄槽1に付着する洗浄液由来の固形物も少ない。よってメンテナンスの労力を軽減することができる。
【0036】
また回収槽15(図1)における汚染物の分離は、比重差を用いて行なわれる。よって、装置の通常の運転時には、汚染物除去のためのフィルタを用いる必要がない。なお回収槽15の上層に蓄積された汚染物が所定量を超えた場合、フィルタを用いるなどして装置内の洗浄液7全体の再生処理を行なうことが必要となる場合がある。しかし回収槽15が用いられることによって、この再生処理の必要頻度は大幅に低減される。
【0037】
また洗浄槽1内の洗浄液7の表面層がオーバーフローされることで、微細気泡BBによって被洗浄物8から取り除いた異物、特には油分、を瞬時に回収槽15へ排水できる。よって洗浄槽1内の洗浄液7をクリーンに保つことができる。
【0038】
また従来のバッチ式での洗浄では、微細気泡BBを含む洗浄液の流れを効率的に被洗浄物に作用させることが難しく、たとえば、バレルなどの回転体の中に被洗浄物を入れて脱脂洗浄する場合、バレル内の多量の被洗浄物の内の一部は、必ず微細気泡BBを含む流れと作用させにくい位置である被洗浄物群の中央へ位置し、バレル内の被洗浄物全部を均一に洗浄するのに多大な時間を要するという問題があった。本実施の形態の洗浄装置は、コンベア3によって、連続的に投入される被洗浄物8同士を重ならせることなく洗浄領域へ導入し、その表面に効率よく微細気泡BBを含む流れを作用させることが可能である。このため、短時間での洗浄が可能である。
【0039】
(実施の形態2)
図6は、本発明の実施の形態2における洗浄装置のコンベアおよびインジェクタの平面レイアウトを模式的に示す図である。主に図6を参照して、本実施の形態の洗浄装置のインジェクタ5Lおよび5Rは、平面視において、コンベア3の搬送方向(図中の左から右に向かう方向)に沿って千鳥状に配置されている。これに対応して、支持体6(図4)のブロック体10も千鳥状に配置されている。
【0040】
なお、上記以外の構成については、上述した実施の形態1の構成とほぼ同じであるため、同一または対応する要素について同一の符号を付し、その説明を繰り返さない。
【0041】
次に本実施の形態の洗浄装置の動作について説明する。洗浄装置に投入された被洗浄物8は、コンベア3により搬送されることで、初めの照射領域であるインジェクタ5Rの近傍領域(図中の左端のインジェクタ5Rの近傍領域)に侵入する。すると被洗浄物8は、コンベア3の一方(図中の下方)側に配置されたインジェクタ5Rから噴射される微細気泡BBを含む洗浄液7(図6において図示せず)の流れの照射を受け、他方(図中の上方)側のコンベア3端部上に移動する。この後、コンベア3によって被洗浄物は次のインジェクタ5L(初めのインジェクタ5Rと反対側に取り付けてあるインジェクタ5L)の照射領域に侵入し、反対方向の流れの照射を受け、元の位置(初めのインジェクタ5Rが取付けてある側)へ戻ってくる。この動作を繰り返しながら、被洗浄物8はジグザグにコンベア3上を移動していく。
【0042】
本実施の形態によれば、コンベア3の搬送方向に沿って両側に千鳥状に配置されているインジェクタ5L、5Rが交互に微細気泡BBを含む流れを被洗浄物8に照射する。これにより被洗浄物8の両側面(図中の上側および下側の面)を均一に洗浄することができる。また被洗浄物8の両側面に対して近距離から微細気泡BBを含む流れを照射することができるので、より高い洗浄力を得ることができる。
【0043】
(実施の形態3)
図7は、本発明の実施の形態3における洗浄装置の洗浄槽およびオーバーフロー槽の構成を概略的に示す平面図(A)および正面図(B)である。図7を参照して、本実施の形態の洗浄装置は、コンベア3(図7において図示せず)の搬送方向(図7の左から右への方向)に交差する方向に沿って、洗浄液7(図7において図示せず)の液面を区分する仕切り板20を有している。仕切り板20の設置位置は、インジェクタ5に供給される洗浄液7の流量にもよるが、流量が一般的な脱脂洗浄時に用いられる4リットル/分〜10リットル/分の領域では、インジェクタ5設置位置から200mm〜500mmだけ離れた位置に設置するのが望ましい。
【0044】
なお、上記以外の構成については、上述した実施の形態1または2の構成とほぼ同じであるため、同一または対応する要素について同一の符号を付し、その説明を繰り返さない。
【0045】
本実施の形態によれば、仕切り板20(図7)によって、洗浄槽1の表面層に存在する汚染物がコンベア3の傾斜上昇部分(図2の右側の部分)の領域へ拡散することが抑制される(以下、図7の仕切り板20の左側を洗浄領域、仕切り板20の右側を被洗浄物回収領域と呼ぶ)。これにより、洗浄済の被洗浄物8がコンベア3の傾斜上昇部分を通過する際に被洗浄物8に汚染物が再付着することを抑制することができる。
【0046】
なお、本洗浄技術は微細気泡BB表面への吸着現象を利用し、被洗浄物8表面に付着している付着物、特には油分、を取り除くというものであるため、洗浄槽1内の表面層には多量の汚染物を含有する洗浄液7層が形成される。この汚染物を多量に含む表面層はオーバーフロー槽13にオーバーフローされることで洗浄槽1より取り除かれるが、連続的に投入される被洗浄物8から取り除かれる付着物量が多量である場合や、オーバーフローする洗浄液7量が少ない場合、完全に表面層から汚染物を取り除くことはできない。また、被洗浄物8の付着物の除去、つまりは洗浄槽1の洗浄液7表面層への汚染物の供給と、洗浄槽1の表面層の汚染物のオーバーフローとが同時並行的に進められるため、どんなにオーバーフロー量が大きくされても、完全に洗浄槽1の表面層から汚染物を取り除くことは難しい。仕切り板20が設けられていない場合、被洗浄物8がコンベア3の傾斜上昇部分を通過する際、汚染物を多量に含有する洗浄液7の表面層を通過しなければならず、結果、被洗浄物8表面に汚染物が再付着するという問題が生じる。
【0047】
(実施の形態4)
図8は、本発明の実施の形態4における洗浄装置の洗浄槽およびオーバーフロー槽の構成を概略的に示す平面図(A)および正面図(B)である。主に図8を参照して、本実施の形態の洗浄装置においては、洗浄槽1の縁部の仕切り板20よりもコンベア3(図8において図示せず)の搬送方向側(図中の右側)に切り込み部21が形成されている。すなわち、実施の形態3で説明した被洗浄物回収領域における洗浄槽1の縁部に、切り込み部21が形成されている。
【0048】
切り込み部21は、洗浄槽1のより多くの縁から洗浄液7がオーバーフローされることが重要であるため、適切な水深の位置に幅広い切り込みを有する必要がある。このため好ましくは、切り込み部21は複数形成されている。また仕切り板20の鉛直方向の寸法、洗浄槽1の形状、およびオーバーフローする洗浄液量にもよるが、一般的には被洗浄物回収領域の水面から5mm〜30mmの位置にコの字型の切込みを入れるのが好ましい。また、逆三角形の仕切り板20が複数形成されてもよい。
【0049】
なお、上記以外の構成については、上述した実施の形態3の構成とほぼ同じであるため、同一または対応する要素について同一の符号を付し、その説明を繰り返さない。
【0050】
本実施の形態によれば、切り込み部21によって、被洗浄物回収領域からも十分な量の洗浄液がオーバーフローされる。これにより被洗浄物回収領域における洗浄液7の表面層を清浄な状態に保つことができる。
【0051】
なお切り込み部21が設けられていない場合、洗浄領域においてインジェクタ5から洗浄槽1へ供給された洗浄液7が仕切り板20によってせきとめられることから、洗浄領域における洗浄液7の液面高さに比して、被洗浄物回収領域における洗浄液7の液面高さが低くなる。この結果、洗浄領域からのオーバーフロー量に比して、被洗浄物回収領域からのオーバーフロー量が非常に小さく、またはゼロになるという現象が生じる。この結果、被洗浄物回収領域から汚染物を除去することが困難となる。このため、被洗浄物8から分離された汚染物が仕切り板20の下を潜って被洗浄物回収領域に侵入すると、この汚染物は被洗浄物回収領域に滞留してしまうという問題が生じる。
【0052】
(実施の形態5)
図9は、本発明の実施の形態5における洗浄装置の構成を模式的に示す図である。なお図9においては搬送系を図示していない。図9を参照して、本実施の形態の洗浄装置は、排水穴22aおよび22bと、戻し用マニホールド23と、バルブ24a(第1供給量調整部)と、バルブ24b(第2供給量調整部)とを有している。排水穴22aおよび22bのそれぞれは、洗浄槽1および回収槽15の底部に設けられている。排水穴22aはバルブ24aを介して戻し用マニホールド23に接続されている。排水穴22bはバルブ24bを介して戻し用マニホールド23に接続されている。戻し用マニホールド23は、循環ポンプ16の給水側に接続されている。バルブ24aは、洗浄槽1から複数のインジェクタ5への洗浄液7の供給量を調整するためのものである。バルブ24bは、回収槽15から複数のインジェクタ5への洗浄液7の供給量を調整するためのものである。
【0053】
なお、上記以外の構成については、上述した実施の形態1〜4のいずれかの構成とほぼ同じであるため、同一または対応する要素について同一の符号を付し、その説明を繰り返さない。
【0054】
本実施の形態によれば、バルブ24aとバルブ24bとを調整することで、洗浄槽1からオーバーフローする洗浄液量を調整できる。またバルブ24aの開度をより大きくし、かつバルブ24bの開度をより小さくすることで、インジェクタ5から洗浄槽1へ供給される洗浄液7の量を維持しつつ、洗浄槽1から排水穴22aを介して抜き取られる洗浄液7の量を大きくすることができる。これにより、洗浄槽1からオーバーフロー槽13へのオーバーフロー量を抑制することができる。
【0055】
この抑制効果は、より多くのインジェクタ5が設けられる場合に特に有用である。なぜならば、各インジェクタ5から洗浄槽1への洗浄液7の供給量は、通常、インジェクタ5の個数にかかわらず一定とされるので、インジェクタ5の個数が増えるとインジェクタ5から洗浄槽1への洗浄液7の総供給量が大きくなり、その結果、洗浄液7のオーバーフロー量が過多となりやすいからである。たとえば一般的な脱脂洗浄時に用いる各インジェクタ5に供給される水流量は、4リットル/分〜10リットル/分であり、装置の構成上、インジェクタ5の本数が多くなる場合は洗浄液7の循環流量が大きくなる。
【0056】
なお排水穴22aおよびバルブ24aが設けられない場合、回収槽15からインジェクタ5に供給された洗浄液量が、そのまま洗浄槽1よりオーバーフローする洗浄液量となる。このため、インジェクタ5の個数が多い場合、オーバーフロー量が大きくなるので、オーバーフロー槽13を大きくしなければならないという問題があった。
【0057】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、洗浄液によって被洗浄物を洗浄するための洗浄装置に特に有利に適用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の実施の形態1における洗浄装置の構成を模式的に示す図である。
【図2】図1の洗浄槽およびその周辺の構成を概略的に示す断面図である。
【図3】図2のIII−III線に沿った概略断面図である。
【図4】本発明の実施の形態1における洗浄装置が有する支持体の構成を概略的に示す平面図である。
【図5】本発明の実施の形態1における洗浄装置が有する洗浄槽およびオーバーフロー槽の構成を概略的に示す平面図(A)および正面図(B)である。
【図6】本発明の実施の形態2における洗浄装置のコンベアおよびインジェクタの平面レイアウトを模式的に示す図である。
【図7】本発明の実施の形態3における洗浄装置の洗浄槽およびオーバーフロー槽の構成を概略的に示す平面図(A)および正面図(B)である。
【図8】本発明の実施の形態4における洗浄装置の洗浄槽およびオーバーフロー槽の構成を概略的に示す平面図(A)および正面図(B)である。
【図9】本発明の実施の形態5における洗浄装置の構成を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0060】
1 洗浄槽、2 コンベア支持具、3 コンベア、4 シュート、5,5B,5L,5R,5T インジェクタ、6 支持体、7 洗浄液、8 被洗浄物、9 ネジ、10 ブロック体、11 架橋体、12 メッシュ、13 オーバーフロー槽、14 排水穴、15 回収槽、16 循環ポンプ、17 水分岐用マニホールド、18 空気導入部、19 空気分岐用マニホールド、20 仕切り板、21 切り込み部、22a,22b 排水穴、23 戻し用マニホールド、24a,24b バルブ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄液によって被洗浄物を洗浄するための洗浄装置であって、
前記洗浄液を保持するための洗浄槽と、
前記被洗浄物を前記洗浄液中で搬送するためのコンベアと、
気泡を含む流れを前記洗浄液中に発生させることができ、前記流れが前記コンベアに向かうように前記コンベアの周囲に配置された複数のインジェクタとを備えた、洗浄装置。
【請求項2】
前記複数のインジェクタは1対のインジェクタを含み、
前記1対のインジェクタは、互いに対抗する1対の力を前記被洗浄物が受けるような前記洗浄液の流れを発生させるように配置されている、請求項1に記載の洗浄装置。
【請求項3】
前記複数のインジェクタは1組のインジェクタを含み、
前記1組のインジェクタは、前記コンベアの搬送方向に沿って千鳥状に配置されている、請求項1または2に記載の洗浄装置。
【請求項4】
前記複数のインジェクタの各々は、前記流れを噴出する噴出口を有し、
前記噴出口は、前記被洗浄物との距離が20mm以上100mm以下となるように配置され、
前記複数のインジェクタは、前記コンベアの搬送方向に沿って30mm以上100mm以下の間隔で配置されている、請求項1〜3のいずれかに記載の洗浄装置。
【請求項5】
前記洗浄槽からオーバーフローした前記洗浄液を回収する回収槽をさらに備えた、請求項1〜4のいずれかに記載の洗浄装置。
【請求項6】
前記複数のインジェクタは、前記洗浄槽および前記回収槽の各々から前記洗浄液を供給され、かつ前記供給された洗浄液を前記洗浄層内へ噴出することにより前記流れを発生させるように構成され、
前記洗浄槽から前記複数のインジェクタへの前記洗浄液の供給量を調整するための第1供給量調整部と、前記回収槽から前記複数のインジェクタへの前記洗浄液の供給量を調整するための第2供給量調整部とをさらに備えた、請求項5に記載の洗浄装置。
【請求項7】
前記コンベアの搬送方向に交差する方向に沿って前記洗浄液の液面を区分する仕切り板をさらに備えた、請求項1〜6のいずれかに記載の洗浄装置。
【請求項8】
前記洗浄層の縁部の前記仕切り板よりも前記コンベアの搬送方向側に切込み部が形成されている、請求項7に記載の洗浄装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2009−285557(P2009−285557A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−139928(P2008−139928)
【出願日】平成20年5月28日(2008.5.28)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】