説明

洗浄除去剤

【課題】 医薬品、食品、化粧品などに多用されている油性成分・製品について、油性洗浄除去剤と水性洗浄除去剤を共存させることにより洗浄除去能力の向上を図り、起泡性がなく、後処理として少量の洗浄水で洗浄でき、洗浄廃水は容易に油水分離して油性成分を回収でき、環境への配慮が高い洗浄剤および洗浄方法を提供すること。
【解決手段】 (1)アジピン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジイソプロピルなどのある種の二塩基酸アルキルエステル、および/または、ジカプリル酸プロピレングリコールなどのある種のプロピレングリコール脂肪酸エステルと、(2)プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、乳酸またはその塩、酢酸またはその塩、塩化ナトリウムなどの無機塩から選ばれる少なくとも1種を有効成分とする洗浄除去剤。この洗浄除去剤とある種の水性洗浄除去剤または低級アルコールとの組み合わせによる洗浄方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は主に医薬品、食品、化粧品などに用いられる油性成分および/または油性成分含有製品(以下「油性成分・製品」とも称す)の洗浄除去剤およびこれを使用した洗浄対象物の洗浄方法に関する。更に詳しくは油脂類、ロウ類(ワックス類)、炭化水素、脂肪酸類、アルコール類、エステル類、合成高分子、医薬品油性原料などの油性成分・製品を洗浄除去する際に有用な洗浄除去剤およびこれを使用した医薬品、食品、化粧品などを製造・保存するための機械装置、容器・器具、配管設備などの洗浄方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
油性成分にはオリーブ油や大豆油などの油脂類、ラノリンや蜜蝋などのロウ類、ワセリンや流動パラフィンなどの炭化水素、ラウリン酸やパルミチン酸などの脂肪酸、セタノールやステアリルアルコールなどのアルコール類、ミリスチン酸イソプロピルやステアリン酸ブチルなどのエステル類、アクリル酸誘導体・メタアクリル酸共重合体などの合成高分子、パルミチン酸レチノール、イブプロフェンピコノール、ニコチン酸トコフェロールなどの医薬品油性原料があり、これらは医薬品、食品、化粧品などには製品中の油性成分として多く利用されている。
【0003】
油脂類は脂肪酸とグリセリンのエステルからなり、構成脂肪酸の違い、エステル体の違い(モノ、ジ、トリ)により常温ではオリーブ油や大豆油などのように油状のものから、カカオ脂や牛脂のように固体のものまである。しかしながらこれらは共通して水不溶性であり、その存在は天然の動植物界に広く存在する。
【0004】
ロウ類は長鎖脂肪酸と長鎖一級アルコールとのエステルを主成分とするものであり、その殆どが固体であり、水不溶性である。ロウ類も天然動植物から得られるが、前記油脂類ほど多くなく、動物由来のラノリンや蜜蝋、植物由来のカルナウバロウやカンデリラロウなどがある。
【0005】
炭化水素には鎖式炭化水素と環式炭化水素に大別されるが、医薬品、化粧品の油相成分として広く利用されているのは前者であり、それらは極性基を有しない化学的には極めて不活性な化合物である。いずれも水不溶性であり、ワセリン、流動パラフィン、スクワランなどがあるが、この他に流動パラフィンと疎水性ポリマーの混合物(例えば、流動パラフィンを5〜10%に相当する量のポリエチレンでゲル化したゲル化炭化水素、別名プラスチベース)もある。
【0006】
脂肪酸は動植物油脂に含まれており、これらはノルマルカルボン酸で炭素数が偶数であることが特徴としてあり、大部分は炭素数8から24程度である。さらには広く天然の油脂、ロウなどにもエステル体として存在している。これらはいずれも水不溶性であり、例としてはラウリン酸やパルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸などが掲げられる。
【0007】
アルコール類は低級のものは水溶性であるが、高級なものは油脂または脂肪酸エステルを還元するか、ロウ類をケン化分解して得られ、一般に水不溶性である。またエステル類は酸とアルコールを脱水して作られ、その組み合わせは無数にあるが、化粧品に用いられているのは比較的限られたものである。エステル類は製品の油性っぽさを抑え、かつ皮膚浸透性が優れている特長を持つ。
【0008】
合成高分子には、難溶性のものとしてアクリル酸・アクリル酸オクチルエステル共重合体、アクリル酸エステル・酢酸ビニルコポリマーなどが粘着剤、バインダー、接着剤として用いられ、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチル共重合体、アミノアルキルメタクリル酸共重合体、メタクリル酸共重合体などがコーティング剤、結合剤として利用されている。
【0009】
油性成分に用いる上記オリーブ油、大豆油、カカオ脂、ラノリン、蜜蝋、カルナウバロウ、ワセリン、ステアリン酸、セタノール、ステアリルアルコール、牛脂は日本薬局方に、流動パラフィンは日本薬局方、食品添加物公定書に、ゲル化炭化水素、アクリル酸・アクリル酸オクチルエステル共重合体、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチル共重合体、アミノアルキルメタクリル酸共重合体、メタクリル酸共重合体は医薬品添加物規格に各々収載され、いずれも医薬品、食品、化粧品の油性成分として広く使用されている。
【0010】
また医薬品油性原料としては、ビタミン類の酢酸トコフェロール、フィトナジオン、メナテトレノン、パルミチン酸レチノール、抗精神病薬のデカン酸フルフェナジン、非ステロイド性抗炎症薬のイブプロフェンピコノール、ウフェナマート、皮膚治療薬のジメチルイソプロピルアズレン、抗高脂血症薬のニコチン酸トコフェロールなどが揚げられる。
【0011】
これらの油性成分・製品はそれ自体油性が強く、一般に高い粘性と付着性がある。従って、これらを洗浄除去する場合、その量が少量であれば有機溶媒等で強くこすり、拭き取る事も可能であるが、医薬品、食品、化粧品などの製造時には大量であり、このような方法は採用しがたい。特に、安全で、環境・健康障害が無く、容易に除去できる適当な洗浄除去剤がこれまでなかった。それ故、これまで軟膏類、クリーム類などの高付着性半固体である油性製品の製造においては、その製造に用いた攪拌混合機などの装置、容器・器具類、配管設備に付着したこれらの油性成分・製品を効果的に洗浄除去することは困難であった。そして油性の医薬品原料、食品原料などにおいても同様の問題が残ることがしばしばであった。更に近年は製品容器などの回収が行われるようになり、これらの油性成分・製品の残った容器の洗浄も大量となり、効果的洗浄除去の必要性が高まってきた。
【0012】
従来、医薬品、食品、化粧品などの製造時における油性成分・製品の一般的洗浄方法は、洗浄対象物である装置、容器・器具類中に、多量の油性成分・製品が残存付着している場合、最初にこれら油性成分・製品を大まかに手動、または機械的方法で除去し、次に加温した中性やイオン性の台所用合成洗剤の類であるアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、脂肪酸アルカノールアミドなどの界面活性剤を有効成分とする洗浄剤または酸・アルカリ洗浄剤を装置や容器・器具類に注入し、攪拌しながら洗浄除去したりしていた。そして最後に精製水により、洗剤の残留が無くなるまで洗浄を適当回数行われる方法が行われていた。
【0013】
その他の方法としては、油性成分・製品と相溶する鉱油、植物油を添加し、均一に攪拌溶解しながら除去し、残油を界面活性剤などで洗浄除去操作が行われていた。
【0014】
従来の洗浄剤は起泡性が高いので、洗浄攪拌強度を制限され、特に加温下では強い攪拌を行うと大量に泡が発生するので実施できない。また、このような起泡性のある洗浄剤は洗浄剤除去に大量の洗浄水を必要とする。さらに、同洗浄剤は油性成分・製品を乳化することが主な作用であるので、たとえ油性成分・製品を洗浄除去できても、洗浄除去後の廃水は油性成分・製品を含む乳濁液となる。従って、この廃水から油性成分・製品だけを短時間に分離して処理することは容易でなく、その為大量の乳濁廃水の排出により環境汚染の原因になる。
【0015】
また、中性やイオン性の台所用合成洗剤の類の洗浄除去剤を使用する方法以外にも、強酸性洗浄除去剤や強アルカリ性洗浄除去剤を使用する方法もあるが、これらは取扱いの危険性と共に、効果が十分でなかったり、洗浄対象物が腐食するといった問題がある。
【0016】
他方、油性成分・製品と相溶する鉱油、植物油を使用する方法では、両者を混合することにより粘度が低下して操作性は向上する。しかし洗浄除去後の油性成分・製品を含む鉱油や植物油の大量処理と、その残油を含む界面活性剤の処理を環境汚染することなく行う必要がある。洗剤の泡立ちの問題と多量の洗浄水が必要となり、問題は前記の台所用合成洗剤と同様にして残る。
【0017】
このように従来の油性成分・製品の洗浄除去方法は、もっぱら界面活性剤を主体とした洗浄剤または酸・アルカリ洗浄剤で洗浄を行う方法が広く使用されて来たが、洗浄性、環境問題、腐食性など数々の問題があり、十分満足のいく洗浄法が未だ確立されていない。従って、このような問題が解決される洗浄除去剤や洗浄方法の開発が望まれていた。
【0018】
そこで本発明者はアジピン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジイソプロピルなどのある種の二塩基酸アルキルエステル、ジカプリル酸プロピレングリコールなどのある種のプロピレングリコール脂肪酸エステルが油性成分・製品の洗浄除去に非常に効果があることを見いだした。〔特願2003−165925〕
【0019】
しかしながらこれらの油性洗浄除去剤は水および水性洗浄除去剤(プロピレングリコール、乳酸など)との相溶性が乏しいので別個に洗浄しなければならず、両者の特徴が同時に発揮できないので洗浄効率が劣っていた。また洗浄工程もこれまでの攪拌洗浄では洗浄温度を高くする必要があったが、より作業安全のためにも洗浄温度の低下と洗浄時間の短縮が求められていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
そこで本発明は、医薬品、食品、化粧品などに多用されている油性成分・製品について、請求項1の(1)で示した油性洗浄除去剤(以下油性剤ともいう)と請求項1の(2)で示した水性洗浄除去剤(以下水性剤ともいう)を共存させることにより洗浄除去能力の向上を図り、洗浄工程における洗浄温度の低下及び洗浄時間の短縮を行うとともに、これまで〔特願2003−165925〕の特徴である環境汚染を防止し、泡立ち等がなく操作性がよく、火気についての安全性もあり、健康面にも配慮した安全な洗浄除去剤を提供することを目的とする。
【0021】
また、以上のような洗浄除去剤を使用して医薬品、食品、化粧品を製造するための攪拌混合機などの装置、容器・器具類など、および使用済み容器に対して簡易で安全面にも優れたかつ殺菌効果も得られる洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明者は上記の問題点について鋭意検討した結果、油性剤と水性剤を共存させ、更にこれらを均一液にするにはエタノールの添加が非常に効果的な結果を得ることが分かった。
【0023】
そしてこれらを有効成分として含む洗浄除去剤を時には加温して、および/または本洗浄除去剤を高圧で噴射洗浄し、および/または超音波をかけながら洗浄し、および/または水または水性剤含有水溶液を添加して油性剤層を上昇させて行うと良い。特に超音波の洗浄効果は本洗浄液と相乗効果が得られ、洗浄温度の低下および洗浄時間の短縮に大いに寄与した。
【0024】
第一洗浄工程後、洗浄対象物および洗浄方法によっては、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、乳酸、乳酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウムなどの水性剤の水溶液による第二洗浄工程、最後に水または温水で洗浄する第三洗浄工程からなる洗浄方法、また第二洗浄工程で水性剤の代わりに低級アルコールによる非水系で行う洗浄方法、さらに洗浄廃水を油水分離させる洗浄方法を実施することができる。これらによって上記の問題を解決し、本発明を完成するに至った。
【0025】
即ち、本発明の洗浄除去剤は前記の二塩基酸アルキルエステル、プロピレングリコール脂肪酸エステルの内から選ばれた油性剤とプロピレングリコール類、乳酸とその塩、酢酸とその塩、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウムの内から選ばれた水性剤が共存し、時には更にエタノールを添加することも含めて有効成分とする。これにより洗浄除去剤の浸透効果と剥離効果及び被洗浄物の再付着防止が同時に行われ洗浄効果が増大した。
【0026】
付着性の高い油性成分・製品を洗浄除去するには、洗浄除去剤を強く攪拌して油性成分・製品を洗浄液に溶解または剥離懸濁させるのが好ましい。前述のごとく、界面活性剤を主体としたこれまでの台所用洗剤の類の洗浄剤では起泡性が高いので攪拌力に限度が生じたが、本発明の洗浄除去剤は起泡性に乏しいので洗浄効果を高める為に攪拌を強くしても操作上の問題は生じない。
【0027】
本洗浄除去剤は超音波洗浄に非常に適合したものであり、従来攪拌洗浄では85℃以上の液温が必要なことが多かったが、超音波洗浄では室温〜50℃で洗浄可能であり、かつ洗浄時間も大幅に短縮された。また攪拌装置における攪拌羽根は通常複雑な形状が多いが、本洗浄除去剤を用い、超音波洗浄を行うと攪拌槽と攪拌羽根を分けて洗浄することなく細部まで洗浄可能となった。
【0028】
本発明では、油性剤と水性剤を含有した洗浄除去剤は洗浄対象物の付着表面から油性成分・製品を溶解または浸透・剥離する洗浄効果及び再付着防止の効果を有し、これらを一旦排水した後、更に水性剤の水溶液で洗浄対象物の付着表面に残った油性成分・製品、それに油性剤をよりきれいに洗浄除去することができる。特に水性剤は洗浄対象物と油性成分・製品の境界面に残る油性剤と油性成分・製品をより完全に洗浄除去することができた。
【0029】
従って、最終工程として洗浄対象物を水や湯水で清浄化した後は、水性剤も洗浄除去され、完全に油性成分・製品、油性剤、水性剤が除去された。更に油性成分・製品の種類、洗浄方法によっては、水性剤を使用した洗浄工程を省略し、油性剤による洗浄後、直ちに水または湯水洗浄を行うことも可能となった。
【0030】
その他の方法として、油性成分・製品を第一洗浄工程で洗浄除去して洗浄廃水を排出後、第二工程でアルコールを使用した洗浄も可能となった。特に水分を嫌う非水系での環境下で洗浄が必要な場合有効な方法である。
【発明の効果】
【0031】
本発明の(1)アジピン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジイソプロピルなどのある種の二塩基酸アルキルエステル、および/または、ジカプリル酸プロピレングリコールなどのある種のプロピレングリコール脂肪酸エステルと、(2)プロピレングリコール、乳酸またはその塩、塩化ナトリウムなどから選ばれる少なくとも1種を有効成分とする洗浄除去剤は(1)(2)を共存させることにより洗浄除去能力の向上を図り、大豆油、ラノリン、ワセリン、パルミチン酸、アクリル系合成高分子などの油性成分及びそれらを含む医薬品、食品および化粧品を有効に洗浄除去できる。特にこの洗浄法は超音波機との併用により、洗浄工程における洗浄温度の低下及び洗浄時間の短縮を実現し、洗浄効果が高く、中性で、起泡性がなく、後処理として少量の洗浄水で洗浄でき、かつ洗浄廃水は容易に油水分離して油性成分を回収できる。従って、環境への安全性が高く、人体に対しても安全性の高い洗浄剤であり、必要時には殺菌剤などを併用し、同時に殺菌洗浄も兼ねることが可能な洗浄方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
本発明の油性剤である二塩基酸アルキルエステルは ROOC(CHCOORで表され、nは2〜10の整数、RおよびRは炭素数1〜6のアルキル基で表される化合物である。アルキル基の炭素数が大きくなると疎水性が強く出て、水性剤への取り込みが悪くなり、反対に炭素数0は単なる二塩基酸であり、水溶性となり洗浄には適さない。またn数が10を超えると通常の化合物として入手困難であり、洗浄除去剤としての価値も乏しくなる。好ましくはコハク酸ジメチル、コハク酸ジエチル、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジイソブチル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジイソプロピルであるが、コハク酸ジメチル、コハク酸ジエチルは特異臭が強いので、より好ましくはアジピン酸ジエチル、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジイソブチル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジイソプロピルである。
【0033】
本発明の油性剤であるプロピレングリコール脂肪酸エステルはRCOOCHCH(CH)OOCRで表され、Rは炭素数5〜11のアルキル基、Rは炭素数5〜11のアルキル基または水酸基を表す化合物である。炭素数が大きくなると固体または粘ちゅうな液体となり疎水性が強く出て、水性剤への取り込みが悪くなる。一方炭素数が小さくなると水溶性が強く出て、油性成分の取り込みが悪くなる。そこで好ましくはモノカプリル酸プロピレングリコール、ジカプリル酸プロピレングリコール、ジデカン酸プロピレングリコールである。
【0034】
洗浄除去剤の有効成分であるアジピン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジイソプロピルは医薬品添加物規格でそれぞれ認められており、いずれも浸透性、親和性に優れた各種化粧品、医薬品の油相成分として使用されている。モノカプリル酸プロピレングリコール、ジカプリル酸プロピレングリコール、ジデカン酸プロピレングリコールは食品添加物で認められており、難溶性薬物の溶解剤、油性成分相互溶解剤として使用されている。これらはいずれも人体に接触する形での使用がなされており、比較的安全性の高いものとして評価されているので、医薬品や化粧品を製造するための各種装置、容器・器具、配管設備および使用済み容器などの洗浄に際しても十分使用することが可能である。
【0035】
本発明の洗浄除去剤は主に油性剤により浸透・剥離効果あるいは溶解効果を発揮し、一方水性剤は主に再付着防止効果を発揮する。従って、目的とする洗浄方法によりこれらの洗浄成分は適宜混合することができる。しかしながら洗浄の主目的である浸透・剥離効果を発揮するには洗浄除去剤に占める油性剤の比率は最低8重量%は必要であり、それ以下では洗浄が不十分になりやすい。好ましくは20重量%以上である。水性剤は再付着防止に大きく寄与し、これらは最低5重量%は必要であり、それ以下では再付着が起こりやすい。好ましくは10重量%以上である。
【0036】
本発明の洗浄除去剤には、更に有効成分としてエタノールを含んでいてもよい。エタノールは油性成分を始め多くの物質の溶解効果があるが、本発明の洗浄除去剤に含まれる油性剤と水性剤を均一溶液にする効果も持つ。均一溶液でなくとも洗浄効果に大差はないが、使用時に攪拌混合操作が不要になるので、大量の場合操作性が容易であり、商品価値も高まる。エタノールの添加量は任意であるが、好ましくは50重量%以下である。50重量%を超えると、本洗浄除去剤の特徴よりもエタノールの洗浄における効果が第一となり、本発明の目的と異なる。またエタノールは低級アルコールで引火性が強いので、洗浄除去剤の安全性の面でもエタノールの量が不必要に多いのは好ましくない。
【0037】
本発明の第二工程で使用する水性剤は、先に油性剤と水性剤からなる洗浄除去剤で油性成分・製品を浸透・剥離および溶解後に再付着を防止して洗浄するが、それでも残留したものを洗浄除去することができる事が重要な要件であり、更に起泡性がなく、環境汚染が少なく、火気安全性、健康面に安全であることなどから選択された。その結果、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、乳酸またはその塩、酢酸またはその塩、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウムが選ばれた。これらの効果を発揮するには水溶液濃度は5重量%以上が望ましいが、好ましくは10重量%以上である。
【0038】
プロピレングリコールは日本薬局方医薬品、食品添加物公定書に認められており、ジプロピレングリコールは化粧品原料として多用されており、安全性の認められた物質である。トリプロピレングリコールは工業用中間原料、インキの溶剤などに用いられている。またトリエチレングリコールは医薬品添加物規格で認められており、基剤として使用されている。
【0039】
乳酸は日本薬局方医薬品、食品添加物として認められており、乳酸の塩としてはナトリウム塩、カルシウム塩、カリウム塩などが挙げられるが、このうち乳酸ナトリウムは日本薬局方外医薬品、食品添加物として、乳酸カルシウムは乳酸と同じく日本薬局方医薬品、食品添加物として認められている。酢酸は一般に広く用いられており、そのナトリウム塩は日本薬局方医薬品、食品添加物として認められている。また無機塩では塩化ナトリウムが日本薬局方医薬品として、塩化カリウム、塩化カルシウムが日本薬局方医薬品、食品添加物として、塩化マグネシウムが日本薬局方外医薬品、食品添加物として認められている。このように本発明の洗浄除去剤の構成成分は一般に安全性の高いものとして評価されているもので構成されているので、医薬品や化粧品を製造するための各種装置、容器・器具、配管設備および使用済み容器の洗浄に際しても安心して使用することができる。
【0040】
本発明では油性成分・製品を洗浄対象物から洗浄除去するために、本洗浄除去剤による洗浄除去が必須であり、その一態様として油性成分・製品に直接噴射および/または超音波洗浄および/または攪拌洗浄することができる。洗浄対象物としては、例えば、攪拌混合槽や乳化槽のように底部を有するものが挙げられる。このような洗浄対象物に対して洗浄除去剤を高圧噴射して、および/または超音波洗浄し、および/または攪拌洗浄ができる。すなわち洗浄除去剤を添加してその底部に洗浄除去剤を貯留させる。その後、超音波洗浄および/または撹拌下で系内に水または水性剤含有水溶液を徐々に添加していくと、その水面が徐々に上昇するが、これと共に水面上に位置する洗浄除去剤層も上昇することで、洗浄対象物表面に付着している油性成分・製品を洗浄除去剤が下方から上方へと取り込んでいく。当初均一液であった洗浄除去剤の場合も水の添加により次第に二相分離し、上層は油性剤の比率が高くなる。一方下層となる水相は水性剤が移行し、取り込んだ被洗浄物の再付着を防ぐ効果を保持する。最後に、例えば、洗浄対象物の底部から二相を同時に排出することで洗浄対象物の洗浄除去を効果的に行うことができる。
【0041】
また底部のない配管などでは高圧スプレーノズルから本洗浄除去剤を直接噴射して洗浄除去したり、配管内を充満させ時間経過とともに剥離溶解を行うことができる。装置部品などの各種部品類は容器内に入れて洗浄除去剤と共にに超音波洗浄するのが最も効果的であるが、漬け置き、ブラシなどで洗浄除去することもできる。
【0042】
第一工程終了後、この第二工程を行うことは洗浄対象物から油性成分・製品および油性剤を非常に良く洗浄除去し、一度剥離した油性成分・製品の再付着をより防止する効果を持つ。また、水性剤は難溶性薬物を溶解させる効果も保有するので、正に効果的な洗浄方法と言える。この工程においては洗浄効果をより有効にするために超音波洗浄および/または攪拌洗浄を行い、加温し、攪拌を強くするのが好ましい。超音波洗浄がある場合は、液温が室温〜50℃で行うことが出来る。超音波洗浄がない場合では75℃以上、より好ましくは85℃以上の加温が良い。
【0043】
第三工程は水または温水で清浄する工程であり、第二工程を経る場合は主に水性剤の除去を、第一工程終了後から直接行う場合は油性成分・製品を含む洗浄除去剤を除去することを目的とする。原則としてこの工程では温水で清浄することが望ましい。温水温度は超音波洗浄の場合は室温〜50℃で行うことが出来、超音波洗浄がない場合は好ましくは75℃以上、より好ましくは85℃以上が良い。
【0044】
第一工程終了後からメタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコールまたはそれらの混合物で洗浄することもできる。特に水の存在により油性成分・製品が固化、結晶化、高粘度化など、また被洗浄物がサビ発生や酸化膜形成などの不都合が起きる場合などは、洗浄条件が非水系下で行なわなければならないので有効な方法である。洗浄方法は油性剤による場合と同じく、直接噴射および/または超音波洗浄および/または攪拌洗浄下、溶解・剥離することができる。しかし水を添加するとアルコール濃度が低下し、洗浄効果が低下するので、なるべく水分の入らないのが良い。
【0045】
アルコールを使用した油性成分・製品の洗浄除去は、例えば、洗浄対象物が密閉系にできる装置、容器、配管などの場合、その密閉系内にアルコールを入れてこれを加温して還流する、または同じく密閉系内で室温または加温して超音波により洗浄することが好ましい。また洗浄除去後は減圧乾燥、熱風乾燥などにより非水系で洗浄が可能である。
【0046】
医薬品や化粧品の洗浄工程において、洗浄対象物に対して洗浄だけでなく、同時に殺菌や滅菌も行えることは、操作工程の短縮、労力の削減などの点で効果が大きい。従って、本発明の洗浄工程中、最終またはその一工程前での水、温水、アルコール、水性剤に抗菌剤や殺菌剤を含ませ、洗浄とともに殺菌や滅菌を行うことは有効な手段である。この場合、抗菌剤や殺菌剤としては、例えば、塩化ベンザルコニウム、エタノール、アクリノール、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、クレゾール、グルコン酸クロルヘキシジン、塩化ベンゼトニウムなどが使用される。なお、使用しうる抗菌剤や殺菌剤は上記のものに限定されるものではない。
【0047】
第一工程から出て来た廃水が、水を含む場合は、油性成分・製品および油性剤を含む油相と水性剤を含む水相に分離する。そのため油性成分・製品を含まない下層の水相はそのまま、または簡単なろ紙ろ過などの処理を経て容易に廃棄可能である。一方油相は油性成分・製品を溶解する場合は簡単なろ過操作または蒸発、温度変化、pH調整、静置などの操作により分離することができる。また剥離した不溶物が存在する場合はろ過、遠心法などの操作により分離する事ができる。このようにして、水相は環境汚染せずに排出可能であり、油相中の油性剤はリサイクルすることにより洗浄液として再利用することも可能である。そして最後に残った油性成分・製品のみを廃棄すれば環境の汚染を最小限に抑えることができる。
【0048】
第二工程から排出される廃水は少量の油性成分・製品を含む油性剤溶液と多量の水性剤溶液からなる。前者は通常比重が1未満であり、他方後者は比重が1以上で乳化作用を持たないので、互いに分離し、容易に各溶液に適した後処理が可能となる。
【0049】
なお、本発明において、洗浄除去剤中における有効成分含有量は70重量%以上であることが好ましい。なぜなら、エタノールが最大限(50%)存在した場合、油性剤、水性剤は最大でも33.3%以下になり、本来の洗浄除去剤の性質を維持するのに全体量の1/3は最低限必要な量であり、更に水または水性剤含有水溶液を洗浄時に追加添加する場合を考慮すると洗浄効果を保つためにも70重量%以上保持する必要がある。
【実施例】
【0050】
以下に具体的な実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0051】
[実施例1]
洗浄除去剤の洗浄効果は配合比率により変化するが、液の均一性によって大きく変化することはない。しかしながら商品価値、使用時に攪拌混合が不要な点において液が均一であることに長所がある。液の均一組成領域は構成する成分により異なり複雑であり、表1にその主な組成比率を示す。組成比率はエタノールを除く構成成分全体を100%とした。なお均一にならない二相の組成比率も併記する。これにより均一液となりにくい成分の組合せが推定できる。
【0052】
【表1】

PG:プロピレングリコール、di-PG:ジプロピレングリコール、tri-PG:トリプロピレングリコール
LA:乳酸、LA-Na50:乳酸ナトリウム50%水溶液、AcOH:酢酸、AcONa10:酢酸ナトリウム10%水溶液、NaCL10:塩化ナトリウム10%水溶液、EtOH:エタノール

【0053】
表1の結果より、セバシン酸ジイソプロピルは水の存在により極端に相溶性が悪い。水性剤であるプロピレングリコールを10%ほど添加しても相溶性はみられない。このような傾向は他の油性剤も同様である。このような油性剤に対して水性剤であるプロピレングリコールとの相溶性について見ると、相溶性が良いのはセバシン酸ジイソプロピルが一番良く、次にアジピン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジエチルと続き、ジカプリル酸プロピレングリコールとジデカン酸プロピレングリコールは相溶性が見られなかった。セバシン酸ジイソプロピルは全領域で均一液となるが、他は油性剤の低濃度領域のみで相溶性が見られた。
次にプロピレングリコールをジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールと変化させると油性剤との相溶性が向上する傾向が見られた。更にエタノール添加の効果はジカプリル酸プロピレングリコール、ジデカン酸プロピレングリコールで顕著に現れ、均一液にできる可能性が十分ある事を示唆している。
油性剤と乳酸との相溶性はセバシン酸ジイソプロピルでその領域が示されているが、均一とならない領域でもエタノール添加により均一となる事が示されている。油性剤と酢酸の相溶性については乳酸よりも均一相領域が広く、これは酢酸の油剤との相溶性が優れていることを示している。
一方、乳酸ナトリウム50%水溶液は乳酸に比べ非常に相溶性が悪く、プロピレングリコール添加の効果も見られないが、エタノールの添加により均一性が得られた。ジデカン酸プロピレングリコールについてもエタノールの添加により均一性を保持することができた。また酢酸ナトリウム10%水溶液も酢酸に比べて相溶性が悪いが、これらもエタノール添加により均一液となりうる事を示している。さらに塩化ナトリウム10%水溶液と油剤の相溶性に関しては非常に悪いが、一部エタノールの添加により均一液となる事を示している。
【0054】
[実施例2]
本実施例では、洗浄しにくい化粧品のファンデーションを使用し、油性剤と水性剤からなる洗浄除去剤による洗浄効果を攪拌洗浄と超音波洗浄で比較した。超音波洗浄に使用した超音波洗浄器は出力80W、周波数38KHz(アズワン製)
【0055】
サンプル:市販ファンデーション(クリームファンデーション/ソニアリキール製)をステンレス板(5cm×10cm)に塗布後乾燥させたもの。
洗浄除去剤:セバシン酸ジイソプロピル20gと乳酸24gの混合液。
試験方法:1)200mlビーカーに洗浄除去剤44gを入れ、ホットスターラー上で加温攪拌し、90℃になったらサンプルを入れ、サランラップでサンプル入りビーカーを覆い、30分間スターラーによる攪拌下で洗浄する。次に90℃の湯を40g添加し、15分加温攪拌する操作を二回行う。
2)200mlビーカーに洗浄除去剤44gを入れ、加温して50℃になったらサンプルを入れ、超音波洗浄器にかける(50℃、5分間)。次に50℃の湯を40g添加し、5分超音波洗浄する操作を二回行う。
これらの結果を表2に示す。
【0056】
【表2】

表2の結果から、本洗浄除去剤は攪拌洗浄でも超音波洗浄でも洗浄効果はあるが、後者のほうが洗浄液温度、洗浄時間が大幅に低下、短縮された。
【0057】
[実施例3]
本実施例では、水性剤がこれまで弱酸性の乳酸を使っていたので、これを中性の乳酸ナトリウムにすることで洗浄除去剤の洗浄効果がどのように変わるか、また良く使用されている家庭用中性洗剤との比較も含めて検討した。
【0058】
サンプル:[実施例2]と同様のファンデーション塗布乾燥ステンレス板。
洗浄除去剤:1)2)セバシン酸ジイソプロピル20gと乳酸ナトリウム50%水溶液24gの混合液。3)家庭用中性洗剤ママレモン20%水溶液100g
試験方法:1)100mlビーカーに洗浄除去剤44gを入れ、ホットスターラー上で加温攪拌し、90℃になったらサンプルを入れ、サランラップでサンプル入りビーカーを覆い、30分間スターラーによる攪拌下洗浄する。次に90℃程度の湯を20g添加し、15分加温攪拌する操作を二回行う。
2)100mlビーカーに洗浄液44gを入れ、加温して50℃になったらサンプルを入れ、超音波洗浄器にかける(50℃、5分間)。次に50℃の湯を20g
添加し、5分超音波洗浄する操作を二回行う。
3)100ml ビーカーに洗浄液100g を入れ、加温して50℃になったらサンプルを入れ、超音波洗浄器にかける(50℃、15分間)
これらの結果を表3に示す。
【0059】
【表3】

表3の結果から、乳酸に比べ、乳酸ナトリウムの塩は攪拌洗浄には効果が無いが、超音波洗浄では同等の効果であった。一方通常良く使用される中性洗剤は超音波洗浄でも液温が低いためか洗浄効果が発揮できないようである。
【0060】
[実施例4]
本実施例では、化粧品のマスカラを中性である洗浄除去剤を用いて、試験方法が油性剤単独の場合と水性剤共存の場合での洗浄効果について比較検討した。
【0061】
サンプル:市販のマスカラ(Water proof)をステンレス板(5cm×10cm)に塗布乾燥したもの。
洗浄除去剤:1)アジピン酸ジイソプロピル20g、乳酸ナトリウム50%水溶液24g
2)セバシン酸ジイソプロピル20g、乳酸ナトリウム50%水溶液24g
試験方法:1)2)100mlビーカーに油性剤を(アジピン酸ジイソプロピルまたはセバシン酸ジイソプロピル)20g入れて加温する。液温が50℃になったらサンプルを入れて超音波にかける(50℃、10分)〔チェック1〕。次に乳酸ナトリウム50%水溶液24gを加えて超音波にかける(50℃、10分)〔チェック2〕。最後に湯(50℃)を20gずつ二回加え超音波にかける(50℃、5分×2)〔チェック3〕
これらの結果を表4に示す。
【0062】
【表4】

表4の結果より、50℃で油性剤のみの洗浄では、超音波洗浄であっても十分な洗浄が出来なかった。これに水性剤の共存により洗浄が良好に行われた。サンプルの作製法にもよるが、マスカラには油性剤の内でもセバシン酸ジイソプロピルのほうが適合性が比較的良好であった。
【0063】
[実施例5]
本実施例では、プロピレングリコール系の油性剤について洗浄力を検討した。水性剤はこれまでのデータとの比較上乳酸ナトリウム50%水溶液を使用した。
【0064】
サンプル:[実施例2]と同様のファンデーション塗布乾燥ステンレス板。
洗浄除去剤:1)ジカプリル酸プロピレングリコール20g、乳酸ナトリウム50%水溶液24g 2)ジデカン酸プロピレングリコール20g、乳酸ナトリウム50%水溶液24g
試験方法:1)2)[実施例4]と同様。
これらの結果を表5に示す。
【0065】
【表5】

表5の結果より、両者に洗浄の差は見られず、良好な結果であった。ファンデーションでは油性剤のみの段階から洗浄効果があり、その後各段階において液面までの洗浄は十分なされていた。
【0066】
[実施例6]
本実施例では、外用剤の基剤として多用されるワセリン、プラスチベースについて超音波乳化機による超音波洗浄の効果を検討した。超音波乳化機は出力100W、周波数30KHz(独・ヒールシャー製)
【0067】
サンプル:ワセリンまたはプラスチベースをステンレス板(5cm×10cm)に塗布乾燥したもの。乾燥後もサンプルのベトツキは塗布時と殆ど変わらなかった。
洗浄除去剤:セバシン酸ジイソプロピル50g、乳酸ナトリウム50%水溶液60g
試験方法:(第一工程)200mlビーカーに油性剤(セバシン酸ジイソプロピル)を50g入れ、ステンレス板を入れて超音波をかける(超音波出力80%、室温、3分)。次に乳酸ナトリウム50%水溶液60gを加え超音波にかける(3分)。最後に水を50g加え超音波をかける(3分)〔チェック1〕。
(第二工程)ビーカーをとりかえて、乳酸ナトリウム5%水溶液を80g加え超音波をかける(3分)〔チェック2〕。
評価は、×付着物残渣が認められる場合、△付着物残渣は認められないが、ベトツキがある場合、○付着物残渣なく、かつベトツキが無い場合、とした。
これらの結果を表6に示す。
【0068】
【表6】

表6の結果より、いずれも外用剤の基剤の洗浄が良好であった。
【0069】
[実施例7]
本実施例は、医薬品コーティング剤として用いられるアミノアルキルメタクリレートポリマーRS(オイドラギットRS:樋口商会)について超音波乳化機による超音波洗浄の効果を検討した。
【0070】
サンプル:オイドラギットRSをステンレス板(5cm×10cm)に塗布乾燥したもの。
洗浄除去剤:(第一工程)セバシン酸ジイソプロピル20gとプロピレングリコール80gの混合液 (第二工程)乳酸ナトリウム5%水溶液
試験方法:(第一工程)300mlステンレス容器に第一工程用洗浄除去剤を100g入れ、サンプルを入れる。次に超音波乳化機をセットし超音波をかける(超音波の強度80%、室温、5分)。水を50g加え超音波をかける(5分)。さらに水を50g加え超音波をかける(5分)
(第二工程)ステンレス容器をとりかえて、乳酸ナトリウム5%水溶液を250g加え超音波をかける(5分)
評価は、×付着物残渣が認められ、再付着多い場合、△僅かに残渣ありまたはベトツキが一部残る場合、○ベトツキのみ残る場合、◎付着物残渣、ベトツキ共に無く、きれいに洗浄された場合、とした。
これらの結果を表7に示す。
【0071】
【表7】

表7の結果より、洗浄は良好であった。今回超音波機の能力に対し、液量が少ないため液温上昇が大きく、それが洗浄効果を一層良好にしたと思われる。
なお超音波洗浄器に比べ、超音波乳化機は熱の発生が多いため、以下のように液温上昇が見られた。(第一工程)洗浄除去剤のみの洗浄時〔液温変化:23.6℃→48.2℃〕、第一回水添加時〔液温:60.9℃〕、第二回水添加時〔液温:63.3℃〕。(第二工程)〔液温:41.8℃〕。
【0072】
[実施例8]
本実施例は、乳化機に多用されているパドル付アンカーミキサー攪拌羽根を用い、超音波乳化機による超音波洗浄で細部までの洗浄が可能か検討した。これはこれまでの平面板の洗浄と異なり羽根が複雑形状なので、実際に乳化槽と攪拌羽根を同時に洗浄できるかの検証として行った。
【0073】
サンプル:ファンデーションを塗ったパドル付アンカーミキサー攪拌羽根(直径12cm高さ20cm)
洗浄除去剤:1)(第一工程)セバシン酸ジイソプロピル:プロピレングリコール=2:7(重量比)の二種混合液 (第二工程)乳酸ナトリウム5%水溶液
2)(第一工程)セバシン酸ジイソプロピル:プロピレングリコール:エタノール:乳酸ナトリウム50%水溶液=100:165:136:78(重量比)の四種混合液 (第二工程)乳酸ナトリウム5%水溶液
試験方法:1)2)(第一工程)3Lステンレス容器に洗浄除去剤500g、攪拌羽根を入れる。超音波乳化機をセットし、2分ごとに羽根を90度ずつ4回回転させて超音波洗浄を行う(超音波出力100%、2分×4回、室温)。次に50℃の温水を500g加え同様に羽根を回転させて超音波洗浄を行う(2分×4回)。この温水添加して洗浄する操作を三回行う(添加温水量1.5Kg)。洗浄液を捨て、新たに50℃の温水2Kg入れてすすぎのための超音波洗浄を同様に行う(1分×4回)
(第二工程)50℃に加温した乳酸ナトリウム5%水溶液2Kgを入れ、同じく超音波洗浄を行う(2分×4回)。
評価は、×付着物残渣が認められ、再付着多い場合、△僅かに残渣ありまたはベトツキが一部残る場合、○ベトツキのみ残る場合、◎付着物残渣、ベトツキ共に無く、きれいに洗浄された場合、とした。
これらの結果を表8に示す。
【0074】
【表8】

表8の結果より、実生産時において乳化槽の洗浄を攪拌羽根ごと洗浄可能であることが確認された。洗浄除去剤については再付着防止に乳酸ナトリウム、エタノールが効果的であった。超音波乳化機による液温上昇は液量が多いため見られなかった。
【0075】
[実施例9]
本実施例は、均一となる洗浄除去剤、およびサンプルを同一にして攪拌洗浄法と超音波洗浄法の洗浄効果を比較した。
【0076】
サンプル:ワセリンをステンレス板(5cm×10cm)に塗布したもの
洗浄除去剤:1)2)(第一工程)セバシン酸ジイソプロピル:プロピレングリコール:エタノール:乳酸ナトリウム50%水溶液=100:165:136:78(重量比)の混合液 (第二工程)乳酸ナトリウム5%水溶液
試験方法:1)(第一工程)200mlビーカーに洗浄液を50g入れ、サンプルを入れる。ラップをかけホットスターラーにのせ、攪拌下徐々に温度を上げ90℃にした後、15分間攪拌。次に90℃の温水50gを少量づつ添加し、15分間攪拌する。この操作を二回行う。
(第二工程)90℃に加温した乳酸ナトリウム5%水溶液160gを入れ、15分間攪拌洗浄を行う。
2)(第一工程)200mlビーカーに洗浄液を50g入れ、50℃に温めてからサンプルを入れて15分間超音波洗浄器にかける。次に50℃の温水50g入れて15分間超音波洗浄する。これを二回繰り返す。
(第二工程)ビーカーを取り替えて、50℃に加温した乳酸ナトリウム5%水溶液160gを入れ、同じく15分間超音波洗浄を行う。
評価は、×付着物残渣が認められる場合、△付着物残渣は認められないが、ベトツキがある場合、○付着物残渣なく、かつベトツキが無い場合、とした。
これらの結果を表9に示す。
【0077】
【表9】

表9の結果より、超音波洗浄の優位性が明確となった。比較のため、あえて洗浄時間を同じにしたが、超音波洗浄においては攪拌洗浄時間と同じ時間をかけても効果は変わらないことが途中観察で分かった。
これまでの結果から、今後時間の大幅な短縮が可能となった。
【0078】
[実施例10]
本実施例は、プロピレングリコール系の油性剤について洗浄力を各種サンプルで検討し、更には第二工程の存在意義である再付着防止および最終清浄工程についても検討した。
【0079】
サンプル:1)ファンデーション、2)ワセリン、3)プラスチベース、4)オイドラギット゛RS を各々ステンレス板(5cm×10cm
)に塗布乾燥したもの
洗浄除去剤:(第一工程) ジデカン酸プロピレングリコール:ジプロピレングリコール:エタノール:乳酸ナトリウム50%水溶液=250:360:288:36(重量比)の混合液
(第二工程)乳酸ナトリウム5%水溶液
試験方法:(第一工程)100mlビーカーに20gの洗浄液を入れ、50℃に温めてからサンプルを入れ、超音波洗浄器による超音波洗浄を行う(10分間)。 次に50℃の温水20gを添加し超音波洗浄を行う(10分間)。この操作を二回行う。
(第二工程)ビーカーを取り替えて、50℃に加温した乳酸ナトリウム5%水溶液80gを入れ、同じく10分間超音波洗浄を行う。
評価は、×付着物残渣が認められる場合、△付着物残渣は認められないが、ベトツキがある場合、○付着物残渣なく、かつベトツキが無い場合、とした。
これらの結果を表10に示す。
【0080】
【表10】

表10の結果より、洗浄対象物により効果に差が出てくる事、対象により最適成分構成がある事が明らかとなった。また第二工程はいずれも第一工程よりも洗浄度合が進んでいるので、第二工程の洗浄意義はあると判断した。
【0081】
[実施例11]
本実施例は、前例と異なるプロピレングリコール系の油性剤について洗浄力を各種サンプルで検討し、更にはそれぞれ攪拌洗浄と超音波洗浄の洗浄効果を比較検討した。
【0082】
サンプル:1)ワセリン、プラスチベースを各々ステンレス板(5cm×10cm)に塗布乾燥したもの 2)ワセリン、プラスチベース、ファンデーション、オイドラギット゛RSを各々ステンレス板(5cm×10cm
)に塗布乾燥したもの
洗浄除去剤:1)2)(第一工程) ジカプリル酸プロピレングリコール:プロピレングリコール:エタノール=30:30:32(重量比)の混合液
(第二工程)乳酸ナトリウム5%水溶液
試験方法:1)(第一工程)200mlビーカーに洗浄液を50g入れ、サンプルを入れる。ラップでサンプル入りビーカーを覆い、ホットスターラーにのせ、攪拌下徐々に温度を上げ80℃にした後、15分間加温攪拌。次に80℃の温水50gを少量づつ添加し、15分間加温攪拌する。この操作を二回行う。
(第二工程)80℃に加温した乳酸ナトリウム5%水溶液150gをいれ、15分間加温攪拌を行う。
2)試験方法:(第一工程)200mlビーカーに50gの洗浄液を入れ、50℃に温めてからサンプルを入れ、超音波洗浄器による超音波洗浄を行う(10分間)。 次に50℃の温水50gを添加し超音波洗浄を行う(10分間)。この操作を二回行う。
(第二工程)約50℃に加温した乳酸ナトリウム5%水溶液150gを入れ、同じく10分間超音波洗浄を行う。
評価は、×付着物残渣が認められる場合、△付着物残渣は認められないが、ベトツキがある場合、○付着物残渣なく、かつベトツキが無い場合、とした。
これらの結果を表11、表12に示す。
【0083】
1)攪拌洗浄
【表11】

表11の結果より、攪拌法ではやはり洗浄液の温度が重要であり、90℃以上がこれまでの結果からは洗浄効果が優れており、80℃では特にプラスチベースの場合きわめて洗浄が厳しい結果を示している。
2)超音波洗浄
【表12】

表12の結果より、攪拌法では液温が重要であるが、超音波洗浄では大幅な温度低下が実現できた。これにより。実生産時においては生産効率、操作安全性がより向上することが予測される。
【0084】
[実施例12]
本実施例は、これまで第二工程で有機酸、有機塩を使用してきたが、超音波洗浄の効率性から考え、安価な無機塩で洗浄できないか検討した。
【0085】
サンプル:ワセリンをステンレス板(5cm×10cm )に塗布乾燥したもの
洗浄除去剤:(第一工程)1)セバシン酸ジイソプロピル:プロピレングリコール:エタノール=100:165:136(重量比)の混合液
2)ジカプリル酸プロピレングリコール:プロピレングリコール:エタノール=30:30:32(重量比)の混合液
3)ジデカン酸プロピレングリコール:プロピレングリコール:エタノール=10:15:12(重量比)の混合液
(第二工程)塩化ナトリウム10%水溶液
試験方法:(第一工程)100mlビーカーに30gの洗浄液を入れ、50℃に温めてからサンプルを入れ、超音波洗浄器による超音波洗浄を行う(10分間)。 次に50℃の温水30gを添加し超音波洗浄を行う(10分間)。この操作を二回行う。
(第二工程)50℃に加温した塩化ナトリウム10%水溶液100gを入れ、同じく10分間超音波洗浄を行う。
評価は、×付着物残渣が認められる場合、△付着物残渣は認められないが、ベトツキがある場合、○付着物残渣なく、かつベトツキが無い場合、とした。
これらの結果を表13に示す。
【0086】
【表13】

表13の結果より、第二工程で塩化ナトリウム水溶液が効果ある事が判明した。この効果は乳酸ナトリウムと同等程度の洗浄効果が得られることが分かった。洗浄除去剤により洗浄効果は異なり、ワセリンに関してはセバシン酸ジイソプロピルを油性成分として含む洗浄除去剤が一番有効であった。
【0087】
[実施例13]
本実施例は、これまで第一工程において洗浄液を入れて洗浄中に、湯水を添加しながら洗浄を行ってきたが、これを湯水の代わりに水性剤を使用した場合の洗浄効果について検討した。
【0088】
サンプル:ワセリンをステンレス板(5cm×10cm )に塗布乾燥したもの
洗浄除去剤:1)2)ジカプリル酸プロピレングリコール10g+5%塩化ナトリウム水溶液10g 3)4)セバシン酸ジイソプロピル10g+5%酢酸ナトリウム水溶液10g
試験方法:1)100mlビーカーに洗浄剤を20g入れて加温する。液温が50℃になったらサンプルを入れて超音波にかける(50℃、10分)。次に湯(50℃)を3分毎に10gづつ八回加え超音波洗浄を行う。(50℃、3分×8)
2)1)で湯の代わりに5%塩化ナトリウム水溶液にして同様の操作を行なう。
3)1)と同様の操作を行なう。
4)3)で湯の代わりに5%酢酸ナトリウム水溶液にして同様の操作を行なう。
評価は、付着物残渣が認められる場合、△付着物残渣が認められないが、ベトツキがある場合、○付着物残渣がなく、かつベトツキが無い場合、とした。
これらの結果を表14に示す。
【0089】
【表14】

表14の結果より、追加洗浄は湯よりも塩化ナトリウム水溶液や酢酸ナトリウム水溶液のほうがベトツキが減少する。更に、ワセリンにおいては酢酸ナトリウム水溶液よりも塩化ナトリウム水溶液のほうが効果が大きかった。
【0090】
[実施例14]
本実施例は、実施例13の結果を踏まえて第二工程の洗浄を実施した場合の全体的洗浄効果を検討した。
【0091】
サンプル:ワセリンをステンレス板(5cm×10cm)に塗布乾燥したもの
洗浄除去剤:(第一工程)1)ジデカン酸プロピレングリコール:プロピレングリコール:エタノール=10:15:12(重量比)の混合液
2)ジカプリル酸プロピレングリコール:プロピレングリコール:エタノール=30:30:32(重量比)の混合液
(第二工程)1)2)酢酸ナトリウム5%水溶液
試験方法:(第一工程)1)2)100mlビーカーに洗浄剤を20g入れて加温する。液温が50℃になったらサンプルを入れて超音波にかける(50℃、10分)。次に5%酢酸ナトリウム水溶液(50℃)を20gずつ四回加え超音波にかける(50℃、10分×4)
(第二工程)約50℃に加温した5%酢酸ナトリウム水溶液100gを入れ、同じく10分間超音波洗浄を行う。
評価は、付着物残渣が認められる場合、△付着物残渣が認められないが、ベトツキがある場合、○付着物残渣がなく、かつベトツキが無い場合、とした。
これらの結果を表15に示す。
【0092】
【表15】

表15の結果より、第二工程では水性剤である5%酢酸ナトリウム水溶液で洗浄するとベトツキが減少する効果が確認された。

【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明は、医薬品、食品、化粧品などに多用されている油性成分・製品の効果的な洗浄除去方法が提供される点において産業上の利用可能性を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)ROOC(CHCOORで表される二塩基酸アルキルエステル(但し、nは2〜10の整数、RとRは同一および/または異なって炭素数1〜6のアルキル基を表す)、および/または、RCOOCHCH(CH)OOCRで表されるプロピレングリコール脂肪酸エステル(但し、Rは炭素数5〜11のアルキル基、Rは炭素数5〜11のアルキル基または水酸基を表す)を8〜95重量%と、(2)プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、乳酸またはその塩、酢酸またはその塩、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウムから選ばれる少なくとも1種を5〜92重量%を、有効成分として含むことを特徴とする油性成分および/または油性成分含有製品の洗浄除去剤。
【請求項2】
二塩基酸アルキルエステルがコハク酸ジメチル、コハク酸ジエチル、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジイソブチル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジイソプロピルから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1記載の洗浄除去剤。
【請求項3】
プロピレングリコール脂肪酸エステルがモノカプリル酸プロピレングリコール、ジカプリル酸プロピレングリコール、ジデカン酸プロピレングリコールから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1記載の洗浄除去剤。
【請求項4】
更に有効成分としてエタノールを含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の洗浄除去剤。
【請求項5】
洗浄除去剤中における有効成分含有量が70重量%以上であることを特徴とする請求項1乃至4記載の洗浄除去剤。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の洗浄除去剤を使用して油性成分および/または油性成分含有製品を洗浄除去する工程を含むことを特徴とする洗浄対象物の洗浄方法。
【請求項7】
洗浄除去する工程で超音波機または高圧噴射機を使用することを特徴とする請求項6記載の洗浄方法。
【請求項8】
第一工程として請求項1乃至5のいずれかに記載の洗浄除去剤を使用して油性成分および/または油性成分含有製品を洗浄除去した後、第二工程としてプロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、乳酸またはその塩、酢酸またはその塩、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウムから選ばれる少なくとも1種を有効成分として含む洗浄除去剤を使用して洗浄除去することを特徴とする請求項6または7記載の洗浄方法。
【請求項9】
洗浄最終工程として洗浄対象物を水または温水で洗浄することを特徴とする請求項6乃至8のいずれかに記載の洗浄方法。
【請求項10】
第一工程として請求項1乃至5のいずれかに記載の洗浄除去剤を使用して油性成分および/または油性成分含有製品を洗浄除去した後、第二工程としてメタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコールから選ばれる少なくとも1種を有効成分として含む洗浄除去剤を使用して洗浄除去することを特徴とする請求項6または7記載の洗浄方法。
【請求項11】
第二工程として使用する洗浄除去剤および/または洗浄最終工程で用いる水または温水に抗菌剤および/または殺菌剤を含有せしめることを特徴とする請求項8または10記載の洗浄方法。
【請求項12】
油性成分が医薬品、食品または化粧品に含まれる油性成分であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の洗浄除去剤。
【請求項13】
油性成分含有製品が医薬品、食品または化粧品であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の洗浄除去剤。


【公開番号】特開2006−182894(P2006−182894A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−377166(P2004−377166)
【出願日】平成16年12月27日(2004.12.27)
【出願人】(300025767)テクノガード株式会社 (7)
【Fターム(参考)】