説明

流体分散媒体を含む容器

媒体の外面に組み込まれた流体分散流路を有する不規則な方向を向いたセラミックの媒体の床を含む容器が開示される。流路は流体を取り込みかつ向け直し、それによって容器内の流体の分散を向上させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2009年2月16日に出願された米国特許仮出願第61/152,912号の利益を主張するものである。
【0002】
本発明は、全般的に、流体が床を通って通過する際、流体を次第に広い領域上に向け直すことにより流体の分散を向上させるために使用される不規則な方向を向いたセラミックの媒体の床に関する。特に、本発明は、化学反応器の格納容器の一端に位置して、触媒的に活性な材料、吸着剤または活性炭などの材料を含みうる構成要素の層全体に流体を再分散する床トッピング媒体に関する。
【背景技術】
【0003】
化学反応器における流体の不均一分散を低減するために使用されうる流体分散材料を開示する特許の1つの例は米国特許第6,291,603号明細書である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、不規則な方向を向いたセラミックの媒体の床の上に配置される流入する流体の流れの改良された再分散を、媒体の外面に流体分流路を組み込むことにより提供する。流路は、流体が床を通って流れる際、流体の一部を取り込み、次いで、向け直すように構成されている。いくつかの状況において、媒体は、流入する流体の初期方向に対して流体を垂直に流れさせてもよい。
【0005】
一実施形態において、本発明は、流体入口点および床からなる容器を含む。床は、その中に配置される複数の単一要素からなる第1の層を含む。第1の層内の要素の少なくとも大部分は、不規則な方向を向いたセラミックの媒体を含む。セラミックの媒体は、その中に形成される1つまたは複数の流体分流路を有する外面を含む。床はまた、大部分の構成要素がセラミックの媒体とは物理的に異なる構成要素からなる第2の層を含む。床の第1の層は第2の層と流体入口点との間に配置される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】本発明の容器を含む化学反応器の横断面図である。
【図2】図1に示される第1の層において有用なセラミックの媒体の第1の実施形態の斜視図である。
【図3】図1に示される第1の層において有用なセラミックの媒体の第2の実施形態の端面図である。
【図4】流体分散パターンの理論上の断面図である。
【図5】液体分散試験デバイスの概略図である。
【図6】図5に示される試験デバイスの中心、中間および外側領域の図である。
【図7】圧力損失対質量速度のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書で使用する「化学処理装置」という文言は、1つまたは複数の原料を受容し、次いでそれを、化学的におよび/または物理的に転化させ、1つまたは複数の最終生成物にして装置から排出する、タンク、燃焼器、燃焼室、管等などの設備を表すことを意図するものである。転化は、触媒を使用して原料を最終生成物に転化する化学反応と、脱着または吸着と、原料の物質の状態に対する物理的変化(例えば、液体から気体へ)および/または原料の温度の上昇または低下、を伴ってもよい。化学反応器は種々の目的から化学製造業で広く使用されており、相化学処理装置という文言の一部であると考えられている。化学反応器には、その中で転化プロセスが起こる容器を含んでもよい。
【0008】
その中で2つ以上の反応体を反応させて最終生成物を生成することができる反応領域を有する容器を設けることにより最終生成物を生成する化学反応器はまた、反応領域の一端に位置する床トッピング材の層および反応領域の反対端に位置する床支持材の層を含んでもよい。市販されている床トッピング材の例には、セラミックの球体および網状の発泡体がある。床トッピング材の1つの機能は、床トッピング材の層の固定領域に配置される、流入する流体を受容し、次いで、流体が床トッピング層を通過して出る際に、流体をより広い領域上に向け直すことである。流入する流体は、1つまたは複数のノズルを含んでもよい分散器として一般に公知である、機械的なデバイスにより床トッピング層上に配置されてもよい。本明細書中で、分散器は「流体入口点」として記載されうる。「流体入口点」という用語はまた、1つまたは複数の流体を床トッピング層上に集合的にまたは個別に配置する単一管または複数の管を表してもよい。流入する流体が床トッピングに接触すると、流体は流入する流体分散パターンを本質的に形成する。流体はトッピング材の床を出ると、流体は本質的に最終流体分散パターンを形成する。セラミックの球体でできた床トッピングは流入する流体の適度な再分散を提供することが公知であるが、球体を使用して再分散を大幅に増加させるという目下の要求は実現されていない。同様に、網状のセラミック発泡体でできた床トッピングは、セラミック材料を通る流れの通路を画定する複数の網部材を含んでもよい。網部材は、流入する流体を、次に反応器を通って流れる、複数のより小さな流体の流れに細分する。より大きな単一の流れを、多くのより小さな流れに細分することは、いくつかの工業上の工程において適切となりうる一方で、化学反応器の操作が1つまたは複数の流体の広範な均一分散に依存する場合、流入する流体の分散パターンよりもさらに大きな領域上に、流体を横方向に再分散することが必要とされうる。
【0009】
ここで図、特に図1を参照すると、容器12と、機械的な分散器14と、排出管16と、を含む、化学反応器10の断面図が示されている。容器は、不規則な方向を向いたセラミックの媒体22の第1の層20を含む床18と、セラミックのペレットの表面上に配置された触媒的に活性な金属を含む構成要素26の第2の層24と、床支持媒体30の第3の層28と、を収容する。本明細書中に使用されるように、セラミックの媒体が流体分流路を有し、構成要素が流体分流路を有しない場合、第1の層内のセラミックの媒体は、第2の層内の構成要素とは物理的に異なるものであると考えられる。さらに、第1の層内の少なくとも大部分の要素が不規則な方向を向いたセラミックの媒体であれば、第1の層20には、不規則な方向を向いたセラミックの媒体でない要素を含んでもよい。第1の層内の要素のすべてが、その中に組み込まれた流体分流路を有するセラミックの媒体であることが好ましい。同様に、第2の層を構成するセラミックの構成要素はすべて外面に流体分流路がなく、したがって、第1の層内の媒体とは異なる。しかしながら、本発明の利点は、少なくとも大部分の第2の層の構成要素が第1の層内のセラミックの媒体と物理的に異なる場合であっても実現されうる。再度図1を参照すると、第2の層はまた、反応領域として表されうる。床18は既知高さを有し、かつ第1の層は床の高さの20%未満を占める。第2の層は床の高さの50%を超えて占めてもよい。所望であれば、第3の層は第2の層の下に位置するスクリーンと入れ替えることも可能である。商標deltaP(商標)により特定される、市販されている適切な床支持媒体は、Saint−Gobain NorPro(Stow、Ohio、USA)から入手することができる。
【0010】
図2は、図1に示すような容器12の第1の層20内で使用されるのに適するであろうセラミックの媒体22の一実施形態の斜視図を開示する。媒体は、外周壁32と、第1の端部34と、第2の端部36と、第1の端部から第2の端部へ延在する4つの流体分流路38、40、42および44と、を含む。この実施形態において、4つの流体分流路は同じ断面形状を有する。図3に示されるように、流路の形状を変えてもよい。適切な媒体の任意の特徴である開口部46は、媒体を通る内部通路を画定し、また、第1の端部から第2の端部へと延在する。形状、サイズおよび開口部46の存在は、流体分流路の性能に影響することなく、大幅に変えてもよい。
【0011】
図3に示されるのは、第1の層20内での使用に適した媒体48の別の実施形態の端面図である。図3に示されるように、流体分流路の断面形状は、流路が媒体の外周面に接触する部分の流体を(矢印50を参照のこと)効果的に取り込みかつ分流し、次いで、外周壁の曲線面上から少なくとも流体の一部が媒体の端部に向け直される1つまたは複数の流体分流路内に流れ込むのであれば(矢印52および54を参照のこと)変形させてもよい。外周壁に垂直な角度で衝突し、次いで、流体分流路に流れ込みかつ通過し、それによって流体の流れの方向を変える流体は、本明細書中において、横向きに移動する流体と定義される。本明細書中に記載される、流体分流路を有する複数の不規則な方向を向いた媒体により、流体が媒体を通って流れ、流体の流れの初期方向に対して90°も急激に分流する。分流は、流体が第1の媒体に接触し、次いでそれを出て、次いで第2の媒体に接触してそれを出て、次いで第3の媒体に接触してそれを出る等の際に、繰り返し発生する。
【0012】
図1に示すように、容器内に、外面に形成される流体分流路を有する媒体が使用され、媒体が流体の入口と構成要素の第2の層との間に配置される第1の層を形成する場合、そのときはセラミックの媒体内の流体分流路は協働して第1の層を通過する多くの流体拡散通路を設ける。流体拡散通路には、入口を過ぎた後および第2の層に接触する前にそれを通って流体が流れる、2つ以上の媒体内に形成される2つ以上の流路を含む。流体が、第1の媒体内の流体分流路を通って流れ、次いで、第2の媒体内の別の流体分流路を通って流れる場合、そのとき流体は流体拡散通路を通って流れてきたと考えられる。流体が最初に第1の層を通り、次いで、第2の層に流れるのであれば流体が流れる方向は重要ではない。ダウンフロー型の化学反応器では、重力によって、流体が分散器から第1の層および次いで第2の層を通って下方向に流れる。アップフロー型の化学反応器では、流体の入口点は容器の底近辺に位置し、第1の層は第2の層の下に位置する。第1の層および次いで第2の層を通って流体を上方に押し出すために類似のデバイスのポンプが使用される。
【0013】
図4に示すように、流体が複数の媒体を通って流れる際にそれにより生じる流体分散パターンの理論上の断面図は、円錐形状帯域に類似してもよく(矢印56および58を参照のこと)、ここで円錐の上部60は、流体62が媒体の上部面に接触する点であり、円錐の底64は、流体が複数の媒体の底から出る際に作られるパターンである。媒体の流体分流路は2つの目的を同時に達成してもよい。第1に、媒体を通って流れる流体は、流体が媒体の床を通過する際にさらにより広範な領域上に向け直される。垂直移動の単位あたりの横方向の移動の量は、図4の円錐の中心を画定する線66などの線と、矢印56により示されるような円錐の最も近い側部との間の角度として画定される媒体床の流体分散角度を計算するために測定され、かつ使用されてもよい。15°以上の大きな流体分散角度の方が、10°以下の小さい流体分散角度よりも好ましい。大きな流体分散角度を有することに加えて、その中に組み込まれた流体分散流路を有する媒体は、有利に、円錐形状の拡散帯内に流体の均一分散を行う。円錐形状帯内に流体を均一分散することと、大きな流体分散角度との両方を達成することの方が、大きな分散角度および円錐内の不均一分散、または円錐内の均一分散および小さい流体分散角度のいずれかを達成することよりも好ましい。
【0014】
流体が複数の媒体を通って移動する際、流体をさらにより広範なパターンに効果的に分流するため、媒体の流体分流路および複数の媒体の物理的特性などのパラメータは、個別にまたは好ましくは互いに合わせて変更してもよい。変更して流体の横方向の移動に影響を与えてもよい流路の特性には、流路の幅と、流路の深さと、流路の長さと、流路の断面形状と、を含む。同様に、変更して流体の横方向の移動に影響を与えてもよい媒体の特性には、流路の中心線間の回転角度および媒体の最大直径とその長さとの比を含む。変更して流体の横方向の移動に影響を与えてもよい床の特性の1つは、床の深さである。
【0015】
流路に関しては、いくらかの流体が容易に流路に入り、次いで、流体が流路を通って媒体の一端に移動するまで少なくとも流体の一部が流路から漏れるのを阻止することを可能にするよう流体分流路が構成されてもよい。図3の流路の深さ68は媒体の最大直径Dmaxの約17%である。流路の深さは媒体の最大直径の15%〜25%の間であってもよい。媒体の最大直径の10%〜45%の間の深さを有する流路が実施可能である。流路70を画定する壁などの、互いにほぼ並行する対向壁により画定される流路では、流路の幅は対向壁72と74との間の距離を測定することにより決定される。ほぼ並行する壁を有する流路に対し、流路76などの流路は、流路の開口部のサイズを低減する張出し部78を有するように設計されてもよい。張出し部を含む流路では、開口部の幅は、張出し部の対向部分の間の距離である。張出し部部分80および82を参照のこと。流路の上部から流路の底へと流路の幅が次第に細くなる場合、そこで流路の幅は、流路の深さの2分の1における対向壁間の幅として画定される。図3の流路84の矢印86を参照のこと。適切に機能する流路は、1.2:1.0と3.0:1.0の間の深さと幅の比を有していてもよい。深さと幅の比が1.2:1.0より小さい流路は、流体を流路内に保持するには浅すぎる可能性がある。適切に機能する流路は、2:1〜20:1の間の長さと幅の比を有していてもよい。
【0016】
上に示されたように、媒体の流体分散能力に影響力を有する媒体の特性の1つは、流路間の回転角度である。回転角度は、流路68の中心線90と、隣接する流路70の中心線92との交点88により形成される角度として画定される。図3に示すように、流路は、媒体が4つの流路を有するように互いから90°に配置されてもよい。等間隔で配置された最低3つの流路を実現可能な一方、等間隔で配置された4つの流路が好適である。等間隔で配置された5つまたは6つの流路を有する媒体は実施可能である。図2に示すように、1つの媒体の各流路の断面形状は同じであってもよい。しかしながら、図3に示すように、流路の断面形状は、各流路において同じである必要はない。さらに、媒体の層の媒体すべてが同一である必要はない。
【0017】
容器内のセラミックの媒体の層の流体分散を向上させるために変更してもよい別の媒体の特性は、本明細書中に媒体の長さとその直径の比であるL:D比として定義され、0.5:1.0〜2.5:1.0までの範囲にわたってもよい。比が0.5:1未満の場合、媒体は、流体の流れに垂直な端部の方を向く傾向があり、流体を横方向に拡散する流路の能力に悪影響を及ぼす。媒体の長さと直径の比が2.5:1.0よりも大きい場合、媒体の大多数が最初の流体の流れの方向に対して垂直に向く傾向があり、床内の圧力損失を過度に増加させる可能性がある。床内の圧力損失が許容できるレベルを超えて増加した場合、そこで反応器を停止しなければならない。
【0018】
多くの流体の適切な分散を達成するために変化させてもよい床の特性に関して、床の平均深さは、媒体の長さの少なくとも5倍とするべきである。いくつかの用途において、床の平均深さは、媒体の長さの少なくとも10倍としてもよい。床の最低深さが浅すぎる場合、媒体は流体の分散にほとんど影響しない。
【0019】
図2および3に示されるセラミックの媒体を含む、本発明の容器に有用なセラミックの媒体は、媒体に十分な強度を提供し、かつ使用される流体に適合するあらゆるセラミック材料で形成してもよい。例えば、自然粘土または合成粘土、長石、ゼオライト、コーディエライト、アルミナ、ジルコニア、シリカまたはこれらの混合物などの原料を使用してもよい。粘土は一般的にアルミナとシリカの混合酸化物であり、カオリン、ボールクレー、耐火粘土、チャイナクレー等などの原料を含む。ボールクレーおよび耐火粘土などの高塑性粘土が適した粘土である。粘土は約11〜13meq/100gmのメチレンブルー指数(「MBI」)を有してもよい。本明細書中において用語「長石」は、ソーダ、カリおよび石灰を含むアルミナのケイ酸塩類を記載するために使用される。石英、ジルコンサンド、長石質粘土、モンモリロナイト、霞石閃長岩等などの他の成分もまた、微量の別のセラミック形成成分内に存在しうる。
【0020】
セラミックの床トッピング媒体を生成するために一緒に焼成される材料は、微粉形態で供給されてもよく、水および/または押出し成形工程を助けるための、結合剤、押出し助剤、潤滑材等などの加工助剤の添加により成形可能な混合物が作製されてもよい。混合物は、所望の形状を得るための押出し成形または幹式プレス技術を使用したプレス加工などのいくつかの異なる技術を使用して加工されうる。例えば、初期押出し成形工程に続くのは、押出し成形の方向に垂直に切断して所望の長さにすることであってもよい。水を飛ばすために初期乾燥が使用されてもよい。これにより相対的に弱い生地の構造を破壊することを回避することができ、約120℃未満、一実施形態においては約70℃未満で実施してもよく、約5時間継続してもよい。次いで、成形体を、例えば、1100℃〜1400℃の最高温度、一実施形態においては少なくとも1200℃、別の実施形態においては約1250℃で高温で加工して、通常1.5%未満の見掛け気孔率、一実施形態においては、0.7%未満の見掛け気孔率を有する緻密成形体を形成してもよい。しかしながら、いくつかの用途において気孔率は約15%まででもよい。焼成温度は要素の組成にある程度依存してもよく、概して、材料のバルクでは低気孔率を達成するのに十分である。これは、一般に30〜80%までの見掛け気孔率または材料内の空隙を有し、したがって媒体の材料内の空隙に流体を通過させるよりもむしろ、流体分流路内に流体を取り込むのに適さない可能性のある、網状のセラミック成形体とは対照的である。
【0021】
セラミックの媒体を、おもに酸化ケイ素と酸化アルミニウムからなる合成体(アルミノケイ酸塩)を形成するために、粘土と長石とその他副材の混合物から製作してもよい。例えば、要素を形成するのに使用される混合物は、少なくとも約90%のセラミック形成材料と、残りに(通常約10%まで)加工助剤と、を含んでもよい。セラミック形成材料は、20〜99%の酸化アルミニウムと0〜80%の酸化ケイ素からなってもよい。加工助剤は大半が焼成時に揮発してもよい。乾燥材料は、混合物を所望の形に成形し、焼成時にその形を保持することを可能にするような十分な量の水を添加する前に、完全に混合されてもよい。概して、添加する水の量は、乾燥材料の混合物100gmあたり12〜30mlであってもよい。成形可能な混合物は、次いで成形または押出し成形され所望の形状を形成してから、その形状を炉内で1100℃〜1400℃の最高温度まで焼成することができる。炉内の温度は50〜90℃/hrの割合で上昇させてもよく、かつ炉を周囲温度まで冷却させる前の、か焼温度での滞在時間は1時間〜4時間であってもよい。
【0022】
セラミックの媒体が押出し成形または幹式プレス工程により生成される場合、それらは要素の対称軸となる1つの軸方向に沿って本質的に均一な断面を有することができる。
【0023】
図2に示される媒体を含む、様々な床トッピング媒体の流体分散特性を評価するため、図5に示される液体分散試験デバイスが組み立てられ、ここで記載されるように操作された。試験デバイスには、両端において開口し、かつ媒体102の床を収容する、垂直方向を向き、かつ管状の形状の保持壁100と、床の上方に位置する機械的な分散器104と、両リングが床の下に位置し、かつ容器の中心と同心円状に並ぶ、第1の仕切りリング106および第2の仕切りリング108と、リングの下に位置する複数の流体捕集ビン110、112、114、116および118と、が含まれた。図6は試験デバイスの頂面図である。リングは第1の仕切りリングが中心領域120を画定し、第2の仕切りリングと第1の仕切りリングが協働して中間領域122の境界を画定し、第2の仕切りリングと保持壁が外側領域124の境界を画定するよう慎重に配置された。各領域は床の表面領域の3分の1を占めていた。図2に示される十分な量の媒体は、粘土と、長石と、約25重量パーセントのアルミナおよび68重量パーセントのシリカと水との混合物を含む有機押出し助剤と、の混合物を形成することにより作製された。混合物の一部は金型を通して押出し成形され、長さが切断され、約1,200℃の温度で焼成されてセラミックの媒体が形成された。評価試験は複数の媒体を試験デバイスに充填することにより開始された。媒体は18cmの一定深さまで充填され、約5mm×5mmの画定された矩形の形状の開口部を有する金網支持スクリーン126の上部に載せられた。分散器は、図5に示すように、連結管128と、連結管128に固定され、かつ試験デバイスの中心109から半径方向に分散される8個の横方向のアーム130(図6を参照)とを含む。8つの横方向のアームのそれぞれが3つの開口部132を含み、それによってアームに沿って一定の間隔をおいて配置され、かつノズルとして機能する合計24個の開口部となった。24個の開口部のうち16個が中心領域の上方に配置された。24個の開口部のうち8個が中間領域の上方に配置された。開口部のいずれも外側領域の上方に配置されなかった。各開口部132の直径はほぼ8mmであった。各領域内の水流の量を測定し、それによって流体分散パターンを決定する前に、水が床から流れる際に取り込むことも水の量を測定することもなく、分散器に水を通し、媒体の床の上部の上に約30分間流れることを可能にすることにより、媒体が十分に接液状態になることを可能とした。媒体が接液した後、流体は媒体床上に18.9l/min(毎分5ガロン)の速度で流れることが可能となった。各ノズルを通る水の平均流量は約0.79l/min(毎分0.208ガロン)であった。上述のように、水は媒体の床の個々の部材に接触すると、水は媒体の流体分散流路により分流されたため、水はさらにより広範な領域上に流れた。水が媒体の床を出て、金網スクリーンを通って流れた後、水はそれぞれ中心領域、中間領域および外側領域に対応する円形の樋の列134、136および138に集められた。各樋内の液体の量が測定され、各樋内の液体の重量百分率が次いで計算された。
【0024】
上述の試験デバイスは、2つの市販されている床トッピング媒体および図2に示される媒体の流体分散特性を評価するために使用された。2つの市販されている媒体は、一般に19mmのPentaringおよび19mmのセラミックボールとして公知である。両Pentaringおよびセラミックボールは、Saint−GobainNorPro(Stow、OH、USA)より市販されている。Pentaringは、一端から見ると、中心に位置するハブおよび5つの等間隔で配置された、ハブから外周壁へ半径方向に延在するスポークを有する、貨車の車輪に類似するセラミックの媒体である。スポークと壁とは、Pentaring媒体を通る5つの三角形の形状の開口部を画定する。Pentaringは高さが10mmおよび直径が19mmであった。以下の表1に示されるのは、上述の床トッピングのそれぞれが評価された場合の、中心領域と、中間領域と、外側領域とに流れ込んだ、kg/minとして測定された水の量である。中心領域と中間領域とに流れ込んだ水の量の間のパーセント偏差が表の右側の列に示される。
【0025】
【表1】

【0026】
このデータは、媒体の外面に組み込まれた流体分流路を有する媒体が、Pentaringよりもセラミックボールよりも、水のさらなる横方向への分散を提供したことを明確に示す。その理由は、Pentaringおよびセラミックボールの中心領域と中間領域との間のパーセント偏差が、それぞれ14.7%および37.5%であった一方、図2に示される媒体の中心領域と中間領域との間のパーセント偏差は8.6%であったからである。このデータは、同じ床深さで評価された場合、流体分散流路を有する媒体が、床トッピング媒体の他の両者よりも広い横方向の移動を提供したという結論を支持する。本発明の容器で使用されるのに適した媒体は、試験デバイスの中心領域とその中間領域の分散の間に12%未満の差を有する。その差は10%未満であることが好ましい。
【0027】
流体が第1の層を通過する際に流体の横方向への再分散を提供することに加えて、第1の層内のセラミックの媒体は、床トッピングの第1の層がない床全域の圧力損失と比較して、床全域の圧力損失に本質的に影響を与える。しかしながら、外面に組み込まれた流体分散流路を有するセラミックの媒体では、有利には、19mmのセラミックの球体または19mmのPentaringからなる第1の層よりも圧力損失の増加が少なくなる。図7に示されるのは、セラミックの球体と、Pentaringと、図2に示されるセラミックの媒体の圧力損失対質量速度のグラフである。線138は、球体のみを測定した際に得られたデータを示す。同様に、線140および142は、それぞれPentaringと図2に示されるセラミックの球体のみを測定した際に得られたデータを示す。グラフは、圧力損失は球体において最も急激に、および外面に流体分散流路を有するセラミックの媒体において最も緩やかに増加するという結論を支持する。相対的に低い圧力損失と、それがセラミックの媒体の床を通過する際の、広範な、流体の均一な横方向の分散との組み合わせが、化学反応器の運転のための望ましい特性となりうる。
【0028】
上記は特定の実施形態のものにすぎないとみなされる。当業者および本発明を作成または使用する者は、本発明の改良物を思いつくであろう。したがって、図に示されたおよび上述した実施形態は説明の目的のみのためであり、特許法の原則に従い解釈されるような以下の請求項によって定義される本発明の範囲を限定することを意図するものではないことが理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体入口点と、
床と、を含み、
前記床は、
その中に配置される複数の単一要素を含む第1の層であって、
前記第1の層内の要素の少なくとも大部分は、不規則な方向を向いたセラミックの媒体を含み、
前記セラミックの媒体は、その中に形成される1つまたは複数の流体分流路を有する外面を含む、第1の層と、
構成要素を含む第2の層であって、前記構成要素の大部分は、前記セラミックの媒体とは物理的に異なる、第2の層と、を含み、
前記床の前記第1の層は、前記第2の層と前記流体入口点との間に配置される、
容器。
【請求項2】
前記第1の層内の前記セラミックの媒体のみが、その中に形成される流体分流路を有する外面を含む、請求項1に記載の容器。
【請求項3】
前記第1の層の媒体は、第1の端部と、第2の端部と、それらの間に延在する前記流体分流路と、を含む、請求項1に記載の容器。
【請求項4】
前記第1の層の媒体はそれぞれ、前記端部の間に延在する外周壁を含み、前記流体分流路は前記外周壁内に形成される、請求項2に記載の容器。
【請求項5】
前記外周壁は前記媒体の最大直径を画定し、かつ前記流体分流路の深さは前記媒体の最大直径の10パーセントを超える、請求項4に記載の容器。
【請求項6】
各流体分流路の前記深さは前記媒体の最大直径の15パーセントを超える、請求項5に記載の容器。
【請求項7】
各流体分流路の前記深さは前記媒体の最大直径の40パーセントを超えない、請求項5に記載の容器。
【請求項8】
各流体分流路の前記深さは前記媒体の最大直径の25パーセントを超えない、請求項6に記載の容器。
【請求項9】
各流体分流路は長さおよび幅を有し、前記流路の長さと幅の比は2:1を超え、かつ20:1を超えない、請求項1に記載の容器。
【請求項10】
各流体分流路は深さおよび幅を有し、前記流路の深さと幅の比は1.2:1.0を超え、かつ3.0:1.0を超えない、請求項1に記載の容器。
【請求項11】
前記媒体の大部分は長さおよび断面直径を有し、前記媒体の長さと直径の比は0.5:1.0を超え、かつ2.5:1.0を超えない、請求項1に記載の容器。
【請求項12】
前記床は床深さを画定し、かつ前記第1の層は前記床深さの20パーセント未満を占める、請求項1に記載の容器。
【請求項13】
前記媒体の大部分はほぼ同じ長さを有し、かつ前記第1の層の最低深さは前記媒体の長さよりも少なくとも5倍大きい、請求項1に記載の容器。
【請求項14】
前記第2の層の構成要素は、触媒的に活性な金属、吸着剤、物質移動媒体、伝熱媒体およびろ過媒体からなる群から選択される材料を含む、請求項1に記載の容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−517347(P2012−517347A)
【公表日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−550242(P2011−550242)
【出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際出願番号】PCT/US2010/023974
【国際公開番号】WO2010/093841
【国際公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(593150863)サン−ゴバン セラミックス アンド プラスティクス,インコーポレイティド (139)
【Fターム(参考)】