説明

流体制御弁装置

【課題】リード板の開弁作動の悪化を抑制可能な流体制御弁装置を提供する。
【解決手段】ハウジング10は、流体通路5およびシール部131を有している。リード板20は、外縁部21がハウジング10に固定されるようにして流体通路5に設けられ、湾曲するよう変形し外縁部21とは反対側がシール部131から離間し開弁することで流体通路5の流体の流れを許容し、外縁部21とは反対側がシール部131に当接し閉弁することで流体通路5の流体の流れを遮断する。第1規制部材30は、リード板20の外縁部21を固定する固定部31、固定部31からリード板20とは反対側へ所定の長さ延びるよう形成される中間部32、および、中間部32の固定部31とは反対側の端部からリード板20に対し略平行となるように延伸する延伸部33を有し、リード板20の開弁時、延伸部33がリード板20に当接することでリード板20の変形を規制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体の流れを制御する流体制御弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関の排気通路に供給する流体を制御する流体制御弁装置が知られている。例えば特許文献1に開示された流体制御弁装置は、車両の2次空気制御システムに設置され、電磁駆動式の弁部材により流体通路を開閉し、排気通路に供給する流体としての空気の流れを制御している。この流体制御弁装置は、内燃機関の始動直後において排気中に空気を送り込むことにより排気中の未燃焼成分を燃焼させて排気の温度を上昇させ、排気浄化のための触媒を素早く加熱し活性化させるために用いられる。
【0003】
ところで、特許文献1の流体制御弁装置は、逆止弁として機能するリード板を流体通路に設け、排気の逆流を防止している。このリード板は、湾曲するよう変形し開弁することで流体通路における空気の流れを許容する。また、この流体制御弁装置は、リード板の排気通路側に、リード板の外縁部を固定するとともにリード板から遠ざかるように延伸する規制部材を備え、リード板が開弁するときのリード板の変形を規制している。これにより、リード板が過度に変形することで塑性変形すること、あるいは、折損すること等を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−340216号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の流体制御弁装置では、リード板と規制部材との隙間は比較的小さく、特にリード板の前記外縁部近傍においては隙間はほとんど形成されていない。そのため、例えば内燃機関の停止後、流体通路の温度が低下することでリード板と規制部材との隙間において排気中の水蒸気が凝縮水になると、当該隙間に水柱(液柱)が形成され易い。リード板と規制部材との隙間に水柱が形成された状態で周囲の温度が氷点下になった場合、水柱が凍結し、内燃機関の再始動時、凍結した水柱によってリード板の開弁が妨げられるおそれがある。その結果、リード板の開弁作動が悪化し、排気中に送り込む空気の流量が不足したり、リード板の振動により異音が生じたりすることが懸念される。
【0006】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、リード板の開弁作動の悪化を抑制可能な流体制御弁装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、流体供給源から内燃機関の排気通路に供給する流体の流れを制御する流体制御弁装置であって、ハウジングとリード板と第1規制部材とを備えている。ハウジングは、流体供給源と排気通路との間に設けられ、流体供給源から排気通路に供給する流体が流れる流体通路、および、流体通路の途中に形成される第1弁座部を有している。リード板は、外縁部がハウジングに固定されるようにして流体通路に設けられる。リード板は、流体供給源側の流体と排気通路側の流体との圧力差により湾曲するよう変形し、前記外縁部とは反対側が第1弁座部から離間し開弁することで、流体通路の流体供給源側から排気通路側への流体の流れを許容する。リード板は、前記外縁部とは反対側が第1弁座部に当接し閉弁することで、流体通路の排気通路側から流体供給源側への流体の流れを遮断する。すなわち、リード板は、流体通路において、排気通路側から流体供給源側への流体の逆流を防止する逆止弁として機能する。第1規制部材は、リード板の前記外縁部をハウジングに固定する固定部、当該固定部からリード板とは反対側へ所定の長さ延びるよう形成される中間部、および、当該中間部の固定部とは反対側の端部からリード板に対し略平行となるように、または、リード板から遠ざかるように延伸するよう形成される延伸部を有している。第1規制部材は、リード板の開弁時、延伸部がリード板に当接することでリード板の変形を規制する。これにより、リード板が過度に変形することで塑性変形すること、あるいは、折損すること等を抑制することができる。
【0008】
本発明では、第1規制部材が中間部を有するため、リード板が閉弁しているとき、リード板と延伸部との間には、所定の大きさの隙間が形成された状態となる。そのため、例えば内燃機関の停止後、流体通路の温度が低下することでリード板と延伸部との隙間において排気中の水蒸気が凝縮水になったとしても、当該隙間には水柱(液柱)が形成され難い。これにより、リード板と延伸部との隙間に凝縮水がある状態で周囲の温度が氷点下になり凝縮水が凍結しても、内燃機関の再始動時、凍結した凝縮水によってリード板の開弁が妨げられるのを防ぐことができる。したがって、リード板の開弁作動の悪化を抑制することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明では、ハウジングは、流体通路の途中に形成される第2弁座部を有している。そして、本発明は、弁部材と可動コアと電磁駆動部とをさらに備えている。弁部材は、第2弁座部から離間し開弁することで流体通路の流体の流れを許容する。弁部材は、第2弁座部に当接し閉弁することで流体通路の流体の流れを遮断する。可動コアは、弁部材に設けられている。電磁駆動部は、電力が供給されて磁束を生じることにより、可動コアとともに弁部材を開弁方向に吸引する。
本発明では、電磁駆動部に供給する電力を制御することにより、流体供給源から排気通路に供給する流体の供給のタイミングおよび流量を任意に制御することができる。
【0010】
請求項3に記載の発明では、第1規制部材の中間部は、リード板が閉弁しているとき、リード板と延伸部との間に液柱が形成されない程度以上の隙間が形成された状態となるよう、形成されている。そのため、例えば内燃機関の停止後、流体通路の温度が低下することでリード板と延伸部との隙間において排気中の水蒸気が凝縮水になったとしても、当該隙間に水柱(液柱)が形成されるのを確実に防ぐことができる。したがって、リード板の開弁作動の悪化を確実に抑制することができる。
【0011】
上述のように請求項1〜3に記載の発明では、リード板が閉弁しているとき、リード板と延伸部との間には、所定の大きさの隙間が形成された状態となる。そのため、流体通路の流体供給源側の流体と排気通路側の流体との圧力差によっては、リード板が延伸部側へ大きく変形することが懸念される。リード板が大きく変形すると、リード板に生じる応力が過大となり、リード板の折損等を招くことが懸念される。
【0012】
そこで、請求項4に記載の発明は、第2規制部材をさらに備えている。第2規制部材は、バイメタルにより形成され、第1規制部材の延伸部に設けられている。第2規制部材は、受熱することによりリード板側へ変形し、リード板の開弁時、リード板に当接することでリード板の変形を規制する。
【0013】
本発明では、第2規制部材は、内燃機関始動後の排気の熱によりリード板側へ変形する。これにより、第2規制部材は、リード板の開弁時、リード板に当接することでリード板の過度の変形を規制する。したがって、リード板の開弁時、リード板に過大な応力が生じるのを防ぐことができる。
【0014】
なお、本発明では、例えば内燃機関の停止後、流体通路の温度が低下すると、バイメタルにより形成された第2規制部材は、変形前の状態に戻る。そのため、リード板と第2規制部材との間には、所定の大きさの隙間が形成された状態となる。よって、流体通路の温度が低下することでリード板と第2規制部材との隙間において排気中の水蒸気が凝縮水になったとしても、当該隙間には水柱(液柱)が形成され難い。
【0015】
請求項5に記載の発明では、第1規制部材の中間部は、リード板が閉弁しているとき、かつ、第2規制部材が受熱により変形していないとき、リード板と第2規制部材との間に液柱が形成されない程度以上の隙間が形成された状態となるよう、形成されている。そのため、例えば内燃機関の停止後、流体通路の温度が低下することでリード板と第2規制部材との隙間において排気中の水蒸気が凝縮水になったとしても、当該隙間に水柱(液柱)が形成されるのを確実に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態による流体制御弁装置を示す断面図。
【図2】(A)は本発明の第1実施形態による流体制御弁装置のリード板およびその近傍を示す図、(B)は(A)のB−B線断面図、(C)はリード板が開弁した状態を示す断面図。
【図3】(A)は本発明の第2実施形態による流体制御弁装置のリード板およびその近傍を示す図、(B)は(A)のB−B線断面図、(C)はリード板が開弁した状態を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の複数の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、複数の実施形態において、実質的に同一の構成部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
(第1実施形態)
【0018】
本発明の第1実施形態による流体制御弁装置、および、その一部を図1および2に示す。
図1に示すように、流体制御弁装置1は、流体供給源としてのポンプ2と内燃機関(以下、「エンジン」という。)3の排気通路4との間に設けられる。ポンプ2は、車両のエンジン3からの排気が流れる排気通路4に、流体としての空気を供給することで、エンジン始動直後の排気中の未燃成分を燃焼させて排気の温度を上昇させ、排気浄化の触媒を素早く加熱して活性化させるのに用いられる。流体制御弁装置1は、ポンプ2から排気通路4に供給する空気の断続を制御するよう作動する。
【0019】
流体制御弁装置1は、ハウジング10、リード板20、第1規制部材30、弁部材40、可動コア43および電磁駆動部50等を備えている。
ハウジング10は、第1ハウジング11、第2ハウジング12および板部材13等を有している。第1ハウジング11、第2ハウジング12および板部材13は、例えば金属により形成されている。第1ハウジング11は、内部空間と外部空間とを接続する開口14、15、16を有している。第2ハウジング12は、内部空間と外部空間とを接続する開口17、18を有している。板部材13は、第2ハウジング12の開口18を塞ぐようにして設けられている。板部材13の中央には穴19が形成されている。
【0020】
第2ハウジング12は、開口18の外周縁部が第1ハウジング11の開口16の外周部に当接するようにして、第1ハウジング11に接合されている。これにより、板部材13は、第1ハウジング11と第2ハウジング12との間に挟み込まれた状態となる。より具体的には、板部材13は、第1ハウジング11と第2ハウジング12との間に挟み込まれた環状部材6と、第2ハウジング12との間に挟み込まれている。
【0021】
第1ハウジング11の開口15の内側には、後述する電磁駆動部50が挿入されている。これにより、第1ハウジング11および第2ハウジング12の内部に、開口14と開口17とを連通する流体通路5が形成されている。開口14はポンプ2に接続され、開口17は排気通路4に接続される。これにより、ポンプ2から吐出された空気は、流体通路5を流れて排気通路4に供給される。すなわち、ポンプ2から吐出された空気は、第1ハウジング11の開口14、開口16、第2ハウジング12の開口18、板部材13の穴19、開口17を経由して排気通路4に供給される。
【0022】
図2に示すように、板部材13および穴19は、略矩形状に形成されている。板部材13の開口17側の面の穴19の外周には、環状のシール部131が設けられている。シール部131は、例えばゴムにより形成されている。
【0023】
リード板20は、例えばステンレス等の金属薄板により略矩形状に形成されている。そのため、リード板20は、一方の面側から圧力を加えると他方の面側へ変形可能である。リード板20は、シール部131に当接可能に設けられている。本実施形態では、リード板20には、フッ素樹脂によるコーティングが施されている。
【0024】
第1規制部材30は、例えばステンレス等の金属板を折り曲げ加工することにより形成されている。第1規制部材30は、リード板20より板厚が大きく設定されている。第1規制部材30は、リード板20の開口17側に設けられている。第1規制部材30は、固定部31、中間部32および延伸部33を有している。
【0025】
固定部31は、板部材13との間にリード板20の外縁部21、すなわちリード板20の4つの辺のうち1つの辺の内側部分を挟み込むようにして、ねじ7により板部材13に固定されている。これにより、リード板20の外縁部21は、固定部31によって板部材13に固定されている。中間部32は、固定部31からリード板20とは反対側へ所定の長さ延びるよう形成されている。延伸部33は、中間部32の固定部31とは反対側の端部からリード板20に対し略平行となるように延伸するよう形成されている。延伸部33には、穴34が形成されている。
【0026】
上記構成により、リード板20がシール部131の全周に当接しているとき、リード板20と延伸部33との間には、所定の大きさd1の隙間が形成された状態となる(図2(B)参照)。d1は、リード板20と延伸部33との間に液柱が形成されない程度の大きさに設定されている。本実施形態では、d1(mm)は、例えば約3mmに設定されている。d1は、第1規制部材30の中間部32の長さを変更することにより調節することができる。
【0027】
リード板20は、流体通路5におけるポンプ2側の流体の圧力が排気通路4側の流体の圧力より大きくなると、外縁部21とは反対側が湾曲するよう変形しシール部131から離間する。このとき、流体通路5のポンプ2側から排気通路4側への流体の流れが許容される。なお、本実施形態では、リード板20にフッ素樹脂によるコーティングが施されているため、リード板20とシール部131との貼り付きが抑制されている。
【0028】
一方、リード板20は、流体通路5における排気通路4側の流体の圧力がポンプ2側の流体の圧力より大きくなると、外縁部21とは反対側がシール部131に当接する。このとき、流体通路5の排気通路4側からポンプ2側への流体の流れが遮断される。
【0029】
このように、リード板20は、ポンプ2側の流体と排気通路4側の流体との圧力差により湾曲するよう変形し、外縁部21とは反対側がシール部131から離間し開弁することで、流体通路5のポンプ2側から排気通路4側への流体の流れを許容する。一方、リード板20は、外縁部21とは反対側がシール部131に当接し閉弁することで、流体通路5の排気通路4側からポンプ2側への流体の流れを遮断する。すなわち、リード板20は、流体通路5において、排気通路4側からポンプ2側への流体の逆流を防止する逆止弁として機能する。ここで、シール部131は、特許請求の範囲における「第1弁座部」に対応している。
第1規制部材30は、リード板20の開弁時、延伸部33がリード板20に当接することでリード板20の過度の変形を規制する(図2(C)参照)。
【0030】
図1に示すように、本実施形態では、第1ハウジング11の開口16の外周縁部の第2ハウジング12側に、弁座部111が形成されている。
弁部材40は、軸部41と弁部42とからなる。軸部41は金属により棒状に形成されている。弁部42は金属により円板状に形成され、軸部41の一方の端部と一体に設けられている。弁部42は、軸部41が開口16に挿通された状態で、弁座部111に当接可能である。
【0031】
弁部材40は、弁部42が弁座部111から離間し開弁することで流体通路5の流体の流れを許容する。一方、弁部材40は、弁部42が弁座部111に当接し閉弁することで流体通路5の流体の流れを遮断する。ここで、弁座部111は、特許請求の範囲における「第2弁座部」に対応している。
可動コア43は、磁性材料により略円筒状に形成され、弁部材40の軸部41の弁部42とは反対側の端部に設けられている。
【0032】
電磁駆動部50は、固定コア51、コイル52およびヨーク53等を有している。固定コア51は、磁性材料により略円筒状に形成され、第1ハウジング11の開口15の内側に固定されている。固定コア51は、内側に可動コア43を軸方向へ往復移動可能に収容している。これにより、弁部材40は、可動コア43とともに軸方向へ往復移動可能である。可動コア43の弁部42側には、付勢部材8が設けられている。付勢部材8は、可動コア43を弁部材40の閉弁方向に付勢している。
【0033】
コイル52は、略円筒状に形成され、固定コア51の径外側に設けられている。ヨーク53は、磁性材料により略円筒状に形成され、固定コア51およびコイル52の径外側に設けられている。ヨーク53は、コイル52を覆うようにして設けられ、両端部が固定コア51に当接している。
【0034】
コイル52には、図示しない電子制御ユニット(以下、「ECU」という。)の指令により電力が供給される。コイル52に接続するターミナル9を経由してコイル52に電力が供給されると、コイル52に磁束が生じ、可動コア43、固定コア51およびヨーク53に磁気回路が形成されることで磁気吸引力が発生する。これにより、可動コア43は、付勢部材8の付勢力に抗して弁部材40の開弁方向に吸引される。可動コア43が弁部材40の開弁方向に吸引されて移動すると、弁部材40の弁部42が弁座部111から離間し開弁する。弁部材40が開弁しているとき、コイル52への電力の供給が停止されると上記磁気吸引力が消滅し、可動コア43は、付勢部材8の付勢力により弁部材40の閉弁方向に移動する。これにより、弁部材40の弁部42が弁座部111に当接し閉弁する。このように、ECUは、コイル52に供給する電力を調節することにより、弁部材40の開弁および閉弁に関する作動を制御可能である。
このように、電磁駆動部50は、電力が供給されて磁束を生じることにより、可動コア43とともに弁部材40を開弁方向に吸引する。
【0035】
次に、本実施形態による流体制御弁装置1の作動について説明する。
<エンジン始動前>
エンジン3の始動前、流体制御弁装置1およびリード板20は、図1および図2(B)に示す状態である。
【0036】
<エンジン始動後>
エンジン3が始動するとポンプ2が駆動される。ECUが電磁駆動部50のコイル52に電力を供給すると、弁部材40が開弁する。この状態で、リード板20のポンプ2側の流体の圧力が排気通路4側の流体の圧力より大きくなると、リード板20は湾曲するよう変形し開弁する。これにより、ポンプ2から吐出された空気は、流体通路5を経由して排気通路4に供給される。その結果、エンジン始動直後の排気中の未燃成分を燃焼させて排気の温度を上昇させ、排気浄化の触媒を素早く加熱して活性化させることができる。
【0037】
リード板20の開弁時、第1規制部材30は、延伸部33の中間部32とは反対側の端部がリード板20の外縁部21とは反対側の外縁部22に当接することで、リード板20の過度の変形を規制する(図2(C)参照)。
なお、リード板20の排気通路4側の流体の圧力がポンプ2側の流体の圧力より大きくなると、リード板20はシール部131に当接し閉弁する。これにより、流体通路5の排気通路4側からポンプ2側への流体の流れが遮断される。
ECUが電磁駆動部50のコイル52への電力の供給を停止すると、弁部材40が閉弁する。これにより、ポンプ2から排気通路4への空気の供給が停止される。
ECUは、弁部材40の開閉により、排気通路4への空気の供給を断続する。ECUは、排気通路4への空気の供給が十分に行われたと判断すると、ポンプ2の駆動を停止する。
【0038】
<エンジン停止後>
エンジン3の運転が停止すると、流体制御弁装置1およびリード板20は、図1および図2(B)に示す状態になる。この状態で、流体通路5の温度が低下すると、リード板20と第1規制部材30の延伸部33との間において排気中の水蒸気が凝縮水となってリード板20および延伸部33に付着することがある(図2(B)参照)。本実施形態では、リード板20と延伸部33との間には、液柱が形成されない程度以上の大きさd1の隙間が形成されている。そのため、リード板20と延伸部33との間に水柱が形成されるのを防ぐことができる。
【0039】
また、リード板20および延伸部33に凝縮水が付着した状態で周囲の温度が氷点下になった場合、凝縮水は凍結する。しかしながら、本実施形態では、リード板20と延伸部33との間に凝縮水の水柱は形成されないため、凝縮水が凍結しても、凍結した凝縮水によってリード板20と延伸部33とが接続されるような状況を回避することができる。
【0040】
<エンジン再始動後>
エンジン3が再始動した直後は、リード板20は、図2(B)に示す状態である。この状態でポンプ2が駆動され弁部材40が開弁すると、リード板20は、湾曲するように変形し開弁する。本実施形態では、エンジン停止時にリード板20と延伸部33との間の凝縮水が凍結しても、リード板20と延伸部33とが凍結した凝縮水によって接続されることがないため、エンジン再始動直後におけるリード板20の開弁動作は円滑に保たれる。
【0041】
以上説明したように、本実施形態では、第1規制部材30が中間部32を有するため、リード板20が閉弁しているとき、リード板20と延伸部33との間には、所定の大きさd1の隙間が形成された状態となる。そのため、例えばエンジン3の停止後、流体通路5の温度が低下することでリード板20と延伸部33との隙間において排気中の水蒸気が凝縮水になったとしても、当該隙間には水柱(液柱)が形成され難い。これにより、リード板20と延伸部33との隙間に凝縮水がある状態で周囲の温度が氷点下になり凝縮水が凍結しても、エンジン3の再始動時、凍結した凝縮水によってリード板20の開弁が妨げられるのを防ぐことができる。したがって、リード板20の開弁作動の悪化を抑制することができる。
【0042】
また、本実施形態では、ハウジング10は、流体通路5の途中に形成される弁座部111を有している。そして、本実施形態は、弁部材40と可動コア43と電磁駆動部50とをさらに備えている。弁部材40は、弁座部111から離間し開弁することで流体通路5の流体の流れを許容する。弁部材40は、弁座部111に当接し閉弁することで流体通路5の流体の流れを遮断する。可動コア43は、弁部材40に設けられている。電磁駆動部50は、電力が供給されて磁束を生じることにより、可動コア43とともに弁部材40を開弁方向に吸引する。
本実施形態では、電磁駆動部50に供給する電力を制御することにより、ポンプ2から排気通路4に供給する空気の供給のタイミングおよび流量を任意に制御することができる。
【0043】
また、本実施形態では、第1規制部材30の中間部32は、リード板20が閉弁しているとき、リード板20と延伸部33との間に液柱が形成されない程度(d1)の隙間が形成された状態となるよう、形成されている。そのため、例えばエンジン3の停止後、流体通路5の温度が低下することでリード板20と延伸部33との隙間において排気中の水蒸気が凝縮水になったとしても、当該隙間に水柱(液柱)が形成されるのを確実に防ぐことができる。したがって、リード板20の開弁作動の悪化を確実に抑制することができる。
【0044】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態による流体制御弁装置の一部を図3に示す。第2実施形態は、装置の構成要素が1つ多い点で、第1実施形態と異なる。
【0045】
第2実施形態は、第1実施形態の構成に加え、第2規制部材60をさらに備えている。
第2規制部材60は、バイメタルの薄板により略矩形状に形成されている。第2規制部材60は、第1規制部材30の延伸部33に設けられている。第2規制部材60は、外縁部61、すなわち第2規制部材60の4つの辺のうち1つの辺の内側部分が、延伸部33の中間部32とは反対側端部の開口17(排気通路4)側の面に接合されている。第2規制部材60の外縁部61とは反対側は、延伸部33の穴34を通り、外縁部62が延伸部33のリード板20側に位置している。
【0046】
第2規制部材60は、周囲の温度が所定の温度以下のとき、外縁部62が延伸部33のリード板20側の面に当接した状態となる(図3(B)参照)。一方、第2規制部材60は、周囲の温度が所定の温度より大きくなると、受熱することで、外縁部62がリード板20側へ変形した状態となる(図3(C)参照)。このとき、第2規制部材60は、リード板20の外縁部21と外縁部22との間の部分に当接することでリード板20の過度の変形を規制する。
【0047】
リード板20がシール部131の全周に当接しているとき、かつ、第2規制部材60が受熱により変形していないとき、リード板20と第2規制部材60との間には、所定の大きさd2の隙間が形成された状態となる(図3(B)参照)。d2は、リード板20と第2規制部材60との間に液柱が形成されない程度の大きさに設定されている。本実施形態では、d2(mm)は、例えば約3mmに設定されている。d2は、第1規制部材30の中間部32の長さを変更することにより調節することができる。
【0048】
次に、本実施形態による流体制御弁装置の作動について説明する。
<エンジン始動前>
エンジン3の始動前、リード板20は、図3(B)に示す状態である。
【0049】
<エンジン始動後>
エンジン3が始動しポンプ2が駆動され弁部材40が開弁すると、リード板20は湾曲するよう変形し開弁する。
エンジン始動直後においては流体通路5の温度が所定の温度以下のため、第2規制部材60は、外縁部62が延伸部33のリード板20側の面に当接した状態である。この状態において、リード板20が開弁するとき、リード板20は、外縁部22が第1規制部材30の延伸部33の中間部32とは反対側の端部に当接することで、過度の変形が規制される。
【0050】
エンジン3が始動し暫くすると、排気の熱により流体通路5が所定の温度より大きくなる。これにより、第2規制部材60は、受熱することで外縁部62がリード板20側へ変形する。この状態において、リード板20が開弁するとき、リード板20は、外縁部22が延伸部33の中間部32とは反対側の端部に当接するとともに、外縁部21と外縁部22との間の部分が第2規制部材60の外縁部62に当接することで、過度の変形が規制される。
【0051】
<エンジン停止後>
エンジン3の運転が停止し、流体通路5の温度が所定の温度以下になると、リード板20および第2規制部材60は、図3(B)に示す状態になる。この状態で、流体通路5の温度がさらに低下すると、リード板20と第1規制部材30の延伸部33および第2規制部材60との間において排気中の水蒸気が凝縮水となってリード板20、延伸部33および第2規制部材60に付着することがある(図3(B)参照)。本実施形態では、リード板20と第2規制部材60との間には、液柱が形成されない程度以上の大きさd2の隙間が形成されている。そのため、リード板20と第2規制部材60との間に水柱が形成されるのを防ぐことができる。
【0052】
また、リード板20、延伸部33および第2規制部材60に凝縮水が付着した状態で周囲の温度が氷点下になった場合、凝縮水は凍結する。しかしながら、本実施形態では、リード板20と第2規制部材60との間に凝縮水の水柱は形成されないため、凝縮水が凍結しても、凍結した凝縮水によってリード板20と第2規制部材60とが接続されるような状況を回避することができる。
【0053】
<エンジン再始動後>
エンジン3が再始動した直後は、リード板20および第2規制部材60は、図3(B)に示す状態である。この状態でポンプ2が駆動され弁部材40が開弁すると、リード板20は、湾曲するように変形し開弁する。本実施形態では、エンジン停止時にリード板20と第2規制部材60との間の凝縮水が凍結しても、リード板20と第2規制部材60とが凍結した凝縮水によって接続されることがないため、エンジン再始動直後におけるリード板20の開弁動作は円滑に保たれる。
【0054】
ここで、第2実施形態と第1実施形態とを対比する。第1実施形態では、リード板20が閉弁しているとき、リード板20と延伸部33との間には、所定の大きさd1の隙間が形成された状態となる。そのため、流体通路5のポンプ2側の流体と排気通路4側の流体との圧力差によっては、特にリード板20の外縁部21と外縁部22との間の部分が延伸部33側へ大きく変形することが懸念される(図2(C)に示す一点鎖線参照)。リード板20が大きく変形すると、リード板20に生じる応力が過大となり、リード板20の折損を招くことが懸念される。
【0055】
そこで、第2実施形態は、第2規制部材60をさらに備えている。第2規制部材60は、エンジン始動後の排気の熱によりリード板20側へ変形する。これにより、第2規制部材60は、リード板20の開弁時、リード板20の外縁部21と外縁部22との間の部分に当接することでリード板20の過度の変形を規制する。したがって、リード板20の開弁時、リード板20に過大な応力が生じるのを防ぐことができる。
【0056】
なお、本実施形態では、例えばエンジン3の停止後、流体通路5の温度が低下すると、バイメタルにより形成された第2規制部材60は、変形前の状態に戻る。そのため、リード板20と第2規制部材60との間には、所定の大きさd2の隙間が形成された状態となる。よって、流体通路5の温度が低下することでリード板20と第2規制部材60との隙間において排気中の水蒸気が凝縮水になったとしても、当該隙間には水柱(液柱)が形成され難い。
【0057】
また、本実施形態では、第1規制部材30の中間部32は、リード板20が閉弁しているとき、かつ、第2規制部材60が受熱により変形していないとき、リード板20と第2規制部材60との間に液柱が形成されない程度(d2)の隙間が形成された状態となるよう、形成されている。そのため、例えばエンジン3の停止後、流体通路5の温度が低下することでリード板20と第2規制部材60との隙間において排気中の水蒸気が凝縮水になったとしても、当該隙間に水柱(液柱)が形成されるのを確実に防ぐことができる。
【0058】
(他の実施形態)
上述の第1実施形態では、第1規制部材30の中間部32は、リード板20が閉弁しているとき、リード板20と延伸部33との間に液柱が形成されない程度(d1)の隙間が形成された状態となるよう、形成される例を示した。これに対し、本発明の他の実施形態では、中間部32は、リード板20が閉弁しているとき、d1が0より大きくなるよう形成されていればよい。
【0059】
また、上述の第2実施形態では、第1規制部材30の中間部32は、リード板20が閉弁しているとき、かつ、第2規制部材60が受熱により変形していないとき、リード板20と第2規制部材60との間に液柱が形成されない程度(d2)の隙間が形成された状態となるよう、形成される例を示した。これに対し、本発明の他の実施形態では、中間部32は、リード板20が閉弁しているとき、かつ、第2規制部材60が受熱により変形していないとき、d2が0より大きくなるよう形成されていればよい。
【0060】
また、上述の実施形態では、第1規制部材の延伸部が、中間部の固定部とは反対側の端部からリード板に対し略平行となるように延伸するよう形成される例を示した。これに対し、本発明の他の実施形態では、第1規制部材の延伸部が、リード板から遠ざかるように延伸するよう形成されることとしてもよい。
【0061】
また、上述の第2実施形態では、第2規制部材が、第1規制部材の延伸部の中間部とは反対側端部の排気通路側の面に接合される例を示した。これに対し、本発明の他の実施形態では、第2規制部材は、延伸部の中間部とは反対側端部のリード板側の面に接合されることとしてもよい。また、第2規制部材は、どのような大きさおよび形状で形成してもよい。
【0062】
本発明の流体制御弁装置は、空気に限らず、他の流体の流れを制御するのに用いてもよい。
このように、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の実施形態に適用可能である。
【符号の説明】
【0063】
1 ・・・・・流体制御弁装置
2 ・・・・・ポンプ(流体供給源)
3 ・・・・・エンジン(内燃機関)
4 ・・・・・排気通路
5 ・・・・・流体通路
10 ・・・・ハウジング
11 ・・・・第1ハウジング(ハウジング)
12 ・・・・第2ハウジング(ハウジング)
13 ・・・・板部材(ハウジング)
131 ・・・シール部(第1弁座部)
20 ・・・・リード板
21 ・・・・外縁部
30 ・・・・第1規制部材
31 ・・・・固定部
32 ・・・・中間部
33 ・・・・延伸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体供給源から内燃機関の排気通路に供給する流体の流れを制御する流体制御弁装置であって、
前記流体供給源と前記排気通路との間に設けられ、前記流体供給源から前記排気通路に供給する流体が流れる流体通路、および、当該流体通路の途中に形成される第1弁座部を有するハウジングと、
外縁部が前記ハウジングに固定されるようにして前記流体通路に設けられ、前記流体供給源側の流体と前記排気通路側の流体との圧力差により湾曲するよう変形し前記外縁部とは反対側が前記第1弁座部から離間し開弁することで前記流体供給源側から前記排気通路側への流体の流れを許容し、前記外縁部とは反対側が前記第1弁座部に当接し閉弁することで前記排気通路側から前記流体供給源側への流体の流れを遮断するリード板と、
前記外縁部を前記ハウジングに固定する固定部、当該固定部から前記リード板とは反対側へ所定の長さ延びるよう形成される中間部、および、当該中間部の前記固定部とは反対側の端部から前記リード板に対し略平行となるように、または、前記リード板から遠ざかるように延伸するよう形成される延伸部を有し、前記リード板の開弁時、前記延伸部が前記リード板に当接することで前記リード板の変形を規制する第1規制部材と、
を備えていることを特徴とする流体制御弁装置。
【請求項2】
前記ハウジングは、前記流体通路の途中に形成される第2弁座部を有し、
前記第2弁座部から離間し開弁することで前記流体通路の流体の流れを許容し、前記第2弁座部に当接し閉弁することで前記流体通路の流体の流れを遮断する弁部材と、
前記弁部材に設けられる可動コアと、
電力が供給されて磁束を生じることにより、前記可動コアとともに前記弁部材を開弁方向に吸引する電磁駆動部と、をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の流体制御弁装置。
【請求項3】
前記中間部は、前記リード板が閉弁しているとき、前記リード板と前記延伸部との間に液柱が形成されない程度以上の隙間が形成された状態となるよう、形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の流体制御弁装置。
【請求項4】
バイメタルにより形成され、前記延伸部に設けられ、受熱することにより前記リード板側へ変形し、前記リード板の開弁時、前記リード板に当接することで前記リード板の変形を規制する第2規制部材をさらに備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の流体制御弁装置。
【請求項5】
前記中間部は、前記リード板が閉弁しているとき、かつ、前記第2規制部材が受熱により変形していないとき、前記リード板と前記第2規制部材との間に液柱が形成されない程度以上の隙間が形成された状態となるよう、形成されていることを特徴とする請求項4に記載の流体制御弁装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−32716(P2013−32716A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−168247(P2011−168247)
【出願日】平成23年8月1日(2011.8.1)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】