説明

流体制御弁

【課題】流体の3段階の温度領域に応じて開閉する、小型で信頼度が高く安価な流体制御弁を提供すること。
【解決手段】流体制御弁が、流路(20)と、流路内で往復動可能に配設される弁体(40)と、弁体が閉塞するべき流路開口部(24)と、流路内に配設され、周囲の流体の温度に応じて内部に収容される熱膨張体が膨張することによって弁体(40)を流路(20)の方向に前進させるサーモエレメント(50)と、弁体(40)を後退させる付勢手段(60)とを具備し、流体の温度が低温領域に含まれるとき、流路開口部(24)が開放され、流体の温度が中温領域に含まれるとき、流路開口部(24)が弁体(40)によって閉塞され、流体の温度が高温領域に含まれるとき、流路開口部(24)が開放されるように、サーモエレメント(50)が弁体(40)を流路の方向で位置付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車両エンジンの冷却水回路中に配設されて、冷却水の流通及び遮断に用いて好適な流体制御弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両エンジンの冷却水回路中には、始動時における車室内の即効暖房のための蓄熱タンクが設けられることが多い。このような蓄熱タンクの流入口側には、冷却水の温度に応じて蓄熱タンクに冷却水を流入させたり流入させなかったりする流体制御弁が用いられている。前記流体制御弁は、3段階の温度領域に応じて開閉することが必要で、例えば、冷却水の温度が40℃未満の場合に開弁し、40℃〜70℃で閉弁し、70℃以上で再び開弁するものである。
【0003】
このような流体制御弁の先行技術としては、特許文献1に記載されている弁手段が知られている。前記弁手段は、封入されたパラフィン等の熱膨張を利用して弁体を駆動するサーモエレメント、弁体、弁体が塞ぐ流路開口部、及び弁体付勢ばねを備えているが、この弁手段は、弁体、流路開口部、及び弁体付勢ばねをそれぞれ2個ずつ設けている。このため、前記それぞれ2個設けられた構成部品が、弁手段の体格を大きくすると共に、製造コストを押し上げ、また2箇所の開閉箇所による信頼度の低下が考えられる。
【0004】
【特許文献1】特開平10−71842号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は前述の問題に鑑みて、流体の3段階の温度領域に応じて開閉する、小型で信頼度が高く安価な流体制御弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するために、以下の技術的手段を採用する。
【0007】
請求項1に記載の発明では、流体制御弁(1,200,300)が、流体が流れる流路(20,220,320)と、流路(20,220,320)内で往復動可能に配設される弁体(40,240,340)と、弁体(40,240,340)が閉塞するべき流路の開口である流路開口部(24,224,324)と、流路(20,220,320)内に配設され、周囲の流体の温度に応じて内部に収容される熱膨張体が膨張することによって弁体(40,240,340)を流路(20,220,320)の方向に前進させるサーモエレメント(50,250)と、熱膨張体が収縮したとき弁体(40,240,340)を後退させる付勢手段(60)とを具備し、流体の温度が所定の低温領域に含まれるとき、流路開口部(24,224,324)が開放され、流体の温度が低温領域より高温の所定の中温領域に含まれるとき、流路開口部(24,224,324)が弁体(40,240,340)によって閉塞され、流体の温度が中温領域より高温の所定の高温領域に含まれるとき、流路開口部(24,224,324)が開放されるように、サーモエレメント(50,250)が弁体(40,240,340)を流路の方向で位置付けることを特徴としている。
【0008】
請求項1に記載の発明では、流路開口部が一箇所であり、また弁体及び付勢手段もそれぞれ一つであるので、構造が単純で安価で体格が小さくかつ開閉の信頼度の高い流体制御弁が得られる。
【0009】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の流体制御弁(1,100)の流路開口部(24,124)が、流路開口部内周面(31,131)により形成され、弁体(40,140)が、流路開口部内周面(31,131)を押圧するシール部材(42,142)を具備し、流路(20,120)が、流路開口部(24,124)を間に挟む第1流路領域(20a,120a)と第2流路領域(20b,120b)とに区画され、流体の温度が低温領域に含まれるとき、シール部材(42,142)が第1流路領域(20a,120a)内にあって流路開口部(24,124)が開放され、流体の温度が中温領域に含まれるとき、シール部材(42,142)が流路開口部内周面(31,131)に接触することにより流路開口部(24,124)を閉塞し、流体の温度が高温領域に含まれるとき、シール部材(42,142)が第2流路領域(20b,120b)内にあって流路開口部(24,124)が開放されるように、サーモエレメント(50)が弁体(40,140)を流路(20,120)の方向で位置付けることを特徴としている。
【0010】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の発明と同様に流体制御弁の構成が単純であるので、安価で信頼度の高い流体制御弁が得られる。また流路開口部に異物が詰まることがほとんどない。
【0011】
請求項3に記載の発明では、請求項2に記載の流体制御弁(100)が、流路開口部(124)に隣接して第1流路領域(120a)内に配設されたシール部材第1ガイド部(134)と第2流路領域(120b)内に配設されたシール部材第2ガイド部(135)とを更に具備し、シール部材第1ガイド部(134)が、シール部材第1接触部(134a)と、シール部材第1非接触部(134b)とを具備し、シール部材第2ガイド部(135)が、シール部材第2接触部(135a)と、シール部材第2非接触部(135b)とを具備し、流体の温度が低温領域に含まれるとき、シール部材(142)がシール部材第1ガイド部(134)のシール部材第1接触部(134a)によって支持されると共に、流体がシール部材第1非接触部(134b)を流通し、流体の温度が高温領域に含まれるとき、シール部材(142)がシール部材第2接触部(135a)によって支持されると共に、流体がシール部材第2非接触部(135b)を流通するように、サーモエレメント(50)が弁体(140)を流路(120)の方向で位置付けることを特徴としている。
【0012】
請求項3に記載の発明により、シール部材は、常に開弁時においても支持されるので、シール部材の滑らかな摺動が実現され、またシール部材第1非接触部及び第2非接触部の大きさに差をもたせることにより低温における開弁時と高温における開弁時の流量を変えることができる。
【0013】
請求項4に記載の発明では、請求項1に記載の流体制御弁(200)が流路(220)の一部を同芯の内側流路(220i)と外側流路(220o)とに区画する隔壁(217)を具備し、流路開口部(224)が隔壁(217)を貫通し、弁体(240)は、隔壁(217)の内面に嵌合し隔壁(217)内を滑動する一端が閉じられた有底円筒形で形成され、有底円筒の側壁(241)を貫通する少なくとも一つの弁体第1側壁穴(246)と、弁体(240)の後退する方向に弁体第1側壁穴(246)から離間して形成された弁体第2側壁穴(247)とを具備し、流体の温度が低温領域に含まれるとき、流路開口部(224)が弁体第1側壁穴(246)と少なくとも部分的に重なることにより流路開口部(224)が開放され、流体の温度が中温領域に含まれるとき、弁体(240)の側壁が流路開口部(224)を閉塞し、流体の温度が高温領域に含まれるとき、流路開口部(224)が弁体第2側壁穴(247)と少なくとも部分的に重なることにより流路開口部(224)が開放されるように、サーモエレメント(250)が弁体(240)を流路(220)の方向で位置付けることを特徴としている。
【0014】
請求項4に記載の発明により、請求項1と同様の効果が得られるとともに、サーモエレメントを弁体の円筒の内部の空間に配置することが可能となり、流体制御弁の全長を縮小すること或いは全長の長いサーモエレメントを使用する場合に有利な構造が得られる。
【0015】
請求項5に記載の発明では、請求項1に記載の流体制御弁(300)の弁体(340)が、ダイヤフラム(341)と、該ダイヤフラム(341)の周縁部を支持する支持体(342)と、ダイヤフラム(341)を流路(320)の方向に付勢するダイヤフラム付勢手段(343)とから構成され、ダイヤフラム(341)は、弁体(340)の前進方向に突出したダイヤフラム突出部(341a)と、該ダイヤフラム突出部(341a)を貫通するダイヤフラム貫通穴(341b)とを具備し、流路開口部(324)は、ダイヤフラム突出部(341a)にほぼ同芯に対向して形成されると共に、ダイヤフラム貫通穴(341b)より半径方向内側に形成され、流体の温度が低温領域に含まれるとき、ダイヤフラム突出部(341a)が流路開口部(324)から離間されていることにより流路開口部(324)が開放され、流体の温度が中温領域に含まれるとき、ダイヤフラム突出部(341a)が流路開口部(324)の周縁部に押付けられることにより流路開口部(324)を閉塞し、流体の温度が中温領域から高温領域へ移行するとき、ダイヤフラム突出部(341a)が流路開口部(324)の周縁部からの反力により反転させられ、流路開口部(324)が開放されると共に、ダイヤフラム貫通穴(341b)を通って流体が流れ、流体の温度が高温領域から中温領域へ移行するとき、ダイヤフラム突出部(341a)がダイヤフラム付勢手段(343)によって再び反転されて流路開口部(324)を閉塞することを特徴としている。
【0016】
請求項5に記載の発明では、弁体は流路開口部内周面等に対して摺動しないので、弁体の移動の信頼度がさらに高まる。
【0017】
請求項6に記載の発明では、流体制御弁(400)が、流体が流れる流路(420)と、流路(420)内で往復動可能に配設され、中心部に第1流路開口部(423)が形成された第1弁体(441)と、第1弁体(441)の第1流路開口部(423)内で往復動可能な第2弁体(442)にして、第1流路開口部(423)を形成する第1弁体(441)の第1流路開口部内周面(441b)を押圧するシール部材(444)を具備する第2弁体(442)と、周囲に弁座(424a)が形成された第2流路開口部(424)と、流路(420)内に配設され、周囲の流体の温度に応じて内部に収容される熱膨張体が膨張することによって第2弁体(442)を流路(420)の方向に前進させるサーモエレメント(50)と、熱膨張体が収縮したとき第2弁体(442)を後退させる付勢手段(462)とを具備し、流体の温度が所定の低温領域に含まれるとき、第2弁体(442)のシール部材(444)は第1流路開口部内周面(441b)に接触して第1流路開口部(423)を閉塞するが、第1弁体(441)は弁座(424a)から離間されて第2流路開口部(424)が開放されることにより開弁され、流体の温度が低温領域から所定の中温領域に移行したとき、シール部材(444)を介して第2弁体(442)と共に前進させられた第1弁体(441)が弁座(424a)に接触して第2流路開口部(424)を閉塞し、かつシール部材(444)が第1流路開口部内周面(441b)に接触して第1流路開口部(423)を閉塞することにより閉弁され、流体の温度が所定の高温領域に移行したとき、シール部材(444)が第1流路開口部内周面(441b)を通り過ぎることにより第1流路開口部(423)が開放されて開弁されるように、サーモエレメント(50)が第2弁体(442)及び第1弁体(441)を流路(420)の方向で位置付けることを特徴としている。
【0018】
請求項6に記載の発明では、第2弁体に取り付けられたシール部材の摩擦力を利用して第1弁体を移動させることから、温度が低温から高温へ移行する場合と高温から低温へ移行する場合で弁の状態を変えることができる。具体的には高温から低温へ移行するときは中温領域においても開弁状態が維持される。
【0019】
請求項7に記載の発明では、サーモエレメント(50,250)から離れた別の部分で生じた流体の温度変化が、閉弁状態においてもサーモエレメント(50,250)の周囲に短時間のうちに伝わるように、少量の流体を閉弁状態においても流す感温流路(26,126,226,326,426)を弁体(40,340)又は流路開口部(124,224,424)に設けたことを特徴としている。
【0020】
これにより、サーモエレメントの作動のもとになる流体の温度が適切に維持される。
【0021】
なお、上記各手段に付した括弧内の符号は、後述する実施例に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の流体制御弁の第1実施例について、その縦断面図である図1を用いて説明する。第1の実施例の流体制御弁1は、流入口11及び比較的小径の流入路21を形成する第1ボデー12と流出口13及び比較的小径の流出路22を形成する第2ボデー14とからなるハウジング10を具備し、前記第1ボデー12と第2ボデー14は結合されて流入路21と流出路22との間に比較的大径の流路20を形成している。また前記流路20の途中に流路20の径より小径の開口である流路開口部24が形成されている。この流路開口部24は、第2ボデー14の端部に嵌め込まれたガイド部材30の内周面31により形成されたものである。また流路20は流路開口部24の上流側の第1流路領域20aと下流側の第2流路領域20bとに区画される。
【0023】
なお、本実施例においては、第1及び第2ボデーは耐熱樹脂材の射出成形品であって、それらの結合は熱溶着によってなされている。耐熱樹脂材としては、例えばPPAとして知られる樹脂を用いることができる。熱溶着の手法としては、例えば超音波溶着として知られる溶着工程を採用することができる。
【0024】
流体制御弁1は、さらに前記流路内を軸方向に往復動する弁体40と、前記弁体40を下流側に進動させるサーモエレメント50と、前記進動方向と反対方向で弁体40に付勢力を与えるために弁体40と第2ボデー14との間に配設された付勢手段である戻しばね60とを更に具備しており、それらの構成要素は図1に示されるように共通の軸心AXに沿って配列される。
【0025】
サーモエレメント50は、小径部51と大径部52とを有する段付き円筒ケース53と、円筒ケース53の大径部52側の端面から突出するステム54とを具備しており、前記段付き円筒ケース53内には温度変化により体積変化をするパラフィン等のワックス類からなる熱膨張体(不図示)が封入されていて、前記熱膨張体が膨張するとステム54が軸線方向に伸張してアクチュエータとして機能するように構成されている。また、図1のa−a断面図である図2に示されるように、段付き円筒ケース53の小径部51が、第1ボデー12の側壁から内側に向かって延びる4枚の保持リブ15によって保持されることによりサーモエレメント50は第1ボデー12に固定されている。
【0026】
弁体40は、流路開口部24より小径の略円筒状の弁本体41と、弁本体41の外周面に取り付けられて、流路開口部24を閉塞する外径を有するシール部材であるOリング42とを具備している。弁本体41の一方の端面の中心には、サーモエレメント50のステム54の先端を挿入するステム支持穴43が設けられ、他方の端面の周縁部には前記付勢手段の一方の端が当接する段付き部44が形成され、また弁本体41の外周面にはOリング42を取り付けるためのOリング溝(不図示)が設けられている。さらに弁本体41には、弁本体41を一端から他端へ貫通する小径の感温流路26が形成されており、この感温流路26は、サーモエレメント50から離れた別の部分で生じた流体の温度変化が、閉弁状態においてもサーモエレメント50の周囲に短時間のうちに伝わるように常に少量の流体を流すためのものである。
【0027】
前記ガイド部材30は、その内周面31は前記Oリング42の外径よりわずかに小さな径を有しており、また内周面31と両方の端面との間には斜めに面取りされた移行部30aが設けられている。移行部30aの面取り角としては、例えば45度を採用することができる。
【0028】
戻しばね60は、その一端が弁本体41の段付き部44に当接し、他端は、第2ボデー14の流路20の流出路22側の端部に形成されたばね受け凹部16によって支持されている。戻しばね60の付勢力は、サーモエレメント50が発生する力より小さいが、Oリング42と流路開口部内周面31との間に生じる摩擦力等の抵抗力に対抗して弁体40に流路開口部24を通過させることができる大きさである。
【0029】
次に、この流体制御弁の作動の様態を図3A〜Cを用いて説明する。図3Aは流体の温度が所定の、例えば約40℃未満の低温領域に含まれているときの状態を表しており、このときサーモエレメント50のステム54の突出量は短く弁体のOリング42は、流路開口部24より手前の第1流路領域20aに位置しているので流体は流路開口部24を通過することができ、流体制御弁は開弁状態にある。なお、サーモエレメント50を保持している4枚の各保持リブ15の間には図2に示されるように隙間15aが形成されているので、その隙間15aを通して流体が流れることができる。
【0030】
流体の温度が上昇すると、サーモエレメント50内の熱膨張体の体積が膨張してステム54が伸張し、弁体40が下流側に駆動される。流体の温度が所定の、例えば約40℃以上約70℃未満の中温領域に含まれると、図3Bに示すように弁体のOリング42が流路開口部内周面31に接するようになるので流路開口部24は閉塞される。但し、弁本体41には小径の感温流路26が開けられているので、この感温流路26を通して流体が、サーモエレメント50の感温性を維持するのに必要な少流量で上流から下流へ流れる。
【0031】
流体の温度が更に上昇すると、サーモエレメント50のステム54は更に伸張し、流体の温度が所定の、例えば約70℃以上の高温領域に含まれると、図3Cに示すように、弁体のOリング42が流路開口部内周面31を通過して下流側の第2流路領域20bに位置する。このため流体は再び流路開口部24を通過することができ、流体制御弁1は開弁状態になる。
【0032】
流体の温度が低下すると、弁体40は戻しばね60が発生する付勢力によって図3Cの位置から上流方向に押し戻される。また戻しばね60の発生する力は、サーモエレメント50のステム54が発生する力よりは小さいが、Oリング42と流路開口部内周面31との間に生じる摩擦力等の抵抗力に打ち克つ大きさに設定されているので、流体の温度が低下するにつれて、弁体40は図3Bで示される位置から図3Aで示される位置へ戻ることができる。
【0033】
次に、本発明の流体制御弁の第2の実施例を図4〜7を参照しながら説明する。第2の実施例の流体制御弁100は図4に示されるように、流入口111及び比較的小径の流入路121を形成する第1ボデー112と流出口113及び比較的小径の流出路122を形成する第2ボデー114とからなるハウジング110を具備し、前記第1ボデー112と第2ボデー114は、第1ボデーのフック112aを第2ボデーのフック係合穴114aに嵌め込んだ後、溶着結合されて流入路121と流出路122との間に比較的大径の流路120を形成している。また前記流路120の途中に流路120の径より小径の開口である流路開口部124が第1ボデー112に溶着固定されたガイド部材130によって形成されている。流路120は流路開口部124の上流側の第1流路領域120aと下流側の第2流路領域120bとに区画される。
【0034】
流体制御弁100は、さらに前記流路内を軸方向に往復動する弁体140と、前記弁体140を下流側に進動させるサーモエレメント50と、前記進動方向と反対方向で弁体140に付勢力を与えるために弁体140と第2ボデー114の間に配設された付勢手段である戻しばね60とを更に具備しており、それらの構成要素は図4に示されるように共通の軸心AXに沿って配列されている。
【0035】
サーモエレメント50は、第1実施例の場合と同様のものであって、第1ボデー112への取り付け方法も第1ボデー112から延びる4枚の保持リブ115によってほぼ同様に保持されている。
【0036】
次に、第2実施例の流体制御弁100の弁体140について図5の(a)及び(b)を参照して説明する。図5の(a)は弁体140をその移動方向に垂直の方向から見た正面図であり、また図5の(b)は(a)の右側面図である。弁体140は、流路開口部124より小径の略円筒状の弁本体141と、弁本体141の外周面に取り付けられて、流路開口部124を閉塞する外径を有するシール部材であるOリング142とから構成されている。弁本体141の一方の端面141aの中心には、サーモエレメント50のステム54の先端を挿入するステム支持穴143が設けられ、他方の端面141bからは戻しばね60の一方の端部を受容できるように半径方向に隙間を空けて4枚のガイド羽根146が突出しており、前記4枚のガイド羽根146は円周方向に等間隔に配置され、また弁本体141の外径と等しい外径を有している。また弁本体141の外周面にはOリング142を取り付けるための周回する凹部147が設けられている。
【0037】
次に、第2実施例の流体制御弁100のガイド部材130について図6の(a)〜(c)を参照して説明する。図6の(a)は、ガイド部材130の正面図であり、また図6の(b)及び(c)は前記(a)のそれぞれ左側面図及び右側面図である。
【0038】
ガイド部材130は、軸線方向に貫通する流路開口部124を内周面131により形成する閉塞部132と、閉塞部132の上流側の端面132aから突出する4本のガイドリブ133を有する上流ガイド部134と、ガイド部材130の下流側の端面から長さL1までの範囲の略円錐台状の下流ガイド部135とを一体に形成して具備している。このようになっているので、上流ガイド部134は流路開口部124より上流の第1流路領域120aに配置され、下流ガイド部135は流路開口部124より下流の第2流路領域120bに配置されることとなる。
【0039】
上流ガイド部134の4本のガイドリブ133は、円周方向に等間隔に配置され、ガイドリブの外周面133aが第1ボデー112の内壁に接し、4本のガイドリブの内周面は、弁体のOリング142の外径よりわずかに小さい寸法である流路開口部124の径d1と等しい径を有し、ガイドリブ133の内周面が弁体のOリング142に接触するシール部材上流側接触部134aとなる。また隣接する各ガイドリブ133の間には4つの円弧状の空間であるシール部材上流側非接触部134bが生じる。
【0040】
略円錐台状の下流ガイド部135は、その内周面が流路開口部124の径d1と等しい径を有し、前記下流ガイド部135の内周面に端面から長さL1で溝135bが形成されている。この内周面において弁体140のOリング142が接触する部分がシール部材下流側接触部135aを構成し、また、前記長さL1の溝135bに対応してOリング142に接触しない部分がシール部材下流側非接触部135bを構成する。さらに下流ガイド部の内周面には、シール部材下流側非接触部135bに対向する位置にやはり溝状の感温流路126が形成されており、この感温流路126は閉鎖部132まで達する長さL2で形成されている。前記感温流路126は、図示されているように前記シール部材下流側非接触部135bの溝よりも溝断面積が小さい溝で、この感温流路126をとおして閉弁状態でも流体が少量流れる。
【0041】
ガイド部材130における上流ガイド部134、下流ガイド部135、及び閉塞部132の流路方向の範囲を規定すると、上流ガイド部134の範囲は上流側非接触部134bの形成されている範囲に一致し、下流ガイド部135の範囲は、シール部材下流側非接触部135bが形成されている長さL1の範囲に一致し、閉塞部132の範囲は、上流側及び下流側非接触部の両方が形成されていない範囲に一致する。なお、本実施例では、ガイド部材130は、図5に示される配置でハウジング110の第1ボデー112に熱溶着され、ガイド部材130と第1ボデー112との間の流体の通過は阻止される。
【0042】
ハウジング110の第2ボデー114には戻しばね60の下流側の端部を受容して支持するため第2ボデー12の側壁から内側に向かって延びる4枚の保持リブ116がある。またばね保持リブ116の中央部には戻しばね60を受容するための凹部116aが形成されている。
【0043】
次に、第2実施例の流体制御弁100の作動の様態を図7A〜Cを用いて説明する。図7Aは流体の温度が所定の低温領域に含まれているときの状態を表しており、このときサーモエレメント50のステム54の突出量は短く、弁体のOリング142は、ガイド部材130の上流ガイド部134にあって4本のガイドリブ133の内周面から形成されたシール部材上流側接触部134aに接触している。このとき流体は、リブが形成されていないシール部材上流側非接触部134bから閉塞部132の流路開口部124へ、図7Aの矢印線で示されるように流通できる。従って流体制御弁100は開弁状態にある。
【0044】
流体の温度が上昇すると、サーモエレメント50内の熱膨張体の体積が膨張してステム54が伸張し弁体140が下流側に駆動される。流体の温度が所定の中温領域に含まれると、図7Bに示すように弁体のOリング142がガイド部材130の閉塞部132に達してその内周面131に接するようになるので流路開口部124は閉塞される。但し、閉塞部132の内周面131にも感温流路126が下流ガイド部135から延びてきているので、この感温流路126を通して少量の流体が上流から下流へ流れる。
【0045】
流体の温度が更に上昇すると、サーモエレメント50のステム54は更に伸張する。流体の温度が所定の高温領域に含まれると、図7Cに示すように、弁体のOリング142が下流ガイド部135に進入して下流ガイド部135のシール部材下流側接触部135aに接するようになる。このとき、下流ガイド部135の内周面にはシール部材下流側非接触部135bが形成されているので、流体は、図7Cの矢印線で示されるように、前記非接触部135bを通して流れることができる。従って流体制御弁100は開弁状態になる。なお、感温流路126からも少量の流体が流れる。
【0046】
流体の温度が低下するにつれて、弁体140は戻しばね60が発生している付勢力によって図7Cで示される位置から上流方向に押し戻されて図7Bで示される位置を経由して図7Aで示される位置へ戻ることができる。
【0047】
本実施例では、Oリング142の外周は、少なくとも部分的に常にガイド部材130によって保持されるので、Oリング142の摺動運動が安定する。
【0048】
なお、本実施例では、高温時の開弁状態における流量が低温時のそれに比べて少量であるが、高温時の流量を多くしたい場合は、前記シール部材下流側非接触部135bの流路断面積を拡大すればよい。
【0049】
次に、本発明の流体制御弁の第3の実施例を図8及び9を参照しながら説明する。第3の実施例の流体制御弁200は図8に示されるように、流入口211及び比較的小径の流入路221を形成する第1ボデー212と流出口213及び比較的小径の流出路222を形成する第2ボデー214とからなるハウジング210を具備し、前記第1ボデー212と第2ボデー214は、端部の鍔状部分212a、214aを互いに溶着結合されて流入路221と流出路222との間に比較的大径の流路220を形成している。
【0050】
前記流路220には円筒状の隔壁217が同芯に設けられることにより、流路220が内側流路220iと外側流路220oに区画されている。隔壁217は流路220の一部に形成されているので、つまり隔壁217の一方の端は第1ボデー212に一体に結合されているが他方の端は自由端となっているので、外側流路220oは流出路222に通じている。
【0051】
隔壁217の先端側には、隔壁217を貫通する2個の隔壁穴224が対向して設けられており、この2個の隔壁穴224によって流路開口部224が構成される。また、前記2個の隔壁穴224の中の一方の隔壁穴224の上流側の隔壁217の内側表面に一本の溝である感温流路226が形成され、感温流路226の一方の端が前記一方の隔壁穴224に上流側から連通している。
【0052】
流体制御弁200は、さらに前記内側流路220i内を軸方向に往復動する下流側端部が閉じられた有底円筒形の弁体240と、前記弁体240を下流側に進動させるサーモエレメント250と、前記進動方向と反対方向で弁体240に付勢力を与えるために弁体240と第2ボデー214との間に配設された付勢手段である戻しばね60とを更に具備しており、それらの構成要素は図8に示されるように共通の軸心AXに沿って配列される。
【0053】
サーモエレメント250は、第1及び第2実施例で用いたものと原理及び基本構造は同様であるが、本実施例では円筒ケース253の大径部252の下流側にも小径部255が設けられた比較的全長の長いものが用いられている。第1ボデー212への取り付け方法は、前述の実施例とほぼ同様に第1ボデー212から延びる4枚の保持リブ215によって保持されている。
【0054】
下流側の端部が閉じられた有底円筒形の弁体240は、前記隔壁217内に隙間なく挿入可能であるように隔壁217の内径より僅かに小さな外径を有している。弁体240は、その円筒の側壁241を貫通する、対向配置された2個の弁体第1側壁穴246と、前記2個の弁体第1側壁穴246の一方のものと同じ円周位置で上流側に形成された弁体第2側壁穴247とを具備している。また弁体240の有底円筒の閉じられた端部の上流側の面にはステム254の先端を挿入するステム支持穴243が設けられ、下流側の面には付勢手段である戻しばね60の一端を収容する凹部244が形成されている。
【0055】
弁体240は、図8のように配置されると、サーモエレメント250のステム254によって隔壁217内を下流方向に滑動し、戻しばね60によって上流方向に滑動して戻ることができる。
【0056】
次に、第3実施例の流体制御弁200の作動の様態を図9A〜Cを用いて説明する。図9Aは流体の温度が所定の低温領域に含まれているときの状態を表しており、このときサーモエレメント250のステム254の突出量は短く、弁体第1側壁穴246は、隔壁217の隔壁穴224に重なり合っているので流体は、図9Aの矢印線で示されるように、内側流路220iから弁体第1側壁穴246と隔壁穴224とを通って外側流路220oに流れ、そこから流出路222へ流れることができる。従って、流体制御弁200は開弁状態にある。
【0057】
流体の温度が上昇すると、サーモエレメント250内の熱膨張体の体積が膨張してステム254が伸張し、弁体240が下流側に駆動される。流体の温度が所定の中温領域に含まれると、図9Bに示すように隔壁穴224は弁体240の円筒の側壁241によって閉じられて、流体制御弁200は閉弁状態となる。但し、このとき弁体240の弁体第2側壁穴247が隔壁217に形成された感温流路226に重なるので、弁体第2側壁穴247から感温流路226と隔壁穴224を経由して外側流路220oに至る少量の流れが生じる。
【0058】
流体の温度が更に上昇すると、サーモエレメント250のステム254は更に伸張する。流体の温度が所定の高温領域に含まれると、図9Cに示すように、弁体第2側壁穴247が隔壁穴224に重なり合うので、流体は図9Cの矢印線で示されるように内側流路220iから外側流路220oに流れることができ、流体制御弁200は開弁状態になる。
【0059】
また、図9Cの状態から流体の温度が低下すると、弁体240は戻しばね60が発生している付勢力によって図9Cで示される位置から上流方向に押し戻されて図9Bで示される位置を経由して図9Aで示される位置へ戻ることができる。
【0060】
次に、本発明の流体制御弁の第4の実施例を図10及び11を参照しながら説明する。第4の実施例の流体制御弁300は図10に示されるように、流入口311及び比較的小径の流入路321を形成する第1ボデー312と流出口313及び比較的小径の流出路322を形成する第2ボデー314とからなるハウジング310を具備し、前記第1ボデー312と第2ボデー314は、互いに溶着結合されて流入路321と流出路322との間に比較的大径の流路320を形成している。また前記流出路322の流路側の端部が、流路320の径より小径の開口である流路開口部324を構成している。
【0061】
流体制御弁300は、さらに前記流路内を軸方向に往復動する弁体340と、前記弁体340を下流側に進動させるサーモエレメント50と、前記進動方向と反対方向で弁体340に付勢力を与えるために弁体340と第2ボデー314の間に配設された付勢手段である戻しばね60とを更に具備しており、それらの構成要素は図10に示されるように共通の軸心AXに沿って配列されている。
【0062】
サーモエレメント50は、第1実施例の場合と同様のものであって、第1ボデー312への取り付け方法も第1ボデー312から延びる4枚の保持リブ315によってほぼ同様に保持されている。
【0063】
この第4実施例の流体制御弁300の弁体340は、ダイヤフラム341と、サーモエレメント50及び付勢手段からの力を受けると共にダイヤフラム341の周縁部を支持する支持体342と、ダイヤフラム341と支持体342との間に配設されて前記ダイヤフラム341を流路下流方向に付勢する手段であるダイヤフラム戻しばね343とから構成されている。
【0064】
前記ダイヤフラム341は、弁体340の前進方向に略円錐状に突出したダイヤフラム突出部341aをその中央部に形成しており、このダイヤフラム突出部341aは、スナップアクションで反転することによって弁体340の後退方向に同様の形状で突出することができるものである。また前記ダイヤフラム突出部341aの略円錐の斜面にはダイヤフラム341を貫通する二つのダイヤフラム貫通穴341bが軸対称に配置されてあけられ、ダイヤフラム突出部341aの頂部には一つの感温流路326があけられている。
【0065】
支持体342は、流路320の径より小さな外径を有すると共に、サーモエレメント50に近い側の端部が端壁によって閉じられた有底円筒形を呈している。支持体342の端壁にはそれを貫通する支持体貫通穴342aが設けられ、また端壁の中央にはサーモエレメント50のステム54の先端を挿入するステム支持穴342bが設けられている。戻しばね60の一端を支持することができるように、支持体342の円筒状の側壁は端壁の外径より小さく形成されて段付き部342cが形成されている。
【0066】
流路開口部324は、ダイヤフラム突出部341aにほぼ同芯に対向し、ダイヤフラム341が後述するように流路開口部324に接したとき、流路開口部324の縁がダイヤフラム貫通穴341bより半径方向内側に位置するように形成されている。
【0067】
次に、第4実施例の流体制御弁300の作動の様態を図11A〜Cを用いて説明する。図11Aは流体の温度が所定の低温領域に含まれているときの状態を表しており、このときサーモエレメント50のステム54の突出量は短く、ダイヤフラム突出部341aが前記流路開口部324より手前に位置付けられることにより流路開口部324が開放されている。このとき流体は、図11Aの矢印線で示されるように、流入口311から弁体の支持体外周部とハウジング310の内壁との間を経由して流路開口部324を通過して流出口313へ流れることができる。
【0068】
流体の温度が所定の中温領域に含まれるまで上昇すると、図11Bに示されるように、サーモエレメント50のステム54によってダイヤフラム突出部341aは流路開口部324の周縁部に押付けられるまで移動させられて前記流路開口部324が閉塞される。但し、このとき支持体貫通穴342aとダイヤフラム突出部341aの頂部に設けられた感温流路326とをとおして少量の流体が図11Bの矢印線の様に流れる。
【0069】
流体の温度が前記中温領域から所定の高温領域へ移行するとき、流路開口部324の周縁部を押付けていた前記ダイヤフラム突出部341aが前記流路開口部324の周縁部からの反力により反転させられる。この結果、図11Cに示されるように流路開口部324が開放されると共に、図の矢印線で示されるように、前記支持体貫通穴342aと前記ダイヤフラム貫通穴341bとを通して流体が前記流路開口部324へ流れて流体制御弁300は開弁状態となる。
【0070】
流体の温度が高温領域から中温領域へ移行するとき、反転されていたダイヤフラム突出部341aはダイヤフラム戻しばね343によって再び反転されて流路開口部324を閉塞し、図11Bに示される状態に戻る。
【0071】
次に、本発明の流体制御弁の第5の実施例を図12及び13を参照しながら説明する。第4の実施例の流体制御弁400は図12に示されるように、流入口411及び比較的小径の流入路421を形成する第1ボデー412と流出口413及び比較的小径の流出路422を形成する第2ボデー414とからなるハウジング410を具備し、前記第1ボデー412と第2ボデー414は、互いに溶着結合されて流入路421と流出路422との間に比較的大径の流路420を形成している。
【0072】
流体制御弁400は、さらに前記流路420内を軸方向に往復動する第1弁体441及び第2弁体442と、前記第2弁体442を下流側に進動させるサーモエレメント50と、前記進動方向と反対方向で第1弁体441及び第2弁体442にそれぞれ付勢力を与えるために第1及び第2弁体と第2ボデー414の間に配設された付勢手段である第1戻しばね461及び第2戻しばね462とを更に具備しており、それらの構成要素は図12に示されるように共通の軸心AXに沿って配列されている。
【0073】
サーモエレメント50は、第1実施例の場合と同様のものであって、第1ボデー412への取り付け方法も第1ボデー412から延びる4枚の保持リブ415によってほぼ同様に保持されている。
【0074】
この第5実施例の流体制御弁400の第1弁体441は、略円筒状を示しておりその中心を第1流路開口部423が貫いている。また下流側の端部には第1Oリング443が取り付けられ、上流側の端部は第1戻しばね461の一端を支持するための鍔部441aが設けられている。
【0075】
第2弁体442は、上流側の大径部442aと下流側の小径部442bとから段付き円筒状に形成されており、小径部442bは、前記第1弁体441に形成された第1流路開口部423内で往復動可能な径で形成され、また第1流路開口部423を形成する第1弁体441の第1流路開口部内周面441bを押圧するシール部材を備えている。前記シール部材は、本実施例ではゴム製の第2Oリング444であって、この第2Oリング444は小径部442bに形成されたOリング溝(不図示)に取り付けられている。また第2Oリング444が第1流路開口部内周面441bを流路方向に摺動する際に生じる摺動抵抗力或いは摺動摩擦力が、第1戻しばね461の発生する付勢力より大きくなるように、第1流路開口部内周面441bの表面粗さ及び第2Oリング444のつぶし代等が設定されている。
【0076】
また第2戻しばね462の付勢力は、第2弁体の第2Oリング444により生じる摺動抵抗力より大きく設定されているが、サーモエレメント50が発生する力よりは小さく設定されている。
【0077】
第2弁体442の大径部442aの下流側端面には、小径部442bとの境界部から半径方向に延びて外周面に至る溝である第2弁体流路442cが形成されている。第2弁体442の先端部には第2戻しばね462の一端を支持するための段付き部442dが形成されている。
【0078】
流出路422の上流側の端部には、第2戻しばね462の他端を支持する拡径部が形成され、この拡径部が第1弁体441によって閉塞される第2流路開口部424を構成する。第2流路開口部424の径は第1流路開口部423の径より大きく設定されている。また第2流路開口部424の周囲には弁座424aが形成され、この弁座424aは第1弁体441の第1Oリング443に対向し、弁座424aの表面には、感温流路426として働く半径方向に延びる溝426が形成されている。
【0079】
ハウジング410には、第1弁体441を上流側から受け止めるための4本のリブ状のストッパ416が設けられており、このストッパ416は第1ボデー412の端部に形成され、そこに第1弁体441の鍔部441aが当接する。
【0080】
次に、第5実施例の流体制御弁400の作動の様態を図13A〜Cを用いて説明する。図13Aは流体の温度が所定の低温領域に含まれているときの状態を表しており、このときサーモエレメント50のステム54の突出量は短く、第1弁体441は第2流路開口部の弁座424aより手前に位置付けられることにより第2流路開口部424が開放され、流体は、図13Aの矢印で示されるように、流入路421から第1弁体441の外周面の外側を通って第2流路開口部424へ至り流出路422へ流れる。このとき第1流路開口部423は、第1流路開口部内周面441bに接触する第2弁体の第2Oリング444によって閉塞されている。
【0081】
流体の温度が所定の中温領域に含まれるまで上昇すると、図11Bに示されるように、サーモエレメント50のステム54によって第2弁体442が前進させられる。このとき、第2弁体の第2Oリング444の摺動抵抗力は前述したとおり第1戻しばね461の付勢力より大きくなるように設定されているので、第1弁体441は第2弁体の第2Oリング444を介して第2弁体442と共に前進させられてその先端部の第1Oリング443が弁座424aに接触して第2流路開口部424を閉塞する。また第1流路開口部423は、第1流路開口部内周面441bに接触する第2弁体の第2Oリング444によって閉塞されている。なお、第2弁体442は、第1弁体441が弁座424aに当接した後は第2弁体442単独で前進させられる。このように第1流路開口部423及び第2流路開口部424が共に閉塞されるので、流体制御弁400は閉弁状態にある。但し、第2流路開口部の弁座424aに形成された感温流路426を通して少量の流体が図13Bの矢印線の様に流れる。
【0082】
流体の温度が前記中温領域から所定の高温領域に移行すると、第2弁体の第2Oリング444が第1流路開口部内周面441bを通り過ぎることにより第1流路開口部423が開放され、この結果図13Cの矢印線で示されるように、流体が第2弁体流路442cから第1流路開口部423を経由して第2流路開口部424へ流れて流体制御弁400は開弁状態となる。
【0083】
流体の温度が高温領域から中温領域及び低温領域へ移行するとき、第2弁体442は第2戻しばね462によって上流側に押し戻され、第1弁体441は第2弁体の第2Oリング444を介して第2弁体442によって引き戻され、ハウジング410に形成されたストッパ416に当接するまで第2弁体442と共に上流側へ移動する。従って、このように温度が低下するときは、温度が上昇して中温領域に含まれたときの各弁体の配置とは異なった弁体配置が得られる。そして温度がさらに低下して第1弁体441がストッパ416に当接すると、第2弁体の第2Oリング444は、第2戻しばね462の付勢力によって第1流路開口部423内に押し入れられて、図13Aで示された各弁体の配置が復旧する。
【0084】
第1弁体441を付勢する第1戻しばね461は、第1弁体441を確実に押し戻すために設けられたものであるが、この第1戻しばね461を削除しても本実施例の各弁体の前述の作動の様態は確保されるので、第1戻しばね461を削除することも可能である。
【0085】
また、流入口及び流出口の配置を前述の第1〜第5実施例で示された配置とは逆に配置してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】第1の実施例の流体制御弁の低温時の開弁状態における縦断面図である。
【図2】図1のa−a断面図である。
【図3A】第1の実施例の流体制御弁の低温時の開弁状態における流体の流れを示す縦断面図である。
【図3B】第1の実施例の流体制御弁の中温時の閉弁状態における流体の流れを示す縦断面図である。
【図3C】第1の実施例の流体制御弁の高温時の開弁状態における流体の流れを示す縦断面図である。
【図4】第2の実施例の流体制御弁の低温時の開弁状態における縦断面図である。
【図5】第2の実施例の流体制御弁の弁体を示す図である。
【図6】第2の実施例の流体制御弁のガイド部材を示す図である。
【図7A】第2の実施例の流体制御弁の低温時の開弁状態における流体の流れを示す縦断面図である。
【図7B】第2の実施例の流体制御弁の中温時の閉弁状態における流体の流れを示す縦断面図である。
【図7C】第2の実施例の流体制御弁の高温時の開弁状態における流体の流れを示す縦断面図である。
【図8】第3の実施例の流体制御弁の低温時の開弁状態における縦断面図である。
【図9A】第3の実施例の流体制御弁の低温時の開弁状態における流体の流れを示す縦断面図である。
【図9B】第3の実施例の流体制御弁の中温時の閉弁状態における流体の流れを示す縦断面図である。
【図9C】第3の実施例の流体制御弁の高温時の開弁状態における流体の流れを示す縦断面図である。
【図10】第4の実施例の流体制御弁の低温時の開弁状態における縦断面図である。
【図11A】第4の実施例の流体制御弁の低温時の開弁状態における流体の流れを示す縦断面図である。
【図11B】第4の実施例の流体制御弁の中温時の閉弁状態における流体の流れを示す縦断面図である。
【図11C】第4の実施例の流体制御弁の高温時の開弁状態における流体の流れを示す縦断面図である。
【図12】第5の実施例の流体制御弁の低温時の開弁状態における縦断面図である。
【図13A】第5の実施例の流体制御弁の低温時の開弁状態における流体の流れを示す縦断面図である。
【図13B】第5の実施例の流体制御弁の中温時の閉弁状態における流体の流れを示す縦断面図である。
【図13C】第5の実施例の流体制御弁の高温時の開弁状態における流体の流れを示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0087】
10 ハウジング
11 流入口
13 流出口
20 流路
24 流路開口部
30 ガイド部材
31 流路開口部内周面
40 弁体
50 サーモエレメント
60 戻しばね

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流れる流路(20,220,320)と、
前記流路(20,220,320)内で往復動可能に配設される弁体(40,240,340)と、
前記弁体(40,240,340)が閉塞するべき前記流路の開口である流路開口部(24,224,324)と、
前記流路(20,220,320)内に配設され、周囲の流体の温度に応じて内部に収容される熱膨張体が膨張することによって前記弁体(40,240,340)を前記流路(20,220,320)の方向に前進させるサーモエレメント(50,250)と、
前記熱膨張体が収縮したとき前記弁体(40,240,340)を後退させる付勢手段(60)とを具備する流体制御弁(1,200,300)であって、
前記流体の温度が所定の低温領域に含まれるとき、前記流路開口部(24,224,324)が開放され、
前記流体の温度が前記低温領域より高温の所定の中温領域に含まれるとき、前記流路開口部(24,224,324)が前記弁体(40,240,340)によって閉塞され、
前記流体の温度が前記中温領域より高温の所定の高温領域に含まれるとき、前記流路開口部(24,224,324)が開放されるように、前記サーモエレメント(50,250)が弁体(40,240,340)を前記流路の方向で位置付けることを特徴とする流体制御弁(1,200,300)。
【請求項2】
前記流路開口部(24,124)が、流路開口部内周面(31,131)により形成され、
前記弁体(40,140)が、前記流路開口部内周面(31,131)を押圧するシール部材(42,142)を具備し、
前記流路(20,120)が、前記流路開口部(24,124)を間に挟む第1流路領域(20a,120a)と第2流路領域(20b,120b)とに区画された、請求項1に記載の流体制御弁(1,100)であって、
流体の温度が前記低温領域に含まれるとき、前記シール部材(42,142)が前記第1流路領域(20a,120a)内にあって前記流路開口部(24,124)が開放され、
流体の温度が前記中温領域に含まれるとき、前記シール部材(42,142)が前記流路開口部内周面(31,131)に接触することにより前記流路開口部(24,124)を閉塞し、
流体の温度が前記高温領域に含まれるとき、前記シール部材(42,142)が前記第2流路領域(20b,120b)内にあって前記流路開口部(24,124)が開放されるように、前記サーモエレメント(50)が前記弁体(40,140)を前記流路(20,120)の方向で位置付けることを特徴とする流体制御弁(1,100)。
【請求項3】
前記流路開口部(124)に隣接して前記第1流路領域(120a)内に配設されたシール部材第1ガイド部(134)と前記第2流路領域(120b)内に配設されたシール部材第2ガイド部(135)とを更に具備する請求項2に記載の流体制御弁(100)であって、
前記シール部材第1ガイド部(134)が、シール部材第1接触部(134a)と、シール部材第1非接触部(134b)とを具備し、
前記シール部材第2ガイド部(135)が、シール部材第2接触部(135a)と、シール部材第2非接触部(135b)とを具備し、
流体の温度が前記低温領域に含まれるとき、前記シール部材(142)が前記シール部材第1ガイド部(134)の前記シール部材第1接触部(134a)によって支持されると共に、流体が前記シール部材第1非接触部(134b)を流通し、
流体の温度が前記高温領域に含まれるとき、前記シール部材(142)が前記シール部材第2接触部(135a)によって支持されると共に、流体が前記シール部材第2非接触部(135b)を流通するように、前記サーモエレメント(50)が前記弁体(140)を前記流路(120)の方向で位置付けることを特徴とする流体制御弁(100)。
【請求項4】
前記流路(220)の一部を同芯の内側流路(220i)と外側流路(220o)とに区画する隔壁(217)を具備する請求項1に記載の流体制御弁(200)であって、
前記流路開口部(224)が前記隔壁(217)を貫通し、
前記弁体(240)は、前記隔壁(217)の内面に嵌合し前記隔壁(217)内を滑動する一端が閉じられた有底円筒形で形成され、前記有底円筒の側壁(241)を貫通する、少なくとも一つの弁体第1側壁穴(246)と、前記弁体(240)の後退する方向に前記弁体第1側壁穴(246)から離間して形成された弁体第2側壁穴(247)とを具備し、
流体の温度が前記低温領域に含まれるとき、前記流路開口部(224)が前記弁体第1側壁穴(246)と少なくとも部分的に重なることにより前記流路開口部(224)が開放され、
流体の温度が前記中温領域に含まれるとき、前記弁体(240)の側壁が前記流路開口部(224)を閉塞し、
流体の温度が前記高温領域に含まれるとき、前記流路開口部(224)が前記弁体第2側壁穴(247)と少なくとも部分的に重なることにより前記流路開口部(224)が開放されるように、前記サーモエレメント(250)が前記弁体(240)を前記流路(220)の方向で位置付けることを特徴とする流体制御弁(200)。
【請求項5】
前記弁体(340)が、ダイヤフラム(341)と、該ダイヤフラム(341)の周縁部を支持する支持体(342)と、前記ダイヤフラム(341)を前記流路(320)の方向に付勢するダイヤフラム付勢手段(343)とから構成された請求項1に記載の流体制御弁(300)であって、
前記ダイヤフラム(341)は、前記弁体(340)の前進方向に突出したダイヤフラム突出部(341a)と、該ダイヤフラム突出部(341a)を貫通するダイヤフラム貫通穴(341b)とを具備し、
前記流路開口部(324)は、前記ダイヤフラム突出部(341a)にほぼ同芯に対向して形成されると共に、前記ダイヤフラム貫通穴(341b)より半径方向内側に形成され、
流体の温度が前記低温領域に含まれるとき、前記ダイヤフラム突出部(341a)が前記流路開口部(324)から離間されていることにより前記流路開口部(324)が開放され、
流体の温度が前記中温領域に含まれるとき、前記ダイヤフラム突出部(341a)が前記流路開口部(324)の周縁部に押付けられることにより前記流路開口部(324)を閉塞し、
流体の温度が前記中温領域から前記高温領域へ移行するとき、前記ダイヤフラム突出部(341a)が前記流路開口部(324)の周縁部からの反力により反転させられ、前記流路開口部(324)が開放されると共に、前記ダイヤフラム貫通穴(341b)を通って流体が流れ、
流体の温度が前記高温領域から中温領域へ移行するとき、前記ダイヤフラム突出部(341a)が前記ダイヤフラム付勢手段(343)によって再び反転されて前記流路開口部(324)を閉塞することを特徴とする流体制御弁(300)。
【請求項6】
流体が流れる流路(420)と、
前記流路(420)内で往復動可能に配設され、中心部に第1流路開口部(423)が形成された第1弁体(441)と、
前記第1弁体(441)の前記第1流路開口部(423)内で往復動可能な第2弁体(442)にして、前記第1流路開口部(423)を形成する前記第1弁体(441)の第1流路開口部内周面(441b)を押圧するシール部材(444)を具備する第2弁体(442)と、
周囲に弁座(424a)が形成された第2流路開口部(424)と、
前記流路(420)内に配設され、周囲の流体の温度に応じて内部に収容される熱膨張体が膨張することによって前記第2弁体(442)を前記流路(420)の方向に前進させるサーモエレメント(50)と、
前記熱膨張体が収縮したとき前記第2弁体(442)を後退させる付勢手段(462)と、を具備する流体制御弁(400)であって、
流体の温度が所定の低温領域に含まれるとき、前記第2弁体(442)のシール部材(444)は前記第1流路開口部内周面(441b)に接触して前記第1流路開口部(423)を閉塞するが、前記第1弁体(441)は前記弁座(424a)から離間されて前記第2流路開口部(424)が開放されることにより開弁され、
流体の温度が前記低温領域から所定の中温領域に移行したとき、前記シール部材(444)を介して前記第2弁体(442)と共に前進させられた前記第1弁体(441)が前記弁座(424a)に接触して前記第2流路開口部(424)を閉塞し、かつ前記シール部材(444)が前記第1流路開口部内周面(441b)に接触して前記第1流路開口部(423)を閉塞することにより閉弁され、
流体の温度が所定の高温領域に移行したとき、前記シール部材(444)が前記第1流路開口部内周面(441b)を通り過ぎることにより第1流路開口部(423)が開放されて開弁されるように、前記サーモエレメント(50)が前記第2弁体(442)及び前記第1弁体(441)を前記流路(420)の方向で位置付けることを特徴とする流体制御弁(400)。
【請求項7】
前記サーモエレメント(50,250)から離れた別の部分で生じた流体の温度変化が、閉弁状態においても前記サーモエレメント(50,250)の周囲に短時間のうちに伝わるように、少量の流体を閉弁状態においても流す感温流路(26,126,226,326,426)を弁体(40,340)又は流路開口部(124,224,424)に設けたことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の流体制御弁。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図12】
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【図13A】
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【図13B】
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【図13C】
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【公開番号】特開2007−271026(P2007−271026A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−99593(P2006−99593)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(592077431)株式会社東海理機製作所 (14)
【Fターム(参考)】