流体噴射装置、及び流体噴射装置のクリーニング方法
【課題】クリーニングの成功率を向上させることができる流体噴射装置、及び流体噴射装置のクリーニング方法を提供する。
【解決手段】チョークバルブを閉弁させた状態で吸引ポンプの駆動によりインク供給路におけるチョークバルブよりも下流側を減圧させる減圧ステップ(ステップS13,S14)と、該減圧ステップによりインク供給路におけるチョークバルブよりも下流側で発生した負圧の大きさが、前記チョークバルブの開弁後においてインク供給路内のインクが沸騰状態になる前の負圧の大きさとして予め設定された開弁閾値に達した場合に、チョークバルブを開弁させて記録ヘッドからインクを排出させる排出ステップ(ステップS15,S16)とを有する非沸騰クリーニングを実行するようにした。
【解決手段】チョークバルブを閉弁させた状態で吸引ポンプの駆動によりインク供給路におけるチョークバルブよりも下流側を減圧させる減圧ステップ(ステップS13,S14)と、該減圧ステップによりインク供給路におけるチョークバルブよりも下流側で発生した負圧の大きさが、前記チョークバルブの開弁後においてインク供給路内のインクが沸騰状態になる前の負圧の大きさとして予め設定された開弁閾値に達した場合に、チョークバルブを開弁させて記録ヘッドからインクを排出させる排出ステップ(ステップS15,S16)とを有する非沸騰クリーニングを実行するようにした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体噴射装置、及び流体噴射装置のクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、記録ヘッド(流体噴射ヘッド)のノズルからターゲットに対してインク(流体)を噴射する流体噴射装置として、インクジェット式プリンタ(以下、単に「プリンタ」という。)が知られている。このようなプリンタでは、インクを貯留するインクカートリッジ(流体貯留手段)が着脱可能に装着され、このインクカートリッジからインク供給路(流体供給路)を介して供給されたインクを記録ヘッドが用紙(ターゲット)に噴射することにより印刷が実行されるようになっている。また、印刷時における記録ヘッドのインクの噴射不良を低減するために、こうしたプリンタでは、記録ヘッドのノズルから増粘したインクや気泡などを強制的に排出させる、いわゆるチョーククリーニング等のクリーニングが実行されるようになっている。
【0003】
このチョーククリーニングでは、インク供給路上に設けられたチョークバルブ(開閉弁)を閉弁し、記録ヘッドのノズル形成面側から吸引ポンプ(吸引手段)で吸引することにより記録ヘッド内に負圧を生じさせ、該記録ヘッド内に存在する気泡を膨張させる。そして、インクカートリッジ内を加圧させるための加圧ポンプを駆動させることにより、インク供給路上のチョークバルブを強制的に開弁し、インクカートリッジから記録ヘッド内にインクを一気に流入させる。その結果、記録ヘッドに形成された各ノズルから粘性の大きいインクや記録ヘッド内の膨張した気泡がインクと共に排出されるようになっていた(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開2006−205687号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のようなチョーククリーニングが実行された場合、該クリーニングの実行前にインク供給路のインク中に含まれていた気泡はインクと共に排出される。その一方で、チョーククリーニング時におけるインク供給路内の減圧によってインク内に溶解していた空気の一部が沸騰現象により析出して微細気泡がインク供給路のインク内に新たに発生してしまうことがあった。そして、この微細気泡がインク供給路のインク内に含まれている状態で記録ヘッドによるインク噴射が開始された場合には、微細気泡がノズルから噴射されることによるインクの噴射不良が発生するおそれがあった。すなわち、インクの噴射不良を抑制すべく実行されたはずのチョーククリーニングが失敗になってしまうおそれがあった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、クリーニングの成功率を向上させることができる流体噴射装置、及び流体噴射装置のクリーニング方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の流体噴射装置のクリーニング方法は、流体貯留手段から流体供給路を介して流体噴射ヘッド側へ導かれた流体を前記流体噴射ヘッドに形成されたノズルから吸引手段の駆動により吸引して排出させるに際し、前記流体供給路に設けられた開閉弁を閉弁した状態で前記流体供給路における前記開閉弁よりも下流側を減圧させた後、前記開閉弁を開弁させることにより、前記流体噴射ヘッドから流体を排出させる流体噴射装置のクリーニング方法であって、前記開閉弁を閉弁させた状態で前記吸引手段の駆動により前記流体供給路における前記開閉弁よりも下流側を減圧させる減圧ステップと、該減圧ステップにより前記流体供給路における前記開閉弁よりも下流側で発生した負圧の大きさが、前記開閉弁の開弁後において前記流体供給路内の流体が沸騰状態になる前の負圧の大きさとして予め設定された開弁閾値に達した場合に、前記開閉弁を開弁させて前記流体噴射ヘッドから流体を排出させる排出ステップとを有する非沸騰クリーニングを実行するようにした。
【0007】
この発明によれば、流体供給路における開閉弁よりも下流側の負圧が、開閉弁の開弁後において流体供給路内の流体が沸騰状態になるような大きさになる前に、開閉弁が開弁される。そのため、吸引手段の駆動に基づき流体を流体噴射ヘッドから排出させる非沸騰クリーニングを実行した場合に、流体供給路内を流動する流体が沸騰して気体が析出されることが回避され、その後の流体噴射ヘッドによる流体噴射時に流体の噴射不良を抑制できる。したがって、クリーニングの成功率を向上させることができる。
【0008】
本発明の流体噴射装置のクリーニング方法において、前記流体噴射装置には、前記開閉弁が閉弁した状態で前記吸引手段が駆動を開始してから前記流体供給路における前記開閉弁よりも下流側の負圧の大きさが前記開弁閾値に達した時点の経過時間を開弁許可時間として予め記憶する記憶手段が設けられており、前記排出ステップでは、前記減圧ステップの実行により前記流体供給路における前記開閉弁よりも下流側の減圧が開始されてからの経過時間が前記開弁許可時間に達した場合に、前記開閉弁を開弁させて前記流体噴射ヘッドから流体を排出させるようにした。
【0009】
この発明によれば、開閉弁が閉弁した状態で吸引手段が駆動を開始してからの経過時間が開弁許可時間に達した場合には、流体供給路における開閉弁よりも下流側の負圧の大きさが開弁閾値に達したと判断し、開閉弁を開弁させて流体噴射ヘッドから流体を排出させる。すなわち、流体供給路における開閉弁よりも下流側の負圧を検出するためのセンサなどを別途設けなくても的確なタイミングで開閉弁を開弁させることができるため、開閉弁を開弁させた場合に流体供給路内の流体が沸騰し、微細気泡が流体中から析出してしまうことを回避できる。
【0010】
本発明の流体噴射装置のクリーニング方法において、前記流体噴射装置には、前記流体供給路における前記開閉弁よりも下流側の負圧を検出する圧力検出手段が設けられており、前記排出ステップでは、前記減圧ステップの実行により前記圧力検出手段によって検出された負圧の大きさが前記開弁閾値に達した場合に、前記開閉弁を開弁させて前記流体噴射ヘッドから流体を排出させるようにした。
【0011】
この発明によれば、流体供給路における開閉弁よりも下流側の負圧を圧力検出手段によって検出し、該検出した負圧の大きさが開弁閾値に達した場合に開閉弁を開弁させて流体噴射ヘッドから流体を噴射させる。したがって、非沸騰クリーニング時には、流体供給路における開閉弁よりも下流側の負圧を実測して開閉弁を開弁させるタイミングが図られるため、開閉弁を開弁させた場合に流体供給路内の流体が沸騰し、微細気泡が流体から析出してしまうことを回避できる。
【0012】
本発明の流体噴射装置のクリーニング方法において、前記流体噴射装置には、前記流体供給路における前記開閉弁よりも下流側の負圧の大きさが前記開弁閾値に達した場合に、前記流体供給路における前記開閉弁よりも下流側の負圧の大きさを前記開弁閾値に維持する負圧維持手段が設けられており、前記排出ステップでは、前記負圧維持手段によって前記流体供給路における前記開閉弁よりも下流側の負圧の大きさが前記開弁閾値に維持されている状態で、前記開閉弁を開弁させて前記流体噴射ヘッドから流体を排出させるようにした。
【0013】
この発明によれば、吸引手段の駆動により流体供給路における開閉弁よりも下流側が減圧されても、流体供給路における開閉弁よりも下流側の負圧の大きさは、負圧維持手段が駆動することにより開弁閾値に維持される。そのため、非沸騰クリーニングの実行時において開閉弁を開弁させた場合に流体供給路内の流体が沸騰し、微細気泡が流体から析出してしまうことを回避できる。
【0014】
本発明の流体噴射装置のクリーニング方法において、前記開閉弁を閉弁させた状態で前記流体供給路における前記開閉弁よりも下流側を減圧させ、前記流体供給路における前記開閉弁よりも下流側の負圧が、前記流体供給路内の流体が沸騰するような大きさになった場合に、前記開閉弁を開弁させて前記流体噴射ヘッドから流体を排出させる沸騰許容クリーニングを実行し、該沸騰許容クリーニングの実行後に前記非沸騰クリーニングを実行するようにした。
【0015】
この発明によれば、クリーニング時に流体供給路内の流体の沸騰を許容する沸騰許容クリーニングが実行された後には、非沸騰クリーニングが実行される。そのため、沸騰許容クリーニング時において流体供給路内の流体が沸騰することにより発生した微細気泡は、非沸騰クリーニングによって流体噴射ヘッドから流体と共に排出される。
【0016】
本発明の流体噴射装置のクリーニング方法において、前記開閉弁の開弁状態を維持した状態で前記吸引手段を駆動させることにより前記流体噴射ヘッドから流体を排出させる通常クリーニングを実行し、該通常クリーニングの実行後に前記非沸騰クリーニングを実行するようにした。
【0017】
この発明によれば、通常クリーニングでは、非沸騰クリーニングに比して流体供給路内の流体を流体噴射ヘッド側から吸引する吸引力が弱いため、クリーニング前から流体供給路内に存在している気泡を確実に流体噴射ヘッドから排出できないおそれがある。そこで、通常クリーニングを実行した後に非沸騰クリーニングを実行することにより、クリーニング前から流体供給路内に存在していた気泡が確実に流体噴射ヘッドから流体と共に排出される。
【0018】
本発明の流体噴射装置は、流体を貯留する流体貯留手段と、該流体貯留手段から流体供給路を介して供給された流体をノズルから噴射する流体噴射ヘッドと、前記流体供給路の途中に設けられる開閉弁と、前記ノズルから流体を吸引可能な状態で前記流体噴射ヘッドに当接する流体受容手段と、該流体受容手段を前記流体噴射ヘッドに当接させた状態で吸引力を発揮することにより前記流体噴射ヘッドの前記ノズルから流体を吸引して前記流体受容手段内に排出させる吸引手段とを備え、前記開閉弁を閉弁させた状態で前記流体供給路における前記開閉弁よりも下流側を前記吸引手段によって減圧させ、その後、前記開閉弁を開弁させることにより、その流体を前記流体噴射ヘッドから前記流体受容手段内に排出させる流体噴射装置において、前記開閉弁が閉弁した状態で前記吸引手段による前記流体供給路における前記開閉弁よりも下流側の減圧が開始されてから前記流体供給路における前記開閉弁よりも下流側の負圧の大きさが、前記開閉弁の開弁後において前記流体供給路内の流体が沸騰状態になる前の負圧の大きさとして予め設定された開弁閾値を超えるまでの経過時間を開弁許可時間として予め記憶する記憶手段と、前記吸引手段による前記流体供給路における前記開閉弁よりも下流側の減圧が開始されてからの経過時間が前記開弁許可時間に達した場合に、前記開閉弁を開弁させる開閉弁制御手段とを更に備えた。
【0019】
この発明によれば、開閉弁が閉弁した状態で吸引手段が駆動を開始してからの経過時間が開弁許可時間に達した場合には、流体供給路における開閉弁よりも下流側の負圧の大きさが開弁閾値に達したと判断し、開閉弁を開弁させて流体噴射ヘッドから流体を噴射させる。すなわち、流体供給路における開閉弁よりも下流側の負圧を検出するためのセンサなどを別途設けなくても的確なタイミングで開閉弁を開弁させることができるため、開閉弁を開弁させた場合に流体供給路内の流体が沸騰し、微細気泡が流体から析出してしまうことを回避できる。したがって、クリーニングの成功率を向上させることができる。
【0020】
本発明の流体噴射装置は、流体を貯留する流体貯留手段と、該流体貯留手段から流体供給路を介して供給された流体をノズルから噴射する流体噴射ヘッドと、前記流体供給路の途中に設けられる開閉弁と、前記ノズルから流体を吸引可能な状態で前記流体噴射ヘッドに当接する流体受容手段と、該流体受容手段を前記流体噴射ヘッドに当接させた状態で吸引力を発揮することにより前記流体噴射ヘッドの前記ノズルから流体を吸引して前記流体受容手段内に排出させる吸引手段とを備え、前記開閉弁を閉弁させた状態で前記流体供給路における前記開閉弁よりも下流側を前記吸引手段によって減圧させ、その後、前記開閉弁を開弁させることにより、その流体を前記流体噴射ヘッドから前記流体受容手段内に排出させる流体噴射装置において、前記流体供給路における前記開閉弁よりも下流側の負圧を検出する圧力検出手段と、該圧力検出手段によって検出された負圧の大きさが、前記開閉弁の開弁後において前記流体供給路内の流体が沸騰状態になる前の負圧の大きさとして予め設定された開弁閾値に達した場合に、前記開閉弁を開弁させる開閉弁制御手段とを更に備えた。
【0021】
この発明によれば、流体供給路における開閉弁よりも下流側の負圧を圧力検出手段によって検出し、該検出した負圧の大きさが開弁閾値に達した場合に開閉弁を開弁させて流体噴射ヘッドから流体を噴射させる。そのため、流体供給路における開閉弁よりも下流側の負圧を実測して開閉弁を開弁させるタイミングを図るため、開閉弁を開弁させた場合に流体供給路内の流体が沸騰し、微細気泡が流体から析出してしまうことを回避できる。したがって、クリーニングの成功率を向上させることができる。
【0022】
本発明の流体噴射装置は、流体を貯留する流体貯留手段と、該流体貯留手段から流体供給路を介して供給された流体をノズルから噴射する流体噴射ヘッドと、前記流体供給路の途中に設けられる開閉弁と、前記ノズルから流体を吸引可能な状態で前記流体噴射ヘッドに当接する流体受容手段と、該流体受容手段を前記流体噴射ヘッドに当接させた状態で吸引力を発揮することにより前記流体噴射ヘッドの前記ノズルから流体を吸引して前記流体受容手段内に排出させる吸引手段とを備え、前記開閉弁を閉弁させた状態で前記流体供給路における前記開閉弁よりも下流側を前記吸引手段によって減圧させ、その後、前記開閉弁を開弁させることにより、その流体を前記流体噴射ヘッドから前記流体受容手段内に排出させる流体噴射装置において、前記流体供給路における前記開閉弁よりも下流側の負圧の大きさが、前記開閉弁の開弁後において前記流体供給路内の流体が沸騰状態になる前の負圧の大きさとして予め設定された開弁閾値に達した場合に、前記流体供給路における前記開閉弁よりも下流側の負圧の大きさを前記開弁閾値に維持する負圧維持手段と、該負圧維持手段によって前記流体供給路における前記開閉弁よりも下流側の負圧の大きさが前記開弁閾値に維持されている場合に、前記開閉弁を開弁させる開閉弁制御手段とを更に備えた。
【0023】
この発明によれば、吸引手段の駆動により流体供給路における開閉弁よりも下流側が減圧されても、流体供給路における開閉弁よりも下流側の負圧の大きさは、負圧維持手段が駆動することにより開弁閾値に維持される。そのため、開閉弁を開弁させた場合に流体供給路内の流体が沸騰し、微細気泡が流体から析出してしまうことを回避できる。したがって、クリーニングの成功率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
(第1の実施形態)
以下、本発明の流体噴射装置、及び流体噴射装置のクリーニング方法を具体化した第1の実施形態を図1〜図6に基づいて説明する。なお、以下における本明細書中の説明において、「前後方向」、「左右方向」、「上下方向」をいう場合は、図1に矢印で示す前後方向(副走査方向)及び左右方向(主走査方向)、並びに上下方向(重力方向)をそれぞれ示すものとする。
【0025】
図1に示すように、液体噴射装置としてのインクジェット式プリンタ11は、平面視矩形状をなすフレーム12を備えている。このフレーム12内には、プラテン13が左右方向に沿って延びるように架設され、該プラテン13上には、図示しない紙送り機構によりターゲットとしての用紙Pが前後方向に沿って給送されるようになっている。また、フレーム12内には、プラテン13の長手方向(左右方向)と平行に棒状のガイド軸14が架設されている。
【0026】
このガイド軸14には、キャリッジ15が、該ガイド軸14の軸線方向(左右方向)への往復移動可能な状態で支持されている。キャリッジ15は、フレーム12の後壁内面に設けられた一対のプーリ16a間に張設された無端状のタイミングベルト16を介してフレーム12の背面に設けられたキャリッジモータ17に連結されている。
【0027】
キャリッジ15のプラテン13に対向する下面側には、流体噴射ヘッドとしての記録ヘッド18が搭載されている。また、キャリッジ15上には、一時貯留した流体としてのインクを記録ヘッド18に供給する複数(本実施形態では4つ)のバルブユニット19が設けられている。また、記録ヘッド18の下面は、図2に示すように、複数のノズル20(図2では1つのみ図示)が開口するノズル形成面18aとされている。そして、各ノズル20からプラテン13上に給送された用紙Pにインク滴が噴射されることにより、印刷が行われるようになっている。
【0028】
フレーム12内の右端部には、図1に示すように、カートリッジホルダ21が設けられ、該カートリッジホルダ21には、流体貯留手段としてのインクカートリッジ22が着脱可能に複数個(本実施形態では4個)装着されている。各インクカートリッジ22は、図2に示すように、矩形箱状のケース23をそれぞれ備えている。これら各ケース23内には、可撓性のフィルムからなる袋状のインクパック24がそれぞれ収容されており、該各インクパック24内には、インクカートリッジ22毎に色の異なるインクが充填されている。そして、各インクカートリッジ22は、カートリッジホルダ21に装着された場合には、インク供給路(液体供給路)25を構成するインクチューブ25Aの上流端に接続されることにより、該インクチューブ25Aを介してキャリッジ15上の各バルブユニット19とそれぞれ接続されるようになっている。
【0029】
また、図1及び図2に示すように、キャリッジ15上には、インクチューブ25A毎に対応して、該インクチューブ25A内をインクカートリッジ22とバルブユニット19との間の途中位置において開閉する開閉弁としてのチョークバルブ47がそれぞれ設けられている。これらのチョークバルブ47は、インクチューブ25A内におけるチョークバルブ47よりも上流側のインクの圧力と、インクチューブ25A内におけるチョークバルブ47よりも下流側のインクの圧力との差圧によって開閉されるようになっている。
【0030】
また、図1に示すように、フレーム12の右端部においてカートリッジホルダ21の上側には、加圧ユニット26が搭載されている。この加圧ユニット26は、空気供給路27を介して加圧気体としての加圧空気をインクカートリッジ22内に圧送する装置であって、加圧ポンプ28、空気圧センサ29及び大気開放弁30を備えている。なお、空気圧センサ29は、空気供給路27内を流れる加圧空気の圧力を検出するためのセンサである。
【0031】
空気供給路27は、大気開放弁30の下流側に配設された分配器31を境にインクカートリッジ22の個数と同数(本実施形態では4つ)に分岐されている。そして、分岐された各空気供給路27は、それぞれの先端(下流端)が各々対応するインクカートリッジ22に接続され、そのインクカートリッジ22のケース23内に連通している。したがって、加圧ユニット26の加圧ポンプ28が駆動された場合には、加圧ポンプ28から圧送された加圧空気が空気供給路27を介して各インクカートリッジ22のケース23内にそれぞれ導入されるようになっている。そして、各ケース23内に圧送された加圧空気による加圧力(即ち、空気圧)によって各インクパック24が押し潰されて、該各インクパック24内のインクが各インク供給路25(インクチューブ25A)を介して記録ヘッド18側にそれぞれ圧送されるようになっている。
【0032】
図2に示すように、インクカートリッジ22のケース23内に備えられた各インクパック24は、各インクチューブ25A内にインクを導出可能になっている。また、ケース23とインクパック24との間の空間は圧力室32となっており、該圧力室32内には、加圧ポンプ28から空気供給路27を介して圧送された加圧空気が導入されるようになっている。
【0033】
図1に示すように、フレーム12内の右端部寄り位置であって、カートリッジホルダ21とプラテン13との間には、記録ヘッド18の退避位置となるホームポジションが設けられている。そして、このホームポジションの下方位置には、クリーニングなどの各種メンテナンスを実行するためのメンテナンスユニット33が配設されている。このメンテナンスユニット33は、図2に示すように、記録ヘッド18のノズル形成面18a(具体的には、各ノズル20の開口(「ノズル開口」ともいう。)が形成された領域)に各ノズル20の開口を囲うようにして当接可能な上側が開口した有底四角箱状をなす合成樹脂製のキャップ(流体受容手段)34を備えている。
【0034】
このキャップ34は、図示しない昇降装置の駆動によって上下動可能とされており、キャリッジ15をホームポジションに移動させた状態で、キャップ34を上昇させることで、キャップ34は、その上端が記録ヘッド18のノズル形成面18aに密着し、各ノズル20の開口を囲んだ状態となって記録ヘッド18に当接するようになっている。なお、このように上端をノズル形成面18aに密着させるようにしてキャップ34が記録ヘッド18に当接した状態のことを以下では「当接状態」ともいう。
【0035】
キャップ34の底壁部には排出口35が貫通形成され、該排出口35には排出チューブ36が接続されている。この排出チューブ36の中間部には、吸引手段としての吸引ポンプ37(例えばチューブポンプ)が設けられている。また、排出チューブ36の先端(下流端)は廃インクタンク38に接続されている。そして、メンテナンスユニット33は、吸引ポンプ37が駆動された場合には、キャリッジ15上の各チョークバルブ47を利用する、いわゆるチョーククリーニングを実行可能とされている。
【0036】
各チョークバルブ47は、図3(a)(b)に示すように、合成樹脂からなる基材40をそれぞれ備え、該各基材40の一側面(図3(a)(b)では上面)には凹部41がそれぞれ形成されている。これら各凹部41の底面には、基材40に貫通形成された導入路42がそれぞれ開口しており、該各導入路42は、各インクカートリッジ22に接続された各インクチューブ25Aとそれぞれ連通している。また、各凹部41の底面には、突部43がそれぞれ形成され、該各突部43の上面には、吐出路44がそれぞれ開口している。そして、これら各吐出路44は、基材40にそれぞれ貫通形成され、記録ヘッド18側とそれぞれ連通している。
【0037】
また、各基材40の一側面には、可撓性を有するフィルム45が凹部41側に弛みを持たせた状態でそれぞれ固着されており、各フィルム45により各凹部41がそれぞれ封止されている。そして、各凹部41の内面と各フィルム45とで密閉状態に囲まれた圧力室46がそれぞれ形成されている。そのため、インクチューブ25Aからインクが各バルブユニット19にそれぞれ供給された場合、インクは導入路42を介して各圧力室46内にそれぞれに流入するようになっている。
【0038】
各圧力室46内に流入したインク量が増加した場合には、そのインクの圧力を受けて各フィルム45が、図3(a)に示すように、各突部43からそれぞれ離間される。そして、各圧力室46内のインク量がさらに増加してインクから受ける圧力が大きくなった場合、各フィルム45はそれぞれ一方側(図3(a)(b)では上方側)にそれぞれ膨らんだ状態になる。したがって、本実施形態では、これら凹部41、突部43及びフィルム45等により、開閉弁としてのチョークバルブ47が構成されている。また、導入路42、凹部41及び吐出路44が上記インクチューブ25Aと共にインク供給路25を構成している。
【0039】
次に、チョーククリーニングについて図2及び図3に基づき以下説明する。
さて、チョーククリーニングの際には、図2に示すように、キャップ34を上昇させて記録ヘッド18に当接させることによって、記録ヘッド18のノズル形成面18aとキャップ34の内面とによりキャップ内空間が形成される。この状態で吸引ポンプ37を駆動させると、キャップ内空間の空気及びインクが排出チューブ36を介して下流側の廃インクタンク38内に吸引される。その結果、キャップ内空間は大気圧に対して負圧状態になり、この負圧が記録ヘッド18の各ノズル20内に作用して、これら各ノズル20から記録ヘッド18内のインクがキャップ34内に排出される。なお、以降の記載においては、大気圧に対する負圧のことを単に「負圧」というものとする。
【0040】
さらに吸引ポンプ37が駆動されると、記録ヘッド18内だけでなく各バルブユニット19及びチョークバルブ47内のインクも吸引される。その結果、各チョークバルブ47における圧力室46内のインクが各吐出路44から下流側にそれぞれ排出されることにより、各圧力室46内のインクがそれぞれ減少する。吸引ポンプ37の駆動が継続されると、各圧力室46内のインクの減少にともなって各フィルム45が各突部43側(図3(a)(b)では下側)にそれぞれ変位し、図3(b)に示すように、各フィルム45が各突部43に当接して各吐出路44がそれぞれ閉塞される。そして、吸引ポンプ37の駆動をさらに継続させると、各吐出路44の入口よりも下流側がさらに減圧される。
【0041】
そして、各吐出路44の入口よりも下流側の負圧が蓄積されると、加圧ポンプ28が駆動される。すると、各インクカートリッジ22から各チョークバルブ47内にインクがそれぞれ供給され、各圧力室46内にインクがそれぞれ導入される。その後、各圧力室46に送出されたインク量の増加にともない、該インクの圧力が前記負圧よりも大きくなると、各フィルム45が各突部43と離間する方向(図3(b)では上方)に変位され、各吐出路44がそれぞれ開放される。
【0042】
その結果、負圧が蓄積された各吐出路44内に一気にインクがそれぞれ流れ込み、各インクチューブ25Aや各圧力室46よりも下流側に滞留する増粘したインク及び気泡等が流速の高められたインクとともに記録ヘッド18の各ノズル20から強制的に排出される。このようにして、いわゆるチョーククリーニングが行われる。なお、記録ヘッド18の各ノズル20から排出されたインクは、キャップ34及び排出チューブ36を介して廃インクタンク38に排出される。
【0043】
次に、上記インクジェット式プリンタ11の電気的構成について図3に基づき以下説明する。
図4に示すように、インクジェット式プリンタ11は、該プリンタ11全体を制御する制御装置50を備えている。この制御装置50の入力側インターフェースには、加圧ユニット26の空気圧センサ29などが電気的に接続されている。一方、制御装置50の出力側インターフェースには、図示しない紙送りモータ、キャリッジモータ17、記録ヘッド18、加圧ポンプ28及び吸引ポンプ37などが電気的に接続されている。そして、制御装置50は、空気圧センサ29等からの入力信号などに応じて、紙送りモータ、キャリッジモータ17、記録ヘッド18、加圧ポンプ28及び吸引ポンプ37などの駆動を各別に制御するようになっている。
【0044】
また、制御装置50内には、CPU51、ROM52、RAM53、タイマ54、及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)55などが設けられている。ROM52には、インクジェット式プリンタ11を制御するための各種の制御プログラム(後述するインク充填処理等)及び各種閾値(後述する第1経過時間閾値、第2経過時間閾値、第3経過時間閾値等)などが予め記憶されている。また、RAM53には、インクジェット式プリンタ11の駆動中に適宜書き換えられる各種の情報が記憶されるようになっている。また、タイマ54は、クロック回路からのクロック信号等に基づき計数処理を行うカウンタにより構成されている。
【0045】
次に、本実施形態の制御装置50が実行する各制御処理ルーチンのうち、インクカートリッジ22がインクジェット式プリンタ11に装着された場合に実行されるインク充填処理ルーチンについて図5に示すフローチャート及び図6に示すタイミングチャートに基づき以下説明する。
【0046】
さて、制御装置50は、インクカートリッジ22がカートリッジホルダ21に装着されたことを契機にインク充填処理ルーチンを実行する。そして、このインク充填処理ルーチンにおいて、制御装置50は、通常クリーニングを開始する(ステップS10)。具体的には、制御装置50は、ホームポジションに位置する記録ヘッド18にキャップ34を昇降装置の駆動によって当接させ、加圧ポンプ28の駆動を開始させた後に吸引ポンプ37の駆動を開始させる。そのため、通常クリーニングでは、該クリーニングの開始と同時に加圧ポンプ28の駆動によって各チョークバルブ47内にインクが各インクチューブ25Aを介してそれぞれ流入するため、各チョークバルブ47の開弁状態がそれぞれ維持される。
【0047】
そして、制御装置50は、ステップS10の処理が実行されてからの第1経過時間T1をタイマ54が計測している時間から求め、該第1経過時間T1が予め設定された第1経過時間閾値KT1以上であるか否かを判定する(ステップS11)。この第1経過時間閾値KT1は、各インク供給路25内にインクが全く無い状態であっても通常クリーニングの実行により、各インクカートリッジ22内のインクが各インク供給路25を介して記録ヘッド18の各ノズル20内に到達してキャップ34内に排出されるようになるまでにかかる時間であって、実験やシミュレーションなどによって予め設定される。
【0048】
ステップS11の判定結果が否定判定(T1<KT1)である場合、制御装置50は、ステップS11の判定結果が肯定判定になるまで該ステップS11の判定処理を繰り返し実行する。一方、ステップS11の判定結果が肯定判定(T1≧KT1)である場合、制御装置50は、加圧ポンプ28及び吸引ポンプ37の駆動を共に停止させることにより通常クリーニングを停止させる(ステップS12)。
【0049】
続いて、制御装置50は、記録ヘッド18にキャップ34を引き続き当接させた状態で吸引ポンプ37の駆動を開始させることにより、チョーククリーニング(詳しくは、後述する非沸騰クリーニング)の実行を開始させる(ステップS13)。なお、非沸騰クリーニング時において、吸引ポンプ37の駆動速度は予め設定された所定速度で駆動するようになっている。
【0050】
そして、制御装置50は、ステップS13の処理が実行されてからの第2経過時間T2をタイマ54が計測している時間から求め、該第2経過時間T2が予め設定された第2経過時間閾値KT2に達したか否かを判定する(ステップS14)。
【0051】
ここで、キャップ34を記録ヘッド18に当接させた状態で吸引ポンプ37を駆動させると、加圧ポンプ28の駆動が停止しているため、キャップ34内に連通する各チョークバルブ47の圧力室46がそれぞれ減圧されることにより、各チョークバルブ47がそれぞれ閉弁状態になる。さらに吸引ポンプ37が駆動すると、図6に示すように、キャップ34内の減圧に伴い、各インク供給路25内においてチョークバルブ47よりも下流側(吐出路44)が減圧されていく。そして、キャップ34内(又は吐出路44内)の負圧NPが沸騰閾値NPng(例えば「−90KPa」)を超えてしまうと、この後に各チョークバルブ47を開弁させた場合に、各インク供給路25内を記録ヘッド18側に流動するインクが沸騰状態になるおそれがある。このように沸騰状態になったインクからは、微細気泡が析出してしまうおそれがある。
【0052】
そこで、本実施形態では、ステップS13の処理によりキャップ34内に負圧NPが発生しても、その後の各チョークバルブ47の開弁時にインクが沸騰状態にならないような大きさの負圧値に対応する開弁閾値KNP(例えば「−80KPa」)を実験やシミュレーションなどによって予め検出しておく。そして、ステップS13の処理の実行により吸引ポンプ37の駆動が開始してからキャップ34内の負圧NPの大きさが開弁閾値KNPの大きさに到達する時点の時間を計測し、該計測した時間が、第2経過時間閾値(開弁許可時間)KT2としてROM52に設定記憶されている。したがって、本実施形態では、ROM52が、記憶手段としても記憶する。
【0053】
そして、ステップS14の判定結果が否定判定(T2<KT2)である場合、制御装置50は、ステップS14の判定結果が肯定判定になるまで該ステップS14の判定処理を繰り返し実行する。一方、ステップS14の判定結果が肯定判定(T2≧KT2)である場合、制御装置50は、各チョークバルブ47を開弁させるべく加圧ポンプ28の駆動を開始させる(ステップS15)。したがって、本実施形態では、制御装置50が、開弁制御手段として機能する。
【0054】
続いて、制御装置50は、ステップS15の処理が実行されてからの第3経過時間T3をタイマ54が計測している時間から求め、該第3経過時間T3が第2経過時間閾値KT2よりも長めに設定された第3経過時間閾値KT3以上になったか否かを判定する(ステップS16)。この第3経過時間閾値KT3は、各チョークバルブ47を開弁させてインクを記録ヘッド18の各ノズル20からキャップ34内に排出させる期間を設定するための時間であって、実験やシミュレーションなどによって予め設定される。
【0055】
ステップS16の判定結果が否定判定(T3<KT3)である場合、制御装置50は、ステップS16の判定結果が肯定判定になるまで該ステップS16の判定処理を繰り返し実行する。一方、ステップS16の判定結果が肯定判定(T3≧KT3)である場合、制御装置50は、加圧ポンプ28及び吸引ポンプ37の駆動を共に停止させ、非沸騰クリーニングを停止させる(ステップS17)。その後、制御装置50は、インク充填処理ルーチンを終了する。
【0056】
すなわち、本実施形態のインク充填処理ルーチンでは、通常クリーニングの実行後には、各インク供給路25内を流動するインクの非沸騰状態が維持される非沸騰クリーニング(ステップS13,S14,S15,S16,S17の各処理が相当)が実行される。そして、この非沸騰クリーニングにおいて、ステップS13,S14が、各インク供給路25におけるチョークバルブ47よりも下流側(即ち、吐出路44)をそれぞれ減圧させる減圧ステップに相当する。また、ステップS15,S16が、キャップ34内の負圧NPが沸騰閾値NPngに到達する前に各チョークバルブ47を開弁させることにより、記録ヘッド18の各ノズル20からインクをキャップ34内に排出させる排出ステップに相当する。
【0057】
次に、本実施形態のインクジェット式プリンタ11にインクカートリッジ22が装着された場合の作用について以下説明する。
さて、各インクカートリッジ22がカートリッジホルダ21に装着されると、キャップ34が記録ヘッド18に当接した状態で加圧ポンプ28及び吸引ポンプ37が駆動する通常クリーニングが実行される。すると、各インクカートリッジ22内のインクは、各インクチューブ25Aを介して各チョークバルブ47内に流入して記録ヘッド18の各ノズル20内に到達する。そして、記録ヘッド18の各ノズル20からインクがキャップ34内に排出される。
【0058】
この際、吸引ポンプ37の駆動によりキャップ34内に発生する負圧NPは、「−60KPa」程度である。そのため、記録ヘッド18の各ノズル20内は、インクが十分に満たされた状態になるものの、各インク供給路25内(特に構成が複雑になっている各チョークバルブ47やバルブユニット19内)には、インクが十分に満たされずに気泡が残っている場合がある。
【0059】
そこで、本実施形態では、通常クリーニングの実行後に、該通常クリーニングよりも強力な吸引力でもって記録ヘッド18の各ノズル20からインクをキャップ34内に排出させる非沸騰クリーニングが実行される。この非沸騰クリーニングでは、まず吸引ポンプ37のみが駆動することにより、キャップ34内に負圧NPが発生し、この負圧NPにより記録ヘッド18の各ノズル20からインクがキャップ34内に排出される。この際、加圧ポンプ28は駆動していないため、各インク供給路25においてチョークバルブ47よりも下流側が負圧状態になり、その結果、各チョークバルブ47がそれぞれ閉弁状態になる。
【0060】
このように各チョークバルブ47が閉弁した状態でさらに吸引ポンプ37が駆動すると、キャップ34内がさらに減圧される。そして、非沸騰クリーニングの実行が開始(即ち、吸引ポンプ37の駆動が開始)されてからの第2経過時間T2が第2経過時間閾値KT2に達すると、キャップ34内の負圧NPの大きさが開弁閾値KNPの大きさに達したと判断されて加圧ポンプ28が駆動し始める。
【0061】
すると、各チョークバルブ47内には、各インクカートリッジ22から各インクチューブ25Aを介してインクが流入し、そのインクの圧力によって各チョークバルブ47がそれぞれ開弁する。その結果、各インクチューブ25A内を流動してきたインクは、各チョークバルブ47内及びバルブユニット19内を介して記録ヘッド18に供給され、該記録ヘッド18の各ノズル20から排出される。この際、非沸騰クリーニング時における各インク供給路25内のインクの流速は、通常クリーニング時におけるインクの流速よりも速くなる。そのため、通常クリーニング時では各インク供給路25内から排出しきれなかった気泡が、インクと共に記録ヘッド18の各ノズル20からインクと共に排出される。しかも、キャップ34内の負圧NPの大きさが沸騰閾値NPngの大きさを超えることはないため、非沸騰クリーニング時に各インク供給路25内を流動するインクが沸騰して微細気泡が新たに析出してしまうことはない。
【0062】
したがって、本実施形態では、以下に示す効果を得ることができる。
(1)非沸騰クリーニング時には、各インク供給路(流体供給路)25におけるチョークバルブ(開閉弁)47よりも下流側の負圧NPが、チョークバルブ47の開弁後においてインク供給路25内のインク(流体)が沸騰状態になるような大きさになる前に、各チョークバルブ47がそれぞれ開弁される。そのため、各インク供給路25内をインクカートリッジ(流体貯留手段)22側から記録ヘッド(流体噴射ヘッド)18に向けて流動するインクの沸騰が回避される。すなわち、非沸騰クリーニングを実行した場合に、各インク供給路25内を流動するインクが沸騰して気体が析出されることが回避され、その後の印刷時におけるインクの噴射不良の発生が抑制される。したがって、クリーニングの成功率を向上させることができる。
【0063】
(2)本実施形態では、吸引ポンプ(吸引手段)37の駆動が開始されてからキャップ(流体受容手段)34内の負圧NPが開弁閾値KNPに達するまでの時間が第2経過時間閾値(開弁許可時間)KT2として予め設定されている。そのため、非沸騰クリーニング時には、吸引ポンプ37の駆動が開始してからの第2経過時間T2が第2経過時間閾値KT2に達した場合、キャップ34内の負圧NPの大きさが開弁閾値KNPに達したと判断される。そして、各チョークバルブ(開閉弁)47をそれぞれ開弁させて記録ヘッド(流体噴射ヘッド)18の各ノズル20からインク(流体)を排出させる。すなわち、キャップ34内の負圧NPを検出するためのセンサなどを別途設けなくても的確なタイミングで各チョークバルブ47を開弁させることができるため、各チョークバルブ47を開弁させた場合に各インク供給路25内を流動するインクが沸騰し、微細気泡がインク中から析出してしまうことを回避できる。
【0064】
(3)通常クリーニングでは、キャップ(流体受容手段)34内に発生させる負圧NPの大きさが非沸騰クリーニング時の大きさに比して小さいため、各インク供給路(流体供給路)25内から完全に気泡を記録ヘッド(流体噴射ヘッド)18の各ノズル20からインクと共に排出できないおそれがある。そこで、本実施形態では、インクカートリッジ22の装着時における通常クリーニングの実行後には、非沸騰クリーニングが実行される。そのため、非沸騰クリーニングの実行前に各インク供給路25内のインク中に含まれていた気泡を非沸騰クリーニングの実行によって確実に記録ヘッド18の各ノズル20から排出することができる。
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態を図7〜図9に従って説明する。なお、第2の実施形態は、キャップ34内の負圧を検出するセンサを設ける点、及び、インク充填処理ルーチンの内容が第1の実施形態と異なっている。したがって、以下の説明においては、第1の実施形態と相違する部分について主に説明するものとし、第1の実施形態と同一又は相当する部材構成には同一符号を付して重複説明を省略するものとする。
【0065】
図7に示すように、本実施形態のキャップ34の底壁部には、キャップ34内と外部とを連通させる連通口60が排出口35とは別に貫通形成され、連通口60には検出用チューブ61の上端が接続されている。そして、検出用チューブ61の下端には、キャップ34内の圧力(負圧NP)を検出するための圧力センサ62が設けられている。この圧力センサ62は制御装置50に電気的に接続されており、該制御装置50は、圧力センサ62から入力した信号の大きさに基づきキャップ34内の負圧NPを検出するようになっている。したがって、本実施形態では、圧力センサ62及び制御装置50により、圧力検出手段が構成されている。
【0066】
次に、本実施形態の制御装置50が実行するインク充填処理ルーチンについて図8に示すフローチャート及び図9に示すタイミングチャートに基づき以下説明する。
さて、制御装置50は、インクカートリッジ22がカートリッジホルダ21に装着されたことを契機にインク充填処理ルーチンを実行する。そして、このインク充填処理ルーチンにおいて、制御装置50は、クリーニング回数Kを「0(零)」にリセットする(ステップS20)。このクリーニング回数Kは、インク充填処理ルーチンの実行時に後述する沸騰許容クリーニングが連続して実行された回数を示すものである。
【0067】
続いて、制御装置50は、チョーククリーニングの一種である沸騰許容クリーニングを実行する(ステップS21)。具体的には、制御装置50は、ホームポジションに位置する記録ヘッド18にキャップ34を昇降装置の駆動によって当接させた状態で吸引ポンプ37の駆動を開始させる。そして、制御装置50は、吸引ポンプ37の駆動が開始してからの経過時間をタイマ54が計測している時間から求め、その経過時間が予め設定された沸騰許容時間Tng(図9参照)に達したか否かを判定する。この沸騰許容時間Tngは、図9に示すように、吸引ポンプ37の駆動に基づきキャップ34内の負圧NPの大きさが沸騰閾値NPngの大きさに達した時点の時間であって、実験やシミュレーションなどによって予め設定される。そして、吸引ポンプ37の駆動が開始してからの経過時間が沸騰許容時間Tngに達した場合、制御装置50は、加圧ポンプ28を駆動させる。
【0068】
続いて、制御装置50は、吸引ポンプ37の駆動が開始してからの第4経過時間T4をタイマ54が計測している時間から求め、その第4経過時間T4が沸騰許容時間Tngよりも長めに設定された第4経過時間閾値KT4以上になったか否かを判定する(ステップS22)。この第4経過時間閾値KT4は、沸騰許容クリーニングの実行時間を設定する時間であって、実験やシミュレーションなどによって予め設定される。ステップS22の判定結果が否定判定(T4<KT4)である場合、制御装置50は、ステップS22の判定結果が肯定判定になるまで該ステップS22の判定処理を繰り返し実行する。
【0069】
一方、ステップS22の判定結果が肯定判定(T4≧KT4)である場合、制御装置50は、加圧ポンプ28及び吸引ポンプ37の駆動を共に停止させることにより沸騰許容クリーニングを停止させる(ステップS23)。そして、制御装置50は、クリーニング回数Kを「1」だけインクリメントする(ステップS24)。続いて、制御装置50は、ステップS24にてインクリメントされたクリーニング回数Kが予め設定された所定回数KK(例えば「3」)になったか否かを判定する(ステップS25)。
【0070】
このステップS25の判定結果が否定判定(K<KK)である場合、制御装置50は、その処理を前述したステップS21に移行する。すなわち、本実施形態では、インクカートリッジ22がカートリッジホルダ21に装着された場合、沸騰許容クリーニングが所定回数KKだけ連続して実行される。一方、ステップS25の判定結果が肯定判定(K=KK)である場合、制御装置50は、記録ヘッド18にキャップ34を引き続き当接させた状態で吸引ポンプ37の駆動を開始させることにより、非沸騰クリーニングの実行を開始させる(ステップS26)。
【0071】
続いて、制御装置50は、圧力センサ62から入力した信号に基づきキャップ34内の負圧NPを検出し、該負圧NPが上記開弁閾値KNP以下であるか否かを判定する(ステップS27)。この判定結果が否定判定(NP>KNP)である場合、制御装置50は、キャップ34内を未だ減圧させる必要があると判断し、ステップS27の判定結果が肯定判定になるまで該ステップS27の判定処理を繰り返し実行する。したがって、本実施形態では、ステップS26,S27が、減圧ステップに相当する。
【0072】
一方、ステップS27の判定結果が肯定判定(NP≦KNP)である場合、制御装置50は、各チョークバルブ47を開弁させるべく加圧ポンプ28の駆動を開始させる(ステップS28)。すなわち、本実施形態では、図9に示すように、非沸騰クリーニングの実行時には、キャップ34内(即ち、各インク供給路25におけるチョークバルブ47よりも下流側)の負圧NPを実測し、その負圧NPの大きさが開弁閾値KNPの大きさに達した場合に、各チョークバルブ47を開弁させる。続いて、制御装置50は、上記ステップS16,S17に相当するステップS29,S30の各処理を順次実行し、インク充填処理ルーチンを終了する。したがって、本実施形態では、ステップS29,S30が、排出ステップに相当する。
【0073】
上述したように、インクカートリッジ22をカートリッジホルダ21に装着した場合には、所定回数KKだけ沸騰許容クリーニングが実行される。この沸騰許容クリーニングにおいては、キャップ34内の負圧NPが沸騰閾値NPngに到達してから各チョークバルブ47が開弁されるため、クリーニングの実行前において各インク供給路25内に存在していた空気(気泡)は、インクと共に確実に記録ヘッド18の各ノズル20から排出される。しかしながら、各チョークバルブ47の開弁直後には、各インク供給路25内を流動するインクが沸騰状態になり、該インクからは、微細気泡が析出することがあった。
【0074】
そこで、本実施形態では、沸騰許容クリーニングの所定回数KK実行後には、非沸騰クリーニングが実行される。その結果、沸騰許容クリーニングにおいて各インク供給路25内を流動するインクから析出した微細気泡は、非沸騰クリーニングの実行によりインクと共に記録ヘッド18の各ノズル20から排出される。そのため、インク充填処理ルーチンの終了後における各インク供給路25内のインク中に気泡(微細気泡も含む)が含まれることはほとんどない。したがって、インク充填処理ルーチン後に用紙Pに印刷を実行する際におけるインクの噴射不良が良好に抑制される。
【0075】
したがって、本実施形態では、上記第1の実施形態の効果(1)に加え、さらに以下に示す効果をも得ることができる。
(4)各インク供給路(流体供給路)25におけるチョークバルブ(開閉弁)47よりも下流側と同程度の負圧となるキャップ(流体受容手段)34内の負圧NPが圧力センサ62からの信号に基づき検出される。そして、非沸騰クリーニングでは、検出された負圧NPの大きさが開弁閾値KNPの大きさに達した場合に、加圧ポンプ28を駆動させることにより各チョークバルブ47をそれぞれ開弁させ、インクが各インク供給路25内を流動して記録ヘッド(流体噴射ヘッド)18の各ノズル20から排出される。すなわち、キャップ34内の負圧NPを実測し、その実測結果に基づき各チョークバルブ47を開弁させるタイミングを図るため、非沸騰クリーニングにおいては、各チョークバルブ47を開弁させた場合に各インク供給路25内を流動するインクが沸騰し、微細気泡がインクから析出してしまうことを回避できる。
【0076】
(5)沸騰許容クリーニングでは、各インク供給路(流体供給路)25内を記録ヘッド(流体噴射ヘッド)18側に流動するインクが沸騰して、微細気泡がインクから析出してしまうことがある。そこで、本実施形態では、沸騰許容クリーニングが実行された後には、クリーニング後にインクから微細気泡が析出することのない非沸騰クリーニングが実行される。そのため、沸騰許容クリーニング時において各インク供給路25内を流動するインクが沸騰することにより発生した微細気泡を、非沸騰クリーニングによって記録ヘッド18の各ノズル20からインクと共に排出できる。
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態を図10及び図11に従って説明する。なお、第3の実施形態は、キャップ34内の負圧を一定に保持するためのレギュレータを設ける点、及び、インク充填処理ルーチンの内容が第2の実施形態と異なっている。したがって、以下の説明においては、第2の実施形態と相違する部分について主に説明するものとし、第2の実施形態と同一又は相当する部材構成には同一符号を付して重複説明を省略するものとする。
【0077】
図10に示すように、本実施形態のキャップ34の底壁部に貫通形成された連通口60には、検出用チューブ61の上端が接続され、該検出用チューブ61の下端には、キャップ34内の圧力(負圧NP)が一定圧以上になった際に駆動する負圧保持手段としてのレギュレータ70が設けられている。そして、図11に示すように、キャップ34内の負圧NPの大きさが上記開弁閾値KNPの大きさに達した場合には、レギュレータ70が駆動することにより、該レギュレータ70から空気をキャップ34内に流入させてキャップ34内の負圧NPが開弁閾値KNPに保持される。
【0078】
次に、本実施形態の制御装置50が実行するインク充填処理ルーチンについて図11に示すタイミングチャートに基づき以下説明する。
さて、制御装置50は、インクカートリッジ22がカートリッジホルダ21に装着されたことを契機にインク充填処理ルーチンを実行する。そして、このインク充填処理ルーチンにおいて、制御装置50は、上記ステップS20,S21,S22,S23,S24,S25に相当する処理を順次実行し、その後、吸引ポンプ37を駆動させることにより非沸騰クリーニングの実行を開始させる。そして、制御装置50は、吸引ポンプ37の駆動が開始してからの第5経過時間が予め設定された第5経過時間閾値KT5以上になった場合に、各チョークバルブ47を開弁させるべく加圧ポンプ28の駆動を開始させる。
【0079】
なお、第5経過時間閾値KT5は、吸引ポンプ37の駆動に基づきキャップ34内の負圧NPの大きさが開弁閾値KNPの大きさに達したことに起因して、レギュレータ70が駆動している状態で各チョークバルブ47を開弁させるように設定された時間である。また、第5経過時間閾値KT5は、上記第2経過時間閾値KT2よりも長めであって且つ第3経過時間閾値KT3よりも短めに予め設定される。
【0080】
そして、制御装置50は、吸引ポンプ37の駆動が開始してからの第3経過時間T3が第3経過時間閾値KT3以上になった場合に、加圧ポンプ28及び吸引ポンプ37の駆動を停止させて非沸騰クリーニングを終了させる。その後、制御装置50は、インク充填処理ルーチンを終了する。
【0081】
したがって、本実施形態では、上記第1及び第2の実施形態の効果(1)(5)に加え、さらに以下に示す効果をも得ることができる。
(6)非沸騰クリーニング時において、吸引ポンプ(吸引手段)37の駆動により各インク供給路(流体供給路)25におけるチョークバルブ(開閉弁)47よりも下流側(即ち、キャップ34内)が減圧されても、キャップ34内の負圧NPは、レギュレータ(負圧維持手段)70が駆動することにより開弁閾値KNPに維持される。そのため、キャップ34内の負圧NPが、各チョークバルブ47の開弁後において各インク供給路25内を流動するインク(流体)が沸騰状態になるような大きさになることはない。したがって、非沸騰クリーニング時に各チョークバルブ47を開弁させた場合に各インク供給路25内を流動するインクが沸騰し、微細気泡がインクから析出してしまうことを回避できる。
【0082】
なお、上記各実施形態は以下のような別の実施形態に変更してもよい。
・上記第1の実施形態において、通常クリーニングではなく、沸騰許容クリーニングを実行するようにしてもよい。
【0083】
・上記第2の実施形態において、沸騰許容クリーニングではなく、通常クリーニングを実行するようにしてもよい。
・上記各実施形態において、通常クリーニングや沸騰許容クリーニングを実行するのではなく、非沸騰クリーニングを複数回実行するようにしてもよい。
【0084】
・上記各実施形態では、非沸騰クリーニングは、吸引ポンプ37が予め設定された所定速度で駆動しているため、吸引ポンプ37の駆動が開始してからの第3経過時間T3が第3経過時間閾値KT3以上になった場合に停止するようになっている。しかし、非沸騰クリーニングは、吸引ポンプ37の駆動源となるモータ(図示略)の回転数を検出し、該検出した回転数が予め設定された所定回転数以上になった場合に停止するようにしてもよい。例えば駆動源としてステッピングモータを使用した場合には、該ステッピングモータに供給されるパルス電圧のステップ数をカウントし、該ステップ数が所定ステップ数になった場合に非沸騰クリーニングを停止させるようにしてもよい。
【0085】
・上記各実施形態において、各インク供給路25内における圧力変動によって開閉動作するチョークバルブ47の代わりに制御装置50からの制御指令に基づき開閉動作する開閉弁(例えば電磁弁)を設けてもよい。この場合、非沸騰クリーニングを実行する際には、各開閉弁を閉弁させた後に吸引ポンプ37を駆動させ、キャップ34内を減圧させる。そして、キャップ34内の負圧NPの大きさが開弁閾値KNPの大きさに達した時点で開閉弁を開弁動作させると共に加圧ポンプ28の駆動を開始させることにより、各インク供給路25内を記録ヘッド18側にインクを流動させ、記録ヘッド18内に供給されたインクをキャップ34内に排出させる。このように構成しても上記各実施形態と同等の効果を得ることができる。
【0086】
・また、制御装置50からの制御指令に基づき開閉動作する開閉弁をインク供給路25に設けた場合には、クリーニング時に加圧ポンプ28を駆動させなくてもよい。この場合、吸引ポンプ37が発揮する吸引力によってクリーニングが実行されることになる。
【0087】
・上記各実施形態において、インク充填処理ルーチンを、インクカートリッジ22をインクジェット式プリンタ11に初めて装着した場合(即ち、インクの初期充填時)にのみ実行するようにしてもよい。
【0088】
・上記各実施形態において、キャップ34は、その一部が記録ヘッド18に当接した状態で吸引ポンプ37が駆動した場合に、記録ヘッド18の各ノズル20からインクが吸引されるような構成であればよい。例えば、キャップ34は、その開口部が記録ヘッド18の側面に外嵌合する態様で当接可能な構成であってもよい。
【0089】
・上記各実施形態において、流体噴射装置を、用紙Pの搬送方向(前後方向)と交差する方向において記録ヘッド18が用紙Pの幅方向(左右方向)の長さに対応した全体形状をなす、いわゆるフルラインタイプのプリンタに具体化してもよい。
【0090】
・上記各実施形態では、流体噴射装置をインクジェット式プリンタ11に具体化したが、この限りではなく、インク以外の他の流体(液体や、機能材料の粒子が液体に分散又は混合されてなる液状体、ゲルのような流状体を含む)を噴射したり吐出したりする流体噴射装置に具体化することもできる。例えば、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ及び面発光ディスプレイの製造などに用いられる電極材や色材(画素材料)などの材料を分散または溶解のかたちで含む液状体を噴射する液状体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置、ゲル(例えば物理ゲル)などの流状体を噴射する流状体噴射装置であってもよい。そして、これらのうちいずれか一種の流体噴射装置に本発明を適用することができる。なお、本明細書において「流体」とは、気体のみからなる流体及び粉粒体(粒体、粉体を含む)のみからなる流体を含まない概念であり、流体には、例えば液体(無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)等を含む)、液状体、流状体などが含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】第1の実施形態におけるインクジェット式プリンタの概略平面図。
【図2】インクジェット式プリンタのインク供給システムを説明する模式図。
【図3】(a)はチョークバルブの開弁状態を示す概略断面図、(b)は、チョークバルブの閉弁状態を示す概略断面図。
【図4】電気的構成を示すブロック回路図。
【図5】第1の実施形態のインク充填処理ルーチンを説明するフローチャート。
【図6】第1の実施形態においてキャップ内の負圧の変化を説明するタイミングチャート。
【図7】第2の実施形態のキャップを示す概略断面図。
【図8】第2の実施形態のインク充填処理ルーチンを説明するフローチャート。
【図9】第2の実施形態においてキャップ内の負圧の変化を説明するタイミングチャート。
【図10】第3の実施形態のキャップを示す概略断面図。
【図11】第3の実施形態においてキャップ内の負圧の変化を説明するタイミングチャート。
【符号の説明】
【0092】
11…インクジェット式プリンタ(流体噴射装置)、18…記録ヘッド(流体噴射ヘッド)、20…ノズル、22…インクカートリッジ(流体貯留手段)、25…インク供給路(流体供給路)、34…キャップ(流体受容手段)、37…吸引ポンプ(吸引手段)、47…チョークバルブ(開閉弁)、50…制御装置(圧力検出手段、開閉弁制御手段)、52…ROM(記憶手段)、62…圧力センサ(圧力検出手段)、70…レギュレータ(負圧維持手段)、KNP…開弁閾値、KT2…第2経過時間閾値(開弁許可時間)、NP…負圧、T2…第2経過時間。
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体噴射装置、及び流体噴射装置のクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、記録ヘッド(流体噴射ヘッド)のノズルからターゲットに対してインク(流体)を噴射する流体噴射装置として、インクジェット式プリンタ(以下、単に「プリンタ」という。)が知られている。このようなプリンタでは、インクを貯留するインクカートリッジ(流体貯留手段)が着脱可能に装着され、このインクカートリッジからインク供給路(流体供給路)を介して供給されたインクを記録ヘッドが用紙(ターゲット)に噴射することにより印刷が実行されるようになっている。また、印刷時における記録ヘッドのインクの噴射不良を低減するために、こうしたプリンタでは、記録ヘッドのノズルから増粘したインクや気泡などを強制的に排出させる、いわゆるチョーククリーニング等のクリーニングが実行されるようになっている。
【0003】
このチョーククリーニングでは、インク供給路上に設けられたチョークバルブ(開閉弁)を閉弁し、記録ヘッドのノズル形成面側から吸引ポンプ(吸引手段)で吸引することにより記録ヘッド内に負圧を生じさせ、該記録ヘッド内に存在する気泡を膨張させる。そして、インクカートリッジ内を加圧させるための加圧ポンプを駆動させることにより、インク供給路上のチョークバルブを強制的に開弁し、インクカートリッジから記録ヘッド内にインクを一気に流入させる。その結果、記録ヘッドに形成された各ノズルから粘性の大きいインクや記録ヘッド内の膨張した気泡がインクと共に排出されるようになっていた(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開2006−205687号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のようなチョーククリーニングが実行された場合、該クリーニングの実行前にインク供給路のインク中に含まれていた気泡はインクと共に排出される。その一方で、チョーククリーニング時におけるインク供給路内の減圧によってインク内に溶解していた空気の一部が沸騰現象により析出して微細気泡がインク供給路のインク内に新たに発生してしまうことがあった。そして、この微細気泡がインク供給路のインク内に含まれている状態で記録ヘッドによるインク噴射が開始された場合には、微細気泡がノズルから噴射されることによるインクの噴射不良が発生するおそれがあった。すなわち、インクの噴射不良を抑制すべく実行されたはずのチョーククリーニングが失敗になってしまうおそれがあった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、クリーニングの成功率を向上させることができる流体噴射装置、及び流体噴射装置のクリーニング方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の流体噴射装置のクリーニング方法は、流体貯留手段から流体供給路を介して流体噴射ヘッド側へ導かれた流体を前記流体噴射ヘッドに形成されたノズルから吸引手段の駆動により吸引して排出させるに際し、前記流体供給路に設けられた開閉弁を閉弁した状態で前記流体供給路における前記開閉弁よりも下流側を減圧させた後、前記開閉弁を開弁させることにより、前記流体噴射ヘッドから流体を排出させる流体噴射装置のクリーニング方法であって、前記開閉弁を閉弁させた状態で前記吸引手段の駆動により前記流体供給路における前記開閉弁よりも下流側を減圧させる減圧ステップと、該減圧ステップにより前記流体供給路における前記開閉弁よりも下流側で発生した負圧の大きさが、前記開閉弁の開弁後において前記流体供給路内の流体が沸騰状態になる前の負圧の大きさとして予め設定された開弁閾値に達した場合に、前記開閉弁を開弁させて前記流体噴射ヘッドから流体を排出させる排出ステップとを有する非沸騰クリーニングを実行するようにした。
【0007】
この発明によれば、流体供給路における開閉弁よりも下流側の負圧が、開閉弁の開弁後において流体供給路内の流体が沸騰状態になるような大きさになる前に、開閉弁が開弁される。そのため、吸引手段の駆動に基づき流体を流体噴射ヘッドから排出させる非沸騰クリーニングを実行した場合に、流体供給路内を流動する流体が沸騰して気体が析出されることが回避され、その後の流体噴射ヘッドによる流体噴射時に流体の噴射不良を抑制できる。したがって、クリーニングの成功率を向上させることができる。
【0008】
本発明の流体噴射装置のクリーニング方法において、前記流体噴射装置には、前記開閉弁が閉弁した状態で前記吸引手段が駆動を開始してから前記流体供給路における前記開閉弁よりも下流側の負圧の大きさが前記開弁閾値に達した時点の経過時間を開弁許可時間として予め記憶する記憶手段が設けられており、前記排出ステップでは、前記減圧ステップの実行により前記流体供給路における前記開閉弁よりも下流側の減圧が開始されてからの経過時間が前記開弁許可時間に達した場合に、前記開閉弁を開弁させて前記流体噴射ヘッドから流体を排出させるようにした。
【0009】
この発明によれば、開閉弁が閉弁した状態で吸引手段が駆動を開始してからの経過時間が開弁許可時間に達した場合には、流体供給路における開閉弁よりも下流側の負圧の大きさが開弁閾値に達したと判断し、開閉弁を開弁させて流体噴射ヘッドから流体を排出させる。すなわち、流体供給路における開閉弁よりも下流側の負圧を検出するためのセンサなどを別途設けなくても的確なタイミングで開閉弁を開弁させることができるため、開閉弁を開弁させた場合に流体供給路内の流体が沸騰し、微細気泡が流体中から析出してしまうことを回避できる。
【0010】
本発明の流体噴射装置のクリーニング方法において、前記流体噴射装置には、前記流体供給路における前記開閉弁よりも下流側の負圧を検出する圧力検出手段が設けられており、前記排出ステップでは、前記減圧ステップの実行により前記圧力検出手段によって検出された負圧の大きさが前記開弁閾値に達した場合に、前記開閉弁を開弁させて前記流体噴射ヘッドから流体を排出させるようにした。
【0011】
この発明によれば、流体供給路における開閉弁よりも下流側の負圧を圧力検出手段によって検出し、該検出した負圧の大きさが開弁閾値に達した場合に開閉弁を開弁させて流体噴射ヘッドから流体を噴射させる。したがって、非沸騰クリーニング時には、流体供給路における開閉弁よりも下流側の負圧を実測して開閉弁を開弁させるタイミングが図られるため、開閉弁を開弁させた場合に流体供給路内の流体が沸騰し、微細気泡が流体から析出してしまうことを回避できる。
【0012】
本発明の流体噴射装置のクリーニング方法において、前記流体噴射装置には、前記流体供給路における前記開閉弁よりも下流側の負圧の大きさが前記開弁閾値に達した場合に、前記流体供給路における前記開閉弁よりも下流側の負圧の大きさを前記開弁閾値に維持する負圧維持手段が設けられており、前記排出ステップでは、前記負圧維持手段によって前記流体供給路における前記開閉弁よりも下流側の負圧の大きさが前記開弁閾値に維持されている状態で、前記開閉弁を開弁させて前記流体噴射ヘッドから流体を排出させるようにした。
【0013】
この発明によれば、吸引手段の駆動により流体供給路における開閉弁よりも下流側が減圧されても、流体供給路における開閉弁よりも下流側の負圧の大きさは、負圧維持手段が駆動することにより開弁閾値に維持される。そのため、非沸騰クリーニングの実行時において開閉弁を開弁させた場合に流体供給路内の流体が沸騰し、微細気泡が流体から析出してしまうことを回避できる。
【0014】
本発明の流体噴射装置のクリーニング方法において、前記開閉弁を閉弁させた状態で前記流体供給路における前記開閉弁よりも下流側を減圧させ、前記流体供給路における前記開閉弁よりも下流側の負圧が、前記流体供給路内の流体が沸騰するような大きさになった場合に、前記開閉弁を開弁させて前記流体噴射ヘッドから流体を排出させる沸騰許容クリーニングを実行し、該沸騰許容クリーニングの実行後に前記非沸騰クリーニングを実行するようにした。
【0015】
この発明によれば、クリーニング時に流体供給路内の流体の沸騰を許容する沸騰許容クリーニングが実行された後には、非沸騰クリーニングが実行される。そのため、沸騰許容クリーニング時において流体供給路内の流体が沸騰することにより発生した微細気泡は、非沸騰クリーニングによって流体噴射ヘッドから流体と共に排出される。
【0016】
本発明の流体噴射装置のクリーニング方法において、前記開閉弁の開弁状態を維持した状態で前記吸引手段を駆動させることにより前記流体噴射ヘッドから流体を排出させる通常クリーニングを実行し、該通常クリーニングの実行後に前記非沸騰クリーニングを実行するようにした。
【0017】
この発明によれば、通常クリーニングでは、非沸騰クリーニングに比して流体供給路内の流体を流体噴射ヘッド側から吸引する吸引力が弱いため、クリーニング前から流体供給路内に存在している気泡を確実に流体噴射ヘッドから排出できないおそれがある。そこで、通常クリーニングを実行した後に非沸騰クリーニングを実行することにより、クリーニング前から流体供給路内に存在していた気泡が確実に流体噴射ヘッドから流体と共に排出される。
【0018】
本発明の流体噴射装置は、流体を貯留する流体貯留手段と、該流体貯留手段から流体供給路を介して供給された流体をノズルから噴射する流体噴射ヘッドと、前記流体供給路の途中に設けられる開閉弁と、前記ノズルから流体を吸引可能な状態で前記流体噴射ヘッドに当接する流体受容手段と、該流体受容手段を前記流体噴射ヘッドに当接させた状態で吸引力を発揮することにより前記流体噴射ヘッドの前記ノズルから流体を吸引して前記流体受容手段内に排出させる吸引手段とを備え、前記開閉弁を閉弁させた状態で前記流体供給路における前記開閉弁よりも下流側を前記吸引手段によって減圧させ、その後、前記開閉弁を開弁させることにより、その流体を前記流体噴射ヘッドから前記流体受容手段内に排出させる流体噴射装置において、前記開閉弁が閉弁した状態で前記吸引手段による前記流体供給路における前記開閉弁よりも下流側の減圧が開始されてから前記流体供給路における前記開閉弁よりも下流側の負圧の大きさが、前記開閉弁の開弁後において前記流体供給路内の流体が沸騰状態になる前の負圧の大きさとして予め設定された開弁閾値を超えるまでの経過時間を開弁許可時間として予め記憶する記憶手段と、前記吸引手段による前記流体供給路における前記開閉弁よりも下流側の減圧が開始されてからの経過時間が前記開弁許可時間に達した場合に、前記開閉弁を開弁させる開閉弁制御手段とを更に備えた。
【0019】
この発明によれば、開閉弁が閉弁した状態で吸引手段が駆動を開始してからの経過時間が開弁許可時間に達した場合には、流体供給路における開閉弁よりも下流側の負圧の大きさが開弁閾値に達したと判断し、開閉弁を開弁させて流体噴射ヘッドから流体を噴射させる。すなわち、流体供給路における開閉弁よりも下流側の負圧を検出するためのセンサなどを別途設けなくても的確なタイミングで開閉弁を開弁させることができるため、開閉弁を開弁させた場合に流体供給路内の流体が沸騰し、微細気泡が流体から析出してしまうことを回避できる。したがって、クリーニングの成功率を向上させることができる。
【0020】
本発明の流体噴射装置は、流体を貯留する流体貯留手段と、該流体貯留手段から流体供給路を介して供給された流体をノズルから噴射する流体噴射ヘッドと、前記流体供給路の途中に設けられる開閉弁と、前記ノズルから流体を吸引可能な状態で前記流体噴射ヘッドに当接する流体受容手段と、該流体受容手段を前記流体噴射ヘッドに当接させた状態で吸引力を発揮することにより前記流体噴射ヘッドの前記ノズルから流体を吸引して前記流体受容手段内に排出させる吸引手段とを備え、前記開閉弁を閉弁させた状態で前記流体供給路における前記開閉弁よりも下流側を前記吸引手段によって減圧させ、その後、前記開閉弁を開弁させることにより、その流体を前記流体噴射ヘッドから前記流体受容手段内に排出させる流体噴射装置において、前記流体供給路における前記開閉弁よりも下流側の負圧を検出する圧力検出手段と、該圧力検出手段によって検出された負圧の大きさが、前記開閉弁の開弁後において前記流体供給路内の流体が沸騰状態になる前の負圧の大きさとして予め設定された開弁閾値に達した場合に、前記開閉弁を開弁させる開閉弁制御手段とを更に備えた。
【0021】
この発明によれば、流体供給路における開閉弁よりも下流側の負圧を圧力検出手段によって検出し、該検出した負圧の大きさが開弁閾値に達した場合に開閉弁を開弁させて流体噴射ヘッドから流体を噴射させる。そのため、流体供給路における開閉弁よりも下流側の負圧を実測して開閉弁を開弁させるタイミングを図るため、開閉弁を開弁させた場合に流体供給路内の流体が沸騰し、微細気泡が流体から析出してしまうことを回避できる。したがって、クリーニングの成功率を向上させることができる。
【0022】
本発明の流体噴射装置は、流体を貯留する流体貯留手段と、該流体貯留手段から流体供給路を介して供給された流体をノズルから噴射する流体噴射ヘッドと、前記流体供給路の途中に設けられる開閉弁と、前記ノズルから流体を吸引可能な状態で前記流体噴射ヘッドに当接する流体受容手段と、該流体受容手段を前記流体噴射ヘッドに当接させた状態で吸引力を発揮することにより前記流体噴射ヘッドの前記ノズルから流体を吸引して前記流体受容手段内に排出させる吸引手段とを備え、前記開閉弁を閉弁させた状態で前記流体供給路における前記開閉弁よりも下流側を前記吸引手段によって減圧させ、その後、前記開閉弁を開弁させることにより、その流体を前記流体噴射ヘッドから前記流体受容手段内に排出させる流体噴射装置において、前記流体供給路における前記開閉弁よりも下流側の負圧の大きさが、前記開閉弁の開弁後において前記流体供給路内の流体が沸騰状態になる前の負圧の大きさとして予め設定された開弁閾値に達した場合に、前記流体供給路における前記開閉弁よりも下流側の負圧の大きさを前記開弁閾値に維持する負圧維持手段と、該負圧維持手段によって前記流体供給路における前記開閉弁よりも下流側の負圧の大きさが前記開弁閾値に維持されている場合に、前記開閉弁を開弁させる開閉弁制御手段とを更に備えた。
【0023】
この発明によれば、吸引手段の駆動により流体供給路における開閉弁よりも下流側が減圧されても、流体供給路における開閉弁よりも下流側の負圧の大きさは、負圧維持手段が駆動することにより開弁閾値に維持される。そのため、開閉弁を開弁させた場合に流体供給路内の流体が沸騰し、微細気泡が流体から析出してしまうことを回避できる。したがって、クリーニングの成功率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
(第1の実施形態)
以下、本発明の流体噴射装置、及び流体噴射装置のクリーニング方法を具体化した第1の実施形態を図1〜図6に基づいて説明する。なお、以下における本明細書中の説明において、「前後方向」、「左右方向」、「上下方向」をいう場合は、図1に矢印で示す前後方向(副走査方向)及び左右方向(主走査方向)、並びに上下方向(重力方向)をそれぞれ示すものとする。
【0025】
図1に示すように、液体噴射装置としてのインクジェット式プリンタ11は、平面視矩形状をなすフレーム12を備えている。このフレーム12内には、プラテン13が左右方向に沿って延びるように架設され、該プラテン13上には、図示しない紙送り機構によりターゲットとしての用紙Pが前後方向に沿って給送されるようになっている。また、フレーム12内には、プラテン13の長手方向(左右方向)と平行に棒状のガイド軸14が架設されている。
【0026】
このガイド軸14には、キャリッジ15が、該ガイド軸14の軸線方向(左右方向)への往復移動可能な状態で支持されている。キャリッジ15は、フレーム12の後壁内面に設けられた一対のプーリ16a間に張設された無端状のタイミングベルト16を介してフレーム12の背面に設けられたキャリッジモータ17に連結されている。
【0027】
キャリッジ15のプラテン13に対向する下面側には、流体噴射ヘッドとしての記録ヘッド18が搭載されている。また、キャリッジ15上には、一時貯留した流体としてのインクを記録ヘッド18に供給する複数(本実施形態では4つ)のバルブユニット19が設けられている。また、記録ヘッド18の下面は、図2に示すように、複数のノズル20(図2では1つのみ図示)が開口するノズル形成面18aとされている。そして、各ノズル20からプラテン13上に給送された用紙Pにインク滴が噴射されることにより、印刷が行われるようになっている。
【0028】
フレーム12内の右端部には、図1に示すように、カートリッジホルダ21が設けられ、該カートリッジホルダ21には、流体貯留手段としてのインクカートリッジ22が着脱可能に複数個(本実施形態では4個)装着されている。各インクカートリッジ22は、図2に示すように、矩形箱状のケース23をそれぞれ備えている。これら各ケース23内には、可撓性のフィルムからなる袋状のインクパック24がそれぞれ収容されており、該各インクパック24内には、インクカートリッジ22毎に色の異なるインクが充填されている。そして、各インクカートリッジ22は、カートリッジホルダ21に装着された場合には、インク供給路(液体供給路)25を構成するインクチューブ25Aの上流端に接続されることにより、該インクチューブ25Aを介してキャリッジ15上の各バルブユニット19とそれぞれ接続されるようになっている。
【0029】
また、図1及び図2に示すように、キャリッジ15上には、インクチューブ25A毎に対応して、該インクチューブ25A内をインクカートリッジ22とバルブユニット19との間の途中位置において開閉する開閉弁としてのチョークバルブ47がそれぞれ設けられている。これらのチョークバルブ47は、インクチューブ25A内におけるチョークバルブ47よりも上流側のインクの圧力と、インクチューブ25A内におけるチョークバルブ47よりも下流側のインクの圧力との差圧によって開閉されるようになっている。
【0030】
また、図1に示すように、フレーム12の右端部においてカートリッジホルダ21の上側には、加圧ユニット26が搭載されている。この加圧ユニット26は、空気供給路27を介して加圧気体としての加圧空気をインクカートリッジ22内に圧送する装置であって、加圧ポンプ28、空気圧センサ29及び大気開放弁30を備えている。なお、空気圧センサ29は、空気供給路27内を流れる加圧空気の圧力を検出するためのセンサである。
【0031】
空気供給路27は、大気開放弁30の下流側に配設された分配器31を境にインクカートリッジ22の個数と同数(本実施形態では4つ)に分岐されている。そして、分岐された各空気供給路27は、それぞれの先端(下流端)が各々対応するインクカートリッジ22に接続され、そのインクカートリッジ22のケース23内に連通している。したがって、加圧ユニット26の加圧ポンプ28が駆動された場合には、加圧ポンプ28から圧送された加圧空気が空気供給路27を介して各インクカートリッジ22のケース23内にそれぞれ導入されるようになっている。そして、各ケース23内に圧送された加圧空気による加圧力(即ち、空気圧)によって各インクパック24が押し潰されて、該各インクパック24内のインクが各インク供給路25(インクチューブ25A)を介して記録ヘッド18側にそれぞれ圧送されるようになっている。
【0032】
図2に示すように、インクカートリッジ22のケース23内に備えられた各インクパック24は、各インクチューブ25A内にインクを導出可能になっている。また、ケース23とインクパック24との間の空間は圧力室32となっており、該圧力室32内には、加圧ポンプ28から空気供給路27を介して圧送された加圧空気が導入されるようになっている。
【0033】
図1に示すように、フレーム12内の右端部寄り位置であって、カートリッジホルダ21とプラテン13との間には、記録ヘッド18の退避位置となるホームポジションが設けられている。そして、このホームポジションの下方位置には、クリーニングなどの各種メンテナンスを実行するためのメンテナンスユニット33が配設されている。このメンテナンスユニット33は、図2に示すように、記録ヘッド18のノズル形成面18a(具体的には、各ノズル20の開口(「ノズル開口」ともいう。)が形成された領域)に各ノズル20の開口を囲うようにして当接可能な上側が開口した有底四角箱状をなす合成樹脂製のキャップ(流体受容手段)34を備えている。
【0034】
このキャップ34は、図示しない昇降装置の駆動によって上下動可能とされており、キャリッジ15をホームポジションに移動させた状態で、キャップ34を上昇させることで、キャップ34は、その上端が記録ヘッド18のノズル形成面18aに密着し、各ノズル20の開口を囲んだ状態となって記録ヘッド18に当接するようになっている。なお、このように上端をノズル形成面18aに密着させるようにしてキャップ34が記録ヘッド18に当接した状態のことを以下では「当接状態」ともいう。
【0035】
キャップ34の底壁部には排出口35が貫通形成され、該排出口35には排出チューブ36が接続されている。この排出チューブ36の中間部には、吸引手段としての吸引ポンプ37(例えばチューブポンプ)が設けられている。また、排出チューブ36の先端(下流端)は廃インクタンク38に接続されている。そして、メンテナンスユニット33は、吸引ポンプ37が駆動された場合には、キャリッジ15上の各チョークバルブ47を利用する、いわゆるチョーククリーニングを実行可能とされている。
【0036】
各チョークバルブ47は、図3(a)(b)に示すように、合成樹脂からなる基材40をそれぞれ備え、該各基材40の一側面(図3(a)(b)では上面)には凹部41がそれぞれ形成されている。これら各凹部41の底面には、基材40に貫通形成された導入路42がそれぞれ開口しており、該各導入路42は、各インクカートリッジ22に接続された各インクチューブ25Aとそれぞれ連通している。また、各凹部41の底面には、突部43がそれぞれ形成され、該各突部43の上面には、吐出路44がそれぞれ開口している。そして、これら各吐出路44は、基材40にそれぞれ貫通形成され、記録ヘッド18側とそれぞれ連通している。
【0037】
また、各基材40の一側面には、可撓性を有するフィルム45が凹部41側に弛みを持たせた状態でそれぞれ固着されており、各フィルム45により各凹部41がそれぞれ封止されている。そして、各凹部41の内面と各フィルム45とで密閉状態に囲まれた圧力室46がそれぞれ形成されている。そのため、インクチューブ25Aからインクが各バルブユニット19にそれぞれ供給された場合、インクは導入路42を介して各圧力室46内にそれぞれに流入するようになっている。
【0038】
各圧力室46内に流入したインク量が増加した場合には、そのインクの圧力を受けて各フィルム45が、図3(a)に示すように、各突部43からそれぞれ離間される。そして、各圧力室46内のインク量がさらに増加してインクから受ける圧力が大きくなった場合、各フィルム45はそれぞれ一方側(図3(a)(b)では上方側)にそれぞれ膨らんだ状態になる。したがって、本実施形態では、これら凹部41、突部43及びフィルム45等により、開閉弁としてのチョークバルブ47が構成されている。また、導入路42、凹部41及び吐出路44が上記インクチューブ25Aと共にインク供給路25を構成している。
【0039】
次に、チョーククリーニングについて図2及び図3に基づき以下説明する。
さて、チョーククリーニングの際には、図2に示すように、キャップ34を上昇させて記録ヘッド18に当接させることによって、記録ヘッド18のノズル形成面18aとキャップ34の内面とによりキャップ内空間が形成される。この状態で吸引ポンプ37を駆動させると、キャップ内空間の空気及びインクが排出チューブ36を介して下流側の廃インクタンク38内に吸引される。その結果、キャップ内空間は大気圧に対して負圧状態になり、この負圧が記録ヘッド18の各ノズル20内に作用して、これら各ノズル20から記録ヘッド18内のインクがキャップ34内に排出される。なお、以降の記載においては、大気圧に対する負圧のことを単に「負圧」というものとする。
【0040】
さらに吸引ポンプ37が駆動されると、記録ヘッド18内だけでなく各バルブユニット19及びチョークバルブ47内のインクも吸引される。その結果、各チョークバルブ47における圧力室46内のインクが各吐出路44から下流側にそれぞれ排出されることにより、各圧力室46内のインクがそれぞれ減少する。吸引ポンプ37の駆動が継続されると、各圧力室46内のインクの減少にともなって各フィルム45が各突部43側(図3(a)(b)では下側)にそれぞれ変位し、図3(b)に示すように、各フィルム45が各突部43に当接して各吐出路44がそれぞれ閉塞される。そして、吸引ポンプ37の駆動をさらに継続させると、各吐出路44の入口よりも下流側がさらに減圧される。
【0041】
そして、各吐出路44の入口よりも下流側の負圧が蓄積されると、加圧ポンプ28が駆動される。すると、各インクカートリッジ22から各チョークバルブ47内にインクがそれぞれ供給され、各圧力室46内にインクがそれぞれ導入される。その後、各圧力室46に送出されたインク量の増加にともない、該インクの圧力が前記負圧よりも大きくなると、各フィルム45が各突部43と離間する方向(図3(b)では上方)に変位され、各吐出路44がそれぞれ開放される。
【0042】
その結果、負圧が蓄積された各吐出路44内に一気にインクがそれぞれ流れ込み、各インクチューブ25Aや各圧力室46よりも下流側に滞留する増粘したインク及び気泡等が流速の高められたインクとともに記録ヘッド18の各ノズル20から強制的に排出される。このようにして、いわゆるチョーククリーニングが行われる。なお、記録ヘッド18の各ノズル20から排出されたインクは、キャップ34及び排出チューブ36を介して廃インクタンク38に排出される。
【0043】
次に、上記インクジェット式プリンタ11の電気的構成について図3に基づき以下説明する。
図4に示すように、インクジェット式プリンタ11は、該プリンタ11全体を制御する制御装置50を備えている。この制御装置50の入力側インターフェースには、加圧ユニット26の空気圧センサ29などが電気的に接続されている。一方、制御装置50の出力側インターフェースには、図示しない紙送りモータ、キャリッジモータ17、記録ヘッド18、加圧ポンプ28及び吸引ポンプ37などが電気的に接続されている。そして、制御装置50は、空気圧センサ29等からの入力信号などに応じて、紙送りモータ、キャリッジモータ17、記録ヘッド18、加圧ポンプ28及び吸引ポンプ37などの駆動を各別に制御するようになっている。
【0044】
また、制御装置50内には、CPU51、ROM52、RAM53、タイマ54、及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)55などが設けられている。ROM52には、インクジェット式プリンタ11を制御するための各種の制御プログラム(後述するインク充填処理等)及び各種閾値(後述する第1経過時間閾値、第2経過時間閾値、第3経過時間閾値等)などが予め記憶されている。また、RAM53には、インクジェット式プリンタ11の駆動中に適宜書き換えられる各種の情報が記憶されるようになっている。また、タイマ54は、クロック回路からのクロック信号等に基づき計数処理を行うカウンタにより構成されている。
【0045】
次に、本実施形態の制御装置50が実行する各制御処理ルーチンのうち、インクカートリッジ22がインクジェット式プリンタ11に装着された場合に実行されるインク充填処理ルーチンについて図5に示すフローチャート及び図6に示すタイミングチャートに基づき以下説明する。
【0046】
さて、制御装置50は、インクカートリッジ22がカートリッジホルダ21に装着されたことを契機にインク充填処理ルーチンを実行する。そして、このインク充填処理ルーチンにおいて、制御装置50は、通常クリーニングを開始する(ステップS10)。具体的には、制御装置50は、ホームポジションに位置する記録ヘッド18にキャップ34を昇降装置の駆動によって当接させ、加圧ポンプ28の駆動を開始させた後に吸引ポンプ37の駆動を開始させる。そのため、通常クリーニングでは、該クリーニングの開始と同時に加圧ポンプ28の駆動によって各チョークバルブ47内にインクが各インクチューブ25Aを介してそれぞれ流入するため、各チョークバルブ47の開弁状態がそれぞれ維持される。
【0047】
そして、制御装置50は、ステップS10の処理が実行されてからの第1経過時間T1をタイマ54が計測している時間から求め、該第1経過時間T1が予め設定された第1経過時間閾値KT1以上であるか否かを判定する(ステップS11)。この第1経過時間閾値KT1は、各インク供給路25内にインクが全く無い状態であっても通常クリーニングの実行により、各インクカートリッジ22内のインクが各インク供給路25を介して記録ヘッド18の各ノズル20内に到達してキャップ34内に排出されるようになるまでにかかる時間であって、実験やシミュレーションなどによって予め設定される。
【0048】
ステップS11の判定結果が否定判定(T1<KT1)である場合、制御装置50は、ステップS11の判定結果が肯定判定になるまで該ステップS11の判定処理を繰り返し実行する。一方、ステップS11の判定結果が肯定判定(T1≧KT1)である場合、制御装置50は、加圧ポンプ28及び吸引ポンプ37の駆動を共に停止させることにより通常クリーニングを停止させる(ステップS12)。
【0049】
続いて、制御装置50は、記録ヘッド18にキャップ34を引き続き当接させた状態で吸引ポンプ37の駆動を開始させることにより、チョーククリーニング(詳しくは、後述する非沸騰クリーニング)の実行を開始させる(ステップS13)。なお、非沸騰クリーニング時において、吸引ポンプ37の駆動速度は予め設定された所定速度で駆動するようになっている。
【0050】
そして、制御装置50は、ステップS13の処理が実行されてからの第2経過時間T2をタイマ54が計測している時間から求め、該第2経過時間T2が予め設定された第2経過時間閾値KT2に達したか否かを判定する(ステップS14)。
【0051】
ここで、キャップ34を記録ヘッド18に当接させた状態で吸引ポンプ37を駆動させると、加圧ポンプ28の駆動が停止しているため、キャップ34内に連通する各チョークバルブ47の圧力室46がそれぞれ減圧されることにより、各チョークバルブ47がそれぞれ閉弁状態になる。さらに吸引ポンプ37が駆動すると、図6に示すように、キャップ34内の減圧に伴い、各インク供給路25内においてチョークバルブ47よりも下流側(吐出路44)が減圧されていく。そして、キャップ34内(又は吐出路44内)の負圧NPが沸騰閾値NPng(例えば「−90KPa」)を超えてしまうと、この後に各チョークバルブ47を開弁させた場合に、各インク供給路25内を記録ヘッド18側に流動するインクが沸騰状態になるおそれがある。このように沸騰状態になったインクからは、微細気泡が析出してしまうおそれがある。
【0052】
そこで、本実施形態では、ステップS13の処理によりキャップ34内に負圧NPが発生しても、その後の各チョークバルブ47の開弁時にインクが沸騰状態にならないような大きさの負圧値に対応する開弁閾値KNP(例えば「−80KPa」)を実験やシミュレーションなどによって予め検出しておく。そして、ステップS13の処理の実行により吸引ポンプ37の駆動が開始してからキャップ34内の負圧NPの大きさが開弁閾値KNPの大きさに到達する時点の時間を計測し、該計測した時間が、第2経過時間閾値(開弁許可時間)KT2としてROM52に設定記憶されている。したがって、本実施形態では、ROM52が、記憶手段としても記憶する。
【0053】
そして、ステップS14の判定結果が否定判定(T2<KT2)である場合、制御装置50は、ステップS14の判定結果が肯定判定になるまで該ステップS14の判定処理を繰り返し実行する。一方、ステップS14の判定結果が肯定判定(T2≧KT2)である場合、制御装置50は、各チョークバルブ47を開弁させるべく加圧ポンプ28の駆動を開始させる(ステップS15)。したがって、本実施形態では、制御装置50が、開弁制御手段として機能する。
【0054】
続いて、制御装置50は、ステップS15の処理が実行されてからの第3経過時間T3をタイマ54が計測している時間から求め、該第3経過時間T3が第2経過時間閾値KT2よりも長めに設定された第3経過時間閾値KT3以上になったか否かを判定する(ステップS16)。この第3経過時間閾値KT3は、各チョークバルブ47を開弁させてインクを記録ヘッド18の各ノズル20からキャップ34内に排出させる期間を設定するための時間であって、実験やシミュレーションなどによって予め設定される。
【0055】
ステップS16の判定結果が否定判定(T3<KT3)である場合、制御装置50は、ステップS16の判定結果が肯定判定になるまで該ステップS16の判定処理を繰り返し実行する。一方、ステップS16の判定結果が肯定判定(T3≧KT3)である場合、制御装置50は、加圧ポンプ28及び吸引ポンプ37の駆動を共に停止させ、非沸騰クリーニングを停止させる(ステップS17)。その後、制御装置50は、インク充填処理ルーチンを終了する。
【0056】
すなわち、本実施形態のインク充填処理ルーチンでは、通常クリーニングの実行後には、各インク供給路25内を流動するインクの非沸騰状態が維持される非沸騰クリーニング(ステップS13,S14,S15,S16,S17の各処理が相当)が実行される。そして、この非沸騰クリーニングにおいて、ステップS13,S14が、各インク供給路25におけるチョークバルブ47よりも下流側(即ち、吐出路44)をそれぞれ減圧させる減圧ステップに相当する。また、ステップS15,S16が、キャップ34内の負圧NPが沸騰閾値NPngに到達する前に各チョークバルブ47を開弁させることにより、記録ヘッド18の各ノズル20からインクをキャップ34内に排出させる排出ステップに相当する。
【0057】
次に、本実施形態のインクジェット式プリンタ11にインクカートリッジ22が装着された場合の作用について以下説明する。
さて、各インクカートリッジ22がカートリッジホルダ21に装着されると、キャップ34が記録ヘッド18に当接した状態で加圧ポンプ28及び吸引ポンプ37が駆動する通常クリーニングが実行される。すると、各インクカートリッジ22内のインクは、各インクチューブ25Aを介して各チョークバルブ47内に流入して記録ヘッド18の各ノズル20内に到達する。そして、記録ヘッド18の各ノズル20からインクがキャップ34内に排出される。
【0058】
この際、吸引ポンプ37の駆動によりキャップ34内に発生する負圧NPは、「−60KPa」程度である。そのため、記録ヘッド18の各ノズル20内は、インクが十分に満たされた状態になるものの、各インク供給路25内(特に構成が複雑になっている各チョークバルブ47やバルブユニット19内)には、インクが十分に満たされずに気泡が残っている場合がある。
【0059】
そこで、本実施形態では、通常クリーニングの実行後に、該通常クリーニングよりも強力な吸引力でもって記録ヘッド18の各ノズル20からインクをキャップ34内に排出させる非沸騰クリーニングが実行される。この非沸騰クリーニングでは、まず吸引ポンプ37のみが駆動することにより、キャップ34内に負圧NPが発生し、この負圧NPにより記録ヘッド18の各ノズル20からインクがキャップ34内に排出される。この際、加圧ポンプ28は駆動していないため、各インク供給路25においてチョークバルブ47よりも下流側が負圧状態になり、その結果、各チョークバルブ47がそれぞれ閉弁状態になる。
【0060】
このように各チョークバルブ47が閉弁した状態でさらに吸引ポンプ37が駆動すると、キャップ34内がさらに減圧される。そして、非沸騰クリーニングの実行が開始(即ち、吸引ポンプ37の駆動が開始)されてからの第2経過時間T2が第2経過時間閾値KT2に達すると、キャップ34内の負圧NPの大きさが開弁閾値KNPの大きさに達したと判断されて加圧ポンプ28が駆動し始める。
【0061】
すると、各チョークバルブ47内には、各インクカートリッジ22から各インクチューブ25Aを介してインクが流入し、そのインクの圧力によって各チョークバルブ47がそれぞれ開弁する。その結果、各インクチューブ25A内を流動してきたインクは、各チョークバルブ47内及びバルブユニット19内を介して記録ヘッド18に供給され、該記録ヘッド18の各ノズル20から排出される。この際、非沸騰クリーニング時における各インク供給路25内のインクの流速は、通常クリーニング時におけるインクの流速よりも速くなる。そのため、通常クリーニング時では各インク供給路25内から排出しきれなかった気泡が、インクと共に記録ヘッド18の各ノズル20からインクと共に排出される。しかも、キャップ34内の負圧NPの大きさが沸騰閾値NPngの大きさを超えることはないため、非沸騰クリーニング時に各インク供給路25内を流動するインクが沸騰して微細気泡が新たに析出してしまうことはない。
【0062】
したがって、本実施形態では、以下に示す効果を得ることができる。
(1)非沸騰クリーニング時には、各インク供給路(流体供給路)25におけるチョークバルブ(開閉弁)47よりも下流側の負圧NPが、チョークバルブ47の開弁後においてインク供給路25内のインク(流体)が沸騰状態になるような大きさになる前に、各チョークバルブ47がそれぞれ開弁される。そのため、各インク供給路25内をインクカートリッジ(流体貯留手段)22側から記録ヘッド(流体噴射ヘッド)18に向けて流動するインクの沸騰が回避される。すなわち、非沸騰クリーニングを実行した場合に、各インク供給路25内を流動するインクが沸騰して気体が析出されることが回避され、その後の印刷時におけるインクの噴射不良の発生が抑制される。したがって、クリーニングの成功率を向上させることができる。
【0063】
(2)本実施形態では、吸引ポンプ(吸引手段)37の駆動が開始されてからキャップ(流体受容手段)34内の負圧NPが開弁閾値KNPに達するまでの時間が第2経過時間閾値(開弁許可時間)KT2として予め設定されている。そのため、非沸騰クリーニング時には、吸引ポンプ37の駆動が開始してからの第2経過時間T2が第2経過時間閾値KT2に達した場合、キャップ34内の負圧NPの大きさが開弁閾値KNPに達したと判断される。そして、各チョークバルブ(開閉弁)47をそれぞれ開弁させて記録ヘッド(流体噴射ヘッド)18の各ノズル20からインク(流体)を排出させる。すなわち、キャップ34内の負圧NPを検出するためのセンサなどを別途設けなくても的確なタイミングで各チョークバルブ47を開弁させることができるため、各チョークバルブ47を開弁させた場合に各インク供給路25内を流動するインクが沸騰し、微細気泡がインク中から析出してしまうことを回避できる。
【0064】
(3)通常クリーニングでは、キャップ(流体受容手段)34内に発生させる負圧NPの大きさが非沸騰クリーニング時の大きさに比して小さいため、各インク供給路(流体供給路)25内から完全に気泡を記録ヘッド(流体噴射ヘッド)18の各ノズル20からインクと共に排出できないおそれがある。そこで、本実施形態では、インクカートリッジ22の装着時における通常クリーニングの実行後には、非沸騰クリーニングが実行される。そのため、非沸騰クリーニングの実行前に各インク供給路25内のインク中に含まれていた気泡を非沸騰クリーニングの実行によって確実に記録ヘッド18の各ノズル20から排出することができる。
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態を図7〜図9に従って説明する。なお、第2の実施形態は、キャップ34内の負圧を検出するセンサを設ける点、及び、インク充填処理ルーチンの内容が第1の実施形態と異なっている。したがって、以下の説明においては、第1の実施形態と相違する部分について主に説明するものとし、第1の実施形態と同一又は相当する部材構成には同一符号を付して重複説明を省略するものとする。
【0065】
図7に示すように、本実施形態のキャップ34の底壁部には、キャップ34内と外部とを連通させる連通口60が排出口35とは別に貫通形成され、連通口60には検出用チューブ61の上端が接続されている。そして、検出用チューブ61の下端には、キャップ34内の圧力(負圧NP)を検出するための圧力センサ62が設けられている。この圧力センサ62は制御装置50に電気的に接続されており、該制御装置50は、圧力センサ62から入力した信号の大きさに基づきキャップ34内の負圧NPを検出するようになっている。したがって、本実施形態では、圧力センサ62及び制御装置50により、圧力検出手段が構成されている。
【0066】
次に、本実施形態の制御装置50が実行するインク充填処理ルーチンについて図8に示すフローチャート及び図9に示すタイミングチャートに基づき以下説明する。
さて、制御装置50は、インクカートリッジ22がカートリッジホルダ21に装着されたことを契機にインク充填処理ルーチンを実行する。そして、このインク充填処理ルーチンにおいて、制御装置50は、クリーニング回数Kを「0(零)」にリセットする(ステップS20)。このクリーニング回数Kは、インク充填処理ルーチンの実行時に後述する沸騰許容クリーニングが連続して実行された回数を示すものである。
【0067】
続いて、制御装置50は、チョーククリーニングの一種である沸騰許容クリーニングを実行する(ステップS21)。具体的には、制御装置50は、ホームポジションに位置する記録ヘッド18にキャップ34を昇降装置の駆動によって当接させた状態で吸引ポンプ37の駆動を開始させる。そして、制御装置50は、吸引ポンプ37の駆動が開始してからの経過時間をタイマ54が計測している時間から求め、その経過時間が予め設定された沸騰許容時間Tng(図9参照)に達したか否かを判定する。この沸騰許容時間Tngは、図9に示すように、吸引ポンプ37の駆動に基づきキャップ34内の負圧NPの大きさが沸騰閾値NPngの大きさに達した時点の時間であって、実験やシミュレーションなどによって予め設定される。そして、吸引ポンプ37の駆動が開始してからの経過時間が沸騰許容時間Tngに達した場合、制御装置50は、加圧ポンプ28を駆動させる。
【0068】
続いて、制御装置50は、吸引ポンプ37の駆動が開始してからの第4経過時間T4をタイマ54が計測している時間から求め、その第4経過時間T4が沸騰許容時間Tngよりも長めに設定された第4経過時間閾値KT4以上になったか否かを判定する(ステップS22)。この第4経過時間閾値KT4は、沸騰許容クリーニングの実行時間を設定する時間であって、実験やシミュレーションなどによって予め設定される。ステップS22の判定結果が否定判定(T4<KT4)である場合、制御装置50は、ステップS22の判定結果が肯定判定になるまで該ステップS22の判定処理を繰り返し実行する。
【0069】
一方、ステップS22の判定結果が肯定判定(T4≧KT4)である場合、制御装置50は、加圧ポンプ28及び吸引ポンプ37の駆動を共に停止させることにより沸騰許容クリーニングを停止させる(ステップS23)。そして、制御装置50は、クリーニング回数Kを「1」だけインクリメントする(ステップS24)。続いて、制御装置50は、ステップS24にてインクリメントされたクリーニング回数Kが予め設定された所定回数KK(例えば「3」)になったか否かを判定する(ステップS25)。
【0070】
このステップS25の判定結果が否定判定(K<KK)である場合、制御装置50は、その処理を前述したステップS21に移行する。すなわち、本実施形態では、インクカートリッジ22がカートリッジホルダ21に装着された場合、沸騰許容クリーニングが所定回数KKだけ連続して実行される。一方、ステップS25の判定結果が肯定判定(K=KK)である場合、制御装置50は、記録ヘッド18にキャップ34を引き続き当接させた状態で吸引ポンプ37の駆動を開始させることにより、非沸騰クリーニングの実行を開始させる(ステップS26)。
【0071】
続いて、制御装置50は、圧力センサ62から入力した信号に基づきキャップ34内の負圧NPを検出し、該負圧NPが上記開弁閾値KNP以下であるか否かを判定する(ステップS27)。この判定結果が否定判定(NP>KNP)である場合、制御装置50は、キャップ34内を未だ減圧させる必要があると判断し、ステップS27の判定結果が肯定判定になるまで該ステップS27の判定処理を繰り返し実行する。したがって、本実施形態では、ステップS26,S27が、減圧ステップに相当する。
【0072】
一方、ステップS27の判定結果が肯定判定(NP≦KNP)である場合、制御装置50は、各チョークバルブ47を開弁させるべく加圧ポンプ28の駆動を開始させる(ステップS28)。すなわち、本実施形態では、図9に示すように、非沸騰クリーニングの実行時には、キャップ34内(即ち、各インク供給路25におけるチョークバルブ47よりも下流側)の負圧NPを実測し、その負圧NPの大きさが開弁閾値KNPの大きさに達した場合に、各チョークバルブ47を開弁させる。続いて、制御装置50は、上記ステップS16,S17に相当するステップS29,S30の各処理を順次実行し、インク充填処理ルーチンを終了する。したがって、本実施形態では、ステップS29,S30が、排出ステップに相当する。
【0073】
上述したように、インクカートリッジ22をカートリッジホルダ21に装着した場合には、所定回数KKだけ沸騰許容クリーニングが実行される。この沸騰許容クリーニングにおいては、キャップ34内の負圧NPが沸騰閾値NPngに到達してから各チョークバルブ47が開弁されるため、クリーニングの実行前において各インク供給路25内に存在していた空気(気泡)は、インクと共に確実に記録ヘッド18の各ノズル20から排出される。しかしながら、各チョークバルブ47の開弁直後には、各インク供給路25内を流動するインクが沸騰状態になり、該インクからは、微細気泡が析出することがあった。
【0074】
そこで、本実施形態では、沸騰許容クリーニングの所定回数KK実行後には、非沸騰クリーニングが実行される。その結果、沸騰許容クリーニングにおいて各インク供給路25内を流動するインクから析出した微細気泡は、非沸騰クリーニングの実行によりインクと共に記録ヘッド18の各ノズル20から排出される。そのため、インク充填処理ルーチンの終了後における各インク供給路25内のインク中に気泡(微細気泡も含む)が含まれることはほとんどない。したがって、インク充填処理ルーチン後に用紙Pに印刷を実行する際におけるインクの噴射不良が良好に抑制される。
【0075】
したがって、本実施形態では、上記第1の実施形態の効果(1)に加え、さらに以下に示す効果をも得ることができる。
(4)各インク供給路(流体供給路)25におけるチョークバルブ(開閉弁)47よりも下流側と同程度の負圧となるキャップ(流体受容手段)34内の負圧NPが圧力センサ62からの信号に基づき検出される。そして、非沸騰クリーニングでは、検出された負圧NPの大きさが開弁閾値KNPの大きさに達した場合に、加圧ポンプ28を駆動させることにより各チョークバルブ47をそれぞれ開弁させ、インクが各インク供給路25内を流動して記録ヘッド(流体噴射ヘッド)18の各ノズル20から排出される。すなわち、キャップ34内の負圧NPを実測し、その実測結果に基づき各チョークバルブ47を開弁させるタイミングを図るため、非沸騰クリーニングにおいては、各チョークバルブ47を開弁させた場合に各インク供給路25内を流動するインクが沸騰し、微細気泡がインクから析出してしまうことを回避できる。
【0076】
(5)沸騰許容クリーニングでは、各インク供給路(流体供給路)25内を記録ヘッド(流体噴射ヘッド)18側に流動するインクが沸騰して、微細気泡がインクから析出してしまうことがある。そこで、本実施形態では、沸騰許容クリーニングが実行された後には、クリーニング後にインクから微細気泡が析出することのない非沸騰クリーニングが実行される。そのため、沸騰許容クリーニング時において各インク供給路25内を流動するインクが沸騰することにより発生した微細気泡を、非沸騰クリーニングによって記録ヘッド18の各ノズル20からインクと共に排出できる。
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態を図10及び図11に従って説明する。なお、第3の実施形態は、キャップ34内の負圧を一定に保持するためのレギュレータを設ける点、及び、インク充填処理ルーチンの内容が第2の実施形態と異なっている。したがって、以下の説明においては、第2の実施形態と相違する部分について主に説明するものとし、第2の実施形態と同一又は相当する部材構成には同一符号を付して重複説明を省略するものとする。
【0077】
図10に示すように、本実施形態のキャップ34の底壁部に貫通形成された連通口60には、検出用チューブ61の上端が接続され、該検出用チューブ61の下端には、キャップ34内の圧力(負圧NP)が一定圧以上になった際に駆動する負圧保持手段としてのレギュレータ70が設けられている。そして、図11に示すように、キャップ34内の負圧NPの大きさが上記開弁閾値KNPの大きさに達した場合には、レギュレータ70が駆動することにより、該レギュレータ70から空気をキャップ34内に流入させてキャップ34内の負圧NPが開弁閾値KNPに保持される。
【0078】
次に、本実施形態の制御装置50が実行するインク充填処理ルーチンについて図11に示すタイミングチャートに基づき以下説明する。
さて、制御装置50は、インクカートリッジ22がカートリッジホルダ21に装着されたことを契機にインク充填処理ルーチンを実行する。そして、このインク充填処理ルーチンにおいて、制御装置50は、上記ステップS20,S21,S22,S23,S24,S25に相当する処理を順次実行し、その後、吸引ポンプ37を駆動させることにより非沸騰クリーニングの実行を開始させる。そして、制御装置50は、吸引ポンプ37の駆動が開始してからの第5経過時間が予め設定された第5経過時間閾値KT5以上になった場合に、各チョークバルブ47を開弁させるべく加圧ポンプ28の駆動を開始させる。
【0079】
なお、第5経過時間閾値KT5は、吸引ポンプ37の駆動に基づきキャップ34内の負圧NPの大きさが開弁閾値KNPの大きさに達したことに起因して、レギュレータ70が駆動している状態で各チョークバルブ47を開弁させるように設定された時間である。また、第5経過時間閾値KT5は、上記第2経過時間閾値KT2よりも長めであって且つ第3経過時間閾値KT3よりも短めに予め設定される。
【0080】
そして、制御装置50は、吸引ポンプ37の駆動が開始してからの第3経過時間T3が第3経過時間閾値KT3以上になった場合に、加圧ポンプ28及び吸引ポンプ37の駆動を停止させて非沸騰クリーニングを終了させる。その後、制御装置50は、インク充填処理ルーチンを終了する。
【0081】
したがって、本実施形態では、上記第1及び第2の実施形態の効果(1)(5)に加え、さらに以下に示す効果をも得ることができる。
(6)非沸騰クリーニング時において、吸引ポンプ(吸引手段)37の駆動により各インク供給路(流体供給路)25におけるチョークバルブ(開閉弁)47よりも下流側(即ち、キャップ34内)が減圧されても、キャップ34内の負圧NPは、レギュレータ(負圧維持手段)70が駆動することにより開弁閾値KNPに維持される。そのため、キャップ34内の負圧NPが、各チョークバルブ47の開弁後において各インク供給路25内を流動するインク(流体)が沸騰状態になるような大きさになることはない。したがって、非沸騰クリーニング時に各チョークバルブ47を開弁させた場合に各インク供給路25内を流動するインクが沸騰し、微細気泡がインクから析出してしまうことを回避できる。
【0082】
なお、上記各実施形態は以下のような別の実施形態に変更してもよい。
・上記第1の実施形態において、通常クリーニングではなく、沸騰許容クリーニングを実行するようにしてもよい。
【0083】
・上記第2の実施形態において、沸騰許容クリーニングではなく、通常クリーニングを実行するようにしてもよい。
・上記各実施形態において、通常クリーニングや沸騰許容クリーニングを実行するのではなく、非沸騰クリーニングを複数回実行するようにしてもよい。
【0084】
・上記各実施形態では、非沸騰クリーニングは、吸引ポンプ37が予め設定された所定速度で駆動しているため、吸引ポンプ37の駆動が開始してからの第3経過時間T3が第3経過時間閾値KT3以上になった場合に停止するようになっている。しかし、非沸騰クリーニングは、吸引ポンプ37の駆動源となるモータ(図示略)の回転数を検出し、該検出した回転数が予め設定された所定回転数以上になった場合に停止するようにしてもよい。例えば駆動源としてステッピングモータを使用した場合には、該ステッピングモータに供給されるパルス電圧のステップ数をカウントし、該ステップ数が所定ステップ数になった場合に非沸騰クリーニングを停止させるようにしてもよい。
【0085】
・上記各実施形態において、各インク供給路25内における圧力変動によって開閉動作するチョークバルブ47の代わりに制御装置50からの制御指令に基づき開閉動作する開閉弁(例えば電磁弁)を設けてもよい。この場合、非沸騰クリーニングを実行する際には、各開閉弁を閉弁させた後に吸引ポンプ37を駆動させ、キャップ34内を減圧させる。そして、キャップ34内の負圧NPの大きさが開弁閾値KNPの大きさに達した時点で開閉弁を開弁動作させると共に加圧ポンプ28の駆動を開始させることにより、各インク供給路25内を記録ヘッド18側にインクを流動させ、記録ヘッド18内に供給されたインクをキャップ34内に排出させる。このように構成しても上記各実施形態と同等の効果を得ることができる。
【0086】
・また、制御装置50からの制御指令に基づき開閉動作する開閉弁をインク供給路25に設けた場合には、クリーニング時に加圧ポンプ28を駆動させなくてもよい。この場合、吸引ポンプ37が発揮する吸引力によってクリーニングが実行されることになる。
【0087】
・上記各実施形態において、インク充填処理ルーチンを、インクカートリッジ22をインクジェット式プリンタ11に初めて装着した場合(即ち、インクの初期充填時)にのみ実行するようにしてもよい。
【0088】
・上記各実施形態において、キャップ34は、その一部が記録ヘッド18に当接した状態で吸引ポンプ37が駆動した場合に、記録ヘッド18の各ノズル20からインクが吸引されるような構成であればよい。例えば、キャップ34は、その開口部が記録ヘッド18の側面に外嵌合する態様で当接可能な構成であってもよい。
【0089】
・上記各実施形態において、流体噴射装置を、用紙Pの搬送方向(前後方向)と交差する方向において記録ヘッド18が用紙Pの幅方向(左右方向)の長さに対応した全体形状をなす、いわゆるフルラインタイプのプリンタに具体化してもよい。
【0090】
・上記各実施形態では、流体噴射装置をインクジェット式プリンタ11に具体化したが、この限りではなく、インク以外の他の流体(液体や、機能材料の粒子が液体に分散又は混合されてなる液状体、ゲルのような流状体を含む)を噴射したり吐出したりする流体噴射装置に具体化することもできる。例えば、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ及び面発光ディスプレイの製造などに用いられる電極材や色材(画素材料)などの材料を分散または溶解のかたちで含む液状体を噴射する液状体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置、ゲル(例えば物理ゲル)などの流状体を噴射する流状体噴射装置であってもよい。そして、これらのうちいずれか一種の流体噴射装置に本発明を適用することができる。なお、本明細書において「流体」とは、気体のみからなる流体及び粉粒体(粒体、粉体を含む)のみからなる流体を含まない概念であり、流体には、例えば液体(無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)等を含む)、液状体、流状体などが含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】第1の実施形態におけるインクジェット式プリンタの概略平面図。
【図2】インクジェット式プリンタのインク供給システムを説明する模式図。
【図3】(a)はチョークバルブの開弁状態を示す概略断面図、(b)は、チョークバルブの閉弁状態を示す概略断面図。
【図4】電気的構成を示すブロック回路図。
【図5】第1の実施形態のインク充填処理ルーチンを説明するフローチャート。
【図6】第1の実施形態においてキャップ内の負圧の変化を説明するタイミングチャート。
【図7】第2の実施形態のキャップを示す概略断面図。
【図8】第2の実施形態のインク充填処理ルーチンを説明するフローチャート。
【図9】第2の実施形態においてキャップ内の負圧の変化を説明するタイミングチャート。
【図10】第3の実施形態のキャップを示す概略断面図。
【図11】第3の実施形態においてキャップ内の負圧の変化を説明するタイミングチャート。
【符号の説明】
【0092】
11…インクジェット式プリンタ(流体噴射装置)、18…記録ヘッド(流体噴射ヘッド)、20…ノズル、22…インクカートリッジ(流体貯留手段)、25…インク供給路(流体供給路)、34…キャップ(流体受容手段)、37…吸引ポンプ(吸引手段)、47…チョークバルブ(開閉弁)、50…制御装置(圧力検出手段、開閉弁制御手段)、52…ROM(記憶手段)、62…圧力センサ(圧力検出手段)、70…レギュレータ(負圧維持手段)、KNP…開弁閾値、KT2…第2経過時間閾値(開弁許可時間)、NP…負圧、T2…第2経過時間。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体貯留手段から流体供給路を介して流体噴射ヘッド側へ導かれた流体を前記流体噴射ヘッドに形成されたノズルから吸引手段の駆動により吸引して排出させるに際し、前記流体供給路に設けられた開閉弁を閉弁した状態で前記流体供給路における前記開閉弁よりも下流側を減圧させた後、前記開閉弁を開弁させることにより、前記流体噴射ヘッドから流体を排出させる流体噴射装置のクリーニング方法であって、
前記開閉弁を閉弁させた状態で前記吸引手段の駆動により前記流体供給路における前記開閉弁よりも下流側を減圧させる減圧ステップと、
該減圧ステップにより前記流体供給路における前記開閉弁よりも下流側で発生した負圧の大きさが、前記開閉弁の開弁後において前記流体供給路内の流体が沸騰状態になる前の負圧の大きさとして予め設定された開弁閾値に達した場合に、前記開閉弁を開弁させて前記流体噴射ヘッドから流体を排出させる排出ステップと
を有する非沸騰クリーニングを実行するようにした流体噴射装置のクリーニング方法。
【請求項2】
前記流体噴射装置には、前記開閉弁が閉弁した状態で前記吸引手段が駆動を開始してから前記流体供給路における前記開閉弁よりも下流側の負圧の大きさが前記開弁閾値に達した時点の経過時間を開弁許可時間として予め記憶する記憶手段が設けられており、
前記排出ステップでは、前記減圧ステップの実行により前記流体供給路における前記開閉弁よりも下流側の減圧が開始されてからの経過時間が前記開弁許可時間に達した場合に、前記開閉弁を開弁させて前記流体噴射ヘッドから流体を排出させるようにした請求項1に記載の流体噴射装置のクリーニング方法。
【請求項3】
前記流体噴射装置には、前記流体供給路における前記開閉弁よりも下流側の負圧を検出する圧力検出手段が設けられており、
前記排出ステップでは、前記減圧ステップの実行により前記圧力検出手段によって検出された負圧の大きさが前記開弁閾値に達した場合に、前記開閉弁を開弁させて前記流体噴射ヘッドから流体を排出させるようにした請求項1に記載の流体噴射装置のクリーニング方法。
【請求項4】
前記流体噴射装置には、前記流体供給路における前記開閉弁よりも下流側の負圧の大きさが前記開弁閾値に達した場合に、前記流体供給路における前記開閉弁よりも下流側の負圧の大きさを前記開弁閾値に維持する負圧維持手段が設けられており、
前記排出ステップでは、前記負圧維持手段によって前記流体供給路における前記開閉弁よりも下流側の負圧の大きさが前記開弁閾値に維持されている状態で、前記開閉弁を開弁させて前記流体噴射ヘッドから流体を排出させるようにした請求項1に記載の流体噴射装置のクリーニング方法。
【請求項5】
前記開閉弁を閉弁させた状態で前記流体供給路における前記開閉弁よりも下流側を減圧させ、前記流体供給路における前記開閉弁よりも下流側の負圧が、前記流体供給路内の流体が沸騰するような大きさになった場合に、前記開閉弁を開弁させて前記流体噴射ヘッドから流体を排出させる沸騰許容クリーニングを実行し、該沸騰許容クリーニングの実行後に前記非沸騰クリーニングを実行するようにした請求項1〜請求項4のうち何れか一項に記載の流体噴射装置のクリーニング方法。
【請求項6】
前記開閉弁の開弁状態を維持した状態で前記吸引手段を駆動させることにより前記流体噴射ヘッドから流体を排出させる通常クリーニングを実行し、該通常クリーニングの実行後に前記非沸騰クリーニングを実行するようにした請求項1〜請求項4のうち何れか一項に記載の流体噴射装置のクリーニング方法。
【請求項7】
流体を貯留する流体貯留手段と、該流体貯留手段から流体供給路を介して供給された流体をノズルから噴射する流体噴射ヘッドと、前記流体供給路の途中に設けられる開閉弁と、前記ノズルから流体を吸引可能な状態で前記流体噴射ヘッドに当接する流体受容手段と、該流体受容手段を前記流体噴射ヘッドに当接させた状態で吸引力を発揮することにより前記流体噴射ヘッドの前記ノズルから流体を吸引して前記流体受容手段内に排出させる吸引手段とを備え、前記開閉弁を閉弁させた状態で前記流体供給路における前記開閉弁よりも下流側を前記吸引手段によって減圧させ、その後、前記開閉弁を開弁させることにより、その流体を前記流体噴射ヘッドから前記流体受容手段内に排出させる流体噴射装置において、
前記開閉弁が閉弁した状態で前記吸引手段による前記流体供給路における前記開閉弁よりも下流側の減圧が開始されてから前記流体供給路における前記開閉弁よりも下流側の負圧の大きさが、前記開閉弁の開弁後において前記流体供給路内の流体が沸騰状態になる前の負圧の大きさとして予め設定された開弁閾値に達した時点の経過時間を開弁許可時間として予め記憶する記憶手段と、
前記吸引手段による前記流体供給路における前記開閉弁よりも下流側の減圧が開始されてからの経過時間が前記開弁許可時間に達した場合に、前記開閉弁を開弁させる開閉弁制御手段と
を更に備えた流体噴射装置。
【請求項8】
流体を貯留する流体貯留手段と、該流体貯留手段から流体供給路を介して供給された流体をノズルから噴射する流体噴射ヘッドと、前記流体供給路の途中に設けられる開閉弁と、前記ノズルから流体を吸引可能な状態で前記流体噴射ヘッドに当接する流体受容手段と、該流体受容手段を前記流体噴射ヘッドに当接させた状態で吸引力を発揮することにより前記流体噴射ヘッドの前記ノズルから流体を吸引して前記流体受容手段内に排出させる吸引手段とを備え、前記開閉弁を閉弁させた状態で前記流体供給路における前記開閉弁よりも下流側を前記吸引手段によって減圧させ、その後、前記開閉弁を開弁させることにより、その流体を前記流体噴射ヘッドから前記流体受容手段内に排出させる流体噴射装置において、
前記流体供給路における前記開閉弁よりも下流側の負圧を検出する圧力検出手段と、
該圧力検出手段によって検出された負圧の大きさが、前記開閉弁の開弁後において前記流体供給路内の流体が沸騰状態になる前の負圧の大きさとして予め設定された開弁閾値に達した場合に、前記開閉弁を開弁させる開閉弁制御手段と
を更に備えた流体噴射装置。
【請求項9】
流体を貯留する流体貯留手段と、該流体貯留手段から流体供給路を介して供給された流体をノズルから噴射する流体噴射ヘッドと、前記流体供給路の途中に設けられる開閉弁と、前記ノズルから流体を吸引可能な状態で前記流体噴射ヘッドに当接する流体受容手段と、該流体受容手段を前記流体噴射ヘッドに当接させた状態で吸引力を発揮することにより前記流体噴射ヘッドの前記ノズルから流体を吸引して前記流体受容手段内に排出させる吸引手段とを備え、前記開閉弁を閉弁させた状態で前記流体供給路における前記開閉弁よりも下流側を前記吸引手段によって減圧させ、その後、前記開閉弁を開弁させることにより、その流体を前記流体噴射ヘッドから前記流体受容手段内に排出させる流体噴射装置において、
前記流体供給路における前記開閉弁よりも下流側の負圧の大きさが、前記開閉弁の開弁後において前記流体供給路内の流体が沸騰状態になる前の負圧の大きさとして予め設定された開弁閾値に達した場合に、前記流体供給路における前記開閉弁よりも下流側の負圧の大きさを前記開弁閾値に維持する負圧維持手段と、
該負圧維持手段によって前記流体供給路における前記開閉弁よりも下流側の負圧の大きさが前記開弁閾値に維持されている場合に、前記開閉弁を開弁させる開閉弁制御手段と
を更に備えた流体噴射装置。
【請求項1】
流体貯留手段から流体供給路を介して流体噴射ヘッド側へ導かれた流体を前記流体噴射ヘッドに形成されたノズルから吸引手段の駆動により吸引して排出させるに際し、前記流体供給路に設けられた開閉弁を閉弁した状態で前記流体供給路における前記開閉弁よりも下流側を減圧させた後、前記開閉弁を開弁させることにより、前記流体噴射ヘッドから流体を排出させる流体噴射装置のクリーニング方法であって、
前記開閉弁を閉弁させた状態で前記吸引手段の駆動により前記流体供給路における前記開閉弁よりも下流側を減圧させる減圧ステップと、
該減圧ステップにより前記流体供給路における前記開閉弁よりも下流側で発生した負圧の大きさが、前記開閉弁の開弁後において前記流体供給路内の流体が沸騰状態になる前の負圧の大きさとして予め設定された開弁閾値に達した場合に、前記開閉弁を開弁させて前記流体噴射ヘッドから流体を排出させる排出ステップと
を有する非沸騰クリーニングを実行するようにした流体噴射装置のクリーニング方法。
【請求項2】
前記流体噴射装置には、前記開閉弁が閉弁した状態で前記吸引手段が駆動を開始してから前記流体供給路における前記開閉弁よりも下流側の負圧の大きさが前記開弁閾値に達した時点の経過時間を開弁許可時間として予め記憶する記憶手段が設けられており、
前記排出ステップでは、前記減圧ステップの実行により前記流体供給路における前記開閉弁よりも下流側の減圧が開始されてからの経過時間が前記開弁許可時間に達した場合に、前記開閉弁を開弁させて前記流体噴射ヘッドから流体を排出させるようにした請求項1に記載の流体噴射装置のクリーニング方法。
【請求項3】
前記流体噴射装置には、前記流体供給路における前記開閉弁よりも下流側の負圧を検出する圧力検出手段が設けられており、
前記排出ステップでは、前記減圧ステップの実行により前記圧力検出手段によって検出された負圧の大きさが前記開弁閾値に達した場合に、前記開閉弁を開弁させて前記流体噴射ヘッドから流体を排出させるようにした請求項1に記載の流体噴射装置のクリーニング方法。
【請求項4】
前記流体噴射装置には、前記流体供給路における前記開閉弁よりも下流側の負圧の大きさが前記開弁閾値に達した場合に、前記流体供給路における前記開閉弁よりも下流側の負圧の大きさを前記開弁閾値に維持する負圧維持手段が設けられており、
前記排出ステップでは、前記負圧維持手段によって前記流体供給路における前記開閉弁よりも下流側の負圧の大きさが前記開弁閾値に維持されている状態で、前記開閉弁を開弁させて前記流体噴射ヘッドから流体を排出させるようにした請求項1に記載の流体噴射装置のクリーニング方法。
【請求項5】
前記開閉弁を閉弁させた状態で前記流体供給路における前記開閉弁よりも下流側を減圧させ、前記流体供給路における前記開閉弁よりも下流側の負圧が、前記流体供給路内の流体が沸騰するような大きさになった場合に、前記開閉弁を開弁させて前記流体噴射ヘッドから流体を排出させる沸騰許容クリーニングを実行し、該沸騰許容クリーニングの実行後に前記非沸騰クリーニングを実行するようにした請求項1〜請求項4のうち何れか一項に記載の流体噴射装置のクリーニング方法。
【請求項6】
前記開閉弁の開弁状態を維持した状態で前記吸引手段を駆動させることにより前記流体噴射ヘッドから流体を排出させる通常クリーニングを実行し、該通常クリーニングの実行後に前記非沸騰クリーニングを実行するようにした請求項1〜請求項4のうち何れか一項に記載の流体噴射装置のクリーニング方法。
【請求項7】
流体を貯留する流体貯留手段と、該流体貯留手段から流体供給路を介して供給された流体をノズルから噴射する流体噴射ヘッドと、前記流体供給路の途中に設けられる開閉弁と、前記ノズルから流体を吸引可能な状態で前記流体噴射ヘッドに当接する流体受容手段と、該流体受容手段を前記流体噴射ヘッドに当接させた状態で吸引力を発揮することにより前記流体噴射ヘッドの前記ノズルから流体を吸引して前記流体受容手段内に排出させる吸引手段とを備え、前記開閉弁を閉弁させた状態で前記流体供給路における前記開閉弁よりも下流側を前記吸引手段によって減圧させ、その後、前記開閉弁を開弁させることにより、その流体を前記流体噴射ヘッドから前記流体受容手段内に排出させる流体噴射装置において、
前記開閉弁が閉弁した状態で前記吸引手段による前記流体供給路における前記開閉弁よりも下流側の減圧が開始されてから前記流体供給路における前記開閉弁よりも下流側の負圧の大きさが、前記開閉弁の開弁後において前記流体供給路内の流体が沸騰状態になる前の負圧の大きさとして予め設定された開弁閾値に達した時点の経過時間を開弁許可時間として予め記憶する記憶手段と、
前記吸引手段による前記流体供給路における前記開閉弁よりも下流側の減圧が開始されてからの経過時間が前記開弁許可時間に達した場合に、前記開閉弁を開弁させる開閉弁制御手段と
を更に備えた流体噴射装置。
【請求項8】
流体を貯留する流体貯留手段と、該流体貯留手段から流体供給路を介して供給された流体をノズルから噴射する流体噴射ヘッドと、前記流体供給路の途中に設けられる開閉弁と、前記ノズルから流体を吸引可能な状態で前記流体噴射ヘッドに当接する流体受容手段と、該流体受容手段を前記流体噴射ヘッドに当接させた状態で吸引力を発揮することにより前記流体噴射ヘッドの前記ノズルから流体を吸引して前記流体受容手段内に排出させる吸引手段とを備え、前記開閉弁を閉弁させた状態で前記流体供給路における前記開閉弁よりも下流側を前記吸引手段によって減圧させ、その後、前記開閉弁を開弁させることにより、その流体を前記流体噴射ヘッドから前記流体受容手段内に排出させる流体噴射装置において、
前記流体供給路における前記開閉弁よりも下流側の負圧を検出する圧力検出手段と、
該圧力検出手段によって検出された負圧の大きさが、前記開閉弁の開弁後において前記流体供給路内の流体が沸騰状態になる前の負圧の大きさとして予め設定された開弁閾値に達した場合に、前記開閉弁を開弁させる開閉弁制御手段と
を更に備えた流体噴射装置。
【請求項9】
流体を貯留する流体貯留手段と、該流体貯留手段から流体供給路を介して供給された流体をノズルから噴射する流体噴射ヘッドと、前記流体供給路の途中に設けられる開閉弁と、前記ノズルから流体を吸引可能な状態で前記流体噴射ヘッドに当接する流体受容手段と、該流体受容手段を前記流体噴射ヘッドに当接させた状態で吸引力を発揮することにより前記流体噴射ヘッドの前記ノズルから流体を吸引して前記流体受容手段内に排出させる吸引手段とを備え、前記開閉弁を閉弁させた状態で前記流体供給路における前記開閉弁よりも下流側を前記吸引手段によって減圧させ、その後、前記開閉弁を開弁させることにより、その流体を前記流体噴射ヘッドから前記流体受容手段内に排出させる流体噴射装置において、
前記流体供給路における前記開閉弁よりも下流側の負圧の大きさが、前記開閉弁の開弁後において前記流体供給路内の流体が沸騰状態になる前の負圧の大きさとして予め設定された開弁閾値に達した場合に、前記流体供給路における前記開閉弁よりも下流側の負圧の大きさを前記開弁閾値に維持する負圧維持手段と、
該負圧維持手段によって前記流体供給路における前記開閉弁よりも下流側の負圧の大きさが前記開弁閾値に維持されている場合に、前記開閉弁を開弁させる開閉弁制御手段と
を更に備えた流体噴射装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−221620(P2008−221620A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−63296(P2007−63296)
【出願日】平成19年3月13日(2007.3.13)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月13日(2007.3.13)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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