説明

流体噴射装置

【課題】記録ヘッドの目詰まり回復のためのフラッシング動作においてインク受け部に吐出されたインク量を正確に検知することができる流体噴射装置を提供する。
【解決手段】ノズルからインクを噴射する記録ヘッド6と、上記記録ヘッド6から記録用紙への印刷とは無関係のインク噴射を行ってノズルの噴射特性を回復するフラッシング動作を行なうフラッシング制御手段42と、上記フラッシング動作によって噴射されたインクを受けるとともに上記記録ヘッド6から離間した開放状態と上記記録ヘッド6に当接した封止状態をとりうるキャップ部材15と、上記キャップ部材15が開放状態で経過した開放時間を計時する開放タイマ56とを備え、上記開放時間に基づいて上記キャップ部材15内のインクを吸引排出する空吸引動作を実行するタイミングを決定するよう構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、流体噴射ヘッドの目詰まり回復のためのフラッシング吐出において流体受け部に吐出された流体量を正確に検知することができる流体噴射装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ターゲットに対して流体を噴射させる流体噴射装置に利用されている。このような流体噴射装置としては、記録用紙上にインクを噴射させるインクジェット式の記録装置が知られている。
【0003】
このようなインクジェット式記録装置は、一般に、インクカートリッジからのインクの供給を受けるインクジェット式記録ヘッドと、記録用紙を記録ヘッドに対して相対的に搬送させる紙送り手段を備え、記録ヘッドを主走査方向に移動させながら印刷データに基づいて記録用紙にインク滴を吐出させることで記録が行われる。上記したインクジェット式記録ヘッドは、圧力発生室で加圧したインクをノズル開口からインク滴として記録用紙に吐出させて印刷を行う関係上、ノズル開口からの溶媒の蒸発に起因するインク粘度の上昇や、インクの固化、塵埃の付着、さらには気泡の混入などによりノズル開口に目詰まりを発生し、印刷不良を起こすという問題を抱えている。
【0004】
このために、この種のインクジェット式記録装置には、非印刷時に記録ヘッドのノズル形成面を封止するためのキャッピング手段を備えている。このキャッピング手段は、記録ヘッドにおけるノズル開口のインクの乾燥を防止する蓋体として機能するだけでなく、ノズル開口に目詰まりが生じた場合には、キャッピング手段によりノズル形成面を封止し、吸引ポンプからの負圧により、ノズル開口からインクを吸引排出させてノズル開口の目詰まりを解消させるインク滴の吐出能力回復機能をも備えている。
【0005】
記録ヘッドの目詰まり解消のために行う強制的なインクの吸引排出処理は、クリーニング操作と呼ばれ、装置の長時間の休止後に印刷を再開する場合や、ユーザが印刷不良を認識して例えばクリーニングスイッチを操作した場合などに実行され、吸引ポンプによる負圧を加えて記録ヘッドよりキャッピング手段内にインクを吸引排出させた後に、例えばゴム材料等により形成したワイピング部材により、ノズル形成面を払拭する操作が伴われる。
【0006】
また、記録ヘッドに印刷とは関係のない駆動信号を印加してインク滴を吐出させる機能も備えており、これはフラッシング操作と呼ばれ、上記ワイピング部材による払拭操作により、ヘッドのノズル開口近傍に生じた不揃いのメニスカスを回復させたり、また印刷動作中にインク滴の吐出の機会が少ないノズル開口において、インクの増粘による目詰まりを防止する目的で、一定周期ごとに実行されるように構成されている。
【0007】
このような、印刷動作中に定期的に行なわれるフラッシング動作では、従来から、フラッシング動作によるインク滴の吐出数を累積して計数するフラッシング量カウンタが具備され、このカウンタによる計数値が予め定められた値に達した時に、キャップ内に収容されたインク吸収材からインクの一部を吸引排出させる空吸引動作を実行するようにして、フラッシング動作により吐出されたインクがキャップ内で一杯になる前に空吸引で排出し、キャップからインクがあふれ出るのを防止するようになっている(例えば、下記の特許文献1)。
【特許文献1】特開2001−347688号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、フラッシング動作で吐出したインク量をカウントしたとしても、キャップが開放されている時間等の条件によって蒸発量が大きく変動するため、実際にキャップ内に残存して溜まる量は大きくばらつく結果となる。また、キャップが溢れてしまうのが最も困るので、空吸引動作を行なうタイミングを決めるカウント値の閾値は、蒸発量をゼロと想定した理論的に満杯になるカウント数で設定している。このため、実際には蒸発によって溢れるまでは十分に余裕がある状態で空吸引動作が行なわれており、実際に必要な頻度よりもかなり高い頻度で空吸引を行なっているのが実情である。空吸引は印字が停止しているフラッシング動作の際に行われるため、空吸引の頻度が高いと、それだけ印字停止時間が長くなり印字の時間効率が低下するという問題がある。また、空吸引が多いとそれだけ吸引ポンプの稼働頻度および稼動時間が長くなることから、吸引ポンプの劣化にも悪影響を及ぼし、結果的に寿命を縮めることになる。また、空吸引動作時の吸引時間や吸引速度も蒸発量による粘度の上昇を考慮せずに一定としているため、条件によっては十分な空吸引ができず、流体受け部内に高粘度の流体が残存してしまい、それが残渣となって流体受け部の排出路の目詰まりの原因となる等の不都合があった。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みなされたものであり、流体噴射ヘッドの目詰まり回復のためのフラッシング吐出において流体受け部に吐出された流体量を正確に検知することができる流体噴射装置の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の第1の流体噴射装置は、ノズルから流体を噴射する流体噴射ヘッドと、上記流体噴射ヘッドからターゲットへの流体噴射とは無関係の流体噴射を行ってノズルの噴射特性を回復するフラッシング動作を行なうフラッシング制御手段と、上記フラッシング動作によって噴射された流体を受けるとともに上記流体噴射ヘッドから離間した開放状態と上記流体噴射ヘッドに当接した封止状態をとりうる流体受け部と、上記流体受け部内に噴射された流体を吸引排出する空吸引動作を制御する空吸引制御手段と、前回の空吸引動作から上記流体受け部が開放状態で経過した開放時間を計時する開放タイマとを備え、上記空吸引制御手段は、上記開放時間に基づいて空吸引動作における吸引時間と吸引速度の少なくとも一方が変更されるよう制御することを要旨とする。
【0011】
上記目的を達成するため、本発明の第2の流体噴射装置は、ノズルから流体を噴射する流体噴射ヘッドと、上記流体噴射ヘッドからターゲットへの流体噴射とは無関係の流体噴射を行ってノズルの噴射特性を回復するフラッシング動作を行なうフラッシング制御手段と、上記フラッシング動作によって噴射された流体を受けるとともに上記流体噴射ヘッドから離間した開放状態と上記流体噴射ヘッドに当接した封止状態をとりうる流体受け部と、上記流体受け部内に噴射された流体を吸引排出する空吸引動作を制御する空吸引制御手段と、前回の空吸引動作からの経過時間である放置時間を計時する放置タイマとを備え、上記空吸引制御手段は、上記放置時間に基づいて空吸引動作における吸引時間と吸引速度の少なくとも一方が変更されるよう制御することを要旨とする。
【0012】
上記目的を達成するため、本発明の第3の流体噴射装置は、ノズルから流体を噴射する流体噴射ヘッドと、上記流体噴射ヘッドからターゲットへの流体噴射とは無関係の流体噴射を行ってノズルの噴射特性を回復するフラッシング動作を行なうフラッシング制御手段と、上記フラッシング動作によって噴射された流体を受けるとともに上記流体噴射ヘッドから離間した開放状態と上記流体噴射ヘッドに当接した封止状態をとりうる流体受け部と、上記流体受け部内に噴射された流体を吸引排出する空吸引動作を制御する空吸引制御手段と、前回の空吸引動作から上記流体受け部が開放状態で経過した開放時間を計時する開放タイマとを備え、上記空吸引制御手段は、上記開放時間に基づいて空吸引動作を実行するタイミングを決定するよう制御することを要旨とする。
【0013】
上記目的を達成するため、本発明の第4の流体噴射装置は、ノズルから流体を噴射する流体噴射ヘッドと、上記流体噴射ヘッドからターゲットへの流体噴射とは無関係の流体噴射を行ってノズルの噴射特性を回復するフラッシング動作を行なうフラッシング制御手段と、上記フラッシング動作によって噴射された流体を受けるとともに上記流体噴射ヘッドから離間した開放状態と上記流体噴射ヘッドに当接した封止状態をとりうる流体受け部と、上記流体受け部内に噴射された流体を吸引排出する空吸引動作を制御する空吸引制御手段と、前回の空吸引動作からの経過時間である放置時間を計時する放置タイマとを備え、上記空吸引制御手段は、上記放置時間に基づいて空吸引動作を実行するタイミングを決定するよう制御することを要旨とする。
【0014】
本発明の第1の流体噴射装置によれば、流体受け部の開放時間に基づいて流体受け部内の流体を吸引排出する空吸引動作における吸引時間と吸引速度の少なくとも一方が変更される。このように、開放状態の流体受け部からの蒸発による粘度上昇を見込んで空吸引における吸引時間と吸引速度の少なくとも一方が変更されるため、従来のように十分に空吸引できずに高粘度の流体が流体受け部内に残存するという不都合が解消される。
【0015】
本発明の第2の流体噴射装置によれば、放置時間に基づいて流体受け部内の流体を吸引排出する空吸引動作における吸引時間と吸引速度の少なくとも一方が変更される。このように、流体受け部を封止状態で放置している間も流体受け部内の流体は徐々に蒸発することから、その蒸発による粘度上昇を見込んで空吸引における吸引時間と吸引速度の少なくとも一方が変更されるため、従来のように十分に空吸引できずに高粘度の流体が流体受け部内に残存するという不都合が解消される。
【0016】
本発明の第3の流体噴射装置によれば、流体受け部の開放時間に基づいて流体受け部内の流体を吸引排出する空吸引動作を実行するタイミングを決定するため、フラッシング動作で噴射された流体だけでなく、開放状態の流体受け部からの蒸発量を加味して流体受け部に残っている流体の量を算出し、それに基づいて流体受け部の空吸引を実行可能となるため、流体受け部から流体が溢れることもなく、確実に適正なタイミングで空吸引を実行でき、従来に比べて空吸引の頻度を大幅に低下できる。したがって、従来問題となっていたターゲットに対する噴射効率の低下や、吸引手段の劣化に伴う短寿命化を大幅に改善することが可能となる。
【0017】
本発明の第3の流体噴射装置において、上記流体噴射ヘッドからフラッシング動作により噴射された流体量の累積値をカウントするカウント手段をさらに備え、上記空吸引制御手段は、上記カウント手段でカウントされた流体量の累積値が所定の閾値に達している場合に空吸引動作を行なうとともに、上記開放時間に基づいて上記閾値が変更されるよう制御する場合には、流体の蒸発量を加味した適切な閾値で空吸引動作のタイミングを設定できるため、流体受け部から流体が溢れることもなく、確実に適正なタイミングで空吸引を実行でき、従来に比べて空吸引の頻度を大幅に低下できる。
【0018】
本発明の第4の流体噴射装置によれば、放置時間に基づいて流体受け部内の流体を吸引排出する空吸引動作を実行するタイミングを決定することから、流体受け部を封止状態で放置している間も流体受け部内の流体は徐々に蒸発することから、その蒸発量を加味して流体受け部に残っている流体の量を算出し、それに基づいて流体受け部の空吸引を実行可能となるため、流体受け部から流体が溢れることもなく、確実に適正なタイミングで空吸引を実行でき、従来に比べて空吸引の頻度を大幅に低下できる。したがって、従来問題となっていたターゲットに対する噴射効率の低下や、吸引手段の劣化に伴う短寿命化を大幅に改善することが可能となる。
【0019】
本発明の第4の流体噴射装置において、上記流体噴射ヘッドからフラッシング動作により噴射された流体量の累積値をカウントするカウント手段をさらに備え、上記空吸引制御手段は、上記カウント手段でカウントされた流体量の累積値が所定の閾値に達している場合に空吸引動作を行なうとともに、上記放置時間に基づいて上記閾値が変更されるよう制御する場合には、流体の蒸発量を加味した適切な閾値で空吸引動作のタイミングを設定できるため、流体受け部から流体が溢れることもなく、確実に適正なタイミングで空吸引を実行でき、従来に比べて空吸引の頻度を大幅に低下できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の流体噴射装置をインクジェット式記録装置に適用した一実施形態について説明する。
【0021】
図1は、本実施形態のインクジェット式の記録装置を示す概略平面図である。
【0022】
図中符号1はキャリッジ1であり、このキャリッジ1はキャリッジモータ2によって駆動されるタイミングベルト3を介し、ガイド部材4に案内されて紙送り部材5の長手方向に沿って往復駆動されるように構成されている。
【0023】
上記キャリッジ1の紙送り部材5と対向する面には、ノズルから流体として液状のインクを噴射する流体噴射ヘッドとしての記録ヘッド6が搭載されており、上記記録ヘッド6を主走査方向に往復動させるようになっている。また、上記キャリッジ1の上面にはダンパー機能を備えたサブタンクユニット7が搭載されている。そして、記録装置の側端部(図1における右端部)に、カートリッジホルダ8が備えられており、このカートリッジホルダ8には、それぞれブラックインクを供給するブラックインクカートリッジ9B、シアン、マゼンタおよびイエローインクを供給する各カラーインクカートリッジ9C,9M,9Yがそれぞれ着脱可能に装着されている。
【0024】
そして、これら各カートリッジが装着されたカートリッジホルダ8よりサブタンクユニット7に対して、可撓性素材により構成されたインク供給チューブ10がそれぞれ接続されており、各インクカートリッジ9B,9C,9M,9Yからのインクがサブタンクユニット7に供給されるように構成されている。そして、印刷指令を受けた上記記録ヘッド6より、紙送り部材5上に搬送されるターゲットとしての記録用紙に対してインク滴が吐出され、印刷が実行されるように構成されている。
【0025】
上記記録装置の非印刷領域であるホームポジションには、キャリッジ1が当該箇所に移動した時に上昇して記録ヘッド6のノズル形成面を封止することができるキャッピング手段11が配置されている。このキャッピング手段11は、記録装置の休止期間中において記録ヘッド6のノズル開口を囲うようにしてノズル形成面に当接する蓋体として機能(キャッピング)するキャップ部材15を備え、記録ヘッド6におけるノズル開口からインク溶媒が揮散するのを防止するように機能する。
【0026】
また、上記キャップ部材15の内底部には、インク排出口が形成され、このインク排出口には、吸引ポンプ14と接続されたチューブの一端が接続されている。これにより、クリーニング指令を受けた場合に、吸引ポンプ14による負圧をキャップ部材15の内部空間に印加し、記録ヘッド6のノズルからインクを強制的に吸引排出させるクリーニング動作を実行しうるように構成されている。
【0027】
さらに、上記キャップ部材15は、フラッシング動作によって噴射されたインクを受ける流体受け部としてのインク受けとしての機能も備えており、フラッシング動作時において上記記録ヘッド6に対して一定の間隙をもって対峙し、上記記録ヘッド6からフラッシング動作によるインク滴を受けるようにも機能する。上記フラッシング動作は、後述するフラッシング制御手段によって制御され、上記記録ヘッド6から記録用紙へのインク噴射とは無関係のインク噴射を行ってノズルの噴射特性を回復するための動作である。
【0028】
したがって、本発明の流体受け部としての上記キャップ部材15は、記録ヘッド6のノズル面から離間した開放状態と、記録ヘッド6のノズル面に開口縁が密着した封止状態をとりうるように構成されている。
【0029】
さらに、後述するように、キャップ部材15内に噴射されたインクが所定量以上溜まったときに、制御される空吸引動作においても、吸引ポンプ14が駆動され、キャッピング手段11内に溜まったインクが吸引排出されるように作用する。
【0030】
上記クリーニング動作や空吸引動作等の際にキャップ部材15内から吸引ポンプ14で吸引排出された廃液は、吸収材17が充填された廃液タンク18に導入されるようになっている。
【0031】
また、上記キャップ部材15の内底部には、噴射されたインクを吸収する吸収材としてのシート状のインク吸収材16が収容され、クリーニング動作またはインク滴の大量吐出を伴うフラッシング動作によって記録ヘッド6から排出されたインクを、これにより保持することができるように構成されている。また、上記インク吸収材16は、少量の吐出を伴うフラッシング動作によって、記録ヘッド6から吐出されたインク滴を捕獲して吸収する機能も有する。
【0032】
また、キャッピング手段11に隣接する印刷領域側には、ゴムなどの弾性素材を短冊状に成形したワイピング部材12が配置されていて、キャリッジ1がキャッピング手段11側に往復移動する際に、記録ヘッド6の移動軌跡に進出して、必要に応じて記録ヘッド6のノズル形成面を払拭して清掃するワイピング動作がなされるように構成されている。
【0033】
図2は、本実施形態の記録装置の制御回路を示す機能ブロック図である。
【0034】
図に示す符号40は印刷制御手段40であり、この印刷制御手段40は、図示しないホストコンピュータから転送される印刷データを受けてドットパターンデータ(ビットマップデータ)を生成し、このデータに基づいてヘッド駆動手段41により駆動信号を発生させて、記録ヘッド6からインク滴を吐出させる機能を備えている。
【0035】
上記ヘッド駆動手段41は、印刷データに基づく駆動信号の他に、フラッシング制御手段42からのフラッシング指令信号を受けて、フラッシング操作のための駆動信号を記録ヘッド6に出力し、ターゲットである記録用紙への印刷とは関係のないインク滴の空吐出を行なって、記録ヘッド6のノズルの噴射特性の回復を行なうことができるようにも構成されている。
【0036】
また、符号43はクリーニング制御手段43であり、このクリーニング制御手段43は、例えばクリーニング指令検知手段44からの制御信号を受けて、キャリッジ制御手段55やポンプ駆動手段45等を制御し、キャップ部材15で記録ヘッド6のノズル面をキャッピングするとともに、吸引ポンプ14を駆動させる機能を備えている。
【0037】
さらに、符号46は装置の操作パネル等に配置されたクリーニング指令スイッチ46を示し、ユーザが例えば印刷不良状態を認識した場合にこれを操作することにより、上記クリーニング指令検知手段44を介してクリーニング制御手段43を動作させて、マニュアル操作によるクリーニング動作が実行されるように構成されている。
【0038】
一方、上記した印刷制御手段40からは、休止タイマ47および累積印字タイマ48に対して制御信号が送出されるように構成されている。
【0039】
上記休止タイマ47は、印刷終了時においてゼロリセットされ、直ちにスタートして経過時間をカウントアップするように作用する。すなわち、休止タイマ47は印刷終了後からの連続キャッピング時間を計時する機能を果たす。
【0040】
また、累積印字タイマ48は、印刷を実施した場合の累積印字時間を計時するようになされ、上記したクリーニング制御手段43がクリーニング動作を実行した場合に、リセット信号が供給されるようになされる。これにより、累積印字タイマ48はクリーニング制御手段43からのリセット信号によって、累積時間がゼロリセットされ、且つ印刷制御手段40からの制御信号によって累積印字時間をカウントアップするように作用する。すなわち、累積印字タイマ48は、記録ヘッド6がキャップ部材15によりキャッピングされずに印字した累積時間を計時する機能を果たす。
【0041】
そして、上記休止タイマ47および累積印字タイマ48による計時データは、記録装置の動作電源が投入された時に、休止タイマ47および累積印字タイマ48よりそれぞれクリーニング制御手段43およびフラッシング制御手段42に制御信号が送出され、それぞれの経過時間に対応して記述された図示しない回復動作選定テーブルを参照して、クリーニング動作またはフラッシング動作が実行されるようになされる。
【0042】
上記フラッシング制御手段42には、定期フラッシングタイマ49、定期まとめ打ちタイマ50、および休止時まとめ打ちタイマ51によって得られる計時データに基づく制御信号が送出されるように構成されている。
【0043】
上記定期フラッシングタイマ49は、印字中または待機中における所定の第1時間間隔(例えば10秒)を計時する機能を有しており、上記10秒を超えた場合においては、フラッシング制御手段42に制御信号を送出して、定期フラッシングを実行させるように機能する。すなわち、この定期フラッシングタイマ49は、印字中における不使用ノズル(インク滴の吐出の機会がないか、または少ないノズル)における増粘インクを排出させるために利用される。
【0044】
この場合、インクの種類(インクの色)に応じて増粘度合いが異なるため、例えば、6色のインクを用いる記録装置の場合、上記定期フラッシングにおけるインク滴の吐出数は、イエローインク、シアンインク、ライトシアンインク、マゼンタインク、ライトマゼンタインクのカラーインクは72ショット、ブラックインクは96ショットに設定される。
【0045】
一方、上記した定期まとめ打ちタイマ50は、所定の第2時間間隔(例えば2000秒)にわたって印字を行なった場合において、フラッシング制御手段42に制御信号を送出して、定期まとめ打ちフラッシングを実行させるように機能する。そして、この定期まとめ打ちフラッシングは、印字中または記録用紙の排紙時において実行される。この定期まとめ打ちタイマ50は、同様に印字中における不使用ノズルにおける増粘インクを排出させるために利用される。この時に噴射されるインク滴の吐出数は、上記した定期フラッシングの場合に比較して遥かに多くなるように設定され、例えば、6色のインクを用いる記録装置の場合、イエローインク、シアンインク、ライトシアンインク、マゼンタインク、ライトマゼンタインクのカラーインクは20000ショット、ブラックインクは40000ショットに設定される。
【0046】
さらに、上記した休止時まとめ打ちタイマ51は、記録装置の動作電源がオフされた場合における前回の動作電源のオフ時からの経過時間を計時する機能を備えている。そして、上記経過時間に応じた制御信号をフラッシング制御手段42に送出して、休止時まとめ打ちフラッシングが実行され、このフラッシングが実行された後に記録装置の電源がオフされるように制御される。
【0047】
この休止時まとめ打ちフラッシングは、主にキャッピング手段内を保湿させる目的で実行され、これにより記録装置の休止期間中に、記録ヘッド6のノズル開口からのインク溶媒の揮散を抑制するようになされる。この時に噴射されるインク滴の吐出数は、例えば、6色のインクを用いる記録装置の場合、イエローインク、ライトシアンインク、ライトマゼンタインクでは20000ショット、マゼンタインク、シアンインクでは30000ショット、ブラックインクでは50000ショットに設定される。
【0048】
また、この装置は、上記記録ヘッド6からフラッシング動作により噴射されたインク量の累積値をカウントするカウント手段としてのフラッシング量カウンタ52を備えている。すなわち、上記フラッシング制御手段42からフラッシング量カウンタ52に対してフラッシングの吐出数のデータが送出されるように構成されており、上記フラッシング量カウンタ52は、上記した定期フラッシング、定期まとめ打ちフラッシング、および休止時まとめ打ちフラッシングによってなされるフラッシングの吐出数を順次加算してカウントアップするように動作する。そして、フラッシング量カウンタ52より、空吸引制御手段54に対してカウントアップデータが送出されるように構成されている。
【0049】
上記空吸引制御手段54は、フラッシング量カウンタ52より送出されるカウントアップデータ基づいて、上記キャップ部材15内に噴射されたインクを吸引排出する空吸引動作を制御する。
【0050】
一方、この装置では、前回の空吸引動作から上記キャップ部材15が開放状態で経過した開放時間を計時する開放タイマ56と、前回の空吸引動作からの経過時間である放置時間を計時する放置タイマ57とを備えている。
【0051】
上記開放タイマ56は、空吸引動作の実行でリセットしてスタートされ、キャッピング手段11におけるキャップ部材15の上昇動作により一時停止し、キャップ部材15の下降動作に連動して再スタートをするように構成され、前回の空吸引動作を実行してからキャップ部材15が開放していた累積時間を計時する。なお、キャップ部材15は、クリーニング動作や装置の休止中以外の印刷中等において開放状態となる。上記放置タイマ57は、空吸引動作の実行でリセットしてスタートされ、上述したように、前回の空吸引動作からの経過時間である放置時間を計時する。
【0052】
そして、上記空吸引制御手段54は、上記開放タイマ56で計時された開放時間に基づいて空吸引動作を実行するタイミングを決定するよう制御する。
【0053】
すなわち、上記空吸引制御手段54は、上記フラッシング量カウンタ52でカウントされたフラッシング吐出されたインク量の累積値が所定のしきい値に達している場合に空吸引動作を行なうように構成されている。そして、上記空吸引制御手段54は、上記開放タイマ56で計時された開放時間に基づいて所定のテーブルを参照して上記しきい値が変更されるよう制御する。
【0054】
例えば、上記開放時間すなわち前回の空吸引動作からキャップ部材15が開放していた累積時間が長ければ、それだけキャップ部材15内にフラッシングで吐出されたインクの蒸発量が多く、キャップ部材15内に実際に残るインク量が少ないため、フラッシング量カウンタ52のカウント値としては大きな値まで空吸引せずにフラッシングを継続してもキャップ部材15が溢れることはない。したがって、この場合はしきい値としてのカウント値が後述する開放時間が短い場合よりも大きくなるように設定し、当該しきい値により空吸引動作を実行するタイミングを決定する。
【0055】
反対に、上記開放時間が短ければ、それだけキャップ部材15内にフラッシングで吐出されたインクの蒸発量が少なく、キャップ部材15内に実際に残るインク量が多いため、フラッシング量カウンタ52のカウント値としては小さな値で空吸引する必要がある。したがって、この場合はしきい値としてのカウント値が上述した開放時間が長い場合よりも小さくなるように設定し、当該しきい値により空吸引動作を実行するタイミングを決定する。
【0056】
また、上記空吸引制御手段54は、上記開放タイマ56で計時された開放時間に基づいて所定のテーブルを参照して空吸引動作における吸引時間と吸引速度の少なくとも一方が変更されるよう制御する。
【0057】
例えば、上記開放時間が長ければ、それだけキャップ部材15内にフラッシングで吐出されたインクの蒸発量が多く、キャップ部材15内に残ったインクの粘度が上昇しているため、空吸引によってキャップ部材15内のインクが排出されにくい状態になっている。したがって、この場合は空吸引動作における吸引時間と吸引速度の少なくとも一方が開放時間が短い場合よりも大きくなるように設定し、当該吸引時間と吸引速度の少なくとも一方により空吸引動作を実行する。
【0058】
反対に、上記開放時間が短ければ、それだけキャップ部材15内にフラッシングで吐出されたインクの蒸発量が少なく、キャップ部材15内に残ったインクの粘度上昇率が低いため、キャップ部材15内のインクの空吸引による排出性はそれほど悪くなっていない。したがって、この場合は空吸引動作における吸引時間と吸引速度の少なくとも一方が開放時間が長い場合よりも小さくなるように設定し、当該吸引時間と吸引速度の少なくとも一方により空吸引動作を実行する。
【0059】
また、上記空吸引制御手段54は、上記放置タイマ57で計時された放置時間に基づいて空吸引動作を実行するタイミングを決定するよう制御する。
【0060】
すなわち、上記空吸引制御手段54は、上記フラッシング量カウンタ52でカウントされたフラッシング吐出されたインク量の累積値が所定のしきい値に達している場合に空吸引動作を行なうよう構成されている。そして、上記空吸引制御手段54は、上記放置タイマ57で計時された放置時間に基づいて所定のテーブルを参照して上記しきい値が変更されるよう制御する。
【0061】
例えば、上記放置時間すなわち前回の空吸引動作からの経過時間が長ければ、キャップ部材15が封止状態で放置された時間が長く、封止状態であっても徐々にキャップ部材15内のインクが蒸発してその蒸発量も多くなる。このため、フラッシング量カウンタ52のカウント値としては大きな値まで空吸引せずにフラッシングを継続することが可能となるため、この場合はしきい値としてのカウント値が後述する放置時間が短い場合よりも大きくなるように設定し、当該しきい値により空吸引動作を実行するタイミングを決定する。
【0062】
反対に、上記放置時間が短ければ、それだけキャップ部材15内にフラッシングで吐出されたインクの蒸発量が少ないため、フラッシング量カウンタ52のカウント値としては小さな値で空吸引する必要がある。したがって、この場合はしきい値としてのカウント値が上述した放置時間が長い場合よりも小さくなるように設定し、当該しきい値により空吸引動作を実行するタイミングを決定する。
【0063】
また、上記空吸引制御手段54は、上記放置タイマ57で計時された放置時間に基づいて所定のテーブルを参照して空吸引動作における吸引時間と吸引速度の少なくとも一方が変更されるよう制御する。
【0064】
例えば、上記放置時間が長ければ、それだけキャップ部材15内のインクの蒸発量が多く、キャップ部材15内に残ったインクの粘度が上昇しているため、空吸引によってキャップ部材15内のインクが排出されにくい状態になっている。したがって、この場合は空吸引動作における吸引時間と吸引速度の少なくとも一方が放置時間が短い場合よりも大きくなるように設定し、当該吸引時間と吸引速度の少なくとも一方により空吸引動作を実行する。
【0065】
反対に、上記放置時間が短ければ、それだけキャップ部材15内のインクの蒸発量が少なく、キャップ部材15内に残ったインクの粘度上昇率が低いため、キャップ部材15内のインクの空吸引による排出性はそれほど悪くなっていない。したがって、この場合は空吸引動作における吸引時間と吸引速度の少なくとも一方が放置時間が長い場合よりも小さくなるように設定し、当該吸引時間と吸引速度の少なくとも一方により空吸引動作を実行する。
【0066】
上記空吸引制御手段54の制御において参照されるテーブルに格納された各しきい値は、各開放時間や放置時間の条件において、フラッシング動作によってキャップ部材15内に吐出されたインクが、キャップ部材15の内底部に配置された上記インク吸収材16を覆う程度まで充填される値である。
【0067】
上記空吸引制御手段54よりポンプ駆動手段45に対して制御信号が送出されると、キャップ部材15によるノズル形成面の封止が解除された状態において、吸引ポンプ14が所定の吸引時間と吸引速度の少なくとも一方により駆動される。これにより、キャップ部材15よりインクを排出する空吸引動作が実行される。
【0068】
図3は、上記記録装置によって定期フラッシングを行なうときの制御方法を説明するフローチャートである。
【0069】
図におけるステップS11においては、定期フラッシングタイマ49が所定時間(10秒)を計時したが否かが判定される。そして、所定時間を計時した場合(Yesの場合)には、ステップS12に進む。これは上述した定期フラッシングタイマ49より、フラッシング制御手段42に制御信号が送出されることで実行される。
【0070】
ステップS12では、開放タイマ56と放置タイマ57の少なくともいずれか一方の計時値の読み取りが行なわれ、ステップS13では、定期フラッシングが実行される。
【0071】
そして、ステップS14において、定期フラッシングタイマ49の計時は、ゼロリセットされ、スタートされる。続いてステップS15に示すようにフラッシング量カウンタ52に対して、前記した定期フラッシングによるインクの吐出数が加算される。これは、上述したフラッシング制御手段42よりフラッシング量カウンタ52に対して吐出数のデータを送出することによってなされる。
【0072】
そして、ステップS16においては、フラッシング量カウンタ52の計数値(累積値)がステップS12で読み取った開放時間と放置時間の少なくともいずれか一方に対応するしきい値に達したか否かが検証される。これは、上述したフラッシング量カウンタ52より空吸引制御手段54に対して送出されたフラッシング量カウンタ52のカウント値について、後述するテーブルを参照することによって判定される。
【0073】
そして、フラッシング量カウンタ52のカウント値がテーブルに規定されたしきい値に達していない(No)と判定した場合には、リターンされる。
【0074】
一方、ステップS16において、フラッシング量カウンタ52のカウント値が、テーブルに規定された所定のしきい値に達した(Yes)と判定した場合には、ステップS17に移行して、前記した空吸引動作が実行される。
【0075】
この空吸引動作の実行にあたっては、必要に応じて再びテーブルを参照して開放タイマ56と放置タイマ57の少なくともいずれか一方で計時された開放時間および放置時間に対応した空吸引時間と空吸引速度の少なくともいずれか一方を読み取り、空吸引制御手段54よりポンプ駆動手段45に対して制御信号を送出し、ポンプ駆動手段45は上記読み取った空吸引時間や空吸引速度で吸引ポンプ14を駆動する。これにより、キャップ部材15に貯留されたインク廃液は、吸引ポンプ14を介して廃液タンク18に廃棄される。
【0076】
上記空吸引動作が終了すると、ステップS18に移行し、フラッシング量カウンタ52のカウンタ値をリセットしたのち、ステップS19で開放タイマ56および放置タイマ57の計時をゼロリセットしてからスタートを行い、リターンする。
【0077】
図4は、上記空吸引制御手段54によるステップS16およびステップS17の制御で参照されるテーブルの一例を示したものである。
【0078】
図4(A)は、上記テーブルの第1例である。このテーブルは開放時間Tに応じて空吸引のタイミングを決めるしきい値を設定するものである。この例では、開放時間Tが1時間未満の場合のしきい値を5gとし、キャップ部材15内へのフラッシング吐出量のカウンタ値が5gを超えると空吸引を実行する。また、開放時間Tが1時間以上の場合のしきい値を10gとし、キャップ部材15内へのフラッシング吐出量のカウンタ値が10gを超えるまで空吸引を実行せず、10gを超えると空吸引を実行する。
【0079】
図4(B)は、上記テーブルの第2例である。このテーブルは開放時間Tに応じて空吸引のタイミングを決めるしきい値を設定するとともに、空吸引時間を設定するものである。この例では、開放時間Tが1時間未満の場合、しきい値を5gに設定するとともに、空吸引時間を10秒に設定して空吸引を実行する。また、開放時間Tが1時間以上の場合、しきい値を10gに設定するとともに、空吸引時間を20秒に設定して空吸引を実行する。
【0080】
図4(C)は、上記テーブルの第3例である。このテーブルは開放時間Tと放置時間Tとに応じて空吸引のタイミングを決めるしきい値を設定するものである。この例では、開放時間Tが1時間未満で放置時間Tが10時間未満の場合、しきい値を5gに設定する。また、開放時間Tが1時間未満で放置時間Tが10時間以上の場合、しきい値を7gに設定する。さらに、開放時間Tが1時間以上で放置時間Tが10時間未満の場合、しきい値を10gに設定する。開放時間Tが1時間以上で放置時間Tが10時間以上の場合、しきい値を12gに設定する。
【0081】
図4(D)は、上記テーブルの第4例である。このテーブルは開放時間Tと放置時間Tとに応じ、空吸引のタイミングを決めるしきい値を設定するとともに、空吸引時間を設定するものである。この例では、開放時間Tが1時間未満で放置時間Tが10時間未満の場合、しきい値を5gに設定するとともに、空吸引時間を10秒に設定する。また、開放時間Tが1時間未満で放置時間Tが10時間以上の場合、しきい値を7gに設定するとともに、空吸引時間を15秒に設定する。さらに、開放時間Tが1時間以上で放置時間Tが10時間未満の場合、しきい値を10gに設定するとともに、空吸引時間を20秒に設定する。開放時間Tが1時間以上で放置時間Tが10時間以上の場合、しきい値を12gに設定するとともに、空吸引時間を25秒に設定する。
【0082】
上記第1例〜第4例において、カウント値や空吸引時間の具体的数値はあくまで一例を示したものに過ぎず、これらの数値に限定する趣旨ではない。上記第1例〜第4例では、カウント値をインク重量(g)で設定するようにしたが、例えばフラッシングショット数をカウント値とすることもできる。また、上記第1例〜第4例では、空吸引時間が変更されるよう設定する例を示したが、空吸引速度が変更されるよう設定してもよいし、双方が変更されるよう設定するようにもできる。
【0083】
以上のように、本実施形態の第1例によれば、キャップ部材15の開放時間に基づいてキャップ部材15内のインクを吸引排出する空吸引動作を実行するタイミングを決定するため、フラッシング動作で噴射されたインクだけでなく、開放状態のキャップ部材15からの蒸発量を加味してキャップ部材15に残っているインクの量を算出し、それに基づいてキャップ部材15の空吸引を実行可能となるため、キャップ部材15からインクが溢れることもなく、確実に適正なタイミングで空吸引を実行でき、従来に比べて空吸引の頻度を大幅に低下できる。したがって、従来問題となっていた印刷効率の低下や、吸引ポンプ14の劣化に伴う短寿命化を大幅に改善することが可能となる。
【0084】
上記第1例において、上記インク噴射ヘッドからフラッシング動作により噴射されたインク量の累積値をカウントするフラッシング量カウンタ52をさらに備え、上記フラッシング量カウンタ52でカウントされたインク量の累積値が所定の閾値に達している場合に空吸引動作を行なうように構成され、上記開放時間に基づいて上記閾値を変更するよう構成されている場合には、インクの蒸発量を加味した適切な閾値で空吸引動作のタイミングを設定できるため、キャップ部材15からインクが溢れることもなく、確実に適正なタイミングで空吸引を実行でき、従来に比べて空吸引の頻度を大幅に低下できる。
【0085】
本実施形態の第2例によれば、キャップ部材15の開放時間に基づいてキャップ部材15内のインクを吸引排出する空吸引動作における吸引時間と吸引速度の少なくとも一方を変更する。このように、開放状態のキャップ部材15からの蒸発によるインクの粘度上昇を見込んで空吸引における吸引時間と吸引速度の少なくとも一方を変更して実行するため、従来のように十分に空吸引できずに高粘度のインクがキャップ部材15内に残存するという不都合が解消される。
【0086】
本実施形態の第3例によれば、放置時間に基づいてキャップ部材15内のインクを吸引排出する空吸引動作を実行するタイミングを決定することから、キャップ部材15を封止状態で放置している間もキャップ部材15内のインクは徐々に蒸発することから、その蒸発量を加味してキャップ部材15に残っているインクの量を算出し、それに基づいてキャップ部材15の空吸引を実行可能となるため、キャップ部材15からインクが溢れることもなく、確実に適正なタイミングで空吸引を実行でき、従来に比べて空吸引の頻度を大幅に低下できる。したがって、従来問題となっていた印刷効率の低下や、吸引ポンプ14の劣化に伴う短寿命化を大幅に改善することが可能となる。
【0087】
上記第3例において、上記インク噴射ヘッドからフラッシング動作により噴射されたインク量の累積値をカウントするフラッシング量カウンタ52をさらに備え、上記フラッシング量カウンタ52でカウントされたインク量の累積値が所定の閾値に達している場合に空吸引動作を行なうように構成され、上記放置時間に基づいて上記閾値を変更するよう構成されている場合には、インクの蒸発量を加味した適切な閾値で空吸引動作のタイミングを設定できるため、キャップ部材15からインクが溢れることもなく、確実に適正なタイミングで空吸引を実行でき、従来に比べて空吸引の頻度を大幅に低下できる。
【0088】
本実施形態の第4例によれば、放置時間に基づいてキャップ部材15内のインクを吸引排出する空吸引動作における吸引時間と吸引速度の少なくとも一方を変更する。このように、キャップ部材15を封止状態で放置している間もキャップ部材15内のインクは徐々に蒸発することから、その蒸発による粘度上昇を見込んで空吸引における吸引時間と吸引速度の少なくとも一方を変更して実行するため、従来のように十分に空吸引できずに高粘度のインクがキャップ部材15内に残存するという不都合が解消される。
【0089】
なお、本発明は、上記各実施形態に限定するものではなく、下記のような変形例を包含する趣旨である。
【0090】
上述した説明では、定期フラッシング動作において、開放時間や放置時間に基づく空吸引タイミングや空吸引時間等を変更する例を説明したが、定期まとめ打ちフラッシング動作や、動作電源がオフ操作された場合の休止時フラッシング動作、記録用紙の排出動作時に行なわれる排紙時フラッシング動作において開放時間や放置時間に基づく空吸引タイミングや空吸引時間等を変更するようにすることもできる。
【0091】
また、上述した実施形態では、流体受け部としてのインク受け器がキャップ部材15である例を説明したが、これに限定するものではなく、キャップ部材15以外に設けられてフラッシング吐出のインクを受けるフラッシングボックスにおいて本発明を適用することも可能である。この場合、フラッシングボックスは開放状態と封止状態をとりうるよう蓋部材や開閉機構を備えたものとする。もちろん、キャップ部材15とフラッシングボックスを併用した装置に本発明を適用することも可能である。
【0092】
また、上記各実施形態では、キャップ部材15の開放時間や放置時間に基づいて空吸引タイミングや空吸引時間等を変更する例を説明したが、さらに、環境の温湿度を計測する温湿度センサを設け、開放時間や放置時間に加えて温湿度センサで検知した環境条件を加味して空吸引タイミングや空吸引時間等を変更するようにすることも可能である。
【0093】
例えば、環境温度が高ければインクは蒸発しやすくなるので、閾値としてのカウント値をより大きめに設定し、反対に環境温度が低ければインクは蒸発しにくくなるので、閾値としてのカウント値をより小さめに設定することができる。同様に、環境温度が高ければインクは蒸発しやすくなるので、吸引時間や吸引速度をより大きめに設定し、反対に環境温度が低ければインクは蒸発しにくくなるので、吸引時間や吸引速度をより小さめに設定することができる。
【0094】
また、例えば、環境湿度が低ければインクは蒸発しやすくなるので、閾値としてのカウント値をより大きめに設定し、反対に環境湿度が高ければインクは蒸発しにくくなるので、閾値としてのカウント値をより小さめに設定することができる。同様に、環境湿度が低ければインクは蒸発しやすくなるので、吸引時間や吸引速度をより大きめに設定し、反対に環境湿度が高ければインクは蒸発しにくくなるので、吸引時間や吸引速度をより小さめに設定することができる。
【0095】
上記実施形態において、記録ヘッド6としては、圧力発生手段として軸方向に伸縮する圧電振動子を適用したものや、面方向でたわみ振動する圧電振動子を使用したもの、あるいは、圧力発生室にインクを加熱し気化させる発熱素子を設けたもの等を適用することができる。
【0096】
また、本発明の流体噴射装置が対象とする流体としては、上述したインク等の流体に限定するものではなく、金属ペースト,粉体,液晶その他の高い粘度材料等、各種の流体を対象とする趣旨である。そして、流体噴射装置の代表例としては、上述したような画像記録用のインクジェット式記録ヘッドを備えたインクジェット式記録装置があるが、本発明の流体供給装置は、その他の流体噴射装置として、例えば液晶ディスプレー等のカラーフィルタ製造に用いられる色材噴射ヘッドを備えた装置、有機ELディスプレー、面発光ディスプレー(FED)等の電極形成に用いられる電極材(導電ペースト)噴射ヘッドを備えた装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物噴射ヘッドを備えた装置、精密ピペットとしての試料噴射ヘッドを備えた装置等、各種の流体噴射装置に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明の一実施形態としてのインクジェット式記録装置を示す平面図。
【図2】上記記録装置の制御回路を示す機能ブロック図。
【図3】上記記録装置の作用を示すフローチャート。
【図4】第1例〜第4例におけるテーブルの一例を示す図。
【符号の説明】
【0098】
1 キャリッジ,2 キャリッジモータ,3 タイミングベルト,4 ガイド部材,5 紙送り部材,6 記録ヘッド,7 サブタンクユニット,8 カートリッジホルダ,9B ブラックインクカートリッジ,9C,9M,9Y カラーインクカートリッジ,10 インク供給チューブ,11 キャッピング手段,12 ワイピング部材,14 吸引ポンプ,15 キャップ部材,16 インク吸収材,17 吸収材,18 廃液タンク,40 印刷制御手段,41 ヘッド駆動手段,42 フラッシング制御手段,43 クリーニング制御手段,44 クリーニング指令検知手段,45 ポンプ駆動手段,46 クリーニング指令スイッチ,47 休止タイマ,48 累積印字タイマ,49 定期フラッシングタイマ,50 定期まとめ打ちタイマ,51 休止時まとめ打ちタイマ,52 フラッシング量カウンタ,54 空吸引制御手段,55 キャリッジ制御手段,56 開放タイマ,57 放置タイマ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルから流体を噴射する流体噴射ヘッドと、上記流体噴射ヘッドからターゲットへの流体噴射とは無関係の流体噴射を行ってノズルの噴射特性を回復するフラッシング動作を行なうフラッシング制御手段と、上記フラッシング動作によって噴射された流体を受けるとともに上記流体噴射ヘッドから離間した開放状態と上記流体噴射ヘッドに当接した封止状態をとりうる流体受け部と、上記流体受け部内に噴射された流体を吸引排出する空吸引動作を制御する空吸引制御手段と、前回の空吸引動作から上記流体受け部が開放状態で経過した開放時間を計時する開放タイマとを備え、上記空吸引制御手段は、上記開放時間に基づいて空吸引動作における吸引時間と吸引速度の少なくとも一方が変更されるよう制御することを特徴とする流体噴射装置。
【請求項2】
ノズルから流体を噴射する流体噴射ヘッドと、上記流体噴射ヘッドからターゲットへの流体噴射とは無関係の流体噴射を行ってノズルの噴射特性を回復するフラッシング動作を行なうフラッシング制御手段と、上記フラッシング動作によって噴射された流体を受けるとともに上記流体噴射ヘッドから離間した開放状態と上記流体噴射ヘッドに当接した封止状態をとりうる流体受け部と、上記流体受け部内に噴射された流体を吸引排出する空吸引動作を制御する空吸引制御手段と、前回の空吸引動作からの経過時間である放置時間を計時する放置タイマとを備え、上記空吸引制御手段は、上記放置時間に基づいて空吸引動作における吸引時間と吸引速度の少なくとも一方が変更されるよう制御することを特徴とする流体噴射装置。
【請求項3】
ノズルから流体を噴射する流体噴射ヘッドと、上記流体噴射ヘッドからターゲットへの流体噴射とは無関係の流体噴射を行ってノズルの噴射特性を回復するフラッシング動作を行なうフラッシング制御手段と、上記フラッシング動作によって噴射された流体を受けるとともに上記流体噴射ヘッドから離間した開放状態と上記流体噴射ヘッドに当接した封止状態をとりうる流体受け部と、上記流体受け部内に噴射された流体を吸引排出する空吸引動作を制御する空吸引制御手段と、前回の空吸引動作から上記流体受け部が開放状態で経過した開放時間を計時する開放タイマとを備え、上記空吸引制御手段は、上記開放時間に基づいて空吸引動作を実行するタイミングを決定するよう制御することを特徴とする流体噴射装置。
【請求項4】
上記流体噴射ヘッドからフラッシング動作により噴射された流体量の累積値をカウントするカウント手段をさらに備え、上記空吸引制御手段は、上記カウント手段でカウントされた流体量の累積値が所定の閾値に達している場合に空吸引動作を行なうとともに、上記開放時間に基づいて上記閾値が変更されるよう制御する請求項3記載の流体噴射装置。
【請求項5】
ノズルから流体を噴射する流体噴射ヘッドと、上記流体噴射ヘッドからターゲットへの流体噴射とは無関係の流体噴射を行ってノズルの噴射特性を回復するフラッシング動作を行なうフラッシング制御手段と、上記フラッシング動作によって噴射された流体を受けるとともに上記流体噴射ヘッドから離間した開放状態と上記流体噴射ヘッドに当接した封止状態をとりうる流体受け部と、上記流体受け部内に噴射された流体を吸引排出する空吸引動作を制御する空吸引制御手段と、前回の空吸引動作からの経過時間である放置時間を計時する放置タイマとを備え、上記空吸引制御手段は、上記放置時間に基づいて空吸引動作を実行するタイミングを決定するよう制御することを特徴とする流体噴射装置。
【請求項6】
上記流体噴射ヘッドからフラッシング動作により噴射された流体量の累積値をカウントするカウント手段をさらに備え、上記空吸引制御手段は、上記カウント手段でカウントされた流体量の累積値が所定の閾値に達している場合に空吸引動作を行なうとともに、上記放置時間に基づいて上記閾値が変更されるよう制御する請求項5記載の流体噴射装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2008−238431(P2008−238431A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−78432(P2007−78432)
【出願日】平成19年3月26日(2007.3.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】