説明

流体圧回路

【課題】 伸縮体における伸縮の可不可の制御と、伸縮体の伸縮時における最適な減衰力の発生とを可能にしながら、その具現化にあって高価な構成の採用を回避し得る。
【解決手段】 伸縮体1とリザーバタンクTとを接続する流路L中に配設されて作動流体の通過時に所定の減衰作用をする減衰手段2と、この減衰手段2の上流側に配設されて上記の流路lの開閉を可能にするロック機構3とを有し、ロック機構3が作動時に上記の流路Lを開閉するロック弁31と、このロック弁31に接続されて外部信号の入力時あるいは解除時にロック弁31の作動の可不可を可能にする切換弁32とを有してなる流体圧回路において、切換弁32に入力される外部信号がロック機構3の上流側から誘導されるパイロット圧とされてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、流体圧回路に関し、特に、減衰作用をする伸縮体を有する免震装置あるいは大型機器への適用に向く流体圧回路の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
減衰作用をする伸縮体を有する免震装置あるいは大型機器への適用に向く流体圧回路としては、これまでに種々の提案があり、たとえば、特許文献1には、免震装置を構成するボールアイソレータなどの免震支承に並列される油圧シリンダなどの伸縮体の伸縮と、この伸縮体の伸縮に伴う減衰作用を可能にする提案が開示されている。
【0003】
すなわち、この文献開示の流体圧回路は、伸縮体とリザーバタンクとを接続する流路中に減衰弁たる減衰手段を有してなり、この減衰手段は、伸縮体からの作動油が通過するとき、伸縮体の伸縮を抑制する減衰作用を具現化する。
【0004】
その一方で、この流体圧回路は、上記の流路中にあって、減衰手段の上流側に配設されて減衰手段の作動の可不可を選択するロック機構を有し、このロック機構は、流路を開閉するロック弁と、このロック弁に接続されてこのロック弁の作動の可不可を選択する切換弁とを有してなる。
【0005】
そして、この流体圧回路にあって、ロック機構における切換弁は、常閉型のオンオフ弁たるソレノイドバルブからなり、種々の検知手段からの信号に基づく通電時に連通ポジション(オン状態)に切り換わってロック弁のオン作動を許容し、通電解除時に遮断ポジション(オフ状態)に戻ってロック弁をオフ作動させ、このロック弁をロック状態に維持する。
【0006】
それゆえ、この文献開示の流体圧回路にあっては、たとえば、免震支承に並列する伸縮体が風による微小なストロークで伸縮する場合に、ロック機構におけるロック弁がロック状態に維持されて、伸縮体の伸縮を阻止する。
【0007】
一方、伸縮体が地震による揺れで大きいストロークで伸縮する場合には、ロック機構における切換弁が通電されてオン状態になり、ロック機構におけるロック弁をオン作動(開放作動)させて減衰手段の作動による減衰力発生で伸縮体の伸縮を抑制する。
【0008】
そして、地震の揺れによる伸縮体の伸縮が抑制されて収まると、タイマーを経るなどした信号の解除で切換弁がオフ状態に復帰し、したがって、ロック弁がオフ作動(閉鎖作動)してロック状態に維持される。
【0009】
ちなみに、上記の文献開示の流体圧回路にあっては、伸縮体の伸縮ストロークが極めて大きく、したがって、ロック機構におけるロック弁および減衰手段を通過する作動油量が過大になる場合には、ロック機構の上流側に配設のリリーフ弁が作動して、その過大となる伸縮体からの作動油をリザーバタンクに放出する。
【特許文献1】特開2005‐351320号公報(要約,明細書中の段落0007,同0017,図1参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記した文献開示の流体圧回路にあっては、所定のロック機能の発揮および減衰機能の発揮について、基本的に不具合がある訳ではないが、実施に際して、些かの不具合があると指摘される可能性がある。
【0011】
すなわち、上記した文献開示の提案にあって、ロック機構における切換弁は、種々の検知手段からの信号に基づく通電でオン状態に切り換わり、通電解除でオフ状態に戻るソレノイドバルブからなる。
【0012】
それゆえ、この流体圧回路を利用する場合には、ロック機構の適正な作動の保障のため、種々の検知手段が伸縮体やその周辺に配設されることが必須になり、その配設を要しない場合に比較すると、この流体圧回路を具体化する構成を高価なものにする危惧がある。
【0013】
そして、上記の流体圧回路にあっては、切換弁がソレノイドバルブからなるから、切換弁が電気部品の経年劣化で作動不能にならないようにするために、あらかじめ電気部品を交換するなどのメンテナンスを必須にし、性能保障を容易にしない不具合がある。
【0014】
この発明は、上記した事情を鑑みて創案されたものであって、その目的とするところは、伸縮体における伸縮の可不可の制御と、伸縮体の伸縮時における最適な減衰力の発生を可能にするのはもちろんのこと、その具現化にあって高価な構成の採用を回避し得て、その汎用性の向上を期待するのに最適となる流体圧回路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記した目的を達成するために、この発明による流体圧回路の構成を基本的には、伸縮体とリザーバタンクとを接続する流路中に配設されて作動流体の通過時に所定の減衰作用をする減衰手段と、この減衰手段の上流側に配設されて上記の流路の開閉を可能にするロック機構とを有し、このロック機構が作動時に上記の流路を開閉するロック弁と、このロック弁に接続されて外部信号の入力時あるいは解除時にこのロック弁の作動の可不可を可能にする切換弁とを有してなる流体圧回路において、上記の切換弁に入力される外部信号が上記のロック弁の上流側から誘導されるパイロット圧とされてなるとする。
【発明の効果】
【0016】
それゆえ、この発明によれば、伸縮体とリザーバタンクとを接続する流路中に配設されて作動流体の通過時に所定の減衰作用をする減衰手段と、この減衰手段の上流側に配設されて上記の流路の開閉を可能にするロック機構とを有し、ロック機構が作動時に上記の流路を開閉するロック弁と、このロック弁に接続されて外部信号の入力時あるいは解除時にロック弁の作動の可不可を可能にする切換弁とを有してなる流体圧回路において、切換弁に入力される外部信号がロック機構の上流側から誘導されるパイロット圧とされてなるから、切換弁が入力される外部信号を電気的信号にするソレノイドバルブからなる場合に比較して、切換弁の大型化やコストの高い部品の使用を回避できる。
【0017】
のみならず、切換弁がパイロット圧を外部信号にするから、伸縮体やその周辺に電気的信号を出力するための種々の検知手段を設ける必要がなく、また、検知手段からの検知結果を電気的信号にするための演算処理などする制御手段を設ける必要もなく、この流体圧回路を具体化する構成を高価なものせずして、その汎用性の向上を期待し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に、図示した実施形態に基づいてこの発明を説明するが、この発明による流体圧回路は、たとえば、図1に示すように、構築物Aと地盤Gとの間に配設される免震装置を構成する伸縮体1への具現化に向く。
【0019】
免震装置は、上記の伸縮体1に言わば並列されるボールアイソレータからなる免震支承Bを有しており、この免震支承Bは、たとえば、地震によって地盤Gが横揺れするときに、この地盤Gの横揺れを構築物Aに伝播させないようにする。
【0020】
そして、伸縮体1は、たとえば、地震による地盤Gの横揺れに起因して構築物Aが横揺れするとき、この構築物Aにおける横揺れを速やかに鎮静化するための減衰作用をする。
【0021】
このことからすると、この免震支承Bについては、図示するところに代えて、図示しないが、凡そ免震機能を発揮する限りには、積層ゴム柱などからなる支柱構造の免震支承が利用されて良い。
【0022】
ちなみに、この発明による流体圧回路は、その構成からすると、図示しないが、上記の伸縮体1が床面などに設置されて大型機器に連結され、この大型機器における減衰作用を具現化するとしても良い。
【0023】
伸縮体1は、たとえば、液体圧シリンダたる油圧シリンダからなり、図2に示すように、この油圧シリンダは、シリンダ体1aと、このシリンダ体1aに対して出没可能に連繋するロッド体1bと、このロッド体1bに連設されながらシリンダ体1a内に摺動可能に収装されてこのシリンダ体1a内にロッド側室R1とピストン側室R2を画成するピストン体1cとを有してなる。
【0024】
そして、この油圧シリンダたる伸縮体1にあって、上記のロッド側室R1とピストン側室R2は、シリンダ体1aの外に配設の連通路1dを介して連通可能とされる一方で、この連通路1dに配設のチェック弁1eで、ピストン側室R2のロッド側室R1への連通が許容される一方で、その逆の流れとなるロッド側室R1のピストン側室R2への連通が遮断される、いわゆる、ユニフロー型に設定されている。
【0025】
また、この伸縮体1にあっては、吸い込み路1fを介してのリザーバタンクTからの作動油のピストン側室R2への流入が許容されており、この吸い込み路1fには、ピストン側室R2側からの作動油のリザーバタンクTへの逆流を阻止するチェック弁1gが配設されている。
【0026】
それゆえ、上記の伸縮体1にあっては、ロッド体1bがシリンダ体1a内に没入する収縮作動時に、リザーバタンクTへの流出をチェック弁1gで阻止されたピストン側室R2の作動油が連通路1dに流入しこの連通路1dに配設のチェック弁1eを介してシリンダ体1a内のロッド側室R1に流入し、このロッド側室R1から流体圧回路を構成する後述のメインの流路Lに流入する。
【0027】
そして、上記と逆に、ロッド体1bがシリンダ体1a内から突出する伸長作動時には、ピストン体1cの移動で収縮されるロッド側室R1からの作動油が連通路1dのチェック弁1eで反対側のピストン側室R2への流入を阻止されるため上記のメインの流路Lに流入する。
【0028】
なお、ピストン体1cの移動で膨張するピストン側室R2には、リザーバタンクTからの作動油が吸い込み流路1fおよびこの流路1f中のチェック弁1gを介して補充される。
【0029】
なお、上記の伸縮体1は、油圧シリンダからなり、したがって、作動流体に作動油を利用するが、流体圧シリンダとされる限りには、他の流体を使用しても良く、たとえば、錆などの弊害がなければ水を作動流体にしても良い。
【0030】
また、図示するところでは、上記の伸縮体1が油圧シリンダからなるが、凡そ流体の流出入で伸縮する限りには、免震装置や他の機器類に適用するにあたり強度などの不具合がなければ、たとえば、油圧シリンダ以外にも流体の流出入で伸縮可能とされる容器が利用されても良い。
【0031】
ところで、流体圧回路は、伸縮体1におけるロッド側室R1とリザーバタンクTとを接続するメインとなる流路L中に配設されて作動流体たる作動油の通過時に所定の減衰作用をする減衰手段2と、この減衰手段2の上流側に配設されて上記の流路Lの開閉を可能にするロック機構3とを有してなる。
【0032】
そして、ロック機構3は、作動時に上記の流路Lを開閉するロック弁31と、このロック弁31に接続されて外部信号の入力時あるいは解除時にロック弁31の作動の可不可を可能にする切換弁32とを有してなる。
【0033】
まず、減衰手段2は、基本的には、作動油の通過時に所定の減衰作用をするもので、それゆえ、その具体的な構成については、任意の構成を選択できるが、図示するところでは、メインの流路Lにおける油圧状況に応じた減衰作用を具現化できる可変型の減衰弁からなる。
【0034】
この可変型の減衰弁からなる減衰手段2にあっては、伸縮体1の伸縮速度に応じて減衰特性を変化させ得るので、伸縮体1を適用する免震装置に最適な減衰特性を得られる点で有利となる。
【0035】
なお、減衰手段2として、単なる絞り弁を使用しても良いが、図3に示す後述するこの発明の最適な実施形態の場合のように、伸縮体1とリザーバタンクTとの間で並列する複数の流路L1、L2,L3,L4がそれぞれ減衰手段2とロック機構3におけるロック弁31とを有する場合に、各減衰手段2がそれぞれ異なる減衰特性を発揮する設定の場合の利用に向くであろう。
【0036】
つぎに、ロック弁31は、具体的には、弁体たるポペット31aを有し、このポペット31aは、流路L中に形成される弁座31bに附勢手段31cで附勢された状態で着座しながら上記弁座31bよりも上流側の油圧をポペット31aの背面側に導く通路31dを有し、この通路31dには絞り31eを有し、さらに、図1中で右端面側となる附勢手段31cを有する背面側を後述する切換弁32に連通している。
【0037】
それゆえ、このロック弁31にあっては、図示するように、ポペット31aが前進状態にあって弁座31bに着座した状態にあるときに流路Lを閉鎖し、したがって、伸縮体1におけるロッド側室R1からの作動油が流路Lを介して後述する減衰手段2側、すなわち、リザーバタンクTに流出し得なくなり、その結果、伸縮体1が伸縮不能なロック状態に維持される。
【0038】
そして、このロック弁31にあっては、図示しないが、ポペット31aが附勢バネ31cの附勢力に打ち勝って図中で右行するように後退するときに流路Lを開放し、したがって、伸縮体1におけるロッド側室R1からの作動油が流路Lおよび減衰手段2を介してリザーバタンクTに流出することを許容し、このとき、減衰手段2が作動油の通過によって所定の減衰作用を具現化する。
【0039】
なお、この実施形態において、ロック弁31は、ポペット31aを有するとするが、このポペット31aが機能するところを勘案すると、これに代えて、図示しないが、弁体としてスプールが選択されても良い。
【0040】
また、上記したところでは、ロック弁31は、前進時に流路Lを閉鎖し、後退時に流路Lを開放するが、この発明が意図するところからすれば、これに代えて、前進時に流路Lを開放し、後退時に流路Lを閉鎖するとしても良い。
【0041】
切換弁32は、図示するところでは、パイロット切換弁からなり、外部信号たるパイロット圧の供給時に切り換わって上記のロック弁31におけるポペット31aの背面側のリザーバタンクTへの連通を許容する連通ポジション32aと、外部信号たるパイロット圧の解消時でもあるパイロット圧の供給前に維持されて上記のロック弁31におけるポペット31aの背面側のリザーバタンクTへの連通を阻止する遮断ポジション32bとを有している。
【0042】
そして、この切換弁32にあって、上記の連通ポジション32aおよび遮断ポジション32bの維持については、この切換弁32に組み込まれたディテント機構32cによって維持されるとし、また、この切換弁32は、外部からの操作力の入力手段たるハンドル32dを有し、このハンドル32dに対する手動操作で連通ポジション32aから遮断ポジション32bへの復帰作動を可能にする。
【0043】
それゆえ、この切換弁32にあっては、図示するように、遮断ポジション32bに維持されるときに、上記したロック弁31におけるポペット31aの背面側のリザーバタンクTへの連通を遮断し、したがって、ロック弁31が開放作動することを阻止する。
【0044】
そして、この切換弁32にあっては、図示しないが、後述するパイロット圧の供給を受けて連通ポジション32aに切り換えられるときに、上記したロック弁31におけるポペット31aの背面側のリザーバタンクTへの連通を許容して上記のロック弁31の開放作動を許容する。
【0045】
また、この切換弁32にあっては、ディテント機構32cを有して連通ポジション32aなり遮断ポジション32bを維持し得るとしているから、パイロット圧が解消され、したがって、この切換弁32が遮断ポジション32bに戻されても良い状況になっても、言わばすぐさま遮断ポジション32bに戻らない。
【0046】
その結果、たとえば、この切換弁32が連通ポジション32aに切り換わり、したがって、爾後に伸縮体1の伸縮が鎮静化された状態になっても、すぐさま遮断ポジション32bに戻らないが、実際を鑑みるとそれで足りると言い得る。
【0047】
すなわち、たとえば、地震で構築物Aが横揺れし、このとき、切換弁32が連通ポジション32aに切り換わり、したがって、伸縮体1の伸縮が許容され、その後、地震が収まり、構築物Aの横揺れが収まり、したがって、伸縮体1の伸縮が収まったとき、たとえば、直ちに構築物Aの床下に潜って、この切換弁31において遮断ポジション32bに戻すことは余りあり得ないと言い得る。
【0048】
つまり、地震による構築物Aの揺れが収まった後は、構築物Aに異変がないかが点検されるであろうが、免震装置において、切換弁32が直ちに遮断ポジション32bに戻されなければならない必要性は少ないと言い得る。
【0049】
以上からすると、この発明におけるように、切換弁32において、遮断ポジション32bへの戻し操作は、ハンドル32dを利用した手動操作によることで充分であり、また、ハンドル操作で遮断ポジション32bに戻す場合には、言わば自動的に遮断ポジション32bに戻す場合に比較して、この切換弁32の構成をいたずらに複雑にしなくて済み、部品コストの上からも有利なると言い得る。
【0050】
上記した切換弁32にあっては、外部信号たるパイロット圧の供給時に連通ポジション32aに切り換わり、外部信号たるパイロット圧の解消時に遮断ポジション32bに戻り得るとするが、この発明が意図するところからすれば、これに代えて、パイロット圧の解消時に連通ポジション32aに切り換わり、パイロット圧の供給時に遮断ポジション32bに戻り得るとしても良い。
【0051】
一方、前記したように、この発明にあって、切換弁32には、外部信号としてパイロット圧が入力され、そして、このパイロット圧は、図示するところにあって、前記したロック機構3を構成するロック弁31の上流側からパイロット流路4を介して誘導される。
【0052】
すなわち、パイロット流路4は、基端が前記したメインの流路Lに接続され、途中にパイロット圧を設定するシーケンス弁41を有すると共に、このパイロット流路4におけるいわゆる逆流、すなわち、伸縮体1側からのパイロット流路4への安定した油圧の供給を可能にするチェック弁42を有して、切換弁32にパイロット圧を誘導する。
【0053】
ちなみに、図示するパイロット流路4にあっては、リザーバタンクTに繋がる手前にこのパイロット流路4を開閉できる手動バルブ43を有してなるが、この手動バルブ43は、パイロット流路4における圧籠りを回避する、すなわち、前記した切換弁32において遮断ポジション32bに戻す操作の際に、パイロット流路4にパイロット圧が残り、したがって、遮断ポジション32bへの戻し操作が円滑に実現できなくなることを回避するための圧抜きを可能にする。
【0054】
それゆえ、この手動バルブ43にあっては、前記したように、切換弁32の実際の作動を勘案すると、すなわち、切換弁32において経時的に作動油が漏れてパイロット圧が解消する状態になり得ることを勘案すると、その配設が省略されても良いと言い得るが、図示するところでは、この手動バルブ43を省略すると切換弁32へのパイロット圧の供給が不能になる。
【0055】
そこで、このパイロット流路4にあって、図示しないが、手動バルブ43に代える絞りを配設して切換弁32に対するパイロット圧の供給を保障するとしても良く、また、パイロット流路4は、切換弁32に接続されて終り、切換弁32にリザーバタンクTに接続する連通するドレン流路を別途接続すると共に、このドレン流路に上記の手動バルブ43を配設するとしても良い。
【0056】
一方、この発明による流体圧回路にあっては、伸縮体1とリザーバタンクTとを接続するリリーフ流路5を設けると共に、このリリーフ流路5中に伸縮体1における過大油圧作用を回避するリリーフ弁51を設けてなる。
【0057】
それゆえ、このリリーフ流路5中にリリーフ弁51を設けてなる流体圧回路にあっては、伸縮体1における過大油圧作用を回避し得るから、たとえば、地震で最伸長状態あるいは最収縮状態になるような場合にも、伸縮体1が作動油漏れなどを招来せずして伸縮可能となり、したがって、構築物Aにおける強度に依存した耐震を実現可能にする。
【0058】
図3に示すところは、この発明の他の実施形態を示すものであるが、この実施形態においては、伸縮体1とリザーバタンクTとを接続する流路がL1,L2,L3,L4の複数とされると共に、各流路L1,L2,L3,L4に減衰手段2とロック機構3におけるロック弁31が配設される一方で、各ロック弁31に単一の切換弁32が接続され、この切換弁32に各ロック機構3の上流側から誘導されるパイロット圧が外部信号として入力されるとしている。
【0059】
なお、この図3に示すところにおいて、その構成が前記した図2に示すところと同様となるところについては、図中に同一の符号を付するのみとして、要する場合を除き、その説明を省略する。
【0060】
それゆえ、この実施形態による場合には、まず、流路が複数とされるから、伸縮体1からリザーバタンクTに向けての作動流体の流量を大きくでき、減衰手段2による減衰作用に自由度を持たせることが可能になる。
【0061】
この場合に、各減衰手段2が同一の構成からなり、したがって、同一の減衰特性を発揮するとしても良く、また、各減衰手段2が異なる構成からなり、したがって異なる減衰特性を発揮するとしても良い。
【0062】
そして、この実施形態による場合には、減衰手段2の作動の可不可を選択するロック機構3におけるロック弁31が各減衰手段2に対応して設けられるので、この減衰手段2とロック弁31とからなるいわゆる減衰要素において、いずれかにおける作動不良などのフェール時にも、全く減衰作用が具現化されなくなるような不具合の招来を回避できる。
【0063】
また、この実施形態にあっても、切換弁が入力される外部信号を電気的信号にするソレノイドバルブからなる場合に比較して、切換弁32の大型化やコストの高い部品の使用を回避でき、切換弁32がパイロット圧を外部信号にするから、伸縮体1やその周辺に電気的信号を出力するための種々の検知手段を設ける必要がなく、また、検知手段からの検知結果を電気的信号にするための演算処理などする制御手段を設ける必要もない。
【0064】
なお、図示する実施形態においては、ロック弁31が同一の構成からなるが、パイロット圧を誘導する流路に可変絞りを設けるなどして、各切換弁32における作動タイミングを変更可能にしても良い。
【0065】
前記したところでは、免震装置にあって、伸縮体1は、通常は伸縮が阻止されるロック状態に維持されるとしたが、この発明が意図するところは、伸縮体1の伸縮を可能にするロック機構3におけるロック弁31の作動が切換弁32によるとし、しかも、この切換弁32の作動がパイロット圧を外部信号とするところにあるから、この観点からすれば、伸縮体1が通常は伸縮可能な状態にあり、地震の揺れの入力で瞬時にロック弁31がロック状態に切り換わると共に、切換弁32の作動が可能とされるとしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】この発明の流体圧回路が具現化される伸縮体を有する免震装置を原理的に示す図である。
【図2】この発明の一実施形態による流体圧回路を伸縮体と共に示す回路図である。
【図3】他の実施形態における流体圧回路を示す回路図である。
【符号の説明】
【0067】
1 伸縮体
2 減衰手段
3 ロック機構
4 パイロット流路
5 リリーフ流路
31 ロック弁
31a 弁体たるポペット
32 切換弁
32a 連通ポジション
32b 遮断ポジション
32c ディテント機構
32d 入力手段たるハンドル
41 シーケンス弁
51 リリーフ弁
L,L1,L2,L3,L4 流路
R1 ロッド側室
R2 ピストン側室
T リザーバタンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸縮体とリザーバタンクとを接続する流路中に配設されて作動流体の通過時に所定の減衰作用をする減衰手段と、この減衰手段の上流側に配設されて上記の流路の開閉を可能にするロック機構とを有し、このロック機構が作動時に上記の流路を開閉するロック弁と、このロック弁に接続されて外部信号の入力時あるいは解除時にこのロック弁の作動の可不可を可能にする切換弁とを有してなる流体圧回路において、上記の切換弁に入力される外部信号が上記のロック弁の上流側から誘導されるパイロット圧とされてなることを特徴とする流体圧回路。
【請求項2】
上記のパイロット圧が上記のロック弁の上流側に基端が接続するパイロット流路に配設のシーケンス弁で設定されてなる請求項1に記載の流体圧回路。
【請求項3】
上記の切換弁が上記のパイロット圧の供給時および解消時に切り換わり、上記のロック弁の作動の可不可を可能にする連通ポジションおよび遮断ポジションを有してなる請求項1または請求項2に記載の流体圧回路。
【請求項4】
上記の切換弁がディテント機構を備え、このディテント機構が上記のパイロット圧の供給時あるいは解消時のこの切換弁における遮断ポジションおよび連通ポジションの維持を可能にしてなる請求項1,請求項2または請求項3に記載の流体圧回路。
【請求項5】
上記の切換弁が外部操作を許容する入力手段を有し、この入力手段が上記のパイロット圧の供給時あるいは解消時のこの切換弁における遮断ポジションあるいは連通ポジションから反対側の連通ポジションあるいは遮断ポジションへの切り換えを可能にしてなる請求項1,請求項2,請求項3または請求項4に記載の流体圧回路。
【請求項6】
上記のロック弁がポペットあるいはスプールからなりながら進退時に上記の流路を開閉する弁体を有し、この弁体の背面に作用する作用力の切換でこの弁体を進退させてなる請求項1,請求項2,請求項3,請求項4または請求項5に記載の流体圧回路。
【請求項7】
上記の伸縮体と上記のリザーバタンクとを接続するリリーフ流路を設けると共に、このリリーフ流路中に上記の伸縮体における過大油圧作用を回避するリリーフ弁を設けてなる請求項1,請求項2,請求項3,請求項4,請求項5または請求項6に記載の流体圧回路。
【請求項8】
上記の伸縮体と上記のリザーバタンクとを接続する上記の流路が複数とされると共に、この複数となる各流路に上記の減衰手段と上記のロック弁が配設される一方で、この各ロック弁が上記の切換弁に接続され、この切換弁に上記のパイロット圧が外部信号として入力されてなる請求項1,請求項2,請求項3,請求項4,請求項5,請求項6または請求項7に記載の流体圧回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−71450(P2010−71450A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−242732(P2008−242732)
【出願日】平成20年9月22日(2008.9.22)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【出願人】(304039065)カヤバ システム マシナリー株式会社 (185)
【Fターム(参考)】