説明

流体搬送装置

【課題】 高信頼性を有し、組立てが容易で且つ部品点数が少ない安価な流体搬送装置の提供を目的とする。
【解決手段】 内部に気密空間5を有し且つ流体の吸入口3と流体の吐出口4を有し、吸入口3及び吐出口4には各々逆流を防止する逆止弁8,9が配置された流体搬送装置において、二枚の圧電セラミックス板10,12を接合して金属弾性板11に接合して成るバイモルフ型圧電アクチュエータ1を流体搬送装置の筐体7と一体成型したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体あるいは液体を搬送するための流体搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、気体あるいは液体を搬送するための流体搬送装置には、例えばダイヤフラム式等に代表される電磁モータを利用した電磁ポンプが主に利用されている。最近では、小型化、高精度化、静粛性の要求から、圧電セラミックスの逆圧電現象を利用したバイモルフ型圧電アクチュエータを駆動源とした圧電ポンプが考案されている。このような気体あるいは液体を搬送するための流体搬送装置の一例として、特許文献1に開示されているように、板状弾性体と圧電体との接合体よりなる圧電振動子と圧電振動子からなる面を含む複数の面により形成される閉空間と、冷媒を閉空間に吸入、排出する吸入口及び排出口とを備える圧電ポンプが提案されている。
【0003】
【特許文献1】特開2001−355574号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されているような構造の圧電ポンプでは、搬送する流体が水などの液体である場合、圧電セラミック自体がポンプの閉空間の一面となっている為、圧電セラミックに直接流体が接触するので腐食や駆動回路の電気的短絡を生じるという問題があった。また、防湿処理を施したとしても、その処理には費用がかかり、製品の価格が上がるという問題があった。さらに、圧電セラミックスは何らかの方法で、閉空間に気密性を保ちながら配置されなければならず、組立ても容易ではなく、使用する部品点数も多いという問題もあった。
【0005】
そこで、本発明では、上記課題を解決し、高信頼性を有し、組立てが容易で且つ部品点数が少ない安価な流体搬送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記課題を解決するため、筐体内部に気密空間を有し、流体を吸入する吸入口と流体を吐出する吐出口とを有し、吸入口及び吐出口には各々逆流を防止する逆止弁が配置された流体搬送装置において、筐体内部に金属弾性板の両面に圧電セラミックス板を接合したバイモルフ素子から成るバイモルフ型圧電アクチュエータが収納され、筐体は樹脂により一体成型されたことを特徴とする流体搬送装置である。
【0007】
また本発明の筐体は、弾性を有するシリコン樹脂あるいはポリウレタン樹脂からなることを特徴としている。
【0008】
前述の手段によると、バイモルフ型圧電アクチュエータが、直接、流体と接触することなく、吸入と吐出が交互に行われ、その結果、流体の搬送を行うことができる。
【発明の効果】
【0009】
前記の様に述べた如く、本発明によれば、筐体内部に気密空間を有し、流体を吸入する吸入口と流体を吐出する吐出口とを有し、吸入口及び吐出口には各々逆流を防止する逆止弁が配置された流体搬送装置において、筐体内部に金属弾性板の両面に圧電セラミックス板を接合したバイモルフ素子から成るバイモルフ型圧電アクチュエータが収納され、筐体は樹脂により一体成型されたことにより、腐食や駆動回路の電気的短絡を生じるという問題が解決され、高信頼性を有し、組立てが容易で、かつ部品点数が少ない安価な流体搬送装置の提供が可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に、本発明による流体搬送装置の実施の形態について、図面に基づいて具体的に説明する。
【0011】
図1は、本発明の実施の形態に係わる流体搬送装置を示す斜視図である。筐体7は弾性体樹脂からなり、内部に直方体の気密空間5とバイモルフ型圧電アクチュエータ1が直方体の気密空間5を成す面のうち少なくとも一面と平行に配置され、その平行面に対して他の垂直面には吸入口3が配置され、さらに反対側のもう一つの垂直面には吐出口4が配置された構造となっている。バイモルフ型圧電アクチュエータ1には、駆動する為の電気信号を入力する為のリード線2の一端が接続されており、他端は筐体7の外側へ引き出されている。
【0012】
図2は、本発明の実施の形態に係わる流体搬送装置を示す断面図である。吸入口3には、吸入時に開き吐出時には閉じる逆止弁8が、吐出口4には、吸入時に閉じて吐出時のみ開く逆止弁9が配置されている。吸入口3と吐出口4は直方体の気密空間5の同一面に配置しても良い。
【0013】
図3は、本発明の実施の形態に係わるバイモルフ型圧電アクチュエータの構成図であり、図4と図5は、本発明に実施の形態に係わるバイモルフ型圧電アクチュエータの動作を示す模式図である。バイモルフ型圧電アクチュエータ1は、図3に示すように、二枚の円板状圧電セラミックス板10及び12を金属弾性板11を挟むように接合されてなり、リード線2により接続されている。このバイモルフ型圧電アクチュエータ1は、図4に示すような配線をし、直流電源13をリード線2を介して印加することにより、一方の圧電セラミックス板10は、矢印Xのように中央に向かって収縮し、もう一方の円板状圧電セラミックス板12は、矢印Yのように外周方向に向かって伸び、歪が発生するため撓み変位が生じる。また、図5に示すように極性が逆向きの直流電源13を印加すると、圧電セラミックス板10は、矢印Yのように外周方向に向かって伸び、歪が発生するため撓み変位が生じ、もう一方の圧電セラミックス板12は、矢印Xのように中央に向かって収縮する。尚、圧電セラミックス板は円板でなく矩形板でも同様の効果が得られる。
【実施例】
【0014】
次に、具体的な例を挙げ、本発明の流体搬送装置について、さらに詳しく説明する。図6と図7は、本発明の実施例に係わる流体搬送時の流体搬送装置の断面図である。図8は、本発明の実施例に係わる流体搬送時の動作を示す模式図である。バイモルフ型圧電アクチュエータ1が本発明において、筐体7の気密空間5を成す面の一面と平行に配置された構造となっている為、図6に示すように筐体7の上面が凸状になるようにバイモルフ型圧電アクチュエータ1を変位させると、気密空間5はその変位した分、容積が増加して内圧が下がり、気密空間の容積変化14に等しい容積の流体が吸入口3から吸入される。反対に図7に示すように筐体7の上面が凹状になるようにバイモルフ型圧電アクチュエータ1を変位させると、気密空間5はその変位した分、容積が減少して内圧が上がり、気密空間の容積変化15に加えて、同時に吸入時に吸入した容積の流体が吐出口4から排出される。図8に示すように、交流電源16にて電圧を印加することで、バイモルフ型圧電アクチュエータ1を凸状及び凹状に交互に変位させることができ、それにより吸入と吐出が交互に行なわれ、その結果、流体の搬送が可能となる。
【0015】
尚、バイモルフ型圧電アクチュエータ1は、筐体7を成型する際に、硬度が低く、整形し易く、変位を阻害しない樹脂、例えばシリコン樹脂あるいはポリウレタン樹脂のような弾性を有する樹脂と一体成型することで気密空間5の気密性が保たれる。かつバイモルフ型圧電アクチュエータ1自体が筐体7内に収容される為、搬送する流体の性質に合った樹脂を選択被覆することで、直接流体と接触することがなく、腐食や液体による駆動回路の電気的短絡も起こらない。また、一体成型することで組立て作業が不要となり、組立てるための部品も不要となる。さらに、図1に示すように取付け穴6を予め筐体7を成型する際に設けておけば、本発明による流体搬送装置を固定するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態に係わる流体搬送装置を示す斜視図。
【図2】本発明の実施の形態に係わる流体搬送装置を示す断面図。
【図3】本発明の実施の形態に係わるバイモルフ型圧電アクチュエータの構成図。
【図4】本発明の実施の形態に係わるバイモルフ型圧電アクチュエータの動作を示す模式図。
【図5】本発明の実施の形態に係わるバイモルフ型圧電アクチュエータの動作を示す模式図。
【図6】本発明の実施例に係わる流体搬送時の流体搬送装置の断面図。
【図7】本発明の実施例に係わる流体搬送時の流体搬送装置の断面図。
【図8】本発明の実施例に係わる流体搬送時の動作を示す模式図。
【符号の説明】
【0017】
1 バイモルフ型圧電アクチュエータ
2 リード線
3 吸入口
4 吐出口
5 気密空間
6 取付け穴
7 筐体
8 逆止弁
9 逆止弁
10 圧電セラミックス板
11 金属弾性板
12 圧電セラミックス板
13 直流電源
14 気密空間の容積変化
15 気密空間の容積変化
16 交流電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体内部に気密空間を有し、流体を吸入する吸入口と流体を吐出する吐出口とを有し、前記吸入口及び前記吐出口には各々逆流を防止する逆止弁が配置された流体搬送装置において、前記筐体内部に金属弾性板の両面に圧電セラミックス板を接合したバイモルフ素子から成るバイモルフ型圧電アクチュエータが収納され、前記筐体は樹脂により一体成型されたことを特徴とする流体搬送装置。
【請求項2】
前記筐体が、弾性を有するシリコン樹脂あるいはポリウレタン樹脂からなることを特徴とする請求項1に記載の流体搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−220056(P2006−220056A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−33940(P2005−33940)
【出願日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(000134257)NECトーキン株式会社 (1,832)
【Fターム(参考)】