説明

流体系分離用無機複合膜

【課題】有機膜は苛酷な使用環境下では十分に機能せず、耐え切れないことがあるため、化学的侵食に対して強い膜が望まれている。
【解決手段】実質的には連続的な多孔質蒸着セラミック層で、セラミック層が少なくとも1種類の金属酸化物を含んでいて基材の平均孔幅がセラミック層の孔幅より大きく、あるいは多孔質基材1であって、同様のセラミック層を少なくとも2層を含んでいて、多孔質基材の少なくとも片面に配列し、この多孔質基材により担持されていて、連続するセラミック層2とセラミック層の間に蒸着金属層3が配列していて、この金属層の多孔度および(または)平均孔幅がセラミック層の多孔度および平均孔幅よりも小さい、基材の流体混合物の成分を分離するための複合膜。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
流体混合物の成分を分離できるように適合された複合膜に関するものである。
【背景技術】
【0002】
無機膜は、分離および濾過の応用例で広く使用されている。無機膜は、例えば使用温度が高いなど、有機高分子膜より用途が広い。金属膜が安定するのは500°C〜800°Cの範囲であるが、セラミックス膜の多くは1000°Cを超える温度で安定している。また、無機膜のほうが化学的侵食に対して非常に強い。多くの苛酷な使用環境下では有機膜は十分に機能せず、耐え切れないことがある。このような環境下で、求められる解決策を提供できるのは無機膜のみである。その汎用性から、無機膜が紙・パルプ産業、飲食産業、廃水処理、海水淡水化、およびエネルギー生産(高性能バッテリーおよび燃料電池)にとって有用であることが証明される。
【0003】
無機膜の特定の商業的応用例は、通常高温(500〜900°C)で行われる石炭のガス化、水蒸気改質、部分酸化、自己熱改質、バイオマスの熱分解、およびバイオマスの直接ガス化などで生成される混合ガスからの選択的水素除去である。パラジウムおよびパラジウム(パラジウム合金等)膜は、通常CO、CO、および炭化水素(主にCH)を含有するこれらの反応性混合ガスから、高温処理により水素を回収できる優れた候補であると考えられる。これらの膜は水素を透過させるが、その他のガスは保持する。水素に関するこの選択透過性は、パラジウムを介した特殊な水素透過メカニズムにより説明することができる。酸素がパラジウムまたはパラジウム膜に接触すると、水素分子(H)が解離して、水素原子(H)が膜内に拡散する。原子状の水素は反応性混合ガスから選択的に膜を通過する。次に、選択的に抽出された水素がH分子を再形成する。水素に関するパラジウムおよびパラジウム膜のこのような挙動は、Hの解離反応におけるパラジウムの触媒活性と考えられる。他金属も水素に関して選択透過性を示すとの報告はあるが(Ni、Pt、V、Nb、Ta等)、水素分離膜として主に商業利用されているのは依然としてパラジウムおよびパラジウム膜である。
【0004】
商業利用のためには、水素に関して選択透過性が高い上に水素透過量も高くなくてはならない。当技術分野では、選択透過成分の透過量は膜厚に反比例することが知られている。商業利用には極薄膜が必要であり、このような極薄膜では担体を使用する必要がある。パラジウム薄膜は通常、多孔質金属基材または多孔質セラミックス基材により担持される。多孔質基材は、主に機械的完全性を与えるが、膜として選択性が低くもある。当技術分野では、膜および担体(基材)を含むシステムを示すのに、通常「複合膜」または「膜アンサンブル」という用語を使用する。
【0005】
膜の基材として金属または合金を使用する場合、1)膜材料と基材材料とで熱膨張性が異なる、2)水素のアルファ相とベータ相の転移、3)膜材料と基材材料の金属間拡散、という問題が生じる可能性がある。1)の現象は分離サイクル中に複合膜を破壊し、2)の現象は水素に対する膜の透過性を低減する。前述の現象はいずれも複合膜の有効寿命に影響を及ぼす。
【0006】
前述のとおり、膜材料は通常パラジウムである。しかし、工業的応用例では、パラジウムと、Ag、Cu、Ru、In、Au、Ce、Y、Ta、V、Hoなど1種類以上のその他の元素との合金が使用される。純パラジウムの欠点は、水素の存在下ではアルファ相と水素化物ベータ相の転移が290°C未満で生じることである。両相が転移すると分離サイクルを繰り返すうちに膜が脆くなるため、これを回避しなければならない。パラジウムと前述の元素を合金化することで、この相転移を抑制することが可能である。具体的には、パラジウムと銀(20〜30wt.%)またはパラジウムとCu(40wt.%)を含有するパラジウム合金が、膜の構成要素として知られている。さらに、銀合金は純パラジウムを使用する膜よりも透過性が高い(最大約70%)。
【0007】
金属間拡散は、接触する2種類の金属の界面において、一方の金属がもう一方の金属へ拡散することにより合金が形成される現象である。拡散率は、金属が一定の温度以上の状態にあるとき最大となる。一定の温度とは、溶融温度の2分の1である。例えば、パラジウムとステンレス鋼とでは、その温度はそれぞれ640°Cと550〜560°Cである。この下限の温度により、金属間拡散が著しく増加する温度が決まる。
【0008】
水素分離用複合膜は、透過性が高くて選択性が比較的低い多孔質基材の上に薄いパラジウム箔を固定するか、または同様の基材の上にパラジウムを析出するか、いずれかの方法で製造する。基材の上にパラジウム層を作製する析出法は、大量のパラジウムを使用する方法よりも必要とされるパラジウムが少なくて済む。その他にも、析出法により作製された複合膜は箔膜よりも透過性が高い。
【0009】
当技術分野では、金属間拡散を防止するのに、金属基材の排除および中間バリア層の作製という主要な2つのアプローチがある。
【0010】
中間バリア層作製により金属間拡散を防止する方法は、米国特許6,152,987(Maら)で開示されている。本特許には以下の手順が記載されている。多孔質ステンレス鋼キャップは、酸素を用いて900°Cで4時間酸化後、SnClとPdClの溶液中で表面を活性化させ、Hclと水とを用いて2〜5回すすいでから120°Cで2時間乾燥させた。表面が活性化したら、無電解めっき法を14回繰り返して、活性化した表面にパラジウムを析出させた。めっき処理の総時間は25時間であった。本処理法の変形形態では、酸化温度は600°Cおよび800°Cであった。別の実施形態では、酸化処理の替わりに980°Cで20時間窒化し、パラジウムの析出工程を12回繰り返し、合計20時間続けた。作製されたパラジウム層は、析出工程の持続時間により厚さ25.4〜32.5μmとなった。開示された本方法では大量の液体が処理されていて、時間が相当かかるとともに、比較的長時間、極めて高温状態が持続する。
【0011】
米国特許5,782,959(Yangら)は、薄い緻密な内層と厚い粗めの外層からなる非対称の管状アルミナ担体において、ソル‐ゲル法により中間層を作製する複合膜作製プロセスを開示している。その後、酢酸パラジウム溶液を細孔へ吸収させることにより担体を改質する。最後に、窒素気流下でパラジウムを蒸発させると、蒸発したパラジウムが細孔上に析出する。開示された特許ではほかの成分はパラジウムに添加されていないため、このような膜は脆弱と予測される。
【0012】
積層複合膜については、Howardらにより『膜科学(Membrane Science)』241巻(2004年)pp.207〜218で述べられている。著者らは、膜(Pd‐Cu合金から構成される箔)、バリア層の役割を果たす多孔質アルミナシート、および硬質の多孔質Hastelloy(ハステロイ)(R)担体からなる集成体について開示している。多孔質アルミナシートは、単に箔と担体の間に挟まれているだけであって、両構造体が接合しているのではない。著者らは、1038°K以上の温度で72時間後に実施した試験サイクルでは膜性能は劣化しなかったと報告しているが、集成体分解後にバリア層に亀裂が入っていることにも気付いた。開示された成膜法はかなり複雑で、作製された膜は大きな水素透過量を確保できない。米国特許2003/0068260(Wellingtonら)は、2本の同心円管とその2本の同心円管の間のアニュラ部に触媒を含む水蒸気改質反応器について開示している。内管は、無電解めっきにより蒸着される薄膜状の水素選択的膜を含む。この膜材料は、第VIII族遷移金属または第VIII族遷移金属の合金のいずれかにより可能になる。任意選択で、周期表の第IIIA族、第IIIB族、第IVA族、および第IVBに属する元素の酸化物、炭化物、または窒化物のいずれかの担体の上に膜フィルムを析出させる。別法として、担体が多孔質ステンレス鋼Hastelloy(ハステロイ)(R)またはInconel(インコネル)(R)から構成されることもある。開示された装置は、膜表面積と装置の容積の比率が低いことから、工業量の改質ガスを取り扱うのに比較的大きな膜表面を要する。例えば、直径1インチの管に直径1/2インチの内管が入っている反応器では、この比率の算出比は、膜断片でm/cmが3.2、反応器全体ではcm/cmが1.6となる。
【0013】
ここ数年、超微細加工技術(本来半導体用に発展した)が薄く、欠陥のないパラジウム複合膜作製への新しいアプローチを提供することを示す刊行物が発行されている。結果として生じる薄膜は、膜の透過量と選択透過性の両方を増加させる。本法により、超微細加工により作製された担体の緻密で平滑な表面に、パラジウム合金膜が最初に析出される。表面がこのような質であるので、膜が担体を完全に被覆し、欠陥のない膜となる。次に、一部の担体が裏面からエッチングされ、パラジウム表面までガス経路が作製される。超微細加工された担体により極薄膜が析出可能になり、物質移動抵抗が低い形態となり得る。前述の刊行物例を以下に示す。
【0014】
S.V. Karnikら『超微細加工システム(Journal of Microelectromechanical Systems)』第12巻(2003年)第1号,pp.93〜100。
【0015】
H.D. Tongら『超微細加工システム(Journal of Microelectromechanical Systems)』第12巻(2003年)第5号、pp.622〜629。
【0016】
H.D. Tongら『超微細加工システム(Journal of Microelectromechanical Systems)』第14巻(2005年)第1号、pp.113〜124。
【0017】
前述のS.V. Karnikらの刊行物に記載の方法を用いて得られた膜は、サイズが制限されており、大量の水素分離には不適切である。これとは異なり、H.D. Tongらの刊行物で開示された方法は、前述の制限を克服している。これらの著者が開示しているのは、担持するマイクロ篩シリコンウエハ上に薄い(厚さ500nm)パラジウム‐銀合金膜を含む丈夫なウエハスケール分離モジュールを作製する方法である。提案されたモジュールを容易に増やして、水素処理量の多い、工業的応用例に適するシステムが作製されると考えられる。しかし、開示されたこれらの技術は極めて複雑で、コストが多大である。これについて以下の説明で明らかにする。低圧下の化学気相成長法を用いて0.2μmの湿熱SiOと1μmの低ストレス高シリコンの窒化ケイ素(SiN)でウエハを被覆することにより、600x2600μmの平行四辺形の構造体を作製する。さらに、作製した構造体を並べて、標準的フォトリソグラフィによりウエハの裏面にインプリント後、CHF+OプラズマにおいてSiNのドライエッチングを、緩衝フッ化水素において酸化被膜のウェットエッチングを行う。その後、ウエハを75°CでKOH25%溶液に浸漬し、SiO層に至るまでシリコンを腐食させる。このようにして、吊り下げられたSiN/SiOの二重層膜が配列される。次に、ウエハの表面でSiNの標準的リソグラフィおよびドライエッチングを実施し、吊り下げられたSiN/SiO膜上に円孔5μmのマイクロ篩をパターン化する。パターン化後、同時スパッタリングにより、接着層の役割を果たす20μmのスパッタチタン上にある2種類の純金属ターゲットであるパラジウムと銀(いずれも純度99.999%)から、膜の平らな面にパラジウム‐銀合金フィルムが析出される。緩衝フッ化水素溶液を用いたエッチングによりまずSiOを、次にチタンを篩の孔を介して除去すると、パラジウム‐銀フィルムの裏面が現れる。最後に、4電極陽極結合法によりシリコンウエハが厚い2枚のグラスウエハの間に接着する。接着前に粉末を吹き付けて、ガラスウエハに深さ200μmの流路および1000μmの緩衝空間を作製する。著者らによれば、本集成体面積182cm(6インチのSiウエハ)の費用は340ドルである。費用の半分は材料費、残りの半分はクリーンルームの運営費である。
【0018】
米国特許6,238,465(Judaら)は、薄いパラジウム‐銅の成膜法を開示している。一方の金属は薄箔、もう一方の金属は無電解めっきまたは真空スパッタリングによる析出物の形態である。本特許は、開示した膜を配列すべき基材を規定していない。膜を金属基材上に配列するつもりであるなら、著者が基材材料と膜材料とで熱膨張性が異なる問題や金属間拡散問題をどのように解決したか不明である。
【0019】
無機膜の応用例は最近、生化学、分子生物学、および同様の部門などの分野で発展しており、DNA断片やタンパク質など少量の生物学的物質の回収、精製、および分析のための、より迅速で正確な技術が求められている。イオン交換クロマトグラフィ、アフィニティークロマトグラフィ、およびその他のクロマトグラフ分離法のような方法では、規定の手順として、ゲル、液体培地、または培地の類からこれら生物材料を分離し回収する必要がある。これらの手順は従来、イオン交換カラムなど様々な吸着カラムや親和結合法などを用いて実施されてきた。
【0020】
米国特許5,976,527(Siolら)は、酵素やタンパク質等、求核基含有物質の固定化が可能なシステムを持つラテックス微粒子を含むシステムを開示している。
【0021】
米国特許5,904,848(Wongら)は、ポリテトラフルオロエチレン等、通常固体の熱可塑性合成樹脂や多孔質ガラスから構成される多孔質膜を開示している。例えば、シリル化処理により膜表面を修飾し、官能基(アミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、エポキシ基、アルデヒド基、フェニル基等)を細胞および生体分子など生物学的成分の結合に提供する。
【0022】
米国特許6,686,479(Brueningら)には、選択的結合材の助けを借りて、アミンまたはアミノ酸の鏡像異性体を逆の鏡像異性体から分離する方法が記載されている。前記結合材は、疎水性有機溶媒で被覆した化学式SS−A−X−Lの親水性スペーサを介して粒状固体担体と共有結合した少なくとも1個のリガンドから構成される。前述の化学式SSは多孔質または無孔性の粒状無機ポリマーまたは有機ポリマーの固体担体、Aは共有結合機構、Xは親水性スペーサの基、そしてLは少なくとも2個のナフチル基を持つビスナフチルクラウンエーテルリガンド分子である。
【0023】
前述と後述の米国特許および発表された米国特許応用例の全体内容を参考として本明細書に組み入れる。
【0024】
発明の目的
【0025】
本発明は、多孔質基材により担持された多孔質蒸着セラミック層を含む複合膜を提供することにより、前述の先行技術の短所を克服することを目的とするものである。
【0026】
本発明の別の目的は、混合ガスからの水素分離において、追加として少なくとも1種類の選択透過性金属(パラジウム合金等)層を含み、水素に関して水素透過量が大きく、選択透過性が高い複合膜を提供することである。
【0027】
本発明の別の目的は、流体系(ガス、液体、イオン等)を分離するために、透過物に関して透過量が大きく、選択性が高い複合膜を提供することである。
【0028】
本発明の別の目的は、流体系を分離するために、1層以上のセラミック層と1層以上の金属層を含み、多孔質基材上に配列するサンドイッチ様の多層システムを含む複合膜を提供することである。
【0029】
本発明の別の目的は、流体系を分離するために、基材、セラミック層、および選択的吸着層を含む複合膜を提供することである。
【0030】
本発明の別の目的は、前述のように機械的強度および熱応力が改善された複合膜を提供することである。
【0031】
本発明の別の目的は、薄層クロマトグラフィ用プレートとして使用するのに適する膜を提供することである。
【0032】
本発明において「分離」という用語は、膜の助けを借りた、標的となる少なくとも1種類の分子、イオン、もしくは生物学的種の、その他の種類の分子、イオン、もしくは生物学的種の混合物からのすべての分離、または前述の標的分子、イオン、もしくは生物学的種の、膜による放出可能な固定化、または放出できない固定化(単離)のことを言う。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0033】
第1の態様では、本発明は、実質的には連続的な多孔質蒸着セラミック層を含み、これが多孔質基材により担持されていて、このセラミック層がアルミニウム、チタン、タンタル、ニオブ、ジルコニウム、ケイ素、トリウム、カドミウム、およびタングステンの酸化物からなるグループから選択された少なくとも1種類の金属酸化物を含んでいて、基材の平均孔幅がセラミック層の平均孔幅より大きく、
(a)セラミック層がフラクタル表面構造を有する、
(b)セラミック層が金属とその金属との酸化物の混合物だけからなる、
(c)膜が十分に柔軟なため、巻取および巻出が可能である、
(d)セラミック層の表面に蒸着金属層が配列していて、金属層の多孔度および(または)平均孔幅がセラミック層の多孔度および平均孔幅よりも小さい、
という条件の少なくとも1つを満たしている、流体混合物成分を分離できるように適合された複合膜を提供する。
【0034】
本膜では、基材は、流体を自由に流す膜の機械的担体として役割を果たしている。基材は概して表面および裏面を規定し、担持されたセラミック層は基材の片面のみまたは両面に配列する。担持されたセラミック層が基材の片面にのみ配列している場合、蒸着金属層は、好ましくはセラミック層に配列させる。この金属層の多孔度および(または)平均孔幅はセラミック層の多孔度および(または)平均孔幅よりも小さい。担持されたセラミック層が基材の両面に配列している場合、セラミック層の2面が規定されるため、蒸着金属層(または複数の金属層)は、好ましくは2面の少なくとも1面に配列させる。この金属層の多孔度および(または)平均孔幅はセラミック層の多孔度および平均孔幅よりも小さい。
【0035】
好ましくは、前述の膜がさらに、
(i)蒸着セラミック層が物理蒸着法(PVD)により析出されている、
(ii)基材が金属製基材である、
(iii)樹枝状、カリフラワー様、および珊瑚様のフラクタル表面構造から選択されたフラクタル表面構造を持つ、
(iv)セラミック層がアルミニウム地金とアルミナとの混合物だけからなる、
(v)担持されたセラミック層が基材の両面に配列し、両セラミック層が基材の孔を介して互いに結合し、結合により膜の機械的強度が改善される、
という条件の少なくとも1つを満たしている。
【0036】
前述の膜において、より好ましくは、基材をステンレス鋼メッシュと、エッチングされたアルミニウム箔から選択する。
【0037】
本態様の膜の変更形態では、任意の金属層が吸着層と置き換えられる。吸着層は、分離された混合物の少なくとも1種類の成分を選択的に吸着するか、または分離された混合物の少なくとも1種類の成分の種に選択的に結合する。後者の例は親和性クロマトグラフィであり、標的分子上の結合部位に特異的な親和性リガンドが、クロマトグラフィの不活性マトリックスと結合する。
【0038】
吸着層の材料として、例えば、ゼオライト(通常の吸着の場合)やアミノ酸樹脂(親和性の原理に基づく吸着の場合)が考えられる。基材の多孔度および孔幅を鑑みて、この膜の変更形態では膜の基材は制限されない。
【0039】
第2の態様では、本発明は、実質的には連続的な多孔質蒸着セラミック層を少なくとも2層もつ多層システムを含んでいる、流体混合物成分を分離するために適合された複合膜を提供する。このようなセラミック層は、多孔質基材の少なくとも片面に配列し、この多孔質基材により担持されていて、セラミック層がアルミニウム、チタン、タンタル、ニオブ、ジルコニウム、ケイ素、トリウム、カドミウム、およびタングステンの酸化物からなるグループから選択された少なくとも1種類の金属酸化物を含んでいて、連続するセラミック層とセラミック層の間に蒸着金属層が配列していて、金属層の多孔度および(または)平均孔幅がセラミック層の多孔度および(または)平均孔幅より小さい、また、
(a)少なくとも1層のセラミック層がフラクタル表面構造を有する、
(b)セラミック層が金属とその酸化物との混合物だけからなる、
(c)膜が十分に柔軟であるため、巻取および巻出が可能である、
(d)最も外側のセラミック層の表面に蒸着金属層が配列し、金属層の多孔度および(または)平均孔幅が最も外側のセラミック層の多孔度および(または)平均孔幅よりも小さい、
という条件についても少なくとも1つを任意選択で満たしている。
【0040】
多層システムを含む膜の特定の実施形態では、膜が基材の片面にのみ配列し、任意選択で、請求項9で定義されたような単一のセラミック層が基材のもう一方の面に配列し、この基材により担持される。好ましくは、本実施形態において一方または両方の最も外側のセラミック層の表面に蒸着金属層が配列し、金属層の多孔度および(または)平均孔幅が最も外側のセラミック層の多孔度および(または)平均孔幅よりも小さい。
【0041】
別の実施形態では、基材の両面に多層システムを蒸着する。好ましくは、本実施形態において最も外側のセラミック層2層の少なくとも1層の表面に蒸着金属層を蒸着する。金属層の多孔度および(または)平均孔幅は最も外側のセラミック層の多孔度および(または)平均孔幅よりも小さい。
【0042】
上で列挙した特徴(i)〜(v)も、任意選択で多層システムを含む複合膜に適合させる場合がある。本膜に好適な基材も、ステンレス鋼メッシュまたはエッチングされたスルーホール状のアルミニウム箔である。
【0043】
別の態様では、本発明は、実質的には連続的な単一の多孔質蒸着セラミック層を含み、無孔性基材の少なくとも片面上に配列し、この無孔性基材により担持されていて、セラミック層がアルミニウム、チタン、タンタル、ニオブ、ジルコニウム、ケイ素、トリウム、カドミウム、およびタングステンの酸化物からなるグループから選択された少なくとも1種類の金属酸化物を含んでいて、また、
(α)セラミック層が少なくとも1種類の希土類金属を含む、
(β)セラミック層がフラクタル表面構造を有する、
(γ)無孔性基材がアルミニウム高分子基材から選択される、
(δ)膜が十分に柔軟であるため、巻取および巻出が可能である、
という条件についても少なくとも1つを任意選択で満たしている、薄層クロマトグラフィの同定用プレートおよび(または)流体混合物成分の分離用プレートとして適合させた膜を提供する。
【0044】
別の態様では、本発明は、実質的には連続的な単一の多孔質蒸着セラミック層を含み、多孔質または無孔性基材の少なくとも片面に配列し、多孔質または無孔性基材により担持されていて、セラミック層がアルミニウム、チタン、タンタル、ニオブ、ジルコニウム、ケイ素、トリウム、カドミウム、およびタングステンの酸化物からなるグループから選択された少なくとも1種類の金属酸化物を含んでいて、また、
(α)セラミック層が少なくとも1種類の希土類金属を含む、
(β)セラミック層がフラクタル表面構造を有する、
(γ)無孔性基材がアルミニウム高分子基材から選択される、
という条件についても少なくとも1つを任意選択で満たしている、クロマトグラフィのカラム用充填材として適合させた巻取形態の膜を提供する。
【0045】
(発明を実施するための最良の形態)
上述のように、本発明による膜では、基材は概して表面および裏面を規定する。これは、一般に3次元物体とみなされている基材の形状が、例えば箔、プレート、または自立フィルム等に見られるように、3次元面より2次元面のほうがかなり大きいことを意味する。しかし、基材の層としての素質は、管、円筒、らせん体、およびスパイラル形の基材など、幾何的中空形状のような形状を除外するものではない。
【0046】
セラミック層が金属とその金属の酸化物との混合物だけからなる場合、このような混合物はセラミック層にさらに機械的強度を付加する。複合膜がセラミック層の表面に金属層を含む本実施形態では、その金属は、例えばパラジウムまたはパラジウムと前述したようなその他の金属との合金になると考えられる。基材がステンレス鋼メッシュまたはアルミニウム箔の場合、複合膜に巻取および巻出を可能にする十分な柔軟性が付加されると考えられる。
【0047】
通常、本発明の膜のセラミック層は、多様な孔幅を有する等、比較的広範な孔幅を特徴とする構造をもつ。このような層の1例がフラクタル表面構造の層で、樹枝状、カリフラワー様、および珊瑚様等の種類がある。
【0048】
多層システムを含む本発明の複合膜の態様では、本システムは1層以上のセラミック層と少なくとも1層の金属層を含んでいて、金属層とセラミック層については各セラミック層と各金属層が交互になるように配列する。金属層が適合される場合、多孔質か無孔性(緻密)かのどちらかになる。セラミック層および金属層が存在する場合、どちらも蒸着法により適合させる。
【0049】
本発明の第1の態様による複合による膜の構造を図1に図示する。1は多孔質基材、2は多孔質セラミック層、3は任意選択の金属層、4は基材の孔、5はセラミック層の孔を意味する。金属層を有する膜の実施形態では、セラミック層または金属層の少なくとも1層は選択透過性層であり、その層を介して混合物の少なくとも1種類の成分を選択的に透過させ、残りの成分(または単一の成分)を貯留する役割を担う。吸着層を有する膜の変更形態では、吸着層が標的成分または生物学的種を選択的に吸着するという点で分離メカニズムが異なっているので、これら標的成分または生物学的種がその他の成分から分離されるか、または結合表面上で固定化される。
【0050】
前述のように、セラミック層はアルミニウム、チタン、タンタル、ニオブ、ジルコニウム、ケイ素、トリウム、カドミウム、およびタングステンの酸化物からなるグループから選択された少なくとも1種類の金属酸化物を含み、物理蒸着法により作製される。本発明では、セラミック層の酸化金属は、真空環境下で熱蒸発など固相から気相へ変換される金属と、酸素を含む混合ガスなど酸化剤との間に生じる化学反応の結果として作製される。このように、「析出」と呼ばれる処理法には、金属の固相から気相への変化、化学反応、および適切な析出工程などの工程が含まれる。処理条件を選択すれば、酸化金属だけから構成される被膜または酸化金属と金属との混合物から構成される被膜が作製できる。このように、セラミック層は酸化金属のほかにも、アルミニウム、チタン、タンタル、ニオブ、ジルコニウム、ケイ素、トリウム、カドミウム、およびタングステンなどの金属を含有することができる。セラミック被膜の金属成分は、機械的強度を改善し、結果として膜全体の強度を改善することが可能である。セラミック層の好適材料は、酸化アルミニウム(アルミナ)またはアルミナとアルミニウムとの混合物である。
【0051】
複合膜の基材として、硬質または軟質のいずれかの金属が考えられる。軟質金属の場合、複合膜が十分な柔軟性を有していて、巻取と巻出が可能であることが望ましい。膜が柔軟であると、スパイラル形や長い(長さ1〜3メーター)管形の膜エレメント等、緻密な膜エレメントでの使用が可能になる。
【0052】
前述のように、本発明の第1の態様によれば、膜では様々な実施形態が可能である。例えば、金属層がなければ、セラミック層が選択透過機能を果たす。一方、膜が金属層を含む場合、この金属層は選択透過性であると考えられるが、セラミック層も選択透過性であるか、または単に金属層の担体として機能を果たすことも可能である。所定の実施形態において、セラミック層は金属間拡散防止用バリアとして効果的に作用することがあるという点が注目される。金属層の材料は、通常パラジウム、パラジウム‐銀合金、およびパラジウム‐銅合金等である。
【0053】
吸着層に関して、その機能のメカニズム、析出法、および考え得る材料について、以下でさらに考察する。
【0054】
上で指摘したように、セラミック層および金属層は、熱蒸発、電子ビーム蒸発、スパッタリングを含む物理蒸着法(PVD)等の蒸着法または化学蒸着法により作製される。どの種類の層(セラミックおよび金属)も、同じ蒸着法によっても異なる蒸着法によっても作製することが可能である。
【0055】
特定の実施形態では、セラミック層が基材の両面に配列しているため、セラミック層の2面は規定されていて、両セラミック層が基材の孔を介して互いに結合し、結合により複合膜の機械的強度を改善する。任意選択で、金属層はセラミック表面の1面だけに、またはセラミック層の両面に配列することが可能である。金属層の多孔度および(または)平均孔幅はセラミック層よりも小さく、この特徴は緻密な(微孔性)金属層も有するものである。
【0056】
基材の2番目の面でのセラミック層の析出、そして、セラミック層上での金属層または吸着層の任意の析出は、基材の最初の面での析出と同様に実施する。基材の2番目の面に配列したセラミック層と金属(または吸着)層の性質(組成、構造、多孔度、平均孔幅、厚さ等)は、最初の面に配列した層と同じか、または異なっている。
【0057】
金属層が存在する場合、概して選択透過機能の負荷に耐えられるため、可能な限り薄くして透過成分または混合物成分(水蒸気改質法における水素等)の最大透過量を確保する。これは透過量が膜厚と反比例するためである。本発明の膜の金属層は緻密(無孔性)であることが好適であるが、セラミック層より細孔容積が小さい微孔性金属層も適合可能である。
【0058】
セラミック層(または複数のセラミック層)が1層以上の金属層の担体として機能する場合、セラミック層は可能な限り機械的に強化すべきである。さらに、セラミック層は以下の要件を満たさなくてはならない。セラミック層の表面を可能な限り平滑にして、極薄の金属層を十分に担持しなければならない。担体の表面が粗ければ(表面の不正、「凸」「凹」が比較的大きい)、薄い金属層は表面の「凹」に向けて崩壊傾向を示す。一方、セラミック担体は、透過成分や成分の透過量をあまり減らさないように、たくさんの(細)孔を有してなくてはならない。通常、材料の多孔度を増すために従来使用されてきた技術は、表面上に不正を作製することにより表面面積を増加させる方法である。このような技術を使用する応用例は、リソグラフ印刷用プレート、電解コンデンサー用電極、その他様々である。しかし、セラミック層に適合されるこのような技術により表面の不正が比較的大きくなるため、実質的に平滑な表面という要件と矛盾する。本発明では、前述の矛盾する2つの要件を以下の方法で受け入れる。
【課題を解決するための手段】
【0059】
本発明では、蒸着法により作製したコーティングという形態で金属層用セラミック担体を実装する。当技術分野では、蒸着法により所望の表面構造(形)を持つコーティングの作製が可能であることが知られている。より具体的には、原材料(金属、酸化剤等)および処理条件(流量、酸化剤の組成、圧力等)を適切に選択することによりコーティング構造を調節することが可能である。本発明では、原材料および処理条件を選択して、好ましくはセラミック層にフラクタルな表面構造、すなわちフラクタルから構成される表面を付加する。フラクタルとは、どういうわけか部分が全体に自己相似を示すような自己相似性が観察される、特殊で定義困難な数学的対象である。この自己相似性という特徴は、フラクタルが実質的にスケール不変であり、基本的には樹木の枝分かれ等、小さな部分とより大きな構造を見分けることはできないことを意味するものである。
【0060】
フラクタル構造を有するコーティングについては、米国特許6,933,041および米国特許6,764,712(いずれもKatsirら)、米国特許5,571,158(Bolzら)、米国特許6,974,533(Zhou)、米国特許6,994,045(Pazkowski)等の先行技術で報告されている。例えば、米国特許6,933,041では、蒸着法により作製された、バルブメタルとバルブメタルの酸化物から構成される多孔質コーティングについて開示されている。当該コーティングはフラクタル構造、具体的にはカリフラワー様構造を有しており、電解コンデンサーの電極等、高表面積の基材が必要とされる応用例で使用されている。
【0061】
フラクタルな表面構造を有するコーティングは、孔管の幅値が比較的広範であるという意味において、様々な孔幅を特徴とする。この特徴に基づき、発明者らはフラクタル構造のコーティング(セラミック層)を本発明の複合膜の金属層または吸着層の担体として理想的な候補であるとみなしている。一方、金属層に関する実施形態では、比較的幅の小さな孔により、担体であるセラミック層上の金属層の微粒子の配列が促進される。これは、セラミック層の表面構造が微細なため、セラミック層上に極薄い金属層フィルムが析出できるようになり、金属層のセラミック層への良好な接着が確保される。一方、フラクタル様の構造を有する層は孔幅も比較的大きい。したがって、このような層は水素等透過物の流量をさほど減少させない。吸着層の実施形態に関して、セラミック層の比較的小さな(幅として)孔は親和性リガンドの接着を促進し、比較的大きな(幅として)孔は結合材料の種の結合を促進する。
【0062】
前述の先行技術のフラクタル構造のコーティングとは異なり、本発明の層(コーティング)のフラクタル構造は、コーティングの表面積を増やすことを主な目的とするのではなく、様々な孔幅を有する表面を作製することを目的としている。
【0063】
フラクタル構造のコーティングについては、以下の説明により理解しやすくなる。ここでは所定のフラクタル構造、つまりカリフラワー様構造を例として挙げる。カリフラワー様構造をもつセラミック層の膜を、図2A〜Cにより図示する。図2Aは金属層をもたない膜、図2Bは金属層を有する膜、図2Cはエッチングされたスルーホール上のアルミニウム箔上に析出したカリフラワー構造をもつセラミック層のSEM顕微鏡写真(平面図)である。
【0064】
図2Aおよび図2Bにおける数字の1から4は、図1の数字と同じ要素を示す。前述の構造は、多数のカリフラワー「本体」6を特徴とする点が注目される。カリフラワー「本体」により充填されていないコーティング内の空間等の空隙率を様々な大きさの孔7および8により図示する。カリフラワー「本体」は、それぞれ「頭状花」11および「小花」12からなり、「小花」は結合している「頭状花」から分岐している。「小花」12もまたより小さい「小花」13等をそれぞれ生ずる。このように、カリフラワー構造は、子の小花がそれぞれ親の小花(結合している小花)の自己相似であることを特徴とする。カリフラワーの「頭状花」11は、いかなる水準(世代)の小花についても祖父母とみなすことができる。前述の構造は木の構造と似ていて、幹がカリフラワーの頭状花に相当し、枝が小花に相当する。
【0065】
前述の説明から、カリフラワー様構造が様々な幅の小花および様々な幅の孔を特徴とすることが明らかである。このようなセラミックコーティングは、上に析出した金属層にとって優れた担体の役割を果たすことが可能である。副層上部に位置する小さな小花は比較的平滑な表面を形成して、金属層の優れた接着を確保する。結果として、選択透過層を担持する表面からの選択透過層の剥離という先行技術の問題は避けられる。一方、副層下部に位置する大きな頭状花は、担体の機械的強度を確保する。このように、様々な孔幅を含む担体の非対称構造は好適である。孔径の小さな孔はコーティング上に比較的細かく平滑な表面を形成し、カリフラワーの頭状花と頭状花の間にある孔径の大きな孔は比較的まっすぐな管を形成し、実質的に横方向に延びる。横方向に延びた、比較的まっすぐな孔径の大きい孔は、実質的には水素透過量を減らさない。
【0066】
前述の構造により、セラミック層表面に金属材料(金属または合金)の極薄層が蒸着可能になり、金属層のセラミック層への良好な接着が確保される。このように、カリフラワー様表面構造をもつコーティングは、孔径の小さな孔が表面を平滑にし、孔径が大きくて流体力学的抵抗が小さい、実質的にまっすぐな孔が水素流量に貢献するため、薄い金属層の理想的な担体の役割を果たし得る。
【0067】
本発明における蒸着されたセラミックコーティングのその他のフラクタル構造は、樹枝状(図3A)および珊瑚様(図3B)であると考えられる。樹枝状フラクタルと珊瑚様フラクタルの幾何的フラクタル形状(フラクタルな「本体」等)は互いに異なっており、また、カリフラワー様フラクタルとも異なっている。しかし、どのフラクタル構造も自己相似性を特徴としている。
【0068】
セラミック層の好適材料はアルミニウムまたはアルミニウムとアルミナとの混合物であり、アルミナは変更形態γまたは変更形態αのいずれかをとり得る。しかし、同じ特性(機械的強度、表面構造等)を有する層を形成できるその他の材料も、代替方法として使用可能である。
【0069】
本発明の複合膜に金属層が存在する場合、金属層はパラジウム、第V族金属、またはパラジウムと第V族金属との合金等から構成されると考えられる。特定の実施形態では、金属はパラジウムの含量が全重量の23%等であるパラジウム‐銀合金が好適である。別の実施形態では、金属は銅の含量が全重量の40%であるパラジウム‐銅合金が好適である。Pd‐Ru‐In等、3種類以上の成分を含有する合金も使用可能である。
【0070】
金属層およびセラミック層は、熱蒸発、電子ビーム蒸発、スパッタリング、または化学蒸着法などの蒸着法の1つにより析出されると考えられる。異なる層を析出するには、例えば真空蒸着とスパッタリングなど、異なる蒸着法を使用することが可能である。スパッタリング法を合金の析出に使用する場合(金属層の場合)、合金を単一成分(1つの標的からの成分)として析出することも可能であるし、あるいは代替方法として、異なる標的を用いて、合金の成分ごとに個別に析出することも可能である。異なる標的からの析出は、工業製品として製造されていない特殊な組成の合金を必要とする場合、特に有利である。合金成分の析出工程を個別に行うことにより、合金を規定の成分と一緒に利用することが可能となる。その際には、合金は析出工程の前ではなく、析出工程と同時に作製される。当技術分野では、金属層およびセラミック層の材料が酸化金属および合金であって、前述の金属に限定されないことは、当業者により評価されると考えられる。例えば、蒸着法により適合可能な材料であり、特定の透過物質(水素等)について選択性および透過量の面で同じ特徴を有する材料は、いずれも金属層として使用することも可能である。セラミック層については、本明細書の定義に当てはめれば、同じ特徴(頭状花、小花、孔幅の分布等)を有するフラクタル構造を形成し得る材料も使用可能である。
【0071】
本発明の複合膜の必須要素である基材は、機械的に強く、柔軟であることが望ましい。
【0072】
さらに、基材の孔は比較的大きくて、透過物質が基材を通過しやすいようでなければならないが、セラミック層による適切な担持が損なわれるほど大きくてはならない。このような望ましい特性という点では、ステンレス鋼メッシュあるいはエッチングされたスルーホール状のアルミニウム箔を使用することが好適である。ステンレス鋼メッシュの場合、基材として好適な特徴は、(a)厚さが36μm〜42μm、より好ましくは38±2μm、(b)開口径33μm〜41μm、より好ましくは46μm、(c)ストランド幅30μm未満、より好ましくは18μm、(d)開口率42%〜52%、より好ましくは51%である。
【0073】
基材材料は、必ずしも前述の材料に限定されるものではない。同じ特性(柔軟性、機械的強度、厚さ、開口径等)をもつ多孔質材料であれば、どれでも使用可能である。
【0074】
金属層の好適な厚さは0.05〜2μmで、より好ましくは0.1〜0.5μm、セラミック層の好適な厚さは5〜40μmで、より好ましくは10〜20μmである。
【0075】
本態様の膜の変更形態では、任意の金属層が吸着層と置き換えられる。前記吸着層は、分離された混合物の少なくとも1種類の成分を選択的に吸着する(吸着層がゼオライト製である場合等)、あるいは分離された混合物の少なくとも1種類の成分の種に選択的に結合する(吸着層がアミノ酸樹脂である場合等)。選択的結合は、選択的に結合した物質または生物学的種のどちらも放出可能であって、溶出等によりさらなる放出も可能であるか、または放出できない。前述のように、選択的結合の原理に基づく生体分離の典型的な応用例は、標的種の固定化(単離)を含む生体分離で広範に使用されているアフィニティークロマトグラフィである。通常、本変更形態の膜による分離または固定化が可能な基材は、タンパク質、核酸、多糖類、脂質、テルペノイド等、または生物学的種である。本膜について考え得るその他の応用例は、イオン交換クロマトグラフィとバイオリアクターである。例えば、酵素をバイオリアクターとして使用する場合、膜の活性部位に酵素を直接的に、またはリガンドを介して結合させることがある。次に、溶解された物質を含有する担体液が膜を通過して、結合酵素がこのような基材に作用する。
【0076】
以前開示された実施形態の膜とは異なり、多孔度および孔幅を鑑みて、本実施形態の膜の基材は制限されない。言い換えれば、基材は多孔度および孔幅が制限されない多孔質であっても、無孔性(緻密)であってもよい。緻密な基材の1例を挙げると、それはアルミニウム箔等、従来の金属箔である。
【0077】
以前記載された実施形態の膜の金属層と同じく、本実施形態でも選択的吸着層は、セラミック表面の片面または両面に配列可能である。裏表両面に選択的吸着層を有する膜は、係数2で吸収能を増強する。
【0078】
本実施形態により単一の選択的吸着層をもつ模範的な膜を図4Aに図示する。30は吸着層を示す。1は基材であり、本実施形態では緻密でも多孔質でも可能である。その他の数字は、図1の数字と同じ意味をもつ。例えば、吸着層の材料として、ゼオライトが考えられる。この場合、膜は例えばケトースおよび(または)その他のアルドースを含有するアラビノース水溶液からアラビノースを分離することが可能である。吸着層が水溶液の少なくとも1種類の種と選択的に結合する物質を含む場合、本変更形態により、例えばバッチアフィニティークロマトグラフィ法により膜を分離に使用することが可能である。前述の選択的結合物質の例には、アミノ酸樹脂(Lリジン‐アガロース凍結乾燥粉末等)、アビジン‐ビオチンマトリクス(EZviewTMアビジン‐ビオチン複合体アフィニティゲル等)、キレート樹脂(トリス[カルボキシメチル]エチレンジアミン‐アガロース凍結乾燥粉末等)、および当技術分野で知られているその他の物質などがある。先行技術では、前述の材料は親和性リガンドとして知られている。
【0079】
セラミック層の表面に吸収物質を析出するのに用いる技術は、析出すべき材料の特性によって異なる。例えば、ゼオライト微粒子は電気泳動電着法により適合可能であり、親和性リガンドは、例えば米国特許5,904,848で開示された表面の変更形態により適合可能である。本変更形態によれば、膜のセラミック層の好適な厚さは5〜10umであり、選択的吸着層の好適な厚さは5〜100μmである。選択的吸着層のより好適な厚さは、膜の応用例により異なる。
【0080】
本発明の多層システム(1層以上の金属層と1層以上のセラミック層を含む等)を含む複合膜では、このような多層システムは図のように基材1の上に析出されると考えられる(図4B)。本システムでは、金属層3は連続するセラミック層2とセラミック層の間に蒸着される。4および5は、図1の数字と同じ要素を示す。金属層の多孔度および(または)平均孔幅は隣接するセラミック層の多孔度および平均孔幅よりも小さい。これは金属層が無孔性(緻密)の場合を含む。上で詳述したとおり、セラミック層および金属層は、蒸着法により作製される。
【0081】
金属層に微小亀裂または(および)微小な穴が形成された場合、多層構造により選択性低下リスクが減少する。金属層はすべて互いに独立しているため、微小亀裂または(および)微小な穴がある場合、金属層をそれぞれ予備の層とみなすことが可能である。セラミック層はあいだに挟んだ金属層と結合するため、多層システムにより層の剥離リスクも減少すると考えられる。さらに、基材の孔を介してセラミック層が互いに結合することにより複合膜の機械的強度が改善される。
【0082】
多層システムを含む複合膜では、以下の条件が任意選択で満たされる。(1)少なくとも1層のセラミック層がフラクタル表面構造を有する(樹枝状、カリフラワー様、珊瑚様等)、(2)膜が十分に柔軟であるため、巻取および巻出が可能である、(3)無孔性金属層または最も外側のセラミック層よりも多孔度が小さい蒸着金属層が、最も外側のセラミック層の表面に配列する。
【0083】
多層システムは、基材の片面にのみ(図4Bで示したとおり)または両面に配列可能である。基材の2番目の面上での析出は任意であり、基材の最初の面上での析出と同様に実施する。基材の2番目の面上の層の数と厚みは、最初の面上で処理された層の数と厚みと同じであるとも、異なるとも考えられる。これはセラミック層および(または)金属層の材料ならびに特性(構造、多孔度、孔幅の分布等)についても同じことが言える。
【0084】
特定の実施形態では、膜は基材の片面に配列する多層システムと基材の反対側の面上に配列するセラミック層を含む。任意選択で、金属層は最も外側のセラミック層の片面にのみ、または両面に配列可能である。
【0085】
金属層、セラミック層、および基材の材料と特性に関して、多層システムを含む膜は本発明の第1の態様の膜とほぼ同じである。しかし、多層膜の金属層とセラミック層は、これらに対応する本発明の第1の態様の膜よりも薄い。金属層の好適な厚さは0.01〜1μmで、より好ましくは0.05〜0.2μmである。セラミック層の好適な厚さは0.2〜5μmで、好ましくは0.5〜1μmである。
【0086】
本発明の両態様の膜では、セラミック層と金属層の細孔容積はほぼ同じである。本発明の複合膜は、軟質シート状または長い連続巻取ウェブ状で製造可能である。通常、シート状の膜はバッチモードで動作する装置で作製され、連続巻取ウェブ状の膜は連続モードで動作する装置で作製される。連続巻取ウェブ状の膜の場合、真空度が異なっていても、セラミック層と金属層とを析出するのに、例えば蒸着法とスパッタリングなど異なる析出法を使用することが可能である。さらに、1層以上のセラミック層および(または)1層以上の金属層を含む膜の場合、例えば、セラミック層および(または)金属層がその両面に配列する膜または多層システムを含む膜の場合、異なる析出法を用いて異なるセラミック層および(または)金属層を処理することが可能である。
【0087】
管形、スパイラル形、および平板形の膜エレメントには、セラミック層のみを有する複合膜およびセラミック層と金属層とを有する複合膜が主に組み込まれるが、必須条件ではない。
【0088】
例えば、スパイラル形エレメントでは、片面複合膜が有孔の中空管周囲にらせん状に巻きついている。このようなデザインにより、膜表面積と集成体ユニットの容積の比率が高くなる。
【0089】
スパイラル形膜エレメントは、フィードスペーサ103により分離された多数の膜エンベロープ102を含む(図5)。多数の膜エンベロープ102とその間にあるフィードスペーサ103が、片端部が閉じた有孔の中空管105の外周囲にスパイラル形に巻きついている。膜エンベロープは2枚の複合膜101からなり、透過スペーサ104を含む。スペーサ103およびスペーサ104は、複合膜101同士が密着するのを防ぐのに使用する。フィードスペーサ103が供給路を形成し、透過スペーサ104が透過路を形成する。膜エレメントは以下のように動作する。端部17など片端部から巻かれた膜へ供給混合物31が投入される。1種類または複数の選択透過成分が複合膜101を介して透過し、スペーサ104を伝って膜と膜101の間の隙間を通って浸潤する。透過物33は開口した管端部から取り除かれ、19等の供給口とは反対の膜端部から濃縮物32が回収される。本設計で適合された複合膜は、セラミック層と任意の金属面を有する片面膜である。
【0090】
別の設計では、膜エレメントが圧力ケーシング18内に設置される(図6)。分離工程は、選択的成分の透過と濃縮物回収の2段階である。透過段階では、加圧下で供給物31がケーシング18の投入口15から投入されると弁21が開弁し、弁23が閉弁する。供給混合物は、主に端部17および端部19から入ってくる。混合物の選択透過成分が膜を介して透過し、管105の領域20から取り除かれる。濃縮物の回収段階では、弁21が閉弁すると弁23が開弁し、濃縮物32が膜エレメントとケーシングの間の空間22から排出口14を介して回収される。
【0091】
管形膜エレメントが適合されると、膜エレメントが管形圧力ケーシング内に設置され、膜モジュールが作製される。管形膜エレメントは、軟質シート状または巻取状の複合膜25を含む(図7)。膜モジュールは、外管21(ケーシング)と有孔の内管22の2本の同心円管を含む。内管は複合膜25により外周面を包まれる。加圧下で供給物31がモジュール端部からアニュラ部23に投入される。選択透過成分(成分)33が膜を介して透過し、透過部20から取り除かれる。濃縮物32は、アニュラ部23から、モジュールの反対の端部から取り除かれる。本発明の複合膜は、長い(長さ1〜3メートル)管形のエレメントとモジュールで使用できるという点で有利である。
【0092】
反応混合物において化学反応が少なくとも1回起こる場合、本発明について記載した膜エレメントと膜モジュールは、膜反応器として動作することが可能である。膜反応器は、化学プロセスの生産性、選択性、変換性という特徴の少なくとも1つを増強するのに使用することが可能である。
【0093】
薄層クロマトグラフィ(TLC)およびカラムクロマトグラフィへの応用例
【0094】
TLCおよびカラムクロマトグラフィに関する本発明の別の態様では、基材のコーティング法は反応型PVD(物理蒸着法)であって、好ましくは連続的なロール・ツー・ロール法で実施する。TLCプレートは、担持層およびアルミナ吸着層から作製される。担持層(基材)は一般に厚さ30〜150ミクロンのアルミニウム箔か、または適するプラスチックフィルムである。吸着層は通常厚さ100〜350ミクロンであり、反応型PVDにより熱蒸発され、多孔度が60%から最大95%の範囲の高多孔質粉末様アルミナコーティングが得られる(しかし、一部の応用例では、層の厚さが約5〜50ミクロンの場合がある)。本高多孔質のアルミナ層は、機械的安定性を保持するのに接着剤も結合化合物も必要としないため、基本的には、汚染物質の恐れがまったくない。副層および最上層を追加して、流量をより増量させるか、または吸着コーティングを保護することが可能である。アルミナコーティングが真空ロール・コーター内で作製されると、アルミニウムウェブがアルミニウム熱蒸発器上へ運搬される。蒸発したアルミニウムは、真空槽内で調製された酸素‐アルゴン混合ガスを含有する制御環境下で相互作用し、酸化する。基材はあらかじめプラズマ処理され、汚染物質はすべて除去されているため、コーティングは確実に基材表面に密着する。
【0095】
さらに、基材の上で酸化タイ層をスパッタリング後、吸着層をスパッタリングして層間の接合を促す。コーティング工程時の基材の温度は400°Cに達し、ガス圧は7x10−3ミリバールで維持される。
【0096】
膜を薄層クロマトグラフィ(TLC)の同定用プレートおよび(または)流体混合物成分の分離用プレートとして適合させた本発明の態様については、TLCプレートは無孔性基材または担持層およびアルミナ吸着層から作製される。担持層(基材)は、好ましくは厚さ30〜150ミクロンのアルミニウム箔または適する高分子フィルムもしくは高分子シートである。
【0097】
高分子基材の例を挙げると、ポリエステルシート(厚さ約0.2mm)のコーティングは、巻取状で製造することが可能なため、経済的である。その他の長所として、ポリエステルシートは実質的に壊れにくいため、包装や保存棚スペースが少なくてすむ。さらに、ポリエステルシートは、切断して溶解等を行うことが可能である。8x4cmなど、小さなシートの製造および包装は経済的である。炭化法はシリカ被覆シートに適合され得るが、温度はガラス上で行うより若干低い。このようなシートの通常の最高温度は160°Cである。アルミニウム酸化物、セルロース、およびポリアミドの層によっても同様のシートが得られる。
【0098】
吸着層は厚さ100〜350ミクロンであり、反応型PVDにより熱蒸発され、多孔度が60%から最大95%の範囲である高多孔質粉末用アルミナコーティングが得られる。本高多孔質のアルミナ層は、機械的安定性を保持するのに接着剤も結合化合物も必要としないため、汚染物質などはまったくない。副層および最上層を追加して、流量を増量するか、または吸着コーティングを保護することが可能である。
【0099】
膜をカラムクロマトグラフィ用に適合させた本発明の態様については、コーティングされた圧延箔を挿入する外管ケーシングからカラムは作製される。コーティングされた圧延箔は、TLC応用例の圧延箔と類似している。しかし、基材は可能な限り薄く、軟質であるのが好適である。同じ性質、すなわち反応的に析出された高多孔質アルミナのコーティングの厚さは、TLC応用例の場合よりも大きくなり得る。カラムは、カラムケーシングにおいて異なる高さに排出口をもつ分離機として使用可能である。
【0100】
(PVDにより蒸着されたTLC用およびカラムクロマトグラフィ用の本コーティングの長所)
【0101】
1.多孔度が高い。
【0102】
2.結合剤を使用しないにも関わらず、機械的に安定している(曲げ強度等)。
【0103】
3.最大450°Cの動作温度が得られると考えられる。
【0104】
4.はさみ等を用いて望ましい大きさに切断しやすいと考えられる。
【0105】
5.副層および最上層を同時に追加作製すれば、流量を増量させるか、または吸着層の保護が可能になると考えられる。
【0106】
6.結合剤を使用しない上に、反応性蒸着材料の純度が極めて高いため、コーティングの化学純度も非常に高い。
【0107】
7.同時蒸着法を用いるなど、希土類イオンの添加等により、UV蛍光体のコーティングが作製される可能性がある。
【0108】
8.蛍光を可視化する場合、背景を黒くすると、像の視覚的対比が改善される。
【0109】
9.本PVD法は、環境を汚さず、ユーザーにとって利用しやすい。
【0110】
10.本PVD法は、比較的低コストで持続的に操作可能である。
【産業上の利用可能性】
【0111】
11.これらクロマトグラフィ法は、有機化学成分、無機化学成分、生化学成分、薬剤、薬剤代謝物、細胞、細胞材料、微生物、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、脂質、炭水化物、核酸、およびこれらを組み合わせたものなど、広範な物質の分析および分離等に応用される可能性がある。
【0112】
本発明は、特に限定されないが、以下の実施例を用いて説明する。
【実施例1】
【0113】
バッチモードで動作する真空蒸着装置におけるステンレス鋼メッシュ基材へのセラミック(アルミナ)層の蒸着
【0114】
基材は、以下のパラメータを有するKOIWA KANNAMI CO.製ステンレス鋼メッシュ。厚さ38±2μm、開口径46μm、ストランド幅18μm、開口率51%。本基材を450〜500°Cの温度で1時間焼鈍して残油を除去し、蒸着チャンバーへ入れて、次に210−4Torrまでチャンバーを真空排気した。蒸着用アルミ線をドラムに巻きつけ、速度0.64、0.68g/分で蒸着ボートに供給し、熱抵抗蒸着により約250〜270°Cの温度でステンレス鋼メッシュの片面にアルミ線を蒸着した。320cc/分〜340cc/分で様々な量の酸素を、45cc/分〜50cc/分(両ガスの体積流量率については、標準条件を参考にしている)で様々な量のアルゴンをチャンバーに投入した。酸素分圧は6.010−4〜8.010−4Torr以内、アルゴンは4.010−3〜4.510−3Torr以内と様々であった。酸素およびアルゴンより著しく量が少ないその他のガス(水素、窒素、二酸化炭素、および水蒸気など)もチャンバー内に存在した。厚さ15μm以内の多孔質アルミナ層を600〜750A/秒の速度で基材上に蒸着させた。本生成物は、セラミック選択層を有する複合膜である。
【0115】
作製された層の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を図3Aに示す。図3から作製された層が樹枝状構造を有することが分かる。さらに、走査型電子顕微鏡を用いて表面の特徴化を行った。表面の二次電子(SE)像の平面図をDigital Micrograph(米国GATAN社)の粒子分析モジュールによりさらに処理して、各孔幅について孔数を数えた。その結果である孔の分布図を図8に示す。図8のNは、幅の測定値ごとの孔数である。作製された膜では狭い孔幅は、約14〜42nmの範囲で、広い孔幅は約154〜196nmの範囲であることが分かる。
【実施例2】
【0116】
バッチモードで動作する真空蒸着装置におけるステンレス鋼メッシュ基材上へのセラミック(アルミニウム/アルミナ)層の蒸着
【0117】
基材は、以下のパラメータを有するKOIWA KANNAMI CO.製ステンレス鋼メッシュ。厚さ38±2μm、開口径46μm、ストランド幅18μm、開口率51%。本基材を450〜500°Cの温度で1時間焼鈍して残油を除去し、蒸着チャンバーへ入れて、次に210−4Torrまでチャンバーを真空排気した。蒸着用アルミ線をドラムに巻きつけ、速度0.64、0.68g/分で蒸着ボートに供給し、熱抵抗蒸着により約270〜300°Cの温度でステンレス鋼メッシュの片面にアルミ線を蒸着した。90cc/分〜100cc/分で様々な量の酸素を、45cc/分〜50cc/分(両ガスの体積流量率については、標準条件を参考にしている)で様々な量のアルゴンをチャンバーに投入した。酸素分圧は4.5・10−5〜5.5x10−5Torr以内、アルゴンは(4.5〜5.5)・10−3Torr以内と様々であった。酸素およびアルゴンより著しく量が少ないその他のガス(水素、窒素、二酸化炭素、および水蒸気など)もチャンバー内に存在した。厚さ20μmの多孔質層はアルミニウムと酸化アルミニウムから構成されており、500〜600A/秒の速度で基材上に蒸着させた。本生成物は、セラミック選択層を有する複合膜である。
【0118】
光学顕微鏡により得られた複合膜の平面図を図9A(700倍)および図9B(1100倍)に示す。図9Aおよび図9Bから、蒸着層がカリフラワー様構造を有し、基材表面が反復的な浮き彫りになっていることが分かる。さらに、実施例1と同じ方法および同じ測定器を用いて表面の特徴化を実施した。その結果である孔の分布図を図10に示す。図10から、作製されたコーティングでは、狭い孔幅は約20〜50nmの範囲で、広い孔幅は約330〜370nmの範囲であることが分かる。
【実施例3】
【0119】
バッチモードで動作する真空蒸着装置におけるエッチングされたスルーホール状アルミニウム箔へのセラミック(アルミナ)層の蒸着
【0120】
本実施例は実施例1と同様に実施した。違いは、基材がエッチングされたスルーホール状アルミニウム箔であり、蒸着層の厚さが12μmである点である。本生成物は、セラミック選択層を有する複合膜である。
【0121】
蒸着層のSEM顕微鏡写真を図11に示す。図11から、蒸着層が樹枝状構造を有することが分かる。さらに、実施例1と同じ方法および同じ測定器を用いて表面の特徴化を行った。その結果である孔の分布図を図12に示す。図12から、蒸着層では、狭い孔幅は約21〜62nmの範囲で、広い孔幅は約227nmであることが分かる。
【実施例4】
【0122】
バッチモードで動作する真空蒸着装置におけるエッチングされたスルーホール状アルミニウム箔へのセラミック(アルミニウム/アルミナ)層の蒸着
【0123】
本実施例は実施例2と同様に実施した。違いは、基材がエッチングされたスルーホール状アルミニウム箔であり、蒸着層の厚さが18μmである点である。結果として生じた生成物は、セラミック選択層を有する複合膜である。蒸着層のSEM顕微鏡写真を図2Cに示す。図2Cから、蒸着層がカリフラワー様構造を有することが分かる。さらに、実施例1と同じ方法および同じ測定器を用いて表面の特徴化を行った。その結果である孔の分布図を図13に示す。図13から、蒸着層では、狭い孔幅は約10〜35nmの範囲で、広い孔幅は約290〜300nmの範囲であることが分かる。
【実施例5】
【0124】
連続モードで動作する複合装置におけるセラミック層および金属層の連続的な両面蒸着
【0125】
本実施例では、蒸着ゾーンとスパッタリングゾーンを含み、連続モードで動作する蒸着‐スパッタリング複合装置において、セラミック層と金属層を基材の両面に連続的に蒸着した(図14)。基材1はKOIWA KANNAMI CO.製ステンレス鋼メッシュウェブで、実施例2と同じ特徴を有する。基材1は、巻出ロール151を用いて真空槽内部で巻き出した。次にウェブをロール155上から真空槽の蒸着ゾーン154へ進めた。蒸着ゾーンにおいて、実施例2と同じ蒸着条件下で、厚さ20μmのアルミニウム/アルミナ(セラミック)混合層をフリースパンモード(混合層は2本のロール153の間にある基材の一部の上に蒸着)で基材に蒸着させた。
【0126】
その後、ウェブをスパッタリングゾーン156へ進めた。スパッタリングゾーンでは、0.5・10−2Torrのアルゴン下で、パラジウムと銀から構成される厚さ0.5μmの金属層を、以前蒸着させたセラミック層の表面に蒸着させた。スパッタリングは、直電力制御法を用いて流電源設備で実施し、装置が自動的にスパッタリングの電圧および電流を測定して定電力を維持し、蒸着制御を最大に保てるようにした。混合層は、陰極面と単一標的であるパラジウム‐銀合金を用いて適合させた。
【0127】
蒸着されたセラミック層と金属層を有するウェブ158を複数のロール157上から方向転換し、2つめの蒸着ゾーン10へ進め、次に2つめのスパッタリングゾーン112へと進めて、最初の面と同じ方法および同じ蒸着条件で、引き続き厚さ20μmのセラミック層(アルミニウム/アルミナ混合層)と厚さ0.5μmの金属層(パラジウム‐銀の混合物)をウェブのもう一方の面に蒸着させた。最後に、両面に蒸着させたセラミック層と金属層を有する基材(両面複合膜)を複数のロール111から巻取ロール113へと進め、本基材はそこで巻き取られた。
【実施例6】
【0128】
連続モードで動作する複合装置におけるセラミック層および金属層の連続的な片面蒸着
【0129】
本実施例は実施例5と同様に実施した。違いは、ゾーン10およびゾーン112で蒸着を実施しなかった点である。ゾーン156における金属層の蒸着後、片面複合膜であるウェブ158は、続いてロール157、9、および111を通って巻取ロール113へと進み、そこで巻き取られた。
【実施例7】
【0130】
連続モードで動作する複合装置における多数のセラミック層および金属層(多層システム)の連続的片面蒸着
【0131】
本実施例では、多数のセラミック層と金属層を、連続モードで動作する蒸着ゾーン1基154とスパッタリングゾーン1基156を含む蒸着‐スパッタリング複合機の片面上に、順次交互に蒸着させた。本実施例では、蒸着ゾーン10およびスパッタリングゾーン112は動作しなかった。
【0132】
基材1はKOIWA KANNAMI CO.製ステンレス鋼メッシュウェブで、実施例2と同じ特徴を有する。基材1は、巻出ロール151を用いて真空槽内部で巻き出した。次にウェブをロール155上から真空槽の蒸着ゾーン154へ進めた。蒸着ゾーンにおいて、実施例2と同じ蒸着条件下で、厚さ約1μmのアルミニウム/アルミナ(セラミック)混合層をフリースパンモードで基材に蒸着した。本装置のスパッタリングゾーン156は動作しなかった。その後、ウェブは複数のロール157、9、および111を通って巻取ロール113へと進み、そこで巻き取られた。全ロールの回転方向を逆転させると、それによりウェブの進行方向も逆になった。結果として、ウェブはロール113上で巻出を開始し、スパッタリングゾーン156へと進んだ。スパッタリングゾーンでは、実施例5(ウェブが反対方向へ進む場合、本装置の蒸着ゾーン154は動作しなかった)と同じ条件下で、パラジウムと銀から構成される厚さ約0.1μmの金属層を、以前蒸着させたセラミック層の表面に蒸着した。
【0133】
蒸着後、ウェブはロール155を通って、巻き出されたロール151へと進んだ。その結果であるウェブを、セラミック層1層と金属層1層で被膜した。被膜後、方向転換、蒸発による蒸着(スパッタリングなし)、およびスパッタリングによる蒸着(蒸発なし)の手順を2回繰り返した。作製されたコーティングの厚さは、計3.3μmであった。
【実施例8】
【0134】
セラミック層および選択的吸着層の片面蒸着
【0135】
厚さ5μmのセラミック層を、実施例1の装置において、実施例1と同じ条件下で、無孔性アルミニウム箔の片面に蒸着した。さらに、大きさが1μm未満のイオン交換X型ゼオライト微粒子の懸濁液を含む電気泳動析出槽に、作製された膜を入れた。厚さ60μmの前記ゼオライト層をその膜の上に蒸着した。
【0136】
無孔性アルミニウム箔の基材1、セラミック層2(アルミナ)、および選択的吸着層30(X型ゼオライト)を含む複合膜である本生成物を図4Aに図示する。
【実施例9】
【0137】
セラミック層および選択的結合材の片面蒸着
【0138】
実施例1と同じ蒸着装置で、実施例1と同じ条件下で、厚さ5μmのセラミック層を以下のパラメータを有するKOIWA KANNAMI CO.製ステンレス鋼メッシュの片面に蒸着した。厚さ38±2μm、開口径46μm、ストランド幅18μm、開口率51%であった。得られた生成物は、単一フラクタル構造の表面を有する膜であった。
【0139】
米国特許5,976,527の実施例2で開示された技術に従って、オキシラン基含有ラテックスの分散質を調製した。次に、作製したラテックス微粒子を、浸漬コーティングにより単一フラクタル構造の表面膜であるセラミック層表面に塗装した。膜の裏面(必ずしもセラミック層ではない)は、スクリーンでラテックス微粒子から保護した。
【0140】
米国特許5,976,527で開示されたシステムと同じく、製造された複合膜も、酵素およびタンパク質の固定に使用可能である。
【実施例10】
【0141】
TLCプレートの作製
【0142】
PVDロールコーティング装置では、厚さ120ミクロン、幅300mmの硬質無孔性アルミニウムウェブをあらかじめプラズマ処理し、表面からすべての汚染物質を取り除く。そしてその表面の上の2〜4nm厚さのAlの緻密なタイ層に反応性スパッタリングを行い、層間の接合(接着)を促進する。このアルミニウムウェブを、アルミニウム熱を用いた蒸着器に載せる。酸素‐アルゴン混合ガスを含有する制御環境下で、蒸着されたアルミニウムが反応する。蒸着器から基材へ進行する間、反応したアルミニウムの微粒子が集まり、厚さ約250ミクロンの独特の高多孔質構造のAlを形成する。次にアルミナクラスターが基材の上に蓄積して、必要とされるTLCクロマトグラフィ用吸着層を形成する。コーティング加工中の基材の温度は、400°Cに達する。チャンバー内の圧は計0.007ミリバール(=0.00525Torrまたは0.0007kPa)で維持される。
【実施例11】
【0143】
クロマトグラフィのカラム用プレートの作製
【0144】
コーティング法は、無孔性基材が厚さ60ミクロン、幅300mmの軟質アルミニウム箔であること以外は、実施例10とほぼ同じである。コーティングされた基材が巻き取られている場合、この基材を、内径16mm、長さ100〜300mmのガラスカラム等、種々の大きさのカラムへ挿入できるように適合させる場合がある。
【0145】
本発明では限られた数の実施形態に関して述べてきたが、多くの代替方法、変更形態、および変形形態については、当分野の技術者にとって明白である。従って、本発明は、添付した請求項の精神および適用範囲が一致する代替方法、変更形態、および変形形態のすべてを包括する所存である。
【図面の簡単な説明】
【0146】
【図1】本発明におけるセラミック層と金属層を有する複合膜の実施形態の1例を示す断面図。
【図2A】本発明におけるカリフラワー様構造をもつセラミック選択透過層を有する複合膜の実施形態の1例を示す断面図。
【図2B】本発明におけるカリフラワー様構造をもつセラミック層に配列する選択透過金属層を有する複合膜の実施形態の1例を示す断面図。
【図2C】後述の実施例4に記載した方法により作製されたカリフラワー様構造をもつセラミック層のSEM顕微鏡写真(平面図)。
【図3A】後述の実施例1に記載した方法により作製された樹枝状構造をもつセラミック層のSEM顕微鏡写真(断面図)。
【図3B】珊瑚様構造をもつセラミック層のSEM顕微鏡写真(断面図)の1例。
【図4A】本発明におけるセラミック層と選択的吸着層を有する複合膜の実施形態の1例を示す断面図。
【図4B】本発明における多層システムを有する複合膜の実施形態の1例を示す断面図。
【図5】本発明における複合膜を組み込んだスパイラル形膜エレメントの透視投影図および断面図。
【図6】図5に記載した圧力ケーシング内に設置したスパイラル形膜エレメントの透視投影図および断面図。
【図7】本発明における複合膜を組み込んだ管形膜モジュールの断面図。
【図8】後述の実施例1に記載した方法により作製された樹枝状構造をもつセラミック層の孔幅の分布図
【図9A】
【図9B】光学顕微鏡によりそれぞれ700倍および1100倍で得られた、カリフラワー様構造がステンレス鋼メッシュに配列した複合膜の平面図。
【図10】後述の実施例2に記載した方法により作製されたカリフラワー様構造をもつセラミック層の孔幅の分布図。
【図11】後述の実施例3に記載した方法により作製された樹枝状構造をもつセラミック層のSEM顕微鏡写真(断面図)。
【図12】後述の実施例3に記載した方法により作製された樹枝状構造をもつセラミック層の孔幅の分布図。
【図13】後述の実施例4に記載した方法により作製されたカリフラワー様構造をもつセラミック層の孔幅分布図。
【図14】本発明の複合膜の長い巻取ウェブを持続的に製造するための装置の全体図。
【符号の説明】
【0147】
図1
1多孔質基材
2多孔質セラミック層
3任意の金属層
4基材の孔
5セラミック層の孔
図2A
1多孔質基材
2多孔質セラミック層
4基材の孔
6カリフラワー「本体」
7孔
8様々な大きさの孔
11頭状花
12小花
13より小さい小花
図2B
1多孔質基材
2多孔質セラミック層
3任意の金属層
4基材の孔
図4A
1無孔性アルミニウム箔の基材
2セラミック層
5セラミック層の孔
30選択的吸着層
図4B
1多孔質基材
2連続するセラミック層
3金属層
4基材の孔
5セラミック層の孔
図5
17端部
19供給口
31供給混合物
32濃縮物
33透過物
101複合膜
102膜エンベロープ
103フィードスペーサ
104透過スペーサ
105中空管
図6
14排出口
15投入口
17端部(供給口)
18圧力ケーシング
19端部(供給口)
20領域
21弁
22空間
23弁
25複合膜
31供給混合物
32濃縮物
33透過物
図7
20透過部
21外管
22内管
23アニュラ部
25複合膜
31供給混合物
32濃縮物
33透過物
図8・図10・図12・図13
In(N):孔数
Pore width:孔幅
図14
1基材
9ロール
10蒸着ゾーン
111ロール
112スパッタリングゾーン
113巻取ロール
151巻出ロール
153ロール
154蒸着ゾーン
155ロール
156スパッタリングゾーン
157ロール
158金属層を有するウェブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質基材が担持する、実質的には連続的な多孔質蒸着セラミック層を含み、前記セラミック層がアルミニウム、チタン、タンタル、ニオブ、ジルコニウム、ケイ素、トリウム、カドミウム、およびタングステンの酸化物からなるグループから選択された少なくとも1種類の金属酸化物を含んでいて、前記基材の平均孔幅が前記セラミック層の孔幅より大きく、また、
(a)前記セラミック層がフラクタル表面構造を有する、
(b)前記セラミック層が金属とその金属の酸化物との混合物だけからなる、
(c)前記膜が十分に柔軟であるので、巻取および巻出が可能である、
(d)前記セラミック層の表面に蒸着金属層が配列していて、前記金属層の多孔度および(または)平均孔幅が前記セラミック層の多孔度および平均孔幅よりもそれぞれ小さい、
という条件の少なくとも1つを満たしている、流体混合物成分を分離できるよう適合された複合膜。
【請求項2】
担持された前記セラミック層が前記基材の片面にのみ配列する、請求項1に記載の膜。
【請求項3】
担持された前記セラミック層が前記基材の両面に配列する、請求項1に記載の膜。
【請求項4】
担持された前記セラミック層が前記基材の片面にのみ配列していて、前記セラミック層の表面に蒸着金属層が配列している、前記金属層の多孔度および(または)平均孔幅が前記セラミック層の多孔度および平均孔幅よりもそれぞれ小さい、請求項1に記載の膜。
【請求項5】
担持された前記セラミック層が前記基材の両面に配列しているためセラミック層の2面が規定され、蒸着金属層が前記2面のセラミック層のどちらか1面に配列している、前記金属層の多孔度および(または)平均孔幅が前記セラミック層の多孔度および(または)平均孔幅よりもそれぞれ小さい、請求項1に記載の膜。
【請求項6】
さらに、
(i)前記蒸着セラミック層が物理蒸着法(PVD)により蒸着されている、
(ii)前記基材が金属製基材である
(iii)前記セラミック層が樹枝状、カリフラワー様、および珊瑚様のフラクタルな表面構造から選択されたフラクタルな表面構造を有する
(iv)前記セラミック層がアルミニウム地金およびアルミナだけからなる
(v)担持された前記セラミック層が前記基材の両面に配列し、どちらのセラミック面も基材の孔を介して互いに結合していて、この結合により膜の機械的強度が改善される、という条件の少なくとも1つを満たしている、請求項1に記載の膜。
【請求項7】
前記基材がステンレス鋼メッシュおよびエッチングされたスルーホール状のアルミニウム箔から選択される、請求項6に記載の膜。
【請求項8】
少なくとも2層の、多孔質基材の少なくとも片面に配列し、前記多孔質基材により担持された、実質的には連続的な多孔質蒸着セラミック層による多層システムを含み、前記セラミック層がアルミニウム、チタン、タンタル、ニオブ、ジルコニウム、ケイ素、トリウム、カドミウム、およびタングステンの酸化物からなるグループから選択された少なくとも1種類の金属酸化物を含んでいて、連続するセラミック層とセラミック層の間に蒸着金属層が配列していて、前記金属層の多孔度および(または)平均孔幅が前記セラミック層の多孔度および平均孔幅よりもそれぞれ小さい、また、
(a)前記セラミック層の少なくとも1層がフラクタル表面構造を有する、
(b)前記セラミック層が金属とその金属の酸化物との混合物だけからなる、
(c)前記膜が十分に柔軟であるので、巻取および巻出が可能である、
(d)最も外側のセラミック層表面に蒸着金属層が配列し、前記金属層の多孔度および(または)平均孔幅が前記最も外側のセラミック層の多孔度および平均孔幅よりもそれぞれ小さい、
という条件についても少なくとも1つを任意選択で満たしている、流体混合物成分を分離できるよう適合された複合膜。
【請求項9】
前記多層システムが前記基材の片面にのみ配列していて、任意選択で、単一のセラミック層がアルミニウム、チタン、タンタル、ニオブ、ジルコニウム、ケイ素、トリウム、カドミウム、およびタングステンの酸化物からなるグループから選択された少なくとも1種類の金属酸化物を含んでいて、前記基材のもう一方の面に配列し、前記基材により担持される、請求項8に記載の膜。
【請求項10】
前記多層システムが前記基材の両面に配列する、請求項8に記載の膜。
【請求項11】
前記多層システムが前記基材の片面にのみ配列し、任意選択で、請求項9において定義されたような単一のセラミック層が前記基材のもう一方の面に配列し、前記基材により担持されていて、最も外側のセラミック層の一方または両方の表面に蒸着金属層が配列し、前記金属層の多孔度および(または)平均孔幅が前記最も外側のセラミック層の多孔度および平均孔幅よりもそれぞれ小さい、請求項8に記載の膜。
【請求項12】
前記多層システムが前記基材の両面に配列し、最も外側のセラミック層2層の少なくとも1層の表面に蒸着金属層または複数の蒸着金属層が配列していて、前記金属層の多孔度および(または)平均孔幅が前記最も外側のセラミック層の多孔度および平均孔幅よりもそれぞれ小さい、請求項8に記載の膜。
【請求項13】
また、
(i)前記蒸着セラミック層が物理的に蒸着(PVD)されている、
(ii)前記基材が金属製基材である、
(iii)前記セラミック層が樹枝状、カリフラワー様、および珊瑚様のフラクタルな表面構造から選択されたフラクタル表面構造を有する、
(iv)前記セラミック層がアルミニウム地金とアルミナとの混合物だけからなる、
(v)担持されたセラミック層が前記基材の両面に配列し、両セラミック層が基材の孔を介して互いに結合していて、この結合により膜の機械的強度が改善される、
という条件の少なくとも1つを満たしている、請求項8に記載の膜。
【請求項14】
前記基材がステンレス鋼メッシュと、エッチングされたスルーホール状のアルミニウム箔から選択される、請求項13に記載の膜。
【請求項15】
セラミック層がそれぞれフラクタル表面構造を有していて、流体混合物成分の少なくとも1種類を選択的に吸着する物質または前記成分の少なくとも1種類を選択的に結合する物質を含む選択的吸着層で被覆され、膜表面で前記成分の少なくとも1種類を選択的に吸着することにより前記成分を分離できるよう適合された、請求項8に記載の複合膜。
【請求項16】
前記多孔質基材の代わりに孔幅および多孔度が制限されない多孔質基材を用いた、請求項15に記載の複合膜の変更形態。
【請求項17】
前記多孔質基材の代わりに無孔性基材を用いた、請求項15に記載の複合膜の変更形態。
【請求項18】
実質的には連続的な単一の多孔質蒸着セラミック層を含み、無孔性基材の少なくとも片面に配列し、前記無孔性基材により担持されていて、前記セラミック層がアルミニウム、チタン、タンタル、ニオブ、ジルコニウム、ケイ素、トリウム、カドミウム、およびタングステンの酸化物からなるグループから選択された少なくとも1種類の金属酸化物を含んでいる、薄層クロマトグラフィにおける同定用プレートおよび(または)流体混合物成分の分離用プレートとして適合された膜。
【請求項19】
また、
(α)前記セラミック層が少なくとも1種類の希土類金属を含む、
(β)前記セラミック層がフラクタル表面構造を有する、
(γ)前記無孔性基材がアルミニウムまたは高分子基材から選択される、
(δ)前記膜が十分に柔軟であるため、巻取および巻出が可能である、
という条件についても少なくとも1つを満たしている、請求項18に記載の膜。
【請求項20】
実質的には連続的な単一の多孔質蒸着セラミック層を含み、多孔質基材または無孔性基材の少なくとも片面に配列し、前記多孔質基材または前記無孔性基材により担持されていて、前記セラミックがアルミニウム、チタン、タンタル、ニオブ、ジルコニウム、ケイ素、トリウム、カドミウム、およびタングステンの酸化物からなるグループから選択された少なくとも1種類の金属酸化物を含んでいる、クラマトグラフィカラム用充填物質として適合された巻取状の膜。
【請求項21】
また、
(α)前記セラミック層が少なくとも1種類の希土類金属を含む、
(β)前記セラミック層がフラクタル表面構造を有する、
(γ)前記無孔性基材がアルミニウムまたは高分子基材から選択される、
という条件の少なくとも1つを満たしている、請求項20に記載の膜。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−326095(P2007−326095A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−116149(P2007−116149)
【出願日】平成19年4月25日(2007.4.25)
【出願人】(503342498)アクタール リミテッド (7)
【Fターム(参考)】