説明

流体送達のシステムおよび方法

流体を貯蔵および/または送達するための方法およびデバイスであって、化学試薬もしくは生化学試薬またはリンス溶液のような、少なくとも第一の流体および第二の流体が、共通の容器内で互いに隔離されて維持され、そしてこの容器から、所定の化学反応または生化学反応を実施するための反応部位へと連続的に移される。隔離は、気体の流体プラグのような第三の流体を、第一の流体と第二の流体との間に介在させることによって、達成され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本願は、米国特許法第119条第(e)項の下で、米国仮出願番号60/539,358(2004年1月26日出願)、米国仮出願番号60/539,416(2004年1月26日出願)、および米国仮出願番号60/565,866(2004年4月26日出願)の利益を主張する。これらの3つの仮出願の全ては、本明細書中に参考として援用される。
【0002】
(発明の背景)
(1.発明の分野)
本発明は、1種以上の流体の送達および/または貯蔵のための方法および装置に関し、そして特に、化学試薬および生物学試薬を貯蔵および送達するための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0003】
(2.関連技術の説明)
流体の送達は、化学、微生物学および生化学のような分野において、重要な役割を果たす。これらの流体としては、液体または気体が挙げられ得、そして試薬、溶媒、反応物質、またはリンス液を、化学プロセスまたは生物学プロセスに提供し得る。しばしば、1種より多くの流体が、反応容器または反応部位に送達されて、これらの流体間、またはこれらの流体の成分間の相互作用を促進する。断続的なリンス流体もまた、所望でない反応物質を除去するため、または反応器、反応部位もしくはアッセイ部位を準備するために、使用され得る。
【0004】
種々の微小流体デバイスおよび方法(例えば、微小流体アッセイ)は、安価であり、高感度であり、かつ精密な分析用プラットフォームを提供し得るが、このプラットフォームへの流体の送達は、ある程度の費用および精巧さを追加し得、これらは、最も有用であり得る野外でよりも、むしろ実験室内で、試験が実施されることを必要とし得る。
【0005】
化学プラットフォームおよび生化学プラットフォームが、微小流体のような領域における改良に起因して、より小さくなるにつれて、類似の数のアッセイまたは反応を行うために必要とされる試薬の量がより少なくなる。しかし、代表的に、より小さいサイズのプラットフォームは、反応部位に複数の試薬およびリンス液を供給する必要性を、減少させない。例えば、いくつかの微小流体アッセイは、1マイクロリットル未満の試薬流体を必要とし得るが、2種類、3種類、またはより多くの異なる流体が、精密な量で、適切な順序で供給されることが必要であり得る。
【0006】
微小流体アッセイおよび反応器に関して、流体は、しばしば、マイクロピペットを使用して、操作者によって供給される。流体は、微小流体システムの入口にピペットで入れられ得、そしてこの流体は、この微小流体システムの出口端部に減圧源を適用することによって、このシステムを通して引かれ得る。試薬はまた、例えば、必要とされる試薬で満たされた異なるシリンジポンプを使用することによって、ポンプ送達され得る。1つの流体がこの微小流体デバイス内にポンプ送達された後に、第一のポンプからのラインを外し、そして第二のポンプからのラインを接続することによって、第二の流体がポンプ送達され得る。あるいは、1つのポンプ送達される流体から別のポンプ送達される流体へと切り替えるために、弁手段が使用され得る。異なるポンプが、各流体について使用されて、交差汚染を回避する。このことは、2つの流体が、互いに反応し得るか、または混合される場合にアッセイもしくは反応の結果に影響を与え得る成分を含有する場合に、特に関連があり得る。
【0007】
連続フローシステムは、反応チャネルを連続して通る、連続した2つの異なる流体を使用し得る。流体は、弁作用により、管に供給する流体源を切り替えることによって、連続的な様式でチャネル内にポンプ送達され得る。これらの流体は、このシステムを通って連続的に、一定して移動し、そしてチャネル内で反応させられる。例えば、PCR反応は、連続流れを使用して実施され得る。非特許文献1を参照のこと。
【0008】
流体システムの有用性は、システムと共に使用されるべきあらゆる試薬の貯蔵時間(すなわち、保存寿命)によって影響を受け得る。可搬性微小流体システムは、ほぼいかなる位置へも運ばれ得るが、試薬が新たに調製されなければならない場合、このシステムの、現場での有益性が減少し得る。このことは、特に、生物学に基づくシステムおよび生化学に基づくシステムについて、事実であり得る。これらのシステムは、例えば、不安定な試薬、短い保存寿命を有する試薬、または特別な条件下(例えば、冷蔵庫)で保存されなければならない試薬に依存し得る。
【0009】
初期および進行中の、疾患状態の正確な測定は、ヒトおよび動物の疾患の予防および処置のために重要である。診断技術の1つのクラスは、免疫アッセイ反応を使用して、被験体から採取されたサンプル中の抗原または抗体のいずれかの存在を検出する。これらの免疫アッセイ方法としては、例えば、ELISA、免疫クロマトグラフィーアッセイ(ストリップ試験、ディップスティックアッセイおよび側方流れアッセイ)、ならびにサンドイッチアッセイが挙げられる。これらの型のアッセイの使用の制度、信頼性、および容易さは、改善されているが、しばしば、試験は、試験が臨まれるいくつかの領域において利用不可能であり得る、実験室条件、電源、および訓練を必要とする。
【0010】
1つの型のサンドイッチアッセイは、金と結合した抗体を使用して、検出を増強する。例えば、特許文献1を参照のこと。金コロイド信号の増強は、この金コロイドを銀で染色することによって、達成され得る。最初に、抗原が、固体のポリスチレン基板上に固定される。次いで、ヒト抗HIV抗体が、この抗体によって捕捉され、従って、この抗体自体が、この基板上に固定される。次いで、この抗体は、コロイド金粒子で標識された抗ヒトIgGに曝露され、これによって、標識されたIgGは、この抗体に結合する。次いで、この抗原−抗体−IgG複合体は、銀イオンを含有する溶液に曝露され、そしてこれらの銀イオンは、これらの金粒子の周りで、固体銀粒子(見た目に暗い色を有する)として核形成する。
【0011】
微小流体および微小流体技術の開発は、化学的および生物学的研究ツール(化学反応を実施するため、流体を混合および分離するため、サンプルを希釈するため、ならびに勾配を発生させるためのプラットフォームが挙げられる)を開発してきた。例えば、特許文献2(本明細書中に参考として援用される)を参照のこと。
【特許文献1】国際公開第91/01003号パンフレット
【特許文献2】米国特許第6,645,432号明細書
【非特許文献1】Obeidら、「Microfabrication Device for DNA and RNA Amplification by Continuous−Flow Polymerase Chain Reaction and Reverse Transcription−Polymerase Chain Reaction with Cycle Number Selection」、Analytical Chemistry,2003年、第75巻、p.288−295
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0012】
(発明の要旨)
流体送達装置、ならびに製造および使用の方法が提供される。この装置は、多数の分析アッセイで使用され得る。
【0013】
1つの局面において、方法が提供され、この方法は、共通の容器内で互いから隔離されて維持されている、第一の流体および第二の流体を提供する工程、これらの第一の流体および第二の流体を、この容器から、所定の化学反応または生化学反応を実施するための反応部位へと連続的に移動させる工程、および第一の流体と第二の流体との間の接触を、少なくともこれらの流体がこの反応部位に適用された後まで、回避する工程を包含する。
【0014】
別の局面において、装置が提供され、この装置は、シールされた容器、この容器内に配置された第一の静止流体、この容器内に配置された第二の静止流体、およびこの容器内に配置された第三の静止流体を備え、この第三の流体は、これらの第一の流体と第二の流体とを隔離し、そして少なくともこれらの第一の流体と第二の流体とは、所定の化学反応または生化学反応において、所定の順序で使用されるために選択される。
【0015】
別の局面において、方法が提供され、この方法は、第一の流体を容器内に流す工程、第二の流体(この第二の流体は、この第一の流体と実質的に非混和性である)をこの容器内に流す工程、第三の流体(この第三の流体は、この第二の流体と実質的に非混和性であり、そしてこの第三の流体は、この第一の流体とは接触しない)をこの容器内に流す工程、およびこの容器内にこれらの流体を封じ込める工程を包含する。
【0016】
別の局面において、装置が提供され、この装置は、チャンバを備えるシールされた容器を備え、このチャンバは、連続的な間隙を規定し、第一の流体および第二の流体を含み、これらの第一の流体および第二の流体は、所定の化学反応または生化学反応において連続して使用するために、この容器から別々に送達可能であるように構成および配置されており、このシールされた容器は、第一の流体および第二の流体を選択された化学反応または生化学反応において使用する前の少なくとも1時間にわたって、これらの第一の流体および第二の流体を貯蔵するために構成および配置される。
【0017】
別の局面において、キットが提供され、このキットは、微小流体チャネルを備える表面、この微小流体チャネルの一部と会合した抗体または抗原のうちの少なくとも1種、容器、この容器内に配置された第一の静止流体(この第一の静止流体は、抗体または抗原と会合した金属コロイドを含有する)、この容器内に配置された第二の静止流体(この第二の静止流体は、金属前駆体を含有する)、この容器内に配置された第三の静止流体(この第三の流体は、これらの第一の流体と第二の流体とを隔離する)、およびこのアッセイを実施するための指示書を備える。
【0018】
別の局面において、方法が提供され、この方法は、共通の容器内で1分間より長時間、互いから隔離されて静止して維持された、第一の流体および第二の流体を提供する工程、これらの第一の流体および第二の流体を、反応部位に連続して適用する工程、ならびに少なくともこれらの流体がこの反応部位に適用された後まで第一の流体と第二の流体との間の接触を回避する工程を包含する。
【0019】
別の局面において、方法が提供され、この方法は、共通の容器内で互いから隔離して維持された第一の流体および第二の流体を提供する工程、これらの第一の流体および第二の流体を、連続して、この容器から、所定の化学反応または生化学反応を実施するための反応部位へと移動させる工程、この第一の流体の成分をこの反応部位と会合させる工程、ならびにこの第二の流体の成分をこの第一の流体の成分と会合させる工程を包含する。
【0020】
本願の主題は、いくつかの場合には、相互に関係する製品、特定の問題に対する代替の解決策、および/または単一のシステムもしくは物品に対する複数の異なる用途を包含し得る。
【0021】
本発明の他の利点、特徴および用途は、添付の図面と一緒に考慮される場合に、以下の本発明の非限定的な実施形態の詳細な説明から、明らかになる。図面は、概略的であり、そして同一縮尺で描かれることを意図されない。図において、様々な図に示される各同一の構成要素またはほぼ同一の成分は、代表的に、1つの番号で表される。明瞭にする目的で、当業者が本発明を理解するために説明が必要ではない場合には、全ての構成要素が全ての図において標識を付けられているわけではなく、本発明の各実施形態の全ての構成要素が標識されているわけではない。本明細書と、参考によって援用される文献とが、矛盾する開示を含む場合には、本明細書が支配するべきである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
(詳細な説明)
本発明は、その用途が、以下の説明に記載されるかまたは図面に図示される構成要素の構成および配置の詳細に限定されない。本発明は、他の実施形態が可能であり、そして種々の様式で実施され得る。また、本明細書中で使用される語法および専門用語は、説明の目的のためであり、そして限定としてみなされるべきではない。本明細書中の、「含む」、「備える」、または「有する」、「収容する」、「包含する」、およびその活用形は、その前に列挙される項目、およびその均等物、ならびにさらなる項目を含むことを意味する。
【0023】
本発明は、流体の送達のための方法および装置に関する。用語「流体」は、本明細書中において、当業者によって通常であるように、液体と気体(気体の混合物を含む)との両方を包含するように使用される。水性および非水性の溶媒、溶液および懸濁液もまた、包含される。
【0024】
「反応部位」とは、化学プロセス、物理プロセス、または生化学プロセスが起こる位置である。これらのプロセスとしては、例えば、化学反応、電気化学光化学反応、化学アッセイおよび生物アッセイ(例えば、疾患状態の評価、免疫アッセイ、核酸の結合および/または同定、ならびにタンパク質の結合および/または同定)が挙げられ得る。仕上げプロセス、表面処理、および相変化反応もまた、包含される。
【0025】
本明細書中で使用される場合、「非混和性」は、当該分野におけるその通常の意味に従って使用される。具体的には、第一の流体が第二の流体中に実質的に可溶性ではない場合に、この第一の流体は、この第二の流体中に非混和性である。いくつかの例において、第一の流体は、流体が貯蔵または使用される環境条件下で、第二の流体中に0.1%未満、1%未満、10%未満、または50%未満可溶性である場合に、この第一の流体は、第二の流体中に非混和性であり得る。
【0026】
「一体的な物品」とは、単一片の材料、または互いに一体的に接続された構成要素のアセンブリを意味する。本明細書中で使用される場合、用語「一体的に接続された」とは、2つ以上の物体を言及する場合、通常の使用の経過の間、互いから分離されない物体(接着剤、道具などを介して一緒に固着された別々の構成要素)を意味する。例えば、手では分離され得ず;分離が、少なくとも道具の使用を必要とし、そして/または構成要素の少なくとも1つに対する損傷(例えば、破壊、剥離などによる)を引き起こすことによる。
【0027】
「指示書」は、宣伝商品の構成要素を規定し得、そしてしばしば規定し、そして代表的に、本発明の組成物のパッケージ上またはパッケージに付随した、文書による指示書を、必要に応じてキットの一部として、含む。指示書はまた、任意の様式で提供される、任意の口頭による指示または電子的指示を含み得る。「キット」は、代表的に、そして好ましくは、本発明の構成要素またはデバイスのいずれか1つまたは組み合わせと、指示書との両方を含む、パッケージを規定するが、本発明の構成要素またはデバイスと、この構成要素またはデバイスに関連して、指示書がこの構成要素またはデバイスに関することを臨床専門家が明白に認識するような様式で提供される、任意の形態の指示書とをまた含み得る。
【0028】
全てではないがいくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるシステムおよび方法の全てまたはいくつかの構成要素は、微小流体構成要素である。「微小流体」とは、本明細書中で使用される場合、1mm未満の断面寸法および少なくとも3:1の長さ対最大断面寸法の比を有する少なくとも1つの流体チャネルを備える、デバイス、装置またはシステムをいう。「微小流体チャネル」とは、本明細書中で使用される場合、これらの基準に合うチャネルである。
【0029】
チャネルの「断面寸法」は、流体流れの方向に対して垂直に測定される。本発明の構成要素におけるほとんどの流体チャネルは、2mm未満、そしていくつかの場合には、1mm未満の極大断面寸法を有する。1セットの実施形態において、本発明の実施形態を含む全ての流体チャネルは、微小流体チャネルであるか、または2mm以下もしくは1mm以下の最大断面寸法を有する。別の実施形態において、流体チャネルは、単一の構成要素(例えば、エッチングされた基板または成型されたユニット)によって、部分的に形成され得る。もちろん、より大きなチャネル、管、チャンバ、レザバなどが、大量の流体を貯蔵するため、または本発明の構成要素に流体を送達するために、使用され得る。1セットの実施形態において、本発明の実施形態を含むチャネルの極大断面寸法は、500ミクロン未満、200ミクロン未満、100ミクロン未満、50ミクロン未満、または25ミクロン未満である。
【0030】
「チャネル」とは、本明細書中で使用される場合、流体の流れを少なくとも部分的に方向付ける、物品(基板)の表面または内部の特徴を意味する。チャネルは、任意の断面形状(円形、楕円形、三角形、不規則、正方形または矩形など)を有し得、そして覆われていても覆われていなくてもよい。チャネルが完全に覆われている実施形態において、このチャネルの少なくとも一部分は、完全に閉じた断面を有し得るか、またはこのチャネル全体が、その全長に沿って(その入口および出口を除く)、完全に閉じていることが可能である。チャネルはまた、少なくとも2:1、より代表的には、少なくとも3:1,5:1、または10:1、あるいはそれより大きいアスペクト比を有し得る。開いたチャネルは、一般に、流体の輸送に対する制御を容易にする特徴(例えば、構造的特徴(細長い刻み目)、および/または物理的特徴もしくは化学的特徴(疎水性対親水性)または流体に力(例えば、閉じ込め力)を付与し得る他の特徴)を含む。チャネル内の流体は、このチャネルを、部分的に満たしてもよく、完全に満たしてもよい。開いたチャネルが使用されるいくつかの場合において、流体は、例えば、表面張力(すなわち、凹状または凸状の液面)を使用して、このチャネル内に保持され得る。
【0031】
チャネルは、任意の大きさであり得、例えば、流体の流れに対して垂直に、約5mmまたは2mm未満または約1mm未満、または約500ミクロン未満、約200ミクロン未満、約100ミクロン未満、約60ミクロン未満、約50ミクロン未満、約40ミクロン未満、約30ミクロン未満、約25ミクロン未満、約10ミクロン未満、約3ミクロン未満、約1ミクロン未満、約300nm未満、約100nm未満、約30nm未満、または約10nm未満の最大寸法を有する。いくつかの場合において、チャネルの寸法は、流体が物品または基板を通って自由に流れ得るように選択され得る。チャネルの寸法はまた、例えば、チャネル内での流体の特定の容量流量または直線流量を可能にするように、選択され得る。もちろん、チャネルの数およびチャネルの形状は、当業者に公知の任意の方法によって、変更され得る。いくつかの場合において、1つより多くのチャネルまたは毛管が使用され得る。例えば、2つ以上のチャネルが使用され得、この場合、これらのチャネルは、互いに内部に位置するか、互いに隣接して位置するか、互いに交差して位置するか、などである。
【0032】
「プラグ」とは、本明細書中で、第一の流体の連続的な体積であって、その境界が、容器の1つ条の壁と、第二の流体(第二の流体は、第一の流体と実質的に非混和性である)との1つ以上の界面とによって規定されるものとして定義される。プラグの例は、1マイクロリットルの体積の両端において空気と接している、毛管内の1マイクロリットルの体積の水溶液である。プラグの別の例は、管の密封された長さの内部の1ミリリットルの体積の非水性の液体であり、この非水性の流体は、一端がこの管の密封された端部と接しており、そして反対側の端部は、水性の液体と接している。
【0033】
流体が容器内で「静止して維持される」場合、この流体は、この容器に対するその位置を変化させないが、この流体は、例えば、その静止して維持される位置で膨張、収縮、または振動し得る。この流体を収容する容器は、この流体が静止して維持されている間に、移動され得、または再配向され得る。
【0034】
流体が第二の流体と同じ「型」である場合、このことは、これらの2つの流体が、アッセイまたは反応において同じ目的で働くことを意味するが、これらの流体は、異なる体積であり得る。例えば、2つの異なるリンス溶液は、同じ型の溶液とみなされるが、試薬を含有する溶液は、リンス溶液と同じ型の溶液ではない。
【0035】
2つの流体が互いに「異なる」場合、これらの流体は、混合せず、そして区別可能な体積を別々に満たす。例えば、2つの流体は、これらが非混和性である場合、または分離流体などによって物理的に隔離される場合に、これらの流体は、異なり得る。
【0036】
用語「結合(する)」とは、相互の親和性または結合能力を示す、対応する対の分子の間での相互作用をいい、代表的には、特異的または非特異的な結合または相互作用であり、生化学的相互作用、物理的相互作用、および/または薬学的相互作用が挙げられる。生物学的結合とは、タンパク質、核酸、糖タンパク質、炭水化物、ホルモンなどが挙げられる分子の対の間で起こる型の相互作用を定義する。具体的な例としては、抗体/抗原、抗体/ハプテン、酵素/基質、酵素/インヒビター、酵素/補因子、結合タンパク質/基質、キャリアタンパク質/基質、レクチン/炭水化物、レセプター/ホルモン、レセプター/エフェクター、核酸の相補鎖、タンパク質/核酸レセプター/インデューサー、リガンド/細胞表面レセプター、ウイルス/リガンドなどが挙げられる。
【0037】
「不透明な材料」とは、1つ以上の波長の光の透過率を妨害する物質である。不透明な材料は、光を単に屈折させるのみでなく、例えば、光を吸収または反射することによって、この材料を通る透過の量を低下させる。異なる不透明な材料または異なる量の不透明な材料は、この不透明な材料を照射する光の90%未満、80%未満、70%未満、60%未満、50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、10%未満、または1%未満の透過率を可能にし得る。不透明な材料の例としては、金属元素の分子層またはポリマー層が挙げられる。
【0038】
用語「結合パートナー」とは、特定の分子との結合を起こし得る分子をいう。生物学的結合パートナーが、例である。例えば、プロテインAは、生物学的分子IgGの結合パートナーであり、そしてその逆もいえる。同様に、抗体は、その抗原の結合パートナーであり、そしてその逆もいえる。
【0039】
「コロイド」とは、本明細書中で使用される場合、ナノ粒子(すなわち、非常に小さい、自己懸濁可能であるかまたは流体に懸濁可能な粒子)を意味し、例えば、無機材料または有機材料、ポリマー材料、セラミック材料、半導体材料、金属(例えば、金)材料、非金属材料、結晶性材料、非晶質材料、あるいはこれらの組み合わせの材料から作製されるものが挙げられる。代表的に、本発明に従って使用されるコロイド粒子は、250nm未満の任意の次元での断面、より代表的には、100nm未満の任意の次元での断面、そしてほとんどの場合には、約2nm〜30nmの断面を有する。本発明において使用するために適切な1つのクラスのコロイドは、断面が10nm〜30nmであり、そして別のクラスのコロイドは、断面が約2nm〜10nmである。コロイドは、結合パートナー(例えば、抗体)と会合し得る。本明細書中で使用される場合、この用語は、生化学の分野において通常使用される定義を包含する。
【0040】
本明細書中で使用される場合、別の構成要素「に対して固定された」構成要素は、他の構成要素に固着されているか、または他の構成要素に間接的に(例えば、他の構成要素が同様に固着されているか、もしくは他の構成要素と過渡的に会合する第三の構成要素に固着されることによって)固着されているかのいずれかである。例えば、信号発生実体は、この信号発生実体が結合種に固着されるか、この結合種が固着されるコロイド粒子に固着されるか、この結合種が固着されるデンドリマーもしくはポリマーに固着される場合などに、この結合種に対して固定される。
【0041】
「信号発生実体」とは、特定のサンプル中または特定の位置におけるその存在を示し得る実体を意味する。本発明の信号発生実体は、支援されないヒトの眼によって同定可能である実体、単離中には不可視であり得るが充分な量である場合には支援されないヒトの眼によって検出可能であり得る実体(例えば、コロイド粒子)、視覚的にか(支援なしでか、もしくは電子顕微鏡などが挙げられる顕微鏡を用いて)、光学的にか、または分光学的に、容易に検出され得るようなレベルもしくは波長範囲内で、電磁放射線を吸収もしくは放出する実体、電子的または電気化学的に検出され得る実体(例えば、適切な活性化エネルギーへの曝露の際に特徴的な酸化/還元パターンを示すレドックス活性分子)(「電子的信号発生実体」)などであり得る。例としては、色素、顔料、電気活性分子(例えば、レドックス活性分子)、蛍光性部分(定義により、リン光性部分を含む)、アップレギュレーティングリン光体、化学発光実体、電気化学発光実体、または酵素に結合した信号発生部分(西洋ワサビペルオキシダーゼおよびアルカリホスファターゼが挙げられる)が挙げられる。「信号発生実体の前駆体」とは、それ自体は信号発生能力を有さないかもしれないが、別の種との化学的相互作用、電気化学的相互作用、電気的相互作用、磁気的相互作用、または物理的相互作用の際に、信号発生実体になる実体である。例としては、別の分子との化学的相互作用の際に、特定の検出可能な波長のみにおいて放射線を発生させる能力を有する、発色団が挙げられる。信号発生実体の前駆体は、本明細書中で使用されるような「信号発生実体」と区別可能であるが、この定義に含まれる。
【0042】
1つの局面において、本発明は、微小流体デバイスのようなデバイスに一連の流体を提供するために使用され得る。この微小流体デバイスは、本明細書中に記載されるものの1つであり得るか、または他の任意の微小流体デバイスであり得る。このような微小流体デバイスの例は、Samuel Siaら、PCT出願(発明の名称「Assay Device and Method」、2004年12月29日出願、代理人事件番号H0498.70211、本明細書中に参考として援用される)に記載されている。流体は、微小流体アッセイの反応部位に、連続して流され得る。これらの流体は、気体、水性の液体、または非水性の液体であり得る。流体および流体成分としては、例えば、試薬、リンス液、予備リンス液、固定液、および染色液が挙げられ得る。これらの流体は、異なる試薬の間での混合がほとんどまたは全くない状態で、1つ以上の反応部位に流され得る。一連のリンス溶液は、分離プラグによって分離され得、第一のリンス溶液が、反応部位を完全に越えて通った後に、第二のリンス溶液がその部位に適用されるようにする。
【0043】
1つの局面において、容器は、2種以上の流体を収容し、貯蔵し、保護し、そして/または搬送するために、提供される。本明細書中において使用される場合、容器は、カートリッジおよび管を備える。容器は、両方の流体と非混和性である第三の流体によって隔離された、2つ以上の異なる流体を収容し得る。任意の数の異なる流体が、容器内に収容され得る。例えば、図12は、容器が管10(この管は、試薬溶液プラグ20を備え、これに空気プラグ30が続き、次にリンス溶液プラグ40が続く)である実施形態の、長手軸方向断面を図示する。さらなる空気プラグ50は、第一のリンス溶液プラグ40を、第二のリンス溶液プラグ60から隔離し得る。管の端部70および72は、例えば、これらのプラグを保持するため、そして外部供給源からの汚染を防止するために、密封され得る。これらの液体プラグは、この管内で、それぞれの相対位置を保持し得、そしてこれらの間にある空気プラグによって、互いに接触することを防止され得る。この管の寸法および構築材料は、流体プラグがそれらの位置を維持し、そして混合されないままになることを補助するように、選択され得る。
【0044】
試薬および他の流体は、この容器内で、延長した時間にわたって貯蔵され得る。例えば、試薬は、1日より長く、1週間より長く、1ヶ月より長く、または1年間より長く、貯蔵され得る。流体の間での接触を防止することによって、代表的に互いに反応するかまたは結合する成分を含有する流体が、反応または結合することを防止され、一方で、連続的なチャンバ内に維持される。
【0045】
流体は、プロセス(例えば、反応またはアッセイに関与する)において使用されるべき容器から移動され得る。流体は、端部70および72からシールを除去するか、またはこのシールに穿孔した後に、圧力または減圧を付与することによって、この容器から移動され得る。他の実施形態において、この容器は、シールされる必要がなく、そして流体の流れは、外力(例えば、圧力差)を適用することによって、開始され得る。この容器の一端(たとえば、端部70)は、この容器から流体を受容する別のデバイス内にあり得るか、またはこのデバイスと流体連絡して配置され得る。このようなデバイスとしては、例えば、反応器またはアッセイの反応部位が挙げられ得る。
【0046】
流体プラグを収容する容器は、反応部位と流体連絡して置かれ得、そして流体は、この容器からこの反応部位へと流され得る。例えば、これらの流体は、微小流体免疫アッセイに流され得、これのいくつかの実施形態が、本明細書中に記載される。流体プラグを収容する容器は、この反応部位を備えるデバイスとは別個であり得るか、または同じプラットフォームの一部であり得る。流体は、例えば、この容器に通してこの流体を押すことまたは非区ことによって、この反応部位に流され得る。流体は、例えば、ポンプ、注射器、加圧された容器、または他の任意の圧力源を使用して、この反応部位に押され得る。あるいは、流体は、この反応部位の下流側に真空または減圧を適用することによって、この反応部位に引かれ得る。減圧は、この反応部位の上流に存在する条件よりも低い圧力条件を提供し得る任意の供給源によって、提供され得る。このような供給源としては、減圧ポンプ、ベンチュリ、注射器および排気されたコンテナが挙げられ得る。
【0047】
1セットの実施形態において、容器は、線状の順序で流体プラグを収容し得、その結果、流体がこの容器から反応部位へと流れるにつれて、これらの流体は、所定の順序で送達される。例えば、アッセイは、連続して、抗体流体、リンス流体、標識された抗体流体、およびリンス流体を受容し得る。非混和性の流体(隔離流体)を、これらのアッセイ流体の各々の間に維持することによって、これらのアッセイ流体は、これらのアッセイ流体のいずれのものの間での接触も回避しながら、単一の容器から順番に送達され得る。アッセイ流体を隔離している任意の非混和性流体が、反応部位の状態を変化させずに、この反応部位に適用され得る。例えば、抗体−抗原結合が反応部位において起こった場合、起こったいずれの結合にも最小の影響で、または影響なしで、この部位に空気が適用され得る。
【0048】
1つの実施形態において、少なくとも2種の流体が、連続して、共通の容器から流され得、そして各流体の成分は、共通の反応に関与し得る。本明細書中において使用される場合、「共通の反応」とは、各流体からの少なくとも1種の成分が、この流体が容器から送達された後に、他の成分と反応すること、または各流体からの少なくとも1種の成分が、この容器から送達された後に、共通の成分と、そして/もしくは共通の反応部位で反応することを意味する。例えば、第一の流体の成分は、この容器の下流にある化学的実体または生物学的実体と反応し得る。化学的実体または生物学的実体は、反応部位を形成し得、そして例えば、サンプル、生物学的化合物または化学的化合物、細胞、細胞のタンパク質、表面もしくは基質であり得る。この化学的実体または生物学的実体は、所定の位置に固定され得るか、または可動であり得る。次いで、第二の流体からの成分は、下流の化学的実体または生物学的実体と反応した、第一の流体からの成分と反応および/もしくは会合し得るか、あるいは第二の流体からの成分は、この化学的実体または生物学的実体自体と反応または会合し得る。次いで、さらなる流体が、連続して、この生物学的実体または化学的実体に適用されて、さらなる反応または結合事象を起こし得るか、あるいは指示薬または信号増強剤として適用され得る。
【0049】
この容器を試薬で予備充填した後に、これらの試薬を、下流プロセスのために、所定の順序で分配し得る。試薬への曝露の所定の時間が望まれる場合、この容器内の各流体の量は、この試薬が下流の反応部位に曝露される時間の量に比例し得る。例えば、第一の試薬についての所望の曝露時間が、第二の試薬についての所望の曝露時間の2倍である場合、この容器内の第一の試薬の体積は、この容器内の第二の試薬の体積の2倍であり得る。一定の圧力差が、これらの試薬を容器から反応部位へと流す際に適用される場合、そしてこれらの流体の粘度が同じかまたは類似である場合、特定の地点(例えば、反応部位)における各流体の曝露時間は、この流体の相対的な堆積に比例し得る。容器の幾何学的形状、圧力または粘度のような要因はまた、容器からの特定の流体の流量を変化させるために、変更され得る。
【0050】
本発明の別の局面は、容器を流体プラグで満たすことを中心とする。1つの実施形態において、この容器は、管であり、そしてこの管は、非混和性の隔離流体のプラグによって隔離された、一連の流体プラグで順番に満たされる。流体は、2つ以上の流体プラグが1つ以上の隔離流体プラグによって分離されることを可能にする任意の様式で、この管内に配置され得る。例えば、流体は、圧力下でこの管にポンプ送達され得るか、または減圧によってこの管に引き込まれ得る。
【0051】
1つの実施形態において、この管の第一の端部は、減圧源に接続され得る。この管は、流体(例えば、緩衝液)で予め満たされ得、この緩衝液は、空気より高い粘度を示し、そしてこの管が単に空気で満たされている場合よりも正確な充填速度の制御を可能にし得る。この管を予備充填するために使用される任意の流体のいくつかまたは全ては、充填プロセスの間に、この管から排出され得る。充填されるべき管の部分と減圧源との間に、弁が配置され得、この弁は、減圧をこの管に提供するために、開閉し得る。この管の反対側の端部は、例えば、96ウェルプレート内のバイアルまたはウェルであり得るレザバ内に配置され得る。このレザバは、緩衝液、試薬流体、リンス溶液、前駆体または隔離溶液のような流体を収容し得る。この弁は、所望の量の流体をこのレザバから引き込むために十分に長い時間にわたって、開かれ得る。この弁は、手動でか、またはコンピュータのような制御器によって、制御され得る。この弁が閉じられた後に、この管の反対側の端部は、流体レザバから取り外され得、そして第二の流体プラグが、この管に引き込まれ得る。空気が第二の流体である場合、この弁は、この管の端部が空気中にあり、レザバ内にはない間に、起動され得る。適切な長さの空気のプラグが管内に吸引されると、弁が閉じられ、そしてこの管の反対側の端部が、流体レザバ(これは、第一のレザバと同じであっても異なっていてもよい)に中に配置され得る。次いで、この弁は、所望のプラグサイズを吸引するために適切な時間にわたって、再度開かれる。これに続いて、別の隔離流体プラグ(これは、第一のプラグと同じであっても異なっていてもよい)が吸引され得る。この手順は、所定の順序および量の流体が管内に吸引されるまで、繰り返され得る。いくつかの場合において、この管は、次いで、一端または両端において、シールされ得る。複数の管が、共通の制御器(例えば、コンピュータ)を使用して、並行して吸引され得る。流体は、1つ以上の管が充填される場合、共通の容器から引き込まれても別々の容器から引き込まれてもよい。
【0052】
別の実施形態において、管のような容器は、減圧ポンプなしで、または電力の供給源なしで、充填され得る。例えば、手で操作される注射器が、流体を吸引するための減圧供給源を提供し得る。この注射器のプランジャーは、特定の量の流体を、管の反対側の端部に吸引するために、特定の距離だけ引き込まれ得る。弁作用は、必要ではないかもしれない。複数の管が、並行して充填され得る。
【0053】
1つの局面において、容器から連続して送達され得る2種以上の流体を保持するために、この容器が使用され得る。この容器は、任意の形状およびサイズであり得、そして任意の保持されるように指定される流体を保持するために適切な任意の材料から作製され得る。これらの流体に依存して、この材料は、例えば、ガラス、金属、またはポリマーであり得る。ポリマーとしては、例えば、熱可塑性物質(例えば、ポリエチレンおよびポリプロピレン)、ポリカーボネート、ポリスチレン、PTFE、PET、および当業者に公知の他のものが挙げられ得る。
【0054】
いくつかの実施形態において、容器は、管である。管は、異なる直径、長さおよび材料で容易に入手可能であるので、好ましくあり得る。管は、可撓性であり得、そして半透明であっても透明であってもよい。管内の流体プラグは、このプラグの体積の指標として、線状に測定され得る。この管は、一定または可変の内径を有し得、そして10:1より大きいか、50:1より大きいか、または100:1より大きい長さ対内径比を有し得る。用途に依存して、任意の直径の管が使用され得、そして多くの用途において、この管は、1cm未満、5mm未満、1mm未満、500ミクロン未満、200ミクロン未満、100ミクロン未満、または50ミクロン未満の内径を有し得る。より大きい長さ対内径比を有する管は、この管内に収容される各流体の量を目視により示す際に、有用であり得る。例えば、既知の内径の管内の流体プラグの線状の測定は、この流体の体積または相対体積の正確な指標を与え得る。
【0055】
容器は、管または別の形状である場合、2つ以上の枝部またはセクションを備え得、これらの枝部またはセクションは、互いに、そしてこの容器の残りの内部と、流体連絡し得る。いくつかの実施形態において、管は、相互接続され得る、2つ、3つ、4つ、またはより多くの枝部を有し得る。これらの枝部および枝の接合部は、弁を備えても備えなくてもよい。弁は、1つ以上の枝部、およびその中に収容されるあらゆる液体を、管の残りの部分から一時的に隔離するために使用され得る。
【0056】
1つの実施形態において、管は、一端(例えば、上流端部)において、「Y」字型の分枝を備え得る。このY字の各枝部は、他の枝部内の流体と反応して第三の流体を形成する流体を収容し得る。各流体を各枝部から共通の管に引き込むことにより、これらの2つの流体が反応することを可能にするための環境が提供され得る。これらの2つの枝部は、あるセクションにおいて接合し得るか、またはあるセクションに通じ得、このセクションは、乱流を促進し、従って、これらの2つの流体の混合を促進するために十分な寸法のものである。異なる幾何学的形状の例については、米国特許第6,705,357号を参照のこと。これは、その全体が、本明細書中に参考として援用される。
【0057】
いくつかの実施形態において、容器のために使用される材料は、非常に濡れ性であり得る。しかし、他の実施形態において、容器のために使用される材料、および特に、この容器の内側表面のために使用される材料は、低い濡れ性を示し得る。例えば、水溶液がこの容器に収容される場合、この容器の内側表面は、水溶液に対して低い濡れ性を示し得る。この容器の内部表面の濡れ性が低い場合、流体は、その表面に沿って流れにくくなり得る。濡れ性が高い表面では、水溶液は、この容器の壁に沿って流れ得、そしてこの容器に収容される他の流体と、より接触しやすくなり得る。濡れ性が低い表面は、管、カートリッジまたは他の容器について、高い内径対長さ比の使用を可能にし得、一方で、貯蔵、輸送および/または使用の間、異なる流体プラグを維持する。表面エネルギーは、表面の濡れ性の指標であり、そして容器またはこの容器の内側表面が、40ダイン/cm未満、35ダイン/cm未満、32ダイン/cm未満、または30ダイン/cm未満の表面エネルギーを有することが、好ましくあり得る。これらの範囲内の表面エネルギーを示し得るいくつかのポリマーとしては、ポリプロピレン、ポリエチレンおよびPTFEが挙げられる。
【0058】
いくつかの実施形態において、より親水性の内側表面が、好ましくあり得る。例えば、いくつかのシステムにおいて、流体プラグが特定の特性を有するか、または有さない場合、流体プラグの一定の流れは、隔離流体によって妨害され得る。例えば、流体が、隔離流体と比較して、この容器の内側表面に対して十分に高い親和性を有さない場合、流体の流れは、影響を受け得る。これの1つの例は、液体/気体系の場合であり得る。流体が水溶液であり、そして隔離流体が気体(例えば、空気)である場合、この隔離流体は、表面に付着し得、そしてこの流体が容器を通って進められるにつれて、この流体の流れの破壊または他の非一貫性を引き起こし得る。
【0059】
表面に対する流体の相対的親和性を増加させることは、性能を改善するため(例えば、非一貫性の流れの傾向を減少させることによる)の1つの方法であり得る。これは、いくつかの実施形態において、流体、隔離流体、表面、またはこれらの任意の組み合わせの特性を変更することによって、なされ得る。容器の内側表面の特性を変更する1つの方法は、この表面、またはこの表面の一部の親水性を増加させることである。これは、例えば、この表面を、界面活性剤(例えば、TWEEN 20)で処理すること、あるいはこの表面を、プラズマ酸化または気体もしくは液体の酸化剤(例えば、オゾンまたは過マンガン酸塩)で酸化することによって、なされ得る。これらの界面活性剤または酸化剤は、この容器を通して流されて、この容器の内側表面の少なくとも一部の特性を変更し得る。他の技術としては、シラン化、あるいは例えば、共有結合または物理吸着によって、この表面に親水性ポリマーまたは両親媒性ポリマーを結合させることが挙げられる。
【0060】
親水性の増加は、より高い表面エネルギーによって反映される、より濡れ性の高い表面を生じ得る。例えば、内側表面は、32ダイン/cmより大きいか、35ダイン/cmより大きいか、40ダイン/cmより大きいか、または45ダイン/cmより大きい表面エネルギーを示し得るか、または示すように処理され得る。
【0061】
この容器は、この容器内に保持され得る流体成分についての低い吸光度特徴を有する材料から作製され得る。例えば、容器が、タンパク質を含有する流体を保持する場合、タンパク質を吸着しない材料から作成された容器を使用することが、好ましくあり得る。この容器の内側表面が、流体の成分を吸着する傾向を示す場合、この表面は、その傾向を低下させるために、前処理され得る。例えば、ポリマー表面は、Tween 20のような界面活性剤またはアルブミンおよび/もしくはカゼインのようなブロッキングタンパク質で処理されて、そのタンパク質を吸着する傾向を低下され得る。表面を処理する他の例については、米国特許出願番号09/907,551(公開番号20020102405、その全体が、本明細書中に参考として援用される)を参照のこと。
【0062】
この容器は、使い捨てであっても、再使用可能であってもよく、そして管の形態である場合には、例えば、蛇行したパターンで渦巻き状にされて、所定の空間に嵌り得る長さを伸ばされ得る。
【0063】
この容器の1つ以上の端部は、その内部に保存され得るあらゆる液体を保護および保持する目的で、シールされ得る。いくつかの材料、特に、熱可塑性物質およびガラスは、これらの端部を融解することによって、シールされ得る。端部はまた、圧着、キャップ、栓、または任意の材料をこの端部に固定することによってシールされ、この容器からの流体の流れまたは蒸発を防止し得る。1つの実施形態において、低い揮発性を有する流体(例えば、油またはグリコール)が、この管の端部に配置されて、内部に収容された他の流体の蒸発および/または移動を防止することを補助し得る。
【0064】
種々の実施形態において、任意の型の流体が使用され得る。流体としては、液体(例えば、溶媒、溶液および懸濁液)が挙げられる。流体としてはまた、気体および気体の混合物が挙げられる。複数の流体が容器(たとえば、管)内に収容される場合、これらの流体は、別の流体によって隔離され得、この別の流体は、好ましくは、最初の2つの流体の各々と非混和性である。例えば、管が、2つの異なる水溶液を収容する場合、第三の流体の隔離プラグは、両方の水溶液と非混和性であり得る。水溶液が別々に維持されるべきである場合、隔離物として使用され得る非混和性流体としては、空気もしくは窒素のような気体、またはこれらの水溶液と実質的に非混和性である疎水性流体が挙げられ得る。流体はまた、隣接する流体との、その流体の反応性に基づいて選択され得る。例えば、窒素のような不活性ガスが、いくつかの実施形態において使用され得、そしてあらゆる隣接する流体を保存および/または安定化することを補助し得る。水溶液を隔離するための非混和性液体の例は、パーフルオロデカリンである。隔離流体の選択はまた、他の要因に基づいてなされ得、これらの要因としては、隣接する流体プラグの表面張力に対して隔離流体が有し得る任意の効果が挙げられる。任意の流体プラグ内の表面張力を最大にして、この流体プラグを単一の連続的なユニットとして、様々な環境条件下(例えば、振動、衝撃および温度の変動)で保持することを促進することが、好ましくあり得る。隔離流体はまた、この流体が供給されるあらゆる反応部位に対して、不活性であり得る。例えば、反応性部位が、生物学的結合パートナーを含む場合、隔離流体(例えば、空気または窒素)は、この結合パートナーにほとんどまたは全く影響を有さない。隔離流体としての気体の使用はまた、容器内に収容される液体が変化(例えば、温度(凍結を含む)または圧力変動)に起因して膨張または収縮する場合、この容器内での膨張の余地を提供し得る。
【0065】
流体は、化学プロセスまたは生化学プロセスにおいて使用するために、容器から移動され得る。この容器に外力(たとえば、圧力、吸引、または重力)を適用することによって、流体は、一定の流量または変動する流量で、容器から流れ得る。流体はまた、毛管作用によって、容器から引き抜かれ得る。圧力が、容器から流れるべき流体の上流に適用され得、そして圧力供給源としては、ポンプ(例えば、電気ポンプもしくは手動ポンプ)、注射器、または加圧されたコンテナが挙げられ得る。吸引は、減圧または部分減圧供給源(例えば、ポンプ、注射器、排気されたコンテナ、ベンチュリまたは他の減圧供給源)を使用することによって、容器の下流に適用され得る。
【0066】
1つの実施形態において、減圧供給源は、液体を容器から流すために使用される。容器からの液体の流れを制御するために、例えば、液体が特定の速度で反応部位を超えて流れるべきである場合、一定の部分減圧を、この容器の下流側に適用することが好ましくあり得る。正確な減圧は、減圧ポンプによってか、可搬型バッテリ駆動ポンプによってか、または注射器によって、提供され得る。1.0気圧未満、0.99気圧未満、0.95気圧未満、0.9気圧未満、0.8気圧未満、0.7気圧未満、0.6気圧未満、0.5気圧未満、0.3気圧未満、0.2気圧未満、または0.1気圧未満の減圧が、使用され得る。
【0067】
いくつかの実施形態において、減圧または部分減圧は、電力を使用せずに、容器に適用され得る。例えば、注射器バレルおよびプランジャーを備える注射器が、減圧の供給源を提供するために使用され得る。この容器が反応部位(例えば、微小流体アッセイの反応部位)と連絡している場合、減圧供給源(この場合には、注射器)が、この反応部位の下流に取り付けられ得る。減圧は、このシリンジバレルの先端をこの流体を保持する容器の下流側に流体連絡させて配置することによって、適用され得る。完全真空、または完全真空の近くが望ましい場合、この注射器のプランジャーをそのバレルの底部に完全に押下し、引き続いて、このバレルを容器に取り付けることによって、全ての空気が、この注射器から排出され得る。完全ではない真空を提供するためには、注射器のバレルは、減圧を生じるためにプランジャーを引く前に部分的に空気で満たされ得る。例えば、10ccの注射器が使用される場合、注射器バレルは、空気で5ccが満たされ得、そしてプランジャーは、0.5気圧に等しい減圧を提供するために、10ccの全体積まで引かれる。同様に、0.75気圧は、10ccの注射器に7.5ccの空気を満たし、次いで、プランジャーを10ccの印まで完全に引くことによって、適用され得る。保持デバイス(例えば、クリップまたは注射器バレルの切り欠き)が、このプランジャーを引いた後に一定の位置に保持するために、使用され得る。使用される注射器の容積が、容器内に引き込まれるべき流体の体積よりかなり大きい場合、この容器に適用される減圧は、引き抜きプロセスの開始から終了まで実質的に一定であり得る。いくつかの実施形態において、使用される注射器の体積は、引き抜かれるべき流体の体積の10倍、100倍、または1,000倍より大きくあり得る。
【0068】
注射器が、空気で特定の体積まで満たされる場合、注射器バレル内の空気は、そのプロセスがどこで実施されているかにかかわらず、大気圧であり得る。一定の絶対圧で部分減圧を提供すること(例えば、排気されたコンテナを用いる)に比較して、この手動の注射器の技術は、種々の周囲圧力(例えば、異なる海抜)の条件下で、有用であり得る。なぜなら、この方法は、周囲の空気の圧力にかかわらず、容器および/または反応部位にわたる、より一定の圧力差を生じ得るからである。このことは、流体を所定の速度で引き抜く際に補助し得、従って、反応部位を、各流体について、より正確な所定の滞留時間に供する。
【0069】
別の局面において、この容器は、流体を保存するために使用され得る。種々の実施形態において、流体は、10秒間より長時間、1分間より長時間、1時間より長時間、1日より長時間、1週間より長時間、1ヶ月より長時間、または1年間より長時間にわたって、この容器内で保存され得る。これらの流体が保存される間、流体は、非混和性の隔離流体によって隔離されて維持され、その結果、接触すると互いに反応する流体が、共通の容器内で、長期間にわたって保存され得る。これらの流体は、これらが静止して維持され、そして容器内でのそれらの位置に関して移動しないように、保存され得る。流体は、静止して維持されている間に、わずかに移動し得るか、または振動し得、そして膨張および収縮し得る。共通の容器は、これらの流体を離して維持するための内壁または他のディバイダ−を有さないかも知れず、そして流体は、隔離流体のみによって隔離され得る。静止状態で保存される場合、これらの流体は、低温(例えば、4℃未満、0℃未満、または−10℃未満)で保存され得る。流体はまた、高温(例えば、25℃より高温、35℃より高温、または50℃より高温)に曝露され得る。流体は、1つの位置から他の位置へと、表面または空気によって、容器内に収容される試薬流体を混合させることなく輸送され得る。非混和性の隔離流体の量は、これらの流体が使用される最終プロセス、および容器が曝露されると予測される条件に基づいて、選択され得る。例えば、この容器が、物理的な衝撃または振動を受けることが予測される場合、非混和性隔離流体のより長いプラグが使用され得る。この様式で、容器内の異なる流体は、混合を回避され得る。
【0070】
別の実施形態において、流体を収容する容器は、反応部位を備えるデバイス(例えば、アッセイデバイスもしくは化学反応器もしくは生化学反応器)と一緒に保存され得る。この容器およびデバイスは、一体的に接続されても、一体的に接続されるように構築および配置されてもよい。従って、完全な試薬セットが、この容器内に順番に並べられ得、そして例えば、圧力または減圧をこの容器またはデバイスの適切な端部に適用する際に、反応部位への適用の準備ができている。
【0071】
一連の流体プラグを収容する容器は、化学反応または生化学反応に関与するために、下流のデバイスに接続され得る。この容器の端部(例えば、管またはカートリッジの端部)は、デバイスと端部とが流体連絡するように、デバイスに接続され得る。これは、管の端部をデバイスの入口に挿入することによって直接的になされ得るか、または中間コネクタ(例えば、配管)を介して取り付けることによって間接的になされ得る。いくつかの場合において、接続地点におけるデッドスペースは、例えば、遅延、混合、または乱流の形成を減少させるために、最少にされ得る。この接続は、減圧に対して密であり得る。いくつかの実施形態において、コネクタの内径は、容器またはデバイスのいずれかの内径の、1倍未満、3倍未満、または5倍未満であり得る。いくつかの柔軟なポリマーは、硬いポリマーよりも良好な接続を提供し得る。例えば、PDMSから作製されるデバイスは、最小の使用量を有する、堅固な接続を提供し得る。
【0072】
別の実施形態において、流体プラグを収容する容器は、反応部位を備えるデバイスに一体的に接続され得る。例えば、この容器およびデバイスは、微小流体チップのような共通のプラットフォーム上に形成され得る。このデバイスおよび容器は、減圧または部分減圧が反応部位の下流に適用される場合に、流体プラグが容器から引き抜かれるように、流体連絡し得る。同様に、流体プラグの上流に適用される圧力は、これらの流体をデバイスへと押し得、そしてこれらの流体を反応部位に適用し得る。
【0073】
1つより多くの容器は、反応部位を備えるデバイスに一体的に接続されても、一体的ではなく接続可能であってもよい。例えば、2つの容器が、デバイスの上流側に接続される場合、第一のデバイスの上流端部をシールせず、一方で、第二のデバイスの上流側のシールを維持することによって、これらの容器のうちの1つの中の流体は、反応部位を越えて通過し得る。このデバイスの下流側に適用される減圧は、第一の容器から試薬を引き出すが、第二の容器からは引き出さない。類似の様式で、反応部位を備える2つ以上のデバイスが、流体を収容する単一の容器に接続され得、そしてこれらの流体は、例えば、このデバイスに減圧を提供しながら他のデバイスをシールしたままにしておくことによって、選択されたデバイスを通して引き抜かれ得る。
【0074】
全ての型のサンプルが、異なる実施形態と組み合わせて使用され得る。サンプルとしては、化学サンプル(例えば、水、溶媒、抽出液、および環境サンプル)が挙げられ得る。サンプルとしてはまた、生物学的サンプル(例えば、全血、血清、結晶、涙液、尿および唾液)が挙げられ得る。アッセイで試験されるサンプルまたは反応器内で反応するサンプルは、反応デバイスまたは試薬流体を収容する容器のいずれかに、移動され得る。例えば、全血のサンプルは、アッセイデバイスの入口に配置され得、そして減圧または圧力を使用することによって、反応部位にわたって流され得る。これは、容器を接続する前、または容器から反応部位へと試薬を流す前に、行われ得る。あるいは、サンプルは、試薬流体を収容する容器に入れられ得る。例えば、測定された体積の全血サンプルは、流体試薬を収容する管の下流端部に注入され得る。次いで、この管は、アッセイデバイスに接続され得、そして減圧または圧力の適用の際に、このサンプルは、試薬より前に反応部位に適用され得、これらの試薬は、管から連続して流される。別の実施形態において、いくつかの試薬が、反応部位に流され得、それに続いて、サンプルが流され得、その次に、さらなる試薬が流され得る。なお他の実施形態において、サンプルは、最後に流され得る。
【0075】
1つの実施形態において、反応部位を備えるデバイスは、サンプリングデバイス(たとえば、サンプリング管)に、一体的にかまたは一体的ではなく接続され得る。サンプリング管は、反応部位を収容するチャネルまたはチャンバに関連する、1つの端部を有し得る。この管の反対側の端部は、サンプル供給源(これは、容器または被験体であり得る)に浸漬されて、分析または反応され得る。この反応部位の下流に減圧を適用することによって、サンプルがこのサンプル管内に引き抜かれ得、そしてこのサンプル管内に維持されるか、または反応部位に引き出されるかのいずれかであり得る。所定の量のサンプルが得られたら、このサンプル管の端部は、サンプル供給源から取り出され得るか、または減圧が停止され得る。いくつかの実施形態において、同じサンプル管が、次いで、デバイスと、試薬流体を保持する容器との間のコネクタとして働き得る。サンプリング管の端部を、流体を収容する容器の下流側と流体連絡させて配置することによって、これらの流体は、このサンプルが引き抜かれる方法と類似の方法で、このデバイスのチャネルを通して引き抜かれ得る。いくつかの場合には、容器内の第一の試薬流体は、サンプルを運ぶこと、サンプルを処理すること、サンプルを希釈すること、またはサンプルを管からすすぎ出すことを補助するように、選択され得る。
【0076】
本発明は、サンプル中の成分の存在を、定性的または定量的に決定するための方法および装置を提供する。この成分は、疾患状態を示し得る結合パートナー(例えば、抗体または抗原)であり得る。
【0077】
1つの局面において、被験体由来のサンプルが、サンプルをほとんどまたは全く分離せずに、分析され得る。このサンプルはまた、非侵襲的に得られ得、従って、より安全かつより患者にやさしい分析手順を提供する。
【0078】
別の局面において、高い感度および低い検出限界(最も感受性のあるELISA試験に匹敵する)を提供するアッセイが、提供される。このアッセイは、迅速に実施され得、そして結果は永続的であり得、試験を実施した後の任意の時点でアッセイを読み取ることを可能にする。
【0079】
別の局面において、サンプルは、サンプル成分の、光感受性の結合パートナーと会合する表面にわたって流される。このアッセイは、チャネルまたは微小流体デバイスにおいて実施され得、このサンプルが、結合パートナー(例えば、抗原)にわたって流されることを可能にする。形成される任意の抗原−抗体複合体は、金属コロイドと会合し得、これは、不透明な材料(例えば、金属の層)の析出のための触媒表面を提供する。従って、抗体−抗原結合が、微小流体チャネル内で起こる場合、このチャネルを通る金属前駆体の流れは、抗体−抗原複合体と会合した触媒性金属コロイドの存在に起因して、不透明な層(例えば、銀層)の形成を生じ得る。微小流体チャネル内で形成される任意の不透明層は、例えば、抗体も抗原も含まないチャネルの部分と比較した、この微小流体チャネルを通る光透過率の低下を測定することによって、光学的に検出され得る。この不透明な層は、不透明な層を形成しない技術と比較すると、アッセイ感度の増加を提供し得る。
【0080】
本明細書中において使用される場合、「固定されるかまたは固定されるように適合される」とは、別の種または物品の表面に対するある種の文脈において、この種が、共有結合特異的な生物学的結合(例えば、ビオチン/ストレプトアビジン)を介する付着、キレート/金属結合のような配位結合などを介して、化学的にかまたは生化学的に連結されることを意味する。例えば、この文脈において「固着される」とは、複数の化学結合、複数の化学/生物学結合などを包含し、ポリスチレンビーズ上で合成されたペプチドのような結合種、プロテインAのようなタンパク質に結合する抗体に特異的に生物学的に結合した結合種(これは、ビーズに結合される)、GSTまたはファージのような分子の一部を(遺伝子操作を介して)形成する結合種(これは次に、表面に共有結合した結合パートナー(例えば、GSTの場合にはグルタチオン)に特異的に生物学的に結合する)などが挙げられるが、これらに限定されない。別の例として、チオールに共有結合した部分は、金表面に固着されるように適合される。なぜなら、チオールは、金に共有結合するからである。同様に、金属結合タグを有する種は、表面に共有結合した分子(例えば、チオール/金結合)を有する表面に固着されるように適合され、この分子はまた、金属を配位するキレートを提示する。種はまた、表面が特定のヌクレオチド配列を有する場合には、この表面に固着されるように適合され、そしてこの種としては、相補的なヌクレオチド配列が挙げられる。
【0081】
本発明の微小流体デバイスは、ポリマー(例えば、ポリ(ジメチルシロキサン)PDMS)のようなエラストマー材料)から、迅速な原型作製およびソフトリソグラフィを使用して、製造され得る。例えば、高解像度レーザープリンターが、CADファイルからマスクを作製するために、使用され得る。好ましくは、流体ネットワークを構築するチャネルを表す。好ましくは、透明であり得、フォトレジスト(例えば、SU−8フォトレジスト(MicroChem))と接触されて、このフォトレジストの陰刻マスターを、シリコンウエハ上に製造し得る。PDMSの陽刻レプリカは、PDMSをマスターに対して成型することによって作製され得る。これは、当業者に公知の技術である。流体ネットワークを完成させるために、平坦な基板(例えば、スライドガラス、シリコンウエハ、またはポリスチレン表面)が、PDMS表面に対して配置され得、そしてファンデルワールス力によって適所に保持され得るか、または接着剤を使用して、PDMSに固定され得る。ネットワークへの流体の導入、およびネットワークからの流体の受容を可能にするために、穴(例えば、直径1ミリメートル)が、適切なサイズの針を使用することによって、PDMSに形成され得る。流体ネットワークが流体供給源と連絡することを可能にするために、配管(例えば、ポリエチレン)が、これらの穴と連絡してシールされ、流体接続を形成し得る。漏出を防止するために、この接続は、封止剤または接着剤(例えば、エポキシ膠)を用いてシールされ得る。
【0082】
1つの実施形態において、図1に示されるように、微小流体デバイス110は、アッセイを実施するための基板を提供するために使用され得る。このような微小流体デバイスを製造する方法は、米国特許第6,645,432号(その全体が、本明細書中に参考として援用される)に提供されている。
【0083】
一連の微小流体チャネル120、122、および124は、サンプルおよび金属前駆体を、この微小流体デバイスの表面130にわたって流すために使用され得る。結合パートナー(例えば、抗原または抗体)が、部分140において、表面130に配置され得る。部分140は、示されるように、2つ以上のチャネルを横切って、結合パートナーのストライプを備え得る。あるいは、結合パートナーは、単一のチャネルに限られた部分に配置され得る。複数の結合パートナーが、単一のチャネル内に配置され得、そして互いに重なったり隔たったりし得る。
【0084】
領域または領域の一部に固定された結合パートナーは、本質的に任意の様式で固定され得、そして本発明と共に使用するために適切な多くの固定技術が、当該分野において公知である。米国特許出願番号10/654,587(公開番号20040121066)および米国特許第6,686,184号を参照のこと。これらは、その全体が、本明細書中に参考として援用される。固定は、種が表面に対して無作為に配向するような様式で(すなわち、各固定される種が、表面に対して無作為に配向し得る)なされ得るか、または表面に対する種の配向のより大きな制御が提供され得る。例えば、タンパク質が表面に固定される場合、これらのタンパク質は、アッセイのためのそれらの結合部位がこの表面からほぼ離れる方に配向して、その結合能力または利用可能性を最大にするように、配向され得る。このようにするための1つの技術は、米国特許第5,620,850号(本明細書中に参考として援用される)に記載されており、ポリアミノ酸タグ(例えば、6ヒスチジンの配列)をこのタンパク質の関連する結合部位とほぼ対向する位置に有するタンパク質を合成し、金属キレート(例えば、ニトリロ三酢酸)を提供し、ニッケルのような金属イオンを、ニッケル上の少なくとも2つの配位部位がポリアミノ酸タグに自由に結合するような様式でキレートし、そしてこのタグをニッケルイオンに配位させることを包含し、これによって、このタンパク質を、領域または領域の一部に、有利な配向で固定する。このような金属キレートは、多数の様式のいずれかで、この領域に固定され得る。1つの方法は、上で参照された米国特許第5,620,850号に記載されるように、この領域に、金属キレートを末端として自己組み立てされる単層(SAM)を形成することを包含する。例えば、薄い、本質的に透明な金の薄層が、この領域に析出し得、そしてSAMを形成するアルキルチオール(金属キレートを末端とする)が、SAMとして、この金の層の上に析出し得る。他の化学(米国特許第5,620,850号および他の参考文献に記載され、当業者に公知である)が、種々の基部材料によって規定される領域上にこのようなSAMを形成するために使用され得る。
【0085】
アッセイを実施するために、サンプル(例えば、被験体から採取した生物学的サンプル)が、1つ以上の微小チャネル120、122または124を通して、矢印によって示される方向に流される。このサンプルは、液体サンプルであり得るが、いくつかの実施形態においては、分析前に、希釈も精製も処理も必要としない。このサンプルは、このサンプルの成分が部分140に固定された結合パートナーと結合することを可能にするために十分な速度で、微小チャネルを通して流され得る。このチャネルに通してサンプルを能動的に流すことによって、反応性部分140は、このサンプルの成分に繰り返し曝露され、反応動力学を改善し、そして任意の結合対の形成の増加を生じる。微小チャネル120を通って十分な量のサンプルが流れた後に(例えば、検出可能な結合対が形成されると)、このサンプル成分の第二の結合パートナーと会合した金属コロイドを含有する流体が、この微小チャネルに流され、この金属コロイドが、微小チャネルの部分140に会合した任意のサンプル成分と結合することを可能にする。
【0086】
金属コロイドが、部分140における任意の結合パートナーと結合する機会を与えられた後に、金属前駆体が、金属コロイドと類似の様式で、チャネル120を通して流され得る。この金属前駆体は、この表面に会合した金属コロイドの閾値数がいくつであれ、不透明な層が形成されることを可能にする濃度および速度で、微小チャネルを通して流される。従って、金に結合した抗体が金属コロイドとして使用される場合、硝酸銀溶液が、この金と結合した抗体と会合したチャネルの部分に銀の層を無電解析出させるために、使用され得る。アッセイのこの部分の完了時に、微小流体ネットワークの表面130は、連続した層で、HIV抗原のような抗原、被験体から得られたHIV抗原のサンプル成分、金で標識された抗ヒトIgGのような金属コロイド、および銀のような金属の不透明な層(この層は、金属コロイド上に無電解析出した)を備え得る。リンス溶液が、各工程の前または後に、このチャネルを通して流され得る。
【0087】
微小チャネル120の部分140と会合し得る任意の金属コロイドに金属を析出させることに加えて、金属前駆体はまた、金と結合した抗体に先に無電解析出した金属上に析出し得る。この様式で、不透明な材料が、部分140のいくらかまたは全てを覆って形成され得、例えば、補助されない眼または光学検出デバイスによる検出を可能にする。この不透明な材料は、例えば、独立した粒子よりむしろ、連続的な材料であり得、そして表面130と実質的に同じ面で測定される寸法において、1ミクロンより大きいか、10ミクロンより大きいか、または100ミクロンより大きい、水平方向の寸法を備え得る。
【0088】
いくつかの場合において、不透明な層は、材料のウェブまたはハニカムを形成し得、これは、光の通過を可能にする通路を備える。さらなる材料が析出する場合、これらの通路は、より小さくなり得、この材料を透過する光を次第に少なくする。この通路が消失すると、光の透過率の量は、0まで低下し得、完全に不透明な材料を提供する。
【0089】
不透明な層が形成された後に、この不透明な層の検出、および従って、結合パートナーの存在の決定が、この微小流体デバイスを目視試験することによって、または光学検出器のような検出器を使用することによって、決定され得る。光学検出器の1つの実施形態は、図2、図3、および図9に示されている。図2は、図1に示されるような微小流体デバイス110を図示する。光源210(ここでは、発振器で調節されるレーザーダイオード)および検出器220(例えば、光学IC)もまた、備えられる。図3の概略図に図示されるように、検出器信号は、増幅され得、そして光源を制御する発振器と同じ周波数を中心とする帯域フィルタを通過し得る。次いで、その出力は、A/D変換器を通過し得、この変換器は、次に、読み出し(例えば、LCDディスプレイ)に出力を提供し得る。光源と検出器との両方が、9ボルトのバッテリによって電力を供給され得る。
【0090】
1つの局面において、本発明は、連続的な流れを使用してサンプルを分析するための、装置および方法を提供する。代表的に、ELISAおよび他のサンドイッチアッセイのような既存の方法は、免疫アッセイ用のサンプルを収容するために、96ウェルプレートまたはより小さいプレートを使用する。これらの方法は、抗体または光源を、流体中のサンプル成分に曝露し得るが、この流体は、この抗体または光源を通って流されず、そして結合パートナーを互いに接近させるために、拡散に依存する。本発明は、サンプル成分が、潜在的な結合パートナーに、以前の方法と類似かまたはそれより低いサンプル濃度で結合させるための、増加した機会を可能にし得る。一方の結合パートナーを含有するサンプルを、他方の結合パートナーを提示する表面に通して流すことによって、単純拡散を介して起こるよりもより多くの数の潜在的な結合パートナーが、互いに接近する。1つの実施形態において、このサンプルは、微小チャネルを通して流され、これは、一方の結合パートナーを、第二の結合パートナーを通過して流し、一方で、少量のサンプル(例えば、10マイクロリットル未満、1マイクロリットル未満、または100ナノリットル未満のサンプル)を必要とするという利点を提供する。微小チャネルは、チャネル内の不透明な材料の形成を検出するために使用される光に対して透過性である材料であり得、その結果、このチャネルの部分を通る光のあらゆる吸光度または透過率が、不透明な層の形成に起因し得る。
【0091】
免疫アッセイは、流体中に溶解または懸濁した信号発生実体(例えば、酵素に結合した二次抗体)を検出するので、最適な感度を得るために、比較的長い経路長が必要とされる。従って、免疫アッセイが微小流体において適用されなかった1つの理由は、微小流体デバイスによって代表的に提示される、短い経路長である。例えば、微小流体デバイスは、250ミクロン未満、100ミクロン未満、または40ミクロン未満の厚さを有するチャネルを有し得る。従って、この微小流体デバイスにおいてチャネルを満たす任意の流体は、250ミクロン未満、100ミクロン未満、または40ミクロン未満の垂直光路を提示する。本発明の方法は、これらの制限に供され得ない。なぜなら、本発明の方法は、流体中の発色団ではなくて、固相中の不透明な層を使用し得るからである。この不透明な層は、1ミクロン未満、100ナノメートル未満、または10ナノメートル未満の厚さを有し得る。これらの小さい厚さにおいてさえも、透過率の検出可能な変化が得られ得る。
【0092】
微小流体チャネルの幾何学的形状は、比較的高い流量においてさえも、このチャネルを通る流体の層流を提供し得る。あるいは、さらに速い流量またはデバイス(例えば、微小流体ミキサー)を使用することによって、乱流が使用され得る。このような混合は、潜在的な結合パートナー間での接触の、より大きな量を提供し得る。
【0093】
サンプル中の分析物の存在、非存在、または量は、不透明な材料の形成によって示され得る。不透明な材料は、光を屈折させるために使用され得るか、またはこの層が曝露される光と類似かもしくは異なる波長で光を放出するように励起され得るが、光の透過の測定は、例えば、より低い設備費用および操作費用、ならびに使用の容易さに起因して、好ましくあり得る。いくつかの微小チャネルにおいて、不透明な層は、肉眼で見え、そして反射性である場合には特に、照射の使用なしで検出され得る。
【0094】
形成される任意の不透明な材料は、一連の不連続な独立した粒子であり得るが、1つの実施形態においては、ほぼ平坦な形状を取る連続的な材料である。この不透明な材料は、1ミクロンより大きいか、または10ミクロンより大きい寸法を有し得る。この不透明な材料は、金属であり得、そして好ましくは、無電解析出され得る金属である。これらの金属としては、例えば、銅、ニッケル、コバルト、パラジウム、および白金が挙げられる。金属前駆体とは、例えば、金属コロイド上に析出するための金属元素の供給源を提供し得る材料である。例えば、金属前駆体は、硝酸銀のような金属塩溶液であり得る。1つの実施形態において、金属前駆体は、0.1%の硝酸銀、1.7%のヒドロキノンおよび0.1Mのクエン酸緩衝液(pH3.5)を含有し得る。無電解析出される材料の他のいくつかの例は、Modern Electroplating,第4版、SchlesingerおよびPaunovic、Wiley,2000に見出され得る。金属前駆体は、長期間にわたって保存され得、そして数年間にわたって安定であり得るが、光学的に活性な化合物は、ずっと短い保存有効期限を有し得る。
【0095】
表面と会合する任意の金属コロイドは、表面の部分にわたって広く散乱され得る。例えば、金に結合した抗体は、この表面の部分と会合するサンプル成分に結合し得るが、金に結合した抗体の間には空間が存在し得、これらの抗体を不連続にする。金属前駆体が、最初にこれらの金に結合した抗体に曝露される場合、この前駆体は、個々の金属コロイドを中心とする粒子を形成し得る。金属(例えば、銀)が、これらの金属コロイド上に析出すると、これらの粒子は、より大きくなり、そしてすぐに、金属前駆体は、金コロイド上のみでなく、先に無電解析出した金属上にもまた、金属を析出させ得る。例えば、硝酸銀溶液は、金に結合した抗体上に先に析出した金属銀粒子上に、金属銀を析出させ得る。従って、この銀の層が銀上および金上で成長し続けるにつれて、以前には独立した粒子または金属の島であった領域が、合わさって、より大きな、連続的な不透明な材料を形成し得、この材料は、容易に検出され得る。微小流体システムは、比較的滑らかな、連続な金属の層を提供し得ることが見出された。この不透明な材料は、1ナノメートルより大きいか、10ナノメートルより大きいか、100ナノメートルより大きいか、または1000ナノメートルより大きい厚さを有し得る。いくつかの不透明な材料に対して、これらの材料は、約100nmより大きい暑さで、完全に不透明になり得る。しかし、いくつかの実施形態において、例えば、ハニカムまたは類似の構造が形成される場合には、いくつかの部分における厚さは、ずっと大きくあり得、依然として、いくらかの光が透過することを可能にする。
【0096】
種々の化学材料および生物材料が、本明細書中に記載される方法および装置によって、分析され得る。分析物としては、化学物質(例えば、有機化合物)ならびに生物材料(例えば、タンパク質、ペプチド、核酸および抗体)が挙げられる。
【0097】
分析物としては、結合パートナーが見出され得る任意の分析物が挙げられる。検出され得る分析物としては、特異的なタンパク質、ウイルス、ホルモン、薬物、核酸、および多糖類が挙げられ、特に、抗体(例えば、IgD、IgG、IgMまたはIgA);HTLV−I、HIV、A型肝炎、B型肝炎および非A/非B型肝炎、風疹、麻疹、ヒトパルボウイルスB19、ムンプス、マラリア、水痘または白血病に対する免疫グロブリン;ヒトホルモンおよび動物ホルモン(例えば、ヒト成長ホルモン(hGM)、ヒト絨毛性ゴナドトロピンWM);薬物(例えば、パラセタモールまたはテオフィリン);マーカー核酸(例えば、遺伝フィンガープリント分析マーカー);多糖類(例えば、HLA組織型決定のための細胞表面抗原および細菌細胞壁物質)が挙げられる。検出され得る化学物質としては、爆発物(例えば、TNT)、神経薬、および環境に危険な化合物(例えば、ポリ塩素化ビフェニル(PCB)、ダイオキシン、炭化水素およびMTBE)が挙げられる。代表的なサンプル流体としては、生理学的流体(例えば、ヒトまたは動物の全血、血清、血漿、精液、涙液、尿、汗、唾液、脳脊髄液、膣分泌物);研究に使用されるインビトロ流体または環境流体(例えば、分析物によって汚染されていると疑われる水溶液)が挙げられる。
【0098】
抗原が分析される場合、対応する抗体が、微小流体チャネルの表面に会合する結合パートナーであり得る。抗体が分析物である場合、適切な抗原が、表面に会合する結合パートナーであり得る。疾患状態が決定される場合、抗原を表面に取り付け、そして被験体において産生された抗体について試験することが好ましくあり得る。このような抗体としては、例えば、HIVに対する抗体が挙げられ得る。
【0099】
生物学的サンプルは、非侵襲的に得られ得る。本発明を用いて可能である低レベルの検出は、血液よりも低濃度の抗原または抗体を代表的に含有するサンプルを使用することを可能にする。例えば、有用なサンプルは、唾液、尿、汗、または粘液から得られ得る。サンプルが非侵襲性に得られることを可能にすることによって、本発明の方法は、増加したスループット、より安全なサンプル採取、および被験体の低い心配を提供し得る。
【0100】
本発明の方法および装置は、免疫クロマトグラフィーアッセイおよびELISAによって達成される検出限界(LOD)に匹敵するLODを得ることが可能であり得る。例えば、1nM未満、そして100pMの範囲の濃度でさえ、検出され得る。このアッセイは、定性的であっても、定量的であっても、これらの両方であってもよい。図4に図示されるように、分析物の濃度が増加すると、それに従って、不透明な材料の見かけの吸光度が増加する。図4において、サンプル成分(分析物)は、HIV抗原であり、そしてサンプルは、ヒト血清である。これらの血清の異なる希釈物が示され、そして図6において、不透明な層の形成は、1:10および1:100の希釈で、コントロールと比較した場合の陽性結果を示す。従って、存在/非存在型の試験に加えて、定量的な試験が提供され得る。このような定量的な試験は、例えば、処置の間に患者中の抗体レベルをモニタリングするために、興味深くあり得る。
【0101】
この方法の感度および検出限界(LOD)は、従来技術の種々のELISA技術を用いて得られ得るものに好ましく匹敵する。ウサギIgGをアッセイする際に化学発光、蛍光および吸光度を使用するELISAと比較すると、銀の析出を使用する本発明の実施形態は、匹敵する感度およびLOD数を提供した。感度およびLODは、IUPACの定義を使用して計算され、そして以下の表1に提供される。より高い感度数は、より高い感度を示し、そしてより低いLOD数は、より低いLODを示す。
【0102】
【表1】

別の実施形態において、代表的な免疫ベースのアッセイ(例えば、ELISA)よりも短い実行時間を必要とする、アッセイが提供される。例えば、本発明の微小流体デバイスを使用すると、各試薬についてのインキュベーション時間は、10分未満であり得る。マイクロウェルを使用するELISA技術については、1時間〜3時間のインキュベーション時間が、代表的に、各試薬について必要とされる。従って、本発明の方法は、インキュベーション時間の6分の1〜18分の1への減少を提供し得る。この時間の節約の一部は、サンプルを精製したり、希釈したり、他の方法で調製する必要なしに、サンプルを直接分析することに起因し得る。例えば、唾液サンプルは、希釈も、濾過も、分離も、他の調製もせずに、チャネルを横切って流され得る。サンプルが得られる時点から結果が認識されるまで、1時間未満、30分未満、20分未満、または10分未満の合計時間が実現され得る。この速度の増加の1つの理由は、結合パートナー間での結合の改善された割合である。これは、少なくとも部分的には、本発明の流れシステムに起因し得る。拡散または毛管作用に依存するシステムは、所定の時間にわたって互いに曝露され得る結合パートナーの数が制限される。さらに、拡散は温度依存性であり得るので、サンプルの流れを使用する本発明は、他の方法よりも温度非依存性であり得、温度が40℃より高温から0℃未満まで変動し得る現場において、より頑丈なアッセイを提供する。
【0103】
別の実施形態において、2つ以上の並行アッセイが実施され得る。単一のサンプルが、微小流体デバイスを使用して、2つ以上のサンプルに物理的に分離され得る。微小流体デバイスは、単一の入口チャネルを有し得、この入口チャネルは、2つ、3つ、またはそれより多くの平行なチャネルに分岐する。並行分析は、類似かまたは同一の分析物の異なる閾値レベルで実施され得るか、あるいは同じかまたは異なる閾値で異なる分析物について実施され得る。コントロールもまた、並行して実施され得る。従って、単一のサンプルを流して、サンプルが、2つ以上の分析物について、多数の閾値濃度で分析され得る。コントロールもまた、同時に流され得、そして使用される検出方法を較正および/または評価する際に有用であり得る。一旦、不透明な層が形成されると、このアッセイは、延長した時間(例えば、1ヶ月より長いかまたは1年間より長い)にわたって安定であり得、その結果、アッセイは、後の時点で収集および分析または再分析され得る。
【0104】
試薬およびサンプルは、当業者に公知の方法を使用して、または本明細書中に記載される方法を使用することによって、アッセイに供給され得る。
【0105】
種々の決定技術が使用され得る。決定技術としては、光学ベースの技術(例えば、光透過、吸光度、光散乱、光反射および目視技術)が挙げられ得る。検出技術はまた、伝導率を測定し得る。例えば、微小流体チャネルの部分の反対側の端部に位置する微小電極が、伝導性材料(例えば、無電解析出した金属)の析出を測定するために使用され得る。より多数の個々の金属粒子が成長して互いに接触するにつれて、伝導率が増加し得、そしてその部分に析出した伝導性材料(例えば、金属)の量の指標を提供し得る。従って、伝導率または抵抗率が、分析物濃度の定量的尺度として使用され得る。
【0106】
別の分析技術は、前駆体の濃度の変化を、この前駆体が微小流体チャネルに入った時点から、この前駆体がこのチャネルを出る時点まで測定することを包含し得る。例えば、硝酸銀溶液が使用される場合、銀感受性の電極は、この前駆体がチャネルを通過するにつれて銀がこのチャネルに析出することに起因する、銀濃度の損失を測定し得る。
【0107】
異なる光学検出技術は、アッセイ結果を決定するための多数の選択肢を提供する。いくつかの実施形態において、透過率または吸光度の測定とは、光が、光源から放出される波長と同じ波長で検出され得ることを意味する。光源は、単一の波長で発光する狭帯域の表面であり得るが、光源はまた、ある範囲の波長にわたって発光する広スペクトルの光源であり得る。なぜなら、多くの不透明な材料は、広範な波長を効果的に遮断し得るからである。このシステムは、最少数の光学デバイスを用いて操作され得る。例えば、検出デバイスは、光電子増倍管を備えなくてもよく、波長選択器(例えば、格子、プリズムまたはフィルタ)を備えなくてもよく、光を方向付けるかもしくは結合するためのデバイス(例えば、結合器)を備えなくてもよい。これらの特徴の排除または減少は、さほど高価ではなく、より頑丈なデバイスを生じ得る。
【0108】
1つの実施形態において、光源は、1,000Hzの周波数で、パルス変調され得る。パルス変調された光源に一致するために、検出器は、同じ周波数で作動するフィルタを備え得る。パルス変調された光源を使用することによって、このシステムは、外来光源に対して感度が低くあり得ることが見出された。従って、このアッセイは、種々の光条件下(既存の技術を使用することを非実用的にし得る、広範な太陽光が挙げられる)で実施され得る。実験結果は、パルス変調された光源およびフィルタを使用することによって、結果が、その試験が実施される光条件にかかわらず一貫していることを示す。
【0109】
光源は、レーザーダイオードであり得る。例えば、654nmで発光する、InGaAlP赤色半導体レーザーダイオードが、使用され得る。光検出器は、この光源によって放出される光の透過を検出し得る、任意のデバイスであり得る。1つの型の光検出器は、700nmにピーク感度を有するフォトダイオード、増幅器、および電圧調節器を備える、光学集積回路(IC)である。光源がパルス変調される場合、この光検出器は、選択された周波数ではない光の影響を除去するためのフィルタを備え得る。
【実施例】
【0110】
(実施例1)
(試薬カートリッジの製造)
管、またはカートリッジを、市販されているポリエチレン(PE)チュービングを、30cmの長さの単位に切断することによって、準備した。このカートリッジを充填することに対して調査した2つの方法を、図13および図14に図示する。図14に示される方法において、6つまでのPEカートリッジを、電圧ゲート弁のアレイに接続し、このアレイを、次に、6kPaの減圧供給源に接続した。自家製のLabviewプログラムで生成した電圧パルスで、電圧ゲート弁を操作した。試薬の充填を開始する前に、これらのカートリッジに、洗浄用緩衝液(PBS中0.05%Tween(登録商標)20)を満たし、そしてこれらの弁を作動させて、2cmの空気のプラグをこのカートリッジにポンプで入れた。次いで、これらのカートリッジを適切な液体中に浸漬し、そして弁を操作することによって、液体のプラグを、このカートリッジ内に吸引した。5秒間の作動時間によって、3cmの長さのプラグ、すなわち、約13.5μLの体積が得られた。各液体プラグの間で、空気をこのカートリッジ内に吸引して、各試薬を物理的に隔離し、そしてこのカートリッジ内での試薬の混合を回避した。弁およびカートリッジをホルダに固定し、このホルダを96ウェルプレート上に取り付け、そして試薬のストック溶液を、適切な順序で、ウェル内に入れた。このシステムを使用して、試薬のプラグを、プラグの長さに換算して±14%未満の精度で、6つの平行なカートリッジに正確に満たした。
【0111】
図14に示される第二の方法は、一端で1本のPEチュービングに接続した、手で作動させるハミルトン注射器を使用した。このアプローチは、上記方法より技術的に単純であり得、そして制限された数のカートリッジの準備のために、より適切であり得る。カートリッジの準備が完了したら、チュービングの端部を熱シールし、そのカートリッジを、弁/注射器から抜き取り、そして他方の端部を熱シールした。異種免疫アッセイのための10のプラグを収容するカートリッジを準備した。
【0112】
各流体プラグの間に位置する空気プラグは、異なる試薬間での混合がカートリッジ内で起こらないことを保証した。染色したプラグを使用して、これらのプラグがチュービング内に移動する際に、残留物が少ないままであることが観察された。後に続くプラグが、この残留物を収集することがわかった。このプロセスは、プラグ間での相互汚染を生じた。複数の異なるプラグは、この残留物を除去する際に、より効果的であり得る。相互汚染を定量するため、そしていかに多くのリンス用プラグが、この残留物を認容可能なレベルまで低下させ得るかを決定するために、カートリッジに、50mMの炭酸緩衝液(pH9.5)に溶解したフルオレセインのプラグを、図14に示される方法を使用して満たした。フルオレセインのプラグを、種々の濃度で充填し、それに続いて、1つ以上の緩衝液のプラグを充填した。このカートリッジを、25mm長、50×50μmの微小流体チャネルの入口に接続し、そしてこのチャネル内での蛍光強度を、プラグをこの微小チャネルに通してポンプ送達する際に、記録した。結果を、図16bおよび図16cに示す。検出器は、フルオレセインの希釈系列に対する線形応答を示した。このことは、これらのデータが、処理を定量するために使用され得ることを示す。以下の3つの緩衝液プラグ中31μMのフルオレセイン溶液から続くプラグ間での汚染の程度の定量は、(バックグラウンドの減算後に)31μMのフルオレセインプラグに対して、7%、0.9%および0.1%の蛍光の濃縮を示した。250μMのフルオレセインのプラグからの相互汚染を測定した。250μMのフルオレセイン溶液に続く6つのプラグ中のフルオレセインの存在を、決定した。250μMのフルオレセインプラグの信号は、検出器を飽和させたが、蛍光は、(フルオレセインプラグに続く)最初の3つのプラグにおいてのみ検出された。これらの観察は、各試薬プラグの間の3つの緩衝液プラグが、相互汚染を防止するために十分であることを示した。従って、カートリッジ内に3つ以上の緩衝液プラグを導入することは、二重の機能で働き得る:(i)カートリッジ内でのプラグ間の汚染を防止する、および(ii)マイクロタイターアッセイのような用途において望ましくあり得るような、洗浄工程の前に、基質をリンスする。
【0113】
空気に加えて、パーフルオロデカリン(PFD)を、隔離流体として評価した。水溶液は、親水性マイクロチャネルを、PFDが濡らすよりもよく濡らした。PFDプラグが微小流体チャネルに入ると、このPFDプラグは、この微小チャネルから水溶液を部分的にのみ押し流した。従って、得られるインキュベーション時間および洗浄効率は、再現性がなかった。気体のプラグは、所定の圧力差において、PFDプラグより速くこの微小チャネルを通って移動する。周囲温度において、空気は、約20μPa・sの粘度を有し、一方で、PFDの粘度は、約5mPa・sであり、すなわち、空気の粘度より250倍高い。圧力勾配の適用の際に、チャネルを通る体積流量は、その流体の粘度に逆比例する。従って、空気のプラグは、PFDのプラグより約250倍速く移動する。図15に示されるように、カートリッジ内の空気プラグは、試薬プラグと類似の長さを有する。しかし、空気が速く移動することに起因して、検出器の読取りは、2つのフルオレセインプラグの間で経過する時間が、10秒未満であることを示す。比較として、水と非混和性の液体(例えば、PFD)から作製された、類似の長さの隔離プラグは、この微小チャネルを通って移動するために、数分間かかった。従って、全アッセイ時間は、試薬プラグの間で液体ベースの隔離物の代わりに気体ベースの隔離物が使用される場合に、かなり減少し得る。
【0114】
(実施例2)
異種免疫アッセイを、一連の流体プラグを収容するカートリッジと組み合わせて使用することを評価するために、実験を設計および実行した。サンプルを除く全ての必要な試薬を、カートリッジに入れた。このカートリッジを、上記実施例1に記載されるように作製した。
【0115】
フォトリソグラフィーのためのフォトマスクを、PageWorks(Cambridge,MA)から入手した。陰刻フォトレジストSU8を、Microchem(Newton,MA)から入手した。ポリ(ジメチルシロキサン)Sylgard184(PDMS)を、Dow Corning(Midland,MI)から入手した。ポリスチレン基板を、NUNC(Rochester、NY)から購入した。抗ウサギ免疫グロブリンG(IgG)および抗マウスIgGを、Sigma(St−Louis,MO)から購入し、そしてAlexa−488ロバ抗ヒツジIgGを、Molecular Probes(Eugene,OR)から入手した。手で作動される真空ポンプおよびポリエチレンチュービング(Intramedic PE−60,0.76mm内径および1.22mm外径)を、VWR Scientific Products(Pittsburgh,PA)から購入した。他の全ての化学物質は、分析等級のものであり、そして化学物質供給者から入手可能である。
【0116】
(微小流体プラットフォームの準備)
微小チャネルを有するPDMSレプリカを、米国特許第6,645,432号およびSamuel SiaらのPCT出願(発明の名称「Assay Device and Method」、2004年12月29日出願、代理人事件番号H0498.70211)(これらの両方は、その全体が本明細書中に参考として援用される)に記載されるように、迅速な原型作製によって、準備した。微小流体設計を使用して、抗原のストリップ(2つの平行なチャネル、30mm長、200μm幅および60μm深さ)をパターン付けし、そして第二の設計を使用して、免疫アッセイ(6つの平行なチャネル、50mm長、63μm深さ)を実施した。これらのチャネルは、それぞれ10mmである5つのセクションからなり、入口および出口の隣の幅が500μmであり、中心部(ここで、異種免疫アッセイが起こる)が50μmであり、そして中間セグメントが250μmであった。この幾何学的形状により、流れに対する抵抗が制限された(すなわち、流体は、最小の圧力低下で流体力学的流れでポンプ送達され得る)、長いチャネル(すなわち、6つの入口および6つの出口が互いから幾何学的に分離され得る)が得られた。パターン付けのためのPDMSレプリカを、ポリスチレン基板に非永続的に(すなわち、プラズマ酸化を用いずに)シールし、そして2つの平行なチャネルに、PBS中50μgのウサギIgGの溶液および50μgのマウスIgGの溶液を満たした。室温で90分間のインキュベーション時間の後に、これらのチャネルを空にし、そしてPBS中0.05%Tweenの新鮮な溶液で2回リンスした。PDMSスラブを剥がし、そしてポリスチレン基板を脱イオン水(伝導率18MΩより大)でリンスし、そして窒素銃で乾燥させた。入口および出口を、1.6mmの外径を有する鋭利な医療用針(ゲージ16G1)を使用して、第二のPDMSスラブ中に(免疫アッセイのために)抜き出した。この改変した針によってPDMSに残された穴は、PE−60チュービングを挿入するために充分に大きく、そしてカートリッジと微小チャネルとの間の密なシールを可能にした。第二のPDMSスラブを、ポリスチレン基板に非永続的にシールし、その微小チャネルを、抗原のストリップに直交させて配向させた。6つの微小チャネルに、PBS中0.05%Tweenの新鮮な溶液を満たして、露出した表面を、少なくとも2時間ブロックした。
【0117】
(異種免疫アッセイ)
これらのカートリッジを、微小流体チャネルの入口に挿入し、そして出口を、減圧の供給源に接続した。アッセイの間中、減圧の一定した供給源を確実にするために、手で操作されるポンプを、1Lの丸底フラスコに接続し、バラストとして作用させた。次に、6つのPE−60管を、このバラストとこの微小流体チップの出口との間に接続した。このバラストの内部に−15kPaの圧力差が達成されるまで、ポンプを作動させることによって、アッセイを開始し、カートリッジの内容物を、この微小流体チャネル内に分配した。抗原のストライプ上(すなわち、免疫複合体が構築される箇所)およびこのストライプの外側(すなわち、非特異的結合およびノイズレベルが測定される箇所)の蛍光強度を定量し、そして減算して、信号強度を得た。
【0118】
データを図22に提供し、そして内部標準として8cmのプラグについて得た滴定曲線を使用して、日ごとの変動について補償した。各滴定曲線は、1日の間隔をおいて得た3つの実験曲線の平均を表す。内部標準に対するS字曲線の当てはめを計算し、そしてこれらのデータを、y=a・x+bの関係を用いて、このS字曲線の当てはめのために変換した。定数aおよびbの値は、抗ウサギIgGの最低濃度でy=0であり最高濃度でy=1000である当てはめを得るために必要とされた。全ての実験データを、y=a・x+bの関係を使用して変換し、そして3つのデータ点の平均を計算した。図22に提供されるデータを、第三の微小流体チップを内部標準として使用して、日ごとの変動について補償した。4つの平行なチャネル(50mm長、50μm幅および50μm深さ)からなる較正器に、50mM炭酸ナトリウム緩衝液(pH9.55)中0.5μM、1μM、2μMおよび4μMのフルオレセインの溶液を満たした。測定の各毎日のセットについて、新たな較正器を、新たな微小流体チップおよび適切なフルオレセイン溶液から準備した。蛍光強度プロット対フルオレセイン濃度は、直線を生じ、この直線を、線形回帰によって当てはめた。免疫アッセイについて得られた各蛍光データ点を、この直線の当てはめの結果を用いて、切片の値を減算し、次いで傾きで除算することによって、個々に処理した。
【0119】
試薬の連続的な送達のためにカートリッジを使用することを説明するために、ウサギIgG(抗ウサギ)に対して惹起された、免疫グロブリンG(IgG)の検出のための微小流体異種免疫アッセイを実施した。カートリッジを、上記のように、ヒツジ抗ウサギIgG、PBS中0.05%Tween、Alexa488標識したロバ抗ヒツジIgGおよびPBS中0.05%Tweenを含むプラグの順序を用いて、各抗体含有プラグの後にPBS中0.05%Tweenの3つのプラグがくるようにして、準備した(図17を参照のこと)。PDMSレプリカを、構造決定していないポリスチレン基板上にシールした。2つの平行な微小チャネルを、一方をウサギIgGの溶液で、そして他方をマウスIgGの溶液で満たした。インキュベーション後、PDMSスラブを除去して、ポリスチレン基板上に物理吸着したウサギIgGおよびマウスIgGのバンドを露出させた。免疫アッセイを実施するために、6つの微小流体チャネルを有する第二のPDMSスラブを、抗原のストライプに直交させて配置し(図18を参照のこと)、そしてこの微小チャネル中のポリスチレンの表面を、PBS中0.05%のTween20でブロックした。このカートリッジを、微小チャネルの入口に接続し、そして−15kPaの減圧を、手で作動される真空ポンプを使用して、出口に適用した。試薬を、微小流体プラットフォームに連続的に送達した。蛍光顕微鏡による微小チャネルの観察により、ウサギIgGストライプ上に構築した蛍光免疫複合体から生じる明瞭な蛍光信号が明らかになり(図19および図20を参照のこと)、そしてマウスIgGストライプの外側では、蛍光は検出されなかった。いくらかの非特異的結合が、高濃度のタンパク質を含むサンプルを使用した場合に、マウスIgGの表面に観察された。この免疫アッセイを実施するための全アッセイ時間は、カートリッジ内のプラグの長さに依存して、2分間と8分間との間で調節可能であった(以下を参照のこと)。
【0120】
抗ウサギIgGの異種免疫アッセイのダイナミックレンジを、カートリッジ内で抗ウサギIgGの一連の10倍希釈物を用いてこのアッセイを実施することによって、決定した。サンプルのインキュベーション時間は、このアッセイの性能に直接影響を与える。上記技術を使用して達成されるダイナミックレンジを、信号をインキュベーション時間の関数として読取ることによって、決定した。プラグの長さは、インキュベーション時間に直接比例し得るので、抗体含有プラグの長さが2cm〜4cmおよび8cmに変動するカートリッジを準備した。これらのカートリッジ内で、両方の抗体含有プラグの後に、3つのリンスプラグ(0.5cm、2.3μL)およびPBS中0.05%Tweenを含有する1つの洗浄プラグ(1cm、4.5μL)を入れた(図21を参照のこと)。抗体含有プラグについての特異的なインキュベーション時間および全アッセイ時間を、以下の表2に与える。より長いインキュベーションを使用した場合に、極大信号は増加し、そして8cm長のプラグを使用した場合のダイナミックレンジは、2cm長のプラグを用いるアッセイと比較して、低いサンプル濃度の方へ約1桁移動した。
【0121】
【表2】

(実施例3)
(カートリッジの保存)
カートリッジは、アッセイが実施される前の、試薬のための長期間保存容器として働き得る。これらのカートリッジ内の試薬の長期間の安定性を、167nMの抗ウサギIgGのサンプルを充填した約70個のカートリッジを準備し、そしてこれらを12日間にわたって使用することによって、評価した。抗体含有プラグは、8cm長であった。カートリッジの準備の直後に、アッセイを、6つのカートリッジを用いて2つの平行なチップで実施し、そして免疫複合体から発する蛍光信号を記録した。残りのカートリッジを、3つのバッチに分け、それぞれを、異なる温度(4℃、室温、および37℃)で保存した。その後、免疫アッセイを、新たに準備した2つのチップで、各バッチからの4つのカートリッジを用いて繰り返した。図18に図示されるシステムは、平行して6つまでのカートリッジを収容し得る。全てのバッチからの2つのカートリッジを各チップ上で使用し、そして平均蛍光信号を、保存時間の関数としてプロットした(図23を参照のこと)。信号のわずかな減少が観察された(図23の実線を参照のこと。これは、12個のデータ点全てについての、記録された平均蛍光強度を表す)。所定のチップ上で、小さい変動(すなわち、代表的に、5%未満)が、異なる温度で保存されたカートリッジから得られた信号の間で観察された。しかし、チップ間の変動は、同じチップ上でのカートリッジ間の変動よりも大きかった(時々、25%)。このことは、微小流体プラットフォームの準備のための手順が、免疫アッセイ結果の再現性の低下の原因であり得ることを示唆する。しかし、異なる温度で保存されたが同じチップ上で使用されたカートリッジから得られた信号の比較は、保存条件に関連する信号の損失を、信頼性高く評価する。図23に図示されるグラフから、4℃または20℃で保存されたカートリッジと比較して、活性の有意な損失なく、37℃もの高い温度で2週間保存され得ることが見出された。4週間後、37℃で保存されたカートリッジは、4℃または20℃で保存されたカートリッジと比較して、活性の低下を示した。20℃で保存したカートリッジ中の免疫試薬の全体的な活性は、延長した期間にわたって、本質的に変化しないままであった。このことは、新たに準備されたカートリッジと、20℃、37℃および4℃で4週間保存されたカートリッジとを使用して、抗ウサギIgGについて得られた滴定曲線を比較することによって、決定された。
【0122】
(実施例4)
(アッセイの評価)
本発明の方法と既存の方法とを比較するために、本発明の方法とELISA技術とを使用して、化学発光、蛍光および吸光度を用いて、HIV抗体をアッセイするための実験を設計した。手順および結果を、以下に記載する。
【0123】
試薬および設備を、以下のように入手した。ウサギIgG、抗ウサギIgG(西洋ワサビペルオキシダーゼに結合)、抗ウサギIgG(アルカリホスファターゼに結合)、抗ウサギIgG(金に結合)、p−ニトロフェニルホスフェート(pNPP)および銀増強キットを、Sigma−Aldrich(St.Louis,MO)から入手した。AttoPhosを、Promega Corp.(Milwaukee WI)から購入した。SuperSignal ELISA Femto Maxを、Pierce(Rockford,IL)から購入した。BluePhosホスファターゼ基質を、KPL(Gaithersburg,MD)から購入した。HIV Env抗原(gp41)を、Research Diagnostics(Flanders,NJ)から購入した。HIV陽性血清およびコントロール血清を、Golden West Biologicals Inc.(Temecula,CA)から購入した。
【0124】
96ウェルマイクロタイタープレートでの免疫アッセイを、Tecan Genesis液体取り扱いロボット(Center for Genomics Research,Harvard University)を使用して実施した。以下のNunc MaxiSorpポリスチレンプレートを、銀の還元およびELISAアッセイのために使用した:銀の還元および吸光度について、透明なプレート、蛍光について、黒色のプレート、ならびに化学発光について、白色のプレート。10倍希釈物(10μg/mLから100pg/mL、これは、67nMから670fMに対応した)中のウサギIgG(各ウェルについて70μL)を、1列を除いてマイクロウェルに添加した。この1列には、陰性コントロールとして、PBSを添加した;インキュベーション時間は、2時間であった。次いで、ブロック緩衝液(PBS中0.05%Tween−20および1%BSA)を添加し、そして30分間インキュベートした。二次抗体については、1:300抗ウサギIgG(金に結合)、1:1000抗ウサギIgG(アルカリホスファターゼ)、および1:1000抗ウサギIgG(西洋ワサビペルオキシダーゼ)の希釈物(PBS中0.05%Tween−20を30μL)を使用した;インキュベーション時間は、1時間であった。ELISA基質については、pNPP(100μL;3分間のインキュベーション)、AttoPhos(100μL、開封後1週間以内に使用;10分間のインキュベーション)、およびSuperSignal Femto ELISA(100μL;5分後)であった。銀増強については、銀の溶液および開始剤の溶液(4℃)を、1:1の比で、展開の直前に混合した;これを、0.2μmのフィルタに通して濾過し、そして100μLを、各ウェルに添加した。20分間のインキュベーション後、銀増強剤溶液を除去し、そして各ウェルを、水で洗浄した。一般に、銀増強溶液を4℃から室温に温めることにより、銀の析出速度が増加した。各新たな試薬の添加の間に、各ウェルを、PBSで3回洗浄したが、以下を例外とした:AgClの沈殿を回避するために、抗ウサギIgG(金)を用いるインキュベーション後、銀増強前にウェルを洗浄するために、脱イオン水を使用した。使用したプレートリーダーは、吸光度測定についてはSpectramax Plus 384であり、そして蛍光および化学発光の測定については、Spectramax Gemini XSであった。
【0125】
光学ICの出力は、光の透過率であった;見かけの吸光度の値を、関係A=−log(T/T)を使用して計算した。ここで、Aは、吸光度であり、そしてTおよびTは、それぞれ、光検出器までサンプルおよび参照を通る光の透過率である。空気を、このプレートリーダーの参照として使用し、そしてブランクのポリスチレンプレートを、可搬検出器についての参照として使用した。
【0126】
吸光度、蛍光、および化学発光の読取り(y)を、ソフトウェアKaleidagraphを使用し、そして以下の式:y=Ax/(B+x)+Cを使用して、S字曲線に当てはめた。ここで、xは、分析物の濃度であり、そしてA、B、Cおよびnは、浮動パラメータである。結果を、図7に示す。この式は、浮動パラメータの可能な最低数(4)を用いる、一般的なS字曲線を記載する。4つ全ての滴定についての極性の当てはめは、0.99を超える相関係数を与えた。4つ全ての滴定についての読取りyを、各データセットを一次変換してA=1(xが無限大に接近するときの漸近線)およびC=0(y切片)の値を達成することによって、同じスケール(0〜1)に標準化した。
【0127】
検出の限界を、IUPACの定義(ブランクサンプル(「ノイズ」)の標準偏差の3倍を傾き(「感度」)で除算したもの)に従って計算した。ウサギIgGを含まないサンプル(すなわち、陰性コントロール)において、(信号を0〜1に標準化した後に)最低から最高までのノイズを示した方法は:pNPPの吸光度については、0.006、SuperSingal ELISA Femto Maxの化学発光については、0.014、銀(可搬検出器を使用)については、0.023、およびAttoPhosの蛍光については、0.066であった。最高から最低までの感度(これらを、検出の線形検量範囲の中央部におけるベストフィット曲線の傾きとして測定した)を示した方法は(100pMの分析物あたりの標準化した単位で):化学発光については、0.193、蛍光については、0.121、銀については、0.078、および吸光度については、0.035であった。
【0128】
AFMによる分析のための免疫アッセイサンプルを調製するために、穴(直径4mm)を、PDMSスラブに先行し、そしてこのPDMSスラブを、ポリスチレン基板上に配置した。免疫アッセイを、個々のPDMSウェルにおいて実施した。銀現像の後に、PDMSスラブを除去し、そして平坦なポリスチレン基板上のサンプルを、タッピングモードAFMによって分析した。AFMを、Dimension 3100 Scanning Probe Microscope(Digital Instruments,Santa Barbara,CA)を用いて、タッピングモードで、シリコンプローブ(Si#MPP−111000;NanoDevices,Santa Barbara,CA)を用いて、0.35Hzの操作速度で実施した。AFM顕微鏡写真を、図8に提供する。最大の銀顆粒を有するサンプルについて、線が観察された。このことは、銀粒子が、この表面にゆるく結合したことを示唆する。
【0129】
微小流体デバイスを、PDMS中に、ソフトリソグラフィで、公開された手順を使用して製造した。これらの微小チャネルの寸法は、幅2mmおよび高さ130μmであった。最初に、ポリスチレン基板を、HIV Env抗原(10μg/mL)のストライプで、この抗原溶液でPDMSチャネル(ポリスチレンプレート上に一致させてシールした)を満たすことによって、パターン付けした。一晩のインキュベーション後、これらのチャネルをからにし、PDMSスラブをこのポリスチレン表面から除去し、そしてこの表面を、脱イオン水でリンスした。抗原のストライプを、PDMSの構造決定していないスラブで覆い、そしてポリスチレンの残りの表面を、酸素プラズマで酸化した。プラズマから保護するPDMSスラブの除去後、別の微小流体チャネル(これもまた、新たにプラズマで酸化した)を、抗原ストライプに直交させてシールした。これらの微小チャネルの寸法は、幅2mmおよび高さ40μmであった;このチャネルの幅は、可搬検出器を用いて信号を記録するために十分に大きくなければならない。PDMSがたるむことを回避するために、ピラー(表面積の12%を占める)を、このチャネル設計に含めた。抗HIV抗体アッセイを、この微小流体チャネル内で、以下のインキュベーション時間を用いて実施した:ブロッキングについて1時間〜4時間、サンプルについて10分間、金で標識した抗ヒトIgGについて10分間、および銀増強溶液について13.5分間。6.5分間の銀増強の後に、銀溶液を、新たに調製したもので増強した。PDMS微小チャネルを、最初の抗原のストライプの上方に除去し、その後、銀フィルムの光学濃度を測定した。マイクロウェル内でのHIVアッセイを、以下のインキュベーション時間を用いて実施した:HIV Env抗原について一晩、ブロッキングについて2時間、サンプルについて3時間、金で標識した抗ヒトIgGについて1時間、および銀増強溶液について10分間。
【0130】
各濃度のウサギIgGおよび各希釈のヒト血清について、三連の免疫アッセイを実施し、そして平均値および標準偏差を計算した。
【0131】
電気回路は、送信セクションおよび受信セクションからなった。送信セクションにおいて、1kHzの発振器が、レーザーダイオードの光出力を変調した。赤色半導体レーザーダイオード(Sharp GH06510B2A;通常、DVDなどの光データ格納用途で使用される)を使用した;このダイオードは、654nmの波長で発光し、最大電力は、10mWであった。このレーザーの出力は、サンプルを通って受信セクションに進んだ。光学IC(Sharp IS455;通常、写真複写機で使用される)で、信号を検出し、そして増幅した。IS455は、入力照射に対して、線形の出力電流を提供した(1ルクスあたり1μA)。(赤色レーザーダイオードおよび光学ICの寸法は、それぞれ、5.6mmおよび$10、ならびに5.0mmおよび$2であった)。次いで、信号を、1kHzを中心とする二次帯域フィルタで濾波し、そしてその振幅を、ピーク検出器によって記録した。このピーク検出器の出力を、アナログ/デジタル変換器に接続し、この変換器はまた、その出力を二進化十進数(Intersil ICL7106)に符号化した。この信号は、3.5ディジットの液晶ディスプレイに表示され、このディスプレイは、0から1999の範囲の出力読取りを提供した。この回路全体を、9Vのバッテリまたは単極5V電源のいずれかで作動させた。この電源を、CMOS電圧変換器(Intersil ICL7660)で、±5Vの供給を生じるように反転させた。このシステム中のノイズを低下させるために、1kHzの光学信号のパルス変調を使用して、周波数スペクトルにおけるノイズ電力をフィルタリングした;その結果、受信フィルタの通過帯域に適合する光学ノイズの部分のみが、検出されたノイズ全体に寄与した。このシステムはまた、信号変調なしで(すなわち、直流で)使用され得る。
【0132】
レーザーダイオードおよび光学ICを、2つの別々の回路基板上に配置し、これらの回路基板を、固定された配向で保持して、光源から光検出器までの光路の一定の整列を確実にした。光源と光検出器との間に、ガラス板を配置した。光路とピンホール整列した黒色の透明体を、このガラス板上に配置して、サンプルに入らなかった迷光の透過を遮断した。測定を記録するために、ポリスチレンプレート(96ウェルプレートまたは微小流体デバイスを備えるプレートのいずれか)を、このガラス板上に配置した。サンプルをおよそピンホールの上方に配置し、そしてポリスチレンプレートのx位置およびy位置を、極大透過率が達成されるまで微調整することによって、サンプルを光路と整列させた。液晶ディスプレイからの読取りを記録した。
【0133】
分析物に無関係に2つの検出方法を比較するために、96ウェルプレートのマイクロウェルを、ICおよび市販のプレートリーダーによる読取りに供した。
【0134】
異なる濃度のBluePhos(これは、UV−可視吸光度プレートリーダーおよび光学ICによって測定される場合、600nmにおいて極大吸収を示す)を含有するマイクロウェルの吸光度を、この研究において記載する。直接ELISAを、分析物としての0.67pM〜0.67nMのウサギIgGに対して、アルカリホスファターゼおよびホスファターゼ基質としてのBluePhosに結合した抗ウサギIgGを用いて実施した。結果を、図10および図11に示す。両方のデバイスを用いる測定を、654nmにて実施した。線形回帰によるベストフィット直線を示す(相関係数0.998、傾き1.01、y切片0.08)。エラーバーは、3つの異なるマイクロウェルの測定の標準偏差である。
【0135】
このアッセイ(比色定量生成物が、マイクロウェル中の不均質な溶液である)において、2つの検出方法は、ほとんど完全な一致(相関係数0.998)を生じた。従って、表面上への銀の析出の不均一性が、これらの2つの測定方法の間の不完全な一致に寄与したかもしれない。これによって、同じウェルの異なる部分が、レーザーダイオードおよびプレートリーダーによってサンプリングされた(相関係数0.996)。
【0136】
(実施例5)
1つの実施形態および光学検出デバイスの概略表現を、図9に提供する。(A)レーザーダイオードからの赤色光が、サンプルを収容する銀でコーティングされたマイクロウェルを通過して、光学ICに達する。ピンホールを、このサンプルを通過しなかった迷光をブロックするために、使用した。レーザーダイオードおよび光学ICを、同じ回路によって駆動し、この回路はまた、測定された透過率の値を示す、集積された液晶ディスプレイを有した。
【0137】
(実施例6)
図10は、光学ICおよびUV−可視プレートリーダーを使用する、免疫アッセイの読取りの比較を提供する。銀還元を使用する免疫アッセイを、ウサギIgGを検出する96ウェルプレートで実施した。マイクロウェル上の銀フィルムの光学顕微鏡写真を、各サンプルについて示す。各マイクロウェルの見かけの吸光度を、光学ICによって測定し、そしてUV−可視プレートリーダーによる読取りと比較した。両方の測定を、654nmで実施した。線形回帰によるベストフィット直線は、0.989の相関係数、1.12の傾き、および0.16のy切片を有する。
【0138】
本発明の少なくとも1つの実施形態の数個の局面をこのように記載したので、種々の代替、改変、および改善が、当業者に容易に想到することが理解される。このような代替、改変、および改善は、本開示の一部であることが意図され、そして本発明の精神および範囲内であることが意図される。従って、上記説明および図は、例示のみである。
【図面の簡単な説明】
【0139】
【図1】図1は、本発明のアッセイの1つの実施形態の図示である。
【図2】図2は、検出器を備えるアッセイの図示である。
【図3】図3は、光学検出器の概略図である。
【図4】図4は、吸光度対分析物濃度を図示するグラフである。
【図5】図5は、高い分析物濃度および低い分析物濃度で存在する不透明物質の量を、グラフおよび顕微鏡写真で図示する。
【図6】図6は、種々の分析物濃度での不透明物質の形成を示す、顕微鏡写真を提供する。
【図7】図7は、4つの異なるアッセイ技術に関するグラフデータを提供する。
【図8】図8は、吸光度対曝露時間を示すグラフデータを提供し、そして不透明物質を示す顕微鏡写真を提供する。
【図9】図9は、アッセイ検出システムの側面図を提供する。
【図10】図10は、2つの異なる技術による見かけの吸光度を比較するグラフデータを提供する。
【図11】図11は、2つの異なる技術による吸光度を比較する、さらなるグラフデータを提供する。
【図12】図12は、流体プラグを備える容器の概略図である。
【図13】図13は、容器を満たすための技術を図示する。
【図14】図14は、容器を満たすための別の技術を図示する。
【図15】図15は、一連の流体をアッセイデバイスに送達するための1つの実施形態を図示する。
【図16a】図16aは、連続的に適用される一連の流体プラグに応答する蛍光をグラフで図示する。
【図16b】図16bは、連続的に適用される一連の流体プラグに応答する蛍光をグラフで図示する。
【図16c】図16cは、連続的に適用される一連の流体プラグに応答する蛍光をグラフで図示する。
【図17】図17は、容器内の種々の流体試薬プラグの概略図を提供する。
【図18】図18は、微小流体アッセイデバイスを作製するための方法を図示する。
【図19】図19は、図17の容器の試薬流体から会合した成分の概略図を提供する。
【図20】図20は、図18のデバイスで完了したアッセイの蛍光顕微鏡写真である。
【図21】図21は、容器内の種々の流体試薬プラグの別の図示を提供する。
【図22】図22は、抗体濃度の変化と共に変動する応答の変化を示す実施形態を図示する。
【図23】図23は、カートリッジの貯蔵時間に対する蛍光の変化をグラフで図示する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
方法であって、以下:
共通の容器内で互いから隔離されて維持されている、第一の流体および第二の流体を提供する工程;
該第一の流体および該第二の流体を、連続して、該容器から、所定の化学反応または生化学反応を実施するための反応部位に移動させる工程;ならびに
少なくとも、該第一の流体および該第二の流体が該反応部位に適用されるまで、該第一の流体と該第二の流体との間の接触を回避する工程、
を包含する、方法。
【請求項2】
前記容器を、前記反応部位を備えるデバイスに接続する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記容器と前記反応部位とが、流体連絡している、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記容器および前記反応部位が、共通のプラットフォーム上にある、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記容器と前記反応部位とが、一体的に接続される、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記容器が管を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記反応部位にわたって圧力差を適用する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記圧力差が、前記反応部位の下流側を吸引することによって提供される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記圧力差が、前記反応部位の上流側をポンプでくみ上げることによって提供される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記第一の流体および前記第二の流体が、弁を作動させることなく前記反応部位へと連続して移動される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記第一の流体および前記第二の流体が、該第一の流体と該第二の流体とのいずれかの、前記反応部位への導入の互いに対する速度、順序、またはタイミングを制御するいずれのデバイスも作動させずに、該反応部位へと連続して移動される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記方法が、電力を使用しない、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記デバイスが、微小流体デバイスである、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記容器が、ポリエチレン、ポリプロピレンまたはPTFEから構成される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
抗体または抗原のうちの少なくとも一方が、前記反応部位に会合している、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記第一の流体および前記第二の流体が、第三の流体によって隔離されている、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記第三の流体が、気体または気体の混合物である、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記第二の流体が、リンス溶液である、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
前記第一の流体および前記第二の流体を前記反応部位に適用する前に、サンプルを前記デバイス中に配置する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
サンプルを前記容器内に配置する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記容器を前記デバイスに接続する前に、前記サンプルが該容器内に配置される、請求項16に記載の方法。
【請求項22】
前記第二の流体が、第三の流体と第四の流体とを混合することによって生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記第四の流体が、前記第三の流体と反応する、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
前記第三の流体と前記第四の流体とが、前記容器を前記デバイスに接続した後に混合される、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
前記容器が、シールを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記シールが、前記容器の開口部を溶融すること、キャップすること、または収縮させることによって作製される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記シールが、前記容器の開口部に不揮発性流体を挿入することによって作製される、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記管が、少なくとも10:1の、長さ対内径比を有する、請求項5に記載の方法。
【請求項29】
前記管が、5ミリメートルより小さい内径を有する、請求項5に記載の方法。
【請求項30】
前記管が、1ミリメートルより小さい内径を有する、請求項5に記載の方法。
【請求項31】
前記管が、500ミクロンより小さい内径を有する、請求項5に記載の方法。
【請求項32】
前記管が、200ミクロンより小さい内径を有する、請求項5に記載の方法。
【請求項33】
前記管が、100ミクロンより小さい内径を有する、請求項5に記載の方法。
【請求項34】
前記流体のうちの1つが、金に結合した抗体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項35】
前記流体のうちの1つが、金属前駆体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項36】
前記反応部位に金属を無電解析出させて、不透明な材料を生成する工程をさらに包含する、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記不透明な材料の吸光度または光の透過率を決定する工程をさらに包含する、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
金属を無電解析出させる工程、および該金属の電気的特性を決定する工程をさらに包含する、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
装置であって、以下:
シールされた容器;
該容器内に配置された第一の静止流体;
該容器内に配置された第二の静止流体;および
該容器内に配置された第三の静止流体であって、該第三の流体は、該第一の流体と該第二の流体とを隔離しており、そして少なくとも該第一の流体および該第二の流体は、所定の順序で所定の化学反応または生化学反応において使用するために選択され、そして該容器、ならびに該第一の流体、該第二の流体、および該第三の流体は、該流体が該容器内で互いに対して所定の位置を維持しながら、該流体が該所定の化学反応または生化学反応に関与する能力を損なわずに、該容器および該容器内に配置される流体が少なくとも1日間貯蔵され得るように、かつ通常の梱包条件および搬送条件下で取り扱われ得るように選択される、装置。
【請求項40】
前記第一の流体および前記第二の流体が、液体である、請求項39に記載の装置。
【請求項41】
前記第三の流体が、気体または気体の混合物である、請求項39に記載の装置。
【請求項42】
前記第三の流体が、空気である、請求項41に記載の装置。
【請求項43】
前記第三の流体が、窒素である、請求項41に記載の装置。
【請求項44】
さらなる異なる流体をさらに備える、請求項39に記載の装置。
【請求項45】
前記さらなる異なる流体が、前記第一の流体または前記第二の流体のいずれかと同じ型の流体である、請求項44に記載の装置。
【請求項46】
前記第一の流体または前記第二の流体のうちの少なくとも一方が、化学薬剤または生化学薬剤を含有する、請求項39に記載の装置。
【請求項47】
前記第一の流体または前記第二の流体のうちの少なくとも一方が、リンス溶液を含有する、請求項39に記載の装置。
【請求項49】
前記第一の流体、前記第二の流体、および前記第三の流体が、前記容器および該容器内に配置される流体が、少なくとも1週間にわたって貯蔵され得るように選択される、請求項48に記載の装置。
【請求項50】
前記第一の流体、前記第二の流体、および前記第三の流体が、前記容器および該容器内に配置される流体が、少なくとも1ヶ月間にわたって貯蔵され得るように選択される、請求項48に記載の装置。
【請求項51】
前記第一の流体、前記第二の流体、および前記第三の流体が、前記容器および該容器内に配置される流体が、少なくとも1年間にわたって貯蔵され得るように選択される、請求項48に記載の装置。
【請求項52】
前記容器が、ポリマー材料から構成されている、請求項39に記載の装置。
【請求項53】
前記ポリマー材料が、ポリエチレン、ポリプロピレン、およびPTFEから選択される、請求項52に記載の装置。
【請求項54】
前記第一の流体および前記第二の流体のうちの少なくとも一方が、生物学的アッセイまたは化学アッセイに関与し得る種を含有する、請求項39に記載の装置。
【請求項55】
前記第一の流体および前記第二の流体のうちの少なくとも一方が、生物学的アッセイに関与し得る種を含有し、そして前記第三の流体が、該アッセイに対して不活性であり、そして該第一の流体と該第二の流体とを隔離し、そして該第一の流体と該第二の流体とが混合することを防止するように選択される、請求項39に記載の装置。
【請求項56】
前記容器が、少なくとも10:1の長さ対内径比を有する管である、請求項39に記載の装置。
【請求項57】
前記管が、旋回する、請求項56に記載の装置。
【請求項58】
前記容器が、熱シール可能である、請求項39に記載の装置。
【請求項59】
方法であって、以下:
第一の流体を容器内に流す工程;
第二の流体を該容器内に流す工程であって、該第二の流体が、該第一の流体と実質的に非混和性である、工程;
第三の流体を該容器内に流す工程であって、該第三の流体は、該第二の流体と実質的に非混和性であり、そして該第三の流体は、該第一の流体と接触しない、工程;
該流体を該容器に封じ込める工程;および
該シールされた容器を、1日間より長時間貯蔵する工程、
を包含する、方法。
【請求項60】
前記容器が、管を備える、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記第一の流体および前記第三の流体の各々が、前記容器内で流体プラグを形成する、請求項59に記載の方法。
【請求項62】
前記容器内にさらなる流体プラグを形成する工程をさらに包含する、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記第一の流体および前記第三の流体が、液体であり、そして前記第二の流体が、気体または気体の混合物である、請求項59に記載の方法。
【請求項64】
前記第一の流体および前記第三の流体のうちの少なくとも一方が、化学薬剤または生化学薬剤を含有する、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記第一の流体および前記第三の流体のうちの少なくとも一方が、生化学薬剤である、請求項64に記載の方法。
【請求項67】
前記管が、ポリマーから構成されている、請求項60に記載の方法。
【請求項68】
前記管の長さ対該管の内径の比が、少なくとも10:1である、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記管が、旋回する、請求項67に記載の方法。
【請求項70】
装置であって、以下:
チャンバを備えるシールされた容器であって、該チャンバは、連続的な間隙を規定し、該連続的な間隙は、第一の流体および第二の流体を収容し、該第一の流体および該第二の流体は、所定の化学反応または生化学反応において連続的に使用するために、該容器から別々に送達可能であるように構成および配置されており、該シールされた容器は、該第一の流体および該第二の流体を該所定の化学反応または生化学反応において使用する前に少なくとも1時間、該第一の流体および該第二の流体を貯蔵するために構成および配置されている、容器、
を備える、装置。
【請求項71】
前記シールされた容器が、前記第一の流体および該第二の流体を前記所定の化学反応または生化学反応において使用する前に少なくとも1日間、該第一の流体および該第二の流体を貯蔵するために構成および配置されている、請求項70に記載の装置。
【請求項72】
前記シールされた容器が、前記第一の流体および該第二の流体を前記所定の化学反応または生化学反応において使用する前に少なくとも1週間、該第一の流体および該第二の流体を貯蔵するために構成および配置されている、請求項70に記載の装置。
【請求項73】
前記シールされた容器が、前記第一の流体および該第二の流体を前記所定の化学反応または生化学反応において使用する前に少なくとも1年間、該第一の流体および該第二の流体を貯蔵するために構成および配置されている、請求項70に記載の装置。
【請求項74】
前記シールされた容器が、第一の位置から第二の位置へと輸送されるように構成および配置されている、請求項70に記載の装置。
【請求項75】
請求項70に記載の装置を提供する工程、および該装置を1日間より長く貯蔵する工程を包含する、方法。
【請求項76】
前記装置が、4℃以下の温度で貯蔵される、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
前記流体のうちの少なくとも1つが、凍結している、請求項75に記載の方法。
【請求項78】
アッセイキットであって、以下:
微小流体チャネルを備える表面;
該微小流体チャネルの一部に会合している、抗体または抗原のうちの少なくとも1種;
容器;
該容器内に配置された第一の静止流体であって、該第一の静止流体は、抗体または抗原に会合した金属コロイドを含有する、第一の静止流体;
該容器内に配置された第二の静止流体であって、該第二の静止流体は、金属前駆体を含有する、第二の静止流体;
該容器内の第三の静止流体であって、該第三の流体は、該第一の流体と該第二の流体とを隔離している、第三の静止流体;および
該アッセイを実施するための指示書、
を備える、アッセイキット。
【請求項79】
前記容器が、前記表面上に配置されている、請求項78に記載のアッセイキット。
【請求項80】
前記容器が、前記微小流体チャネルと流体連絡して配置され得るように構成および配置されている、請求項78に記載のアッセイキット。
【請求項81】
方法であって、以下:
第一の流体および第二の流体を提供する工程であって、該第一の流体および該第二の流体は、共通の容器内で互いから隔離されて、1分間より長時間静止して維持される、工程;
該第一の流体および該第二の流体を、反応部位に連続的に適用する工程;ならびに
少なくとも、該第一の流体および該第二の流体が該反応部位に適用される後まで、該第一の流体と該第二の流体との間の接触を回避する工程、
を包含する、方法。
【請求項82】
前記第一の流体および前記第二の流体が、1日間より長時間静止して維持される、請求項81に記載の方法。
【請求項83】
前記第一の流体および前記第二の流体が、隔離されている、請求項81に記載の方法。
【請求項84】
前記第一の流体の成分が、前記反応部位と会合し、そして前記第二の流体の成分が、該第一の流体の成分と会合する、請求項81に記載の方法。
【請求項85】
方法であって、以下:
第一の流体および第二の流体を提供する工程であって、該第一の流体および該第二の流体は、共通の容器内で、互いから隔離されて維持されている、工程;
該第一の流体および該第二の流体を、該容器から、所定の化学反応または生化学反応を実施するための反応部位へと連続的に移動させる工程;
少なくとも、該第一の流体および該第二の流体が該反応部位に適用される後まで、該第一の流体と該第二の流体との間の接触を回避する工程;
該第一の流体の成分を、該反応部位と会合させる工程;ならびに
該第二の流体の成分を、該第一の流体の成分と会合させる工程、
を包含する、方法。
【請求項86】
前記第一の流体および前記第二の流体を、前記共通の容器内で静止させて維持する工程をさらに包含する、請求項85に記載の方法。
【請求項87】
前記第一の流体および前記第二の流体が、少なくとも第三の流体によって隔離されている、請求項85に記載の方法。
【請求項88】
前記第一の流体が、抗体または抗原のうちの一方を含有し、そして前記第二の流体が、抗体または抗原のうちの他方を含有する、請求項85に記載の方法。
【請求項89】
前記第一の流体が、金に結合した抗体を含有し、そして前記第二の流体が、金属前駆体を含有する、請求項85に記載の方法。
【請求項90】
前記第一の流体が、抗体を含有し、そして前記第二の流体が、信号発生実体を含有する、請求項85に記載の方法。
【請求項91】
前記第一の流体および前記第二の流体を、前記容器から前記反応部位へと、該容器の構成要素の作用なしに適用する工程を包含する、請求項81に記載の方法。
【請求項92】
前記第一の流体および前記第二の流体を、前記容器から前記反応部位へと、該容器へのガス圧の付与および/または該反応部位のハウジングへの減圧の付与を介して適用する工程を包含する、請求項81に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16a】
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【図16b】
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【図16c】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公表番号】特表2007−524851(P2007−524851A)
【公表日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−551631(P2006−551631)
【出願日】平成17年1月26日(2005.1.26)
【国際出願番号】PCT/US2005/003514
【国際公開番号】WO2005/072858
【国際公開日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【出願人】(592257310)プレジデント・アンド・フェロウズ・オブ・ハーバード・カレッジ (31)
【Fターム(参考)】