説明

流路開閉弁

【課題】吐水停止間際に発生する異音を大幅に低減することのできる流路開閉弁を提供する。
【解決手段】フラッシュバルブ10は、本体3の内部を一次側流路1と二次側流路2とに区画する本体隔壁4と、一次側流路1と二次側流路2との間の流路開閉を行うダイヤフラム弁5と、ダイヤフラム弁5の背部と本体3の内壁との間に形成した圧力室6と、圧力室6と二次側流路2との間を連通するバイパス流路7と、バイパス流路7を開閉し開弁時の圧力室6内の内圧降下によりダイヤフラム弁5を開弁させるリリーフ弁8とを備え、圧力室6内をダイヤフラム弁5の背部に面する第一圧力室6aと第二圧力室6bとに区画する圧力室隔壁11を設け、圧力室隔壁11に、第一圧力室6aから第二圧力室6bへの水道水の移動を規制する複数の小孔12を連通させて設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水洗便器への洗浄水供給経路に配置され、手動操作により一定量の洗浄水を供給する機能を備えたフラッシュバルブなどの流路開閉弁に関する。
【背景技術】
【0002】
一定量の水道水等を供給する流路開閉弁として、従来、様々な方式のものが提案されているが、本願に関連するものとして、例えば、特許文献1に記載されたフラッシュバルブがある。水洗便器の洗浄等に用いられるこのフラッシュバルブは、本体内を隔壁で仕切られた一次側流路と二次側流路間の開閉を行うダイヤフラム弁と、同弁体の背部と本体内壁とで形成した圧力室と、同圧力室と二次側流路間を連通するバイパス流路を開閉し開弁時の圧力室内の内圧降下によりダイヤフラム弁を上動させるためのリリーフ弁などを備えたものである。
【0003】
【特許文献1】特開2004−300859号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたフラッシュバルブなどの従来の流路開閉弁においては、水洗便器に対する水道水の吐水開始後、吐水が停止する間際にフラッシュバルブ本体部付近から「キュッ」あるいは「ギュー」という異音が発生することがある。このような異音は、水温が高い時期(地域)あるいは水圧が高い状況下ほど顕著となる傾向がある。異音発生原因としては、弁座に着座する間際のダイヤフラム弁の振動がある。
【0005】
即ち、ダイヤフラム弁が弁座に着座する間際の圧力室内の急激な圧力変動によってダイヤフラム弁が振動し、このときダイヤフラム弁が弁座と干渉することで異音を発生させるものである。圧力室内に残存する空気は、液体と異なり圧縮性に富んでいるため、ダイヤフラム弁の着座間際に生じる圧力室内の水圧変化によって残存空気が収縮膨張する。このとき、ダイヤフラム弁の振動に呼応するように圧力室内の残存空気が収縮膨張するため、ダイヤフラム弁の振動を抑制することができず、上記のような異音が発生する。
【0006】
しかしながら、上記のように二次側流路を大気開放したフラッシュバルブにおいては、吐水開始後、ダイヤフラム弁背部の圧力室内に流入する水道水による圧力上昇を利用してダイヤフラム弁の閉止動作を行う、というフラッシュバルブの構造上、圧力室内の上部に空気が残存することは避け難く、吐水停止間際のダイヤフラム弁の振動に起因する異音を抑制したり、止めたりすることは極めて困難であるのが実状である。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、吐水停止間際に発生する異音を大幅に低減することのできる流路開閉弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の流路開閉弁は、流路開閉弁の本体内部を一次側流路と二次側流路とに区画する本体隔壁と、
前記一次側流路と前記二次側流路との間の流路開閉を行う主弁体と、
前記主弁体の背部と前記本体の内壁との間に形成した圧力室と、
前記圧力室と前記二次側流路との間を連通するバイパス流路と、
前記バイパス流路を開閉し開弁時の前記圧力室内の内圧降下により前記主弁体を開弁させるためのリリーフ弁と、を備えた流路開閉弁において、
前記圧力室内を前記主弁体の背部に面する第一圧力室とその他の領域とに区画する圧力室隔壁を前記圧力室内に設け、前記圧力室隔壁には、前記第一圧力室からその他の領域への水道水の移動を規制する小孔を連通させて設けたことを特徴とする。
【0009】
このような構成とすれば、小孔を通して第一圧力室内に流入した水道水が第一圧力室内に存在し続けることとなるため、主弁体の閉弁時に主弁体がバウンドして上方に移動しようとして第一圧力室内の水道水を加圧することがあっても、第一圧力室からその他の領域への水道水の移動は小孔によって抑制される。即ち、第一圧力室からその他の領域への流路を小孔としているため、水道水が小孔を通過する際に大きな圧力損失が発生し、その移動が抑制される。従って、第一圧力室内に残存する圧縮性に乏しい水道水によって主弁体の振動が抑制され、吐水停止間際に発生する異音を大幅に低減することができる。なお、前記「水道水」は、公共上水道設備から供給される水道水に限定するものではなく、河川・湖沼あるいは地下水を水源とする簡易水道設備から供給される水道水なども含んでおり、当該流路開閉弁に供給される「水」を意味する広い概念である。
【0010】
ここで、前記圧力室隔壁の前記第一圧力室外側の一部に、前記小孔を介して前記第一圧力室に連通する貯水部を設けることが望ましい。このような構成とすれば、主弁体が閉弁する際に第一圧力室内の圧力が低下すると、貯水部の水道水が小孔を通して第一圧力室内へ引き込まれることとなる。従って、第一圧力室内への空気の流入を防ぐことが可能となり、これによって第一圧力室内は水道水で満たされ続けることとなるため、主弁体の振動が抑制され、異音発生をさらに低減することができる。
【0011】
この場合、前記小孔の開口部を、前記圧力室隔壁の前記第一圧力室内側の最上部に設けるとともに、前記圧力室隔壁の前記第一圧力室内側に前記小孔の開口部に向かって上昇傾斜した傾斜部を設けることが望ましい。このような構成とすれば、第一圧力室内の最上部に溜まる性質のある空気は排出され易くなり、第一圧力室内が水道水で満たされる状態を確実に維持できるようになるため、主弁体の振動が抑制され、異音発生をさらに低減することができる。
【0012】
一方、前記二次側流路の内部に、始端開口部が前記二次側流路の始端部に連結され終端開口部が前記リリーフ弁よりも下流側に位置するサイフォン管を配置することもできる。このような構成とすれば、一次側流路から二次側流路へ流れる水道水はサイフォン管を通じて流れることとなり、サイフォン管の終端開口部から流れる水道水のサイフォン作用により二次側流路が負圧となり、バイパス流路および圧力室内の水が効率良く排出される。従って、リリーフ弁の閉弁後、水道水が再びバイパス流路および圧力室内に流入し、圧力室の内圧が上昇して主弁体が着座するまでの時間を長くとることができるため、必要な水量を確保することができる。
【0013】
この場合、前記サイフォン管の周壁の一部に、前記二次側流路と連通する貫通部を設ければ、主弁体の閉止直後にサイフォン管内に生じる負圧を直ちに大気開放することが可能となるため、サイフォン管内の洗浄水を迅速に排出することができる。また、加振要因を排除することができるため、主弁体の振動がさらに抑制され、異音発生を低減することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、水洗便器のフラッシュバルブなどの流路開閉弁の吐水停止間際に発生する異音を大幅に低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。図1は本発明の流路開閉弁に関する第一実施形態であるフラッシュバルブの待機状態を示す垂直断面図、図2は図1に示すフラッシュバルブの一部拡大図、図3は図1に示すフラッシュバルブを構成する圧力室隔壁の垂直断面図、図4は図3に示す圧力室隔壁の平面図、図5は図4に示す圧力室隔壁の底面図、図6(a)は図1に示すフラッシュバルブを構成するサイフォン管を示す正面図、図6(b)は図6(a)におけるA−A線断面図である。
【0016】
図1,図2に示すように、本実施形態のフラッシュバルブ10は、本体3の内部を一次側流路1と二次側流路2とに区画する本体隔壁4と、一次側流路1と二次側流路2との間の流路開閉を行う主弁体であるダイヤフラム弁5と、ダイヤフラム弁5の背部と本体3の内壁との間に形成した圧力室6と、圧力室6と二次側流路2との間を連通するバイパス流路7と、バイパス流路7を開閉し開弁時の圧力室6内の内圧降下によりダイヤフラム弁5を開弁させるためのリリーフ弁8とを備えている。そして、圧力室6内をダイヤフラム弁5の背部に面する第一圧力室6aとその他の領域である第二圧力室6bとに区画する圧力室隔壁11を圧力室6内に設け、この圧力室隔壁11に、第一圧力室6aから第二圧力室6bへの水道水の移動を規制する複数の小孔12を連通させて設けている。
【0017】
フラッシュバルブ10の一次側流路1の給水口は水道管(図示せず)に連結するためのものであり、一次側流路1の下流側には、止水栓13が設けられ、止水栓13の内部には、フラッシュバルブ10内へ流入する水道水を濾過するためのフィルタ16が内蔵されている。リリーフ弁8はバネ14によって閉止方向へ付勢された押しボタン15を押圧することによって開弁する。
【0018】
図2に示すように、ダイヤフラム弁5の外周部分には円形の凹溝5aおよび凸条5bが形成され、圧力室隔壁11の外周部分には円形の凸条11aおよび凹溝11bが形成されており、凹溝5aと凸条11aとを嵌合させるとともに、凸条5bと凹溝11bとを嵌合させることにより、ダイヤフラム弁5と圧力室隔壁11とは同軸上で互いに着脱可能に接合されている。また、ダイヤフラム弁5と圧力室隔壁11との間においては、ダイヤフラム弁5の背面に同軸上で着脱可能に嵌合されたダイヤフラム受け20が配置されている。ダイヤフラム弁5はゴムなどの弾性体で形成され、圧力室隔壁11およびダイヤフラム受け20はダイヤフラム弁5よりも硬質の合成樹脂で形成されている。ダイヤフラム弁5およびダイヤフラム受け20にはブリード穴21が穿設されており、これらのブリード穴21には圧力室隔壁11に取り付けられたクリーニングピン22が挿通されている。
【0019】
また、図3に示すように、圧力室隔壁11の第一圧力室6a外側の一部には、それぞれ小孔12を介して第一圧力室6aに連通する貯水部17を設けている。これら小孔12の開口部12aを、第一圧力室6aの内壁の最上部に設けるとともに、圧力室隔壁11の第一圧力室6aの内壁に、小孔12の開口部12aに向かって上昇傾斜した傾斜部18を設けている。
【0020】
図4、図5に示すように、圧力室隔壁11の平面形状は円形であり、その中心を挟んで180度隔てた位置に2つの小孔12が圧力室隔壁11を貫通して穿孔されている。そして、これらの小孔12を挟むように同心円状に形成された2つの円形リブ11c、11dによって円形凹溝状の貯水部17が形成されている。
【0021】
一方、図1で示したように、二次側流路2の内部には、始端開口部19aが二次側流路2の始端部2aに連結され終端開口部19bがリリーフ弁8よりも下流側に位置するサイフォン管19を配置している。図1、図6に示すように、サイフォン管19の周壁の一部には、二次側流路2と連通する略半円形の貫通部19cが開設されている。貫通部19cは、リリーフ弁8とほぼ同じ高さに位置しており、半円形の円弧部分19yを下にし、弦部分19xを水平にした形状に開設されている。
【0022】
次に、フラッシュバルブ10の機能、効果について説明する。図1に示すフラッシュバルブ10は待機状態にあり、押しボタン15は押されておらず、リリーフ弁8は閉弁されているため、圧力室6にはダイヤフラム弁5に設けられたブリード穴21とクリーニングピン22の隙間を通って流入した水道水が充満されており、ダイヤフラム弁5は閉弁状態にある。なお、使用開始に際し、止水栓13は開栓されるものとする。
【0023】
ここで、押しボタン15を押すとリリーフ弁8が開弁し、バイパス流路7内の水道水が二次側流路2へ流出するとともに第二圧力室6b内の水道水がバイパス流路7を通じて二次側流路2内へ流出するため、第二圧力室6bの内圧が急激に低下する。従って、第一圧力室6a内の水道水が小孔12を通して第二圧力室6bへ排出され、第一圧力室6aの内圧も低下するため、ダイヤフラム弁5は上方へ移動して弁座23より離れ、一次側流路1から二次側流路2へ水道水が流れる。このとき、二次側流路2内には終端開口部19bがリリーフ弁8よりも下流側に位置するサイフォン管19が配管されているため、水道水がこのサイフォン管19を流れる際のサイフォン作用により二次側流路2内に負圧が生じ、第二圧力室6b内の水道水がバイパス流路7を経て開弁状態のリリーフ弁8から効率良く二次側流路2へ流出する。このようにして二次側流路2へ流出する水道水が水洗便器の洗浄水等として使用される。また、ダイヤフラム弁5の移動により、クリーニングピン22とブリード穴21内面とは相対的に摺動することとなるため、ブリード穴21に水道水中の異物が詰まるのを防止している。
【0024】
なお、フラッシュバルブ10の機能を確保するために、小孔12の開口部の総面積を、ブリード穴21とクリーニングピン22との隙間の断面積より大きく設定しておく必要がある。このように設定すれば、ダイヤフラム弁5が上動する速度は、ブリード穴21とクリーニングピン22との隙間の断面積によって決定されることとなる。従って、上記のようなダイヤフラム弁5の上動時に、ブリード穴21とクリーニングピン22との隙間から第一圧力室6a内に流入した水道水が小孔12から第二圧力室6bへ流出している状況下では、水道水が小孔12を通過する際の圧力損失により、フラッシュバルブ10本来の機能が大きな影響を受けることはない。
【0025】
次に、押しボタン15の押圧力を解除すると、リリーフ弁8がバネ14の復元力によって閉弁するため、一次側流路1から供給される水道水の一部がブリード穴21とクリーニングピン22との隙間から第一圧力室6aへ流入した後、圧力室隔壁11の小孔12を通過して第二圧力室6bへ流入していき、第二圧力室6b内に水道水が充填されていく。このとき、第二圧力室6b内には、先程の押しボタン15の押圧操作で開弁したリリーフ弁8を経て流出した水道水と入れ替わった空気が流入しているので、第二圧力室6b内の水圧(圧力)が一次側流路1内の水圧と略同一になってダイヤフラム弁5が閉止するまでには所定の時間を要することとなり、このダイヤフラム弁5が閉止するまでの時間に、水洗便器を洗浄するのに充分な水道水が二次側流路2へ流される。
【0026】
前述したように、押しボタン15の押圧力を解除してリリーフ弁8が閉弁した後は、一次側流路1から供給される水道水の一部がブリード穴21とクリーニングピン22との隙間から第一圧力室6aへ流入した後、圧力室隔壁11の小孔12を通過して第二圧力室6bへ流入していき、第二圧力室6b内に水道水が充填されていく。従って、第一圧力室6aの内圧は徐々に回復し、ダイヤフラム弁5は下降を始める。ダイヤフラム弁5の着座間際には、圧力室6内で激しい圧力変動が生じるため、従来のフラッシュバルブではダイヤフラム弁が振動しようとするが、本実施形態のフラッシュバルブ10においては、第一圧力室6a内に水道水が存在し続けるため、ダイヤフラム弁5の振動が抑制される。
【0027】
即ち、第一圧力室6aから第二圧力室6bへの水道水流路を小孔12としているため、ダイヤフラム弁5の着座間際の振動により第一圧力室6a内の水道水が加圧されても、水道水が小孔12を通過する際に大きな圧力損失が発生することとなり、その移動が抑制される。従って、第一圧力室6a内に常に残存する圧縮性に乏しい水道水によってダイヤフラム弁5の振動が抑制されることとなり、吐水停止間際に発生する異音を大幅に低減することができる。
【0028】
また、圧力室隔壁11の第一圧力室6aの外側に、小孔12を介して第一圧力室6aに連通する貯水部17を設けているため、リリーフ弁8が開いて第二圧力室6b内の水道水がバイパス流路7へ流出したときも、貯水部17内には常に水道水が残留するようになっている。このため、ダイヤフラム弁5が閉弁する際に第一圧力室6a内の圧力が低下したときは、貯水部17内の水道水が小孔12を通して第一圧力室6a内へ引き込まれることとなる。従って、第一圧力室6aの内圧低下時に、第二圧力室6b内に存在する空気が第一圧力室6a内へ流入するのを防ぐことができ、これによって、第一圧力室6a内は常に水道水で満たされた状態が維持されるため、ダイヤフラム弁5の振動が抑制され、異音発生をさらに低減することができる。
【0029】
この場合、小孔12は、圧力室隔壁11の最上部に設けるとともに、圧力室隔壁11の第一圧力室内6a側に、小孔12の開口部に向かって上昇傾斜した傾斜部18を設けている。従って、第一圧力室6a内の最上部に溜まる性質のある空気は排出され易くなり、第一圧力室6a内が水道水で満たされた状態を確実に維持できるようになるため、ダイヤフラム弁5の振動が抑制され、異音発生の低減に効果的である。
【0030】
一方、図1、図6で示したように、二次側流路2の内部に、始端開口部19aが二次側流路2の始端部2aに連結され、終端開口部19bがリリーフ弁8よりも下流側に位置するサイフォン管19を配置している。従って、一次側流路1から二次側流路2へ流れる水道水はサイフォン管19を通じて流れることとなり、サイフォン管19の終端開口部19bから流れる水道水のサイフォン作用により二次側流路2が負圧となる。これによって、バイパス流路7および第2圧力室6b内の水道水が効率良く排出され、リリーフ弁8の閉弁後、水道水が再びバイパス流路7および圧力室6内に流入し、第2圧力室6bの内圧が上昇してダイヤフラム弁5が着座するまでの時間を長くとることができるため、必要な水量を確保することができる。
【0031】
また、サイフォン管19の周壁の一部には、二次側流路2と連通する貫通部19cを設けているため、ダイヤフラム弁5の閉止直後にサイフォン管19内に生じる負圧を直ちに大気開放することができる。このため、サイフォン管19内の洗浄水を迅速に排出することができる。また、加振要因を排除することができるため、ダイヤフラム弁5の振動が抑制され、異音発生のさらなる低減を図ることができる。
【0032】
ここで、圧力室隔壁11に開設された小孔12の内径の大小と、ダイヤフラム弁5の着座間際に発生する異音の大小(有無)との関係について説明する。小孔12の内径としてφ0.4mm、φ0.5mmおよびφ0.6mmを設定し、それぞれの内径についてダイヤフラム弁5の着座間際に発生する異音の大小(有無)を人間の耳による官能試験で定性的に評価したところ、φ0.6mmの場合は殆ど無きに等しい小さな異音が感じられ、φ0.5mmの場合は異音が感じられず、φ0.4mmの場合は極めて小さな異音が感じられた。
【0033】
これらの結果によれば、小孔12の内径はφ0.4mm〜0.6mm程度とすることが望ましく、特にφ0.5mm程度が最適であると推定される。また、小孔12の内径がφ0.4mm〜0.6mmのいずれの場合においても、従来のフラッシュバルブ(流路開閉弁)の閉止間際に発生する異音を大幅に低減することができることが判明した。なお、閉止間際の異音の発生状況は水道水の給水圧力、流量などによっても影響を受けるので、小孔12の内径をφ0.4mm〜0.6mmとすることに限定するものではない。
【0034】
次に、図7、図8を参照して、本発明のその他の実施の形態について説明する。図7はその他の実施の形態であるフラッシュバルブを示す垂直断面図、図8は図7に示すフラッシュバルブの一部拡大図である。なお、図7、図8に示すフラッシュバルブにおいて、前述した第一実施形態のフラッシュバルブ10の構成部材と同じ構造、機能を有する部分ついては、図1〜図6に示す符号と同符合を付して説明を省略する。
【0035】
図7、図8に示すフラッシュバルブ30は、本体33の内部を一次側流路1と二次側流路2とに区画する本体隔壁34と、一次側流路1と二次側流路2との間の流路開閉を行う主弁体であるピストンバルブ35と、ピストンバルブ35の背部と本体33の内壁との間に形成した圧力室36と、圧力室36と二次側流路2との間を連通するバイパス流路7と、バイパス流路7を開閉し開弁時の圧力室36内の内圧降下によりピストンバルブ35を開弁させるためのリリーフ弁8とを備えている。
【0036】
フラッシュバルブ30においては、圧力室36内をピストンバルブ35の背部に面する第一圧力室36aとその他の領域である第二圧力室36bとに区画する圧力室隔壁31を圧力室36内に設け、この圧力室隔壁31に、第一圧力室36aから第二圧力室36bへの水道水の移動を規制する小孔32を連通させて設けている。また、ピストンバルブ35にはブリード穴37が設けられている。
【0037】
第一実施形態のフラッシュバルブ10と同様、押しボタン15を押すとリリーフ弁8が開弁し、バイパス流路7内の水道水が二次側流路2へ流出するとともに第二圧力室36b内の水道水が、圧力室隔壁31の流路38からバイパス流路7を通じて二次側流路2内へ流出するため、第二圧力室36bの内圧が急激に低下してピストンバルブ35が開弁し、一次側流路1から二次側流路2へ水道水が流れる。
【0038】
押しボタン15の押圧力を解除されると、リリーフ弁8がバネ14の復元力によって閉弁するため、一次側流路1から供給される水道水の一部がブリード穴37から第一圧力室36aへ流入した後、圧力室隔壁31の小孔32を通過して第二圧力室36bへ流入していき、第二圧力室36b内に水道水が充填されていく。このとき、第二圧力室36b内には、押しボタン15の押圧操作時にリリーフ弁8から流出した水道水と入れ替わった空気が流入しているので、第二圧力室36b内の水圧(圧力)が一次側流路1内の水圧と略同一になってピストンバルブ35が閉止するまでには所定の時間を要することとなり、このピストンバルブ35が閉止するまでの時間に所定量の水道水が二次側流路2へ流される。
【0039】
このように、押しボタン15の押圧力を解除してリリーフ弁8が閉弁した後は、一次側流路1から供給される水道水の一部がブリード穴37から第一圧力室36aへ流入した後、圧力室隔壁31の小孔32を通過して第二圧力室36bへ流入していき、第二圧力室36b内に水道水が充填されていく。この過程においては、小孔32を通して第一圧力室36a内に流入した水道水が第一圧力室36a内に存在し続けるため、ピストンバルブ35の閉弁時にピストンバルブ35がバウンドして上方に移動しようとして、第一圧力室36a内の水道水を加圧することがあっても、第一圧力室36aから第二圧力室36bへの水道水の移動は小孔32によって抑制される。
【0040】
即ち、第一圧力室36aから第二圧力室36bへの水道水流路を小孔32としているため、水道水が小孔32を通過する際に大きな圧力損失が発生し、その移動が抑制される。従って、第一圧力室36a内に常に残存する圧縮性に乏しい水道水によってピストンバルブ35の振動が抑制され、吐水停止間際に発生する異音を大幅に低減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の流路開閉弁は、水洗便器のフラッシュバルブあるいは浴室用水栓などの流路開閉機構として広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の第一実施形態であるフラッシュバルブの待機状態を示す垂直断面図である。
【図2】図1に示すフラッシュバルブの一部拡大図である。
【図3】図1に示すフラッシュバルブを構成する圧力室隔壁の垂直断面図である。
【図4】図3に示す圧力室隔壁の平面図である。
【図5】図4に示す圧力室隔壁の底面図である。
【図6】(a)は図1に示すフラッシュバルブを構成するサイフォン管の正面図、(b)は前記(a)におけるA−A線断面図である。
【図7】その他の実施の形態であるフラッシュバルブを示す垂直断面図である。
【図8】図7に示すフラッシュバルブの一部拡大図である。
【符号の説明】
【0043】
1 一次側流路
2 二次側流路
2a 始端部
3、33 本体
4、34 本体隔壁
5 ダイヤフラム弁
5a、11b 凹溝
5b、11a 凸条
6、36 圧力室
6a、36a 第一圧力室
6b、36b 第二圧力室
7 バイパス流路
8 リリーフ弁
10、30 フラッシュバルブ
11、31 圧力室隔壁
11c、11d 円形リブ
12、32 小孔
12a 開口部
13 止水栓
14 バネ
15 押しボタン
16 フィルタ
17 貯水部
18 傾斜部
19 サイフォン管
19a 始端開口部
19b 終端開口部
19c 貫通部
19x 弦部分
19y 円弧部分
20 ダイヤフラム受け
21、37 ブリード穴
22 クリーニングピン
23 弁座
35 ピストンバルブ
38 流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路開閉弁の本体内部を一次側流路と二次側流路とに区画する本体隔壁と、
前記一次側流路と前記二次側流路との間の流路開閉を行う主弁体と、
前記主弁体の背部と前記本体の内壁との間に形成した圧力室と、
前記圧力室と前記二次側流路との間を連通するバイパス流路と、
前記バイパス流路を開閉し開弁時の前記圧力室内の内圧降下により前記主弁体を開弁させるためのリリーフ弁と、を備えた流路開閉弁において、
前記圧力室内を前記主弁体の背部に面する第一圧力室とその他の領域とに区画する圧力室隔壁を前記圧力室内に設け、前記圧力室隔壁には、前記第一圧力室からその他の領域への水道水の移動を規制する小孔を連通させて設けたことを特徴とする流路開閉弁。
【請求項2】
前記圧力室隔壁の前記第一圧力室外側の一部に、前記小孔を介して前記第一圧力室に連通する貯水部を設けたことを特徴とする請求項1記載の流路開閉弁。
【請求項3】
前記小孔の開口部を、前記圧力室隔壁の前記第一圧力室内側の最上部に設けるとともに、前記圧力室隔壁の前記第一圧力室内側に前記小孔の開口部に向かって上昇傾斜した傾斜部を設けたことを特徴とする請求項1または2記載の流路開閉弁。
【請求項4】
前記二次側流路の内部に、始端開口部が前記二次側流路の始端部に連結され終端開口部が前記リリーフ弁よりも下流側に位置するサイフォン管を配置したことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の流路開閉弁。
【請求項5】
前記サイフォン管の周壁の一部に、前記二次側流路と連通する貫通部を設けたことを特徴とする請求項4記載の流路開閉弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−170382(P2006−170382A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−366616(P2004−366616)
【出願日】平成16年12月17日(2004.12.17)
【出願人】(000010087)東陶機器株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】