説明

流量制御弁

【課題】弁体の移動範囲全域にわたって弁体の傾きを効果的に防止することのできる流量制御弁を提供する。
【解決手段】PCVバルブ40は、ガス通路55を設けたケース42と、ガス通路55内に進退可能に設けられたバルブ体60と、バルブ体60を後退方向へ付勢するスプリング72とを備える。ガス通路55に形成された計量孔58と、バルブ体60に形成された計量面62とにより計量部70が構成される。ガス通路55の上流側の通路壁面47及び下流側の通路壁面49が中空円筒状に形成される。バルブ体60には、上流側の通路壁面47に摺動接触しかつ開口孔66を有する第1ガイドフランジ65と、下流側の通路壁面49に摺動接触しかつ開口孔68を有する第2ガイドフランジ67とが設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体の流量を制御する流量制御弁に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車等の車両における内燃機関(エンジン)のブローバイガス還元装置には、ブローバイガスの流量を制御する流量制御弁としてPCV(Positive Crankcase Ventilation)バルブが用いられる(例えば特許文献1参照)。
【0003】
PCVバルブの従来例について説明する。図13はPCVバルブを示す断面図である。
図13に示すように、PCVバルブ1は、ケース2とバルブ体3とスプリング4とを備えている。ケース2には軸方向(図13において左右方向)に延びるガス通路5が設けられている。ガス通路5にはブローバイガスが流通する。また、バルブ体3は、ガス通路5内に軸方向に進退可能に設けられている。また、スプリング4は、ケース2とバルブ体3との間に介装されており、バルブ体3を後退方向(図13において右方)へ付勢している。ガス通路5の途中に計量孔6aが形成されている。また、バルブ体3には計量面6bが形成されている。計量孔6aと計量面6bとにより計量部6が構成されている。
【0004】
PCVバルブ1は、バルブ体3の進退によって計量部6の通路断面積を調整することにより、ガス通路5を流れるブローバイガスの流量を制御すなわち計量する。また、ケース2におけるガス通路5の計量部6よりも上流側の通路壁面5a、及び、計量部6よりも下流側の通路壁面5bは、それぞれ中空円筒状に形成されている。また、バルブ体3の後端部(図13において右端部)には、径方向外方へ張り出す円環板状のガイドフランジ7が形成されている。ガイドフランジ7(詳しくは外周面)は、ガス通路5の上流側の通路壁面5aに摺動接触可能となっている。ガイドフランジ7の外周部には、ブローバイガスの通過を許容する切欠き7aが形成されている。また、バルブ体3の前部には、バルブ体3の軸方向に一直線状に延びる複数(例えば3個)のガイドリブ8が放射状に形成されている。ガイドリブ8(詳しくは外端面)は、ガス通路5の下流側の通路壁面5bに摺動接触可能となっている。したがって、バルブ体3の進退に際し、ケース2の上流側の通路壁面5aにガイドフランジ7が摺動接触するとともに下流側の通路壁面5bにガイドリブ8が摺動接触することによって、バルブ体3が軸方向にガイドされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−120660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記PCVバルブ1によると、バルブ体3が後退位置から前進(図13において左方へ移動)するにしたがい、下流側の通路壁面5bに対するガイドリブ8の支持部分に対して、上流側の通路壁面5aに対するガイドフランジ7の支持部分が接近する。すなわち、ケース2に対するガイドフランジ7による支持部分とガイドリブ8による支持部分との間隔が狭くなる。このため、バルブ体3が前進するにしたがって、バルブ体3の傾きが増大しやすくなるという問題があった。このことは、ケース2に対してバルブ体3ががたつきやすくなるため、がたつきによる打音等の異音の発生や耐久性の低下を招くことになる。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、弁体の移動範囲全域にわたって弁体の傾きを効果的に防止することのできる流量制御弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題は、特許請求の範囲に記載された構成を要旨とする流量制御弁により解決することができる。
請求項1に記載された流量制御弁によると、流体通路を設けたケースと、流体通路内に軸方向に進退可能に設けられた弁体と、弁体を後退方向へ付勢するスプリングとを備え、流体通路の途中に形成された計量孔と、弁体に形成された計量面とにより計量部が構成され、弁体の進退によって計量部の通路断面積を調整することにより流体通路を流れる流体の流量を制御する流量制御弁であって、流体通路の計量部よりも上流側の通路壁面、及び、計量部よりも下流側の通路壁面は、それぞれ中空円筒状に形成され、弁体には、上流側の通路壁面に摺動接触しかつ流体が流通する開口部を有するフランジ状の第1ガイド部が設けられ、弁体には、下流側の通路壁面に摺動接触しかつ流体が流通する開口部を有するフランジ状の第2ガイド部が設けられている。この構成によると、弁体の進退に際し、ケースの上流側の通路壁面に第1ガイド部が摺動接触するとともに下流側の通路壁面に第2ガイド部が摺動接触することによって、弁体が軸方向にガイドされる。これにより、弁体の作動安定性を向上することができる。また、弁体の移動範囲全域にわたって、ケースに対する第1ガイド部による支持部分と第2ガイド部による支持部分との間隔が一定で変化しない。したがって、弁体の移動範囲全域にわたって弁体の傾きを効果的に防止することができる。ひいては、ケースに対する弁体のがたつきを抑制し、がたつきによる打音等の異音の発生や耐久性の低下を防止することができる。
【0009】
請求項2に記載された流量制御弁によると、第1ガイド部及び第2ガイド部のうちの少なくとも一方のガイド部を弁体と別体とし、ケースの流体通路内に設けられた弁体にそのガイド部を取付ける構成としたものである。この構成によると、第1ガイド部及び第2ガイド部のうちの少なくとも一方のガイド部の外径、及び、そのガイド部に対応する通路部59の内径を、計量部の計量孔の孔径(内径)に比べて大きく設定することができる。このため、大流量の流体を流すことができる。
【0010】
請求項3に記載された流量制御弁によると、第2ガイド部を、弁体の後退時において計量孔の孔縁部に着座する構成としたものである。この構成によると、弁体の後退時(最後退位置)において計量孔の孔縁部を弁シートとして第2ガイド部が着座する。これによって、計量孔が閉鎖されるため、流体の逆流を防止することができる。
【0011】
請求項4に記載された流量制御弁によると、弁体に、第1ガイド部及び第2ガイド部が一体成形により形成されている。この構成によると、弁体の部品点数及び組付工数を削減することができる。
【0012】
請求項5に記載された流量制御弁によると、第1ガイド部及び第2ガイド部のうちの少なくとも1つのガイド部の開口部は、ガイド部の両端面にそれぞれ同心状でかつ相互に連通する円弧状をなす複数個の流入側の開口孔部及び流出側の開口孔部を有し、ガイド部における流入側の開口孔部の相互間で径方向に架かる流入側のリブと、流出側の開口孔部の相互間で径方向に架かる流出側のリブとを周方向にずれた位置に配置したものである。この構成によると、流入側のリブ及び流出側のリブによりガイド部の径方向の強度を向上しながらも、流入側のリブ及び流出側のリブによる開口部の通路断面積の減少を抑制し、流体の流通抵抗を低減することができる。このため、大流量の流体を流すことができる。
【0013】
請求項6に記載された流量制御弁によると、内燃機関のブローバイガス還元装置に用いられるPCVバルブである。この構成によると、PCVバルブにおける弁体の移動範囲全域にわたって弁体の傾きを効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態1にかかるPCVバルブを示す断面図である。
【図2】図1のII−II線矢視断面図である。
【図3】図1のIII−III線矢視断面図である。
【図4】ブローバイガス還元装置を示す構成図である。
【図5】実施形態2にかかるPCVバルブを示す断面図である。
【図6】図5のVI−VI線矢視断面図である。
【図7】第2ガイドフランジの周辺部を示す断面図である。
【図8】実施形態3にかかる第2ガイドフランジの周辺部を示す断面図である。
【図9】実施形態4にかかるPCVバルブを示す断面図である。
【図10】図9のX−X線矢視断面図である。
【図11】図9のXI−XI線矢視断面図である。
【図12】図9のXII−XII線矢視断面図である。
【図13】従来例にかかるPCVバルブを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。
【0016】
[実施形態1]
実施形態1について説明する。実施形態1では、流量制御弁として、内燃機関のブローバイガス還元装置に用いられるPCVバルブを例示する。説明の都合上、ブローバイガス還元装置の一例を説明した後でPCVバルブについて説明する。なお、図4はブローバイガス還元装置を示す構成図である。
図4に示すように、ブローバイガス還元装置10は、内燃機関であるエンジン12のエンジン本体13の燃焼室からシリンダブロック14のクランクケース15内に洩れたブローバイガスをインテークマニホールド20内に導入することにより、燃焼室で再び燃焼させるシステムである。
【0017】
前記エンジン本体13は、前記シリンダブロック14と、前記クランクケース15の下面側に締結されたオイルパン16と、シリンダブロック14の上面側に締結されたシリンダヘッド17と、シリンダヘッド17の上面側に締結されたシリンダヘッドカバー18とを備えている。エンジン本体13は、吸気、圧縮、爆発、排気といった行程を経ることにより駆動力を得る。また、エンジン本体13の燃焼室(図示しない。)内での燃焼にともない、エンジン本体13内すなわちクランクケース15内や、そのクランクケース15内に連通するシリンダヘッドカバー18内にはブローバイガスが発生する。また、ブローバイガスが流入するシリンダヘッドカバー18内及びクランクケース15内等は、本明細書でいう「エンジン本体内」に相当する。
【0018】
前記シリンダヘッドカバー18には、新気導入口18a及びブローバイガス取出口18bが設けられている。新気導入口18aに、新気導入通路30の一端(下流端)が連通されている。また、ブローバイガス取出口18bに、ブローバイガス通路36の一端(上流端)が連通されている。なお、新気導入口18a及び/又はブローバイガス取出口18bは、シリンダヘッドカバー18に代えてクランクケース15に設けることもできる。
【0019】
前記シリンダヘッド17には、インテークマニホールド20の一端(下流端)が連通されている。インテークマニホールド20はサージタンク21を備えている。インテークマニホールド20の他端(上流端)には、スロットルボデー24及び吸気管路23を介してエアクリーナ25が連通されている。スロットルボデー24は、スロットル弁24aを備えている。スロットル弁24aは、例えばアクセルペダル(図示しない)に連繋されており、そのペダルの踏込み量(操作量)に応じて開閉される。また、エアクリーナ25は、空気いわゆる新気を導入するもので、その新気をろ過するフィルタエレメント26を内蔵している。エアクリーナ25、吸気管路23、スロットルボデー24及びインテークマニホールド20により、新気すなわち吸入空気をエンジン本体13の燃焼室に導入するための一連の吸気通路27が形成されている。吸気通路27において、スロットル弁24aよりも上流側の通路部分を上流側の吸気通路部27aといい、スロットル弁24aよりも下流側の通路部分を下流側の吸気通路部27bという。
【0020】
前記吸気管路23には新気取入口29が形成されている。新気取入口29には、前記新気導入通路30の他端(上流端)が連通されている。新気導入通路30には逆流防止弁32が設けられている。逆流防止弁32は、前記上流側の吸気通路部27aからクランクケース15内への空気いわゆる新気の流れ(図4中、矢印Y1参照)を許容し、かつ、その逆方向への流れすなわち逆流(図4中、矢印Y3参照)を阻止する。また、前記サージタンク21にはブローバイガス導入口34が形成されている。ブローバイガス導入口34には、前記ブローバイガス通路36の他端(下流端)が連通されている。
【0021】
次に、前記ブローバイガス還元装置10の作動について説明する。エンジン12の軽、中負荷時においては、スロットル弁24aがほぼ全閉に近い状態にある。このため、吸気通路27の下流側の吸気通路部27bに上流側の吸気通路部27aより大きな負圧(真空側に大きくなる負圧)が発生する。したがって、エンジン本体13内のブローバイガスが、ブローバイガス通路36を通じて下流側の吸気通路部27bに導入される(図4中、矢印Y2参照)。このとき、ブローバイガス通路36を流れるブローバイガスの流量がPCVバルブ40(後述する)によって制御される。
【0022】
また、ブローバイガスがエンジン本体13内からブローバイガス通路36を通じて下流側の吸気通路部27bに導入されるにともない逆流防止弁32が開弁する。これにより、吸気通路27の上流側の吸気通路部27aの新気が、新気導入通路30を通じてエンジン本体13内に導入される(図4中、矢印Y1参照)。そして、エンジン本体13内に導入された新気は、ブローバイガスとともにブローバイガス通路36を通じて下流側の吸気通路部27bに導入される(図4中、矢印Y2参照)。上記のようにして、エンジン本体13内が掃気される。
【0023】
また、エンジン12の高負荷においては、スロットル弁24aの開度が大きくなる。したがって、吸気通路27の下流側の吸気通路部27bの圧力が大気圧に近づく。したがって、エンジン本体13内のブローバイガスが下流側の吸気通路部27b内に導入されにくくなり、エンジン本体13内の圧力も大気圧に近づく。このため、上流側の吸気通路部27aから新気導入通路30を通ってエンジン本体13内に導入される新気の流量も減少する。また、逆流防止弁32の閉弁によって、エンジン本体13内から新気導入通路30へのブローバイガスの逆流(図4中、矢印Y3参照)が阻止される。
【0024】
前記ブローバイガス通路36には、ブローバイガスの流量を制御するための流量制御弁としてのPCVバルブ40が設けられている。PCVバルブ40は、ブローバイガスの上流側圧力と下流側圧力との差圧に応じてブローバイガスの流量を制御すなわち計量することによって、差圧の急変にともなうブローバイガスの流量の急変を防止する。
【0025】
次に、PCVバルブ40について説明する。図1はPCVバルブを示す断面図、図2は図1のII−II線矢視断面図、図3は図1のIII−III線矢視断面図である。なお、説明の都合上、図1の左側を前側とし、その右側を後側として説明を行う。
図1に示すように、PCVバルブ40のケース42は、例えば樹脂製で中空円筒状に形成されている。ケース42の中空部は、軸方向(図1において左右方向)に延びるガス通路55となっている。また、ケース42の後端部(図1において右端部)は、前記ブローバイガス通路36(図4参照)の上流側の通路部に接続される。また、ケース42の前端部(図1において左端部)は、ブローバイガス通路36の下流側の通路部に接続される。また、ケース42の後端部は、前記シリンダヘッドカバー18のブローバイガス取出口18b(図4参照)に接続される場合もある。ガス通路55には流体であるブローバイガスが流れる。なお、ガス通路55は本明細書でいう「流体通路」に相当する。
【0026】
前記ケース42のガス通路55の途中には、前側を小径としかつ後側を大径とする段付面43が形成されている。ケース42の段付面43よりも上流側すなわちガス流入側(図1において右側)には、中空円筒状の上流側の通路壁面47が形成されている。上流側の通路壁面47内が上流側の通路部57となっている。また、ケース42の段付面43よりも下流側すなわちガス流出側(図1において左側)には、中空円筒状の下流側の通路壁面49が形成されている。下流側の通路壁面49内が下流側の通路部59となっている。また、下流側の通路部59の上流側(図1において右側)の端部は計量孔58に設定されている。これにともない、下流側の通路壁面49の上流側の端部は、計量孔58の孔壁面48となっている。
【0027】
前記ケース42内すなわちガス通路55には、バルブ体60が軸方向(図1において左右方向)に進退可能に配置されている。バルブ体60は、例えば樹脂製で、ほぼ円柱状に形成されたバルブ本体部61を主体としている。バルブ本体部61の外周面には、先細りのテーパ状をなす計量面62が同心状に形成されている。バルブ本体部61の先端部(前端部)には、先細り状のテーパ軸部63が同心状に突出されている。
【0028】
前記バルブ本体部61の後端部(図1において右端部)には、径方向外方へフランジ状に張り出す第1ガイドフランジ65が同心状に形成されている。第1ガイドフランジ65(詳しくは外周面)は、前記ケース42の上流側の通路壁面47に摺動接触可能となっている(図2参照)。また、第1ガイドフランジ65には、ブローバイガスの通過を許容する複数個(図2では4個を示す)の開口孔66が形成されている。開口孔66は、第1ガイドフランジ65と同心をなす円弧状でかつ周方向に等間隔で配置されている。なお、第1ガイドフランジ65は本明細書でいう「第1ガイド部」に相当する。また、開口孔66は本明細書でいう「開口部」に相当する。また、第1ガイドフランジ65には、少なくとも1個の開口孔66が形成されていればよい。また、開口孔66は、円弧状に限らず、適宜の形状に変更することができる。また、第1ガイドフランジ65の開口部は、開口孔66に代えて、第1ガイドフランジ65の外周部に開口する切欠き面、凹溝等により形成することもできる。
【0029】
前記バルブ本体部61のテーパ軸部63の前端部(図1において左端部)には、径方向外方へフランジ状に張り出す第2ガイドフランジ67が同心状に形成されている。第2ガイドフランジ67(詳しくは外周面)は、前記ケース42の下流側の通路壁面49に摺動接触可能となっている(図3参照)。また、第2ガイドフランジ67には、ブローバイガスの通過を許容する複数個(図2では3個を示す)の開口孔68が形成されている。開口孔68は、第2ガイドフランジ67と同心をなす円弧状でかつ周方向に等間隔で配置されている。また、第2ガイドフランジ67の板厚(軸方向の厚さ)は、前記第1ガイドフランジ65の板厚(軸方向の厚さ)と同一又は略同一に設定されている。なお、第2ガイドフランジ67は本明細書でいう「第2ガイド部」に相当する。また、開口孔68は本明細書でいう「開口部」に相当する。また、第2ガイドフランジ67には、少なくとも1個の開口孔68が形成されていればよい。また、開口孔68は、円弧状に限らず、適宜の形状に変更することができる。また、第2ガイドフランジ67の開口部は、開口孔68に代えて、第2ガイドフランジ67の外周部に開口する切欠き、凹溝等により形成することもできる。また、第2ガイドフランジ67の板厚(軸方向の厚さ)は、前記第1ガイドフランジ65の板厚(軸方向の厚さ)よりも厚くしてもよいし、薄くしてもよい。
【0030】
前記バルブ体60は、前記バルブ本体部61とともに前記第1ガイドフランジ65及び前記第2ガイドフランジ67が一体成形により形成されている。なお、第1ガイドフランジ65及び/又は第2ガイドフランジ67は、バルブ本体部61と別体で形成し、そのフランジをバルブ本体部61に取付けることもできる。
【0031】
前記バルブ体60は、前記ガス通路55の上流側の通路部57から計量孔58を介して下流側の通路部59内に向けて挿通されている(図1参照)。これにともない、前記第1ガイドフランジ65が前記ケース42の上流側の通路壁面47に摺動接触可能に支持される(図2参照)。また、前記第2ガイドフランジ67が前記ケース42の下流側の通路壁面49に摺動接触可能に支持される(図3参照)。したがって、バルブ体60の進退に際し、ケース42に対してバルブ体60の前後の両ガイドフランジ65,67が支持された状態で軸方向にガイドされるため、バルブ体60の傾きが抑制される。なお、本実施形態では、上流側の通路壁面47に、軸方向に延びる浅底状の適数個(図2では4個を示す)の凹状部47aが周方向に等間隔で形成されている。また、下流側の通路壁面49に凹状部47aを形成してもよい。また、凹状部47aの個数は適宜増減することができる。また、凹状部47aは省略してもよい。
【0032】
図1に示すように、前記ケース42の計量孔58(詳しくは孔壁面48)と前記バルブ本体部61の計量面62とにより計量部70が構成されている。したがって、バルブ体60が後退(図1において右方へ移動)するにともなって計量部70の有効開口面積すなわち通路断面積が増大される。また逆に、バルブ体60が前進(図1において左方へ移動)するにともなって計量部70の通路断面積が減少される。なお、バルブ体60は本明細書でいう「弁体」に相当する。
【0033】
前記ケース42と前記バルブ体60との間には、圧縮コイルスプリングからなるスプリング72が介装されている。スプリング72は、バルブ体60のバルブ本体部61に嵌合されている。スプリング72の後端部は、前記第1ガイドフランジ65に係止されている。また、スプリング72の前端部は、ケース42の段付面43に係止されている。スプリング72は、常にバルブ体60を後退方向(図1において右方)へ付勢している。なお、前記上流側の通路壁面47の前端部47b(図1参照)の内径は、スプリング72の外径よりも僅かに大きい内径となるように絞られている。
【0034】
前記ケース42の後端部(図1において右端部)内には、円環板状のエンドプレート44が溶着、接着等により取付けられている。エンドプレート44の中空孔部は、ガス通路55の入口56になっている。また、バルブ体60の後退時(最後退位置)には、第1ガイドフランジ65がエンドプレート44を弁シートとして着座する。
【0035】
次に、前記したPCVバルブ40の作動について説明する。ケース42内のガス通路55の上流側の通路部57よりも下流側の通路部59が低圧(負圧)になると、ブローバイガスが、入口56から上流側の通路部57内に流入した後、計量孔58、下流側の通路部59を通って流出する。このとき、ブローバイガスは、バルブ体60の第1ガイドフランジ65の開口孔66、及び、バルブ体60の第2ガイドフランジ67の開口孔68を流通する。また、ブローバイガスがガス通路55を流通するとき、上流側の通路部57の上流側圧力と下流側の通路部59の下流側圧力(スプリング72の付勢力を含む)との差圧に応じて、バルブ体60が進退(軸方向に移動)する。これにより、ガス通路55を流れるブローバイガスの流量が制御すなわち計量される。詳しくは、上流側圧力が下流側圧力より大きくかつ上流側圧力と下流側圧力との差圧が大きいときには、バルブ体60がスプリング72の付勢力に抗して前進される。これにより、計量部70の通路断面積が減少されるため、ブローバイガスの流量が少なくなる。また、上流側圧力と下流側圧力との差圧が小さくなると、バルブ体60がスプリング72の付勢力により後退される。これにより、計量部70の通路断面積が増大されるため、ブローバイガスの流量が多くなる。このように、計量部70の通路断面積が増減されることにより、ガス通路55を流れるブローバイガスの流量が制御される。また、バルブ体60の後退時(最後退位置)において、第1ガイドフランジ65がエンドプレート44に着座する。これによって、第1ガイドフランジ65の開口孔66がエンドプレート44により閉鎖されてガス通路55が遮断されるため、バックファイヤ等のブローバイガスの逆流を防止することができる。
【0036】
前記したPCVバルブ40によると、バルブ体60の進退に際し、ケース42の上流側の通路壁面47に第1ガイドフランジ65が摺動接触するとともに下流側の通路壁面49に第2ガイドフランジ67が摺動接触することによって、バルブ体60が軸方向にガイドされる(図1〜図3参照)。これにより、バルブ体60の作動安定性を向上することができる。また、バルブ体60の移動範囲全域にわたって、ケース42に対する第1ガイドフランジ65による支持部分と第2ガイドフランジ67による支持部分との間隔が一定で変化しない。したがって、バルブ体60の移動範囲全域にわたってバルブ体60の傾きを効果的に防止することができる。ひいては、ケース42に対するバルブ体60のがたつきを抑制し、がたつきによる打音等の異音の発生や耐久性の低下を防止することができる。
【0037】
また、バルブ体60に、第1ガイドフランジ65及び第2ガイドフランジ67が一体成形により形成されている。このため、バルブ体60の部品点数及び組付工数を削減することができる。
【0038】
[実施形態2]
実施形態2について説明する。本実施形態以降の実施形態は、前記実施形態1の一部を変更したものであるから、その変更部分について説明し、重複する説明を省略する。図5はPCVバルブを示す断面図、図6は図5のVI−VI線矢視断面図、図7は第2ガイドフランジの周辺部を示す断面図である。
図5に示すように、本実施形態では、前記実施形態1(図1参照)のPCVバルブ40におけるケース42からエンドプレート44が省略されている。また、下流側の通路壁面49の内径が計量孔58の孔壁面48の内径よりも大径化されている。また、本実施形態では、下流側の通路壁面49の内径は、上流側の通路壁面47の内径と同一径に設定されている。また、上流側の通路壁面47と下流側の通路壁面49との間には、段付面43及び計量孔58の孔壁面49を有しかつ径方向内方へ張り出す円環状の張出壁45が形成されている。張出壁45の下流側(図5において左側)には、前側を大径としかつ後側を小径とする段付面46が形成されている(図7参照)。なお、張出壁45は本明細書でいう「計量孔の孔縁部」に相当する。
【0039】
図7に示すように、バルブ体60の第2ガイドフランジ(符号、74を付す)は、バルブ本体部61と別体で形成されている。バルブ体60のバルブ本体部61の先端部(前端部)には、前記テーパ軸部63(図1参照)に代えて、支軸部77が同心状に形成されている。第2ガイドフランジ74の取付けに先立って、第1ガイドフランジ65を備えたバルブ本体部61が、ガス通路55における上流側の通路部57から計量孔58を介して下流側の通路部59内に向けて挿通される(図5参照)。
【0040】
前記第2ガイドフランジ74は、取付孔74aを同心状に有する円環板状に形成されている(図6及び図7参照)。また、第2ガイドフランジ74には、前記第2ガイドフランジ67(図3参照)と同様に開口孔68が形成されている。また、第2ガイドフランジ74の後端面(図7において右端面)には、周方向に隣り合う両開口孔66と連続状をなす溝部69が形成されている(図6参照)。溝部69は、第2ガイドフランジ74の軽量化に有効である。なお、第2ガイドフランジ74は本明細書でいう「第2ガイド部」に相当する。また、溝部69は、第2ガイドフランジ74の前端面(図5において左端面)に形成してもよい。また、第2ガイドフランジ74と同様、第1ガイドフランジ65の後端面及び/又は前端面にも溝部69を形成してもよい。
【0041】
前記第2ガイドフランジ74は、前記ケース42内に配置されたバルブ本体部61の支軸部77に対して取付孔74aを嵌合した状態で取付けられている(図7参照)。支軸部77に対する第2ガイドフランジ74の取付手段としては、例えば、溶着、圧入、かしめ等の手段を用いることができる。
【0042】
前記第2ガイドフランジ74の後端面(図7において右端面)には、先細りのテーパ状をなすシール面79が同心状に形成されている。シール面79は、開口孔68と取付孔74aとの間に配置されている。また、シール面79は、前記ケース42の張出壁45に対向している。バルブ体60の後退時(最後退位置)には、第2ガイドフランジ74が張出壁45(詳しくは計量孔58の下流側の孔縁部)を弁シートとして着座する(図7中、二点鎖線79参照)。
【0043】
本実施形態のPCVバルブ40によると、第2ガイドフランジ74をバルブ体60のバルブ本体部61と別体とし、ケース42のガス通路55内に設けられたバルブ体60の支軸部77にその第2ガイドフランジ74を取付けている。したがって、第2ガイドフランジ74の外径、及び、下流側の通路部59の内径を、計量部70の計量孔58の孔径(内径)に比べて大きく設定することができる。このため、大流量のブローバイガスを流すことができる。ひいては、排気量の大きいエンジン12に対応することができる。なお、第2ガイドフランジ74に代えて、第1ガイドフランジ65をバルブ体60のバルブ本体部61と別体とし、ケース42のガス通路55内に設けられたバルブ体60にその第1ガイドフランジ65を取付ける構成としてもよい。
【0044】
また、バルブ体60の後退時(最後退位置)において第2ガイドフランジ74のシール面79が張出壁45に着座する(図7中、二点鎖線79参照)。これによって、計量孔58が閉鎖されてガス通路55が遮断されるため、ブローバイガスの逆流を防止することができる。このため、前記実施形態1におけるエンドプレート44(図1参照)を省略することができる。なお、第2ガイドフランジ74におけるシール面79は省略することもできる。
【0045】
[実施形態3]
実施形態3について説明する。図8は第2ガイドフランジの周辺部を示す断面図である。
図8に示すように、本実施形態は、前記実施形態2(図5参照)のPCVバルブ40における第2ガイドフランジ74のテーパ状のシール面79(図7参照)を、軸線に直交する平面状のシール面(符号、81を付す)に変更したものである。シール面81は、前記実施形態2と同様、バルブ体60の後退時において張出壁45を弁シートとして着座する(図8中、二点鎖線81参照)。このとき、シール面81は、張出壁45の下流側の段付面46に面接触する。
【0046】
[実施形態4]
実施形態4について説明する。図9はPCVバルブを示す断面図、図10は図9のX−X線矢視断面図、図11は図9のXI−XI線矢視断面図、図12は図9のXII−XII線矢視断面図である。
図9に示すように、本実施形態は、前記実施形態2のPCVバルブ40における第2ガイドフランジ74の開口孔68(図6及び図7参照)を開口部(符号、83を付す)に変更したものである。
【0047】
すなわち、前記第2ガイドフランジ74のガス流入側の端面すなわち後端面(図9において右端面)には、複数個(図10では2個を示す)の流入側の開口孔部84が形成されている。図10に示すように、流入側の開口孔部84は、第2ガイドフランジ74と同心をなす円弧状でかつ周方向に等間隔で配置されている。また、流入側の開口孔部84は上下対称状に形成されており、その相互間には第2ガイドフランジ74の流入側の開口孔部84の内周部と外周部との間で径方向に架かる左右の流入側のリブ85が形成されている。なお、前記第2ガイドフランジ74の後端面(図7において右端面)における開口孔68と取付孔74aとの間には、前記実施形態2と同様、シール面79が同心状に形成されている。
【0048】
前記第2ガイドフランジ74のガス流出側の端面すなわち前端面(図9において左端面)には、複数個(図11では2個を示す)の流出側の開口孔部87が形成されている。流出側の開口孔部87は、前記流入側の開口孔部84と同一形状をなしている。また、図11に示すように、流出側の開口孔部87は、第2ガイドフランジ74と同心をなす円弧状でかつ周方向に等間隔で配置されている。また、流出側の開口孔部87は左右対称状に形成されており、その相互間には第2ガイドフランジ74の流出側の開口孔部84の内周部と外周部との間で径方向に架かる上下の流出側のリブ88が形成されている。すなわち、流出側のリブ88は、前記流入側のリブ85に対して周方向に90°ずれた位置に配置されている。また、流出側の開口孔部87の流入側の端部(後端部)と前記流入側の開口孔部84の流出側の端部(前端部)とは相互に連通している。このため、両開口孔部84,87の連通部分では、周方向に連続する環状孔部89となっている(図12参照)。したがって、第2ガイドフランジ74の開口部83は、流入側の開口孔部84、流出側の開口孔部87及び環状孔部89とにより構成されている。
【0049】
本実施形態によると、流入側のリブ85及び流出側のリブ88により第2ガイドフランジ74の径方向の強度を向上しながらも、流入側のリブ85及び流出側のリブ88による開口部83の通路断面積の減少を抑制することができる。すなわち、開口部83の通路断面積は、図10及び図11に示すように、流入側及び流出側において、それぞれ2個分ずつのリブ85,88の断面積相当分減少する。このことは、開口部83の通路断面積が、例えば4個分のリブの断面積相当分減少する場合と比べて、各開口孔部84,87の通路断面積の減少量が小さくて済むことになる。このため、ブローバイガスの流通抵抗を低減し、大流量のブローバイガスを流すことができる。ひいては、排気量の大きいエンジン12に対応することができる。なお、第2ガイドフランジ74と同様、第1ガイドフランジ65に開口孔66に代えて開口部83を形成してもよい。
【0050】
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、本発明は、PCVバルブ40に限らず、ブローバイガス以外の流体の流量を制御する流量制御弁としても適用することもできる。
【符号の説明】
【0051】
10…ブローバイガス還元装置
12…エンジン(内燃機関)
40…PCVバルブ(流量制御弁)
42…ケース
45…張出壁(計量孔の孔縁部)
47…上流側の通路壁面
49…下流側の通路壁面
55…ガス通路(流体通路)
58…計量孔
60…バルブ体(弁体)
62…計量面
65…第1ガイドフランジ(第1ガイド部)
66…開口孔(開口部)
67…第2ガイドフランジ
68…開口孔(開口部)
70…計量部
72…スプリング
74…第2ガイドフランジ
83…開口部
84…流入側の開口孔部
85…流入側のリブ
87…流出側の開口孔部
88…流出側のリブ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体通路を設けたケースと、
前記流体通路内に軸方向に進退可能に設けられた弁体と、
前記弁体を後退方向へ付勢するスプリングと
を備え、
前記流体通路の途中に形成された計量孔と、前記弁体に形成された計量面とにより計量部が構成され、
前記弁体の進退によって前記計量部の通路断面積を調整することにより流体通路を流れる流体の流量を制御する流量制御弁であって、
前記流体通路の計量部よりも上流側の通路壁面、及び、該計量部よりも下流側の通路壁面は、それぞれ中空円筒状に形成され、
前記弁体には、前記上流側の通路壁面に摺動接触しかつ流体が流通する開口部を有するフランジ状の第1ガイド部が設けられ、
前記弁体には、前記下流側の通路壁面に摺動接触しかつ流体が流通する開口部を有するフランジ状の第2ガイド部が設けられている
ことを特徴とする流量制御弁。
【請求項2】
請求項1に記載の流量制御弁であって、
前記第1ガイド部及び前記第2ガイド部のうちの少なくとも一方のガイド部を前記弁体と別体とし、前記ケースの流体通路内に設けられた前記弁体に前記ガイド部を取付ける構成としたことを特徴とする流量制御弁。
【請求項3】
請求項2に記載の流量制御弁であって、
前記第2ガイド部を、前記弁体の後退時において前記計量孔の孔縁部に着座する構成としたことを特徴とする流量制御弁。
【請求項4】
請求項1に記載の流量制御弁であって、
前記弁体に、前記第1ガイド部及び前記第2ガイド部が一体成形により形成されていることを特徴とする流量制御弁。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載の流量制御弁であって、
前記第1ガイド部及び前記第2ガイド部のうちの少なくとも1つのガイド部の開口部は、該ガイド部の両端面にそれぞれ同心状でかつ相互に連通する円弧状をなす複数個の流入側の開口孔部及び流出側の開口孔部を有し、
前記ガイド部における流入側の開口孔部の相互間で径方向に架かる流入側のリブと、前記流出側の開口孔部の相互間で径方向に架かる流出側のリブとを周方向にずれた位置に配置した
ことを特徴とする流量制御弁。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つに記載の流量制御弁であって、
内燃機関のブローバイガス還元装置に用いられるPCVバルブであることを特徴とする流量制御弁。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−251496(P2012−251496A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−125197(P2011−125197)
【出願日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(000116574)愛三工業株式会社 (1,018)
【Fターム(参考)】