説明

流量計測機能付きボールバルブとその自動ボールバルブ

【課題】特定の面間内で、ボール弁体を上流側寄りに配置して上下流の流体圧力を安定した状態で取り込むことを可能とし、かつ、簡単な構造で流量を正確に計測することができる流量計測機能付きボールバルブを提供すること。
【解決手段】所定の面間を有し、両端にフランジ1、3を設けた弁箱の上流側寄りの内部に弁軸を介してボール弁体6を回転自在に設け、前記フランジの上部外端面に上下流の流体圧力を測定する圧力センサ10,11をそれぞれ固着すると共に、前記フランジの肉厚に沿って圧力取出し用の連通路をそれぞれ穿設し、この連通路12、13から導入した上下流の流体圧力を前記圧力センサで測定することにより上下流の流体圧力の差圧信号と弁開度量から求めた弁容量係数によりボールバルブの流体の流量を演算して適切な流体流量に制御するようにしたことを特徴とする流量計測機能付きボールバルブである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボールバルブ内を流れる上流側と下流側の流体圧力の差圧と弁開度量から求めた弁容量係数によりボールバルブの流体の流量を測定して適切な流量に制御するようにした流量計測機能付きボールバルブと流量計測機能付き電動・空動などの自動ボールバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化防止に関する京都議定書の発効や、最近の世界的なエネルギー需要のひっ迫化などを背景に、各分野における省エネ対策が急務となっている。しかし、産業部門などに比べて、オフィスやホテル、デパートなどの民生部門の省エネ化があまり進んでいない。そのため、いわゆる省エネルギー法の改正や環境保護条例の制定などが行われ、民生部門に対する各種の法的規制の強化が進み、一層の省エネ努力が必要となってきている。
【0003】
オフィスビルで消費される一時エネルギー消費量のうち、5割近くは空調に関連するというデータもあることから、空調を対象にした省エネルギー対策は、オフィスビルの省エネにおいて極めて需要である。
【0004】
オフィスビルを新築する場合、省エネルギーを考慮しないで新築されることはなく、熱発電コージェネレーションシステムの設置やヒートポンプ式熱源の設置等の各種の省エネルギー対策が盛り込まれて大きな成果を挙げている。しかしながら、これらは空調機械設備に対する抜本的な対策であり、既存の建物に対する省エネ対策として適用することは、設備投資金額の面からも困難であるため、より安価な費用で既存の空調設備に適用できる省エネ対策が求められている。
【0005】
従来における一般的なオフィスビルのセントラル空調では、機械室の温熱源装置で冷水又は温水の冷温水を作り、循環ポンプと供給配管により冷温水を建物各所に供給し、供給先に設けたファンコイルユニットで空気と熱交換を行い冷暖房する方式が採用されている。この方式では、冷温水の流量を調整することにより、冷暖房温度を制御することができる。
【0006】
しかしながら、このようなビル空調システムの運転にあたっては、従来は、冷房時であっても暖房時であっても、温熱源装置から一定温度の冷温水を一定流量で供給し、その日の気温により供給配管に設けられているバルブの開度を調整し、冷温水の流量を制御するということは、通常行われていない。
【0007】
このため、温熱源装置の出口における冷温水の温度は、そのオフィスビルの最大熱負荷に対応した温度に設定されており、熱負荷が少ない時にも熱負荷が多い時と同じ温度の冷温水が供給されるので、過冷房や過暖房という事態を生じさせ、エネルギー消費に無駄が生じている。従って、オフィスビルにおける過冷房や過暖房という状況を解消するためには、冷温水の供給量を気温等に対応した適正流量に制御する必要がある。
【0008】
冷温水の流量は、供給配管にオリフィスを設けるとともに、オリフィスの上流側及び下流側に圧力センサを設け、上流側と下流側との流体の差圧を計測することにより求めることができる。このようにして求めた計測流量が前記適正流量に一致するように供給配管に設けたバルブの開度を調整することにより、過冷房や過暖房という問題を解決することができる。
【0009】
しかしながら、このような計測系はオリフィスと圧力センサを直列に一定の間隔を離して組み込む必要があるため、ある程度の組込長が必要であり、既存の冷温水の供給配管に後付で組み込むためのスペースを確保することが容易ではなく、また、取付け工事費用もかさむという問題がある。
【0010】
また、弁体の開口部をオリフィスとして機能させて弁体の上流側及び下流側で流体に差圧を生じさせ、その差圧等に基づいてバルブを流れる流体の流量を求め、その結果に基づいて弁開度を調整することにより、バルブを流れる流体の流量を制御する流量計測機能と弁機能の両機能を備えたバルブもある。
【0011】
このようなバルブに関しては、特許文献1や特許文献2が知られている。
特許文献1には、弁本体内に配設されたボール弁体より上流流路内の流体圧を弁本体内周側と上流側リテーナとの間に形成した導通路により、ボール弁体より下流流路内の流体圧を弁本体内周側と下流側リテーナとの間に形成した導通路により取り出し、差圧センサで差圧を計測するとともに、弁体の弁軸の回転角度(弁開度)を検出し、差圧と弁開度に基づいて流量係数を求め、これらの計測値と流量係数とから弁本体内を流れる流体の流量を所定の流量演算式により算出し、その算出結果に基づいて弁開度を調整することにより、弁本体を流れる流量を制御する流量制御弁が記載されている。
【0012】
また、特許文献2には、弁本体内に配設された弁体より上流流路内の流体圧及び下流流路内の流体圧の差圧を検出するにあたり、弁体よりも下流側の流路における流体圧力の検出部位を流体の淀み部分、すなわち流れがない部位とし、計測した差圧と弁体の弁開度量とから所定の流量演算式により弁本体内を流れる流体の流量を算出し、その算出結果に基づいて弁開度を調整することにより、弁本体を流れる流量を制御する流量制御弁が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2009−115302号公報
【特許文献2】特開2009−115271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、この特許文献1に記載された流量制御弁では、弁を構成する部品数が多く、しかも部品の製作には高精度の機械加工が必要となる。特に、弁本体内周側とリテーナとの間に流体圧の導通路を形成するためには、弁本体内周側とリテーナの外周側の加工について極めて高い精度が必要であり、コストアップの要因となるという問題がある。
【0015】
また、特許文献2に記載されている流量制御弁は、弁体よりも下流側の流路における流体の圧力の取り出し部を流体の淀み部分に設けるようにしているが、該取り出し部の位置は弁体の絞り部に極めて近いため、弁体により形成された絞り部を通過後、弁室内で急激に流れ方向が変化し、乱流状態にある流体の影響を避けることができない。そのため、前記圧力取り出し部付近は完全な淀み部となることはなく、乱流状態にある流体の動圧の影響を受け、絞り部前後の差圧を高精度で計測することができないため、その差圧に基づいて算出する流体流量も精度が十分に高くないという問題がある。これに加え、特許文献2に記載されている流量制御弁は、弁箱内部の流路が複雑な構造であるため、流体が異物を含んでいる場合には、ゴミ詰まりが発生し易いという問題もある。
【0016】
本発明は、従来の課題点を解決するために開発したものであり、その目的とするところは、特定の面間内で、ボール弁体を上流側寄りに配置して上下流の流体圧力を安定した状態で取り込むことを可能とし、かつ、簡単な構造で流量を正確に計測することができる流量計測機能付きボールバルブバルブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、所定の面間を有し、両端にフランジを設けた弁箱の上流側寄りの内部に弁軸を介してボール弁体を回転自在に設け、前記フランジの上部外端面に上下流の流体圧力を測定する圧力センサをそれぞれ固着すると共に、前記フランジの肉厚に沿って圧力取出し用の連通路をそれぞれ穿設し、この連通路から導入した上下流の流体圧力を前記圧力センサで測定することにより上下流の流体圧力の差圧信号と弁開度量から求めた弁容量係数によりボールバルブの流体の流量を演算して適切な流体流量に制御するようにしたことを特徴とする流量計測機能付きボールバルブである。
【0018】
請求項2に係る発明は、フランジを有するボデー部とフランジを有するキャップ部より成る弁箱の上流側寄りの内部にボール弁体を設け、このボール弁体を回動する弁軸を弁軸筒に軸装し、この弁軸筒の上部に電動アクチュエータを搭載し、この電動アクチュエータの下方に位置する双方の前記フランジの上部外端面に上下流の流体圧力を測定する圧力センサをそれぞれ固着すると共に、前記フランジの肉厚に沿って圧力取出し用の連通路をそれぞれ穿設し、この連通路から導入した上下流の流体圧力を前記圧力センサで測定することにより上下流の流体圧力の差圧信号と弁開度量から求めた弁容量係数とを演算して適切な流体流量に制御するようにしたことを特徴とする流量計測機能付き自動ボールバルブである。
【0019】
請求項3に係る発明は、前記フランジの上部外端面に当該フランジと一体に延設した保護用の突起部を形成し、この突起部で前記フランジに固着した圧力センサを保護するようにした流量計測機能付き自動ボールバルブである。
【0020】
請求項4に係る発明は、前記ボデー部内に扇形流出口を有するボール弁体を設けてボール弁体を上流側寄りに内蔵し、このボデー部に下流側に位置する前記キャップ部をボルトを介して組付けて弁箱を構成した流量計測機能付き自動ボールバルブである。
【0021】
請求項5に係る発明は、上流側の前記連通路から上流側のボールシートまでの距離aと、下流側の前記連通路から下流側のボールシートまでの距離bとの比率を1:4とした流量計測機能付き自動ボールバルブである。
【発明の効果】
【0022】
請求項1に係る発明によると、弁箱の最外部で上下流の流体圧力を計測することができるので、圧力損失が小さい値で計測することが可能となるため、高精度に圧力測定をすることができ、しかも、下流側においても測定部位をボール弁体から可能な限り離間した位置としているため、より正確な計測が可能となる。
【0023】
請求項2に係る発明によると、フランジの上部外端面に圧力センサを配置することで、ボール弁体の位置に関係なく圧力を安定して検出することができ、しかも、ボール弁体を弁体の上流側寄りに配置されているので、限られた面間の中で、下流側の圧力検出位置を極力ボール弁体から離間した位置に配設することが可能となり、面間の中でボール弁体から一番遠い位置で圧力を検出することができ、特に下流側での流れが安定した位置で流体圧力を検出することができる。また、アクチュエータと弁箱の間に圧力センサを配置したので、圧力センサ及びその配線がアクチュエータとバルブから飛び出すことがないため、コンパクトに配置できると共に、配管作業が容易にできる。
【0024】
請求項3に係る発明によると、フランジの上部外端面にフランジと一体に延設した突設部によって圧力センサを保護するようにしたので、簡単な構造によって圧力センサ及びケーブルを確実に保護することができ、コンパクト性と耐久性の向上を図ることができる。
【0025】
請求項4に係る発明によると、ボデー部とキャップ部の2ピース構造にすることにより、弁箱内部の流路が滑らかな構造となり、ゴミ詰まりが発生し難いと共に、ボデー部にボール弁体を設けているので、弁箱の上流側寄りの内部にボール弁体を配置することが可能となる。
【0026】
請求項5に係る発明によると、限られた面間の中で、下流側の圧力検出を安定した流体流れの中で確実に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明における流量計測機能付き電動ボールバルブの一例を示した断面図である。
【図2】図1の右側面図である。
【図3】図1の電動ボールバルブを斜め下方より見た斜視図である。
【図4】本発明における流量計測機能付き電動ボールバルブの他例を示した弁箱部分の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、本発明における流量計測機能付き電動ボールバルブの一実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1においては、本発明における流量計測機能付き電動ボールバルブの断面図を、図2においては、図1の右側面図を、図3においては、図1の電動ボールバルブを斜め下方より見た斜視図を示している。
【0029】
図1に示すように、本発明における流量計測機能付き電動ボールバルブは、一端部にフランジ1を有するボデー部2と、一端部にフランジ3を有するキャップ部4を組み合わせて形成した弁箱5内にボール弁体6を回動自在に設け、このボール弁体6を回動させる弁軸7を弁軸筒8に軸装し、この弁軸筒8の上部に電動アクチュエータ9を搭載するとともに、前記フランジ1、3の上部外端面に圧力センサ10、11をそれぞれ固着させて構成している。
【0030】
ボデー部2には、内部に流路2a及びボール弁体6の収納部2bが形成されると共に、前記フランジ1の上部外端面からフランジ1の肉厚に沿って、連通路12が穿設され、流路2a内の流体圧力を導くために流路2aと連通している。
【0031】
さらに、ボデー部2の上部側には、弁軸7を軸装する弁軸筒8を一体に延設し、弁軸筒8の上部にはアクチュエータ9を搭載する載置部22を形成している。この載置部22には電動アクチュエータ9を適宜の取付け手段により固着する。
【0032】
一方、キャップ部4には、流路4aが形成される共に、前記フランジ3の上部外端面からフランジ3の肉厚に沿って連通路13が穿設され、流路4a内の流体圧力を連通路13へと導くために流路4aと連通している。
【0033】
ボデー部2の下流側にキャップ部4をボルト17によって螺着結合して、弁箱5を形成している。弁箱5内には、ボデー部2のボールシート収納部20に収納されたボールシート18と、キャップ部4のボデーシート収納部21に収納されたボールシート19によって回動自在に支持されたボール弁体6が配設されている。また、ボール弁体6には扇形流出口16を有する連通孔6aが形成されている。
【0034】
ボール弁体6は、弁箱5を構成するボデー部2側に設けられている収容部2bに収納され、ボールバルブ全体では上流側に片寄って弁箱5内に配設されている。この片寄の状態は、図1に示すように、本例では、上流側の連通路12から上流側のボールシート18までの距離aと、下流側の連通路13から下流側のボールシート19までの距離bとの比率が1:4となる関係にある。
【0035】
弁軸7は、前記弁軸筒8に軸装され、弁軸筒8から突出した下端部がボール弁体6の上面中央に連結され、弁軸筒8の上方に突出した上端部が電動アクチュエータ9の図示しない出力軸に連結されている。
【0036】
電動アクチュエータ9は、前記弁軸筒8の上端に設けられた取付け部22にボルト23により螺着結合されている。この電動アクチュエータ9の内部には、図示しないモータと減速機構やリミットスイッチ等が設けられていると共に、ボール弁体6の弁開度を検出する開度センサや、弁開度や圧力センサの検知データに基づき流体流量を算出するCPUやメモリ等が適宜に内蔵された流量計測機能手段及び必要に応じて弁開度制御機能手段が設けられている。
【0037】
圧力センサ10、11は、本例では、半導体式圧力センサを用いており、図1において、フランジ1及びフランジ3の上部外端面の開口部に形成したネジ部1a、3aに螺着して取付けられ、このネジ部1a、3aの開口は、連通路12、13に連通している。
【0038】
圧力センサ10、11で検知された流路2a及び流路4aの圧力データは、圧力センサ10、11と電動アクチュエータ9とを結ぶ配線24を介して電動アクチュエータ9内部の流量計測機能手段へと送られる。
【0039】
図1において、圧力センサ10、11が検知した圧力データを電動アクチュエータ9の流量計測機能部へと伝達する配線24を模式的に細い線で表しているが、実際には、図3に示すように、圧力センサ10、11の二次側大気を開放する通気用チューブを中心とし、その周囲に複数の導線を配し、さらにその周囲を横巻遮蔽シールド、ビニールシース等で包み込んで保護した大気開放チューブ一体型ケーブル25である。
【0040】
図4に示すように、この実施形態では、前記フランジ1、3の上部外端面に、圧力センサ10、11を挟み込んで一対の突起部14、15を当該フランジと一体に延設して形成している。
【0041】
このため、圧力センサ10、11は突起部14、15で両側からしっかりと保護されるので、設置後、電動ボールバルブの周辺で作業を行っても、圧力センサ10、11に作業服の袖口に引っ掛けたり、工具をぶつけたりして損傷させるおそれがない。
【0042】
また、電動ボールバルブを屋外配管に横倒しの状態で設置した場合には、ある程度雨除けになると共に、フランジ外端面を伝わって流れ落ちる雨水からも圧力センサを保護することができる。
【0043】
本発明における流量計測機能付き電動ボールバルブでは、弁箱5をボデー部2とキャップ部4とから成るツーピース構造としたため、組み立てが容易であると共に、弁箱5内部の流路が滑らかな構造となり、例え、冷温水に異物が含まれていても、ゴミ詰まりが発生し難い。
【0044】
また、上流側及び下流側ともに、圧力センサ10、11への流体圧力を導出するための連通路12、13をフランジ1、3に穿設したので、ボール弁体6により生じる流れの乱れの影響が及ばない最も遠い位置で流体圧力を導出できるため、正確な流体圧力を検知することができる。
【0045】
さらに、ボール弁体6の上流側及び下流側の双方において流体圧力を導出する連通路12、13を流路2a、4aの上部位置に連通させているので、閉じているボール弁体6が、上面から見て反時計方向に回転して流路が開き始めた際に、ボール弁体の下流側から見ると口径内の左側から流路が開通し始めることにより、ボール弁体の開度によってはボール弁体の下流側の流れが乱流となり、流路内の圧力が左右不均衡となる現象の影響を受けることがないため、正確な流体圧力を導出することができる。
【0046】
このように、流体圧力に検出位置をボール弁体6から最も遠い位置に設けたことと併せて、ボール弁体の開口部が左右方向で片寄ることにより生じる流路内の圧力の左右不均衡の影響を受けない流路上部から流体圧力を導出していることにより、流体圧力を高精度に検知することができる。
【0047】
これに加え、ボデー部2側にボール弁体6の収納部2bを設け、ボール弁体6を弁箱5全体の上流側寄りに配設している。ボール弁体6を弁箱5全体の上流側寄りに配設したことにより、限られた面間の中で、ボール弁体6の開口部により生じた乱流の影響が下流側の連通路13に及ばないように、下流側の流路4aの流路長を十分長く設定することができる。
【0048】
本実施例では、図1に示すように、上流側の連通路12から上流側のボールシート18までの距離aと、下流側の連通路13から下流側のボールシート19までの距離bとの比率を1:4に設定し、ボール弁体6の開口部により生じた乱流の影響が下流側の連通路13に及ばないようにしている。
【0049】
なお、上流側の連通路12から上流側のボールシート18までの距離aと、下流側の連通路13から下流側のボールシート19までの距離bとの比率は、本実施例の1:4に限定されるものではなく、面間距離や流路径に対応して適宜に決定することができるが、上流側の距離aに比して下流側の距離bは十分大きく設定する必要がある。
【0050】
上流側の圧力センサ10と下流側の圧力センサ11で検知された流路2a及び流路4aの圧力データは、圧力センサ10、11と電動アクチュエータ9とを結ぶ大気開放チューブ一体型ケーブル25を介して電動アクチュエータ9内部の流量計測機能手段へと送られ、弁箱5内を流れる流体の計測流量を算出するために使用される。
【0051】
電動アクチュエータ9内の流量計測機能手段においては、上流側の圧力センサ10と下流側の圧力センサ11から圧力データに基づいて、ボール弁体6の上下流間の差圧Δpを求め、この差圧Δpと弁開度検出手段からの弁開度θに応じた流量係数Cv値から、弁箱5内の流路内を流れる流体の流量Qを算出する。
【0052】
算出された流量Qは、同じく電動アクチュエータ9内の弁開度制御機能手段に送られ、流量Qが設定流量値に一致するように弁開度を制御している。
【0053】
また、図1に示すように、圧力センサ10、11の配置位置は、アクチュエータ9とフランジ1及びフランジ3の上部外端面との間であるため、外観上圧力センサ10、11が凸部となることがなくコンパクトであると共に、配管作業やメンテナンス作業時に作業者が圧力センサ10、11に接触して破損させる可能性が小さい。すなわち、圧力センサ10、11や大気開放チューブ一体型ケーブル25などを図2の二点鎖線に示す領域イ(電動アクチュエータ9の底面をボールバルブ側に投影した領域)内に配設できるので、コンパクトで安定性の向上に著しく寄与する。
【0054】
本実施形態においては、電動ボールバルブは、図1に示すように、電動アクチュエータ9を上側にした正立状態で配管設置することが原則である。しかしながら、既存配管に空間的な余裕がなく、正立状態で使用することができない場合には、電動アクチュエータ9を左右どちらかに90度横倒しにしても、メンテナンス等のために外部から電動アクチュエータ9に簡単にアクセスすることができるので、横倒し状態でも配管設置することが可能である。このため、ほとんどの既存配管に適用することができるので、その利用価値は大きい。
【0055】
次に、本発明における流量計測機能付き電動ボールバルブの上記実施形態における作用例を説明する。
まず、オフィスビル等のビルの制御室で当日の気候、天気に対応した当該ビルの熱負荷を見積もり、見積もった熱負荷に応じた冷温水の流量を決定し、流量データを冷温水の供給配管に設置された流量計測機能付き電動ボールバルブの電動アクチュエータ内の弁開度制御機能手段のCPU等に送信する。その後、温熱源装置で作った冷温水を循環ポンプと供給配管によりビルの各所へ供給する。
【0056】
配管に供給された冷温水は、配管に設けられた電動ボールバルブを通過して、ビル内の供給先に設けたファンコイルユニットに供給され、空気と熱交換を行い、供給先の空調を行う。
【0057】
当初、冷温水が電動ボールバルブを通過する際には、ボール弁体6は適宜の開度で開かれており、弁室5内の流路は、ボール弁体6により絞られた状態となっている。このため、ボール弁体6による絞り部によりオリフィス効果が生じ、ボール弁体6の上流側と下流側とでは流体に圧力差が生じる。
【0058】
ボール弁体6の上流側流路2aの流体の圧力は、流路2aに連通した連通路12を介し、圧力センサ10により検知される。圧力センタ10は、圧力に比例した電気信号を発生し、配線24を介してアクチュエータ9内の流量計測機能手段へ伝達する。
【0059】
同様に、ボール弁体6の下流側流路4aの流体の圧力は、流路4aに連通した連通路13を介し、圧力センサ11により検知される。圧力センサ11は、圧力に比例した電気信号を発生し、配線24を介してアクチュエータ9内の流量計測機能手段へ伝達する。
【0060】
前記流量計測機能手段は、伝達されてきた上流側流路2aの流体圧力の電気信号と、下流側流路4aの流体圧力の電気信号から、ボール弁体6による絞り部を通過したことにより生じた流体の差圧Δpを求める。同時に、弁軸7の開度センサからの回転角度データ(ボール弁6の弁開度)に基づき、ボール弁体6による絞り部の流量係数Cvを求め、その差圧と流量係数とから弁箱5内を流れる流体の流量Qを算出する。
【0061】
本例におけるバルブは、ビルなどの空調機に使用する冷温水の流量を計測するものである。流体の流量は、オリフィス流量計の原理により計測することができる。この原理によると、流量Qは、
Q=(Cv/k)・√ΔP
により求めることができる。ここで、kは単位調整用の係数であり固定値である。また、Cvはバルブの容量係数であり、バルブの開度によって変化する。よって、バルブを通過する流体の容量は、バルブ容量係数Cvと、差圧ΔPより求めることができる。
一方、差圧ΔPを計測する圧力センサの計測値は、計測する周囲温度の影響を受ける。このため、より正確に流体の流量を求めるためには、流体の温度を計測し、その計測温度に基づいて圧力センサの計測値を温度補正する必要がある。
本例におけるバルブを通過する流体は、ビルなどの空調機に使用される冷温水であり、その温度は、おおよそ、冷房の場合で5〜10℃、暖房の場合で50〜60℃である。従って、使用する冷温水の温度帯に限って圧力センサの計測値の補正を行えば、温度計測回路が不要となり、そのためのコストを大幅に抑えることができる。具体的には、冷房の場合の流体温度である5〜10℃に対応する圧力センサ補正係数と、暖房の場合の流体温度である50〜60℃に対応する圧力センサ補正係数とを各一つ準備し、空調機の運転区分が冷房、暖房であるかによって、準備した圧力センサ補正係数を切り替えて適用することにより、高精度で差圧ΔPを計測し、正確な流体の流量を求めることができる。
【0062】
なお、図示しないコントローラにより付与された設定流量と流量計測機能手段で算出された計測流量Qとを比較し、計測流量Qが設定流量に一致する様に出力軸に連結された弁軸7を介してボール弁体6を回動させて弁開度を調整し、弁箱5内を流れる流体の流量を制御する。
【0063】
従来、バルブで流量を絞って温度調節すると、バルブの圧力損失分はエネルギーロスとなっていた。検知した流量を基に、温熱源装置による冷温水の製造量を引下げることで、ポンプ搬送エネルギーが削減されると共に、バルブを開けば、低いポンプエネルギーで必要な流量を確保することができる。よって、当該ビルで使用する空調用のエネルギーを最適化し、省エネルギーを図ることができる。
【0064】
なお、冷温水の流量Qが設定流量と一致しても、空調が効き過ぎたり、反対に不足したりする場合には、制御室から冷温水の設定流量を適宜増減して設定することにより、電動バルブが自動的に冷温水の流量を制御し、空調効果を改善することができる。
【0065】
また、ビル内の各所における空調効果は、場所によって建物外部から受ける熱の影響が異なるため、例え同一流量の冷温水を供給しても同一ではない。このような場合であっても、本発明における流量計測機能付き電動ボールバルブを使用すれば、冷温水の供給配管に設けられている複数の電動バルブに対し、供給先毎にきめ細かく冷温水の供給量を設定することも随時簡単に行うことができ、ビル全体に対する空調効果の最適化を図ることができる。
【0066】
本発明における流量計測機能付き電動ボールバルブは、構造が簡単で取得価格が安価であるだけでなく、既存のバルブと交換するだけで従来の配管設備に取付けることができ、別途配管工事を要しない。また、空調に使用する冷温水の流量を高精度に計測、制御して過冷房や過暖房を防止し、ビルで使用する空調エネルギーを最適化して、省エネルギーを図ることができる。さらには、各バルブに対する冷温水の供給流量の設定は制御室からのデータ送信により行うことができ、余分な人手を要しない。従って、その実用的価値及び経済的価値は非常に大きいものがある。
【符号の説明】
【0067】
1 フランジ
2 ボデー部
3 フランジ
4 キャップ部
5 弁室
6 ボール弁体
9 電動アクチュエータ
10、11 圧力センサ
12、13 連通路
14、15 突起部
16 扇形流出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の面間を有し、両端にフランジを設けた弁箱の上流側寄りの内部に弁軸を介してボール弁体を回転自在に設け、前記フランジの上部外端面に上下流の流体圧力を測定する圧力センサをそれぞれ固着すると共に、前記フランジの肉厚に沿って圧力取出し用の連通路をそれぞれ穿設し、この連通路から導入した上下流の流体圧力を前記圧力センサで測定することにより上下流の流体圧力の差圧信号と弁開度量から求めた弁容量係数によりボールバルブの流体の流量を演算して適切な流体流量に制御するようにしたことを特徴とする流量計測機能付きボールバルブ。
【請求項2】
フランジを有するボデー部とフランジを有するキャップ部より成る弁箱の上流側寄りの内部にボール弁体を設け、このボール弁体を回動する弁軸を弁軸筒に軸装し、この弁軸筒の上部に電動アクチュエータを搭載し、この電動アクチュエータの下方に位置する双方の前記フランジの上部外端面に上下流の流体圧力を測定する圧力センサをそれぞれ固着すると共に、前記フランジの肉厚に沿って圧力取出し用の連通路をそれぞれ穿設し、この連通路から導入した上下流の流体圧力を前記圧力センサで測定することにより上下流の流体圧力の差圧信号と弁開度量から求めた弁容量係数とを演算して適切な流体流量に制御するようにしたことを特徴とする流量計測機能付き自動ボールバルブ。
【請求項3】
前記フランジの上部外端面に当該フランジと一体に延設した保護用の突起部を形成し、この突起部で前記フランジに固着した圧力センサを保護するようにした請求項1又は請求項2に記載の流量計測機能付き自動ボールバルブ。
【請求項4】
前記ボデー部内に扇形流出口を有するボール弁体を設けてボール弁体を上流側寄りに内蔵し、このボデー部に下流側に位置する前記キャップ部をボルトを介して組付けて弁箱を構成した請求項1乃至請求項3にいずれか1項に記載の流量計測機能付き自動ボールバルブ。
【請求項5】
上流側の前記連通路から上流側のボールシートまでの距離aと、下流側の前記連通路から下流側のボールシートまでの距離bとの比率を1:4とした請求項4に記載の流量計測機能付き自動ボールバルブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−15160(P2013−15160A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−146643(P2011−146643)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(390002381)株式会社キッツ (223)
【Fターム(参考)】