説明

消防用エンジンポンプのエンジン制御方法及び装置

【課題】火災現場での過酷な状況下でエンジンの保護を的確に図りながら、エンジンのオーバヒートによりポンプの運転が中断される時間をできるだけ短くするという要請に応えることができるようにした消防用エンジンポンプのエンジン制御装置を提供する。
【解決手段】オーバヒート時エンジン保護制御手段26がエンジンを停止させた回数を書き換えが可能な不揮発性メモリに記憶するエンジン停止回数記憶手段27と、記憶されたエンジン停止回数が設定値に達している状態でエンジンのオーバヒートが検出されたときにエンジンの運転を禁止するオーバヒート時エンジン運転禁止手段28と、温度センサによりエンジンの温度がオーバヒート判定温度よりも低い温度に低下したことが検出された時にエンジンの運転を許可するためにエンジン停止回数記憶手段27によるエンジンの停止回数の記憶内容をクリアする記憶内容リセット手段29とを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消防用エンジンポンプのエンジンを、オーバヒートにより焼き付きを起こすことがないように制御する消防用エンジンポンプのエンジン制御方法及びこの制御方法を実施するために用いる消防用エンジンポンプのエンジン制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
消防用エンジンポンプは、水を汲み上げるポンプと、ポンプを駆動するエンジンとにより構成される。消防用エンジンポンプ、特に可搬形の消防用エンジンポンプにおいては、小形のエンジンから大きな出力を引き出す必要があるため、エンジンの冷却を効率よく行うことが必要とされる。そのためこの種のポンプでは、特許文献1に示されているように、ポンプが汲み上げた水の一部を利用してエンジンを冷却する構成をとることが多い。
【0003】
この種の消防用エンジンポンプにおいては、ポンプの吸水口と吸水管との接続部の締め付けが緩く、吸水口から空気が吸い込まれる状態にあると、ポンプの圧力が上がらず、水を汲み上げることができなくなることがある。また、吸水管の水中へのセットが悪く、吸水管の先端が水面から出ている場合や、放水により水槽内の水が減少して吸水管の先端が水面から出た場合にもポンプが空気を吸い込み、水を汲み上げることができなくなる。
【0004】
上記のような原因により放水中にポンプが水を汲み上げることができなくなると、ポンプからエンジンに冷却水を供給することができなくなるため、エンジンの温度が上昇し、エンジンは、やがてオーバヒートする。また、ポンプからエンジンに冷却水を供給する通路にポンプにより吸い上げられたゴミが詰まった場合にも、エンジンの冷却水の量が減少するため、エンジンがオーバヒートするおそれがある。
【0005】
エンジンがオーバヒートした状態でその運転を継続すると、エンジンが焼き付くおそれがある。そのため、ポンプが汲み上げた水をエンジンの冷却水として利用する消防用エンジンポンプにおいては、エンジンの温度を検出する温度センサを設けて、この温度センサにより検出されるエンジンの温度がオーバヒート判定温度以上であるときに、エンジン用点火装置の動作を停止させる点火動作停止手段を有効にすることにより、エンジンの点火動作を停止させてエンジンを停止させるようにしている。
【0006】
このように、温度センサによりエンジンのオーバヒートが検出されたときにエンジンを停止させるようにすれば、エンジンが焼き付くのを防ぐことができる。しかしながら、このようにした場合には、エンジンのオーバヒートを生じさせた原因(ポンプからエンジンに正常に冷却水が供給されなくなった原因)が除去されても、エンジンの温度がオーバヒート判定温度より低い温度まで下がらないとエンジンの点火動作を再開させることができないため、ポンプの運転を再開するまでに長い時間がかかり、消防活動に支障を来すことになる。
【0007】
そこで、特許文献1に示されているように、エンジンのオーバヒートが検出されたときにエンジンの点火動作を停止させる点火動作停止手段を無効にするスイッチを設けて、このスイッチを操作することにより、エンジンの再起動を可能にすることが提案された。
【0008】
ところが、上記のように、エンジンのオーバヒートが検出されたときにエンジンの点火動作を停止させる点火動作停止手段の働きを解除するスイッチを設けた場合には、エンジンを再起動した後、運転者がこのスイッチの状態を元に戻す操作を忘れた場合に、オーバヒートに対するエンジンの保護機能が失われたままの状態で消防ポンプが運転されることになるため、エンジンをオーバヒートから保護することができなくなるという問題が生じる。
【0009】
ポンプが汲み上げた水によりエンジンを冷却するようにした消防用エンジンポンプでは、エンジンを運転した際にポンプからエンジンに正常に冷却水を供給することができさえすれば、たとえエンジンの温度がオーバヒート判定温度を超えていたとしても、ポンプが汲み上げた冷たい水により速やかにエンジンを冷却することができる。そのため、この種のエンジンポンプでは、エンジンへの冷却水の供給を妨げていた原因が除去されていれば、エンジンの温度がオーバヒート判定温度を超えている状態でエンジンの運転を再開させても何等支障を来さない。
【0010】
そこで、特許文献2に示されているように、エンジンの温度を検出する温度センサによりエンジンのオーバヒートが検出されたときに直ちにエンジンを停止させるのではなく、予め設定した猶予時間が経過するのを待ってからエンジンを停止させるようにした消防用エンジンポンプが提案された。この消防用エンジンポンプでは、エンジンの温度からエンジンのオーバヒートが検出されても、所定の猶予時間が経過するまではエンジンが停止させられないため、エンジンが停止した後、エンジンの温度が未だオーバヒート判定温度以上になっている状態でも、エンジンの再起動が可能である。上記猶予時間は、エンジンをオーバヒートさせた原因を除去して、エンジンを再起動したときに、ポンプから供給される冷却水によりエンジンがオーバヒート判定温度より低い温度にまで冷却されるのに要する時間よりも長く、かつエンジンをオーバヒート状態で運転することが許容される時間の限界値よりも十分に短く設定される。
【0011】
このように構成しておくと、エンジンのオーバヒートが検出されてエンジンが停止したときに、ポンプからエンジンへの冷却水の供給を妨げていた原因を除去してからエンジンを再起動することにより、速やかに(前記猶予時間内に)エンジンを冷却してその温度をオーバヒート判定温度より低い温度にまで低下させることができるため、そのままエンジンの運転を継続して消防活動を続けることができる。従って、エンジンのオーバヒートによりポンプの運転が中断する時間をできるだけ短くするという要請に応えることができ、エンジンのオーバヒートが消防活動に与える影響を少なくすることができる。
【特許文献1】特開平10−141275号公報
【特許文献2】特開2000−9082号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献2に記載された消防用エンジンポンプにおいて、エンジンのオーバヒート時にポンプからエンジンに冷却水が十分に供給されなくなった原因を除去することなくエンジンを再起動させた場合には、エンジンが十分に冷却されないため、エンジンは、オーバヒートしたままの状態で運転され、所定の猶予時間が経過した時に停止させられる。エンジンがオーバヒートにより停止したときに、ポンプからエンジンに冷却水が供給されなくなった原因を冷静に分析して、その原因を除去することができれば何等問題は生じない。しかしながら、火災現場の過酷な状況下では、ポンプからエンジンに冷却水が供給されなくなった原因を常に完全に除去できるとは限らないため、特許文献2に示された発明によった場合には、オーバヒートが何度も繰り返されて、エンジンが焼き付きを起こすおそれをなくすことができず、エンジンの保護を的確に図っているということができなかった。
【0013】
本発明の目的は、火災現場での過酷な状況下で、エンジンの保護を的確に図りながら、エンジンのオーバヒートによりポンプの運転が中断される時間をできるだけ短くするという要請に応えることができるようにした消防用エンジンポンプのエンジン制御方法を提供することにある。
【0014】
本発明の他の目的は、上記のエンジン制御方法を実施するために用いる消防用エンジンポンプのエンジン制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、ポンプが汲み上げた水の一部をポンプ駆動用エンジンの冷却水として用いるように構成された消防用エンジンポンプのエンジンの温度を検出し、検出されたエンジン温度が設定されたオーバヒート判定温度以上になったことによりエンジンのオーバヒートが検出されたときに一定の猶予時間の計測を行って、該猶予時間の計測が行われている間にオーバヒートが検出されなくなったときには該猶予時間の計測が完了した後もエンジンの運転を継続させ、該猶予時間の計測が完了した時になおエンジンのオーバヒートが検出されているときにエンジンを停止させるオーバヒート時エンジン保護制御を行う消防用エンジンポンプのエンジン制御方法に係わるものである。
【0016】
本発明においては、 オーバヒート時エンジン保護制御によりエンジンが停止させられた回数をエンジン停止回数として書き換えが可能な不揮発性メモリに記憶しておき、エンジンのオーバヒートが検出されたときに記憶されたエンジン停止回数が設定値に達していないときにはオーバヒート時エンジン保護制御を行わせるが、エンジンのオーバヒートが検出されたときに記憶されたエンジン停止回数が設定値に達しているときにはエンジンの運転を禁止し、エンジンの温度がオーバヒート判定温度よりも低い温度に低下したことが検出されたときにエンジンの運転を許可するためにエンジン停止回数の記憶内容をクリアすることを特徴とする。
【0017】
上記停止回数の設定値は、エンジンのオーバヒートを検出してからエンジンを停止させるまでの猶予時間と該設定値との積(エンジン温度がオーバヒート判定温度に達した状態でのエンジンの運転時間の積算値)が、エンジンの焼き付きが生じる値に達することがないように、適当な値に設定する。
【0018】
このように構成すると、火災現場の過酷な状況下で、エンジンのオーバヒートが発生したときに、その原因を除去しないままでエンジンの再起動が何度も繰り返されて、エンジンが焼き付くのを防ぐことができるため、エンジンの保護を的確に図りながら、エンジンのオーバヒートによりポンプの運転が中断する時間をできるだけ短くするという要請にも応えることができる。
【0019】
本発明はまた、ポンプが汲み上げた水の一部をポンプ駆動用エンジンの冷却水として用いるように構成された消防用エンジンポンプのエンジンの温度を検出する温度センサと、温度センサにより検出されたエンジン温度が設定されたオーバヒート判定温度以上になったときにエンジンのオーバヒートを検出するオーバヒート検出手段と、エンジンのオーバヒートが検出されたときに一定の猶予時間の計測を行う猶予時間計測手段と、猶予時間計測手段が猶予時間の計測を行っている間にオーバヒートが検出されなくなったときには該猶予時間の計測が完了した後もエンジンの運転を継続させ、該猶予時間の計測が完了した時になおエンジンのオーバヒートが検出されているときにエンジンを停止させる制御を行うオーバヒート時エンジン保護制御手段とを備えた消防用エンジンポンプのエンジン制御装置に適用される。
【0020】
本発明に係わるエンジン制御装置においては、オーバヒート時エンジン保護制御手段がエンジンを停止させた回数を書き換えが可能な不揮発性メモリにエンジン停止回数として記憶するエンジン停止回数記憶手段と、エンジン停止回数記憶手段により記憶されたエンジン停止回数が設定値に達している状態でエンジンのオーバヒートが検出されたときに直ちにエンジンの運転を禁止するオーバヒート時エンジン運転禁止手段と、温度センサによりエンジンの温度がオーバヒート判定温度よりも低い温度に低下したことが検出された時にエンジンの運転を許可するためにエンジン停止回数記憶手段によるエンジンの停止回数の記憶内容をクリアする記憶内容リセット手段とが設けられる。
【0021】
上記の制御方法及び制御装置では、オーバヒートによるエンジンの停止が何度も繰り返されたときにエンジンの再起動を禁止するようにしたが、短い時間の間にオーバヒートの検出が繰り返されたときにエンジンの再起動を禁止するようにしてもエンジンの焼き付きを防止することができる。
【0022】
即ち、本発明に係わる消防用エンジンポンプのエンジン制御方法では、オーバヒート時エンジン保護制御によりエンジンが停止させられたときに、エンジンが停止した原因がオーバヒートであることを書き換えが可能な不揮発性メモリに記憶しておき、エンジンが始動した後設定された判定時間内にオーバヒートが検出されたときにメモリの内容を見て、エンジンが停止した原因がオーバヒートであることが該メモリに記憶されているときに直ちに前記エンジンを停止させ、エンジンの温度がオーバヒート判定温度よりも低い温度に低下したときにエンジンの運転を許可するためにメモリの記憶内容をクリアしてエンジンの再起動を許可するようにしてもよい。
【0023】
上記の制御方法を実施するために用いる制御装置は、エンジンの始動時に計時動作を開始して設定された判定時間の計測を行う判定時間計測手段と、オーバヒート時エンジン保護制御手段がエンジンを停止させた時に、エンジンの停止原因がオーバヒートであることを書き換えが可能な不揮発性メモリに記憶するエンジン停止原因記憶手段と、判定時間計測手段が判定時間の計測を行っている間にオーバヒートが検出された時にメモリの内容を見て、エンジンの停止原因がオーバヒートであることがメモリに記憶されているときにエンジンの運転を禁止するオーバヒート時エンジン運転禁止手段と、温度センサによりエンジンの温度がオーバヒート判定温度よりも低い温度に低下したことが検出された時にエンジンの運転を許可するために停止原因記憶手段の記憶内容をクリアする記憶内容リセット手段とを備えることにより構成することができる。
【0024】
上記オーバヒート時エンジン保護制御手段及びオーバヒート時エンジン運転禁止手段は、エンジンを点火する点火装置の点火動作を停止させることによりエンジンを停止させるように構成することができる。
【発明の効果】
【0025】
以上のように、本発明によれば、オーバヒートの検出によるエンジンの停止回数を記憶しておいて、オーバヒートが検出された際に記憶されているエンジンの停止回数が設定値に達していないときにはエンジンの運転を許可するが、記憶されているエンジンの停止回数が設定値に達しているときにはエンジンの運転を禁止し、エンジンの温度が設定されたオーバヒート判定温度よりも低い温度に低下したときにエンジンの停止回数の記憶内容をクリアして、エンジンの運転を許可するようにするか、またはオーバヒートの検出によりエンジンが停止したときに、エンジンが停止した原因がオーバヒートであることを書き換えが可能な不揮発性メモリに記憶しておいて、エンジンが始動した後設定された判定時間内にオーバヒートが検出されたときにメモリの内容を見て、エンジンが停止した原因がオーバヒートであることが該メモリに記憶されているときにエンジンの運転を禁止し、エンジンの温度がオーバヒート判定温度よりも低い温度に低下したときにメモリの記憶内容をクリアしてエンジンの運転を許可するようにしたので、火災現場の過酷な状況下で、エンジンのオーバヒートが発生したときに、その原因を除去しないままでエンジンの再起動が何度も繰り返されて、エンジンが焼き付くのを防ぐことができる。
【0026】
従って、本発明によれば、エンジンの保護を的確に図りながら、エンジンのオーバヒートによりポンプの運転が中断する時間をできるだけ短くするという要請に応えることができるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下図面を参照して、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。
本発明に係わる消防用エンジンポンプの制御方法は、ポンプが汲み上げた水の一部をポンプ駆動用エンジンの冷却水として用いるように構成された消防用エンジンポンプにおいて、何らかの原因でポンプが水を汲み上げることができなくなったために、エンジンがオーバヒートした際に、エンジンが焼き付くのを防止するための制御方法である。本出願人は先に、エンジンの温度からエンジンのオーバヒートが検出されたときにすぐにエンジンを停止させるのではなく、オーバヒートが検出されてから一定の猶予時間が経過するのを待ってエンジンを停止させる方法を提案した。
【0028】
本発明はこの方法を更に改良したもので、本発明においては、オーバヒート時エンジン保護制御によりエンジンが停止させられた回数をエンジン停止回数として書き換えが可能な不揮発性メモリに記憶しておき、エンジンのオーバヒートが検出されたときに記憶されたエンジン停止回数が設定値に達していないときにはオーバヒート時エンジン保護制御を行わせるが、エンジンのオーバヒートが検出されたときに記憶されたエンジン停止回数が設定値に達しているときには直ちにエンジンの運転を禁止し、エンジンの温度がオーバヒート判定温度よりも低い温度に低下したことが検出されたときにエンジン停止回数の記憶内容をクリアして運転を許可する。
【0029】
図1は本発明の制御方法を実施するために用いる制御装置のハードウェアの構成例を示したものである。同図において、1は消防ポンプを駆動するエンジンに取り付けられた磁石発電機で、この発電機は、一端が接地された発電コイル1aを有している。2は一次コイル2a及び二次コイル2bを有して、両コイルの一端が接地された点火コイル、3は点火コイル2の一次コイル2aの非接地側端子に一端が接続されたコンデンサ、4は発電コイル1aの非接地側の端子とコンデンサ3の他端との間にアノードを発電コイル1a側に向けて接続されたダイオードである。コンデンサ3の他端にはカソードが接地されたサイリスタ5のアノードが接続され、サイリスタ5のゲートカソード間には抵抗6が接続されている。
【0030】
この例では、発電コイル1aと、点火コイル2と、コンデンサ3と、ダイオード4と、サイリスタ5と抵抗6とにより周知のコンデンサ放電式(CDI式)の点火回路が構成され、点火コイル2の二次コイル2bの非接地側端子が高圧コードを通して、ポンプ駆動用エンジンの気筒に取り付けられた点火プラグ7の非接地側端子に接続されている。サイリスタ5には、エンジンの点火時期に後記する制御ユニットからトリガ信号が与えられる。
【0031】
この点火装置においては、発電コイル1aに誘起する交流電圧の一方の半サイクルの電圧でダイオード4と点火コイルの一次コイル2aとを通してコンデンサ3が図示の極性に充電される。エンジンの点火時期にサイリスタ5のゲートにトリガ信号が与えられると、サイリスタ5が導通するため、コンデンサ3に蓄積された電荷がサイリスタ5と点火コイルの一次コイル2aとを通して放電する。この放電により一次コイル2aに高い電圧が誘起し、この電圧が点火コイルの一次、二次間の昇圧比により更に昇圧されて二次コイル2bに点火用の高電圧が誘起する。この高電圧は点火プラグ7に印加されるため、点火プラグ7で火花放電が生じ、エンジンが点火される。
【0032】
本実施形態では、エンジンがオーバヒートした際に点火装置の点火動作を停止させることによりエンジンを失火させてエンジンを停止させる。そのため本実施形態では、サイリスタ5の両端に点火動作停止用スイッチ8が並列に接続されている。点火動作停止用スイッチ8は、リレーや半導体スイッチ等のオンオフ制御が可能なスイッチ素子からなっていて、エンジンが正常に運転されているときにはオフ状態に保持され、エンジンを停止させる際にオン状態にされる。点火動作停止用スイッチ8の制御端子8aに駆動信号が与えられて該スイッチがオン状態にされると、発電コイル1aが電圧を誘起してもコンデンサ3が充電されなくなるため、点火動作は行われなくなる。
【0033】
なお点火動作停止用スイッチ8は、該スイッチの動作により点火動作を停止させるように設ければよく、その設け方は図示の例に限定されない。例えば、発電コイル1の両端に点火動作停止用スイッチ8を接続するようにしてもよい。
【0034】
10はCPU,ROM,RAM,タイマなどを有するマイクロコンピュータ11を備えた制御ユニットで、マイクロコンピュータ11には書き換えが可能な不揮発性メモリであるEEPROM12が接続されている。13は、エンジンに取り付けられた信号発生器に設けられて、エンジンの回転に同期してパルス信号を発生するピックアップコイル、14はエンジンの冷却水温度等からエンジンの温度を検出する温度センサで、ピックアップコイル13の出力及び温度センサ14の出力はそれぞれインターフェース(I/F)15及び16を通してマイクロコンピュータ11の入力ポートA1及びA2に入力されている。マイクロコンピュータ11は出力ポートB1及びB2を有していて、エンジンの点火時期に出力ポートB1からダイオード17を通して点火装置のサイリスタ5のゲートにトリガ信号が与えられる。またオーバヒート発生時にエンジンを停止する際に出力ポートB2から点火動作停止用スイッチ8の制御端子8aに駆動信号(スイッチ8をオン状態にするための信号)が与えられる。
【0035】
18は消防ポンプに搭載されたバッテリで、バッテリ18から電源スイッチ19と電源回路20とを通してマイクロコンピュータ11の電源端子に電源電圧が与えられている。マイクロコンピュータ11は、ROMに記憶されたプログラムを実行することにより消防用エンジンポンプ用制御装置を構成するために必要な各種の手段を構成する。
【0036】
図2は、ハードウェアとマイクロコンピュータが構成する各種の手段とにより構成される本実施形態の制御装置の全体的構成を示したものである。図2において20はポンプ駆動用エンジン、21はエンジン20により駆動されて消火用の水を汲み上げるポンプで、エンジン20は、ポンプ21が汲み上げた水の一部を冷却水として冷却されるように構成されている。エンジン20及びポンプ21により消防用エンジンポンプが構成されている。22は点火回路で、この点火回路は、図1に示した発電コイル1aと、点火コイル2と、コンデンサ3と、ダイオード4と、サイリスタ5と、抵抗6とにより構成されている。
【0037】
また23は点火回路22のサイリスタ5にトリガ信号を与える時期(点火時期)を制御する点火時期制御手段、24は温度センサ14により検出されたエンジン温度が設定されたオーバヒート判定温度以上になったときにエンジンのオーバヒートを検出するオーバヒート検出手段、25はエンジンのオーバヒートが検出されたときに一定の猶予時間の計測を行う猶予時間計測手段、26はオーバヒート時エンジン保護制御手段、27はエンジン停止回数記憶手段、28はオーバヒート時エンジン運転禁止手段、29は記憶内容リセット手段で、これらの手段はマイクロコンピュータ11により構成される。
【0038】
上記の手段のうち、オーバヒート時エンジン保護制御手段26は、猶予時間計測手段25が猶予時間の計測を行っている間にオーバヒートが検出されなくなったときには該猶予時間の計測が完了した後もエンジンの運転を継続させ、該猶予時間の計測が完了した時になおエンジンのオーバヒートが検出されているときにエンジンを停止させる制御を行う手段であり、エンジン停止回数記憶手段27は、オーバヒート時エンジン保護制御手段がエンジンを停止させた回数を書き換えが可能な不揮発性メモリにエンジン停止回数として記憶する手段である。
【0039】
オーバヒート時エンジン運転禁止手段28は、エンジン停止回数記憶手段27により記憶されたエンジン停止回数が設定値に達している状態でエンジンのオーバヒートが検出されたときに直ちにエンジンの運転を禁止する手段であり、記憶内容リセット手段29は、温度センサによりエンジンの温度がオーバヒート判定温度よりも低い温度に低下したことが検出された時にエンジンの運転を許可するためにエンジン停止回数記憶手段によるエンジンの停止回数の記憶内容をクリアする手段である。
【0040】
マイクロコンピュータ11は、消防ポンプのオペレータが電源スイッチ19をオンにしたときに起動して、メインルーチンを開始し、エンジンの回転速度の演算、エンジンの点火時期の演算、エンジンの回転が確立したか否かの判定等を行う。エンジンの回転速度は、ピックアップコイル13が発生するパルス信号の周期から演算される。エンジンの回転が確立したか否かの判定は、エンジンの回転速度が設定された始動完了判定速度以上になったか否かを見ることにより行われ、エンジンの回転速度が始動完了判定速度以上になったときにエンジン運転確立フラグがセットされる。またエンジンの回転速度が始動完了判定速度よりも低くなってエンジンが停止したと判定されたときにエンジン運転確立フラグがリセットされる。
【0041】
マイクロコンピュータ11はまた、演算された点火時期が検出された時にポートB1から点火装置のサイリスタ5にトリガ信号を与えて、点火動作を行わせる。点火時期を演算する過程及びサイリスタ5にトリガ信号を与える過程により点火時期制御手段23が構成される。
【0042】
マイクロコンピュータはまた、微少時間毎にメインルーチンに割り込みをかけて、図3に示す処理を実行する。図3に示した処理が開始されると、先ずステップS101でエンジンの回転が確立しているか否か(エンジン運転確立フラグがセットされているか否か)を確認し、エンジンの回転が確立していないときにはメインルーチンに戻る。エンジンの回転が確立しているときには、ステップS102に移行して温度センサにより検出されたエンジンの温度Teがオーバヒート判定温度Tov以上であるか否かを判定する。その結果、エンジンの温度がオーバヒート判定温度よりも低いと判定されたときには、ステップS103に進んでオーバヒートによるエンジン停止回数記憶内容(EEPROM12に記憶されている)をリセットする。ステップS102により、温度センサにより検出されたエンジン温度が設定されたオーバヒート判定温度以上になったときにエンジンのオーバヒートを検出するオーバヒート検出手段が構成され、ステップS103により図2に示された記憶内容リセット手段29が構成される。
【0043】
図3に示す処理において、ステップS102でエンジンの温度Teがオーバヒート判定温度Tov以上であると判定されたときには、ステップS104に進んで、EEPROM12に記憶されているオーバヒートによるエンジンの停止回数が設定値以上か否かを判定する。その結果、オーバヒートによるエンジンの停止回数が設定値未満であると判定されたときにはステップS105に進んで猶予時間計測用タイマをスタートし、一定の猶予時間の計測を開始する。次いでステップS106で猶予時間の計測が完了したか否かを判定し、完了していない場合にはメインルーチンに戻る。
【0044】
ステップS106で猶予時間の計測が完了していると判定されたときには、ステップS107に進んでマイクロコンピュータのポートB2から点火動作停止用スイッチ8に駆動信号を与えて点火動作停止用スイッチ8をオン状態にし、点火装置の動作を停止させる。これによりエンジンを停止させてエンジンポンプの運転を停止する。
【0045】
ステップS107でエンジンポンプの運転を停止させた後、ステップS108でEEPROM12に記憶するオーバヒートによるエンジン停止回数を1だけインクリメントし、メインルーチンに戻る。
【0046】
ステップS106により猶予時間計測手段25が構成され、ステップS104、S106及びS107により、猶予時間計測手段25が猶予時間の計測を行っている間にオーバヒートが検出されなくなったときには猶予時間の計測が完了した後もエンジンの運転を継続させ、猶予時間の計測が完了した時になおエンジンのオーバヒートが検出されているときにエンジンを停止させる制御を行うオーバヒート時エンジン保護制御手段26が構成される。またステップS108によりエンジン停止回数記憶手段27が構成される。
【0047】
図3に示した処理において、ステップS104でEEPROM12に記憶されたエンジン停止回数が設定値以上になっていると判定された時には、ステップS109に移行して、猶予時間の計測を行うことなく、直ちに点火動作停止用スイッチ8に駆動信号を与えてスイッチ8をオン状態にすることによりエンジンを停止する。ステップS102,S104及びS109により、エンジン停止回数記憶手段により記憶されたエンジン停止回数が設定値に達している状態でエンジンのオーバヒートが検出されたときに直ちにエンジンの運転を禁止するオーバヒート時エンジン運転禁止手段28が構成される。
【0048】
本実施形態においては、消防用エンジンポンプが運転されているときに、図3に示した処理が微少時間間隔で実行され、この処理においてエンジン温度がオーバヒート判定温度以上であると判定されたときに、エンジン停止回数記憶手段27により記憶されているオーバヒートによるエンジンの停止回数が設定値以上であるか否かが判定され、その判定の結果、エンジン停止回数記憶手段27により記憶されているオーバヒートによるエンジンの停止回数が設定値未満であると判定されたときには、一定の猶予時間が経過するのを待ってエンジンを停止させるとともに、エンジン停止回数記憶手段27により記憶するエンジンの停止回数を1だけインクリメントする。
【0049】
エンジンが停止した際には、ポンプが水を汲み上げる状態にあるか否か、ポンプからエンジンに冷却水を供給する通路にゴミが詰まっていないか否かなど、エンジンのオーバヒートが生じた原因を調べ、その原因を解消するための措置を講じてからエンジンを再起動する。エンジンを再起動した後、エンジンの温度がオーバヒート判定温度以上であるが、エンジン停止回数記憶手段27により記憶されているエンジンの停止回数が設定値未満である場合には、猶予時間計測手段25により猶予時間が計測されるのを待つ。エンジンがオーバヒートした原因が解消している場合には、猶予時間の計測が行われている間にエンジンが冷却されるため、猶予時間の計測が行われている間に実行される図3の処理のステップS102において、エンジンの温度Teがオーバヒート判定温度Tovよりも低いと判定される。従ってステップS103でメモリEEPROM12の記憶内容がクリアされ、エンジンの運転が継続される。
【0050】
エンジンを再起動した後、猶予時間の計測が完了した時点で未だエンジンの温度がオーバヒート判定温度以上であると判定されたときには、ステップS107でエンジンを停止させるとともに、ステップS108でエンジン停止回数記憶手段により記憶するエンジンの停止回数を1だけインクリメントする。エンジンのオーバヒートの原因を解消するための措置が正しく講じられている場合には、エンジンの再起動でエンジンの温度がオーバヒート判定温度よりも低くならない場合でも、エンジンの再起動を繰り返すことにより、猶予時間を計測している間にエンジンが冷却されるため、エンジンの連続運転が可能な状態になる。エンジンのオーバヒートの原因が解消していない場合には、エンジンの再起動を繰り返しているうちに、ステップS104でオーバヒートによるエンジンの停止回数が設定値に達していると判定されるため、エンジンの温度がオーバヒート判定温度よりも低い温度まで低下するまでの間エンジンの再起動が禁止され、エンジンの焼き付きが防止される。
【0051】
本実施形態によれば、エンジンのオーバヒートが発生したときに、設定された回数だけエンジンの再起動を許可することにより、オーバヒートの原因を解消してエンジンを冷却することを可能にし、オーバヒートの原因がどうしても解消しないときには、エンジンの再起動が設定された回数繰り返された時点でエンジンの再起動を禁止するので、エンジンのオーバヒートによりポンプの運転が中断する時間を短くすることができるだけでなく、エンジンのオーバヒートの原因が解消していないままの状態でエンジンの再起動が何度も繰り返されて、エンジンが焼き付くのを防ぐことができる。
【0052】
上記の実施形態では、エンジンのオーバヒートが生じたときに、設定された回数だけエンジンの再起動を許可することにより、オーバヒートの原因が解消されてエンジンが冷却される機会を与え、エンジンの再起動が設定回数繰り返されてもオーバヒートの原因が解消されないときにエンジンの再起動を禁止してエンジンの焼き付きを防止するようにしているが、短い時間の間にエンジンのオーバヒートの検出が繰り返されたときに、エンジンの再起動を禁止することによっても、ポンプの運転が中断する時間を短くしつつ、エンジンの焼き付きを防止することができる。
【0053】
即ち、オーバヒート時エンジン保護制御によりエンジンが停止させられたときに、エンジンが停止した原因がオーバヒートであることを書き換えが可能な不揮発性メモリに記憶しておき、エンジンが始動した後設定された判定時間内にオーバヒートが検出されたときにメモリの内容を見て、エンジンが停止した原因がオーバヒートであることが該メモリに記憶されているときに直ちにエンジンを停止させ、エンジンの温度がオーバヒート判定温度よりも低い温度に低下したときにエンジンの運転を許可するためにメモリの記憶内容をクリアするようにしても、エンジンの焼き付きを防止してエンジンの保護を的確に図りながら、エンジンのオーバヒートによりポンプの運転が中断する時間を短くすることができる。
【0054】
上記のように、短い時間の間にエンジンのオーバヒートの検出が繰り返されたときに、エンジンの運転を禁止する制御を行う制御装置の構成例を図4に示した。図4に示した制御装置においては、図2に示したエンジン停止回数記憶手段27に代えて、エンジン停止原因記憶手段30が設けられるとともに、判定時間計測手段31が更に設けられている。
【0055】
判定時間計測手段31は、エンジンの始動時に計時動作を開始してオーバヒート時エンジン保護制御手段26がエンジンを停止する前に計測する猶予時間よりも長く設定された判定時間を計測する手段である。またエンジン停止原因記憶手段30は、オーバヒート時エンジン保護制御手段26がエンジンを停止させた時にエンジンの停止原因がオーバヒートであることを書き換えが可能な不揮発性メモリに記憶する手段である。
【0056】
図4に示した制御装置においては、温度センサ14によりエンジンの温度がオーバヒート判定温度よりも低くなったことが検出された時に、記憶内容リセット手段29がエンジン停止原因記憶手段30の記憶内容をクリアするように構成されている。
【0057】
またオーバヒート時エンジン運転禁止手段28は、判定時間計測手段31が判定時間の計測を行っている間にオーバヒートが検出された時にメモリの内容を見て、エンジンの停止原因がオーバヒートであることがメモリに記憶されているときにエンジンの運転を禁止するように構成される。
【0058】
図4に示した制御装置を構成するためにマイクロコンピュータ11が微少時間間隔で実行する処理のアルゴリズムの一例を図5に示した。図5に示した処理が開始されると、先ずステップS201でエンジンの回転が確立しているか否か(エンジン運転確立フラグがセットされているか否か)を確認し、エンジンの回転が確立していないときにはメインルーチンに戻る。エンジンの回転が確立しているときには、ステップS202に進んで判定時間計測用タイマをスタートさせ、判定時間の計測を開始させる。次いでステップS203で温度センサにより検出されたエンジンの温度Teがオーバヒート判定温度Tov以上であるか否かを判定する。その結果、エンジンの温度がオーバヒート判定温度よりも低いと判定されたときには、ステップS204に進んでオーバヒート時エンジン停止フラグ(EEPROM12に記憶されている)を0にリセットする。ステップS203及びS204により図4に示された記憶内容リセット手段29が構成される。
【0059】
図5に示す処理において、ステップS203でエンジンの温度Teがオーバヒート判定温度Tov以上であると判定されたときには、ステップS205に進んで、判定時間計測用タイマが判定時間の計測を完了しているか否かを判定する。その結果、判定時間の計測が完了していると判定されたときには、ステップS206に進んで猶予時間計測用タイマをスタートし、一定の猶予時間の計測を開始する。次いでステップS207で猶予時間の計測が完了したか否かを判定し、完了していない場合にはメインルーチンに戻る。
【0060】
ステップS207で猶予時間の計測が完了していると判定されたときには、ステップS208に進んでマイクロコンピュータのポートB2から点火動作停止用スイッチ8に駆動信号を与えてスイッチ8をオン状態にし、点火装置の動作を停止させる。これによりエンジンを停止させてエンジンポンプの運転を停止する。
【0061】
ステップS208でエンジンポンプの運転を停止させた後、ステップS209でEEPROM12に記憶するオーバヒート時エンジン停止フラグを「1」にセットし、メインルーチンに戻る。
【0062】
ステップS205ないしS208により、温度センサによりエンジンの温度がオーバヒート判定温度に達したことが検出された時刻から一定の猶予時間が経過した時にエンジンを停止させるオーバヒート時エンジン保護制御手段24が構成され、ステップS209により、オーバヒート時エンジン停止手段がエンジンを停止させた時にエンジンの停止原因がオーバヒートであることを書き換えが可能な不揮発性メモリに記憶するエンジン停止原因記憶手段28が構成される。
【0063】
図5に示した処理において、ステップS205でエンジンが始動した後判定時間が経過していないと判定されたときには、ステップS210に進んでオーバヒート時エンジン停止フラグが「1」にセットされているか否かを判定する。その結果、オーバヒート時エンジン停止フラグがセットされていないときには、ステップS206に移行して猶予時間の計測を開始させる。ステップS210でオーバヒート時エンジン停止フラグがセットされていると判定されたときには、ステップS211に進んで、直ちに点火動作停止用スイッチ8に駆動信号を与えてスイッチ8をオン状態にすることによりエンジンを停止して、エンジンの温度がオーバヒート判定温度よりも低い温度に低下するまでの間エンジンの運転を禁止する。
【0064】
本実施形態においては、消防用エンジンポンプが運転されているときに、図5に示した処理が微少時間間隔で実行される。この処理においてエンジン温度がオーバヒート判定温度以上であると判定されたときに、判定時間計測用タイマが判定時間の計測を完了したか否かを判定する。その判定の結果、判定時間の計測が完了していると判定されたときには、猶予時間計測用タイマをスタートさせ、一定の猶予時間が経過するのを待ってエンジンを停止させるとともに、オーバヒート時エンジン停止フラグをセットする。
【0065】
エンジンが停止した際には、ポンプが水を汲み上げる状態にあるか否か、ポンプからエンジンに冷却水を供給する通路にゴミが詰まっていないか否かなど、エンジンのオーバヒートが生じた原因を調べ、その原因を解消するための措置を講じてからエンジンを再起動する。エンジンが始動した後設定された判定時間の計測が完了する前にオーバヒートが検出されたときには、メモリ12の内容を見て、エンジンが停止した原因がオーバヒートであることが該メモリに記憶されている(オーバヒート時エンジン停止フラグがセットされている)か否かを判定する。その結果、エンジンが停止した原因がオーバヒートであることが該メモリに記憶されているときには直ちにエンジンを停止させる。
【0066】
エンジンを再起動した後、エンジンの温度がオーバヒート判定温度よりも低い温度に低下したことが検出されたときにステップS204でメモリ12の記憶内容をクリア(オーバヒート時エンジン停止フラグをリセット)してエンジンの運転を許可する。
【0067】
エンジンを再起動した後、判定時間の計測が完了した後にエンジンの温度がオーバヒート判定温度以上であると判定された時には、猶予時間計測手段に猶予時間の計測を開始させ、猶予時間の計測が完了したときにエンジンを停止させるとともに、オーバヒート時エンジン停止フラグをセットする。
【0068】
本実施形態によれば、オーバヒートの検出によりエンジンが停止したときに、エンジンが停止した原因がオーバヒートであることを書き換えが可能な不揮発性メモリに記憶しておいて、エンジンが始動した後設定された判定時間内にオーバヒートが検出されたときにメモリの内容を見て、エンジンが停止した原因がオーバヒートであることが該メモリに記憶されているときにエンジンの運転を禁止し、エンジンの温度がオーバヒート判定温度よりも低い温度に低下したときにメモリの記憶内容をクリアしてエンジンの運転を許可するので、火災現場の過酷な状況下で、エンジンのオーバヒートが発生したときに、その原因を除去しないままでエンジンの再起動が何度も繰り返されて、エンジンが焼き付くのを防ぐことができる。
【0069】
図3に示した例では、エンジンを再起動した後に、エンジン温度からオーバヒートを検出する過程と、記憶されているオーバヒートによるエンジンの停止回数が設定値に達しているか否かの判定を行う過程とを行って、オーバヒートによるエンジンの停止回数が設定値に達している状態でオーバヒートが検出されたときに一旦起動させたエンジンを停止させることによりエンジンの運転を禁止するようにしているが、マイクロコンピュータが実行するメインルーチンの最初にエンジンの温度を読み込んで読み込んだ温度がオーバヒート判定温度以上であるか否かの判定を行う過程と、記憶されているオーバヒートによるエンジンの停止回数が設定値に達しているか否かの判定を行う過程とを設けておいて、これらの過程でオーバヒートが検出され、かつエンジンの停止回数が既に設定値に達していると判定されたときに直ちに点火動作停止用スイッチ8をオン状態にしてエンジンの再起動を禁止するようにしてもよい。つまり、オーバヒートが検出され、かつエンジンの停止回数が既に設定値に達していると判定されたときには、エンジンの再起動自体を禁止することによりエンジンの運転を禁止するようにしてもよい。
【0070】
上記の実施形態では、書き換えが可能な不揮発性メモリとしてEEPROMを用いたが、フラッシュメモリ等の他の書き換えが可能な不揮発性メモリを用いてもよいのはもちろんである。
【0071】
上記の実施形態では、エンジンを点火する装置としてCDI式の点火装置を用いたが、他の形式の点火装置を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の実施形態で用いるハードウェアの構成例を示した構成図である。
【図2】本発明の一実施形態において、マイクロコンピュータにより構成される手段を含む制御装置の全体的な構成を示したブロック図である。
【図3】図2に示した各種の手段を構成するためにマイクロコンピュータに実行させる処理のアルゴリズムの一例を示したフローチャートである。
【図4】本発明の他の実施形態において、マイクロコンピュータにより構成される手段を含む制御装置の全体的な構成を示したブロック図である。
【図5】図4に示した各種の手段を構成するためにマイクロコンピュータに実行させる処理のアルゴリズムの一例を示したフローチャートである。
【符号の説明】
【0073】
1 磁石発電機
2 点火コイル
3 コンデンサ
10 制御ユニット
11 マイクロコンピュータ
12 EEPROM(書き換えが可能な不揮発性メモリ)
13 ピックアップコイル
14 温度センサ
22 点火回路
24 オーバヒート検出手段
25 猶予時間計測手段
26 オーバヒート時エンジン保護制御手段
27 エンジン停止回数記憶手段
28 オーバヒート時エンジン運転禁止手段
29 記憶内容リセット手段
30 エンジン停止原因記憶手段
31 判定時間計測手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプが汲み上げた水の一部をポンプ駆動用エンジンの冷却水として用いるように構成された消防用エンジンポンプの前記エンジンの温度を検出し、検出されたエンジン温度が設定されたオーバヒート判定温度以上になったことにより前記エンジンのオーバヒートが検出されたときに一定の猶予時間の計測を行って、該猶予時間の計測が行われている間に前記オーバヒートが検出されなくなったときには該猶予時間の計測が完了した後も前記エンジンの運転を継続させ、該猶予時間の計測が完了した時になお前記エンジンのオーバヒートが検出されているときに前記エンジンを停止させるオーバヒート時エンジン保護制御を行う消防用エンジンポンプのエンジン制御方法において、
前記オーバヒート時エンジン保護制御によりエンジンが停止させられた回数をエンジン停止回数として書き換えが可能な不揮発性メモリに記憶しておき、
前記エンジンのオーバヒートが検出されたときに記憶されたエンジン停止回数が設定値に達していないときには前記オーバヒート時エンジン保護制御を行わせるが、前記エンジンのオーバヒートが検出されたときに記憶されたエンジン停止回数が設定値に達しているときには直ちに前記エンジンの運転を禁止し、
前記エンジンの温度が前記オーバヒート判定温度よりも低い温度に低下したことが検出されたときに前記エンジン停止回数の記憶内容をクリアすること、
を特徴とする消防用エンジンポンプのエンジン制御方法。
【請求項2】
ポンプが汲み上げた水の一部をポンプ駆動用エンジンの冷却水として用いるように構成された消防用エンジンポンプの前記エンジンの温度を検出する温度センサと、前記温度センサにより検出されたエンジン温度が設定されたオーバヒート判定温度以上になったときに前記エンジンのオーバヒートを検出するオーバヒート検出手段と、前記エンジンのオーバヒートが検出されたときに一定の猶予時間の計測を行う猶予時間計測手段と、前記猶予時間計測手段が前記猶予時間の計測を行っている間に前記オーバヒートが検出されなくなったときには該猶予時間の計測が完了した後も前記エンジンの運転を継続させ、該猶予時間の計測が完了した時になお前記エンジンのオーバヒートが検出されているときに前記エンジンを停止させる制御を行うオーバヒート時エンジン保護制御手段とを備えた消防用エンジンポンプのエンジン制御装置において、
前記オーバヒート時エンジン保護制御手段がエンジンを停止させた回数を書き換えが可能な不揮発性メモリにエンジン停止回数として記憶するエンジン停止回数記憶手段と、
前記エンジン停止回数記憶手段により記憶されたエンジン停止回数が設定値に達している状態で前記エンジンのオーバヒートが検出されたときに前記エンジンの運転を禁止するオーバヒート時エンジン運転禁止手段と、
前記温度センサによりエンジン温度が前記オーバヒート判定温度よりも低い温度に低下したことが検出された時に前記エンジンの運転を許可するために前記エンジン停止回数記憶手段によるエンジンの停止回数の記憶内容をクリアする記憶内容リセット手段と、
を具備してなる消防用エンジンポンプのエンジン制御装置。
【請求項3】
ポンプが汲み上げた水の一部をポンプ駆動用エンジンの冷却水として用いるように構成された消防用エンジンポンプの前記エンジンの温度を検出し、検出されたエンジン温度が設定されたオーバヒート判定温度以上になったことにより前記エンジンのオーバヒートが検出されたときに一定の猶予時間の計測を行って、該猶予時間の計測が行われている間に前記オーバヒートが検出されなくなったときには該猶予時間の計測が完了した後も前記エンジンの運転を継続させ、該猶予時間の計測が完了した時になお前記エンジンのオーバヒートが検出されているときに前記エンジンを停止させるオーバヒート時エンジン保護制御を行う消防用エンジンポンプのエンジン制御方法において、
前記オーバヒート時エンジン保護制御により前記エンジンが停止させられたときに、エンジンが停止した原因がオーバヒートであることを書き換えが可能な不揮発性メモリに記憶しておき、
前記エンジンが始動した後設定された判定時間内に前記オーバヒートが検出されたときに前記メモリの内容を見て、エンジンが停止した原因がオーバヒートであることが該メモリに記憶されているときに直ちに前記エンジンを停止させ、
前記エンジンの温度が前記オーバヒート判定温度よりも低い温度に低下したときに前記エンジンの運転を許可するために前記メモリの記憶内容をクリアすること、
を特徴とする消防用エンジンポンプのエンジン制御方法。
【請求項4】
ポンプが汲み上げた水の一部をポンプ駆動用エンジンの冷却水として用いるように構成された消防用エンジンポンプの前記エンジンの温度を検出する温度センサと、前記温度センサにより検出されたエンジン温度が設定されたオーバヒート判定温度以上になったときに前記エンジンのオーバヒートを検出するオーバヒート検出手段と、前記エンジンのオーバヒートが検出されたときに一定の猶予時間の計測を行う猶予時間計測手段と、前記猶予時間計測手段が前記猶予時間の計測を行っている間に前記オーバヒートが検出されなくなったときには該猶予時間の計測が完了した後も前記エンジンの運転を継続させ、該猶予時間の計測が完了した時になお前記エンジンのオーバヒートが検出されているときに前記エンジンを停止させる制御を行うオーバヒート時エンジン保護制御手段とを備えた消防用エンジンポンプのエンジン制御装置において、
前記エンジンの始動時に計時動作を開始して設定された判定時間の計測を行う判定時間計測手段と、
前記オーバヒート時エンジン保護制御手段がエンジンを停止させた時に、エンジンの停止原因がオーバヒートであることを書き換えが可能な不揮発性メモリに記憶するエンジン停止原因記憶手段と、
前記判定時間計測手段が前記判定時間の計測を行っている間に前記オーバヒートが検出された時に前記メモリの内容を見て、エンジンの停止原因がオーバヒートであることが前記メモリに記憶されているときに前記エンジンの運転を禁止するオーバヒート時エンジン運転禁止手段と、
前記温度センサにより前記エンジンの温度が前記オーバヒート判定温度よりも低い温度に低下したことが検出された時に前記エンジンの運転を許可するために前記停止原因記憶手段の記憶内容をクリアする記憶内容リセット手段と、
を具備してなる消防用エンジンポンプのエンジン制御装置。
【請求項5】
前記オーバヒート時エンジン保護制御手段及びオーバヒート時エンジン運転禁止手段は、前記エンジンを点火する点火装置の点火動作を停止させることにより前記エンジンを停止させるように構成されている請求項3または4に記載の消防用エンジンポンプのエンジン制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−278225(P2007−278225A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−107615(P2006−107615)
【出願日】平成18年4月10日(2006.4.10)
【出願人】(000109945)トーハツ株式会社 (8)
【Fターム(参考)】