説明

液体を含む容器の防弾用防護デバイスおよび同デバイスを装備する容器

【課題】常温および標準圧力条件において使用可能なモータの燃料、潤滑オイル、油圧オイルおよび重質炭化水素溶剤より成る群から選択される液体を含む容器の壁の外面へ取り付けるための防弾用セルフシール多層防護デバイス、ならびに前記デバイスを装備する前記容器を提供する。
【解決手段】このデバイスは、壁に近い内側および外側の複数のゴム層を備え、外側の層のうちの少なくとも1つは、液体に接触して膨潤することによって壁の穿孔をセルフシールするための多孔質ゴムから製造され、これらの隣接する層のうちの少なくとも2つは、繊維構造体によって互いに接合される。繊維構造体は不織繊維を基礎とする少なくとも1枚のシートを備え、このシートは、液体を吸収し、かつシートに接触している多孔質ゴム層の表面全体において吸収された液体の拡散を促進することと、その膨潤を促進しかつ増大することにより、セルフシールを最短時間で得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、常温および標準圧力条件で使用可能なモータの燃料、潤滑オイル、油圧オイルおよび重質炭化水素溶剤より成る群から選択される液体を含む容器の外壁面へ取り付けるための防弾用多層防護デバイスと、前記デバイスを装備する容器とに関する。本発明は、このような発砲に起因する容器の穿孔のセルフシールに適用され、かつ具体的には、これらの容器が自動車用ディーゼル燃料を含む場合のセルフシールに適用される。
【背景技術】
【0002】
壁に多層セルフシールデバイスを装備することによって、弾丸の衝撃により壁が穿孔された場合にガソリンタンクを防護する方法は長い間知られている。このセルフシールは、概して、穿孔を介して漏れているガソリンに接触しているデバイスにより構成される1つまたは複数の多孔質ゴム(即ち、気泡ゴムとも呼ばれる)の層の膨潤によって得られる。その理由は、この膨潤が、ゴム内でのガソリンの広がりによって生じる容積の高速かつ著しい増大(典型的な膨潤率は天然の多孔質ゴムで300%から800%までの間)により、穿孔のほぼ瞬間的なプラッギングを可能にし、これにより、タンクからのガソリンの漏れを防止する、または最小限に抑えることにある。これらの多孔質ゴム層の間には、1つまたは複数の織物層または織物シートが差し込まれる場合がある。このような防護デバイスの説明に関しては、例えば、特許文献1の文書GB−545 504および特許文献2の文書GB−A−2 054 457を引用することができる。
【0003】
また、特許文献3の文書US−A−4 336 291も、専ら離隔された位置において互いに接合されるこれらの層の弾性変形によってこのような穿孔を塞ぐゴム層の使用を教示している。これらの層は、必ずしも燃料に接触している膨潤シートではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国特許出願公開第545 504号
【特許文献2】独国特許出願公開第054 457号
【特許文献3】米国特許出願公開第4 336 291号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これらの既知のデバイスにおける主たる欠点は、これらが、ガソリンではなく自動車用ディーゼル等のより重い燃料を含む場合に、タンクの高速シーリングを許容しないことにある。実際に、ディーゼルは、ガソリンより遙かに低い多孔質ゴム内拡散率を有することが分かっていて、よって、ディーゼルにおける多孔質天然ゴムの膨潤率は典型的には100%から200%までの範囲内であり、かつ穿孔は数分後にしか塞がれない。ディーゼルの漏れを最小限に抑えることに関して、これでは明らかに不満足である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目的は、具体的にはこの欠点を矯正するように機能する、常温および標準圧力条件において使用可能なモータの燃料、潤滑オイル、油圧オイルおよび重質炭化水素溶剤より成る群から選択される液体を含む容器の壁の外面へ取り付けるための防弾用多層防護デバイスを提案することにあり、前記デバイスは、前記壁に対して近い内側およびより外側の幾つかのゴム層を備え、その最も外側のゴム層または前記より外側のゴム層のうちの少なくとも1つは、液体に接触して膨潤することにより前記壁の穿孔をセルフシールするための多孔質ゴムにより形成され、これらの隣接する少なくとも2つのゴム層は、間に差し込まれる繊維構造体によって互いに接合される。
【0007】
この目的に添って、本発明による防護デバイスは、間に差し込まれる1または複数の繊維構造体が不織繊維を基礎とする少なくとも1枚のシートを備える類のものであり、前記シートは、前記液体を吸収し、かつ、前記シートに接触している多孔質ゴムの前記または各層の表面全体における吸収された液体の拡散を促進することと、その膨潤を促進しかつ増大することと、これにより、セルフシールを最短時間で得ることとに適する。
【0008】
本発明の文脈において、ゴムの「内側の」層は、容器の壁の最も近くであるように適合化されたデバイスのゴム層を意味する。この内側の層は、好適には多孔質ゴムで製造されるが、必要であればコンパクトゴムで製造される。
【0009】
本発明の文脈において、「より外側の」ゴム層は、容器の壁上に組み立てられた後にこの内側の層の外側に位置づけられるデバイスの1つまたは複数の層を意味する。これは、デバイスが僅か2つのゴム層を備える場合には、前記層は最も外側の層であり、この場合はこの単一の外側層が多孔質ゴムで製造される。もしくは、デバイスが少なくとも3つのゴム層を備える好適な場合には、前記層は1つまたは複数の中間層であり、この場合はデバイスの少なくとも1つまたは複数の各中間層、および/または、最も外側の層が多孔質ゴムで製造される。
【0010】
不織繊維を基礎とする(即ち、専ら、または事実上これらの繊維から成り、その表面全体は内側および外側の2層と密に接触している、または2つの中間層の間もしくは中間層と外側の層との間に存在している)本発明によるこの差込みシートが、穿孔事態において、この液体との間に、かつゴムの広い面積に渡って急速な表面接触を生成することにより、上述の液体を急速かつその質量全体に渡って吸収する働きをすることは留意されるべきである。よって、不織繊維を基礎とするこのシートは、吸収された液体を瞬時に、かつ大量に隣接する多孔質ゴムに接触させ、これにより、この多孔質ゴムの超高速かつ実質的膨潤を生じさせて穿孔を瞬く間に塞ぐ働きをする、ドレインの役割を果たす。
【0011】
具体的には、本発明による不織差込み構造体は、驚くべきことに、この構造体により吸収されるモータのディーゼル等のディーゼル燃料に接触している多孔質ゴムの膨潤速度を、特にこの不織構造体が全くないこの多孔質ゴムによる前記燃料との接触による膨潤速度に比べて著しく向上させる働きをする。得られる膨潤速度の向上は、ケロシンおよびガソリン等の他の燃料ならびに潤滑オイルおよび油圧オイル等の重質炭化水素に関しても同じである。
【0012】
本発明の別の特徴によれば、差込み構造体は、毛細管現象および内部浸漬により、前記浸漬より前の前記構造体の質量の200%(即ち、その質量の2倍)より多い質量の前記液体を吸収することに適する。
【0013】
本発明による不織構造体のこの毛細管現象は、液体の容量的吸収およびゴムの反対側の2層の表面におけるその広がりの増大および促進に多大に寄与することは、観察されるべきである。
【0014】
効果的には、差込み構造体は、50g/mから200g/mまでの間の単位面積当たりの質量を有してもよい。また、不織構造体のこの低減された基本重量は、その毛細管現象と組み合わされて、これらのゴム層に接触している液体の容積的吸収および表面での広がりをさらに向上させる働きをすることも観察されるべきである。
【0015】
好適には、差込み構造体は0.5mmから5mmまでの間の厚さを有し、前記差込み構造体を構成する前記シートは、不織紙または例えばブロッタタイプの吸取り紙で形成される。
【0016】
本発明の文脈において、「不織物」とは、繊維を製織以外の化学的または物理的方法によって互いに接合することにより得られるシート、および概して、1988年度版ISO規格9092に従って下記のように定義することができる少なくとも1つの不織物を含む非金属材料を基礎とする、層状にされた、または層状にされない任意の構造体を意味する。これは、ボイル織物から成る製造されたシートであっても、摩擦および/もしくは凝集および/もしくは接着により接合され、指向的に、もしくは無作為に方向づけられた繊維のマットまたは層であってもよい。この不織物は、不連続繊維または連続フィラメントであってもよい天然繊維または化学繊維を基礎とするものであってもよい。
【0017】
本発明による前記または各不織物は、下記を含んでもよい。
【0018】
−例えばセルロース等の天然繊維、および/または
−例えばビスコースまたはガラス繊維等の有機繊維または人工鉱物繊維(即ち、自然界に存在し、織物または他の材料を得るために化学処理に付された製品から製造されたもの)、および/または
−例えばPA6型またはPA6.6型ポリアミド、例えばPET型のポリエステルまたはポリエチレンもしくはポリプロピレン等のポリオレフィン等の織物または他のタイプの熱可塑性ポリマー等の少なくとも1つのポリマーを基礎とする合成繊維(即ち、石炭または石油派生物から完全に化学的方法で製造されたもの)。
【0019】
さらに好適には、差込み構造体は、好適には150g/mから200g/mまでの間の単位面積当たりの質量を有する不織物で形成される1枚のシートから成る。よってこのシートは、具体的にはディーゼル燃料の場合に、毛細管現象および内部浸漬によって、前記浸漬より前の前記構造体の質量の少なくとも500%(即ち、その質量の5倍)より多い質量の前記液体を吸収するように適合化されてもよい。
【0020】
効果的には、このシートを形成する不織物は、毛細管現象により、ディーゼル燃料内への浸漬より前の前記不織物の質量の1000%(即ち、その質量の10倍)を超える質量の前記燃料を吸収するための、好適には「OIL PAD 200」という商品名であるポリプロピレンを基礎とするものであってもよい。
【0021】
本発明のさらなる特徴によれば、前記多孔質ゴム層の各々は、好適には0.2から0.4までの間の比重を有する、開放気泡を有する架橋/膨脹ゴムの合成物から成ってもよい。
【0022】
これらの層内に形成される開放気泡は、同じゴムであるが独立気泡を有する場合に比べて、隣接する不織構造体により広げられる液体に接触してその膨潤をさらに促進する働きをすることは留意されるべきである。
【0023】
デバイスの層の各々(即ち、多孔質ゴムの前記または各層、およびコンパクトゴムの前記または各オプション層の双方)に関して言えば、これは、天然ゴム(NR)、ポリイソプレン(IR)、ポリクロロプレン(CR)、スチレン−ブタジエン共重合体(SBR)、ポリブタジエン(BR)、イソプレン−イソブチレン共重合体(IIR)、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)および例えばNR/SBRまたはNR/EPDM配合等の天然ゴムとこれらのエラストマーのうちの別のものとの配合物より成る群から好適には選択される少なくとも1つのエラストマーを基礎とする。代替として、このエラストマーはシリコーンゴムであってもよいが、この限りではない。
【0024】
各ゴム層の厚さに関しては、これは比較的薄いものであるように準備され、例えば約数mmである。
【0025】
本発明の好適な一実施形態によれば、多孔質ゴムのこれらの層の数は少なくとも3であり、これらは少なくとも2つの前記差込み構造体によって互いに接続され、少なくとも1つの中間層および/または最も外側の層は、各々前記多孔質ゴム層を形成する。
【0026】
さらに好適には、全てのゴム層は、各々が天然ゴムを基礎とする開放気泡を有する架橋/膨脹ゴムの合成物から成る気泡質であってもよいが、任意選択としてSBRまたはEPDM等の別のエラストマーと混合されるタイプの気泡質であってもよい。
【0027】
本発明によるデバイスの全てのゴム層におけるこのような多孔質ゴムの使用が、1つまたは複数のコンパクト(即ち、非多孔質)ゴム層を組み込むデバイスに比べて、その膨潤、延ては穿孔のセルフシールの速度をさらに最適化する働きをすることは留意されるべきである。
【0028】
また、天然ゴムを使用して各ゴム組成物のエラストマー基質の全て、または一部を構成することは、他のゴムを使用するものに比べると、天然ゴムの特に効果的な機械的特性(引裂に対するその耐性およびその弾力性等)に起因して、本発明の好適な一実施形態を示す点も留意されるべきである。
【0029】
本発明のさらなる特徴によれば、デバイスのゴム層は、穿孔事態においてその膨潤を促進するために、これらの層において離隔された予め画定された点においてのみ互いに接合される。この接合は、これらの層の互いの層に対する可変変形を許容するために、好適には、これらの点の各々においてこれら全ての層を通過する、ステープル、リベットまたはステッチ等の機械的手段によって、または代替として、前記または各差込み構造体の各面へ適用されるオフセットされた接着点によって得られる。
【0030】
効果的には、例えば、容器の機械的強度、剛性および/または耐火性を高めるために、前記最も外側のゴム層の上には、1つまたは複数の外部コーティングが例えば接着によって取り付けられてもよい。
【0031】
本発明による容器は、常温および標準圧力条件において使用可能なモータの燃料、潤滑オイル、油圧オイル(例えば、自動車のパワーステアリング回路または制動回路用)および重質炭化水素溶剤より成る群から選択される液体を含み、具体的には、陸上用、海上用または航空用車両の(車両に取り付けられた状態で静的または動的である)タンク、貯蔵タンクまたはタンク自動車であって、当該容器の境界となる壁の外面の1つは、先の定義によって特徴づけられる防弾用多層防護デバイスで覆われる。
【0032】
上述の定義に一致する、本発明による容器内で使用可能な燃料としては、例えば、自動車用のガソリンまたはディーゼル燃料、海上車両用または陸上車両用の重油および航空車両用または陸上車両用のケロシンを挙げることができる。
【0033】
本発明の別の特徴によれば、この容器は、デバイスの前記内側の層がこの壁に接着され、前記内側の層は、任意選択として中間コーティングで覆われるようなものであってもよい。
【0034】
効果的には、この容器は具体的に、ディーゼル燃料またはガソリンを含む自動車用タンクであってもよく、前記タンクは金属、プラスチックまたは複合材料から製造される。
【0035】
本発明の他の特徴、利点および詳細は、例示のために提供され非限定的である本発明の幾つかの例示的実施形態に関する以下の説明を読めば明らかとなるであろう。説明は、添付の図面に関連して行う。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の例示的な一実施形態による、容器上に設けられる防護デバイスの部分略断面図である。
【図2】本発明の代替実施形態による、容器上に設けられる防護デバイスの部分略断面図である。
【図3】本発明の別の代替実施形態による、容器上に設けられる防護デバイスの部分略断面図である。
【図4】不織シートタイプの本発明による3つの差込み構造体の相対的な質量変動(単位、%)の経時的(単位、分)変化を多孔質ゴム試験片のそれと比較したグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1における例で示される防護デバイス1は、それぞれ開放気泡(open cell)を有する内側および外側の2つの多孔質ゴム層2,3を備える。各多孔質ゴム層2,3は、好適には0.3に近い比重を有する低濃度充填天然ゴムを基礎とし、これらの2つのゴム層2,3は、好適には「OIL PAD 200」の商品名を有するポリプロピレン不織布からなる不織繊維を基礎とする差込みシート4の両側に適用される。シート4を取り囲むこれらのゴム層2,3は、この例では、(均等または不均等に)離隔された位置でこれらゴム層2,3の双方を通過するステープル、リボットまたはステッチ5によって互いに接合される。内側のゴム層2に関して言えば、この内側のゴム層2は、例えば自動車に用いられるディーゼルあるいはガソリンタンク、海上あるいは陸上用車両に用いられる重油タンク、または、航空機あるいは陸上用車両に用いられるケロシンタンク等の(金属またはプラスチックから製造される)容器の壁6に直に接着される。
【0038】
架橋されて膨脹したこれら2つのゴム層2,3を別々に得た後、先に示したようにシート4の両側にこれらのゴム層2,3を接合することによってデバイス1が準備される。ここで、この不織シート4が接着または結合なしにゴム層2,3に接合されることは留意されるべきである。
【0039】
図2に示される防護デバイス101は、唯一、その内側のゴム層102と外側のゴム層103bとの間に第3の中間層103aを備えることにおいて図1のデバイスと相違する。中間層103aの両側には、例えば同じ不織布「OIL PAD 200」で形成される2つの差込みシート104aおよび104bがそれぞれ当てがわれている。これらの3つのゴム層102,103a,103bとこれらのシート104a,104bとの組み合わせは、図1の場合のようにステープル、リベットまたはステッチ105によって互いに接合される。
【0040】
図3に示される防護デバイス201は、下記の点において図2のデバイスと相違する。
−3つのゴム層202,203a,203bと、これらの間に交互に差し込まれる2つのシート204a,204bとは、ずれて配置された(即ち、1つの断面内に位置合わせされていない)接着点205a,205b,205c,205dによって接合される。各接着点205a,205b,205c,205dは、各不織シート204a,204bの両面にそれぞれ設けられている
−内側のゴム層202は、容器の壁6上に設けられた、例えばプラスチックで製造される中間コーティング206に接着されている。ならびに、
−外側のゴム層203bの上には、接着により、好適には例えば「DYNEEMA」の商品名を有する強力ポリエチレン(PEHT)を基礎とする機械的防護コーティング207が設けられている。このコーティング207は、容器にとって硬くかつ耐火性のあるケーシングを形成するために、架橋の間に収縮するポリウレタンを好適には基礎とする補強および耐火用の外部コーティング208で覆われている。
【0041】
出願人は、具体的に、図1から図3によるデバイス1,101,201内の差込みシート4,104a,104b,204a,204bが、穿孔の事例において、ディーゼルの広い面積に渡るゴムとの急速な表面接触によりディーゼルを超高速でその大部分に渡って吸収する働きをし、これにより、同じゴムでもこれらのシートが全くないものに比べて、その膨潤を増大しかつ促進することを明示してきた。
【0042】
この記述を例証するために、出願人は、下記より成る2つの試験シリーズを実行した。
【0043】
第1の試験シリーズでは、天然ゴム(即ち、コンパクトゴム)を基礎とする架橋/非膨脹ゴム合成物、および、同じ配分を有するが膨潤剤により膨脹されて開放気泡を有する架橋ゴム合成物のガソリンおよびディーゼル内への浸漬の結果、相対的質量変動を比較測定した。
【0044】
第2の試験シリーズ(結果を図4に示す)では、ポリプロピレンを基礎とする本発明による3つの不織物と、開放気泡を有する天然/膨脹ゴムを基礎とする架橋ゴム合成物とでそれそれ形成される3つのシートのディーゼル内への浸漬の結果、相対的質量変動を比較測定した。
【0045】
第1の試験シリーズ
質量変動の決定に際しては、NFT規格46−013に記載されている方法から導出した方法に準拠した。試験条件は、下記の通りであった。
浸漬時間:5分
燃料温度:23℃
試験片の寸法:20×20×4mm
質量読取り:浸漬終了後1分間
試験対象燃料:ガソリンおよびディーゼル(規格品)
燃料毎の試験回数:3回
【0046】
各試験片の重さを秤で+/−0.1mgまでの精度で量り、選択した温度(ここでは23℃)で燃料が充填されかつ低密度の試験片を沈めた状態に維持するためのデバイスを有する容器内に各試験片を浸漬させた。タイマーを始動させ、浸漬後5分で各試験片を取り出した。次に、各試験片を軽く叩いて表面から液体を除去し、次いで精度+/−0.1mgまでの秤のトレイ上に置いた。6分後の質量を記録し、次に、式ΔM=(M−M)/M×100によってその質量ΔMの相対変動を計算した。但し、MおよびMは各々、各試験片の初期および最終質量である。
【0047】
ΔMに関しては、下記の平均値を得た。
a)ガソリン内への浸漬後:
コンパクトゴム試験片で、V=14.3%、および、
多孔質ゴム試験片で、V=500%、ならびに
b)ディーゼル内への浸漬後:
コンパクトゴム試験片で、V=4.6%、および、
多孔質ゴム試験片で、V=120%。
【0048】
これらの値は、一方で、2つの燃料の一方または他方に接触した状態での吸収によるその膨潤に関しては多孔質ゴムがコンパクトゴムを凌ぐことを示し、他方で、多孔質ゴムおよびコンパクトゴムのディーゼルの吸収はガソリンよりも少ないことを示している。
【0049】
第2の試験シリーズ
上述の3つの不織物を(TOTAL給油所で入手できる)規格ディーゼル内に23℃で浸漬した後のその質量ΔMの経時的変化および相対変動を、(開放気泡を有する天然ゴムを基礎とする)商品名「NR V194C5」を有する架橋/膨脹ゴム合成物から成る試験片の質量の相対変動Vと比較して観察した。前述の式を使用して、ΔMを計算した。但し、Mは、時間t(0.5分から4分までの範囲)において考察された試験片の質量である。
【0050】
曲線Aは、商品名「SB40E/O/S」を有するポリプロピレン不織シートに関するVの経時的変化を示し、曲線Bは、ポリプロピレン不織シート「OIL PAD 200」に関するVの経時的変化を、曲線Cは、別のポリプロピレン不織シートに関するVの経時的変化を、および曲線Dは、ゴム合成物「NR V194C5」から成る試験片に関するVの経時的変化を、それぞれ示す。
【0051】
図4におけるグラフは、好適な不織物「OIL PAD 200」がその質量の約1200%(またはその質量の12倍)、または、多孔質ゴム試験片の6倍を、急速に吸収することを示している。先に説明したように、この不織物によるディーゼルの急速吸収は、不織物に接触しているゴムの広い面積に渡るその超高速拡散を可能にする。その面積は、弾丸の衝撃に起因する穿孔の側方表面の面積より遙かに広い面積であり、これにより、隣接する各ゴムが膨潤し、よって所望されるセルフシール効果を発生させることを可能にする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
常温および標準圧力条件において使用可能なモータの燃料、潤滑オイル、油圧オイルおよび重質炭化水素溶剤より成る群から選択される液体を含む容器の壁の外面へ取り付けるための防弾用多層防護デバイスであって、
前記壁に対して近い内側およびより外の外側の複数のゴム層を備え、その最も外側のゴム層または前記より外側のゴム層のうちの少なくとも1つは、液体に接触して膨潤することによって前記壁の穿孔をセルフシールするための多孔質ゴムにより形成され、これら隣接する少なくとも2つのゴム層は、間に差し込まれる繊維構造体によって互いに接合され、
間に差し込まれる1または複数の前記繊維構造体は、不織繊維を基礎とする少なくとも1枚のシートを備え、前記シートは、前記液体を吸収し、かつ、前記シートに接触している1つまたは複数の多孔質ゴム層の表面全体で吸収された液体の拡散を促進するとともに、その膨潤を促進しかつ増大すること、さらに、これにより、前記セルフシールを最短時間で得ることに適することを特徴とする防弾用多層防護デバイス。
【請求項2】
間に差し込まれる1または複数の前記繊維構造体は、毛細管現象および内部浸漬によって、前記浸漬より前の前記繊維構造体の質量の200%より多い質量の前記液体を吸収することに適することを特徴とする請求項1に記載の防護デバイス。
【請求項3】
間に差し込まれる1または複数の前記繊維構造体は、50g/mから200g/mまでの間の単位面積当たりの質量を有することを特徴とする請求項1または2に記載の防護デバイス。
【請求項4】
間に差し込まれる1または複数の前記繊維構造体は、0.5mmから5mmまでの間の厚さを有し、前記繊維構造体を構成する前記シートは、不織紙または例えば液体吸収性のある吸取り紙で形成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の防護デバイス。
【請求項5】
間に差し込まれる1または複数の前記繊維構造体は、好適には150g/mから200g/mまでの間の単位面積当たりの質量を有する不織物で形成される1枚のシートからなることを特徴とする請求項4に記載の防護デバイス。
【請求項6】
間に差し込まれる1または複数の前記繊維構造体は、毛細管現象および内部浸漬により、前記浸漬より前の前記繊維構造体の質量の500%より多い質量の前記液体を吸収することに適することを特徴とする請求項5に記載の防護デバイス。
【請求項7】
前記不織物は、毛細管現象により、ディーゼル燃料内への浸漬の前の前記不織物の質量の1000%を超える多くの量のディーゼル燃料を吸収するために、好適には「OIL PAD 200」という商品名であるポリプロピレンを基礎とすることを特徴とする請求項6に記載の防護デバイス。
【請求項8】
前記多孔質ゴム層は、開放気泡を有する架橋/膨脹ゴムの合成物からなり、好適には0.2から0.4までの間の比重を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の防護デバイス。
【請求項9】
前記多孔質ゴム層は、
−天然ゴム(NR)、ポリイソプレン(IR)、ポリクロロプレン(CR)、スチレン−ブタジエン共重合体(SBR)、ポリブタジエン(BR)、イソプレン−イソブチレン共重合体(IIR)、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)および天然ゴムとこれらのエラストマーのうちの別のものとの配合物より成る群から選択される、または、
−シリコーンゴムである、
少なくとも1つのエラストマーを基礎とすることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の防護デバイス。
【請求項10】
前記多孔質ゴム層の数は少なくとも3であり、これらは少なくとも2つの間に差し込まれる前記繊維構造体によって互いに接続され、少なくとも1つの中間層および/または最も外側のゴム層は、前記多孔質ゴム層を形成することを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の防護デバイス。
【請求項11】
前記ゴム層は、天然ゴムを基礎とする開放気泡を有する架橋/膨脹ゴムの合成物からなる気泡質であり、任意選択として例えばSBRまたはEPDMなどの別のエラストマーと混合されることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の防護デバイス。
【請求項12】
前記多孔質ゴム層は、穿孔事態においてその膨潤を促進するために、これらの層において間隔をあけられた所定の点においてのみ互いに接合されることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の防護デバイス。
【請求項13】
前記ゴム層は、前記所定の点のそれぞれにおいてこれらのゴム層を通過する、ステープル、リベットまたはステッチ等の機械的手段によって互いに接合されることを特徴とする請求項12に記載の防護デバイス。
【請求項14】
前記ゴム層は、これらの層内の互いの層に対する可変変形を許容するために、間に差し込まれる1または複数の前記繊維構造体の2面の各々へ適用されるオフセットされた接着点によって接合されることを特徴とする請求項12に記載の防護デバイス。
【請求項15】
前記最も外側のゴム層の上には、例えば前記容器の機械的強度、剛性および/または耐火性を高めるために、1つまたは複数の外部コーティングが例えば接着によって取り付けられることを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載の防護デバイス。
【請求項16】
常温および標準圧力条件において使用可能なモータの燃料、潤滑オイル、油圧オイルおよび重質炭化水素溶剤より成る群から選択される液体を含み、具体的には、陸上用、海上用または航空用車両のタンク、貯蔵タンクまたはタンク自動車である容器であって、
前記容器の境界となる壁の外面の1つは、請求項1〜15のいずれかに記載の防弾用多層防護デバイスで覆われている容器。
【請求項17】
前記防護デバイスの前記内側のゴム層は前記壁に接着され、前記内側のゴム層は任意選択として中間コーティングで覆われることを特徴とする請求項16に記載の容器。
【請求項18】
前記容器はディーゼル燃料またはガソリンを含む自動車用タンクであり、前記タンクは金属、プラスチックまたは複合材料から製造されることを特徴とする請求項16または17に記載の容器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−215220(P2010−215220A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−272255(P2009−272255)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【出願人】(591136931)
【氏名又は名称原語表記】HUTCHINSON
【Fターム(参考)】