説明

液体供給装置及び液体噴射装置

【課題】液体供給源となる上流側から下流側に向けて液体を供給する際、液体供給源内の液体を最後まで無駄なく供給できる液体供給装置を提供する。
【解決手段】インクカートリッジ13側となる上流側からインクが消費される下流側にインクを供給するインク流路15の一部をポンプ室としてポンプ室の容積を増減させるようにダイアフラム37が変位することでポンプ駆動するポンプ43と、インクパック56におけるインク残量を検出する制御装置60とを備え、インクパック56は、インクを収容する閉空間のインク収容部の容積がインク残量に応じて変化すると共に、制御装置60は、ポンプ43がダイアフラム37をポンプ室の容積が増加する方向に変位させてポンプ室内にインクを吸引する吸引駆動時でのダイアフラム37の変位量を検出することでインクパック56内のインクエンド状態を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体供給源側となる上流側から液体が消費される下流側に向けて液体を供給する液体供給装置及び液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液体噴射装置の一つとしてインクジェット式記録装置(以下、「プリンタ」という)が広く知られている。このプリンタは、インクカートリッジ(以下、「カートリッジ」という)内に収容されたインクパックなどの液体供給源から供給されるインクを液体噴射ヘッドからターゲットに噴射することにより印刷が行われる。
【0003】
また、従来から、こうしたプリンタは、インクパック内のインク残量を検出するためのインク残量検出手段を備えている。インク残量検出手段としては、例えば、液体噴射ヘッドからのインクの吐出回数(ドット数)を計数することによってインク消費量を算出し、この算出したインク消費量をフル充填インク量(初期値)から減算することによってインク残量を検出するものが提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平5−88552号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に示すように、従来のプリンタでは、インクの吐出回数に基づく演算によりインクパック内のインクの残量を検出している。しかしながら、こうした演算により検出したインク残量は、あくまで推測値でしかなく、必ずしも正確なインク残量ではない。すなわち、インク残量がゼロ(すなわち、インクエンド状態)又はゼロに近い状態(すなわち、ニヤエンド状態)になっているにも拘わらず、インク残量が印刷のためには必要十分に残存していると誤検出してしまうこともあり得る。
【0005】
そのため、従来から、こうした演算によりインク残量が検出されるプリンタでは、演算により検出したインク残量の値がゼロよりも十分に大きい所定の閾値を下回ることになった場合に、インクエンド(又はニヤエンド)状態であると推定し、まだ実際には使用可能なインク残量のあるインクパックを収容したカートリッジの交換の必要性をメッセージ表示などで報知していた。したがって、このような場合には、交換されるカートリッジのインクパック内に残っているインクが使用されずに無駄になるという問題があった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、液体供給源となる上流側から下流側に向けて液体を供給するに際して、液体供給源内の液体を最後まで無駄なく供給できる液体供給装置を提供することにある。また、そのような液体供給装置を備えた液体噴射装置を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の液体供給装置は、液体供給源側となる上流側から液体が消費される下流側に向けて液体を供給する液体供給流路と、該液体供給流路の一部をポンプ室として該ポンプ室の容積を増減させるように該ポンプ室の内面の少なくとも一部を構成する変位部材が変位することによりポンプ駆動するポンプと、前記液体供給源における液体残量を検出する液体残量検出手段とを備えた液体供給装置であって、前記液体供給源は、前記液体を収容する閉空間の液体収容部の容積が液体残量に応じて変化するように構成されると共に、前記液体残量検出手段は、前記ポンプが前記変位部材を前記ポンプ室の容積が増加する方向に変位させて該ポンプ室内に前記液体を吸引する吸引駆動時における前記変位部材の変位量に基づき前記液体収容部内の液体残量がゼロである液体エンド状態であると検出する。
【0008】
上記構成によれば、ポンプが変位部材をポンプ室の容積が増加する方向に変位させて該ポンプ室内に液体供給源側となる上流側から液体を吸引する吸引駆動時において、液体収容部内の液体残量がゼロになった場合、変位部材の変位量は、液体収容部内の液体残量が必要十分である場合の変位量とは異なることになる。そのため、液体残量検出手段は、そのようなポンプの吸引駆動時における変位部材の変位量の相違に基づき液体収容部内の液体残量を誤検出の可能性がある演算によらずに的確に液体エンド状態であると検出できる。したがって、液体供給源となる上流側から下流側に向けて液体を供給するに際して、液体供給源内の液体を最後まで無駄なく供給できる。
【0009】
また、本発明の液体供給装置は、液体供給源側となる上流側から液体が消費される下流側に向けて液体を供給する液体供給流路と、該液体供給流路の一部をポンプ室として該ポンプ室の容積を増減させるように該ポンプ室の内面の少なくとも一部を構成する変位部材が変位することによりポンプ駆動するポンプと、前記液体供給源における液体残量を検出する液体残量検出手段とを備えた液体供給装置であって、前記液体供給源は、前記液体を収容する閉空間の液体収容部の容積が液体残量に応じて変化するように構成されると共に、前記液体残量検出手段は、前記ポンプが前記変位部材を前記ポンプ室の容積が増加する方向に変位させて該ポンプ室内に前記液体を吸引する吸引駆動時における前記変位部材の変位量に基づき前記液体収容部内の液体残量を検出する。
【0010】
上記構成によれば、ポンプが変位部材をポンプ室の容積が増加する方向に変位させて該ポンプ室内に液体供給源側となる上流側から液体を吸引する吸引駆動時には、閉空間である液体収容部が、吸引されて減少する液体の液面に沿って変形するため、該液体収容部はその容積を小さくするように変形する。そして、この吸引駆動時において、液体収容部内の液体残量(すなわち、液体収容部内に外部への供給可能な状態で残存している供給可能液体の残量)が必要十分である場合の変位部材の変位量と、必要十分ではない場合の変位部材の変位量との相違に基づき、液体収容部内の液体残量を誤検出の可能性がある演算によらずに的確に検出できる。したがって、液体供給源となる上流側から下流側に向けて液体を供給するに際して、液体供給源内の液体を最後まで無駄なく供給できる。
【0011】
また、本発明の液体供給装置において、前記液体残量検出手段は、前記ポンプの前記吸引駆動時における前記変位部材の変位量が予め設定した前記液体収容部内の液体残量が必要十分であるとした場合における変位量よりも小さい場合に、前記液体収容部内の液体残量がゼロである液体エンド状態又はゼロに近い液体ニヤエンド状態であると検出する。
【0012】
すなわち、液体供給源における閉空間の液体収容部内に残存している供給可能液体の液体残量がポンプの吸引駆動により吸引し尽くされた場合には、それ以上に液体収容部内から液体を吸引できなくなるため、変位部材の変位量は液体収容部内の液体残量が必要十分である場合の変位量よりも小さなものになる。したがって、上記構成によれば、ポンプの吸引駆動時における変位部材の変位量が液体収容部内の液体残量が必要十分である場合の変位量よりも小さいということを検出することにより、液体エンド状態又は液体ニヤエンド状態であることを確実に検出することができる。
【0013】
また、本発明の液体供給装置において、前記液体残量検出手段は、前記ポンプの前記吸引駆動時における前記変位部材の位置を検出するものであって、吸引開始後における所定時間経過時点での前記変位部材の位置が予め設定した前記液体収容部内の液体残量が必要十分であるとした場合における位置とは異なる場合に、前記液体収容部内の液体残量がゼロである液体エンド状態又はゼロに近い液体ニヤエンド状態であると検出する。
【0014】
すなわち、液体供給源における閉空間の液体収容部内に残存している供給可能液体の液体残量がゼロになった場合には、ポンプを吸引駆動しても液体供給源の液体収容部内から液体を吸引することができないため、変位部材は予め設定した液体収容部内の液体残量が必要十分であるとした場合における位置まで変位することがない。したがって、上記構成によれば、ポンプの吸引駆動時における変位部材の位置を検出することにより、液体エンド状態又は液体ニヤエンド状態であることを確実に検出することができる。
【0015】
また、本発明の液体供給装置は、液体供給源側となる上流側から液体が消費される下流側に向けて液体を供給する液体供給流路と、該液体供給流路の一部をポンプ室として該ポンプ室の容積を増減させるように該ポンプ室の内面の少なくとも一部を構成する変位部材が変位することによりポンプ駆動するポンプと、前記液体供給源における液体残量を検出する液体残量検出手段とを備えた液体供給装置であって、前記液体供給源は、前記液体を収容する閉空間の液体収容部の容積が液体残量に応じて変化するように構成されると共に、前記液体残量検出手段は、前記ポンプが前記変位部材を前記ポンプ室の容積が増加する方向に変位させて該ポンプ室内に前記液体を吸引する吸引駆動時における前記ポンプの駆動負荷に基づき前記液体収容部内の液体残量がゼロである液体エンド状態であると検出する。
【0016】
上記構成によれば、ポンプが変位部材をポンプ室の容積が増加する方向に変位させて該ポンプ室内に液体供給源側となる上流側から液体を吸引する吸引駆動時において、液体収
容部内の液体残量がゼロになった場合、ポンプの駆動負荷は、液体収容部内の液体残量が必要十分である場合の駆動負荷とは異なることになる。そのため、液体残量検出手段は、そのようなポンプの吸引駆動時におけるポンプの駆動負荷の相違に基づき液体収容部内の液体残量を誤検出の可能性がある演算によらずに的確に液体エンド状態であると検出できる。したがって、液体供給源となる上流側から下流側に向けて液体を供給するに際して、液体供給源内の液体を最後まで無駄なく供給できる。
【0017】
また、本発明の液体供給装置は、液体供給源側となる上流側から液体が消費される下流側に向けて液体を供給する液体供給流路と、該液体供給流路の一部をポンプ室として該ポンプ室の容積を増減させるように該ポンプ室の内面の少なくとも一部を構成する変位部材が変位することによりポンプ駆動するポンプと、前記液体供給源における液体残量を検出する液体残量検出手段とを備えた液体供給装置であって、前記液体供給源は、前記液体を収容する閉空間の液体収容部の容積が液体残量に応じて変化するように構成されると共に、前記液体残量検出手段は、前記ポンプが前記変位部材を前記ポンプ室の容積が増加する方向に変位させて該ポンプ室内に前記液体を吸引する吸引駆動時における前記ポンプの駆動負荷に基づき前記液体収容部内の液体残量を検出する。
【0018】
上記構成によれば、ポンプが変位部材をポンプ室の容積が増加する方向に変位させて該ポンプ室内に液体供給源側となる上流側から液体を吸引する吸引駆動時には、閉空間である液体収容部が、吸引されて減少する液体の液面に沿って変形するため、該液体収容部はその容積を小さくするように変形する。そして、ポンプの吸引駆動時において、液体収容部内の液体残量(すなわち、液体収容部内に外部への供給可能な状態で残存している供給可能液体の残量)が必要十分である場合のポンプの駆動負荷と、必要十分ではない場合のポンプの駆動負荷との相違に基づき、液体収容部内の液体残量を誤検出の可能性がある演算によらずに的確に検出できる。したがって、液体供給源となる上流側から下流側に向けて液体を供給するに際して、液体供給源内の液体を最後まで無駄なく供給できる。
【0019】
また、本発明の液体供給装置において、前記液体残量検出手段は、前記ポンプの前記吸引駆動時における前記ポンプの駆動負荷が予め設定した前記液体収容部内の液体残量が必要十分であるとした場合における駆動負荷よりも大きい場合に、前記液体収容部内の液体残量がゼロである液体エンド状態又はゼロに近い液体ニヤエンド状態であると検出する。
【0020】
すなわち、液体供給源における閉空間の液体収容部内に残存している供給可能液体がポンプの吸引駆動により吸引し尽くされた場合には、それ以上に液体収容部内から液体を吸引できなくなるため、ポンプの駆動負荷は液体収容部内の液体残量が必要十分である場合の駆動負荷よりも大きなものになる。したがって、上記構成によれば、ポンプの吸引駆動時におけるポンプの駆動負荷が液体収容部内の液体残量が必要十分である場合の駆動負荷よりも大きいということを検出することにより、液体エンド状態又は液体ニヤエンド状態であることを確実に検出することができる。
【0021】
また、本発明の液体供給装置において、前記変位部材は、前記ポンプ室の容積が減少する方向に付勢部材により付勢されている。
上記構成によれば、ポンプをポンプ駆動させて液体を供給する場合には、ポンプを吸引駆動させる場合又は吐出駆動させる場合の何れか一方の場合にのみ付勢部材の付勢力に抗して変位部材を変位させればよく、逆の場合は付勢部材の付勢力で変位部材が元の状態に変位するので、ポンプの駆動負荷を低減することができる。
【0022】
また、本発明の液体供給装置は、液体供給源側となる上流側から液体が消費される下流側に向けて液体を供給する液体供給流路と、該液体供給流路の途中位置に設けられ、上流側から吸引した液体を隔離して下流側へ送出する送出部材が前記液体供給流路内で回転することによりポンプ駆動するポンプと、前記液体供給源における液体残量を検出する液体残量検出手段とを備えた液体供給装置であって、前記液体供給源は、前記液体を収容する閉空間の液体収容部の容積が液体残量に応じて変化するように構成されると共に、前記液体残量検出手段は、ポンプ駆動時における前記ポンプの駆動負荷に基づき前記液体収容部内の液体残量を検出する。
【0023】
上記構成によれば、ポンプが送出部材を回転させて液体供給源側となる上流側から液体を吸引して下流側へ送出するポンプ駆動時には、閉空間である液体収容部が、吸引されて減少する液体の液面に沿って変形するため、該液体収容部はその容積を小さくするように変形する。そして、ポンプ駆動時において、液体収容部内の液体残量(すなわち、液体収容部内に外部への供給可能な状態で残存している供給可能液体の残量)が必要十分である場合のポンプの駆動負荷と、必要十分ではない場合のポンプの駆動負荷との相違に基づき、液体収容部内の液体残量を誤検出の可能性がある演算によらずに的確に検出できる。したがって、液体供給源となる上流側から下流側に向けて液体を供給するに際して、液体供給源内の液体を最後まで無駄なく供給できる。
【0024】
また、本発明の液体供給装置において、前記液体残量検出手段は、前記ポンプ駆動時における前記ポンプの駆動負荷が予め設定した前記液体収容部内の液体残量が必要十分であるとした場合における駆動負荷よりも大きい場合に、前記液体収容部内の液体残量がゼロである液体エンド状態又はゼロに近い液体ニヤエンド状態であると検出する。
【0025】
すなわち、液体供給源における閉空間の液体収容部内に残存している供給可能液体がポンプの吸引駆動により吸引し尽くされた場合には、それ以上に液体収容部内から液体を吸引できなくなるため、ポンプの駆動負荷は液体収容部内の液体残量が必要十分である場合の駆動負荷よりも大きなものになる。したがって、上記構成によれば、ポンプの吸引駆動時におけるポンプの駆動負荷が液体収容部内の液体残量が必要十分である場合の駆動負荷よりも大きいということを検出することにより、液体エンド状態又は液体ニヤエンド状態であることを確実に検出することができる。
【0026】
また、本発明の液体供給装置において、前記液体供給源は、可撓性を有する液体収容袋であり、該液体収容袋の内部が前記液体収容部とされている。
上記構成によれば、液体を収容する閉空間の液体収容部が液体残量に応じて容積が変化する液体供給源を簡単な構成で得ることができる。
【0027】
また、本発明の液体供給装置は、前記液体残量検出手段が前記液体エンド状態であると検出した場合には、前記ポンプの駆動が停止される。
上記構成によれば、液体エンド状態となってポンプの吸引駆動を継続しても液体を吸引できない場合には、それ以上の不必要なポンプの駆動を停止することにより、ポンプの駆動負荷が過大になることを抑制できる。
【0028】
また、本発明の液体噴射装置は、液体を噴射する液体噴射ヘッドと、上記構成の液体供給装置とを備えた。
上記構成によれば、上記液体供給装置の発明の同様の効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明を液体噴射装置の一種であるインクジェット式記録装置(以下、「プリンタ」と言う。)に具体化した一実施形態を図1〜図3を参照しながら説明する。
図1に示すように、本実施形態のプリンタ11は、ターゲット(図示略)に対してインク(液体)を噴射する液体噴射ヘッドとしての記録ヘッド12と、この記録ヘッド12にインクカートリッジ13内に収容されているインクを供給する液体供給装置としてのインク供給装置14を備えている。インク供給装置14には、インクカートリッジ13に上流端が接続されると共に、記録ヘッド12に下流端が接続された状態で、インクカートリッジ13側となる上流側から記録ヘッド12側となる下流側に向けてインクを供給するインク流路(液体供給流路)15が設けられている。
【0030】
なお、プリンタ11には、そのプリンタ11で使用するインクの色数(種類)に対応して複数のインク供給装置14が設けられている。但し、それらの構成は同じであるため、図1には何れか一色のインクを供給する一つのインク供給装置14を記録ヘッド12及び一つのインクカートリッジ13と共に図示している。そして、以下においては、この図1に示す一つのインク供給装置14のインク流路15を介して上流側のインクカートリッジ13から下流側の記録ヘッド12に向けてインクを供給する場合を例にして説明することにする。
【0031】
図1に示すように、記録ヘッド12には、インク供給装置14の設置数と対応する複数(本実施形態では4つ)のノズル16がプラテン(図示略)と対向するノズル形成面12aに開口形成されている。そして、これらの各ノズル16に対して各々対応するインク供給装置14のインク流路15からバルブユニット17を介してインクが供給されるようになっている。すなわち、バルブユニット17には、インク流路15から流入したインクを一時貯留する圧力室(図示略)がノズル16と連通するように設けられ、その圧力室内には、ノズル16からインクを噴射した場合に、そのインク噴射により消費したインク量に相当する分量のインクが、図示しない流路弁の開閉動作に基づきインク流路15から適宜に流入するようになっている。
【0032】
また、プリンタ11において記録ヘッド12が非印刷時に位置するホームポジションには、記録ヘッド12のノズル16の目詰まり等を解消するべく記録ヘッド12のクリーニングを行うメンテナンスユニット18が設けられている。このメンテナンスユニット18は、記録ヘッド12のノズル形成面12aにノズル16を囲うように当接可能なキャップ19と、このキャップ19内からインクを吸引する際に駆動される吸引ポンプ20と、この吸引ポンプ20の駆動に伴いキャップ19内から吸引されたインクが廃インクとして排出される廃液タンク21とを備えている。そして、クリーニング時には、図1に示す状態からキャップ19を移動させて記録ヘッド12のノズル形成面12aに当接させた状態で吸引ポンプ20を駆動し、キャップ19の内部空間に負圧を発生させることにより記録ヘッド12内から増粘したインクや気泡混じりのインクを廃液タンク21に向けて吸引排出するようにしている。
【0033】
一方、インクカートリッジ13は、合成樹脂材にて略箱体形状に形成されたケース22を備えている。ケース22の下壁からはケース22内に連通する筒部23が下方に向けて突出形成され、筒部23の先端にはインクを導出可能なインク供給口24が形成されている。また、ケース22の内部には、可撓性を有する液体収容袋からなり、液体収容部となる閉空間の内部にインクが封入(収容)された液体供給源としてのインクパック56を収容している。また、インクパック56の一端には内部に封入されているインクを外部に導出するためのインク導出部材57が設けられている。そして、インクパック56をインク供給装置14に接続する際には、このインク導出部材57に対してインク供給装置14からインク流路15の上流端を構成するべく突設されたインク供給針25が挿入されるようになっている。なお、図示はしないが、インク導出部材57の内部には逆止弁機能を有する弁機構(図示略)が設けられている。また、ケース22の上壁には、ケース22の内部を大気に連通させる大気連通孔26が貫通形成され、インクが収容されたインクパック56の外面に対して大気圧を作用させるようになっている。
【0034】
次に、インク供給装置14の構成について詳細に説明する。
図1に示すように、インク供給装置14は、基台となる樹脂製の第1流路形成部材27と、この第1流路形成部材27上に積層状態に組み付けられる同じく樹脂製の第2流路形成部材28と、その組み付け時に両流路形成部材27,28の間に挟み込まれるゴム板等からなる可撓性部材29とを備えている。ここで、第1流路形成部材27の上面における複数箇所(本実施形態では3箇所)には、平面視円形状をなす凹部30,31,32が形成されている。すなわち、一つの凹部31と、該凹部31よりも容積が小さく且つそれぞれ略同じ容積の二つの凹部30,32とが、図1において、右側から左側へ、凹部30、凹部31、凹部32の順に、横並び配置となるように形成されている。
【0035】
一方、この第1流路形成部材27上に積層される第2流路形成部材28の下面における複数箇所(本実施形態では3箇所)には、第1流路形成部材27の上面に形成された各凹部30,31,32と上下方向で互いに対向する平面視円形状の凹部33,34,35が形成されている。すなわち、一つの凹部34と、該凹部34よりも容積が小さく且つそれぞれ略同じ容積の二つの凹部33,35とが、図1において、右側から左側へ、凹部33、凹部34、凹部35の順に、横並び配置となるように形成されている。
【0036】
つまり、インク供給装置14は、凹部30〜32及び凹部33〜35をそれぞれ同一平面上に形成することで、複数の板状の構成部材を積層した積層構造の採用を可能としている。
【0037】
なお、第2流路形成部材28における図1において最も左側に形成された凹部35の底部には、大気に連通する大気連通孔35aが形成されている。
そして、可撓性部材29は、第1流路形成部材27と第2流路形成部材28との間に、その可撓性部材29における複数箇所(本実施形態では3箇所)が第1流路形成部材27の各凹部30〜32と第2流路形成部材28の各凹部33〜35との間を上下に仕切って介在するように挟み込まれている。その結果、可撓性部材29において第1流路形成部材27の凹部30と第2流路形成部材28の凹部33との間に介在する部分は、両凹部30,33の間で弾性変形することにより変位可能な吸引側弁体36として機能するようになっている。
【0038】
同様に、可撓性部材29において第1流路形成部材27の凹部31と第2流路形成部材28の凹部34との間に介在する部分は、両凹部31,34の間で弾性変形することにより変位可能なダイアフラム(変位部材)37として機能するようになっている。また同様に、可撓性部材29において第1流路形成部材27の凹部32と第2流路形成部材28の凹部35との間に介在する部分は、両凹部32,35の間で弾性変形することにより変位可能な吐出側弁体38として機能するようになっている。
【0039】
なお、吸引側弁体36、ダイアフラム37、吐出側弁体38の撓み変形可能な部分の平面視の面積は、吸引側弁体36及び吐出側弁体38が互いに略同じ大きさであるのに対して、ダイアフラム37は吸引側弁体36及び吐出側弁体38よりも大きくなっている。
【0040】
そして、図1に示すように、第1流路形成部材27と第2流路形成部材28には、第2流路形成部材28の上面から突設されたインク供給針25と第1流路形成部材27の凹部30との間を連通する第1流路15aが、インク供給装置14におけるインク流路15の一部を構成するべく形成されている。同様に、第1流路形成部材27と第2流路形成部材28及び可撓性部材29には、第2流路形成部材28の凹部33と第1流路形成部材27の凹部31との間を連通する第2流路15bが、インク供給装置14におけるインク流路15の一部を構成するべく形成されている。
【0041】
また同様に、第1流路形成部材27には、第1流路形成部材27の凹部31と凹部32との間を連通する第3流路15cが、インク供給装置14におけるインク流路15の一部を構成するべく形成されている。そして、この第3流路15cにおける下流側の凹部32の内底面に開口する流路開口端には、凹部31側となる上流側から凹部32側となる下流側へのインクの通過のみを許容するボール弁39が常には第3流路15cを閉塞する閉弁方向に図示しない付勢部材により付勢された状態で設けられている。
【0042】
さらに、第1流路形成部材27と第2流路形成部材28及び可撓性部材29には、第1流路形成部材27の凹部32と第2流路形成部材28の上面側との間を連通する第4流路15dが、インク供給装置14におけるインク流路15の一部を構成するべく形成されている。そして、この第4流路15dにおける第2流路形成部材28の上面に開口した流路開口端には、インク供給装置14におけるインク流路15の一部を構成するインク供給チューブ15eの一端(上流端)が接続されている。そして、このインク供給チューブ15eの他端(下流端)が記録ヘッド12側のバルブユニット17に接続されている。
【0043】
また、図1に示すように、インク供給装置14において可撓性部材29の吸引側弁体36となる部分は、その中心に貫通孔36aが形成されると共に、上側の凹部33内に配設されたコイルスプリング40の付勢力により下側の凹部30の内底面に向けて付勢されている。そして、本実施形態では、これらの凹部30,33と吸引側弁体36及びコイルスプリング40により、インクカートリッジ13側となる上流側から記録ヘッド12によるインク噴射でインクが消費される下流側に向けてのインクの通過のみを許容する吸引側バルブ41が構成されている。
【0044】
同様に、インク供給装置14において可撓性部材29のダイアフラム37となる部分は、上側の凹部34内に配設されたコイルスプリング(付勢部材)42の付勢力により下側の凹部31の内底面に向けて付勢されている。そして、本実施形態では、これらの凹部31,34とダイアフラム37及びコイルスプリング42により脈動型のポンプ43が構成され、ダイアフラム37と下側の凹部31とで囲み形成される容積可変の空間域がポンプ43におけるポンプ室43a(図2参照)として機能するようになっている。すなわち、ダイアフラム37はポンプ室43aの内面の一部を構成する。なお、可撓性部材29のダイアフラム37となる部分の上面には、磁性体材料からなる平板状のセンサターゲット58が固着されている。そして、上側の凹部34の内底面には、センサターゲット58に対して対向するように磁気センサ59が配置され、この磁気センサ59によりセンサターゲット58の上下方向の変位量がダイアフラム37の上下方向の変位量として検知され、その検出結果がプリンタ11の制御装置60(図1参照)に対して出力されるようになっている。
【0045】
なお、制御装置60は、中央処理装置として機能することにより各種の演算を実行するCPU(図示略)、記憶手段として機能するROM(図示略)及びRAM(図示略)などを備えたデジタルコンピュータにて構成されている。そして、制御装置60は、磁気センサ59からの検出信号が入力されると、インクパック56内のインク残量(液体残量)が印刷を実行するのに必要十分な残量であるか否かを検出するようになっている。すなわち、制御装置60は、インクパック56内のインク残量(すなわち、インクパック56内に外部への供給可能な状態で残存している供給可能インクの残量)がゼロであるインク(液体)エンド状態、及びそのようなインク残量がゼロに近いインク(液体)ニヤエンド状態にあるかを検出するようになっている。
【0046】
なお、インクエンド状態とは、インクパック56内に残存している供給可能インクのインク残量がゼロである状態であり、例えば、可撓性を有したインクパック56の容積が減少した際に生じる皺やインクパック56の内面同士に生じる毛細管現象等の影響によりインクパック56内から外部へは供給不可能な若干のインクが残存している状態が含まれる。
【0047】
また、この制御装置60は、記録ヘッド12のクリーニング時には吸引ポンプ20の駆動状態を制御すると共に、ポンプ43の駆動時には駆動モータ49の駆動状態を制御する他、プリンタ11全体の稼働状態を必要に応じて制御する。そして、本実施形態では、この制御装置60と、磁気センサ59により液体残量検出手段が構成されている。
【0048】
また同様に、インク供給装置14において可撓性部材29の吐出側弁体38となる部分は、上側の凹部35内に配設されたコイルスプリング44の付勢力により下側の凹部32の内底面に向けて付勢されている。そして、本実施形態では、これらの凹部32,35と吐出側弁体38及びコイルスプリング44により吐出側バルブ45が構成され、吐出側弁体38と下側の凹部32とで囲み形成される容積可変の空間域がインク流路15の一部を構成してインクを蓄圧状態で貯留可能な蓄圧室45aとして機能するようになっている。
【0049】
なお、蓄圧室45aの容積は、ポンプ室43aの容積よりも小さく、且つ凹部32と吸引側弁体36とにより囲み形成された空間域と略同じ大きさとなっている。そして、コイルスプリング44の付勢力は蓄圧室45aの容積を減少させる方向に働くようになっている。
【0050】
さらに、図1に示すように、第2流路形成部材28の凹部34には、二股状に分岐した空気流路46を介して吸引ポンプ等からなる負圧発生装置47と大気開放機構48が接続されている。負圧発生装置47は、正逆回転可能な駆動モータ49が正転駆動した場合に図示しないワンウェイクラッチを介して伝達される駆動力により駆動して負圧を発生し、空気流路46を介して接続された第2流路形成部材28の凹部34内にも同様に負圧を発生させ得るように構成されている。この点で、第2流路形成部材28の凹部34とダイアフラム37とで囲み形成される容積可変の空間域は、負圧発生装置47の駆動に伴い負圧状態となる負圧室43bとして機能するようになっている。
【0051】
一方、大気開放機構48は、大気開放孔50が形成されたボックス51内にシール部材52を大気開放孔50側に付設してなる大気開放弁53が収容され、その大気開放弁53が常にはコイルスプリング54の付勢力により大気開放孔50を封止する閉弁方向に付勢された構成をしている。そして、大気開放機構48は、駆動モータ49が逆転駆動した場合に、図示しないワンウェイクラッチを介して伝達される駆動力に基づき作動するカム機構55が作動し、そのカム機構55の作動により大気開放弁53がコイルスプリング54の付勢力に抗して開弁方向に変位するように構成されている。すなわち、大気開放機構48は、空気流路46を介して接続された負圧室43bが負圧状態になっている場合には、大気開放弁53が開弁動作することにより、その負圧室43b内を大気に開放して負圧状態を解消するようになっている。
【0052】
なお、図1には、負圧発生装置47、大気開放機構48、及びこれらを駆動させる駆動モータ49が、各インク色に個別対応する複数のインク供給装置14毎に1つずつ設けられた構成を例示しているが、これは次のような構成にしてもよい。すなわち、インク供給装置14のポンプ43の負圧室43bに接続される空気流路46の接続端側を各インク色に個別対応する複数のインク供給装置14の設置数に対応するように分岐し、その分岐した空気流路46の各接続端を各々対応するインク供給装置14のポンプ43の負圧室43bに接続してもよい。このように構成すれば、複数のインク供給装置14に対して負圧発生装置47、大気開放機構48、駆動モータ49を1つ設けるだけで、各色のインク供給装置14を駆動することができ、プリンタ11の小型化を図ることができる。
【0053】
そこで次に、以上のように構成されたプリンタ11における作用について、特にインク供給装置14の作用に着目して以下説明する。
まず、前提として、図1に示す状態は、新旧インクカートリッジの交換直後であって、吸引側バルブ41の吸引側弁体36、ポンプ43のダイアフラム37、及び、吐出側バルブ45の吐出側弁体38は、いずれもコイルスプリング40,42,44の付勢力で下側の各凹部30,31,32の内底面に押し付けられた状態にあるものとする。また、インク供給装置14のインク流路15における第3流路15cを開閉可能なボール弁39は対応する付勢部材(図示略)により閉弁位置に付勢された状態にあり、さらに、大気開放機構48は大気開放弁53が大気開放孔50を封止した閉弁状態にあるものとする。
【0054】
さて、このような図1に示す状態から、インク供給装置14がインクカートリッジ13側から記録ヘッド12側へインクを供給する場合、まず、ポンプ43をポンプ駆動させるために、駆動モータ49が正転駆動させられる。すると、負圧発生装置47が負圧を発生し、この負圧発生装置47と空気流路46を介して接続されたインク供給装置14の負圧室43bが負圧状態になる。そのため、ポンプ43のダイアフラム37がコイルスプリング42の付勢力に抗して負圧室43b側に弾性変形(変位)し、負圧室43bの容積を減少させる(図2(a)参照)。すると、この負圧室43bの容積減少に伴い、ダイアフラム37を介して負圧室43bと区画されたポンプ43のポンプ室43aは逆に容積が増加する。
【0055】
すなわち、ポンプ43がダイアフラム37をポンプ室43aの容積が増加する方向に変位させて吸引駆動することになる。具体的には、ダイアフラム37が図1に示す下死点位置から図2(a)に示す上死点位置に変位する。そのため、ポンプ室43a内が負圧状態になり、その負圧が第2流路15bを介して吸引側バルブ41の上側の凹部33に作用し、下側の凹部30内のインク圧力との圧力差に基づき吸引側弁体36をコイルスプリング40の付勢力に抗して上方(すなわち、開弁方向)へ弾性変形(変位)させる。その結果、第1流路15aと第2流路15bが吸引側弁体36の貫通孔36aを介して連通状態となり、インクカートリッジ13内のインクパック56からインクが、第1流路15a、凹
部30、貫通孔36a、凹部33、第2流路15bを経由して、ポンプ室43a内に吸引される。そして、このようにインクパック56からインクがポンプ室43aに吸引されるに従い、インクパック56はインク残量が次第に減少し、このインク残量の減少に対応するように容積も変化する(すなわち、小さくなる)。
【0056】
一方、このポンプ43の吸引駆動時には、ポンプ室43aの負圧が第3流路15cを介してポンプ室43aよりもインク流路15の下流側、すなわち第3流路15cにも作用する。しかし、第3流路15cの下流端にはボール弁39が閉弁方向に付勢された状態にあり、その閉弁状態はボール弁39に対して第3流路15cの上流側からポンプ43の吐出駆動によって所定の正圧(例えば、3kpa以上の圧力)のインク吐出圧が作用しない限り開弁状態に移行しないように設定されている。したがって、この場合、ボール弁39は、負圧が作用しているため、その閉弁状態が維持される。
【0057】
そして次には、図2(a)に示す状態において、駆動モータ49が逆転駆動される。すると、大気開放機構48のカム機構55の作動により大気開放弁53がコイルスプリング54の付勢力に抗して開弁動作し、負圧状態にある負圧室43bを大気開放する。そのため、ポンプ43のダイアフラム37がコイルスプリング42の付勢力により下方(すなわち、ポンプ室43aの内底面側)へ弾性変形(変位)し、負圧室43bの容積を増加させる(図2(b)参照)。すると、この負圧室43bの容積増加に伴い、ダイアフラム37を介して負圧室43bと区画されたポンプ43のポンプ室43aは逆に容積が減少する。
【0058】
すなわち、ポンプ43がダイアフラム37をポンプ室43aの容積を減少させる方向に変位させて吐出駆動することになる。具体的には、図2(b)に示すように、ダイアフラム37が上死点位置から若干だけ下死点位置の方向に変位して、ポンプ室43a内に吸引されていたインクを所定の圧力(例えば、30kpa程度の圧力)で加圧する。そのため、ポンプ室43a内からはインクが吐出され、その吐出圧がポンプ室43aよりも上流側では第2流路15bを介して吸引側バルブ41の上側の凹部33に作用し、吸引側弁体36をコイルスプリング40の付勢力と協働して下方(すなわち、閉弁方向)へ弾性変形(変位)させる。その結果、第1流路15aと第2流路15bが吸引側弁体36の閉弁動作により非連通状態となり、インクカートリッジ13のインクパック56からポンプ室43aへの吸引側バルブ41を経由したインクの吸入が停止されると共に、ポンプ43の吐出駆動に伴いポンプ室43aから吐出されたインクが吸引側バルブ41を経由してインクカートリッジ13のインクパック56側に逆流することが規制される。
【0059】
一方、このポンプ43の吐出駆動時には、ポンプ室43aから吐出されたインクの圧力(例えば、30kpa程度の圧力)が第3流路15cを介してインク流路15の下流側にも作用する。そのため、このポンプ43の吐出圧が閉弁状態にあるボール弁39を開弁動作させ、吐出側バルブ45の吐出側弁体38と下側の凹部32とで囲み形成された蓄圧室45aが第3流路15cを介してポンプ室43aと連通する。その結果、ポンプ室43a内からインクが第3流路15cを介して吐出側バルブ45の蓄圧室45a内に加圧状態で供給される。
【0060】
すると、吐出側バルブ45では、蓄圧室45a内に加圧供給されたインクの圧力により吐出側弁体38がコイルスプリング44の付勢力に抗して上方(すなわち、開弁方向)へ弾性変形(変位)する。その結果、図2(b)に示すように、蓄圧室45a内にはインクが蓄圧状態で一時貯留される。ちなみに、吐出側バルブ45におけるコイルスプリング44の付勢力は、蓄圧室45a内にインクがボール弁39を開弁させ得る吐出圧で流入してきた場合には、そのインクの圧力により吐出側弁体38が上方へ弾性変形できるように、例えば13kpa程度に設定されている。
【0061】
そして、以後は、ダイアフラム37に加圧されてポンプ室43aから吐出されるインクの吐出圧がインク流路15における吸引側バルブ41の上側の凹部33よりも下流側の各流路域(ポンプ室43a及び蓄圧室45aを含む)に均衡する状態が維持される。すなわち、蓄圧室45aでは、吐出側弁体38が上死点位置に位置した状態に維持されており、該蓄圧室45aと第4流路15dが連通した開弁状態に維持されている。
【0062】
その後において、記録ヘッド12からインクがターゲット(図示略)に向けて噴射されると、そのインク噴射に伴うインクの消費量に相当する分量のインクがバルブユニット17を介してインク流路15内から記録ヘッド12側に供給される。そのため、この下流側(記録ヘッド12側)でのインク消費に伴いポンプ室43a内から対応するインク量のインクが記録ヘッド12側となる下流側にコイルスプリング42の付勢力でポンプ室43aの容積が減少する方向へ付勢されたダイアフラム37の押圧力に基づき蓄圧室45aを経由して加圧状態で供給される。
【0063】
その結果、図3(a)に示すように、ポンプ室43a内の容積が次第に減少し、遂にはダイアフラム37が下死点位置付近まで変位する。そして、この時点において、ポンプ室43a内及び蓄圧室45a内は13kpa程度の圧力が均衡した状態に維持されているため、吐出側弁体38は上死点位置に位置すると共に、蓄圧室45aの容積は最大に保たれた状態となっている。
【0064】
すると、駆動モータ49が再び正転駆動され、大気開放機構48では大気開放弁53が大気開放孔50を閉塞する閉弁位置に変位すると共に、負圧発生装置47が負圧を発生して負圧室43bが負圧状態となり、ダイアフラム37がコイルスプリング42の付勢力に抗して、負圧室43b側に弾性変形(変位)する。すなわち、再び、ポンプ43が吸引駆動を開始する。その結果、図3(b)に示すように、ダイアフラム37がポンプ室43aの容積を増加させるべく上死点位置に変位し、ポンプ室43a内が負圧状態になるため、その負圧の作用で吸引側弁体36が開弁方向へ弾性変形(変位)する。したがって、第1流路15aと第2流路15bが吸引側弁体36の貫通孔36aを介して連通状態となり、インクカートリッジ13のインクパック56内からインクが再びポンプ室43a内に吸引される。
【0065】
その一方、ポンプ室43aよりも下流側の蓄圧室45aでは、蓄圧室45a内の圧力に対してポンプ室43a内の圧力が低下することで、ボール弁39は閉弁位置に変位する。そのため、蓄圧室45aでは、コイルスプリング44によって吐出側弁体38が押圧されているのに伴い、ポンプ43の吸引駆動中も第4流路15dを介して下流側の記録ヘッド12に向けてインクが加圧供給され続ける。以後、上記と同様のポンプ43の吐出駆動が実行されて、ポンプ室43a内からインクが下流側の蓄圧室45aを経由して記録ヘッド12へと加圧供給される。
【0066】
ところで、プリンタ11においては、記録ヘッド12からのインク噴射などインク流路15の下流側でのインクの消費に伴ってインクカートリッジ13内のインクパック56がインク残量の減少に対応するように容積を減少させて萎むことになる。そして、インクパック56内のインク残量が記録ヘッド12からのインクの噴射による印刷のために必要とされるインク残量に満たなくなった場合には、それ以後の印刷のためにインクカートリッジ13の新旧交換が必要となる。そのため、本実施形態では、インクパック56内のインク残量が次のようにして検出される。
【0067】
すなわち、負圧発生装置47の駆動に伴いポンプ43が吸引駆動して吸引側バルブ41の吸引側弁体36が開弁状態になると、インクパック56が萎むことでその容積の減少量に対応するインク量のインクがインクパック56側からポンプ室43a内に吸引される。また、ポンプ43の吸引駆動に伴いダイアフラム37が上死点位置に向けて変位するので、磁気センサ59がダイアフラム37の上面に固着されたセンサターゲット58との上下方向での距離(すなわち、変位した位置までの変位量)の検出を開始する。そして、この
変位量の検出結果が制御装置60に対して出力されると、制御装置60は、所定時間(すなわち、通常においてダイアフラム37が下死点位置から上死点位置まで変位するのに要する時間)の経過後に、検出された変位量の値がダイアフラム37の上死点位置に対応する変位量の値として予め設定記憶された判定用閾値に達したか否かを判定する。そして、その判定結果に基づき、インクパック56内の供給可能インクのインク残量の有無を検出する。
【0068】
ここで、インクパック56内のインク残量が印刷時の記録ヘッド12からのインク噴射のために必要十分な残量である場合には、ポンプ43の吸引駆動に伴いダイアフラム37は上死点位置まで変位することになる。そのため、制御装置60は、磁気センサ59からの検出信号に基づき検出された変位量の値が上記の判定用閾値に達したと判定することで、インクパック56内には供給可能インクが十分残存しており、インクエンド状態及びインクニヤエンド状態ではないと検出する。
【0069】
一方、インクパック56内の供給可能インクのインク残量が僅少であるインクニヤエンド状態である場合には、ポンプ43の吸引駆動に伴いインクパック56内に残存している残り僅かのインクがインクパック56側からポンプ室43a内に吸引し尽くされる。そのため、インクパック56内の供給可能インクのインク残量はゼロとなり、インクパック56は、それ以上に容積を減少させるように萎むことができない状態になる。すると、ポンプ43のダイアフラム37は、インクパック56側からポンプ室43a内に流入するインクが僅少な量で終わりになるので、それ以上は上死点位置に向けての変位ができなくなり、下死点位置と上死点位置との間で変位を停止する。
【0070】
そして、磁気センサ59は、そのように下死点位置と上死点位置との間で変位を停止したダイアフラム37の変位量に対応した検出信号を制御装置60に出力する。すると、制御装置60では、その検出信号に基づき検出された変位量の値が上記の判定用閾値よりも小さいと判定することにより、インクパック56内の供給可能インクのインク残量がゼロとなり、且つポンプ43に吸引された僅少のインクのみを下流側へ供給可能なインクニヤエンド状態であると検出する。
【0071】
なお、ポンプ43の吸引駆動開始時点において既にインクエンド状態である場合には、ポンプ43が吸引駆動されても、インクパック56内には吸引可能なインクが残存していないので、ポンプ43のダイアフラム37は、吸引駆動開始時点の初期位置(例えば、下死点位置)から変位せず、その初期位置に停止したままとなる。そして、磁気センサ59は、そのように初期位置に停止したダイアフラム37の変位量(すなわち、変位量ゼロ)に対応した検出信号を制御装置60に出力する。すると、制御装置60では、その検出信号に基づき検出された変位量の値が上記の判定用閾値よりも小さく且つゼロであると判定することにより、インクパック56内の供給可能インクのインク残量がゼロであるインクエンド状態であると検出する。
【0072】
そして、以上のように、制御装置60は、インクニヤエンド状態であると検出すると、そのようなインクニヤエンド状態にあるインクパック56を収容したインクカートリッジ13の交換が近々必要となる旨を報知するための制御信号を出力し、その旨のメッセージを図示しないパネル上に表示させる。
【0073】
また、制御装置60は、インクエンド状態であると検出すると、そのようなインクエンド状態にあるインクパック56を収容したインクカートリッジ13の交換の必要性を報知するための制御信号を出力し、その旨のメッセージを図示しない表示パネル上に表示させる。また、これ以上はポンプ43を吸引駆動させてもインクパック56内からインクを吸引することはできないので、不必要なポンプ43の吸引駆動を停止させるべく、駆動モータ49の正転駆動を停止させる。
【0074】
本実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)上記実施形態では、ポンプ43がダイアフラム37をポンプ室43aの容積が増加する方向に変位させて該ポンプ室43a内にインクカートリッジ13側となる上流側からインクを吸引する吸引駆動時において、インクパック56内の供給可能インクのインク残量がゼロになった場合、ダイアフラム37の変位量は、インクパック56内のインク残量が必要十分な場合の変位量とは異なることになる。そのため、制御装置60は、そのようなポンプの吸引駆動時におけるダイアフラム37の変位量の相違を磁気センサ59を通じて検出することにより、インクパック56内のインク残量を誤検出の可能性がある演算によらず的確にインクエンド状態であると判定することができる。したがって、インクカートリッジ13側となる上流側から下流側に向けてインクパック56内のインクを最後まで無駄なく供給できる。
【0075】
(2)また、制御装置60は、ポンプ43の吸引駆動時におけるダイアフラム37の変位量が予め設定したインクパック56内のインク残量が必要十分であるとした場合における変位量よりも小さい場合に、インクパック56内の供給可能インクのインク残量はインクエンド状態又はインクニヤエンド状態であると判定する。すなわち、インクカートリッジ13における閉空間のインクパック56内に外部への供給可能な状態で残存している供給可能インクのインク残量がポンプ43の吸引駆動により吸引し尽くされた場合には、それ以上にインクパック56内からインクを吸引できなくなるため、ダイアフラム37の変位量はインクパック56内の供給可能インクのインク残量が必要十分である場合の変位量よりも小さなものとなる。したがって、制御装置60は、ポンプ43の吸引駆動時におけるダイアフラム37の変位量がインクパック56内の供給可能インクのインク残量が必要十分である場合の変位量よりも小さいことを磁気センサ59を通じて検出することにより、インクパック56内がインクエンド状態又はインクニヤエンド状態であることを確実に検出できる。
【0076】
(3)また、制御装置60は、ポンプ43の吸引駆動開始後における所定時間経過時点でのダイアフラム37の位置が予め設定したインクパック56内の供給可能インクのインク残量が必要十分であるとした場合における位置とは異なる場合に、インクパック56内の供給可能インクのインク残量はインクエンド状態又はインクニヤエンド状態であると判定する。すなわち、インクカートリッジ13における閉空間のインクパック56内の供給可能インクのインク残量がゼロになった場合には、ポンプ43を吸引駆動してもインクカートリッジ13のインクパック56内からインクを吸引することができないため、ダイアフラム37は予め設定したインクパック56内の供給可能インクのインク残量が必要十分であるとした場合における位置まで変位することがない。したがって、制御装置60は、ポンプ43の吸引駆動時におけるダイアフラム37の位置を磁気センサ59を通じて検出することにより、インクパック56内がインクエンド状態又はインクニヤエンド状態であることを確実に検出できる。
【0077】
(4)上記実施形態において、ダイアフラム37は、ポンプ室43aの容積が減少する方向にコイルスプリング42により付勢されている。したがって、ポンプ43をポンプ駆動させてインクを供給する場合には、ポンプ43を吸引駆動させる又は吐出駆動させる場合の何れか一方の場合にのみコイルスプリング42の付勢力に抗してダイアフラム37を変位させればよく、逆の場合はコイルスプリング42の付勢力でダイアフラム37が元の状態に変位するので、駆動モータ49の駆動負荷を低減することができる。
【0078】
(5)上記実施形態において、インクカートリッジ13は、その内部に可撓性を有するインクパック56が収納され、そのインクパック56の内部(閉空間の液体収容部)にインクを収容している。したがって、液体(インク)を収容する閉空間の液体収容部が液体(インク)残量に応じて容積が変化する液体供給源(インクパック56)を簡単な構成で得ることができる。
【0079】
(6)上記実施形態において、インク供給装置14は、制御装置60がインクパック56内の供給可能インクのインク残量がゼロであるインクエンド状態であると検出した場合には、駆動モータ49の駆動が停止される。したがって、インクエンド状態となってポンプ43の吸引駆動を継続してもインクを吸引できない場合には、それ以上の不必要な駆動モータ49の駆動を停止することにより、駆動モータ49の駆動負荷が過大になることを抑制できる。
【0080】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態において、制御装置60は、ポンプ43の吸引駆動時における駆動モータ49の駆動負荷に基づきインクパック56内の供給可能インクのインク残量がゼロであるインクエンド状態又はゼロに近いインクニヤエンド状態であるか否かを検出してもよい。具体的には、ポンプ43の吸引駆動時における駆動モータ49の駆動負荷が予め設定したインクパック56内のインク残量が必要十分であるとした場合における駆動負荷よりも大きい場合にインクパック56内のインク残量がインクエンド状態であると検出する。
【0081】
すなわち、インクカートリッジ13における閉空間のインクパック56内に外部への供給可能な状態で残存しているインクがポンプ43の吸引駆動により吸引し尽くされた場合には、それ以上にインクパック56内からインクを吸引できなくなるため、駆動モータ49の駆動負荷はインクパック56内のインク残量が必要十分である場合の駆動負荷よりも大きいものとなる。したがって、制御装置60は、ポンプ43の吸引駆動時における駆動モータ49の駆動負荷がインクパック56内のインク残量が必要十分である場合の駆動負荷よりも大きいということを検出することにより、インクパック56内の供給可能インクのインク残量がインクエンド状態であることを確実に検出することができる。
【0082】
なお、ポンプが容積ポンプであって、ギアポンプなどの回転式ポンプである場合には、駆動負荷の変化も大きいので、特に効果的である。すなわち、ポンプはインク流路15内に設けた送出部材を回転させることにより、インクパック56から吸引したインクを記録ヘッド12側へ供給可能なポンプとしてもよい。この場合、第2流路の下流端と第3流路の上流端が開口した凹部と、該凹部の開口を閉塞することによりポンプ室を形成し、該ポンプ室内にモータと連結して回転可能な送出部材を設ける。そして、送出部材を回転させて第2流路の開口付近の圧力を低下させることによりインクを吸引し、該吸引したインクを送出部材とインク流路の壁面とにより隔離した状態で第3流路の開口まで搬送して該第3流路へと送出する。
【0083】
回転式ポンプの例として、歯車ポンプの場合、送出部材はポンプ室内に互いに噛合するように設けられた2つの歯車となる。ルーツポンプの場合、送出部材はまゆ形の2つのロータとなる。そして、ベーンポンプの場合、径方向に伸縮可能なベーン(仕切り羽根)を備えたロータとなる。
【0084】
・上記実施形態において、ダイアフラム37の変位量を検出するためのセンサは磁気センサ59のような非接触式のセンサに限定されない。例えば、そのようなセンサとして、リミットスイッチをダイアフラム37の上死点位置近傍に配置し、ポンプ43の吸引駆動時においてダイアフラム37が上死点位置まで変位したときにダイアフラム37の一部がリミットスイッチに押圧接触する構成としてもよい。また、非接触式のセンサとして光センサなどを採用してもよい。
【0085】
・上記実施形態において、液体供給源であるインクパック56が有する可撓性は、ポンプ43の吸引力によって変形可能であればよい。すなわち、インクパック56は収容するインクの液面にそって変形するため、同量のインクを吸引した場合でも収容するインク量が多いほどインクパック56自体の変形量は小さい。したがって、インクパック56の可撓性をポンプ43の吸引力により変形可能な程度とすることにより、収容するインク量が減少するほどポンプ43の1回の吸引駆動で吸引可能なインク量が減少する。そのため、ダイアフラム37が上死点位置まで変位していないことを検出することにより、インクパック56内の供給可能インクのインク残量が減少したインクニヤエンド状態の検出をすることができ、インクカートリッジ13の交換の必要性をユーザに対して予め報知することができる。
【0086】
・上記実施形態において、内部に閉空間の液体収容部を有する液体供給源は可撓性を有した液体収容袋としてのインクパック56に限定されない。例えば、インクカートリッジ13内に液体収容部としてのインク収容室を形成し、そのインク収容室内のインクの液面上にインクを封止するための封止部材を浮動配置することにより、インク収容室を閉空間で容積が変化する液体収容部とする構成としてもよい。この場合は、インクカートリッジ13が液体供給源となる。要するに、液体残量に応じて容積が変化する閉空間の液体収容部を備えていればよい。
【0087】
・上記実施形態において、ポンプ43の駆動源として、加圧発生装置及び負圧発生装置47の機能を兼備した装置を適用してもよい。このようにした場合には、加圧及び負圧の発生を交互に実行することにより、付勢部材を設けることなくダイアフラム37を変位させてポンプ駆動することによりインクを供給することができる。
【0088】
なお、このような負圧発生装置47及び加圧発生装置の代わりに、ダイアフラム37を変位させる機構としてカム機構を用いてもよい。すなわち、例えば、圧縮バネのコイルスプリング42に押圧されたダイアフラム37に対して係止部が形成された牽引部材の基端部を固着する。そして、牽引部材の係止部に対してカム部材を当接させることにより、該牽引部材を介してダイアフラム37を変位させてもよい。また、引張りバネを適用した場合、ダイアフラム37に押圧部材の基端部を固着し、先端部をカム部材によってダイアフラム37側に押圧するようにしてもよい。
【0089】
そして、牽引部材もしくは押圧部材の変位量、又はカム部材を駆動するモータの駆動負荷に基づいて、インクエンド状態及びインクニヤエンド状態を検出するようにしてもよい。
【0090】
・ポンプ43は、負圧室43b内を往復運動可能なピストンによって、直接ポンプ室43aを押圧すると共に、往復運動に伴ってポンプ室43a内の容積を変化させるピストンポンプを用いてもよい。この場合、ピストンの変位量及びピストンを変位させる際の駆動負荷に基づいてインクエンド状態及びインクニヤエンド状態を検出することができる。同様に、蓄圧室45aもピストン構造を用いることができる。
【0091】
・上記実施形態において、吸引側バルブ41として電磁弁を用いてもよい。その際は、インクカートリッジ13のインクエンドに伴ってポンプ43の駆動を停止した場合に吸引側バルブ41を閉弁状態に切り替える必要がある。
【0092】
・上記実施形態において、付勢部材はコイルスプリング40,42,44ではなく、例えば板ばね、ゴム等の他の形態の付勢部材を用いてもよい。このような付勢部材によれば、負圧発生装置47の駆動状態に関係なく吸引側バルブ41、吐出側バルブ45、及びポンプ室43a内のインクに付与する付勢力を維持することができる。
【0093】
・なお、本明細書における「液体」には、インク以外の他の液体(無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)等を含む)、機能材料の粒子が液体に分散又は混合されてなる液状体、ゲルのような流状体も含むものとする。そして、こうした「液体」を噴射したり吐出したりする液体噴射装置としては、例えば、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ及び面発光ディスプレイの製造などに用いられる電極材や色材(画素材料)などの材料を分散または溶解のかたちで含む液状体を噴射する液状体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化
樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置、ゲル(例えば物理ゲル)などの流状体を噴射する流状体噴射装置であってもよい。
【0094】
・上記実施形態では、液体噴射装置をインクジェット式プリンタ11に具体化したが、インク以外の他の液体を噴射したり吐出したりする液体噴射装置を採用してもよい。微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッド等を備える各種の液体噴射装置に流用可能である。なお、液滴とは、上記液体噴射装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、液体噴射装置が噴射させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インク及び油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。液体噴射装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルタの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散又は溶解のかたちで含む液体を噴射する液体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置、捺染装置やマイクロディスペンサ等であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置を採用してもよい。そして、これらのうちいずれか一種の液体噴射装置に本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本実施形態におけるインクジェット式プリンタの模式図。
【図2】(a)はポンプが吸引駆動時の液体供給装置の模式図、(b)はポンプが吐出駆動時の液体供給装置の模式図。
【図3】(a)はインク噴射時の液体供給装置の模式図、(b)はインク噴射及びポンプが吸引駆動時の液体供給装置の模式図。
【符号の説明】
【0096】
15…液体供給流路としてのインク流路、37…変位部材としてのダイアフラム、42…付勢部材としてのコイルスプリング、43…ポンプ、43a…ポンプ室、56…液体供給源としてのインクパック、59…液体残量検出手段を構成する磁気センサ、60…液体残量検出手段を構成する制御装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体供給源側となる上流側から液体が消費される下流側に向けて液体を供給する液体供給流路と、
該液体供給流路の一部をポンプ室として該ポンプ室の容積を増減させるように該ポンプ室の内面の少なくとも一部を構成する変位部材が変位することによりポンプ駆動するポンプと、
前記液体供給源における液体残量を検出する液体残量検出手段とを備えた液体供給装置であって、
前記液体供給源は、前記液体を収容する閉空間の液体収容部の容積が液体残量に応じて変化するように構成されると共に、
前記液体残量検出手段は、前記ポンプが前記変位部材を前記ポンプ室の容積が増加する方向に変位させて該ポンプ室内に前記液体を吸引する吸引駆動時における前記変位部材の変位量に基づき前記液体収容部内の液体残量がゼロである液体エンド状態であると検出することを特徴とする液体供給装置。
【請求項2】
液体供給源側となる上流側から液体が消費される下流側に向けて液体を供給する液体供給流路と、
該液体供給流路の一部をポンプ室として該ポンプ室の容積を増減させるように該ポンプ室の内面の少なくとも一部を構成する変位部材が変位することによりポンプ駆動するポンプと、
前記液体供給源における液体残量を検出する液体残量検出手段とを備えた液体供給装置であって、
前記液体供給源は、前記液体を収容する閉空間の液体収容部の容積が液体残量に応じて変化するように構成されると共に、
前記液体残量検出手段は、前記ポンプが前記変位部材を前記ポンプ室の容積が増加する方向に変位させて該ポンプ室内に前記液体を吸引する吸引駆動時における前記変位部材の変位量に基づき前記液体収容部内の液体残量を検出することを特徴とする液体供給装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の液体供給装置において、
前記液体残量検出手段は、前記ポンプの前記吸引駆動時における前記変位部材の変位量が予め設定した前記液体収容部内の液体残量が必要十分であるとした場合における変位量よりも小さい場合に、前記液体収容部内の液体残量がゼロである液体エンド状態又はゼロに近い液体ニヤエンド状態であると検出することを特徴とする液体供給装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のうちいずれか一項に記載の液体供給装置において、
前記液体残量検出手段は、前記ポンプの前記吸引駆動時における前記変位部材の位置を検出するものであって、吸引開始後における所定時間経過時点での前記変位部材の位置が予め設定した前記液体収容部内の液体残量が必要十分であるとした場合における位置とは異なる場合に、前記液体収容部内の液体残量がゼロである液体エンド状態又はゼロに近い液体ニヤエンド状態であると検出することを特徴とする液体供給装置。
【請求項5】
液体供給源側となる上流側から液体が消費される下流側に向けて液体を供給する液体供給流路と、
該液体供給流路の一部をポンプ室として該ポンプ室の容積を増減させるように該ポンプ室の内面の少なくとも一部を構成する変位部材が変位することによりポンプ駆動するポンプと、
前記液体供給源における液体残量を検出する液体残量検出手段とを備えた液体供給装置であって、
前記液体供給源は、前記液体を収容する閉空間の液体収容部の容積が液体残量に応じて変化するように構成されると共に、
前記液体残量検出手段は、前記ポンプが前記変位部材を前記ポンプ室の容積が増加する方向に変位させて該ポンプ室内に前記液体を吸引する吸引駆動時における前記ポンプの駆動負荷に基づき前記液体収容部内の液体残量がゼロである液体エンド状態であると検出することを特徴とする液体供給装置。
【請求項6】
液体供給源側となる上流側から液体が消費される下流側に向けて液体を供給する液体供給流路と、
該液体供給流路の一部をポンプ室として該ポンプ室の容積を増減させるように該ポンプ室の内面の少なくとも一部を構成する変位部材が変位することによりポンプ駆動するポンプと、
前記液体供給源における液体残量を検出する液体残量検出手段とを備えた液体供給装置であって、
前記液体供給源は、前記液体を収容する閉空間の液体収容部の容積が液体残量に応じて変化するように構成されると共に、
前記液体残量検出手段は、前記ポンプが前記変位部材を前記ポンプ室の容積が増加する方向に変位させて該ポンプ室内に前記液体を吸引する吸引駆動時における前記ポンプの駆動負荷に基づき前記液体収容部内の液体残量を検出することを特徴とする液体供給装置。
【請求項7】
請求項5又は請求項6に記載の液体供給装置において、
前記液体残量検出手段は、前記ポンプの前記吸引駆動時における前記ポンプの駆動負荷が予め設定した前記液体収容部内の液体残量が必要十分であるとした場合における駆動負荷よりも大きい場合に、前記液体収容部内の液体残量がゼロである液体エンド状態又はゼロに近い液体ニヤエンド状態であると検出することを特徴とする液体供給装置。
【請求項8】
請求項1〜請求項7のうち何れか一項に記載の液体供給装置において、
前記変位部材は、前記ポンプ室の容積が減少する方向に付勢部材により付勢されていることを特徴とする液体供給装置。
【請求項9】
液体供給源側となる上流側から液体が消費される下流側に向けて液体を供給する液体供給流路と、
該液体供給流路の途中位置に設けられ、上流側から吸引した液体を隔離して下流側へ送出する送出部材が前記液体供給流路内で回転することによりポンプ駆動するポンプと、
前記液体供給源における液体残量を検出する液体残量検出手段とを備えた液体供給装置であって、
前記液体供給源は、前記液体を収容する閉空間の液体収容部の容積が液体残量に応じて変化するように構成されると共に、
前記液体残量検出手段は、ポンプ駆動時における前記ポンプの駆動負荷に基づき前記液体収容部内の液体残量を検出することを特徴とする液体供給装置。
【請求項10】
請求項9に記載の液体供給装置において、
前記液体残量検出手段は、前記ポンプ駆動時における前記ポンプの駆動負荷が予め設定した前記液体収容部内の液体残量が必要十分であるとした場合における駆動負荷よりも大きい場合に、前記液体収容部内の液体残量がゼロである液体エンド状態又はゼロに近い液体ニヤエンド状態であると検出することを特徴とする液体供給装置。
【請求項11】
請求項1〜請求項10のうち何れか一項に記載の液体供給装置において、
前記液体供給源は、可撓性を有する液体収容袋であり、該液体収容袋の内部が前記液体収容部とされていることを特徴とする液体供給装置。
【請求項12】
請求項1〜請求項11のうち何れか一項に記載の液体供給装置において、
前記液体残量検出手段が前記液体エンド状態であると検出した場合には、前記ポンプの駆動が停止されることを特徴とする液体供給装置。
【請求項13】
液体を噴射する液体噴射ヘッドと、該液体噴射ヘッドに前記液体を供給する請求項1〜12のうちいずれか一項に記載の液体供給装置とを備えたことを特徴とする液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−166473(P2009−166473A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−222050(P2008−222050)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】