説明

液体受け容器の製造方法

【課題】 軽量でありながら、液体漏れが発生せず、手作業でのシール処理が不要であり、機械的強度の高い液体受け容器を実現する。
【解決手段】 ドレンパンの母材1に形成された水受け部6の内壁面にエポキシ樹脂を塗布し、母材1を容器本体20の凹部23に収容する。水受け部6は蓋10の加圧室11に露出しており、加圧室11に対応する母材1の裏面側は、容器本体20の減圧室21に露出している。加圧装置30および減圧装置40を駆動し、水受け部6に塗布されたエポキシ樹脂を内部に浸透させる。母材1を自然養生し、エポキシ樹脂を硬化させる。母材1内に形成された連通孔は硬化したエポキシ樹脂によって閉塞され、水漏れがなくなる。また、機械的強度が高くなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、落下する液体を受けて貯留する液体受け容器の製造方法に関し、詳しくは、隣接する発泡セル同士が融着することにより独立気泡構造が形成されており、かつ、独立気泡間が連通することにより一の面から他の面に連通した連通孔が存在する発泡樹脂成型体を母材とする液体受け容器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の液体受け容器として、例えば、エアコンなどの空気調和装置に用いられているドレンパン、冷蔵庫などの冷却装置に用いられている露受皿などが知られている。
そして、この種の液体受け容器は、発泡樹脂により成型されており、その成型方法として、例えば特開平9−39018号公報(特許文献1)に記載のものが知られている。図35は、係る特許公報において従来技術として記載された発泡樹脂成型機の模式図である。以下、その発泡樹脂成型機を用いた発泡樹脂成型品の成型工程について説明する。
【0003】
最初に、型開閉用シリンダ300を作動させて雄型100を雌型200の方へ水平移動させて型締めを行う。続いて、雄型100と雌型200との合わせ面に形成されるキャビティ360に発泡樹脂成型原料(発泡ビーズ)310を充填する。続いて、加熱された水蒸気を流入管330から雄型100および雌型200の内部に流入して上記合わせ面を加熱し、キャビティ360内の発泡樹脂成型原料310を溶融させる。続いて、冷却水を流入管330から流入し、その流入した冷却水を雄型100および雌型200の内部に形成された複数の噴射ノズル350から噴射し、上記合わせ面を冷却する。続いて、型開閉用シリンダ300を作動させて雄型100を水平移動させて型開きする。続いて、エジェクター320を移動させてエジェクターピン370を雌型200の内部からキャビティ360内に突出させ、キャビティ360内で固化した発泡樹脂成型品を離型する。
【0004】
【特許文献1】特開平9−39018号公報(第2段落、図8)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、液体受け容器の軽量化を優先し、発泡樹脂成型原料の発泡倍率を高くすると、隣接する発泡セル同士が融着することにより形成された独立気泡間が連通し、一の面から他の面に連通した連通孔が形成されてしまい、水漏れが発生するという問題がある。
また、液体受け容器の圧縮強度、曲げ強度および引張強度などの機械的強度が低下するという問題もある。
さらに、液体受け容器において水漏れが懸念される部分に手作業でシール処理を施さなければならないため、製造効率が低下するという問題もある。
【0006】
そこでこの発明は、軽量でありながら、液体漏れが発生せず、手作業でのシール処理が不要であり、機械的強度の高い液体受け容器を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、上記目的を達成するため、特許請求の範囲の請求項1に記載の発明では、隣接する発泡セル(1d)同士が融着することにより独立気泡構造が形成されており、かつ、独立気泡間が連通することにより一の面(1b)から他の面(1c)に連通した連通孔(1e)が存在する発泡樹脂成型体を母材(60)とする液体受け容器の製造方法において、前記発泡セル間の空隙率が0.2〜7%であり、かつ、30mN/m以下の界面張力を有する液体が、0.1MPa以上の差圧を所定の面間に発生させることによって浸透する母材と、前記発泡セルを溶解しない性質を有し、かつ、粘度が2000mPa・s未満であり、さらに、硬化前と硬化後の重量減少率が20%未満であるエポキシ樹脂(E)と、前記母材を収容する容器(51,52)と、前記容器の内部を減圧する減圧装置(40,41)とを用意し、前記母材が前記容器の中に収容され、前記一の面のうち、所定の領域(62,63)が前記エポキシ樹脂によって覆われた状態を作る第1工程と、前記減圧装置により、前記他の面側に形成された容器内部の空間のうち、前記所定の領域に対応する空間内を減圧し、前記所定の領域を覆うエポキシ樹脂を前記連通孔に浸透させ、かつ、前記母材の一の面にエポキシ樹脂製の膜(F)が形成された状態にする第2工程と、前記連通孔に浸透したエポキシ樹脂および前記所定の領域に形成されたエポキシ樹脂製の膜を硬化させる第3工程と、を実行することにより、前記連通孔が硬化したエポキシ樹脂によって閉塞され、かつ、前記所定の領域が硬化したエポキシ樹脂製の膜により被覆された状態にするという技術的手段を用いる。
【0008】
請求項2に記載の発明では、隣接する発泡セル(1d)同士が融着することにより独立気泡構造が形成されており、かつ、独立気泡間が連通することにより一の面(1b)から他の面(1c)に連通した連通孔(1e)が存在する発泡樹脂成型体を母材(60)とする液体受け容器の製造方法において、前記発泡セル間の空隙率が0.2〜7%であり、かつ、30mN/m以下の界面張力を有する液体が0.1MPa以上の上下差圧を所定の面間に発生させることによって浸透する母材と、前記発泡セルを溶解しない性質を有し、かつ、粘度が2000mPa・s未満であり、さらに、硬化前と硬化後の重量減少率が20%未満であるエポキシ樹脂(E)と、前記母材を収容する容器と、前記容器の内部の圧力を高める加圧装置(30,31)とを用意し、前記母材が前記容器の中に収容され、前記一の面のうち、所定の領域(64,65)が前記エポキシ樹脂によって覆われた状態を作る第1工程と、前記加圧装置により、前記一の面側に形成された容器内部の空間のうち、前記所定の領域に対応する空間内の圧力を上昇させ、前記所定の領域を覆うエポキシ樹脂を前記連通孔に浸透させ、かつ、前記所定の領域にエポキシ樹脂製の膜(F)が形成された状態にする第2工程と、前記連通孔に浸透したエポキシ樹脂および前記所定の領域に形成されたエポキシ樹脂製の膜を硬化させる第3工程と、を実行することにより、前記連通孔が硬化したエポキシ樹脂によって閉塞され、かつ、前記所定の領域が硬化したエポキシ樹脂製の膜により被覆された状態にするという技術的手段を用いる。
【0009】
請求項3に記載の発明では、隣接する発泡セル(1d)同士が融着することにより独立気泡構造が形成されており、かつ、独立気泡間が連通することにより一の面(1b)から他の面(1c)に連通した連通孔(1e)が存在する発泡樹脂成型体を母材(1)とする液体受け容器の製造方法において、前記発泡セル間の空隙率が0.2〜7%であり、かつ、30mN/m以下の界面張力を有する液体が0.1MPa以上の上下差圧を所定の面間に発生させることによって浸透する母材と、前記発泡セルを溶解しない性質を有し、かつ、粘度が2000mPa・s未満であり、さらに、硬化前と硬化後の重量減少率が20%未満であるエポキシ樹脂(E)と、前記母材を収容する容器(10,20)と、前記容器の内部の圧力を高める加圧装置(30)と、前記容器の内部を減圧する減圧装置(40)とを用意し、前記母材が前記容器の中に収容され、前記一の面のうち、所定の領域(3b,6b,6c,9b,9c,8a)が前記エポキシ樹脂によって覆われた状態を作る第1工程と、前記加圧装置により、前記一の面側に形成された容器内部の空間のうち、前記所定の領域に対応する空間内の圧力を上昇させるとともに、前記減圧装置により、前記他の面側に形成された容器内部の空間のうち、前記所定の領域に対応する空間内を減圧し、前記所定の領域を覆うエポキシ樹脂を前記連通孔に浸透させ、かつ、前記所定の領域にエポキシ樹脂製の膜(F)が形成された状態にする第2工程と、前記連通孔に浸透したエポキシ樹脂および前記所定の領域に形成されたエポキシ樹脂製の膜を硬化させる第3工程と、を実行することにより、前記連通孔が硬化したエポキシ樹脂によって閉塞され、かつ、前記所定の領域が硬化したエポキシ樹脂製の膜により被覆された状態にするという技術的手段を用いる。
【0010】
請求項4に記載の発明では、請求項1に記載の液体受け容器の製造方法において、前記母材(60)の一の面には、複数の前記所定の領域(62,63)が設定されており、前記容器(51,52)は、前記各所定の領域と対応する前記他の面の各領域と接する複数の減圧室(C1,C2)を内部に備えており、前記減圧装置(40,41)は、前記各減圧室をそれぞれ異なる大きさで減圧するように構成されており、前記第1工程は、前記他の面の各領域がそれぞれ対応する前記各減圧室と接した状態となるように前記母材を前記容器の中に収容し、前記各所定の領域がそれぞれ前記エポキシ樹脂(E)によって覆われた状態を作る工程であり、前記第2工程は、前記減圧装置によって前記各減圧室をそれぞれ異なる大きさで減圧し、前記各所定の領域を覆うエポキシ樹脂を前記連通孔(1e)に浸透させ、かつ、前記各所定の領域にエポキシ樹脂製の膜(F)が形成された状態にする工程であるという技術的手段を用いる。
【0011】
請求項5に記載の発明では、請求項2に記載の液体受け容器の製造方法において、前記母材(60)の一の面には、複数の前記所定の領域(64,65)が設定されており、前記容器は、その内部に前記各所定の領域と対応する複数の加圧室(C3,C4)を備えており、前記加圧装置(30,31)は、前記各加圧室をそれぞれ異なる大きさで加圧するように構成されており、前記第1工程は、前記各所定の領域がそれぞれ対応する前記各加圧室と接した状態となるように前記母材を前記容器の中に収容し、前記各所定の領域がそれぞれ前記エポキシ樹脂(E)によって覆われた状態を作る工程であり、前記第2工程は、前記加圧装置によって前記各加圧室の内部圧力をそれぞれ異なる大きさに上昇させ、前記各所定の領域を覆うエポキシ樹脂を前記連通孔(1e)に浸透させ、かつ、前記各所定の領域にエポキシ樹脂製の膜(F)が形成された状態にする工程であるという技術的手段を用いる。
【0012】
請求項6に記載の発明では、請求項3に記載の液体受け容器の製造方法において、前記母材(60)の一の面には、複数の前記所定の領域(64,65)が設定されており、前記容器は、その内部に前記各所定の領域と対応する複数の加圧室(C3,C4)を備えるとともに、前記各所定の領域と対応する前記他の面(1c)の各領域と接する複数の減圧室(C1,C2)を備えており、前記加圧装置(30,31)は、前記各加圧室をそれぞれ異なる大きさで加圧するように構成されており、前記減圧装置(40,41)は、前記各減圧室をそれぞれ異なる大きさで減圧するように構成されており、前記第1工程は、前記各所定の領域がそれぞれ対応する前記各加圧室と接しており、かつ、前記各所定の領域と対応する前記他の面の各領域がそれぞれ対応する前記各減圧室と接した状態となるように前記母材を前記容器の中に収容し、さらに、前記各所定の領域がそれぞれ前記エポキシ樹脂(E)によって覆われた状態を作る工程であり、前記第2工程は、前記加圧装置によって前記各加圧室の内部圧力をそれぞれ異なる大きさに上昇させるとともに、前記減圧装置によって前記各減圧室をそれぞれ異なる大きさで減圧し、前記各所定の領域を覆うエポキシ樹脂をそれぞれ前記連通孔(1e)に浸透させ、かつ、前記各所定の領域にそれぞれエポキシ樹脂製の膜(F)が形成された状態にする工程であるという技術的手段を用いる。
【0013】
請求項7に記載の発明では、請求項1ないし請求項3のいずれか1つに記載の液体受け容器の製造方法において、前記第1工程は、前記容器の中に収容された前記母材の前記所定の領域を覆った前記エポキシ樹脂(E)の表面にフィルムを配置し、前記母材の一の面が前記フィルムによって覆われた状態にする工程をさらに有するという技術的手段を用いる。
【0014】
請求項8に記載の発明では、請求項4ないし請求項6のいずれか1つに記載の液体受け容器の製造方法において、前記第1工程は、前記容器の中に収容された前記母材の前記各所定の領域を覆った前記エポキシ樹脂(E)の表面にフィルムを配置し、前記母材の一の面が前記フィルムによって覆われた状態にする工程をさらに有するという技術的手段を用いる。
【0015】
請求項9に記載の発明では、請求項1ないし請求項8のいずれか1つに記載の液体受け容器の製造方法において、前記エポキシ樹脂(E)は、揮発性有機溶剤を含まないものであるという技術的手段を用いる。
【0016】
揮発性有機溶剤とは、例えば、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系、ジアセトンアルコール、イソプロピルアルコールなどのアルコール系、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルアセテートなどのエーテル系、トルエン、キシレンなどの炭化水素系などの溶剤である。なお、通常可塑剤などで使用する高沸点の有機化合物、低分子量ポリブデンなどの液状高分子の溶剤は、この限りでない。
【0017】
請求項10に記載の発明では、請求項1ないし請求項9のいずれか1つに記載の液体受け容器の製造方法において、前記エポキシ樹脂(E)に無機フィラーを混合してなる流動体を前記エポキシ樹脂に代えて用いるという技術的手段を用いる。
【0018】
無機フィラーとは、例えば、無機繊維、電気伝導性フィラー、磁性体フィラー、熱伝導性フィラーなどである。
無機繊維としては、金属繊維、ガラス繊維、岩石繊維、鉱滓繊維、炭素繊維などを用いることができる。
電気伝導性フィラーとしては、金、銀、銅、ニッケル、パラヂウム、白金、コバルト、ロジウム、イリジウム、鉄、ルテニウム、オスミウム、アルミニウム、亜鉛、錫、鉛などの金属を粒子状にしたもの、それら金属の合金を粒子状にしたもの、酸化錫などの金属酸化物を粒子状にしたもの、カーボンなどの導電性炭素同素体を粒子状にしたも、ガラス、カーボン、マイカ、プラスチックなどの粒子の表面に導電の金属をコートしたものなどを用いることができる。
【0019】
また、磁性体フィラーとしては、コバルトフェライト系磁性体、メタル磁性体、CrO、γ−Fe、FeN、Baフェライト等を粉末状にしたものを用いることができる。さらに、熱伝導性フィラーとしては、銅、アルミニウム、ベリリア、窒化アルミニウム、窒化ボロン、アルミナ、マグネシア、チタニア、ダイアモンド、鉛、ジルコン等を粉体状にしたものを用いることができる。
【0020】
請求項11に記載の発明では、請求項1ないし請求項9のいずれか1つに記載の液体受け容器の製造方法において、前記エポキシ樹脂(E)に天然または合成の短繊維を5重量%以下混合してなる流動体を前記エポキシ樹脂に代えて用い、前記流動体中のエポキシ樹脂を前記連通孔に浸透させることにより、前記連通孔が硬化したエポキシ樹脂によって閉塞され、かつ、前記所定の領域が硬化した前記流動体の膜により被覆された状態にするという技術的手段を用いる。
【0021】
天然の短繊維としては、例えば、綿、麻、ジュートなどの植物繊維、羊毛、絹糸などの動物性繊維、セルロースなどの食物繊維などを用いることができる。また、合成の短繊維としては、ビスコスレーヨン繊維、ガラス繊維、炭素繊維、アルミナ繊維、アラミド繊維、炭素繊維、ナイロン繊維、ビニロン繊維、ポリエステル繊維、金属繊維などを用いることができる。
【0022】
なお、請求項1ないし請求項11に係る発明において、エポキシ樹脂とは、エポキシ樹脂に反応性希釈剤および硬化剤を混合してなるものをいう。また、エポキシ樹脂に溶剤を混合したもの、および混合していないものをいう。
【0023】
請求項1ないし請求項11に記載の発泡樹脂成型体とは、金型内に発泡樹脂原料を充填し、それを加熱発泡させて成型した金型の形状通りの発泡樹脂成型体そのもの、あるいは、ブロック成形機によって作られる大型の発泡樹脂成型体を加熱したニクロム線等によって所望の形状に溶断することによって作成された発泡樹脂成型体のことである。
【0024】
さらには、上記の発泡樹脂成型体には、上記の金型の形状通りの発泡樹脂成型体そのもの、または、上記の溶断により作成された発泡樹脂成型体の所定の表面を粗面化した発泡樹脂成型体などが含まれる。
なお、上記の括弧内の符号は、後述する実施形態において使用する符号と対応するものである。
【発明の効果】
【0025】
(請求項1ないし請求項11に係る発明の効果)
液体受け容器の母材の一の面のうち、所定の領域が、硬化したエポキシ樹脂製の膜により被覆されるため、上記所定の領域における連通孔に浸透した液体が漏れるおそれのない液体受け容器を実現することができる。
特に、連通孔が、硬化したエポキシ樹脂によって閉塞されるため、エポキシ樹脂製の膜が破損した場合であっても、その破損箇所から連通孔を通じて液体が漏れるおそれがない。
【0026】
また、融着が不完全な部分が母材に存在する場合であっても、その部分にもエポキシ樹脂が浸透するため、融着が不完全なことに起因する液体漏れをなくすことができる。
【0027】
また、母材は、発泡セル間の空隙率が0.2〜7%であり、かつ、30mN/m以下の界面張力を有する液体が、0.1MPa以上の差圧を所定の面間に発生させることによって浸透するという性質を有する。つまり、母材には、水(水の界面張力は、約70mN/m)よりも界面張力の小さい液体(例えば、油など)が0.1MPa以上の差圧を所定の面間に発生させることによって浸透するほど平均径が小さい(例えば、10μm)連通孔が存在し、これを含めそれ以上の径の連通部をエポキシ樹脂で充填する。
【0028】
しかし、エポキシ樹脂は、発泡セルを溶解しない性質を有し、かつ、粘度が2000mPa・s未満であり、さらに、減圧装置または加圧装置あるいは両装置を使用するため、上記のような平均径の小さい連通孔にもエポキシ樹脂を浸透させることができる。また、エポキシ樹脂は、発泡セルとの接着性が良いため、連通孔内に浸透したエポキシ樹脂が母材の外部へ流出するおそれがない。
従って、ピンホールの発生し難い液体受け容器を製造することができる。
【0029】
なお、水を媒質とするエマルジョンを母材の連通孔に浸透させる方法も考えられるが、連通孔に浸透したエマルジョンが水に溶解しないようにするため、エマルジョンに含まれる多量(例えば、70重量%)の水を蒸発させる必要があり、乾燥に長時間を要するという問題がある。また、乾燥すると体積が大幅に減少するため、連通孔を閉塞することにならない。さらに、エマルジョンには、樹脂を水中に微分散させるために界面活性剤効果を持つ補助剤が含まれているため、空気などの気体を巻き込み易い。これを減圧下においた場合、巻き込んだ気体は大きな泡となってしまい、連通孔を閉塞する効果を阻害する。
しかし、本願の請求項1ないし請求項11に係る発明では、エポキシ樹脂を使用するため、乾燥に長時間を要しない。また、乾燥しても体積が大幅に減少しないため、連通孔の閉塞状態を維持することができる。さらに、エポキシ樹脂は、界面活性剤効果を持つ補助剤を含まないため、連通孔を閉塞する効果が阻害されることもない。
【0030】
さらに、母材の所定の領域における連通孔は、硬化したエポキシ樹脂が充填された状態になるため、一般の発泡樹脂製の液体受け容器よりも、上記所定の領域における圧縮強度、曲げ強度および引張強度などの機械的強度を高くすることができる。
つまり、機械的強度を高めたい所望の領域にエポキシ樹脂を浸透させることにより、軽量でありながら、液体漏れが発生せず、圧縮強度、曲げ強度および引張強度などの機械的強度が高い液体受け容器を製造することができる。さらに、エポキシ樹脂は、耐油性、耐熱性に優れるため、液体受け容器の耐油性および耐熱性を高めることもできる。
【0031】
さらに、エポキシ樹脂は、発泡セルを溶解しない性質を有し、かつ、硬化前と硬化後の重量減少率が20%未満であるため、エポキシ樹脂中から揮発する物質の量が比較的少なく、硬化するまでの時間を比較的短くすることができる。また、硬化前後の母材の重量誤差を小さくすることができる。
【0032】
さらに、液体受け容器の所定箇所に金属製または合成樹脂製の別部材を取り付ける構造の場合、従来の方法では、その別部材の周囲に手作業などでシール処理を施す必要があったが、本願の請求項1ないし請求項11に係る発明によれば、上記別部材の周囲にもエポキシ樹脂が浸透し、自動的にシール処理が施されるため、従来のように手作業でシール処理を施す必要がない。
例えば、母材に貫通形成された排水口にソケットを挿入する構造の場合、排水口の周囲もエポキシ樹脂で覆っておくことにより、排水溝の周囲にもエポキシ樹脂が浸透し、自動的にシール処理が施されるため、別工程でシール材を用いて排水口の周囲にシール処理を施す作業を省くことができる。
従って、液体受け容器の製造効率を高めることができる。
【0033】
さらに、母材の所定の領域においてエポキシ樹脂が浸透しない連通孔、つまりピンホールの発生する確率は極めて低いため、製造された液体受け容器に対する液体漏れの抜き打ち検査を行う頻度を極めて少なくすることができる。
従って、液体受け容器の製造効率を高めることができる。
【0034】
(請求項3に係る発明の効果)
加圧装置により、母材の一の面側に形成された容器内部の空間のうち、前記所定の領域に対応する空間内の圧力を上昇させるとともに、減圧装置により、母材の他の面側に形成された容器内部の空間のうち、前記所定の領域に対応する空間内を減圧するため、加圧装置単独または減圧装置単独の場合よりも、前記所定の領域を覆うエポキシ樹脂を連通孔に効率良く浸透させることができる。
従って、液体受け容器の製造効率を高めることができる。
【0035】
(請求項4ないし請求項6に係る発明の効果)
母材の一の面に設定された各所定の領域毎にエポキシ樹脂の浸透量を異ならせることができる。
従って、特定の領域におけるエポキシ樹脂の浸透量を他の領域よりも増やすことにより、特定の領域におけるシール効果を高めたり、強度を高めたりすることができる。
【0036】
また、領域に応じてエポキシ樹脂の浸透量を制御することができるため、どの領域にも同じ量のエポキシ樹脂を浸透させる方法よりも、エポキシ樹脂の消費量を少なくすることができる。
従って、液体受け容器の製造コストを低減することができる。
【0037】
(請求項6に係る発明の効果)
加圧装置によって各加圧室の内部圧力をそれぞれ異なる大きさに上昇させるとともに、減圧装置によって各減圧室をそれぞれ異なる大きさで減圧するため、加圧装置単独または減圧装置単独の場合よりも、各所定の領域にエポキシ樹脂を効率良く浸透させることができる。
従って、液体受け容器の製造効率を高めることができる。
【0038】
(請求項7および請求項8に係る発明の効果)
母材の一の面がフィルムによって覆われた状態にすることにより、所定の領域における圧力差、または、所定の領域にかかる圧力を均等にすることができるので、エポキシ樹脂を所定の領域に均等に浸透させることができる。
また、局部的に大きなピンホールが発生している母材の場合は、減圧または加圧時あるいは減圧および加圧時に、ピンホール中に浸入した空気によってピンホール中のエポキシ樹脂が押し出され、そのままピンホールが残ってしまうおそれがあるが、フィルムによって空気の浸入が阻止されるため、ピンホールが発生するおそれがない。
さらに、フィルムの表面に所望の印刷を施すことにより、液体受け容器の意匠性を向上させることもできる。
【0039】
(請求項9に係る発明の効果)
エポキシ樹脂は、揮発性有機溶剤を含まないものであるため、液体受け容器を常温常圧下で使用中に液体受け容器から有機化学物質(VOC(Volatile Organic Compounds))が大気中に揮発するおそれがない。
従って、揮発した有機化学物質が人体に悪影響を及ぼすなど、環境汚染が発生するおそれがない。
【0040】
(請求項10に係る発明の効果)
エポキシ樹脂に無機フィラーを混合してなる流動体は、エポキシ樹脂単独よりも粘度および強度などの物理的性質を変性させることができるため、エポキシ樹脂単独よりも、強度の高い液体受け容器を製造することができる。
また、母材の連通孔の径よりも長いカット長または繊維径を有する無機繊維をエポキシ樹脂に混合した場合は、流動体中のエポキシ樹脂のみを母材に浸透させ、無機繊維が混合した流動体を母材の所定の領域に残留させることができる。
従って、母材の所定の領域に残留した流動体を硬化させることにより、母材の所定の領域における強度をエポキシ樹脂単独を用いた場合よりも高めることができる。
また、流動体中のエポキシ樹脂のみが上記所定の領域における連通孔に浸透するため、液体漏れ防止などの効果を奏することができる。
さらに、無機材料を選択することにより、その選択した無機材料の性質を上記流動体に持たせることができる。例えば、銅をエポキシ樹脂に混合することにより、抗菌効果を有するドレンパンを製造することができる。さらに、無機物質であるため、揮発によって環境汚染が発生するおそれもない。さらに、流動体は、エポキシ樹脂単独よりも粘度が高いため、塗布時のタレなどを改良することができる。
【0041】
(請求項11に係る発明の効果)
エポキシ樹脂に天然または合成の短繊維を5重量%混合してなる流動体は、エポキシ樹脂単独よりも粘度および強度などの物理的性質を変性させることができるため、エポキシ樹脂単独よりも、強度の高い液体受け容器を製造することができる。
また、カット長または繊維径が母材の連通孔よりも長く、連通孔に浸透し難い短繊維をエポキシ樹脂に混合した場合は、流動体中のエポキシ樹脂のみを母材に浸透させ、短繊維が混合した流動体を母材の所定の領域に残留させることができる。
従って、母材の所定の領域に残留した流動体を硬化させることにより、母材の所定の領域における強度をエポキシ樹脂単独を用いた場合よりも高めることができる。
また、流動体中のエポキシ樹脂のみが上記所定の領域における連通孔に浸透するため、液体漏れ防止などの効果を奏することができる。
さらに、流動体は、エポキシ樹脂単独よりも粘度が高いため、塗布時のタレなどを改良することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
<第1実施形態>
この発明の第1実施形態について図を参照して説明する。なお、以下の実施形態では、この発明に係る液体受け容器の製造方法としてドレンパンの製造方法を代表に説明する。また、ドレンパンとして、天井埋め込みタイプの空気調和装置に用いるものを説明する。
【0043】
[母材の構造]
ドレンパンの母材の構造について図を参照しながら説明する。図1は、ドレンパンの母材の説明図であり、(a)は、母材の平面図、(b)は、(a)のB−B矢視断面図、(c)は、(a)のA−A矢視断面図である。図2は、図1の一部を拡大した部分拡大図であり、(a)は、図1(b)に示す水受け部6の拡大図、(b)は、図1(c)に示す排水口8に嵌合されるソケットを示す拡大図、(c)は、ソケットが嵌合された状態を示す拡大図である。
【0044】
ドレンパンの母材1は、発泡樹脂成型体であり、ドレンパンと同じ形状に製造されている。母材1は、四つの角部を面取りした平面視四角形に形成されており、各辺に沿って吹出し口3が貫通形成されている。本体2の中央には、空気調和装置の胴体部分が挿通される開口部4が円形に開口形成されている。開口部4の周縁には、壁6aが立設されている。各吹出し口3の周囲には、壁3aがそれぞれ立設されており、各角部には、壁2がそれぞれ立設されている。各壁2,3a,6aによって囲まれた部分には、空気調和装置から発生した水滴を受けるための水受け部6が形成されている。
【0045】
水受け部6の底部には、水受け部6に貯留した水を排水するための排水溝9が形成されている。排水溝9は、壁6aと同心円状で平面視リング状に形成されている。排水溝9の一部が途切れており、その途切れた部分は、水受け部6に通じている。水受け部6には、排水溝9から流出した水を排出するための排水口8が貫通形成されている。図2(b)に示すように、排水口8には、筒状のソケット7が嵌合された状態になっている。
【0046】
ソケット7の上端周縁には、外方に張り出した鍔部7aが形成されており、排水口8の上端周縁には、ソケット7の鍔部7aが嵌合する段部8bが形成されている。つまり、ソケット7の鍔部7aが段部8bに嵌合されることにより、ソケット7の排水口8からの抜け止めが図られている。なお、ソケット7の下部には、図示しないドレンホース(ドレンパイプ)が接続される。
【0047】
図2(a)に示すように、水受け部6は、壁3aの側壁面3bと、壁6aの側壁面6bと、底面6cとによって構成されている。また、水受け部6は、壁3aが存在しない部分では、壁2の内側壁面と、側壁面6bと、底面6cとによって構成されている。排水溝9は、側壁面9a,9bと、底面9cとによって構成されている。
【0048】
また、母材1は、発泡セル間の空隙率が0.2〜7%であり、かつ、30mN/m以下の界面張力を有する液体が、0.1MPa以上の差圧を所定の面間に発生させることによって浸透するという性質を有する。つまり、母材1に形成された連通孔には、水よりも界面張力の小さい液体(例えば、油。界面活性剤を混合した水など。)が浸透するほど平均径が小さいものが存在する。
【0049】
図8は、母材1と同じ発泡成型体の説明図であり、(a)は発泡成型体の斜視図、(b)は(a)に示す発泡成型体の領域Dの拡大図である。図8(b)に示すように、発泡樹脂成型体1aは、発泡樹脂原料が発泡して形成された発泡セル1dが多数集合して形成されている。各発泡セル1dは、加熱により相互に融着している。各発泡セル1dの間には、空隙1eが形成されており、各空隙1eはそれぞれ独立している。つまり、発泡樹脂成型体1aは独立気泡構造に形成されている。但し、一部の空隙1e間は連通しており、発泡樹脂成型体1aの上面1bおよび下面1cに連通している。つまり、発泡樹脂成型体1aには、上面1bおよび下面1cに連通した連通孔が形成されている。
【0050】
この実施形態に係る製造方法は、連通孔にエポキシ樹脂を浸透させ、そのエポキシ樹脂を硬化させて連通孔を閉塞することにより、軽量でありながら、液体漏れが発生せず、手作業によるシール処理が不要であり、機械的強度などが高いドレンパンを製造することを特徴とする。なお、エポキシ樹脂は、エポキシ樹脂の塗布面から他の面には連通していないが塗布面だけに連通する空隙には、毛管現象によって浸透するため、ドレンパンの強度向上に寄与する。
【0051】
[エポキシ樹脂の塗布範囲]
次に、エポキシ樹脂の塗布範囲について説明する。図3は、エポキシ樹脂の塗布範囲を示す説明図であり、(a)は、図2(a)に対する塗布範囲の説明図、(b)は、図2(b)に対する塗布範囲の説明図である。
【0052】
エポキシ樹脂Eは、空気調和装置から発生した水滴が貯留される領域と、その貯留された水が流れる領域と、水漏れが懸念される領域とに塗布する。つまり、水受け部6、排水溝9および排水口8に塗布する。詳しくは、図1(a)においてハッチングを施した範囲、つまり、水受け部6および排水溝9の各表面にエポキシ樹脂Eを塗布する。つまり、図3(a)に示すように、水受け部6を構成する側壁面3b,6bおよび底面6cと、排水溝9を構成する側壁面9a,9bおよび底面9cとにエポキシ樹脂Eを塗布する。
【0053】
図示しないが、水受け部6を構成する壁2の内側壁面にもエポキシ樹脂Eを塗布する。ソケット7は母材1と同時成形(インサート成形)されるが、母材1のうち、ソケット7の外周面と接する部分は、成形時の温度が他の部分よりも低くなる。このため、ソケット7の外周面とその周囲との融着が不完全となり、図3(b)に示すように、ソケット7の周囲には隙間8cが形成されている。従って、その隙間8cの開口部にもエポキシ樹脂Eを塗布し、後の工程でエポキシ樹脂Eが隙間8cに浸透するようにする。この際、隙間8cのなるべく深い位置までエポキシ樹脂Eが浸透するように、底面6cへの塗布量よりも厚めにエポキシ樹脂Eを塗布する。さらに、強度を向上させたい領域に塗布しても良い。
また、エポキシ樹脂Eは、反応性希釈剤および硬化剤を混合して成り、発泡セルを溶解しない性質を有し、かつ、粘度が2000mPa・s未満であり、さらに、硬化前と硬化後の重量減少率が20%未満である。
【0054】
[エポキシ樹脂浸透装置]
次に、母材1にエポキシ樹脂を浸透させるためのエポキシ樹脂浸透装置について図を参照して説明する。図4は、エポキシ樹脂浸透装置に母材1がセットされた状態の断面図である。
【0055】
エポキシ樹脂浸透装置は、母材1を収容する容器本体20と、容器本体20を密閉するための蓋10と、加圧装置30と、減圧装置40とを備える。容器本体20は、上面が開口しており、その開口部には、母材1を嵌合する凹部23が形成されている。また、容器本体20のうち、エポキシ樹脂Eを浸透させる水受け部6に対応する裏面には、減圧室21が形成されている。減圧室21は、平面視水受け部6の形状に対応する形状に形成されており、水受け部6の裏面が減圧室21に露出する構造になっている。減圧室21は、排気口22に連通しており、排気口22は、図示しないホースを介して減圧装置40と接続されている。
【0056】
蓋10は、容器本体20の凹部23の上面と密着する形状に形成されている。蓋10のうち、エポキシ樹脂Eを浸透させる水受け部6に対応する部分には、加圧室11が形成されている。加圧室11は、平面視水受け部6の形状に対応する形状に形成されており、水受け部6の開口面が加圧室11に露出する構造になっている。加圧室11は、図示しないホースを介して加圧装置30と接続されている。
【0057】
この実施形態では、減圧装置40として真空ポンプを使用し、加圧装置30としてエアコンプレッサを使用する。なお、図示しないが、エポキシ樹脂浸透装置には、蓋10が外れないように蓋10を容器本体20に密着固定するための締結具が備えられている。
【0058】
[ドレンパンの製造方法]
次に、ドレンパンの製造方法について図を参照して説明する。図5は、浸透したエポキシ樹脂が硬化し、硬化したエポキシ樹脂製の膜により塗布面が被覆された状態を示す断面図であり、(a)は図3(a)に対応する図、(b)は図3(b)に対応する図である。
【0059】
(1)図3に示したように、母材1のうち、水受け部6を構成する側壁面3b,6bおよび底面6cと、排水溝9を構成する側壁面9a,9bおよび底面9cとにエポキシ樹脂Eを塗布する。図示しないが、壁2の内側壁面にもエポキシ樹脂Eを塗布する。さらに、図3(b)に示すように、排水口8の内壁面8aにエポキシ樹脂Eを塗布し、排水口8にソケット7を嵌合する(第1工程)。
【0060】
(2)次に、エポキシ樹脂Eの塗布面にフィルムを配置する(第2工程)。フィルムは、予め塗布面の形状に合致した形状および大きさに形成しておく。フィルムは、非透湿性の材料、例えば、ナイロン、ポリスチレンなどの材料により形成されている。また、表面に所望のデザインを施したフィルムを使用しても良い。さらに、フィルムは、透明または半透明でも良く、さらに、無色でも良いし着色されていても良い。
【0061】
(3)次に、図4に示したように、第1工程を終えた母材1をエポキシ樹脂浸透装置の容器本体20の凹部23にセットし、容器本体20を蓋10で覆い、締結具により、蓋10を容器本体20に密着固定し、容器本体20の内部を密閉する(第3工程)。
【0062】
(4)次に、加圧装置30および減圧装置40を駆動し、加圧室11内の圧力を高くするとともに、減圧室21内の圧力を低くする。これにより、母材1の表面および裏面間に差圧が発生し、母材1に塗布されたエポキシ樹脂Eは、母材1の表面および裏面に連通する連通孔内に浸透する。各連通孔に浸透したエポキシ樹脂Eは、各連通孔を閉塞する。
つまり、水受け部6を構成する側壁面3b,6bおよび底面6cと、排水溝9を構成する側壁面9a,9bおよび底面9cとから内部にエポキシ樹脂Eが浸透する。このとき、エポキシ樹脂Eは、加圧装置30による圧力および毛管現象により、母材1の表面から裏面には連通していないが表面だけに連通する空隙にも浸透する。
【0063】
そして、塗布されたエポキシ樹脂Eの厚さが、所定の厚さ(例えば、数μm〜数十μm)に減少した時点で加圧装置30および減圧装置40の駆動を停止する(第4工程)。このとき、エポキシ樹脂Eを塗布した領域には、上記所定の厚さのエポキシ樹脂層が未硬化の状態で形成される。
エポキシ樹脂Eの塗布量と、加圧装置30による加圧時間と、減圧装置40による減圧時間と、エポキシ樹脂Eの膜厚との関係は、予め試験により求めておき、実際の製造現場では、加圧装置30の加圧時間および減圧装置40の減圧時間を制御することにより、所望の膜厚となるようにする。
【0064】
エポキシ樹脂Eの浸透度は、エポキシ樹脂Eの界面張力および密度、発泡セル1dとの接触角、連通孔および空隙1eの径、発泡セル1dの濡れやすさなどの条件によって変化する。
【0065】
(5)次に、締結具を緩め、蓋10を開け、母材1を容器本体20から取出して自然養生させ、水受け部6、排水溝9および排水口8を構成する各面から浸透したエポキシ樹脂E、さらには、各面を覆うエポキシ樹脂Eをそれぞれ硬化させる(第5工程)。
【0066】
これにより、図5(a)に示すように、水受け部6の各面(側壁面3b,6bおよび底面6c)および排水溝9の各面(側壁面9a,9bおよび底面9c)に連通する多くの連通孔は、硬化したエポキシ樹脂E1によって総て閉塞される。さらに、排水口8の内壁面8aに連通する多くの連通孔も硬化したエポキシ樹脂E1によって総て閉塞される。
また、水受け部6および排水溝9の各面には、硬化したエポキシ樹脂膜Fがそれぞれ形成される。
【0067】
図9は、第4工程を終えて製造されたドレンパンの一部を取り出した断片を示す説明図であり、(a)はその断片の斜視図、(b)は(a)に示す領域Dの拡大図である。図9(b)に示すように、断片1fの各発泡セル1d間に形成された空隙1eは、硬化したエポキシ樹脂E1によって閉塞されている。図9(b)において、各発泡セル1d間の黒色で塗り潰された部分が、硬化したエポキシ樹脂E1によって閉塞された領域である。
【0068】
[実施形態の効果]
(1)上記実施形態に係るドレンパンの製造方法によれば、水受け部6および排水溝9の各面には、硬化したエポキシ樹脂膜Fがそれぞれ形成されるため、水受け部6および排水溝9から水がドレンパン外部へ漏れるおそれがない。
【0069】
(2)また、水受け部6や排水溝9の各面に形成されたエポキシ樹脂膜Fがひび割れたり、陥没したりした場合であっても、エポキシ樹脂膜Fから内部にかけて形成された総ての連通孔は、硬化したエポキシ樹脂E1によって閉塞されているため、エポキシ樹脂膜Fのひび割れ部や陥没部から水が浸透するおそれがない。
【0070】
例えば、ドレンパンの運搬中にドレンパンの水受け部6や排水溝9のエポキシ樹脂膜Fが傷付いたり、ドレンパンの取付け作業中にドライバーなどの工具が水受け部6や排水溝9に落下してエポキシ樹脂膜Fがひび割れたり、陥没したりした場合であっても、それらが原因で水が漏れるおそれがない。
【0071】
(3)さらに、融着が不完全な部分が母材1に存在する場合であっても、その部分にもエポキシ樹脂Eが浸透するため、融着が不完全なことに起因する水漏れをなくすことができる。
【0072】
(4)さらに、エポキシ樹脂Eは、発泡セルを溶解しない性質を有し、かつ、粘度が2000mPa・s未満であり、さらに、減圧装置40および加圧装置30を使用するため、母材1のような平均径の小さい連通孔にも浸透することができる。また、エポキシ樹脂Eは、発泡セルとの接着性が良いため、連通孔内に浸透したエポキシ樹脂Eが母材1の外部へ流出するおそれがない。
従って、ピンホールの発生し難いドレンパンを製造することができる。
【0073】
(5)さらに、水を媒質とするエマルジョンを母材の連通孔に浸透させる方法のように、エマルジョンに含まれる多量の水を蒸発させる必要がないため、乾燥に長時間を要しない。
また、エポキシ樹脂の硬化前と硬化後の重量減少率が20%未満であるため、乾燥しても体積が大幅に減少しないので、連通孔の閉塞状態を維持することができる。
さらに、エポキシ樹脂は、エマルジョンのように界面活性剤効果を持つ補助剤を含まないため、巻き込んだ空気などの気体が減圧下で大きな泡となって連通孔を閉塞するおそれもない。
【0074】
(6)さらに、エポキシ樹脂Eを塗布した領域の連通孔および連通孔を形成しない空隙には、硬化したエポキシ樹脂E1が充填された状態になるため、一般の発泡樹脂製のドレンパンよりも、機械的強度を高くすることができる。
【0075】
(7)つまり、軽量でありながら、水漏れが発生せず、圧縮強度、曲げ強度および引張強度などの機械的強度が高いドレンパンを製造することができる。さらに、硬化したエポキシ樹脂E1は、耐油性、耐熱性に優れるため、ドレンパンの耐油性および耐熱性を高めることもできる。
【0076】
(8)加圧装置30によって加圧室11の内部圧力を上昇させるとともに、減圧装置40によって減圧室21を減圧するため、加圧装置単独または減圧装置単独の場合よりも、エポキシ樹脂Eを効率良く浸透させることができる。
従って、液体受け容器の製造効率を高めることができる。
【0077】
(9)さらに、排水口8の内壁面8aには、硬化したエポキシ樹脂膜Fが形成されるため、シール材を用いて排水口8の内壁面8aにシール処理を施す作業を省くことができるので、ドレンパンの製造効率を高めることができる。
【0078】
(10)さらに、水受け部6、排水溝9および排水口8の他に、水漏れの懸念される領域が存在する場合は、上記第1工程のときに、その領域にエポキシ樹脂Eを塗布しておけば、その領域に自動的にシール処理が施されるため、別工程でシール処理を施す必要がない。
また、強度を高めたり領域が存在する場合も、上記第1工程のときに、その領域にエポキシ樹脂Eを塗布しておけば、その領域の強度が自動的高まるため、別工程で補強作業を行う必要がない。
従って、ドレンパンの製造効率を高めることができる。
【0079】
(11)さらに、エポキシ樹脂を塗布した領域では、エポキシ樹脂Eが浸透しない連通孔、つまりピンホールが発生する確率は極めて低いため、製造されたドレンパンに対する水漏れの抜き打ち検査を行う頻度を極めて少なくすることができる。
従って、ドレンパンの製造効率を高めることができる。
【0080】
(12)さらに、エポキシ樹脂Eは、発泡セル1dを溶解しない性質を有し、かつ、硬化前と硬化後の重量減少率が20%未満であるため、エポキシ樹脂中から揮発する物質の量が比較的少なく、硬化するまでの時間を比較的短くすることができる。また、硬化前後の母材1の重量誤差を小さくすることができる。
【0081】
<第2実施形態>
次に、この発明の第2実施形態について図を参照して説明する。
図6は、この実施形態の製造方法において用いるエポキシ樹脂浸透装置の説明図である。図7は、図6に示すエポキシ樹脂浸透装置の説明図であり、(a)は蓋を閉めた状態の説明図、(b)は(a)のC−C矢視断面図である。
この実施形態の製造方法は、母材1の領域によってエポキシ樹脂Eの浸透量を異ならせることができることを特徴とする。
【0082】
[エポキシ樹脂浸透装置]
図6に示すように、母材60は、上面開口の箱状(トレイ形状)に形成されている。なお、母材60は、簡略化して描かれている。エポキシ樹脂浸透装置50は、容器本体51と、蓋52と、減圧装置40,41とを備える。容器本体51は箱状に形成されており、上面が開口している。容器本体51の上面には、枠状のパッキン51aが設けられている。容器本体51の底面55には、母材60を載置するための載置台56が配置されている。容器本体51は、載置台56に載置された母材60の周囲に空間が形成される大きさに形成されている。
【0083】
蓋52は、容器本体51を密閉できる形状に形成されている。蓋52の裏面には、パッキン53が設けられている。パッキン53は、蓋52の裏面周縁を容器本体51のパッキン51aに密着させたときに、容器本体51の載置台56に載置された母材60の枠状の上端61と密着する。つまり、蓋52は、容器本体51の内部空間を、母材60の内部空間と、母材60の周囲の空間とに分け、それぞれを別個に密閉する。
【0084】
蓋52のパッキン53によって囲まれた部分には、窓54が設けられている。窓54はガラスや合成樹脂などの透光性材料によって形成されており、母材60に塗布されたエポキシ樹脂Eの浸透具合を窓54を通して見ることができる。
図7(b)に示すように、蓋52によって容器本体51を密閉すると、載置台56に載置された母材60の周囲には、減圧室C1が形成される。減圧室C1は、容器本体51の側壁に貫通形成された排気口59に連通している。排気口59は、図示しないホースを介して減圧装置40と接続されている。
【0085】
図7(b)に示すように、載置台56は枠状に形成されており、母材60の裏面の周囲が載置台56の上端に密着するようになっている。母材60の裏面と載置台56とによって閉塞された空間には、減圧室C2が形成されている。減圧室C2は、容器本体51の側壁に貫通形成された排気口58に連通している。排気口58は、ホース57を介して減圧装置41と接続されている。
【0086】
[ドレンパンの製造方法]
この実施形態では、母材60の内側面62よりも底面63の方のシール効果を高くするため、内側面62よりも底面63に形成されたエポキシ樹脂膜の膜厚を厚くする。
(1)図6に示すように、母材60の内側面62および底面63にエポキシ樹脂Eを塗布する。このとき、塗布されたエポキシ樹脂Eの層厚が内側面62よりも底面63の方が厚くなるようにエポキシ樹脂Eを塗布する(第1工程)。
【0087】
(2)次に、エポキシ樹脂Eの塗布面にフィルムを配置する(第2工程)。
(3)次に、図6に示すように、第1工程を終えた母材60を容器本体51の載置台56の上に載置し、容器本体51を蓋52で密閉する(第3工程)。
【0088】
(4)次に、減圧装置40,41を駆動し、減圧室C1,C2内の圧力を低くする。このとき、減圧室C2内の圧力の方が減圧室C1内の圧力よりも低くなるように減圧装置40,41を調節する。これにより、母材60に塗布されたエポキシ樹脂Eが、その塗布された面に開口している各連通孔に浸透し、各連通孔を閉塞する。つまり、母材60の内側面62および底面63から内部にエポキシ樹脂Eが浸透する。
【0089】
そして、母材60の内側面62および底面63に塗布されたエポキシ樹脂Eの厚さが、それぞれ所定の厚さ(例えば、内側面62における厚さが数μmで、底面63における厚さが数十μm)に減少した時点で減圧装置40,41の駆動を停止する(第4工程)。
このとき、エポキシ樹脂Eを塗布した領域には、上記所定の厚さのエポキシ樹脂層が未硬化の状態で形成される。
エポキシ樹脂Eの塗布量と、減圧装置40,41による各減圧時間と、エポキシ樹脂Eの膜厚との関係は、予め試験により求めておき、実際の製造現場では、減圧装置40,41の各減圧時間を制御することにより、所望の膜厚となるようにする。
【0090】
(5)次に、蓋52を開け、母材60を容器本体51から取出し、自然養生させ、内側面62および底面63における連通孔に浸透したエポキシ樹脂Eを硬化させるとともに、未硬化のエポキシ樹脂層を硬化させる(第5工程)。
【0091】
これにより、母材60の内側面62および底面63に連通する多くの連通孔は、硬化したエポキシ樹脂によって総て閉塞される。また、内側面62および底面63の各面には、硬化したエポキシ樹脂膜がそれぞれ形成される。
【0092】
[第2実施形態の効果]
(1)上記第2実施形態に係るドレンパンの製造方法は、エポキシ樹脂浸透装置が加圧装置を備えず、2つの減圧室を有する以外は、第1実施形態に係るドレンパンの製造方法と同じであるため、第1実施形態と同じ効果(1)〜(7)および(9)〜(12)を奏することができる。
【0093】
(2)特に、2つの減圧室C1,C2を備えており、各減圧室を異なる差圧にすることができるため、各減圧室と対応する領域毎にエポキシ樹脂Eの浸透量を異ならせることができる。
従って、特定の領域におけるエポキシ樹脂Eの浸透量を他の領域よりも増やすことにより、特定の領域におけるシール効果を高めたり、強度を高めたりすることができる。
【0094】
<第3実施形態>
次に、この発明の第3実施形態に係るドレンパンの製造方法について図を参照して説明する。
図10は、この実施形態において使用するエポキシ樹脂浸透装置の説明図である。
【0095】
エポキシ樹脂浸透装置80は、容器本体81と、蓋82と、加圧装置30,31と、減圧装置40,41とを備える。容器本体81には、2つの減圧室C1と、1つの減圧室C2とが形成されている。各減圧室C1は、それぞれ図示しないホースによって減圧装置40に接続されており、減圧室C2は、図示しないホースによって減圧装置41に接続されている。
【0096】
蓋82には、2つの加圧室C3と、1つの加圧室C4とが形成されている。各加圧室C3は、それぞれ図示しないホースによって加圧装置30に接続されており、加圧室C4は、図示しないホースによって加圧装置31に接続されている。
この実施形態では、ドレンパンの表面のうち、中央領域には、水滴を受ける領域が形成されており、周縁領域には、中央領域にて受けた水の貯留領域と、ドレンパンを空気調和装置に取付けるための金具の取付領域とが形成されているとする。このため、母材60の周縁領域64および中央領域65には、エポキシ樹脂Eを浸透させることにより、シール処理を施し、特に、周縁領域64は、中央領域65よりもエポキシ樹脂Eの浸透量を増加して強度を高める。
【0097】
このため、母材60の周縁領域64における塗布量が、中央領域65よりも多くなるようにエポキシ樹脂Eを塗布する。また、母材60の周縁領域64に対応する各減圧室C1内の圧力が、中央領域65に対応する減圧室C2内の圧力よりも低くなるように減圧装置40,41を調節する。また、母材60の周縁領域64が露出する各加圧室C3内の圧力が、中央領域65が露出する加圧室C4内の圧力よりも高くなるように加圧装置30,31を調節する。
【0098】
製造工程は、第1および第2実施形態と同じであるため説明を省略する。
この実施形態は、第1および第2実施形態と同じ特徴を備えるため、第1および第2実施形態と同じ効果を奏することができる。
特に、母材60の各領域に対応する複数の減圧室に加えて複数の加圧室をも備えており、各加圧室内の圧力を、対応する減圧室に合わせて異ならせることができるため、領域毎にエポキシ樹脂Eの浸透量を異ならせることができ、かつ、エポキシ樹脂Eの浸透速度を速めて製造効率を高めることができる。
【0099】
<第1変更例>
この発明の第1変更例について図を参照して説明する。図11は、第1変更例におけるエポキシ樹脂浸透装置の説明図である。
【0100】
図11に示すエポキシ樹脂浸透装置70は、加圧室および加圧装置を備えていない他は、第3実施形態のエポキシ樹脂浸透装置80と同じ構造である。エポキシ樹脂浸透装置70は、容器本体71と、蓋72と、減圧装置40,41とを備える。容器本体71には、2つの減圧室C1,C1と、1つの減圧室C2とが形成されている。各減圧室C1は、それぞれ図示しないホースによって減圧装置40に接続されており、減圧室C2は図示しないホースによって減圧装置41に接続されている。
【0101】
製造工程は、第1および第2実施形態と同じであるため説明を省略する。
この第1変更例は、第2実施形態と同じ特徴を備えるため、第2実施形態と同じ効果を奏することができる。エポキシ樹脂Eの浸透に際して加圧力が作用しないため、第3実施形態の製造方法よりもエポキシ樹脂Eの浸透速度は遅くなるが、エポキシ樹脂Eを浸透させる領域の肉厚が比較的薄い場合、第3実施形態と比較して製造効率の点で遜色がない。また、加圧装置が不要であるため、その分、装置のコストを抑制することができる。
【0102】
<第2変更例>
この発明の第2変更例について図を参照して説明する。図12は、第2変更例におけるエポキシ樹脂浸透装置の説明図である。
【0103】
図12に示すエポキシ樹脂浸透装置90は、減圧室および減圧装置を備えていない他は、第3実施形態のエポキシ樹脂浸透装置80と同じ構造である。エポキシ樹脂浸透装置90は、容器本体91と、蓋92と、加圧装置30,31とを備える。蓋92には、2つの加圧室C3,C3と、1つの加圧室C4とが形成されている。各加圧室C3は、それぞれ図示しないホースによって加圧装置30に接続されており、加圧室C4は図示しないホースによって加圧装置31に接続されている。
【0104】
製造工程は、第1および第2実施形態と同じであるため説明を省略する。
この第2変更例は、減圧に代えて加圧によってエポキシ樹脂Eを母材60に浸透させる部分以外は、第2実施形態と同じ特徴を備えるため、第2実施形態と同じ効果を奏することができる。エポキシ樹脂Eの浸透に際して真空引きによる吸引作用が発生しないため、第3実施形態の製造方法よりもエポキシ樹脂Eの浸透速度は遅くなるが、エポキシ樹脂Eを浸透させる領域の肉厚が比較的薄い場合は、それほど製造効率が低下するおそれはない。また、減圧装置が不要であるため、その分、装置のコストを抑制することができる。
【0105】
<第3変更例>
エポキシ樹脂Eとして、揮発性有機溶剤を含まないものを用いることが望ましい。例えば、エポキシ樹脂、反応希釈剤および硬化剤のみで構成されるエポキシ樹脂組成物、あるいは、低分子量ポリブデンなどの微粒子の高分子弾性物を上記のエポキシ樹脂組成物に配合したものを用いることが望ましい。揮発性有機溶剤を含まないエポキシ樹脂Eを使用すれば、ドレンパンの使用中にドレンパンから有機化学物質(VOC(Volatile Organic Compounds))が大気中に揮発するおそれがない。
従って、揮発した有機化学物質が人体に悪影響を及ぼすなど、環境汚染が発生するおそれがない。
【0106】
<第4変更例>
エポキシ樹脂に無機フィラーを混合してなる流動体をエポキシ樹脂Eに代えて用いることもできる。この流動体は、エポキシ樹脂E単独よりも、粘度、強度などが高いため、流動体を塗布した部分の強度をエポキシ樹脂単独を用いた場合よりも高めることができる。
この場合、無機フィラーとして、母材の連通孔の径よりも長いカット長または繊維径を有する無機繊維を使用することにより、流動体中のエポキシ樹脂のみを母材に浸透させ、無機繊維が混合した流動体を母材表面に残留させることができる。
【0107】
そして、その残留した流動体を硬化させることにより、硬化した領域の強度をエポキシ単独を用いた場合よりも高めることができる。また、エポキシ樹脂は母材の連通孔に浸透して硬化することにより、連通孔を閉塞できるため、水漏れを防止することもできる。無機繊維としては、金属繊維、ガラス繊維、岩石繊維、鉱滓繊維、炭素繊維などを用いることができる。
【0108】
また、無機材料を選択することにより、その選択した無機材料の性質を上記流動体に持たせることができる。例えば、銅を選択することにより、抗菌効果を有するドレンパンを製造することができる。さらに、無機物質であるため、揮発によって環境汚染が発生するおそれもない。さらに、流動体は、エポキシ樹脂単独よりも粘度が高いため、塗布時のタレなどを改良することができる。
【0109】
また、無機フィラーとして、電気伝導性フィラー、磁性体フィラー、熱伝導性フィラーなどを用いることもできる。
電気伝導性フィラーとしては、金、銀、銅、ニッケル、パラヂウム、白金、コバルト、ロジウム、イリジウム、鉄、ルテニウム、オスミウム、アルミニウム、亜鉛、錫、鉛などの金属を粒子状にしたもの、それら金属の合金を粒子状にしたもの、酸化錫などの金属酸化物を粒子状にしたもの、カーボンなどの導電性炭素同素体を粒子状にしたも、ガラス、カーボン、マイカ、プラスチックなどの粒子の表面に導電の金属をコートしたものなどを用いることができる。
【0110】
また、磁性体フィラーとしては、コバルトフェライト系磁性体、メタル磁性体、CrO2、γ−Fe2O3、Fe4N、Baフェライト等を粉末状にしたものを用いることができる。さらに、熱伝導性フィラーとしては、銅、アルミニウム、ベリリア、窒化アルミニウム、窒化ボロン、アルミナ、マグネシア、チタニア、ダイアモンド、鉛、ジルコン等を粉体状にしたものを用いることができる。
【0111】
<第5変更例>
エポキシ樹脂に天然または合成の短繊維を5重量%混合してなる流動体をエポキシ樹脂Eに代えて用いることもできる。この流動体は、エポキシ樹脂単独よりも粘度および強度などの物理的性質を変性させることができるため、流動体を塗布した部分の強度をエポキシ樹脂単独を用いた場合よりも高めることができる。
また、カット長または繊維径が母材の連通孔よりも長く、連通孔に浸透し難い短繊維をエポキシ樹脂に混合した場合は、流動体中のエポキシ樹脂のみを母材に浸透させ、短繊維が混合した流動体を母材の所定の領域に残留させることができる。
【0112】
従って、母材の所定の領域に残留した流動体を硬化させることにより、母材の所定の領域における強度をエポキシ樹脂単独を用いた場合よりも高めることができる。
また、流動体中のエポキシ樹脂のみが上記所定の領域における連通孔に浸透するため、液体漏れ防止などの効果を奏することができる。
さらに、流動体は、エポキシ樹脂単独よりも粘度が高いため、塗布時のタレなどを改良することができる。なお、この変更例における流動体を用いた試験の内容は、後述の試験7において説明する。
【0113】
<試験>
次に、本願発明者らが行った試験について図を参照して説明する。
[試験1:真空圧および粘度の相関関係]
本願発明者らは、母材に液体を浸透させるために必要な減圧室における真空圧と、液体の粘度との相関関係について調べた。図13は、この試験で使用した試験装置の模式図である。図14は、真空圧と粘度の相関試験結果を示す図表である。
【0114】
この試験1では、液体として、水にBASF社製のラテコールD(ラテコールはBASF社の登録商標)を混合した水溶液を着色したもの(以下、着色溶液という)を使用した。ラテコールDは、アクリル酸・メタクリル酸・アクリル酸エステル共重合体であり、カルボキシル基を多く含有するポリマーディスパージョンで、アルカリ中和により、可溶化し、透明な高粘度水溶液となる。この試験では、1mPa・s、775mPa・s、1500mPa・sおよび2000mPa・sの計4種類の粘度を示す着色溶液Wを使用した。
【0115】
また、発泡倍率60倍(約17g/l)、空隙率3%の発泡樹脂成型体1aを使用した。発泡樹脂成型体1aの大きさは、150×150×25(mm)である。
図13に示すように、この試験1で使用した試験装置400は、容器401と、減圧装置41とを備える。容器401の上面は開口しており、内部は中仕切り402によって上下二つの空間に分かれている。上部空間405は、発泡樹脂成型体1aを収容する空間に形成されており、下部空間406は、減圧室C2になっている。中仕切り402には、減圧室C2に連通する通気口403が複数箇所に貫通形成されている。減圧室C2は、容器401の側壁に貫通形成された排気口404に連通しており、排気口404は、図示しないホースを介して減圧装置41と接続されている。
【0116】
発泡樹脂成型体1aを容器401の上部空間405に収容し、その表面に150cm3の着色溶液Wを注いだ。そして、減圧装置41を駆動してから、着色溶液Wが発泡樹脂成型体1aの下面に染み出るまでに要した時間を計測した。この計測を各粘度の着色溶液Wについて行った。このとき、着色溶液毎に減圧室C2の最高真空圧を変更した。粘度1mPa・s、775mPa・s、1500mPa・sおよび2000mPa・sの各着色溶液Wに対する真空度は、それぞれ-0.02MPa、-0.05MPa、-0.08MPa、-0.08MPaである。
【0117】
上記の計測の結果、図14に示すように、粘度1mPa・sの着色溶液Wの場合は、最高真空圧-0.02MPaで減圧室C2を減圧した結果、減圧開始から10秒で着色溶液Wが総て発泡樹脂成型体1aに浸透して消失した。また、粘度775mPa・sの着色溶液Wの場合は、最高真空圧-0.05MPaを20秒間保持した結果、減圧開始から30秒で着色溶液Wが総て発泡樹脂成型体1aに浸透して消失した。また、粘度1500mPa・sの着色溶液Wの場合は、最高真空圧-0.08MPaを5分間保持した結果、減圧開始から8分で着色溶液Wが総て発泡樹脂成型体1aに浸透して消失した。さらに、粘度2000mPa・sの着色溶液Wの場合は、最高真空圧-0.08MPaを15分以上保持しても着色溶液Wが消失しなかったため、試験を中止した。
【0118】
(試験1の結果)
上記の試験1により、着色溶液Wの粘度が高いほど、発泡樹脂成型体1aに浸透するための時間がかかり、かつ、高い真空圧を必要とすることが分かった。また、着色溶液Wの粘度が2000mPa・sになると、発泡樹脂成型体1aに浸透することは、製造効率の点から困難であることが分かった。
従って、空隙率が3%の母材に浸透させることのできる液体の最高粘度は2000mPa・s未満であることが望ましいという結論を得た。
【0119】
[試験2:浸透試験1]
次に、本願発明者らは、上記の試験1の結果をエポキシ樹脂に適用できるかを調べた。
ここでは、エポキシ樹脂としてジャパンエポキシレジン株式会社製のjER811NおよびjERキュアFL240を混合したものを使用した(jERおよびjERキュアは、ジャパンエポキシレジン株式会社の登録商標)。jER811Nの一般名は、ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂および反応性希釈剤の混合物であり、それぞれを85%、15%の重量比で混合したものである。また、jERキュアFL240の一般名は、変性脂肪族ポリアミンであり、ビスフェノールAおよび変性脂肪族ポリアミンをそれぞれ20%、80%の重量比で混合したものである。
【0120】
ここで使用するエポキシ樹脂(jER811NおよびjERキュアFL240を混合したもの)の粘度は、475mPa・sである。また、試験1と同じ発泡倍率60倍(約17g/l)の発泡樹脂成型体を試験片としてA〜Dの計4個作成した。このように複数個の試験片を使用して試験を行うのは、発泡樹脂成型体の原反から試験片を作成するとき、切断箇所によって発泡セルの融着率が異なり、空隙率が異なるため、複数の試験片で試験を行うことにより、測定データの偏りをなくすためである。
【0121】
ここで使用した装置および方法は試験1と同じである。その結果、減圧装置の作動開始から約3分後には、エポキシ樹脂が試験片の下面に到達した。そして、各試験片のエポキシ樹脂浸透前の重量と浸透後の重量とを計測し、試験片に浸透したエポキシ樹脂の浸透量を計算した。
【0122】
図15は、各試験片に浸透したエポキシ樹脂の浸透量をまとめた図表である。エポキシ樹脂の浸透量の最小値は、33.1gであり、最大値は40.5gであり、平均値は36.95gであった。図中の備考欄に記載の「上蓋」とは、エポキシ樹脂の表面に乗せた蓋(透湿性のないフィルム状のもの)のことであり、減圧装置が作動しているときに試験片の上面が均等に減圧され、エポキシ樹脂を試験片に満遍なく浸透させるために使用した。
【0123】
(試験2の結果)
上記の試験2により、粘度475mPa・sのエポキシ樹脂が、空隙率3%の発泡樹脂成型体1aに浸透することが分かった。
【0124】
[試験3:浸透試験2]
次に、本願発明者らは、加圧装置および減圧装置を用いた浸透方法により、エポキシ樹脂が母材に浸透する深さについて試験を行った。図31は、この試験で使用した試験装置の模式図である。図32は、エポキシ樹脂の浸透深さに関する試験の説明図であり、(a)は試験結果をまとめた図表、(b)は計測箇所の説明図である。
【0125】
この試験で使用した試験装置500は、試験1で使用した試験装置400(図13)の上部空間405に蓋407を被せた構成である。蓋407には、エア導入口408が貫通形成されており、そのエア導入口408には加圧装置31が接続されている。上部空間405は、蓋407によって閉塞されており、加圧室C5を形成している。
【0126】
この試験では、減圧のみによる浸透方法、加圧のみによる浸透方法、減圧および加圧による浸透方法の3種類の浸透方法について、母材と同材質の発泡樹脂成型体に対するエポキシ樹脂の浸透深さについて計測した。この試験では、発泡倍率15倍、空隙率が2%であり、図32(b)に示すように、195mm×195mm×25mmの発泡樹脂成型体を用いた。また、試験2で使用したものと同じエポキシ樹脂を発泡樹脂成型体に塗布した。エポキシ樹脂の塗布量は、発泡樹脂成型体の総ての空隙にエポキシ樹脂が浸透した場合の量以上であれば良く、この試験では、50g(=発泡樹脂成型体の体積×0.02(空隙率))のエポキシ樹脂を塗布した。また、同図にA,B,C,Dで示す4箇所において、エポキシ樹脂の浸透深さを発泡樹脂成型体の表面からそれぞれ計測した。
【0127】
減圧のみによる浸透方法では、減圧装置41として真空ポンプを使用し、表面にエポキシ樹脂Eを塗布した発泡樹脂成型体1aの裏面側の減圧室C2を30秒間-0.06MPaで真空引きした。加圧のみによる浸透方法では、加圧装置31としてエアコンプレッサーを使用し、表面にエポキシ樹脂Eを塗布した発泡樹脂成型体1aの表面側の加圧室C5を30秒間0.1MPaで加圧した。減圧および加圧による浸透方法では、真空ポンプおよびエアコンプレッサーを使用し、表面にエポキシ樹脂Eを塗布した発泡樹脂成型体1aの裏面側の減圧室C2を30秒間-0.06MPaで真空引きすると同時に、表面側の加圧室C5を30秒間0.1MPaで加圧した。
【0128】
その結果、図32(a)に示すように、A〜Dの4箇所におけるエポキシ樹脂の浸透深さの平均値は、減圧のみによる浸透方法では4.4mm、加圧のみによる浸透方法では5.3mm、減圧および加圧による浸透方法では8.0mmであった。
つまり、エポキシ樹脂の浸透深さは、減圧および加圧による浸透方法が最も深く、減圧のみによる浸透方法および加圧のみによる浸透方法では、殆ど差がなかった。
【0129】
(試験3の結果)
上記の試験3により、減圧のみによる浸透方法、加圧のみによる浸透方法、減圧および加圧による浸透方法の3種類の浸透方法のいずれを用いても、粘度475mPa・sのエポキシ樹脂を空隙率2%の発泡樹脂成型体1aに浸透させることができることが分かった。また、減圧および加圧による浸透方法が、エポキシ樹脂を母材に最も深く浸透させることができることが分かった。
【0130】
[試験3:緩衝能力試験]
次に、本願発明者らは、本願発明に係る製造方法によって製造されたドレンパンの緩衝能力について試験を行った。
この試験は、日本工業規格(JIS)のJIS Z 0235に規定されている静的緩衝係数を測定する装置を使用して行った。また、重錘には、Gセンサを取付け、重錘を1個の試験片に対して5箇所に落下させ、G値を測定した。
【0131】
試験片は、空隙率の異なる試験片を採取するために、発泡セルの融着度合いで分けて4種類作成した。図16は、試験片を採取した場所を示す説明図である。試験片は、発泡倍率80〜90倍の円柱形状の発泡樹脂成型体を円板形状に切断し、それを正方形に加工することにより作成した。発泡セル同士の融着状態が限界になっている試験片(融着限界品)A,Bは、発泡樹脂成型体の両端近傍から採取した。
【0132】
発泡セル同士の融着状態が良好な試験片(融着良品)A〜Dは、発泡樹脂成型体の中心軸に沿って均等間隔に4箇所を切断して採取した。発泡セル同士の融着状態が不良な試験片(融着不良品)A〜Dも同じく4箇所から採取した。表面部分の発泡セル同士の融着状態が良好な試験片(融着良品表面部分)A,Bは、融着限界品よりも端部寄りの発泡樹脂成型体から採取した。
【0133】
図17は、上記の採取した各試験片に試験2で使用したエポキシ樹脂を浸透させた場合のエポキシ樹脂の浸透量と試験片の空隙率との関係を示す図表である。各試験片には、各試験片の空隙率が記載されている。試験片内部の空隙が多いほどエポキシ樹脂の浸透量が増加することから、空隙率は、(エポキシ樹脂浸透量×エポキシ樹脂比重/試験片体積)×100の式を用いて算出した。
【0134】
図18は緩衝能力の試験結果を示す図表であり、図19は図18に示す測定結果のうち、G値(m/s2)の平均値(Ave)と空隙率(%)との関係を示すグラフである。図20は各試験片毎に空隙率と緩衝能力評価との関係をまとめた図表である。
【0135】
各試験片に対する緩衝能力の評価は、エポキシ樹脂を浸透させていない試験片のG値46.9(m/s2)を基準とし、約70(m/s2)までを緩衝能力良好と評価し(○)、70から80(m/s2)までを緩衝能力が若干劣るを評価(△)とし、80(m/s2)以上を緩衝能力無し(×)とした。
その結果、図20に示すように、空隙率2〜5%の試験片が良好な緩衝能力を有し、空隙率6%の試験片が若干緩衝能力に劣るものの実用面では問題がなく、空隙率9%の試験片は、緩衝能力が無く実用的でないという評価になった。
【0136】
緩衝設計は、安全率として、製品許容G値に0.9〜0.8を乗じた値を設計G値として使用し、製品の肉厚を算出する。このことから、エポキシ樹脂を浸透させていない試験片で測定した46.9Gから25%増加までが安全率内となり、緩衝材としての実用性があると考えられる。
従って、安全率の観点からは、46.9Gから25%増加の範囲内に収まっている空隙率2%のエポキシ樹脂浸透体が好ましいと考えられる。
また、今回の試験で使用したエポキシ樹脂よりも軟性の高いエポキシ樹脂などを母材に収容することにより、G値の増加を抑制できるものと推定される。
【0137】
[試験4:圧縮試験]
試験3で作成した各試験片を使用して圧縮試験を行い、試験片の母材の空隙率と圧縮強度と静的緩衝係数との関係を調べた。圧縮強度の測定は、日本工業規格に定められているJIS K 7220に従って行った。
【0138】
図21は各試験片の測定結果をまとめた図表である。図22は図21に示す測定結果に基づいて作成した、圧縮応力と歪み率との関係を示すグラフである。図23は、歪み率が10%のときの圧縮応力と空隙率との関係を示すグラフである。図24は各試験片毎に空隙率に対する圧縮応力を評価した結果を示す図表である。なお、図22においてEPS単体とは、エポキシ樹脂を浸透させていない試験片を示す。
【0139】
上記の測定結果より、試験片の空隙率が大きくなるほど、つまりエポキシ樹脂の浸透量が増加するほど圧縮強度が高くなることが分かった。また、静的緩衝係数については大きな差は見られず、圧縮強度だけが向上していることが分かった。
従って、ドレンパンの肉厚を変更することなく、衝撃を受ける受け面積を減らすことができる。ただし、エポキシ樹脂を浸透させていない試験片の圧縮応力よりも3倍以上の圧縮応力を有する空隙率6%以上の試験片は、その分、受け面積が極端に減るため、実用性が低い。
【0140】
そこで、図24に示すように、空隙率が6%までの試験片に対する圧縮応力の評価を良好(○)とし、空隙率が7%の試験片(融着不良品A)の評価をやや劣る(△)とし、空隙率が9%の試験片の評価を実用性無し(×)とした。なお、同じ空隙率6%でも融着良品Dの評価が○であるのは、融着良品は融着不良品よりも発泡セル同士の融着率が高く、緩衝能力が高いからである。
【0141】
[試験5:浸透性試験]
空隙率の小さい試験片に対するエポキシ樹脂の浸透性について試験を行った。この試験は、図13に示した試験装置400を使用して行った。また、表面にエポキシ樹脂を塗布した試験片を容器401の上部空間405に固定し、減圧装置41によって真空引きを所定時間行い、エポキシ樹脂の浸透を観察した。試験片は、発泡倍率30倍の発泡樹脂成型体を使用した。
【0142】
図25は、浸透性試験に関するデータを示す図表であり、(a)は試験片のデータを示す図表、(b)は浸透試験の結果を示す図表、(c)は空隙率の算出結果を示す図表である。図26は各試験片に対する浸透時間の評価を示す図表である。
【0143】
上記の測定結果より、空隙率0.5%の試験片では、25mmの肉厚に対して真空度-0.08MPaを15分以上保持することでエポキシ樹脂を浸透させることができることが分かった。
また、空隙率1.5%の試験片では、浸透時間は5分以上であった。さらに、空隙率3%の試験片では、浸透時間は30秒程度であり、空隙率5%および9%では、浸透時間は一瞬であった。そこで、図26に示すように、浸透時間が5分以上必要な空隙率0.5%および1.5%以下の試験片に対して、やや劣る(△)と評価し、浸透時間が30秒程度以下である空隙率3%、5%および9%の試験片に対して良好(○)と評価した。
【0144】
さらに、空隙率0.5%未満の試験片に対するエポキシ樹脂の浸透性について試験を行った。この試験では、発泡樹脂成型において発泡セル同士の融着率が最大のものを成型し、それを切断して試験片を作成した。また、エポキシ樹脂よりも低粘度で浸透性の高い着色水(粘度約1mPa・s)を使用した。図27は、浸透性試験に関するデータを示す図表であり、(a)は試験片のデータを示す図表、(b)は各試験片に対する浸透時間の評価を示す図表、(c)は空隙率の算出表である。図28は、各空隙率に対する浸透時間の評価を示す図表である。
【0145】
試験の結果、図27(b)に示すように、空隙率が0.2%の試験片Cでは、真空度-0.08MPaを10分間保持すれば、着色水が試験片の一部裏面まで浸透することが分かった。その裏面に到達した着色水の面積は約10%であった。また、空隙率が0.1%の試験片Bでは、10分間経過しても着色水は試験片の裏面に到達しなかった。浸透深さは、試験片の表面から約10mmであった。また、空隙率が0.1%の試験片Dでは、30分経過すると着色水が試験片の一部裏面まで到達したが、殆ど浸透深さ約15mmまでしか浸透しなかった。
【0146】
そこで、図28に示すように、10分以下で着色水が一部裏面まで浸透した空隙率0.2%の試験片および空隙率0.5%の試験片は、低粘度の水を一部浸透させることができるため、浸透性がやや劣る(△)と評価し、着色水が裏面まで浸透しなかったり、一部裏面まで浸透したが、長時間を必要とする空隙率0.1%の試験片は浸透性が劣る(×)と評価した。
【0147】
[試験8:エポキシ樹脂の粘度および浸透深さの相関関係]
エポキシ樹脂の粘度および浸透深さの相関関係を求める試験を行った。この試験では、発泡倍率45倍で空隙率約2%の試験片を使用した。また、前述の試験5における浸透性試験と同じ装置を使用し、粘度1000,950,900mPa・sの3種類のエポキシ樹脂を使用した。試験片の表面にエポキシ樹脂を塗布し、真空圧-0.08MPaの状態を60秒間維持し、エポキシ樹脂の浸透した深さを試験片を表面から計測した。
【0148】
その結果を図34に示す。エポキシ樹脂の浸透深さは、粘度1000,950,900mPa・sに対して、21,26,29mmであった。
つまり、真空度および真空引きの時間が一定の場合、エポキシ樹脂の粘度が低いほど、浸透深さが深くなることが分かった。
【0149】
[試験6:水漏れ試験]
試験片にエポキシ樹脂を浸透させ、硬化させた試験片の防水効果について試験を行った。
図13に示した試験装置を利用し、上部空間405に収容した試験片の表面に水を充填し、減圧装置41を作動させ、所定の真空度になってから所定時間経過後に試験片の下面から水が漏れるかどうかを観察した。この試験で使用した水は、真水と、界面活性剤を0.1%混合した水と、界面活性剤を1.0%混合した水の3種類である。また、真空ボックス内の真空度を-10kPaおおび-40kPaの2つの値に制御し、制御開始から5分後および15分後に水漏れを観察した。試験片として、エポキシ樹脂を浸透させていない発泡倍率38倍の試験片と、エポキシ樹脂を浸透させた試験片とを使用した。
【0150】
図29は、水漏れ試験の結果をまとめた図表である。エポキシ樹脂を浸透させていない試験片は、真空度-40kPaでは、いずれの水に対しても短時間で水漏れが観測された。また、真空度-10kPaでは、真水のときに15秒経過時に試験片の真空側の面に水滴が発生した。一方、エポキシ樹脂を浸透させた試験片は、いずれの真空度のときも、どの水に対しても時間経過による水漏れは全く観測されなかった。
つまり、エポキシ樹脂を浸透させた試験片は、防水効果が100%であることが分かった。
【0151】
[試験7:短繊維入りエポキシ樹脂浸透試験など]
エポキシ樹脂単独に代えて、エポキシ樹脂に合成の短繊維を混合してなる流動体を用いて分散性、スプレー塗布性および浸透性について試験を行った。この試験の目的は、エポキシ樹脂のみを母材に浸透させ、流動体の層を母材表面に形成することにより、エポキシ樹脂のみを浸透させただけのドレンパンよりもさらに強度の高いドレンパンを実現することにある。
【0152】
この試験では、エポキシ樹脂にビニロン(PVA繊維)を混合した流動体を使用した。ビニロンとして、株式会社クラレ製のパワロン RECS7(パワロンは、株式会社クラレの登録商標)を使用した。パワロン RECS7のカット長は6mmであり、繊維径は0.027mmである。また、ビニロンの混合量を、0.5、1.0、5.0、10.0(wt%)に変えて行った。
【0153】
(分散性試験)
この試験では、上記の流動体をホモディスパー(高速均一分散機)によって撹拌分散し、分散性を評価した。その結果、各試験の評価をまとめた図33に示すように、ビニロンの投入量が0.5、1.0(wt%)の場合は、いずれも分散した(評価○)。また、ビニロンの投入量が5.0(wt%)の場合は、大部分は分散したが、所々でビニロン同士が絡み合い、不均一な分散部分が発生した(評価△)。しかし、ビニロンの投入量が10.0(wt%)に増加すると、エポキシ樹脂に対するビニロンの混合量が過多のため、分散しなかった(評価×)。
従って、エポキシ樹脂にビニロンを5重量%以下混合してなる流動体を使用することが望ましいことが分かった。
【0154】
(スプレー塗布性試験)
上記の流動体をスプレー塗布できるかどうか、エポキシスプレー塗布機を使用して試験した。流動体の粘度がエポキシ樹脂よりも高いため、エポキシスプレー塗布機の噴出口の口径を大きくして塗布した。その結果、図33に示すように、ビニロンの投入量が0.5、1.0(wt%)の場合は、いずれもスプレー塗布をすることができた。しかし、ビニロンの投入量が0.5(wt%)を超えると、スプレー塗布をすることができなかった。
従って、スプレー塗布するためには、流動体中のビニロンの混合用を1.0重量%以下にする必要があることが分かった。
【0155】
(浸透性試験)
この試験は、前述の試験5における浸透性試験と同じ装置により、同じ条件下で行った。使用した試験片は、発泡倍率30倍、空隙率2%、厚さ25mmである。
試験の結果、図33に示すように、ビニロンの投入量が0.5、1.0、5.0(wt%)の場合は、いずれも流動体が試験片の表面に残留し、エポキシ樹脂のみが試験片に浸透した(評価○)。しかし、ビニロンの投入量が10.0(wt%)に増加すると、エポキシ樹脂に対するビニロンの混合量が過多のため、流動体を作成することができなかった(評価×)。
【0156】
従って、エポキシ樹脂にビニロンを5重量%以下混合してなる流動体を母材の表面に配置し、母材の裏面側を減圧することにより、流動体中のエポキシ樹脂のみを母材に浸透させ、流動体を母材の表面に残留させることができることが分かった。
つまり、エポキシ樹脂のみを母材に浸透させた場合も、ドレンパンの強度を高めることができるが、さらに強度を高めたい場合には、上記の流動体を使用すれば良い。このとき、エポキシ樹脂が母材に浸透したときに流動体による層が母材の表面に所定の厚さに形成されるようにし、その後、自然養生させることにより、流動体の層を硬化させる。これにより、水漏れが無く、より一層強度の高いドレンパンを製造することができる。また、上記の流動体は、エポキシ樹脂単独よりも粘度が高いため、塗布時のタレなどを改良することができる。
【0157】
なお、上記の流動体をスプレーガンなどで塗布する場合は、前述のスプレー塗布性試験の結果からも分かるように、ビニロンの混合量が5重量%以上になるとスプレー塗布ができないため、5重量%未満、望ましくは1重量%以下の流動体を使用する。また、ビニロンの混合量は5重量%以下であればビニロンを分散させることができるため、流動体をハケ塗りなどで塗布する場合は、ビニロンの混合量が5重量%以下であれば良い。
【0158】
また、第1実施形態のように加圧および減圧の両方を用いることもできるし、第2変更例のように加圧のみを用いることもできる。
さらに、ビニロンの短繊維以外に、ビスコスレーヨン繊維、ガラス繊維、炭素繊維、アルミナ繊維、アラミド繊維、炭素繊維、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、金属繊維などの短繊維を用いることができる。さらに、合成の短繊維以外に天然の短繊維を用いることもできる。例えば、綿、麻、ジュートなどの植物繊維、羊毛、絹糸などの動物性繊維、セルロースなどの食物繊維を用いることができる。
【0159】
[総合評価]
図30は、前述の緩衝能力試験、圧縮試験および浸透試験における各空隙率に対する総合評価を示す図表である。この総合評価より、エポキシ樹脂を浸透させることにより、水漏れを完全に防止できるドレンパンを製造するためには、母材1の空隙率が0.2%以上であることが望ましいことが分かった。また、ドレンパンの緩衝能力および圧縮応力を高めるためには、母材1の空隙率が7%を超えないことが望ましいことが分かった。別のパラメータを用いて表現すると、水よりも界面張力の小さい30mN/m以下の界面張力の液体が、0.1MPa以上の差圧を所定の面間に発生させることによって浸透する母材を使用することが望ましい。
【0160】
また、空隙率が0.2%〜7%の母材1にエポキシ樹脂を浸透させたドレンパンの製造効率を高めるためには、粘度が2000mPa・s未満のエポキシ樹脂を使用することが望ましいことが分かった。さらに、ピンホールの発生をなくすとともに、体積収縮を抑制するために、発泡セルを溶解しない性質を有するエポキシ樹脂を使用することが望ましい。
【0161】
つまり、本願発明の目的を達成するためには、発泡セル間の空隙率が0.2〜7%であり、かつ、30mN/m以下の界面張力を有する液体が、0.1MPa以上の差圧を所定の面間に発生させることによって浸透する母材に対して、発泡セルを溶解しない性質を有し、かつ、粘度が2000mPa・s未満であり、さらに、硬化前と硬化後の重量減少率が20%未満であるエポキシ樹脂を浸透させることにより、ドレンパンを製造することが望ましい。
【0162】
また、前述の各試験の結果から、エポキシ樹脂の粘度、エポキシ樹脂の浸透深さ、母材の空隙率、減圧室の圧力、加圧室の圧力、減圧時間および加圧時間にそれぞれ相関関係があり、減圧室の圧力、加圧室の圧力、減圧時間および加圧時間を制御すれば、エポキシ樹脂の粘度、エポキシ樹脂の浸透深さおよび母材の空隙率の変化に対応できることが分かった。つまり、エポキシ樹脂の粘度、エポキシ樹脂の浸透深さおよび母材の空隙率という材料側の特性が変化した場合であっても、減圧室の圧力、加圧室の圧力、減圧時間および加圧時間という装置側の駆動条件を制御すれば、対応できることが分かった。
そこで、材料側の特性と、装置側の駆動条件との関係を予め求めておき、それをドレンパンを製造する際に利用すれば、材料側の特性が変化した場合でも、求めた関係に基づいて装置側の駆動条件を変更するだけで済むため、製造効率を高めることができる。
【0163】
[母材の製造原料]
ここで、母材1の製造原料について説明する。
母材1を形成するための発泡樹脂原料としては、、特定の発泡温度において発泡するものである限り特に限定されないが、熱可塑性物質を主材とし、気体もしくは液体を発泡剤として含浸させたもの、あるいは、熱分解性の発泡剤を含有するものを好適に用いるが、両者を含有するものでも良い。また、熱可塑性物質は架橋されていても良い。
【0164】
熱可塑性物質を主材とし、気体もしくは液体を発泡剤として含浸させたものとしては、市販のポリスチレン発泡性ビーズ、ポリエチレン発泡性ビーズ、ポリプロピレン発泡性ビーズなどを用いても良いし、ブタン、ペンタン、フロン等の炭化水素、水、CO2、N2を含浸させたものでも良い。また、熱分解性の発泡剤を含有するものとしては、下記に示す熱分解性の発泡剤および熱可塑性物質から適宜調製して用いても良い。この熱分解性の発泡剤と熱可塑性物質は、発泡剤の分解温度が熱可塑性物質の可塑化温度よりも高いことが好ましく、発泡剤の分解温度と熱可塑性物質の可塑化温度がほぼ等しくなるように選ばれることが、発泡材料を綺麗に発泡できることから更に好ましい。
【0165】
発泡材料の主材としては、加熱により軟化する物質である限り特に制限を受けず、熱可塑性樹脂として知られる一群の合成プラスチック材料が好適に用いられる。例えば、ポリ(スチレン);ポリ(エチレン)、ポリ(プロピレン)等のオレフィン系樹脂;ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(塩化ビニル)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリ(フシ化ビニリデン)、ポリ(フッ化ビニル)、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)体、フッ素化エチレンプロピレン共重合体、ポリ(テトラフルオロエチレン)、塩素化ポリ(塩化ビニル)、塩素化ポリ(エチレン)、塩素化ポリ(プロピレン)等のハロゲン化樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610 、ナイロン612 、ナイロン11、ナイロン12、ナイロンMXD6、ナイロン46、N−メトキシメチル化ポリ(アミド)、アミノポリ(アクリルアミド)等のポリアミド;スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−(エチレン−ブチレン)−スチレンブロック共重合体、ポリプロピレン−EPDM、ポリエチレン−EPDM、イソブチレン−無水レイン酸共重合体、アクリルニトリル−アクリレート−スチレン共重合体、アクリルニトリル−エチレン−スチレン共重合体、アクリルニトリル−スチレン共重合体、アクリルニトリル−ブタジエンースチレン共重合体、アクリルニトリル−塩化ビニル−スチレン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン共重合体、エチレン−塩化ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体等の共重合体;さらに、アイオノマー、ケトン樹脂、ポリ(アクリル酸)、ポリ(アクリル酸エステル)、ポリ(メタクリル酸エステル)、ポリ(プロピオン酸ビニル)、ポリ(アセタール)、ポリ(アミドイミド)、ポリ(アリレート)、熱可塑性ポリ(イミド)、ポリ(エーテルイミド)、ポリ(エーテルエ−テルヶトン)、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリカーボネート、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(サルホン)、ポリ(エーテルサルホン)、ポリ(アミノサルホン)、ポリ(パラメチルスチレン)、ポリ(アリルアミン)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルエーテル)、ポリ(ビニルブチラール)、ポリ(フェニレンオキサイド)、ポリ(フェニレンサルファイド)、ポリ(ブタジエン)、ポリ(ブチレンテレフタレート)、ポリ(メチルペンテン)、ポリ(メチルメタクリレート)、液晶ポリマー、ポリ(ウレタン)等を挙げることができる。また、ポリ乳酸樹脂を用いることもできる。また、適宜、上記重合体の変成体、架橋体を用いても良いし、これらを組み合わせて成る共重合体を用いても良い。さらに、これらの熱可塑性樹脂は単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0166】
発泡樹脂原料に混練する熱分解性の発泡剤としては、一般的に使用されている熱分解性発泡剤である限り特に限定されず、発泡樹脂原料の主材の可塑化温度に適合させて選ばれる。
このような熱分解性発泡剤としては、例えば、アゾジカルボンアミド(ADCA)、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、アゾシクロヘキシルニトリル、ジアゾアミノベンゼン、アゾジカルボンアミドエステル等のアゾ化合物;ジニトロソベンタメチレンテトラミン(DPT)等のニトロソ化合物;p−トルエンスルホニルヒドラジド(TSH)、ベンゼンスルホニルヒドラジド(BSH)、p,p´−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、ジフェニルスルホン−3,3´−ジスルホニルヒドラジド等のスルホニルヒドラジド化合物;4,4´−ジフェニルジスルホニルアジド、p−トルエンスルホアジド等のアジド化合物;p−トルエンスルホセミカルバジド、トリヒドラジノトリアジン、炭酸水素ナトリウム、炭酸アンモン、亜硝酸アンモン等を挙げることができる。さらに、これらの熱分解性発泡剤は単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0167】
発泡樹脂原料には、これら発泡剤と共に、成形特性を改良する目的で各種の添加剤を配合してもよい。添加助剤として、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウムなどの金属石鹸、亜鉛華硝酸亜鉛などの無機塩があげられる。
【0168】
発泡助剤は、使用する樹脂、発泡剤、助剤の種類によって異なるが、通常熱可塑性樹脂100重量部に対して0.1〜2.0重量部程度の割合で添加されることが好ましい。これは、添加量が0.1重量部以下では効果が小さく、2.0重量部以上では効果が飽和する傾向があるためである。
【0169】
発泡性ビーズの大きさは、0.3ミリから5ミリが好適に用いられる。ここで発泡性ビーズの大きさとは、発泡性ビーズがほぼ球形の場合には平均直径とする。また、平らなものやストランド状のものの場合に発泡性ビーズの大きさといえば、最も幅が小さいサイズをさすものとし、以下、発泡性ビーズの大きさといえばこの例に倣うものとする。発泡性ビーズの大きさが0.3ミリから5ミリのものが好適に用いられるのは、発泡性ビーズの製造し易さと発泡性ビーズの表面積、そして伝熱遅れによる軟化ムラが出にくいということの兼ね合いの結果である。0.3ミリより小さいビーズの使用も可能であるが、しかしこの場合、ビーズの表面積の総和が大きくなるので最終的な発泡セルの接触する界面の面積が大きくなり、薄膜状剛性セル壁を構成する材料がずっと多く必要となる。したがって、圧縮強度は増すものの、軽量化の効果は小さくなる。
【0170】
また、発泡性ビーズ内部からの発熱をひきおこす仕組みを併用すれば、直径5ミリより大きな発泡性ビーズを用いることもできる。発泡性ビーズ内部からの発熱をひき起こす仕組みとしては、例えば、発泡性ビーズに金属粉を混ぜ込み高周波電磁場環境下での電磁誘導を利用することができる。
均質な発泡セル構造を持つ発泡樹脂複合構造体を得るためには、発泡性ビーズの大きさは、概略揃っているのが望ましい。しかし、厳密に揃っている必要はない。また、あえて発泡性ビーズの大きさに分布を持たせることで、発泡セル膜に特異な3次元構造を持たせることができるので、異なる大きさの発泡性ビーズを混ぜて用いることもある。
【0171】
さらに、発泡材料は、例えば予備発泡ビーズや発泡体の破砕品のような既に発泡している材料に高圧下でガスを含浸させたものでも良い。さらに、既に発泡成型されたチップ状、ストロー状などの形状の材料や発泡体の破砕品でも良く、その材料を凝縮して成型型内で加熱融着させて母材1を形成しても良い。
【0172】
[エポキシ樹脂の種類]
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、異節環状型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ウレタン変成エポキシ樹脂、ゴム変成エポキシ樹脂、エポキシ化エラストマー、エポキシ化ステアリン酸エステル、エポキシ化大豆油、エポキシ変成ポリシロキサン、可撓性エポキシ樹脂、エポキシ化(メタ)アクリル系オリゴマー及びエポキシ基を持つ反応性希釈剤等を用いることができる。
【0173】
また、エポキシ樹脂用硬化剤としては、例えば、無水マレイン酸、無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルハイミック酸、無水メチルCD酸、無水メチルナジック酸、無水ピロメリット酸、無水ヘット酸、ドデセニル無水コハク酸、ポリアゼライン無水コハク酸等の酸無水物系硬化剤;エチレンアミン類、ジエチルアミノプロピルアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、N−アミノエチルピペラジン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、脂肪族アミン変成体等の脂肪族アミン系硬化剤;m−フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、メタキシリレンジアミン、芳香族アミン変成体等の芳香族アミン系硬化剤;また、その他硬化剤として、イソホロンジアミン、ジシアンジアミド、ピペリジン、ポリアミド樹脂、フェノール系樹脂、ポリチオール樹脂、メルカプタン系化合物、三フッ化ホウ素アミン錯体、イミダゾール系化合物等を用いることができる。
【0174】
また、エポキシ系樹脂用硬化促進剤として、第3級アミンなどのアミン類、トリフェニルフォスフィン、スタナースオクトエート、三フッ化ホウ素錯体、ベンジルジメチルアミン、DBU、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、イソシアネート類、スルフォニウム塩類、ヨードニウム塩類、ジアゾニウム塩類、金属塩類、ヒドラジド系化合物、ナイロン塩系化合物、シリコーン油、有機金属化合物類等を用いても良い。
【0175】
また、エポキシ樹脂の流動性を調整する為に、減粘剤、増粘剤、チキソトロープ剤等を用いて良い。減粘剤として、例えば、ペンタン、酢酸エチル、メチルエチルケトン等の各種溶剤を用いることができる。増粘剤として、例えば、アクリルゴム、エビクロルヒドリンゴム、イソプレンゴム、ブチルゴムなどを用いることができる。チキソトロープ剤として、例えば、超微粒子の酸化珪素、コロイダルシリ力、ポリビニルピロリドンなどを用いることができる。
【0176】
また、エポキシ樹脂の増量剤として、炭酸カルシウム、タルク、クレー、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、カーボンブラック、二酸化ケイ素、酸化チタン、ガラス粉、中空ガラスバルーン、珪藻土、カオリン、パーライト、蛍石、ベントナイトなどを用いることができる。
【0177】
また、エポキシ樹脂の着色剤には、一般的な顔料又は染料を用いることができる。顔料としては、酸化チタン、炭酸カルシウム、ドロマイト、桂砂、酸化鉄、カーボンブラック、シアニン系顔料、キナクドリン系顔料など、色材および充填剤として使用されるものがある。染料では、アゾ系染料、アントラキノン系染料、インジゴイド系染料、スチルベン系染料などがある。
さらに、アルミフレーク、ニッケル粉、金粉、銀粉、銅粉、酸化チタンなどの金属粉を着色剤として用いても良い。
これらの着色剤によってエポキシ樹脂を着色することにより、ドレンパンの色や模様を変えることができる。
【0178】
<他の実施形態>
(1)容器に収容した母材1の表面にエポキシ樹脂を注ぎ、母材1の表面のうち、エポキシ樹脂を浸透させたい領域に対応する母材1の裏面の領域を減圧装置によって減圧する方法でも良い。また、母材1をエポキシ樹脂中に浸漬する方法でもよい。これらの方法を採用する場合、前述のように、エポキシ樹脂Eを浸透させたくない領域をフィルムなどで予めマスキングしておいても良い。
【0179】
これらの製造方法によれば、特に母材1の肉厚が厚く、浸透させるべきエポキシ樹脂の量が多い場合に、エポキシ樹脂を何度も塗布する作業が不要となるため、ドレンパンの製造効率を高めることができる。また、エポキシ樹脂Eを浸透させる領域が広範囲である場合にも有効である。
【0180】
(2)母材1においてエポキシ樹脂Eを浸透させたくない領域をフィルムなどでマスキングした後にエポキシ樹脂Eを塗布することにより、エポキシ樹脂Eを特定の範囲のみに浸透させることもできる。
【0181】
(3)加熱により硬化が促進される性質のエポキシ樹脂を用いる場合は、エポキシ樹脂が浸透した母材1を加熱し、連通孔および空隙内のエポキシ樹脂Eの硬化時間を短縮することもできる。
【0182】
(4)前述の各実施形態では、本発明に係る液体受け容器の製造方法として、ドレンパンの製造方法を説明したが、冷却装置などに使用される露受皿など、他の液体受け容器にも本発明を適用することができる。
【0183】
(5)前述の各実施形態において使用したエポキシ樹脂浸透装置および製造方法は、一例であり、本発明の目的を逸脱しない限り変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0184】
【図1】ドレンパンの母材の説明図であり、(a)は、母材の平面図、(b)は、(a)のB−B矢視断面図、(c)は、(a)のA−A矢視断面図である。
【図2】図1の一部を拡大した部分拡大図であり、(a)は、図1(b)に示す水受け部6の拡大図、(b)は、図1(c)に示す排水口8にソケットを嵌合する様子を示す拡大図、(c)は、ソケットが嵌合された状態を示す拡大図である。
【図3】エポキシ樹脂の塗布範囲を示す説明図であり、(a)は、図2(a)に対する塗布範囲の説明図、(b)は、図2(b)に対する塗布範囲の説明図である。
【図4】エポキシ樹脂浸透装置に母材1がセットされた状態の断面図である。
【図5】浸透したエポキシ樹脂が硬化し、硬化したエポキシ樹脂製の膜により塗布面が被覆された状態を示す断面図であり、(a)は図3(a)に対応する図、(b)は図3(b)に対応する図である。
【図6】第2実施形態の製造方法において用いるエポキシ樹脂浸透装置の説明図である。
【図7】図6に示すエポキシ樹脂浸透装置の説明図であり、(a)は蓋を閉めた状態の説明図、(b)は(a)のC−C矢視断面図である。
【図8】母材1と同じ発泡成型体の説明図であり、(a)は発泡成型体の斜視図、(b)は(a)に示す発泡成型体の領域Dの拡大図である。
【図9】第4工程を終えて製造されたドレンパンの一部を取り出した断片を示す説明図であり、(a)はその断片の斜視図、(b)は(a)に示す領域Dの拡大図である。
【図10】第3実施形態において使用するエポキシ樹脂浸透装置の説明図である。
【図11】第1変更例におけるエポキシ樹脂浸透装置の説明図である。
【図12】第2変更例におけるエポキシ樹脂浸透装置の説明図である。
【図13】試験1で使用した試験装置の模式図である。
【図14】真空圧と粘度の相関試験結果を示す図表である。
【図15】試験2において各試験片に浸透したエポキシ樹脂の浸透量をまとめた図表である。
【図16】試験3において試験片を採取した場所を示す説明図である。
【図17】採取した各試験片に試験2で使用したエポキシ樹脂を浸透させた場合のエポキシ樹脂の浸透量と試験片の空隙率との関係を示す図表である。
【図18】緩衝能力の試験結果を示す図表である。
【図19】図18に示す測定結果のうち、G値(m/s2)の平均値(Ave)と空隙率(%)との関係を示すグラフである。
【図20】各試験片毎に空隙率と緩衝能力評価との関係をまとめた図表である。
【図21】試験4における各試験片の測定結果をまとめた図表である。
【図22】図21に示す測定結果に基づいて作成した、圧縮応力と歪み率との関係を示すグラフである。
【図23】歪み率が10%のときの圧縮応力と空隙率との関係を示すグラフである。
【図24】各試験片毎に空隙率に対する圧縮応力を評価した結果を示す図表である。
【図25】試験5における浸透性試験に関するデータを示す図表であり、(a)は試験片のデータを示す図表、(b)は浸透試験の結果を示す図表、(c)は空隙率の算出結果を示す図表である。
【図26】各試験片に対する浸透時間の評価を示す図表である。
【図27】浸透性試験に関するデータを示す図表であり、(a)は試験片のデータを示す図表、(b)は各試験片に対する浸透時間の評価を示す図表、(c)は空隙率の算出表である。
【図28】各空隙率に対する浸透時間の評価を示す図表である。
【図29】試験6における水漏れ試験の結果をまとめた図表である。
【図30】緩衝能力試験、圧縮試験および浸透試験における各空隙率に対する総合評価を示す図表である。
【図31】試験3で使用した試験装置の模式図である。
【図32】エポキシ樹脂の浸透深さに関する試験の説明図であり、(a)は試験結果をまとめた図表、(b)は計測箇所の説明図である。
【図33】試験7における試験結果をまとめた図表である。
【図34】試験8における試験結果をまとめた図表である。
【図35】従来の発泡樹脂成型機の模式図である。
【符号の説明】
【0185】
1・・母材、1a・・発泡樹脂成型体、1b・・一の面、1c・・他の面、
1d・・発泡セル、1e・・空隙、1f・・断片、6・・水受け部、8・・排水口、
10・・蓋、11・・加圧室、20・・容器本体、21・・減圧室、
30,31・・加圧装置、40,41・・減圧装置、
70,80,90・・エポキシ樹脂浸透装置、C1,C2・・減圧室、
C3,C4・・加圧室、E・・エポキシ樹脂、F・・エポキシ樹脂膜。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣接する発泡セル同士が融着することにより独立気泡構造が形成されており、かつ、独立気泡間が連通することにより一の面から他の面に連通した連通孔が存在する発泡樹脂成型体を母材とする液体受け容器の製造方法において、
前記発泡セル間の空隙率が0.2〜7%であり、かつ、30mN/m以下の界面張力を有する液体が、0.1MPa以上の差圧を所定の面間に発生させることによって浸透する母材と、
前記発泡セルを溶解しない性質を有し、かつ、粘度が2000mPa・s未満であり、さらに、硬化前と硬化後の重量減少率が20%未満であるエポキシ樹脂と、
前記母材を収容する容器と、
前記容器の内部を減圧する減圧装置とを用意し、
前記母材が前記容器の中に収容され、前記一の面のうち、所定の領域が前記エポキシ樹脂によって覆われた状態を作る第1工程と、
前記減圧装置により、前記他の面側に形成された容器内部の空間のうち、前記所定の領域に対応する空間内を減圧し、前記所定の領域を覆うエポキシ樹脂を前記連通孔に浸透させ、かつ、前記所定の領域にエポキシ樹脂製の膜が形成された状態にする第2工程と、
前記連通孔に浸透したエポキシ樹脂および前記所定の領域に形成されたエポキシ樹脂製の膜を硬化させる第3工程と、
を実行することにより、前記連通孔が硬化したエポキシ樹脂によって閉塞され、かつ、前記所定の領域が硬化したエポキシ樹脂製の膜により被覆された状態にすることを特徴とする液体受け容器の製造方法。
【請求項2】
隣接する発泡セル同士が融着することにより独立気泡構造が形成されており、かつ、独立気泡間が連通することにより一の面から他の面に連通した連通孔が存在する発泡樹脂成型体を母材とする液体受け容器の製造方法において、
前記発泡セル間の空隙率が0.2〜7%であり、かつ、30mN/m以下の界面張力を有する液体が0.1MPa以上の上下差圧を所定の面間に発生させることによって浸透する母材と、
前記発泡セルを溶解しない性質を有し、かつ、粘度が2000mPa・s未満であり、さらに、硬化前と硬化後の重量減少率が20%未満であるエポキシ樹脂と、
前記母材を収容する容器と、
前記容器の内部の圧力を高める加圧装置とを用意し、
前記母材が前記容器の中に収容され、前記一の面のうち、所定の領域が前記エポキシ樹脂によって覆われた状態を作る第1工程と、
前記加圧装置により、前記一の面側に形成された容器内部の空間のうち、前記所定の領域に対応する空間内の圧力を上昇させ、前記所定の領域を覆うエポキシ樹脂を前記連通孔に浸透させ、かつ、前記所定の領域にエポキシ樹脂製の膜が形成された状態にする第2工程と、
前記連通孔に浸透したエポキシ樹脂および前記所定の領域に形成されたエポキシ樹脂製の膜を硬化させる第3工程と、
を実行することにより、前記連通孔が硬化したエポキシ樹脂によって閉塞され、かつ、前記所定の領域が硬化したエポキシ樹脂製の膜により被覆された状態にすることを特徴とする液体受け容器の製造方法。
【請求項3】
隣接する発泡セル同士が融着することにより独立気泡構造が形成されており、かつ、独立気泡間が連通することにより一の面から他の面に連通した連通孔が存在する発泡樹脂成型体を母材とする液体受け容器の製造方法において、
前記発泡セル間の空隙率が0.2〜7%であり、かつ、30mN/m以下の界面張力を有する液体が0.1MPa以上の上下差圧を所定の面間に発生させることによって浸透する母材と、
前記発泡セルを溶解しない性質を有し、かつ、粘度が2000mPa・s未満であり、さらに、硬化前と硬化後の重量減少率が20%未満であるエポキシ樹脂と、
前記母材を収容する容器と、
前記容器の内部の圧力を高める加圧装置と、
前記容器の内部を減圧する減圧装置とを用意し、
前記母材が前記容器の中に収容され、前記一の面のうち、所定の領域が前記エポキシ樹脂によって覆われた状態を作る第1工程と、
前記加圧装置により、前記一の面側に形成された容器内部の空間のうち、前記所定の領域に対応する空間内の圧力を上昇させるとともに、前記減圧装置により、前記他の面側に形成された容器内部の空間のうち、前記所定の領域に対応する空間内を減圧し、前記所定の領域を覆うエポキシ樹脂を前記連通孔に浸透させ、かつ、前記所定の領域にエポキシ樹脂製の膜が形成された状態にする第2工程と、
前記連通孔に浸透したエポキシ樹脂および前記所定の領域に形成されたエポキシ樹脂製の膜を硬化させる第3工程と、
を実行することにより、前記連通孔が硬化したエポキシ樹脂によって閉塞され、かつ、前記所定の領域が硬化したエポキシ樹脂製の膜により被覆された状態にすることを特徴とする液体受け容器の製造方法。
【請求項4】
前記母材の一の面には、複数の前記所定の領域が設定されており、
前記容器は、前記各所定の領域と対応する前記他の面の各領域と接する複数の減圧室を内部に備えており、
前記減圧装置は、前記各減圧室をそれぞれ異なる大きさで減圧するように構成されており、
前記第1工程は、
前記他の面の各領域がそれぞれ対応する前記各減圧室と接した状態となるように前記母材を前記容器の中に収容し、前記各所定の領域がそれぞれ前記エポキシ樹脂によって覆われた状態を作る工程であり、
前記第2工程は、
前記減圧装置によって前記各減圧室をそれぞれ異なる大きさで減圧し、前記各所定の領域を覆うエポキシ樹脂を前記連通孔に浸透させ、かつ、前記各所定の領域にエポキシ樹脂製の膜が形成された状態にする工程であることを特徴とする請求項1に記載の液体受け容器の製造方法。
【請求項5】
前記母材の一の面には、複数の前記所定の領域が設定されており、
前記容器は、その内部に前記各所定の領域と対応する複数の加圧室を備えており、
前記加圧装置は、前記各加圧室をそれぞれ異なる大きさで加圧するように構成されており、
前記第1工程は、
前記各所定の領域がそれぞれ対応する前記各加圧室と接した状態となるように前記母材を前記容器の中に収容し、前記各所定の領域がそれぞれ前記エポキシ樹脂によって覆われた状態を作る工程であり、
前記第2工程は、
前記加圧装置によって前記各加圧室の内部圧力をそれぞれ異なる大きさに上昇させ、前記各所定の領域を覆うエポキシ樹脂を前記連通孔に浸透させ、かつ、前記各所定の領域にエポキシ樹脂製の膜が形成された状態にする工程であることを特徴とする請求項2に記載の液体受け容器の製造方法。
【請求項6】
前記母材の一の面には、複数の前記所定の領域が設定されており、
前記容器は、その内部に前記各所定の領域と対応する複数の加圧室を備えるとともに、前記各所定の領域と対応する前記他の面の各領域と接する複数の減圧室を備えており、
前記加圧装置は、前記各加圧室をそれぞれ異なる大きさで加圧するように構成されており、
前記減圧装置は、前記各減圧室をそれぞれ異なる大きさで減圧するように構成されており、
前記第1工程は、
前記各所定の領域がそれぞれ対応する前記各加圧室と接しており、かつ、前記各所定の領域と対応する前記他の面の各領域がそれぞれ対応する前記各減圧室と接した状態となるように前記母材を前記容器の中に収容し、さらに、前記各所定の領域がそれぞれ前記エポキシ樹脂によって覆われた状態を作る工程であり、
前記第2工程は、
前記加圧装置によって前記各加圧室の内部圧力をそれぞれ異なる大きさに上昇させるとともに、前記減圧装置によって前記各減圧室をそれぞれ異なる大きさで減圧し、前記各所定の領域を覆うエポキシ樹脂をそれぞれ前記連通孔に浸透させ、かつ、前記各所定の領域にそれぞれエポキシ樹脂製の膜が形成された状態にする工程であることを特徴とする請求項3に記載の液体受け容器の製造方法。
【請求項7】
前記第1工程は、
前記容器の中に収容された前記母材の前記所定の領域を覆った前記エポキシ樹脂の表面にフィルムを配置し、前記母材の一の面が前記フィルムによって覆われた状態にする工程をさらに有することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1つに記載の液体受け容器の製造方法。
【請求項8】
前記第1工程は、
前記容器の中に収容された前記母材の前記各所定の領域を覆った前記エポキシ樹脂の表面にフィルムを配置し、前記母材の一の面が前記フィルムによって覆われた状態にする工程をさらに有することを特徴とする請求項4ないし請求項6のいずれか1つに記載の液体受け容器の製造方法。
【請求項9】
前記エポキシ樹脂は、揮発性有機溶剤を含まないものであることを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれか1つに記載の液体受け容器の製造方法。
【請求項10】
前記エポキシ樹脂に無機フィラーを混合してなる流動体を前記エポキシ樹脂に代えて用い、前記流動体中のエポキシ樹脂を前記連通孔に浸透させることにより、前記連通孔が硬化したエポキシ樹脂によって閉塞され、かつ、前記所定の領域が硬化した前記流動体の膜により被覆された状態にすることを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれか1つに記載の液体受け容器の製造方法。
【請求項11】
前記エポキシ樹脂に天然または合成の短繊維を5重量%以下混合してなる流動体を前記エポキシ樹脂に代えて用い、前記流動体中のエポキシ樹脂を前記連通孔に浸透させることにより、前記連通孔が硬化したエポキシ樹脂によって閉塞され、かつ、前記所定の領域が硬化した前記流動体の膜により被覆された状態にすることを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれか1つに記載の液体受け容器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【公開番号】特開2009−113366(P2009−113366A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−289714(P2007−289714)
【出願日】平成19年11月7日(2007.11.7)
【出願人】(000163899)金山化成株式会社 (10)
【Fターム(参考)】