説明

液体吐出装置

【課題】ワイパの表面や、液体吐出ヘッドの吐出面における液体の固着を抑制する。
【解決手段】ワイパ21の表面に、当該表面に沿って昇降可能なインク吸収体22が設けられている。吐出面4aに付着したインクをワイパ21で拭き取った後、インク吸収体22を上昇させて、ワイパ21の表面に付着したインクをインク吸収体22で吸収する。前回の吐出面4aの拭き取りからの経過時間が長い場合には、さらに、インク吸収体22の位置を保持したままワイパ21を上昇させた上で、ワイパ21と吐出面4aとを相対移動させることによって、インク吸収体22を吐出面4aに固着したインクをインク吸収体22に吸収されたインクで溶かし、その後、再度、吐出面4aに付着したインクをワイパ21で拭き取り、ワイパ21の表面に付着したインクをインク吸収体22で吸収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルから液体を吐出する液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ノズルから液体を吐出する液体吐出装置として、特許文献1には、ノズルからインクを吐出するインクジェット式プリンタが記載されている。特許文献1に記載のインクジェット式プリンタにおいては、印字待機中などに、インクジェットヘッドからインクを吸引し、その後、ワイピング部材を吐出面に接触可能な高さまで上昇させた上で、インクジェットヘッドが搭載されたキャリッジを移動させることによって、インクの吸引の際に吐出面に付着したインクをワイピング部材で拭き取るクリーニング動作を行っている。また、吐出面を拭き取ったときにワイピング部材に付着したインクは、その表面を伝ってワイピング部材の下方に流れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−74774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、特許文献1では、上述したように、吐出面を拭き取ったときにワイピング部材に付着したインクは、ワイピング部材の表面を伝ってワイピング部材の下方に流れるが、一部のインクは、どうしてもワイピング部材の吐出面との接触部に残留し、時間の経過により増粘して上記接触部に固着してしまう。このようなワイパの表面に固着するインクの量は、インクジェット式プリンタの使用期間が長くなるほど多くなり、ワイピング部材の吐出面の拭き取り性能の低下などにつながる。
【0005】
また、特許文献1に記載されているように、ワイピング部材で吐出面を拭き取ったとしても、吐出面にはどうしても多少のインクは残留し、時間の経過により増粘して吐出面に固着して、次回のワイピング部材による吐出面の拭き取りなどによっても除去することができなくなってしまう。このような吐出面に固着するインクの量は、インクジェット式プリンタの使用期間が長くなるほど多くなり、その結果、ノズルからのインクの吐出特性などに影響を与えてしまう虞がある。
【0006】
本発明の目的は、ワイパや液体吐出ヘッドの吐出面における液体の固着を抑制することが可能な液体吐出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明に係る液体吐出装置は、吐出面に形成されたノズルから液体を吐出する液体吐出ヘッドと、前記吐出面に接触して前記吐出面に沿った方向に前記吐出面と相対移動することによって、前記吐出面に付着した液体を拭き取るワイパと、前記ワイパの表面に設けられているとともに、前記ワイパの表面に沿って、前記ワイパの前記吐出面と接触する接触部の少なくとも一部に対向する対向位置と、前記対向位置からずれた、前記ワイパの前記接触部全体を露出させる露出位置との間で移動する液体吸収体と、を備えていることを特徴とする。
【0008】
本発明によると、液体吸収体を対向位置に移動させることによって、吐出面に付着した液体を拭き取ったワイパの表面に付着した液体を吸収することができ、これにより、ワイパの表面に液体が固着してしまうのを抑制することができる。また、ワイパの表面に液体吸収体が設けられているが、液体吸収体を露出位置に位置させれば、ワイパの接触部が露出するため、ワイパにより吐出面に付着した液体を拭き取る際に、液体吸収体が邪魔になることもない。
【0009】
さらに、液体を吸収した液体吸収体を対向位置に位置させた状態で、ワイパと吐出面とを相対移動させれば、液体吸収体に吸収された液体によって、吐出面に固着した液体を溶かして、吐出面への液体の固着を抑制することもできる。
【0010】
なお、本発明における「ワイパの吐出面と接触する先端部」とは、ワイパの、先端に位置して実際に吐出面に接触する部分と、当該部分に連なる部分とをあわせた部分を示している。
【0011】
第2の発明に係る液体吐出装置は、第1の発明に係る液体吐出装置において、前記吐出面と交差する方向に前記ワイパと前記吐出面とを相対移動させて、前記ワイパを、前記吐出面と接触する接触位置、及び、前記吐出面から離隔した離隔位置のいずれかに選択的に位置付けるワイパ接離機構と、前記吐出面に沿う方向に前記ワイパと前記吐出面とを相対移動させる相対移動機構と、前記液体吸収体を前記対向位置と前記露出位置の間で移動させる吸収体移動機構と、前記ワイパ接離機構、前記相対移動機構及び前記吸収体移動機構を制御する制御手段と、をさらに備え、前記制御手段は、前記吸収体移動機構を制御して前記液体吸収体を前記露出位置に位置させた状態で、前記ワイパ接離機構を制御して前記ワイパを前記接触位置に位置付けるとともに、前記相対移動機構を制御して前記ワイパと前記吐出面を相対移動させることによって、前記吐出面に付着した液体を前記吐出面に接触させた前記ワイパで拭き取る拭き取り動作を実行させるとともに、前記拭き取り動作の直後に、前記吸収体移動機構を制御して前記液体吸収体を前記露出位置から前記対向位置に移動させることによって、前記ワイパの表面に付着した液体を前記液体吸収体で吸収する吸収動作を実行させることを特徴とする。
【0012】
本発明によると、吐出面に付着した液体をワイパに拭き取らせた直後に、ワイパに付着した液体を液体吸収体に吸収させるので、ワイパの表面に液体が固着してしまうのを確実に抑制することができる。
【0013】
第3の発明に係る液体吐出装置は、第2の発明に係る液体吐出装置において、前記制御手段は、前記吸収動作の後、さらに、前記液体吸収体を前記対向位置に位置させたまま、前記ワイパ接離機構を制御して、前記ワイパを前記接触位置に位置付けることで、前記液体吸収体を前記吐出面と接触する位置に位置付けるとともに、前記相対移動機構を制御して、前記ワイパと前記吐出面を前記吐出面に沿う方向に相対移動させることによって、前記吐出面に固着した液体を、前記吐出面に接触させた前記液体吸収体に吸収された液体で溶かす溶解動作を実行させるとともに、前記溶解動作の後、前記ワイパ接離機構、前記相対移動機構及び前記吸収体移動機構を制御して、再度前記拭き取り動作を実行させることを特徴とする。
【0014】
本発明によると、液体吸収体に液体を吸収させた後、液体吸収体に吸収された液体によって吐出面に固着した液体を溶かした上で、再度ワイパに吐出面に付着した液体を拭き取らせるので、吐出面に固着した液体を拭き取ることができる。
【0015】
第4の発明に係る液体吐出装置は、第3の発明に係る液体吐出装置において、前記制御手段は、前記相対移動機構を制御して、前記溶解動作における前記ワイパと前記吐出面との平均の相対移動速度を、前記拭き取り動作における前記ワイパと前記吐出面との平均の相対移動速度よりも遅くさせることを特徴とする。
【0016】
本発明によると、溶解動作におけるワイパと吐出面との平均の相対移動速度を遅くすることにより、ワイパと吐出面との接触時間が長くなり、吐出面に固着した液体を確実に溶かすことができる。また、拭き取り動作におけるワイパと吐出面とのの平均の相対移動速度を速くすることにより吐出面に付着した液体の拭き取りにかかる時間を短縮することができる。
【0017】
第5の発明に係る液体吐出装置は、第3又は第4の発明に係る液体吐出装置において、前記液体吐出ヘッドは、液体として顔料インクを吐出する前記ノズルと、液体として染料インクを吐出する前記ノズルとを備えており、前記制御手段は、前記相対移動機構を制御して、前記溶解動作において、前記液体吐出面に固着した顔料インクを溶かすときの前記ワイパと前記吐出面との平均の相対移動速度を、前記液体吐出面に固着した染料インクを溶かすときの前記ワイパと前記吐出面との平均の相対移動速度よりも遅くさせることを特徴とする。
【0018】
本発明によると、顔料インクは粘度が高いが、溶解動作において、吐出面に固着した顔料インクを溶かすときのワイパと吐出面との平均の相対移動速度を遅くすることにより、ワイパと吐出面との接触時間が長くなり、固着した顔料インクを確実に溶かすことができる。また、染料インクは粘度が低いので、溶解動作において吐出面に固着した染料インクを溶かすときのワイパと吐出面との平均の相対移動速度を速くすることにより、溶解動作にかかる時間を短縮することができる。
【0019】
第6の発明に係る液体吐出装置は、第3〜第5のいずれかの発明に係る液体吐出装置において、前記制御手段は、前記昇降機構、前記相対移動機構及び前記吸収体移動機構を制御して、前記ワイパにより前記液体吐出面に付着した液体が最後に拭き取られてからの経過時間が所定時間よりも長い場合にのみ、前記吸収動作の後、さらに前記溶解動作及び再度の前記拭き取り動作を実行させることを特徴とする。
【0020】
本発明によると、吐出面に付着した液体が最後に拭き取られてからの経過時間が長い場合には、吐出面に液体が固着している可能性が高いので、吸収動作の後、さらに溶解動作及び再度の拭き取り動作を実行させることにより、吐出面に固着した液体を拭き取ることができる。一方、上記経過時間が短い場合には、吐出面に液体が固着している可能性が低いので、吸収動作の後、さらに溶解動作及び再度の拭き取り動作を実行させないことにより、吐出面に付着した液体の拭き取りにかかる時間を短縮することができる。
【0021】
第7の発明に係る液体吐出装置は、第3〜第6の発明に係る液体吐出装置において、前記制御手段は、前記相対移動機構を制御して、前記溶解動作において、前記液体吸収体が前記吐出面に接触した状態で、前記ワイパを往復移動させることを特徴とする。
【0022】
本発明によると、溶解動作において、液体を吸収した液体吸収体が、吐出面の同じ部分に繰り返し接触することとなるため、吐出面に固着した液体を確実に溶かすことができる。
【0023】
第8の発明に係る液体吐出装置は、第1〜第7のいずれかの発明に係る液体吐出装置において、前記液体吸収体は、前記ワイパの表面と直交する方向から見て、その先端部以外の部分における幅の合計が、当該先端部の幅よりも小さくなっていることを特徴とする。
【0024】
本発明によると、ワイパと液体吸収体との摺動面積が小さくなるため、液体吸収体移動させる際のワイパと液体吸収体との間の摩擦を低減することができる。なお、「先端部以外の部分における幅の合計」とは、先端部以外の部分が1つの連続した部分である場合には、その部分の幅自体を指しており、先端部以外の部分が複数の部分に分かれている場合には、各部分の幅を合計したものを指している。
【0025】
第9の発明に係る液体吐出装置は、第1〜第7のいずれかの発明に係る液体吐出装置において、前記液体吸収体の先端部以外の部分に、前記ワイパとの対向面に開口した凹部が形成されていることを特徴とする。
【0026】
本発明によると、ワイパと液体吸収体との摺動面積が小さくなるため、液体吸収体移動させる際のワイパと液体吸収体との間の摩擦を低減することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、液体吸収体を対向位置に移動させることによって、吐出面に付着した液体を拭き取ったワイパの表面に付着した液体を吸収することができ、これにより、ワイパの表面に液体が固着してしまうのを抑制することができる。さらに、液体を吸収した液体吸収体を対向位置に位置させた状態で、ワイパと吐出面とを相対移動させれば、液体吸収体に吸収された液体によって、吐出面に固着した液体を溶かして、吐出面への液体の固着を抑制することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施の形態に係るプリンタの概略構成図である。
【図2】図1の矢印IIの方向から見たワイピングユニットの構造と動作を示す図である。
【図3】(a)が図2(c)を矢印Aの方向から見た図、(b)が図2(d)を矢印Bの方向から見た図である。
【図4】図1の制御装置の機能ブロック図である。
【図5】インクジェットヘッドのメンテナンスの手順を示すフローチャートである。
【図6】インクジェットヘッドのメンテナンスにおける吸引パージ後の動作を示す図である。
【図7】(a)が変形例1の図3(a)相当の図、(b)が変形例2の図3(a)相当の図である。
【図8】変形例3の図2(c)相当の図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の好適な実施の形態について説明する。
【0030】
図1に示すように、本実施の形態に係る液体吐出装置としてのプリンタ1は、キャリッジ2、サブタンク3、インクジェットヘッド4、吸引キャップ5、切り替え装置6、吸引ポンプ7、廃液タンク8、ワイピングユニット9などを備えている。また、プリンタ1の動作は、制御装置50によって制御されている。
【0031】
キャリッジ2は、走査方向(図1の左右方向)に平行に延びた2本のガイドレール11に取り付けられており、モータやベルトなどからなるキャリッジ移動機構18(図4参照)により、ガイドレール11に沿って走査方向に移動させることができるようになっている。サブタンク3は、キャリッジ2に設けられているとともに、4本のチューブ12を介して4つのインクカートリッジ13と接続されている。
【0032】
4つのインクカートリッジ13は走査方向に沿って配列されており、これら4つのインクカートリッジ13には、図中左側に配置されたものから順に、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタのインクが貯留されている。サブタンク3には、チューブ12を介してインクカートリッジ13に貯留されたインクが供給されるとともに、供給されたインクが貯留される。ここで、本実施の形態では、ブラックインクは顔料インクであり、3色のカラーインク(イエロー、シアン、マゼンタのインク)は染料インクである。
【0033】
液体吐出ヘッドとしてのインクジェットヘッド4は、サブタンク3に取り付けられており、サブタンク3から上記4色のインクが供給されるとともに、その下面である吐出面4aに形成された複数のノズル20から上記4色のインクを吐出する。より詳細に説明すると、複数のノズル20は、走査方向と直交する紙送り方向(図1の上下方向)に配列されることによってそれぞれ形成された4列のノズル列19を形成しており、複数のノズル20からは、図1の右側に配置されているノズル列19を構成するものから順に、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタのインクを吐出する。
【0034】
そして、プリンタ1においては、図示しない用紙搬送機構により紙送り方向に搬送される記録用紙Pに、キャリッジ2とともに走査方向に往復移動するインクジェットヘッド4からインクを吐出することによって、記録用紙Pに印刷を行う。
【0035】
吸引キャップ5は、キャリッジ2を、図1の左方にほぼ最大限移動させた状態で、インクジェットヘッド4の吐出面4aと対向するように配置されている。吸引キャップ5には、吐出面4aと対向している状態で、図1の左側3列のノズル列19を構成する3色のカラーインクを吐出するノズル20と対向するキャップ部5aと、図1の最も右側に配置されたノズル列19を構成するブラックインクを吐出するノズル20と対向するキャップ部5bとを備えている。
【0036】
また、吸引キャップ5は、キャップ昇降機構17(図4参照)により昇降させることができるようになっており、吸引キャップ5と吐出面4aとが対向している状態で、吸引キャップ5を上昇させると、3色のカラーインクを吐出するノズル20がキャップ部5aに覆われるとともに、ブラックインクを吐出するノズル20がキャップ部5bに覆われる。
【0037】
切り替え装置6は、チューブ14a、14bを介して、キャップ部5a、5bと接続されているとともに、チューブ15を介して吸引ポンプ7と接続されている。切り替え装置6は、チューブ14a、14bのいずれか一方を選択的にチューブ15と接続させることにより、吸引ポンプ7を、キャップ部5a、5bのいずれかと選択的に接続させる。吸引ポンプ7は、チューブ16を介して廃液タンク8に接続されている。
【0038】
そして、プリンタ1においては、ノズル20がキャップ部5a、5bに覆われた状態で、吸引ポンプ7を駆動することにより、ノズル20からインクジェットヘッド4内の増粘したインクや気泡などが排出させる、いわゆる吸引パージを行うことができる。そして、排出されたインクなどは、廃液タンク8に貯留される。
【0039】
このとき、切り替え装置6により、キャップ部5aと吸引ポンプ7とが接続された状態で、吸引ポンプ7を駆動すると、インクジェットヘッド4内のカラーインクがキャップ部5aに排出される。一方、切り替え装置6により、キャップ部5aと吸引ポンプ7と接続された状態で、吸引ポンプ7を駆動すると、インクジェットヘッド4内のブラックインクがキャップ部5bに排出される。
【0040】
ワイピングユニット9は、図1における吸引キャップ5の左側に配置されている。ワイピングユニット9は、図2に示すように、ワイパ21、インク吸収体22、ワイパ取り付け部23、吸収体取り付け部24などを備えている。
【0041】
ワイパ21は、ゴムなどの弾性材料からなる略矩形の板状体であり、その下端部がワイパ取り付け部23に取り付けられている。ワイパ取り付け部23は、ワイピングユニット9の本体9aに昇降自在に支持されており、ワイパ昇降機構25(図4参照)によって昇降させることができるようになっている。
【0042】
ワイパ昇降機構25は、ワイパ取り付け部23を昇降させることによって、ワイパ取り付け部23に取り付けられたワイパ21を、図2(a)に示すように、吐出面4aをワイパ21と対向する位置に配置されている状態で、その先端部21aが吐出面4aに接触する接触位置と、図2(b)に示すように、先端部21aが、吐出面4aから離隔した離隔位置との間で昇降させる(吐出面4aと交差する方向に相対移動させる)。ここで、ワイパ21の先端部21aとは、ワイパ21の、先端に位置して実際に吐出面4aに接触する接触部21bと、接触部21bのすぐ下方に連なる部分21cとをあわせたものである。
【0043】
インク吸収体22は、スポンジなどインクを吸収可能な材料によって構成された、ワイパ21の表面と直交する方向から見て、その先端部22aよりも下方に位置する部分22bが、先端部22aの略中央部につながった、略T字形状を有する板状体であり、先端部22aの幅がワイパ21とほぼ同じW1となっているとともに、先端部22aよりも下方に位置する部分22bの幅(先端部以外の部分の幅の合計)が、先端部22aの幅W1よりも小さいW2となっている。
【0044】
インク吸収体22は、ワイパ21の図2における左側の表面に接触するように配置されているとともに、その下端部が吸収体取り付け部24に取り付けられている。吸収体取り付け部24は、ワイパ取り付け部23に昇降自在に支持されており、吸収体昇降機構26(図4参照)によって昇降させることができるようになっている。
【0045】
吸収体昇降機構26は、吸収体取り付け部24を昇降させることによって、吸収体取り付け部24に取り付けられたインク吸収体22を、ワイパ取り付け部23に取り付けられたワイパ21の表面に沿って昇降(移動)させる。より詳細に説明すると、吸収体昇降機構26は、インク吸収体22を、図2(c)に示すように、その先端部22aが、ワイパ21の先端部21aよりも下方に位置して、ワイパ21の先端部21a全体を露出させる露出位置と、図2(d)に示すように、先端部22aが、ワイパ21の接触部21bを含む先端部21a全体と対向する対向位置との間で昇降させる。
【0046】
ここで、インク吸収体22をワイパ21に対して昇降させると、ワイパ21とインク吸収対22とが摺動する。しかしながら、本実施の形態では、インク吸収体22が、上述したように、その先端部22aよりも下方に位置する部分22bの幅W2が先端部22aの幅W1よりも小さくなっているため、部分22bの幅W2が先端部22aの幅W1と同じである場合に比べて、ワイパ21とインク吸収体22との摺動面積を小さくすることができ、ワイパ21とインク吸収体22との間の摩擦を低減することができる。
【0047】
次に、プリンタ1の動作を制御する制御装置50について説明する。制御装置50は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などからなり、これらが図4に示すように、印刷制御部51、メンテナンス制御部52などとして動作する。
【0048】
印刷制御部51は、プリンタ1において印刷を行う際の、インクジェットヘッド4、キャリッジ移動機構18などの動作を制御する。メンテナンス制御部52は、プリンタ1において、後述するインクジェットヘッド4のメンテナンスを行う際の制御を行うものであり、パージ制御部53及び拭き取り制御部54を備えている。
【0049】
パージ制御部53は、上述の吸引パージを行う際の、キャリッジ移動機構18、キャップ昇降機構17、切り替え装置6、吸引ポンプ7などの動作を制御する。拭き取り制御部54は、上述の拭き取り動作、液体吸収動作及び溶解動作を行う際の、相対移動機構としてのキャリッジ移動機構18、ワイパ昇降機構25、吸収体昇降機構26の動作を制御する。
【0050】
次に、プリンタ1におけるインクジェットヘッド4のメンテナンスの手順について図5のフローチャート及び図6を用いて説明する。ここで、図5のフローは、メンテナンス制御部52にメンテナンスを実行することを指示する信号が入力されたときに開始される。なお、この信号は、例えば、印刷を行っていないときに定期的に、あるいは、プリンタ1のユーザが、印刷品質の低下時に、プリンタ1と接続された図示しないPCや、プリンタ1に設けられた図示しない操作部などを操作して、メンテナンスの実行を指示したときなどに、メンテナンス制御部52に入力される。
【0051】
インクジェットヘッド4のメンテナンスにおいては、まず、入力された信号に応じて、カラーインクを排出させる吸引パージ、及び、ブラックインクを排出させる吸引パージのいずれかを行う(ステップS101、以下単にS101などとする)。
【0052】
次に、吸引キャップ5を降下させて吐出面4aから離隔させるとともに、ワイパ昇降機構25によりワイパ21を上記接触位置まで上昇させてから、吸引キャップ5と対向する位置にあるキャリッジ2を、図1のワイピングユニット9よりも左側まで左方に移動させる。すると、図6(a)に示すように、ワイパ21の先端部21aが吐出面4aに接触した状態で、ワイパ21と吐出面4aとが、吐出面4aに沿う方向に相対移動し、これにより、吐出面4aに付着したカラーインク又はブラックインクが、ワイパ21によって拭き取られる(S102、拭き取り動作)。
【0053】
このとき、図6(b)に示すように、吸引パージにより吐出面4aに付着したばかりの粘度の低いインクI1は、ワイパ21により拭き取ることができるが、前回以前の吸引パージによって吐出面4aに付着したインクなど、吐出面4aに長期間残留して吐出面4aに固着したインクI2は、S102の拭き取り動作では拭き取ることができない場合がある。
【0054】
次に、ワイパ昇降機構25により、ワイパ21を離隔位置まで降下させるとともに、図6(c)に示すように、吸収体昇降機構26により、インク吸収体22を露出位置から対向位置まで移動させる。これにより、拭き取り動作によってワイパ21の表面に付着したインクが、インク吸収体22に吸収される(S103、吸収動作)。
【0055】
次に、上記S102において拭き取り動作を開始した時点での、前回の拭き取り動作が完了してからの経過時間Tが、予め設定された所定時間T1以下である場合には(S104:NO)、図6(d)に示すように、インク吸収体22を露出位置に戻して(S105)、動作を終了する。ここで、所定時間T1は、その間に、吐出面4aに付着したインクが固着してしまうような時間である。
【0056】
一方、上記経過時間Tが、上記予定時間T1よりも長い場合には(S105:YES)、キャリッジ2を吸引キャップ5と対向する位置など、ワイパ21よりも図1の右側の位置に移動させ、続いて、先端部22aにインクが吸収されたインク吸収体22を上記対向位置に位置させたまま、ワイパ21を接触位置まで上昇させることにより、インク吸収体22の先端部22aを吐出面4aと接触する位置に位置付ける。
【0057】
そして、この状態で、キャリッジ2を、ワイピングユニット9よりも図1の左側まで左方に移動させる。これにより、図6(e)に示すように、インクを吸収したインク吸収体22の先端部22aが吐出面4aに接触し、インク吸収体22に吸収されたインクによって、吐出面4aに固着したインクI2が溶かされる(S106、溶解動作)。なお、このとき、それまでに吐出面4aに固着したカラー及びブラックの両方のインクが、インク吸収体22に吸収されたインクによって溶かされる。
【0058】
次に、再度上述の拭き取り動作を実行させることにより、S106の溶解動作で溶かしたインクI2をワイパ21で拭き取り(S107)、続いて、上述の吸収動作を実行させることにより、上記S107においてワイパ21の表面に付着したインクをインク吸収体22に吸収させる(S108)。そして、その後、インク吸収体22を露出位置に戻して(S105)、動作を終了する。
【0059】
ここで、本実施の形態では、上記経過時間Tが所定時間T1よりも長い場合にのみ、上記S106〜S108の溶解動作、拭き取り動作及び吸収動作を実行させているため、上記経過時間Tが長く、吐出面4aにインクが固着している可能性が高い場合に、上記S106〜S108の溶解動作、拭き取り動作及び吸収動作を実行させることにより、吐出面4aに固着したインクを溶かしたうえで拭き取ることができる。
【0060】
一方、上記経過時間Tが短く、吐出面4aにインクが固着している可能性が低い場合には、上記S103の吸収動作の後、直ちにインク吸収体22を露出位置に戻して動作を終了することにより、メンテナンスにかかる時間を短縮することができる。
【0061】
また、吸収動作においては、インク吸収体22の先端部22aにより、ワイパ21の表面に付着したインクが吸収され、溶解動作においては、先端部22aに吸収されたインクにより吐出面4aに固着したインクが溶かされる。したがって、インク吸収体22は、先端部22aにおいてさえワイパ21とほぼ同じ幅W1となっていれば、先端部22aよりも下方の部分22bの幅W2がW1より小さくなっていたとしても、吸収動作においてワイパ21の表面に付着したインクを十分に吸収できなかったり、溶解動作において固着したインクを十分に溶かすことができなかったりすることはない。
【0062】
次に、上記S102の拭き取り動作、及び、上記S106の溶解動作における、キャリッジ2の移動速度(ワイパ21と吐出面4aとの相対移動速度)について、表1を用いて説明する。
【0063】
【表1】

【0064】
表1に示すように、S101の吸引パージでカラーインクを排出させた場合、すなわち、上記S102において、吐出面4aに付着したカラーインクを拭き取る場合には、上記S102の拭き取り動作におけるキャリッジ2の移動速度をVcとしている。
【0065】
一方、S101の吸引パージでブラックインクを排出させた場合、すなわち、上記S102において、吐出面4aに付着した、カラーインク(染料インク)に比べて粘度の高いブラックインク(顔料インク)を拭き取る場合には、上記S102の拭き取り動作におけるキャリッジ2の移動速度をVcよりも遅いVbとしている。
【0066】
ただし、カラーインク及びブラックインクのいずれも、吸引パージにより吐出面4aに付着したばかりの段階では、それほど粘度が高くないため、上記S101の吸引パージで排出させたインクの種類に関わらず、上記S102の拭き取り動作におけるキャリッジ2の移動速度を同じ(Vc=Vb)としてもよい。
【0067】
また、上記S106においては、ワイパ21が、吐出面4aのカラーインクを吐出するノズル20及びその近傍の部分(図1の左側3列のノズル列19及びその近傍)と対向しているとき、すなわち、吐出面4aに固着したカラーインクを溶かしているときには、キャリッジ2の移動速度を上記Vcよりも遅いWcとしている。
【0068】
一方、ワイパ21が、吐出面4aのブラックインクを吐出するノズル20及びその近傍の部分(図1の最も右側のノズル列19及びその近傍)と対向しているとき、すなわち、吐出面4aに固着したブラックインクを溶かしているときには、キャリッジ2の移動速度を上記Vb及び上記Wcのいずれよりも遅いWbとしている。
【0069】
すなわち、本実施の形態では、S101の吸引パージでカラーインク及びブラックインクのどちらを排出させた場合でも、上記S106の溶解動作において、S102の拭き取り動作よりも、キャリッジ2の平均の移動速度を遅くしている(Wc<Vc、Wb<Vb)。また、上記S106の溶解動作においては、ブラックインクを溶かしているときに、カラーインクを溶かしているときよりも、キャリッジ2の平均の移動速度を遅くしている(Wb<Wc)。
【0070】
したがって、溶解動作においては、インクを吸収したインク吸収体22と吐出面4aとの接触時間が長くなるため、吐出面4aに固着したインクを確実に溶かすことができる。一方、拭き取り動作においては、キャリッジ2の移動にかかる時間が短縮されるため、拭き取り動作にかかる時間を短縮することができる。
【0071】
さらに、溶解動作においては、粘度の高い顔料インクであるブラックインクを溶かしているときに、インクの吸収されたインク吸収体の吐出面4aとの接触時間が長くなるため、吐出面4aに固着したブラックインクを確実に溶かすことができる。一方、粘度の低い染料インクであるカラーインクを溶かしているときには、インク吸収体22の吐出面4aとの接触時間が短くなるため、吐出面4aに固着したカラーインクを溶かす動作にかかる時間を短縮することができる。
【0072】
なお、上記S107の拭き取り動作においては、上記S106において溶かされた、顔料インクであるブラックインク、及び、染料インクであるカラーインクの両方を拭き取るので、例えば、キャリッジ2の移動速度を、ブラックインクを拭き取るときと同じVbとする。
【0073】
次に、本実施の形態に種々の変更を加えた変形例について説明する。ただし、本実施の形態と同様の構成を有するものについては、適宜その説明を省略する。
【0074】
上述の実施の形態では、インク吸収体22が、ワイパ21の表面と直交する方向から見て略T字形状を有するものであったがこれには限られない。
【0075】
一変形例(変形例1)では、図7(a)に示すように、インク吸収体71が、その先端部71aよりも下方に位置する部分71bが先端部71aの図中右端部とつながった、略L字形状となっている。そして、部分71bの幅W3(先端部71a以外の部分における幅の合計)が、先端部71aの幅W1よりも小さくなっている。
【0076】
また、別の一変形例(変形例2)では、図7(b)に示すように、インク吸収体81が、その先端部81aよりも下方に位置する2つの部分81b、81cが、それぞれ、先端部81aの図中右端部及び左端部につながった、略コの字形状となっている。そして、部分81bの幅W4と部分81cの幅W5との合計(先端部81a以外の部分における幅の合計)が、先端部81aの幅W1よりも小さくなっている。ここで、幅W4と幅W5は同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0077】
これらの場合でも、ワイパ21とインク吸収体71、81との摺動面積が小さくなるため、インク吸収体71、81をワイパ21に対して移動させたときの、ワイパ21とインク吸収体71、81との摩擦を低減することができる。
【0078】
なお、変形例2では、インク吸収体81の先端部81aの下方に2つの部分81b、81cがつながっているが、先端部81aの下方に3つ以上の部分がつながっていてもよい。
【0079】
また、インク吸収体は、その先端部以外の部分における幅の合計が、先端部の幅よりも大きくなっていることにも限られない。別の一変形例(変形例3)では、図8に示すように、インク吸収体91は、その全域においてワイパ21とほぼ同じ一定の幅W1を有しており、先端部91aよりも下方に位置する部分91bに、ワイパ21との対向面(図8の左側の面)において開口した凹部91cが形成されている。そして、これにより、インク吸収体91は、先端部91aにおいてのみワイパ21の表面と接触し、部分91bは、ワイパ21の表面から離隔している。
【0080】
この場合でも、先端部91aと部分91bの両方がワイパ21の表面に接触している場合に比べて、ワイパ21とインク吸収体91との摺動面積が小さくなるため、インク吸収体91をワイパ21に対して移動させたときの、ワイパ21とインク吸収体91との摩擦を低減することができる。
【0081】
なお、変形例3では、インク吸収体91の先端部91aよりも下方に位置する部分91bの全域に凹部91cが形成されていたが、部分91bのうちの一部にのみ凹部が形成されていてもよい。
【0082】
さらには、インク吸収体は、上述の実施の形態や変形例1〜3のような、ワイパ21との摺動面積が小さくなるような構造であることにも限られず、インク吸収体は、その全域においてワイパ21とほぼ同じ一定の幅W1を有しているとともに、その全域においてワイパ21の表面と接触したものであってもよい。
【0083】
また、上述の実施の形態では、上記溶解動作において、キャリッジ2を一方向(図1の左方)にのみ移動させたが、上記溶解動作では、インク吸収体22と吐出面4aとが対向している範囲で、すなわち、インク吸収体22と吐出面4aとが接触している状態(図6(e)の状態)で、キャリッジ2を何度か往復移動させてもよい。
【0084】
この場合には、インクを吸収したインク吸収体22が吐出面4aの同じ部分に何度も接触することとなるため、吐出面4aに固着したインクを確実に溶かすことができる。
【0085】
また、上述の実施の形態では、キャリッジ2の移動速度自体を遅くすることで、溶解動作において、拭き取り動作よりも、ワイパ21と吐出面4aとの平均の移動速度を遅くさせていたが、これには限られない。
【0086】
例えば、拭き取り動作と溶解動作とで、キャリッジ2の移動速度自体は同じにし、拭き取り動作においては、動作が完了するまでキャリッジ2を移動させ続け、溶解動作においては、キャリッジ2を所定距離移動するごとに一時的に停止させることによって、ワイパ21と吐出面4aとの平均の相対移動速度を遅くさせてもよい。
【0087】
この場合でも、インク吸収体22が一時的に停止している間、インク吸収体22の先端部22aが吐出面4aの同じ部分に接触し続けるため、吐出面4aに固着したインクを確実に溶かすことができる。
【0088】
さらには、溶解動作において拭き取り動作よりもワイパ21と吐出面4aとの平均の相対移動速度を遅くすることにも限られず、拭き取り動作と溶解動作とで、ワイパ21と吐出面4aとの平均の相対移動速度が同じであってもよい。
【0089】
また、上述の実施の形態では、キャリッジ2の移動速度自体を遅くすることによって、溶解動作において、ブラックインクを溶かしているときに、カラーインクを溶かしているときよりも、ワイパ21と吐出面4aとの平均の相対移動速度を遅くさせたが、これには限られない。
【0090】
例えば、溶解動作において、キャリッジ2が所定距離移動するごとに一時的に停止するようにし、ブラックインクを溶かしているときに、カラーインクを溶かしているときよりも、上記所定距離を小さくする、あるいは、一時的に停止させる時間を長くすることによって、ワイパ21と吐出面4aとの平均の相対移動速度を遅くさせてもよい。
【0091】
また、本実施の形態では、ブラックインクが顔料インクであり、カラーインクが染料インクであったが、これには限られず、インクジェットヘッド4が顔料インクを吐出するノズル20及び染料インクを吐出するノズル20の両方を備えたものであれば、カラーインクのいずれかが顔料インクであってもよいし、ブラックインクが染料インクであってもよい。この場合には、溶解動作において、顔料インクを溶かしているときに、染料インクを溶かしているときよりもワイパ21と吐出面4aとの平均の移動速度を遅くさせればよい。
【0092】
さらには、溶解動作において、顔料インクを溶かしているときに、染料インクを溶かしているときよりも、ワイパ21と吐出面4aとの平均の相対移動速度を遅くさせることにも限られず、溶解動作におけるワイパ21と吐出面4aとの平均の相対移動速度は一定であってもよい。また、この場合には、インクジェットヘッド4は、顔料インクを吐出するノズル20と染料インクを吐出するノズル20の両方を備えたものであることにも限られず、すべてのノズル20から顔料インクを吐出するものであってもよいし、すべてのノズル20から染料インクを吐出するものであってもよい。
【0093】
また、上述の実施の形態では、拭き取り動作を実行する直前における、前回の拭き取り動作が完了してからの経過時間Tが所定時間T1よりも長い場合にのみ、上記S102、S103の拭き取り動作及びインク吸収動作の後、さらに、S106〜S108の溶解動作、拭き取り動作及び吸収動作を実行させたが、これには限られない。すなわち、上記S102、S103の拭き取り動作及びインク吸収動作の後、経過時間Tの長さに関係なく、さらにS106〜S108の溶解動作、拭き取り動作及び吸収動作を実行させてもよい。
【0094】
あるいは、上記S102、S103の拭き取り動作及び吸収動作の後、常に、上記S106〜S108の溶解動作、拭き取り動作及び吸収動作を実行させずに、インク吸収体22を露出位置に戻して動作を終了してもよい。
【0095】
この場合には、インク吸収体22の先端部22aに吸収されたインクによって吐出面4aに固着したインクを溶かすことはできないが、S102の拭き取り動作によってワイパ21の表面に付着したインクをインク吸収体22で吸収することにより、ワイパ21の表面にインクが固着するのを抑制することはできる。
【0096】
また、上述の実施の形態では、拭き取り動作(S102、S107)の直後に吸収動作(S103、S108)を実行させたが、これには限られない。拭き取り動作によりワイパ21の表面に付着したインクが固着してしまう前であれば、拭き取り動作の直後とは異なるタイミングで吸収動作を実行させてもよい。
【0097】
また、上述の実施の形態では、溶解動作及びその直後の拭き取り動作及び吸収動作(S106〜S108)を、吸引パージ直後の拭き取り動作及び吸収動作(S101〜S103)のすぐ後に実行させていたが、これには限られない。例えば、所定時間が経過する毎など、吸引パージ、並びに、その直後の拭き取り動作及び吸収動作とは無関係に、溶解動作及びその直後の拭き取り動作及び吸収動作を実行させてもよい。
【0098】
ただし、この場合には、溶解動作の直前の段階で、インク吸収体22が、それ以前の吸引パージ直後の吸収動作により吸収されたインクで湿っているようなタイミングで、溶解動作及びその直後の拭き取り動作及び吸収動作を実行させる必要がある。
【0099】
また、上述の実施の形態では、吸引パージ(S101)の直後に、拭き取り動作(S102)及び吸収動作(S103)を実行させていたが、これには限られない。例えば、インクジェットヘッド4を駆動することによって、ノズル20内の増粘したインクを排出させるいわゆるフラッシングの後や、ノズル20からインクを吐出して記録用紙Pに印刷を行った後などに、拭き取り動作及び吸収動作を実行させてもよい。
【0100】
また、上述の実施の形態では、インク吸収体22を対向位置に位置させた状態で、インク吸収体22の先端部22aが、ワイパ21の接触部21bを含む先端部21a全体と対向するようになっていたが、これには限られない。例えば、インク吸収体22を対向位置に位置させた状態で、インク吸収体22の先端部22aが、先端部21aの接触部21bよりも下方の部分21cのみと対向するようになっていてもよい。
【0101】
拭き取り動作によってワイパ21の接触部21bに付着したインクは、重力により、そのすぐ下方に連なる部分21cに多少垂れるため、この場合でも、インク吸収体22を対向位置に位置させることにより、インク吸収体22にインクを吸収させることができる。
【0102】
また、上述の実施の形態では、ワイパ21を昇降させることによって、吐出面4aと直交する方向にワイパ21と吐出面4aとを相対移動させたが、これには限られない。すなわち、インクジェットヘッド4を昇降させる、あるいは、ワイパ21とインクジェットヘッド4の両方を昇降させることによって、吐出面4aと直交する方向にワイパ21と吐出面4aとを相対移動させてもよい。
【0103】
なお、この場合には、インクジェットヘッド4を昇降させる機構、あるいは、ワイパ21を昇降させる機構とインクジェットヘッド4を昇降させる機構とをあわせたものが、本発明に係るワイパ接離機構に相当する。また、このときのワイパ21と吐出面4aとの相対移動方向は、吐出面4aと直交する方向であることには限られず、吐出面4aと交差する方向であれば、吐出面4aと直交する方向に対して傾斜した方向であってもよい。
【0104】
また、上述の実施の形態では、キャリッジ2を走査方向に移動させることによって、吐出面4aに沿う方向にワイパ21と吐出面4aとを相対移動させたが、これには限られない。すなわち、ワイパ21を走査方向に移動させる、あるいは、ワイパ21とキャリッジ2の両方を走査方向に移動させることによって、吐出面4aに沿う方向にワイパ21と吐出面4aとを相対移動させてもよい。
【0105】
なお、この場合には、ワイパ21を走査方向に移動させる機構、あるいは、ワイパ21を走査方向に移動させる機構と、キャリッジ2を走査方向に移動させる機構とをあわせたものが、本発明に係る相対移動機構に相当する。
【0106】
また、以上では、ノズルからインクを吐出するインクジェットヘッドを備えたプリンタに本発明を適用した例について説明したが、これには限られない。ノズルからインク以外の液体を吐出する液体吐出ヘッドを備えたプリンタ以外の液体吐出装置に本発明を適用することも可能である。
【符号の説明】
【0107】
1 プリンタ
4 インクジェットヘッド
4a 吐出面
20 ノズル
21 ワイパ
21a 先端部
22 インク吸収体
22a 先端部
18 キャリッジ移動機構
25 ワイパ昇降機構
26 吸収体昇降機構
54 拭き取り制御部
71、81、91 ワイパ
71a、81a、91a 先端部
91c 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐出面に形成されたノズルから液体を吐出する液体吐出ヘッドと、
前記吐出面に接触して前記吐出面に沿った方向に前記吐出面と相対移動することによって、前記吐出面に付着した液体を拭き取るワイパと、
前記ワイパの表面に設けられているとともに、前記ワイパの表面に沿って、前記ワイパの前記吐出面と接触する先端部の少なくとも一部に対向する対向位置と、前記対向位置からずれた、前記ワイパの前記先端部全体を露出させる露出位置との間で移動する液体吸収体と、
を備えていることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記吐出面と交差する方向に前記ワイパと前記吐出面とを相対移動させて、前記ワイパを、前記吐出面と接触する接触位置、及び、前記吐出面から離隔した離隔位置のいずれかに選択的に位置付けるワイパ接離機構と、
前記吐出面に沿う方向に前記ワイパと前記吐出面とを相対移動させる相対移動機構と、
前記液体吸収体を前記対向位置と前記露出位置の間で移動させる吸収体移動機構と、
前記ワイパ接離機構、前記相対移動機構及び前記吸収体移動機構を制御する制御手段と、をさらに備え、
前記制御手段は、
前記吸収体移動機構を制御して前記液体吸収体を前記露出位置に位置させた状態で、前記ワイパ接離機構を制御して前記ワイパを前記接触位置に位置付けるとともに、前記相対移動機構を制御して前記ワイパと前記吐出面を相対移動させることによって、前記吐出面に付着した液体を前記吐出面に接触させた前記ワイパで拭き取る拭き取り動作を実行させるとともに、
前記拭き取り動作の直後に、前記吸収体移動機構を制御して前記液体吸収体を前記露出位置から前記対向位置に移動させることによって、前記ワイパの表面に付着した液体を前記液体吸収体で吸収する吸収動作を実行させることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記制御手段は、
前記吸収動作の後、さらに、前記液体吸収体を前記対向位置に位置させたまま、前記ワイパ接離機構を制御して、前記ワイパを前記接触位置に位置付けることで、前記液体吸収体を前記吐出面と接触する位置に位置付けるとともに、前記相対移動機構を制御して、前記ワイパと前記吐出面を前記吐出面に沿う方向に相対移動させることによって、前記吐出面に固着した液体を、前記吐出面に接触させた前記液体吸収体に吸収された液体で溶かす溶解動作を実行させるとともに、
前記溶解動作の後、前記ワイパ接離機構、前記相対移動機構及び前記吸収体移動機構を制御して、再度前記拭き取り動作を実行させることを特徴とする請求項2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記相対移動機構を制御して、前記溶解動作における前記ワイパと前記吐出面との平均の相対移動速度を、前記拭き取り動作における前記ワイパと前記吐出面との平均の相対移動速度よりも遅くさせることを特徴とする請求項3に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記液体吐出ヘッドは、液体として顔料インクを吐出する前記ノズルと、液体として染料インクを吐出する前記ノズルとを備えており、
前記制御手段は、前記相対移動機構を制御して、前記溶解動作において、前記液体吐出面に固着した顔料インクを溶かすときの前記ワイパと前記吐出面との平均の相対移動速度を、前記液体吐出面に固着した染料インクを溶かすときの前記ワイパと前記吐出面との平均の相対移動速度よりも遅くさせることを特徴とする請求項3又は4に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記昇降機構、前記相対移動機構及び前記吸収体移動機構を制御して、前記ワイパにより前記液体吐出面に付着した液体が最後に拭き取られてからの経過時間が所定時間よりも長い場合にのみ、前記吸収動作の後、さらに前記溶解動作及び再度の前記拭き取り動作を実行させることを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記相対移動機構を制御して、前記溶解動作において、前記液体吸収体が前記吐出面に接触した状態で、前記ワイパを往復移動させることを特徴とする請求項3〜6のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項8】
前記液体吸収体は、前記ワイパの表面と直交する方向から見て、その先端部以外の部分における幅の合計が、当該先端部の幅よりも小さくなっていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項9】
前記液体吸収体の先端部以外の部分に、前記ワイパとの対向面に開口した凹部が形成されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の液体吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−206393(P2012−206393A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−74031(P2011−74031)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】