説明

液体噴射ヘッド及び液体噴射装置

【課題】位置決めピンにより位置決め孔の開口縁部にチッピングが生じることを抑制して印刷品質が向上した液体噴射ヘッド及び液体噴射装置を提供する。
【解決手段】インクを吐出するノズル開口を有するヘッド本体10と、位置決めピン23が設けられたベースプレート20と、位置決め孔51が設けられてシリコン基板からなる位置決めプレート50とを備え、位置決めピン23を位置決め孔51に挿通することでヘッド本体10をベースプレート20の所定位置に配置し、位置決め孔51の位置決めピン23が挿通される側の開口縁部を面取りする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を噴射する液体噴射ヘッド及び液体噴射装置に関し、特に液体としてインクを吐出するインクジェット式記録ヘッド及びインクジェット式記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット式プリンターやプロッター等のインクジェット式記録装置に代表される液体噴射装置は、カートリッジやタンク等に貯留されたインクなどの液体を液滴として噴射可能な液体噴射ヘッド本体が複数設けられた液体噴射ヘッド(以下、ヘッドとも言う)を具備する。
【0003】
複数の液体噴射ヘッド本体は、共通の保持部材であるベースプレートに載置されており、複数の液体噴射ヘッド本体の配置は、各液体噴射ヘッド本体のノズル開口が並設されたノズル列が並設方向に連続するように行われる。
【0004】
各液体噴射ヘッド本体は、ノズル列同士の相対的な位置が高精度に位置決めされた上でベースプレートに取り付けられている。このような位置決めは、例えば、ベースプレートに、液体噴射ヘッド本体を所定の位置に配置するための基準である位置決めピンを設け、当該位置決めピンが挿通される基準である位置決め孔を有する位置決めプレートを液体噴射ヘッド本体に設け、位置決め孔に位置決めピンを挿通することにより行われる(例えば特許文献1参照)。
【0005】
また、他の液体噴射ヘッドの一例としては、ノズル開口が設けられたノズルプレートと、ノズル開口にインクを供給する流路が設けられた流路形成基板と、流路形成基板を保護する保護基板とから構成されたものがある(例えば特許文献2参照)。当該液体噴射ヘッドでは、各部材に位置決め孔を設け、各位置決め孔に位置決めピンを挿入することで、各部材の位置合わせを行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−030297号公報
【特許文献2】特開2007−30379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1や特許文献2に記載された液体噴射ヘッドでは、位置決めプレートや流路形成基板はシリコン基板からなり、位置決め孔の開口縁部は略直角に形成されているため、位置決め孔に挿通される位置決めピンの先端が開口縁部に衝突しやすく、この衝突により開口縁部にチッピング(欠け)が生じる場合がある。チッピングにより、位置決めプレートの強度が低下する虞がある。また、位置決め孔の形状が変形し、位置決めピンと位置決め孔とにがたつきが生じ、位置決め精度が低下する虞がある。さらに、チッピングにより生じた微小な異物が、部材同士の間やインクの流路などに混入し、印刷品質を低下させる要因ともなり得る。
【0008】
なお、このような問題はインクジェット式記録ヘッドだけではなく、インク以外の液体を噴射する液体噴射ヘッドにおいても同様に存在する。また、位置決めプレートや流路形成基板がシリコン基板から形成されている場合に限らず、ガラスなどの脆性材料から形成されている場合にも同様である。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑み、位置決めピンにより位置決め孔の開口縁部にチッピングが生じることを抑制して印刷品質が向上した液体噴射ヘッド及び液体噴射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する本発明の態様は、第1の部材と、脆性材料からなる第2の部材とを備え、前記第1の部材の所定位置に配置された位置決めピンが前記第2の部材に形成された位置決め孔に挿通することにより前記第1の部材と前記第2の部材とが位置決めされた液体噴射ヘッドであって、前記位置決め孔の前記位置決めピンが挿通される側の開口縁部のみが面取りされていることを特徴とする液体噴射ヘッドにある。
かかる態様では、第2の部材の位置決め孔の開口縁部にチッピングが生じることが防止される。これにより、位置決めプレートの強度の低下を防止することができる。また、位置決めピンと位置決め孔とにがたつきが生じることによる位置決め精度の低下が防止され、高品質な液滴の吐出を行うことができる。さらに、第2の部材が欠けて微小な異物が形成されることを防止できるため、該異物が液体噴射ヘッドを構成する部材同士の間や液体の流路などに混入し、液滴の吐出特性を低下させてしまうことを防止できる。また、第2の部材の位置決めピンが挿通される側の開口縁部のみ面取りがされ、他方面側は面取りされていない。これにより、位置決め孔が、位置決めピンに内接される適切な形状、大きさで形成されているか否かを把握することが容易となる。
【0011】
ここで、液体を吐出するノズル開口を有するヘッド本体を備え、前記第1の部材は、前記位置決めピンが設けられたベースプレートであり、前記第2の部材は、前記位置決め孔が形成され、前記ノズル開口と前記位置決め孔との相対位置が所定の配置となるように前記ヘッド本体に設けられた位置決めプレートであることが好ましい。これによれば、位置決めピンに位置決め孔が繰り返し挿通可能な構成であり、ヘッド本体がベースプレートに着脱自在である液体噴射ヘッドが提供され、位置決めプレートに位置決めピンによるチッピングが生じにくいため、高品質な液滴の吐出を行える。
【0012】
また、前記位置決めプレートの前記位置決めピンが挿通される側とは反対面は、鏡面加工されていることが好ましい。これによれば、位置決めプレートの位置決め孔と、位置決め孔以外の領域とのコントラストが際立ち、位置決め孔の大きさ、形状をより一層容易に、正確に把握することができる。
【0013】
また、前記位置決め孔は、前記第2の部材にエッチングを行うことにより貫通孔を形成し、該貫通孔の一方の開口縁部周辺にハーフエッチングを行うことにより当該開口縁部を面取りすることが好ましい。これによれば、開口縁部に好適に面取りすることができる。
【0014】
また、前記第1の部材は、液体を吐出するノズル開口が設けられたノズルプレートであり、前記第2の部材は、前記ノズルプレートが接合され、前記ノズル開口に連通する圧力発生室を有し該圧力発生室に圧力変化を生じさせる圧力発生手段を備える流路形成基板であり、前記位置決め孔は、前記流路形成基板に形成されていることが好ましい。これによれば、ノズルプレートが接合された流路形成基板を備える液体噴射ヘッドにおいて、位置決めピンにより流路形成基板の位置決め孔の開口縁部にチッピングが生じることを防止することができる。
【0015】
また、本発明の他の態様は、上記液体噴射ヘッドを具備することを特徴とする液体噴射装置にある。かかる態様では、液体の吐出特性の低下を防止した液体噴射装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施形態1に係るヘッドの概略斜視図である。
【図2】実施形態1に係るヘッド本体の概略斜視図である。
【図3】実施形態1に係るヘッドの平面図である。
【図4】図3のA−A線断面図である。
【図5】位置決めプレートの平面図、背面図及び断面図である。
【図6】実施形態1に係る液体噴射装置の概略構成図である。
【図7】実施形態2に係るヘッドの分解斜視図である。
【図8】実施形態2に係るヘッドの圧力発生室を通る断面図である。
【図9】実施形態2に係るヘッドの位置決め孔を通る断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
〈実施形態1〉
図1は、本発明の実施形態1に係る液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドの概略斜視図であり、図2は、当該インクジェット式記録ヘッドに設けられるヘッド本体の概略斜視図であり、図3は、本発明の実施形態1に係るインクジェット式記録ヘッドの平面図であり、図4は、図3のA−A線断面図である。
【0018】
図示するように、本実施形態のインクジェット式記録ヘッド1(以下、ヘッドとも言う)は、複数のインクジェット式記録ヘッド本体10(以下、ヘッド本体とも言う)と、ヘッド本体10が載置されたベースプレート20(第1の部材)と、ヘッド本体10をベースプレート20の所定位置に配置するための位置決めプレート50(第2の部材)とを具備する。
【0019】
ベースプレート20は、その厚さ方向に貫通する貫通孔21が一つのヘッド本体10につき一つ設けられ、これらの貫通孔21に、ヘッド本体10が挿通された状態で各ヘッド本体10がサブプレート30を介して固定されている。
【0020】
貫通孔21は、ヘッド本体10の外周よりも若干大きく、且つサブプレート30よりも小さな開口で設けられている。このため、貫通孔21にヘッド本体10を挿入すると、ヘッド本体10のサブプレート30がベースプレート20に保持されるようになっている。また、ヘッド本体10と貫通孔21との間には空隙が生ずるので、ヘッド本体10がベースプレート20に対して第1の方向及び第2の方向に若干移動可能になっている。
【0021】
ベースプレート20には、支持部材40により支持された位置決めピン23がベースプレート20の所定の位置に設けられている。位置決めピン23がベースプレート20の所定の位置に設けられているとは、位置決めプレート50の位置決め孔51に位置決めピン23が挿通したとき、複数のヘッド本体10の相対位置が所定の配置となるように位置決めピン23がベースプレート20に形成されていることをいう。
【0022】
本実施形態では、各ヘッド本体10の所定位置として、次のように配設した。すなわち、図1及び図3に示すように、ヘッド本体10のノズル列14(図2参照)におけるノズル開口11の並設方向である第1の方向に複数のヘッド本体10を配置することで、ヘッド群100(図には、一つのヘッド群100を構成するヘッド本体10が3つ示されている。)を構成し、このヘッド群100を第2の方向に2つ並設するようにした。
【0023】
詳言すると、一つのヘッド群100を構成する複数のヘッド本体10は、ノズル列14が第1の方向に連続するように第1の方向に沿って千鳥状に配置されている。そして、当該ヘッド群100が、第2の方向に2つ並設されている。
【0024】
ここで、各ヘッド群100のノズル列14が、第1の方向に連続するとは、各ヘッド群100の第2の方向で互いに隣接するヘッド本体10において、一方のヘッド本体10のノズル列14の端部のノズル開口11と、他方のヘッド本体10のノズル列14の端部のノズル開口11とが、第1の方向で同一位置となるように配置されていることを言う。
【0025】
このように、各ヘッド群100において、複数のヘッド本体10のノズル列14が第1の方向で連続するように配置されることで、1つのヘッド本体10のノズル列14で印刷を行う場合に比べて、広範囲な印刷を高速で行わせることができる。
【0026】
図2及び図4に示すように、ヘッド本体10は、一端面にノズル開口11を有するヘッド部材12と、ヘッド部材12のノズル開口11とは反対側の面に固定された流路部材13とから構成されている。また、本実施形態では、ヘッド本体10には、ベースプレート20に取り付けるためのサブプレート30が設けられ、サブプレート30に、第2の部材の一例である位置決めプレート50が設けられている。
【0027】
ヘッド部材12は、ノズル開口11が並設されたノズル列14を具備している。ノズル列14の数は、特に限定されず、例えば、1列であってもよく、2列以上の複数列であってもよい。本実施形態では、1つのヘッド部材12にノズル列14を2列設けるようにした。ここで、本実施形態では、ノズル列14においてノズル開口11が並設された方向を第1の方向とし、第1の方向に交差する方向を第2の方向としている。したがって、2列のノズル列14は、第2の方向に並設されている。
【0028】
なお、ヘッド部材12の内部には、図示していないが、ノズル開口11に連通する流路の一部を構成する圧力発生室と、圧力発生室に圧力変化を生じさせてノズル開口からインクを吐出させる圧力発生手段とが設けられている。
【0029】
圧力発生手段は、特に限定されないが、例えば、電気機械変換機能を呈する圧電材料を2つの電極で挟んだ圧電素子を用いたものや、圧力発生室内に発熱素子を配置して、発熱素子の発熱で発生するバブルによってノズル開口11から液滴を吐出するものや、振動板と電極との間に静電気を発生させて、静電気力によって振動板を変形させてノズル開口11から液滴を吐出させるものなどを用いることができる。また、圧電素子としては、圧力発生室側から下電極、圧電材料及び上電極を積層して撓み変形させる撓み振動型の圧電素子や、圧電材料と電極形成材料とを交互に積層させて軸方向に伸縮させる縦振動型の圧電素子などを用いることができる。
【0030】
流路部材13は、ヘッド部材12のノズル開口11とは反対側の面に固定されて、外部からのインクをヘッド部材12に供給又はヘッド部材12から外部にインクを排出するものである。流路部材13のヘッド部材12に固定された面とは反対側の面には、内部の流路が開口して外部の流路が接続される液体流路口15と、外部からの印刷信号等の電気信号が供給されるコネクター16とが設けられている。
【0031】
ヘッド本体10は、第1の方向の両側面に、外側に突出するフランジ部17が設けられており、このフランジ部17がヘッド固定ネジ18によりサブプレート30に固定されている。
【0032】
サブプレート30は、ヘッド本体10をベースプレート20に取り付けるための部材であり、具体的には、ヘッド挿通孔31が設けられた基台部32と、この基台部32の一方面に設けられた脚部33とから構成されている。
【0033】
サブプレート30の基台部32には、ヘッド挿通孔31にヘッド本体10が挿通された状態で、フランジ部17が固定されている。また、サブプレート30の脚部33には、その厚さ方向に貫通する固定ネジ挿通孔34が形成されている。固定ネジ35を固定ネジ挿通孔34に挿通した状態で、ベースプレート20に設けられた固定ネジ穴22に螺合させることで、サブプレート30がベースプレート20に固定されている。なお、固定ネジ挿通孔34は、固定ネジ35の径よりも若干広い径を有しており、サブプレート30は、第1の方向および第2の方向に若干移動可能となっている。これは、位置決めプレート50に設けられた位置決め孔51に位置決めピン23を挿通させる際に、サブプレート30のベースプレート20に対する位置を微調整するためである。
【0034】
サブプレート30には、基台部32のノズル開口11側の面に、貫通孔21を挟んだ両側にそれぞれ一枚ずつ位置決めプレート50が計2枚取り付けられている。位置決めプレート50はシリコン基板からなり、位置決め調整穴52と、位置決め孔51とが形成されている。
【0035】
位置決め孔51は、ベースプレート20に設けられた位置決めピン23に挿通される貫通孔であり、位置決め調整穴52は、位置決めプレート50をサブプレート30に取り付ける際の位置決めに用いられる穴である。これらの位置決め調整穴52及び位置決め孔51は、これらの相対位置が所定の配置となるようにフォトリソグラフィー法により形成されている。
【0036】
位置決めプレート50は、位置決め調整穴52とノズル開口11とが所定の位置に位置決めされた状態でサブプレート30に取り付けられている。ここで、位置決め調整穴52とノズル開口11とが所定の位置に位置決めされているとは、ヘッド本体10をノズル開口11側から観た平面視において、ノズル開口11から第1の方向及び第2の方向に所定距離だけ離れて位置決め調整穴52が位置していることをいう。
【0037】
このように位置決め調整穴52とノズル開口11とが所定の配置とされ、かつ、位置決め調整穴52と位置決め孔51とが所定の配置となるように形成されているので、位置決め孔51とノズル開口11とについても、相対的な位置が高精度に規定されている。すなわち、位置決めピン23に、ヘッド本体10の位置決めプレート50の位置決め孔51を挿通させることで、各ヘッド本体10のノズル開口11は、各ヘッド本体10同士の相対的な間隔を保って配列される。
【0038】
ここで、位置決めプレート50について詳細に説明する。図5(a)は、位置決めプレートの位置決めピンが挿通される側の平面図であり、図5(b)は、位置決めプレートの背面図であり、図5(c)は、図5(a)のA−A線断面図である。なお、図5(a)に表した面を表面、図5(b)に表した面を裏面とも称する。
【0039】
図5(a)及び(c)に示すように、シリコン基板からなる位置決めプレート50には、位置決めピン23が挿通する位置決め孔51が形成されている。位置決め孔51は、その開口形状が菱形になっており、位置決めピン23の横断面は、位置決め孔51の開口形状に内接する円形となっている。位置決めピン23に位置決め孔51が挿通された位置決めプレート50は、平面方向(第1の方向及び第2の方向)の移動を位置決めピン23に規制されるので、ヘッド本体10は、ベースプレート20に対する位置が位置決めプレート50を介して定まる。
【0040】
また、位置決め孔51の表面・裏面にそれぞれ開口した開口縁部53a、53bのうち、位置決めピン23が挿通される表面側の開口縁部53aは、面取りされている。
【0041】
このように、位置決めピン23が挿通される開口縁部53aが面取りされていることで、位置決めピン23の先端部は、面取りされた開口縁部53aにより位置決め孔51内に案内される。これにより、位置決めピン23を位置決め孔51内に導くことが容易となると共に、位置決めピン23が開口縁部53aに衝突することによる衝撃が緩和され、開口縁部53aにチッピングや欠けが生じることを防止することができる。
【0042】
このような開口縁部53aは、次のようにして形成することができる。まず、位置決め孔51と位置決め調整穴52とが所定の位置に形成されるようにフォトレジストパターンを位置決めプレート50上に形成し、その後エッチングを行うことにより貫通孔を形成する。さらに、位置決めプレート50の表面に対して、当該貫通孔の周辺領域にハーフエッチングを行うことで段差部54を形成する。この段差部54の形成の際に、当該貫通孔の開口が面取りされ、面取りされた開口縁部53aが形成される。
【0043】
なお、本実施形態では、位置決めプレート50はシリコン基板からなるが、位置決めピン23の衝突によりチッピングが懸念される脆性材料であれば特に限定されない。このような脆性材料としては、ガラス等を挙げることができる。また、開口縁部53aの面取り方法は、フォトリソグラフィー法に限定されず、機械加工により形成されてもよい。
【0044】
また、図5(b)及び(c)に示すように、位置決め孔51の開口縁部53bは面取りされていない。すなわち、位置決めプレート50の裏面に現れる開口は、位置決めピン23が内接する形状そのものである。
【0045】
このような面取りされていない開口縁部53bを設けることにより、位置決め孔51が、位置決めピン23に内接される適切な形状、大きさで形成されているか否かを把握することが容易となる。表面においては、段差部54及び開口縁部53aを視認することになるので、位置決め孔51の位置決めピン23が内接する部分の大きさ、形状を正確に把握し難いのに対し、裏面においては、位置決め孔51(開口縁部53b)のみを視認できるからである。
【0046】
さらに、位置決めプレート50の裏面は、鏡面加工されている。裏面が鏡面加工されていることにより、位置決めプレート50の位置決め孔51と、位置決め孔51以外の領域とのコントラストが際立ち、位置決め孔51の大きさ、形状をより一層容易に、正確に把握することができる。
【0047】
以上に説明したように、位置決めプレート50の開口縁部53aにチッピングが生じることが防止される。これにより、位置決めプレート50の強度の低下を防止することができる。また、チッピングにより位置決めピン23と位置決め孔51とにがたつきが生じることによる位置決め精度の低下が防止され、高品質な印刷を行うことができる。さらに、位置決めプレート50が欠けて微小な異物が形成されることが防止できるため、該異物がヘッド本体10を構成する部材同士の間やインクの流路などに混入し、印刷品質を低下させてしまうことを防止できる。
【0048】
本実施形態に係るインクジェット式記録ヘッド1では、ヘッド本体10及びサブプレート30はベースプレート20に着脱自在であり、位置決めピン23に位置決め孔51が繰り返し挿通可能な構成である。このような構成であっても、上述したように、位置決めプレート50にチッピングが生じにくいため、高品質な印刷を行える。
【0049】
また、このような本実施形態に係るインクジェット式記録ヘッド1は、ノズル列方向に対して直交する方向に記録用紙等の記録媒体を搬送することで記録媒体への印刷を行う、いわゆるライン式のインクジェット式記録装置等に適用することができる。
【0050】
例えば、図6に示すインクジェット式記録装置Iは、上述したヘッド1と、装置本体2と、移動手段の一例である給紙ローラー3と、制御部4とを備えている。
【0051】
ヘッド1は、複数のヘッド本体10からなるヘッド群100(図6には、各ヘッド群100を4つのヘッド本体10が構成するようにした)と、該ヘッド群100が保持されたベースプレート20とを備えている。ヘッド1は、フレーム部材19を介して装置本体2に固定されている。
【0052】
また、装置本体2には給紙ローラー3が設けられている。給紙ローラー3は、装置本体2に給紙された紙等の記録シートS(被噴射媒体)を第2の方向に搬送し、記録シートSをヘッド1のインクの吐出面側を通過させる。ここで、第2の方向とは、記録シートSとヘッド1との相対的な移動方向をいう。本実施形態では、ヘッド1は装置本体2に固定されているので、給紙ローラー3により記録シートSが搬送される方向が第2の方向となる。以後、第2の方向を搬送方向という。
【0053】
また、装置本体2には、インクが貯留されたインク貯留手段5が設けられており、該インクは供給管6を介して各ヘッド本体10に供給される。
【0054】
制御部4は、詳細は後述するが、記録シートSに印字される画像を表した印刷データに基づいて、給紙ローラー3に信号を送信して記録シートSの搬送をさせると共に、図示しない配線を介して各ヘッド本体10に駆動信号を送信してインクを吐出させる。
【0055】
このようなインクジェット式記録装置Iでは、給紙ローラー3により搬送方向に記録シートSが搬送されると共に、ヘッド1のヘッド本体10によってインクが吐出されて記録シートSに画像等が印刷される。
【0056】
また、本実施形態に係るヘッド1は、図6に示すライン式のインクジェット式記録装置だけでなく、他のタイプのインクジェット式記録装置にも適用することができる。例えば、ヘッドを搭載したキャリッジを記録媒体の搬送方向とは直交する方向に移動させながら印刷を行うタイプのインクジェット式記録装置にも適用することができる。
【0057】
〈実施形態2〉
実施形態1では、第1の部材がベースプレート20であり、第2の部材が位置決めプレート50であったが、本発明はこのような態様に限定されない。例えば、複数の部材からなる液体噴射ヘッドについても本発明を適用することができる。
【0058】
図7は、ヘッドの分解斜視図であり、図8は、ヘッドの圧力発生室を通る断面図であり、図9は、ヘッドの位置決め孔を通る断面図である。
【0059】
図7〜図9に基づいて、実施形態2に係るヘッド1Aについて説明する。なお、本実施形態のヘッド1Aは、実施形態1のヘッド部材12に相当するものである。
【0060】
図示するように、ヘッド1Aを構成する流路形成基板160(第2の部材)は、本実施形態では、シリコン単結晶基板からなり、その一方面には二酸化シリコンからなる弾性膜150が形成されている。この流路形成基板160には、その他方面側から異方性エッチングすることにより、複数の隔壁によって区画された圧力発生室162が、幅方向に並設された列が2列形成されている。また、各列の圧力発生室162の長手方向外側には、後述するリザーバー形成基板180に設けられるリザーバー部181と連通し、各圧力発生室162の共通のインク室となるリザーバー200を構成する連通部163が形成されている。また、連通部163は、供給路164を介して各圧力発生室162の長手方向一端部とそれぞれ連通されている。すなわち、本実施形態では、流路形成基板160に形成された液体流路として、圧力発生室162、連通部163及び供給路164が設けられている。
【0061】
また、流路形成基板160の開口面側には、ノズル開口171が形成されたノズルプレート170(第1の部材)が接着剤400を介して固着されている。ノズルプレート170のノズル開口171は、各圧力発生室162の供給路164とは反対側で連通する位置に穿設されている。本実施形態では、ノズルプレート170は、ステンレス鋼(SUS)等の金属基板から形成されている。
【0062】
一方、流路形成基板160の開口面とは反対側には、弾性膜150上に、圧電素子300が形成されている。圧電素子300が形成された流路形成基板160上には、リザーバー200の少なくとも一部を構成するリザーバー部181を有するリザーバー形成基板180が接合されている。このリザーバー部181は、本実施形態では、リザーバー形成基板180を厚さ方向に貫通して圧力発生室162の幅方向に亘って形成されており、上述のように流路形成基板160の連通部163と連通されて各圧力発生室162の共通のインク室となるリザーバー200を構成している。
【0063】
また、リザーバー形成基板180の圧電素子300に対向する領域には、圧電素子300の運動を阻害しない程度の空間を有する圧電素子保持部182が設けられている。
【0064】
さらに、リザーバー形成基板180上には、各圧電素子300を駆動するための半導体集積回路(IC)等からなる駆動回路110が設けられている。この駆動回路110の各端子は、図示しないボンディングワイヤー等を介して各圧電素子300の個別電極から引き出された引き出し配線と接続されている。そして、駆動回路110の各端子には、フレキシブルプリント基板(FPC)等の外部配線111を介して外部と接続され、外部から外部配線111を介して印刷信号等の各種信号を受け取るようになっている。
【0065】
また、このようなリザーバー形成基板180上には、コンプライアンス基板140が接合されている。コンプライアンス基板140のリザーバー200に対向する領域には、リザーバー200にインクを供給するためのインク導入口144が厚さ方向に貫通することで形成されている。また、コンプライアンス基板140のリザーバー200に対向する領域のインク導入口144以外の領域は、厚さ方向に薄く形成された可撓部143となっており、リザーバー200は、可撓部143により封止されている。この可撓部143により、リザーバー200内にコンプライアンスを与えている。
また、コンプライアンス基板140上には、ヘッドケース230が固定されている。
【0066】
ヘッドケース230は、インク導入口144に連通すると共に外部のインク供給部材(図示せず)に連通して、該インク供給部材からのインクをインク導入口144に供給するインク供給連通路231が設けられている。このヘッドケース230には、コンプライアンス基板140の可撓部143に対向する領域に溝部232が形成され、可撓部143の撓み変形が適宜行われるようになっている。また、ヘッドケース230には、リザーバー形成基板180上に設けられた駆動回路110に対向する領域に厚さ方向に貫通した駆動回路保持部233が設けられており、外部配線111は、駆動回路保持部233を挿通して駆動回路110と接続されている。
【0067】
ヘッド1Aを構成する各部材には、組立時に各部材を位置決めするための位置決めピン250が挿入される位置決め孔234A〜234Dが角部の2箇所に設けられている。位置決め孔234A〜234Dに位置決めピン250を挿入して各部材の相対的な位置決めを行いながら部材同士を接合することで、ヘッド1Aが一体的に組み合わせられる。
【0068】
このような本実施形態のインクジェット式記録ヘッド1Aは、インク供給部材からのインクを、インク供給連通路231及びインク導入口144を介して、リザーバー200からノズル開口171に至るまで内部を満たした後、駆動回路110からの記録信号に従い、各圧力発生室162に対応するそれぞれの圧電素子300に電圧を印加し、弾性膜150及び圧電素子300をたわみ変形させることにより、各圧力発生室162内の圧力が高まりノズル開口171からインク滴が吐出する。
【0069】
ここで、第2の部材の一例である流路形成基板160は、シリコン基板から形成され、位置決め孔234Bの位置決めピン250が挿通される側の開口縁部235Bは、面取りされている。
【0070】
このように、位置決めピン250が挿通される開口縁部235Bが面取りされていることで、第1の部材の一例であるノズルプレート170の位置決め孔234Aを挿通した位置決めピン250の先端部は、面取りされた開口縁部235Bにより位置決め孔234B内に案内される。これにより、位置決めピン250を位置決め孔234B内に導くことが容易となると共に、位置決めピン250が開口縁部235Bに衝突することによる衝撃が緩和され、開口縁部235Bにチッピングや欠けが生じることを防止することができる。
【0071】
ここで、請求項における「第1の部材(ノズルプレート170)の所定位置に配置された位置決めピン250」とは、本実施形態では、ヘッド1Aを構成する各部材を位置決めする際に、ノズルプレート170の位置決め孔234Aに挿通した状態の位置決めピン250をいう。なお、本実施形態では、位置決めピン250は、各部材が位置決めされて固定された後は、位置決め孔234A〜234Dから取り外されるので、本実施形態に係るヘッド1Aは、位置決めピン250が挿通したことにより、位置決めされて連通した位置決め孔234A〜234Dを備えるものとなる。
【0072】
また、本実施形態では、リザーバー形成基板180は、シリコン基板から形成され、位置決め孔234Cの位置決めピン250が挿通される側の開口縁部235Cも、面取りされている。開口縁部235Cが面取りされていることで、上述した流路形成基板160の場合と同様に、開口縁部235Cにチッピングや欠けが生じることを防止することができる。
【0073】
なお、特に図示しないが、ノズルプレート170がシリコン基板から形成され、位置決め孔234Aの位置決めピン250が挿通される側の開口縁部を面取りしてもよい。
【0074】
〈他の実施形態〉
以上、本発明の各実施形態を説明したが、本発明の基本的構成は上述したものに限定されるものではない。
【0075】
実施形態1に係る開口縁部53a、実施形態2に係る開口縁部235B、235Cは面取りされていたが、面取りの種別は特に限定されず、いわゆるC面取りであってもよいし、開口縁部がR形状となるように面取りされていてもよい。
【0076】
さらに、本発明は、広く液体噴射ヘッド全般を対象としたものであり、例えば、プリンター等の画像記録装置に用いられる各種のインクジェット式記録ヘッド等の記録ヘッド、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレイ、FED(電界放出ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0077】
I インクジェット式記録装置(液体噴射装置)、 1、1A インクジェット式記録ヘッド(液体噴射ヘッド)、 10 ヘッド本体、 11 ノズル開口、 12 ヘッド部材、 13 流路部材、 14 ノズル列、 20 ベースプレート(第1の部材)、 23 位置決めピン、 30 サブプレート、 50 位置決めプレート(第2の部材)、 51 位置決め孔、 53a、53b 開口縁部、 160 流路形成基板(第2の部材)、 170 ノズルプレート(第1の部材)、 180 リザーバー形成基板、 234A〜234D 位置決め孔、 235B、235C 開口縁部、 250 位置決めピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の部材と、脆性材料からなる第2の部材とを備え、
前記第1の部材の所定位置に配置された位置決めピンが前記第2の部材に形成された位置決め孔に挿通することにより前記第1の部材と前記第2の部材とが位置決めされた液体噴射ヘッドであって、
前記位置決め孔の前記位置決めピンが挿通される側の開口縁部のみが面取りされている
ことを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項2】
請求項1に記載する液体噴射ヘッドにおいて、
液体を吐出するノズル開口を有するヘッド本体を備え、
前記第1の部材は、前記位置決めピンが設けられたベースプレートであり、
前記第2の部材は、前記位置決め孔が形成され、前記ノズル開口と前記位置決め孔との相対位置が所定の配置となるように前記ヘッド本体に設けられた位置決めプレートである
ことを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載する液体噴射ヘッドにおいて、
前記位置決めプレートの前記位置決めピンが挿通される側とは反対面は、鏡面加工されている
ことを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れか一項に記載する液体噴射ヘッドにおいて、
前記位置決め孔は、前記第2の部材にエッチングを行うことにより貫通孔を形成し、該貫通孔の一方の開口縁部周辺にハーフエッチングを行うことにより当該開口縁部を面取りする
ことを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項5】
請求項1に記載する液体噴射ヘッドにおいて、
前記第1の部材は、液体を吐出するノズル開口が設けられたノズルプレートであり、
前記第2の部材は、前記ノズルプレートが接合され、前記ノズル開口に連通する圧力発生室を有し該圧力発生室に圧力変化を生じさせる圧力発生手段を備える流路形成基板であり、
前記位置決め孔は、前記流路形成基板に形成されている
ことを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載する液体噴射ヘッドを具備することを特徴とする液体噴射装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−189584(P2011−189584A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−56800(P2010−56800)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】