液体噴射装置及び液体噴射装置のタイマクリーニング方法
【課題】タイマクリーニングの結果をフィードバックすることによって、温度、湿度を計測することなく最適なタイマクリーニングを実施することができる液体噴射装置等を提供すること。
【解決手段】タイマクリーニング手段76による各排出モードごとのタイマクリーニングの回数、タイマクリーニング手段によるタイマクリーニングが成功した回数、及び、タイマクリーニング手段によるタイマクリーニングが失敗した回数のうち、少なくとも2つを記録するタイマクリーニング結果記録手段72と、タイマクリーニング結果記録手段72が記録した、タイマクリーニングの回数、タイマクリーニングが成功した回数、及び、タイマクリーニングが失敗した回数のうち、少なくとも2つに基づいて、タイマクリーニング成功率又はタイマクリーニング失敗率を算出するタイマクリーニング評価手段等を有する。
【解決手段】タイマクリーニング手段76による各排出モードごとのタイマクリーニングの回数、タイマクリーニング手段によるタイマクリーニングが成功した回数、及び、タイマクリーニング手段によるタイマクリーニングが失敗した回数のうち、少なくとも2つを記録するタイマクリーニング結果記録手段72と、タイマクリーニング結果記録手段72が記録した、タイマクリーニングの回数、タイマクリーニングが成功した回数、及び、タイマクリーニングが失敗した回数のうち、少なくとも2つに基づいて、タイマクリーニング成功率又はタイマクリーニング失敗率を算出するタイマクリーニング評価手段等を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を噴射する液体噴射装置および液体噴射装置のタイマクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ターゲットに対して液体を噴射させる液体噴射装置として、記録ヘッドから記録媒体に対してインク滴を噴射させて印刷を行うインクジェット式記録装置がある。このインクジェット式記録装置は、記録ヘッドのノズルから記録媒体に対して微小なインク滴を吐出させて、所望の文字や図形等の画像を記録する。
ところが、例えば、湿度が低い環境において上述のノズルから長時間インクが吐出されていない場合には、記録ヘッドの中のインクの粘度が増加し、そのままの状態であれば、上述のノズルからインク滴が吐出されず、画像が記録されない部分(以後、ドット抜けと呼ぶ)が発生する等の吐出不良を生じる場合がある。
そこで、インクジェット式記録装置には、上述のノズルから直近にインクを吐出した時からの時間経過及び温度・湿度に基づいて、自動的に吐出不良を解消するためにノズルからインクを吐出する等によって増粘インクを除去する処理(以後、タイマクリーニングと呼ぶ)を実施する機構を備えているものがある(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開平10−146993号公報(図2等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、上述の従来技術においては、温度センサ、湿度センサを備える必要があり、製造コストが高くなる。また、主電源が切断されているときの温度・湿度を計測するための副電源を備える場合には、副電源のコストや、電力消費量が多くなる。
しかも、タイマクリーニングが不成功になる可能性が高い条件でタイマクリーニングを実施して、インクを無駄に消費する場合があるという問題がある。
さらに、温度センサ、湿度センサを備えていても、経過した時間内での温度、湿度の変化の組み合わせは無限にあるため、最適なタイマクリーニングを選択することは極めて困難である。そこで、温度センサ、湿度センサを持たずに、経過時間に応じてタイマクリーニングを選択することが考えられる。ここで、温度、湿度条件がわからないので、使用環境から考えられるワースト条件、例えば、高温低湿である摂氏40度(℃)湿度10パーセント(%)において、増粘インクを除去するようにタイマクリーニングのパラメータは設定されるのが一般的である。この場合、実際の使用環境が摂氏10度(℃)湿度80パーセント(%)のような低温多湿状態では、インクはほとんど増粘しないため、無駄にタイマクリーニングが行われることになる。
【0004】
そこで本発明は上記課題を解消し、タイマクリーニングの結果をフィードバックすることによって、温度、湿度を計測することなく最適なタイマクリーニングを実施することができる液体噴射装置及び液体噴射装置のタイマクリーニング方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の目的は、本発明にあっては、液体を噴射する液体噴射ヘッドと、前記液体噴射ヘッドのノズル開口から前記液体を排出する排出量が異なる複数の排出モードと、各前記排出モードの少なくとも適用開始時間で規定される適用時間範囲を含むタイマクリーニング条件を格納するタイマクリーニング条件格納手段と、基準時からの経過時間を計測する計時手段と、前記経過時間に基づいて、前記複数の排出モードから1つの前記排出モードを選択して前記液体の排出を実行することによって、前記液体噴射ヘッドのタイマクリーニングを行うタイマクリーニング手段と、前記液体噴射ヘッドから前記液体が正常に噴射されない状態である噴射不良を検出する噴射不良検出手段と、前記タイマクリーニング手段による各前記排出モードごとの前記タイマクリーニングの回数、前記タイマクリーニング手段による前記タイマクリーニングが成功した回数、及び、前記タイマクリーニング手段による前記タイマクリーニングが失敗した回数のうち、少なくとも2つを記録するタイマクリーニング結果記録手段と、前記タイマクリーニング結果記録手段が記録した、前記タイマクリーニングの回数、前記タイマクリーニングが成功した回数、及び、前記タイマクリーニングが失敗した回数のうち、少なくとも2つに基づいて、タイマクリーニング成功率又はタイマクリーニング失敗率を算出するタイマクリーニング評価手段と、前記タイマクリーニング成功率又は前記タイマクリーニング失敗率に基づいて、前記タイマクリーニング条件を変更するタイマクリーニング条件変更手段と、を有することを特徴とする液体噴射装置により、達成される。
【0006】
このような構成によって、前記液体噴射装置は、前記タイマクリーニング成功率を算出することができるから、前記タイマクリーニング成功率が低い場合には、前記タイマクリーニング条件を変更し、例えば、各前記排出モードの排出量を多くするなどの制御をすることができる。
これにより、タイマクリーニングの結果をフィードバックすることによって、温度、湿度を計測することなく最適なタイマクリーニングを実施することができる。
【0007】
本発明では、前記タイマクリーニング条件変更手段は、前記タイマクリーニング条件の変更として、各前記排出モードの前記タイマクリーニング成功率が成功率許容範囲外である場合又は各前記排出モードの前記タイマクリーニング失敗率が失敗率許容範囲外である場合には、前記成功率許容範囲外又は前記失敗率許容範囲外である前記タイマクリーニング成功率又は前記タイマクリーニング失敗率に対応する各前記排出モードの前記排出量を多くする構成となっていることが望ましい。
【0008】
このように構成することで、前記タイマクリーニング成功率が前記成功率許容範囲外である場合又は各前記排出モードの前記タイマクリーニング失敗率が失敗率許容範囲外である場合には、前記排出量を多くするから、前記タイマクリーニング成功率を高くすること又は前記タイマクリーニング失敗率を低くすることができ、その結果として、成功しない前記タイマクリーニングを未然に防止し、前記液体を無駄に消費することを回避することができる。
さらに、上述のように前記タイマクリーニング成功率によって、前記クリーニング条件を変更するから、基本となる前記排出モードは少なくてもよく、例えば3つで足りる。このため、前記液体噴射装置が、前記クリーニング条件を記憶するための記憶容量は少なくて足りる。
【0009】
本発明では、前記タイマクリーニング条件変更手段は、前記タイマクリーニング条件の変更として、各前記排出モードの前記タイマクリーニング成功率が成功率許容範囲内である場合又は各前記排出モードの前記タイマクリーニング失敗率が失敗率許容範囲内である場合には、前記成功率許容範囲内又は前記失敗率許容範囲内である各前記排出モードの前記排出量を少なくする構成となっていることが望ましい。
【0010】
このように構成することで、前記タイマクリーニング成功率が前記成功率許容範囲内である場合又は各前記排出モードの前記タイマクリーニング失敗率が失敗率許容範囲内である場合には、前記排出量を少なくするから、前記液体を節約しつつ、前記タイマクリーニングを成功させることができる。
【0011】
本発明では、前記タイマクリーニング条件は、前記液体の排出量が少ない前記排出モードである先行排出モードの前記適用時間範囲と、前記適用時間範囲が前記基準時からの経過時間が前記先行排出モードの後であって前記液体の排出量が前記先行排出モードよりも多い前記排出モードである後続排出モードの前記適用時間範囲とが連続するように設定されており、前記タイマクリーニング条件変更手段は、前記タイマクリーニング条件の変更として、前記先行排出モードの前記タイマクリーニング成功率が成功率許容範囲外である場合又は前記先行排出モードの前記タイマクリーニング失敗率が失敗率許容範囲外である場合には、前記先行排出モードと前記後続排出モードの前記適用時間範囲の境界時間を、前記基準時からの経過時間が短くなるように変更する構成となっていることが望ましい。
【0012】
このように構成することで、前記先行排出モードにおける前記タイマクリーニングの成功率が前記成功率許容範囲外である場合又は前記先行排出モードの前記タイマクリーニング失敗率が失敗率許容範囲外である場合には、前記境界時間を前記基準時からの経過時間が短くなるように変更する。これは、前記先行排出モードよりも前記液体の排出量が多い前記後続排出モードの前記適用開始時間を前記基準時を基準として早めることを意味する。
このため、前記タイマクリーニング成功率を高くすることができ、その結果として、成功しない前記タイマクリーニングを未然に防止し、前記液体を無駄に消費することを回避することができる。
【0013】
本発明では、前記タイマクリーニング条件は、前記液体の排出量が少ない前記排出モードである先行排出モードの前記適用時間範囲と、前記適用時間範囲が前記基準時からの経過時間が前記先行排出モードの後であって前記液体の排出量が前記先行排出モードよりも多い前記排出モードである後続排出モードの前記適用時間範囲とが連続するように設定されており、
前記タイマクリーニング条件変更手段は、前記タイマクリーニング条件の変更として、前記先行排出モードの前記タイマクリーニング成功率が成功率許容範囲内である場合又は前記先行排出モードの前記タイマクリーニング失敗率が失敗率許容範囲内である場合には、前記境界時間を、前記基準時からの経過時間が長くなるように変更する構成となっていることが望ましい。
【0014】
このように構成することで、前記先行排出モードの前記タイマクリーニングの成功率が前記成功率許容範囲内である場合又は前記先行排出モードの前記タイマクリーニング失敗率が前記失敗率許容範囲内である場合には、前記境界時間を、前記基準時からの経過時間が長くなるように変更する。これは、前記先行排出モードの前記適用時間範囲が長くなり、前記先行排出モードよりも前記液体の排出量が多い前記後続排出モードの前記適用開始時間が前記基準時を基準として遅くなることを意味する。
このため、前記液体を節約しつつ、前記タイマクリーニングを成功させることができる。
【0015】
本発明では、前記タイマクリーニング条件の変更前の前記タイマクリーニング成功率と、前記タイマクリーニング条件の変更後の各前記排出モードごとの前記タイマクリーニング成功率を比較するタイマクリーニング成功率比較手段を有し、前記タイマクリーニング条件変更手段は、前記比較結果に基づいて、前記タイマクリーニングの変更後の前記タイマクリーニング条件を維持する、又は、前記タイマクリーニング変更前の前記タイマクリーニング条件を変更する構成となっていることが望ましい。
【0016】
このように構成することで、前記タイマクリーニングの変更の妥当性を検証し例えば、前記タイマクリーニングの成功率が低下した場合には、前記タイマクリーニングを元のタイマクリーニング条件に戻すことができる。
【0017】
本発明では、前記タイマクリーニング条件の変更前の前記タイマクリーニング失敗率と、前記タイマクリーニング条件の変更後の各前記排出モードごとの前記タイマクリーニング失敗率を比較するタイマクリーニング失敗率比較手段を有し、前記タイマクリーニング条件変更手段は、前記比較結果に基づいて、前記タイマクリーニングの変更後の前記タイマクリーニング条件を維持する、又は、前記タイマクリーニング変更前の前記タイマクリーニング条件を変更する構成となっていることが望ましい。
【0018】
このように構成することで、前記タイマクリーニングの変更の妥当性を検証し例えば、前記タイマクリーニングの失敗率が上昇した場合には、前記タイマクリーニングを元のタイマクリーニング条件に戻すことができる。
【0019】
本発明では、前記タイマクリーニング結果記録手段は、各前記排出モードの前記適用時間範囲の一部であって適用終了時間を含む限定時間範囲についての、前記タイマクリーニング手段による各前記排出モードごとの前記タイマクリーニングの回数、前記タイマクリーニング手段による前記タイマクリーニングが成功した回数、及び、前記タイマクリーニング手段による前記タイマクリーニングが失敗した回数のうち、少なくとも2つを記録する構成となっていることが望ましい。
【0020】
このように構成することで、前記タイマクリーニング評価手段は、前記境界時間の近傍である前記限定時間範囲における前記タイマクリーニング手段による各前記排出モードごとの前記タイマクリーニングの回数等に基づいて、前記タイマクリーニングの成功率又は、前記タイマクリーニングの失敗率を算出することができる。
これにより、前記境界時間の妥当性をより効率的に判断することができる。
【0021】
本発明では、前記タイマクリーニング結果記録手段は、前記先行排出モードの前記適用時間範囲の一部であって適用終了時間を含む先行限定時間範囲、及び、前記後続排出モードの前記適用時間範囲の一部であって前記適用開始時間を含む後続限定時間範囲についての、前記タイマクリーニング手段による各前記排出モードごとの前記タイマクリーニングの回数、前記タイマクリーニング手段による前記タイマクリーニングが成功した回数、及び、前記タイマクリーニング手段による前記タイマクリーニングが失敗した回数のうち、少なくとも2つを記録する構成となっており、前記タイマクリーニング条件変更手段は、前記先行排出モード及び前記後続排出モードの、前記タイマクリーニング成功率又は前記タイマクリーニング失敗率に基づいて、前記タイマクリーニング条件を変更する構成となっていることが望ましい。
【0022】
このように構成することで、前記タイマクリーニング条件変更手段は、前記先行排出モード及び前記後続排出モードの双方の前記タイマクリーニング成功率又は前記タイマクリーニング失敗率に基づいて、前記タイマクリーニング条件を変更することができるから、よりきめ細かく適切に前記タイマクリーニング条件を変更することができる。
【0023】
前記目的は、本発明によれば、液体を噴射する液体噴射ヘッドと、前記液体噴射ヘッドのノズル開口から前記液体を排出する排出量が異なる複数の排出モードと、前記各排出モードの少なくとも適用開始時間で規定される適用時間範囲を含むタイマクリーニング条件を格納するタイマクリーニング条件格納手段と、基準時からの経過時間を計測する計時手段と、前記経過時間に基づいて、前記複数の排出モードから1つの前記排出モードを選択して前記液体の排出を実行することによって、前記液体噴射ヘッドのタイマクリーニングを行うタイマクリーニング手段と、を有する液体噴射装置が、前記液体噴射ヘッドから前記液体が正常に噴射されない状態である噴射不良を検出する噴射不良検出ステップと、前記液体噴射装置が、前記タイマクリーニング手段による前記タイマクリーニングの回数、前記タイマクリーニング手段による前記タイマクリーニングが成功した回数、及び、前記タイマクリーニング手段による前記タイマクリーニングが失敗した回数のうち、少なくとも2つを記録するタイマクリーニング結果記録ステップと、前記液体噴射装置が、前記タイマクリーニング結果記録ステップにおいて記録した、前記タイマクリーニングの回数、前記タイマクリーニングが成功した回数、及び、前記タイマクリーニングが失敗した回数のうち、少なくとも2つに基づいて、タイマクリーニング成功率又はタイマクリーニング失敗率を算出するタイマクリーニング評価ステップと、前記液体噴射装置が、前記タイマクリーニング成功率又は前記タイマクリーニング失敗率に基づいて、前記タイマクリーニング条件を変更するタイマクリーニング条件変更ステップと、を有することを特徴とする液体噴射装置のタイマクリーニング方法によって達成される。
【0024】
このような構成によって、タイマクリーニングの結果をフィードバックすることによって、温度、湿度を計測することなく最適なタイマクリーニングを実施することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の好適な実施の形態を図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態であるインクジェット式記録装置10等を示す概略図である。
図1に示すインクジェット式記録装置10は、インクジェットプリンタとも呼んでいる。インクジェット式記録装置10は、本体部1を有している。この本体部1は、ガイドレール17、プラテン12、キャリッジ14、インク吸引装置20、記録ヘッド30を備えている。記録ヘッド30は、液体を噴射する液体噴射ヘッドの一例であり、印刷ヘッドとも言う。
【0026】
図1に示すインクジェット式記録装置10は、いわゆるオンキャリッジ型の記録装置であり、キャリッジ14の上部には、複数のインクカートリッジ2,3,4及び5が着脱可能に装着できる構成となっている。インクカートリッジ2等には、液体の一例であるインクが格納されている。キャリッジ14の下部には、記録ヘッド30が設けられている。記録ヘッド30が、用紙29に対面するノズルプレート面30aには、インクを噴射(以後、吐出とも呼ぶ)するためのノズル開口が設けられている。
【0027】
キャリッジ14は、ベルト15を介してモータ16に接続されている。モータ16が作動することによって、キャリッジ14はガイドレール17に沿ってプラテン12の軸方向である主走査方向Tに往復走行する。記録ヘッド30からインクを吐出しつつ、キャリッジ14が主走査方向Tに往復走行することで、記録媒体の一例である用紙29上に画像が記録される。
【0028】
ガイドレール17の一方の端部にはホームポジション18が配置されている。このホームポジション18は、キャリッジ14の走行経路の末端にある非印刷領域である。このホームポジション18には、本体部1の上にインク吸引装置20が配置されている。このインク吸引装置20は、キャッピングシステムもしくはキャッピング手段とも呼んでいる。図1のキャリッジ14の記録ヘッド30は、T1方向に沿ってホームポジション18に移動することで、インク吸引装置20のキャップ本体21に対面する。そして、インク吸引装置20は、記録ヘッド30のノズル開口が設けられているノズル面30aに密着する。
【0029】
インク吸引装置20は、記録ヘッド30に密着した状態で、記録ヘッド30のノズル開口のインクの乾燥を防止する機能と、吸引ポンプ19からの負圧をノズル開口に作用させてノズル開口からインクを強制的に吸引して排出させる機能を備える。すなわち、インク吸引装置20は、記録ヘッド30のノズル開口からインクを吸引することによって記録ヘッド30のクリーニングを行う。
この他に、インク吸引装置20の横には、ワイピング部材23が設けられている。このワイピング部材23は、必要に応じて記録ヘッド30のノズルプレート面30aのインクを払拭する。
【0030】
上述のクリーニングには、画像を記録している最中に実施するクリーニングのほかに、所定の基準時からの経過時間に基づいて実施されるタイマクリーニングも含む。このタイマクリーニングについては、後述する。
【0031】
図1に示すように、キャリッジ14には吐出不良検出装置8が配置されている。この吐出不良検出装置8は、記録ヘッド30からインクが正常に噴射されない状態である噴射不良を検出する噴射不良検出手段の一例である。
図2は、吐出不良検出装置8の構成の一例を示す概略断面図である。
図3は、テストパターン等の一例を示す図である。図3(a)は、テストパターンを示し、図3(b)及び図3(c)は用紙29に印刷された記録パターン像を示している。
【0032】
吐出不良検出の指令を受けたインクジェット式記録装置10は、記録ヘッド30からインクを吐出して、用紙29上に、図3(a)に示す、あらかじめ定められたテストパターンPT1の印刷を行う。
【0033】
次に、吐出不良検出装置8で、用紙29上に実際に印刷されたテストパターン像を読み取る。具体的には、図2に示す、光源8aからの照明光をレンズ8bで略平行光にして用紙29を照明し、印刷されたテストパターン像PT11の像はレンズ8cによってCCD素子8dに投影される。
【0034】
CCD素子8dに投影されたテストパターン像を図示しないテストパターン像解析部で解析し、図3(b)のPT2のように、図3(a)のテストパターンPT1と同じであれば、吐出不良はないと判断する。テストパターン解析部は、図3(c)のPT3のように、図3(a)のテストパターンと比較して、欠落部116があれば、その欠落部116に対応するノズル開口においてドット抜け等の吐出不良があると判断する。
【0035】
なお、本実施の形態とは異なり、吐出不良検出装置として、記録ヘッド30の各ノズル開口から吐出されるインクにそれぞれ、直接に赤外線等の光を照射し、インクがその光をさえぎるか否かを検出することによって、ドット抜けを検出する構成としてもよい。すなわち、光がさえぎられれば、検出対象のノズル開口からインクが吐出されていると判断し、光がさえぎられなければ、検出対象のノズル開口からインクが吐出されておらず、ドット抜けがあると判断する構成としてもよい。
【0036】
なお、図1の実施形態では、複数のインクカートリッジ2,3,4及び5が、キャリッジ14の上に直接搭載されているが、これに限らずインクカートリッジ2,3,4及び5がキャリッジ14とは別の位置に搭載されている、いわゆるオフキャリッジ型のインクジェット式記録装置を採用しても勿論構わない。
【0037】
図4は、インクジェット式記録装置10の電気的な接続例を示す概略図である。
インクジェット式記録装置10の制御装置7は、ローカルプリンタケーブルまたは通信ネットワークを介してホストコンピュータ80のプリンタドライバ81に接続されている。プリンタドライバ81は、インクジェット式記録装置10に対して印刷やクリーニング動作あるいはインク吸引動作を実行させるためのコマンドを送るソフトウェアを搭載している。
【0038】
図4に示すインクジェット式記録装置10は、制御装置7の他に、吐出不良検出装置8、インク吸引装置20、インクカートリッジ2,3,4及び5、記録ヘッド30、キャリッジ駆動装置25を含んでいる。キャリッジ駆動装置25は、図1のモータ16である。
【0039】
図4に示すように、制御装置7は、各種情報を記憶する記憶部72、各種演算を実施する計算部74及び、クリーニングを制御するCL制御部76、時間を計測する計時部78を含む。
記憶部72は、後述するタイマクリーニングテーブルを格納している。
【0040】
図5は、タイマクリーニングテーブル等の一例を示す図である。
図5(a)に示すように、記憶部72が格納しているタイマクリーニングテーブルは、インクの排出量が異なる複数のタイマクリーニングモードであるフラッシングモード、第1TCL(time cleaning)モード、第2TCLモード及び第3TCLモードを含むタイマクリーニングモードを含む。フラッシングモードにおいては、記録ヘッド30のノズル開口からインクが吐出され、第1TCLモード、第2TCLモード及び第3TCLモードにおいては、記録ヘッド30のノズル開口からインクが吸引される。上述の
フラッシングモード、第1TCLモード等は、排出モードの一例である。
【0041】
図5(b)に示すように、フラッシングモードにおいては、20000segで例えば、合計0.5グラム(g)のインクが吐出される。ここで、segとは、吐出の1単位である。フラッシングモードにおいては、印刷とは無関係に、記録ヘッド30のノズル開口から強制的にインクを吐出することによって、記録ヘッド30のノズル開口の目詰まりを解消する動作が実施される。
第1TCLモードにおいては例えば、1.5グラム(g)のインクがインク吸引装置20によって吸引されることによって、記録ヘッド30のノズル開口の目詰まりが解消される。
【0042】
第2TCLモードにおいては、図5(b)に示すように、第1TCLモードよりも多い吸引量である例えば、2.5グラム(g)のインクがインク吸引装置20によって吸引される。
第3TCLモードにおいては、図5(b)に示すように、第2TCLモードよりも多い吸引量である例えば、3.5グラム(g)のインクがインク吸引装置20によって吸引される。
【0043】
図5(a)に示すように、タイマクリーニングテーブルは、各タイマクリーニングモードが適用される適用時間範囲の一例であるCLタイマを含む。
各タイマクリーニングモードは、CLタイマが規定されており、CLタイマは、以下に説明するように、少なくとも適用開始時間で規定されている。
フラッシングモードは例えば、適用開始時間が基準時からの経過時間が0時間(h)であり、適用終了時間が30時間(h)である。第1TCLモードは例えば、適用開始時間が30時間(h)であり、適用終了時間が82時間(h)である。第2TCLモードは例えば、適用開始時間が82時間(h)であり、適用終了時間が336時間(h)である。第3TCLモードの適用開始時時間は、336時間(h)である。
したがって、例えば、第1TCLモードは、記録ヘッド30からインクを用紙29に対して前回吐出した前回吐出時からの経過時間が、30時間(h)以上82時間(h)未満の場合に適用される。この前回吐出時は、基準時の一例である。
前回吐出時からの経過時間は、計時部78によって計測される。すなわち、計時部78は、計時手段の一例である。
そして、CL制御部76は、前回吐出時からの経過時間に基づいて、複数のタイマクリーニングモードから1つのタイマクリーニングモードを選択してインクの排出を実行することによって、記録ヘッド30のタイマクリーニングを行うようになっている。すなわち、CL制御部76は、タイマクリーニング手段の一例である。
【0044】
なお、本実施の形態とは異なり、基準時からの経過時間は、前回のクリーニング終了時からの経過時間、前回のフラッシング終了時からの経過時間、前回のクリーニングからの累積経過時間など、インクの増粘に関する他の時間であってもよい。
【0045】
図5(a)に示すように、タイマクリーニングテーブルは、前回吐出時を基準として、インク吸引量が多いタイマクリーニングモードが吸引量の少ないモードの後になるようにフラッシングモード、第1TCLモード、第2TCLモード、第3TCLモードの順にCLタイマが構成されており、各CLタイマは連続するように構成されている。
例えば、第1TCLモードと第2TCLモードに着目すると、第1TCLモードのCLタイマが前回吐出時を基準として先になっている。この場合、第1TCLモードが先行排出モードの一例であり、第2TCLモードが後続排出モードの一例である。
各タイマクリーニングモードにおけるインク吐出量又はインク吸引量、及び各タイマクリーニングを選択するための適用時間範囲は、タイマクリーニング条件の一例である。そして、記憶部72は、タイマクリーニング条件格納手段の一例である。
【0046】
上述のように、第1TCLモードにおけるインク吸引量よりも第2TCLモードにおけるインク吸引量が多く、第2TCLモードにおけるインク吸引量よりも第3TCLモードにおけるインク吸引量が多い。これは、第1TCLモードよりも第2TCLモードの方が強力なクリーニングであって、吐出不良の解決能力が高く、第2TCLよりも第3TCLモードの方がさらに強力なクリーニングであって、吐出不良の解決能力が高いことを意味する。CLタイマ時間tが大きいほど記録ヘッド30内のインクは増粘している可能性が大きく、それに対応するタイマクリーニングモードは、吐出不良の解決能力が高いものが必要になる。本実施の形態においては、第3TCLモードが最も吐出不良の解決能力が高いから、すべて第3TCLモードにすることも考えられる。しかし、タイマクリーニングとしては、インク吸引量が少なく、かつ、吐出不良を確実に解決できることが望ましいので、経過時間に応じて吐出不良の解決能力が異なる複数のモードを持っている。
そこで、以下に説明するように、インクジェット式記録装置10は、タイマクリーニングの成功率に応じて、各タイマクリーニングモードのインク吸引量を変更する。
【0047】
図6、図7、図8、図9及び図10は、インクジェット式記録装置10の動作例を示す概略フローチャートである。
記録ヘッド30のタイマクリーニングに際して、インクジェット式記録装置10は、まず、タイマクリーニング前設定を行う(図6のステップST1)。
このステップST1の詳細を図7を使用して説明する。タイマクリーニング前設定として、インクジェット式記録装置10は、まず、第1TCLモード等のタイマクリーニング成功率Rclnを計算する(図7のステップST101)。ここで、Rclnのnはクリーニングモードを表し例えば、フラッシングモードであればRclf、第1TCLモードであればRcl1、第2TCLモードであればRcl2である。後述の、Ncln、Fclnについても同様である。
このステップST101の詳細を図8を使用して説明する。
【0048】
まず、インクジェット式記録装置10は、フラッシングモード、第1TCLモード、第2TCLモード、第3TCLモードのそれぞれについて、タイマクリーニング回数Nclnが5回以上か否かを判断する(ステップST201)。第1TCLモード等ごとのタイマクリーニング回数Nclnは、記憶部72に記憶されている。
【0049】
タイマクリーニング回数Nclnが5回以上であれば、後述のタイマクリーニング成功率Rclnの信頼性があるが、5回未満であれば、基礎データの数としては不足であり、タイマリーニング成功率Rclnの信頼性は不十分であるから、インクジェット式記録装置10は、5回未満のタイマクリーニング回数Rclnに対応するタイマクリーニングモードについては、クリーニング成功率Rclnを計算しない。すなわち、5回というタイマクリーニング回数Nclnは、信頼性が十分なタイマクリーニング成功率Rclnを算出するための必要回数の一例である。
【0050】
続いて、インクジェット式記録装置10は、タイマクリーニング成功率Rclnを計算する(ステップST202)。ステップST202は、タイマクリーニング成功率算出ステップの一例である。
なお、タイマクリーニング成功回数Fclnは、タイマクリーニング終了後に吐出不良検出装置8によって、フラッシングモード、第1TCLモード、第2TCLモード、第3TCLモードの各タイマクリーニングモードごとに、タイマクリーニングが成功であると判断された場合に、記憶部72に記憶されている。
このように、記憶部72は、タイマクリーニング回数Ncln及びタイマクリーニング成功回数Fclnも記録する。すなわち、記憶部72は、クリーニング結果記録手段の一例である。
【0051】
計算部74は、記憶部72に記憶されている例えば、第1TCLモードのタイマクリーニング回数Ncl1と第1TCLモードのタイマクリーニング成功回数Fcl1に基づいて、第1TCLモードのタイマクリーニング成功率Rcl1を算出する。すなわち、計算部74は、タイマクリーニング評価手段の一例である。
計算部74が算出した各タイマクリーニングモードごとのタイマクリーニング成功率Rclnは吸引量とともに、記憶部74に記憶される。
【0052】
上述のようにして、第1TCLモード等ごとのタイマクリーニング成功率Rclnが算出されると(図7のステップST101)、インクジェット式記録装置10は、クリーニング成功率Rclnが80パーセント(%)未満であるか否かを判断する(ステップST102)。タイマクリーニング成功率Rclnが80%以上であれば、タイマクリーニングの成功率が十分に高く、インク吸引量を減少させてもなお、タイマクリーニングが成功すると考えられる。このタイマクリーニング成功率Rclnが80パーセント%以上の範囲が、タイマクリーニング成功率許容範囲内の一例である。
なお、タイマクリーニング成功率Rclnが80パーセント%以上ということは、タイマクリーニング失敗率が20パーセント(%)未満であるということである。したがって、タイマクリーニング失敗率が20パーセント(%)未満の範囲が、タイマクリーニング失敗率許容範囲内の一例である。
【0053】
そして、計算部74は、例えば、第1TCLモードのクリーニング成功率Rcl1が80パーセント(%)未満であれば、第1TCLモードにおけるインクの吸引量を5パーセント(%)増加させる(ステップST103)。
タイマクリーニング成功率Rclnが80パーセント(%)未満である場合には、対応する各タイマクリーニングモードのインク吸引量を多くするから、次回そのタイマクリーニングモードで実施されるタイマクリーニングが成功する確立を高くすることができ、その結果として、成功しないタイマクリーニングを未然に防止し、インクを無駄に消費することを回避することができる。
さらに、上述のようにタイマクリーニング成功率Rclnによって、タイマクリーニング条件を変更するから、基本となるタイマクリーニングモードは少なくてもよく、例えば4つで足りる。このため、インクジェット式記録装置10が、タイマクリーニング条件を記憶するための記憶容量は少なくて足りる。
なお、本実施の形態とは異なり、基本となるタイマクリーニングモードは、2つ又は3つでもよい。
【0054】
そして、計算部74は例えば、記憶部72の第1TCLモードのタイマクリーニング回数Ncl1を0に設定し、第1TCLモードのタイマクリーニング回数Fcl1を0に設定する(ステップST104)。
なお、ステップST104においては、記憶部72にインク吸引量変更前のインク吸引量及び、インク吸引量変更前のタイマクリーニング成功率Rclnを記録した後に、記憶部72の第1TCLモードのタイマクリーニング回数Ncl1を0に設定し、第1TCLモードのタイマクリーニング回数Fcl1を0に設定する。
ステップST104は、新たなインク吸引量における例えば、第1TCLモードを開始するための初期設定をするステップである。
【0055】
一方、計算部74は、例えば、第1TCLモードのタイマクリーニング成功率Rcl1が80パーセント(%)以上であれば、第2TCLモードにおけるインクの吸引量を5%減少させる(ステップST113)。インクの吸引量が多いほど、吐出不良を解決できる可能性は高いが、クリーニング成功率Rcl1が80パーセント(%)以上であれば、インクの吸引量が、第2TCLモードにおけるタイマクリーニングが成功するための必要十分な量よりも多い場合がある。例えば、吸引量が、上述のように、環境条件のワーストである高温多湿の条件に基づいて設定されている場合には、使用環境がインクがより増粘しにくい常温常湿や多湿状態では、もっと、インク吸引量を減少させても、クリーニングが成功する可能性がある。
このため、次回実施する第1TCLモードのタイマクリーニングのインク吸引量を減少させつつ、クリーニングの成功を期待し得る。
このように、タイマクリーニング成功率Rclnが成功率許容範囲内の一例である80パーセント(%)以上である場合には、各タイマクリーニングモードのインク吸引量を少なくするから、インクを節約しつつ、タイマクリーニングを成功させることができる。
【0056】
そして、計算部74は、記憶部72の第1TCLモードのタイマクリーニング回数Ncl1を0に設定し、第1TCLモードのタイマクリーニング回数Fcl1を0に設定する(ステップST104)。
上述のように、計算部74は、タイマクリーニング条件を変更する。すなわち、計算部74は、タイマクリーニング条件変更手段の一例である。そして、ステップST103及びステップST113が、タイマクリーニング条件変更ステップの一例である。
【0057】
インクジェット式記録装置10は、上述のようにしてタイマクリーニング前設定を行うと(図6のステップST1)、新たに設定した例えばタイマクリーニングテーブルでタイマクリーニングを実施する(ステップST2)。
このステップST2の詳細を図9を使用して、説明する。
まず、インクジェット式記録装置10のCL制御部76は、記録ヘッド30のノズル開口から用紙29に対してインクを前回に吐出した前回吐出時からの経過時間に基づいて、複数のタイマクリーニングモードから1つのタイマクリーニングモードを選択する(ステップST301)。
例えば、記憶部72に格納されているタイマクリーニングテーブルが、図5(a)に示す通りであって、直近のインク吐出時からの経過時間が40時間(h)であれば、その経過時間に基づいて、CL制御部76は第1TCLモードを選択し、以下のようにタイマクリーニングを実施する。
【0058】
まず、図1の記録ヘッド30にキャップ本体21を密接させ、キャップ本体21を閉鎖する(図9のステップST302)。
続いて、CL制御部76は、図1の吸引ポンプ19を駆動し、記録ヘッド30のノズル開口からインクを吸引する(ステップST303)。
【0059】
続いて、CL制御部76は、吸引ポンプ19の駆動を停止し(ステップST304)、負圧解除時間である例えば、3秒(s)の経過を待つ(ステップST305)。この負圧解除時間は、吸引ポンプ19の駆動停止直後は負圧になっているキャップ本体21内の気圧が、大気圧とほぼ等しくなるまでの時間である。
【0060】
続いて、CL制御部76は、キャップ本体21を開放し(ステップST306)、吸引ポンプ19を駆動してキャップ本体21のインクを排出する(ステップST307)。続いて、CL制御部76は、ワイピング部材23によってワイピングを行い、記録ヘッド30のノズルプレート面30aを払拭する(ステップST308)。
【0061】
インクジェット式記録装置10は、上述のようにしてタイマクリーニングを実施すると(図6のステップST2)、タイマクリーニング回数Nclnをタイマクリーニングの種類ごとに加算する(ステップST3)。例えば、第1TCLでタイマクリーニングを一度実施した場合には、第1TCLのクリーニング回数Ncl1を1回加算し、加算後のクリーニング回数Ncl1を記憶部72に記憶する。上述のように、この記憶部72はタイマクリーニング回数記録手段の一例である。そして、このステップST3は、タイマクリーニング回数記録ステップの一例である。
なお、記憶部72が記憶しているクリーニング回数Nclnは、第1TCLモード、第2TCLモード、第3TCLモードの現在の吸引量の回数を示す。すなわち、例えば、現在の第1TCLモードのインク吸引量が、1.5グラム(g)ではなくて、2.0グラム(g)に変更されていれば、変更後の2.0グラム(g)における第1TCLモードのタイマクリーニング回数だけを示している。
【0062】
続いて、インクジェット式記録装置10は、記録ヘッド30のノズル開口からの吐出不良を検出する(ステップST4)。このステップST4は、噴射不良検出ステップの一例である。
続いて、インクジェット式記録装置10は、吐出不良があるか否かを判断し(ステップST5)、吐出不良がなければ、タイマクリーニング成功回数Fclnをタイマクリーニングの各モードごとに加算する(ステップST6)。例えば、第1TCLモードのタイマクリーニングを一度実施してそのタイマクリーニングが成功した場合には、第1TCLモードのタイマクリーニング成功回数Fcl1を1回加算し、加算後のタイマクリーニング成功回数Fcl1を記憶部72に記憶する。上述のように、この記憶部72はタイマクリーニング成功回数記録手段の一例である。そして、このステップST6は、タイマクリーニング成功回数記録ステップの一例である。
これに対して、ステップST5において、インクジェット式記録装置10が、吐出不良があると判断した場合には、吐出不良が回復するまでタイマクリーニングとは異なる通常のクリーニングをする(ステップST51)。
【0063】
続いて、インクジェット式記録装置10は、上述のステップST2におけるタイマクリーニングを実施する前にタイマクリーニング条件を変更したか否かを判断し(ステップST7)、タイマクリーニング条件を変更したと判断した場合には、ステップST71に進む。ステップST71においては、インクジェット式記録装置10は、タイマクリーニング条件変更前のタイマクリーニング成功率Rclnと、タイマクリーニング条件変更後のタイマクリーニング成功率Rclnとを比較して、タイマクリーニング条件を維持又は変更する。
【0064】
このステップST71の詳細を図10を使用して説明する。
インクジェット式記録装置10の計算部74は、まず、記憶部72に記憶されている、タイマクリーニング条件変更後の例えば、各タイマクリーニングモードによるタイマクリーニング回数Nclnが、5回以上であるか否かを判断する(図10のステップST401)。
【0065】
計算部74は、タイマクリーニング回数Nclnが5回以上であると判断すると、Nclnが5回以上であるタイマクリーニングモードである例えば、第1TCLモードについて、吸引量変更後のタイマクリーニング成功率Rcl1を計算する(ステップST402)。計算部74が算出したタイマクリーニング条件変更後のタイマクリーニング成功率Rcl1は、記憶部72に記憶される。
【0066】
続いて、計算部74は、記憶部72に記憶されている吸引量変更後のクリーニング成功率Rcl1が、吸引量変更前のタイマクリーニング成功率Rcl1以上か否かを判断する(ステップST403)。すなわち、計算部72は、タイマクリーニング成功率比較手段の一例である。
【0067】
計算部74は、記憶部72に記憶されている吸引量変更後のクリーニング成功率Rcl1が、吸引量変更前のクリーニング成功率Rcl1以上であると判断した場合には、吸引量変更後のタイマクリーニング条件を維持する。
【0068】
これに対して、計算部74は、記憶部72に記憶されている吸引量変更後のタイマクリーニング成功率Rcl1が、吸引量変更前のタイマクリーニング成功率Rcl1以上ではないと判断した場合には、吸引量変更前の吸引量に戻す(ステップST404)。
そして、計算部74は、記憶部72に記憶されているNcl1を0、Fcl1を0に設定する(ステップST405)。このステップST405は、新たなタイマクリーニング条件における、今後のNcl1及びFcl1を算出するための初期設定である。
【0069】
このような構成によって、インクジェット式記録装置10は、タイマクリーニング成功率Rclnを算出することができるから、タイマクリーニング成功率Rclnが低い場合には、インク吸引量を変更し、例えば、各タイマクリーニングモードのインク吸引量を多くするなどの制御をすることができる。
【0070】
なお、インク吸引量の変更は1度だけではなく、変更の条件に合致する限り、継続的に行われる。例えば、第3TCLモードのタイマクリーニング成功率Rcl3が80パーセント(%)以上のとき、図5(b)の吸引量3.5グラム(g)から10パーセント(%)削減され、3.15グラム(g)となる。このインク吸引量でもタイマクリーニング成功率Rcl3が80パーセント(%)以上であれは、さらに10パーセント(%)削減され、2.84グラム(g)となり、当初のインク吸引量から0.66グラム(g)の削減となる。これらを繰り返すことにより、使用環境に応じたインク吸引量に自動的に設定されていくことになる。
これにより、タイマクリーニングの結果をフィードバックすることによって、温度、湿度を計測することなく最適なタイマクリーニングを実施することができる。
【0071】
また、本実施の形態とは異なり、タイマクリーニングは、記録ヘッド30内のインクの加圧などの手段も含むようにしてもよい。
【0072】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態のインクジェット式記録装置10A(図1参照)について説明する。第2の実施形態のインクジェット式記録装置10Aの構成は、上記第1の実施形態のインクジェット式記録装置10と多くの構成が共通するため共通する部分は同一の符号等とし、説明を省略し、以下、相違点を中心に説明する。
【0073】
第2の実施形態のインクジェット式記録装置10Aのハードウエア構成及び電気的接続例は、上記第1の実施形態のインクジェット式記録装置10と同様である(図1乃至図4参照)が、インクジェット式記録装置10Aが実施するタイマクリーニングにおける動作がインクジェット式記録装置10とは異なるから、以下、インクジェット式記録装置10Aの動作例について説明する。
【0074】
図11、図12及び図13は、インクジェット式記録装置10Aの動作例を示す概略フローチャートである。
記録ヘッド30のタイマクリーニングに際して、インクジェット式記録装置10Aは、まず、タイマクリーニング前設定を行う(図11のステップST1A)。
このステップST1Aの詳細を図12を使用して説明する。
【0075】
タイマクリーニング前設定として、インクジェット式記録装置10Aは、まず、第1TCLモード等のタイマクリーニング成功率Rclnを計算する(図12のステップST101)。このステップST101の詳細は、第1の実施形態と同様である(図8参照)から、説明を省略する。
【0076】
ステップST101において、計算部74が算出した各タイマクリーニングモードごとのタイマクリーニング成功率Rclnはそのタイマクリーニング成功率Rclnを算出した時のクリーニング条件とともに、記憶部72に記憶される。
【0077】
上述のようにして、各タイマクリーニングごとのタイマクリーニング成功率Rclnが算出されると(図12のステップST101)、インクジェット式記録装置10Aは、タイマクリーニング成功率Rclnが80パーセント(%)未満であるか否かを判断する(ステップST102A)。
【0078】
そして、計算部74は、例えば、第1TCLモードのクリーニング成功率Rcl1が80パーセント(%)未満であれば、第1TCLモードと第2TCLモードの境界時間である第2閾値(図14(a)参照)を前回吐出時からの経過時間が短くなるように変更規定時間だけ変更する。
すなわち、第1TCLモードよりもインク吸引量が多い第2TCLモードの適用開始時間が早くなるように後述のCLタイマ閾値を変更する(ステップST103A)。
【0079】
図14は、CLタイマ閾値等の一例を示す概略図である。
CLタイマ閾値は、各タイマクリーニングモードのCLタイマ(図5(a)参照)によって規定され、図14(a)に示すように、フラッシングモードと第1TCLモードのCLタイマを画するCLタイマ閾値を第1閾値、第1TCLモードと第2TCLモードのCLタイマを画するCLタイマ閾値を第2閾値、第2TCLモードと第3TCLモードのCLタイマを画するCLタイマ閾値を第3閾値とし、第1閾値の基本設定は30時間(h)、第2閾値の基本設定は82時間(h)、第3閾値の基本設定は336時間(h)となっている。上述のCLタイマ閾値は、境界時間の一例である。
計算部74は、第1TCLモードのクリーニング成功率Rcl1が80パーセント(%)未満であれば、第2閾値を例えば、変更規定時間である例えば、12時間(h)だけ前回吐出時からの経過時間が短くなるように変更し、図14(b)に示すように、新たなタイマクリーニングテーブルを生成する。
【0080】
これに対して、計算部74は、例えば、第1TCLモードのクリーニング成功率Rcl1が80パーセント(%)以上であれば、第2閾値を変更規定時間である12時間だけ前回吐出時からの経過時間が長くなるように変更する。
すなわち、第1TCLモードの適用終了時間が遅くなるように、第2閾値を前回吐出時からの経過時間が長くなるように変更する(ステップST113A)。
そして、計算部74は、図14(c)に示すように、新たなタイマクリーニングテーブルを生成する。
【0081】
このように、インクジェット式記録装置10Aは、タイマクリーニング成功率が80パーセント(%)未満である場合には、そのタイマクリーニング成功率に対応する各タイマクリーニングモードである例えば、第1TCLモードの適用終了時間を前回吐出時からの経過時間が短くなるように変更する。このため、次回の第1TCLモードのCLタイマは、前回吐出時からの経過時間がより短い間となり、第2TCLモードの適用開始時間がより早くなる。これにより、変更後のタイマクリーニングテーブルにしたがって実施されるタイマクリーニングのタイマクリーニング成功率Rclnを高くすることができ、その結果として、成功しないタイマクリーニングを未然に防止し、インクを無駄に消費することを回避することができる。
【0082】
これに対して、インクジェット式記録装置10Aは、タイマクリーニング成功率Rclnが80パーセント(%)以上である場合には、そのタイマクリーニング成功率に対応するタイマクリーニングモードである例えば、第1TCLモードの適用終了時間を、前回吐出時からの経過時間がより長くなるように変更する。このため、次回の第1TCLモードのCLタイマは、前回吐出時からの経過時間がより長い間となり、第2TCLモードの適用開始がより遅くなる。
このため、変更後のタイマクリーニングテーブルにしたがって実施されるタイマクリーニングのタイマクリーニング成功率Rclnを維持しつつ、インクを無駄に消費することを回避することができる。
【0083】
そして、計算部74は、記憶部72の第1TCLモードのタイマクリーニング回数Ncl1を0に設定し、第1TCLモードのタイマクリーニング回数Fcl1を0に設定する(図12のステップST104)。
【0084】
上述のステップST103A及びステップST113Aは、タイマクリーニング条件変更ステップの一例である。
インクジェット式記録装置10Aは、上述のようにしてクリーニング前設定を行うと(図11のステップST1A)、新たに設定したタイマクリーニングテーブルでタイマクリーニングを実施する(ステップST2)。
ステップST2乃至ステップST6は、第1の実施の形態と同様であるから説明を省略する。
【0085】
続いて、インクジェット式記録装置10Aは、上述のステップST2におけるタイマクリーニングを実施する前にタイマクリーニング条件を変更したか否かを判断し(ステップST7A)、タイマクリーニング条件を変更したと判断した場合には、ステップST71Aに進む。ステップST71Aにおいては、インクジェット式記録装置10Aは、タイマクリーニング条件変更前のタイマクリーニング成功率Rclnと、タイマクリーニング条件変更後のタイマクリーニング成功率Rclnとを比較して、タイマクリーニング条件を維持又は変更する。
【0086】
このステップST71Aの詳細を図13を使用して説明する。
ステップST401及びステップST402は、第1の実施形態と同様であるから説明を省略する。
【0087】
続いて、計算部74は例えば、記憶部72に記憶されているCLタイマ閾値変更後のクリーニング成功率Rcl1が、CLタイマ閾値変更前のタイマクリーニング成功率Rcl1以上か否かを判断する(ステップST403A)。すなわち、計算部74は、タイマクリーニング成功率比較手段の一例である。
【0088】
計算部74は、記憶部72に記憶されているCLタイマ閾値変更後のクリーニング成功率Rcl1が、CLタイマ閾値変更前のクリーニング成功率Rcl1以上であると判断した場合には、CLタイマ閾値変更後のタイマクリーニング条件を維持する。
【0089】
これに対して、計算部74は、記憶部72に記憶されているCLタイマ閾値変更後のタイマクリーニング成功率Rcl1が、CLタイマ閾値変更前のタイマクリーニング成功率Rcl1以上ではないと判断した場合には、タイマクリーニング条件変更前のタイマクリーニング条件に戻す(ステップST404A)。
【0090】
このような構成によって、インクジェット式記録装置10は、タイマクリーニング成功率Rclnを算出することができるから例えば、タイマクリーニング成功率Rcl1が低い場合には、タイマクリーニング条件を変更し、例えば、第2閾値を前回吐出時からの経過時間が短くなるように変更するなどの制御をすることができる。
【0091】
なお、CLタイマ閾値の変更は1度だけではなく、変更の条件に合致する限り、継続的に行われる。例えば、第1TCLモードのタイマクリーニング成功率Rcl1が80パーセント(%)未満のとき、図14(a)の第2閾値の基本設定82時間(h)から12時間(h)、基準時に近い方向に変更され、70時間(h)となる。このインク吸引量でもタイマクリーニング成功率Rcl1が80パーセント(%)未満であれは、さらに12時間変更され、58時間(h)となり、当初の第2閾値から24時間(h)の変更となる。これらを繰り返すことにより、使用環境に応じたCLタイマ閾値に自動的に設定されていくことになる。
これにより、タイマクリーニングの結果をフィードバックすることによって、温度、湿度を計測することなく最適なタイマクリーニングを実施することができる。
【0092】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態のインクジェット式記録装置10B(図1参照)について説明する。第3の実施形態のインクジェット式記録装置10Bの構成は、上記第2の実施形態のインクジェット式記録装置10Aと多くの構成が共通するため共通する部分は同一の符号等とし、説明を省略し、以下、相違点を中心に説明する。
【0093】
第3の実施形態のインクジェット式記録装置10Bのハードウエア構成及び電気的接続例は、上記第2の実施形態のインクジェット式記録装置10Aと同様である(図1乃至図4参照)が、タイマクリーニング回数Ncln及びタイマクリーニング成功回数Fclnを記録するための時間範囲が異なる。
【0094】
図15は、CLタイマ閾値等の一例を示す概略図である。
CLタイマ閾値は、第2の実施形態のインクジェット式記録装置10Aと同様に規定されているが、記憶部72がタイマクリーニング回数Ncln及びタイマクリーニング成功回数Fclnを記録するCLタイマの時間範囲が異なる。
例えば、第1TCLモードの場合には、記憶部72は、第1TCLモードが適用されるCLタイマである30時間(h)以上82時間(h)未満の全範囲ではなくて、その一部である70時間(h)以上82時間(h)未満の範囲についてのタイマクリーニング回数Ncl1及びタイマクリーニング成功回数Fcl1を記録するようになっている。すなわち、記憶部72は、第1TCLモードの適用終了時間である82時間(h)を含む限定された時間範囲のタイマクリーニング回数Ncl1等を記録する。記憶部72がタイマクリーニング回数Ncl1及びタイマクリーニング成功回数Fcl1を記録する時間範囲を成功率算出用CLタイマと呼ぶ。この成功率算出用CLタイマは、限定時間範囲の一例である。
そして、計算部74は、例えば、第1TCLモードの成功率算出用CLタイマを判定領域2として、判定領域2におけるタイマクリーニング回数Ncl1及びタイマクリーニング成功回数Fcl1に基づいて、タイマクリーニング成功率Rcl1を算出する。
【0095】
そして、計算部74は、図15(b)に示すように、判定領域1のタイマクリーニング
成功率Rclfが90パーセント(%)、判定領域2のタイマクリーニング成功率Rcl1が50パーセント(%)、判定領域3のタイマクリーング成功率Rcl2が60パーセント(%)であれば、判定基準である80パーセント(%)と比較して、第1閾値、第2閾値及び第3閾値を変更して、図15(c)に示すような新たなクリーニングテーブルを生成する。
図15(c)に示すように、成功率算出用CLタイマも、新たな第1閾値等を基準として変更される。
【0096】
上述のように、インクジェット式記録装置10Bは、成功率算出用CLタイマにおける
タイマクリーニング回数Ncln及びタイマクリーニング成功回数Fclnを記録し、タイマクリーニング成功率Rclnを算出する。
例えば、第1TCLモードにおいて、図15(a)に示す適用開始時間である30時間の近傍の時間範囲におけるタイマクリーニング成功率Fcl1は、適用終了時間である82時間の近傍の時間範囲におけるタイマクリーニング成功率Fcl1よりも高いと予想することができる。すなわち、適用開始時間の近傍の時間範囲におけるタイマクリーニング成功率Fcl1は、適用終了時間の近傍の時間範囲におけるタイマクリーニング成功率Fcl1とは異なると考えられる。
したがって、第1TCLモードと第2TCLモードとの閾値である第2閾値の妥当性を判断するためには、第2閾値の近傍である第1TCLモードの適用終了時間の近傍の時間範囲におけるタイマクリーニング成功率Fcl1を適用することが、適用開始時間の近傍の時間範囲におけるタイマクリーニング成功率Fcl1を適用する場合や、第1TCLモードが適用されるCLタイマの全範囲のタイマクリーニング成功率Fcl1を適用する場合よりも、効果的である。
このため、インクジェット式記録装置10Bは、効果的にフラッシングモード及び第1TCLモード等の間における閾値の妥当性を判断し、変更することができる。
【0097】
なお、本実施の形態とは異なり、インクジェット式記録装置10Bは、タイマクリーニング成功率Rclnに基づいて、各タイマクリーニングモードにおけるインクの排出量を変更するようにしてもよい。
【0098】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態のインクジェット式記録装置10C(図1参照)について説明する。第4の実施形態のインクジェット式記録装置10Cの構成は、上記第3の実施形態のインクジェット式記録装置10Bと多くの構成が共通するため共通する部分は同一の符号等とし、説明を省略し、以下、相違点を中心に説明する。
【0099】
第4の実施形態のインクジェット式記録装置10Cのハードウエア構成及び電気的接続例は、上記第3の実施形態のインクジェット式記録装置10Bと同様である(図1乃至図4参照)が、タイマクリーニング回数Ncln及びタイマクリーニング成功回数Fclnを記録するための時間範囲と、各タイマクリーニングモードを適用する閾値の変更方法が異なる。
【0100】
図16は、タイマクリーニングテーブル等の一例を示す概略図である。
CLタイマ閾値は、第3の実施形態のインクジェット式記録装置10Bと同様に規定されているが、記憶部72がタイマクリーニング回数Ncln及びタイマクリーニング成功回数Fclnを記録するCLタイマの時間範囲が異なる。
例えば、記憶部72は、フラッシングモードが適用されるCLタイマである30時間未満の一部であって適用終了時間を含む26時間(h)以上30時間(h)未満の範囲、及び、第1TCLモードが適用されるCLタイマである30時間(h)以上82時間(h)未満の一部であって適用開始時間を含む30時間(h)以上34時間(h)未満の範囲についてのタイマクリーニング回数Ncln及びタイマクリーニング成功回数Fclnを記録するようになっている。ここで、26時間(h)以上30時間(h)未満の範囲は先行限定時間範囲の一例であり、30時間(h)以上34時間(h)未満の範囲は後続限定時間範囲の一例である。
【0101】
そして、計算部74は、例えば、第1閾値の妥当性を判断するために、フラッシングモードの成功率算出用CLタイマである26時間(h)以上30時間(h)未満を判定領域1aとして、第1TCLモードの成功率算出用CLタイマである30時間(h)以上34時間(h)未満を判定領域1bとして判定領域1bとして、それぞれ、タイマクリーニング成功率Rclf及びRcl1を算出する。
そして、タイマクリーニング成功率Rclfが80パーセント(%)以上であるか否か、及び、タイマクリーニング成功率Rcl1が80パーセント(%)以上であるか否かに基づいて、第1閾値を変更する。
【0102】
計算部74は、例えば、領域1aにおけるタイマクリーニング成功率Rclfが80パーセント(%)以上であって、領域1bにおけるタイマクリーニング成功率Rcl1が80パーセント(%)以上であれば、第1閾値を30時間(h)から34時間(h)へ変更する。これにより、タイマクリーニング成功率Rclfが80パーセント(%)以上であって、効果的なクリーニングであるフラッシングモードを適用する時間範囲を広げることができる。また、フラッシングモードは、第1TCLモードよりも、記録ヘッド30から排出するインクの量が少ないから、クリーニングによるインクの消費量を低減しつつ、効果的なクリーニングを実施する時間範囲を延長することができる。
【0103】
また、計算部74は、領域1aにおけるタイマクリーニング成功率Rclfが80パーセント(%)未満であって、領域1bにおけるタイマクリーニング成功率Rcl1が80パーセント(%)以上であれば、第1閾値を30時間(h)から26時間(h)へ変更する。これにより、タイマクリーニング成功率Rclfが80パーセント(%)未満であってクリーニングが効率的でない場合に、タイマクリーニング成功率Rcl1が80パーセント(%)以上であって効果的なクリーニングである第1TCLモードを適用する適用開始時間を早めることができる。すなわち、第1TCLモードによるクリーニングは、フラッシングモードによるクリーニングよりも強力であるから、強力なクリーニングを早い時間において実施することができる。
【0104】
また、計算部74は、領域1aにおけるタイマクリーニング成功率Rclfが80パーセント(%)以上であって、領域1bにおけるタイマクリーニング成功率Rcl1が80パーセント(%)未満であれば、第1閾値を30時間(h)から34時間(h)へ変更する。これにより、タイマクリーニング成功率Rclfが80パーセント(%)以上であって、効果的なクリーニングであるフラッシングモードを適用する時間範囲を広げることができる。第1TCLモードはフラッシングモードよりも強力なクリーニングであるが、記録ヘッド30の状態等によって、フラッシングモードの方が、第1TCLモードよりも効果的にクリーニングを行うことができる場合がある。インクジェット式記録装置10Bは、領域1a及び領域1bのそれぞれのタイマクリーニング成功率Rclnに基づいて、第1閾値を変更するから、フラッシングモードの方が、第1TCLモードよりも効果的にクリーニングを行うことができる場合についても、対応することができる。
【0105】
また、計算部74は、領域1aにおけるタイマクリーニング成功率Rclfが80パーセント(%)未満であって、領域1bにおけるタイマクリーニング成功率Rcl1が80パーセント(%)未満であれば、第1閾値は30時間(h)のままとする。タイマクリーニング成功率Rclfとタイマクリーニング成功率Rcl1がともに80パーセント(%)未満である場合には、より強力なクリーニングを実施する方がクリーニングの成功率が高いと思われる。そこで、計算部74は、タイマクリーニング成功率Rclfとタイマクリーニング成功率Rcl1がともに80パーセント(%)未満である場合には、第1閾値を30時間(h)から26時間(h)に変更して、第1TCLモードを早く開始することも可能だが、第1閾値に近いにもかかわらず第1TCLモードのタイマクリーニング成功率が悪いということは、クリーニング以外にクリーニング成功率を阻害する要因がある可能性があるため、第1閾値は変更せずに、警告メッセージを出して修理を促したほうがよい。
以上のように、インクジェット式記録装置10Cは、例えば、領域1bだけではなくて、領域1a及び領域1bの双方のタイマクリーニング成功率Rclnに基づいて、第1閾値を変更するから、よりきめ細かく適切にタイマクリーニング条件を変更することができる。
【0106】
なお、本実施の形態とは異なり、インクジェット式記録装置10Cは、タイマクリーニング成功率Rclnに基づいて、各タイマクリーニングモードにおけるインクの排出量を変更するようにしてもよい。
【0107】
なお、本実施の形態とは異なり、インクジェット式記録装置10Cは、例えば、領域1a及び領域1bの双方のタイマクリーニング成功率Rcln又はタイマクリーニングの失敗率の平均に基づいて、第1閾値及び/又はインクの排出量を変更するようにしてもよい。これにより、領域1a及び領域1bにおける、タイマクリーニングの回数、タイマクリーニングが成功した回数、及び、タイマクリーニングが失敗した回数のうち、少なくとも2つに基づいて、タイマクリーニング成功率Rcln又はタイマクリーニングの失敗率の平均を算出することができるから、インクジェット式記録装置10Cの記憶及び演算の負荷を小さくすることができる。
【0108】
なお、上述の各実施の形態とは異なり、記憶部72は、タイマクリーニング手段による各タイマクリーニングモードごとのタイマクリーニングの回数、タイマクリーニングが成功した回数、及び、タイマクリーニングが失敗した回数のうち、少なくとも2つを記録するようにしてもよい。そして、計算部74は、記憶部72が記憶した、タイマクリーニングの回数、タイマクリーニングが成功した回数、及び、タイマクリーニングが失敗した回数のうち、少なくとも2つに基づいて、タイマクリーニング成功率又はタイマクリーニング失敗率を算出するようにしてもよい。そして、計算部74は、タイマクリーニング成功率又はタイマクリーニング失敗率に基づいて、タイマクリーニングのCLタイマ閾値を変更するようにしてもよい。
【0109】
本発明は、インクジェット式記録装置としての上記実施形態に限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。さらに、上述の各実施形態は、相互に組み合わせて構成するようにしてもよい。また、本発明は、インクジェット式記録装置に限らず、プリンタ等の画像記録装置に用いられる記録ヘッド、液晶ディスプレイ等のカラーフィルタの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレイ、FED(面発光ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材噴射ヘッド、バイオチップ製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等の液体を吐出する液体噴射ヘッドを用いた液体噴射装置、精密ピペットとしての試料噴射装置等にも適用できる。
【0110】
上記実施形態の各構成は、その一部を省略したり、上記とは異なるように任意に組み合わせることができる。
例えば、インクジェット式記録装置10又は10Aの記憶部72、計算部74、CL制御部76及び計時部78を、プリンタドライバ81が有する構成としてもよい。この場合、ホストコンピュータ80及びインクジェット式記録装置10(10A)が、液体噴射装置の一例である。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】インクジェット式記録装置を示す概略図である。
【図2】吐出不良検出装置の構成の一例を示す概略断面図である。
【図3】テストパターン等の一例を示す図である。
【図4】インクジェット式記録装置の電気的な接続例を示す概略図である。
【図5】タイマクリーニングテーブル等の一例を示す図である。
【図6】インクジェット式記録装置の動作例を示す概略フローチャートである。
【図7】インクジェット式記録装置の動作例を示す概略フローチャートである。
【図8】インクジェット式記録装置の動作例を示す概略フローチャートである。
【図9】インクジェット式記録装置の動作例を示す概略フローチャートである。
【図10】インクジェット式記録装置の動作例を示す概略フローチャートである。
【図11】インクジェット式記録装置の動作例を示す概略フローチャートである。
【図12】インクジェット式記録装置の動作例を示す概略フローチャートである。
【図13】インクジェット式記録装置の動作例を示す概略フローチャートである。
【図14】CLタイマ閾値等の一例を示す概略図である。
【図15】CLタイマ閾値等の一例を示す概略図である。
【図16】タイマクリーニングテーブル等の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0112】
8・・・吐出不良検出装置、10,10A,10B,10C・・・インクジェット式記録装置、20・・・インク吸引装置、21・・・キャップ本体、30・・・記録ヘッド、30a・・・ノズルプレート面、72・・・記憶部、74・・・計算部、76・・・CL制御部、78・・・計時部
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を噴射する液体噴射装置および液体噴射装置のタイマクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ターゲットに対して液体を噴射させる液体噴射装置として、記録ヘッドから記録媒体に対してインク滴を噴射させて印刷を行うインクジェット式記録装置がある。このインクジェット式記録装置は、記録ヘッドのノズルから記録媒体に対して微小なインク滴を吐出させて、所望の文字や図形等の画像を記録する。
ところが、例えば、湿度が低い環境において上述のノズルから長時間インクが吐出されていない場合には、記録ヘッドの中のインクの粘度が増加し、そのままの状態であれば、上述のノズルからインク滴が吐出されず、画像が記録されない部分(以後、ドット抜けと呼ぶ)が発生する等の吐出不良を生じる場合がある。
そこで、インクジェット式記録装置には、上述のノズルから直近にインクを吐出した時からの時間経過及び温度・湿度に基づいて、自動的に吐出不良を解消するためにノズルからインクを吐出する等によって増粘インクを除去する処理(以後、タイマクリーニングと呼ぶ)を実施する機構を備えているものがある(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開平10−146993号公報(図2等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、上述の従来技術においては、温度センサ、湿度センサを備える必要があり、製造コストが高くなる。また、主電源が切断されているときの温度・湿度を計測するための副電源を備える場合には、副電源のコストや、電力消費量が多くなる。
しかも、タイマクリーニングが不成功になる可能性が高い条件でタイマクリーニングを実施して、インクを無駄に消費する場合があるという問題がある。
さらに、温度センサ、湿度センサを備えていても、経過した時間内での温度、湿度の変化の組み合わせは無限にあるため、最適なタイマクリーニングを選択することは極めて困難である。そこで、温度センサ、湿度センサを持たずに、経過時間に応じてタイマクリーニングを選択することが考えられる。ここで、温度、湿度条件がわからないので、使用環境から考えられるワースト条件、例えば、高温低湿である摂氏40度(℃)湿度10パーセント(%)において、増粘インクを除去するようにタイマクリーニングのパラメータは設定されるのが一般的である。この場合、実際の使用環境が摂氏10度(℃)湿度80パーセント(%)のような低温多湿状態では、インクはほとんど増粘しないため、無駄にタイマクリーニングが行われることになる。
【0004】
そこで本発明は上記課題を解消し、タイマクリーニングの結果をフィードバックすることによって、温度、湿度を計測することなく最適なタイマクリーニングを実施することができる液体噴射装置及び液体噴射装置のタイマクリーニング方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の目的は、本発明にあっては、液体を噴射する液体噴射ヘッドと、前記液体噴射ヘッドのノズル開口から前記液体を排出する排出量が異なる複数の排出モードと、各前記排出モードの少なくとも適用開始時間で規定される適用時間範囲を含むタイマクリーニング条件を格納するタイマクリーニング条件格納手段と、基準時からの経過時間を計測する計時手段と、前記経過時間に基づいて、前記複数の排出モードから1つの前記排出モードを選択して前記液体の排出を実行することによって、前記液体噴射ヘッドのタイマクリーニングを行うタイマクリーニング手段と、前記液体噴射ヘッドから前記液体が正常に噴射されない状態である噴射不良を検出する噴射不良検出手段と、前記タイマクリーニング手段による各前記排出モードごとの前記タイマクリーニングの回数、前記タイマクリーニング手段による前記タイマクリーニングが成功した回数、及び、前記タイマクリーニング手段による前記タイマクリーニングが失敗した回数のうち、少なくとも2つを記録するタイマクリーニング結果記録手段と、前記タイマクリーニング結果記録手段が記録した、前記タイマクリーニングの回数、前記タイマクリーニングが成功した回数、及び、前記タイマクリーニングが失敗した回数のうち、少なくとも2つに基づいて、タイマクリーニング成功率又はタイマクリーニング失敗率を算出するタイマクリーニング評価手段と、前記タイマクリーニング成功率又は前記タイマクリーニング失敗率に基づいて、前記タイマクリーニング条件を変更するタイマクリーニング条件変更手段と、を有することを特徴とする液体噴射装置により、達成される。
【0006】
このような構成によって、前記液体噴射装置は、前記タイマクリーニング成功率を算出することができるから、前記タイマクリーニング成功率が低い場合には、前記タイマクリーニング条件を変更し、例えば、各前記排出モードの排出量を多くするなどの制御をすることができる。
これにより、タイマクリーニングの結果をフィードバックすることによって、温度、湿度を計測することなく最適なタイマクリーニングを実施することができる。
【0007】
本発明では、前記タイマクリーニング条件変更手段は、前記タイマクリーニング条件の変更として、各前記排出モードの前記タイマクリーニング成功率が成功率許容範囲外である場合又は各前記排出モードの前記タイマクリーニング失敗率が失敗率許容範囲外である場合には、前記成功率許容範囲外又は前記失敗率許容範囲外である前記タイマクリーニング成功率又は前記タイマクリーニング失敗率に対応する各前記排出モードの前記排出量を多くする構成となっていることが望ましい。
【0008】
このように構成することで、前記タイマクリーニング成功率が前記成功率許容範囲外である場合又は各前記排出モードの前記タイマクリーニング失敗率が失敗率許容範囲外である場合には、前記排出量を多くするから、前記タイマクリーニング成功率を高くすること又は前記タイマクリーニング失敗率を低くすることができ、その結果として、成功しない前記タイマクリーニングを未然に防止し、前記液体を無駄に消費することを回避することができる。
さらに、上述のように前記タイマクリーニング成功率によって、前記クリーニング条件を変更するから、基本となる前記排出モードは少なくてもよく、例えば3つで足りる。このため、前記液体噴射装置が、前記クリーニング条件を記憶するための記憶容量は少なくて足りる。
【0009】
本発明では、前記タイマクリーニング条件変更手段は、前記タイマクリーニング条件の変更として、各前記排出モードの前記タイマクリーニング成功率が成功率許容範囲内である場合又は各前記排出モードの前記タイマクリーニング失敗率が失敗率許容範囲内である場合には、前記成功率許容範囲内又は前記失敗率許容範囲内である各前記排出モードの前記排出量を少なくする構成となっていることが望ましい。
【0010】
このように構成することで、前記タイマクリーニング成功率が前記成功率許容範囲内である場合又は各前記排出モードの前記タイマクリーニング失敗率が失敗率許容範囲内である場合には、前記排出量を少なくするから、前記液体を節約しつつ、前記タイマクリーニングを成功させることができる。
【0011】
本発明では、前記タイマクリーニング条件は、前記液体の排出量が少ない前記排出モードである先行排出モードの前記適用時間範囲と、前記適用時間範囲が前記基準時からの経過時間が前記先行排出モードの後であって前記液体の排出量が前記先行排出モードよりも多い前記排出モードである後続排出モードの前記適用時間範囲とが連続するように設定されており、前記タイマクリーニング条件変更手段は、前記タイマクリーニング条件の変更として、前記先行排出モードの前記タイマクリーニング成功率が成功率許容範囲外である場合又は前記先行排出モードの前記タイマクリーニング失敗率が失敗率許容範囲外である場合には、前記先行排出モードと前記後続排出モードの前記適用時間範囲の境界時間を、前記基準時からの経過時間が短くなるように変更する構成となっていることが望ましい。
【0012】
このように構成することで、前記先行排出モードにおける前記タイマクリーニングの成功率が前記成功率許容範囲外である場合又は前記先行排出モードの前記タイマクリーニング失敗率が失敗率許容範囲外である場合には、前記境界時間を前記基準時からの経過時間が短くなるように変更する。これは、前記先行排出モードよりも前記液体の排出量が多い前記後続排出モードの前記適用開始時間を前記基準時を基準として早めることを意味する。
このため、前記タイマクリーニング成功率を高くすることができ、その結果として、成功しない前記タイマクリーニングを未然に防止し、前記液体を無駄に消費することを回避することができる。
【0013】
本発明では、前記タイマクリーニング条件は、前記液体の排出量が少ない前記排出モードである先行排出モードの前記適用時間範囲と、前記適用時間範囲が前記基準時からの経過時間が前記先行排出モードの後であって前記液体の排出量が前記先行排出モードよりも多い前記排出モードである後続排出モードの前記適用時間範囲とが連続するように設定されており、
前記タイマクリーニング条件変更手段は、前記タイマクリーニング条件の変更として、前記先行排出モードの前記タイマクリーニング成功率が成功率許容範囲内である場合又は前記先行排出モードの前記タイマクリーニング失敗率が失敗率許容範囲内である場合には、前記境界時間を、前記基準時からの経過時間が長くなるように変更する構成となっていることが望ましい。
【0014】
このように構成することで、前記先行排出モードの前記タイマクリーニングの成功率が前記成功率許容範囲内である場合又は前記先行排出モードの前記タイマクリーニング失敗率が前記失敗率許容範囲内である場合には、前記境界時間を、前記基準時からの経過時間が長くなるように変更する。これは、前記先行排出モードの前記適用時間範囲が長くなり、前記先行排出モードよりも前記液体の排出量が多い前記後続排出モードの前記適用開始時間が前記基準時を基準として遅くなることを意味する。
このため、前記液体を節約しつつ、前記タイマクリーニングを成功させることができる。
【0015】
本発明では、前記タイマクリーニング条件の変更前の前記タイマクリーニング成功率と、前記タイマクリーニング条件の変更後の各前記排出モードごとの前記タイマクリーニング成功率を比較するタイマクリーニング成功率比較手段を有し、前記タイマクリーニング条件変更手段は、前記比較結果に基づいて、前記タイマクリーニングの変更後の前記タイマクリーニング条件を維持する、又は、前記タイマクリーニング変更前の前記タイマクリーニング条件を変更する構成となっていることが望ましい。
【0016】
このように構成することで、前記タイマクリーニングの変更の妥当性を検証し例えば、前記タイマクリーニングの成功率が低下した場合には、前記タイマクリーニングを元のタイマクリーニング条件に戻すことができる。
【0017】
本発明では、前記タイマクリーニング条件の変更前の前記タイマクリーニング失敗率と、前記タイマクリーニング条件の変更後の各前記排出モードごとの前記タイマクリーニング失敗率を比較するタイマクリーニング失敗率比較手段を有し、前記タイマクリーニング条件変更手段は、前記比較結果に基づいて、前記タイマクリーニングの変更後の前記タイマクリーニング条件を維持する、又は、前記タイマクリーニング変更前の前記タイマクリーニング条件を変更する構成となっていることが望ましい。
【0018】
このように構成することで、前記タイマクリーニングの変更の妥当性を検証し例えば、前記タイマクリーニングの失敗率が上昇した場合には、前記タイマクリーニングを元のタイマクリーニング条件に戻すことができる。
【0019】
本発明では、前記タイマクリーニング結果記録手段は、各前記排出モードの前記適用時間範囲の一部であって適用終了時間を含む限定時間範囲についての、前記タイマクリーニング手段による各前記排出モードごとの前記タイマクリーニングの回数、前記タイマクリーニング手段による前記タイマクリーニングが成功した回数、及び、前記タイマクリーニング手段による前記タイマクリーニングが失敗した回数のうち、少なくとも2つを記録する構成となっていることが望ましい。
【0020】
このように構成することで、前記タイマクリーニング評価手段は、前記境界時間の近傍である前記限定時間範囲における前記タイマクリーニング手段による各前記排出モードごとの前記タイマクリーニングの回数等に基づいて、前記タイマクリーニングの成功率又は、前記タイマクリーニングの失敗率を算出することができる。
これにより、前記境界時間の妥当性をより効率的に判断することができる。
【0021】
本発明では、前記タイマクリーニング結果記録手段は、前記先行排出モードの前記適用時間範囲の一部であって適用終了時間を含む先行限定時間範囲、及び、前記後続排出モードの前記適用時間範囲の一部であって前記適用開始時間を含む後続限定時間範囲についての、前記タイマクリーニング手段による各前記排出モードごとの前記タイマクリーニングの回数、前記タイマクリーニング手段による前記タイマクリーニングが成功した回数、及び、前記タイマクリーニング手段による前記タイマクリーニングが失敗した回数のうち、少なくとも2つを記録する構成となっており、前記タイマクリーニング条件変更手段は、前記先行排出モード及び前記後続排出モードの、前記タイマクリーニング成功率又は前記タイマクリーニング失敗率に基づいて、前記タイマクリーニング条件を変更する構成となっていることが望ましい。
【0022】
このように構成することで、前記タイマクリーニング条件変更手段は、前記先行排出モード及び前記後続排出モードの双方の前記タイマクリーニング成功率又は前記タイマクリーニング失敗率に基づいて、前記タイマクリーニング条件を変更することができるから、よりきめ細かく適切に前記タイマクリーニング条件を変更することができる。
【0023】
前記目的は、本発明によれば、液体を噴射する液体噴射ヘッドと、前記液体噴射ヘッドのノズル開口から前記液体を排出する排出量が異なる複数の排出モードと、前記各排出モードの少なくとも適用開始時間で規定される適用時間範囲を含むタイマクリーニング条件を格納するタイマクリーニング条件格納手段と、基準時からの経過時間を計測する計時手段と、前記経過時間に基づいて、前記複数の排出モードから1つの前記排出モードを選択して前記液体の排出を実行することによって、前記液体噴射ヘッドのタイマクリーニングを行うタイマクリーニング手段と、を有する液体噴射装置が、前記液体噴射ヘッドから前記液体が正常に噴射されない状態である噴射不良を検出する噴射不良検出ステップと、前記液体噴射装置が、前記タイマクリーニング手段による前記タイマクリーニングの回数、前記タイマクリーニング手段による前記タイマクリーニングが成功した回数、及び、前記タイマクリーニング手段による前記タイマクリーニングが失敗した回数のうち、少なくとも2つを記録するタイマクリーニング結果記録ステップと、前記液体噴射装置が、前記タイマクリーニング結果記録ステップにおいて記録した、前記タイマクリーニングの回数、前記タイマクリーニングが成功した回数、及び、前記タイマクリーニングが失敗した回数のうち、少なくとも2つに基づいて、タイマクリーニング成功率又はタイマクリーニング失敗率を算出するタイマクリーニング評価ステップと、前記液体噴射装置が、前記タイマクリーニング成功率又は前記タイマクリーニング失敗率に基づいて、前記タイマクリーニング条件を変更するタイマクリーニング条件変更ステップと、を有することを特徴とする液体噴射装置のタイマクリーニング方法によって達成される。
【0024】
このような構成によって、タイマクリーニングの結果をフィードバックすることによって、温度、湿度を計測することなく最適なタイマクリーニングを実施することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の好適な実施の形態を図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態であるインクジェット式記録装置10等を示す概略図である。
図1に示すインクジェット式記録装置10は、インクジェットプリンタとも呼んでいる。インクジェット式記録装置10は、本体部1を有している。この本体部1は、ガイドレール17、プラテン12、キャリッジ14、インク吸引装置20、記録ヘッド30を備えている。記録ヘッド30は、液体を噴射する液体噴射ヘッドの一例であり、印刷ヘッドとも言う。
【0026】
図1に示すインクジェット式記録装置10は、いわゆるオンキャリッジ型の記録装置であり、キャリッジ14の上部には、複数のインクカートリッジ2,3,4及び5が着脱可能に装着できる構成となっている。インクカートリッジ2等には、液体の一例であるインクが格納されている。キャリッジ14の下部には、記録ヘッド30が設けられている。記録ヘッド30が、用紙29に対面するノズルプレート面30aには、インクを噴射(以後、吐出とも呼ぶ)するためのノズル開口が設けられている。
【0027】
キャリッジ14は、ベルト15を介してモータ16に接続されている。モータ16が作動することによって、キャリッジ14はガイドレール17に沿ってプラテン12の軸方向である主走査方向Tに往復走行する。記録ヘッド30からインクを吐出しつつ、キャリッジ14が主走査方向Tに往復走行することで、記録媒体の一例である用紙29上に画像が記録される。
【0028】
ガイドレール17の一方の端部にはホームポジション18が配置されている。このホームポジション18は、キャリッジ14の走行経路の末端にある非印刷領域である。このホームポジション18には、本体部1の上にインク吸引装置20が配置されている。このインク吸引装置20は、キャッピングシステムもしくはキャッピング手段とも呼んでいる。図1のキャリッジ14の記録ヘッド30は、T1方向に沿ってホームポジション18に移動することで、インク吸引装置20のキャップ本体21に対面する。そして、インク吸引装置20は、記録ヘッド30のノズル開口が設けられているノズル面30aに密着する。
【0029】
インク吸引装置20は、記録ヘッド30に密着した状態で、記録ヘッド30のノズル開口のインクの乾燥を防止する機能と、吸引ポンプ19からの負圧をノズル開口に作用させてノズル開口からインクを強制的に吸引して排出させる機能を備える。すなわち、インク吸引装置20は、記録ヘッド30のノズル開口からインクを吸引することによって記録ヘッド30のクリーニングを行う。
この他に、インク吸引装置20の横には、ワイピング部材23が設けられている。このワイピング部材23は、必要に応じて記録ヘッド30のノズルプレート面30aのインクを払拭する。
【0030】
上述のクリーニングには、画像を記録している最中に実施するクリーニングのほかに、所定の基準時からの経過時間に基づいて実施されるタイマクリーニングも含む。このタイマクリーニングについては、後述する。
【0031】
図1に示すように、キャリッジ14には吐出不良検出装置8が配置されている。この吐出不良検出装置8は、記録ヘッド30からインクが正常に噴射されない状態である噴射不良を検出する噴射不良検出手段の一例である。
図2は、吐出不良検出装置8の構成の一例を示す概略断面図である。
図3は、テストパターン等の一例を示す図である。図3(a)は、テストパターンを示し、図3(b)及び図3(c)は用紙29に印刷された記録パターン像を示している。
【0032】
吐出不良検出の指令を受けたインクジェット式記録装置10は、記録ヘッド30からインクを吐出して、用紙29上に、図3(a)に示す、あらかじめ定められたテストパターンPT1の印刷を行う。
【0033】
次に、吐出不良検出装置8で、用紙29上に実際に印刷されたテストパターン像を読み取る。具体的には、図2に示す、光源8aからの照明光をレンズ8bで略平行光にして用紙29を照明し、印刷されたテストパターン像PT11の像はレンズ8cによってCCD素子8dに投影される。
【0034】
CCD素子8dに投影されたテストパターン像を図示しないテストパターン像解析部で解析し、図3(b)のPT2のように、図3(a)のテストパターンPT1と同じであれば、吐出不良はないと判断する。テストパターン解析部は、図3(c)のPT3のように、図3(a)のテストパターンと比較して、欠落部116があれば、その欠落部116に対応するノズル開口においてドット抜け等の吐出不良があると判断する。
【0035】
なお、本実施の形態とは異なり、吐出不良検出装置として、記録ヘッド30の各ノズル開口から吐出されるインクにそれぞれ、直接に赤外線等の光を照射し、インクがその光をさえぎるか否かを検出することによって、ドット抜けを検出する構成としてもよい。すなわち、光がさえぎられれば、検出対象のノズル開口からインクが吐出されていると判断し、光がさえぎられなければ、検出対象のノズル開口からインクが吐出されておらず、ドット抜けがあると判断する構成としてもよい。
【0036】
なお、図1の実施形態では、複数のインクカートリッジ2,3,4及び5が、キャリッジ14の上に直接搭載されているが、これに限らずインクカートリッジ2,3,4及び5がキャリッジ14とは別の位置に搭載されている、いわゆるオフキャリッジ型のインクジェット式記録装置を採用しても勿論構わない。
【0037】
図4は、インクジェット式記録装置10の電気的な接続例を示す概略図である。
インクジェット式記録装置10の制御装置7は、ローカルプリンタケーブルまたは通信ネットワークを介してホストコンピュータ80のプリンタドライバ81に接続されている。プリンタドライバ81は、インクジェット式記録装置10に対して印刷やクリーニング動作あるいはインク吸引動作を実行させるためのコマンドを送るソフトウェアを搭載している。
【0038】
図4に示すインクジェット式記録装置10は、制御装置7の他に、吐出不良検出装置8、インク吸引装置20、インクカートリッジ2,3,4及び5、記録ヘッド30、キャリッジ駆動装置25を含んでいる。キャリッジ駆動装置25は、図1のモータ16である。
【0039】
図4に示すように、制御装置7は、各種情報を記憶する記憶部72、各種演算を実施する計算部74及び、クリーニングを制御するCL制御部76、時間を計測する計時部78を含む。
記憶部72は、後述するタイマクリーニングテーブルを格納している。
【0040】
図5は、タイマクリーニングテーブル等の一例を示す図である。
図5(a)に示すように、記憶部72が格納しているタイマクリーニングテーブルは、インクの排出量が異なる複数のタイマクリーニングモードであるフラッシングモード、第1TCL(time cleaning)モード、第2TCLモード及び第3TCLモードを含むタイマクリーニングモードを含む。フラッシングモードにおいては、記録ヘッド30のノズル開口からインクが吐出され、第1TCLモード、第2TCLモード及び第3TCLモードにおいては、記録ヘッド30のノズル開口からインクが吸引される。上述の
フラッシングモード、第1TCLモード等は、排出モードの一例である。
【0041】
図5(b)に示すように、フラッシングモードにおいては、20000segで例えば、合計0.5グラム(g)のインクが吐出される。ここで、segとは、吐出の1単位である。フラッシングモードにおいては、印刷とは無関係に、記録ヘッド30のノズル開口から強制的にインクを吐出することによって、記録ヘッド30のノズル開口の目詰まりを解消する動作が実施される。
第1TCLモードにおいては例えば、1.5グラム(g)のインクがインク吸引装置20によって吸引されることによって、記録ヘッド30のノズル開口の目詰まりが解消される。
【0042】
第2TCLモードにおいては、図5(b)に示すように、第1TCLモードよりも多い吸引量である例えば、2.5グラム(g)のインクがインク吸引装置20によって吸引される。
第3TCLモードにおいては、図5(b)に示すように、第2TCLモードよりも多い吸引量である例えば、3.5グラム(g)のインクがインク吸引装置20によって吸引される。
【0043】
図5(a)に示すように、タイマクリーニングテーブルは、各タイマクリーニングモードが適用される適用時間範囲の一例であるCLタイマを含む。
各タイマクリーニングモードは、CLタイマが規定されており、CLタイマは、以下に説明するように、少なくとも適用開始時間で規定されている。
フラッシングモードは例えば、適用開始時間が基準時からの経過時間が0時間(h)であり、適用終了時間が30時間(h)である。第1TCLモードは例えば、適用開始時間が30時間(h)であり、適用終了時間が82時間(h)である。第2TCLモードは例えば、適用開始時間が82時間(h)であり、適用終了時間が336時間(h)である。第3TCLモードの適用開始時時間は、336時間(h)である。
したがって、例えば、第1TCLモードは、記録ヘッド30からインクを用紙29に対して前回吐出した前回吐出時からの経過時間が、30時間(h)以上82時間(h)未満の場合に適用される。この前回吐出時は、基準時の一例である。
前回吐出時からの経過時間は、計時部78によって計測される。すなわち、計時部78は、計時手段の一例である。
そして、CL制御部76は、前回吐出時からの経過時間に基づいて、複数のタイマクリーニングモードから1つのタイマクリーニングモードを選択してインクの排出を実行することによって、記録ヘッド30のタイマクリーニングを行うようになっている。すなわち、CL制御部76は、タイマクリーニング手段の一例である。
【0044】
なお、本実施の形態とは異なり、基準時からの経過時間は、前回のクリーニング終了時からの経過時間、前回のフラッシング終了時からの経過時間、前回のクリーニングからの累積経過時間など、インクの増粘に関する他の時間であってもよい。
【0045】
図5(a)に示すように、タイマクリーニングテーブルは、前回吐出時を基準として、インク吸引量が多いタイマクリーニングモードが吸引量の少ないモードの後になるようにフラッシングモード、第1TCLモード、第2TCLモード、第3TCLモードの順にCLタイマが構成されており、各CLタイマは連続するように構成されている。
例えば、第1TCLモードと第2TCLモードに着目すると、第1TCLモードのCLタイマが前回吐出時を基準として先になっている。この場合、第1TCLモードが先行排出モードの一例であり、第2TCLモードが後続排出モードの一例である。
各タイマクリーニングモードにおけるインク吐出量又はインク吸引量、及び各タイマクリーニングを選択するための適用時間範囲は、タイマクリーニング条件の一例である。そして、記憶部72は、タイマクリーニング条件格納手段の一例である。
【0046】
上述のように、第1TCLモードにおけるインク吸引量よりも第2TCLモードにおけるインク吸引量が多く、第2TCLモードにおけるインク吸引量よりも第3TCLモードにおけるインク吸引量が多い。これは、第1TCLモードよりも第2TCLモードの方が強力なクリーニングであって、吐出不良の解決能力が高く、第2TCLよりも第3TCLモードの方がさらに強力なクリーニングであって、吐出不良の解決能力が高いことを意味する。CLタイマ時間tが大きいほど記録ヘッド30内のインクは増粘している可能性が大きく、それに対応するタイマクリーニングモードは、吐出不良の解決能力が高いものが必要になる。本実施の形態においては、第3TCLモードが最も吐出不良の解決能力が高いから、すべて第3TCLモードにすることも考えられる。しかし、タイマクリーニングとしては、インク吸引量が少なく、かつ、吐出不良を確実に解決できることが望ましいので、経過時間に応じて吐出不良の解決能力が異なる複数のモードを持っている。
そこで、以下に説明するように、インクジェット式記録装置10は、タイマクリーニングの成功率に応じて、各タイマクリーニングモードのインク吸引量を変更する。
【0047】
図6、図7、図8、図9及び図10は、インクジェット式記録装置10の動作例を示す概略フローチャートである。
記録ヘッド30のタイマクリーニングに際して、インクジェット式記録装置10は、まず、タイマクリーニング前設定を行う(図6のステップST1)。
このステップST1の詳細を図7を使用して説明する。タイマクリーニング前設定として、インクジェット式記録装置10は、まず、第1TCLモード等のタイマクリーニング成功率Rclnを計算する(図7のステップST101)。ここで、Rclnのnはクリーニングモードを表し例えば、フラッシングモードであればRclf、第1TCLモードであればRcl1、第2TCLモードであればRcl2である。後述の、Ncln、Fclnについても同様である。
このステップST101の詳細を図8を使用して説明する。
【0048】
まず、インクジェット式記録装置10は、フラッシングモード、第1TCLモード、第2TCLモード、第3TCLモードのそれぞれについて、タイマクリーニング回数Nclnが5回以上か否かを判断する(ステップST201)。第1TCLモード等ごとのタイマクリーニング回数Nclnは、記憶部72に記憶されている。
【0049】
タイマクリーニング回数Nclnが5回以上であれば、後述のタイマクリーニング成功率Rclnの信頼性があるが、5回未満であれば、基礎データの数としては不足であり、タイマリーニング成功率Rclnの信頼性は不十分であるから、インクジェット式記録装置10は、5回未満のタイマクリーニング回数Rclnに対応するタイマクリーニングモードについては、クリーニング成功率Rclnを計算しない。すなわち、5回というタイマクリーニング回数Nclnは、信頼性が十分なタイマクリーニング成功率Rclnを算出するための必要回数の一例である。
【0050】
続いて、インクジェット式記録装置10は、タイマクリーニング成功率Rclnを計算する(ステップST202)。ステップST202は、タイマクリーニング成功率算出ステップの一例である。
なお、タイマクリーニング成功回数Fclnは、タイマクリーニング終了後に吐出不良検出装置8によって、フラッシングモード、第1TCLモード、第2TCLモード、第3TCLモードの各タイマクリーニングモードごとに、タイマクリーニングが成功であると判断された場合に、記憶部72に記憶されている。
このように、記憶部72は、タイマクリーニング回数Ncln及びタイマクリーニング成功回数Fclnも記録する。すなわち、記憶部72は、クリーニング結果記録手段の一例である。
【0051】
計算部74は、記憶部72に記憶されている例えば、第1TCLモードのタイマクリーニング回数Ncl1と第1TCLモードのタイマクリーニング成功回数Fcl1に基づいて、第1TCLモードのタイマクリーニング成功率Rcl1を算出する。すなわち、計算部74は、タイマクリーニング評価手段の一例である。
計算部74が算出した各タイマクリーニングモードごとのタイマクリーニング成功率Rclnは吸引量とともに、記憶部74に記憶される。
【0052】
上述のようにして、第1TCLモード等ごとのタイマクリーニング成功率Rclnが算出されると(図7のステップST101)、インクジェット式記録装置10は、クリーニング成功率Rclnが80パーセント(%)未満であるか否かを判断する(ステップST102)。タイマクリーニング成功率Rclnが80%以上であれば、タイマクリーニングの成功率が十分に高く、インク吸引量を減少させてもなお、タイマクリーニングが成功すると考えられる。このタイマクリーニング成功率Rclnが80パーセント%以上の範囲が、タイマクリーニング成功率許容範囲内の一例である。
なお、タイマクリーニング成功率Rclnが80パーセント%以上ということは、タイマクリーニング失敗率が20パーセント(%)未満であるということである。したがって、タイマクリーニング失敗率が20パーセント(%)未満の範囲が、タイマクリーニング失敗率許容範囲内の一例である。
【0053】
そして、計算部74は、例えば、第1TCLモードのクリーニング成功率Rcl1が80パーセント(%)未満であれば、第1TCLモードにおけるインクの吸引量を5パーセント(%)増加させる(ステップST103)。
タイマクリーニング成功率Rclnが80パーセント(%)未満である場合には、対応する各タイマクリーニングモードのインク吸引量を多くするから、次回そのタイマクリーニングモードで実施されるタイマクリーニングが成功する確立を高くすることができ、その結果として、成功しないタイマクリーニングを未然に防止し、インクを無駄に消費することを回避することができる。
さらに、上述のようにタイマクリーニング成功率Rclnによって、タイマクリーニング条件を変更するから、基本となるタイマクリーニングモードは少なくてもよく、例えば4つで足りる。このため、インクジェット式記録装置10が、タイマクリーニング条件を記憶するための記憶容量は少なくて足りる。
なお、本実施の形態とは異なり、基本となるタイマクリーニングモードは、2つ又は3つでもよい。
【0054】
そして、計算部74は例えば、記憶部72の第1TCLモードのタイマクリーニング回数Ncl1を0に設定し、第1TCLモードのタイマクリーニング回数Fcl1を0に設定する(ステップST104)。
なお、ステップST104においては、記憶部72にインク吸引量変更前のインク吸引量及び、インク吸引量変更前のタイマクリーニング成功率Rclnを記録した後に、記憶部72の第1TCLモードのタイマクリーニング回数Ncl1を0に設定し、第1TCLモードのタイマクリーニング回数Fcl1を0に設定する。
ステップST104は、新たなインク吸引量における例えば、第1TCLモードを開始するための初期設定をするステップである。
【0055】
一方、計算部74は、例えば、第1TCLモードのタイマクリーニング成功率Rcl1が80パーセント(%)以上であれば、第2TCLモードにおけるインクの吸引量を5%減少させる(ステップST113)。インクの吸引量が多いほど、吐出不良を解決できる可能性は高いが、クリーニング成功率Rcl1が80パーセント(%)以上であれば、インクの吸引量が、第2TCLモードにおけるタイマクリーニングが成功するための必要十分な量よりも多い場合がある。例えば、吸引量が、上述のように、環境条件のワーストである高温多湿の条件に基づいて設定されている場合には、使用環境がインクがより増粘しにくい常温常湿や多湿状態では、もっと、インク吸引量を減少させても、クリーニングが成功する可能性がある。
このため、次回実施する第1TCLモードのタイマクリーニングのインク吸引量を減少させつつ、クリーニングの成功を期待し得る。
このように、タイマクリーニング成功率Rclnが成功率許容範囲内の一例である80パーセント(%)以上である場合には、各タイマクリーニングモードのインク吸引量を少なくするから、インクを節約しつつ、タイマクリーニングを成功させることができる。
【0056】
そして、計算部74は、記憶部72の第1TCLモードのタイマクリーニング回数Ncl1を0に設定し、第1TCLモードのタイマクリーニング回数Fcl1を0に設定する(ステップST104)。
上述のように、計算部74は、タイマクリーニング条件を変更する。すなわち、計算部74は、タイマクリーニング条件変更手段の一例である。そして、ステップST103及びステップST113が、タイマクリーニング条件変更ステップの一例である。
【0057】
インクジェット式記録装置10は、上述のようにしてタイマクリーニング前設定を行うと(図6のステップST1)、新たに設定した例えばタイマクリーニングテーブルでタイマクリーニングを実施する(ステップST2)。
このステップST2の詳細を図9を使用して、説明する。
まず、インクジェット式記録装置10のCL制御部76は、記録ヘッド30のノズル開口から用紙29に対してインクを前回に吐出した前回吐出時からの経過時間に基づいて、複数のタイマクリーニングモードから1つのタイマクリーニングモードを選択する(ステップST301)。
例えば、記憶部72に格納されているタイマクリーニングテーブルが、図5(a)に示す通りであって、直近のインク吐出時からの経過時間が40時間(h)であれば、その経過時間に基づいて、CL制御部76は第1TCLモードを選択し、以下のようにタイマクリーニングを実施する。
【0058】
まず、図1の記録ヘッド30にキャップ本体21を密接させ、キャップ本体21を閉鎖する(図9のステップST302)。
続いて、CL制御部76は、図1の吸引ポンプ19を駆動し、記録ヘッド30のノズル開口からインクを吸引する(ステップST303)。
【0059】
続いて、CL制御部76は、吸引ポンプ19の駆動を停止し(ステップST304)、負圧解除時間である例えば、3秒(s)の経過を待つ(ステップST305)。この負圧解除時間は、吸引ポンプ19の駆動停止直後は負圧になっているキャップ本体21内の気圧が、大気圧とほぼ等しくなるまでの時間である。
【0060】
続いて、CL制御部76は、キャップ本体21を開放し(ステップST306)、吸引ポンプ19を駆動してキャップ本体21のインクを排出する(ステップST307)。続いて、CL制御部76は、ワイピング部材23によってワイピングを行い、記録ヘッド30のノズルプレート面30aを払拭する(ステップST308)。
【0061】
インクジェット式記録装置10は、上述のようにしてタイマクリーニングを実施すると(図6のステップST2)、タイマクリーニング回数Nclnをタイマクリーニングの種類ごとに加算する(ステップST3)。例えば、第1TCLでタイマクリーニングを一度実施した場合には、第1TCLのクリーニング回数Ncl1を1回加算し、加算後のクリーニング回数Ncl1を記憶部72に記憶する。上述のように、この記憶部72はタイマクリーニング回数記録手段の一例である。そして、このステップST3は、タイマクリーニング回数記録ステップの一例である。
なお、記憶部72が記憶しているクリーニング回数Nclnは、第1TCLモード、第2TCLモード、第3TCLモードの現在の吸引量の回数を示す。すなわち、例えば、現在の第1TCLモードのインク吸引量が、1.5グラム(g)ではなくて、2.0グラム(g)に変更されていれば、変更後の2.0グラム(g)における第1TCLモードのタイマクリーニング回数だけを示している。
【0062】
続いて、インクジェット式記録装置10は、記録ヘッド30のノズル開口からの吐出不良を検出する(ステップST4)。このステップST4は、噴射不良検出ステップの一例である。
続いて、インクジェット式記録装置10は、吐出不良があるか否かを判断し(ステップST5)、吐出不良がなければ、タイマクリーニング成功回数Fclnをタイマクリーニングの各モードごとに加算する(ステップST6)。例えば、第1TCLモードのタイマクリーニングを一度実施してそのタイマクリーニングが成功した場合には、第1TCLモードのタイマクリーニング成功回数Fcl1を1回加算し、加算後のタイマクリーニング成功回数Fcl1を記憶部72に記憶する。上述のように、この記憶部72はタイマクリーニング成功回数記録手段の一例である。そして、このステップST6は、タイマクリーニング成功回数記録ステップの一例である。
これに対して、ステップST5において、インクジェット式記録装置10が、吐出不良があると判断した場合には、吐出不良が回復するまでタイマクリーニングとは異なる通常のクリーニングをする(ステップST51)。
【0063】
続いて、インクジェット式記録装置10は、上述のステップST2におけるタイマクリーニングを実施する前にタイマクリーニング条件を変更したか否かを判断し(ステップST7)、タイマクリーニング条件を変更したと判断した場合には、ステップST71に進む。ステップST71においては、インクジェット式記録装置10は、タイマクリーニング条件変更前のタイマクリーニング成功率Rclnと、タイマクリーニング条件変更後のタイマクリーニング成功率Rclnとを比較して、タイマクリーニング条件を維持又は変更する。
【0064】
このステップST71の詳細を図10を使用して説明する。
インクジェット式記録装置10の計算部74は、まず、記憶部72に記憶されている、タイマクリーニング条件変更後の例えば、各タイマクリーニングモードによるタイマクリーニング回数Nclnが、5回以上であるか否かを判断する(図10のステップST401)。
【0065】
計算部74は、タイマクリーニング回数Nclnが5回以上であると判断すると、Nclnが5回以上であるタイマクリーニングモードである例えば、第1TCLモードについて、吸引量変更後のタイマクリーニング成功率Rcl1を計算する(ステップST402)。計算部74が算出したタイマクリーニング条件変更後のタイマクリーニング成功率Rcl1は、記憶部72に記憶される。
【0066】
続いて、計算部74は、記憶部72に記憶されている吸引量変更後のクリーニング成功率Rcl1が、吸引量変更前のタイマクリーニング成功率Rcl1以上か否かを判断する(ステップST403)。すなわち、計算部72は、タイマクリーニング成功率比較手段の一例である。
【0067】
計算部74は、記憶部72に記憶されている吸引量変更後のクリーニング成功率Rcl1が、吸引量変更前のクリーニング成功率Rcl1以上であると判断した場合には、吸引量変更後のタイマクリーニング条件を維持する。
【0068】
これに対して、計算部74は、記憶部72に記憶されている吸引量変更後のタイマクリーニング成功率Rcl1が、吸引量変更前のタイマクリーニング成功率Rcl1以上ではないと判断した場合には、吸引量変更前の吸引量に戻す(ステップST404)。
そして、計算部74は、記憶部72に記憶されているNcl1を0、Fcl1を0に設定する(ステップST405)。このステップST405は、新たなタイマクリーニング条件における、今後のNcl1及びFcl1を算出するための初期設定である。
【0069】
このような構成によって、インクジェット式記録装置10は、タイマクリーニング成功率Rclnを算出することができるから、タイマクリーニング成功率Rclnが低い場合には、インク吸引量を変更し、例えば、各タイマクリーニングモードのインク吸引量を多くするなどの制御をすることができる。
【0070】
なお、インク吸引量の変更は1度だけではなく、変更の条件に合致する限り、継続的に行われる。例えば、第3TCLモードのタイマクリーニング成功率Rcl3が80パーセント(%)以上のとき、図5(b)の吸引量3.5グラム(g)から10パーセント(%)削減され、3.15グラム(g)となる。このインク吸引量でもタイマクリーニング成功率Rcl3が80パーセント(%)以上であれは、さらに10パーセント(%)削減され、2.84グラム(g)となり、当初のインク吸引量から0.66グラム(g)の削減となる。これらを繰り返すことにより、使用環境に応じたインク吸引量に自動的に設定されていくことになる。
これにより、タイマクリーニングの結果をフィードバックすることによって、温度、湿度を計測することなく最適なタイマクリーニングを実施することができる。
【0071】
また、本実施の形態とは異なり、タイマクリーニングは、記録ヘッド30内のインクの加圧などの手段も含むようにしてもよい。
【0072】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態のインクジェット式記録装置10A(図1参照)について説明する。第2の実施形態のインクジェット式記録装置10Aの構成は、上記第1の実施形態のインクジェット式記録装置10と多くの構成が共通するため共通する部分は同一の符号等とし、説明を省略し、以下、相違点を中心に説明する。
【0073】
第2の実施形態のインクジェット式記録装置10Aのハードウエア構成及び電気的接続例は、上記第1の実施形態のインクジェット式記録装置10と同様である(図1乃至図4参照)が、インクジェット式記録装置10Aが実施するタイマクリーニングにおける動作がインクジェット式記録装置10とは異なるから、以下、インクジェット式記録装置10Aの動作例について説明する。
【0074】
図11、図12及び図13は、インクジェット式記録装置10Aの動作例を示す概略フローチャートである。
記録ヘッド30のタイマクリーニングに際して、インクジェット式記録装置10Aは、まず、タイマクリーニング前設定を行う(図11のステップST1A)。
このステップST1Aの詳細を図12を使用して説明する。
【0075】
タイマクリーニング前設定として、インクジェット式記録装置10Aは、まず、第1TCLモード等のタイマクリーニング成功率Rclnを計算する(図12のステップST101)。このステップST101の詳細は、第1の実施形態と同様である(図8参照)から、説明を省略する。
【0076】
ステップST101において、計算部74が算出した各タイマクリーニングモードごとのタイマクリーニング成功率Rclnはそのタイマクリーニング成功率Rclnを算出した時のクリーニング条件とともに、記憶部72に記憶される。
【0077】
上述のようにして、各タイマクリーニングごとのタイマクリーニング成功率Rclnが算出されると(図12のステップST101)、インクジェット式記録装置10Aは、タイマクリーニング成功率Rclnが80パーセント(%)未満であるか否かを判断する(ステップST102A)。
【0078】
そして、計算部74は、例えば、第1TCLモードのクリーニング成功率Rcl1が80パーセント(%)未満であれば、第1TCLモードと第2TCLモードの境界時間である第2閾値(図14(a)参照)を前回吐出時からの経過時間が短くなるように変更規定時間だけ変更する。
すなわち、第1TCLモードよりもインク吸引量が多い第2TCLモードの適用開始時間が早くなるように後述のCLタイマ閾値を変更する(ステップST103A)。
【0079】
図14は、CLタイマ閾値等の一例を示す概略図である。
CLタイマ閾値は、各タイマクリーニングモードのCLタイマ(図5(a)参照)によって規定され、図14(a)に示すように、フラッシングモードと第1TCLモードのCLタイマを画するCLタイマ閾値を第1閾値、第1TCLモードと第2TCLモードのCLタイマを画するCLタイマ閾値を第2閾値、第2TCLモードと第3TCLモードのCLタイマを画するCLタイマ閾値を第3閾値とし、第1閾値の基本設定は30時間(h)、第2閾値の基本設定は82時間(h)、第3閾値の基本設定は336時間(h)となっている。上述のCLタイマ閾値は、境界時間の一例である。
計算部74は、第1TCLモードのクリーニング成功率Rcl1が80パーセント(%)未満であれば、第2閾値を例えば、変更規定時間である例えば、12時間(h)だけ前回吐出時からの経過時間が短くなるように変更し、図14(b)に示すように、新たなタイマクリーニングテーブルを生成する。
【0080】
これに対して、計算部74は、例えば、第1TCLモードのクリーニング成功率Rcl1が80パーセント(%)以上であれば、第2閾値を変更規定時間である12時間だけ前回吐出時からの経過時間が長くなるように変更する。
すなわち、第1TCLモードの適用終了時間が遅くなるように、第2閾値を前回吐出時からの経過時間が長くなるように変更する(ステップST113A)。
そして、計算部74は、図14(c)に示すように、新たなタイマクリーニングテーブルを生成する。
【0081】
このように、インクジェット式記録装置10Aは、タイマクリーニング成功率が80パーセント(%)未満である場合には、そのタイマクリーニング成功率に対応する各タイマクリーニングモードである例えば、第1TCLモードの適用終了時間を前回吐出時からの経過時間が短くなるように変更する。このため、次回の第1TCLモードのCLタイマは、前回吐出時からの経過時間がより短い間となり、第2TCLモードの適用開始時間がより早くなる。これにより、変更後のタイマクリーニングテーブルにしたがって実施されるタイマクリーニングのタイマクリーニング成功率Rclnを高くすることができ、その結果として、成功しないタイマクリーニングを未然に防止し、インクを無駄に消費することを回避することができる。
【0082】
これに対して、インクジェット式記録装置10Aは、タイマクリーニング成功率Rclnが80パーセント(%)以上である場合には、そのタイマクリーニング成功率に対応するタイマクリーニングモードである例えば、第1TCLモードの適用終了時間を、前回吐出時からの経過時間がより長くなるように変更する。このため、次回の第1TCLモードのCLタイマは、前回吐出時からの経過時間がより長い間となり、第2TCLモードの適用開始がより遅くなる。
このため、変更後のタイマクリーニングテーブルにしたがって実施されるタイマクリーニングのタイマクリーニング成功率Rclnを維持しつつ、インクを無駄に消費することを回避することができる。
【0083】
そして、計算部74は、記憶部72の第1TCLモードのタイマクリーニング回数Ncl1を0に設定し、第1TCLモードのタイマクリーニング回数Fcl1を0に設定する(図12のステップST104)。
【0084】
上述のステップST103A及びステップST113Aは、タイマクリーニング条件変更ステップの一例である。
インクジェット式記録装置10Aは、上述のようにしてクリーニング前設定を行うと(図11のステップST1A)、新たに設定したタイマクリーニングテーブルでタイマクリーニングを実施する(ステップST2)。
ステップST2乃至ステップST6は、第1の実施の形態と同様であるから説明を省略する。
【0085】
続いて、インクジェット式記録装置10Aは、上述のステップST2におけるタイマクリーニングを実施する前にタイマクリーニング条件を変更したか否かを判断し(ステップST7A)、タイマクリーニング条件を変更したと判断した場合には、ステップST71Aに進む。ステップST71Aにおいては、インクジェット式記録装置10Aは、タイマクリーニング条件変更前のタイマクリーニング成功率Rclnと、タイマクリーニング条件変更後のタイマクリーニング成功率Rclnとを比較して、タイマクリーニング条件を維持又は変更する。
【0086】
このステップST71Aの詳細を図13を使用して説明する。
ステップST401及びステップST402は、第1の実施形態と同様であるから説明を省略する。
【0087】
続いて、計算部74は例えば、記憶部72に記憶されているCLタイマ閾値変更後のクリーニング成功率Rcl1が、CLタイマ閾値変更前のタイマクリーニング成功率Rcl1以上か否かを判断する(ステップST403A)。すなわち、計算部74は、タイマクリーニング成功率比較手段の一例である。
【0088】
計算部74は、記憶部72に記憶されているCLタイマ閾値変更後のクリーニング成功率Rcl1が、CLタイマ閾値変更前のクリーニング成功率Rcl1以上であると判断した場合には、CLタイマ閾値変更後のタイマクリーニング条件を維持する。
【0089】
これに対して、計算部74は、記憶部72に記憶されているCLタイマ閾値変更後のタイマクリーニング成功率Rcl1が、CLタイマ閾値変更前のタイマクリーニング成功率Rcl1以上ではないと判断した場合には、タイマクリーニング条件変更前のタイマクリーニング条件に戻す(ステップST404A)。
【0090】
このような構成によって、インクジェット式記録装置10は、タイマクリーニング成功率Rclnを算出することができるから例えば、タイマクリーニング成功率Rcl1が低い場合には、タイマクリーニング条件を変更し、例えば、第2閾値を前回吐出時からの経過時間が短くなるように変更するなどの制御をすることができる。
【0091】
なお、CLタイマ閾値の変更は1度だけではなく、変更の条件に合致する限り、継続的に行われる。例えば、第1TCLモードのタイマクリーニング成功率Rcl1が80パーセント(%)未満のとき、図14(a)の第2閾値の基本設定82時間(h)から12時間(h)、基準時に近い方向に変更され、70時間(h)となる。このインク吸引量でもタイマクリーニング成功率Rcl1が80パーセント(%)未満であれは、さらに12時間変更され、58時間(h)となり、当初の第2閾値から24時間(h)の変更となる。これらを繰り返すことにより、使用環境に応じたCLタイマ閾値に自動的に設定されていくことになる。
これにより、タイマクリーニングの結果をフィードバックすることによって、温度、湿度を計測することなく最適なタイマクリーニングを実施することができる。
【0092】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態のインクジェット式記録装置10B(図1参照)について説明する。第3の実施形態のインクジェット式記録装置10Bの構成は、上記第2の実施形態のインクジェット式記録装置10Aと多くの構成が共通するため共通する部分は同一の符号等とし、説明を省略し、以下、相違点を中心に説明する。
【0093】
第3の実施形態のインクジェット式記録装置10Bのハードウエア構成及び電気的接続例は、上記第2の実施形態のインクジェット式記録装置10Aと同様である(図1乃至図4参照)が、タイマクリーニング回数Ncln及びタイマクリーニング成功回数Fclnを記録するための時間範囲が異なる。
【0094】
図15は、CLタイマ閾値等の一例を示す概略図である。
CLタイマ閾値は、第2の実施形態のインクジェット式記録装置10Aと同様に規定されているが、記憶部72がタイマクリーニング回数Ncln及びタイマクリーニング成功回数Fclnを記録するCLタイマの時間範囲が異なる。
例えば、第1TCLモードの場合には、記憶部72は、第1TCLモードが適用されるCLタイマである30時間(h)以上82時間(h)未満の全範囲ではなくて、その一部である70時間(h)以上82時間(h)未満の範囲についてのタイマクリーニング回数Ncl1及びタイマクリーニング成功回数Fcl1を記録するようになっている。すなわち、記憶部72は、第1TCLモードの適用終了時間である82時間(h)を含む限定された時間範囲のタイマクリーニング回数Ncl1等を記録する。記憶部72がタイマクリーニング回数Ncl1及びタイマクリーニング成功回数Fcl1を記録する時間範囲を成功率算出用CLタイマと呼ぶ。この成功率算出用CLタイマは、限定時間範囲の一例である。
そして、計算部74は、例えば、第1TCLモードの成功率算出用CLタイマを判定領域2として、判定領域2におけるタイマクリーニング回数Ncl1及びタイマクリーニング成功回数Fcl1に基づいて、タイマクリーニング成功率Rcl1を算出する。
【0095】
そして、計算部74は、図15(b)に示すように、判定領域1のタイマクリーニング
成功率Rclfが90パーセント(%)、判定領域2のタイマクリーニング成功率Rcl1が50パーセント(%)、判定領域3のタイマクリーング成功率Rcl2が60パーセント(%)であれば、判定基準である80パーセント(%)と比較して、第1閾値、第2閾値及び第3閾値を変更して、図15(c)に示すような新たなクリーニングテーブルを生成する。
図15(c)に示すように、成功率算出用CLタイマも、新たな第1閾値等を基準として変更される。
【0096】
上述のように、インクジェット式記録装置10Bは、成功率算出用CLタイマにおける
タイマクリーニング回数Ncln及びタイマクリーニング成功回数Fclnを記録し、タイマクリーニング成功率Rclnを算出する。
例えば、第1TCLモードにおいて、図15(a)に示す適用開始時間である30時間の近傍の時間範囲におけるタイマクリーニング成功率Fcl1は、適用終了時間である82時間の近傍の時間範囲におけるタイマクリーニング成功率Fcl1よりも高いと予想することができる。すなわち、適用開始時間の近傍の時間範囲におけるタイマクリーニング成功率Fcl1は、適用終了時間の近傍の時間範囲におけるタイマクリーニング成功率Fcl1とは異なると考えられる。
したがって、第1TCLモードと第2TCLモードとの閾値である第2閾値の妥当性を判断するためには、第2閾値の近傍である第1TCLモードの適用終了時間の近傍の時間範囲におけるタイマクリーニング成功率Fcl1を適用することが、適用開始時間の近傍の時間範囲におけるタイマクリーニング成功率Fcl1を適用する場合や、第1TCLモードが適用されるCLタイマの全範囲のタイマクリーニング成功率Fcl1を適用する場合よりも、効果的である。
このため、インクジェット式記録装置10Bは、効果的にフラッシングモード及び第1TCLモード等の間における閾値の妥当性を判断し、変更することができる。
【0097】
なお、本実施の形態とは異なり、インクジェット式記録装置10Bは、タイマクリーニング成功率Rclnに基づいて、各タイマクリーニングモードにおけるインクの排出量を変更するようにしてもよい。
【0098】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態のインクジェット式記録装置10C(図1参照)について説明する。第4の実施形態のインクジェット式記録装置10Cの構成は、上記第3の実施形態のインクジェット式記録装置10Bと多くの構成が共通するため共通する部分は同一の符号等とし、説明を省略し、以下、相違点を中心に説明する。
【0099】
第4の実施形態のインクジェット式記録装置10Cのハードウエア構成及び電気的接続例は、上記第3の実施形態のインクジェット式記録装置10Bと同様である(図1乃至図4参照)が、タイマクリーニング回数Ncln及びタイマクリーニング成功回数Fclnを記録するための時間範囲と、各タイマクリーニングモードを適用する閾値の変更方法が異なる。
【0100】
図16は、タイマクリーニングテーブル等の一例を示す概略図である。
CLタイマ閾値は、第3の実施形態のインクジェット式記録装置10Bと同様に規定されているが、記憶部72がタイマクリーニング回数Ncln及びタイマクリーニング成功回数Fclnを記録するCLタイマの時間範囲が異なる。
例えば、記憶部72は、フラッシングモードが適用されるCLタイマである30時間未満の一部であって適用終了時間を含む26時間(h)以上30時間(h)未満の範囲、及び、第1TCLモードが適用されるCLタイマである30時間(h)以上82時間(h)未満の一部であって適用開始時間を含む30時間(h)以上34時間(h)未満の範囲についてのタイマクリーニング回数Ncln及びタイマクリーニング成功回数Fclnを記録するようになっている。ここで、26時間(h)以上30時間(h)未満の範囲は先行限定時間範囲の一例であり、30時間(h)以上34時間(h)未満の範囲は後続限定時間範囲の一例である。
【0101】
そして、計算部74は、例えば、第1閾値の妥当性を判断するために、フラッシングモードの成功率算出用CLタイマである26時間(h)以上30時間(h)未満を判定領域1aとして、第1TCLモードの成功率算出用CLタイマである30時間(h)以上34時間(h)未満を判定領域1bとして判定領域1bとして、それぞれ、タイマクリーニング成功率Rclf及びRcl1を算出する。
そして、タイマクリーニング成功率Rclfが80パーセント(%)以上であるか否か、及び、タイマクリーニング成功率Rcl1が80パーセント(%)以上であるか否かに基づいて、第1閾値を変更する。
【0102】
計算部74は、例えば、領域1aにおけるタイマクリーニング成功率Rclfが80パーセント(%)以上であって、領域1bにおけるタイマクリーニング成功率Rcl1が80パーセント(%)以上であれば、第1閾値を30時間(h)から34時間(h)へ変更する。これにより、タイマクリーニング成功率Rclfが80パーセント(%)以上であって、効果的なクリーニングであるフラッシングモードを適用する時間範囲を広げることができる。また、フラッシングモードは、第1TCLモードよりも、記録ヘッド30から排出するインクの量が少ないから、クリーニングによるインクの消費量を低減しつつ、効果的なクリーニングを実施する時間範囲を延長することができる。
【0103】
また、計算部74は、領域1aにおけるタイマクリーニング成功率Rclfが80パーセント(%)未満であって、領域1bにおけるタイマクリーニング成功率Rcl1が80パーセント(%)以上であれば、第1閾値を30時間(h)から26時間(h)へ変更する。これにより、タイマクリーニング成功率Rclfが80パーセント(%)未満であってクリーニングが効率的でない場合に、タイマクリーニング成功率Rcl1が80パーセント(%)以上であって効果的なクリーニングである第1TCLモードを適用する適用開始時間を早めることができる。すなわち、第1TCLモードによるクリーニングは、フラッシングモードによるクリーニングよりも強力であるから、強力なクリーニングを早い時間において実施することができる。
【0104】
また、計算部74は、領域1aにおけるタイマクリーニング成功率Rclfが80パーセント(%)以上であって、領域1bにおけるタイマクリーニング成功率Rcl1が80パーセント(%)未満であれば、第1閾値を30時間(h)から34時間(h)へ変更する。これにより、タイマクリーニング成功率Rclfが80パーセント(%)以上であって、効果的なクリーニングであるフラッシングモードを適用する時間範囲を広げることができる。第1TCLモードはフラッシングモードよりも強力なクリーニングであるが、記録ヘッド30の状態等によって、フラッシングモードの方が、第1TCLモードよりも効果的にクリーニングを行うことができる場合がある。インクジェット式記録装置10Bは、領域1a及び領域1bのそれぞれのタイマクリーニング成功率Rclnに基づいて、第1閾値を変更するから、フラッシングモードの方が、第1TCLモードよりも効果的にクリーニングを行うことができる場合についても、対応することができる。
【0105】
また、計算部74は、領域1aにおけるタイマクリーニング成功率Rclfが80パーセント(%)未満であって、領域1bにおけるタイマクリーニング成功率Rcl1が80パーセント(%)未満であれば、第1閾値は30時間(h)のままとする。タイマクリーニング成功率Rclfとタイマクリーニング成功率Rcl1がともに80パーセント(%)未満である場合には、より強力なクリーニングを実施する方がクリーニングの成功率が高いと思われる。そこで、計算部74は、タイマクリーニング成功率Rclfとタイマクリーニング成功率Rcl1がともに80パーセント(%)未満である場合には、第1閾値を30時間(h)から26時間(h)に変更して、第1TCLモードを早く開始することも可能だが、第1閾値に近いにもかかわらず第1TCLモードのタイマクリーニング成功率が悪いということは、クリーニング以外にクリーニング成功率を阻害する要因がある可能性があるため、第1閾値は変更せずに、警告メッセージを出して修理を促したほうがよい。
以上のように、インクジェット式記録装置10Cは、例えば、領域1bだけではなくて、領域1a及び領域1bの双方のタイマクリーニング成功率Rclnに基づいて、第1閾値を変更するから、よりきめ細かく適切にタイマクリーニング条件を変更することができる。
【0106】
なお、本実施の形態とは異なり、インクジェット式記録装置10Cは、タイマクリーニング成功率Rclnに基づいて、各タイマクリーニングモードにおけるインクの排出量を変更するようにしてもよい。
【0107】
なお、本実施の形態とは異なり、インクジェット式記録装置10Cは、例えば、領域1a及び領域1bの双方のタイマクリーニング成功率Rcln又はタイマクリーニングの失敗率の平均に基づいて、第1閾値及び/又はインクの排出量を変更するようにしてもよい。これにより、領域1a及び領域1bにおける、タイマクリーニングの回数、タイマクリーニングが成功した回数、及び、タイマクリーニングが失敗した回数のうち、少なくとも2つに基づいて、タイマクリーニング成功率Rcln又はタイマクリーニングの失敗率の平均を算出することができるから、インクジェット式記録装置10Cの記憶及び演算の負荷を小さくすることができる。
【0108】
なお、上述の各実施の形態とは異なり、記憶部72は、タイマクリーニング手段による各タイマクリーニングモードごとのタイマクリーニングの回数、タイマクリーニングが成功した回数、及び、タイマクリーニングが失敗した回数のうち、少なくとも2つを記録するようにしてもよい。そして、計算部74は、記憶部72が記憶した、タイマクリーニングの回数、タイマクリーニングが成功した回数、及び、タイマクリーニングが失敗した回数のうち、少なくとも2つに基づいて、タイマクリーニング成功率又はタイマクリーニング失敗率を算出するようにしてもよい。そして、計算部74は、タイマクリーニング成功率又はタイマクリーニング失敗率に基づいて、タイマクリーニングのCLタイマ閾値を変更するようにしてもよい。
【0109】
本発明は、インクジェット式記録装置としての上記実施形態に限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。さらに、上述の各実施形態は、相互に組み合わせて構成するようにしてもよい。また、本発明は、インクジェット式記録装置に限らず、プリンタ等の画像記録装置に用いられる記録ヘッド、液晶ディスプレイ等のカラーフィルタの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレイ、FED(面発光ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材噴射ヘッド、バイオチップ製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等の液体を吐出する液体噴射ヘッドを用いた液体噴射装置、精密ピペットとしての試料噴射装置等にも適用できる。
【0110】
上記実施形態の各構成は、その一部を省略したり、上記とは異なるように任意に組み合わせることができる。
例えば、インクジェット式記録装置10又は10Aの記憶部72、計算部74、CL制御部76及び計時部78を、プリンタドライバ81が有する構成としてもよい。この場合、ホストコンピュータ80及びインクジェット式記録装置10(10A)が、液体噴射装置の一例である。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】インクジェット式記録装置を示す概略図である。
【図2】吐出不良検出装置の構成の一例を示す概略断面図である。
【図3】テストパターン等の一例を示す図である。
【図4】インクジェット式記録装置の電気的な接続例を示す概略図である。
【図5】タイマクリーニングテーブル等の一例を示す図である。
【図6】インクジェット式記録装置の動作例を示す概略フローチャートである。
【図7】インクジェット式記録装置の動作例を示す概略フローチャートである。
【図8】インクジェット式記録装置の動作例を示す概略フローチャートである。
【図9】インクジェット式記録装置の動作例を示す概略フローチャートである。
【図10】インクジェット式記録装置の動作例を示す概略フローチャートである。
【図11】インクジェット式記録装置の動作例を示す概略フローチャートである。
【図12】インクジェット式記録装置の動作例を示す概略フローチャートである。
【図13】インクジェット式記録装置の動作例を示す概略フローチャートである。
【図14】CLタイマ閾値等の一例を示す概略図である。
【図15】CLタイマ閾値等の一例を示す概略図である。
【図16】タイマクリーニングテーブル等の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0112】
8・・・吐出不良検出装置、10,10A,10B,10C・・・インクジェット式記録装置、20・・・インク吸引装置、21・・・キャップ本体、30・・・記録ヘッド、30a・・・ノズルプレート面、72・・・記憶部、74・・・計算部、76・・・CL制御部、78・・・計時部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を噴射する液体噴射ヘッドと、
前記液体噴射ヘッドのノズル開口から前記液体を排出する排出量が異なる複数の排出モードと、各前記排出モードの少なくとも適用開始時間で規定される適用時間範囲を含むタイマクリーニング条件を格納するタイマクリーニング条件格納手段と、
基準時からの経過時間を計測する計時手段と、
前記経過時間に基づいて、前記複数の排出モードから1つの前記排出モードを選択して前記液体の排出を実行することによって、前記液体噴射ヘッドのタイマクリーニングを行うタイマクリーニング手段と、
前記液体噴射ヘッドから前記液体が正常に噴射されない状態である噴射不良を検出する噴射不良検出手段と、
前記タイマクリーニング手段による各前記排出モードごとの前記タイマクリーニングの回数、前記タイマクリーニング手段による前記タイマクリーニングが成功した回数、及び、前記タイマクリーニング手段による前記タイマクリーニングが失敗した回数のうち、少なくとも2つを記録するタイマクリーニング結果記録手段と、
前記タイマクリーニング結果記録手段が記録した、前記タイマクリーニングの回数、前記タイマクリーニングが成功した回数、及び、前記タイマクリーニングが失敗した回数のうち、少なくとも2つに基づいて、タイマクリーニング成功率又はタイマクリーニング失敗率を算出するタイマクリーニング評価手段と、
前記タイマクリーニング成功率又は前記タイマクリーニング失敗率に基づいて、前記タイマクリーニング条件を変更するタイマクリーニング条件変更手段と、
を有することを特徴とする液体噴射装置。
【請求項2】
前記タイマクリーニング条件変更手段は、前記タイマクリーニング条件の変更として、各前記排出モードの前記タイマクリーニング成功率が成功率許容範囲外である場合又は各前記排出モードの前記タイマクリーニング失敗率が失敗率許容範囲外である場合には、前記成功率許容範囲外又は前記失敗率許容範囲外である前記タイマクリーニング成功率又は前記タイマクリーニング失敗率に対応する各前記排出モードの前記排出量を多くする構成となっていることを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項3】
前記タイマクリーニング条件変更手段は、前記タイマクリーニング条件の変更として、各前記排出モードの前記タイマクリーニング成功率が成功率許容範囲内である場合又は各前記排出モードの前記タイマクリーニング失敗率が失敗率許容範囲内である場合には、前記成功率許容範囲内又は前記失敗率許容範囲内である各前記排出モードの前記排出量を少なくする構成となっていることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の液体噴射装置。
【請求項4】
前記タイマクリーニング条件は、前記液体の排出量が少ない前記排出モードである先行排出モードの前記適用時間範囲と、前記適用時間範囲が前記基準時からの経過時間が前記先行排出モードの後であって前記液体の排出量が前記先行排出モードよりも多い前記排出モードである後続排出モードの前記適用時間範囲とが連続するように設定されており、
前記タイマクリーニング条件変更手段は、前記タイマクリーニング条件の変更として、前記先行排出モードの前記タイマクリーニング成功率が成功率許容範囲外である場合又は前記先行排出モードの前記タイマクリーニング失敗率が失敗率許容範囲外である場合には、前記先行排出モードと前記後続排出モードの前記適用時間範囲の境界時間を、前記基準時からの経過時間が短くなるように変更する構成となっていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の液体噴射装置。
【請求項5】
前記タイマクリーニング条件は、前記液体の排出量が少ない前記排出モードである先行排出モードの前記適用時間範囲と、前記適用時間範囲が前記基準時からの経過時間が前記先行排出モードの後であって前記液体の排出量が前記先行排出モードよりも多い前記排出モードである後続排出モードの前記適用時間範囲とが連続するように設定されており、
前記タイマクリーニング条件変更手段は、前記タイマクリーニング条件の変更として、前記先行排出モードの前記タイマクリーニング成功率が成功率許容範囲内である場合又は前記先行排出モードの前記タイマクリーニング失敗率が失敗率許容範囲内である場合には、前記境界時間を、前記基準時からの経過時間が長くなるように変更する構成となっていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の液体噴射装置。
【請求項6】
前記タイマクリーニング条件の変更前の前記タイマクリーニング成功率と、前記タイマクリーニング条件の変更後の各前記排出モードごとの前記タイマクリーニング成功率を比較するタイマクリーニング成功率比較手段を有し、
前記タイマクリーニング条件変更手段は、前記比較結果に基づいて、前記タイマクリーニングの変更後の前記タイマクリーニング条件を維持する、又は、前記タイマクリーニング変更前の前記タイマクリーニング条件を変更する構成となっていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の液体噴射装置。
【請求項7】
前記タイマクリーニング条件の変更前の前記タイマクリーニング失敗率と、前記タイマクリーニング条件の変更後の各前記排出モードごとの前記タイマクリーニング失敗率を比較するタイマクリーニング失敗率比較手段を有し、
前記タイマクリーニング条件変更手段は、前記比較結果に基づいて、前記タイマクリーニングの変更後の前記タイマクリーニング条件を維持する、又は、前記タイマクリーニング変更前の前記タイマクリーニング条件を変更する構成となっていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の液体噴射装置。
【請求項8】
前記タイマクリーニング結果記録手段は、各前記排出モードの前記適用時間範囲の一部であって適用終了時間を含む限定時間範囲についての、前記タイマクリーニング手段による各前記排出モードごとの前記タイマクリーニングの回数、前記タイマクリーニング手段による前記タイマクリーニングが成功した回数、及び、前記タイマクリーニング手段による前記タイマクリーニングが失敗した回数のうち、少なくとも2つを記録する構成となっていることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の液体噴射装置。
【請求項9】
前記タイマクリーニング結果記録手段は、前記先行排出モードの前記適用時間範囲の一部であって適用終了時間を含む先行限定時間範囲、及び、前記後続排出モードの前記適用時間範囲の一部であって前記適用開始時間を含む後続限定時間範囲についての、前記タイマクリーニング手段による各前記排出モードごとの前記タイマクリーニングの回数、前記タイマクリーニング手段による前記タイマクリーニングが成功した回数、及び、前記タイマクリーニング手段による前記タイマクリーニングが失敗した回数のうち、少なくとも2つを記録する構成となっており、
前記タイマクリーニング条件変更手段は、前記先行排出モード及び前記後続排出モードの、前記タイマクリーニング成功率又は前記タイマクリーニング失敗率に基づいて、前記タイマクリーニング条件を変更する構成となっていることを特徴とする請求項4又は請求項5のいずれかに記載の液体噴射装置。
【請求項10】
液体を噴射する液体噴射ヘッドと、前記液体噴射ヘッドのノズル開口から前記液体を排出する排出量が異なる複数の排出モードと、前記各排出モードの少なくとも適用開始時間で規定される適用時間範囲を含むタイマクリーニング条件を格納するタイマクリーニング条件格納手段と、基準時からの経過時間を計測する計時手段と、前記経過時間に基づいて、前記複数の排出モードから1つの前記排出モードを選択して前記液体の排出を実行することによって、前記液体噴射ヘッドのタイマクリーニングを行うタイマクリーニング手段と、を有する液体噴射装置が、前記液体噴射ヘッドから前記液体が正常に噴射されない状態である噴射不良を検出する噴射不良検出ステップと、
前記液体噴射装置が、前記タイマクリーニング手段による前記タイマクリーニングの回数、前記タイマクリーニング手段による前記タイマクリーニングが成功した回数、及び、前記タイマクリーニング手段による前記タイマクリーニングが失敗した回数のうち、少なくとも2つを記録するタイマクリーニング結果記録ステップと、
前記液体噴射装置が、前記タイマクリーニング結果記録ステップにおいて記録した、前記タイマクリーニングの回数、前記タイマクリーニングが成功した回数、及び、前記タイマクリーニングが失敗した回数のうち、少なくとも2つに基づいて、タイマクリーニング成功率又はタイマクリーニング失敗率を算出するタイマクリーニング評価ステップと、
前記液体噴射装置が、前記タイマクリーニング成功率又は前記タイマクリーニング失敗率に基づいて、前記タイマクリーニング条件を変更するタイマクリーニング条件変更ステップと、
を有することを特徴とする液体噴射装置のタイマクリーニング方法。
【請求項1】
液体を噴射する液体噴射ヘッドと、
前記液体噴射ヘッドのノズル開口から前記液体を排出する排出量が異なる複数の排出モードと、各前記排出モードの少なくとも適用開始時間で規定される適用時間範囲を含むタイマクリーニング条件を格納するタイマクリーニング条件格納手段と、
基準時からの経過時間を計測する計時手段と、
前記経過時間に基づいて、前記複数の排出モードから1つの前記排出モードを選択して前記液体の排出を実行することによって、前記液体噴射ヘッドのタイマクリーニングを行うタイマクリーニング手段と、
前記液体噴射ヘッドから前記液体が正常に噴射されない状態である噴射不良を検出する噴射不良検出手段と、
前記タイマクリーニング手段による各前記排出モードごとの前記タイマクリーニングの回数、前記タイマクリーニング手段による前記タイマクリーニングが成功した回数、及び、前記タイマクリーニング手段による前記タイマクリーニングが失敗した回数のうち、少なくとも2つを記録するタイマクリーニング結果記録手段と、
前記タイマクリーニング結果記録手段が記録した、前記タイマクリーニングの回数、前記タイマクリーニングが成功した回数、及び、前記タイマクリーニングが失敗した回数のうち、少なくとも2つに基づいて、タイマクリーニング成功率又はタイマクリーニング失敗率を算出するタイマクリーニング評価手段と、
前記タイマクリーニング成功率又は前記タイマクリーニング失敗率に基づいて、前記タイマクリーニング条件を変更するタイマクリーニング条件変更手段と、
を有することを特徴とする液体噴射装置。
【請求項2】
前記タイマクリーニング条件変更手段は、前記タイマクリーニング条件の変更として、各前記排出モードの前記タイマクリーニング成功率が成功率許容範囲外である場合又は各前記排出モードの前記タイマクリーニング失敗率が失敗率許容範囲外である場合には、前記成功率許容範囲外又は前記失敗率許容範囲外である前記タイマクリーニング成功率又は前記タイマクリーニング失敗率に対応する各前記排出モードの前記排出量を多くする構成となっていることを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項3】
前記タイマクリーニング条件変更手段は、前記タイマクリーニング条件の変更として、各前記排出モードの前記タイマクリーニング成功率が成功率許容範囲内である場合又は各前記排出モードの前記タイマクリーニング失敗率が失敗率許容範囲内である場合には、前記成功率許容範囲内又は前記失敗率許容範囲内である各前記排出モードの前記排出量を少なくする構成となっていることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の液体噴射装置。
【請求項4】
前記タイマクリーニング条件は、前記液体の排出量が少ない前記排出モードである先行排出モードの前記適用時間範囲と、前記適用時間範囲が前記基準時からの経過時間が前記先行排出モードの後であって前記液体の排出量が前記先行排出モードよりも多い前記排出モードである後続排出モードの前記適用時間範囲とが連続するように設定されており、
前記タイマクリーニング条件変更手段は、前記タイマクリーニング条件の変更として、前記先行排出モードの前記タイマクリーニング成功率が成功率許容範囲外である場合又は前記先行排出モードの前記タイマクリーニング失敗率が失敗率許容範囲外である場合には、前記先行排出モードと前記後続排出モードの前記適用時間範囲の境界時間を、前記基準時からの経過時間が短くなるように変更する構成となっていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の液体噴射装置。
【請求項5】
前記タイマクリーニング条件は、前記液体の排出量が少ない前記排出モードである先行排出モードの前記適用時間範囲と、前記適用時間範囲が前記基準時からの経過時間が前記先行排出モードの後であって前記液体の排出量が前記先行排出モードよりも多い前記排出モードである後続排出モードの前記適用時間範囲とが連続するように設定されており、
前記タイマクリーニング条件変更手段は、前記タイマクリーニング条件の変更として、前記先行排出モードの前記タイマクリーニング成功率が成功率許容範囲内である場合又は前記先行排出モードの前記タイマクリーニング失敗率が失敗率許容範囲内である場合には、前記境界時間を、前記基準時からの経過時間が長くなるように変更する構成となっていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の液体噴射装置。
【請求項6】
前記タイマクリーニング条件の変更前の前記タイマクリーニング成功率と、前記タイマクリーニング条件の変更後の各前記排出モードごとの前記タイマクリーニング成功率を比較するタイマクリーニング成功率比較手段を有し、
前記タイマクリーニング条件変更手段は、前記比較結果に基づいて、前記タイマクリーニングの変更後の前記タイマクリーニング条件を維持する、又は、前記タイマクリーニング変更前の前記タイマクリーニング条件を変更する構成となっていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の液体噴射装置。
【請求項7】
前記タイマクリーニング条件の変更前の前記タイマクリーニング失敗率と、前記タイマクリーニング条件の変更後の各前記排出モードごとの前記タイマクリーニング失敗率を比較するタイマクリーニング失敗率比較手段を有し、
前記タイマクリーニング条件変更手段は、前記比較結果に基づいて、前記タイマクリーニングの変更後の前記タイマクリーニング条件を維持する、又は、前記タイマクリーニング変更前の前記タイマクリーニング条件を変更する構成となっていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の液体噴射装置。
【請求項8】
前記タイマクリーニング結果記録手段は、各前記排出モードの前記適用時間範囲の一部であって適用終了時間を含む限定時間範囲についての、前記タイマクリーニング手段による各前記排出モードごとの前記タイマクリーニングの回数、前記タイマクリーニング手段による前記タイマクリーニングが成功した回数、及び、前記タイマクリーニング手段による前記タイマクリーニングが失敗した回数のうち、少なくとも2つを記録する構成となっていることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の液体噴射装置。
【請求項9】
前記タイマクリーニング結果記録手段は、前記先行排出モードの前記適用時間範囲の一部であって適用終了時間を含む先行限定時間範囲、及び、前記後続排出モードの前記適用時間範囲の一部であって前記適用開始時間を含む後続限定時間範囲についての、前記タイマクリーニング手段による各前記排出モードごとの前記タイマクリーニングの回数、前記タイマクリーニング手段による前記タイマクリーニングが成功した回数、及び、前記タイマクリーニング手段による前記タイマクリーニングが失敗した回数のうち、少なくとも2つを記録する構成となっており、
前記タイマクリーニング条件変更手段は、前記先行排出モード及び前記後続排出モードの、前記タイマクリーニング成功率又は前記タイマクリーニング失敗率に基づいて、前記タイマクリーニング条件を変更する構成となっていることを特徴とする請求項4又は請求項5のいずれかに記載の液体噴射装置。
【請求項10】
液体を噴射する液体噴射ヘッドと、前記液体噴射ヘッドのノズル開口から前記液体を排出する排出量が異なる複数の排出モードと、前記各排出モードの少なくとも適用開始時間で規定される適用時間範囲を含むタイマクリーニング条件を格納するタイマクリーニング条件格納手段と、基準時からの経過時間を計測する計時手段と、前記経過時間に基づいて、前記複数の排出モードから1つの前記排出モードを選択して前記液体の排出を実行することによって、前記液体噴射ヘッドのタイマクリーニングを行うタイマクリーニング手段と、を有する液体噴射装置が、前記液体噴射ヘッドから前記液体が正常に噴射されない状態である噴射不良を検出する噴射不良検出ステップと、
前記液体噴射装置が、前記タイマクリーニング手段による前記タイマクリーニングの回数、前記タイマクリーニング手段による前記タイマクリーニングが成功した回数、及び、前記タイマクリーニング手段による前記タイマクリーニングが失敗した回数のうち、少なくとも2つを記録するタイマクリーニング結果記録ステップと、
前記液体噴射装置が、前記タイマクリーニング結果記録ステップにおいて記録した、前記タイマクリーニングの回数、前記タイマクリーニングが成功した回数、及び、前記タイマクリーニングが失敗した回数のうち、少なくとも2つに基づいて、タイマクリーニング成功率又はタイマクリーニング失敗率を算出するタイマクリーニング評価ステップと、
前記液体噴射装置が、前記タイマクリーニング成功率又は前記タイマクリーニング失敗率に基づいて、前記タイマクリーニング条件を変更するタイマクリーニング条件変更ステップと、
を有することを特徴とする液体噴射装置のタイマクリーニング方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2006−123499(P2006−123499A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−74468(P2005−74468)
【出願日】平成17年3月16日(2005.3.16)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月16日(2005.3.16)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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