説明

液体搬送機構

【課題】静電力を用いて粒状の液体を搬送する際、異なった液量の粒状の液体を搬送するためには、搬送する液量ごとに、その液量に適した大きさの電極を準備する必要があった。
【解決手段】電極が搬送可能な粒状の液体の液量範囲を広くする電極形状により、異なった液量の複数の粒状の液体を搬送する液体搬送機構を提供する。
【効果】一のサイズの電極で搬送可能な液体の液量範囲が広げ、異なった液量の粒状の液体を搬送することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料中に含まれる成分量を検出する分析であって、搬送少量の試料の分析に関する。
【背景技術】
【0002】
試料中に含まれる成分量を検出する分析装置として、ハロゲンランプ等からの白色光を試料溶液に照射し、試料溶液を透過してきた光を回折格子で分光して必要な波長成分を取り出し、その吸光度を割り出すことで目的の成分量を測定する分光分析装置が広く用いられている。あるいは、白色光を回折格子で分光した後、試料溶液に照射する場合もある。これらの分析装置においては、従来、プラスチックやガラスの反応容器内に試料と試薬を分注し、これらを混合して試料溶液とした物に光を照射し、成分量を測定していた。
【0003】
しかし近年、試薬コストの削減や、環境への負荷低減のため、分析に用いる試料溶液の微少量化が求められており、従来方式での試料溶液微少量化では液の取り扱いが困難になり、分注、混合時に発生する気泡等により正確な測定ができなくなるという問題もあった。このため、微少量の液体を的確に搬送する技術が求められていた。
微少量の液体を搬送する一つの方式として、基板に形成された電極上の液体を電気的な制御により搬送する方式が上げられる。この方式には一般的に次の二つの方式が用いられている。
【0004】
一つ目の方式は、複数の電極を形成した二つの対向する基板間に搬送する液体を挟みこみ、二つの対向する基板間の表面に沿って配置された電極に電圧を印加することで、液体を駆動する方式(例えば(特許文献1))である。この方式では、通常、片方の基板上に液体を搬送させる液体搬送路に沿って多数の電極が形成され、もう一方の基板上にほぼ一面にグランドに接続された一つの電極を備える。液体がいくつかの電極上にまたがって静置している状態で液体下部の電極の一つに電圧を印加すると、電気毛管現象(例えば(特許文献2))により電圧を印加した電極上の液体の濡れ性が良くなり、最終的にその電圧を印加した電極の真上にその粒状の液体が搬送する。これを繰り返し搬送する。
【0005】
もう一つの方式として、多数の電極を有した一つの基板の上に搬送する液体を供給し、液体付近の電極に電圧を印加して、液体を駆動する方式(例えば(特許文献3))がある。多数の電極は液体を搬送させる液体搬送路に沿って配置される。液体の下部に存在する電極と液体付近の電極との間に電界を形成し、電界の力を利用し、駆動させる。これを繰り返し搬送する。
【0006】
これらの両方式とも微少量の液体を搬送する。また二つの微少量の液体同士を同じ電極上に搬送することにより混合させることも可能であり、さらには一つの微少量の液体を二つに分割することも可能である。このように、両方式とも電極を配置した基板上で電圧印加する電極を切り替えることで微量液体を搬送する。(このような搬送の駆動力を、以下、静電力という。)このようなシステムの利点は、周囲が壁に囲まれた容器に比べ、単一もしくは二枚の基板を利用するため気泡の影響を受けにくいことが挙げられる。
【0007】
基板上での分析システムを考案したものとしての報告もなされている(例えば[非特許文献1]及び[非特許文献2])。
上記文献記載の分析システム例では、基板上に試料を導入する試料導入部、試薬と混合する混合部、測定のための測定部、試料溶液を排出する排出部が存在し、各部は多数の電極から形成される液体搬送路で結ばれている。そして、試料導入部から導入された試料は、液体搬送路を搬送され、混合部において試薬と混合され反応液となり、測定部で成分を測定後、再び同じ液体搬送路を搬送され、排出部にて排出される。
【0008】
なお、静電力により液体を搬送させるために用いる電極の形状としては、例えば、相互にはめ合わされる三角形電極列(例えば(特許文献4))や凸状部分と凹状部分とを有する電極対や山形電極(例えば(特許文献5))が報告されている。また、互いに噛合う関係の突起部を各々有する複数の電極(例えば(特許文献6))が報告されている。また、突起部分が設けられた電極であって、隣接する電極の凹部へそれら突起部分が入り込む形状とすることが報告されている(例えば(特許文献7))。
【0009】
【特許文献1】特開昭60-216324号公報
【0010】
【特許文献2】特開2004-000935号公報
【特許文献3】特開平10-267801号公報
【特許文献4】米国特許第4636785号公報
【特許文献5】米国特許第4569575号公報
【特許文献6】米国特許6565727号公報
【特許文献7】特開2004-336898号公報
【非特許文献1】R. B. Fair et al. "Electrowetting-based On-Chip Sample Processing for Integrated Microfluidics" IEEE Inter. Electron Devices Meeting 2003
【非特許文献2】Vijay Srinivasan et al. "Clinical diagnostics on human whole blood、 plasma、 serum、 urine、 saliva、 sweat、 and tears on a digital microfluidic platform" μTAS 2003
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
静電力を用いて粒状の液体を流通し、液体中に含まれる成分量を検出する装置等では、試料溶液である液体の量は、分析システム内を搬送する途中の他の試薬等との混合等によって、変化することが想定される。そして、試料の量、混合される試薬の量、及び、試薬が混合される回数は、分析項目により複数の組み合わせが想定される。以上より、静電力で液体を搬送する分析システムでは、異なった液量の粒状の液体が、複数存在し、搬送されることが想定される。しかし、液体搬送路を形成する複数の電極それぞれが搬送可能な粒状の液体の量は、電極の大きさに依存する可能性が高く、通常、搬送する粒状の液体の量に合わせて電極の大きさが決定される。そのため、電極上にその電極に見合った液量から大きく異なった液量の粒状の液体が送られて来た場合、それらをスムーズに搬送することは難しくなるこという課題が想定される。このような課題に対応するためには、搬送する液量ごとに、その液量に適した大きさの電極を準備することが考えられるが、上記の通り搬送される粒状の液体は様々な量であるため、そのいずれをも確実に搬送することは難しい。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するための手段として、電極が搬送可能な粒状の液体の液量範囲を広くする電極形状により、異なった液量の複数の粒状の液体を搬送する液体搬送機構を提供する。この機構により、一定範囲の液量において、搬送する液量毎にサイズの違う電極を準備することなく、異なった液量の複数の粒状の液体を搬送することができる。
【0013】
具体的には、多数の電極それぞれの形状を、少なくとも一部の電極において、液体の搬送方向での一方の端部と他方の端部との各々に凸部と凹部との双方を具備するものとする。その上で、一の電極の凸部の先端部が隣接する電極の凹部に入り込むように各々の電極を配置し、かつ、凸部の幅が狭くなる方向に向かって、隣接する電極の長手方向での中心線を越えるような形状とする。
【発明の効果】
【0014】
静電力を用いて粒状の液体を搬送し、液体中に含まれる成分量を検出する分析装置等について、搬送可能な粒状の液体の液量範囲を広くすることができる。すなわち、一定範囲の液量において、搬送する液量毎に大きさの違う電極を準備することなく、異なった液量の粒状の液体を搬送することができる。これにより、試料溶液の微少量化に対応した装置を安価に、しかも、小型に構成することができる。
【実施例1】
【0015】
図1から図3は液体搬送基板の構成の例を示す略図である。図1は基板の内部構成を示す略図であり、(a)は立体的に構成を説明するための図であり(b)は部分断面図である。(以下、図9、図14、図17については図1(b)に対応する部分断面図のみを示す。)図2はA-A断面における断面図(図中の正面の方向から見た図)を、図3はB-B断面における断面図(図中の側面の方向から見た図)を表している。本実施例での液体搬送基板は、大きく分けて下側の第1の基板1と上側の第2の基板2から構成されている。
【0016】
第1の基板1と第2の基板2は、後述する液体搬送、及び、試料中に含まれる成分量検出のために、絶縁物かつ必要な波長の光を透過する材質を用いている。このような材質は、例えば実質的に透明なものを使用できる。具体的にはガラスやプラスチック等でもよい。図1及び図2に於いて、第1の基板1には、測定部4と測定部4を含む液体搬送路3とを形成する複数の第1の電極5が構成され、第2の基板2には、複数の第1の電極5と対面する領域に第2の電極6が構成される。第1の電極5は、様々な形状を取ることが出来る。具体的には図10以降で説明する形状を想定するが、図面の簡単のため、図10から図13までを除いては正方形に簡略化して説明する。第1の電極5は図1に示されたような配列を構成するが、この配列は一端の電極51、他端の電極52、一端の電極51と他端の電極52との間に配置される中間電極の群53からなる。第1の電極5と第2の電極6は、通常第1の基板1もしくは第2の基板2の表面に薄膜として堆積された透明導電膜をパターンニングして形成され、やはり薄膜として堆積された光を透過する絶縁膜により覆われており、さらに絶縁膜の表面は光を透過する撥水膜で覆われている。電極、絶縁膜及び撥水膜は非常に薄いため、本実施例で使用する図では、電極のみが基板に埋め込まれたような形状で表すことにする。絶縁膜及び撥水膜は非常に薄いと述べたが、通常50nm程度から5μm程度であることが望ましい。この範囲は、製造上の厚さ精度を考慮すると50nm程度以上の厚さが必要であり、また5μm程度よりも厚くなると、電極と粒状の液体の距離が大きすぎ、粒状の液体を搬送するために十分な静電力を得ることが難しくなるため、搬送のためには高電圧の印加が必要となることによるものである。なお、ここでいう程度とは、製造上の誤差程度の範囲を指す。
試料や試薬などの液体を導入するための導入口7と、前記液体を排出する排出口8は、第2の基板2に設けられている。
【0017】
第1の基板1と第2の基板2は、一定の間隔を保って実質的に平行に向かい合わせるためのスペーサ9を挟み込んで固定されており、スペーサ9には、第1の基板1と第2の基板2との間の空間をシールする側壁10を兼ねた部分もある。ここで実質的に平行とは、平行と同一視できる程度の平行性をいう。この時、第1の基板1と第2の基板2は、第1の電極5が形成された面と第2の電極6が形成された面とが向かい合うように固定されている。
【0018】
第1の電極5からは、電圧を印加する導電手段としての配線(導線)11が引き出され、側壁10を通り越して外部に設けた配線接続部材たるパッド12に電気的に接続されている。このパッドは、外部の電源と接続するためのものである。第2の電極6からは、電圧を印加する導電手段としての配線13が引き出され、側壁10を通り越して外部に設けた配線接続部材たるパッド14に電気的に接続される。ここで、第2の電極6は第1の基板1に向き合う第2の基板2の面の一部に構成されている。具体的には、第2の基板における、第1の基板上の第1の電極が配置される領域と対面する部位を含む領域に構成されている。パッド12及びパッド14には、図3に示すように配線部材15を接続し、外部の電源を含む制御装置16に接続されている。
【0019】
ここで、図17に示すように、第2の電極を第2の基板略全面に設けることもできる。すなわち、第2の基板2上の第1の基板と向き合う面の全面に第2の電極6を設け、第2の電極6の表面を覆っている絶縁膜103にエッチング等で窓101を加工し、配線接続部材たるパッド14の領域を設ける。このパッド14は第2の電極6のむき出しとなった部分であり、絶縁膜103は第2の電極6の第1の基板と向き合う面のうちパッド14の領域以外の領域に設けられることとなる。このような構成にすることにより、導電手段としての配線を意識することなく、パッド14に相当する領域を確保し、容易に液体搬送用の基板を作成することができる。パッド12及びパッド14には、図3に示すものと同様に配線部材15を接続し、外部の電源を含む制御装置16に接続されている。
【0020】
図18は、主として第2の電極6のパッド14にあたる領域を第1の基板側から見た部分拡大図である。図18の(a)は、第2の電極6から引き出された配線13が配線接続部材たるパッド14に接続された図1に対応する場合を示し、図18の(b)は、第2の電極6が第2の基板2全面に設けられ、電極の表面を覆っている絶縁膜103にエッチング等で窓101を加工し、第2の電極をむき出すことにより配線接続部材たるパッド14の領域を設けた図17に対応する場合を示している。
【0021】
図4を用い、本実施例での試料や試薬などの液体を導入、搬送、排出方法の例を説明する。図4の(1)から(12)は、図2と同じ断面を用い、手順を時系列で示している。第1の電極5は、それぞれスイッチ17を介して電源18に接続されており、電源18の対極側は第2の電極6に接続されている。図4の(1)において、導入口7の上部には、試料や試薬などの液体19を吸引したディスペンサ20が待機している。図4の(2)において、ディスペンサ20の先端部分が導入口7から第1の基板1と第2の基板2の間の空間21内に入り、導入口7の下に配置されている第1の電極5’のわずかに上で停止する。具体的には、ディスペンサ20の先端部分が第1の電極5の上部に位置する撥水膜の近傍に位置し、かつ撥水膜に接しない程度の位置で停止する。同時に第1の電極5’に接続されたスイッチ17が閉になり、第1の電極5’と第2の電極6との間に電圧が印加される。図4の(3)において、ディスペンサ20内の液体19を吐出すると、液体19は第1の電極5’と第2の電極6との間に静電力で保持され、粒状の液体22となる。粒状の液体22は、第1の基板1と第2の基板2の間に挟まれた状態で保持されているため、つぶされた形状になっている。図4の(4)において、ディスペンサ20を退避する。
【0022】
図4の(5)から(9)において、スイッチ17を左から右方向に順次開閉を切り替えることによって、電圧が印加される第1の電極5が、左から右方向に順次切り替わり、粒状の液体22は第1の電極5’の位置から、排出口8の下に配置されている第1の電極5”の位置まで搬送される。図4の(10)において、待機していた、粒状の液体22を吸引するためのディスペンサ23の先端部分が、排出口8から第1の基板1と第2の基板2の間の空間21内に入り、排出口8の下に配置されている第1の電極5”のわずかに上で停止する。具体的には、ディスペンサ20の先端部分が第1の電極5の上部に位置する撥水膜の近傍に位置し、かつ撥水膜に接しない程度の位置で停止する。同時に前記第1の電極5”に接続されたスイッチ17が開になり、第1の電極5”と第2の電極6との間に印加されていた電圧が解除される。図4の(11)において、第1の電極5”上の粒状の液体22がディスペンサ23により廃液24として吸引される。図4の(12)において、ディスペンサ23が退避し液体搬送が終了する。
【0023】
前述のスイッチ17の開閉時、一度スイッチ17が閉になり第1の電極5に電圧が印加されると、その後スイッチ17を開にしても、第1の電極5の上面部分の絶縁膜や撥水膜が部分的に帯電したままになる場合がある。それは、絶縁膜や撥水膜の材質による特性や厚さによるが、その場合、図5のような回路で第1の電極5を第2の電極6と同電位にするか、図6のような回路にし、第1の電極5に瞬間的に(スイッチを開とする前後に一時的に)逆電位を印加することにより解決することができる。
【0024】
本実施例のように微少量の液体を搬送する場合、その途中で粒状の液体が蒸発して体積が変化し、成分濃度が変化する可能性がある。それを防止するため、場合によって第1の基板1と第2の基板2の間の空間21内にオイルを入れ、そのオイル中に液体を導入して、粒状の液体22を搬送する。使用するオイルには、主にシリコーン系のオイルとフロロカーボン系があるが、粒状の液体22の成分が極力オイルに溶け込まないオイルを選択することが必要である。
【0025】
次に、前述の液体搬送基板により、試料中に含まれる成分量を検出する方法を、図7を用いて説明する。図7は、図2で示す液体搬送路3と測定部4とを形成する複数の第1の電極5の中の一部である測定部4の周辺を示す。測定部4の電極上には、前述の液体搬送手順により、試料である粒状の液体22が導入されている状態を示している。
液体搬送基板外部には、光25を照射する光源26と、測定部4の電極を介して透過してきた光を受光して電気信号に変換する受光部27が計測部28として配置されている。
【0026】
本実施例による成分量検出方法は、大きく3通りある。1つ目の検出方法は、試料内の特定成分により、光の特定波長の減衰量を測定する方法である。光源26から出射された光25は、第2の基板2と第2の電極6を透過し、粒状の液体22に照射される。光25は、粒状の液体22に含まれる成分量により特定の波長領域が減衰され、第1の基板1と第1の電極5を透過し、受光部27で受光される。受光部で受光した光25の減衰量を計測することにより、試料内の成分量を検出することができる。一般的には特定の2波長の光の減衰量を比較することにより試料内の成分量を割り出すことが多い。
【0027】
2つ目の検出方法は、照射した光により試料内の特定成分が発した蛍光量を測定することにより成分量を測定する方法である。光源26から出射された光25は、第2の基板2と第2の電極6を透過し、粒状の液体22に励起光として照射される。粒状の液体22には、目的の成分量に比例して蛍光物質が含まれており、照射された光25により励起され蛍光を発する。その蛍光量を受光部27で受光し測定することにより、目的の成分量を計測することができる。このとき、励起光として照射される光25の波長と、蛍光物質から発する蛍光の波長は異なるように設定されており、フィルタ等の波長を分離するための機構、若しくは光25をパルス状に時分割して照射し、照射されていない時間に蛍光を計測する等で、励起光と蛍光を分離するようにしている。
【0028】
3つ目の検出方法は、試料から発する発光を計測する方法である。この場合光25と光源26は必要なく、単に粒状の液体22から発する発光量を受光部27で受光し測定する。
以上、液体搬送基板を用い、試料や試薬などの液体を導入口7から導入し、液体搬送路3を搬送して、途中、測定部4で成分量を計測し、排出口8から排出する一連の動作を述べた。
【0029】
続いて、電極が搬送可能な粒状の液体の液量範囲を広くする電極形状について説明する。
図8の(a)から(c)に、第1の電極5を実質的な正方形に限定した場合の当該電極と粒状の液体22との大きさの関係を平面図で示す。図8の(a)は、第1の電極5の大きさに対する粒状の液体22の大きさが適している状態を示す。第1の電極5’に電圧を印加すると、粒状の液体22はより多くの面積が、電圧が印加された電極の上に掛かろうとする力が働く。この力を第1の静電力と言うことにする。すなわちこの場合は図8の(a)のように、その中心が第1の電極5’の中心に概略一致する状態になる。次に、この状態から隣の電極5’”に粒状の液体22を搬送するために、第1の電極5’に印加した電圧を切り、隣の電極5’”に電圧を印加する。すると、搬送前の状態のときに、粒状の液体22があらかじめ隣の電極5’”にオーバラップして掛かっている部分(図8の(a)にハッチングして示した部分)の円弧の部分は、その下側にある第1の電極5に印加された電圧により、接触角が変化して小さくなる。粒状の液体22の、接触角が小さくなった円弧の部分と、接触角が小さくなっていない円弧の部分との間に、粒状の液体22を接触角が小さい方向に搬送する力が発生する。この力を第2の静電力と言うことにする。粒状の液体22を搬送するためには、第1の静電力と第2の静電力が必要である。粒状の液体22が隣の電極5’”にオーバラップして掛かっている部分の円弧の長さが、同じ粒状の液体22の、オーバラップして掛かっていない部分の円弧の長さに対して長いほど、粒状の液体22が隣の電極5’”に搬送するための力も大きくなる。よって、粒状の液体22が隣の電極5’”上に搬送するには、搬送前の状態のときに、粒状の液体22が図8の(a)にハッチングして示した部分のように、隣の電極5’”にオーバラップして掛かっていることが必要である。
【0030】
図8の(b)は、第1の電極5の大きさに対する粒状の液体22の大きさが小さい場合を示す。この場合、粒状の液体22は隣の電極5’”にほとんど掛かっていないため、隣の電極5’”に搬送するための力が得られず、搬送することは不可能である。
【0031】
図8の(c)は、第1の電極5の大きさに対する粒状の液体22の大きさが大きい場合を示す。この場合、図8の(a)に比べて隣の電極5’”にオーバラップして掛かっている部分の円弧の長さは略同じであるが、オーバラップして掛かっていない部分の円弧の長さが、粒状の液体22の大きさに比例して長くなっており第2の静電力が小さい。しかし、図8の(d)の状態になるまでは搬送するが、この時点から第2の静電力は働かなくなり、搬送先の第1の電極5のほとんどが粒状の液体22内に含まれてしまっているため、第1の静電力も働かず、これ以上の搬送は難しい。
【0032】
以下、電極サイズが1辺4mm、第1の基板1と第2の基板2の距離が0.5mmの時に、6μl、12μl、及び、30μlの粒状の液体をそれぞれ移動実験した結果を一例として述べる。最初に、粒状の液体が6μlの場合、平面から見た時の粒状の液体の直径はおよそφ4mmで、図8(b)のように電極にほぼ内接した。この場合、印加する電極を隣に変えても、粒状の液体22に動きはなかった。次に、粒状の液体22が12μlの場合、平面から見た時の粒状の液体22の直径はおよそφ5.5mmで、図8(a)のように電極にほぼ外接した。この場合、印加する電極を隣に変えると、粒状の液体22は電圧を印加した隣の電極上にスムーズに移動した。最後に、粒状の液体22が30μlの場合、平面から見た時の粒状の液体22の直径はおよそφ8.7mmで、図8(c)のように、隣の電極上まで大きくはみ出して配置された。この場合、印加する電極を隣に変えると、粒状の液体22は、電圧を印加した隣の電極の方に移動するが、図8(d)のところまで移動した時点で動きを止めてしまう。
【0033】
第1の電極5が概略正方形の場合、第1の電極5の大きさに適した粒状の液体22の大きさは、粒状の液体22の物理的な特性や、第1の電極5に印加する電圧等で条件は変化し得るが、一般には、図8の(a)のように、粒状の液体22を示す円が第1の電極5に実質的に外接する状態であるときに搬送がスムーズに行なわれる。
【0034】
以上のことから、先の一連の動作を述べた場合のような、粒状の液体22が、異なった液量で供給された場合、若しくは、図9に示すように、液体搬送基板に複数の導入口7を持ち、複数の試料や試薬が供給され、液体搬送路内で混合若しくは分割される等で、粒状の液体22の液量が変化する場合、第1の電極5の大きさが一定であれば、粒状の液体22の大きさが第1の電極5より極端に大きい場合、若しくは、粒状の液体22の大きさが第1の電極5より極端に小さい場合には、粒状の液体22を搬送することが困難になる。
【0035】
そこで、複数の第1の電極5の形状を単なる正方形ではなく、複数の第1の電極5のうち少なくとも一部の電極の表面を実質的に含む面において液体運搬方向と交わるすべての直線上で、2つ以上の第1の電極5が含まれるべく配置することで、第1の電極5が搬送可能な粒状の液体22の液量範囲を広くできるようにした。ここで、複数の第1の電極5のうち少なくとも一部の電極の表面を実質的に含む面とは、当該一部の電極の第2の基板に対面する表面を実質的に内包する面であって、実質的に平面と見なせる面を意味し、以下同様である。このような電極の例を図10に示す。図10では、分かり易くするために、左から2番目の電極のみをハッチングして示し、さらに、部分的に拡大して電極間の隙間等を表している。
【0036】
図10に示す通り、第1の電極5は、長手方向の一方の端部と他方の端部の各々に凹部と凸部の双方を有する。また、電極の長手方向(もしくは液体の搬送の方向、以下同様)での電極の中心線(電極の中心に位置し、長手方向に垂直な線)に向かって幅が狭くなり、凸部は当該中心に向かって幅が広くなる。また、隣り合う電極間において、各々の向かい合う端部で、一の電極の凹部と凸部とが他の電極の凸部と凹部とに噛合うように配置される。具体的には、凹部の先端部は、上記長手方向での凹部の幅が狭くなる方向に向かって、上記長手方向でのその電極の中心線を越えるものである。また、凸部の先端部は、上記長手方向での凸部の幅が狭くなる方向に向かって、他の電極の上記長手方向での中心線を越えるように、他の電極の凹部に入り込んで配置される。さらに、この構成は、電極形状が点対称なものでもある。点対称な形状とすることにより、電極の配置や設計を容易にすることができ、また、電極の長手方向のどちら側にも同じ条件で粒状の液体22を搬送することができる。
【0037】
このような構成とするとき、図11(b)に示すように、少なくとも一部の電極表面を実質的に含む面において液体運搬方向と交わるいずれの直線上でも、例えばAで示した直線、Bで示した直線、及びCで示した直線のいずれにおいても、2つ以上の第1の電極が位置し、複数の電極がオーバラップするように配置されている。また、凹部の先端部が凹部の幅が狭くなる方向に向かって電極の上記長手方向での中心線を越えること、他の電極の凸部の先端部が凸部の幅が狭くなる方向に向かって電極の上記長手方向での中心線を越えるように他の電極の凹部に入り込んで配置されることにより、オーバラップは隣り合う電極同士だけではなく、2つ隣の電極まで及ぶ。
【0038】
これにより、図11(a)に示すような各種液量の粒状の液体29、粒状の液体30、粒状の液体31でも、それぞれの粒状の液体が現在載っている電極の隣の電極上に掛かり、第1の静電力と第2の静電力を受けることができるため、一定範囲の液量において、第1の電極5の大きさを液量に合わせて変更することなく搬送することが可能になっている。 このような構成では、1の電極上に微小な粒状の液体を載せる際にも、粒状の液体が当該電極に隣接する2つの電極(液体の搬送方向における右隣の電極と左隣の電極)上に掛かる可能性を高めることができる。ここで、粒状の液体が電極上に掛かるとは、粒状の液体の位置が、複数の電極が配置される基板の面に垂直な方向から見たときに、電極の位置する領域に重なることをいう。以下も同様である。すなわち、電極が3つ以上連なって配置される領域において、粒状の液体は連なる3つの電極上にまたがって位置することになる。このように粒状の液体を3つの連なる電極上に掛かる電極形状、電圧印加方式を採用することにより、微量な体積の液体も含めた多様な体積の液体のいずれをも確実に搬送することができる。様々な体積の液体の運搬が予想される装置においては、このような構成により液体搬送の確実性を高めることができる。
【0039】
前述したように、電極上にある粒状の液体が搬送方向隣の電極に掛かっており、第1の静電力と第2の静電力を十分に得られれば、その粒状の液体を搬送することが可能である。そして、粒状の液体が3つの電極上にまたがるように位置することにより、多様な体積の液体のいずれをも搬送させることができる。図11では、電極の幅を1としたときの一番小さい粒状の液体29の直径と、一番大きい粒状の液体31の直径の割合を、0.75および1.5程度となるように液体を電極上に配置した例を示している。
【0040】
以下、電極サイズが長手方向8mm、長手方向に垂直な方向で4mm、第1の基板1と第2の基板2の距離が0.5mmの時に、6μl、12μlの粒状の液体をそれぞれ移動実験した結果を一例として述べる。最初に、粒状の液体が6μlの場合、平面から見た時の粒状の液体の直径はおよそφ4mmであった。このとき、図8(b)に示した実質的な正方形の電極を用いるときには粒状の液体は搬送できなかったが、図10に示した電極を用いるときは、粒状の液体が3つの電極上にまたがるように位置し、粒状の液体は電圧を印加した隣の電極上にスムーズに移動した。このとき、粒状の液体22を示す円は電極配置領域に内接しているが、内接している場合及び内包されている場合であっても、粒状の液体が少なくとも2つ以上の電極上にまたがるように位置していれば、粒状の液体を搬送させることができた。また、粒状の液体が12μlの場合、平面から見た時の粒状の液体22の直径はおよそφ5.5mmであった。このとき、図8(a) に示した実質的な正方形の電極を用いるときにも粒状の液体は電圧を印加した隣の電極上にスムーズに移動したが、図10に示した電極を用いるときは、より迅速に粒状の液体が移動した。
【0041】
図11(a)に電極のサイズと粒状の液体のサイズとの関係の例を示す。電極配置領域に内包されて設置される液体29と、電極配置領域からはみ出した液体31と、液体29より大きくかつ液体31より小さい液体30の各々は、それぞれの粒状の液体(液滴)を示す円が、電極上に掛かる面積が最大となる電極と、当該電極に隣接する電極(液体の搬送方向における右隣の電極と左隣の電極)との3つの電極に接している。
【0042】
このとき、電極の幅を1としたときに、粒状の液体が電極に掛かる面(実質的な円形もしくは実質的な楕円形)における平面から見た時の粒状の液体22を示す円の直径(もしくは最大の径)の割合は0.75以上1.5以下の範囲である。この範囲であるとき、液体を搬送するのに十分な静電力を得る形で粒状の液体を3つの電極上に配置する(掛かる)ことができる。電極の幅に対する粒状の液体の直径がこの程度であれば、通常は十分搬送可能となる。なお、粒状の液体の物理的な性質により状況は変化し得るため、液体の表面張力、粘度等に応じて上記直径の割合は変更することも可能である。
【0043】
ここで、粒状の液体の直径と比較する対象を電極の幅としたのは、次のような理由からである。図12に、電極の幅と電極配列のピッチが同じ場合の例として、電極が正方形の場合(図12(a))と、上記のように凹部と凸部とが噛合い、2つ隣の電極までオーバラップするように配置した場合(図12(b)の各電極の液体搬送方向の長さを比較して示す。電極が正方形の場合、当然ながら幅と長さは同じである。しかし、図10に示した電極形状では長さが幅の約2倍であること、すなわち粒上の液体の搬送方向での最大長さが当該搬送方向と垂直な方向での最大幅に対して実質的に2倍であることが分かる。そのため、粒状の液体の直径と電極の長さ、若しくは、粒状の液体の直径と電極の対角線の長さでは比較できないためである。
【0044】
図13に、(a)に電極が長方形の場合と、(b)に凹部と凸部とが噛合い、オーバラップするように配置し電極の幅と長さが実質的に同じ場合、すなわち粒上の液体の搬送方向での最大長さが、当該搬送方向と垂直な方向での最大幅と実質的に同じ場合の電極形状例を示す。(b)については、第1の電極の長さと幅の関係以外の特徴は、図10における第1の電極と同様である。図13(a)の場合図12(a)と比較して、また図13(b)の場合図12(b)と比較して、各々1つの第1の電極5のピッチがほぼ半分となっており、同じ液体搬送路に配置される第1の電極5の数は2倍になる。搬送可能な液量等の効果は略同じであり、さらに、隣り合う電極2つずつに電圧を印加し、電圧印加電極を1個ずつ切り替える等の制御により、より細かいピッチでの微小液体の搬送が可能になると言う効果がある。また、図12(a)(b)と図13(b)とを比較すると、図13(b)の電極は図12(a)と同じピッチでありながら、図10の第1の電極の如き特徴を有しているため、液体を容易に3つの電極上に配置させ、微小液体をより確実に搬送することができる。
この場合の粒状の液体22の動作例を、図19の(a)から(f)、及び図20の(a)から(f)に示す。
【0045】
図19(a)では、図示中左端2ヶ所の電極に電圧が印加されており、粒状の液体22は、あたかも図12の(a)に示すような、電圧を印加された1つの正方形電極上に配置されたような状態になる。続いて、電圧を印加された2ヶ所の電極の内、図中左側の片方の電極に印加された電圧を切ると同時に、当初電圧を印加されていた2ヶ所の電極の、図中右隣の電極に新たに電圧を印加することを順次繰り返すことによって、図19の(b)から(f)のように、粒状の液体22は移動する。
【0046】
図20では、下の図から上に向かって順に、粒状の液体22が、図中左側から右側に向かって移動する状態を(a)から(f)に示す。この場合、電圧の印加方法は図19に示す例と同じである。
【0047】
これらの場合、同じ液体流通路に配置される第1の電極5の数は2倍であるため、隣り合う電極2つずつに電圧を印加し、電極を1個ずつ切り替える制御により、より細かいピッチでの液体流通が可能になる。特に図13(b)及び図20に示した構成の場合、1の電極に微小な粒状の液体を載せる際にも、粒状の液体を当該電極に隣接する2つの電極(液体の搬送方向における右隣の電極と左隣の電極)とに接させて確実に搬送できるとともに、電極のピッチが小さいために粒状の液体の動きをなめらかにすることができる。
【0048】
なお、本実施例では、電極表面を含む面(実質的に平面と見なせる面)において液体運搬方向と交わるいずれの直線上でも、少なくとも2つの第1の電極5が含まれるように配置しているが、配列の両端の電極、及び、3つ以上の電極が接続される部分は、連続する3つ以上の電極を直線状に配置する部分とはならないため、いずれの直線上でも少なくとも2つの第1の電極5が含まれる構成になるとは限らない。
【0049】
なお、以上では、図10乃至図13に記載の電極の構造を、図1乃至図3、図9、図17及び図18に示した第1の基板と第2の基板とを有する液体搬送基板に適用したが、本構造は、第1の基板を有するが第2の基板を有さない構成の液体搬送基板に適用することもできる。すなわち、図21( (a)は立体的に構成を説明するための図、(b)は第1の基板を示す図)に示すように、第1の基板1上に設けられた複数の電極5に順次電圧を印加し、粒状の液体を搬送することも可能である。この場合には、第2の基板を設置しないため、構成をより簡易化することができる。
【実施例2】
【0050】
図14から図16は液体搬送基板の構成の例を示す略図であり、図14は平面図(基板の内部構成を示すための部分断面図)を、図15は正面側からの断面図を、図16は側面側からの断面図を表している。本実施例での液体搬送基板の構成は、実施例1と略同じであり、試料や試薬などの液体を導入、搬送、排出方法、この液体搬送基板により、試料中に含まれる成分量を検出する方法、及び、搬送可能な粒状の液体の液量範囲を広くする電極形状に関しても略同じである。違っている点は、第1の電極5が第2の基板2にあり、第2の電極6が第1の基板1にあることである。これにより、実施例1で述べた粒状の液体の蒸発防止用に用いるオイルがフロロカーボン系の場合、以下のような効果がある。
【0051】
フロロカーボン系オイルの比重は1.9前後と、水や分析に用いる試料、試薬に比べかなり大きく、フロロカーボン系オイル中の試料や試薬からなる粒状の液体22には浮力が働く。すると、第1の基板1と粒状の液体22との間には隙間ができる。厳密に言えば、第1の基板1に形成された第1の電極5を覆っている絶縁膜を更に覆っている撥水膜と、粒状の液体22との間に隙間ができ、フロロカーボン系オイルが入り込む。実施例1で、電極と粒状の液体の距離が大きすぎると粒状の液体を搬送するために十分な静電力を得ることが難しくなると述べたが、この隙間により、粒状の液体を搬送するために十分な静電力を得ることが難しくなる可能性がある。そこで、液体搬送用の第1の電極5を上側の第2の基板2側に形成することにより、このような可能性を排除し、粒上の液体が制御用の第1の電極5から離れることなく正確に搬送することができる。
【実施例3】
【0052】
以下、実施例1、2に示した液体搬送基板を分析システムに用いた例を示す。本実施例では,試料として血清を用い,基板上で複数の試料を実質的に一方向に順次搬送させ,測定部において透過光量を測定し,試料の濁度を測定する。装置構成を図22に示す。装置は試料ディスクユニット110,搬送基板ユニット200,光学ユニット300,廃液ユニット400から構成されている。試料は試料ディスクユニット110内のピペッタ111により試料ディスクユニット110から搬送基板ユニット200内に分注され,搬送基板ユニット200内で基板に配置された電極に順次電圧を印加することにより搬送され,光学ユニット300により検出後,廃液ユニット400内のシッパー401により搬送基板ユニット200内から廃液タンク402に排出される。
【0053】
試料ディスクユニット110の構成を図23に示す。液体500は容器113の中に収められ,試料ディスク112の円周上に複数配置される。試料ディスク112はモーターにより回転する。試料ディスク112の内周側には前処理ディスク114が設けられ,複数配置された前処理容器115にて試料の希釈を行う。ピペッタ111は上下方向と支柱を中心とした円周方向に移動し,試料ディスク112と前処理ディスク114の回転移動と合わせて,容器113内の液体500を吸引し,前処理容器115内へ吐出,また,前処理容器115から吸引し,搬送基板ユニット200内に液体を吐出する。
【0054】
搬送基板ユニット200としては実施例1及び実施例2に示した搬送基板を用いるが、ここでは簡単のため、概略図の図24を用いて説明する。搬送基板ユニット200内には,導入口203(導入口7等に対応),測定部206(測定部4等に対応),排出口204(排出口8等に対応)が配置され,導入口203と排出部204は粒状の液体を搬送する液体搬送路205で結ばれ,途中に測定部206が存在する。ピペッタ111により試料導入口203に分注された液体は,液体流通路205を排出部204まで搬送される間に,測定部206にて測定される。その後,廃液ユニット400内のシッパー401により廃液タンク402に排出される。
【0055】
実施例1及び実施例2に示した搬送基板を用いることにより、粒状の液体の搬送について実施例1及び実施例2の各々の効果を有する分析システムを実現することができる。
以上に記載した実施例に対応する構成として、以下の構成とすることもできる。
【0056】
(1)基板と、前記基板に設けられた、液体を導入するための導入口と、前記基板に設けられた、前記液体を排出するための排出口と、前記基板に設けられ、前記液体が流通する液体流通路と測定部とを形成する複数の電極と、前記複数の電極の少なくとも一部に電圧を印加する導電手段を有し、前記複数の電極は、前記液体の流通する方向に配置され、複数の電極からなる配列の両端の電極、及び、3個以上の電極が接続される部分を除き、前記液体の流通の方向に対して実質的に垂直な方向のいずれの断面でも少なくとも2つの前記電極が含まれるべく配置されることを特徴とする液体流通基板。
【0057】
(2)一定の間隔を持って平行に対向し、面方向が概略水平に配置された第1の基板と第2の基板と、前記第1の基板に設けられた液体が流通する液体流通路と測定部とを形成する複数の第1の電極と、前記第2の基板に設けられた前記第1の電極と対向する前記第1の電極と同数、若しくは、前記第1の電極と対向する1、若しくは、複数の第2の電極と、前記第2の基板に設けられた前記液体を導入するための導入口と、前記第2の基板に設けられた前記液体を排出するための排出口と、前記第1の電極の前記複数の電極の少なくとも一部と前記第2の電極に電圧を印加する導電手段を有し、前記第1の電極である前記複数の電極は、前記液体の流通する方向に配置され、複数の電極からなる配列の両端の電極、及び、3個以上の電極が接続される部分を除き、前記液体の流通の方向に対して実質的に垂直な方向のいずれの断面でも少なくとも2つの前記電極が含まれるべく配置されることを特徴とする液体流通基板。
【0058】
(3)一定の間隔を持って平行に対向し、面方向が概略水平に配置された第1の基板と第2の基板と、前記第2の基板に設けられた液体が流通する液体流通路と測定部とを形成する複数の第1の電極と、前記第1の基板に設けられた前記第1の電極と対向する前記第1の電極と同数、若しくは、前記第1の電極と対向する1、若しくは、複数の第2の電極と、前記第2の基板に設けられた前記液体を導入するための導入口と、前記第2の基板に設けられた前記液体を排出するための排出口と、前記第1の電極の前記複数の電極の少なくとも一部と前記第2の電極に電圧を印加する導電手段を有し、前記第1の電極である前記複数の電極は、前記液体の流通する方向に配置され、複数の電極からなる配列の両端の電極、及び、3個以上の電極が接続される部分を除き、前記液体の流通の方向に対して実質的に垂直な方向のいずれの断面でも少なくとも2つの前記電極が含まれるべく配置されることを特徴とする液体流通基板。
【0059】
(4)前記複数の電極は、複数の電極からなる配列の両端の電極、及び、3個以上の電極が接続される部分を除くそれぞれの電極において、前記電圧を印加する導電手段部を除き、前記第1の基板の表面方向で、かつ、前記液体の流通する方向と垂直な方向の最大幅に対し、前記液体の流通する方向の最大長さが概略2倍であることを特徴とする(1)若しくは(2)に記載の液体流通基板。
【0060】
(5)前記複数の電極は、複数の電極からなる配列の両端の電極、及び、3個以上の電極が接続される部分を除くそれぞれの電極において、前記電圧を印加する導電手段部を除き、前記第1の基板の表面方向で、かつ、前記液体の流通する方向と垂直な方向の最大幅に対し、前記液体の流通する方向の最大長さが概略同じであることを特徴とする(1)若しくは(2)に記載の液体流通基板。
【0061】
(6)前記電極は、隣り合う電極間の向かい合う部分で凹部と凸部とを有し、前記凹部は前記液体の流通の方向での前記電極の中心に向かって幅が狭くなり、前記凸部は前記中心に向かって幅が広くなることを特徴とする(1)内至(3)に記載の液体流通基板。
【0062】
(7)第1の液体を収める容器と、第1の液体を吸引及び吐出するピペットとを具備する第1のユニットと、前記ピペットから吐出された前記第1の液体を導入する第1の液体導入部と、前記第1の液体を導出する排出口と、複数の電極を備えてかつ前記第1の液体導入部と前記排出口とをつなぐ液体流通路と、前記液体流通路の少なくとも一ヶ所に設けられた測定部と、前記電極に電圧を印加する電圧印加手段を具備する第2のユニットと、前記測定部に対応する検出系を具備する第3のユニットと、前記排出口から液体を吸引する吸引部と、吸引された液体を収める廃液部を具備する第4のユニットを有し、前記電圧印加手段は、前記第1の液体を前記液体流通路で流通させるように前記電極に前記電圧を印加し、前記複数の電極は、前記液体の流通する方向に配置され、かつ前記液体の流通の方向に対して実質的に垂直な方向のいずれの断面でも少なくとも2つの前記電極が含まれるべく配置されることを特徴とする分析システム。
【0063】
(8)前記液体流通路が複数列並列に配置され、それぞれの列に測定項目により異なる検出系からなる第3のユニットを具備し、第3のユニットを持たない予備の列を有することを特徴とする(7)に記載の分析システム。
【0064】
(9)前記電極は、隣り合う電極間の向かい合う部分で凹部と凸部とを有し、前記凹部は前記液体の流通の方向での前記電極の中心に向かって幅が狭くなり、前記凸部は前記中心に向かって幅が広くなることを特徴とする(7)に記載の分析システム。
【0065】
(10)液体導入部に第1の液体を導入する工程と、複数の電極を配置された液体流通路上で、前記電極の少なくとも一部に電圧を印加して、前記第1の液体を液体流通路上で流通する工程と、前記液体流通路の少なくとも一部に設けられた測定部で、前記第1の液体について検出を行う工程と、液体排出部から前記第1の液体を導出する工程とを有し、前記複数の電極は、前記液体の流通の方向に対して実質的に垂直な方向のいずれの断面でも少なくとも2つの前記電極が含まれるべく配置されるものであり、前記流通する工程では、前記第1の液体が2つ以上の前記電極の上に位置するように前記電圧を印加することを特徴とする分析方法。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】液体搬送基板の構成の例を示す平面図である。
【図2】液体搬送基板の構成の例を示す正面側からの断面図である。
【図3】液体搬送基板の構成の例を示す側面側からの断面図である。
【図4】図1と同じ断面を用い、手順を時系列で示した略図である。
【図5】図4で示す方式の、別方式配線を示す回路図である。
【図6】図4で示す方式の、別方式配線を示す回路図である。
【図7】試料中に含まれる成分量検出の方法の例を示す、液体搬送基板の正面側からの断面図である。
【図8】電極と粒状の液体との大きさの関係の例を示す平面図である。
【図9】複数の導入口を持つ液体搬送基板の例を示す平面図である。
【図10】電極形状の例を示す平面図である。
【図11】電極形状と粒状の液体の大きさの例を示す平面図である。
【図12】電極形状の例を示す平面図である。
【図13】電極形状の例を示す平面図である。
【図14】液体搬送基板の構の例成を示す平面図である。
【図15】液体搬送基板の構成の例を示す正面側からの断面図である。
【図16】液体搬送基板の構成の例を示す側面側からの断面図である。
【図17】液体搬送基板の構成の例を示す平面図である。
【図18】パッド領域の一例を第1の基板側から見た部分拡大図である。
【図19】図13(a)の構成における粒状の液体の動作例の略図である。
【図20】図13(b)の構成における粒状の液体の動作例の略図である。
【図21】液体搬送基板の構成の例を示す平面図である。
【図22】液体搬送基板を分析システムに用いた例である。
【図23】試料ディスクユニット110の構成の例である。
【図24】搬送基板ユニット200の概略図である。
【符号の説明】
【0067】
1…第1の基板、2…第2の基板、3…液体搬送路、4…測定部、5…第1の電極、5’…第1の電極、5”…第1の電極、5’ ”…第1の電極、6…第2の電極、7…導入口、8…排出口、9…スペーサ、10…側壁、11…配線、12…パッド、13…配線、14…パッド、15…配線部材、16…制御装置、17…スイッチ、18…電源、19…液体、20…ディスペンサ、21…空間、22…粒状の液体、23…ディスペンサ、24…廃液、25…光、26…光源、27…受光部、28…計測部、29…配線用リード線、29’…粒状の液体、30…粒状の液体、31…粒状の液体、電極…51、電極…52、中間電極の群…53、窓…101、絶縁膜…103、試料ディスクユニット…110、ピペッタ…111、試料ディスク…112、容器…113、前処理ディスク…114、前処理容器…115、搬送基板ユニット…200、導入口…203、排出部…204、液体搬送路…205、測定部…206、光学ユニット…300、廃液ユニット…400、シッパー…401、廃液タンク…402、液体…500。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基板と、
前記第1の基板に設けられた、複数の第1の電極と、
任意の前記第1の電極を介して液体に電圧を印加するための第1の導電手段とを有し、
前記複数の第1の電極の少なくとも一部は、前記液体の搬送方向での一方の端部と他方の端部との各々に凸部と凹部とを具備し、前記一部の各々は、1の前記第1の電極の前記凸部の先端部が、隣接する前記第1の電極の前記凹部に入り込み、かつ、前記凸部の幅が狭くなる方向に向かって、隣接する前記第1の電極の長手方向での中心線を越えることを特徴とする液体搬送基板。
【請求項2】
前記複数の第1の電極は、配列として配置され、かつ前記配列の一端に位置する一端電極と、前記配列の他端に位置する他端電極と、前記一端電極と前記他端電極との間に位置する中間電極とからなり、少なくとも一部の前記中間電極は、その表面を実質的に含む面上で前記液体の搬送方向と交わるすべての直線上に2つ以上の前記中間電極が位置するように配置されることを特徴とする請求項1に記載の液体搬送基板。
【請求項3】
第2の基板と、
前記液体を導入するための導入口と、
前記液体を排出するための排出口と、
前記第2の基板に設けられた第2の電極と、
前記第2の電極に電圧を印加するための第2の導電手段とをさらに有することを特徴とする請求項1に記載の液体搬送基板。
【請求項4】
前記中間電極は点対称な形状であることを特徴とする請求項2に記載の液体搬送基板。
【請求項5】
前記中間電極の一部が、前記液体についての測定をするための測定部であることを特徴とする請求項2に記載の液体搬送基板。
【請求項6】
前記第2の電極の上に設けられる絶縁膜と、前記絶縁膜の上に設けられる撥水膜とを更に有し、前記第2の電極は、前記第2の基板の前記第1の基板に向き合う面の一部に設置され、前記導電手段は配線と配線接続部材とを有することを特徴とする請求項3に記載の液体搬送基板。
【請求項7】
前記第2の電極の上の一部に設けられる絶縁膜と、前記絶縁膜の上に設けられる撥水膜とを更に有し、前記導電手段は配線と配線接続部材とを有し、前記第2の電極は、前記第2の基板の前記第1の基板に向き合う面に設置され、前記絶縁膜は、前記第2の電極の前記第1の基板に向き合う面の、前記配線接続部材の位置する領域以外の領域に設けられることを特徴とする請求項3に記載の液体搬送基板。
【請求項8】
前記中間電極は、前記液体の搬送方向の最大長さが前記搬送方向と垂直な方向の最大幅に対して実質的に2倍であることを特徴とする請求項3に記載の液体搬送基板。
【請求項9】
前記中間電極は、前記液体の搬送方向の最大長さが前記搬送方向と垂直な方向の最大幅と実質的に同じであることを特徴とする請求項3に記載の液体搬送基板。
【請求項10】
第1の液体を収める容器と、前記第1の液体を吸引及び吐出するピペットとを具備する第1のユニットと、
前記ピペットから吐出された前記第1の液体を導入する第1の液体導入部と、前記第1の液体を導出する排出口と、複数の第1の電極を備えてかつ前記第1の液体導入部と前記排出口とをつなぐ液体搬送路と、前記液体搬送路の少なくとも一部に設けられた測定部と、前記複数の第1の電極の少なくとも一部に電圧を印加する電圧印加手段を具備する第2のユニットと、
前記測定部に対応する検出系を具備する第3のユニットと、
前記排出口から液体を吸引する吸引部と、吸引された液体を収める廃液部とを具備する
第4のユニットとを有し、
前記電圧印加手段は、前記第1の液体を前記液体流通路で搬送させるように前記電極に
前記電圧を印加し、前記検出系は前記測定部に搬送された前記第1の液体についての検出
を行い、前記複数の第1の電極の少なくとも一部は、前記第1の液体の搬送の方向での一方の端部と他方の端部との各々に凸部と凹部とを具備し、1の前記第1の電極の前記凸部の先端部は、隣接する前記第1の電極の前記凹部に入り込み、かつ、前記凸部の幅が狭くなる方向に向かって、隣接する前記第1の電極の長手方向での中心線を越えることを特徴とする分析システム。
【請求項11】
前記複数の第1の電極は、配列として設置され、かつ前記配列の一端に位置する一端電極と、前記配列の他端に位置する他端電極と、前記一端電極と前記他端電極との間に位置する中間電極とからなり、少なくとも一部の前記中間電極は、その表面を実質的に含む面上で前記液体の搬送方向と交わるすべての直線上に2つ以上の前記中間電極が位置するように配置されることを特徴とする請求項10に記載の分析システム。
【請求項12】
前記第2のユニットは、
前記複数の第1の電極が構成される第1の基板と、
第2の基板と、
前記第2の基板に設けられた第2の電極と、
前記液体を導入するための導入口と、
前記液体を排出するための排出口とを有し、
前記電圧印加手段は前記第2の電極へも電圧を印加することを特徴とする請求項10に記載の分析システム。
【請求項13】
前記電圧印加手段は、前記電圧を制御する回路を有し、前記回路は前記電圧の印加後に前記電圧を印加した第1の電極に一時的に逆電位を印加することを特徴とする請求項10に記載の分析システム。
【請求項14】
前記電圧印加手段は、前記電圧を制御する回路を有し、前記回路は前記電圧の印加後に前記第1の電極と前記第2の電極とを同電位にする制御を行うことを特徴とする請求項10に記載の分析システム。
【請求項15】
液体導入部に液体を導入する工程と、
複数の電極が配置された液体搬送路上で、前記電極の少なくとも一部に電圧を印加して、前記電極を介して前記電圧を印加される前記液体を液体搬送路上で搬送する工程と、
前記液体搬送路の少なくとも一部に設けられた測定部で、前記液体について検出を行う工程と、
液体排出部から前記液体を導出する工程とを有し、
前記搬送する工程では、前記液体は粒状液体として搬送され、前記粒状液体は、前記電極が3つ以上連なって配置される領域で、3つの連なった前記電極上に掛かることを特徴とする分析方法。
【請求項16】
前記複数の電極の少なくとも一部は、前記液体の搬送方向での一方の端部と他方の端部との各々に凸部と凹部とを具備し、1の前記第1の電極の前記凸部の先端部は、隣接する前記第1の電極の前記凹部に入り込み、かつ、前記凸部の幅が狭くなる方向に向かって、隣接する前記第1の電極の長手方向での中心線を越えることを特徴とする請求項15に記載の分析方法。
【請求項17】
前記複数の電極は、配列として設置され、かつ前記配列の一端に位置する一端電極と、前記配列の他端に位置する他端電極と、前記一端電極と前記他端電極との間に位置する中間電極とからなり、少なくとも一部の前記中間電極は、その表面を実質的に含む面上で前記液体の搬送方向と交わるすべての直線上に2つ以上の前記中間電極が位置するように配置されることを特徴とする請求項15に記載の分析方法。
【請求項18】
前記導入する工程では、前記液体は、前記電極の幅を1としたときに、少なくとも一部の前記電極上で前記電極に掛かる面における最大の径が0.75以上1.5以下の範囲となるように導入されることを特徴とする請求項15に記載の分析方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2006−292599(P2006−292599A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−115234(P2005−115234)
【出願日】平成17年4月13日(2005.4.13)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】