説明

液体断熱貯槽の組立方法

【課題】運搬時の安全性を確保すると共に、運搬重量の低減を図ることができる液体断熱貯槽の組立方法を提供すること。
【解決手段】据付工程により外槽20の脚体30とその脚体30上に載置された内槽10とが現地Gに立てた状態で据付けられ、据付工程で現地Gに据付けられた内槽10の上方から外槽20の胴体40が覆設工程により覆設される。これにより、外槽20が形成される。そして、その覆設工程の後、充填工程により内槽10と外槽20との間に断熱材Pが充填される。よって、外槽20の形成や断熱材Pの充填を現地Gで行うので、内槽10及び外槽20並びに断熱材Pをそれぞれ個別に現地Gまで運搬することができる。従って、運搬重量の低減を図ることができる。また、運搬重量が低減されるので、運搬時の安全性を確保することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体断熱貯槽の組立方法に関し、特に、運搬時の安全性を確保すると共に、運搬重量の低減を図ることができる液体断熱貯槽の組立方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、液体断熱貯槽とは、液体を貯蔵する内槽と、その内槽を囲繞する外槽とを備え、それら内槽と外槽との間に断熱材を充填することで、内槽に貯蔵された液体を断熱しつつ貯蔵するものである。例えば、特開平11−94198号公報には、低温液体Lを貯蔵する内槽12と、その内槽12を囲繞する外槽13とを備え、それら内槽12と外槽13との間に保冷材を充填して保冷層14を形成した竪型断熱低温タンクが開示されている。
【0003】
内槽に貯蔵する液体の貯蔵量が100キロリットル程度の小型の液体断熱貯槽は、工場で内槽および外槽の組み立てや断熱材の充填が行われ、完成品の状態で現地に運搬されている。よって、現地では、運搬された完成品を据付ける作業のみを行えば良く、これにより、現地での作業の簡略化が図られていた。
【特許文献1】特開平11−94198号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、液体断熱貯槽を完成品の状態で現地に運搬する場合には、重量が重く運搬が困難なため、その分、運搬時に危険を伴うという問題点があった。また、地域によっては、運搬重量が法律規制の範囲をオーバーするために、運搬することができないという問題点があった。
【0005】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、運搬時の安全性を確保すると共に、運搬重量の低減を図ることができる液体断熱貯槽の組立方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を解決するために請求項1記載の液体断熱貯槽の組立方法は、液体を貯蔵する内槽と、その内槽を囲繞する外槽とを備え、それら内槽と外槽との間に断熱材を充填して構成される液体断熱貯槽の組立方法であって、前記外槽は、前記内槽を載置した状態で現地に据付けられる脚体と、その脚体とは別体に構成され、その脚体と共に前記内槽を囲繞する胴体と、その胴体内側に配設され前記脚体上に載置された内槽を支持する支持材とを備えて構成され、前記外槽の脚体とその脚体上に載置された内槽とを現地に立てた状態で据付ける据付工程と、その据付工程により現地に据付けられた内槽の上方から前記外槽の胴体を覆設し、その胴体および脚体によって前記内槽を囲繞する覆設工程と、その覆設工程の後に前記内槽と外槽との間に断熱材を充填する充填工程とを備え、その充填工程の前に前記支持材を、前記外槽の胴体または前記内槽に配設する配設工程を備えている。
【0007】
請求項2記載の液体断熱貯槽の組立方法は、請求項1記載の液体断熱貯槽の組立方法において、前記据付工程の前に、前記外槽の脚体と前記内槽とを連結した状態で現地に運搬する運搬工程を備えている。
【0008】
請求項3記載の液体断熱貯槽の組立方法は、請求項1又は2に記載の液体断熱貯槽の組立方法において、前記外槽の胴体は、前記支持材を前記外槽の胴体外側から挿入して固定するための挿入孔を備えて構成され、前記配設工程は、前記挿入孔に前記支持材を挿入する挿入工程と、その挿入工程により前記挿入孔に挿入された前記支持材を前記挿入孔に固定する固定工程とを有しており、前記挿入工程と前記固定工程とを前記覆設工程の後であって前記充填工程の前に行う。
【0009】
請求項4記載の液体断熱貯槽の組立方法は、請求項1から3のいずれかに記載の液体断熱貯槽の組立方法において、前記液体断熱貯槽は、冷却水を前記外槽に散水する散水管を備えて構成され、その散水管を前記外槽に配設する艤装品配設工程と、前記内槽と外槽との間の真空引きを行う真空引き工程とを有しており、その真空引き工程と前記艤装品配設工程とを、前記充填工程の後に並行して行う。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の液体断熱貯槽の組立方法によれば、据付工程により外槽の脚体とその脚体上に載置された内槽とが現地に立てた状態で据付けられ、据付工程で現地に据付けられた内槽の上方から外槽の胴体が覆設工程により覆設される。これにより、外槽が形成され、その外槽の胴体および脚体によって内槽が囲繞される。そして、その覆設工程の後、充填工程により内槽と外槽との間に断熱材が充填される。よって、外槽の形成や断熱材の充填を現地で行うので、内槽および外槽ならびに断熱材をそれぞれ個別に現地まで運搬することができる。従って、従来のように大重量の完成品を現地まで運搬する必要がないので、運搬重量の低減を図ることができるという効果がある。これにより、運搬重量が法律規制の範囲をオーバーしないように、液体断熱貯槽を分割して運搬することで、法律を遵守することができる。また、運搬重量が低減されるので、運搬車両の横転を招く等の危険を回避することができ、運搬時の安全性を確保することができるという効果がある。
【0011】
また、据付工程により外槽の脚体とその脚体上に載置された内槽とが現地に立てた状態で据付けられるので、覆設工程では、内槽を立てた状態のまま外槽を形成することができる。よって、内槽を寝かせた状態で外槽を形成する場合には広大な敷地スペースが必要となるが、屋外での作業のために制限されることのない高さを有効に活用できるので、少ないスペースで組み立てを行うことができるという効果がある。
【0012】
また、充填工程の前に、配設工程により支持材が外槽の胴体または内槽に配設されるので、覆設工程で外槽の胴体を内槽に覆設することにより、外槽の脚体上に載置された内槽を支持材によって外槽の胴体に支持することができる。よって、内槽の揺れや倒れを防止することができるという効果がある。
【0013】
請求項2記載の液体断熱貯槽の組立方法によれば、請求項1記載の液体断熱貯槽の組立方法の奏する効果に加え、据付工程の前に、運搬工程により外槽の脚体と内槽とが連結された状態で現地に運搬されるので、据付工程では、脚体を現地に据付けるだけで、内槽と脚体とを同時に現地に据付けることができる。よって、現地で内槽を外槽の脚体上に載置する作業が不要となるので、作業の簡略化を図ることができるという効果がある。
【0014】
請求項3記載の液体断熱貯槽の組立方法によれば、請求項1又は2に記載の液体断熱貯槽の組立方法の奏する効果に加え、覆設工程の後であって充填工程の前に、挿入工程により支持材が挿入孔に挿入され、挿入工程で挿入孔に挿入された支持材が固定工程により挿入孔に固定される。よって、覆設工程で外槽の胴体を内槽に覆設する際に支持材と内槽とが干渉することがないので、外槽の胴体を内槽に容易に覆設することができるという効果がある。一方、充填工程の前に固定工程が行われるので、充填工程で断熱材を充填する際に挿入孔から断熱材が漏れ出すことを防止できるという効果がある。
【0015】
請求項4記載の液体断熱貯槽の組立方法によれば、請求項1から3のいずれかに記載の液体断熱貯槽の組立方法の奏する効果に加え、充填工程の後に、艤装品配設工程により散水管が外槽に配設され、その艤装品配設工程と並行して、真空引き工程により内槽と外槽との間の真空引きが行われる。よって、断熱効果を高めるべく重要であるが比較的時間を要する真空引きと、現地に設けられた冷却水を導入するための配管を接続するべく現地でしか作業のできない散水管の配設とを同時に行うことができるので、組み立て工期の短縮を図ることができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の好ましい実施形態について、添付図面を参照して説明する。図1は、液体断熱貯槽1の正面図である。なお、図1では、外槽20の一部が断面視されている。
【0017】
まず、図1を参照して、液体断熱貯槽1について説明する。液体断熱貯槽1は、例えば液化天然ガス(以下「LNG」と称す。)を貯蔵する貯槽であり、図1に示すように、内槽10と、その内槽10を囲繞する外槽20とを主に備え、それら内槽10と外槽20との間に断熱材Pを充填して構成されている。
【0018】
内槽10は、LNGを貯蔵する部材であり、両端が開放された略円筒状の胴板11と、その胴板11の両端を閉塞する皿状の鏡12,13とを備え、内部空間を有する容器状体に構成されている。鏡12には、吊り部12aが突出して形成されている。吊り部12aは、ワイヤロープ等を掛止するための部位であり、この吊り部12aにワイヤロープ等を掛止し、そのワイヤロープ等をクレーン等で引き上げることにより、内槽10を吊り上げることができる。なお、本実施形態における液体断熱貯槽1では、吊り部12aは一対設けられているので、内槽10をより一層安定して吊り上げることができる。
【0019】
また、内槽10には、一対のレグ50が配設されている。一対のレグ50は、内槽10を後述する外槽20の脚体30上に立てた状態で載置するための部材であり、胴板11の鏡13側(図1下側)に固定されている。よって、吊り部12aを利用して内槽10を吊り上げた場合には、一対のレグ50が内槽10の下部側に位置した状態となる。従って、内槽10を容易に外槽20の脚体30上に立てた状態で載置することができる。
【0020】
外槽20は、内槽10を載置した状態で現地Gに据付けられる脚体30と、その脚体30と共に内槽10を囲繞する胴体40とを備えて構成されている。脚体30は、後述する胴板21の一端側(図1下側)を閉塞する皿状の鏡23と、その鏡23を支持して現地Gに据付ける一対のレグ60とを備えている。鏡23には、載置部23aが形成されている。載置部23aは、内槽10に配設された一対のレグ50をそれぞれ支持する部位であり、この載置部23aで一対のレグ50をそれぞれ支持することにより、内槽10を脚体30上に立てた状態で載置することができる。
【0021】
胴体40は、両端が開放された略円筒状の胴板21と、その胴板21の一端側(図1上側)を閉塞する皿状の鏡22とを備えている。胴板21には、2個の挿入孔21aが穿設されている。この挿入孔21aに、後述する支持材70が配設される。また、鏡22には、吊り部22aが突出して形成されている。吊り部22aは、ワイヤロープ等を掛止するための部位であり、この吊り部22aに例えばワイヤロープ等を掛止し、そのワイヤロープ等をクレーン等で引き上げることにより、胴体40を吊り上げることができる。なお、本実施形態における液体断熱貯槽1では、吊り部22aは一対設けられているので、胴体40をより一層安定して吊り上げることができる。
【0022】
上述したように、胴板21の挿入孔21aには、支持材70が配設されている。支持材70は、脚体30上に載置された内槽10の上部側(図1上側)を支持する部材であり、軸状に形成され、挿入孔21aから胴体40内側に挿入されると共に、その挿入孔21aに一端側が固定されている。つまり、支持材70は、胴体40内側に配設され、他端側を内槽10に突き当てた状態で内槽10を支持する。なお、本実施形態における液体断熱貯槽1では、2本の支持材70を備え、それら2本の支持材70が、胴板21に穿設された2個の挿入孔21aにそれぞれ固設されている。これにより、内槽10をより一層安定して支持することができる。
【0023】
また、外槽20には、散水管80及び圧力計81並びに液面計82がそれぞれ配設されている。散水管80は、冷却水を外槽20に散水する配管であり、上側(図1上側)の鏡22に取着されると共に、現地Gに設けられた冷却水を導入するための配管(図示せず)に接続されている。圧力計81は、内槽10に貯蔵されたLNGの圧力を表示する計器であり、胴板21に取着されると共に、内槽10の内部空間から導出された配管(図示せず)に接続されている。液面計82は、内槽10に貯蔵されたLNGの液面高さを表示する計器であり、圧力計81と同様に、胴板21に取着されると共に、内槽10の内部空間から導出された配管(図示せず)に接続されている。
【0024】
更に、外槽20には、LNG用配管83及び作業用配管84がそれぞれ配設されている。LNG用配管83は、内槽10へのLNGの供給や内槽10からのLNGの取出を行うための配管であり、下側(図1下側)の鏡23に取着されると共に、内槽10の内部空間から導出された配管(図示せず)に接続されている。作業用配管84は、液体断熱貯槽1を組み立てる際に、各種作業を行うために使用される配管であり、鏡23に取着されている。
【0025】
断熱材Pは、内槽10を断熱する部材であり、内槽10と外槽20との間に充填されている。これにより、内槽10に貯蔵されたLNGが保冷される。なお、本実施形態における液体断熱貯槽1では、断熱材Pが粒状のパーライトにより構成されると共に、断熱材Pを充填した内槽10と外槽20との間が真空状態に構成されている。
【0026】
次に、図2から図4を参照して、上述のように構成された液体断熱貯槽1の組立方法について説明する。図2から図4は、液体断熱貯槽1の組立工程を示した工程系統図であり、液体断熱貯槽1を組み立てる様子が時系列的に図示されている。なお、図3及び図4では、足場Xの紙面表側半分の図示が省略されている。
【0027】
図2(a)に示すように、液体断熱貯槽1を組み立てる場合には、まず、工場等の生産現場において、内槽10と外槽20の脚体30及び胴体40とをそれぞれ製作すると共に、その製作した内槽10に一対のレグ50を配設する。
【0028】
一対のレグ50を内槽10に配設した後は、図2(b)に示すように、その一対のレグ50を脚体30の鏡23に形成された載置部23aにそれぞれ固定して、内槽10と脚体30とを連結する。また、LNG用配管83及び作業用配管84を脚体30の鏡23にそれぞれ取着する。
【0029】
次いで、図2(c)に示すように、内槽10及びその内槽10に連結された脚体30と、胴体40とを、それぞれ運搬車両Vにより現地Gへ運搬する(運搬工程)。この場合、内槽10と脚体30とを連結して運搬することにより、運搬効率の向上を図ることができる。
【0030】
内槽10及びその内槽10に連結された脚体30と、胴体40とをそれぞれ現地Gへ運搬した後は、図3(a)に示すように、内槽10とその内槽10に連結された脚体30とを現地Gに据付ける(据付工程)。具体的には、まず、内槽10の鏡12に形成された吊り部12aにワイヤロープW1を掛止し、そのワイヤロープW1をクレーン(図示せず)で引き上げて内槽10を吊り上げる。この場合、内槽10と脚体30とが連結されているので、内槽10を吊り上げると同時に、脚体30が吊り上げられる。そして、クレーンで吊り上げた内槽10とその内槽10に連結された脚体30とを所定場所まで運び、脚体30を現地Gに据付ける。これにより、脚体30とその脚体30上に載置された内槽10とを現地Gに立てた状態で据付けることができる。なお、これと同時に、作業者の足場となる足場Xを脚体30の周囲に設置する。
【0031】
脚体30とその脚体30上に載置された内槽10とを現地Gに据付けた後は、図3(b)に示すように、その内槽10の上方から胴体40を覆設する(覆設工程)。具体的には、まず、胴体40の鏡22に形成された吊り部22aにワイヤロープW2を掛止し、そのワイヤロープW2をクレーン(図示せず)で引き上げて胴体40を吊り上げる。そして、胴体40を吊り上げた状態のまま内槽10の上方に運んだ後、その胴体40を下降させて内槽10に覆設する。これにより、その胴体40及び脚体30によって内槽10が囲繞される。また、胴体40を内槽10に覆設した後は、その胴体40を脚体30と連結して、外槽20を形成する。このように、内槽10を現地Gに立てた状態のまま外槽20を形成することで、屋外での作業のために制限されることのない高さを有効に活用することができる。よって、内槽10を寝かせた状態で外槽20を形成する場合には広大な敷地スペースが必要となるのに比べ、少ないスペースで組み立てを行うことができる。
【0032】
外槽20を形成した後は、図3(c)に示すように、支持材70を胴体40に配設する(配設工程)。具体的には、まず、2本の支持材70を胴体40の胴板21に形成された2個の挿入孔21aにそれぞれ挿入する(挿入工程)。そして、それら2本の支持材70を各挿入孔21a(図1参照)に固定する(固定工程)。これにより、2本の支持材70が胴体40の内側に配設される。よって、脚体30上に載置された内槽10を支持材70によって胴体40に支持することができるので、内槽10の揺れや倒れを防止することができる。なお、支持材70を胴体40に配設する際には、上述した足場Xを利用して作業を行う。
【0033】
支持材70を胴体40に配設した後は、脚体30と胴体40との連結や支持材70の固定が正常に行われているかを確認するため、外槽20の気密試験を行う。具体的には、まず、図3(d)に示すように、窒素ガス等のガスを加圧し噴出するガスポンプAを作業用配管84に接続すると共に、外槽20の外壁に石鹸水(図示せず)を塗布する。そして、ガスポンプAで加圧されたガスを作業用配管84から内槽10と外槽20との間に封入する。これにより、脚体30と胴体40との連結や支持材70の固定が正常に行われていない不具合箇所がある場合には、その不具合箇所からガスが漏れ出し、外槽20の外壁に塗布された石鹸水が泡立つ。よって、一見して不具合箇所を特定することができる。
【0034】
外槽20の気密試験を行った後は、断熱材Pを内槽10と外槽20との間に充填する(充填工程)。具体的には、まず、図4(a)に示すように、真空引きを行う真空ポンプBを作業用配管84に接続すると共に、断熱材Pを供給する断熱材タンクCを外槽20の鏡22に穿設された充填孔(図示せず)に接続する。そして、真空ポンプBで内槽10と外槽20との間の真空引きを行いつつ、その内槽10と外槽20との間に断熱材タンクCから断熱材Pを充填する。これにより、真空引きを行わずに断熱材Pを充填する場合に比べ、断熱材Pの充填密度を増大させることができる。よって、断熱効果を高めることができる。
【0035】
断熱材Pを充填した後は、図4(b)に示すように、引き続き、真空ポンプBで内槽10と外槽20との間の真空引きを行う(真空引き工程)。これにより、内槽10と外槽20との間の対流を抑制することができるので、より一層断熱効果を高めることができる。また、内槽10と外槽20との間の真空引きを行うのと並行して、図4(b)に示すように、散水管80を外槽20に配設する(艤装品配設工程)。これにより、断熱効果を高めるべく重要であるが例えば2週間程度の比較的時間を要する真空引きと、現地Gに設けられた冷却水を導入するための配管(図示せず)を接続するべく現地でしか作業のできない散水管80の配設とを同時に行うことができるので、組み立て工期の短縮を図ることができる。更に、艤装品配設工程では、外槽20への散水管80の配設に加えて、圧力計81及び液面計82を外槽20にそれぞれ配設する。
【0036】
散水管80及び圧力計81並びに液面計82を外槽20に配設した後は、図4(c)に示すように、引き続き、真空ポンプBで内槽10と外槽20との間の真空引きを行いつつ、外槽20の塗装を行う。これにより、艤装品配設工程の場合と同様に、組み立て工期の短縮を図ることができる。なお、外槽20の塗装を行う際には、上述した足場Xを利用して作業を行う。
【0037】
外槽20の塗装を行った後は、図4(d)に示すように、足場Xを撤去すると共に、内槽10と外槽20との間の真空度測定を行う。具体的には、真空計(図示せず)を用いて、所定時間内での真空度の変化量を計測する。これにより、真空度の変化量が大きい場合、即ち、真空度の劣化が早い場合には、再度、気密試験を行うことで不具合箇所を特定することができる。よって、客先への納入前に品質を確保することができる。その後、外観に異常がないことを確認して、液体断熱貯槽1の組み立てを終了する。
【0038】
上述したように、本実施形態における液体断熱貯槽1の組立方法によれば、外槽20の形成や断熱材Pの充填を現地Gで行うので、内槽10及び外槽20並びに断熱材Pをそれぞれ個別に現地Gまで運搬することができる。従って、従来のように大重量の完成品を現地Gまで運搬する必要がないので、運搬重量の低減を図ることができる。これにより、運搬重量が法律規制の範囲をオーバーしないように、液体断熱貯槽1を分割して運搬することで、法律を遵守することができる。また、運搬重量が低減されるので、運搬車両Vの横転を招く等の危険を回避することができ、運搬時の安全性を確保することができる。
【0039】
また、据付工程により脚体30とその脚体30上に載置された内槽10とが現地Gに立てた状態で据付けられるので、覆設工程では、内槽10を立てた状態のまま外槽20を形成することができる。よって、内槽10を寝かせた状態で外槽20を形成する場合には広大な敷地スペースが必要となるが、屋外での作業のために制限されることのない高さを有効に活用できるので、少ないスペースで組み立てを行うことができる。
【0040】
また、運搬工程により内槽10と脚体30とが連結された状態で現地Gに運搬されるので、据付工程では、脚体30を現地Gに据付けるだけで、内槽10と脚体30とを同時に現地Gに据付けることができる。よって、現地Gで内槽10を脚体30上に載置する作業が不要となるので、作業の簡略化を図ることができる。
【0041】
また、覆設工程の後であって充填工程の前に、挿入工程により支持材70が挿入孔21aに挿入され、挿入工程で挿入孔21aに挿入された支持材70が固定工程により挿入孔21aに固定される。よって、覆設工程で胴体40を内槽10に覆設する際に支持材70と内槽10とが干渉することがないので、胴体40を内槽10に容易に覆設することができる。一方、充填工程の前に固定工程が行われるので、充填工程で断熱材Pを充填する際に挿入孔21aから断熱材Pが漏れ出すことを防止できる。
【0042】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能であることは容易に推察できるものである。
【0043】
例えば、上記実施形態では、内槽10を一対のレグ50により脚体30上に載置する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば略円筒または略円錐に形成されたスカート状の部材により内槽10を脚体30上に載置するように構成しても良い。これにより、内槽10をより一層安定して脚体30上に載置することができる。
【0044】
また、上記実施形態では、脚体30を一対のレグ60で現地Gに据付ける場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば略円筒または略円錐に形成されたスカート状の部材により脚体30を現地Gに据付けるように構成しても良い。これにより、脚体30をより一層安定して現地Gに載置することができる。
【0045】
また、上記実施形態では、2本の支持材70を備える場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、支持材70の数を3本、或いは、それ以上の数で構成しても良い。これにより、脚体30上に載置された内槽10をより一層安定して支持することができる。
【0046】
また、上記実施形態では、支持材70を外槽20の胴板21に穿設された挿入孔21aに挿入して固定する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、内槽10の胴板11に固定するように構成しても良い。この場合には、支持材70を工場等の生産現場で予め内槽10に固定しておくことで、支持材70を現地で内槽10に固定する作業を省略できるので、作業の簡略化を図ることができる。
【0047】
また、上記実施の形態では、内槽10と脚体30とを連結し、内槽10とその内槽10に連結された脚体30とを運搬工程により一度に現地Gに運搬する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、内槽10と脚体30とを連結せず、個別に現地Gに運搬しても良い。これにより、更なる運搬重量の低減を図ることができる。
【0048】
また、上記実施形態では、内槽10と外槽20との間の真空引きを行いつつ断熱材Pを充填する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、真空引きを行わずに断熱材Pを充填しても良い。
【0049】
また、上記実施形態では、内槽10と外槽20との間の真空引きを行いつつ外槽20の塗装を行う場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、工場等の生産現場で外槽20を製作した後であれば、いずれの工程で外槽20の塗装を行っても良い。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】液体断熱貯槽の正面図である。
【図2】液体断熱貯槽の組立工程を示した工程系統図である。
【図3】液体断熱貯槽の組立工程を示した工程系統図である。
【図4】液体断熱貯槽の組立工程を示した工程系統図である。
【符号の説明】
【0051】
1 液体断熱貯槽
10 内槽
20 外槽
21a 挿入孔
30 脚体
40 胴体
70 支持材
80 散水管
G 現地
P 断熱材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を貯蔵する内槽と、その内槽を囲繞する外槽とを備え、それら内槽と外槽との間に断熱材を充填して構成される液体断熱貯槽の組立方法において、
前記外槽は、前記内槽を載置した状態で現地に据付けられる脚体と、その脚体とは別体に構成され、その脚体と共に前記内槽を囲繞する胴体と、その胴体内側に配設され前記脚体上に載置された内槽を支持する支持材とを備えて構成され、
前記外槽の脚体とその脚体上に載置された内槽とを現地に立てた状態で据付ける据付工程と、
その据付工程により現地に据付けられた内槽の上方から前記外槽の胴体を覆設し、その胴体および脚体によって前記内槽を囲繞する覆設工程と、
その覆設工程の後に前記内槽と外槽との間に断熱材を充填する充填工程とを備え、
その充填工程の前に前記支持材を、前記外槽の胴体または前記内槽に配設する配設工程を備えていることを特徴とする液体断熱貯槽の組立方法。
【請求項2】
前記据付工程の前に、前記外槽の脚体と前記内槽とを連結した状態で現地に運搬する運搬工程を備えていることを特徴とする請求項1記載の液体断熱貯槽の組立方法。
【請求項3】
前記外槽の胴体は、前記支持材を前記外槽の胴体外側から挿入して固定するための挿入孔を備えて構成され、
前記配設工程は、
前記挿入孔に前記支持材を挿入する挿入工程と、
その挿入工程により前記挿入孔に挿入された前記支持材を前記挿入孔に固定する固定工程とを有しており、
前記挿入工程と前記固定工程とを前記覆設工程の後であって前記充填工程の前に行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の液体断熱貯槽の組立方法。
【請求項4】
前記液体断熱貯槽は、冷却水を前記外槽に散水する散水管を備えて構成され、
その散水管を前記外槽に配設する艤装品配設工程と、
前記内槽と外槽との間の真空引きを行う真空引き工程とを有しており、
その真空引き工程と前記艤装品配設工程とを、前記充填工程の後に並行して行うことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の液体断熱貯槽の組立方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−2542(P2008−2542A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−171565(P2006−171565)
【出願日】平成18年6月21日(2006.6.21)
【出願人】(000004617)日本車輌製造株式会社 (722)
【Fターム(参考)】