説明

液体混合装置及び液体混合方法

【課題】2種類以上の液体を、2以上の領域に分割された基板の上面に光触媒機能を有して形成された流路内で混合する。
【解決手段】光触媒機能を有する2本以上の流路を基板11上に形成し、紫外線の照射と振動波の印加とにより2種類以上の液体(L1,L2)を搬送しながらこれらの液体(L1,L2)を混合したり、又は、混合攪拌するなどの機能を備え、更に、流路モジュール10と光源・振動モジュール30とをそれぞれモジュール化し、使用時には流路モジュール10と光源・振動モジュール30とを分離可能に一体化させ、且つ、流路モジュール10を交換する場合には光源・振動モジュール30から取り外し可能になっていることを特徴とする液体混合装置1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生化学反応の分析や検査を総合的に行うマイクロTAS(Micro Total Analysis System)の技術的思想を適用して、2種類以上の液体を、2以上の領域に分割された基板の上面に光触媒機能を有して形成された流路内で混合する液体混合装置及び液体混合方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な薬液,培養液や血液などに対して生化学反応の分析や検査を総合的に行うマイクロTASの研究開発が盛んに行われている。
【0003】
生化学反応を進行させるためにマイクロTASの技術的思想を適用した提案は各種あるが、複数種類の液体を搬送する速度やタイミングを非接触で容易に制御できる液体搬送装置及び液体搬送方法がある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に開示された液体搬送装置及び液体搬送方法では、ここでの図示を省略するが、リソグラフィなどの微細加工技術を用いてガラス基板上に微細な流路が形成され、且つ、この流路の壁面に光触媒機能を有する酸化チタン,酸化亜鉛,酸化タングステン,酸化鉄,チタン酸ストロンチウムなどのうちいずれかの金属酸化物が予めコートされている。
【0005】
そして、流路に沿って例えば紫外線を照射することで、光触媒機能を有する流路の壁面が親水性になるので、流路内の液体は紫外線の照射位置に追従するように搬送される。
【0006】
一方、光触媒機能を有する流路に振動波を印加することで親水性が緩和されて、流路の壁面が元の初期状態に戻る。
【0007】
上記した動作原理により、光触媒機能を有する流路の壁面及び液体に対して、紫外線の照射と振動波の印加とを交互に繰り返して行うか、又は、紫外線の照射と振動波の印加とを同時に行うことにより、流路に沿って液体を搬送するときに、液体の搬送速度やタイミングを非接触で容易に制御できる旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−8079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上記した特許文献1に開示された液体搬送装置及び液体搬送方法によれば、液体の搬送速度やタイミングを非接触で容易に制御しながら流路に沿って液体を搬送する技術的思想を備えているものの、生化学反応を進行させる際に必要な液体の混合機能や混合攪拌機能などを備えていないために、液体搬送装置及び液体搬送方法の使い勝手が悪いという問題がある。
【0010】
そこで、マイクロTASの技術的思想を適用して、2以上の領域に分割された基板の上面に光触媒機能を有する2本以上の流路をそれぞれ形成し、2種類以上の液体を紫外線の照射と振動波の印加とにより搬送しながらこれらの液体を混合したり、又は、混合攪拌するなどの機能を備えた液体混合装置及び液体混合方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、請求項1記載の発明は、2種類以上の液体を、2以上の領域に分割された基板の上面に光触媒機能を有して形成された流路内で混合する液体混合装置であって、
前記基板上の2以上に分割された各領域に、前記2種類以上の液体を注入する注入部がそれぞれ形成され、前記各注入部から注入された前記2種類以上の液体をそれぞれ搬送する2本以上の液体搬送用流路と、
前記2本以上の液体搬送用流路のうち、少なくとも2本の液体搬送用流路の各下流端に連接され、前記2本以上の液体搬送用流路から搬送された前記2種類以上の液体を混合した混合液体を搬送する混合液体搬送用流路と、
前記各液体搬送用流路にそれぞれ注入された前記2種類以上の液体、及び、前記混合液体搬送用流路に搬送された前記混合液体の搬送方向側の各端面に紫外線を照射して、該紫外線を前記各流路に沿って搬送方向に移動させる紫外線光源部と、
前記2以上の領域に対応して設けられ、且つ、各振動波を前記2以上の領域にそれぞれ印加する2以上の振動板を有する振動板部と、
を備えたことを特徴とする液体混合装置である。
【0012】
また、請求項2記載の発明は、2種類以上の液体を、2以上の領域に分割された基板の上面に光触媒機能を有して形成された流路内で混合する液体混合装置であって、
前記基板上の2以上に分割された各領域に、前記2種類以上の液体を注入する注入部がそれぞれ形成され、前記各注入部から注入された前記2種類以上の液体をそれぞれ搬送する2本以上の液体搬送用流路と、
前記2本以上の液体搬送用流路のうち、少なくとも2本の液体搬送用流路の各下流端に連接され、前記2本以上の液体搬送用流路から搬送された前記2種類以上の液体を混合した混合液体を搬送する混合液体搬送用流路と、
前記混合液体搬送用流路の下流端に連接され、前記混合液体搬送用流路から搬送された前記混合液体を混合攪拌する混合攪拌ゾーンと、
前記各液体搬送用流路にそれぞれ注入された前記2種類以上の液体、及び、前記混合液体搬送用流路に搬送された前記混合液体、並びに、前記混合攪拌ゾーンに搬送された前記混合液体の搬送方向側の各端面に紫外線を照射して、該紫外線を前記各流路と前記混合攪拌ゾーン内とに沿って搬送方向に移動させる紫外線光源部と、
前記2以上の領域に対応して設けられ、且つ、各振動波を前記2以上の領域にそれぞれ印加する2以上の振動板を有する振動板部と、
を備えたことを特徴とする液体混合装置である。
【0013】
また、請求項3記載の発明は、上記した請求項2記載の液体混合装置において、
前記混合液体搬送用流路と前記混合攪拌ゾーンは、前記2以上の振動板から固有振動周波数がそれぞれ異なる各振動波が印加される前記基板上の異なる領域に設けられていることを特徴とする液体混合装置である。
【0014】
また、請求項4記載の発明は、上記した請求項2項又は請求項3記載の液体混合装置において、
前記混合攪拌ゾーン内の底面から1以上の突起を突出形成したことを特徴とする液体混合装置である。
【0015】
また、請求項5記載の発明は、上記した請求項1〜請求項4のうちいずれか1項記載の液体混合装置において、
前記基板の下面にスリットを前記2以上の領域の各境界線に沿って形成したことを特徴とする液体混合装置である。
【0016】
また、請求項6記載の発明は、上記した請求項1〜請求項5のうちいずれか1項記載の液体混合装置において、
前記紫外線光源部は、半導体基板上に前記紫外線を射出する複数の紫外線LEDをマトリックス状に配列させて、紫外線LED駆動回路により前記複数の紫外線LEDを前記紫外線の移動方向に向かって順次点灯させることを特徴とする液体混合装置である。
【0017】
また、請求項7記載の発明は、上記した請求項1〜請求項6のうちいずれか1項記載の液体混合装置において、
前記基板を流路モジュールとしてモジュール化し、且つ、前記振動板部上に前記紫外線光源部を重ね合わせて光源・振動モジュールとしてモジュール化すると共に、前記光源・振動モジュールの前記紫外線光源部上に前記流路モジュールを着脱可能に取り付けたことを特徴とする液体混合装置である。
【0018】
また、請求項8記載の発明は、2種類以上の液体を、2以上の領域に分割された基板の上面に光触媒機能を有して形成された流路内で混合する液体混合方法であって、
前記基板上の2以上に分割された各領域にそれぞれ形成された注入部から2本以上の液体搬送用流路内に注入された前記2種類以上の液体の搬送方向側の各端面に紫外線を照射して、該紫外線を前記2本以上の液体搬送用流路に沿って搬送方向に移動させると共に、前記2以上の領域に対応してそれぞれ設けられた2以上の振動板からの各振動波を各領域にそれぞれ印加することで、前記2種類以上の液体を前記2本以上の液体搬送用流路に沿って搬送するステップと、
前記2本以上の液体搬送用流路のうち、少なくとも2本の液体搬送用流路の各下流端に混合液体搬送用流路が連接され、前記2本以上の液体搬送用流路から前記混合液体搬送用流路内に搬送された前記2種類以上の液体を混合した混合液体の搬送方向側の端面に紫外線を照射して、該紫外線を前記混合液体搬送用流路に沿って搬送方向に移動させると共に、前記2以上の振動板のうちで前記混合液体搬送用流路側と対応する振動板からの振動波を前記混合液体搬送用流路を形成した領域に印加することで、前記混合液体を前記混合液体搬送用流路に沿って搬送するステップと、
を含むことを特徴とする液体混合方法である。
【0019】
また、請求項9記載の発明は、2種類以上の液体を、2以上の領域に分割された基板の上面に光触媒機能を有して形成された流路内で混合する液体混合方法であって、
前記基板上の2以上に分割された各領域にそれぞれ形成された注入部から2本以上の液体搬送用流路内に注入された前記2種類以上の液体の搬送方向側の各端面に紫外線を照射して、該紫外線を前記2本以上の液体搬送用流路に沿って搬送方向に移動させると共に、前記2以上の領域に対応してそれぞれ設けられた2以上の振動板からの各振動波を各領域にそれぞれ印加することで、前記2種類以上の液体を前記2本以上の液体搬送用流路に沿って搬送するステップと、
前記2本以上の液体搬送用流路のうち、少なくとも2本の液体搬送用流路の各下流端に混合液体搬送用流路が連接され、前記2本以上の液体搬送用流路から前記混合液体搬送用流路内に搬送された前記2種類以上の液体を混合した混合液体の搬送方向側の端面に紫外線を照射して、該紫外線を前記混合液体搬送用流路に沿って搬送方向に移動させると共に、前記2以上の振動板のうちで前記混合液体搬送用流路側と対応する振動板からの振動波を前記混合液体搬送用流路を形成した領域に印加することで、前記混合液体を前記混合液体搬送用流路に沿って搬送するステップと、
前記混合液体搬送用流路の下流端に混合攪拌ゾーンが連接され、前記混合液体搬送用流路から前記混合攪拌ゾーン内に搬送された前記混合液体の搬送方向側の端面に紫外線を照射して、該紫外線を前記混合攪拌ゾーン内での搬送方向に移動させると共に、前記2以上の振動板のうちで前記混合攪拌ゾーンと対応する振動板からの振動波を前記混合攪拌ゾーンを形成した領域に印加することで、前記混合液体を前記混合攪拌ゾーン内で混合攪拌するステップと、
を含むことを特徴とする液体混合方法である。
【発明の効果】
【0020】
請求項1記載の液体混合装置及び請求項8記載の液体混合方法によれば、2種類以上の液体を、2以上の領域に分割された基板の上面に光触媒機能を有して形成された流路内で混合する際に、2種類以上の液体及び2種類以上の液体を混合した混合液体に対して各液体の搬送方向側の端面に紫外線を照射し、この紫外線を2本以上の液体搬送用流路及び混合液体搬送用流路に沿って搬送方向に移動させると共に、2以上の領域に対応して設けられた2以上の振動板からの各振動波を2本以上の液体搬送用流路を形成した各領域に印加すると共に、2以上の振動板のうちで混合液体搬送用流路側と対応する振動板からの振動波を混合液体搬送用流路を形成した領域に印加することで、2種類以上の液体が2本以上の液体搬送用流路内を搬送される際に各振動波の異なりにより混合速度を調整できるので、2種類以上の液体を混合液体搬送用流路内で所定の割合で混合させることができる。
【0021】
また、請求項2記載の液体混合装置及び請求項9記載の液体混合方法によれば、2種類以上の液体を、2以上の領域に分割された基板の上面に光触媒機能を有して形成された流路内で混合した後に混合攪拌する際に、2種類以上の液体及び2種類以上の液体を混合した混合液体に対して各液体の搬送方向側の端面に紫外線を照射し、この紫外線を2本以上の液体搬送用流路及び混合液体搬送用流路並びに混合攪拌ゾーン内に沿って搬送方向に移動させると共に、2以上の領域に対応して設けられた2以上の振動板からの各振動波を2本以上の液体搬送用流路を形成した各領域に印加すると共に、2以上の振動板のうちで混合液体搬送用流路側と対応する振動板からの振動波を混合液体搬送用流路を形成した領域を形成した領域に印加し、更に、2以上の振動板のうちで混合攪拌ゾーン側と対応する振動板からの振動波を混合攪拌ゾーンを形成した領域に印加することで、2種類以上の液体が2本以上の液体搬送用流路内を搬送される際に各振動波の異なりにより混合速度を調整できるので、2種類以上の液体を混合液体搬送用流路内で所定の割合で混合させることができ、その後、混合液体を混合攪拌ゾーン内で確実に混合攪拌することができる。
【0022】
また、請求項3記載の液体混合装置によれば、混合液体搬送用流路と混合攪拌ゾーンは、2以上の振動板から固有振動周波数がそれぞれ異なる各振動波が印加される基板上の異なる領域に設けられているので、振動条件が混合時と混合攪拌時とでは異なるために、混合性能又は混合攪拌性能をより一層向上させることができる。
【0023】
この際、混合液体搬送用流路よりも混合攪拌ゾーンの振動周波数が低い場合には、顕微鏡下で混合攪拌ゾーン内の混合攪拌状態を観察しやすい。一方、混合攪拌ゾーンよりも混合液体搬送用流路の振動周波数が低い場合には、顕微鏡下で混合液体搬送用流路内の混合状態を観察しやすい。
【0024】
また、請求項4記載の液体混合装置によれば、混合攪拌ゾーン内の底面から1以上の突起を突出形成したために、混合液体が混合攪拌ゾーン内で1以上の突起を中心にして対流しながら混合攪拌するので、混合液体を良好に混合攪拌できる。
【0025】
また、請求項5記載の液体混合装置によれば、基板の下面にスリットを2以上の領域の各境界線に沿って形成したために、2以上の領域に印加される固有振動周波数が異なる振動波の干渉を低減することができる。
【0026】
また、請求項6記載の液体混合装置によれば、紫外線光源部は、半導体基板上に紫外線を射出する複数の紫外線LEDをマトリックス状に配列させて、複数の紫外線LEDを紫外線の移動方向に向かって順次点灯させることにより、紫外線を機械的に移動させずに紫外線LED回路により電気的に処理しているので、装置の小型且つ薄型化を図ることができる。
【0027】
また、請求項7記載の液体混合装置によれば、基板を流路モジュールとしてモジュール化し、且つ、振動板部上に紫外線光源部を重ね合わせて光源・振動モジュールとしてモジュール化すると共に、光源・振動モジュールの紫外線光源部上に流路モジュールを着脱可能に取り付けているので、流路パターンが異なる流路モジュールを交換することができる一方、光源・振動モジュールは何度でも使い回しができるので、使い勝手の良い液体混合装置を提供できる。また、流路モジュールが交換可能であることにより、異なる液体の混合時に不純物を除去するための洗浄工程を省き、流路モジュールを使い捨てすることにより、異なる液体の混合時間を大幅に削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】(a)〜(d)は本発明に係る液体混合装置及び液体混合方法において、液体搬送メカニズを説明するために模式的に示した動作図である。
【図2】本発明に係る液体混合装置を説明するための斜視図であり、(a)は液体混合装置の全体構成を示し、(b)は液体混合装置を流路モジュールと光源・振動モジュールとに分離した状態を示した図である。
【図3】(a),(b)は図2に示した透明な基板に形成した第1,第2液体搬送用流路の形状を説明するための断面図である。
【図4】(a),(b)は図2に示した透明な基板に形成した混合攪拌ゾーンを説明するための断面図,斜視図である。
【図5】本発明に係る液体混合装置において、第1振動板からの低周波数の振動波と、第2振動板からの高周波数の振動波とによる振動干渉を透明な基板の下面に形成したスリットにより低減させる状態を模式的に示した断面図である。
【図6】本発明に係る液体混合装置の制御回路を示した図である。
【図7】本発明に係る液体混合装置を用いて2種類の第1,第2液体を混合する液体混合方法の動作を説明するためのフロー図である。
【図8】本発明に係る液体混合装置を顕微鏡のステージ上に搭載させた状態を模式的に示したである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に本発明に係る液体混合装置及び液体混合方法の一実施例について、図1〜図8を参照して詳細に説明する。
【0030】
本発明に係る液体混合装置及び液体混合方法を説明する前に、液体を搬送する際の液体搬送メカニズについて、図1(a)〜(d)を用いて先に説明する。
【0031】
図1(a)〜(d)に示した液体搬送メカニズは、先に背景技術で説明した特許文献1に開示された液体搬送装置及び液体搬送方法の技術的思想を利用すると共に、装置内の構成部材に対して一部改良を図っている。
【0032】
即ち、図1(a)〜(d)に示した液体搬送メカニズでは、透明な基板11上に液体Lを搬送するための微細な流路13が光触媒機能を有して形成されている。
【0033】
この際、透明な基板11は、ガラス基板,石英基板や、光触媒樹脂基板を用いており、透明な基板11の一例としてガラス基板を用いた場合には、MEMS(Micro Electro Mechanical System)の技術を用いて微細な流路13を形成した後に、この流路13内の壁面に光触媒機能を有する酸化チタン,酸化亜鉛,酸化タングステン,酸化鉄,チタン酸ストロンチウムなどのうちいずれかの金属酸化物が予めコートされているが、例えば酸化チタンを用いた場合には二酸化チタン(TiO)を流路13の壁面に予めコートしている。
【0034】
一方、透明な基板11の他例として光触媒樹脂基板を用いた場合には、射出成形加工により微細な流路13が形成されるが、透明な樹脂中に上記した光触媒機能を有する金属酸化物を含有させているので、流路13の壁面が光触媒機能を有することになる。
【0035】
また、半導体基板21の上面に複数の紫外線LED(Light Emitting Diode)22を配列させた紫外線光源部20が、透明な基板11の下面に沿って配置されているが、図1中では、図示の都合上、複数の紫外線LED22を流路13の側面側に図示しており、液体搬送動作の説明上での支障は生じない。
【0036】
上記した紫外線光源部20内に設けた複数の紫外線LED22は、波長が230nm〜400nmの紫外線を射出して、流路13に沿って順次点灯できるように配列されている。
【0037】
この際、後述するように、本発明に係る液体搬送装置及び液体搬送方法では、2種類以上の液体を混合するために透明な基板11上に流路13が複数本存在し、且つ、流路13のパターンも直線状だけでなく曲線状も有り得るために、複数の紫外線LED22が半導体基板21のXY平面上にマトリックス状に配列されているが、図1中では説明の通合上、複数の紫外線LED22を流路13に沿って1列に配置した状態を図示している。
【0038】
尚、特許文献1では、一つの紫外線光源を可動ステージ上に搭載して紫外線光源を直線的に移動させているが、特許文献1の技術的思想を本発明に係る液体搬送装置及び液体搬送方法に適用する場合には、2種類以上の液体に対応して紫外線光源を可動ステージによりXY平面上を二次元的に移動させる構造に変更し、且つ、混合する液体の数に応じて可動ステージの数を用意すれば良いが、複数の可動ステージを有する紫外線光源は構造が複雑となるので、本発明では複数の紫外線LED22を半導体基板21上にマトリックス状に配列させて紫外線光源の簡素化を図っている。
【0039】
更に、上記した半導体基板21の裏面に、ピエゾ素子などによる振動板を用いた振動板部25が接着などにより一体的に固着されている。
【0040】
そして、図1(a)に示した状態は、液体Lが流路13内で停止している初期状態を示している。この初期状態では、複数の紫外線LED22及び振動板部25が作動していないので、液体Lを搬送することができない。この際、液体Lの搬送方向側の端面Laと流路13内の壁面とがなす接触角、及び、上記した液体Lの端面Laとは反対側に位置する液体Lの端面Lbと流路13内の壁面とがなす接触角は、共に同じで大きいので、液体Lが流路13内で停止している。
【0041】
次に、図1(b)に示した状態は、流路13内で液体Lが搬送を開始する状態を示している。ここで、液体Lの搬送方向側の端面Laに向けて紫外線LED22から射出させた紫外線を局所的に照射すると、前述したように流路13内の壁面は光触媒機能を有しているので、流路13内の壁面が親水化されて、液体Lの搬送方向側の端面Laの界面状態が変化して、液体Lの端面La側の方が端面Lb側よりも親水性になるために、液体Lの端面Laと流路13内の壁面とがなす接触角は、液体Lの端面Lbと流路13内の壁面とがなす接触角よりも小さくなり、液体Lの端面La側が搬送方向側に向かって搬送(移動)を開始する。
【0042】
次に、図1(c)に示した状態は、流路13内の液体Lが移動を続けている搬送途中状態を示している。ここで、図1(b)に示した状態から複数の紫外線LED22を流路13に沿いながら液体Lの搬送方向に向かって順次点灯させることで、紫外線が液体Lの搬送方向に移動している状態と等価となり、液体Lが更に搬送方向に向かって移動する。この液体Lの移動に伴って液体Lの端面Lb側も搬送方向側に向かって引っ張られるので、液体Lの端面Laと流路13内の壁面とがなす接触角と、液体Lの端面Lbと流路13内の壁面とがなす接触角とが、共に小さくなる。
【0043】
次に、図1(d)に示した状態は、流路13内を移動した液体Lをその位置で元の初期状態に戻す動作を示している。ここでは、紫外線LED22の点灯を停止して、振動板部25で発生させた振動波を透明な基板11に印加しており、振動波の印加により流路13内の壁面の親水化が緩和されて元の初期状態に戻るために、液体Lの移動が停止する。
【0044】
従って、紫外線LED22からの紫外線の照射は、液体Lの搬送を行う機能を有し、一方、振動板部25からの振動波の印加は、液体Lの搬送を停止して元の初期動作に戻す機能を備えることにより、紫外線の照射と振動波の印加とを交互に繰り返して行うか、又は、紫外線の照射と振動波の印加とを同時に行うことで、流路13に沿って液体Lを搬送方向に向かって搬送(移動)させることができる。
【0045】
そして、上記した液体搬送メカニズを適用して2種類以上の液体を搬送しながらこれらの液体を混合させたり、又は、混合攪拌するために、本発明に係る液体混合装置及び液体混合方法を提案するものである。
【0046】
即ち、本発明に係る液体混合装置及び液体混合方法では、様々な薬液,培養液や血液などの液体に対して基板上で生化学分析を行うマイクロTAS(Micro Total Analysis System)の技術的思想を適用しており、2種類以上の液体を搬送するために2以上の領域に分割された基板の上面に光触媒機能を有する2本以上の流路を各領域ごとに1本ずつ形成し、且つ、基板の下面側からの紫外線の照射と振動波の印加とにより2種類以上の液体を搬送しながらこれらの液体を混合したり、又は、混合攪拌するなどの機能を備え、更に、2種類以上の液体を搬送して混合する流路モジュールと、紫外線光源部と振動板部とを有する光源・振動モジュールとをそれぞれモジュール化し、使用時には流路モジュールと光源・振動モジュールとを分離可能に一体化させ、且つ、流路モジュールを交換する場合には光源・振動モジュール上から流路モジュールを取り外し可能になっていることを特徴としている。
【0047】
また、本発明に係る液体混合装置は、流路モジュールと光源・振動モジュールとを一体化させた状態で顕微鏡下でも観察できるように小型且つ薄型化が図られている点も特徴としている。
【実施例】
【0048】
図2(a),(b)に示した如く、本発明に係る実施例の液体混合装置1は、最上層に設けられた流路モジュール10と、紫外線光源部20と振動板部25とを不図示の接着剤により接着して一体化して中間層に設けられた光源・振動モジュール30と、最下層に設けられた基台40とで3層構造に構成されており、且つ、流路モジュール10は一体化された光源・振動モジュール30の紫外線光源部20上に着脱可能に取り付けられているので、流路パターンが異なる流路モジュール10を交換することができる一方、光源・振動モジュール30は何度でも使い回しができるようになっている。
【0049】
従って、流路モジュール10が交換可能であることにより、異なる液体の混合時に不純物を除去するための洗浄工程を省き、流路モジュール10を使い捨てすることにより、異なる液体の混合時間を大幅に削減できる。
【0050】
上記した流路モジュール10は、前述したように光触媒機能を有する透明な基板(11)が2種類以上の液体(L1,L2)に対応して2以上の領域(11A,11B)に分割されており、且つ、2以上の領域(L1,L2)に対応して光源・振動モジュール30も2以上に分割されて透明な基板11の下面に設置されている。
【0051】
また、透明な基板(11)の上面上には、2種類以上の液体(L1,L2)に対応して2以上に分割された各領域(11A,11B)にそれぞれ形成され、2種類以上の液体(L1,L2)を注入する注入部となる2箇所以上の液体注入口(12A,12B)と、2箇所以上の液体注入口(12A,12B)に連接されて2以上の領域(11A,11B)にそれぞれ形成され、2箇所以上の液体注入口(12A,12B)からそれぞれ注入された2種類以上の液体(L1,L2)を搬送する2本以上の液体搬送用流路(13A,13B)と、2本以上の液体搬送用流路(13A,13B)うち、少なくとも2本の液体搬送用流路(13A,13B)の各下流端に連接されて最終的に1本となり、且つ、2以上の領域(11A,11B)のうちいずれかの領域(11B)に形成され、2本以上の液体搬送用流路(13A,13B)から搬送された2種類以上の液体(L1,L2)を混合した混合液体(L3)を搬送する混合液体搬送用流路(14)と、混合液体搬送用流路(14)の下流端に連接され、且つ、2以上の領域(11A,11B)のうちいずれかの領域(11A)に形成され、混合液体搬送用流路(14)から搬送された混合液体(L3)を混合攪拌する混合攪拌ゾーン(15)と、が光触媒機能を有して形成されている。
【0052】
この際、例えば2種類の液体を混合したり、混合攪拌する場合には、流路モジュール内の透明な基板を2分割して2つの領域内に第1,第2液体注入口及び第1,第2液体搬送用流路を各領域ごとに1箇所ずつ及び1本ずつ形成し、且つ、2液を混合する混合液体搬送用流路を1本形成して、この混合液体搬送用流路の下流端に混合攪拌ゾーンを形成すれば良い。更に、2分割した透明な基板に対応させて光源・振動モジュールも2分割させれば良いものである。
【0053】
また、例えば3種類の液体を混合したり、混合攪拌する場合には、流路モジュール内の透明な基板を3分割して3つの領域内に第1〜第3液体注入口及び第1〜第3液体搬送用流路を各領域ごとに1箇所ずつ及び1本ずつ形成し、且つ、2液を混合した後に残りの1液を混合して3液を混合する場合には2本の混合液体搬送用流路を形成して、2本のうちで後方(最終)の混合液体搬送用流路の下流端に混合攪拌ゾーンを形成する一方、3液を略同時に混合する場合には1本の混合液体搬送用流路を形成して、1本の混合液体搬送用流路の下流端に混合攪拌ゾーンを形成すれば良い。更に、3分割した透明な基板に対応させて光源・振動モジュールも3分割させれば良いものである。
【0054】
尚、2種類以上の液体(L1,L2)を混合するだけで、混合液体(L3)を混合攪拌する必要がない場合には、上記した混合攪拌ゾーン(15)を省略することが可能である。
【0055】
以下に説明する実施例では、流路モジュール10及び光源・振動モジュール30が、例えば2種類の液体L1,L2を混合した後に混合攪拌できるように構成されている。
【0056】
より具体的に説明すると、透明な基板11は、外形形状が矩形状に形成されて顕微鏡60(図8)に搭載できるサイズに設定されていると共に、基板厚みは2〜3mm程度に設定されており、且つ、透明な基板11の下面に光源・振動モジュール30及び基台40を重ね合わせたときの合計厚みは5〜6mm程度に薄く設定されている。
【0057】
また、透明な基板11は、第1液体L1と対応した第1領域11Aと、第2液体L2と対応した第2領域11Bとがこの基板11の下面に第1,第2領域11A,11Bの境界線に沿って溝幅を1mm程度に幅狭く形成したスリット11Cを介して2分割されている。
【0058】
また、透明な基板11の上面には、2種類の第1,第2液体L1,L2を注入する2箇所の第1,第2液体注入口12A,12Bが最上流位置に設けられ、且つ、2種類の第1,第2液体L1,L2をそれぞれ搬送する2本の第1,第2液体搬送用流路13A,13Bが2箇所の第1,第2液体注入口12A,12Bに連接して設けられ、且つ、2種類の第1,第2液体L1,L2を混合して混合液体L3を生成する1本の混合液体搬送用流路14が2本の第1,第2液体搬送用流路13A,13Bの各下流端で合流した後に設けられ、更に、混合された混合液体L3を混合攪拌する混合攪拌ゾーン15が1本の混合液体搬送用流路14の下流端に連接されている。
【0059】
この際、この実施例では、第1液体注入口12A及び混合攪拌ゾーン15が基板11の第1領域11A内に互に間隔を離して設けられ、且つ、第1液体搬送用流路13Aは基板11の第1領域11Aから第2領域11Bに向かい、この第2領域11B内で第1液体搬送用流路13Aの下流端が第2液体搬送用流路13Bの下流端と合流される一方、第2液体注入口12A及び第2液体搬送用流路13Bは基板11の第2領域11B内に設けられ、且つ、混合液体搬送用流路14は基板11の第2領域11Bから第1領域11Aに向かい、この第1領域11A内で混合液体搬送用流路14の下流端が混合攪拌ゾーン15に接続されている。
【0060】
そして、第1,第2液体注入口12A,12Bの内壁と、第1,第2液体搬送用流路13A,13Bの内壁と、混合液体搬送用流路14の内壁と、混合攪拌ゾーン15の内壁は、前述したように、光触媒機能を有している。
【0061】
また、第1,第2液体L1,L2を搬送する第1,第2液体搬送用流路13A,13Bの形状は、図3(a)に示したように基板11の上部がU字状に開口して形成されるか、又は、図3(b)に示したように基板11の上部が逆Ω字状に開口して形成されており、且つ、第1,第2液体搬送用流路13A,13Bは共に同じ形状で流路幅が30μm程度、且つ、基板11の上部からの流路深さは透明な基板11の裏面に形成したスリット11Cに接しないように適宜な値に設定されている。
【0062】
また、第1,第2液体L1,L2を混合した混合液体L3を搬送する混合液体搬送用流路14は、第1,第2液体搬送用流路13A,13Bと同じ形状で略同じ流路深さに設定されており、且つ、混合液体搬送用流路14の流路幅を第1,第2液体L1,L2の流路幅に対して略2倍程度広げることで混合液体L3が溢れ出ないようになっている。
【0063】
更に、図4(a),(b)に示した如く、混合液体L3を後述する光源・振動モジュール30の振動板部25の作用により混合攪拌する混合攪拌ゾーン15は、基板11の上部において最大直径が100μm程度にお椀状に開口されており、且つ、中心部近傍に1以上の突起15aがお椀状の底部から上部に向かって山形状又は螺旋状に突出されており、振動板部25からの上下方向の振動波により混合液体L3が1以上の突起15aを中心にして図4(b)に示した矢印方向に対流しながら混合攪拌するので、混合液体L3を良好に混合攪拌できるようになっている。
【0064】
尚、ここでの図示を省略するが、実施例とは異なって、混合液体搬送用流路14を基板11の第1領域11A内に設け、且つ、混合攪拌ゾーン15を基板11の第2領域11B内に設ける構造も可能である。更に、混合攪拌ゾーン15を混合液体搬送用流路14を形成した領域内に設ける構造も可能であることは言うまでもない。
【0065】
図2(a),(b)に戻り、流路モジュール10の下方に着脱可能(分離可能)に取り付けられる光源・振動モジュール30のうちで紫外線光源部20は、図1を用いて説明した液体搬送メカニズムに基いて、第1,第2液体L1,L2を第1,第2液体搬送用流路13A,13Bに沿って略同時に搬送し、且つ、第1,第2液体L1,L2を混合した混合液体L3を混合液体搬送用流路14に沿って搬送すると共に、混合液体L3を混合攪拌ゾーン内に沿って混合攪拌するために設けられている。
【0066】
この紫外線光源部20では、半導体基板21が、透明な基板11の第1,第2領域11A,11Bと対応して第1,第2領域21A,21Bに仮想的に2分割されており、且つ、これらの第1,第2領域21A,21Bの上面上に複数の紫外線LED22がX軸方向及びY軸方向にマトリックス状にそれぞれ配列されているが、複数の紫外線LED22はX軸方向及びY軸方向に対して等間隔に設置されているために実質的には1枚の半導体基板21上にマトリックス状に配列されていることになる。
【0067】
従って、紫外線光源部20は、複数の紫外線LED22から射出される波長が230nm〜400nmの紫外線を機械的に移動させずに後述する紫外線LED回路53〜55(図6)により複数の紫外線LEDが搬送方向に順次点灯するように電気的に処理しているので、装置1の小型且つ薄型化を図ることができる。
【0068】
また、光源・振動モジュール30のうちで振動板部25は、図1を用いて説明した液体搬送メカニズムに基いて、第1,第2液体L1,L2の搬送中及び混合液体L3の搬送中に親水状態を緩和させて元の初期状態に戻す機能の他に、第1,第2液体L1,L2を混合して混合液体L3を生成すると共に、混合液体L3を混合攪拌する機能を備えている。
【0069】
この振動板部25では、ピエゾ素子を用いた第1,第2振動板25A,25Bが、透明な基板11の第1,第2領域11A,11B及び半導体基板21の第1,第2領域21A,21Bと対応して2つに分割した状態に設けられており、これらの第1,第2振動板25A,25Bが不図示の接着剤を用いて半導体基板21の第1,第2領域21A,21Bの下面にそれぞれ分離した状態で接着されている。
【0070】
この実施例において、第1振動板25Aは固有振動周波数が40kHz程度の振動波で上下方向に振動する低周波振動板として機能する一方、第2振動板25Bは固有振動周波数が120kHz程度の振動波で上下方向に振動する高周波振動板として機能している。
【0071】
上記したように、第1,第2振動板25A,25Bの固有振動周波数を異なる値に設定することで、前述したように第1,第2液体搬送用流路13A,13Bを同一形状に形成したときに、第1,第2振動板25A,25Bの固有振動周波数に応じて第1,第2液体L1,L2の液体混合速度を調整することができるので、第1,第2液体L1,L2を混合液体搬送用流路14内で所定の割合で混合させることができる。
【0072】
言い換えると、第1,第2振動板25A,25Bの固有振動周波数の異なりにより、第1,第2液体L1,L2に対して親水化を初期状態に戻す時間が異なるために、第1,第2液体L1,L2に対して単位時間当たりの搬送流量が異なることになるので、結果的に第1,第2液体L1,L2の液体混合速度を調整することができ、第1,第2液体L1,L2を混合液体搬送用流路14内で所定の割合で混合させることができる。
【0073】
更に、上記とは異なって、第1,第2振動板25A,25Bの固有振動周波数をそれぞれ異なる値な可変できるようにすることも可能であり、この場合には第1,第2液体L1,L2を混合する際の液体混合速度を可変できる。
【0074】
そして、基台40上に光源・振動モジュール30を不図示の接着剤により接着した状態で流路モジュール10を光源・振動モジュール30上に取り付けたときに、図5に拡大して示した如く、第1振動板25Aからの低周波数の振動波が透明な基板11の第1領域11Aに印加され、且つ、第2振動板25Bからの高周波数の振動波が透明な基板11の第2領域11Bに印加されたときに、透明な基板11の裏面に形成したスリット11Cにより低周波数の振動波と高周波数の振動波とによる振動干渉を低減させている。
【0075】
ここで、本発明に係る液体混合装置1を制御する制御回路について、図6を用いて説明する。
【0076】
まず、制御回路50内に設けた制御部51は、液体混合装置1の動作プログラムを格納したROM51aと、判断処理するCPU51bと、流路パターン入力部52から入力された流路パターンを格納したRAM51cとを内部に備えている。
【0077】
上記した基板パターン入力部52は、第1液体L1,第2液体L2,混合液体L3が移動する各流路の移動軌跡を、図2(b)に示した透明な基板11の原点(X0,Y0)を基準としてX軸,Y軸に沿って座標化しているが、この際に透明な基板11の座標化は、図2(b)に示した半導体基板21の原点(X0,Y0)を基準としてX軸,Y軸に沿って座標化した複数の紫外線LED22の座標位置と対応させているので、各流路の移動軌跡と点灯させる複数の紫外線LED22とが対をなしている。
【0078】
尚、各流路のパターンに対する座標化は、各流路が透明な基板11の第1,第2領域11A,11Bに跨って形成されているので、各領域11A,11Bごとに座標化せずに、第1液体L1,第2液体L2,混合液体L3をそれぞれ搬送する複数の紫外線LED22の点灯順に対応できるように、透明な基板11の原点(X0,Y0)を基準にしている。
【0079】
そして、透明な基板11上を第1液体L1,第2液体L2,混合液体L3の各流路ごとに座標化した各値を制御部51内のRAM51cに格納していると共に、制御部51内のRAM51cに格納した各流路ごとに座標化した各値に基いて、制御部51からの指令により第1液体用紫外線LED駆動回路53,第2液体用紫外線LED駆動回路54,混合液体用紫外線LED駆動回路55を選択的に作動させて各紫外線LED22をマトリックス状に点灯制御している。
【0080】
また、制御部51は、低周波発生器56Aを作動して第1振動板25Aを固有振動周波数が40kHz程度の振動波で上下方向に振動させていると共に、高周波発生器56Bを作動して第2振動板25Bを固有振動周波数が120kHz程度の振動波で上下方向に振動させている。
【0081】
更に、制御部51は、電源部57により各部に電源を供給している。
【0082】
ここで、上記した本発明に係る液体混合装置1を用いて2種類の第1,第2液体L1,L2を混合する液体混合方法の動作について、図1〜図7を併用して説明する。
【0083】
本発明に係る液体混合方法では、第1,第2液体L1,L2を搬送する際に、先に図1を用いて説明した液体搬送メカニズを適用することで、第1,第2液体L1,L2に触れることなく非接触で搬送することができる。
【0084】
即ち、図7に示した如く、本発明に係る液体混合方法の動作フローを開始すると、まず、ステップS1では、第1,第2液体L1,L2を不図示のスポイトなどを用いて透明な基板11上に形成した第1,第2液体注入口12A,12B内に注入する。
【0085】
次に、ステップS2では、第1,第2液体注入口12A,12B内に注入された第1,第2液体L1,L2を透明な基板11上に形成した第1,第2液体搬送用流路13A,13Bに沿って略同時に搬送する。
【0086】
この際、透明な基板11上に形成した第1,第2液体搬送用流路13A,13Bの各内壁は光触媒機能を有しているので、第1,第2液体用紫外線LED駆動回路53,54を作動させて第1,第2液体L1,L2の搬送方向側の各端面に紫外線LED22からの紫外線を局所的に照射しながら複数の紫外線LED22を制御部51のRAM51c内に記憶させた第1,第2液体搬送用流路13A,13Bのパターンに沿って順次点灯させることで、紫外線LED22から射出された紫外線を第1,第2液体搬送用流路13A,13Bに沿って搬送方向に移動させ、且つ、低周波発生器56Aを介して第1振動板25Aを振動させて第1液体搬送用流路13Aに対して40kHz程度の低周波数の振動波を印加する一方、高周波発生器56Bを介して第2振動板25Bを振動させて第2液体搬送用流路13Bに対して120kHz程度の高周波数の振動波を印加している。
【0087】
これにより、第1液体L1は第1振動板25Aからの低周波数の振動波により第1液体搬送用流路13A内を低速で移動する一方、第2液体L2は第2振動板25Bからの高周波数の振動波により第2液体搬送用流路13B内を第1液体L1よりも高速で移動するので、第1,第2液体L1,L2を第1,第2液体搬送用流路13A,13Bの下流端で合流させて混合液体搬送用流路14内で混合液体L3を生成するときに、第1,第2振動板25A,25Bからの振動周波数の異なりにより液体混合速度を調整できる。
【0088】
次に、ステップS3では、第1,第2液体L1,L2を第1,第2液体搬送用流路13A,13Bの下流端で合流させて混合液体搬送用流路14内に導いて混合液体L3を生成し、この混合液体L3を混合液体搬送用流路14内で混合しながら下流に向けて搬送する。
【0089】
この際、透明な基板11上に形成した混合液体搬送用流路14の内壁も光触媒機能を有しているので、混合液体用紫外線LED駆動回路55を作動させて混合液体L3の搬送方向側の端面に紫外線LED22からの紫外線を局所的に照射しながら複数の紫外線LED22を制御部51のRAM51c内に記憶させた混合液体搬送用流路14のパターンに沿って順次点灯させることで、紫外線LED22から射出された紫外線を混合液体搬送用流路14に沿って搬送方向に移動させ、且つ、混合液体搬送用流路14は透明な基板11の第2領域内に形成されているために、高周波発生器56Bを介して第2振動板25Bを振動させて第2液体搬送用流路13Bに対して120kHz程度の高周波数の振動波を印加することにより、第1,第2液体L1,L2を混合液体搬送用流路14で高速に混合することができる。
【0090】
次に、ステップS4では、混合液体搬送用流路14の下流端に連接させた混合攪拌ゾーン15内で混合液体L3を混合攪拌する。
【0091】
この際、混合攪拌ゾーン15は、透明な基板11の第2領域11B内に設けた混合液体搬送用流路14とは異なって透明な基板11の第1領域11A内に設けられ、且つ、混合攪拌ゾーン15の内壁も光触媒機能を有しているので、混合液体用紫外線LED駆動回路55を作動させて混合液体L3の搬送方向側の端面に紫外線LED22からの紫外線を局所的に照射しながら複数の紫外線LED22を制御部51のRAM51c内に記憶させた混合攪拌ゾーン15のパターンに応じた移動方向{図4(b)に示した矢印方向}に沿って順次点灯させることで、紫外線LED22から射出された紫外線を混合攪拌ゾーン15内での搬送方向に移動させ、且つ、低周波発生器56Aを介して第1振動板25Aを振動させて混合攪拌ゾーン15に対して40kHz程度の低周波数の振動波を印加することにより、混合液体L3が混合攪拌ゾーン15内に設けた突起15aを中心にして図4(b)に示した矢印方向に対流しながら良好に混合攪拌できる。
【0092】
ここで、透明な基板11上に形成した混合液体搬送用流路14と混合攪拌ゾーン15とを異なる振動領域内に設け、且つ、各領域に対応した異なる周波数で振動させる理由について述べると、混合液体搬送用流路14に対してここで対応する周波数の振動が加わることにより混合液体搬送用流路14内で混合液体L3が混合されながら攪拌動作も行われるが、混合液体搬送用流路14と混合攪拌ゾーン15とを異なる周波数の振動領域に設けることにより、振動条件が混合時と混合攪拌時とでは異なるために、混合性能又は混合攪拌性能をより一層向上させることができる。
【0093】
この際、実施例のように、混合液体搬送用流路14を高周波数の振動波の領域に設定し、且つ、攪拌ゾーン15を低周波数の振動波の領域に設定するか、実施例とは逆に、混合液体搬送用流路14を低周波数の振動波の領域に設定し、且つ、攪拌ゾーン15を高周波数の振動波の領域に設定するかは、流路パターンに応じて適宜設定すれば良い。
【0094】
尚、上記とは異なって、透明な基板11上に形成した混合液体搬送用流路14と混合攪拌ゾーン15とを同一振動領域内に設けることも可能であるが、この場合には混合時と混合攪拌時の振動条件が同一になるために、混合時と混合攪拌時の振動条件が異なる場合よりも混合性能又は混合攪拌性能が少し劣る。
【0095】
そして、混合液体L3が良好に混合攪拌できたらこの動作フローを終了する。
【0096】
また、上記した本発明に係る液体混合方法の動作フローは、前述したように液体混合装置1が小型且つ薄型化されているので、液体混合装置1を図8に示した顕微鏡60のステージ61上に搭載して観察することができる。
【0097】
この際、顕微鏡60は、ステージ61,レンズ62,ハーフミラー63,対物レンズ64,レンズ65,CCDカメラ66,モニタTV67などにより構成されている。
【0098】
そして、顕微鏡60により液体混合装置1内での液体混合動作を観察する場合に、流路モジュール10の下方に設けた光源・振動モジュール30を動作させて紫外線光源部20からの紫外線を透明な基板11に照射しているので、対物レンズ64を通して人間の目E又はCCDカメラ66を介してモニタTV67で観察できる。
【0099】
この際、実施例では、第2振動板25Bからの高周波数の振動波により混合液体L3が混合液体搬送用流路14内で高速に混合されるが、混合液体L3を混合攪拌する混合攪拌ゾーン15は第1振動板25Aからの低周波数の振動波が加わって混合液体搬送用流路14内の振動よりも遅いために、顕微鏡60下で混合攪拌ゾーン15内の混合攪拌状態を観察しやすい。
【0100】
一方、実施例とは異なって、混合液体搬送用流路14を低周波数の振動波により振動させ、且つ、混合攪拌ゾーン15を高周波数の振動波により振動させた場合には、顕微鏡60下で混合液体搬送用流路14内の混合状態を観察しやすい。
【符号の説明】
【0101】
1…実施例の液体混合装置、
10…流路モジュール、
11…透明な基板、11A…第1領域、11B…第2領域、11C…スリット、
12A…第1液体注入口、12B…第2液体注入口、
13A…第1液体搬送用流路、13B…第2液体搬送用流路、
14…混合液体搬送用流路、15…混合攪拌ゾーン、15a…突起、
20…紫外線光源部、21…半導体基板、22…紫外線LED、
25…振動板部、25A…第1振動板、25B…第2振動板、
30…光源・振動モジュール、
40…基台、
50…制御回路、51…制御部、51a…ROM、51b…CPU、51c…RAM、
52…流路パターン入力部、53…第1液体用紫外線LED駆動回路、
54…第2液体用紫外線LED駆動回路、55…混合液体用紫外線LED駆動回路、
56A…低周波発生器、56B…高周波発生器、57…電源部、60…顕微鏡、
L1…第1液体、L2…第1液体、L3…混合液体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2種類以上の液体を、2以上の領域に分割された基板の上面に光触媒機能を有して形成された流路内で混合する液体混合装置であって、
前記基板上の2以上に分割された各領域に、前記2種類以上の液体を注入する注入部がそれぞれ形成され、前記各注入部から注入された前記2種類以上の液体をそれぞれ搬送する2本以上の液体搬送用流路と、
前記2本以上の液体搬送用流路のうち、少なくとも2本の液体搬送用流路の各下流端に連接され、前記2本以上の液体搬送用流路から搬送された前記2種類以上の液体を混合した混合液体を搬送する混合液体搬送用流路と、
前記各液体搬送用流路にそれぞれ注入された前記2種類以上の液体、及び、前記混合液体搬送用流路に搬送された前記混合液体の搬送方向側の各端面に紫外線を照射して、該紫外線を前記各流路に沿って搬送方向に移動させる紫外線光源部と、
前記2以上の領域に対応して設けられ、且つ、各振動波を前記2以上の領域にそれぞれ印加する2以上の振動板を有する振動板部と、
を備えたことを特徴とする液体混合装置。
【請求項2】
2種類以上の液体を、2以上の領域に分割された基板の上面に光触媒機能を有して形成された流路内で混合する液体混合装置であって、
前記基板上の2以上に分割された各領域に、前記2種類以上の液体を注入する注入部がそれぞれ形成され、前記各注入部から注入された前記2種類以上の液体をそれぞれ搬送する2本以上の液体搬送用流路と、
前記2本以上の液体搬送用流路のうち、少なくとも2本の液体搬送用流路の各下流端に連接され、前記2本以上の液体搬送用流路から搬送された前記2種類以上の液体を混合した混合液体を搬送する混合液体搬送用流路と、
前記混合液体搬送用流路の下流端に連接され、前記混合液体搬送用流路から搬送された前記混合液体を混合攪拌する混合攪拌ゾーンと、
前記各液体搬送用流路にそれぞれ注入された前記2種類以上の液体、及び、前記混合液体搬送用流路に搬送された前記混合液体、並びに、前記混合攪拌ゾーンに搬送された前記混合液体の搬送方向側の各端面に紫外線を照射して、該紫外線を前記各流路と前記混合攪拌ゾーン内とに沿って搬送方向に移動させる紫外線光源部と、
前記2以上の領域に対応して設けられ、且つ、各振動波を前記2以上の領域にそれぞれ印加する2以上の振動板を有する振動板部と、
を備えたことを特徴とする液体混合装置。
【請求項3】
前記混合液体搬送用流路と前記混合攪拌ゾーンは、前記2以上の振動板から固有振動周波数がそれぞれ異なる各振動波が印加される前記基板上の異なる領域に設けられていることを特徴とする請求項2記載の液体混合装置。
【請求項4】
前記混合攪拌ゾーン内の底面から1以上の突起を突出形成したことを特徴とする請求項2又は請求項3記載の液体混合装置。
【請求項5】
前記基板の下面にスリットを前記2以上の領域の各境界線に沿って形成したことを特徴とする請求項1〜請求項4のうちいずれか1項記載の液体混合装置。
【請求項6】
前記紫外線光源部は、半導体基板上に前記紫外線を射出する複数の紫外線LEDをマトリックス状に配列させて、紫外線LED駆動回路により前記複数の紫外線LEDを前記紫外線の移動方向に向かって順次点灯させることを特徴とする請求項1〜請求項5のうちいずれか1項記載の液体混合装置。
【請求項7】
前記基板を流路モジュールとしてモジュール化し、且つ、前記振動板部上に前記紫外線光源部を重ね合わせて光源・振動モジュールとしてモジュール化すると共に、前記光源・振動モジュールの前記紫外線光源部上に前記流路モジュールを着脱可能に取り付けたことを特徴とする請求項1〜請求項6のうちいずれか1項記載の液体混合装置。
【請求項8】
2種類以上の液体を、2以上の領域に分割された基板の上面に光触媒機能を有して形成された流路内で混合する液体混合方法であって、
前記基板上の2以上に分割された各領域にそれぞれ形成された注入部から2本以上の液体搬送用流路内に注入された前記2種類以上の液体の搬送方向側の各端面に紫外線を照射して、該紫外線を前記2本以上の液体搬送用流路に沿って搬送方向に移動させると共に、前記2以上の領域に対応してそれぞれ設けられた2以上の振動板からの各振動波を各領域にそれぞれ印加することで、前記2種類以上の液体を前記2本以上の液体搬送用流路に沿って搬送するステップと、
前記2本以上の液体搬送用流路のうち、少なくとも2本の液体搬送用流路の各下流端に混合液体搬送用流路が連接され、前記2本以上の液体搬送用流路から前記混合液体搬送用流路内に搬送された前記2種類以上の液体を混合した混合液体の搬送方向側の端面に紫外線を照射して、該紫外線を前記混合液体搬送用流路に沿って搬送方向に移動させると共に、前記2以上の振動板のうちで前記混合液体搬送用流路側と対応する振動板からの振動波を前記混合液体搬送用流路を形成した領域に印加することで、前記混合液体を前記混合液体搬送用流路に沿って搬送するステップと、
を含むことを特徴とする液体混合方法。
【請求項9】
2種類以上の液体を、2以上の領域に分割された基板の上面に光触媒機能を有して形成された流路内で混合する液体混合方法であって、
前記基板上の2以上に分割された各領域にそれぞれ形成された注入部から2本以上の液体搬送用流路内に注入された前記2種類以上の液体の搬送方向側の各端面に紫外線を照射して、該紫外線を前記2本以上の液体搬送用流路に沿って搬送方向に移動させると共に、前記2以上の領域に対応してそれぞれ設けられた2以上の振動板からの各振動波を各領域にそれぞれ印加することで、前記2種類以上の液体を前記2本以上の液体搬送用流路に沿って搬送するステップと、
前記2本以上の液体搬送用流路のうち、少なくとも2本の液体搬送用流路の各下流端に混合液体搬送用流路が連接され、前記2本以上の液体搬送用流路から前記混合液体搬送用流路内に搬送された前記2種類以上の液体を混合した混合液体の搬送方向側の端面に紫外線を照射して、該紫外線を前記混合液体搬送用流路に沿って搬送方向に移動させると共に、前記2以上の振動板のうちで前記混合液体搬送用流路側と対応する振動板からの振動波を前記混合液体搬送用流路を形成した領域に印加することで、前記混合液体を前記混合液体搬送用流路に沿って搬送するステップと、
前記混合液体搬送用流路の下流端に混合攪拌ゾーンが連接され、前記混合液体搬送用流路から前記混合攪拌ゾーン内に搬送された前記混合液体の搬送方向側の端面に紫外線を照射して、該紫外線を前記混合攪拌ゾーン内での搬送方向に移動させると共に、前記2以上の振動板のうちで前記混合攪拌ゾーンと対応する振動板からの振動波を前記混合攪拌ゾーンを形成した領域に印加することで、前記混合液体を前記混合攪拌ゾーン内で混合攪拌するステップと、
を含むことを特徴とする液体混合方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−106218(P2012−106218A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−258960(P2010−258960)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【出願人】(000250502)理想科学工業株式会社 (1,191)
【Fターム(参考)】