説明

液処理方法、液処理装置および記憶媒体

【課題】リンス液を乾燥する際、被処理基板の凸状部が倒壊することを防止することが可能な液処理方法、液処理装置および記憶媒体を提供する。
【解決手段】基板本体部Wと、基板本体部Wに突設された複数の凸状部Wとを有し、基板本体部W上であって凸状部W間に下地面Wが形成された被処理基板Wに対して表面処理を行うことにより、被処理基板Wの下地面Wが親水化し、かつ凸状部Wの表面が撥水化した状態となるようにする。次に、表面処理された被処理基板Wに対してリンス液を供給する。その後、被処理基板Wからリンス液を除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液処理方法、液処理装置および記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、基板本体部(本体部)の表面側に微細な複数の凸状部が微細パターンとして形成された被処理基板(被処理体)に、純水などのリンス液を施し、当該被処理基板に対してリンス液を施した後で乾燥処理を施す液処理方法が知られている。しかしながら、このような液処理方法を用いた場合には、被処理基板に供給されたリンス液を乾燥する際に、基板本体部に突設された凸状部間でリンス液の表面張力が作用し、隣接する凸状部同士が引っ張られて倒壊してしまうことがある。
【0003】
このような凸状部の倒壊を防止するために、薬液を用いて被処理基板を洗浄し、純水を用いてこの薬液を除去し、その後、被処理基板表面に撥水性保護膜を形成する技術が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4403202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、基板本体部の表面(下地面)および凸状部表面を全面的に撥水化した場合、凸状部のパターン形状等によっては、乾燥処理を行う際、リンス液が必ずしも被処理基板の面内で均一に乾燥するとは限らず、リンス液が乾燥した部分とリンス液で濡れた部分とが混在した状態となる場合がある。この場合、リンス液が乾燥した部分とリンス液で濡れた部分との間で、基板本体部上の凸状部に作用するリンス液の表面張力のバランスが崩れ、この結果、凸状部が倒壊するおそれがある。
【0006】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、リンス液を乾燥する際、リンス液が乾燥した部分とリンス液で濡れた部分とが混在することを防止し、凸状部が倒壊することを防止することが可能な液処理方法、液処理装置および記憶媒体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による基板処理方法は、本体部と、該本体部に突設された複数の凸状部とを有し、前記本体部上であって前記凸状部間に下地面が形成された被処理体を処理する液処理方法において、前記被処理体の前記下地面が親水化し、かつ前記凸状部表面が撥水化した状態となるようにする表面処理工程と、表面処理された前記被処理体に対してリンス液を供給するリンス液供給工程と、前記被処理体から前記リンス液を除去する乾燥工程とを備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明による基板処理装置は、本体部と、該本体部に突設された複数の凸状部とを有し、前記本体部上であって前記凸状部間に下地面が形成された被処理体を処理する液処理装置において、前記被処理体を保持する基板保持機構と、前記基板保持機構に保持された前記被処理体に対して表面処理を行う表面処理機構と、前記被処理体に対してリンス液を供給するリンス液供給機構と、前記表面処理機構および前記リンス液供給機構を制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記表面処理機構を制御して、前記被処理体の前記下地面が親水化し、かつ前記凸状部表面が撥水化した状態となるようにし、前記リンス液供給機構を制御して、表面処理された前記被処理体に対して前記リンス液を供給することを特徴とする。
【0009】
本発明による記録媒体は、液処理装置に液処理方法を実行させるためのコンピュータプログラムを格納した記憶媒体において、前記液処理方法は、本体部と、該本体部に突設された複数の凸状部とを有し、前記本体部上であって前記凸状部間に下地面が形成された被処理体を処理する液処理方法であって、前記被処理体の前記下地面が親水化し、かつ前記凸状部表面が撥水化した状態となるようにする表面処理工程と、表面処理された前記被処理体に対してリンス液を供給するリンス液供給工程と、前記被処理体から前記リンス液を除去する乾燥工程とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、被処理体に対してリンス液を供給するリンス液供給工程の前に、被処理体を表面処理する表面処理工程を設け、被処理体の下地面が親水化し、かつ凸状部表面が撥水化した状態となるようにしている。このことにより、被処理体からリンス液を除去する際、被処理体の面内でリンス液が乾燥した部分とリンス液で濡れた部分とが混在することを防止し、凸状部が倒壊することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施の形態における液処理方法に用いられる被処理基板(被処理体)を示す図である。
【図2】本発明の一実施の形態による液処理装置の構成を示す側方断面図である。
【図3】本発明の一実施の形態による液処理装置の構成を示す上方平面図である。
【図4】本発明の一実施の形態による液処理方法を示すフロー図である。
【図5】本発明の一実施の形態による液処理方法の各工程における被処理基板の状態を示す概略断面図である。
【図6】被処理基板の凸状部が倒壊する原理を説明するための側方断面図である。
【図7】被処理基板からリンス液を乾燥させて除去する際の被処理基板を示す概略断面図である。
【図8】本発明の一実施の形態の変形例による液処理方法を示すフロー図である。
【図9】本発明の一実施の形態の変形例による液処理方法を示すフロー図である。
【図10】本発明の一実施の形態の変形例による液処理装置の構成を示す上方平面図である。
【図11】本発明の一実施の形態の変形例による液処理方法を示すフロー図である。
【図12】本発明の一実施の形態の変形例による液処理方法を示すフロー図である。
【図13】本発明の一実施の形態で用いられる被処理基板の別の態様を示す側方断面図である。
【図14】比較例における、被処理基板からリンス液を乾燥させて除去する際の、被処理基板を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施の形態について、図1乃至図7を参照して説明する。
【0013】
被処理体の構成
まず、図1(a)(b)により、本実施の形態による液処理方法において用いられる被処理基板(被処理体)の構成について説明する。図1(a)は、被処理基板の一部を示す概略平面図であり、図1(b)は、被処理基板の一部を示す概略断面図(図1(a)のI−I線断面図)である。
【0014】
図1(a)(b)に示すように、本実施の形態による液処理方法に用いられる被処理基板(被処理体)Wは、平板状の基板本体部(本体部)Wと、基板本体部W上に突設された複数の凸状部Wとを有している。このうち各凸状部Wは、所定のパターンで基板本体部Wに形成されており、具体的にはそれぞれシリンダー(円筒)形状を有している。図1(a)に示すように、各凸状部Wは、平面から見て縦横に所定の間隔を空けて配置されている。
【0015】
また、基板本体部W上であって凸状部W間には、下地面Wが形成されている。基板本体部Wの下地面Wを構成する材料としては、例えばSiN、Si、SiO、などのSi系材料を挙げることができ、凸状部Wを構成する材料としては、例えばTiN(チタンナイトライド)、W(タングステン)、Hf(ハフニウム)、Poly−Siなどの金属系材料を挙げることができる。以下においては、当初、基板本体部Wの下地面Wが撥水性の材料(例えばSiN)からなり、凸状部Wの材料(例えばTiN)の表面が親水性である場合を例にとって説明するが、これに限定されるものではない。また、このような被処理基板Wとしては、半導体ウエハなどの被処理基板を例として挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【0016】
液処理装置の構成
次に、図2および図3により、本実施の形態による液処理装置の構成について説明する。図2および図3は、本実施の形態による液処理装置を示す図である。
【0017】
図2に示すように、液処理装置10は、被処理基板Wを回転可能に保持する基板保持機構50を備えている。この基板保持機構50は、中空構造となった支持プレート51と、支持プレート51上に設けられ、被処理基板Wの基板本体部Wを保持して支持する支持部57とを有している。
【0018】
また、支持プレート51の下面に、上下方向に延在するとともに中空構造となった回転軸52が連結されている。支持プレート51の中空内には、被処理基板Wの基板本体部Wの裏面(下面)に当接可能なリフトピン55aを有するリフトピンプレート55が配置されている。このリフトピンプレート55の下面には、回転軸52の中空内で上下方向に延びるリフト軸56が連結されている。
【0019】
またリフト軸56の下端部には、リフト軸56を上下方向に移動させるリフト駆動部45が設けられている。さらに、支持プレート51の周縁外方には、支持部57によって支持された被処理基板Wの周縁とその斜め上方を覆うためのカップ59が設けられている。なお、図2ではリフトピン55aが1つしか図示されていないが、実際には、リフトピンプレート55に3つのリフトピン55aが設けられている。
【0020】
また、図2に示すように、液処理装置は、回転軸52の周縁外方に配置されたプーリ43と、このプーリ43に駆動ベルト42を介して駆動力を付与するモータ41とを有する回転駆動機構40を更に備えている。
【0021】
そして、この回転駆動機構40は、モータ41が回転軸52を回転させることにより、回転軸52を中心に支持部57を回転させ、この結果、基板保持機構50の支持部57によって保持されて支持された被処理基板Wを回転させるように構成されている。なお、回転軸52の周縁外方にはベアリング44が配置されている。
【0022】
また、図3に示すように、液処理装置10は、基板保持機構50に保持された被処理基板Wに対して薬液、リンス液、および置換促進液を各々供給する薬液供給機構20、リンス液供給機構25、および置換促進液供給機構30を備えている。また、液処理装置10は、被処理基板Wに対して表面処理を行うことにより、被処理基板Wの下地面(Si系材料、例えばSiN)がリンス液に対して親水化し、かつ凸状部表面(金属系材料、例えばTiN)がリンス液に対して撥水化した状態となるようにする表面処理機構70を更に備えている。
【0023】
このうち薬液供給機構20は、基板保持機構50の支持部57によって支持された被処理基板Wに対して、薬液を供給するものである。この薬液供給機構20は、薬液を供給する薬液供給部21と、薬液供給部21から供給された薬液を案内する薬液供給管22と、薬液供給管22からの薬液を被処理基板Wに吐出する液供給ノズル23とを有している。なお、薬液供給管22の一部は液供給アーム11内を通過しており、液供給ノズル23は、当該液供給アーム11の端部に設けられている。なお、本実施の形態で用いられる薬液としては、例えば、希フッ酸(DHF)、硫酸過水(SPM)、アンモニア過水(SC1)などを挙げることができるが、これに限られるものではない。
【0024】
また、リンス液供給機構25は、被処理基板Wに対してリンス液を供給するものであり、リンス液供給部26と、当該リンス液供給部26から供給されたリンス液を案内するリンス液供給管27とを有している。またリンス液供給管27の端部には上述した液供給ノズル23が連結されている。このリンス液供給管27の一部は、液供給アーム11内を通過している。なお、本実施の形態で用いられるリンス液としては、例えば純水(DIW)を用いることができるが、これに限られるものではない。
【0025】
また、置換促進液供給機構30は、被処理基板Wに対して置換促進液を供給するものであり、置換促進液供給部31と、当該置換促進液供給部31から供給された置換促進液を案内する置換促進液供給管32と、当該置換促進液供給管32の端部に連結された置換促進液供給ノズル33とを有している。この置換促進液供給管32の一部は、液供給アーム11内を通過している。なお、本実施の形態で用いられる置換促進液としては、例えばIPA(イソプロピルアルコール)、PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)、HFE(ハイドロフルオロエーテル)などの両親媒性液を用いることができるが、これに限られるものではない。
【0026】
さらに図3に示すように、表面処理機構70は、親水処理液供給機構71と、撥水処理液供給機構75とを有している。
【0027】
このうち親水処理液供給機構71は、被処理基板Wの撥水性の下地面Wを親水化するための親水処理液を供給するものであり、親水処理液を供給する親水処理液供給部72と、親水処理液供給部72から供給された親水処理液を案内する親水処理液供給管73と、親水処理液供給管73に連結されるとともに液供給アーム11の端部に設けられた親水処理液供給ノズル74とを有している。なお、親水処理液供給管73の一部は、液供給アーム11内を通過する。本実施の形態で用いられる親水処理液としては、例えば、オゾン水を含む薬液や、SPMを含む薬液などを用いることができるが、これに限られるものではない。
【0028】
一方、撥水処理液供給機構75は、被処理基板Wの親水性の凸状部Wの表面を撥水化するための撥水処理液を供給するものであり、撥水処理液を供給する撥水処理液供給部76と、撥水処理液供給部76から供給された撥水処理液を案内する撥水処理液供給管77と、撥水処理液供給管77に連結されるとともに液供給アーム11の端部に設けられた撥水処理液供給ノズル78とを有している。撥水処理液供給管77の一部は、液供給アーム11内を通過している。なお、本実施の形態で用いられる撥水処理液としては、例えば、ジメチルアミノトリメチルシラン(TMSDMA)、ジメチル(ジメチルアミノ)シラン(DMSDMA)、1,1,3,3−テトラメチルジシラン(TMDS)、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)などのシリル化剤や、フッ素ポリマー薬液や、界面活性剤などを含む薬液を用いることができるが、これに限られるものではない。
【0029】
また、図3に示すように、液処理装置10は、液供給アーム11を揺動軸12を中心として水平方向(回転軸52に直交する方向)に揺動させる液供給アーム移動部13を有している。さらに、図2に示すように、液処理装置10は、当該液処理装置10自身、とりわけ薬液供給機構20、リンス液供給機構25、置換促進液供給機構30、回転駆動機構40、リフト駆動部45、基板保持機構50、および表面処理機構70を制御する制御部62も備えている。
【0030】
ところで、本実施の形態においては、後述する液処理方法を液処理装置10に実行させるためのコンピュータプログラムが記憶媒体61に格納されている(図2参照)。そして、液処理装置は、当該記憶媒体61を受け付けるコンピュータ60も備えている。そして、制御部62は、コンピュータ60からの信号を受けて、液処理装置自身(より具体的には、薬液供給機構20、リンス液供給機構25、置換促進液供給機構30、回転駆動機構40、リフト駆動部45、基板保持機構50、および表面処理機構70等)を制御するように構成されている。なお、本願において記憶媒体61とは、例えば、CD、DVD、MD、ハードディスク、RAMなど、コンピュータ上で動作するコンピュータプログラムを格納した記憶媒体を意味している。
【0031】
液処理装置を用いた液処理方法
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用、具体的には上述した液処理装置を用いた液処理方法について説明する。なお、以下の各動作は、制御部62によって制御される。
【0032】
まず、リフト駆動部45によって、リフトピンプレート55が上方位置(搬送ロボット(図示せず)が被処理基板Wを受け渡す位置)に位置づけられる(上方位置づけ工程)。このとき、液供給アーム11は、支持プレート51の上方から外れた位置に位置している。
【0033】
次に、リフトピンプレート55の3つのリフトピン55aによって、搬送ロボットから被処理基板Wが受け取られ、当該リフトピン55aによって被処理基板Wの裏面(下面)が支持される(受取工程)。
【0034】
次に、リフト駆動部45によって、リフトピンプレート55が下方位置(被処理基板Wが薬液などによって処理される位置)に位置づけられる(下方位置づけ工程)(図2参照)。
【0035】
このようにリフトピンプレート55が下方位置に位置づけられる間に、支持プレート51の支持部57によって、被処理基板Wの基板本体部Wが保持されるとともに支持される(支持工程)(図2参照)。このとき、被処理基板Wは、凸状部Wが上方に位置し、基板本体部Wが下方に位置するように位置づけられている(図1(b)参照)。
【0036】
またこのとき、液供給アーム移動部13によって、液供給アーム11が揺動軸12を中心として水平方向に移動されて、被処理基板Wの上方に液供給アーム11が移動させられる。
【0037】
次に、モータ41によって回転軸52が回転駆動されることによって、支持プレート51の支持部57で保持されて支持された被処理基板Wが回転する(回転工程)(図3の矢印A参照)。そして、このように被処理基板Wが回転している間に、以下の工程が行われる。
【0038】
なお当初、被処理基板Wは、基板本体部W上であって、複数の凸状部W間に、例えばSiOからなる酸化膜Wが形成された状態となっている(図5(a)参照)。
【0039】
まず、薬液供給機構20によって、被処理基板Wに薬液が供給される(薬液供給工程S1)(図3および図4参照)。これにより、被処理基板Wの基板本体部W上に形成された酸化膜Wが選択的にエッチング除去される(図5(b)参照)。
【0040】
次に、リンス液供給機構25から、薬液供給機構20によって薬液が供給された後の被処理基板Wの表面に、リンス液が供給される(リンス液供給工程S2)(図3および図4参照)。このようにリンス液を被処理基板Wに供給することにより、被処理基板Wにおける薬液の反応を停止するとともに、薬液を取り除くことができる。
【0041】
次に、表面処理機構70の親水処理液供給機構71から、被処理基板Wの表面に、親水処理液が供給される(親水処理液供給工程S3)(図3および図4参照)。これにより、被処理基板Wの撥水性の下地面W(例えばSiN)が選択的に親水化される(図5(c)の太線部分参照)。なお、このようにして被処理基板Wの下地面Wが親水化されたとき、リンス液と下地面Wとの接触角が80°以上になることが好ましく、90°以上となることが更に好ましい。
【0042】
次に、置換促進液供給機構30から、親水処理液供給機構71によって親水処理液が供給された後の被処理基板Wの表面に、親水処理液を撥水処理液に置換するための置換促進液が供給される(置換促進液供給工程S4)(図3および図4参照)。なお、この置換促進液供給工程S4の前に、リンス液供給機構25から被処理基板Wの表面にリンス液が供給されても良い(リンス液供給工程)。
【0043】
次に、表面処理機構70の撥水処理液供給機構75から、被処理基板Wの表面に、撥水処理液が供給される(撥水処理液供給工程S5)(図3および図4参照)。これにより、被処理基板Wの、親水性となっている凸状部Wの表面(例えばTiN)が選択的に撥水化される(図5(d)の太線部分参照)。このとき被処理基板Wの下地面Wは親水化されたままの状態である。なお、このようにして被処理基板Wの凸状部Wの表面が撥水化されたとき、リンス液と凸状部Wとの接触角が30°以下になることが好ましく、20°以下となることが更に好ましく、10°以下となることが最も好ましい。
【0044】
このように、親水処理液供給機構71からの親水処理液および撥水処理液供給機構75からの撥水処理液により、被処理基板Wの下地面Wが選択的に親水化され、かつ凸状部Wの表面が選択的に撥水化された状態となる。本実施の形態において、これら親水処理液供給工程S3と撥水処理液供給工程S5とにより、表面処理工程が構成されている。
【0045】
続いて、置換促進液供給機構30から、撥水処理液供給機構75によって撥水処理液が供給された後の被処理基板Wの表面に、撥水処理液をリンス液に置換するための置換促進液が供給される(置換促進液供給工程S6)(図3および図4参照)。
【0046】
次に、リンス液供給部26から、被処理基板Wの表面に、リンス液が供給される(リンス液供給工程S7)(図3および図4参照)。
【0047】
なお、上述した薬液供給工程S1からリンス液供給工程S7までの間、被処理基板Wの凸状部Wが液面から露出しないようにしておく。
【0048】
その後、リンス液供給部26からのリンス液の供給が停止され、次いで、モータ41の回転速度が上げられて、基板保持機構50が回転することにより被処理基板Wが乾燥される(乾燥工程S8)。これにより、リンス液が被処理基板Wの表面から除去される(図5(e)参照)。
【0049】
この結果、被処理基板Wがリンス液の液面から露出するが、凸状部Wの表面がリンス液に対して撥水化されているので、凸状部W間に働く表面張力を小さくすることができ、凸状部Wが倒壊することを防止することができる。また同時に、被処理基板Wの下地面Wがリンス液に対して親水化されているので、被処理基板Wの面内でリンス液が乾燥した部分とリンス液で濡れた部分とが混在することを防止し、凸状部Wが倒壊することを防止することができる。
【0050】
なお、上述のように被処理基板Wが回転して乾燥されている間に、液供給アーム移動部13によって、液供給アーム11が揺動軸12を中心として水平方向に移動されて、被処理基板Wの上方から外れた位置に液供給アーム11が移動させられる。
【0051】
次に、モータ41の回転が停止されて、被処理基板Wの回転が停止される(図3参照)。次に、リフト駆動部45によって、リフトピンプレート55が上方位置に位置づけられ、リフトピン55aによって被処理基板Wが持ち上げられる(上方位置づけ工程)。その後、搬送ロボットによって被処理基板Wが受け取られて搬出される(搬出工程)。
【0052】
以上のように、本実施の形態によれば、リンス液を供給する工程(リンス液供給工程S7)の前に、被処理基板Wに親水処理液および撥水処理液を供給することにより(親水処理液供給工程S3および撥水処理液供給工程S5)、被処理基板Wの下地面Wが親水化し、かつ凸状部Wの表面が撥水化した状態となるようにしている。このことにより、凸状部Wの間で表面張力が働くことを防止することができる。また、被処理基板Wからリンス液を乾燥させて除去する際、被処理基板Wの面内でリンス液が乾燥した部分とリンス液で濡れた部分とが混在することを防止し、凸状部Wに作用するリンス液の表面張力のバランスが崩れることにより凸状部Wが倒壊することを防止することができる。
【0053】
具体的には、凸状部W間にリンス液Rが存在する場合に凸状部Wを倒壊させようとする力Fは、以下の式によって導かれる(図6(a)参照)。
【数1】

【0054】
ここで、γはリンス液Rと凸状部Wとの間の界面張力を意味し、θ(θ)はリンス液Rの凸状部Wの表面に対する傾斜角度を意味し、Hは凸状部Wの間のリンス液Rの液面高さを意味し、Dは凸状部Wの奥行きの長さを意味し(図示せず)、Sは凸状部W間の間隔を意味している(図6(a)参照)。
【0055】
凸状部Wの表面が撥水化されていない場合には、リンス液Rが凸状部Wに引っ張られることで、図6(b)に示すように傾斜角度θが小さくなってしまう(cosθが大きくなってしまう)。この結果、凸状部Wを倒壊させようとする力Fが大きくなってしまい、凸状部Wが倒壊してしまう(図6(c)参照)。
【0056】
これに対して、本実施の形態では、凸状部Wの表面が撥水処理液によって撥水化されているので、被処理基板Wが乾燥されていく過程で、リンス液Rの凸状部Wの表面に対する傾斜角度θを80°以上、または90°以上に保つことができ(図6(a)参照)、力Fを小さくすることができる。これにより、凸状部Wが倒壊されることを防止することができる。
【0057】
また、本実施の形態では、被処理基板Wの下地面Wが親水化されているので、この親水性の下地面Wの界面張力が強くなり、被処理基板Wの下地面W上にリンス液が広がった状態を維持することができる。これにより、被処理基板Wからリンス液を乾燥させて除去する際(乾燥工程S8)、リンス液の液膜が親水化された下地面W上に広がる。そしてこの状態を維持したまま、徐々に液膜が薄くなるように被処理基板Wを乾燥させることができる。
【0058】
図7は、このようにリンス液を乾燥させて除去する際における(乾燥工程S8)、被処理基板Wの表面を示す概略断面図である。図7中、右方が被処理基板Wの中央部に対応しており、左方が被処理基板Wの周縁部に対応している(後述する図14についても同様)。
【0059】
図7に示すように、被処理基板Wの下地面Wが親水化されているので、リンス液Rの液膜は、被処理基板Wの下地面W全体に広がり、被処理基板Wの面内でリンス液Rが乾燥した部分とリンス液Rで濡れた部分とが混在することはない。したがって、凸状部Wに作用するリンス液Rの表面張力のバランスが崩れることにより凸状部Wが倒壊することを防止することができる。また、被処理基板Wが回転する際の遠心力により、リンス液Rの液膜は、被処理基板Wの中央部で薄く、周縁部で厚くなるが、各凸状部W間においてはその厚みの差は極めて小さいので、凸状部Wが倒壊する現象は生じない。
【0060】
さらに、上述したように、撥水処理液により凸状部Wの表面が撥水化した状態となっているので(撥水処理液供給工程S5)、リンス液Rの切れ方の違いにより凸状部Wを倒壊させようとする力が発生したとしても、その力はごくわずかであり、凸状部Wが倒壊することはない。
【0061】
他方、図14に示す比較例のように、被処理基板Wの下地面Wと凸状部Wの表面との両方を撥水化した場合、被処理基板W上にリンス液Rの液滴が生じてしまう。これにより、被処理基板Wの面内でリンス液Rが存在する部分とリンス液Rが存在しない部分とが混在し、凸状部Wに作用するリンス液Rの表面張力のバランスが崩れるので、凸状部Wが倒壊するおそれがある。また、リンス液Rの液滴は、被処理基板Wの中央部から周縁部に向けて移動するので(図14の矢印参照)、被処理基板Wの同一の場所でも、リンス液Rによって濡れたり乾いたりすることを繰り返すため、その度に凸状部Wに表面張力が働き、凸状部Wが倒壊するおそれがある。
【0062】
変形例
以下、本実施の形態の各変形例について、図8乃至図13を参照して説明する。図8乃至図13において、図1乃至図7に示す実施の形態と同一部分には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0063】
上記では、表面処理工程において、親水処理液供給工程S3の後で、撥水処理液供給工程S5を行う態様を用いて説明したが、これに限られることはなく、撥水処理液供給工程S5の後で、親水処理液供給工程S3が行われてもよい。すなわち、図8に示すように、薬液供給工程S1と乾燥工程S8の間において、リンス液供給工程S2、置換促進液供給工程S9、撥水処理液供給工程S5、置換促進液供給工程S4、親水処理液供給工程S3、およびリンス液供給工程S7を順次行ってもよい。
【0064】
この場合にも、親水性の凸状部Wの表面を撥水処理液によって撥水化し、かつ、撥水性の下地面Wを親水処理液によって親水化することができるので、乾燥工程S8において凸状部Wが倒壊することを防止することができる。
【0065】
あるいは、親水処理液供給工程S3と、撥水処理液供給工程S5とを別々に行うのではなく、表面処理工程において、下地面Wの親水化と、凸状部Wの表面の撥水化とを同時に行っても良い。すなわち、図9に示すように、薬液供給工程S1と乾燥工程S8の間において、リンス液供給工程S2、親水撥水処理液供給工程S10、およびリンス液供給工程S7を順次行っても良い。この場合、表面処理工程において、被処理基板Wに対して、撥水性の下地面Wを親水化することと、親水性の凸状部Wの表面を撥水化することとを同時に実行する親水撥水処理液を供給する(親水撥水処理液供給工程S10)。なお、このような親水撥水処理液としては、例えば界面活性剤を含む薬液を用いることができる。
【0066】
このように、被処理基板Wに対して親水撥水処理液を供給する場合、図10に示すように、表面処理機構70は、撥水性の下地面Wを親水化することと、親水性の凸状部Wの表面を撥水化することとを同時に実行する親水撥水処理液を供給する親水撥水処理液供給機構81を有している。この場合、親水撥水処理液供給機構81は、親水撥水処理液を供給する親水撥水処理液供給部82と、親水撥水処理液供給部82から供給された親水撥水処理液を案内する親水撥水処理液供給管83と、親水撥水処理液供給管83に連結されるとともに液供給アーム11の端部に設けられた親水撥水処理液供給ノズル84とを有している。親水撥水処理液供給管83の一部は、液供給アーム11内を通過している。
【0067】
この場合にも、親水撥水処理液により、撥水性の下地面Wを選択的に親水化し、かつ、親水性の凸状部Wの表面を選択的に撥水化することができるので、乾燥工程S8において凸状部Wが倒壊することを防止することができる。さらに、撥水性の下地面Wを親水化することと、親水性の凸状部Wの表面を撥水化することとを、1回の工程で効率良く実行することができる。
【0068】
ところで、上記では、当初、基板本体部Wの下地面Wが撥水性の材料(例えばSiN)からなり、凸状部Wの材料(例えばTiN)の表面が親水性となっている場合を例にとって説明したが、これに限られるものではない。
【0069】
例えば、凸状部Wの材料の表面が親水性となる一方で、基板本体部Wの下地面Wが初めから親水性の材料からなる場合は、親水処理液供給工程S3を省略しても良い。すなわち、図11に示すように、薬液供給工程S1と乾燥工程S8の間において、リンス液供給工程S2、置換促進液供給工程S4、撥水処理液供給工程S5、置換促進液供給工程S6、およびリンス液供給工程S7を順次行っても良い。この場合、図3において、表面処理機構70のうち親水処理液供給機構71を省略しても良い。
【0070】
あるいは、基板本体部Wの下地面Wが撥水性の材料からなる一方で、凸状部Wの材料の表面が初めから撥水性である場合は、撥水処理液供給工程S5を省略しても良い。すなわち、図12に示すように、薬液供給工程S1と乾燥工程S8の間において、リンス液供給工程S2、親水処理液供給工程S3、およびリンス液供給工程S7を順次行っても良い。この場合、図3において、表面処理機構70のうち撥水処理液供給機構75を省略しても良い。
【0071】
ところで、上記では、被処理基板Wの各凸状部Wがそれぞれシリンダー(円筒)形状からなる態様を用いて説明したが(図1(a)(b)参照)、これに限られるものではない。例えば、図13(a)(b)に示すように、被処理基板Wの各凸状部Wが細長い板形状を有していても良い。このような被処理基板Wにおいても、乾燥工程S8で凸状部Wが倒壊することを防止することができる。なお、図13(a)は、被処理基板の一部を示す概略平面図であり、図13(b)は、被処理基板の一部を示す概略断面図(図13(a)のXIII−XIII線断面図)である。
【符号の説明】
【0072】
W 被処理基板(被処理体)
基板本体部(本体部)
凸状部
下地面
10 液処理装置
11 液供給アーム
20 薬液供給機構
25 リンス液供給機構
30 置換促進液供給機構
40 回転駆動機構
50 基板保持機構
51 支持プレート
52 回転軸
56 リフト軸
57 支持部
60 コンピュータ
61 記憶媒体
62 制御部
70 表面処理機構
71 親水処理液供給機構
75 撥水処理液供給機構
81 親水撥水処理液供給機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部と、該本体部に突設された複数の凸状部とを有し、前記本体部上であって前記凸状部間に下地面が形成された被処理体を処理する液処理方法において、
前記被処理体の前記下地面が親水化し、かつ前記凸状部表面が撥水化した状態となるようにする表面処理工程と、
表面処理された前記被処理体に対してリンス液を供給するリンス液供給工程と、
前記被処理体から前記リンス液を除去する乾燥工程とを備えたことを特徴とする液処理方法。
【請求項2】
前記表面処理工程は、前記被処理体に対して、撥水性の前記下地面を親水化する親水処理液を供給する親水処理液供給工程を含むことを特徴とする請求項1記載の液処理方法。
【請求項3】
前記表面処理工程は、前記被処理体に対して、親水性の前記凸状部表面を撥水化する撥水処理液を供給する撥水処理液供給工程を含むことを特徴とする請求項1または2記載の液処理方法。
【請求項4】
前記表面処理工程は、前記被処理体に対して、撥水性の前記下地面を親水化することと、親水性の前記凸状部表面を撥水化することとを同時に実行する親水撥水処理液を供給する親水撥水処理液供給工程を含むことを特徴とする請求項1記載の液処理方法。
【請求項5】
前記被処理体の各前記凸状部は、それぞれシリンダー形状を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項記載の液処理方法。
【請求項6】
前記下地面がSi系材料からなり、各前記凸状部が金属系材料からなることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項記載の液処理方法。
【請求項7】
本体部と、該本体部に突設された複数の凸状部とを有し、前記本体部上であって前記凸状部間に下地面が形成された被処理体を処理する液処理装置において、
前記被処理体を保持する基板保持機構と、
前記基板保持機構に保持された前記被処理体に対して表面処理を行う表面処理機構と、
前記被処理体に対してリンス液を供給するリンス液供給機構と、
前記表面処理機構および前記リンス液供給機構を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、
前記表面処理機構を制御して、前記被処理体の前記下地面が親水化し、かつ前記凸状部表面が撥水化した状態となるようにし、
前記リンス液供給機構を制御して、表面処理された前記被処理体に対して前記リンス液を供給することを特徴とする液処理装置。
【請求項8】
前記基板保持機構は、前記被処理体を回転可能に保持しており、前記制御部は、前記基板保持機構を制御して、前記基板保持機構を回転させることにより、前記被処理体から前記リンス液を除去することを特徴とする請求項7記載の液処理装置。
【請求項9】
前記表面処理機構は、前記被処理体に対して、撥水性の前記下地面を親水化する親水処理液を供給する親水処理液供給機構を含むことを特徴とする請求項7または8記載の液処理装置。
【請求項10】
前記表面処理機構は、前記被処理体に対して、親水性の前記凸状部表面を撥水化する撥水処理液を供給する撥水処理液供給機構を含むことを特徴とする請求項7乃至9のいずれか一項記載の液処理装置。
【請求項11】
前記表面処理機構は、前記被処理体に対して、撥水性の前記下地面を親水化することと、親水性の前記凸状部表面を撥水化することとを同時に実行する親水撥水処理液を供給する親水撥水処理液供給機構を含むことを特徴とする請求項7または8記載の液処理装置。
【請求項12】
前記被処理体の各前記凸状部は、それぞれシリンダー形状を有することを特徴とする請求項7乃至11のいずれか一項記載の液処理装置。
【請求項13】
前記下地面がSi系材料からなり、各前記凸状部が金属系材料からなることを特徴とする請求項7乃至12のいずれか一項記載の液処理装置。
【請求項14】
液処理装置に液処理方法を実行させるためのコンピュータプログラムを格納した記憶媒体において、
前記液処理方法は、
本体部と、該本体部に突設された複数の凸状部とを有し、前記本体部上であって前記凸状部間に下地面が形成された被処理体を処理する液処理方法であって、
前記被処理体の前記下地面が親水化し、かつ前記凸状部表面が撥水化した状態となるようにする表面処理工程と、
表面処理された前記被処理体に対してリンス液を供給するリンス液供給工程と、
前記被処理体から前記リンス液を除去する乾燥工程とを有することを特徴とする記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−134363(P2012−134363A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−285921(P2010−285921)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】