説明

液処理装置、液処理方法及び記憶媒体

【課題】基板に薬液を供給して液処理を行う液処理装置において、薬液の供給状態を確実に判定できる技術を提供すること。
【解決手段】基板保持部に保持された基板に、ポンプから配管及びノズルを介して薬液を供給して液処理を行う装置において、前記配管からノズルの先端部に至るまでの流路構成部材に歪みゲージが設けられた歪みセンサと、この歪みセンサの出力電圧を微分する微分回路と、この微分回路の出力に応じて薬液の供給状態を判定する判定部と、を備えるように装置を構成する。光学的な検出を行う場合よりも基板の表面状態や薬液の性質による影響が抑えられるので、精度高い判定を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に処理液を供給して液処理を行う液処理装置、液処理方法及び記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程の一つであるフォトレジスト工程においては、半導体ウエハ(以下、ウエハという)の表面に様々な薬液を供給して液処理を行う。この液処理を行う装置としては、例えばウエハに薬液としてレジストを塗布するレジスト塗布装置がある。レジスト塗布装置は、ウエハにレジストを供給するノズルを備えており、このレジスト供給ノズルにはポンプから配管を介してレジストが圧送される。
【0003】
このレジスト塗布装置において長時間レジスト供給ノズルを使用しないと、前記配管内でレジストが固化して詰まりが生じたり、レジストが発泡して配管内に空気が溜まる。それによって、レジスト供給ノズルから正常にレジストが吐出されず、ウエハごとに処理がばらついてしまうおそれが有る。そこで、レジスト塗布装置には、レジスト供給ノズルからのレジストの吐出を光学的に検出する検出手段が設けられる場合が有る。
【0004】
この検出手段としては、例えばレジスト供給ノズルから吐出されるレジストの液流を撮像するCCDカメラがあり、このCCDカメラにより取得された画像に基づいてレジスト塗布装置に設けられるコンピュータが、レジスト吐出の異常を検出する。また、その他の検出手段としては、ウエハWの表面にレーザを照射する照射部と、ウエハWから反射した前記レーザを受光する受光部と、を備えたセンサがある。レジストがウエハに供給されると、前記受光部の受光量が変化し、この受光量の変化に基づいて前記コンピュータがレジスト吐出の異常を検出するようになっている。
【0005】
しかし、レジストによってその色は様々であり、透明度の高いものだと上記のようなカメラによる検出を行い難い場合が有る。また、ウエハの表面状態は様々であり、光の反射率や反射角が夫々異なる。従って、この表面状態によっては前記センサによる検出も行い難い場合が有る。また、レジスト塗布装置には様々な種類のウエハが搬入され、各ウエハに対して夫々異なるレジストを用いて処理を行う場合がある。その場合、上記の各手法ではレジストの吐出の有無を区別するためのしきい値の設定が困難である。このような事情から、光学的な検出手段によらず、レジストなどの薬液の供給状態を判定することができる液処理装置が求められていた。
【0006】
特許文献1では、基板の外方に歪みゲージを設け、吐出ノズルからこの歪みゲージに処理液を吐出することにより吐出圧力を測定する液処理装置について記載されている。しかし、特許文献1の発明では、基板に処理液を吐出中に異常が起こった場合には、その異常を検出することができない。特許文献2では、対向する部品と接触することによるノズルの歪みを検出するために、歪みゲージをノズルに設けた吐出装置について記載されており、検出回路が歪みゲージの抵抗値の変化に基づいて歪み量を検出する。しかし、上記のレジスト塗布装置では、連続してウエハに処理を行う場合には、レジストの吐出動作により生じたノズルの歪みが戻りきる前に、次のウエハに処理を行うことが考えられる。従って、歪み量の変化に基づいて吐出の有無を検出する場合、しきい値の設定が困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−17780
【特許文献2】特開2005−152826
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はこのような事情の下になされたものであり、その目的は基板に薬液を供給して液処理を行う液処理装置において、薬液の供給状態を確実に判定できる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の液処理装置は、基板保持部に保持された基板に、ポンプから配管及びノズルを介して薬液を供給して液処理を行う装置において、
前記配管からノズルの先端部に至るまでの流路構成部材に歪みゲージが設けられた歪みセンサと、
この歪みセンサの出力電圧を微分する微分回路と、
この微分回路の出力に応じて薬液の供給状態を判定する判定部と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
前記歪みゲージは、例えば樹脂からなる配管や樹脂からなるノズルに設けられている。前記歪みセンサは、例えば前記歪みゲージが伸びたときに出力電圧が正、負のうちの一方の符号になるように構成され、
前記判定部は、前記微分回路の出力電圧が前記一方の符号であって、絶対値が予め定めたしきい値よりも大きくなったときに薬液が流れたと判定するように構成されていてもよい。
【0011】
前記判定部は、前記微分回路の出力電圧が前記一方の符号とは反対の符号であって、絶対値が予め定めたしきい値よりも大きくなったときに薬液の流れが停止したと判定するように構成されていてもよい。また、例えば前記判定部は、薬液が流れたと判定してからの経過時間が予め定めた設定時間よりも短いときに、出力電圧が前記一方の符号とは反対の符号であって、絶対値が予め定めたしきい値よりも大きくなったときに薬液中に気泡が含まれていると判定するように構成される。
【0012】
本発明の液処理方法は、基板保持部に基板を保持する工程と、
ポンプから配管及びノズルを介して基板に薬液を供給して液処理を行う工程と、
前記配管からノズルの先端部に至るまでの流路構成部材に設けられた歪みゲージを含む歪みセンサの出力電圧を、微分回路により微分する工程と、
前記微分回路の出力に応じて薬液の供給状態を判定する工程と、
を備えたことを特徴とする。
【0013】
この液処理方法は、前記歪みゲージが伸びたときに前記歪みセンサから正、負のうちの一方の符号の電圧を出力する工程と、
前記微分回路の出力電圧が前記一方の符号であって、絶対値が予め定めたしきい値よりも大きくなったときに薬液が流れたと判定する工程と、
を備えていてもよい。前記微分回路の出力電圧が前記一方の符号とは反対の符号であって、絶対値が予め定めたしきい値よりも大きくなったときに薬液の流れが停止したと判定する工程を備えていてもよい。また、例えば薬液が流れたと判定してからの経過時間が予め定めた設定時間よりも短いときに、出力電圧が前記一方の符号とは反対の符号であって、絶対値が予め定めたしきい値よりも大きくなったときに薬液中に気泡が含まれていると判定する工程が含まれる。
【0014】
本発明の記憶媒体は、基板保持部に保持された基板に、ポンプから配管及びノズルを介して薬液を供給する液処理装置に用いられるプログラムを格納する記憶媒体において、
前記プログラムは、上述の液処理方法を実行するようにステップ群が組まれていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、薬液の流路構成部材に設けられた歪みゲージを含む歪みセンサの出力電圧を微分回路で微分し、この微分回路の出力に応じて薬液の供給状態を判定している。従って、光学的な検出手段を用いる場合に比べて、基板の表面状態や薬液の光学的な性質による影響が抑えられるので、精度高く薬液供給状態の判定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係るレジスト塗布装置の縦断側面図である。
【図2】前記レジスト塗布装置の斜視図である。
【図3】前記レジスト塗布装置の回路ユニットの構成図である。
【図4】配管の歪み量の変化を示すグラフである
【図5】微分回路からの出力と、比較回路からの出力と、制御部の判定との関係を示す表図である。
【図6】配管の縦断面図である。
【図7】気泡が配管を通過するときの歪み量の変化を示すグラフである。
【図8】レジスト塗布装置に設けられる制御部の構成図である。
【図9】制御部による判定工程を示すフローチャートである。
【図10】参考試験の結果を示すグラフ図である。
【図11】参考試験の結果を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1の実施形態)
【0018】
次に、本発明の液処理装置の実施形態であるレジスト塗布装置1について説明する。このレジスト塗布装置1は、図1に示すように、筐体11の内部に設けている。この筐体11の内部空間12の上部には、清浄なダウンフローを形成するファンフィルタ装置13を設けてある。
【0019】
このレジスト塗布装置1は基板保持部であるスピンチャック21を備えている。スピンチャック21は、真空吸着することによりウエハWを水平に保持し、下方側の駆動部22により軸部23を介して昇降可能であり、かつ鉛直軸回りに回転自在に構成されている。
【0020】
また、レジスト塗布装置1はカップ(囲み部材)3を備えている。カップ3は、スピンチャック21によって保持されたウエハWの周縁を囲み、内部に液処理空間31を有するよう構成してあり、ウエハWに供給されたレジスト等の薬液が飛散することを防止するものである。さらに、カップ3は、下部側に凹部状をなす液受け部32が、ウエハWの周縁下方側に、全周に亘って外側領域と内側領域とに区画された態様で設けられ、外側領域の底部には貯留した塗布液などのドレインを排出するための廃液口33が設けてあり、内側領域の底部には2つの排気口34、35が設けてある。
【0021】
カップ3の内部には、処理液を外側領域にガイドする円板部材36を設けてある。この円板部材36は、軸部23を貫通させる貫通孔37が中央に形成され、周縁部には山形状のガイド部38を設けてある。また、円板部材36を貫通する態様で3本の昇降ピン39が設けられ、昇降ピン39は昇降機構30により昇降する。昇降ピン39の先端がウエハWの裏面に当接することでウエハWを上下方向に昇降し、これによりウエハWが液処理空間31から挿脱される。図2に示す搬送手段14により、ウエハWが装置1の外部と昇降ピン39との間で受け渡される。
【0022】
また、レジスト塗布装置1は、図2に示すようにレジスト供給ノズル41、溶剤供給ノズル51を備えている。レジスト供給ノズル41は例えば樹脂により構成されており、配管42を介してレジスト供給系43に接続されている。レジスト供給系43はレジストを貯留する貯留部と、当該貯留部からレジストをレジスト供給ノズル41に圧送するポンプとを備えており、制御部80から送信される制御信号を受信してレジストの供給を行う。配管42にはバルブ44が介設されており、ウエハWへのレジストの給断を制御する。配管42は、例えば樹脂により構成されている。
【0023】
レジスト供給ノズル41はアーム45に取り付けられている。アーム45を介してレジスト供給ノズル41を、図2に示すZ軸方向(垂直方向)及びX軸方向(水平方向)に夫々移動させるアーム駆動部46が設けられている。図中47はガイドレールであり、アーム駆動部46及び後述のアーム駆動部56を前記X軸方向にガイドする。
【0024】
溶剤供給ノズル51は、配管52を介して溶剤供給系53に接続されている。溶剤供給系は貯留される薬液がレジストの代わりに溶剤例えばシンナーである他はレジスト供給系と同様の構成である。シンナーはレジストのウエハWの濡れ性を向上させるための薬液である。配管52にはバルブ44に相当するバルブ54が介設される。図2中55はアームであり、アーム駆動部46に相当するアーム駆動部56により、溶剤供給ノズル51はX軸方向及びZ軸方向に移動する。また、このレジスト塗布装置1には、待機位置に置かれたレジスト供給ノズル41、溶剤供給ノズル51を待機させる待機部40、50を夫々設けている。この待機部40、50は、レジスト供給ノズル41、溶剤供給ノズル51から夫々吐出された薬液を受ける役割を有する。
【0025】
また、レジスト塗布装置1はエッジリムーバ61を備えている。エッジリムーバ61は、図2に示すようにノズル62が先端部に取り付けられた旋回、昇降自在なアーム63を備えている。このエッジリムーバ61は、レジスト塗布後に、ウエハWの周縁部のレジスト膜を、膜剥れを防止するために溶剤により除去するものである。
【0026】
配管42においてレジスト供給系43のポンプ付近を上流部48とすると、この上流部48には歪みゲージ71Aが設けられている。また、レジスト供給ノズル41の先端には歪みゲージ71Bが設けられている。これらの歪みゲージ71A、71Bは薄い絶縁体上に細い金属抵抗体を所定のパターンで形成することにより構成されており、前記上流部48及びレジスト供給ノズル41の表面に夫々絶縁体側が例えば接着されることにより取り付けられている。レジスト供給系43からレジストが圧送されると、レジスト供給ノズル41、上流部48が膨らむように変形し、この変形に応じて歪みゲージ71A、71Bが伸びる。歪みゲージ71A、71Bが伸びる量(歪み量)が大きいほど、前記金属抵抗体の電気抵抗値が増加するようになっており、この抵抗値の変化を歪み量の変化として検出することができる。この際、歪みゲージ71A、71Bの抵抗値は微小な値なので、ホイートストンブリッジ回路を用いて、電圧に変換している。
【0027】
具体的に、図3に示すように、歪みゲージ71Aを検出部本体72Aに接続することにより、ホイートストンブリッジ回路をなす歪みセンサ70Aが構成されるようになっている。この検出部本体72Aでは、バッテリー73からブリッジ回路の入力電圧が印加されると、ブリッジ回路の出力電圧が電圧検出部74Aにより夫々検出され、歪み量の検出電圧Vとして微分回路75Aに出力される。この例では歪みゲージ71Aが伸びていないときには検出電圧Vが0であり、伸びたときに負の値の検出電圧Vが得られるように、歪みセンサ70Aが構成されている。
【0028】
微分回路75Aは、前記検出電圧Vを微分し、電圧V’を出力する。微分回路75Aの後段には比較回路76A及び77Aが並列に接続されている。比較回路76Aは微分回路75Aから出力された前記電圧V’と予め設定した基準電圧+Vとを比較し、+V≦V’であるかV’<+Vであるかによって異なる電圧を後段のデータ処理部78Aに出力する。また、比較回路77Aは微分回路75Aから出力された前記電圧V’と予め設定した基準電圧−Vとを比較し、−V<V’であるかV’≦−Vであるかによって異なる電圧を後段のデータ処理部78Aに出力する。比較回路76A、77Aの基準電圧をこのように夫々+V、−Vに設定している理由については後述する。データ処理部78Aは、例えばA/D変換器などを備えており、比較回路76A、77Bから出力された信号を変換して制御部80に出力する。
【0029】
図4は、レジスト給断のタイミングと、配管42の上流部48の歪み量の変化、即ち検出電圧Vの変化との関係を示したグラフを示している。時刻t1からt2ではレジスト供給系43のポンプからレジストの供給が行われておらず、上流部48の歪み量は0である。時刻t2で、レジスト供給系43からレジストが供給されると、圧送されるレジストから受ける応力により上流部48は次第に膨らむ。そして、時刻t3でレジストの供給が停止すると、復元力により歪み量が次第に小さくなり、やがて0に戻る。そして、時刻t4でレジスト供給系43から再びレジストの供給が開始されると、再び上流部48が歪む。レジスト供給ノズル41もレジスト供給系43からのレジスト供給により上流部48と同様に歪む。
【0030】
このようにレジストが供給系43から供給されるときには、配管42の上流部48の歪みが次第に大きくなる。前記微分回路75Aから出力される電圧V’は−の値となる。また、供給系43からレジストの供給が停止し、歪みが小さくなりつつあるときには前記微分回路75Aから出力される電圧V’は+の値となる。そして、レジストが吐出されておらず、歪みが解消されているときには、微分回路75Aから出力される電圧V’は0である。ただし、ノイズによる誤検出を防ぐため、この例ではしきい値Vを設け、−V<V’=0<+Vであるときに、レジストが吐出されておらず、歪みが解消されているものとして、後述の制御部80が判定を行えるようになっている。図5の表は、A/D変換された各比較回路76、77からの出力と、微分回路75からの出力電圧V’の範囲と、制御部80により判定されるウエハWへのレジストの吐出状態との関係を示している。この表に示すように+V≦V’であるときには、吐出終了後に配管42の歪みが減少している状態、V’≦−Vであるときにはレジスト吐出中と夫々判定されるように制御部80が構成されている。
【0031】
歪みゲージ71Aに接続される各部について説明したが、図3に示すように歪みゲージ71Bにも同様の各部が接続されている。歪みゲージ71Aに接続される各部及び各回路に対応するものについては、符号としてAの代わりにBを付して説明を省略する。各検出部本体72、微分回路75、比較回路76、77及びデータ処理部78は回路ユニット79を構成している。
【0032】
レジスト供給ノズル41でも、配管42の上流部48と同様に、図4に示したようにレジストの吐出状態によってその歪み量が変化し、歪みゲージ71Bを利用して、図5のレジスト吐出状態の判定を行うことができるが、この例では通常は歪みゲージ71Aを利用して図5のレジスト吐出状態の判定を行う。レジスト吐出中、例えば当該レジストの発泡などにより生じた気泡64が配管42の上流部48を通過すると、図7中時刻t5で示すように、増加を続けていた歪み量が一時的に減少し、その後再び大きくなる。気泡64がレジスト供給ノズル61を通過するときにも同様にレジスト供給ノズル61の歪み量が変化する。これを利用して、歪みゲージ71Aにより気泡を検出したときには、後述のレジスト塗布装置1の作用で説明するように、歪みゲージ71Bにより気泡64の除去の確認を行う。
【0033】
次に、レジスト塗布装置1の制御部80について図8を参照しながら説明する。制御部80は例えばコンピュータにより構成されており、図8において符号81はバスである。このバス81に、CPU(Central Processing Unit)82、記憶部83、プログラム格納部84、表示部85、アラーム表示部86及びタイマー89を接続してある。プログラム格納部84には、ウエハWにレジスト塗布処理を行うための処理プログラム87と、後述のように各種の判定を行う判定プログラム(判定部)88等が格納してある。
【0034】
処理プログラム87により制御部80からレジスト塗布装置1の各部に制御信号が送信され、ウエハWにレジストの塗布処理が行われる。また、処理プログラムは、レジスト吐出開始時刻、レジスト吐出終了時刻の記憶や吐出時間の演算等の処理も行う。判定プログラム88は、回路ユニット79からの出力に基づいて、各種の判定を行う。プログラム格納部84は例えばハードディスク、コンパクトディスク、マグネットオプティカルディスク、メモリーカード等の記憶媒体により構成されており、各プログラムはプログラム格納部84から制御部80にインストールされて動作する。
【0035】
記憶部83には、ウエハWごとにレジストの吐出開始時刻、吐出終了時刻及びこれら吐出開始時刻及び吐出終了時刻から演算されるレジストの吐出時間が記憶される。また、記憶部83にはレジストを吐出を開始するための吐出開始信号の出力時刻及びレジストの吐出を停止するための吐出停止信号の出力時刻も記憶される。表示部85は例えばディスプレイなどにより構成され、記憶部83に記憶された吐出開始時刻、吐出終了時刻、吐出時間及び各信号の出力時刻をウエハWごとに表示する。アラーム発生部86は例えば警告音を発するブサーや警告を表示するためのディスプレイなどにより構成され、レジスト塗布装置1のオペレータに当該装置1の異常を報知する。タイマー89は、レジスト吐出時間を計測するための手段であり、オペレータが不図示の入力部を介して任意に設定する。
【0036】
続いて、レジスト塗布装置1によるウエハWへの塗布処理工程について、図9のフローチャートを参照しながら説明する。オペレータが例えば所定の処理開始作業を行うと、ウエハWが搬送手段14によりレジスト塗布装置1に搬送され、搬送手段14と昇降機構39との協働作業によりスピンチャック21に受け渡される。溶剤供給ノズル51が待機部50からウエハWの中心部上に移動し、ウエハWが例えば1500rpmで回転すると共に当該中心部にシンナーが供給され、供給されたシンナーは周縁部へと濡れ広がる。
【0037】
溶剤供給ノズル51が待機部50へ戻ると共にレジスト供給ノズル41が待機部40からウエハWの中心部上に移動し、ウエハWの回転数が例えば3000rpmに上昇する。このとき制御部80は比較回路76A、77Aからの出力が0,1であるか否か、即ちレジストが吐出されているか否かを判定する(ステップS1)。レジストが吐出されていると判定した場合は、装置に異常があるものと判定して、アラームを出力する(ステップS2)。
【0038】
ステップS1でレジストが吐出されていないと判定した場合、制御部80はレジスト供給系43にレジストの吐出開始信号を出力し、この吐出開始信号の出力時刻を記憶部83に記憶する(ステップS3)。そして、吐出開始信号出力後、予め設定された時間内に比較回路76A、77Aからの出力が夫々0,1となるか否か、即ちレジストが吐出されているか否かを判定する(ステップS4)。
【0039】
ステップS4で設定時間内にレジストが吐出されていないと判定された場合、制御部80は装置に異常が有るものとしてアラームを出力する。ステップS4で設定時間内にレジストが吐出されたと判定した場合、制御部80は、その時刻を吐出開始時刻として記憶部83に書き込み(ステップS5)、タイマー89を駆動させる(ステップS6)。
【0040】
制御部80は、比較回路76A、77Aからの出力が夫々1,0になっているか否か、即ち配管42の歪み量が低下したか否かを判定する(ステップS7)。
ステップS7で、歪み量が低下していないと判定した場合、制御部80はタイマー89がアップしたか否かを判定し(ステップS8)、タイマー89がアップしていないと判定した場合は、ステップS7に戻って繰り返し判定を行う。ステップS8でタイマー89がアップしたと判定した場合、制御部80は吐出停止信号を出力し、この吐出停止信号の出力時刻を記憶部83に記憶する(ステップS9)。そして、吐出停止信号出力後、予め設定された時間内に比較回路76A、77Aからの出力が夫々1,0となるか否か、即ちレジストの吐出が停止されているか否かを判定する(ステップS10)
【0041】
ステップS10で設定時間内にレジストの吐出が停止されていないと判定された場合、制御部80はアラームを出力する。ステップS10で設定時間内に比較回路76A、77Aからの出力が夫々1,0になったと判定した場合、出力が1,0になった時刻を吐出停止時刻として記憶部83に書き込み(ステップS11)、タイマー89をリセットする(ステップS12)。
【0042】
ウエハWに供給されたレジストはスピンコーティングによりウエハW全面に供給され、例えばウエハWの回転数が2000rpmになり、レジストが乾燥される。レジスト供給ノズル41が待機部40に戻り、エッジリムーバ61によりウエハWの周縁部に溶剤が供給され、ウエハW周縁部のレジスト膜が除去される。然る後、ウエハWの回転が停止し、昇降ピン39によりウエハWが不図示の搬送手段に受け渡され、レジスト塗布装置1から搬出される。然る後、後続のウエハWをレジスト塗布装置1に搬送する。
【0043】
ステップS7で比較回路76A、77Aからの出力が1,0になった場合、制御部80は、レジスト中に気泡64が含まれていると判定する(ステップS13)。この判定後は、ステップS8〜S12の動作が行われ、レジスト供給ノズル41が待機部40に戻り、処理中のウエハWへの処理が終了した後、後続のウエハWのレジスト塗布装置1への搬送が一旦停止される。レジスト供給系43に吐出開始信号が出力され、レジスト供給ノズル41から待機部40にレジストが吐出される(ステップS14)。制御部80は、予め設定された時間内に比較回路76B、77Bの出力が1,0になり、その後0,1になるか否か、つまり配管42に残留したレジスト供給ノズル41に気泡64が送り出され、除去されたか否かを判定する。
【0044】
気泡64が除去されたと判定した場合は、制御部80はレジスト供給系43に吐出停止信号を出力する。そして、搬送手段14によるウエハWの搬送を再開し、処理が続行される。前記気泡が除去されなかったと判定した場合は、レジスト供給系43に吐出停止信号を出力し、アラームを出力する。この気泡64を除去する処理は、オペレータが手動で行うこともできる。その場合、例えば表示部85に各比較回路76、77の出力結果が表示され、それを参照しながらオペレータがレジストの吐出及び停止動作を制御する
【0045】
例えば予め設定した枚数、繰り返しウエハWを処理すると、レジスト塗布装置1は、配管42及びレジスト供給ノズル41内の古いレジストを押し流し、これら配管42及びノズル41内でのレジストの固化を防ぐためのダミーディスペンスを行う。このダミーディスペンスは、レジストの吐出先がウエハWの代わりに待機部40であること、タイマー89の設定時間が異なる他は、ウエハWにレジストを供給する場合と同様のプロセスで行われる。即ち上記の各ステップSが実行される。ダミーディスペンスの実行後は、再びウエハWへの処理が行われる。
【0046】
レジスト塗布装置1のメンテナンス時においても、ウエハWの処理時と同様の処理が行われる。ただし、このメンテナンス時に処理されるウエハWは、半導体装置を製造することを目的としないダミーウエハである。例えばレジスト塗布装置1のオペレータは、所定の枚数ウエハWを処理する毎に装置1の動作を停止し、表示部85に表示されたウエハWへのレジスト吐出開始時刻、レジスト供給停止時刻、吐出開始信号及び吐出停止信号の出力時刻に基づいて、レジスト供給系43のポンプの動作やバルブ44の開閉動作の具合などを調整する。
【0047】
このレジスト塗布装置1によれば、歪みセンサ70Aの検出電圧を微分回路75Aにより微分し、この微分回路75Aの出力に応じてレジストの吐出開始時点及び吐出終了時点を検出している。従って、光学的な検出手段によりこれら吐出開始時点及び吐出終了時点を検出する場合に比べて、ウエハWの表面状態やレジストの色などに影響されることが無いので、正常にレジストの吐出が行われているか否かを精度高く検出することができる。
【0048】
ところで、背景技術の項目でも説明したように、ウエハWに処理を行った後、ノズルや配管の歪みが戻りきる前に次のウエハWの処理を行わなければならない場合が考えられる。しかし、ノズルや配管の材質によっては、応力を受けた後、歪みが解消するまでの時間が遅く、このような場合に、歪みセンサ70Aの検出電圧値の大きさに基づいて歪みの有無、即ちレジストの吐出状態の判定を行おうとすると、しきい値の設定が困難である。従って、このように検出電圧値の大きさで歪みの有無を判定する場合は、ノズルや配管に使用する材質が、歪みが早く解消されるようにするために例えば金属などの剛性の高いものに限られ、材質の選択の自由度が低くなってしまい、加工や装置への据え付けにコストがかかってしまったり、応力に対する歪み量が小さい材質を選択しなければならないことで、検出精度が低下してしまうおそれがある。しかし、上記のように検出電圧を微分する構成とすることで、ノズルや配管に使用する材質の自由度が高くなる。樹脂のように応力に対する歪み量が比較的大きい材質を選択できるので、この点からも検出精度を向上させることができる。
【0049】
また、上記のようにスピンコーティングによりレジストを塗布する場合、ウエハの回転数の変化に応じてレジストの供給開始のタイミングを制御する必要がある。レジスト塗布装置ごとにこのタイミングがずれて、ウエハへの処理がばらつかないようにメンテナンスが行われる。上記のレジスト塗布装置1では、光学的な検出手段を用いる場合に比べて、レジストの吐出状態を精度高く検出できるため、この供給開始のタイミングが正確に分かるので、このメンテナンスが容易になるという利点がある。また、このレジスト塗布装置1ではレジストの吐出停止時点も検出することができるので、装置間でレジストの供給時間の誤差が抑えられるようにメンテナンスを行うことが容易になる。
【0050】
上記の例ではレジストの吐出状態の判定を、配管42に設けた歪みセンサ70Aの検出結果に基づいて行っているが、ノズル41に設けた歪みセンサ70Bの出力に基づいて行ってもよい。ただし、上記のように配管42で気泡46が検出された場合に、当該気泡46の除去処理を行うことができ、ウエハWに無駄な処理を行うことを防ぐことができるため、前記歪みセンサ70Aの検出結果に基づいて判定を行うことがより好ましい。
【0051】
本発明は、基板にレジストの代わりに現像液を供給する現像液供給装置や、その他各種の薬液を供給する液処理装置にも適用することができる。
【0052】
(参考試験)
レジスト供給ノズル41からレジストを吐出し、電圧検出部74Bからの出力に基づいてその歪み量を測定した。レジスト供給ノズル41は樹脂により構成した。各試験では電圧検出部74Bの出力電圧の微分を行っていない。試験ごとにレジスト供給系43からのレジストの供給時間を変更し、試験1、2、3で夫々0.5秒、1.0秒、2.0秒とした。また、試験4では配管42においてノズル41近くに空気を混入させ、レジスト供給系43から1.0秒間レジストを供給した。
【0053】
図10(a)、(b)に試験1、2の結果を夫々示している。また、図11(a)、(b)に試験3、4の結果を夫々示している。表中の区間t1−t2はレジストの供給を行った区間である。これらの図に示すようにレジストの供給停止後、レジスト供給ノズル41の歪みは緩やかに戻る。従って、既述のように歪みが解消されないうちに次のウエハWに処理を行うような場合が考えられ、そのときにしきい値の設定が困難になることを防ぐために、上述の実施形態のように微分回路を設けて、レジストの供給状態を検出することが有効であると言える。また、図11(b)に示すように空気が混入すると、歪み量の変化が抑えられ、空気が除去された後に歪み量の変化が大きくなっている。従って、歪み量の変化により、上記のように気泡の検出を行うことができることが分かる。
【符号の説明】
【0054】
1 レジスト塗布装置
14 搬送手段
22 回転駆動部
3 カップ
41 レジスト供給ノズル
42 配管
43 レジスト供給系
70A、70B 歪みセンサ
71A、71B 歪みゲージ
75A、75B 微分回路
79 回路ユニット
80 制御部
88 判定プログラム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板保持部に保持された基板に、ポンプから配管及びノズルを介して薬液を供給して液処理を行う装置において、
前記配管からノズルの先端部に至るまでの流路構成部材に歪みゲージが設けられた歪みセンサと、
この歪みセンサの出力電圧を微分する微分回路と、
この微分回路の出力に応じて薬液の供給状態を判定する判定部と、を備えたことを特徴とする液処理装置。
【請求項2】
前記歪みゲージは、樹脂からなる配管に設けられたことを特徴とする請求項1に記載の液処理装置。
【請求項3】
前記歪みゲージは、樹脂からなるノズルに設けられたことを特徴とする請求項1または2に記載の液処理装置。
【請求項4】
前記歪みセンサは、前記歪みゲージが伸びたときに出力電圧が正、負のうちの一方の符号になるように構成され、
前記判定部は、前記微分回路の出力電圧が前記一方の符号であって、絶対値が予め定めたしきい値よりも大きくなったときに薬液が流れたと判定するように構成されたことを特徴とする1ないし3のいずれか一項に記載の液処理装置。
【請求項5】
前記判定部は、前記微分回路の出力電圧が前記一方の符号とは反対の符号であって、絶対値が予め定めたしきい値よりも大きくなったときに薬液の流れが停止したと判定するように構成されたことを特徴とする請求項4に記載の液処理装置。
【請求項6】
前記判定部は、薬液が流れたと判定してからの経過時間が予め定めた設定時間よりも短いときに、出力電圧が前記一方の符号とは反対の符号であって、絶対値が予め定めたしきい値よりも大きくなったときに薬液中に気泡が含まれていると判定するように構成されたことを特徴とする請求項4記載の液処理装置。
【請求項7】
基板保持部に基板を保持する工程と、
ポンプから配管及びノズルを介して基板に薬液を供給して液処理を行う工程と、
前記配管からノズルの先端部に至るまでの流路構成部材に設けられた歪みゲージを含む歪みセンサの出力電圧を、微分回路により微分する工程と、
前記微分回路の出力に応じて薬液の供給状態を判定する工程と、
を備えたことを特徴とする液処理方法。
【請求項8】
前記歪みゲージが伸びたときに前記歪みセンサから正、負のうちの一方の符号の電圧を出力する工程と、
前記微分回路の出力電圧が前記一方の符号であって、絶対値が予め定めたしきい値よりも大きくなったときに薬液が流れたと判定する工程と、
を備えたことを特徴とする請求項7記載の液処理方法。
【請求項9】
前記微分回路の出力電圧が前記一方の符号とは反対の符号であって、絶対値が予め定めたしきい値よりも大きくなったときに薬液の流れが停止したと判定する工程を備えたことを特徴とする請求項8に記載の液処理方法。
【請求項10】
薬液が流れたと判定してからの経過時間が予め定めた設定時間よりも短いときに、出力電圧が前記一方の符号とは反対の符号であって、絶対値が予め定めたしきい値よりも大きくなったときに薬液中に気泡が含まれていると判定する工程を含むことを特徴とする請求項8記載の液処理方法。
【請求項11】
基板保持部に保持された基板に、ポンプから配管及びノズルを介して薬液を供給する液処理装置に用いられるプログラムを格納する記憶媒体において、
前記プログラムは、請求項7ないし10のいずれか一項に記載の液処理方法を実行するようにステップ群が組まれていることを特徴とする記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−181766(P2011−181766A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−45689(P2010−45689)
【出願日】平成22年3月2日(2010.3.2)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】