説明

液圧マスタシリンダ装置の操作レバー取付構造

【課題】レバーピンの着脱を簡便に行うことができ、操作レバーの組み付けや交換作業が容易な操作レバー取付構造を提供する。
【解決手段】レバーピン9は、軸部9aと大径頭部9bと軸部9aの突出基部に設ける周溝9cとを備える。抜止部材12は、基板部12aと、基板部12aの一側方を開口してU字状に形成した周溝嵌着凹部12bと、基板部12aの他側方に設けた立上片12cと、立上片12cから延出して軸部9aの周面に弾発的に当接する弾発片12dと、基板部12aから基板部12aに平行な方向に延出した回動規制片12eとを備える。操作レバー3の回動片3fに回動規制片12eの両側縁が係止して抜止部材12を回り止めする一対の回り止め突起13a,13bを突設する。周溝嵌着凹部12bが周溝9cから離脱する方向に移動することを防止するスイッチ取付部5eを設け、スイッチ取付部5eの車体前方側面5fを離脱防止突起とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液圧マスタシリンダ装置の操作レバー取付構造に係り、詳しくは、シリンダボディに突設したレバーブラケットに設けたレバー取付部と、操作レバーに形成した回動基部とを重合し、該回動基部と前記レバー取付部との重合部にピン挿通孔を貫通形成し、該ピン挿通孔にレバーピンを装着して前記操作レバーをレバーブラケットに回動可能に取り付けた液圧マスタシリンダ装置の操作レバー取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液圧マスタシリンダ装置の操作レバー取付構造としては、ハンドルバーに取り付けた液圧マスタシリンダのシリンダボディに二股状のレバーブラケットを突設し、該レバーブラケットの一方のレバー取付部と他方のレバー取付部との間に、操作レバーの回動基部を挿入し、レバー取付部と回動基部の重合部に設けたピン挿通孔にレバーピンを装着して操作レバーをレバーブラケットに回動可能に取り付けるもの(例えば、特許文献1参照。)や、操作レバーの回動基部を二股状に形成し、マスタシリンダのシリンダボディに突設した板状のレバーブラケットを二股状の前記回動基部に挿入し、レバー取付部と回動基部の重合部にレバーピンを装着して操作レバーをレバーブラケットに回動可能に取り付けるもの(例えば、特許文献2参照。)があった。
【特許文献1】実開昭54−128241号公報
【特許文献2】特開2008−126989号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来の操作レバー取付構造では、レバーピンの頭部と軸部の下端とに溝部をそれぞれ形成し、両溝部に止めリングを嵌入してレバーピンをレバーホルダへ固定したり、レバーピンの先端に雄ねじ部を形成し、回動基部から突出するレバーピンの雄ねじ部にナットを取り付けてレバーピンを操作レバーの回動基部に固定したりしていることから、レバーピンを着脱する際に工具が必要であり、操作レバーの交換に手間が掛かり、メンテナンス性が良くなかった。
【0004】
そこで本発明は、レバーピンを確実に装着できると共に、レバーピンの着脱を簡便に行うことができ、操作レバーの組み付け及び交換作業を容易に行うことができる液圧マスタシリンダ装置の操作レバー取付構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明の第1の構造では、液圧マスタシリンダのシリンダボディに突設したレバーブラケットのレバー取付部と、操作レバーの回動基部とを重合し、該回動基部と前記レバー取付部との重合部にピン挿通孔を貫通形成し、前記ピン挿通孔に挿入した前記レバーピンを抜止部材で抜け止めして装着することにより、前記操作レバーを前記レバーブラケットに回動可能に取り付けた液圧マスタシリンダ装置の操作レバー取付構造において、前記レバーピンは、前記ピン挿通孔に挿入される軸部と、該軸部の一端に設けられて前記重合部の一側面に当接する大径頭部と、前記重合部の他側面から突出した前記軸部の突出基部に設けられた周溝とを備え、前記抜止部材は、前記重合部の他側面に平行な面を有する基板部と、該基板部の一側方を開口させてU字状に形成した周溝嵌着凹部と、前記基板部の他側方から該基板部に直交する方向に屈曲した立上片と、該立上片から延出して前記周溝嵌着凹部と前記周溝とが嵌着したときに前記周溝より突出方向先端側の前記軸部の周面に弾発的に当接する弾発片と、前記基板部から該基板部に平行な方向に延出した回動規制片とを備え、前記重合部の他側面に前記回動規制片の両側縁が係止して前記抜止部材を回り止めする一対の回り止め突起を突設し、前記周溝嵌着凹部と前記周溝とが嵌着した状態で、且つ、前記回動規制片が前記回り止め突起に係止した状態で、前記重合部の他側面における前記基板部の他側方に対向する位置に、前記周溝嵌着凹部が前記周溝から離脱する方向に移動したときに前記基板部の他側方が当接して前記周溝嵌着凹部が前記周溝から離脱することを防止する離脱防止突起を設けたことを特徴としている。
【0006】
さらに、第2の構造では、液圧マスタシリンダのシリンダボディに突設したレバーブラケットのレバー取付部と、操作レバーの回動基部とを重合し、該回動基部と前記レバー取付部との重合部にピン挿通孔を貫通形成し、前記ピン挿通孔に挿入した前記レバーピンを抜止部材で抜け止めして装着することにより、前記操作レバーを前記レバーブラケットに回動可能に取り付けた液圧マスタシリンダ装置の操作レバー取付構造において、前記レバーピンは、前記ピン挿通孔に挿入される軸部と、該軸部の一端に設けられて前記重合部の一側面に当接する大径頭部と、前記重合部の他側面から突出した前記軸部の突出基部に設けられた周溝とを備え、前記抜止部材は、前記重合部の他側面に平行な面を有する基板部と、該基板部の一側方を開口させてU字状に形成した周溝嵌着凹部と、前記基板部の他側方から該基板部に直交する方向に屈曲した立上片と、該立上片から延出して前記周溝嵌着凹部と前記周溝とが嵌着したときに前記周溝より突出方向先端側の前記軸部の周面に弾発的に当接する弾発片と、前記基板部から該基板部に平行な方向に延出した回動規制片とを備え、前記重合部の他側面に前記回動規制片の両側縁が係止して前記抜止部材を回り止めする一対の回り止め突起を突設し、前記周溝嵌着凹部と前記周溝とが嵌着した状態で、且つ、前記回動規制片が前記回り止め突起に係止した状態で、該一対の回り止め突起と前記回動規制片の両側縁との係止により、前記周溝嵌着凹部が前記周溝から離脱する方向への移動を防止することを特徴としている。
【0007】
また、前記回動規制片は、前記基板部の他側方から、前記周溝嵌着凹部の開口方向と直交する方向に延出するものや、前記基板部の前記周溝嵌着凹部の開口部先端から、前記周溝嵌着凹部の開口方向と同一方向に延出するものや、前記基板部の前記周溝嵌着凹部の開口部先端から、前記周溝嵌着凹部の開口方向と直交する方向に延出するものでも良く、回動規制片の先端を折曲して摘み部を形成しても良い。
【0008】
さらに、前記基板部は、前記周溝をレバーピンを挿入する方向に押圧する押圧部を備えていても良い。また、前記抜止部材は、一枚の板状部材を、切抜き及び折曲して形成することもできる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の液圧マスタシリンダ装置の操作レバー取付構造によれば、レバーピンの一端部に形成した周溝と、該一端部が突出するレバーブラケットと操作レバーとの重合部に設けた回り止め突起とに着脱可能に係合する抜止部材を用いることにより、簡単な構造でレバーピンを前記重合部に確実に装着できると共に、簡単な構造で着脱可能に保持させることができる。
【0010】
第1の構造では、抜止部材は、周溝に抜止片の周溝嵌着凹部を嵌着した状態で、レバーピンを中心に回動規制片を回転させて、回動規制片を回り止め突起に係止させることにより、抜止部材の回り止めを図ることができる共に、離脱防止突起によって、抜止部材が周溝から離脱することを防止でき、レバーピンを重合部に確実に装着できる。また、回動規制片を回転させて回り止め突起から回動規制片を外し、抜止片を周溝から抜き出すことにより、レバーピンをピン挿通孔から外すことができるので、操作レバーの交換作業を簡便に行うことができメンテナンス性の向上を図ることができる。
【0011】
第2の構造では、抜止部材は、回動規制片を回り止め突起を設けた方向に向けて周溝嵌着凹部を周溝に形成すると共に、回動規制片を回り止め突起に係止させることにより、抜止部材の回り止めを図ることができる共に、前記回り止め突起の回動規制片との係合により、抜止部材が周溝から離脱することを防止でき、レバーピンを重合部に確実に装着できる。また、抜止片を周溝から抜き出し、回動規制片を回り止め突起から外すことにより、レバーピンをピン挿通孔から外すことができるので、操作レバーの交換作業を簡便に行うことができメンテナンス性の向上を図ることができる。
【0012】
また、前記回動規制片を、前記基板部の他側方から、前記周溝嵌着凹部の開口方向と直交する方向に延出したり、前記基板部の前記周溝嵌着凹部の開口部先端から、前記周溝嵌着凹部の開口方向と同一方向に延出したり、前記基板部の前記周溝嵌着凹部の開口部先端から、前記周溝嵌着凹部の開口方向と直交する方向に延出することにより、基板部と一体に簡単に形成することができ、さらに、回動規制片の先端を折曲して摘み部を形成すれば、該摘み部を持って、回動規制片を回り止め突起に容易に係止させることができる。さらに、抜止片に、周溝をレバーピンを挿入する方向に押圧する押圧部を形成することにより、レバーピンと抜止部材の振動やガタ付きを抑えることができる。また、前記抜止部材を、一枚の板状部材を切り抜き及び折曲して形成すれば、抜止部材を安価に製造でき、コストの低減化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1乃至図4は本発明の第1形態例を示す液圧マスタシリンダ装置の操作レバー取付構造を示す図で、図1は操作レバー取付構造を示す要部説明図、図2は図3のII−II断面図、図3は液圧マスタシリンダ装置の一部断面側面図、図4はレバーピンと抜止部材の分解斜視図である。
【0014】
本形態例に示す液圧マスタシリンダ装置1は、液圧マスタシリンダ2と操作レバー3とを組み合わせたフロントブレーキ用の液圧マスタシリンダ装置で、バーハンドル車両の車体前部で前輪を操向するハンドルバー4に取り付けている。
【0015】
液圧マスタシリンダ2は、シリンダボディ5の上部にリザーバ5aを一体に備えたリザーバ一体型で、シリンダボディ5には、車体取付ブラケット5bを一体に形成し、前記車体取付ブラケット5bとホルダ6とでアクセルグリップ7よりも車体内側のハンドルバー8を包持し、車体取付ブラケット5bとホルダ6とをボルトで締結してハンドルバー8の車体前部側に取り付けている。
【0016】
シリンダボディ5の車体前部側には、略矩形の板状に形成したレバーブラケット5cを一体に突設し、該レバーブラケット5cには、操作レバー3を取り付けるためのレバーピン9を挿通するピン挿通孔5dを穿設している。シリンダボディ5の車体下側の前記レバーブラケット5c側には、スイッチ取付部5eを突設し、該スイッチ取付部5eにブレーキランプスイッチ10をビス11で固着している。
【0017】
操作レバー3は、回動基部3aと、グリップ部3bと、作用腕3cと、スイッチ作動片3dとを備えている。前記回動基部3aは、前記レバーブラケット5cを差し込み可能な間隔を空けて上下に突設した回動片3e,3fを備え、操作レバー3の基端側が開口する二股状に形成している。回動片3e,3fには、前記レバーブラケット5cを回動片3e,3f間に挿入して重ね合わせた状態で(本発明の重合部)前記ピン挿通孔5dと同軸となるピン挿通孔3g,3hを穿設している。また、車体下方側に配置する回動片3fには、前記スイッチ作動片3dを形成している。
【0018】
レバーピン9はピン挿通孔3e,5d,3fに挿入される軸部9aと、該軸部9aの一端に設けられて車体上方側の回動片3eの外側面に当接する大径頭部9bと、車体下方側の回動片3fから突出した軸部9aの突出基部に設けられた周溝9cとを備えている。
【0019】
抜止部材12は、回動片3fに平行な面を有する基板部12aと、該基板部12aの一側方を開口させてU字状に形成した周溝嵌着凹部12bと、前記基板部12aの他側方から該基板部12aに直交する方向に屈曲した立上片12cと、該立上片12cの一側部から延出して周溝嵌着凹部12bと前記周溝9cとが嵌着したときに前記周溝9cより突出方向先端側の軸部9aの周面に弾発的に当接する弾発片12dと、基板部12aの他側方から該基板部12aに平行な方向で、且つ、周溝嵌着凹部12bの開口方向と直交する方向に延出する回動規制片12eとを備え、該回動規制片12eの先端部は、立上片12cの方向に折り返されて摘み部12fが形成されている。
【0020】
前記回動片3fの下面には、回動規制片12eの両側縁が係止して抜止部材12を回り止めする一対の回り止め突起13a,13bが突設されている。回り止め突起13a,13bは、操作レバー3の非作動時において液圧マスタシリンダ2の軸線とそれぞれ平行に設けられ、さらに、回り止め突起13a,13bの対向面間の中心線T1は、ピン挿通孔3gの中心より車体後部側に配置している。また、車体前方側に位置する回り止め突起13aの車体前方側には、回り止め突起13aの突出端面と回動片3fの下面との間を斜面で連続させたガイド面13cを設けている。また、周溝嵌着凹部12bの開口端の寸法D1は、前記レバーピン9の周溝9cに挿入可能で、且つ、前記レバーピン9の直径D2よりも小さい寸法に形成されている。
【0021】
液圧マスタシリンダ2と操作レバー3との組み付けは、まず、レバーブラケット5cと回動片3e,3fとを重ね合わせて重合させた状態で、レバーピン9を車体上方側からピン挿通孔3g,5d,3hに順に挿入し、大径頭部9bをレバーブラケット5cと回動片3e,3fとの重合部の上面に当接させるとともに、重合部の下面から周溝9cより先端側の軸部9aを突出させ、周溝9cに抜止部材12を装着してレバーピン9を抜け止めする。
【0022】
抜止部材12の装着は、まず、図1の想像線に示すように、抜止片12cの周溝嵌着凹部12bの開口を車体後部側に向けてレバーピン9の前方に位置させるとともに、回動規制片12fの延出端をレバーピン9に対して車体外側方向、即ち操作レバー3のグリップ部3b側に向けた状態とし、車体前方からレバーピン9の周溝9cに周溝嵌着凹部12bを挿入する。これにより、周溝9cに基板部12aが嵌着されるとともに弾発片12eがレバーピン9の突出方向先端側の軸部9aの周面に弾発的に当接する。この状態から、矢印Aに示すように、回動規制片12fを車体前方側を通って車体内側位置までレバーピン9を中心にして略180度回転させ、回り止め突起13aを乗り越えて回り止め突起13a,13b間に係合させることにより、抜止部材12が抜け止めされる。さらに、この回動規制片12eが回り止め突起13a,13bに係止した状態で、基板部12aの他側方に対向する位置には、スイッチ取付部5eが突設されており、該スイッチ取付部5eの車体前方側面5fが本発明の離脱防止突起となり、該車体前方側面5fによって、周溝嵌着凹部12bが周溝9cから離脱する方向に移動したときに基板部12aの他側方が当接して周溝嵌着凹部12bが周溝9cから離脱することを防止し、抜止部材12をピン挿通孔3g,5d,3hに確実に装着させることができる。
【0023】
さらに、操作レバー3を交換する際には、回動規制片12fを、前記回り止め突起13aを乗り越えて前記矢印Aと反対方向に略180度回動し、基板部12aを周溝9cから取り外すと共に、弾発片12eと軸部9aとの当接を解除して、抜止部材12をレバーピン9から取り外す。これにより、工具を用いることなくレバーピン9をピン挿通孔3g,5d,3hから簡単に取り外して操作レバー3の交換作業を行うことができ、メンテナンス性の向上を図ることができる。
【0024】
図5乃至図15は本発明の他の形態例を示すもので、第1形態例と同様の構成要素を示すものには、同一の符号を付して、その詳細な説明は省略する。図5は本発明の第2形態例を示すレバーピンと抜止部材の分解斜視図で、本形態例の抜止部材14は、一対の立上片12c,12cを備え、一方の立上片12cに前記第1形態例と同様の弾発片12dを設け、他方の立上片12cに、前記レバーピン9の突出方向先端側の軸部9aの周面に弾発的に当接する弾発片12gを前記弾発片12dと対向して設けた構造となっており、一対の弾性片12d,12gによって、レバーピン9の軸部9aの先端部両側面を弾発的に支持するようにしている。
【0025】
図6及び図7は、本発明の第3形態例を示し、図6は抜止部材をレバーピンに装着した状態の要部説明図、図7は抜止部材とレバーピンの分解斜視図である。本形態の抜止部材15は、第1形態例の抜止部材12の周溝嵌着凹部12bの両側の基板部12aに車体下方に向けて湾曲した押圧部12h,12hをそれぞれ備えた構造となっており、基板部12aを周溝9cに装着した際に、押圧部12h,12hが周溝9cをレバーピン9を挿入する方向に押圧し、回動片3eの上面に当接する大径頭部9bと、前記押圧部12h,12hの押圧力とでレバーピン9のガタ付きを抑制している。
【0026】
図8及び図9は、本発明の第4形態例を示し、図8は操作レバー取付構造を示す要部説明図、図9はレバーピンと抜止部材の分解斜視図である。本形態例の抜止部材16の回動規制片12iは、基板部12aの周溝嵌着凹部12bの開口部先端から、周溝嵌着凹部12bの開口方向に延出している。また、弾発片12jは、基板部12aの他側部をコ字状に折り返して形成した折返し立上片12kを介して周溝嵌着凹部12bの開口方向に延出している。
【0027】
回り止め突起13d,13eは、操作レバー3の非作動時において回動規制片12iを、液圧マスタシリンダの軸線と直交し、且つ、ピン挿通孔3hの最も車体内側の接線T2方向に係止させる位置に配置される。また、回り止め突起13dは車体前後方向及び内外方向の幅を回り止め突起13cよりも広く形成すると共に、車体外側から内側に向けて漸次薄肉に、且つ、車体内側部が、車体内側に向けて漸次幅が狭くなるように形成し、ガイド面13fとなっている。
【0028】
上述の抜止部材16の装着は、まず、図8の想像線に示すように、弾性片12jを車体後方側に向けて、周溝嵌着凹部12bをレバーピン9の周溝9cに挿入し、基板部12aを周溝9cに嵌着すると共に、弾発片12jを突出方向先端側の軸部9aに当接させる。この状態から、矢印Bに示すように、回動規制片12iをレバーピン9を中心に、車体前方に略90度回動して、回り止め突起13dを乗り越えて回り止め突起13d,13e間に係合する。この係合によって、抜止部材16が回り止めされると共に、レバーピン9が抜け止めされ、また、スイッチ取付部5eの車体前方側面5fによって、抜止部材16の離脱を防止する。また、操作レバー3を交換する際には、回動規制片12iを、前記回り止め突起13dを乗り越えて前記矢印Bと反対方向に略90度回動し、基板部12aを周溝9cから取り外すと共に、弾発片12jと軸部9aとの当接を解除して、抜止部材12をレバーピン9から取り外す。
【0029】
図10は、本発明の第5形態例を示すレバーピンと抜止部材の分解斜視図で、本形態例の抜止部材17は、第4形態例の抜止部材16の折返し立上片12kを省略し、立上片12cの一側部から弾発片12mを周溝嵌着凹部12bの開口方向に延出している
図11は、本発明の第6形態例を示すレバーピンと抜止部材の分解斜視図で、本形態例の抜止部材18は、一対の立上片12c,12cを備え、一方の立上片12cに前記第5形態例と同様の弾発片12mを設け、他方の立上片12cに、前記レバーピン9の突出方向先端側の軸部9aの周面に弾発的に当接する弾発片12nを前記弾発片12mと対向して設けた構造となっており、一対の弾性片12m,12nによって、レバーピン9の軸部9aの先端部両側面を弾発的に支持するようにしている。
【0030】
図12及び図13は、本発明の第7形態例を示し、図12は操作レバー取付構造を示す要部説明図、図13はレバーピンと抜止部材の分解斜視図である。本形態例の抜止部材19の回動規制片12pは、基板部12aの周溝嵌着凹部12bの開口部先端から、周溝嵌着凹部12bの開口方向と直交する方向に延出し、先端に摘み部12qを備えている。また、弾発片12rは、基板部12aの他側部をコ字状に折り返して形成した折返し立上片12sを介して周溝嵌着凹部12bの開口方向に延出している。
【0031】
また、回り止め突起13g,13hは、操作レバー3の非作動時において液圧マスタシリンダ2の軸線とそれぞれ平行に設けられ、さらに、回り止め突起13g,13hの対向面間の中心線T3は、ピン挿通孔3gの中心より車体後部側に配置している。さらに、車体前方側に位置する回り止め突起13gは、車体後方側に位置する回り止め突起13hよりも車体前後方向及び車体内外方向に大きく形成され、車体前方側には、回り止め突起13gの突出端面と回動片3fの下面との間を斜面で連続させたガイド面13iを設けている。
【0032】
上述の抜止部材19の装着は、まず、図12の想像線に示すように、回動規制片12pが車体前方に突出させた状態で、グリップ部3b側から、周溝嵌着凹部12bをレバーピン9の周溝9cに挿入し、基板部12aを周溝9cに嵌着し、弾発片12rを突出方向先端側の軸部9aに当接させる。この状態から、矢印Cに示すように、回動規制片12pをレバーピン9を中心に、車体内側に略90度回動させて、回り止め突起13gを乗り越えて回動規制片12pを回り止め突起13g,13h間に係合する。この係合によって、抜止部材19が回り止めされると共に、レバーピン9が抜け止めされ、さらに、前記一対の回り止め突起13g,13hと回動規制片12pの両側縁との係止により、周溝嵌着凹部12bが周溝9cから離脱する方向への移動を防止する。
【0033】
また、操作レバー3を交換する際には、回動規制片12pを、前記回り止め突起13gを乗り越えて前記矢印Cと反対方向に略90度回動させ、基板部12aを周溝9cから取り外すと共に、弾発片12rと軸部9aとの当接を解除して、抜止部材19をレバーピン9から取り外す。
【0034】
また、本形態例の抜止部材19の装着は、回動規制片12pを車体内側に突出させて、車体前方から周溝嵌着凹部12bをレバーピン9の周溝9cに挿入し、基板部12aを周溝9cに嵌着し、弾発片12rを突出方向先端側の軸部9aに当接させると共に、回動規制片12pを回り止め突起13g,13h間に係合させるようにしても良い。
【0035】
図14は、本発明の第8形態例を示すレバーピンと抜止部材の分解斜視図で、本形態例の抜止部材20は、第7形態例の抜止部材19の折返し立上片12sを省略して、基端部12dの一側部から弾発片12tを周溝嵌着凹部12bの開口方向に延出している。
【0036】
図15は、本発明の第9形態例を示すレバーピンと抜止部材の分解斜視図で、本形態例の抜止部材21は、一対の立上片12c,12cを備え、一方の立上片12cに前記第8形態例と同様の弾発片12tを設け、他方の立上片12cに、前記レバーピン9の突出方向先端側の軸部9aの周面に弾発的に当接する弾発片12uを前記弾発片12tと対向して設けた構造となっており、一対の弾性片12t,12uによって、レバーピン9の軸部9aの先端部両側面を弾発的に支持するようにしている。
【0037】
尚、本発明のレバー取付構造は上述の各形態例に限るものではなく、シリンダボディに二股状のレバーブラケットを突設し、該レバーブラケットの一方のレバー取付部と他方のレバー取付部との間に、操作レバーに形成した板状の回動基部を挿入し、レバー取付部と回動基部の重合部にレバーピンを装着して操作レバーをレバーブラケットに回動可能に取り付けたものでも良く、この場合、回り止め突起は、レバーピンの周溝を備えた一端部が突出するレバーブラケットに形成する。さらに、レバーブラケットと回動基部の双方を板状に形成して重合するものでも良く。前記レバーピンの一端部が突出するレバーブラケットと回動基部のいずれか一方に回り止め突起を設ければ良い。また、本発明のレバー取付構造はフロントブレーキ用の液圧マスタシリンダ装置に適用されるものに限らず、クラッチ用の液圧マスタシリンダ装置にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の第1形態例を示す操作レバー取付構造を示す要部説明図である。
【図2】図3のII-II断面図である。
【図3】同じく液圧マスタシリンダ装置の一部断面側面図である。
【図4】同じくレバーピンと抜止部材の分解斜視図である。
【図5】本発明の第2形態例を示すレバーピンと抜止部材の分解斜視図である。
【図6】本発明の第3形態例を示す抜止部材をレバーピンに装着した状態の要部説明図である。
【図7】同じく抜止部材とレバーピンの分解斜視図である。
【図8】本発明の第4形態例を示す操作レバー取付構造を示す要部説明図である。
【図9】同じくレバーピントと抜止部材の分解斜視図である。
【図10】本発明の第5形態例を示すレバーピンと抜止部材の分解斜視図である。
【図11】本発明の第6形態例を示すレバーピンと抜止部材の分解斜視図である。
【図12】本発明の第7形態例を示す操作レバー取付構造を示す要部説明図である。
【図13】同じくレバーピンと抜止部材の分解斜視図である。
【図14】同じく本発明の第8形態例を示すレバーピンと抜止部材の分解斜視図である。
【図15】同じく本発明の第9形態例を示すレバーピンと抜止部材の分解斜視図である。
【符号の説明】
【0039】
1…液圧マスタシリンダ装置、2…液圧マスタシリンダ、3…操作レバー、3a…回動基部、3b…グリップ部、3c…作用腕、3d…スイッチ作動子、3e,3f…回動片、3g,3h…ピン挿通孔、4…ハンドルバー、5…シリンダボディ、5a…リザーバ、5b…車体取付ブラケット、5c…レバーブラケット、5d…ピン挿通孔、5e…スイッチ取付部、5f…車体前方側面、6…ホルダ、7…アクセルグリップ、8…ハンドルバー、9…レバーピン、9a…軸部、9b…大径頭部、9c…周溝、10…ブレーキランプスイッチ、11…ボルト、12…抜止部材、12a…基板部、12b…周溝嵌着凹部、12c…立上片、12d,12g,12j,12m,12n,12r,12t…弾発片、12e,12i,12p…回動規制片、12f,12q…摘み部、12h…押圧部、12k,12s…折返し立上片、13a,13b,13d,13e,13g,13h…回り止め突起、13c,13f,13i…ガイド面、14,15,16,17,18,19,20,21…抜止部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液圧マスタシリンダのシリンダボディに突設したレバーブラケットのレバー取付部と、操作レバーの回動基部とを重合し、該回動基部と前記レバー取付部との重合部にピン挿通孔を貫通形成し、前記ピン挿通孔に挿入した前記レバーピンを抜止部材で抜け止めして装着することにより、前記操作レバーを前記レバーブラケットに回動可能に取り付けた液圧マスタシリンダ装置の操作レバー取付構造において、
前記レバーピンは、前記ピン挿通孔に挿入される軸部と、該軸部の一端に設けられて前記重合部の一側面に当接する大径頭部と、前記重合部の他側面から突出した前記軸部の突出基部に設けられた周溝とを備え、前記抜止部材は、前記重合部の他側面に平行な面を有する基板部と、該基板部の一側方を開口させてU字状に形成した周溝嵌着凹部と、前記基板部の他側方から該基板部に直交する方向に屈曲した立上片と、該立上片から延出して前記周溝嵌着凹部と前記周溝とが嵌着したときに前記周溝より突出方向先端側の前記軸部の周面に弾発的に当接する弾発片と、前記基板部から該基板部に平行な方向に延出した回動規制片とを備え、前記重合部の他側面に前記回動規制片の両側縁が係止して前記抜止部材を回り止めする一対の回り止め突起を突設し、前記周溝嵌着凹部と前記周溝とが嵌着した状態で、且つ、前記回動規制片が前記回り止め突起に係止した状態で、前記重合部の他側面における前記基板部の他側方に対向する位置に、前記周溝嵌着凹部が前記周溝から離脱する方向に移動したときに前記基板部の他側方が当接して前記周溝嵌着凹部が前記周溝から離脱することを防止する離脱防止突起を設けたことを特徴とする液圧マスタシリンダ装置の操作レバー取付構造。
【請求項2】
液圧マスタシリンダのシリンダボディに突設したレバーブラケットのレバー取付部と、操作レバーの回動基部とを重合し、該回動基部と前記レバー取付部との重合部にピン挿通孔を貫通形成し、前記ピン挿通孔に挿入した前記レバーピンを抜止部材で抜け止めして装着することにより、前記操作レバーを前記レバーブラケットに回動可能に取り付けた液圧マスタシリンダ装置の操作レバー取付構造において、
前記レバーピンは、前記ピン挿通孔に挿入される軸部と、該軸部の一端に設けられて前記重合部の一側面に当接する大径頭部と、前記重合部の他側面から突出した前記軸部の突出基部に設けられた周溝とを備え、前記抜止部材は、前記重合部の他側面に平行な面を有する基板部と、該基板部の一側方を開口させてU字状に形成した周溝嵌着凹部と、前記基板部の他側方から該基板部に直交する方向に屈曲した立上片と、該立上片から延出して前記周溝嵌着凹部と前記周溝とが嵌着したときに前記周溝より突出方向先端側の前記軸部の周面に弾発的に当接する弾発片と、前記基板部から該基板部に平行な方向に延出した回動規制片とを備え、前記重合部の他側面に前記回動規制片の両側縁が係止して前記抜止部材を回り止めする一対の回り止め突起を突設し、前記周溝嵌着凹部と前記周溝とが嵌着した状態で、且つ、前記回動規制片が前記回り止め突起に係止した状態で、該一対の回り止め突起と前記回動規制片の両側縁との係止により、前記周溝嵌着凹部が前記周溝から離脱する方向への移動を防止することを特徴とする液圧マスタシリンダ装置の操作レバー取付構造。
【請求項3】
前記回動規制片は、前記基板部の他側方から、前記周溝嵌着凹部の開口方向と直交する方向に延出することを特徴とする請求項1又は2記載の液圧マスタシリンダ装置の操作レバー取付構造。
【請求項4】
前記回動規制片は、前記基板部の前記周溝嵌着凹部の開口部先端から、前記周溝嵌着凹部の開口方向と同一方向に延出することを特徴とする請求項1又は2記載の液圧マスタシリンダ装置の操作レバー取付構造。
【請求項5】
前記回動規制片は、前記基板部の前記周溝嵌着凹部の開口部先端から、前記周溝嵌着凹部の開口方向と直交する方向に延出することを特徴とする請求項1又は2記載の液圧マスタシリンダ装置の操作レバー取付構造。
【請求項6】
前記回動規制片は、先端を折曲して形成した摘み部を備えていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の液圧マスタシリンダ装置の操作レバー取付構造。
【請求項7】
前記基板部は、前記周溝をレバーピンを挿入する方向に押圧する押圧部を備えていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載の液圧マスタシリンダ装置の操作レバー取付構造。
【請求項8】
前記抜止部材は、一枚の板状部材を、切抜き及び折曲して形成することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項記載の車両用液圧マスタシリンダ装置の操作レバー取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−143508(P2010−143508A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−325179(P2008−325179)
【出願日】平成20年12月22日(2008.12.22)
【出願人】(000226677)日信工業株式会社 (840)
【Fターム(参考)】