説明

液圧式アンチロールシステム

【課題】特に車輛用のアンチロールシステムを提供する。
【解決手段】本アンチロールシステムは、システム制御手段と、液圧流体用のタンク(4)及びポンプ(3)と、二つ又はそれ以上のスタビライザーとを含む。各スタビライザーはアクチュエータ(5、6)を有する。これらのアクチュエータは、関連したスタビライザーのモーメントを、アクチュエータの端子のところでの液圧とは別個に制御するように構成されている。各アクチュエータは、その端子(A、B)のいずれか一方又は両方が、圧力制御モジュール(8)の第1端子(I)に接続されている。圧力制御モジュール(8)の第2端子(II)は、タンクの入口側に接続されており、第3端子(III)は、ポンプの出口側に接続されている。制御手段及び各制御モジュールは、前記制御手段の制御下でその第1端子のところに流体圧力を供給するように構成されている。圧力制御モジュール(8)は、直列に接続された二つの圧力制御バルブ(1、2)、例えば圧力逃がしバルブ又は制限バルブを含んでいてもよい。変形例として、圧力制御モジュール(8)は、三方圧力制御バルブ(9)、例えば三方減圧バルブを含む。穏やかにカーブを曲がるとき、又は真っ直ぐな線をなして運転するときのポンプのエネルギ消費を小さくするため、圧力制御バルブを三方圧力制御バルブと並列に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輛用液圧式アンチロールシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、特に、BMWの「アクティブロール安定化」(ARS)システムとして周知の液圧式アンチロールシステムに関する。このシステムは、例えば、欧州特許第EP1175307号及び欧州特許第EP0992376号に開示されており且つ論じられている。周知のシステムでは、車輛の前後のアンチロールバー即ちスタビライザーの各々は、二つの半部バーに分けられ、これらの半部バーは、液圧モータ又は回転アクチュエータによって相互連結されている。このような従来技術の液圧モータ又は回転アクチュエータは、入力/出力挙動が対称であってもよい。即ち、液圧入力の値と機械的出力の値との間の比が、液圧入力の各方向(符号)について等しい。これとは逆に、入力/出力挙動が非対称な形体、例えばピストンロッド及びシリンダを含むピストン型アクチュエータを適用した形体もまた存在し、例えばUS2005/0082781から周知である。こうした場合には、液圧入力の値と機械的出力の値との間の比は、液圧入力の各方向(符号)について等しくない。これは、ピストンロッドが存在し、ピストンロッドの側のピストンの有効表面積が他方の側のピストンの表面積よりも小さく、従って、特定の液圧入力の(絶対)値が与えられた場合の機械的出力の(絶対)値がこれと対応する挙動を示すためである。回転アクチュエータは、ロール剛性を広い範囲に亘って調節するためにアクチュエータを指令する電子−液圧制御システムによって制御される。ARSは、カーブを曲がる場合に自動車のロール角度を抑制するアクティブサスペンションシステムである。
【0003】
従って、液圧式ロールスタビライザー(即ちアンチロールバー)は、実際には、液圧式回転アクチュエータによってトーションモーメントを制御できるロールばね又はトーションばねである。前後のアクスルのアンチロールモーメントは、カーブを曲がる際に車輛のシャシーのロール移動が生じない(又は減少する)ように設定される。この目的のため、検出器及び例えばコンピュータ制御式のシステムが必要とされる。このシステムは、アクチュエータの液圧及びかくして個々のアンチロールバーの移動を制御する。前後のアクスルに亘るアンチロールモーメントの分布を車輛の速度に応じて制御するのが望ましい。これは、これにより自動車の取り扱い特性に影響を及ぼすことができるためである。低速では、アンチロール移動はほぼ等しく設定されていてもよく、これにより機敏な(操縦しやすい即ち中立な)車輛挙動を提供する。高速では、比較的安定性が高い(即ちアンダーステアの)運転特性が望ましい。これは、前アクスルが後アクスルよりも大きく作用するようにアンチロールモーメントを分配することによって実現できる。従来技術によれば、これは、一つの圧力制御モジュールを含む液圧回路を実現することによって解決できる。図1a及び図1bは、欧州特許第EP1175307号及び欧州特許第EP0992376号に開示されており且つ詳細に論じられた従来技術の回路の二つの簡略化した実施例を示す。
【0004】
次に図1aを参照すると、従来技術のシステムは、かくして、直列に接続された二つの圧力制御バルブ1及び2を含む。これらのバルブを通して、液圧容積流を、タンク4と協働するポンプ3によって導き、供給する。翼列圧力即ち制御可能な圧力Δp1及びΔp2を発生し、回転アクチュエータ5及び6内の圧力を制御する。後アクスルアクチュエータ6の圧力は、バルブ2によって制御され、その値はΔp2である。前アクスルアクチュエータ5の圧力は、バルブ1及び2の両方によって制御され、その値はΔp1+Δp2である。回転アクチュエータ5及び6は、これらの圧力を所望のアンチロールモーメントに変換する。両方向バルブ7が、車輛が左方又は右方にカーブを曲がるとき、第1又は第2の端子A又はBの夫々を介してアクチュエータ5及び6の第1室又は第2室に制御された圧力が加わるようにする。前アクスルには、いわゆるフェイルセーフバルブ(図1の概略図には示さず)が適用されていてもよい。これは、システムが故障した場合に前アクスルを液圧的に遮断する。この際、後アクスルは、圧力なしで独立して歯車連結される。これにより、車輛は、安全なアンダーステア的運転挙動を示す。また、このバルブにより、圧力制御バルブ1及び2が閉鎖されている場合でも、圧力がほぼゼロの状態でオイルをポンプ3からタンク4へ循環する。従来技術の回路の利点は、利用可能な全ての容積流体それ自体を、ポンプ(圧力発生中)から両アクチュエータに、実際の必要に従って分配することである。これにより、ポンプのエネルギは、常に最適に使用される。回路の接続部「a」及び「c」に対し、車輛制御手段(機内コンピュータ又はプロセッサ)を接続してもよい。これは、バルブ1、2、及び5を調節するためである。例えば情報を車輛の制御手段にフィードバックするため、接続部「b」を圧力センサに接続してもよい。
【0005】
図1aでは、圧力制御バルブ1及び2は直列に接続されており、互いに圧力制御モジュール8を形成する。この圧力制御モジュール8は、この従来技術の形体では、後アクスルアクチュエータ6の液圧(Δp2)を独立して制御し、しかしながら、前アクスルアクチュエータ5の液圧(Δp1+Δp2)は、常に、後アクスルアクチュエータ6の圧力(Δp2)に部分的に従属する。
【0006】
圧力制御モジュール8の実施例は、欧州特許第EP1175307号に開示された図及び欧州特許第EP0992376号に開示された図2に例示されている。この形体では、二つの圧力制御バルブ(これらのバルブは、使用されたシンボルに応じて、圧力逃がしバルブであってもよいし圧力制限バルブであってもよい)を直列に接続し、これらのバルブの共通の直列の接続点、即ちこれらのバルブの「中間端子」を後アクスルアクチュエータ6の一方の端子に接続する。後アクスルアクチュエータ6の他方の端子は、タンク入口側に接続される。直列に接続されたバルブの残りの端子は、ポンプの出口側及びタンクの入口側に接続される。この従来技術の形体では、後アクスルのアクチュエータ6を制御する圧力制御モジュール8が一つしか設けられていない。これに対し、前アクスルアクチュエータ5は、圧力制御モジュール8を迂回してポンプ出口側及びタンク入口側に直接接続されている。
【0007】
欧州特許第EP0992376号の図1、図3、及び図4は、圧力モジュール8が三方圧力制御バルブ(15)を含む変形例を開示する。これは、これらの図でのバルブのシンボルに応じて、三方減圧バルブであってもよい。三方制御バルブの中間端子は、後アクスルアクチュエータ6の一方の端子に接続されており、後アクスルアクチュエータ6の他方の端子は、タンク入口側に連結されている。この形体では、別の圧力制御バルブ(14)が設けられており、この圧力制御バルブは、使用されたシンボルに応じて、圧力逃がしバルブであってもよいし圧力制限バルブであってもよく、ポンプの出口側及びタンクの入口側に接続されており、システム、例えばポンプを過圧から保護するのに役立つ。図1bは、後アクスルアクチュエータ6の液圧を端子Iを介して制御するための三方圧力制御バルブ9及びポンプ3を過圧から保護するように構成された並列に接続された圧力逃がしバルブ10を含む圧力制御モジュール8の変形例を簡略に示す。更に、並列に接続された圧力逃がしバルブ10は、前アクスルアクチュエータ5の圧力を制御するのに役立ち、ポンプが必要以上に高い圧力を供給しないようにし、かくしてポンプ3の不要なエネルギ消費を節約する。
【0008】
従来技術の回路の欠点は、両アクスルを互いに独立して制御する上で制限があるということである。従来技術のシステムでは、後アクスルの圧力は、常に、前アクスルの圧力よりも小さいか或いは等しい。これにより、ヨー運動(車輛の垂直軸線を中心とした回転運動)を制御するように構成された車輛制御装置の性能が低下する。車輛の挙動の機敏さを向上する特徴について、多くの場合、カーブにオーバステア状態で進入するのが望ましい。これは、後アクスルに大きなアンチロールモーメント(又は大きな液圧)を一時的に発生することによって達成できる。
【特許文献1】欧州特許第EP1175307号
【特許文献2】欧州特許第EP0992376号
【特許文献3】US2005/0082781
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、従来技術の欠点を解消すると同時に、従来技術のエネルギに関する利点を保持する、即ち利用可能なポンプの容積流を最適に使用することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的のため、本発明の一つの特徴によれば、特に車輛用のアンチロールシステムにおいて、システム制御手段と、流体入口及び流体出口を各々有する液圧流体用のタンク及びポンプと、二つ又はそれ以上のスタビライザーであって、各スタビライザーはアクチュエータを有し、これらのアクチュエータは、夫々のスタビライザーの安定化作用を、アクチュエータの端子に供給された液圧とは別個に制御するように構成された、スタビライザーとを含み、二つ又はそれ以上のスタビライザーの各アクチュエータは、夫々の圧力制御モジュールの少なくとも第1端子と連通しており、各圧力制御モジュールは、ポンプの流体入口と流体出口との間に生成されたポンプ圧力に対して並列に連通した第2端子及び第3端子を含み、制御手段及び各圧力制御モジュールは、制御手段の作用下で、その第1端子に流体圧力を供給するように構成されている、アンチロールシステムが提供される。詳細には、特に車輛用のアンチロールシステムにおいて、システム制御手段と、流体入口及び流体出口を各々有する液圧流体用のタンク及びポンプと、二つ(例えば乗用車用)又はそれ以上(例えばトラック用)の液圧スタビライザーであって、スタビライザーのモーメントを、その端子に加えられた液圧とは別個に制御するように構成されたアクチュエータを各々有するスタビライザーとを含むアンチロールシステムが提供される。
【0011】
前記圧力制御モジュールのうちの一つ又はそれ以上が、直列に接続された二つの圧力制御バルブ(例えば圧力逃がしバルブ又は圧力制御バルブ又は二方減圧バルブ)を含んでいてもよく、前記第1端子は、前記制御バルブの共通の直列の接続点(「中間端子」)と対応し、前記第2端子及び前記第3端子は、ポンプ(高圧側)及びタンク(低圧側)に接続されるべき残りの接続部と対応する。
【0012】
変形例として、前記圧力制御モジュールのうちの一つ又はそれ以上が、三方圧力制御バルブ(例えば三方減圧バルブ)を含んでいてもよく、前記第1端子はその中間(枝)接続部と対応し、第2端子及び前記第3端子は、ポンプ(高圧側)及びタンク(低圧側)に接続されるべき残りの接続部と対応する。必要であれば、例えばポンプがそれ自体の(例えばその内部に設けられた)過圧保護装置を備えていない場合、三方減圧バルブを含む圧力制御モジュールの一つ又はそれ以上は、タンクの入口側及びポンプの出口側に端子に接続された少なくとも一つの圧力逃がしバルブ又は圧力制限バルブを含んでいてもよい。
【0013】
下文において、図2というのは、図2a及び/又は図2bを意味し、図3というのは、図3a及び/又は図3b及び/又は図3cを意味し、図4というのは、図4a及び/又は図4bを意味する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
全ての図面は、上文中に概略に論じたアンチロールシステムの例示の実施例を示す。例示の実施例は、制御端子a及びc、及び検出端子bを介して様々なシステム構成要素に接続された制御手段(明示していない)を含む。更に、様々な実施例は、液圧流体用のタンク4及びポンプ3を含む。タンク4及びポンプ3は、各々、流体入口及び流体出口を有する。図2、図3、及び図4に示す様々な実施例において、システムは、二つの車輛スタビライザー、即ち車輛の前後のアンチロールバーを制御する。これらのアンチロールバーは、各々、二つの半部バーに分けられており、これらの半部バーは、液圧モータ又は回転アクチュエータによって相互連結されている。回転アクチュエータ、即ち前アクスルアクチュエータ5及び後アクスルアクチュエータ6は、関連したスタビライザーのモーメントをアクチュエータの末端の液圧圧力に応じて制御するように構成されており、好ましくは対称であり、従来技術で必要とされた、使用される圧力シリンダの断面積が作動方向に応じて互いに異なる非対称アクチュエータをなくすことができる。車輛のアンチロール挙動を改善するため、各アクチュエータ5及び6は、その端子A/Bのうちのいずれか一方(図2及び図3参照)又は両方(図4参照)が圧力制御モジュール8の第1端子Iに接続されている。圧力制御モジュール8は、更に、タンク入口側に接続された端子II及びポンプの出口側に接続された端子IIIを有する。制御手段、即ち端子a及びbを介して接続された制御手段、及び各制御モジュール8は、その第1端子I(アクチュエータ5又は6の夫々の一つの端子に接続されている)に流体圧力を前記制御手段の制御下で供給するように構成されている。図2及び図3に示す形体は、両方向バルブ7を含む。このバルブ7は、その電気制御端子cを介して制御手段によって制御でき、車輛が左方又は右方にカーブを曲がるとき、アクチュエータ5及び6のいずれかに、これらのアクチュエータの第1端子Aを介して、又は第2端子Bを介して、関連した圧力を提供する。
【0015】
詳細には、本発明の一つの特徴による特に車輛用のアンチロールシステムを添付図面に示す。このアンチロールシステムは、システム制御手段、即ち流体入口及び流体出口を各々有するタンク(4)及び液圧流体用ポンプ(3)と、二つ又はそれ以上のスタビライザーとを含む。各スタビライザーは、アクチュエータ(5、6)を有し、これらのアクチュエータは、関連したスタビライザーのモーメントを、アクチュエータの端子での液圧に応じて制御するように構成されている。前記二つ又はそれ以上のスタビライザーの各アクチュエータは、その端子(A、B)の一方又は両方のいずれかが、圧力制御モジュール(8)の第1端子(I)に接続されている。このモジュールは、更に、タンクの入口側に連結された第2端子(II)と、ポンプの出口側に連結された第3端子(III)とを有する。前記制御手段及び各制御モジュールは、前記制御手段の制御下で第1端子に流体圧力を供給するように構成されている。
【0016】
これに関し、スタビライザーの安定化作用は、特に、車輛を安定した状態に保持するために車輛に及ぼされるアンチロールモーメントを推論する。更に、連通と関連した用語は、関連した圧力端子(A、B、I、II、又はIII)とポンプの入口との間の実質的に単一の圧力ラインを意味する。更に、並列と関連した用語は、夫々の圧力制御モジュールの端子と並列に提供された実質的に同じ圧力に関する。
【0017】
図2では、二つの圧力制御モジュール8の各々が、直列に接続された二つの圧力制御バルブ1及び2を備えている。制御モジュールの第1端子Iは、制御バルブの共通の直列の接続点(中間点)と対応し、第2端子II及び第3端子IIIは、それらの残りの外側連結点と対応する。直列に接続された圧力制御バルブ1及び2について、好ましくは、電気的に比例制御できる(即ち、端子aを介した制御手段によって)圧力逃がし(又は制限)バルブを使用してもよい。一般的には、圧力逃がしバルブは、二つの異なる機能を果たすことができる。安全バルブとしては、緊急時にだけ開放し、圧力が高くなり過ぎないようにする。通常のプロセス状態では、閉鎖している。また、減圧バルブとして使用してもよい。即ち関連した圧力を一定に設定し保持するために使用してもよい。通常のプロセス状態では開放状態にあり、圧送された流れの制限された部分を通過させる。本発明のこの実施例では、これらの機能は、両方とも、直列に接続された逃がしバルブによって行われる。即ち、これらのバルブは、安全バルブとして機能し、システム圧力が高くなり過ぎないようにし、そして減圧バルブとして機能し、即ち、関連したアクチュエータ5及び6の夫々に供給される液圧流体の圧力を、電気端子aに接続された制御手段によって制御する。
【0018】
直列に接続された圧力逃がしバルブの代りに、直列に接続された二方減圧バルブを使用してもよい。ポンプ3の場合、例えば内部圧力逃がしバルブによって予め保護がなされていない場合には、ポンプの出口及び入口に(従って、ポンプ3と並列に)、又はポンプの出口側及びタンクの入口側に(従って、直列に接続されたポンプ3及びタンク4と並列に)接続された圧力逃がしバルブによって保護されなければならない。
【0019】
図2に示す実施例では、各アクチュエータは、所望の特定の圧力を他のアクチュエータとは別個に制御するため、それ自体の直列の接続部を有する。直列に接続された二組の圧力制御バルブにより、最高要求制御圧力を実現できる(これは、前アクスル及び後アクスルの両方で行うことができる)。図2aと図2bとの間の形体の相違は、図2aでは、両アクチュエータの低圧側が共通であり、図2bでは、両アクチュエータの高圧側が共通であるということである。これにより、圧力を急速に上昇する制御作用中の挙動が異なる。先ず最初に、両アクスルに圧力を分配し、図2aの形体では、圧力が高い方のアクスルが競合に打ち勝つ。これは、圧力が低い方のアクスルでは、第1制御バルブ1が一時的に閉鎖するためである。しかしながら、図2bの形体には、圧力を精密に制御する(制御手段にフィードバックを提供する)ため、第3圧力センサを設けることが望ましいという欠点がある。
【0020】
図3a、図3b、及び図3cは、第2実施例の三つの態様を示す。第2実施例では、前記圧力制御モジュール8の一つ又はそれ以上が、三方圧力制御バルブを有する。この実施例では、圧力制御モジュール8の第1端子I(一つのアクチュエータ端子に接続されている)は、三方圧力制御バルブの中間接合部と対応し、第2端子II及び第3端子IIIは、それらの残りの「外側」接続部と対応する。三方減圧バルブを三方圧力制御バルブとして使用してもよい。
【0021】
ポンプ3は(例えば内部圧力逃がしバルブによって予め保護されていない場合には)、過圧に対して保護されていなければならない。更に、ポンプ3には、エネルギ節約手段、即ち各瞬間にポンプの圧力を要求圧力に合わせて制限する手段が設けられていなければならない。ポンプの入口及び出口に(ポンプ3と平列に)、又はポンプの出口側及びタンクの入口側に(直列に接続されたポンプ3及びタンク4と並列に)接続された圧力逃がしバルブによって、過圧保護及びエネルギ節約の両方を実現できる。このような保護を行うための圧力逃がしバルブは、圧力制御モジュール8に含まれていてもよいし、別体であってもよい。図3は三つの態様を示す。各態様において、各アクチュエータ5又は6の一方の端子が三方減圧バルブ9の第1(中間)端子Iに接続されている。三方減圧バルブ9は、更に、ポンプ3の出口側及びタンク4の入口側に接続された外側端子II及びIIIを有する。
【0022】
図3aの態様では、各圧力制御モジュール8は、三方減圧バルブ9の外側端子に並列に接続された圧力逃がしバルブ10を含む。そのため、この実施例は、二つの圧力逃がしバルブ10を並列に備えている。
【0023】
図3bの態様では、三方減圧バルブ9の外側端子に並列に接続された圧力逃がしバルブ10が一方の圧力制御モジュール8だけに設けられている。そのため、この実施例は、ポンプの圧力を各瞬間の圧力要求に合わせて制限することにより、ポンプのエネルギ消費を制限するための一つの圧力逃がしバルブ10を含む。
【0024】
図3cの態様では、圧力制御モジュール8に圧力逃がしバルブが設けられていないが、この実施例では、外部圧力逃がしバルブ10がポンプ3を保護するか或いはポンプ3の内部に設けられる。ポンプ3の内部に設けられた場合、外部圧力逃がしバルブ10は不要である(破線参照)。
【0025】
減圧バルブは、アクチュエータ5又は6を、中間(第1)端子Iを介して、ポンプ出口側(高圧側)又はタンク側(低圧側)のいずれかに接続する性能を備えている。制御圧力に達すると直ぐに、アクチュエータ内に所望の圧力を保持するため、中間部分が多かれ少なかれブロックされる。この圧力は、かくして、他方のアクスルの圧力よりも低圧であってもよい。図3の実施例の利点は、必要とされる制御バルブが一つであり、制御電流コイルを一つしか備えていないということである。これは、システムの費用及び機内電源の電気的負荷に関して有利である。これとは逆に、このような三方減圧バルブは比較的複雑である。
【0026】
図4a及び図4bは、第3実施例の二つの態様を示す。図4の両態様では、各回転アクチュエータ5、6の各ゲート(端子)が、圧力制御モジュール8(全部で4個のモジュール8が設けられている)の第1(中間)端子Iに接続されている。この形体では、各アクチュエータ端子A及びB自体に個々に圧力を加える必要がある(圧力は、上掲の実施例では、一方のアクチュエータ端子A又はBに、タンク4の入口側又はポンプ3の出口側のいずれかに接続された方向バルブ7の状態に応じて加えられる)ため、上掲の実施例におけるように方向バルブ7を作動させる必要がない。この形体では、アクスル毎に重複するため、前アクスル用のフェイルセーフバルブ(これは、図示していないけれども、上掲の実施例において必要とされる)に対する必要をなくすことができる。このようにフェイルセーフバルブ及び方向バルブを省略することにより、快適な運転を経験できる。道路の凸凹によるアクチュエータの回転運動によりパルス状容積流が発生し、これをバルブ及び配管を通して逃がさなければならない。この回路の抵抗が低ければ低い程、運転の快適性が向上する。これは、パルスの圧力が低下するためである。更に、真っ直ぐな道路を運転する場合の定常的エネルギ消費は、ポンプの圧力を各瞬間の要求圧力に合わせて制限するため低下する(真っ直ぐな道路を運転する場合、要求圧力は最小である)。ポンプ3からタンク4まで四つの並列なチャンバが設けられているため、達成可能な最小流体抵抗が低くなり、ポンプ3での基本的液圧を低下できる。
【0027】
説明を完全にするため、上述のシステムの実際の実施例では、様々な図面において別体の物品として示した様々な制御モジュール8は、一つの共通の一体化した制御モジュールブロックに組み込まれていてもよい。このようにすることによって、例えば様々な相互接続ライン及び全体の容積を最小にできる。
【0028】
上文中に説明したシステムでは、両アクスルのアクチュエータに供給された圧力を独立して制御できる(後アクスルの圧力が、前アクスルの圧力よりも高い)。随意であるが、所望の圧力分布とは別個に、常にポンプの全出力又は流量を使用できる。また、従来技術のシステムと比較すると、真っ直ぐな道路を運転する場合の前アクスルでの運転の快適性及びエネルギ消費に関する利点が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1a及び図1bは、従来技術の二つの態様を示す図である。
【図2】図2a及び図2bは、第1実施例の二つの態様を示す図である。
【図3】図3a、図3b、及び図3cは、第2実施例の三つの態様を示す図である。
【図4】図4a及び図4bは、第3実施例の二つの態様を示す図である。
【符号の説明】
【0030】
a、c 制御端子
b 検出端子
3 ポンプ
4 タンク
5 前アクスルアクチュエータ
6 後アクスルアクチュエータ
7 両方向バルブ
8 圧力制御モジュール
9 三方減圧バルブ
10 圧力逃がしバルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に車輛用のアンチロールシステムにおいて、
システム制御手段と、
流体入口及び流体出口を各々有する液圧流体用のタンク(4)及びポンプ(3)と、
二つ又はそれ以上のスタビライザーであって、各スタビライザーはアクチュエータ(5、6)を有し、これらのアクチュエータは、夫々のスタビライザーの安定化作用を、前記アクチュエータの端子に供給された液圧とは別個に制御するように構成された、スタビライザーとを含み、
前記二つ又はそれ以上のスタビライザーの各アクチュエータは、夫々の圧力制御モジュール(8)の少なくとも第1端子(I)と連通しており、
各圧力制御モジュールは、前記ポンプの前記流体入口と前記流体出口との間に生成されたポンプ圧力に対して並列に連通した第2端子(II)及び第3端子(III)を含み、
前記制御手段及び各圧力制御モジュールは、前記制御手段の作用下で、その第1端子(I)に流体圧力を供給するように構成されている、アンチロールシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のアンチロールシステムにおいて、
前記圧力制御モジュール(8)のうちの一つ又はそれ以上が、直列に接続された二つの制御バルブ(1、2)を有し、前記第1端子(I)は、前記制御バルブの共通の直列の接続点と対応し、前記第2及び第3の端子(II、III)は、それらの残りの接続部と対応する、アンチロールシステム。
【請求項3】
請求項2に記載のアンチロールシステムにおいて、
前記直列に接続された圧力制御バルブは、圧力逃がしバルブ即ち圧力制限バルブを含む、アンチロールシステム。
【請求項4】
請求項1に記載のアンチロールシステムにおいて、
前記圧力制御モジュール(8)のうちの一つ又はそれ以上が三方圧力制御バルブ(9)を含み、前記第1端子(I)はその中間接続部と対応し、前記第2及び第3の端子(II、III)は、それらの残りの接続部と対応する、アンチロールシステム。
【請求項5】
請求項4に記載のアンチロールシステムにおいて、
前記三方圧力制御バルブは、三方減圧バルブである、アンチロールシステム。
【請求項6】
請求項5に記載のアンチロールシステムにおいて、
前記圧力制御モジュール(8)のうちの一つ又はそれ以上の各々は、少なくとも一つの圧力逃がしバルブ即ち圧力制限バルブ(10)を含み、このバルブの端子(II、III)は、前記タンクの入口側及び前記ポンプの出口側に連結されている、アンチロールシステム。
【請求項7】
請求項1乃至6のうちのいずれか一項に記載のアンチロールシステムにおいて、
各アクチュエータ(5、6)は、その端子のうちの第1端子(A)が、夫々の圧力制御モジュール(8)の前記第1端子(I)に接続されており、その端子のうちの第2端子(B)が、前記ポンプの出口側に連結されている、アンチロールシステム。
【請求項8】
請求項1乃至6のうちのいずれか一項に記載のアンチロールシステムにおいて、
各アクチュエータ(5、6)は、その端子のうちの第1端子(A)が、夫々の圧力制御モジュール(8)の前記第1端子(I)に接続されており、その端子のうちの第2端子(B)が、前記タンクの入口側に連結されている、アンチロールシステム。
【請求項9】
請求項1乃至6のうちのいずれか一項に記載のアンチロールシステムにおいて、
各アクチュエータ(5、6)は、その両方の端子(A、B)が夫々の圧力制御モジュール(8)の前記第1端子(I)に接続されている、アンチロールシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−514737(P2009−514737A)
【公表日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−539950(P2008−539950)
【出願日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際出願番号】PCT/NL2006/000562
【国際公開番号】WO2007/055569
【国際公開日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【出願人】(501259662)ネイダーランゼ、オルガニザティー、ボー、トゥーゲパストナトゥールウェテンシャッペルーク、オンダーツォーク、ティーエヌオー (28)
【氏名又は名称原語表記】NEDERLANDSE ORGANISATIE VOOR TOEGEPASTNATUURWETENSCHAPPELIJK ONDERZOEK TNO
【Fターム(参考)】