説明

液晶デバイスの駆動方法および駆動装置

【課題】下閾値駆動と同程度乃至それ以下のエネルギー消費で駆動可能で、実質的に初期化工程無しに画像を書き込むことができる液晶デバイスの駆動方法および駆動装置を提供すること。
【解決手段】一対の電極層5,6の間に、少なくとも、コレステリック液晶からなり該液晶の状態に応じて光を反射または透過する液晶層7と、吸収した光の光量に応じて電気特性が変化する機能を有する光導電層10と、が積層されてなる液晶デバイス1に画像を記録するため、液晶層7が非露光時にホメオトロピック状態に変化する閾値電圧を超える電圧を電極層5,6間に印加しつつ、液晶デバイス1の書き込み領域に対して像様に光を照射する書き込み工程と、書き込み工程において光が照射された領域がフォーカルコニック状態に変化する程度の電圧を電極層5,6間に印加する表示確定工程と、の各工程の操作を順次行うことを特徴とする液晶デバイスの駆動方法および駆動装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コレステリック液晶からなる液晶層と光導電層とが積層されてなる液晶デバイスを光の照射により書き込む液晶デバイスの駆動方法および駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
利便性の高い各種リライタブルマーキング技術の研究が為されているが、その1つの方向性として、コレステリック液晶を用いた液晶デバイスは、無電源で表示を保持できるメモリー性を有すること、偏光板を使用しないため明るい表示が得られること、カラーフィルターを用いずにカラー表示が可能なことなどの特長を有することから近年注目を集めている。
【0003】
コレステリック液晶(カイラルネマチック液晶)が示すプレーナ状態は、螺旋軸に平行に入射した光を右旋光と左旋光に分け、螺旋の捩れ方向に一致する円偏光成分をブラッグ反射し、残りの光を透過させる選択反射現象を起こす。反射光の中心波長λおよび反射波長幅Δλは、螺旋ピッチをp、螺旋軸に直交する平面内の平均屈折率をn、複屈折率をΔnとすると、それぞれ、λ=n・p、Δλ=Δn・pで表され、プレーナ状態のコレステリック液晶層による反射光は、螺旋ピッチに依存した鮮やかな色を呈する。
【0004】
正の誘電率異方性を有するコレステリック液晶は、図7(A)に示すように、螺旋軸がセル表面に垂直になり、入射光に対して上記の選択反射現象を起こすプレーナ、図7(B)に示すように、螺旋軸がほぼセル表面に平行になり、入射光を少し前方散乱させながら透過させるフォーカルコニック、および図7(C)に示すように、螺旋構造がほどけて液晶ダイレクタが電界方向を向き、入射光をほぼ完全に透過させるホメオトロピック、の3つの状態を示す。
【0005】
上記の3つの状態のうち、プレーナとフォーカルコニックは、無電界で双安定に存在することができる。したがって、コレステリック液晶の状態は、液晶層に印加される電界強度に対して一義的に決まらず、プレーナが初期状態の場合には、電界強度の増加に伴って、プレーナ、フォーカルコニック、ホメオトロピックの順に変化し、フォーカルコニックが初期状態の場合には、電界強度の増加に伴って、フォーカルコニック、ホメオトロピックの順に変化する。
【0006】
一方、液晶層に印加した電界強度を急激にゼロにした場合には、プレーナとフォーカルコニックはそのままの状態を維持し、ホメオトロピックはプレーナに変化する。
したがって、パルス信号を印加した直後のコレステリック液晶層は、図8に示すようなスイッチング挙動を示し、印加されたパルス信号の電圧が、Vfh以上のときには、ホメオトロピックからプレーナに変化した選択反射状態となり、VpfとVfhの間のときには、フォーカルコニックによる透過状態となり、Vpf以下のときには、パルス信号印加前の状態を継続した状態、すなわちプレーナによる選択反射状態またはフォーカルコニックによる透過状態となる。
【0007】
図8中、縦軸は正規化光反射率であり、最大光反射率(その液晶デバイスの飽和反射率)を100、最小光反射率を0として、光反射率を正規化している(正規化反射率について、以下同様。)。また、プレーナ、フォーカルコニックおよびホメオトロピックの各状態間には、遷移領域が存在するため、正規化光反射率が50以上の場合を選択反射状態、正規化光反射率が50未満の場合を透過状態と定義し、プレーナとフォーカルコニックの状態変化の閾値電圧をVpfとし、フォーカルコニックとホメオトロピックの状態変化の閾値電圧をVfhとする。
【0008】
コレステリック液晶表示素子は、一対の表示基板間に液晶を連続相として封入する構造のほかに、高分子バインダ中にコレステリック液晶をドロップ状に分散したPDLC(Polymer Dispersed Liquid Crystal)構造や、高分子バインダ中にマイクロカプセル化されたコレステリック液晶を分散したPDMLC(Polymer Dispersed Microencapsulated Liquid Crystal)構造にすることができる(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0009】
PDLC構造やPDMLC構造を用いると、液晶の流動性が抑えられるため曲げや圧力に対する画像の乱れが小さくなり、フレキシブルな媒体を実現できる。また、複数のコレステリック液晶層を直接積層してカラー表示を行ったり、光導電層と積層して光信号で画像をアドレスする表示素子とすることもできる。さらに、表示層を厚膜印刷技術を用いて形成することが可能となるため、製造方法が簡略化されて低コストになるという利点もある。
【0010】
従来より、当該技術を利用した液晶デバイスが多数提案されている(例えば、特許文献4参照)。
図9に、当該技術による一般的な光アドレス型空間液晶デバイスに対して、露光装置で画像の書き込みを行っている様子を模式的に表す模式図を示す。図9に示されるように、当該技術による液晶デバイスは、一対の透明電極間に液晶層と光導電層であるOPC(有機感光体)層とが(必要に応じて、不図示の遮光層を挟んで)積層され、一対の基板で挟持されてなるものである。
【0011】
当該技術による液晶デバイスは、両透明電極に所定のバイアス電圧を印加した状態で、OPC層側の表面を像様に全面一括で露光装置により平行光で露光することによって、所望の記録画像を書き込むことができる。
当該技術による液晶デバイスは、表示層と光導電層とを電極層で挟み込んだユニットをRGBの3色積層することでフルカラー画像を形成することもできる。
【0012】
当該技術による液晶デバイスでは、既述のコレステリック液晶の双安定現象を利用して、(A)プレーナによる選択反射状態と、(B)フォーカルコニックによる透過状態と、をスイッチングすることによって、無電界でのメモリ性を有する各種色相のモノクロ表示、または無電界でのメモリ性を有するカラー表示を行う。
【0013】
スイッチングの方法としては、液晶層に印加する電圧として、上閾値(図8のグラフにおけるVfh。以下「上閾値Vfh」)を超える/超えないの選択による上閾値駆動と、下閾値(図8のグラフにおけるVpf。以下「下閾値Vpf」)を超える/超えないの選択による下閾値駆動との2種類を例示することができる。
【0014】
上閾値駆動では、像様にアドレス光を照射しながら、露光部には上閾値Vhfを超え、非露光部には上閾値Vfhを超えない電圧を透明電極層間に印加すると、露光部はプレーナ状態に変化して選択反射に、非露光部はフォーカルコニック状態の選択透過にそれぞれなるため、コントラスト画像が形成され表示画像になる。
【0015】
一方、下閾値駆動では、全面をプレーナ状態の選択反射状態にした後、像様にアドレス光を照射しながら、露光部には下閾値Vpfを超え、非露光部には下閾値Vpfを超えない電圧を透明電極層間に印加すると、非露光部はプレーナ状態の選択反射が保持され、露光部はフォーカルコニック状態の選択透過にそれぞれなるため、コントラスト画像が形成され表示画像になる。
【0016】
当該技術による液晶デバイスを駆動させるに際し、最終的に得られる表示画像の高画質化を企図して、液晶デバイスは一般的に初期化の操作が行われる。初期化は、上閾値Vfhを十分に超える電圧を透明電極層間に印加して液晶をホメオトロピック状態にすることにより行われる。電圧印加を停止すると、液晶層は全面がプレーナ状態に揃えられた状態になる。この初期化の操作は、電圧印加と共に書き込み光と同等以上の光量の光を液晶デバイスの書き込み領域全面に照射される。この光照射により、いわゆるゴースト画像の発生原因となるOPC層に残存した電荷の偏りを一様にしている。以下、このように電圧印加と共に光照射を行う初期化の操作を「明リセット」と称する。
【0017】
明リセットの後に上閾値駆動させた場合、良好な明暗コントラスト画像を得ることはできるが、初期化と書き込みの2度にわたり高電圧を印加する必要があり、省エネルギーの観点からは下閾値駆動の方が有利である。しかし、明リセットの後に下閾値駆動させた場合、良好な明暗コントラスト画像を得ることは困難であった。
【0018】
図10は、明リセット後の下閾値駆動による書き込み操作に相当する電圧を印加した場合における、印加電圧と表示画像の反射率との関係の一例を示すグラフである(用いた液晶デバイスは、実施例の物と同じ。)。横軸が書き込み操作に相当する印加電圧、縦軸が表示画像のY値(表示層の反射率から算出された明度)であり、露光ON/OFFで電圧を印加した場合のグラフをプロットしたものである(VR特性)。
【0019】
図10のグラフを見ればわかるとおり、露光ON/OFFでの表示画像のVR特性にほとんど差が生じておらず、下閾値駆動では露光ON/OFFによるコントラスト画像を得るのが極めて困難であることがわかる。
また、一方で、上下閾値いずれの駆動においても初期化のための操作を行ってから書き込みの操作を行わなければならないため煩雑であり、実質的に初期化の操作を行うことなく書き込むことができる駆動方法が望まれる。
【0020】
【特許文献1】特開平11−237644号公報
【特許文献2】特表2000−514932号公報
【特許文献3】特開平11−326871号公報
【特許文献4】特開2003−140184号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明は、下閾値駆動と同程度乃至それ以下のエネルギー消費で駆動可能な液晶デバイスの駆動方法および駆動装置を提供することを目的とする。
また、本発明は、実質的に初期化工程無しに画像を書き込むことができる液晶デバイスの駆動方法および駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記目的は、以下の本発明により達成される。
すなわち本発明の液晶デバイスの駆動方法(以下、単に「本発明の駆動方法」という場合がある。)は、一対の電極層の間に、少なくとも、コレステリック液晶からなり該液晶の状態に応じて光を反射または透過する液晶層と、光を吸収して該吸収した光の光量に応じて電気特性が変化する機能を有する光導電層と、が積層されてなる液晶デバイスに画像を記録するための液晶デバイスの駆動方法であって、
前記液晶層が非露光時にホメオトロピック状態に変化する閾値電圧を超える電圧を前記両電極層間に印加しつつ、前記液晶デバイスの書き込み領域に対して像様に光を照射する書き込み工程と、
書き込み工程において光が照射された領域がフォーカルコニック状態に変化する程度の電圧を前記両電極層間に印加する表示確定工程と、
の各工程の操作を順次行うことを特徴とする。
【0023】
本発明においては、一般的な駆動方法における初期化工程の操作に代えて、電圧(以下、書き込み工程において印加する電圧を「書き込み電圧」という場合がある。)の印加と共に光の照射/非照射を選択して、光導電層に潜像としての像を書き込み(書き込み工程)、一般的な駆動方法における書き込み工程の操作に代えて、書き込み光を照射せず下閾値電圧と同程度以下の電圧(以下、「表示確定電圧」という場合がある。)を印加することで、前記潜像を浮き上がらせるようにして表示画像として確定させる(表示確定工程)。従って、下閾値駆動による書き込みと同程度以下のエネルギー消費で液晶デバイスを駆動することができる。
また、一般的な駆動方法における初期化工程の段階での明リセットを書き込み光に代えており、実質的に初期化工程の必要が無いため、液晶デバイスの簡易なる駆動が実現される。
【0024】
本発明の駆動方法においては、書き込み工程と表示確定工程との間に、前記両電極層間に電圧を印加しないで保持する保持工程が含まれていてもよい。書き込み工程で形成されたいわゆる潜像は、その後放置しておいても暫く保持される。従って、前記両電極層間に電圧を印加しないで一定時間保持しておいてから表示確定工程の操作に供しても、所望とする表示画像を得ることができる。そのため、例えば書き込んですぐに表示させたく無いような場面においては、書き込み工程の操作までを行っておき、その後そのままの状態で保持しておいて(保持工程)、画像を表示させたい時に表示確定工程の操作を行うことで表示画像を時間差で形成することができる。
【0025】
本発明の駆動方法においては、書き込み工程における光の照射が、前記液晶デバイスの書き込み領域全面を二次元的に走査して行うことも好ましい。レーザ光を用いたり、発光ダイオードアレイを用いる等の二次元的に走査させる方法で光書き込みを行うことができ、全面一括露光する方法に比べて、容易かつ低コスト、コンパクトな書き込み装置で画像書き込みをすることができる。
【0026】
一方、本発明の液晶デバイスの駆動装置(以下、単に「本発明の駆動装置」という場合がある。)は、一対の電極層の間に、少なくとも、コレステリック液晶からなり該液晶の状態に応じて光を反射または透過する液晶層と、光を吸収して該吸収した光の光量に応じて電気特性が変化する機能を有する光導電層と、が積層されてなる液晶デバイスに画像を記録するための液晶デバイスの駆動装置であって、
【0027】
前記液晶デバイスに像様に光を照射し得る光照射手段と、前記両電極層間に電圧を印加し得る電圧印加手段とを含み、
前記電圧印加手段によって、前記液晶層が非露光時にホメオトロピック状態に変化する閾値電圧を超える電圧を前記両電極層間に印加しつつ、前記光照射手段によって、前記液晶デバイスの書き込み領域に対して像様に光を照射する書き込み動作と、
前記電圧印加手段によって、書き込み動作により光が照射された領域がフォーカルコニック状態に変化する程度の電圧を前記両電極層間に印加する表示確定動作と、
が順次為されるように構成されてなることを特徴とする。
【0028】
本発明の駆動装置は、既述の本発明の駆動方法による液晶デバイスの駆動を実現し得るものである。すなわち、前記電圧印加手段および前記光照射手段によって書き込み工程における操作が為される書き込み動作と、前記電圧印加手段によって表示確定工程における操作が為される表示確定動作と、が順次行われるように構成されており、本発明の駆動装置によれば、下閾値駆動による書き込みと同程度以下のエネルギー消費で液晶デバイスを駆動することができる。
また、一般的な駆動方法における初期化工程の段階での明リセットを書き込み光に代えており、実質的に初期化工程に相当する動作が無いため、液晶デバイスの簡易なる駆動が実現される。
【0029】
本発明の駆動装置においては、書き込み動作が為された後の液晶デバイスを、表示確定動作が為される前に、装置から着脱可能に構成されてなることも好ましい。書き込み動作で形成されたいわゆる潜像は、その後放置しておいても暫く保持される。従って、前記両電極層間に電圧が印加されない、装置から取り外した状態においてから再び装置に取り付けて表示確定動作を行っても、所望とする表示画像を得ることができる。そのため、例えば書き込んですぐに表示させたく無いような場面においては、書き込み動作までを行った液晶デバイスを取り外しておき、その後そのままの状態で保持しておいて、画像を表示させたい時に再び装置に取り付けて表示確定動作を行うことで表示画像を時間差で形成することができる。
【0030】
本発明の駆動装置においては、前記光照射手段が、前記液晶デバイスの書き込み領域全面を二次元的に走査させることで光を照射する手段であることも好ましい。レーザ光を用いたり、発光ダイオードアレイを用いる等の二次元的に走査させる手段で光書き込みを行うことができ、全面一括露光する手段に比べて、容易、コンパクトかつ低コストで画像書き込みをすることができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、下閾値駆動と同程度乃至それ以下のエネルギー消費で駆動可能で、実質的に初期化工程無しに画像を書き込むことができる液晶デバイスの駆動方法および駆動装置を提供することができる。
また、書き込み工程(動作)で光書き込みをしてから、表示画像が形成されていない状態で一旦駆動装置等から取り外し、そのままの状態で保持しておくことができ、画像を表示したい時に再度駆動装置等に取り付けて表示確定工程の操作(表示確定動作)を行って、時間差で表示画像を形成することもできる。
さらに、液晶デバイスの書き込み領域全面を二次元的に走査して光を照射することができるため、全面一括露光する方法に比べて、容易かつ低コストで画像書き込みをすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明の光書き込み型の液晶デバイスの駆動装置および駆動方法について、詳細に説明する。
なお、本発明の駆動装置は、本発明の駆動方法を利用して液晶デバイスに画像を書き込むための装置である。したがって、以下の説明においては、本発明の駆動装置および駆動方法を明確に区別すること無く、包括的に説明する。
【0033】
図1は、本発明の駆動方法を適用したシステムの例示的一態様である実施形態の概略構成図である。本実施形態のシステムは、大きく分けて、光書き込み型の液晶デバイス1と、それを駆動する(画像を書き込む)ための駆動装置2とからなる。駆動装置2は、電源装置(電圧印加手段)17および光照射装置(光照射手段)18の他、これらの動作を制御する制御回路16が含まれてなる。
【0034】
<液晶デバイス>
本実施形態において、液晶デバイス1は、表示面側から順に、基板3、電極5、液晶層7、ラミネート層8、着色層(遮光層)9、有機感光層(光導電層)10、電極(電極層)6および基板4が積層されてなる物である。
【0035】
(基板)
基板3,4は、各機能層を内面に保持し、液晶デバイスの構造を維持する目的の部材である。基板3,4は、外力に耐える強度を有するシート形状の物体であり、フレキシブル性を有することが好ましい。具体的な材料としては、無機シート(たとえばガラス・シリコン)、高分子フィルム(たとえばポリエチレンテレフタレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート)等を挙げることができる。なお、少なくとも表示面側の基板3は表示光を透過する機能を有する。その外表面に、防汚膜、耐磨耗膜、光反射防止膜、ガスバリア膜など公知の機能性膜を形成してもよい。
【0036】
(電極)
電極(電極層)5,6は、電源装置17から印加されたバイアス電圧を、液晶デバイス1内の各機能層へ印加する目的の部材である。具体的には、金属(たとえば金、銀、銅、鉄、アルミニウム)、金属酸化物(たとえば酸化インジウム、酸化スズ、酸化インジウムスズ(ITO))、炭素、これらを高分子中に分散させた複合体、導電性有機高分子(たとえばポリチオフェン系・ポリアニリン系)などで形成された導電性薄膜を挙げることができる。表面に、密着力改善膜、光反射防止膜、ガスバリア膜など公知の機能性膜を形成してもよい。
【0037】
(液晶層)
本発明において液晶層とは、電場によって入射光の反射・透過状態を変調する機能を有し、選択した状態が無電場で保持できる性質を有し、メモリ性コレステリック(カイラルネマチック)液晶の光干渉状態の変化を利用する液晶素子である。液晶層としては、曲げや圧力などの外力に対して変形しない構造であることが好ましい。
【0038】
本実施形態において液晶層としては、コレステリック液晶および透明樹脂からなる自己保持型液晶複合体の液晶層が形成されてなるものである。すなわち、複合体として自己保持性を有するためスペーサ等を必要としない液晶層である。本実施形態では、不図示ではあるが、高分子マトリックス(透明樹脂)中にコレステリック液晶が分散した状態となっている。
なお、本発明においては、液晶層が、自己保持型液晶複合体の液晶層であることは必須ではなく、単に液晶のみで液晶層を構成することとしても勿論構わない。
【0039】
コレステリック液晶は、入射光のうち特定の色光の反射・透過状態を変調する機能を有し、液晶分子がらせん状に捩れて配向しており、らせん軸方向から入射した光のうち、らせんピッチに依存した特定の光を干渉反射する。電場によって配向が変化し、反射状態を変化させることができる。液晶層を自己保持型液晶複合体とする場合には、ドロップサイズが均一で、単層稠密に配置されていることが好ましい。
【0040】
コレステリック液晶として使用可能な具体的な液晶としては、ステロイド系コレステロール誘導体、あるいはネマチック液晶やスメクチック液晶(たとえばシッフ塩基系、アゾ系、アゾキシ系、安息香酸エステル系、ビフェニル系、ターフェニル系、シクロヘキシルカルボン酸エステル系、フェニルシクロヘキサン系、ビフェニルシクロヘキサン系、ピリミジン系、ジオキサン系、シクロヘキシルシクロヘキサンエステル系、シクロヘキシルエタン系、シクロヘキサン系、トラン系、アルケニル系、スチルベン系、縮合多環系)、またはこれらの混合物に、カイラル剤(たとえばステロイド系コレステロール誘導体、シッフ塩基系、アゾ系、エステル系、ビフェニル系)を添加したもの等を挙げることができる。
【0041】
コレステリック液晶の螺旋ピッチは、液晶分子の化学構造や、ネマチック液晶に対するカイラル剤の添加量で調整する。例えば、表示色を青、緑あるいは赤にする場合には、それぞれ選択反射の中心波長が、順に400nm〜500nm、500nm〜600nmあるいは600nm〜700nmの範囲になるようにする。また、コレステリック液晶の螺旋ピッチの温度依存性を補償するために、捩れ方向が異なる、または逆の温度依存性を示す複数のカイラル剤を添加する公知の手法を用いてもよい。
【0042】
液晶層7がコレステリック液晶と高分子マトリックス(透明樹脂)からなる自己保持型液晶複合体を形成する形態としては、コレステリック液晶の連続相中に網目状の樹脂を含むPNLC(Polymer Network Liquid Crystal)構造や、高分子の骨格中にコレステリック液晶がドロップレット状に分散されたPDLC(Polymer Dispersed Liquid Crystal)構造(マイクロカプセル化されたものを含む)を用いることができ、PNLC構造やPDLC構造とすることによって、コレステリック液晶と高分子の界面にアンカリング効果を生じ、無電界でのプレーナ相またはフォーカルコニック相の保持状態を、より安定にすることができる。
【0043】
PNLC構造やPDLC構造は、高分子と液晶とを相分離させる公知の方法、例えば、アクリル系、チオール系、エポキシ系などの、熱や光、電子線などによって重合する高分子前駆体と液晶を混合し、均一相の状態から重合させて相分離させるPIPS(Polymerization Induced PhaseSeparation)法、ポリビニルアルコールなどの、液晶の溶解度が低い高分子と液晶とを混合し、攪拌懸濁させて、液晶を高分子中にドロップレット分散させるエマルジョン法、熱可塑性高分子と液晶とを混合し、均一相に加熱した状態から冷却して相分離させるTIPS(Thermally Induced Phase Separation)法、高分子と液晶とをクロロホルムなどの溶媒に溶かし、溶媒を蒸発させて高分子と液晶とを相分離させるSIPS(Solvent Induced Phase Separation)法などによって形成することができるが、特に限定されるものではない。
【0044】
高分子マトリックスは、コレステリック液晶を保持し、液晶デバイスの変形による液晶の流動(画像の変化)を抑制する機能を有するものであり、液晶材料に溶解せず、また液晶と相溶しない液体を溶剤とする高分子材料が好適に用いられる。また、高分子マトリックスとしては、外力に耐える強度をもち、少なくとも反射光および書き込み光に対して高い透過性を示す材料であることが望まれる。
【0045】
高分子マトリックスとして採用可能な材料としては、水溶性高分子材料(たとえばゼラチン、ポリビニルアルコール、セルロース誘導体、ポリアクリル酸系ポリマー、エチレンイミン、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリルアミド、ポリスチレンスルホン酸塩、ポリアミジン、イソプレン系スルホン酸ポリマー)、あるいは水性エマルジョン化できる材料(たとえばフッ素樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂)等を挙げることができる。
【0046】
(有機感光層)
有機感光層(光導電層)10は、内部光電効果をもち、書き込み光の照射強度に応じてインピーダンス特性が変化する特性を有する層である。交流(AC)動作を行う場合には、書き込み光に対して対称駆動であることが望ましく、電荷発生層(CGL)が電荷輸送層(CTL)の上下に積層された3層構造に形成されてなる。本実施形態では、有機感光層10として、図1における上層から順に上側の電荷発生層13、電荷輸送層14および下側の電荷発生層15が積層されてなる。
【0047】
電荷発生層13,15は、書き込み光を吸収して光キャリアを発生させる機能を有する層である。主に、電荷発生層13が表示面側の電極5から書き込み面側の電極6の方向に流れる光キャリア量を、電荷発生層15が書き込み面側の電極6から表示面側の電極5の方向に流れる光キャリア量を、それぞれ左右している。電荷発生層13,15としては、書き込み光を吸収して励起子を発生させ、CGL内部、またはCGL/CTL界面で自由キャリアに効率良く分離させられるものが好ましい。
【0048】
電荷発生層13,15は、電荷発生材料(たとえば金属又は無金属フタロシアニン、スクアリウム化合物、アズレニウム化合物、ペリレン顔料、インジゴ顔料、ビスやトリス等アゾ顔料、キナクリドン顔料、ピロロピロール色素、多環キノン顔料、ジブロモアントアントロンなど縮環芳香族系顔料、シアニン色素、キサンテン顔料、ポリビニルカルバゾールとニトロフルオレン等電荷移動錯体、ピリリウム塩染料とポリカーボネート樹脂からなる共昌錯体)を直接成膜する乾式法か、またはこれら電荷発生材料を、高分子バインダー(たとえばポリビニルブチラール樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ビニルカルバゾール樹脂、ビニルホルマール樹脂、部分変性ビニルアセタール樹脂、カーボネート樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、スチレン樹脂、ビニルアセテート樹脂、酢酸ビニル樹脂、シリコーン樹脂等)とともに適当な溶剤に分散ないし溶解させて塗布液を調製し、これを塗布し乾燥させて成膜する湿式塗布法等により形成することができる。
【0049】
電荷輸送層14は、電荷発生層13,15で発生した光キャリアが注入されて、バイアス信号で印加された電場方向にドリフトする機能を有する層である。
電荷輸送層14は、電荷発生層13,15からの自由キャリアの注入が効率良く発生し(電荷発生層13,15とイオン化ポテンシャルが近いことが好ましい)、注入された自由キャリアができるだけ高速にホッピング移動するものが好適である。暗時のインピーダンスを高くするため、熱キャリアによる暗電流は低い方が好ましい。
【0050】
電荷輸送層14は、低分子の正孔輸送材料(たとえばトリニトロフルオレン系化合物、ポリビニルカルバゾール系化合物、オキサジアゾール系化合物、ベンジルアミノ系ヒドラゾンあるいはキノリン系ヒドラゾン等のヒドラゾン系化合物、スチルベン系化合物、トリフェニルアミン系化合物、トリフェニルメタン系化合物、ベンジジン系化合物)、または低分子の電子輸送材料(たとえばキノン系化合物、テトラシアノキノジメタン系化合物、フルフレオン化合物、キサントン系化合物、ベンゾフェノン系化合物)を、高分子バインダー(たとえばポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリスチレン樹脂、含珪素架橋型樹脂等)とともに適当な溶剤に分散ないし溶解させたもの、あるいは上記正孔輸送材料や電子輸送材料を高分子化した材料を適当な溶剤に分散ないし溶解させたものを調製し、これを塗布し乾燥させて形成すればよい。
【0051】
なお、本発明において光導電層としては、本実施形態の構成に限定されるものではなく、例えば、内部光電効果をもち、書き込み光の照射強度に応じてインピーダンス特性等の電気特性が変化するとともに、その変化後の状態が記憶される機能(光メモリー機能)を有する層であってもよい。以下、かかる光メモリー機能を有する光導電層を適宜「メモリー性光導電層」と称することがある。
【0052】
本発明においては、光導電層としてこのメモリー性光導電層を用いることで、書き込み工程で形成されたいわゆる潜像がより安定的に保持され、書き込み工程と表示確定工程との間に保持工程が含まれていても良好に表示画像を形成することができる点で好ましい。ただし、本発明の駆動方法は、このような特別な光導電層とせず上記のような一般的な構成の光導電層であっても、良好な光画像のメモリー性を有するものである。
【0053】
メモリー性光導電層において、光メモリー機能を生じさせる「記憶」の保持時間の程度としては、本発明の構成そのものでもいわゆる潜像がかなりの時間保持されることから、それを少しでも補助し得る程度であれば足り、特に数字上の制限は無い。高いメモリー性を実現するには、この「記憶」の程度としては、光導電層単体での保持時間として5秒間以上であることが好ましく、10秒間以上であることがより好ましく、60秒間以上であることがさらに好ましい。
【0054】
上記メモリー性光導電層としては、上記性質を有するものであれば特にその構成は制限無く、メモリー型感光体等と称される従来公知の物が問題なく使用可能である。
具体的には、東レリサーチセンター調査研究部門編、「13.メモリー型感光体」、"電子写真用感光体材料の新展開:情報記録分野における最先端技術開発動向とその応用"、株式会社東レリサーチセンター発行、1994年3月、p.143−148に記載のヨウ素をドーピングした導電性ポリマを電極とするメモリー型感光体、および有機ポリシラン感光体、当該文献や横山正明、岸本芳久、艸林成和著、「Cu・TCNQ錯体におけるスイッチング現象を用いた光メモリー機能をもつ有機感光体」、電子写真学会誌、第24巻、第2号、1985年、p.86−94等に記載のCu・TCNQ錯体の電気的スイッチングを利用したメモリー感光体、その他PVK(ポリ−N−ビニルカルバゾール)−TNF(2,4,7−トリニトロフルオレノン)有機感光体に第3成分としてロイコ色素およびジアゾニウム塩を添加した物等を例示することができ、いずれも好適に使用可能である。
【0055】
メモリー性光導電層は、その一例として電荷発生層とスイッチング層とが積層されてなるものを挙げることができる。電荷発生層は既述の物をそのまま用いることができ、スイッチング層がメモリー性光導電層として特徴的な層である。スイッチング層の一例としては、光に対するスイッチング現象を好適に有する銅TCNQ錯体(Cu・TCNQ錯体)が含まれてなるものである。銅TCNQ錯体(Cu・TCNQ錯体)は、下記式のような電解誘導還元反応によって導電性の状態が記憶される。
【0056】
【化1】

【0057】
スイッチング層は、このような性質の銅TCNQ錯体を適当な高分子バインダー(たとえばポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニル樹脂、含珪素架橋型樹脂等)とともに適当な溶剤に分散ないし溶解させたものを調製し、これを塗布し乾燥させて形成すればよい。
【0058】
電荷発生層およびスイッチング層の厚みとしては、所望の電気特性や光学特性等により異なるため一概には言えないが、前者は大略0.2〜3μm程度の範囲から、後者は大略2〜20μm程度の範囲から、それぞれ目的等に応じて選択される。
【0059】
(着色層)
着色層(遮光層)9とは、書き込み時に書き込み光と入射光とを光学分離し、相互干渉による誤動作を防ぐとともに、表示時に液晶デバイスの非表示面側から入射する外光と表示画像を光学分離し、画質の劣化を防ぐ目的で設けられる層であり、本発明において必須の構成要素ではない。ただし、液晶デバイス1の性能向上のためには、設けることが望まれる層である。その目的から、着色層9には、少なくとも電荷発生層の吸収波長域の光、および液晶層の反射波長域の光を吸収する機能が要求される。
【0060】
着色層9は、具体的には、無機顔料(たとえばカドミウム系、クロム系、コバルト系、マンガン系、カーボン系)、または有機染料や有機顔料(アゾ系、アントラキノン系、インジゴ系、トリフェニルメタン系、ニトロ系、フタロシアニン系、ペリレン系、ピロロピロール系、キナクリドン系、多環キノン系、スクエアリウム系、アズレニウム系、シアニン系、ピリリウム系、アントロン系)を高分子バインダー(たとえばポリビニルアルコール樹脂、ポリアクリル樹脂等)とともに適当な溶剤に分散ないし溶解させて塗布液を調製し、これを塗布し乾燥させて成膜する湿式塗布法等により形成することができる。
【0061】
(ラミネート層)
ラミネート層8は、上下基板3,4それぞれの内面に形成された各機能層を貼り合わせる際に、凹凸吸収および接着の役割を果たす目的で設けられる層であり、本発明において必須の構成要素ではない。ラミネート層8は、熱可塑性、熱硬化性、あるいはこれらの混合型の有機材料からなるものであり、熱や圧力によって液晶層7と着色層9とを密着・接着させることができる材料が選択される。また、少なくとも入射光に対して透過性を有することが条件となる。
ラミネート層8に好適な材料としては、粘着・接着性の高分子材料(たとえばポリエチレン系、ポリプロピレン系、ポリウレタン系、エポキシ系、アクリル系、ゴム系、シリコーン系)を挙げることができる。
【0062】
(接触端子)
接触端子19とは、電源装置17からの電圧が供給される導線11と、液晶デバイス1(電極5,6)との導通を行う部材であり、高い導電性を有し、電極5,6および導線11との接触抵抗が小さいものが選択される。液晶デバイス1と駆動装置2とを切り離すことができるように、電極5,6から分離できる(これに代えて、あるいはこれに加えて、駆動装置2から分離できる)構造であることが好ましい。特に、後述する通り、書き込み動作の後表示確定動作が為される前に駆動装置2から脱着可能に構成されていることが好ましい。
【0063】
接触端子19としては、金属(たとえば金、銀、銅、鉄、アルミニウム)、炭素、金属酸化物(たとえば酸化インジウム、酸化スズ、酸化インジウムスズ(ITO))、炭素、これらを高分子中に分散させた複合体、導電性有機高分子(たとえばポリチオフェン系・ポリアニリン系)などでできた端子で、電極を挟持するクリップ・コネクタ形状のものが挙げられる。
【0064】
<駆動装置>
本発明において駆動装置2は、液晶デバイス1に画像を書き込む装置であり、液晶デバイス1に対して書き込み光の照射を行う光照射装置(光照射手段)18および液晶デバイス1にバイアス電圧を印加する電源装置(電圧印加手段)17を主要構成要素とし、さらにこれらの動作を制御する制御回路16が配されてなる。
【0065】
(光照射装置)
光照射装置(光照射手段)18は、像様となる所定の書き込み光パターンを液晶デバイス1に照射する機能を有し、制御回路16からの入力信号に基づき、液晶デバイス1上(詳しくは、有機感光層10上)に所望の光画像パターン(スペクトル・強度・空間周波数)を照射できるものであれば特に制限されるものではない。なお、光照射すべき領域としては、液晶デバイス1の書き込み面の全面である必要は無く、液晶層が形成されている範囲内であることはもちろんのこと、書き込もうとする領域(書き込み領域)内であれば十分である。
【0066】
光照射装置18により照射される書き込み光としては、以下の条件のものが好ましく選択されるが、本発明においてはこれに限定されるものではない。
・スペクトル:有機感光層10の吸収波長域のエネルギーができるだけ多いことが好ましい。
・照射強度:一般的な上下閾値駆動における光照射と同等の強度。すなわち、明時に液晶層7への印加電圧が有機感光層10との分圧により上下閾値の電圧以上となって、液晶層7中の液晶を配向変化させ、暗時にはそれ以下となるような強度。
光照射装置18により照射される書き込み光としては、有機感光層10の吸収波長域内にピーク強度を持ち、できるだけバンド幅の狭い光であることが望ましい。
【0067】
光照射装置18としては、具体的には以下のものが挙げられる。
(1−1)光源(たとえば、冷陰極管、キセノンランプ、ハロゲンランプ、発光ダイオード(LED)、EL、レーザ等)を一次元のアレイ状に配置したものや、ポリゴンミラーと組み合せたもの、など走査動作によって任意の二次元発光パターンを形成できるもの
(1−2)光源をアレイ状に配置したものや導光板と組み合せたもの、などの均一な光源と、光パターンを作る調光素子(たとえば、LCD、フォトマスクなど)の組み合わせ
(2)光源を面状に配置したものなどの自発光型ディスプレイ(たとえばCRT、PDP、EL、発光ダイオード、FED、SED)
(3)上記(1−1)、(1−2)あるいは(2)と光学素子(たとえばマイクロレンズアレイ、セルホックレンズアレイ、プリズムアレイ、視野角調整シート)との組み合わせ
【0068】
(電源装置)
電源装置(電圧印加手段)17は、所定のバイアス電圧(書き込み電圧、表示確定電圧)を液晶デバイス1に印加する機能を有し、制御回路16からの入力信号に基づき、液晶デバイス(各電極間)に所望の電圧波形を印加できるものであればよい。ただし、高いスルーレートであることが好ましい。電源装置17には、例えばバイポーラ高電圧アンプなどを用いることができる。
電源装置17による液晶デバイス1への電圧の印加は、接触端子19を介して、電極5−電極6間に為される。
【0069】
(制御回路)
制御回路16は、外部(画像取り込み装置、画像受信装置、画像処理装置、画像再生装置、あるいはこれらの複数の機能を併せ持つ装置等)からの画像データに応じて、電源装置17および光照射装置18の動作を適宜制御する機能を有する部材である。
【0070】
本発明の駆動装置においては、電源装置17によって、液晶層7が非露光時にホメオトロピック状態に変化する閾値電圧を超える電圧を電極5−電極6間に印加しつつ、光照射装置18によって、液晶デバイス1の書き込み領域に対して像様に光を照射する書き込み動作と、電源装置17によって、書き込み動作により光が照射された領域がフォーカルコニック状態に変化する程度の電圧を電極5−電極6間に印加する表示確定動作と、が順次為されるように制御回路16により制御される。両動作の詳細については後述する。
【0071】
(全体構成)
図2は、本発明に供し得る駆動装置2の例を示す斜視図であり、光照射手段にレーザを用いた場合である。なお、当該図において、制御回路16の図示は省略されている。
【0072】
光照射を行う露光光学系(光照射装置18)は、光源51として半導体レーザを用い、コリメータレンズ52、ポリゴンミラー53、ポリゴンモーター54、f−θレンズ55、折り返し用ミラー56などによって構成され、レーザビーム57は、ビーム調整ミラー58を介して同期信号発生器59に送られ、走査タイミングの同期に用いられる。図では省略されているが、この駆動装置の制御装置(制御回路)は、一般の電子写真用レーザ露光装置のそれと同様である。
【0073】
液晶デバイス1の副走査方向への送りは、図示のように液晶デバイス1を平面状に固定して、パルスモータによって行い、または、液晶デバイス1の基板をフィルムで構成することにより、液晶デバイス1を柔軟性のあるものとして、円筒状のドラムに固定して、モータによって回転させる、などの方法によることができる。
【0074】
図3は、本発明の液晶デバイスの駆動装置の他の一例を示し、光照射装置に発光ダイオードアレイを用いた場合である。光照射用の光源が発光ダイオードアレイ62と自己結像型ロッドレンズアレイ63によって構成されるほかは、図2を用いて説明した上記例と同様である。
【0075】
[本発明の原理]
既述の通り、従来明リセットを実施した場合には、図10に示されるように下閾値駆動による書き込み操作を行ってもVR特性にほとんど差が生じないため、露光ON/OFFによるコントラスト画像を得ることは極めて困難である。
ところが、本発明者らの研究により、いわゆる初期化の操作において、明リセットではなく露光を伴わず電圧のみを印加した場合(以下、「暗リセット」と称する。)との比較では、明リセットはVR特性に大きな開きが生ずることがわかった。
【0076】
図4は、明/暗両リセットの後、下閾値駆動による書き込み操作に相当する電圧を印加した場合における、印加電圧と表示画像のY値との関係の一例を示すグラフである(用いた液晶デバイスは、図10と同様、実施例の物と同じ。)。横軸が書き込み操作に相当する印加電圧、縦軸が表示画像のY値(詳しくは、図10と同様)であり、明リセットの場合(ON)と暗リセットの場合(OFF)の2つのグラフがプロットされている。図4のグラフを見ればわかるとおり、明リセットの場合と暗リセットの場合とで、表示画像の反射率(VR特性)に大きなズレ(図4のグラフにおけるRx)が生じている。
【0077】
本願発明は、一般に初期化電圧の印加に相当するタイミングにおけるこのVR特性のズレを利用して、液晶を駆動して画像を書き込もうとするものである。
すなわち、本発明においてはまず、液晶層が非露光時にホメオトロピック状態に変化する閾値電圧を超える書き込み電圧(例えば、図8のグラフにおけるVR100)を両電極層間に印加しつつ、液晶デバイスの書き込み領域に対して像様に照射/非照射を選択して光を照射する(書き込み工程・動作)。
これにより、光導電層にいわゆる潜像状態で画像が書き込まれた状態になる。
【0078】
次に、表示確定電圧を印加することにより潜像を浮き上がらせて、表示画像を確定する(表示確定工程・動作)。このとき印加する電圧と、最終的な液晶の状態から得られるY値との関係が図4のグラフになる。すなわち、表示確定電圧の大きさ(横軸)に応じて、書き込み時に光を照射した領域は図4におけるONのグラフ、非照射の領域はOFFのグラフのそれぞれ反射率を示す。従って、照射/非照射によってVR特性にズレが生じているため、表示確定電圧を適切に制御することで、既述の潜像を顕像化することができる。
【0079】
上記書き込みにより液晶デバイスに形成された潜像は、光導電層の組成や構成にもよるが、ある程度乃至かなりの時間、その状態のまま維持されるので、電圧の印加が為されない状態でそのまま保持しておくことができる。
以上が本発明の基本原理である。本発明の駆動方法により画像を書き込むことができる技術的な理由は不明であるが、書き込み工程において光が照射された部位において、光導電層に電荷の偏りが生じそれが保持されて、表示確定工程での電圧印加時に液晶層に印加される分圧に影響を与えるためであろうと推定される。
具体的な各工程の操作(動作)については、次項にて詳述する。
【0080】
<駆動方法>
本発明の駆動方法について、図1に示される前記実施形態のシステムを参考に、図5および図6用いて各工程毎に説明する。
ここで図5は、書き込み時に光を照射する黒表示(低反射率)領域と、非照射の白表示(高反射率)領域のそれぞれについて、各工程における電圧の印加、光の照射、および、表示画像の明暗(白黒)状態を経時で表すチャートである。
【0081】
また、図6は、本発明の駆動方法を説明するための各工程の状態を表す説明図であり、(a)は本発明の駆動方法による書き込み前の状態を表し、(b)は書き込み工程の操作が為された後の状態を表し、(c)は表示確定工程の操作が為された後の状態を表すものである。なお、当該図6においては、説明に不要な一部の層の図示が省略されている。
【0082】
(書き込み工程)
書き込み工程(動作)においては、液晶層7が非露光時にホメオトロピック状態に変化する閾値電圧を超える電圧(書き込み電圧)を電極5−電極6間に印加しつつ、液晶デバイス1の書き込み領域に対して像様に光(書き込み光)を照射する。
【0083】
本工程では、図5のチャートに示されるように、いずれの領域も同じようにパルス電圧(書き込み電圧)が印加され(同チャートの印加電圧の欄参照)、黒表示領域のみに書き込み光が照射される(同チャートの照射光量の欄参照)。すなわち、図5のチャートにおける一点鎖線の枠で囲われたシーケンス(同チャートの照射光量の欄参照)の相違で、書き込みを行っている。
【0084】
本工程で液晶デバイス1の表示画像は、全面が反射状態(液晶がホメオトロピック状態→プレーナ状態)になる(同チャートの表示画像の欄参照)。
図6(a)に示される状態にあった液晶デバイス1は、本工程の操作により、図6(b)に示される如く書き込み光が照射された部位の有機感光層10に、電気特性の変化としていわゆる潜像(図面中ハッチングされている部位)が形成され、記憶された状態になっている。ただし、液晶層7のコレステリック液晶12は、全面がプレーナの反射状態(白表示)のままである。
【0085】
図8を参照しながら説明すると、本工程(動作)で印加する書き込み電圧は、液晶層7が非露光時にホメオトロピック状態に変化する閾値電圧Vfhを超える程度の電圧であれば十分であるが、正規化反射率として90%以上となる電圧であることが好ましく、95%以上となる電圧であることがより好ましく、その液晶デバイスの飽和反射率に達する電圧VR100以上であることが最も好ましい。
【0086】
一方、本工程(動作)で光照射部に照射する書き込み光の光量としては、一般的に明リセットとして照射する程度の光量が適当であり、有機感光層(光導電層)10を含む液晶デバイスの層構成や各層の組成、構造等にもより一概には言えないが、おおよそ、10μWから500μW程度の範囲から選択することが適当である。
【0087】
なお、本例では、書き込み電圧の印加時間と書き込み光の照射とが、時間的に一致する態様で説明しているが、本発明においてはいずれかが長く実施されていても、あるいは印加乃至照射の実施時間がずれていても構わない。両者の実施が重なった時間が、書き込み工程の操作(動作)として必要十分であれば問題ない。例えば、液晶デバイス1全体に書き込み電圧を印加しておいて、そのままの状態で、光を照射すべき領域のみを必要時間ずつスポット的に照射して走査することで、液晶デバイス1の書き込み領域全面に書き込んでも構わない。
【0088】
(保持工程)
書き込み工程と表示確定工程との間に必要に応じて配される保持工程においては、電極5−電極6間に電圧を印加せずそのままの状態(書き込み電圧の配線を除き、図6(b)の状態)で液晶デバイスを保持する。書き込み工程で形成されたいわゆる潜像は、有機感光層10の組成や構成にもよるが、ある程度乃至かなりの時間、その状態のまま維持されるので、このように電圧の印加が為されない状態でそのまま保持しておくことができる。このとき、電圧が印加されていなければ、多少光が当たる環境にあっても、いわゆる潜像に影響を与えることは無い。ただし、メモリー性光導電層を用いた場合には、外光の影響を受けやすくなるため、若干の注意が必要となる。
【0089】
本例では、図5のチャートに示されるように、本工程の操作(動作)は極短い時間しか行われていない。勿論、本発明においては、本工程無しにすぐに表示確定工程の操作(動作)に移っても構わない。
なお、本発明において、電圧を印加しないで保持することを敢えて「保持工程」と称しているが、当該工程のために何らかの操作を為す趣旨ではなく、そのまま放置することを意図するものである。ただし、当該工程を含むことにより、液晶デバイス1を駆動装置2から取り外して、単体の状態で持ち運び、流通、保管、頒布、販売することができ、画像が表示されない状態でこれら行為を行いたい場合に極めて有効である。
【0090】
例えば、個人情報が記入された当該液晶デバイスを各種窓口で手渡したり、郵送したりする際には、当該保持工程の状態でこれら行為を実施し、当該個人情報を実際に利用するべき者に渡った段階でその者が、表示確定工程の操作(表示確定動作)を行う等の利用態様が考えられる。個人情報をいわゆる潜像として書き込んだ者とそれをを実際に利用するべき者との間で、第三者の目に触れることがあっても、液晶デバイスには画像がいわゆる潜像としてのみ記録され、可視像として表示されていないので、当該個人情報が漏洩することを防止することができる。
【0091】
(表示確定工程)
表示確定工程(動作)では、書き込み工程(動作)において光が照射された領域がフォーカルコニック状態に変化する程度の電圧(表示確定電圧)を電極5−電極6間に印加する。
【0092】
本工程では、図5のチャートに示されるように、いずれの領域も同じようにパルス電圧(表示確定電圧)が印加され(同チャートの印加電圧の欄参照)、光は照射されない(同チャートの照射光量の欄参照)。このとき、液晶デバイス1の表示画像は、書き込み光の照射部のみが透過(黒表示)状態(液晶がフォーカルコニック状態)になる(同チャートの表示画像の欄参照)。
【0093】
図6(b)に示される状態にあった液晶デバイス1は、本工程の操作により、書き込み光が照射された部位のみコレステリック液晶12がフォーカルコニックの透過状態(黒表示)に変化して、有機感光層10に記録された潜像が顕像化されて表示画像が形成される。
【0094】
図4を参照しながら説明すると、本工程(動作)で印加する表示確定電圧は、光を照射した領域ONと、非照射の領域OFFとで、なるべくコントラストが大きくなるような電圧を印加することが望まれるので、両者の反射率差が最も大きくなる(Rx)ような電圧Vdを印加することが望ましい。実際に印加するのに適した表示確定電圧の大きさは、液晶デバイスの層構成や各層の組成、さらには書き込み工程の条件などにより異なってくるので、印加電圧を振って実際に反射率を測定し、図4と同様のグラフを作成して求めればよい。
以上のようにして、本発明の駆動方法乃至駆動装置により表示画像を形成することができる。
【0095】
以上、好ましい実施形態を挙げて本発明の液晶デバイスを詳細に説明したが、本発明は以上の実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では液晶層が1層のみからなる単色画像形成用の液晶デバイスを例に挙げて説明したが、液晶層やその他の層を必要に応じて複数層として多色画像が形成できる液晶デバイスとしてもよいし、このとき少なくともブルー、グリーンおよびレッドの三原色を表示し得る液晶層を積層することでフルカラー画像が形成できる液晶デバイスとしてもよい。
【0096】
その他、当業者は、従来公知の知見に従い、本発明の積層体、本発明の製造方法あるいは本発明の液晶デバイスを適宜改変することができる。かかる改変によってもなお本発明の液晶デバイスの駆動方法あるいは本発明の液晶デバイスの駆動装置の構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。
【実施例】
【0097】
以下、本発明を、実施例を挙げることで、より具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
図1に記載の液晶デバイス1(ただし、着色層9と有機感光層10との間に隔離層が配された物)を試作し、本発明の液晶デバイスの駆動方法乃至駆動装置を利用して、画像の書き込みを行った。図1を参照しつつ説明する。
【0098】
(液晶デバイスの作製)
電極6となるITO膜(厚さ800Å)が形成されたポリエチレンテレフタレート(PET)基板(東レハイビーム、透明基板、厚さ125μm)を基板4とし、そのITO膜の表面に、電荷発生層15を形成した。具体的には、まず、イオン化ポテンシャル5.31eVのヒドロキシガリウムフタロシアニン(X線回折スペクトルのブラック角(2θ±0.2°)が、7.0°、7.5°、10.5°、11.7°、12.7°、17.3°、18.1°、24.5°、26.2°および27.1°に強い回折ピークを有するもの)を電荷発生材料とし、バインダー樹脂としてポリビニルブチラールを用いて、これらの質量比率は1:1とし、ブタノールで分散させ、電荷発生材料の濃度が2質量%の分散液(塗布液A)を調製した。これをスピンコート法により基板4に塗布し、乾燥させ、電荷発生層15(膜厚0.2μm)を形成した。この電荷発生層15の660nmにおける光吸収率は45%であった。
【0099】
次に、電荷発生層15の上に電荷輸送層14を形成した。具体的には、まず、イオン化ポテンシャル5.39eVの電荷輸送材料N,N−ビス(3,4−ジメチルフェニル)ビスフェニル−4−アミン(CTM A)と、バインダー樹脂としてポリカーボネート{ビスフェノール−Z、(ポリ(4,4’−シクロヘキシリデンジフェニレンカーボネート))}とを、同質量の割合で混合した後、これをモノクロロベンゼンに溶解させ電荷輸送材料の濃度が10質量%の溶液(塗布液B)を調製した。これをアプリケーター(Gap100μm)で塗布し、乾燥することによって、電荷発生層15の上に7μm厚の電荷輸送層14を形成した。
【0100】
更に、塗布液Aに対して固形分濃度を4質量%にした以外は同様の組成の塗布液Cを調製し、これを用いて、スピンコート法により電荷輸送層14の上に塗布し、乾燥させ、電荷発生層13(膜厚0.35μm)を形成した。この電荷発生層13の660nmにおける光吸収率は、80%であった。
以上のようにして、有機感光層(光導電層)10を形成した。
【0101】
有機感光層の上に隔離層(不図示)として、スピンコートにより、ポリビニルアルコール3質量%の水溶液を塗布し、ポリビニルアルコール膜(膜厚1.0μm)を形成した。さらに該隔離層の上にブラックポリイミドBKR−105(日本化薬製)を塗布し、厚さ1μmの遮光膜(着色層9)を形成した
以上のようにしてユニットAを作製した。
得られたユニットAの上に、ラミネート層8を介して、カプセル液晶素子による液晶層7、電極5および基板3からなるユニットBを以下のようにして形成した。
【0102】
正の誘電率異方性を有するネマチック液晶E8(メルク社製)74.8質量部に、カイラル剤CB15(BDH社製)21質量部とカイラル剤R1011(メルク社製)4.2質量部とを加熱溶解し、その後室温に戻して、ブルーグリーンの色光を選択反射するカイラルネマチック液晶を得た。
【0103】
このブルーグリーンカイラルネマチック液晶10質量部に、キシレンジイソシアネート3モルとトリメチロールプロパン1モルとの付加物(武田薬品工業製D−110N)3質量部と酢酸エチル100質量部とを加えて均一溶液とし,油相となる液を調製した。
一方、ポリビニルアルコール(クラレ社製ポバール217EE)10質量部を、熱したイオン交換水1000質量部に加えて攪拌後、放置冷却することによって,水相となる液を調製した。
【0104】
次に、スライダックで30V交流を与えた家庭用ミキサーによって、前記油相10質量部を前記水相100質量部中に1分間乳化分散して、水相中に油相液滴が分散した水中油エマルジョンを調製した。この水中油エマルジョンを60℃のウォーターバスで加熱しながら2時間攪拌し、界面重合を完了させて、液晶マイクロカプセルを形成した。得られた液晶マイクロカプセルの平均粒径(個数基準)をレーザー粒度分布計によって測定したところ、約12μmと見積もられた。
【0105】
得られた液晶マイクロカプセル分散液を、網目38μmのステンレスメッシュを通して濾過後一昼夜放置した後、乳白色の上澄みを取り除くことにより、液晶マイクロカプセルからなる固形成分約40質量%のスラリーを得た。
得られたスラリーに、その固形成分の質量に対して2/3となる量のポリビニルアルコールを含むポリビニルアルコール10質量%の溶液を加えることにより塗布液Dを調製した。
【0106】
電極5となるITO膜(厚さ800Å)が形成されたPET基板(東レハイビーム、透明基板、板厚125μm)を基板3とし、そのITO膜の表面に上記塗布液Dを#44のワイヤーバーで塗布することにより液晶層7(膜厚40μm)を形成し、ユニットBを作製した。
【0107】
既述のユニットAにおける前記遮光膜面側の表面に、完全水性型ドライラミネート接着剤であるディックドライWS−321A/LD−55(大日本インキ化学工業)を塗布乾燥させて厚さ4μmのラミネート層8を形成した。
ユニットAのラミネート層8側の面と、ユニットBの液晶層7とが向かい合って接するように、これら両ユニットを密着させて70℃でラミネートを行い、実施例に供するモノクロ表示の液晶デバイス1を得た。
得られた液晶デバイス1の暗時における下閾値電圧Vpf(F状態→H状態)は150V、同様に上閾値電圧Vfh(P状態→F状態)は550V、飽和反射率に達したことが確認された電圧VR100は600Vであった(図8参照)。
【0108】
(液晶デバイスの駆動装置へのセット)
得られた液晶デバイス1の両電極層5,6にリード線を付けた市販のミノ虫クリップ(接触端子19)を接続し、リード線の他端を、電源装置17としての高速・高電圧アンプ(松定プレシジョン社製,HEOPT−1B60型)に接続した。該高速・高電圧アンプは、周波数100Hz、±0〜1000Vの矩形波のバイアス電圧を印加することができるようになっている。
【0109】
一方、光源として発光ダイオード光源(CCS社製,HLV−27−NR−R型)を用い、これをリニアステージ(オリエンタルモータ社製,EZlimo EZHS型)に取り付けて、液晶デバイス1の有機感光層10側の面を走査できるように構成して、光照射装置18を作製した。当該光照射装置18により、ピーク波長625nm、バンド半値幅20nm、照射強度1.0mW/cm2のRed光を照射することができる。
【0110】
また、制御回路16として任意波形発生器(NF回路設計ブロック社EZ1960型)を用い、パーソナルコンピュータからの画像データに基づいて電源装置17および光照射装置18の動作を適宜制御できるように配線した。
以上のようにして、液晶デバイス1がセットされた駆動装置2を得た。
【0111】
(書き込み試験)
電源装置17により、直流700V/10Hzの書き込み電圧を700msec印加しながら、その間光照射装置18により液晶デバイス1に像様に光を照射して書き込みを行った(書き込み工程)。光量は、光の照射部で120μW、非照射部で0μWとした。
光照射終了後、電圧を印加しない状態(0V)で100msec保持し(保持工程)、電源装置17により、140V/10Hzの表示確定電圧を200ms間印加して、表示画像の状態を確定させた(表示確定工程)。
【0112】
液晶デバイス1の表示面(液晶層7側の面)の書き込み光を照射した部位(明部)および照射しなかった部位(暗部)について、積分球形分光計(コニカミノルタ社製、CM2002型)を用いてその反射率を測定し、明暗コントラスト比を求めた。ここで反射率とは、JIS Z 8772の拡散照明垂直受光方式に従ってSCE(正反射光除去)条件で測定した反射強度を、完全拡散面を100%として規格化したものである。
【0113】
明暗コントラスト比とは、コレステリック液晶の干渉反射ピーク波長での反射率について、明時反射率を暗時反射率で除したものである。明暗コントラスト比の値が高いほど、コントラストのくっきりとした明瞭な画像が形成できることを意味する。
その結果、明暗コントラスト比は2.4であり、実質的に初期化のための操作が無い本実施例の駆動方法により、簡便な操作かつ低いエネルギー消費量で明暗コントラスト比の高い良好な表示画像を得ることができた。
【0114】
[比較例1]
実施例1と同じ液晶デバイスを実施例1と同様に駆動装置2にセットした。次に、以下のようにして下閾値駆動による比較例の書き込み試験を実施した。
(書き込み試験)
電源装置17により、直流700V/10Hzの書き込み電圧を700msec印加しながら、その間光照射装置18により液晶デバイス1に全面に光を照射して初期化の操作を行った(明リセット)。光量は、全面120μWとした。
【0115】
光照射終了後、電圧を印加しない状態(0V)で100msec保持し(保持工程)、電源装置17により120V/10Hzの駆動電圧を200ms間印加しながら、その間光照射装置18により液晶デバイス1に像様に光を照射して書き込みを行った。光量は、光の照射部で120μW、非照射部で0μWとした。
【0116】
その結果、明暗コントラスト比は1.3であり、初期化のための操作を行ったにもかかわらず、明暗コントラスト比を確保することができない、ぼやけたような表示画像であった。これは、図10のグラフに示されるように、下閾値でのVR特性にズレが無いためであると思われる。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】本発明の駆動方法を適用したシステムの例示的一態様である実施形態の概略構成図である。
【図2】本発明の液晶デバイスの駆動装置の例を示す斜視図である。
【図3】本発明の液晶デバイスの駆動装置の他の一例を示す斜視図である。
【図4】明/暗両リセットの後、下閾値駆動による書き込み操作に相当する電圧を印加した場合における、印加電圧と表示画像の反射率との関係の一例を示すグラフである。
【図5】黒表示(低反射率)領域と白表示(高反射率)領域のそれぞれについて、各工程における電圧の印加、光の照射、および、表示画像の明暗状態を経時で表すチャートである。
【図6】本発明の駆動方法を説明するための各工程の状態を表す説明図であり、(a)は本発明の駆動方法による書き込み前の状態を表し、(b)は書き込み工程の操作が為された後の状態を表し、(c)は表示確定工程の操作が為された後の状態を表すものである。
【図7】コレステリック液晶の分子配向と光学特性の関係を示す模式説明図であり、(A)はプレーナ相、(B)はフォーカルコニック相、(C)ホメオトロピック相の各相におけるものである。
【図8】コレステリック液晶のスイッチング挙動を説明するためのグラフである。
【図9】従来の液晶デバイスの駆動方法により走査系の露光装置で画像の書き込みを行っている様子を模式的に表す模式図である。
【図10】明リセット後の下閾値駆動による書き込み操作に相当する電圧を印加した場合における、印加電圧と表示画像の反射率との関係の一例を示すグラフである。
【符号の説明】
【0118】
1:液晶デバイス、 2:駆動装置、 3,4:基板、 5,6:電極(電極層)、 7:液晶層、 8:ラミネート層、 9:着色層、 10:有機感光層(光導電層)、 11:導線、 12:コレステリック液晶、 13,15:電荷発生層、 14:電荷輸送層、 16:制御回路、 17:電源装置、 18:光照射装置、 19:接触端子、 51:光源、 52:コリメータレンズ、 53:ポリゴンミラー、 54:ポリゴンモーター、 55:レンズ、 56:折り返し用ミラー、 57:レーザビーム、 58:ビーム調整ミラー、 59:同期信号発生器、 62:発光ダイオードアレイ、 63:自己結像型ロッドレンズアレイ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の電極層の間に、少なくとも、コレステリック液晶からなり該液晶の状態に応じて光を反射または透過する液晶層と、光を吸収して該吸収した光の光量に応じて電気特性が変化する機能を有する光導電層と、が積層されてなる液晶デバイスに画像を記録するための液晶デバイスの駆動方法であって、
前記液晶層が非露光時にホメオトロピック状態に変化する閾値電圧を超える電圧を前記両電極層間に印加しつつ、前記液晶デバイスの書き込み領域に対して像様に光を照射する書き込み工程と、
書き込み工程において光が照射された領域がフォーカルコニック状態に変化する程度の電圧を前記両電極層間に印加する表示確定工程と、
の各工程の操作を順次行うことを特徴とする液晶デバイスの駆動方法。
【請求項2】
書き込み工程と表示確定工程との間に、前記両電極層間に電圧を印加しないで保持する保持工程が含まれることを特徴とする請求項1に記載の液晶デバイスの駆動方法。
【請求項3】
書き込み工程における光の照射が、前記液晶デバイスの書き込み領域全面を二次元的に走査して行うことを特徴とする請求項1に記載の液晶デバイスの駆動方法。
【請求項4】
一対の電極層の間に、少なくとも、コレステリック液晶からなり該液晶の状態に応じて光を反射または透過する液晶層と、光を吸収して該吸収した光の光量に応じて電気特性が変化する機能を有する光導電層と、が積層されてなる液晶デバイスに画像を記録するための液晶デバイスの駆動装置であって、
前記液晶デバイスに像様に光を照射し得る光照射手段と、前記両電極層間に電圧を印加し得る電圧印加手段とを含み、
前記電圧印加手段によって、前記液晶層が非露光時にホメオトロピック状態に変化する閾値電圧を超える電圧を前記両電極層間に印加しつつ、前記光照射手段によって、前記液晶デバイスの書き込み領域に対して像様に光を照射する書き込み動作と、
前記電圧印加手段によって、書き込み動作により光が照射された領域がフォーカルコニック状態に変化する程度の電圧を前記両電極層間に印加する表示確定動作と、
が順次為されるように構成されてなることを特徴とする液晶デバイスの駆動装置。
【請求項5】
書き込み動作が為された後の液晶デバイスを、表示確定動作が為される前に、装置から着脱可能に構成されてなることを特徴とする請求項1に記載の液晶デバイスの駆動方法。
【請求項6】
前記光照射手段が、前記液晶デバイスの書き込み領域全面を二次元的に走査することで光を照射する手段であることを特徴とする請求項4に記載の液晶デバイスの駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−237211(P2009−237211A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−82593(P2008−82593)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成16年度独立行政法人科学技術振興機構革新技術開発研究事業、産業技術力強化法第19条の規定を受けるもの)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】