説明

液晶プロジェクタ

【課題】強誘電性液晶の高速応答性を最大限発揮した液晶プロジェクタを提供する。
【解決手段】携帯型液晶プロジェクタ100において、一対の基板の間に強誘電性液晶を挟持する液晶パネル5と、画素毎に設けられたアクティブ素子がオン状態のときに電荷を蓄積し、オフ状態のときに電荷を画素電極に供給するコンデンサとを備える。また、フィールドシーケンシャル駆動手段は、1フレームあたりRGBの各色に対応する六つのサブフレームの各々において、アクティブ素子を行単位で駆動し、各行の各画素に設けられたコンデンサに対して強誘電性液晶を所望の配向状態とする電荷を充電するのに必要な時間だけアクティブ素子を駆動する制御を第1行から第n行まで順次行う。発光制御手段は、各サブフレームにおいて、最終行の強誘電性液晶の応答時間が経過した後にLED光源部6を所定期間対応する色で発光させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、強誘電性液晶を用いた液晶プロジェクタに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶プロジェクタ等を構成する液晶表示装置は、2枚の電極で挟んだ液晶に電圧をかけて液晶の配列方向を変えることで、光を通過又は遮断して画像表示を行う。
ところが、現在実用化されている液晶表示装置の大半に使用されているネマティック液晶は応答速度が比較的遅く、高フレームレート化に限界がある。例えば、フィールドシーケンシャル方式では、カラーフィルタ方式のように1画素をRGBのサブ画素に分割する必要がなく、また、光量の減衰もないため、高精細・高輝度表示を実現することができるが、1フレームをRGBのサブフレームに時分割するため、ネマティック液晶ではフィールドシーケンシャル方式での高フレームレート化に十分に対応することができず、所謂カラーブレークが生じ易くなって画質の低下を招くといった問題がある。
そのため、高画質の動画像表示を行うためには、フレームレートが高いことが望ましい。例えば、フレームレートが60Hz(画面切り換え時間16.7ミリ秒)のテレビジョン方式において、1フレームをRGBの3つのサブフレームに時分割するフィールドシーケンシャル方式を適用するためには、液晶材料が180Hzでのサブフレーム切り換えに対応する必要がある。
【0003】
一方、高速応答性を有する液晶材料として強誘電性液晶が注目を集めている。強誘電液晶は自発分極を持ち、その応答速度は10〜100マイクロ秒と極めて速い。強誘電性液晶を液晶材料として用いる液晶表示装置は、例えば、特許文献1や特許文献2、特許文献3に開示されている。
【特許文献1】特許第3535769号
【特許文献2】特開2001−235766号公報
【特許文献3】特開2003−091019号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、強誘電性液晶は層構造の均一安定保持が難しいため、大画面ディスプレイに採用することが困難であり、これまで、強誘電性液晶の高速応答性が最大限生かされた製品の開発がなされてこなかった。
【0005】
本発明の課題は、強誘電性液晶の高速応答性を最大限発揮した液晶プロジェクタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、液晶プロジェクタにおいて、一対の基板の間に強誘電性液晶を挟持し、複数の画素がマトリクス状に配列されて成る液晶パネルと、
少なくとも三つの異なる波長の光を一色ずつ切り換えて発光するLED光源部と、
互いに直交するn行の走査線及びm列の信号線と、
前記走査線と前記信号線とに接続され、前記画素毎に対応して設けられたアクティブ素子と、
前記アクティブ素子に接続される画素電極と、
前記画素電極に対向する対向電極と、
前記アクティブ素子に接続され、前記アクティブ素子がオン状態のときに電荷を蓄積し、前記アクティブ素子がオフ状態のときに蓄積した電荷を前記画素電極に供給する補助容量素子と、
前記LED光源部の各色に対応する、1フレームあたり少なくとも三つのサブフレームの各々において、前記走査線及び前記信号線に電圧を印加して前記アクティブ素子を行単位で駆動させるフィールドシーケンシャル駆動手段と、
前記LED光源部の発光を制御する発光制御手段と、を備え、
前記フィールドシーケンシャル駆動手段は、
各行の各画素に設けられた前記補助容量素子に対して前記強誘電性液晶を所望の配向状態とする電荷を充電するのに必要な時間だけ、当該各画素の前記アクティブ素子を駆動させる制御を、第1行から第n行まで順次行い、
前記発光制御手段は、
各サブフレームにおいて、前記フィールドシーケンシャル駆動手段による前記アクティブ素子の駆動後、最終行の前記強誘電性液晶の応答時間が経過した後に、所定のデューティ比で、前記LED光源部を対応する色で発光させることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の液晶プロジェクタにおいて携帯可能であることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、液晶プロジェクタにおいて、ペン型の携帯可能な筐体の内部に、
一対の基板の間に強誘電性液晶を挟持し、複数の画素がマトリクス状に配列されて成る液晶パネルと、
少なくとも三つの異なる波長の光を一色ずつ切り換えて発光するLED光源部と、
互いに直交するn行の走査線及びm列の信号線と、
前記走査線と前記信号線とに接続され、前記画素毎に対応して設けられたアクティブ素子と、
前記アクティブ素子に接続される画素電極と、
前記画素電極に対向する対向電極と、
前記アクティブ素子に接続され、前記アクティブ素子がオン状態のときに電荷を蓄積し、前記アクティブ素子がオフ状態のときに蓄積した電荷を前記画素電極に供給する補助容量素子と、
前記LED光源部の各色に対応する、1フレームあたり少なくとも三つのサブフレームの各々において、前記走査線及び前記信号線に電圧を印加して前記アクティブ素子を行単位で駆動させるフィールドシーケンシャル駆動手段と、
前記LED光源部の発光を制御する発光制御手段と、
電源を供給する電源部と、を備え、
前記フィールドシーケンシャル駆動手段は、
各行の各画素に設けられた前記補助容量素子に対して前記強誘電性液晶を所望の配向状態とする電荷を充電するのに必要な時間だけ、当該各画素の前記アクティブ素子を駆動させる制御を、第1行から第n行まで順次行い、
前記発光制御手段は、
各サブフレームにおいて、前記フィールドシーケンシャル駆動手段による前記アクティブ素子の駆動後、最終行の前記強誘電性液晶の応答時間が経過した後に、デューティ比1/12以下で、前記LED光源部を対応する色で発光させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、液晶プロジェクタにおいて、一対の基板の間に強誘電性液晶を挟持し、複数の画素がマトリクス状に配列されて成る液晶パネルと、少なくとも三つの波長、例えばRGBの光を一色ずつ切り換えて発光するLED光源部と、互いに直交するn行の走査線及びm列の信号線と、走査線と信号線とに接続され、画素毎に対応して設けられたアクティブ素子と、アクティブ素子に接続される画素電極と、画素電極に対向する対向電極と、アクティブ素子に接続され、アクティブ素子がオン状態のときに電荷を蓄積し、アクティブ素子がオフ状態のときに蓄積した電荷を画素電極に供給する補助容量素子と、が備わる。また、フィールドシーケンシャル駆動手段により、1フレームあたりLED光源部の各色に対応する少なくとも三つのサブフレームの各々において、走査線及び信号線に電圧を印加してアクティブ素子が行単位で駆動され、発光制御手段により、LED光源部の発光が制御される。さらに、フィールドシーケンシャル駆動手段により、各行の各画素に設けられた補助容量素子に対して強誘電性液晶を所望の配向状態とする電荷を充電するのに必要な時間だけ、当該各画素のアクティブ素子を駆動させる制御が、第1行から第n行まで順次行われ、発光制御手段により、各サブフレームにおいて、フィールドシーケンシャル駆動手段によるアクティブ素子の駆動後、最終行の強誘電性液晶の応答時間が経過した後に、所定のデューティ比で、LED光源部が対応する色で発光される。
すなわち、液晶パネルにおいて、各走査線の1行あたりの走査時間を、液晶の応答と無関係に、補助容量素子に対して強誘電性液晶を所望の配向状態とする電荷を充電するのに要する時間まで短縮することができる。また、液晶パネルは、液晶プロジェクタとして用いられるため、液晶パネルの画面サイズを大きくする必要がない。したがって、フィールドシーケンシャル駆動方式であっても高フレームレートを実現することができ、高精細表示と高フレームレートの両立によって臨場感に溢れる画像表示が可能となる。よって、強誘電性液晶の高速応答性を最大限発揮した液晶プロジェクタを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。本実施形態では、液晶プロジェクタとして、強誘電性液晶を用いた携帯可能な小型の液晶プロジェクタについて説明する。
【0011】
図1は、本実施形態の携帯型液晶プロジェクタの側面断面図であり、図2は、本実施形態の携帯型液晶プロジェクタの要部構成を示すブロック図である。
本実施形態の携帯型液晶プロジェクタ100は、図1及び図2に示すように、筐体1内に、電源部2、映像処理回路3、ヒートシンク4、液晶パネル5、LED光源部6、光源制御回路7、制御部8等を備えて成る。
【0012】
筐体1は、携帯可能なペン型形状を有しており、携帯電話機やパーソナルコンピュータ(PC: Personal Computer)等の外部機器200に接続されることで、これらの外部機器200から画像信号が供給されるようになっている。筐体1の先端(前面)には、投影レンズ10が嵌装された開口が設けられており、この投影レンズ10を介して液晶パネル5からの光を外部のスクリーン等に照射して、画像を表示する。
【0013】
電源部2は、例えば、一次電池や二次電池を電源として、携帯型液晶プロジェクタ100の各部に電力を供給する。
映像処理回路3は、筐体1に接続された外部機器200から供給される画像信号に各種映像処理を行って、液晶パネル5の走査線駆動部501及び信号線駆動部502に出力する。
ヒートシンク4は、複数の放熱フィンを持ち、液晶パネル5やLED光源部6によって筐体1内で発生した熱を放出する。
【0014】
液晶パネル5は、アクティブマトリクス駆動方式による透過型の液晶パネルであり、図3に示すように、所定の間隔を隔てて配設された一対の基板51、52の間に、強誘電性液晶50を挟持して成る。これらの基板51、52は偏光軸が直交した2枚の偏光板53、53で挟まれ、背面側にはLED(Light Emitting Diode)光源部6が配設されている。基板51の上面には、互いに直交するn行の走査線X(X〜X)及びm列の信号線Y(Y〜Y)の交点に、m×n個の画素55…がマトリクス状に配設されている。
各画素55には、走査線X及び信号線Yと接続されたアクティブ素子としての薄膜トランジスタ(TFT: Thin Film Transistor)56が設けられている。各画素55のTFT56には画素電極57が接続され、画素電極57に対向して、基板52に対向電極58が形成されている。画素電極57及び対向電極58の対向する面にはそれぞれ配向膜54、54が形成されている。
m×n個の画素55は行順次で走査される。すなわち、走査線駆動部501は、各走査線X〜Xに対して順に電圧を印加し、当該走査線Xの走査に同期して、信号線駆動部502が、各信号線Y〜Yに画像信号に応じた電圧を印加する。これにより、電圧が印加された走査線Xと信号線Yの交点にある画素55のTFT56がオンとなって画素電極57に電圧が印加され、その画素電極57と対向電極58との間に挟持されている液晶の配列方向が変化して、配向膜54、54と偏光板53、53とともに、LED光源部6から照射される光を画素単位で通過或いは遮断する。
【0015】
この液晶パネル5は、V字型の光学応答性を有する強誘電性液晶(FLC: Ferroelectric Liquid Crystal)50を使用している。強誘電性液晶は、自発分極を持ち、LED光源部6からの光を遮断して暗表示を行う第1の状態と、光を透過させて明表示を行う第2の状態及び第3の状態と、を形成するものである。暗表示を行う第1の状態は電圧無印加時に形成される。また、明表示を行う第2の状態はある閾値以上の正極性の電圧を印可することにより形成され、明表示を行う第3の状態は、ある閾値以上の負極性の電圧を印加することにより形成される。
図4に、強誘電性液晶における印加電圧、電流、透過光量の関係を示す。図4に示すように、液晶パネル5に印加する電圧(図4では、三角波電圧を印加)を徐々に変化させていくと、印加電圧が閾値電位に達したところで、強誘電性液晶の持つ自発分極による液晶分子の反転動作に伴い、分極反転電流Psが流れる。このとき、印加電圧の極性に応じて第2の状態又は第3の状態が形成され(液晶の応答)、透過光量が変化する。このように、強誘電性液晶50は電圧の印加に応じて自発分極によるスイッチングを行うため、非常に速い応答性を有しており、高い周波数での駆動に対応することができる。
また、この強誘電性液晶の電気光学特性例を図5に示す。図5において横軸は印加電圧、縦軸は透過光量であり、印加電圧に対して透過光量がV字型に変化している。つまり、印加電圧の値によって、第2の状態及び第3の状態における液晶分子の傾きを調整して、透過光量を制御することができる。すなわち、光学応答性がV字型を示す強誘電性液晶50を液晶材料とすることにより、高速駆動と電圧値に比例した階調表現とが可能となる。
【0016】
各画素55は、図6の等価回路に示すように、走査線X及び信号線Yによってオン/オフされるアクティブ素子としてのTFT56、液晶容量CLCを形成する画素電極57及び対向電極58、補助容量Cを形成する補助容量素子としてのコンデンサ59、液晶の抵抗RLCを備え、液晶容量CLCと補助容量Cとは並列に接続されている。
補助容量素子としてのコンデンサ59は、TFT56に接続されており、対応する走査線Xへの正極性又は負極性の電圧印加によってそのTFT56がオン状態とされている間に電荷を蓄積する。コンデンサ59に蓄積された電荷は、次の走査線Xの走査に移行してTFT56がオフ状態とされている間に画素電極57に供給される。画素電極57と対向電極58とに挟持された強誘電性液晶50は、TFT56がオフ状態とされた後に、コンデンサ59による画素電極57への電荷の供給によって発生する分極反転電流Psを内部消費しながら反転動作を開始することとなり、コンデンサ59に充電された電圧の極性及び電圧値に応じた反転状態で停止して、光を透過させる第2の状態又は第3の状態を形成する。
すなわち、強誘電性液晶50は、対応する走査線Xが電圧無印加状態となった後であっても、TFT56のオン時にコンデンサ59に蓄積された補助容量Cによって反転動作を行う。したがって、TFT56をオンとして強誘電性液晶50の応答(配列方向の変化)に必要な分の電荷をコンデンサ56に充電すれば、液晶分子の応答が完了するまで走査線Xを駆動し続けることなく、その走査線Xの駆動を終了して次の走査線Xの駆動に移行することができ、第1行〜第n行の各走査線Xの走査時間が短縮されることとなる。
【0017】
LED光源部6は、例えば、RGBの各色光を個別に発光する高輝度LED(Light Emitting Diode)であり、数ミリ秒以下の短い期間でのパルス発光が可能である。LED光源部6は、後述する発光制御プログラム84bの実行において、光源制御回路7による駆動により、各サブフレームSFにおいてRGBの光を一色ずつ切り換えてパルス発光する。
【0018】
制御部8は、例えば、CPU(Central Processing Unit)81、CPU81のワークエリアとして用いられるRAM(Random Access Memory)82等の揮発性メモリ、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)83、ROM(Read Only Memory)84等の不揮発性メモリ等を備えて構成される。
【0019】
CPU81は、各部から入力される入力信号に応じて、ROM84に格納された各種プログラムを実行するとともに、実行にかかるプログラムに基づいて各部に出力信号を出力することにより、携帯型液晶プロジェクタ100の動作全般を統括制御する。
【0020】
ROM84は、プログラム格納エリアに、フィールドシーケンシャル駆動プログラム84a、発光制御プログラム84b等を格納している。
【0021】
フィールドシーケンシャル駆動プログラム84aは、例えば、CPU81に、1フレームFあたりRGBの各色に対応する少なくとも3つのサブフレームSFの各々において、走査線X及び信号線Yに電圧を印加してTFT56を行単位で駆動させる制御を、第1行から第n行まで順次行う機能を実現させるためのプログラムである。
CPU81は、かかるフィールドシーケンシャル駆動プログラム84aを実行することにより、フィールドシーケンシャル駆動手段として機能する。
【0022】
発光制御プログラム84bは、例えば、CPU81に、各サブフレームSFにおいて、フィールドシーケンシャル駆動プログラム84aの実行によるTFT56の駆動後、最終行の強誘電性液晶50の応答時間が経過した後に、所定のデューティ比で、LED光源部6を対応する色で発光させる機能を実現させるためのプログラムである。
CPU81は、かかる発光制御プログラム84bを実行することにより、発光制御手段として機能する。
【0023】
ここで、上述のフィールドシーケンシャル駆動プログラム84a及び発光制御プログラム84bの実行により、本実施形態の携帯型液晶プロジェクタ100において行われるフィールドシーケンシャル駆動処理について具体的に説明する。
【0024】
本実施形態のフィールドシーケンシャル駆動は、1画面表示分の1フレームFを6つのサブフレームSFに分割している。各サブフレームSFは、RGBの各色に対応付けられており、サブフレームSFの各々において行順次で画素55を走査して、最終行(第n行)の走査完了後に、LED光源部6からそのサブフレームSFに対応する色(R/G/B)の光を所定のデューティ比でパルス発光させ、その色成分のみの画像(R画像/G画像/B画像)を表示する。
【0025】
また、本実施形態のフィールドシーケンシャル駆動では、強誘電性液晶50のV字型特性を利用して、RGB各色に対応する各サブフレームをプラスとマイナスの両極性の電圧で駆動している。
例えば、印加する電圧の極性を3サブフレーム単位で反転する場合、図7に示すように、1つ目のサブフレームSFにおいて正極性の電圧印加によりR画像を形成し(「R+」)、2つ目のサブフレームSFにおいて正極性の電圧印加によりG画像を形成し(「G+」)、3つ目のサブフレームSFにおいて正極性の電圧印加によりB画像を形成し(「B+」)、4つ目のサブフレームSFにおいて負極性の電圧印加によりR画像を形成し(「R−」)、5つ目のサブフレームSFにおいて負極性の電圧印加によりG画像を形成し(「G−」)、6つ目のサブフレームSFにおいて負極性の電圧印加によりB画像を形成する(「B−」)。このように、所定の周期で電圧の極性を反転することにより、長時間に亘って片寄った電荷が液晶に負荷されることが無くなり、液晶の劣化による焼き付き等を防止することができる。
なお、RGBの光の発光順序や、駆動電圧の極性の反転周期は任意であり、正極性の電圧が印加されるサブフィールド数と負極性の電圧が印加されるサブフィールド数とが同数となるように駆動されれば良い。例えば、第1サブフレームから順に、正極性でのR画像(「R+」)、負極性でのG画像(「G−」)、正極性でのB画像(「B+」)、負極性でのR画像(「R−」)、正極性でのG画像(「G+」)、負極性でのB画像(「B−」)を表示する等、サブフレーム単位で交互に正極性と負極性の電圧で駆動することとしても良い。また、1フレームFの分割数も少なくとも3つであれば良く、任意に設定することができる。
【0026】
また、上述したように、液晶パネル5の各画素55には、画素電極57に電荷を供給する補助容量素子としてのコンデンサ59が設けられている。そのため、各サブフレームSFにおいて、各画素55のコンデンサ59に、その画素55の液晶の配列方向の変化(第2の状態と第3の状態との切り換え)に必要な分の電荷を充電すれば、各行の画素55の液晶分子が所望の配列方向に変化するまで、対応する走査線Xを駆動し続けることなく次の走査線Xの走査に移行することができる。すなわち、第1行〜第n行の各走査線Xについて、1行あたりの走査時間が、コンデンサ59に対して液晶の応答に必要な分の画素駆動電圧を充電するのに要する時間まで短縮されることとなる。そして、LED光源部6を発光させる際に、最終行の画素55の液晶が応答するのを待つだけで良い。
【0027】
図8は、1サブフレームSFにおける走査、液晶の応答、LED発光のタイミングを示すタイミングチャートである。図8において、t1は第1行〜第n行までの走査に必要な時間、t2は第n行の液晶の応答時間、t3は全画素55の液晶がサブフレームSFの画像に対応した配列状態となっている時間、t4はLED光源部6の発光時間(t4≦t3)であり、1サブフレームSF全体の走査時間tsf=t1+t2+t3である。
図8のタイミングチャートに示すように、1サブフレームSFのt1に、画素55が第1行から第n行まで行単位で順に走査される。各行の強誘電性液晶50は、コンデンサ59から画素電極57に供給される電荷によって配列方向の変化を開始し、コンデンサ59と画素電極57が同電位となった状態で停止して、光を透過させる第2の状態又は第3の状態の何れかを形成する。そして、第1行から第n行までの全走査線Xの走査終了後、のt2において第n行の液晶が応答すると、m×n個の全画素55がそのサブフレームSFの画像に対応する配列状態に配列されたこととなる。この状態のt3において、t4の間だけそのサブフレームに対応する色の光がLED光源部6から発光される。LED光源部の発光時間t4は液晶の応答時間に関係なく短く設定でき、また次に同色のサブフレーム表示が巡ってくるまでの時間は非発光となる。このため各色のLED発光デューティ比を、所定の小さな値に設定することが容易となる。
各行は、液晶の応答とは無関係に、コンデンサ59に必要な電荷を充電するのにかかる時間だけ駆動されるため、1行あたり、例えば1マイクロ秒以下で走査可能である。したがって、例えば走査線数が1080行の場合、第1行から第n行までの走査に要する時間t1は1ミリ秒程度となる。また、t2は強誘電性液晶50の応答時間(10〜100マイクロ秒)であり、t3とt4とを短時間に設定すれば、1サブフレームSF全体の走査時間tsfが、非常に短い時間となる。
【0028】
一方、上述の液晶パネル5は小型の液晶プロジェクタ100に備わるため、液晶パネル5の画面サイズを大きくする必要が無い。
これにより、1フレームFを複数のサブフレームSFに時分割するフィールドシーケンシャル駆動方式であっても、高フレームレートで駆動できるため、カラーブレークの発生を防止して、フィールドシーケンシャル駆動方式と強誘電性液晶の双方の利点を十分に生かした高精細表示が可能となる。
【0029】
また、LED光源部6の発光時間t4は、デューティ比が所定値となる値に設定される。
図9に、各デューティ比におけるLEDの電流値の測定値と理論値との関係を示す。図9は、第1LEDを、周期6ms、パルス幅2ms(デューティ比:1/3)、電流値200mAで発光させた場合に、この第1LEDを基準として、第2LEDを同じ周期6msで、デューティ比と電流値とを可変に設定しながら発光させ、第1LEDの見た目の明るさと第2LEDの見た目の明るさとが同じとなった場合における第1LEDのディーティ比に対する第2LEDのデューティ比を横軸に、電流値を縦軸にプロットしたものである。図9において、理論曲線は、発光輝度×時間が一定となる曲線である(ジャンクション温度:25℃)。
図9に示すように、第1LEDのデューティ比1/3に対する第2LEDのデューティ比が1/8〜1/4となる区間で、理論曲線上の理論値よりも少ない電流値で、理論値と同じ明るさを得ることができる。
また、第1LEDを、周期12ms、パルス幅4ms(デューティ比:1/3)で発光させ、第2LEDを、同じ周期12msで、デューティ比と電流値とを可変としながら発光させた場合の測定結果でも、同様の結果が得られる。
したがって、LED光源部6の発光時間t4を、デューティ比1/3に対する相対デューティ比が1/8〜1/4(すなわち、デューティ比:1/24〜1/12)となる値に設定して、LED光源部6を所定のデューティ比(例えば、1/24〜1/12)で発光させることにより、走査時間の短縮と同時に、低電力化を図ることができる。
【0030】
また、LEDは、温度が上昇するほど発光効率が低下する特性を有している。そのため、LED光源部6を小さいデューティ比(例えば、1/24〜1/12)で発光させて非発光時間を長くすると、非発光時間におけるLEDの放熱量が増え、温度上昇に起因する発光効率の低下を防止することができる。したがって、LED光源部6を小さいデューティ比で発光させることにより、更なる低電力化を図ることができる。
さらに、電源部2が電池を電源とする場合、発光用の大容量コンデンサ59をLED光源部6に併設することにより、比較的ゆっくりとした充電と瞬時の放電(パルス発光)をサブフレーム毎に繰り返す、電源効率の良いサイクルで駆動を行うことができる。
【0031】
以上説明した本実施形態における携帯型液晶プロジェクタ(液晶プロジェクタ)100によれば、ペン型の携帯可能な筐体1の内部に、一対の基板の間に強誘電性液晶50を挟持し、複数の画素55がマトリクス状に配列されて成る液晶パネル5と、RGBの光を一色ずつ切り換えて発光するLED光源部6と、互いに直交するn行の走査線X及びm列の信号線Yと、走査線Xと信号線Yとに接続され、画素55毎に対応して設けられたTFT(アクティブ素子)56と、TFT(アクティブ素子)56に接続される画素電極57と、画素電極57に対向する対向電極58と、TFT(アクティブ素子)56に接続され、TFT(アクティブ素子)56がオン状態のときに電荷を蓄積し、TFT(アクティブ素子)56がオフ状態のときに蓄積した電荷を画素電極57に供給するコンデンサ59(補助容量素子)と、が備わる。また、フィールドシーケンシャル駆動プログラム(フィールドシーケンシャル駆動手段)84aにより、1フレームFあたりRGBの各色に対応する少なくとも三つ(例えば、6つ)のサブフレームSFの各々において、走査線X及び信号線Yに電圧を印加してTFT(アクティブ素子)56が行単位で駆動され、発光制御プログラム(発光制御手段)84bにより、LED光源部6の発光が制御される。さらに、フィールドシーケンシャル駆動プログラム(フィールドシーケンシャル駆動手段)84aにより、各行の各画素55に設けられたコンデンサ(補助容量素子)59に対して強誘電性液晶50を所望の配向状態とする電荷を充電するのに必要な時間だけ、当該各画素55のTFT(アクティブ素子)56を駆動させる制御が、第1行から第n行まで順次行われ、発光制御プログラム(発光制御手段)84bにより、各サブフレームSFにおいて、フィールドシーケンシャル駆動プログラム(フィールドシーケンシャル駆動手段)84aによるTFT(アクティブ素子)56の駆動後、最終行の強誘電性液晶50の応答時間が経過した後に、デューティ比1/12以下で、LED光源部6が対応する色で発光される。
すなわち、液晶パネルにおいて、各走査線の1行あたりの走査時間を、液晶の応答と無関係に、補助容量素子に対して強誘電性液晶を所望の配向状態とする電荷を充電するのに要する時間まで短縮することができる。また、液晶パネルは、液晶プロジェクタとして用いられるため、液晶パネルの画面サイズを大きくする必要がない。したがって、フィールドシーケンシャル駆動方式であっても高フレームレートを実現することができ、高精細表示と高フレームレートの両立によって臨場感に溢れる画像表示が可能となる。よって、強誘電性液晶の高速応答性を最大限発揮した液晶プロジェクタを提供することができる。
【0032】
また、本実施形態の携帯型液晶プロジェクタ(液晶プロジェクタ)100は、ペン型の携帯可能な筐体1と、電源を供給する電源部とを備えるため、持ち運びが容易となって使い勝手が良好となる。
【0033】
なお、本発明の範囲は上記実施形態に限られることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の改良並びに設計の変更を行っても良い。
【0034】
例えば、本発明で用いられる液晶パネルは、上記実施形態のように透過型でなくとも良く、反射型の液晶パネルを採用しても良い。
例えば、図10に例示する携帯型液晶プロジェクタ101は、反射型の液晶パネル5aを備えている。なお、図1に示した携帯型液晶プロジェクタ100と同様の構成には、同一の符号を付して説明を省略する。
反射型液晶パネル5aは、LED光源部6と反対側の面に反射板(図示省略)を有し、LED光源部6から照射された光のうち、強誘電性液晶を透過した光を反射させ、再び強誘電性液晶を透過させ投影レンズ10に出力するように構成されている。
かかる反射型の液晶パネル5aを備えた携帯型液晶プロジェクタ101でも、上記実施形態の液晶パネル5を備えた携帯型液晶プロジェクタ100と同様の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本実施形態における携帯型液晶プロジェクタの側面断面図である。
【図2】本実施形態における携帯型液晶プロジェクタの要部構成を示すブロック図である。
【図3】本実施形態の携帯型液晶プロジェクタに備わる液晶パネルの断面図である。
【図4】強誘電性液晶における印加電圧、電流、透過光量の関係を示す図である。
【図5】強誘電性液晶の電気光学特性例である。
【図6】1画素の等価回路の一例である。
【図7】1フレームに含まれる各サブフレームに対応づけられたLED光源の色と駆動電圧の極性を説明する図である。
【図8】1サブフレームにおける走査、液晶の応答、LED発光のタイミングを示すタイミングチャートである。
【図9】各デューティ比におけるLEDの電流値の測定値と理論値との関係を示す図である。
【図10】反射型液晶パネルを用いた携帯型液晶プロジェクタの側面断面図である。
【符号の説明】
【0036】
100 携帯型液晶プロジェクタ(液晶プロジェクタ)
1 筐体
2 電源部
5 液晶パネル
50 強誘電性液晶
51、52 基板
55 画素
56 TFT(アクティブ素子)
57 画素電極
58 対向電極
59 コンデンサ(補助容量素子)
6 LED光源部(光源部)
81 CPU(フィールドシーケンシャル駆動手段、発光制御手段)
84a フィールドシーケンシャル駆動プログラム(フィールドシーケンシャル駆動手段)
84b 発光制御プログラム(発光制御手段)
F フレーム
SF サブフレーム
X 走査線
Y 信号線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の基板の間に強誘電性液晶を挟持し、複数の画素がマトリクス状に配列されて成る液晶パネルと、
少なくとも三つの異なる波長の光を一色ずつ切り換えて発光するLED光源部と、
互いに直交するn行の走査線及びm列の信号線と、
前記走査線と前記信号線とに接続され、前記画素毎に対応して設けられたアクティブ素子と、
前記アクティブ素子に接続される画素電極と、
前記画素電極に対向する対向電極と、
前記アクティブ素子に接続され、前記アクティブ素子がオン状態のときに電荷を蓄積し、前記アクティブ素子がオフ状態のときに蓄積した電荷を前記画素電極に供給する補助容量素子と、
前記LED光源部の各色に対応する、1フレームあたり少なくとも三つのサブフレームの各々において、前記走査線及び前記信号線に電圧を印加して前記アクティブ素子を行単位で駆動させるフィールドシーケンシャル駆動手段と、
前記LED光源部の発光を制御する発光制御手段と、を備え、
前記フィールドシーケンシャル駆動手段は、
各行の各画素に設けられた前記補助容量素子に対して前記強誘電性液晶を所望の配向状態とする電荷を充電するのに必要な時間だけ、当該各画素の前記アクティブ素子を駆動させる制御を、第1行から第n行まで順次行い、
前記発光制御手段は、
各サブフレームにおいて、前記フィールドシーケンシャル駆動手段による前記アクティブ素子の駆動後、最終行の前記強誘電性液晶の応答時間が経過した後に、所定のデューティ比で、前記LED光源部を対応する色で発光させることを特徴とする液晶プロジェクタ。
【請求項2】
請求項1に記載の液晶プロジェクタにおいて、携帯可能であることを特徴とする液晶プロジェクタ。
【請求項3】
ペン型の携帯可能な筐体の内部に、
一対の基板の間に強誘電性液晶を挟持し、複数の画素がマトリクス状に配列されて成る液晶パネルと、
少なくとも三つの異なる波長の光を一色ずつ切り換えて発光するLED光源部と、
互いに直交するn行の走査線及びm列の信号線と、
前記走査線と前記信号線とに接続され、前記画素毎に対応して設けられたアクティブ素子と、
前記アクティブ素子に接続される画素電極と、
前記画素電極に対向する対向電極と、
前記アクティブ素子に接続され、前記アクティブ素子がオン状態のときに電荷を蓄積し、前記アクティブ素子がオフ状態のときに蓄積した電荷を前記画素電極に供給する補助容量素子と、
前記LED光源部の各色に対応する、1フレームあたり少なくとも三つのサブフレームの各々において、前記走査線及び前記信号線に電圧を印加して前記アクティブ素子を行単位で駆動させるフィールドシーケンシャル駆動手段と、
前記LED光源部の発光を制御する発光制御手段と、
電源を供給する電源部と、を備え、
前記フィールドシーケンシャル駆動手段は、
各行の各画素に設けられた前記補助容量素子に対して前記強誘電性液晶を所望の配向状態とする電荷を充電するのに必要な時間だけ、当該各画素の前記アクティブ素子を駆動させる制御を、第1行から第n行まで順次行い、
前記発光制御手段は、
各サブフレームにおいて、前記フィールドシーケンシャル駆動手段による前記アクティブ素子の駆動後、最終行の前記強誘電性液晶の応答時間が経過した後に、デューティ比1/12以下で、前記LED光源部を対応する色で発光させることを特徴とする液晶プロジェクタ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2010−2542(P2010−2542A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−160048(P2008−160048)
【出願日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(505303059)株式会社船井電機新応用技術研究所 (108)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】