説明

液晶ポリエステルの製造方法、液晶ポリエステル組成物、反射板及び発光装置

【課題】白色度が高く、耐熱性に優れる液晶ポリエステルを操作性良く製造しうる方法を提供する。
【解決手段】原料モノマーを重縮合させて、重縮合物を得る。この重縮合物を粒子化して、粒子化物を得る。この粒子化物を固相重合させて、液晶ポリエステルを得る。固相重合に供される粒子化物は、その鉄の含有量が、5重量ppm以下であるようにする。重縮合物の粒子化は、重縮合物と接触する部分の材質が耐酸性の材質である粉砕機を用いて、機械粉砕により行うことが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ポリエステルを製造する方法に関する。また、本発明は、この方法により製造された液晶ポリエステルを用いてなる液晶ポリエステル組成物、この液晶ポリエステル組成物を用いてなる反射板、さらにはこの反射板を用いてなる発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
LED(発光ダイオード)発光装置に使用されている反射板の多くには、加工性や軽量性の観点から、樹脂製のものが使用されている。このようなLED発光装置の製造においては、LED素子の実装工程や封止樹脂の硬化工程、さらにはLEDモジュール組み立て時のハンダ付け工程等で、反射板が高温環境に曝されることがあるため、反射板を構成する樹脂材料には優れた耐熱性が必要とされる。また、反射板を製造するうえで優れた成形性も必要とされるので、当該樹脂材料としては、耐熱性及び成形性に優れる液晶ポリマー、特に液晶ポリエステルが広く検討されている。
【0003】
また、反射板には高い反射率が要求されるため、その材料として用いられる液晶ポリエステルには高い白色度(明度)が要求され、白色度が高い液晶性ポリエステルを製造する方法が検討されている。例えば、特許文献1には、実質的に鉄分を含まない耐熱性材料からなる反応槽を用いて、原料モノマーをアシル化した後、重縮合することにより、液晶ポリエステルの着色の原因となりうる鉄の溶出を抑制して、白色度が高い液晶ポリエステルを製造しうることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−171450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示の方法では、所望の耐熱性を示すまで、液晶ポリエステルの分子量を高めるべく、重縮合温度を上げる必要がある。このため、重縮合槽内の液晶ポリエステルは、高分子量化により溶融粘度が上昇して、重縮合槽から抜き出し難くなり、回収し難くなったり、滞留して別ロットに混入し易くなったりするという操作性の問題が生じうる。また、重縮合温度の上昇により、着色し易くなるという問題も生じうる。そこで、本発明の目的は、白色度が高く、耐熱性に優れる液晶ポリエステルを操作性良く製造しうる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明は、原料モノマーを重縮合させて、重縮合物を得る工程(A)と、前記重縮合物を粒子化して、粒子化物を得る工程(B)と、前記粒子化物を固相重合させて、液晶ポリエステルを得る工程(C)とを有し、前記工程(C)に供される前記粒子化物中の鉄の含有量が、5重量ppm以下であることを特徴とする液晶ポリエステルの製造方法を提供する。
【0007】
また、本発明によれば、前記製造方法により得られた液晶ポリエステルと、酸化チタンフィラーとを含有する液晶ポリエステル組成物、この液晶ポリエステル組成物を成形してなる反射板、さらには、この反射板と発光素子とを備える発光装置も提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、白色度が高く、耐熱性に優れる液晶ポリエステルを操作性良く製造することができる。そして、こうして得られる液晶性ポリエステルと酸化チタンフィラーとを含む液晶ポリエステル組成物を成形することにより、反射率が高く、発光装置の製造の際に高温環境に曝されても、それに耐えうる優れた耐熱性を備え、変形や着色、外観異常の発生等の不具合が十分に防止される反射板を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明で製造される液晶ポリエステルは、サーモトロピック液晶ポリマーと呼ばれるポリエステルであり、450℃以下で光学的に異方性を示す溶融体を形成するものである。かかる液晶ポリエステルとしては、例えば、下記(1)〜(4)に示されるものが挙げられる。
【0010】
(1):芳香族ヒドロキシカルボン酸と芳香族ジカルボン酸と芳香族ジオールとを組み合わせて重合させて得られるもの。
(2):複数種の芳香族ヒドロキシカルボン酸を重合させて得られるもの。
(3):芳香族ジカルボン酸と芳香族ジオールとを組み合わせて重合させて得られるもの。
(4):ポリエチレンテレフタレート等の結晶性ポリエステルに芳香族ヒドロキシカルボン酸を反応させて得られるもの。
【0011】
なお、液晶ポリエステルの製造に関し、前記の芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸又は芳香族ジオールの代わりに、それらのエステル形成性誘導体を使用することも可能であり、当該エステル形成性誘導体を用いれば液晶ポリエステルの製造がより容易になるという利点がある。
【0012】
分子内にカルボキシル基を有する芳香族ヒドロキシカルボン酸や芳香族ジカルボン酸のエステル形成性誘導体としては、例えば、当該カルボキシル基がハロホルミル基やアシルオキシカルボニル基等の高反応性の基に転化したもの、当該カルボキシル基が、エステル交換反応によりポリエステルを生成するように、アルコール類やエチレングリコールとエステルを形成しているものが挙げられる。また、分子内にフェノール性水酸基を有する芳香族ヒドロキシカルボン酸や芳香族ジオールのエステル形成性誘導体としては、例えば、当該フェノール性水酸基が、エステル交換反応によりポリエステルを生成するように、低級カルボン酸類とエステルを形成しているものが挙げられる。
【0013】
さらに、エステル形成性を阻害しない程度であれば、上述の芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸又は芳香族ジオールは、その芳香環に、塩素原子、フッ素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基等のアルキル基;フェニル基等のアリール基を置換基として有していてもよい。
【0014】
液晶ポリエステルを構成する芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する構造単位としては、例えば、下記に示されるものが挙げられる。
【0015】
【化1】

【0016】
前記構造単位は、ハロゲン原子、アルキル基又はアリール基を置換基として有していてもよい。
【0017】
液晶ポリエステルを構成する芳香族ジカルボン酸に由来する構造単位としては、例えば、下記に示されるものが挙げられる。
【0018】
【化2】

【0019】
前記構造単位は、ハロゲン原子、アルキル基又はアリール基を置換基として有していてもよい。
【0020】
液晶ポリエステルを構成する芳香族ジオールに由来する構造単位としては、例えば、下記に示されるものが挙げられる。
【0021】
【化3】

【0022】
前記構造単位は、ハロゲン原子、アルキル基又はアリール基を置換基として有していてもよい。
【0023】
好適な液晶ポリエステルとしては、下記(a)〜(h)に示される構造単位の組合せを有するものが挙げられる。
【0024】
(a):(A1)、(B1)及び(C1)の組合せ、又は、
(A1)、(B1)、(B2)及び(C1)の組合せ。
(b):(A2)、(B3)及び(C2)の組み合わせ、又は
(A2)、(B1)、(B3)及び(C2)の組み合わせ。
(c):(A1)及び(A2)の組合せ。
(d):(a)の構造単位の組合せのそれぞれにおいて、
(A1)の一部又は全部を(A2)で置きかえたもの。
(e):(a)の構造単位の組合せのそれぞれにおいて、
(B1)の一部又は全部を(B3)で置きかえたもの。
(f):(a)の構造単位の組合せのそれぞれにおいて、
(C1)の一部又は全部を(C3)で置きかえたもの。
(g):(b)の構造単位の組合せのそれぞれにおいて、
(A2)の一部又は全部を(A1)で置きかえたもの。
(h):(c)の構造単位の組合せに、(B1)と(C2)を加えたもの。
【0025】
前記(a)〜(h)のように、本発明で製造される液晶ポリエステルとしては、芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する構造単位として、(A1)及び/又は(A2)を有し、芳香族ジオールに由来する構造単位として、(B1)、(B2)及び(B3)からなる群から選ばれる少なくとも1種を有し、芳香族ジカルボン酸に由来する構造単位として、(C1)、(C2)及び(C3)からなる群から選ばれる少なくとも1種を有するものが好ましい。なお、上述のように、これらの構造単位は、その芳香環に置換基を有していてもよいが、得られる反射板がより優れた耐熱性を必要とする場合には、置換基を有していないことが望ましい。
【0026】
本発明で製造される液晶ポリエステルは、その流動温度が280〜400℃であることが好ましく、300〜380℃であることがより好ましい。流動温度がこの範囲にある液晶ポリエステルは、反射板への成形がより容易になることに加え、得られる反射板を例えばLEDを発光素子とする発光装置に用いる場合、LEDモジュール組立工程等での高温環境下において、反射板が変形したり、反射板が着色して反射率が低下したりする不都合を、効果的に防止することができる。
【0027】
なお、ここでいう流動温度とは、内径1mm、長さ10mmのノズルを持つ毛細管型レオメーターを用い、9.8MPaの荷重において、4℃/分の昇温速度で加熱溶融体をノズルから押し出す時に、溶融粘度が4800Pa・secを示す温度を意味するものであり、この流動温度は、当技術分野で周知の液晶ポリエステルの分子量を表す指標である(小出直之編、「液晶性ポリマー合成・成形・応用−」、95〜105頁、シーエムシー、1987年6月5日発行を参照)。
【0028】
本発明では、液晶ポリエステルを、原料モノマーを重縮合させて、重縮合物を得る工程(A)と、前記重縮合物を粒子化して、粒子化物を得る工程(B)と、前記粒子化物を固相重合させて、液晶ポリエステルを得る工程(C)とにより製造する。
【0029】
工程(A)では、直接重合法やエステル交換法により重合が行われる。重合方法としては、例えば、縣濁重合法、界面重合法、溶液重合法、溶融重合法等が挙げられるが、溶媒の除去や重合体の洗浄を行い易いことから、溶融重合法が好ましく用いられる。重縮合のプロセスは回分式、連続式又はそれらの組合せであることができる。
【0030】
反応槽の形状は、縦型であってもよいし、横型であってもよい。縦型の反応槽では、多段のパドル翼、タービン翼、モンテ翼、ダブルヘリカル翼等の翼が設置されていることが好ましく、横型の反応槽では、1軸又は2軸の攪拌軸に垂直に、レンズ翼、眼鏡翼、多円平板翼等の翼が設置されていることが好ましい。また、翼にねじれを付けて、攪拌性能や送り機構を向上させたものも好ましい。反応槽の加熱は、例えば、熱媒、気体、電気ヒーターにより行うが、均一加熱という目的で攪拌軸、翼、邪魔板等も加熱することが好ましい。
【0031】
反応槽の材質は、反応副生物として酢酸等が生成するため、耐腐食性であることが好ましく、例えば、グラスライニング、SUS316、SUS316L、2相ステンレス、ハステロイ−B、ハステロイ−C等のニッケル−モリブテン系合金、不浸透黒鉛、チタン、ジルコニウム、タンタルが挙げられる。
【0032】
典型的な例では、芳香族ヒドロキシカルボン酸と芳香族ジオールと芳香族ジカルボン酸との原料モノマー混合物に、脂肪酸無水物を混合し、窒素雰囲気中130〜180℃で反応させることにより、芳香族ヒドロキシカルボン酸及び芳香族ジオールのフェノール性水酸基を脂肪酸無水物でアシル化し、アシル化物(芳香族ヒドロキシカルボン酸アシル化物及び芳香族ジオールアシル化物)を得る。その後、さらに昇温して反応副生物を反応系外に留去しながら、前記アシル化物のアシル基と、芳香族ヒドロキシカルボン酸アシル化物及び芳香族ジカルボン酸にあるカルボキシル基から水酸基を除いてなる残基との交換が生じるように、エステル交換による重縮合を行い、液晶ポリエステルを製造する。芳香族ヒドロキシカルボン酸と芳香族ジオールと芳香族ジカルボン酸との混合物において、フェノール性水酸基に対するカルボキシル基のモル比は、0.9〜1.1であることが好ましい。
【0033】
エステル交換(重縮合)反応は、130〜400℃の範囲で0.1〜50℃/分の割合で昇温させながら行うことが好ましく、150〜350℃の範囲で0.3〜5℃/分の割合で昇温しながら行うことがより好ましい。そして、エステル交換(重縮合)反応をより円滑にするために、反応副生物を系外へと留去させる。
【0034】
芳香族ジオール及び芳香族ヒドロキシカルボン酸のフェノール性水酸基の合計に対する脂肪酸無水物のモル比は、0.95〜1.2であることが好ましく、1.00〜1.15であることがより好ましい。脂肪酸無水物の使用量が少ないほど、得られる液晶ポリエステルの着色が抑えられる傾向があるが、脂肪酸無水物の使用量が少なすぎると、重縮合時に未反応の芳香族ジオール又は芳香族ジカルボン酸が昇華し易くなって、反応系が閉塞するおそれがある。一方、脂肪酸無水物の使用量が多すぎると、得られる液晶ポリエステルが着色し易くなり、得られる反射板の反射率を悪化させるおそれがある。これらの点を鑑みて、脂肪酸無水物の使用量は前記範囲であることが好ましい。
【0035】
脂肪酸無水物としては、例えば、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水イソ酪酸、無水吉草酸、無水ピバル酸、無水2−エチルヘキサン酸、無水モノクロル酢酸、無水ジクロル酢酸、無水トリクロル酢酸、無水モノブロモ酢酸、無水ジブロモ酢酸、無水トリブロモ酢酸、無水モノフルオロ酢酸、無水ジフルオロ酢酸、無水トリフルオロ酢酸、無水グルタル酸、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水β−ブロモプロピオン酸が挙げられ、必要に応じてそれらの2種類以上を混合して使用してもよい。経済性と取扱性の観点から、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水イソ酪酸が好ましく使用され、特に無水酢酸が好ましく使用される。
【0036】
エステル交換(重縮合)反応は、液晶ポリエステルの製造をより円滑にする観点と、得られる液晶ポリエステルの着色を十分抑制する観点とから、窒素原子を2原子以上含む複素環状有機塩基化合物の存在下に行うことが好ましい。この複素環状有機塩基化合物としては、例えば、イミダゾール化合物、トリアゾール化合物、ジピリジリル化合物、フェナントロリン化合物、ジアザフェナントレン化合物が挙げられる。これらの中でも、重縮合に係る反応性の観点からはイミダゾール化合物が好ましく使用され、入手が容易であることから1−メチルイミダゾール、1−エチルイミダゾールがより好ましく使用される。
【0037】
また、エステル交換(重縮合)反応をより促進して重縮合速度を増加させる目的で、本発明の目的を損なわない範囲であれば、前記複素環状有機塩基化合物以外の触媒を用いることもできる。ただし、金属塩等を触媒として使用する場合には、当該金属塩が液晶ポリエステルに不純物として残存することになるので、反射板のような電子部品には悪影響を及ぼすことがある。この点においても、前記複素環状有機塩基化合物を用いることは、液晶ポリエステルを製造するうえで、好ましい。
【0038】
重縮合を溶融重合法により行い、重合槽から重縮合物(液晶ポリエステル)を溶融状態で抜き出す場合、重合槽は、窒素等の不活性ガス雰囲気下、常圧で、又は窒素等の不活性ガス雰囲気により、好ましくは0.1〜2kg/cm2G、より好ましくは0.2〜1kg/cm2Gで加圧して行うことが、抜き出し時の重縮合物の流動温度の上昇を抑える上で好ましい。重縮合物を溶融状態で取り出す機構としては、押出機、ギヤポンプ、ピストンポンプ、渦巻きポンプ等のポンプ、ボールバルブ、ダイヤフラムバルブ等のバルブ、ノズル式流路絞り込み式フィーダー等の流路絞り込み式フィーダー等が挙げられる。
【0039】
続く工程(B)では、工程(A)で得られた重縮合物を、粒子化する。重縮合物を粒子化する方法としては、例えば、重縮合を溶融重合法により行い、重合槽から重縮合物を溶融状態で抜き出す場合、抜き出された重縮合物は通常、しばらくすると固化するので、冷却固化させた後に公知の粉砕機で粉砕することにより、粉粒体とする方法が挙げられる。また、溶融状態から紐状に冷却固化させつつストランドカッターやシートカッター等で切断することにより、ペレットとする方法も挙げられる。また、大量かつ短時間で処理する手段としては、スチールベルトやドラムクーラー等の冷却機で冷却する方法等が挙げられる。
【0040】
粉砕は、機械粉砕により行うことが好ましく、その際、用いられる粉砕機としては、例えば、ホソカワミクロン(株)製のフェザーミル、ビクトミル、コロプレックス、パルベラーザー、コントラプレックス、スクロールミル、ACMパルベラ−ザー等の衝撃式粉砕機や、(株)マツボー製の架砕式粉砕機であるロールグラニュレーター等が挙げられる。特に好ましくは、ホソカワミクロン(株)製のフェザーミルである。
【0041】
粒子化物(粉粒体ないしペレット)の粒径は、10mm以下であることが好ましく、より好ましくは5mm以下、さらに好ましくは0.1〜0.4mmである。粒子化物の粒径があまり大きいと、続く工程(C)で固相にて重縮合させたときに、表面層と内部との間で、重合速度、未反応原料の反応の結果生じた副生物の拡散時間が異なることから、分子量分布を広げたり、除去すべきものを十分除去できなかったりするため、発泡やガス発生の原因となる場合があり、好ましくない。粉砕は所望の粒径に一段で実施してもよいが、粗粉砕、微粉砕と複数段で実施してもよい。
【0042】
粒子化物の形状は特に限定されず、概略、球、円筒形、直方体、円錐形、楕円形、四角錘、三角錘等が挙げられる。
【0043】
そして、本発明では、続く工程(C)に供される粒子化物中の鉄の含有量が、5重量ppm以下である必要があり、これにより、白色度が高い液晶ポリエステルを得ることができる。このように工程(C)に供される粒子化物中の鉄の含有量を5重量ppm以下にするためには、前記粉砕機の重縮合物と接触する部分の材質を耐酸性の材質とすることが好ましく、これにより、粉砕工程における鉄の溶出を抑制することができる。耐酸性の材質としては、例えば、SUS304、SUS304L、SUS316、SUS316Lが挙げられる。また、市販の原料モノマーから鉄含有量が少ないものを選択することも有効である。さらに、粒子化物を、工程(C)に供する前に、酸性水溶液で洗浄する方法を、鉄含有量を5重量ppm以下にするための好ましい方法として挙げることができる。酸性水溶液としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸や、シュウ酸、クエン酸、ギ酸等の有機酸が挙げられ、洗浄は、粒子化物を、その3重量倍量以上の酸性水溶液に投入して、攪拌することにより行うことが好ましい。この際の攪拌回転数は、150rpm以上であることが好ましい。また、前記攪拌のときに、超音波をかけてもよい。酸性水溶液としては、コストや鉄を効果的に除去する観点から、無機酸が好ましく、塩酸がより好ましい。
【0044】
続く工程(C)では、工程(B)で得られた粒子化物を、固相重合させる。ここで、固相重合に供される粒子化物は、前記のとおり、鉄含有量が5重量ppm以下のものである。固相重合は、常圧下でも減圧下でも行うことができるが、固相重合装置が簡便になることから常圧下で行うことが好ましい。固相重合時の昇温速度や最高温度は、粒子化物をなるべく融着させないように選ぶ必要がある。融着を起こした場合、表面積が減少し、重縮合反応や低沸点成分の除去が遅くなり好ましくない。固相重合の最高温度は、好ましくは230〜350℃、より好ましくは260〜330℃であり、不活性気体雰囲気下に処理することが効果的である。最高温度があまり低いと、固相重合の進行が遅く、時間がかかり不経済であり、あまり高いと、粒子化物同士が融着し易くなったり、溶融し易くなったりして、固相状態が保持され難くなるので好ましくない。
【0045】
固相重合の昇温速度は、粒子化物の表面層と内部との間で均質に昇温されるように選ぶ必要がある。また、固相重合の最高温度は、粒子化物を融着させないように、流動温度以下の温度であることが好ましく、固相重合時間は、好ましくは1分〜24時間、より好ましくは5分〜12時間である。
【0046】
固相重合装置としては、各種乾燥機、反応機、混合機、電気炉を用いることができ、その例としては、棚段式オーブン、ロータリーキルン、流動床式乾燥機が挙げられる。これらの中でも、上記の趣旨から、密閉度の高いガス流通式の装置が好ましい。不活性気体としては、窒素、ヘリウム、アルゴン、炭酸ガスから選ばれるものが好ましく、より好ましくは窒素である。空気、特に酸素が存在すると、液晶ポリエステルが高温で酸化され、物性低下や着色が起こり易く、好ましくない。不活性気体の流量は、固相重合装置の容積、粒子化物の粒径、充填状態等を勘案して決められるが、固相重合槽1m3当たり2m3/hr〜8m3/hr、より好ましくは3m3/hr〜6m3/hrである。不活性気体の流量があまり少ないと、重合速度が遅く、あまり多いと、粒子化物の飛散が起こる場合がある。
【0047】
こうして得られる液晶ポリエステルは、YI値が32以下であることが、特に反射板の材料として好ましい。なお、YI値とは、物体の黄色度を表わす指標で、下記式で定義される値であり、液晶ポリエステルからなる試験片について、ASTM D1925に準拠して、色差計を用いて測定することができる。
YI=[100(1.28X−1.06Z)/Y]
(式中、X、Y及びZは、XYZ表色系における光源色の三刺激値である。)
【0048】
なお、YI値が32以下である液晶ポリエステルは、複数種の液晶ポリエステルを混合することでYI値を32以下とした液晶ポリエステル混合物として得ることもできる。
【0049】
こうして得られる液晶ポリエステルは、単独で又は他の成分と混合して、各種用途に用いることができるが、特に前記液晶ポリエステルに酸化チタンフィラーを配合してなる本発明の液晶ポリエステル組成物は、その高い白色度を生かして、反射板の材料として好適に用いることができる。
【0050】
酸化チタンフィラーは、酸化チタンを含有するフィラーであり、含有される酸化チタン自身の結晶形は特に限定されず、ルチル型、アナターゼ型、又は両者が混在したものであることができる。より高い反射率を有する反射板が得られ、当該反射板の耐候性も良好となる点からは、ルチル型の酸化チタンを含有する酸化チタンフィラーを用いることが好ましく、酸化チタンとして実質的にルチル型のもののみを含有する酸化チタンフィラーを用いることがより好ましい。
【0051】
酸化チタンフィラーの平均粒径についても特に限定されないが、得られる反射板の反射率及び反射板中のフィラー分散性の観点からは、その平均粒径が0.10〜0.50μmであることが好ましく、0.15〜0.40μmであることがより好ましく、0.18〜0.35μmであることがさらに好ましい。かかる酸化チタンフィラーの平均粒径は、製造する反射板の厚みを勘案して最適なものを使用することができる。
【0052】
なお、ここでいう平均粒径は、酸化チタンフィラーを走査形電子顕微鏡(SEM)で観察し、得られたSEM写真を画像解析装置(例えば株式会社ニレコ製「ルーゼックスIIIU」)で解析して、一次粒子の各粒径区間における粒子量(%)を求め、それらを体積基準で累積した分布曲線において、累積度が50%であるときの粒径(体積平均粒径)である。
【0053】
本発明の液晶ポリエステル組成物における酸化チタンフィラーの含有量は、液晶ポリエステル100重量部に対して、20〜120重量部であることが好ましく、30〜100重量部であることがより好ましく、40〜80重量部であることがさらに好ましい。酸化チタンフィラーの含有量があまり少ないと、得られる反射板の反射率が十分でないことがあり、あまり多いと、反射板の製造自体が困難になる傾向があり、液晶ポリエステルの機械特性や耐熱性等の特性が十分維持されないことがある。なお、酸化チタンフィラーとして複数種の酸化チタンフィラーを用いる場合は、その合計量が液晶ポリエステルに対して、前記の範囲であればよい。
【0054】
酸化チタンフィラーは、その分散性等の特性向上を目的として、酸化チタンに表面処理を施してなるものであってもよい。このような表面処理は特に限定されないが、分散性及び耐候性を向上させる観点からは、無機金属酸化物での表面処理が好ましく、該無機金属酸化物としては酸化アルミニウム(アルミナ)が好ましい。但し、凝集等がなく取扱が容易であれば、表面処理されていない酸化チタンが耐熱性及び強度の点から好ましい。
【0055】
酸化チタンフィラーは、塩素法で製造された酸化チタンを含む酸化チタンフィラーであることが好ましい。ここで、塩素法とは、チタン源である鉱石(ルチル鉱やイルメナイト鉱から得られる合成ルチル等)を塩素と1000℃付近で反応させて粗四塩化チタンとし、この粗四塩化チタンを精留で精製した後、得られた四塩化チタンを、酸素で酸化して、酸化チタンを得る方法である。この塩素法によれば、好適な結晶型であるルチル型の酸化チタンが得られ易くなる。そして、酸素で酸化する工程(酸化工程)での条件を最適化することにより、比較的白色度に優れた酸化チタンが得られ易く、このような酸化チタンを含む酸化チタンフィラーは本発明の液晶ポリエステル組成物における酸化チタンフィラーとして特に好適である。また、酸化工程での条件を最適化することにより、粗大粒子の生成を抑制し、本発明の液晶ポリエステル組成物における酸化チタンフィラーとして好適な平均粒径を有する酸化チタンフィラーを得ることが容易になる。
【0056】
酸化チタンフィラーの市販品としては、例えば、石原産業(株)の「TIPAQUE CR−60」、「TIPAQUE CR−58」、堺化学(株)の「SR−1」が挙げられる。
【0057】
本発明の液晶ポリエステル組成物には、得られる反射板の反射率を著しく損なわない範囲において、該反射板の機械特性等の向上を目的に、酸化チタンフィラー以外の無機充填剤が含まれていてもよい。
【0058】
この場合、無機充填剤の含有量は、液晶ポリエステル100重量部に対して、5〜100重量部以下であることが好ましく、5〜90重量部であることがより好ましい。無機充填剤の含有量があまり多いと、反射板の色調の低下を招いたり、小型の反射板に成形する場合には成形加工性が低下したりし易くなる。
【0059】
該無機充填剤は、繊維状充填剤であってもよいし、板状充填剤であってもよいし、粒状充填剤であってもよい。繊維状充填剤としては、例えば、ガラス繊維、PAN系やピッチ系の炭素繊維、炭化珪素繊維、石コウ繊維、セラミック繊維、ステンレス繊維、アルミニウム繊維や黄銅繊維などの金属繊維、ジルコニア繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、アルミナシリケート繊維、酸化チタン繊維、ボロン繊維、チタン酸カリウムウィスカー、チタン酸バリウムウィスカー、炭酸カルシウムウィスカー、ウォラストナイトウィスカー、ほう酸アルミニウムウィスカー、酸化亜鉛ウィスカー、窒化ケイ素ウィスカー、炭化珪素ウィスカー、アスベストが挙げられる。また、板状充填剤としては、例えば、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ソーコナイト、スチーブンサイト、Naヘクトライト、Liヘクトライト、等のスメクタイト;カネマイト、ケニヤイト等の層状ポリケイ酸塩;金雲母、白雲母、セリサイト、フッ素金雲母、K四珪素雲母、Na四珪素雲母、Naテニオライト、Liテニオライト等のマイカ;鉛白、タルク、ウォラストナイト、ベントナイト、カオリン、ハロイサイト、バーミキュライト、クロライト、パイロフィライト、クレー、燐酸ジルコニウム、燐酸チタニウム、黒鉛、アルミナ、ゼオライト、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、窒化ホウ素、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ガラスフレークが挙げられる。また、粒状充填材としては、例えば、シリカ、セラミックビ−ズ、ガラスビーズ、中空ガラスビーズ、カーボンブラック、アルミナ、ゼオライト、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、窒化ホウ素、炭化珪素、酸化鉄、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウムが挙げられる。これらの中でも、反射板の反射率を著しく低下させることなく、実用的な機械強度を反射板に付与するためには、ガラス繊維、酸化チタン繊維、ウォラストナイトウィスカー等の繊維状充填材、タルク、マイカ等の板状充填材が好ましい。なお、このような無機充填剤においては、シラン系、チタネート系などのカップリング剤、その他の表面処理剤が使用される場合もあるが、色調の低下を抑制する点から、使用される表面処理剤の量は少ないほうが好ましい。
【0060】
また、本発明の液晶ポリエステル組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、フッ素樹脂、高級脂肪酸エステル化合物、脂肪酸金属石鹸類等の離型改良剤;染料、顔料等の着色剤;酸化防止剤;熱安定剤;蛍光増白剤;紫外線吸収剤;帯電防止剤;界面活性剤等の添加剤が含まれていてもよい。また、高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸金属塩、フルオロカーボン系界面活性剤等の外部滑剤効果を有する添加剤が含まれていてもよい。
【0061】
本発明の液晶ポリエステル組成物は、液晶ポリエステル、酸化チタンフィラー及び必要に応じて使用される無機充填材等の他の成分を、ヘンシェルミキサー、タンブラー等を用いて混合して得ることもできるし、このようにして混合した後、押出機を用いて溶融混練することにより樹脂組成物をペレット化してもよい。このようにペレット化して得られた樹脂組成物は、操作性が良好になり、目的とする部品の形状によって好適な成形方法の選択幅を広げることができる。
【0062】
本発明の反射板は、本発明の液晶ポリエステル組成物を種々慣用の成形方法により成形することで得ることができる。成形方法としては、射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法等の溶融成形法が好適である。とりわけ射出成形法が好適で、射出成形法によれば、薄肉部を有するような反射板や、複雑な形状の反射板を製造することが可能であり、特に薄肉部が0.01mm〜3.0mm、好ましくは0.02〜2.0mm、より好ましくは0.05〜1.0mmである小型の反射板を製造するためには適している。また、射出成形法は、耐熱性を必要とする反射板の製造に特に有利である。
【0063】
射出成形等の溶融成形に係る成形温度は、溶融成形に使用する液晶ポリエステル組成物の流動温度より10〜60℃高い温度であることが好ましい。成形温度があまり低いと、液晶ポリエステル組成物の流動性が極端に低下し、成形性の悪化や反射板の強度の低下を招く恐れがある。また、成形温度があまり高いと、液晶ポリエステルが劣化し易くなり、反射板の反射率の低下を生じる恐れがある。なお、液晶ポリエステル組成物の流動温度は、液晶ポリエステルの流動温度の測定方法として説明した方法と同様にして、毛細管型レオメーターを用いて求めることができる。
【0064】
本発明の反射板は、可視光領域の光線に対する反射率、特に青色光に対する反射率が極めて良好である。具体的にいうと、波長460nmの光線に対する反射率が75%以上の反射率を有する反射板を製造することが可能となる。さらには、反射率が80%以上の反射板を製造することもできる。なお、ここでいう反射率とは、JIS K7105−1981の全光線反射率測定法A(標準白色板:硫酸バリウム)に基づいて求められるものである。
【0065】
本発明の反射板は、電気、電子、自動車、機械等の分野で光反射、特に可視光反射にかかわる部材に好適に使用することができる。例えば、ハロゲンランプ、HID等の光源装置のランプリフレクターや、LEDや有機EL等の発光素子を用いた発光装置、表示装置の高強度な反射板として好適に使用することができる。特に、LEDを用いた発光装置の反射板として好適に使用することができる。
【実施例】
【0066】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれらによって限定されるものではない。例中、鉄含有量及びL*値(明度)の測定方法は、次のとおりである。
【0067】
<鉄含有量>
試料1g程度を秤量し、約700℃にて灰化処理を行った。次いで、約5%硝酸にて加熱溶解させた後、25mlの測定溶液として定容し、ICP−AESにより測定を行い、試料中の鉄含有量(重量ppm)を求めた。
【0068】
<L*値(明度)>
色彩色差計(コニカミノルタ(株)製「CR−300」)を用いて測定した。
【0069】
製造例1
攪拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却器を備えた反応器に、パラヒドロキシ安息香酸100重量部、4,4’−ジヒドロキシビフェニル44.9重量部、テレフタル酸30.1重量部、イソフタル酸10.0重量部及び無水酢酸135.5重量部を仕込み、1−メチルイミダゾール0.02重量部を添加し、反応器内を十分に窒素ガスで置換した後、窒素ガス気流下で30分かけて150℃まで昇温し、温度を保持して1時間還流させた。その後、1−メチルイミダゾール0.09重量部を添加し、留出する副生酢酸と未反応の無水酢酸を留去しながら、2時間50分かけて320℃まで昇温し、トルクの上昇が認められる時点を反応終了として、重縮合物(液晶ポリエステル)を得た(工程(A))。
【0070】
実施例1
製造例1で得られた重縮合物を室温まで冷却し、重縮合物と接触する部分の材質がSUS304からなる粗粉砕機で粉砕した後、微粉砕機により微粉砕を行い、鉄含有量が3.9重量ppmである粒子化物を得た(工程(B))。
【0071】
得られた粒子化物を、窒素雰囲気下、室温から250℃まで1時間かけて昇温した後、250℃から285℃まで5時間かけて昇温し、次いで285℃で3時間保持することにより、固相重合を行った(工程(C))。固相重合後の粒子化物(液晶ポリエステル)の流動温度は327℃であった。固相重合前後の粒子化物のL*値を測定し、結果を表1に示した。
【0072】
実施例2
製造例1で得られた重縮合物を室温まで冷却し、重縮合物と接触する部分の材質がSUS304からなる粗粉砕機で粉砕した後、微粉砕機により微粉砕を行い、鉄含有量が2.6重量ppmである粒子化物を得た(工程(B))。
【0073】
得られた粒子化物を、窒素雰囲気下、室温から250℃まで1時間かけて昇温した後、250℃から285℃まで5時間かけて昇温し、次いで285℃で3時間保持することにより、固相重合を行った(工程(C))。固相重合後の粒子化物(液晶ポリエステル)の流動温度は327℃であった。固相重合前後の粒子化物のL*値を測定し、結果を表1に示した。
【0074】
比較例1
製造例1で得られた重縮合物を室温まで冷却し、重縮合物と接触する部分の材質がカニゼンメッキを施した鋼材料からなる粗粉砕機で粉砕した後、微粉砕機により微粉砕を行い、鉄含有量が16.6重量ppmである粒子化物を得た(工程(B))。
【0075】
得られた粒子化物を、窒素雰囲気下、室温から250℃まで1時間かけて昇温した後、250℃から285℃まで5時間かけて昇温し、次いで285℃で3時間保持することにより、固相重合を行った(工程(C))。固相重合後の粒子化物(液晶ポリエステル)の流動温度は327℃であった。固相重合前後の粒子化物のL*値を測定し、結果を表1に示した。
【0076】
比較例2
製造例1で得られた重縮合物を室温まで冷却し、重縮合物と接触する部分の材質がカニゼンメッキを施した鋼材料からなる粗粉砕機で粉砕した後、微粉砕機により微粉砕を行い、鉄含有量が10.5重量ppmである粒子化物を得た(工程(B))。
【0077】
得られた粒子化物を、窒素雰囲気下、室温から250℃まで1時間かけて昇温した後、250℃から285℃まで5時間かけて昇温し、次いで285℃で3時間保持することにより、固相重合を行った(工程(C))。固相重合後の粒子化物(液晶ポリエステル)の流動温度は327℃であった。固相重合前後の粒子化物のL*値を測定し、結果を表1に示した。
【0078】
製造例2
攪拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却器を備えた反応器に、パラヒドロキシ安息香酸100重量部、4,4’−ジヒドロキシビフェニル44.9重量部、テレフタル酸36.1重量部、イソフタル酸4.0重量部及び無水酢酸135.5重量部を仕込み、1−メチルイミダゾール0.02重量部を添加し、反応器内を十分に窒素ガスで置換した後、窒素ガス気流下で30分かけて150℃まで昇温し、温度を保持して1時間還流させた。その後、留出する副生酢酸と未反応の無水酢酸を留去しながら、2時間50分かけて320℃まで昇温し、トルクの上昇が認められる時点を反応終了として、重縮合物(液晶ポリエステル)を得た(工程(A))。
【0079】
実施例3
製造例2で得られた重縮合物を室温まで冷却し、重縮合物と接触する部分の材質がカニゼンメッキを施した鋼材料からなる粗粉砕機で粉砕した後、微粉砕機により微粉砕を行い、鉄含有量が7.0重量ppmである粒子化物を得た(工程(B))。
【0080】
得られた粒子化物を、20重量倍の1規定塩酸に投入し、室温で30分撹拌した後、純水で洗浄した。洗浄後の粒子化物の鉄含有量は2.0重量ppmであった。
【0081】
洗浄後の粒子化物を、窒素雰囲気下、室温から250℃まで1時間かけて昇温した後、250℃から305℃まで5時間かけて昇温し、次いで305℃で3時間保持することにより、固相重合を行った(工程(C))。固相重合後の粒子化物(液晶ポリエステル)の流動温度は357℃であった。固相重合前後の粒子化物のL*値を測定し、結果を表1に示した。
【0082】
比較例3
実施例3で得られた鉄含有量が7.0重量ppmである粒子化物を、1規定塩酸洗浄することなく、窒素雰囲気下、室温から250℃まで1時間かけて昇温した後、250℃から305℃まで5時間かけて昇温し、次いで305℃で3時間保持することにより、固相重合を行った(工程(C))。粒固相重合後の粒子化物(液晶ポリエステル)の流動温度は357℃であった。固相重合前後の粒子化物のL*値を測定し、結果を表1に示した。
【0083】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料モノマーを重縮合させて、重縮合物を得る工程(A)と、前記重縮合物を粒子化して、粒子化物を得る工程(B)と、前記粒子化物を固相重合させて、液晶ポリエステルを得る工程(C)とを有し、前記工程(C)に供される前記粒子化物中の鉄の含有量が、5重量ppm以下であることを特徴とする液晶ポリエステルの製造方法。
【請求項2】
前記原料モノマーが、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸及び芳香族ジオールである請求項1に記載の液晶ポリエステルの製造方法。
【請求項3】
前記工程(A)において、前記原料モノマーを脂肪酸無水物でアシル化した後、重縮合させる請求項1又は2に記載の液晶ポリエステルの製造方法。
【請求項4】
前記工程(B)において、前記重縮合物を機械粉砕により粒子化する請求項1〜3のいずれかに記載の液晶ポリエステルの製造方法。
【請求項5】
前記機械粉砕に用いられる粉砕機の前記重縮合物と接触する部分の材質が、耐酸性の材質である請求項4に記載の液晶ポリエステルの製造方法。
【請求項6】
前記工程(B)で得られた前記粒子化物を、酸性水溶液で洗浄した後、前記工程(C)に供する請求項1〜5のいずれかに記載の液晶ポリエステルの製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の液晶ポリエステルの製造方法により得られた液晶ポリエステルと、酸化チタンフィラーとを含む液晶ポリエステル組成物。
【請求項8】
請求項7に記載の液晶ポリエステル組成物を成形してなる反射板。
【請求項9】
請求項8に記載の反射板と発光素子とを備える発光装置。

【公開番号】特開2011−132512(P2011−132512A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−263265(P2010−263265)
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】