説明

液晶装置および電子機器

【課題】液晶層中のイオン性不純物の拡散による偏在に起因する表示ムラが低減された液晶装置、および該液晶装置を備えた電子機器を提供すること。
【解決手段】本適用例の液晶装置は、一対の基板間に挟持された液晶層50と、一対の基板のうち一方の基板としての素子基板10に設けられた複数の画素電極15と、一対の基板のうち他方の基板としての対向基板20に複数の画素電極15と対向して設けられた対向電極23とを備え、画素電極15には凸部15bが設けられ、凸部15bに対応する部分の対向電極23に凸部23bが設けられている。液晶層50を駆動することによって生ずる液晶分子LCの流動は、凸部15bおよび凸部23bによって阻害される。したがって、液晶層50中のイオン性不純物が特定の方向に拡散して偏在することよる表示ムラが低減される。凸部の代わりに凹部を設けてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶装置およびこれを備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶装置は、一般的に配向処理が施された一対の基板間に液晶が注入封止された構造となっている。このような液晶装置の製造過程において、イオン性不純物が例えば液晶注入時に混入したり、液晶層を取り囲むシール材などから溶出すると、表示領域に拡散・凝集して表示特性の劣化を招くことが知られている。
【0003】
このようなイオン性不純物に起因する表示特性の劣化を抑制することを目的として、例えば特許文献1には、駆動回路基板においてマトリックス状に配置された複数の画素電極間の隙間に遮蔽電極を有し、該遮蔽電極に対して、複数の画素電極と液晶層を挟んで配置された透明電極と所定の電位差を有するように電位を印加する液晶表示装置が開示されている。
【0004】
上記特許文献1の液晶表示装置によれば、液晶層中のイオン性不純物を画素電極の周辺部に設けた遮蔽電極によって捕獲(トラップ)させ、表示特性の向上を図ることができるとしている。
【0005】
また、例えば特許文献2には、画素電極と対向電極とのうち少なくとも一方側に複数の電極からなる周辺電極を備え、該周辺電極の隣り合う電極間で駆動電圧の電圧値が異なる液晶表示装置が開示されている。
【0006】
上記特許文献2の液晶表示装置によれば、周辺電極の隣り合う電極に電圧値が異なる駆動電圧を与えることによって横方向の電界を生じさせる。これによって液晶の微小な揺らぎによる流れに加えて、イオン性不純物を移動させる力となり、画素領域内から移動してくるイオン性不純物をすばやく画素領域外へ移動させることができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−20725号公報
【特許文献2】特開2008−58497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1,2によれば、遮蔽電極や周辺電極を設けると共に、これらの電極に電位を与えるための駆動回路が必要となり、液晶表示装置の構成が複雑になるという課題があった。
また、上記特許文献2のように周辺電極を備えることは、液晶表示装置の大型化に繋がってしまう。言い換えれば小型化が難しいという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0010】
[適用例1]本適用例の液晶装置は、一対の基板と、前記一対の基板間に挟持された液晶層と、前記一対の基板のうち一方の基板に複数の画素電極と、前記一対の基板のうち他方の基板に前記複数の画素電極と対向する対向電極とを備え、前記画素電極および前記対向電極のうち少なくとも一方に、前記液晶層の液晶分子を駆動することによって生ずる当該液晶分子の流動を阻害するための凸部または凹部が形成されていることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、凸部または凹部により液晶分子の流動が阻害されるので、液晶層中のイオン性不純物が液晶分子の流動によって拡散し偏在することを低減することができる。したがって、イオン性不純物の偏在に起因する表示ムラが生じ難い液晶装置を提供することができる。
【0012】
[適用例2]上記適用例の液晶装置において、前記凸部または凹部は、前記画素電極の少なくとも前記液晶分子の流動方向の隅部に形成されていることが好ましい。
この構成によれば、液晶層を駆動することによって生ずる液晶分子の流動を画素電極側において効率的に阻害することができる。
【0013】
[適用例3]上記適用例の液晶装置において、前記凸部または凹部は、前記画素電極の少なくとも前記液晶分子の流動方向の隅部に対向する前記対向電極の部分に形成されているとしてもよい。
この構成によれば、液晶層を駆動することによって生ずる液晶分子の流動を対向電極側において効率的に阻害することができる。
【0014】
[適用例4]上記適用例の液晶装置において、前記凸部または凹部は、前記液晶分子の流動方向において隣り合う前記画素電極の間に対向する前記対向電極の部分に形成されているとしてもよい。
この構成によれば、対向電極に凸部または凹部を設けても、表示に寄与する画素電極と対向電極の間の液晶層の厚みが変動しない。言い換えれば、凸部または凹部を設けることに伴う光学特性の低下を確実に避けることができる。
【0015】
[適用例5]上記適用例の液晶装置において、前記凸部または凹部は、島状で互いに離間して形成されていることが好ましい。
この構成によれば、凸部または凹部が島状に形成されているので、凸部または凹部によって阻害された液晶分子の流動は、凸部または凹部が形成されていない側に向かうことになる。つまり、液晶分子の流動によって移動するイオン性不純物が特定の方向に拡散・偏在することを低減できる。
【0016】
[適用例6]上記適用例の液晶装置において、前記凸部または凹部は、複数の前記画素電極を隔てて間隔を置いて形成されているとしてもよい。
この構成によれば、画素電極ごとに凸部または凹部を設ける場合に比べて、複雑な構成とならず簡素な構成で液晶分子の流動を阻害できる。
【0017】
[適用例7]上記適用例の液晶装置において、前記凸部または凹部は、有効表示領域の外周に位置する前記画素電極または当該画素電極に対向する前記対向電極の部分に形成されているとしてもよい。
この構成によれば、効率的に凸部または凹部を配置して、有効表示領域の外周側に位置する画素にイオン性不純物の偏在による表示ムラが生ずることを低減できる。
【0018】
[適用例8]上記適用例の液晶装置において、前記画素電極に対応して設けられたトランジスターと、前記トランジスターと平面的に重なるように設けられた遮光部と、を備え、前記凸部または凹部の少なくとも一部は、前記遮光部と重なる位置に設けられていることを特徴とする。
この構成によれば、凸部または凹部を設けた部分の液晶層の厚みが他の部分と異なることに起因する表示ムラを遮光部によって遮光して、目立ち難くすることができる。
【0019】
[適用例9]本適用例の電子機器は、上記適用例の液晶装置を備えたことを特徴とする。
この構成によれば、液晶層中のイオン性不純物が拡散して偏在することに起因する表示ムラが改善され、優れた表示品質を有する電子機器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】(a)は液晶装置の構成を示す概略平面図、(b)は(a)のH−H’線で切った概略断面図。
【図2】液晶装置の電気的な構成を示す等価回路図。
【図3】(a)は液晶装置における無機配向膜の形成状態と液晶分子の配向状態とを示す概略断面図、(b)は液晶分子の挙動を示す概略図。
【図4】イオン性不純物の偏在に伴う表示ムラの一例を示す概略平面図。
【図5】実施例1の液晶装置における画素の配置を示す概略平面図。
【図6】実施例1の液晶装置における凸部または凹部の配置を示す概略平面図。
【図7】(a)は図6のA−A’線で切った実施例1の凸部の構造を示す概略断面図、(b)は図6のA−A’線で切った実施例1の凹部の構造を示す概略断面図。
【図8】実施例1の液晶装置における駆動時の液晶分子の状態を示す概略断面図。
【図9】実施例2の液晶装置における凸部または凹部の配置を示す概略平面図。
【図10】実施例3の液晶装置における凸部または凹部の配置を示す概略平面図。
【図11】電子機器としての投射型表示装置の構成を示す概略図。
【図12】(a)および(b)は変形例の凸部または凹部の配置を示す概略平面図。
【図13】(a)は変形例の対向電極における凸部または凹部の配置を示す概略平面図、(b)および(c)は(a)のD−D’線で切った概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。なお、使用する図面は、説明する部分が認識可能な状態となるように、適宜拡大または縮小して表示している。
【0022】
なお、以下の形態において、例えば「基板上に」と記載された場合、基板の上に接するように配置される場合、または基板の上に他の構成物を介して配置される場合、または基板の上に一部が接するように配置され、一部が他の構成物を介して配置される場合を表すものとする。
【0023】
(第1実施形態)
<液晶装置>
まず、本実施形態の液晶装置について、図1および図2を参照して説明する。図1(a)は液晶装置の構成を示す概略平面図、同図(b)は同図(a)のH−H’線で切った概略断面図、図2は液晶装置の電気的な構成を示す等価回路図である。
【0024】
図1(a)および(b)に示すように、本実施形態の液晶装置100は、対向配置された素子基板10および対向基板20と、これら一対の基板によって挟持された液晶層50とを有する。素子基板10および対向基板20は、透明な例えば石英基板やガラス基板などが用いられている。
【0025】
一対の基板のうち一方の基板としての素子基板10は他方の基板としての対向基板20よりも一回り大きく、両基板は、額縁状に配置されたシール材40を介して接合され、その隙間に負の誘電異方性を有する液晶が封入されて液晶層50を構成している。シール材40は、例えば熱硬化性または紫外線硬化性のエポキシ樹脂などの接着剤が採用されている。シール材40には、一対の基板の間隔を一定に保持するためのスペーサー(図示省略)が混入されている。
【0026】
額縁状に配置されたシール材40の内側には、同じく額縁状に遮光膜21が設けられている。遮光膜21は、例えば遮光性の金属あるいは金属酸化物などからなり、遮光膜21の内側が表示領域Eとなっている。表示領域Eには、マトリックス状に画素Pが複数配置されている。なお、図1では図示省略したが、表示領域Eにおいても複数の画素Pを平面的に区分する遮光部が設けられている。
【0027】
素子基板10の1辺部に沿ったシール材40との間にデータ線駆動回路101が設けられている。また、該1辺部に対向する他の1辺部に沿ったシール材40の内側に検査回路103が設けられている。さらに、該1辺部と直交し互いに対向する他の2辺部に沿ったシール材40の内側に走査線駆動回路102が設けられている。該1辺部と対向する他の1辺部のシール材40の内側には、2つの走査線駆動回路102を繋ぐ複数の配線105が設けられている。これらデータ線駆動回路101、走査線駆動回路102に繋がる配線は、該1辺部に沿って配列した複数の外部接続用端子104に接続されている。
以降、該1辺部に沿った方向をX方向とし、該1辺部と直交し互いに対向する他の2辺部に沿った方向をY方向として説明する。
【0028】
図1(b)に示すように、素子基板10の液晶層50側の表面には、画素Pごとに設けられた光透過性を有する画素電極15およびスイッチング素子としての薄膜トランジスター(TFT;Thin Film Transistor)30と、信号配線と、これらを覆う配向膜18とが形成されている。
また、TFT30における半導体層に光が入射して光リーク電流が流れ、不適切なスイッチング動作となることを防ぐ遮光構造が採用されている。
【0029】
対向基板20の液晶層50側の表面には、遮光膜21と、これを覆うように成膜された層間絶縁膜22と、少なくとも表示領域Eに亘って層間絶縁膜22を覆うように設けられた対向電極23と、対向電極23を覆う配向膜24とが設けられている。
【0030】
遮光膜21は、図1(a)に示すように平面的にデータ線駆動回路101や走査線駆動回路102、検査回路103と重なる位置において額縁状に設けられている。これにより対向基板20側から入射する光を遮蔽して、これらの駆動回路を含む周辺回路の光による誤動作を防止する役目を果たしている。また、不必要な迷光が表示領域Eに入射しないように遮蔽して、表示領域Eの表示における高いコントラストを確保している。
【0031】
層間絶縁膜22は、例えば酸化シリコンなどの無機材料からなり、光透過性を有して遮光膜21を覆うように設けられている。このような層間絶縁膜22の形成方法としては、例えばプラズマCVD法などを用いて成膜する方法が挙げられる。
【0032】
対向電極23は、例えばITOなどの透明導電膜からなり、層間絶縁膜22を覆うと共に、図1(a)に示すように対向基板20の四隅に設けられた上下導通部106により素子基板10側の配線に電気的に接続している。
【0033】
画素電極15を覆う配向膜18および対向電極23を覆う配向膜24は、液晶装置100の光学設計に基づいて選定される。本実施形態では、負の誘電異方性を有する液晶分子が配向膜面に対してプレチルトを与えられて垂直配向するように施されたものであって、例えば、SiOx(酸化シリコン)などの無機材料を物理気相成長法を用いて成膜した無機配向膜が用いられている。物理気相成長法としては、無機材料を真空中で気化して被成膜物上に到達させ成膜する、真空蒸着法、真空スパッタ法などが挙げられる。無機配向膜の形成方法や液晶分子の詳しい配向状態については後述する。
【0034】
図2に示すように、液晶装置100は、少なくとも表示領域Eにおいて互いに絶縁されて直交する信号線としての複数の走査線3aおよび複数のデータ線6aと、走査線3aに対して一定の間隔を置いて平行するように配置された容量線3bとを有する。
【0035】
走査線3aとデータ線6aならびに容量線3bと、これらの信号線類により区分された領域に、画素電極15と、TFT30と、保持容量16とが設けられ、これらが画素Pの画素回路を構成している。
【0036】
走査線3aはTFT30のゲートに電気的に接続され、データ線6aはTFT30のソースに電気的に接続されている。画素電極15はTFT30のドレインに電気的に接続されている。
データ線6aはデータ線駆動回路101(図1参照)に接続されており、データ線駆動回路101から供給される画像信号D1,D2,…,Dnを画素Pに供給する。走査線3aは走査線駆動回路102(図1参照)に接続されており、走査線駆動回路102から供給される走査信号SC1,SC2,…,SCmを各画素Pに供給する。データ線駆動回路101からデータ線6aに供給される画像信号D1〜Dnは、この順に線順次で供給してもよく、互いに隣り合う複数のデータ線6a同士に対してグループごとに供給してもよい。走査線駆動回路102は、走査線3aに対して、走査信号SC1〜SCmを所定のタイミングでパルス的に線順次で供給する。
【0037】
液晶装置100は、スイッチング素子であるTFT30が走査信号SC1〜SCmの入力により一定期間だけオン状態とされることで、データ線6aから供給される画像信号D1〜Dnが所定のタイミングで画素電極15に書き込まれる構成となっている。そして、画素電極15を介して液晶層50に書き込まれた所定レベルの画像信号D1〜Dnは、画素電極15と液晶層50を介して対向配置された対向電極23との間で一定期間保持される。
保持された画像信号D1〜Dnがリークするのを防止するため、画素電極15と対向電極23との間に形成される液晶容量と並列に保持容量16が接続されている。保持容量16は、TFT30のドレインと容量線3bとの間に設けられている。
【0038】
なお、図1(a)に示した検査回路103には、データ線6aが接続されており、液晶装置100の製造過程において、上記画像信号を検出することで液晶装置100の動作欠陥などを確認できる構成となっているが、図2の等価回路では省略している。また、検査回路103は、上記画像信号をサンプリングしてデータ線6aに供給するサンプリング回路、データ線6aに所定電圧レベルのプリチャージ信号を画像信号に先行して供給するプリチャージ回路を含むものとしてもよい。
【0039】
このような液晶装置100は透過型であって、画素Pが非駆動時に暗表示となるノーマリーブラックモードや、非駆動時に明表示となるノーマリーホワイトモードの光学設計が採用される。光学設計に応じて、光の入射側と射出側とにそれぞれ偏光素子が配置されて用いられる。
【0040】
次に、液晶装置100における液晶分子の配向状態について、図3を参照して説明する。図3(a)は液晶装置における無機配向膜の形成状態と液晶分子の配向状態とを示す概略断面図、同図(b)は液晶分子の挙動を示す概略図である。
【0041】
図3(a)に示すように、液晶装置100における画素電極15および対向電極23の表面には、酸化シリコンを物理気相成長法の一例である真空蒸着法により斜め蒸着して得られた配向膜18および配向膜24が形成されている。具体的には、液晶層50に面した基板面に対する蒸着方向の角度θbはおよそ45°である。このような斜め蒸着により基板面には蒸着方向に向って酸化シリコンの結晶体が柱状に成長する。この柱状結晶体をカラム18a,24aと呼ぶ。配向膜18,24はこのようなカラム18a,24aの集合体である。また、基板面に対するカラム18a,24aの成長方向の角度θcは蒸着方向の角度θbと必ずしも一致せず、この場合およそ70°となっている。
【0042】
このような配向膜18,24の表面において垂直配向する液晶分子LCのプレチルト角θpはおよそ85°である。また、基板面の法線方向から見た液晶分子LCを傾斜させるプレチルトの方向すなわち傾斜方向は、配向膜18,24における斜め蒸着の平面的な蒸着方向と同じである。垂直配向処理の上記傾斜方向は、液晶装置100の光学設計条件に基づいて適宜設定される。
このように配向膜面に対して負の誘電異方性を有する液晶分子LCが90°未満のプレチルト角θpを与えられて倒立している配向状態を略垂直配向と呼ぶ。
【0043】
対向配置された素子基板10および対向基板20ならびにこれら一対の基板間に挟持された液晶層50を含めたものを液晶パネル110と呼ぶ。液晶装置100は、液晶パネル110の光の入射側と射出側とにそれぞれ配置された偏光素子41,42を有して用いられる。また、偏光素子41,42は、偏光素子41,42のうちの一方の透過軸または吸収軸がX方向またはY方向に対して平行となるように、且つ互いの透過軸または吸収軸が直交するように液晶パネル110に対してそれぞれ配置されている。
【0044】
本実施形態では、表示領域Eにおいて偏光素子41,42の透過軸または吸収軸に対して液晶分子LCのプレチルトの方位角が45°で交差するように略垂直配向処理が施されている。したがって、図3(b)に示すように画素電極15と対向電極23との間に駆動電圧を印加して液晶層50を駆動すると、液晶分子LCがプレチルトの傾斜方向に倒れることにより、高い透過率が得られる光学的な配置となっている。
液晶層50の駆動(ON/OFF)を繰り返すと、液晶分子LCはプレチルトの傾斜方向に倒れたり、初期の配向状態に戻ったりする挙動を繰り返す。このような液晶分子LCの挙動が起る略垂直配向処理を1軸の略垂直配向処理という。
【0045】
なお、液晶パネル110に対する光の入射方向は、図3(a)に示すように素子基板10側から入射することに限定されない。また、光の入射側または射出側に位相差板などの光学補償素子を備える構成としてもよい。
【0046】
次に、本発明が解決しようとするイオン性不純物の偏在に起因する表示ムラについて、図4を参照して説明する。図4はイオン性不純物の偏在に伴う表示ムラの一例を示す概略平面図である。なお、図4は、液晶装置の光学設計がノーマリーブラックの場合を示している。
【0047】
図4に示すように、表示領域Eにおいて液晶分子LCのプレチルトの傾斜方向は、Y方向となす方位角θaが45°となるように設定されている。具体的には、破線で示した矢印方向が素子基板10に対する斜め蒸着の方向であり、右上から左下に向かう方向である。一方、実線で示した矢印方向が素子基板10に対向配置される対向基板20に対する斜め蒸着の方向であり、左下から右上に向かう方向である(図3参照)。このような表示領域Eにおける液晶分子LCのプレチルトの傾斜方向を方位角θaをそのまま利用して傾斜方向θaと呼ぶ。
【0048】
このような傾斜方向θaによれば、画素Pを駆動することにより、基板面に対して略垂直配向した液晶分子LCが傾斜方向θaに振られる挙動を示す(図3(b)参照)。これにより、傾斜方向θaに向かう液晶分子LCの挙動すなわち流動(フロー)が生じて、液晶中に含まれたイオン性不純物はこの流動(フロー)に沿って液晶中を移動し、やがて表示領域Eの傾斜方向θaに位置する角部に運ばれてイオン性不純物の偏在が生ずる。そうすると、図4に示すように表示領域Eの角部においてイオン性不純物の偏在に起因する例えば焼き付きや輝度ムラなどの表示ムラが発生する。より具体的には、例えばノーマリーブラックの場合、上記角部に位置する画素Pに光漏れが発生し、コントラストが低下する。図4では表示領域Eの角部に位置する3つの画素Pに光漏れが発生した状態を示している。
なお、傾斜方向θaが45°とは、図4に示すように右上がり45°だけでなく、右下がり45°でもよく、その場合には図4において表示領域Eの左上と右下の角部に表示ムラが発生する。つまり、液晶層50に駆動電圧が与えられたときの液晶分子LCの上記傾斜方向θaが液晶分子LCの流動方向となる。
【0049】
発明者は、イオン性不純物の偏在による表示領域Eの角部の表示ムラを改善すべく、液晶装置100を開発した。具体的には、画素電極15および/または対向電極23の表面に上記液晶分子LCの流動を阻害する凸部または凹部を設けて、液晶層50中のイオン性不純物の偏在を抑制した。以下、実施例を挙げて説明する。
【0050】
(実施例1)
図5は実施例1の液晶装置における画素の配置を示す概略平面図、図6は実施例1の液晶装置における凸部または凹部の配置を示す概略平面図、図7(a)は図6のA−A’線で切った実施例1の凸部の構造を示す概略断面図、同図(b)は図6のA−A’線で切った実施例1の凹部の構造を示す概略断面図、図8は実施例1の液晶装置における駆動時の液晶分子の状態を示す概略断面図である。なお、図7および図8では、配向膜18,24の図示を省略している。
【0051】
図5に示すように、液晶装置100における画素Pは、例えば平面的に略四角形の開口領域を有する。開口領域は、X方向とY方向とに延在し格子状に設けられた遮光性の非開口領域(遮光部)により囲まれている。
【0052】
X方向に延在する非開口領域(遮光部)には、図2に示した走査線3aや容量線3bが設けられている。走査線3aや容量線3bは遮光性の導電部材が用いられており、走査線3aや容量線3bによって非開口領域(遮光部)の少なくとも一部が構成されている。
【0053】
同じく、Y方向に延在する非開口領域(遮光部)には、図2に示したデータ線6aが設けられている。データ線6aも遮光性の導電部材が用いられており、これらによって非開口領域(遮光部)の少なくとも一部が構成されている。
【0054】
非開口領域(遮光部)は、素子基板10側に設けられた上記信号線類によって構成されるだけでなく、対向基板20側において格子状にパターニングされた遮光部によっても構成することができる。
【0055】
非開口領域(遮光部)の交差部付近には、図2に示したTFT30や保持容量16が設けられている。遮光性を有する非開口領域(遮光部)の交差部付近にTFT30を設けることにより、TFT30の光誤動作を防止すると共に、開口領域における開口率を確保している。上記交差部付近にTFT30や保持容量16を設ける関係上、上記交差部付近の非開口領域(遮光部)の幅は、他の部分に比べて広くなっている。
【0056】
図6に示すように、実施例1における凸部または凹部は、画素Pにおける画素電極15の4つの隅部15d,15e,15f,15gや、これらの隅部15d,15e,15f,15gに対向する対向電極23の部分(領域)23dに設けられている。また、これらの隅部15d,15e,15f,15gおよび対向電極23の部分(領域)23dは、マトリックス状に配置された複数の画素Pにおいて、前述した非開口領域(遮光部)の交差部に少なくとも一部が平面的に重なっている。なお、図6では隅部15d,15e,15f,15gを判別し易くするようにハッチングを施して示している。また、対向電極23の部分(領域)23dは破線で囲まれた領域である。
【0057】
図6におけるA−A’線は、前述した液晶分子LCの傾斜方向すなわち流動方向に沿って隣り合う画素Pの対角に位置する隅部15d,15fおよび対向電極23の部分(領域)23dを横断している。隅部15d,15e,15f,15gは、平面視で直角二等辺三角形であって、斜辺は液晶分子LCの流動方向に対して直交することになる。同じく、対向電極23の部分(領域)23dは、平面視で四角形(正方形)であって、その相対する辺部のうちの一方は液晶分子LCの流動方向に対して直交することになる。
【0058】
より具体的には、図7(a)に示すように、画素電極15の上記隅部15d,15fに対応する位置に凸部15bが設けられている。また、対向電極23の上記部分(領域)23dに対応する位置に凸部23bが設けられている。
【0059】
凸部15bは画素電極15の基準面15aから液晶層50側に突出するように、画素電極15をパターニングすることによって形成されている。例えば、一定の厚みを有する画素電極15を形成した後に、凸部15bの部分を残して画素電極15をエッチングすることにより、画素電極15の基準面15aと凸部15bとを形成する方法が挙げられる。
【0060】
同じく、凸部23bは対向電極23の基準面23aから液晶層50側に突出するように、対向電極23をパターニングすることによって形成されている。例えば、一定の厚みを有する対向電極23を形成した後に、凸部23bの部分を残して対向電極23をエッチングすることにより、対向電極23の基準面23aと凸部23bとを形成する方法が挙げられる。
【0061】
凸部15b,23bにおけるそれぞれの基準面15a,23aから突出した部分の高さは、少なくとも150nm以上であることが望ましい。また、画素電極15の凸部15bと対向電極23の凸部23bとは液晶層50を介して対向している。画素電極15の基準面15aと対向電極23の基準面23aとの間の液晶層50の厚みをd0とすると、画素電極15の凸部15bと対向電極23の凸部23bとの間の液晶層50の厚みd1は、d1≧3/4×d0の関係を満たすことが望ましい。
【0062】
また、図7(b)に示すように、画素電極15の上記隅部15d,15fに凹部15cを設け、対向電極23の上記部分(領域)23dに凹部23cを設けてもよい。
【0063】
凹部15cは画素電極15の基準面15aから窪むように、画素電極15をパターニングすることによって形成されている。例えば、一定の厚みを有する画素電極15を形成した後に、基準面15aの部分を残して画素電極15をエッチングすることにより、基準面15aと凹部15cとを形成する方法が挙げられる。
【0064】
同じく、凹部23cは対向電極23の基準面23aから窪むように、対向電極23をパターニングすることによって形成されている。例えば、一定の厚みを有する対向電極23を形成した後に、基準面23aの部分を残して対向電極23をエッチングすることにより、基準面23aと凹部23cとを形成する方法が挙げられる。
【0065】
凹部15c,23cにおけるそれぞれの基準面15a,23aから窪んだ部分の深さは、少なくとも150nm以上であることが望ましい。また、画素電極15の凹部15cと対向電極23の凹部23cとは液晶層50を介して対向している。画素電極15の基準面15aと対向電極23の基準面23aとの間の液晶層50の厚みをd0とすると、画素電極15の凹部15cと対向電極23の凹部23cとの間の液晶層50の厚みd2は、d2≦5/4×d0の関係を満たすことが望ましい。
【0066】
図8に示すように、例えば、画素電極15に凸部15bを設けると共に、対向電極23に凸部23bを設けた場合、画素電極15と対向電極23との間に駆動電圧を印加して液晶層50を駆動すると、液晶分子LCは略垂直配向した状態から傾斜方向に傾いた状態に変化する。このような液晶分子LCの挙動が繰り返されることにより、画素電極15の基準面15aや対向電極23の基準面23aに沿って液晶分子LCの流動(フロー)が生ずる。ところが、その液晶分子LCの流動(フロー)は、画素電極15の凸部15bや対向電極23の凸部23bに衝突することによって阻まれる。
【0067】
図8では、画素電極15に凸部15bを設け、対向電極23に凸部23bを設けた例で説明したが、図7(b)に示したように画素電極15に凹部15cを設け、対向電極23に凹部23cを設けた場合でも同様な効果を得ることができる。すなわち、画素電極15の基準面15aや対向電極23の基準面23aに沿って生じた液晶分子LCの流動(フロー)は、画素電極15の凹部15cや対向電極23の凹部23cによってスムーズに流れずに阻まれる。
【0068】
したがって、液晶分子LCの流動(フロー)によって液晶層50中のイオン性不純物が液晶分子LCの傾斜方向(流動方向)に運ばれることが阻まれる。
【0069】
液晶分子LCの流動を阻害するという観点からすれば、画素電極15の凸部15bや凹部15c、対向電極23の凸部23bや凹部23cは、上記隅部15d,15fに対応する部分に設けられていればよい。実施例1では、画素Pの構造が光学特性(視角特性など)に影響を与えることを考慮して、上記隅部15e,15gに対応する部分にも凸部または凹部を設けて、画素Pにおける構造の対称性を確保している。
【0070】
(実施例2)
図9は実施例2の液晶装置における凸部または凹部の配置を示す概略平面図である。実施例2の凸部または凹部は、実施例1に対して画素電極15の隅部15d,15e,15f,15gおよびこれに対向する対向電極23の部分23dにおける配置形状を異ならせたものである。なお、図9でも隅部15d,15e,15f,15gはハッチングが施され、対向電極23の部分(領域)23dは破線で囲んで示している。
【0071】
具体的には、図9に示すように、画素電極15の隅部15d,15e,15f,15gは、平面視で四角形(正方形)となっている。このような配置形状とすることによって、隅部15d,15e,15f,15gおよびこれに対向する対向電極23の部分23dを、前述したマトリックス状に配置された画素Pにおける非開口領域の交差部に納めることができる。つまり、これらの隅部15d,15e,15f,15gや対向電極23の部分23dに設けられる凸部または凹部は遮光部によって遮光される。
【0072】
図9のB−B’線は、図6におけるA−A’線と同じ方向に引かれたものであって、その断面構造は、図7(a)および(b)に示した構造と同様であり、液晶層50を駆動することによって生ずる液晶分子LCの流動は、画素電極15や対向電極23に設けられた凸部または凹部によって阻害される。
【0073】
(実施例3)
図10は実施例3の液晶装置における凸部または凹部の配置を示す概略平面図である。実施例3の凸部または凹部は、実施例1に対して画素電極15の隅部15d,15e,15f,15gおよびこれに対向する対向電極23の部分23dにおける配置形状を異ならせたものである。なお、図10でも隅部15d,15e,15f,15gはハッチングが施され、対向電極23の部分(領域)23dは破線で囲んで示している。
【0074】
具体的には、図10に示すように、画素電極15の隅部15d,15e,15f,15gは、平面視で四角形が直角に折れ曲がった形状(L字状)となっている。このような配置形状とすることによって、隅部15d,15e,15f,15gおよびこれに対向する対向電極23の部分23dを、前述したマトリックス状に配置された画素Pにおける非開口領域の交差部に納められる。
【0075】
図10のC−C’線は、図6におけるA−A’線と同じ方向に引かれたものであって、その断面構造は、図7(a)および(b)に示した構造と同様であり、液晶層50を駆動することによって生ずる液晶分子LCの流動は、画素電極15や対向電極23に設けられた凸部または凹部によって阻害される。特に、実施例3では、画素電極15の隅部15d,15fやこれに対向する対向電極23の部分23dの平面形状が屈曲しているので、実施例1や実施例2に比べて液晶分子LCの流動をより阻害する効果が得られる。
【0076】
上述した実施例1〜実施例3では、画素電極15と対向電極23とにそれぞれ凸部または凹部を設けたが、いずれか一方に凸部または凹部を設ければ、液晶分子LCの流動を阻害する効果が得られる。また、画素電極15および対向電極23のうち、一方に凸部を設け、他方に凹部を設ける組み合わせも採用することができる。
【0077】
以上に述べた上記実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1)上記液晶装置100は、実施例1〜実施例3に示すとおり、液晶分子LCの流動方向における画素電極15の隅部15d,15fと当該隅部15d,15fに対向する対向電極23の部分(領域)23dに凸部または凹部が設けられている。したがって、液晶分子LCの流動が当該凸部または凹部によって阻害され、液晶層50中のイオン性不純物が液晶分子LCの流動によって移動し、表示領域Eの角部に偏在することを低減することができる。ゆえに、イオン性不純物の偏在に起因する表示ムラが低減された液晶装置100を提供することができる。
(2)実施例1〜実施例3に示すとおり、画素電極15や対向電極23に設けられた凸部15b,23bまたは凹部15c,23cは、それぞれ孤立して島状に設けられており、液晶層50中のイオン性不純物が特定の方向に移動することを低減すると共に、凸部15b,23bや凹部15c,23cが設けられていない方向にイオン性不純物を拡散させることができる。言い換えれば、イオン性不純物を特定の部分に偏在させ難くするという点で、例えば、画素電極15の外周を囲むように凸部や凹部を設ける場合に比べてより高い効果が期待できる。
(3)実施例1に示すとおり、画素電極15や対向電極23に設けられた凸部15b,23bまたは凹部15c,23cは、基準面15a,23aに対する高さや深さが、少なくとも150nm以上となっている。加えて、凸部15b,23bまたは凹部15c,23cが設けられた部分の液晶層50の厚みが基準の厚みd0に対して±25%以内に収まるので、画素Pにおける光学特性への影響を抑えつつ、液晶分子LCの流動を阻害してイオン性不純物の偏在を確実に低減できる。
(4)実施例1に示すとおり、画素電極15や対向電極23に設けられた凸部15b,23bまたは凹部15c,23cは、マトリックス状に配置された画素Pの非開口領域における交差部と少なくとも一部が重なるように配置されている。したがって、凸部15b,23bまたは凹部15c,23cを設けることに起因する光漏れなどの不具合が生じても、その不具合を目立ち難くすることができる。実施例2や実施例3では、その不具合をほとんど覆い隠すことができる。
【0078】
(第2実施形態)
<電子機器>
次に、本実施形態の電子機器について図11を参照して説明する。図11は電子機器としての投射型表示装置の構成を示す概略図である。
【0079】
図11に示すように、本実施形態の電子機器としての投射型表示装置1000は、システム光軸Lに沿って配置された偏光照明装置1100と、光分離素子としての2つのダイクロイックミラー1104,1105と、3つの反射ミラー1106,1107,1108と、5つのリレーレンズ1201,1202,1203,1204,1205と、3つの光変調手段としての透過型の液晶ライトバルブ1210,1220,1230と、光合成素子としてのクロスダイクロイックプリズム1206と、投射レンズ1207とを備えている。
【0080】
偏光照明装置1100は、超高圧水銀灯やハロゲンランプなどの白色光源からなる光源としてのランプユニット1101と、インテグレーターレンズ1102と、偏光変換素子1103とから概略構成されている。
【0081】
ダイクロイックミラー1104は、偏光照明装置1100から射出された偏光光束のうち、赤色光(R)を反射させ、緑色光(G)と青色光(B)とを透過させる。もう1つのダイクロイックミラー1105は、ダイクロイックミラー1104を透過した緑色光(G)を反射させ、青色光(B)を透過させる。
【0082】
ダイクロイックミラー1104で反射した赤色光(R)は、反射ミラー1106で反射した後にリレーレンズ1205を経由して液晶ライトバルブ1210に入射する。
ダイクロイックミラー1105で反射した緑色光(G)は、リレーレンズ1204を経由して液晶ライトバルブ1220に入射する。
ダイクロイックミラー1105を透過した青色光(B)は、3つのリレーレンズ1201,1202,1203と2つの反射ミラー1107,1108とからなる導光系を経由して液晶ライトバルブ1230に入射する。
【0083】
液晶ライトバルブ1210,1220,1230は、クロスダイクロイックプリズム1206の色光ごとの入射面に対してそれぞれ対向配置されている。液晶ライトバルブ1210,1220,1230に入射した色光は、映像情報(映像信号)に基づいて変調されクロスダイクロイックプリズム1206に向けて射出される。このプリズムは、4つの直角プリズムが貼り合わされ、その内面に赤色光を反射する誘電体多層膜と青色光を反射する誘電体多層膜とが十字状に形成されている。これらの誘電体多層膜によって3つの色光が合成されて、カラー画像を表す光が合成される。合成された光は、投射光学系である投射レンズ1207によってスクリーン1300上に投射され、画像が拡大されて表示される。
【0084】
液晶ライトバルブ1210は、上述した液晶装置100が適用されたものである。液晶装置100は、色光の入射側と射出側とにおいてクロスニコルに配置された一対の偏光素子の間に隙間を置いて配置されている。他の液晶ライトバルブ1220,1230も同様である。
【0085】
このような投射型表示装置1000によれば、液晶層50中のイオン性不純物の偏在が抑制された液晶装置100を備え、通電による表示ムラが低減され、高い表示品位と信頼性とが実現されている。
【0086】
本発明は、上記した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う液晶装置100および該液晶装置100を適用する電子機器もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。上記実施形態以外にも様々な変形例が考えられる。以下、変形例を挙げて説明する。
【0087】
(変形例1)上記液晶装置100において、凸部または凹部を画素Pごとに設けることに限定されない。図12(a)および(b)は変形例の凸部または凹部の配置を示す概略平面図である。例えば、図12(a)に示すように、凸部または凹部が設けられる画素電極15の隅部15d,15e,15f,15gやこれに対向する対向電極23の部分23dを、複数の画素電極15を隔てて間隔を置いて配置してもよい。これによれば、凸部または凹部を設けることによる画素Pすなわち表示領域Eの光学特性への影響を抑えつつ、液晶分子LCの流動を阻害することができる。
また、図12(b)に示すように、有効な表示領域Eの外周に位置する画素電極15の隅部15d,15e,15f,15gまたは当該隅部15d,15e,15f,15gに対向する対向電極23の部分23dに、凸部または凹部が形成されているとしてもよい。これによれば、効率的に凸部または凹部を配置して、有効な表示領域Eの外周側に位置する画素Pにイオン性不純物の偏在による表示ムラが生ずることを低減できる。なお、前述したように4つの隅部15d,15e,15f,15gに対応させて凸部または凹部を設けなくても、液晶分子LCの流動方向に位置する隅部15d,15fに対応させて凸部または凹部を設けてもよい。
【0088】
(変形例2)上記液晶装置100において、対向電極23に設けられる凸部または凹部は、画素電極15の隅部15d,15e,15f,15gに対向する部分に設けられることに限定されない。図13(a)は変形例の対向電極における凸部または凹部の配置を示す概略平面図、同図(b)および同図(c)は同図(a)のD−D’線で切った概略断面図である。D−D’線は、液晶分子LCの流動方向に沿った方向に引かれている。例えば、図13(a)〜(c)に示すように、平面視で液晶分子LCの流動方向において隣り合う画素電極15の間に凸部23bや凹部23cが形成される対向電極23の部分23dを設定してもよい。これによれば、上記実施例1〜上記実施例3に比べて、液晶分子LCの流動を阻害する部分23dの大きさが小さくなるものの、凸部23bまたは凹部23cを設けても、表示に寄与する画素電極15と対向電極23の間の液晶層50の厚みが変動しない。言い換えれば、凸部23bや凹部23cを設けることに伴う光学特性の低下を確実に避けることができる。なお、上記変形例1に示したように、凸部23bまたは凹部23cを画素Pごとに設けなくてもよく、互いに離間した位置や、有効な表示領域Eの外周側に位置する画素Pに対応する位置に設けてもよい。
【0089】
(変形例3)上記液晶装置100において、負の誘電異方性を有する液晶分子LCを略垂直配向させる配向膜18,24は、無機配向膜に限定されない。例えば、ポリイミドなどの有機配向膜を用いても液晶分子LCを略垂直配向させることができ、本発明を適用できる。
【0090】
(変形例4)本発明を適用可能な液晶装置100は、液晶分子LCが負の誘電異方性を有する略垂直配向(VA;Vertical Alignment)方式に限定されない。例えば、液晶分子LCが正の誘電異方性を有するTN(Twisted Nematic)方式やOCB(Optically Compensated Bend)方式にも適用可能である。TN方式における液晶分子LCの流動方向は、一対の基板のそれぞれにおいて互いに交差するように施された配向処理のベクトルの合成方向となる。したがって、例えば、図4において、素子基板10側の配向処理方向をX方向に沿って左から右へ向かう方向とし、対向基板20側の配向処理方向をY方向に沿って下から上へ向かう方向とすれば、先に説明したとおり、表示領域Eの左下と右上とに表示ムラが発生する。ゆえに、TN方式の場合でも液晶分子LCの流動を阻害する凸部または凹部を設けることは有効である。
なお、VA方式やOCB方式における配向処理は、液晶分子LCの傾斜方向が1軸の配向処理となるため、イオン性不純物が液晶分子LCの流動によって、特定の方向に拡散・偏在し易い。したがって、本発明を適用することで、TN方式に比べるとその効果がより発揮される。
【0091】
(変形例5)本発明を適用可能な液晶装置100は、透過型に限定されない。例えば、光反射性の導電膜を用いて画素電極15が形成される反射型の液晶装置にも適用できる。
【0092】
(変形例6)上記液晶装置100を適用可能な電子機器は、上記第2実施形態の投射型表示装置1000に限定されない。例えば、投射型のHUD(ヘッドアップディスプレイ)や直視型のHMD(ヘッドマウントディスプレイ)、または電子ブック、パーソナルコンピューター、デジタルスチルカメラ、液晶テレビ、ビューファインダー型あるいはモニター直視型のビデオレコーダー、カーナビゲーションシステム、電子手帳、POSなどの情報端末機器の表示部として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0093】
10…一方の基板としての素子基板、15…画素電極、15b…凸部、15c…凹部、15d,15e,15f,15g…画素電極の隅部、20…他方の基板としての対向基板、23…対向電極、23b…凸部、23c…凹部、23d…画素電極の隅部に対向する対向電極の部分、30…薄膜トランジスター(TFT)、50…液晶層、100…液晶装置、1000…電子機器としての投射型表示装置、E…表示領域、LC…液晶分子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の基板と、
前記一対の基板間に挟持された液晶層と、
前記一対の基板のうち一方の基板に複数の画素電極と、
前記一対の基板のうち他方の基板に前記複数の画素電極と対向する対向電極とを備え、
前記画素電極および前記対向電極のうち少なくとも一方に、前記液晶層の液晶分子を駆動することによって生ずる当該液晶分子の流動を阻害するための凸部または凹部が形成されていることを特徴とする液晶装置。
【請求項2】
前記凸部または凹部は、前記画素電極の少なくとも前記液晶分子の流動方向の隅部に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の液晶装置。
【請求項3】
前記凸部または凹部は、前記画素電極の少なくとも前記液晶分子の流動方向の隅部に対向する前記対向電極の部分に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の液晶装置。
【請求項4】
前記凸部または凹部は、前記液晶分子の流動方向において隣り合う前記画素電極の間に対向する前記対向電極の部分に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の液晶装置。
【請求項5】
前記凸部または凹部は、島状で互いに離間して形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の液晶装置。
【請求項6】
前記凸部または凹部は、複数の前記画素電極を隔てて間隔を置いて形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の液晶装置。
【請求項7】
前記凸部または凹部は、有効表示領域の外周に位置する前記画素電極または当該画素電極に対向する前記対向電極の部分に形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の液晶装置。
【請求項8】
前記画素電極に対応して設けられたトランジスターと、
前記トランジスターと平面的に重なるように設けられた遮光部と、を備え、
前記凸部または凹部の少なくとも一部は、前記遮光部と重なる位置に設けられていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の液晶装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の液晶装置を備えたことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−3286(P2013−3286A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−132924(P2011−132924)
【出願日】平成23年6月15日(2011.6.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】