説明

液滴吐出ヘッド用のキャップ機構、及び、液滴吐出装置

【課題】 液滴吐出ヘッド内のインクを大気から遮断して液滴吐出ヘッド内のインクの乾燥を防止し、ノズルの目詰まりを防止すると共に、キャップ部材内の圧力変動を抑制してノズルから液滴吐出ヘッド内への気泡の侵入を抑制する。
【解決手段】 キャップ50からインクを排出する排出管58の途中に、大気開放口66が設けられたインク停留部64を設け、インク停留部64にインクが流入する流入口64Aより高い位置に、インク停留部64からインクが流出する流出口64Bを設け、流出口64Bより高い位置に大気開放口66を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴を吐出するノズルをキャップする液滴吐出ヘッド用のキャップ機構、この液滴吐出ヘッド用のキャップ機構によってノズルをキャップされる液滴吐出ヘッドを備える液滴吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置では、非印字時にキャップ部材をノズル面に密着させてノズルをキャップし、記録ヘッド内のインクを大気から遮断することで、非印字時に記録ヘッド内のインクが乾燥することを防止し、ノズルの目詰まりを防止している。また、印字前にキャップ部材を密着させた状態でキャップ部材内を減圧してノズルからインクを吸引することで、記録ヘッド内の気泡や増粘したインクを除去して記録ヘッド内を良好な状態に回復させている。
【0003】
ここで、記録ヘッド内のインクの乾燥を防止するためには、キャップ部材内の保湿性を高めると効果的である。このため、キャップ部材内の保湿性を高めるための構成がこれまで種々考案されている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1に記載のインクジェット記録装置では、キャップ部材からインクを排出する排出管の途中にインクが一旦停留するインク停留部を設け、このインク停留部の水分でキャップ部材内を保湿している。
【0004】
ところで、ノズルの周囲はキャップ部材によって密閉状態とされているので、キャップ部材の外部の気温や気圧が変動すると、キャップ部材の内圧が変動し、ノズルから気泡が侵入して吐出不良を起こすことがある。このため、特許文献1に記載のインクジェット記録装置では、インク停留部の一部を可撓性部材で構成してキャップ部材内の圧力変動を抑制している。
【0005】
しかしながら、インクを吸引する際にはポンプ等の吸引手段の吸引圧がインク停留部に作用することから、可撓性部材の剛性を吸引手段の吸引圧に耐え得る程度まで高くしなければならないので、キャップ部材内の微小な圧力変動を抑制できる程度まで可撓性部材の剛性を低くすることができず、ノズルからの気泡の侵入を防止することは困難であった。
【特許文献1】特開2004−291357号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記事実を考慮してなされたものであり、液滴吐出ヘッド内の液体を大気から遮断して液滴吐出ヘッド内の液体の乾燥を防止し、ノズルの目詰まりを防止すると共に、キャップ部材内の圧力変動を抑制してノズルから液滴吐出ヘッド内への気泡の侵入を抑制する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の液滴吐出ヘッド用のキャップ機構は、液滴を吐出するノズルをキャップするキャップ部材と、前記キャップ部材から液体を排出する排出路と、前記排出路の途中に設けられ、前記キャップ部材から排出された液体を停留させる液体停留部と、を備える液滴吐出ヘッド用のキャップ機構であって、前記液体停留部に停留した液体の排出方向下流側に、前記排出路を大気に開放する大気開放口を設け、前記液体停留部に停留した液体の排出方向上流側と排出方向下流側との気体の連通を、前記液体停留部に停留した液体によって阻止したことを特徴とする。
【0008】
請求項1に記載の液滴吐出ヘッド用のキャップ機構では、キャップ部材が液滴吐出ヘッドのノズルをキャップする。このキャップ部材には排出路が接続されており、ノズルからキャップ部材へ排出された液体が、排出路を通って排出される。この際、排出路を通る液体は、排出路の途中に設けられた液体停留部に停留する。
【0009】
ここで、液体停留部に停留した液体の排出方向下流側には、大気開放口が設けられており、排出路が大気に開放されている。また、液体停留部に停留した液体の排出方向上流側と排出方向下流側との気体の連通が、液体停留部に停留した液体によって阻止されている。
【0010】
即ち、大気開放口とキャップ部材との間を流動自在な液体によって気密状態で封止したことで、キャップ部材内を大気から遮断できると共に、キャップ部材の内圧の変動分を大気に逃がすことができる。従って、液滴吐出ヘッド内の液体の乾燥を防止でき、ノズルの目詰まりを防止できると共に、ノズルから液滴吐出ヘッド内への気泡の侵入を抑制できる。
【0011】
請求項2に記載の液滴吐出ヘッド用のキャップ機構は、請求項1に記載の液滴吐出ヘッド用のキャップ機構であって、前記液体停留部へ液体が流入する流入口より高い位置に、前記液体停留部から液体が流出する流出口を設け、前記流出口より高い位置に、前記大気開放口を設けたことを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載の液滴吐出ヘッド用のキャップ機構では、液体停留部へ液体が流入する流入口より高い位置に、液体停留部から液体が流出する流出口が設けられていることで、液体停留部の排出方向上流側と排出方向下流側が、液体停留部に停留した液体によって、気密状態で封止される。そして、流出口より高い位置に大気開放口が設けられていることで、液体停留部内に停留した液体の排出方向上流側と排出方向下流側にそれぞれ位置するキャップ部材と大気開放口が、液体停留部に停留した液体によって、気密状態で封止される。
【0013】
これによって、キャップ部材内を大気から遮断できると共に、キャップ部材の内圧の変動分を大気に逃がすことができるので、液滴吐出ヘッド内の液体の乾燥を防止でき、ノズルの目詰まりを防止できると共に、ノズルから液滴吐出ヘッド内への気泡の侵入を抑制できる。
【0014】
請求項3に記載の液滴吐出ヘッド用のキャップ機構は、請求項1又は2に記載の液滴吐出ヘッド用のキャップ機構であって、前記大気開放口より排出方向下流側に設けられ、前記キャップ部材内を減圧する減圧手段と、前記大気開放口を開閉する開閉手段と、を有することを特徴とする。
【0015】
請求項3に記載の液滴吐出ヘッド用のキャップ機構では、大気開放口より排出方向下流側に減圧手段が設けられており、減圧手段によってキャップ部材内が減圧され、ノズルから液体が吸引される。また、キャップ部材内に溜まった液体がキャップ部材内から排出路へ吸引される。ここで、吸引手段を大気開放口より排出方向下流側に設けたことで、常時、キャップ部材の内圧の変動分を大気に逃がすことが可能となる。
【0016】
また、大気開放口が開閉手段によって開閉される。大気開放口を閉じた状態で減圧手段を作動させることで、キャップ部材内を効率的に減圧でき、液体の吸引動作を効率的に行うことができる。
【0017】
請求項4に記載の液滴吐出ヘッド用のキャップ機構は、請求項1乃至3の何れか1項に記載の液滴吐出ヘッド用のキャップ機構であって、前記ノズルが形成されたノズル面を前記キャップ部材に対して相対的に接離させる第1接離手段と、前記第1接離手段を制御する第1制御手段と、を有し、電源がオフになった時、及び、前記ノズルからの液滴の吐出が停止している時間が所定時間を経過した時、前記第1制御手段によって前記第1接離手段が制御されて、前記ノズル面と前記キャップ部材が当接されることを特徴とする。
【0018】
請求項4に記載の液滴吐出ヘッド用のキャップ機構では、第1接離手段が第1制御手段によって制御されて、ノズルが形成されたノズル面がキャップ部材に対して相対的に接離される。
【0019】
ここで、電源がオフになった時、及び、ノズルからの液滴の吐出が停止している時間が所定時間を経過した時には、第1制御手段によって第1接離手段が制御されて、キャップ部材とノズル面が当接される。これによって、液滴吐出ヘッド内に長時間停留する液体が乾燥することを防止でき、ノズルの目詰まりを防止できる。
【0020】
請求項5に記載の液滴吐出ヘッド用のキャップ機構は、請求項3及び4に記載の液滴吐出ヘッド用のキャップ機構であって、前記減圧手段を制御する第2制御手段を有し、前記減圧手段の作動により前記ノズルから液体が吸引された後、前記第1制御手段によって前記第1接離手段が制御されて、前記ノズル面と前記キャップ部材が離間され、前記第2制御手段によって前記減圧手段が作動されることを特徴とする。
【0021】
請求項5に記載の液滴吐出ヘッド用のキャップ機構では、第1接離手段が第1制御手段によって制御されて、ノズル面がキャップ部材に対して相対的に接離される。また、減圧手段が第2制御手段によって制御されて、キャップ部材内が減圧される。
【0022】
ここで、減圧手段の作動によりノズルから液体が吸引された後には、第1制御手段によって第1接離手段が制御されて、キャップ部材とノズル面が離間され、第2制御手段によって減圧手段が作動される。これによって、ノズルから新たに液体が吸引されることなく、キャップ部材内に溜まった液体がキャップ部材内から吸い出される。
【0023】
請求項6に記載の液滴吐出ヘッド用のキャップ機構は、請求項3に記載の液滴吐出ヘッド用のキャップ機構であって、前記開閉手段が、前記大気開放口に設けられ、前記排出路の内圧が前記排出路の外圧より高くなると前記大気開放口を開放し、前記排出路の内圧が前記排出路の外圧より低くなると前記大気開放口を閉塞する差圧弁であることを特徴とする。
【0024】
請求項6に記載の液滴吐出ヘッド用のキャップ機構では、大気開放口に差圧弁が設けられている。この差圧弁は、排出路の内圧が排出路の外圧より高くなると大気開放口を開放し、排出路の内圧が排出路の外圧より低くなると大気開放口を閉塞する。
【0025】
即ち、キャップ部材の内圧が上昇すると、差圧弁によって大気開放口が開放されて、キャップ部材の内圧の上昇分が大気に逃がされるので、ノズルから液滴吐出ヘッド内への気泡の侵入を抑制できる。また、減圧手段が作動され、排出路の内圧が低下すると、差圧弁によって大気開放口が閉塞されるので、キャップ部材内に効率的に減圧を発生させることができ、ノズルから又はキャップ部材内からの液体の吸引を効率的に行うことができる。
【0026】
請求項7に記載の液滴吐出ヘッド用のキャップ機構は、請求項3に記載の液滴吐出ヘッド用のキャップ機構であって、前記開閉手段が、前記大気開放口と対向するように設けられた封止部材と、前記封止部材を前記大気開放口に対して相対的に接離させる第2接離手段と、を有することを特徴とする。
【0027】
請求項7に記載の液滴吐出ヘッド用のキャップ機構では、封止部材が大気開放口と対向するように設けられており、第2接離手段によって、封止部材が大気開放口に対して相対的に接離される。これによって、大気開放口が開閉される。
【0028】
請求項8に記載の液滴吐出ヘッド用のキャップ機構は、請求項7に記載の液滴吐出ヘッド用のキャップ機構であって、前記第2接離手段は、前記封止部材を前記大気開放口に対して相対的に接離させると共に、前記ノズルが形成されたノズル面を前記キャップ部材に対して相対的に接離させることを特徴とする。
【0029】
請求項8に記載の液滴吐出ヘッド用のキャップ機構では、第2接離手段によって、封止部材が大気開放口に対して相対的に接離されると共に、ノズル面がキャップ部材に対して相対的に接離される。
【0030】
請求項9に記載の液滴吐出ヘッド用のキャップ機構は、請求項8に記載の液滴吐出ヘッド用のキャップ機構であって、前記ノズル面が前記キャップ部材から離間した状態で、前記キャップ部材の前記ノズル面に対する相対高さが前記大気開放口の前記封止部材に対する相対高さより高くなるように、前記キャップ部材と前記液滴吐出ヘッドの何れか一方を支持する、高さ方向へ伸縮可能な支持手段を有することを特徴とする。
【0031】
請求項9に記載の液滴吐出ヘッド用のキャップ機構では、キャップ部材と液滴吐出ヘッドの何れか一方が、高さ方向へ伸縮可能な支持手段によって支持されており、ノズル面がキャップ部材から離間した状態で、キャップ部材のノズル面に対する相対高さが、大気開放口の封止部材に対する相対高さより高くなっている。
【0032】
このため、第2接離手段によって、封止部材が大気開放口に対して相対的に接近されると共に、ノズル面がキャップ部材に対して相対的に接近されると、まず、ノズル面とキャップ部材が当接し、その後、支持手段が収縮して封止部材と大気開放口が当接する。
【0033】
これによって、ノズルと排出路の両方を大気に開放する形態、キャップ部材によってノズルをキャップし、排出路を大気に開放する形態、ノズルをキャップし、排出路を大気から遮断する形態の3形態をとることが可能となる。
【0034】
請求項10に記載の液滴吐出ヘッド用のキャップ機構は、請求項9に記載の液滴吐出ヘッド用のキャップ機構であって、前記第2接離手段によって、前記封止部材が前記大気開放口に対して、前記ノズル面が前記キャップ部材に対して、相対的に接離されると、前記ノズル面と前記キャップ部材、前記封止部材と前記大気開放口が共に非接触となる第1形態、前記ノズル面と前記キャップ部材が当接し、前記封止部材と前記大気開放口が非接触となる第2形態、前記ノズル面と前記キャップ部材、前記封止部材と前記大気開放口が共に当接する第3形態の何れか1つの形態になることを特徴とする。
【0035】
請求項10に記載の液滴吐出ヘッド用のキャップ機構では、第2接離手段によって、封止部材が大気開放口に対して、液滴吐出ヘッドがキャップ部材に対して、相対的に接離されると、ノズル面とキャップ部材、封止部材と大気開放口が共に非接触となる第1形態、支持手段が伸長したままノズル面とキャップ部材が当接し、封止部材と大気開放口が非接触となる第2形態、支持手段が収縮してノズル面とキャップ部材、封止部材と大気開放口が共に当接する第3形態の何れか1つの形態になる。
【0036】
これによって、第2形態になった時に、ノズルを大気から遮断すると共に、キャップ部材の内圧の変動分を大気に逃がすことができる。また、第3形態になった時に、減圧手段からノズル面までの間を密閉状態にすることができ、キャップ部材内に効率的に減圧を発生させ、ノズルからの液体の吸引を効率的に行うことができる。
【0037】
請求項11に記載の液滴吐出ヘッド用のキャップ機構は、請求項10に記載の液滴吐出ヘッド用のキャップ機構であって、前記第2接離手段を制御する第3制御手段を有し、電源がオフになった時、及び、前記ノズルからの液滴の吐出が停止している時間が所定時間を経過した時、前記第3制御手段によって前記第2接離手段が制御されて、前記第2形態になることを特徴とする。
【0038】
請求項11に記載の液滴吐出ヘッド用のキャップ機構では、第2接離手段が第3制御手段によって制御されており、電源がオフになった時、及び、ノズルからの液滴の吐出が停止している時間が所定時間を経過した時、支持手段が伸長したままノズル面とキャップ部材が当接し、封止部材と大気開放口が非接触となる第2形態になる。これによって、液滴吐出ヘッド内に長時間停留する液体が乾燥することを防止でき、ノズルの目詰まりを防止できる。また、キャップ部材の内圧の変動分を大気に逃がすことができるので、ノズルから液滴吐出ヘッド内への気泡の侵入を抑制できる。
【0039】
請求項12に記載の液滴吐出ヘッド用のキャップ機構は、請求項1乃至11の何れか1項に記載の液滴吐出ヘッド用のキャップ機構であって、前記液体停留部が、天面の面積を底面の面積より小さくした容器であることを特徴とする。
【0040】
請求項12に記載の液滴吐出ヘッド用のキャップ機構では、液体停留部が、天面の面積を底面の面積より小さくした容器となっている。このため、液体停留部に停留した液体の液面の面積、即ち空気との接触面積が狭くなるので、液体停留部に停留した液体の乾燥を抑制できる。これによって、キャップ部材内の保湿性の低下を抑制でき、また、排出路での液体の流動性の悪化を抑制できる。
【0041】
請求項13に記載の液滴吐出装置は、請求項1乃至12の何れか1項に記載の液滴吐出ヘッド用のキャップ機構と、液滴を吐出し、また、前記キャップ部材によってキャップされるノズルを備える液滴吐出ヘッドと、前記ノズルに対向させて記録媒体を搬送する搬送手段と、を有することを特徴とする。
【0042】
請求項13に記載の液滴吐出装置では、搬送手段によって液滴吐出ヘッドのノズルに対向されて搬送される記録媒体に、ノズルから液滴が吐出された液滴が着弾する。また、キャップ部材によってノズルがキャップされることで、液滴吐出ヘッド内の液体の乾燥が防止される。
【0043】
ここで、上述したように、キャップ部材と大気開放口との間を流動自在な液体によって封止したことで、ノズルがキャップ部材によってキャップされている間、キャップ部材内への空気の流入が防止されると共に、キャップ部材内が圧力的に大気に連通される。これによって、液滴吐出ヘッド内のインクの保湿性を維持できると共に、キャップ部材の内圧の変動を抑制できる。従って、ノズルの目詰まりを防止できると共に、ノズルから液滴吐出ヘッド内への気泡の侵入を抑制できる。
【発明の効果】
【0044】
本発明は上記構成にしたので、液滴吐出ヘッド内のインクが大気から遮断されて液滴吐出ヘッド内のインクの乾燥が防止され、ノズルの目詰まりを防止されると共に、キャップ部材内の圧力変動が抑制されてノズルから液滴吐出ヘッド内への気泡の侵入が抑制される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0046】
図1には、本実施形態のインクジェット記録装置12が示されている。インクジェット記録装置12の筐体14内の下部には給紙トレイ16が備えられており、給紙トレイ16内に積層された用紙Pをピックアップロール18で1枚ずつ取り出すことができる。取り出された用紙Pは、所定の搬送経路22を構成する複数の搬送ローラ対20で搬送される。
【0047】
給紙トレイ16の上方には、駆動ロール24及び従動ロール26に張架された無端状の搬送ベルト28が配置されている。搬送ベルト28の上方には記録ヘッドアレイ30が配置されており、搬送ベルト28の平坦部分28Fに対向している。この対向した領域が、記録ヘッドアレイ30からインク滴が吐出される吐出領域SEとなっている。搬送経路22を搬送された用紙Pは、搬送ベルト28で保持されてこの吐出領域SEに至り、記録ヘッドアレイ30に対向した状態で、記録ヘッドアレイ30から画像情報に応じたインク滴が付着される。
【0048】
記録ヘッドアレイ30は、本実施形態では、有効な記録領域が用紙Pの幅(搬送方向と直交する方向の長さ)以上とされた長尺状とされ、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、サイアン(S)、及びブラック(K)の4色それぞれに対応した4つのインクジェット記録ヘッド(以下、記録ヘッドという)32が搬送方向に沿って配置されており、フルカラーの画像を記録可能になっている。
【0049】
各記録ヘッド32は、ヘッド駆動回路(図示省略)によって制御される。ヘッド駆動回路は、たとえば、画像情報に応じてインク滴の吐出タイミングや使用するインク吐出口(ノズル)を決め、駆動信号を記録ヘッド32に送る構成である。
【0050】
また、記録ヘッドアレイ30は、搬送方向と直交する方向に不動とされていてもよいが、必要に応じて移動するように構成しておくと、マルチパスによる画像記録で、より解像度の高い画像を記録したり、記録ヘッド32の不具合を記録結果に反映させないようにしたりできる。
【0051】
記録ヘッドアレイ30の両側には、それぞれの記録ヘッド32に対応した4つのメンテナンスユニット10が配置されている。図2に示すように、記録ヘッド32に対してキャップを行う場合に、メンテナンスユニット10は、記録ヘッドアレイ30を上方へ移動させて、搬送ベルト28との間に構成された間隙に移動して入り込み、そして、ノズル面32N(図3参照)に対向した状態で、所定のメンテナンス動作(吸引、ワイピング、キャッピング等)を行う。
【0052】
図3に示すように、記録ヘッドアレイ30の上流側には、電源38が接続された帯電ロール36が配置されている。帯電ロール36は、従動ロール26との間で搬送ベルト28及び用紙Pを挟みつつ従動し、用紙Pを搬送ベルト28に押圧する押圧位置と、搬送ベルト28から離間した離間位置との間を移動可能とされている。押圧位置では、接地された従動ロール26との間に所定の電位差が生じるため、用紙Pに電荷を与えて搬送ベルト28に静電吸着させることができる。
【0053】
記録ヘッドアレイ30の下流側には、剥離プレート40が配置されており、用紙Pを搬送ベルト28から剥離させる。剥離された用紙Pは、剥離プレート40の下流側で排出経路44を構成する複数の排出ローラ対42で搬送され、筐体14の上部に設けられた排紙トレイ46に排出される。
【0054】
また、記録ヘッドアレイ30の上方には、各色のインクを貯留するインクタンク34が配置されている。各インクタンク34には、各記録ヘッド32が接続されている。
【0055】
以下、メンテナンスユニット10の構成について説明する。なお、ここでは、1つのメンテナンスユニット10について説明するが、その他のメンテナンスユニット10も同様の構成である。また、第2実施形態では、第1実施形態と同様の構成には同一の符号を付し、説明は省略する。
[第1実施形態]
図4、図5に示すように、メンテナンスユニット10には、記録ヘッド32のノズル面32Nの下方に設けられたキャップ50と、記録ヘッド32を上下方向(図中矢印A方向)へ移動させてキャップ50に接離させる接離機構52が備えられている。キャップ50は、上面が開口した矩形箱状の部材で、ノズル面32Nに密着可能となっている。また、キャップ50は、支持機構54を介して支持台56に支持されている。
【0056】
支持機構54は、支持台56に取付けられた板54Aと、キャップ50の下面に取付けられた板54Bと、板54A、54Bに両端部を取付けられた複数本の弾性部材54Cとで構成されている。弾性部材54Cは、伸縮可能な圧縮コイルバネであり、キャップ50が下方へ押されると収縮し、キャップ50が下方へ押されなくなると弾性力で伸長し元の形状に復帰する。
【0057】
また、支持台56は、ノズル面32Nに沿って水平方向(図中矢印B方向)へ移動可能となっており、この支持台56が移動することで、キャップ50が、ノズル面32Nと搬送ベルト28との間に構成された間隙とこの間隙の外側との間で移動する。
【0058】
また、接離機構52は、ボールネジ52A、52B、連結具52C、52D、モータ52E、ギア52F、52G、駆動伝達ベルト52Hで構成されている。ボールネジ52A、52Bはそれぞれ、記録ヘッド32の長手方向の一端側と他端側に回転可能に設けられて上下方向へ延びている。また、連結具52Cは、記録ヘッド32の長手方向の一端部に取付けられボールネジ52Aに螺合しており、連結具52Dは、記録ヘッド32の長手方向の他端部に取付けられボールネジ52Bに螺合している。また、モータ52Eは、ボールネジ52Aの軸方向一端部に回転軸を連結され、ギア52F、ギア52Gはそれぞれ、ボールネジ52A、52Bの軸方向他端部に取付けられている。また、駆動伝達ベルト52Hは、ギア52F、52Gに巻き掛けられ、内周面に形成された歯型をギア52F、52Gの歯型に噛合わせている。このため、モータ52Eが駆動されると、ボールネジ52Aが回転し、ボールネジ52Aの回転がギア52F、駆動伝達ベルト52H、ギア52Gによってボールネジ52Bに伝達され、ボールネジ52Bが回転する。これによって、連結具52C、52Dが上下動し、連結具52C、52Dによってボールネジ52A、52Bに支持された記録ヘッド32が上下動する。
【0059】
また、キャップ50の底面には、排出路58の一端部が接続されている。排出路58の他端部は、廃インクタンク60内に挿入されている。また、排出路58の途中にはポンプ62が設けられている。また、排出路58の途中のキャップ50とポンプ62との間には、インク停留部64が設けられている。即ち、排出路58は、キャップ50とインク停留部64を連通する第1排出路58Aと、インク停留部64と、インク停留部64とポンプ62を連通する第2排出路58Bと、ポンプ62と、ポンプ62から廃インクタンク60へ延びる第3排出路58Cとで構成されている。なお、第1排出路58A、第2排出路58B、第3排出路58Cはチューブである。
【0060】
インク停留部64は、支持台56に支持された中空の容器でインクが停留する。このため、キャップ50内の保湿性が高くなり、記録ヘッド32内のインクの乾燥を抑制できる。また、インク停留部64の上面には通気管68が挿入されている。この通気管68は上方へ延びており、先端の開口部が大気開放口66となっている。また、ノズル面32Nの大気開放口66と対向する位置には、スポンジ等の封止部材70が取付けられている。
【0061】
ここで、ノズル面32Nと封止部材70は面一になっており、また、ノズル面32Nがキャップ50から離間した状態で、キャップ50の開口面が大気開放口66より高くなるように、キャップ50が支持機構54によって支持されている。即ち、キャップ50の開口面のノズル面32Nに対する相対高さが、大気開放口66の封止部材70に対する相対高さより高くなっている。
【0062】
このため、記録ヘッド32が接離機構52によってキャップ50に対して接離されると一緒に封止部材70が大気開放口66に対して接離され、ノズル面32Nとキャップ50、封止部材70と大気開放口66が共に非接触となる第1形態(図4参照)、支持機構54が伸長した状態でノズル面32Nとキャップ50が当接し、封止部材70と大気開放口66が非接触となる第2形態(図6参照)、支持機構54が収縮してノズル面32Nとキャップ50、封止部材70と大気開放口66が共に当接する第3形態(図7参照)の何れか1つの形態になる。
【0063】
モータ52Eは制御部72によって、ポンプ62は制御部74によってそれぞれ制御されており、所定の条件やタイミングで記録ヘッド32のメンテナンス動作が行われるようになっている。インク吸引動作時には、図8のフローチャートに示すように、まず、ステップ1においてインクジェット記録装置12全体の制御を司る主制御部(図示省略)からインク吸引動作を指示する信号が出力されるまで否定判定が繰り返され、肯定されるとステップ2へ進む。ステップ2では、制御部72によってモータ52Eが駆動されて、上記第3形態になるまで記録ヘッド32が下降される(図7参照)。次に、ステップ3では、制御部74によってポンプ62が駆動されキャップ50内が減圧される。この際、ノズル33がキャップ50によってキャップされ、大気開放口66が封止部材70によって閉塞されているので、ポンプ62からノズル33までの間が密閉状態になる。従って、ノズル33に吸引圧が効率的に作用するので、ノズル33からインクを効率的に吸引することができる。
【0064】
次に、ステップ4では、制御部72によってモータ52Eが駆動されて、上記第1形態になるまで記録ヘッド32が上昇される(図5参照)。次に、ステップ5では、図示しないワイパーが駆動されて、ノズル面32Nからインクが掻き落される。次に、ステップ6では、制御部74によってポンプ62が駆動される。この際、大気開放口66、キャップ50は開放されているので、ステップ2における吸引動作と比べるとキャップ50に作用する吸引圧が低下するが、キャップ50に溜まったインクを吸引することが可能となる吸引圧がキャップ50に作用するように、大気開放口66の口径や通気管68の長さ、インク停留部64の容積等が設定されている。
【0065】
次に、ステップ7では、記録ヘッド32からのインク滴の吐出が停止されてから所定時間経過したか否かが判定され、肯定されるとステップ9へ否定されるとステップ8へ進む。ステップ8では、電源がオフになるまで否定判定が繰り返されてステップ7へ戻り、肯定されるとステップ9へ進む。ステップ9では、制御部72によってモータ52Eが駆動されて、上記第2形態になるまで記録ヘッド32が下降される(図6参照)。そして、処理ルーチンを終了する。
【0066】
ここで、図6に示すように、第1排出路58Aは、インク停留部64の側壁の下部に接続され、第2排出路58Bは、インク停留部64の側壁の上部に接続されている。即ち、インク停留部64へインクが流入する流入口64Aより高い位置に、インク停留部64からインクが流出する流出口64Bが設けられている。また、大気開放口66は、インク停留部64の上面よりも上方に設けられているので、流出口64Bより高い位置に存在する。
【0067】
このため、インク停留部64内では、流入口64Aと流出口64Bとの間にインクが停留し、第1排出路58Aと第2排出路58Bとの間が、停留したインクによって気密状態で封止され、停留したインクの液面より上方に配設された大気開放口66とキャップ部材50内との気体の連通が、停留したインクによって阻止される。
【0068】
即ち、大気開放口66とキャップ50との間を流動自在なインクによって気密状態で封止したことで、キャップ50内を大気から遮断できると共に、キャップ50の内圧の変動分を大気に逃がすことができる。従って、記録ヘッド32内のインクの乾燥を防止でき、ノズル33の目詰まりを防止できると共に、ノズル33から記録ヘッド32内への気泡の侵入を抑制できる。
【0069】
なお、ポンプ62を大気開放口66より排出方向下流側に設けたことで、常時、キャップ50の内圧の変動分を大気に逃がすことが可能となっている。
【0070】
また、大気開放口66が封止部材70によって開閉可能とされているので、大気開放口66を閉じた状態でインク吸引動作を行うことで、キャップ50内を効率的に減圧でき、インクの吸引を効率的に行うことができる。
【0071】
また、インクジェット記録装置12の電源がオフになった時、及び、記録ヘッド32がインク滴の吐出を停止している時間が所定時間を経過した時には、キャップ50によってノズル33がキャップされることで、記録ヘッド32内に長時間停留するインクが乾燥することを防止でき、ノズル33の目詰まりを防止できる。
【0072】
また、インク停留部64を、天面の面積が底面の面積より小さい容器としたことで、インク停留部64に停留したインクの液面の面積、即ち空気との接触面積が狭くなるので、インク停留部64に停留したインクの乾燥を抑制できる。これによって、記録ヘッド32内のインクの保湿性の低下を抑制でき、また、排出路58でのインクの流動性の悪化を抑制できる。
【0073】
なお、本実施形態では、記録ヘッド32をキャップ50に対して接離させ、封止部材70を大気開放口66に対して接離させたが、ノズル面32Nがキャップ50に対して相対的に接離し、封止部材70が大気開放口66に対して相対的に接離すれば良いので、キャップ50を記録ヘッド32に対して接離させ、大気開放口66を封止部材70に対して接離させても良い。
【0074】
また、本実施形態では、記録ヘッド32をキャップ50に対して接離させ、封止部材70を大気開放口66に対して接離させたので、キャップ50を支持機構54によって支持台56に変位可能に支持したが、キャップ50を記録ヘッド32に対して接離させ、大気開放口66を封止部材70に対して接離させる場合は、記録ヘッド32を変位可能に上方の支持部材に支持すれば良い。
【0075】
また、本実施形態では、記録ヘッド32をキャップ50に対して相対的に接離する機構と、封止部材70を大気開放口66に対して相対的に接離する機構とを共通化しているが、これは必須ではなく、個別に設けても良い。
【0076】
また、本実施形態では、ノズル面32Nがキャップ50から離間した状態で、キャップ50の上面が大気開放口66より高い位置に位置するようになっているが、キャップ50のノズル面32Nに対する相対高さが、大気開放口66の封止部材70に対する相対高さより高ければ良く、ノズル面32Nがキャップ50から離間した状態での、キャップ50の上面と大気開放口66との位置関係、ノズル面32Nと封止部材70との位置関係は特に限定されない。
【0077】
また、本実施形態では、大気開放口66をインク停留部64に設けたが、大気開放口66は、インク停留部64に停留したインクの排出方向下流側且つポンプ62の排出方向上流側に設けられていれば良く、第2排出路58Bに設けても良い。
【0078】
また、本実施形態では、排出路58の途中にポンプ62を設けてキャップ50内を減圧することで、ノズル33からインクを吸引したが、記録ヘッド32へインクを供給するインク供給路にポンプを設けて、記録ヘッド32内を加圧してノズル33からインクを吐出させるようにしても良い。
【0079】
さらに、本実施形態では、インク停留部64を箱形状の容器とし、流入口64Aより高い位置に流出口64Bを設け、流出口64Bより高い位置に大気開放口66を設けることで、大気開放口66とキャップ50内との気体の連通を阻止したが、図9に示すような構成も適用可能である。この構成では、排出路58´の一部をU字状に屈曲させてインク停留部64´を形成し、インク停留部64´に停留したインクの排出方向下流側に大気開放口66を設けることで、大気開放口66とキャップ50内との気体の連通を阻止することが可能となっている。
[第2実施形態]
図10に示すように、メンテナンスユニット100は、大気開放口66を開閉する機構が第1実施形態のメンテナンスユニット10と異なる。インク停留部64の上面には差圧弁80が取付けられている。この差圧弁80は、インク停留部64の上面に取付けられ、大気開放口66が形成されたケース80Aと、大気開放口66内に収容されたボール80Bとで構成されている。大気開放口66は、インク停留部64の上部から上方へ延びているが、上端側と下端側とは同等の内径となっており、その間は、上方へかけて次第に拡径するテーパ部66Aとなっている。また、ボール80Bは、大気開放口66の上下端部の内径より大径且つテーパ部66Aの最大径より小径になっており、テーパ部66A内で移動可能となっている。
【0080】
ここで、排出路58の内圧が排出路58の外圧より高くなると、大気開放口66ではインク停留部64側から大気側へ圧力がかかり、ボール80Bに浮力が作用するので、大気開放口66が開放される。一方、排出路58の内圧が排出路58の外圧より低くなると、大気開放口66では大気側からインク停留部64側へ圧力がかかり、ボール80Bがテーパ部66Aに圧接されるので、大気開放口66が閉塞される。
【0081】
このため、温度が上昇する等してキャップ50の内圧が上昇した場合には、差圧弁80によって大気開放口66が開放されてキャップ50の内圧の上昇分が大気に逃がされる。これによって、ノズル33から記録ヘッド32内への気泡の侵入を抑制できる。
【0082】
一方、温度が低下する等してキャップ50の内圧が低下した場合には、差圧弁80によって大気開放口66は閉塞されたままとなるので、ノズル33からインクが引き出されてノズル面32Nに付着する可能性が有るが、その後、図11に示すように、キャップ50をノズル面32Nから離間させると、記録ヘッド32に予め設定されている背圧によって、ノズル面32Nから記録ヘッド32内にインクが引き込まれ、印字可能な状態になる。
【0083】
ここで、モータ52Eは制御部102によって、ポンプ62は制御部104によってそれぞれ制御されており、所定の条件やタイミングで記録ヘッド32のメンテナンス動作が行われるようになっている。インク吸引動作時には、図12のフローチャートに示すように、まず、ステップ101においてインクジェット記録装置12全体の制御を司る主制御部(図示省略)からインク吸引動作を指示する信号が出力されるまで否定判定が繰り返され、肯定されるとステップ102へ進む。ステップ102では、制御部102によってモータ52Eが駆動されて記録ヘッド32が下降され、ノズル面32Nがキャップ50に当接される(図11参照)。次に、ステップ103では、制御部104によってポンプ62が駆動されキャップ50内が減圧される。この際、キャップ50がノズル33をキャップし、ポンプ50の吸引圧によって差圧弁80が大気開放口66を閉塞しているので、効率的にノズル33に吸引圧が作用し、効率的にノズル33からインクが吸引される。
【0084】
次に、ステップ104では、制御部102によってモータ52Eが駆動されて記録ヘッド32が上昇され、ノズル面32Nがキャップ50から離間される(図10参照)。次に、ステップ105では、図示しないワイパーが駆動されて、ノズル面32Nからインクが掻き落される。次に、ステップ106では、制御部104によってポンプ62が駆動される。この際、大気開放口66が差圧弁80によって閉塞されているので、ステップ102における吸引動作と同様にキャップ50に吸引圧が作用し、キャップ50に溜まったインクが吸引される。
【0085】
次に、ステップ107では、記録ヘッド32からのインク滴の吐出が停止されてから所定時間経過したか否かが判定され、肯定されるとステップ109へ否定されるとステップ108へ進む。ステップ108では、電源がオフになるまで否定判定が繰り返されてステップ107へ戻り、肯定されるとステップ109へ進む。ステップ109では、制御部102によってモータ52Eが駆動されて記録ヘッド32が下降され、ノズル面32Nがキャップ50に当接される。そして、処理ルーチンを終了する。
【0086】
なお、第1、第2実施形態では、インクジェット記録装置を例に取って本発明を説明したが、本発明は、インクジェット記録装置に限らず、高分子フィルムやガラス上に着色インクを吐出して行うディスプレイ用のカラーフィルターの作製、溶融状態のハンダを基板上に吐出して行う部品実装用のバンプの形成、有機EL溶液を基板上に吐出させて行うELディスプレイパネルの形成、溶融状態のハンダを基板上に吐出して行う電気実装用のバンプの形成など、様々な工業的用途を対象とした液滴吐出装置一般に対して、適用可能である。
【0087】
また、本発明の液滴吐出装置において画像記録の対象となる「記録媒体」には、液滴吐出ヘッドが液滴を吐出する対象物であれば広く含まれる。したがって、記録媒体には、記録用紙やOHPシートなどが含まれるのはもちろんであるが、これら以外にも、たとえば、配線パターン等が形成される基板などが含まれる。
【0088】
さらに、第1、第2実施形態では、用紙Pの幅よりも短尺のインクジェット記録ヘッドを用紙Pの幅方向に複数配列してユニット化した構成を例に取って本発明を説明したが、これに限らず、例えば、用紙Pの幅よりも短尺のインクジェット記録ヘッドを用紙Pの幅方向に移動させる構成等にも本発明を適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の実施形態のインクジェット記録装置の概略を示す図である。
【図2】本発明の実施形態のインクジェット記録装置の概略を示す図である。
【図3】本発明の実施形態のインクジェット記録装置の印字部の概略を示す図である。
【図4】本発明の第1実施形態のメンテナンスユニットの概略を示す図である。
【図5】本発明の実施形態のメンテナンスユニットの接離機構を示す斜視図である。
【図6】本発明の実施形態のメンテナンスユニットの接離機構を示す斜視図である。
【図7】本発明の実施形態のメンテナンスユニットの接離機構を示す斜視図である。
【図8】本発明の第1実施形態のメンテナンスユニットの制御方法を説明するためのフローチャートである。である。
【図9】本発明の第1実施形態のメンテナンスユニットの変形例の概略を示す図である。
【図10】本発明の第2実施形態のメンテナンスユニットの概略を示す図である。
【図11】本発明の第2実施形態のメンテナンスユニットの概略を示す図である。
【図12】本発明の第2実施形態のメンテナンスユニットの制御方法を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0090】
10 メンテナンスユニット(液滴吐出ヘッド用のキャップ機構)
12 インクジェット記録装置(液滴吐出装置)
28 搬送ベルト(搬送手段)
32 インクジェット記録ヘッド(液滴吐出ヘッド)
32N ノズル面
33 ノズル
50 キャップ(キャップ部材)
52 接離機構(開閉手段、接離手段)
54 支持機構(支持手段)
58 排出路
58´ 排出路
62 ポンプ(減圧手段)
64 インク停留部(液体停留部)
64´ インク停留部(液体停留部)
64A 流入口
64B 流出口
66 大気開放口
70 封止部材(開閉手段)
72 制御部(第1制御手段、第3制御手段)
74 制御部(第2制御手段)
80 差圧弁(開閉手段)
100 メンテナンスユニット(液滴吐出ヘッド用のキャップ機構)
102 制御部(第1制御手段)
104 制御部(第2制御手段)
P 用紙(記録媒体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴を吐出するノズルをキャップするキャップ部材と、
前記キャップ部材から液体を排出する排出路と、
前記排出路の途中に設けられ、前記キャップ部材から排出された液体を停留させる液体停留部と、
を備える液滴吐出ヘッド用のキャップ機構であって、
前記液体停留部に停留した液体の排出方向下流側に、前記排出路を大気に開放する大気開放口を設け、
前記液体停留部に停留した液体の排出方向上流側と排出方向下流側との気体の連通を、前記液体停留部に停留した液体によって阻止したことを特徴とする液滴吐出ヘッド用のキャップ機構。
【請求項2】
前記液体停留部へ液体が流入する流入口より高い位置に、前記液体停留部から液体が流出する流出口を設け、前記流出口より高い位置に、前記大気開放口を設けたことを特徴とする請求項1に記載の液滴吐出ヘッド用のキャップ機構。
【請求項3】
前記大気開放口より排出方向下流側に設けられ、前記キャップ部材内を減圧する減圧手段と、
前記大気開放口を開閉する開閉手段と、
を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の液滴吐出ヘッド用のキャップ機構。
【請求項4】
前記ノズルが形成されたノズル面を前記キャップ部材に対して相対的に接離させる第1接離手段と、
前記第1接離手段を制御する第1制御手段と、を有し、
電源がオフになった時、及び、前記ノズルからの液滴の吐出が停止している時間が所定時間を経過した時、前記第1制御手段によって前記第1接離手段が制御されて、前記ノズル面と前記キャップ部材が当接されることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の液滴吐出ヘッド用のキャップ機構。
【請求項5】
前記減圧手段を制御する第2制御手段を有し、
前記減圧手段の作動により前記ノズルから液体が吸引された後、前記第1制御手段によって前記第1接離手段が制御されて、前記ノズル面と前記キャップ部材が離間され、前記第2制御手段によって前記減圧手段が作動されることを特徴とする請求項3及び4に記載の液滴吐出ヘッド用のキャップ機構。
【請求項6】
前記開閉手段が、前記大気開放口に設けられ、前記排出路の内圧が前記排出路の外圧より高くなると前記大気開放口を開放し、前記排出路の内圧が前記排出路の外圧より低くなると前記大気開放口を閉塞する差圧弁であることを特徴とする請求項3に記載の液滴吐出ヘッド用のキャップ機構。
【請求項7】
前記開閉手段が、
前記大気開放口と対向するように設けられた封止部材と、
前記封止部材を前記大気開放口に対して相対的に接離させる第2接離手段と、
を有することを特徴とする請求項3に記載の液滴吐出ヘッド用のキャップ機構。
【請求項8】
前記第2接離手段は、前記封止部材を前記大気開放口に対して相対的に接離させると共に、前記ノズルが形成されたノズル面を前記キャップ部材に対して相対的に接離させることを特徴とする請求項7に記載の液滴吐出ヘッド用のキャップ機構。
【請求項9】
前記ノズル面が前記キャップ部材から離間した状態で、前記キャップ部材の前記ノズル面に対する相対高さが前記大気開放口の前記封止部材に対する相対高さより高くなるように、前記キャップ部材と前記液滴吐出ヘッドの何れか一方を支持する、高さ方向へ伸縮可能な支持手段を有することを特徴とする請求項8に記載の液滴吐出ヘッド用のキャップ機構。
【請求項10】
前記第2接離手段によって、前記封止部材が前記大気開放口に対して、前記ノズル面が前記キャップ部材に対して、相対的に接離されると、前記ノズル面と前記キャップ部材、前記封止部材と前記大気開放口が共に非接触となる第1形態、前記ノズル面と前記キャップ部材が当接し、前記封止部材と前記大気開放口が非接触となる第2形態、前記ノズル面と前記キャップ部材、前記封止部材と前記大気開放口が共に当接する第3形態の何れか1つの形態になることを特徴とする請求項9に記載の液滴吐出ヘッド用のキャップ機構。
【請求項11】
前記第2接離手段を制御する第3制御手段を有し、
電源がオフになった時、及び、前記ノズルからの液滴の吐出が停止している時間が所定時間を経過した時、前記第3制御手段によって前記第2接離手段が制御されて、前記第2形態になることを特徴とする請求項10に記載の液滴吐出ヘッド用のキャップ機構。
【請求項12】
前記液体停留部が、天面の面積を底面の面積より小さくした容器であることを特徴とする請求項1乃至11の何れか1項に記載の液滴吐出ヘッド用のキャップ機構。
【請求項13】
請求項1乃至12の何れか1項に記載の液滴吐出ヘッド用のキャップ機構と、
液滴を吐出し、また、前記キャップ部材によってキャップされるノズルを備える液滴吐出ヘッドと、
前記ノズルに対向させて記録媒体を搬送する搬送手段と、
を有することを特徴とする液滴吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−21904(P2007−21904A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−207565(P2005−207565)
【出願日】平成17年7月15日(2005.7.15)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】