説明

液滴吐出装置

【課題】複数の射出ヘッドの温度にばらつきが生じること、あるいは複数の射出ヘッドから射出されるインクの温度にばらつきが生じることを抑制でき、性能の低下を抑制できる液滴吐出装置を提供する。
【解決手段】液滴吐出装置は、インクを射出する第1射出ヘッドと、第1射出ヘッドに隣接し、インクを射出する第2射出ヘッドと、第1射出ヘッドの熱を奪って、第2射出ヘッドに与える熱交換を行う熱交換機構とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばフラットパネルディスプレイ等の電子デバイスの製造工程において、特許文献1に開示されているような、液滴吐出装置が使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−340337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
液滴吐出装置は、インクを射出する射出ヘッドを有する。射出ヘッドの温度が変化すると、インクの射出特性が変化する可能性がある。例えば、射出ヘッドの温度に応じて、射出ヘッドの内部流路のインクの粘度が変化し、その結果、射出ヘッドから射出されるインクの量が変化する可能性がある。また、射出ヘッドの温度が変化すると、例えばインクを射出するために駆動される駆動素子(圧電素子)の駆動特性が変化し、その結果、射出ヘッドから射出されるインクの量が変化する可能性もある。液滴吐出装置が射出ヘッドを複数有する場合、それら複数の射出ヘッドの温度が異なると、各射出ヘッドから射出されるインクの量が異なる不具合が生じる等、液滴吐出装置の性能が低下する可能性がある。その結果、製造されるデバイスの品質が低下する可能性がある。
【0005】
本発明の態様は、複数の射出ヘッドの温度にばらつきが生じること、あるいは複数の射出ヘッドから射出されるインクの温度にばらつきが生じることを抑制でき、性能の低下を抑制できる液滴吐出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために本発明は、以下の構成を採用している。
【0007】
本発明の一態様に従えば、インクを射出する第1射出ヘッドと、前記第1射出ヘッドに隣接し、インクを射出する第2射出ヘッドと、前記第1射出ヘッドの熱を奪って、前記第2射出ヘッドに与える熱交換を行う熱交換機構と、を備える液滴吐出装置が提供される。
【0008】
本発明の一態様によれば、第1射出ヘッドの熱を奪って、第2射出ヘッドに与える熱交換を行う熱交換機構を設けたので、複数の射出ヘッドの温度にばらつきが生じること、及び複数の射出ヘッドから射出されるインクの温度にばらつきが生じることを抑制できる。すなわち、それら複数の射出ヘッドの温度を均一化することができ、複数の射出ヘッドから射出されるインクの温度を均一化することができる。したがって、液滴吐出装置の性能の低下を抑制でき、製造されるデバイスの品質の低下を抑制できる。
【0009】
本発明の態様において、前記熱交換機構は、前記インクを介して、前記熱交換する構成を採用することができる。
【0010】
これにより、既存のインクを用いて、簡易な構成で熱交換を行うことができる。
【0011】
本発明の態様において、前記第1射出ヘッドに接続され、前記第1射出ヘッドに供給される前記インクが流れる流路が形成された第1チューブと、前記第2射出ヘッドに接続され、前記第2射出ヘッドに供給される前記インクが流れる流路が形成された第2チューブと、を備え、前記熱交換機構は、前記第1射出ヘッドの外面と接触するように配置された前記第2チューブを含む構成を採用することができる。
【0012】
これにより、第2チューブを流れるインクによって第1射出ヘッドの熱を奪うことができ、その熱を第2射出ヘッドに与えることができる。また、第1射出ヘッドから射出されるインクと、第2射出ヘッドから射出されるインクとの温度を均一化することができる。
【0013】
本発明の態様において、前記第2チューブは、可撓性であり、前記外面を包囲するように配置される構成を採用することができる。
【0014】
これにより、流路形成部材と第1射出ヘッドとの接触面積を大きくすることができる。したがって、熱交換を効率良く行うことができる。
【0015】
本発明の態様において、前記熱交換機構は、前記インクが射出される前記第1,第2射出ヘッドの射出面と反対側の上面と対向するように配置され、前記第1,第2射出ヘッドに供給される前記インクを収容可能なバッファ空間を有する第1タンク部材を含み、前記バッファ空間に供給された前記インクが、前記第1,第2射出ヘッドのそれぞれに供給される構成を採用することができる。
【0016】
これにより、第1タンク部材のバッファ空間のインクは、第1射出ヘッドの熱を奪って、第2射出ヘッドに与えることができる。換言すれば、第1射出ヘッドの熱は、第1タンク部材のバッファ空間のインクを介して、第2射出ヘッドに伝達される。したがって、第1,第2射出ヘッドの温度を均一化することができる。また、第1タンク部材のバッファ空間のインクは、第1射出ヘッド及び第2射出ヘッドのそれぞれから放射される熱によって温度調整される。したがって、バッファ空間におけるインクの温度の均一化が図られる。そのため、第1,第2射出ヘッドから射出されるインクの温度を効果的に均一化することができる。
【0017】
本発明の態様において、前記第1,第2射出ヘッドの前記上面と対向する前記第1タンク部材の下面の面積は、前記第1,第2射出ヘッドの上面の総面積より大きい構成を採用することができる。
【0018】
これにより、第1射出ヘッドの上面と第1タンク部材の下面とが対向できるとともに、第2射出ヘッドの上面と第1タンク部材の下面とが対向できる。したがって、第1タンク部材のバッファ空間のインクは、第1射出ヘッドの熱を奪って、第2射出ヘッドに与えることができる。
【0019】
本発明の態様において、前記熱交換機構は、少なくとも前記インクが射出される前記第1,第2射出ヘッドの射出面が露出するように、前記第1,第2射出ヘッドを同一の所定空間に収容可能な第2タンク部材を含み、前記所定空間に供給された前記インクが、前記第1,第2射出ヘッドのそれぞれに供給される構成を採用することができる。
【0020】
これにより、第2タンク部材の所定空間のインクは、第1射出ヘッドの熱を奪って、第2射出ヘッドに与えることができる。換言すれば、第1射出ヘッドの熱は、第2タンク部材の所定空間のインクを介して、第2射出ヘッドに伝達される。したがって、第1,第2射出ヘッドの温度を均一化することができる。また、第2タンク部材の所定空間のインクは、第1射出ヘッド及び第2射出ヘッドのそれぞれから放射される熱によって温度調整される。したがって、所定空間におけるインクの温度の均一化が図られる。そのため、第1,第2射出ヘッドから射出されるインクの温度を効果的に均一化することができる。
【0021】
本発明の態様において、前記所定空間の前記インクの少なくとも一部は、前記所定空間に配置されている前記第1,第2射出ヘッドの外面に接触する構成を採用することができる。
【0022】
これにより、第1射出ヘッドとインクとの熱交換、及び第2射出ヘッドとインクとの熱交換が効率良く行われる。すなわち、インクは、第1射出ヘッドの外面と接触することによって、その第1射出ヘッドの熱を効率良く奪うことができる。また、インクは、第2射出ヘッドの外面と接触することによって、その第2射出ヘッドに熱を効率良く与えることができる。
【0023】
本発明の態様において、所定面内に配置された少なくとも3つの射出ヘッドを有するヘッド群を備え、前記第1射出ヘッドは、前記ヘッド群の中央部に配置された射出ヘッドであり、前記第2射出ヘッドは、前記中央部より前記ヘッド群の周縁部に配置された射出ヘッドである構成を採用することができる。
【0024】
これにより、ヘッド群の中央部に配置された射出ヘッドの熱を奪って、周縁部に配置された射出ヘッドに与えることができる。すなわち、ヘッド群のうち、中央部に配置されている射出ヘッドは、その中央部の周囲に配置されている射出ヘッドによって、その周囲に配置されている射出ヘッドより、高い温度になる可能性がある。そのため、ヘッド群のうち、中央部に配置された射出ヘッドの熱を奪って、周縁部に配置された射出ヘッドに与えることによって、ヘッド群を構成する複数の射出ヘッドの温度の均一化、及びそれら射出ヘッドから射出されるインクの温度の均一化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】第1実施形態に係る液滴吐出装置の一例を示す斜視図である。
【図2】第1実施形態に係るキャリッジ部材に支持された複数の射出ヘッドを下側から見た図である。
【図3】第1実施形態に係る射出ヘッドの構造の一例を説明するための断面図である。
【図4】第1実施形態に係る熱交換機構の一例を示す図である。
【図5】第2実施形態に係る熱交換機構の一例を示す図である。
【図6】第3実施形態に係る熱交換機構の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。以下の説明においては、XYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部の位置関係について説明する。水平面内の所定方向をX軸方向、水平面内においてX軸方向と直交する方向をY軸方向、X軸方向及びY軸方向のそれぞれと直交する方向(すなわち鉛直方向)をZ軸方向とする。また、X軸、Y軸、及びZ軸まわりの回転(傾斜)方向をそれぞれ、θX、θY、及びθZ方向とする。
【0027】
<第1実施形態>
第1実施形態について説明する。図1は、第1実施形態に係る液滴吐出装置IJの一部を示す斜視図である。
【0028】
液滴吐出装置IJは、インク(機能液)を基板Pに射出することによって、その基板Pにデバイスパターンを形成する。液滴吐出装置IJは、インクを射出する射出口1が形成された射出面2を有する射出ヘッド3と、射出面2と対向する第1位置A1を含む所定領域で射出ヘッド3に対して移動可能であり、Y軸に沿って配置された複数の移動体4、5、6、7と、複数の移動体4、5、6、7をY軸に沿って移動させる駆動装置8と、射出ヘッド3に流路を介して接続され、射出ヘッド3に供給するためのインクを収容するインク収容装置9と、液滴吐出装置IJ全体の動作を制御する制御装置10とを備えている。
【0029】
本実施形態において、液滴吐出装置IJは、インクの滴(液滴)Dを基板Pに吐出することによって、基板Pにデバイスパターンを形成する。すなわち、射出ヘッド3は、射出口1より、インクの滴Dを基板Pに吐出して、その基板Pにデバイスパターンを形成する。
【0030】
本実施形態の液滴吐出装置IJは、複数の射出ヘッド3を備えたマルチヘッドタイプの液滴吐出装置であり、複数の射出ヘッド3を支持するキャリッジ部材11を有する。
【0031】
本実施形態において、基板Pは、フラットパネルディスプレイを製造するために使用されるガラス基板を含む。また、インクは、例えば液晶ディスプレイのカラーフィルタを製造するためのインクを含む。なお、インクが、配線パターンを形成するための導電性微粒子を含むインクでもよい。また、基板Pが、例えば特開2006−114593号公報、特開2006−261146号公報等に開示されているような、低温同時焼成セラミックス(LTCC:Low Temperature Co-fired Ceramics)多層回路基板を形成するための基板でもよいし、半導体チップを製造するために使用される半導体ウエハでもよい。
【0032】
液滴吐出装置IJは、少なくとも3つの移動体を有する。本実施形態においては、液滴吐出装置IJは、4つの移動体4、5、6、7を有する。第1移動体4は、Y軸に沿って配置された4つの移動体のうち、最も−Y側に配置されており、第4移動体7は、最も+Y側に配置されている。すなわち、第1移動体4と第2移動体7とは、Y軸に沿って配置された4つの移動体4、5、6、7のうち、Y軸方向に関して両端に配置されている。第2移動体5及び第3移動体6は、第1移動体4と第4移動体7との間に配置されている。第2移動体5は、第3移動体6の−Y側に配置されている。
【0033】
第1移動体4は、滴Dでパターンが形成される基板Pを保持しながら移動可能である。第2、第3、第4移動体5、6、7は、射出ヘッド3をメンテナンスするメンテナンス装置を含む。本実施形態においては、第2移動体5は、射出ヘッド3の射出面2を覆うキャッピング装置13を含む。第3移動体6は、射出ヘッド3の射出面2の異物を払うワイピング装置14を含む。第4移動体7は、射出ヘッド3の少なくとも一部をインク以外の液体に浸ける浸漬装置15を含む。
【0034】
液滴吐出装置IJは、各移動体4、5、6、7を移動可能に支持する支持面16を有するベース部材17を備えている。各移動体4、5、6、7のそれぞれは、支持面16に沿って移動可能である。本実施形態においては、支持面16は、XY平面とほぼ平行である。また、本実施形態においては、ベース部材17の支持面16と、その支持面16と対向する各移動体4、5、6、7の対向面との間にエアベアリングが形成されている。各移動体4、5、6、7は、エアベアリングにより、支持面16に対して非接触で支持される。
【0035】
また、液滴吐出装置IJは、複数の移動体4、5、6、7のY軸方向への移動を案内するガイド部材18を備えている。ガイド部材18は、Y軸方向に長い棒状の部材であり、支持面16の上に配置されている。本実施形態においては、ガイド部材18の両端は、ガイド部材18の外側に配置された支持部材19で支持されている。
【0036】
本実施形態においては、駆動装置8は、リニアモータを含み、複数の移動体4、5、6、7のそれぞれを独立して移動可能である。駆動装置8は、ガイド部材18に配置されたリニアモータの固定子22と、ガイド部材18と対向する各移動体4、5、6、7の対向面のそれぞれに配置されたリニアモータの可動子23、24、25、26とを有する。制御装置10は、リニアモータを含む駆動装置8を用いて、各移動体4、5、6、7のそれぞれをベース部材17上で独立して移動可能である。
【0037】
また、液滴吐出装置IJは、射出ヘッド3と別の位置に配置され、第1移動体4に基板Pを搬入する動作、及び第1移動体4から基板Pを搬出する動作の少なくとも一方を実行する基板搬送装置27を備えている。基板搬送装置27の近傍には、基板Pを収容可能な基板収容装置28が配置されている。
【0038】
基板搬送装置27は、Y軸方向に関して第1位置A1と異なる第2位置A2に配置された第1移動体4に基板Pを搬入する動作、及び第1移動体4から基板Pを搬出する動作の少なくとも一方を実行する。第1位置A1と第2位置A2とは、Y軸方向に関して離れている。本実施形態においては、第1位置A1は、第2位置A2の+Y側の位置である。第1移動体4は、射出ヘッド3の射出面2と対向する第1位置A1と、基板搬送装置27の近傍の第2位置A2との間を、ベース部材17の支持面16に沿って移動可能である。
【0039】
基板搬送装置27は、例えば基板収容装置28に収容されている基板Pを、第2位置A2に配置された第1移動体4に搬入可能である。また、基板搬送装置27は、第2位置A2に配置された第1移動体4より基板Pを搬出し、基板収容装置28に収容可能である。
【0040】
また、本実施形態においては、液滴吐出装置IJは、第1移動体4の移動経路の少なくとも一部に配置され、第1移動体4の熱の周囲への放散を遮る断熱部材29を備えている。断熱部材29は、第1移動体4を含む各移動体5、6、7の移動を妨げないように、ベース部材17の所定位置に取り付けられている。
【0041】
次に、図2及び図3を参照しながら、射出ヘッド3について説明する。図2は、キャリッジ部材11に支持された複数の射出ヘッド3を下側から見た図、図3は、射出ヘッド3の構造の一例を説明するための断面図である。
【0042】
本実施形態の射出ヘッド3は、ピエゾ素子(圧電素子)33に所定の駆動信号を供給して、そのピエゾ素子33を変形させることによって、インクを収容した空間34の圧力を可撓性の振動板(膜)35を介して変動させ、その圧力の変動を利用して、射出口1よりインクを射出する、いわゆる電気機械変換方式の射出ヘッド(吐出ヘッド)である。制御装置10は、射出ヘッド3のピエゾ素子33に所定の駆動信号を供給して、その駆動信号に応じた大きさの滴Dを射出口1のそれぞれより吐出可能である。
【0043】
図2に示すように、本実施形態の液滴吐出装置IJは、複数の射出ヘッド3を有する。複数の射出ヘッド3は、キャリッジ部材11に支持されている。射出ヘッド3は、インクの滴Dを吐出する射出口(射出ノズル)1が形成された射出面(ノズル形成面)2を有する。射出面2は、所定方向に長い形状(本実施形態においてはほぼ長方形状)を有する。射出口1は、射出面2において、所定方向(射出面2の長手方向)に沿って複数形成されている。本実施形態においては、複数の射出口1が並ぶ所定方向は、XY平面内においてX軸方向に対して傾斜する方向である。
【0044】
本実施形態において、複数の射出ヘッド3のそれぞれは、キャリッジ部材11の下面(支持面)に支持されている。本実施形態において、キャリッジ部材11の下面は、XY平面とほぼ平行である。本実施形態において、射出ヘッド3は、XY平面とほぼ平行なキャリッジ部材11の下面に少なくとも3つ配置されている。本実施形態において、射出ヘッド3は、キャリッジ部材11の下面に、36個配置されている。本実施形態において、射出ヘッド3は、キャリッジ部材11の下面(XY平面)において、X軸方向に6個配置され、その6個の射出ヘッド3を1つのグループとするグループが、Y軸方向に6つ配置されている。
【0045】
以下の説明において、キャリッジ部材11の下面(XY平面)内に配置された少なくとも3つの射出ヘッド3を総称して適宜、ヘッド群、と称する。本実施形態において、ヘッド群は、36個の射出ヘッド3によって構成されている。
【0046】
図3に示すように、射出ヘッド3は、ヘッド本体36と、ヘッド本体36の下端に配置されたプレート部材(ノズルプレート)37とを有する。射出口1は、プレート部材37に形成されている。プレート部材37は、上下方向に貫通する孔を複数有する。射出口1は、その孔の下端に配置されている。射出面2は、プレート部材37に配置されている。
【0047】
本実施形態においては、射出ヘッド3(プレート部材37)の射出面2は、下側(−Z側)に向いている。射出ヘッド3からの滴Dが吐出(供給)される基板Pの表面は、射出ヘッド3の射出面2と対向するように、上側(+Z側)に向いている。第1移動体4は、基板Pの表面が上側(+Z側)を向くように、基板Pを保持する。また、射出ヘッド3の射出面2は、XY平面とほぼ平行である。第1移動体4は、基板Pの表面とXY平面とがほぼ平行となるように、基板Pを保持する。制御装置10は、射出ヘッド3の射出面2と第1移動体4に保持された基板Pの表面との間の距離(プラテンギャップ)を所定の値(例えば600μm)に維持した状態で、射出口1より基板Pに滴Dを吐出する。
【0048】
また、射出ヘッド3は、プレート部材37(射出口1)の上方に形成されたキャビティ(空間)34と、キャビティ34の上方に配置された可撓性の板(振動板)35と、振動板35の上方に配置されたピエゾ素子33とを有する。キャビティ34は、複数の射出口1のそれぞれに対応するように複数形成されている。キャビティ34は、流路を介してインク収容装置9と接続される。キャビティ34は、インク収容装置9からのインクを収容し、射出口1に供給する。
【0049】
振動板35は、上下方向に振動することによって、キャビティ34の圧力(容積)を変動可能である。ピエゾ素子33は、振動板35を上下方向に振動可能である。ピエゾ素子33は、複数の射出口1のそれぞれに対応するように複数配置されている。ピエゾ素子33は、制御装置10からの駆動信号に基づいて振動板35を振動させ、キャビティ34の圧力を変動させることによって、射出口1よりインクの滴Dを吐出させる。
【0050】
また、制御装置10は、例えば特開2001−58433号公報に開示されているように、ピエゾ素子33に供給する駆動信号(駆動波形)を調整して、射出口1のそれぞれから吐出される滴Dの量(大きさ、体積)を調整可能である。
【0051】
図1に示すように、本実施形態の液滴吐出装置IJは、複数の射出ヘッド3を、それら複数の射出ヘッド3の位置がほぼ動かないように保持する保持装置38を備えている。保持装置38は、キャリッジ部材11と、そのキャリッジ部材11を支持する支持機構39とを含む。
【0052】
本実施形態においては、支持機構39は、キャリッジ部材11を微動可能なアクチュエータを含む。支持機構39は、キャリッジ部材11を、X軸、Y軸、Z軸、θX、θY、及びθZ方向の6自由度の方向に微動可能である。
【0053】
本実施形態において、液滴吐出装置IJは、ヘッド群のうち、第1射出ヘッド3Aの熱を奪って、その第1射出ヘッド3Aに隣接する第2射出ヘッド3Bに与える熱交換を行う熱交換機構40を備えている。
【0054】
例えば、36個の射出ヘッド3から構成されるヘッド群のうち、そのヘッド群の中央部に配置された射出ヘッド3(図2中、符号HA参照)の温度が、そのヘッド群の周縁部に配置された射出ヘッド3(図2中、符号CA参照)の温度より、高くなる可能性がある。
【0055】
すなわち、上述のように、射出ヘッド3のそれぞれは、ピエゾ素子33等の発熱源を有し、その発熱源によって、射出ヘッド3の温度が上昇する可能性がある。それら射出ヘッド3が、図2に示すように、キャリッジ部材11の下面において密集するように配置されている場合、ヘッド群の中央部HAに配置された射出ヘッド3の温度が、そのヘッド群の周縁部CAに配置された射出ヘッド3の温度より、高くなる現象が生じる可能性がある。その現象が生じる原因の一つとして、周縁部CAの射出ヘッド3は、外気に触れやすい位置に配置されているので、その外気によって温度上昇が抑制されるものの、中央部HAの射出ヘッド3は、発熱源を有する他の(周縁部CAの)射出ヘッド3によって囲まれていることが挙げられる。
【0056】
射出ヘッド3の温度が変化すると、インクの射出特性が変化する可能性がある。例えば、射出ヘッド3の温度に応じて、キャビディ34等を含む射出ヘッド3の内部流路のインクの粘度が変化し、その結果、射出ヘッド3から射出されるインクの量が変化する可能性がある。また、射出ヘッド3の温度が変化すると、例えばインクを射出するために駆動されるピエゾ素子33の駆動特性が変化し、その結果、射出ヘッド3から射出されるインクの量が変化する可能性もある。液滴吐出装置IJが射出ヘッド3を複数有する場合、それら複数の射出ヘッド3の温度が異なると、各射出ヘッド3から射出されるインクの量が異なる不具合が生じる等、液滴吐出装置IJの性能が低下する可能性がある。その結果、製造されるデバイスの品質が低下する可能性がある。
【0057】
そのため、本実施形態においては、液滴吐出装置IJは、熱交換機構40を用いて、ヘッド群の中央部HAに配置されている第1射出ヘッド3Aの熱を奪って、ヘッド群の周縁部CAに配置されている第2射出ヘッド3Bに与える熱交換を実行する。
【0058】
次に、本実施形態に係る熱交換機構40の一例について、図4を参照して説明する。図4は、本実施形態に係る熱交換機構40の一例を示す模式図である。
【0059】
ここで、以下の説明においては、簡単のため、36個の射出ヘッド3のうち、2つの射出ヘッド3A,3Bの間で熱交換が実行される場合を例にして説明する。また、以下の説明において、2つの射出ヘッド3A,3Bのうち、熱交換機構40によって熱が奪われる射出ヘッド3Aを適宜、第1射出ヘッド3A、と称し、熱が与えられる射出ヘッド3Bを適宜、第2射出ヘッド3B、と称する。
【0060】
図4において、第1射出ヘッド3Aと第2射出ヘッド3Bとは、隣接している。熱交換機構40は、第1射出ヘッド3Aの熱を奪って、第2射出ヘッド3Bに与える熱交換を行う。
【0061】
本実施形態において、熱交換機構40は、インクを介して、熱交換を行う。すなわち、熱交換機構40は、インクを用いて、第1射出ヘッド3Aの熱を奪い、そのインクを用いて、第2射出ヘッド3Bに熱を与える。
【0062】
本実施形態において、液滴吐出装置IJは、第1射出ヘッド3Aに接続され、第1射出ヘッド3Aに供給されるインクが流れる流路が形成された第1チューブ41と、第2射出ヘッド3Bに接続され、第2射出ヘッド3Bに供給されるインクが流れる流路が形成された第2チューブ42とを備えている。
【0063】
インク収容装置9からのインクは、第1チューブ41の流路を介して、第1射出ヘッド3Aに供給される。また、インク収容装置9からのインクは、第2チューブ42の流路を介して、第2射出ヘッド3Bに供給される。
【0064】
本実施形態において、第2チューブ42は、可撓性である。本実施形態において、第2チューブ42は、合成樹脂製であり、可撓性である。
【0065】
第2チューブ42は、第1射出ヘッド3Aの外面と接触するように配置されている。本実施形態において、第2チューブ42は、第1射出ヘッド3Aの外面を包囲するように配置される。換言すれば、第2チューブ42は、第1射出ヘッド3Aを取り巻くように配置される。
【0066】
本実施形態において、熱交換機構40は、第1射出ヘッド3Aの外面と接触するように配置された第2チューブ42を含む。
【0067】
本実施形態によれば、第2チューブ42が第1射出ヘッド3Aの外面と接触するように配置されているので、インク収容装置9から第2チューブ42の流路に供給されたインクは、その第2チューブ42の流路を流れることによって、第1射出ヘッド3Aから熱を奪う。そのため、第2チューブ42を流れるインクの温度は、上昇する。その温度が上昇されたインクは、第2チューブ42を介して、第2射出ヘッド3Bに供給される。第2射出ヘッド3Bに供給されたインクは、第2射出ヘッド3Bに熱を与える。すなわち、第2射出ヘッド3Bとインクとの間で熱交換が実行される。これにより、第2射出ヘッド3Bの温度は、所定の値に維持される。第2射出ヘッド3Bは、その第2チューブ42を介して供給されたインクを、射出口1より射出する。
【0068】
また、インク収容装置9から第1チューブ41の流路に供給されたインクは、その第1チューブ41を介して、第1射出ヘッド3Aに供給される。第1射出ヘッド3Aの熱は、第2チューブ42を流れるインクによって奪われているので、その第1射出ヘッド3Aの温度は、所定の値に維持される。第1射出ヘッド3Aは、その第1チューブ41を介して供給されたインクを、射出口1より射出する。
【0069】
本実施形態においては、熱交換機構40によって、第1射出ヘッド3Aの温度、第2射出ヘッド3Bの温度、第1射出ヘッド3Aの内部流路のインクの温度、第2射出ヘッド3Bの内部流路のインクの温度、第1射出ヘッド3Aから射出されるインクの温度、及び第2射出ヘッド3Bから射出されるインクの温度を、ほぼ均一にすることができる。
【0070】
以上説明したように、本実施形態によれば、第1射出ヘッド3Aの熱を奪って、第2射出ヘッド3Bに与える熱交換を行う熱交換機構40を設けたので、複数の射出ヘッド3の温度にばらつきが生じること、及び複数の射出ヘッド3から射出されるインクの温度にばらつきが生じることを抑制できる。
【0071】
すなわち、それら複数の射出ヘッド3の温度を均一化することができ、複数の射出ヘッド3から射出されるインクの温度を均一化することができる。したがって、液滴吐出装置IJの性能の低下を抑制でき、製造されるデバイスの品質の低下を抑制できる。
【0072】
また、本実施形態によれば、熱交換機構40は、インクを介して、第1射出ヘッド3Aと第2射出ヘッド3Bとの熱交換を実行する。これにより、熱交換機構40は、既存のインクを用いて、簡易な構成で熱交換を行うことができる。
【0073】
また、本実施形態によれば、熱交換機構40は、第1射出ヘッド3Aの外面と接触するように配置された第2チューブ42の流路を流れるインクによって第1射出ヘッド3Aの熱を奪うことができ、その熱を第2射出ヘッド3Bに与えることができる。また、第1射出ヘッド3Aから射出されるインクと、第2射出ヘッド3Bから射出されるインクとの温度を均一化することができる。
【0074】
また、本実施形態によれば、第2チューブ42は、可撓性なので、第1射出ヘッド3Aの外面を包囲するように配置することができる。したがって、第2チューブ42と第1射出ヘッド3Aとの接触面積を大きくすることができる。したがって、熱交換を効率良く行うことができる。
【0075】
なお、本実施形態において、第2チューブ42は、可撓性でなくてもよい。例えば、第2チューブ42が、ステンレス等の金属で形成されていてもよい。そのような第2チューブ42であっても、第1射出ヘッド3Aと接触するように配置されることによって、第1射出ヘッド3Aから熱を奪って、第2射出ヘッド3Bに与えることができる。
【0076】
なお、本実施形態において、例えば第1射出ヘッド3Aのヘッド本体36(第1射出ヘッドの壁部)の内部に、第1射出ヘッド3Aの射出口1と接続されないように、流路を形成し、その流路にインク収容装置9からのインクを供給し、その流路を介したインクを第2射出ヘッド3Bに供給してもよい。すなわち、第2射出ヘッド3Bに供給されるインクが、第1射出ヘッド3Aの外面と接触するように配置された、第1射出ヘッド3Aとは別の部材である第2チューブ42(流路形成部材)の流路を介して、第2射出ヘッド3Bに供給されてもよいし、第1射出ヘッド3Aの内部流路(第1射出ヘッド3Aの射出口1に接続される内部流路とは異なる内部流路)を介して、第2射出ヘッド3Bに供給されてもよい。
【0077】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
【0078】
図5は、第2実施形態に係る熱交換機構40Bの一例を示す図である。以下の説明においては、簡単のため、36個の射出ヘッド3のうち、3つの射出ヘッド3の間で熱交換が実行される場合を例にして説明する。また、以下の説明において、図5に示す3つの射出ヘッド3のうち、熱交換機構40Bによって熱が奪われる中央部HAの射出ヘッド3を適宜、第1射出ヘッド3A、と称し、熱が与えられる周縁部CAの射出ヘッド3を適宜、第2射出ヘッド3B、と称する。
【0079】
図5において、熱交換機構40Bは、第1射出ヘッド3Aの上面44及び第2射出ヘッド3Bの上面44と対向するように配置され、第1,第2射出ヘッド3A,3Bに供給されるインクを収容可能なバッファ空間43Hを有する第1タンク部材43を有する。
【0080】
本実施形態において、第1射出ヘッド3Aの射出面2は、下方(−Z方向)を向いている。第1射出ヘッドの上面44は、射出面2と反対側の面であり、上方(+Z方向)を向いている。同様に、第2射出ヘッド3Bの射出面2は、下方(−Z方向)を向いている。第2射出ヘッド3Bの上面44は、射出面2と反対側の面であり、上方(+Z方向)を向いている。
【0081】
第1タンク部材43は、例えばキャリッジ部材11の内部に配置可能である。なお、第1,第2射出ヘッド3A,3Bの上面44が、キャリッジ部材11の上面に露出していている場合、そのキャリッジ部材11の上面(第1,第2射出ヘッド3A,3Bの上面44)と対向する位置に、第1タンク部材43を配置することができる。
【0082】
本実施形態において、第1,第2射出ヘッド3A,3Bの上面44と対向する第1タンク部材43の下面45の面積は、第1,第2射出ヘッド3A,3Bの上面44の総面積より大きい。図5においては、第1タンク部材43の下面45の面積は、3つの射出ヘッド3A,3B,3Bの上面44の総面積より大きい。なお、図2に示したように、射出ヘッド3が36個配置されている場合、第1タンク部材43の下面45の面積は、36個の射出ヘッド3の上面44の総面積より大きい。
【0083】
本実施形態においては、インク収容装置9より第1タンク部材43のバッファ空間43Hに供給されたインクが、第1射出ヘッド3A及び第2射出ヘッド3Bのそれぞれに供給される。
【0084】
本実施形態によれば、第1タンク部材43の下面45が、第1射出ヘッド3Aの上面44及び第2射出ヘッド3Bの上面44と対向するように配置されており、その第1タンク部材43のバッファ空間43Hのインクを、第1,第2射出ヘッド3A,3Bのそれぞれに供給しているので、インク収容装置9から第1タンク部材43のバッファ空間43Hに供給されたインクは、そのバッファ空間43Hにおいて、第1射出ヘッド3Aから熱を奪うとともに、第2射出ヘッド3Bに熱を与える。すなわち、第1タンク部材43が第1,第2射出ヘッド3A,3Bと対向するように配置されていることによって、その第1射出ヘッド3Aの温度と第2射出ヘッド3Bの温度との差(第1タンク部材43の下面45側における温度分布)によって、バッファ空間43Hにおいて、インクの対流が発生する。
【0085】
そのため、第1射出ヘッド3Aから熱を奪ったバッファ空間43Hのインクは、バッファ空間43Hにおいて対流し、第2射出ヘッド3Bに熱を与えることができる。これにより、第1射出ヘッド3Aと第2射出ヘッド3Bとの間で、熱交換が実行される。
【0086】
また、バッファ空間43Hにおいてインクが対流するので、そのバッファ空間43Hにおけるインクの温度の均一化が図られる。したがって、熱交換機構40Bは、バッファ空間43Hから第1射出ヘッド3Aに供給されるインクの温度と、バッファ空間43Hから第2射出ヘッド3Bに供給されるインクの温度とを、ほぼ同じ値にすることができる。
【0087】
本実施形態においても、熱交換機構40Bは、第1射出ヘッド3Aの温度、第2射出ヘッド3Bの温度、第1射出ヘッド3Aの内部流路のインクの温度、第2射出ヘッド3Bの内部流路のインクの温度、第1射出ヘッド3Aから射出されるインクの温度、及び第2射出ヘッド3Bから射出されるインクの温度を、ほぼ均一にすることができる。
【0088】
以上説明したように、本実施形態によれば、熱交換機構40Bが、第1,第2射出ヘッド3A,3Bの上面44と対向するように配置され、第1,第2射出ヘッド3A,3Bに供給されるインクを収容可能なバッファ空間43Hを有する第1タンク部材43を有しているので、そのバッファ空間43Hのインクを介して、第1射出ヘッド3Aと第2射出ヘッド3Bとの熱交換を実行することができる。したがって、バッファ空間43Hにおけるインクの温度の均一化が図られるとともに、第1,第2射出ヘッド3A,3Bから射出されるインクの温度を効果的に均一化することができる。
【0089】
また、本実施形態においては、第1,第2射出ヘッド3A,3Bの上面44と対向する第1タンク部材43の下面45の面積は、第1,第2射出ヘッド3A,3Bの上面44の総面積より大きい。これにより、第1射出ヘッド3Aの上面44と第1タンク部材43の下面45とが対向できるとともに、第2射出ヘッド3Bの上面44と第1タンク部材43の下面45とが対向できる。したがって、第1タンク部材43のバッファ空間43Hのインクは、第1射出ヘッド3Aの熱を奪って、第2射出ヘッド3Bに与えることができる。
【0090】
なお、本実施形態において、第1タンク部材43の下面45の面積が、第1,第2射出ヘッド3A,3Bの上面44の総面積より小さくてもよい。
【0091】
<第3実施形態>
次に、第3実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
【0092】
図6は、第3実施形態に係る熱交換機構40Cの一例を示す図である。以下の説明においては、簡単のため、36個の射出ヘッド3のうち、3つの射出ヘッド3の間で熱交換が実行される場合を例にして説明する。また、以下の説明において、図6に示す3つの射出ヘッド3のうち、熱交換機構40Cによって熱が奪われる中央部HAの射出ヘッド3を適宜、第1射出ヘッド3A、と称し、熱が与えられる周縁部CAの射出ヘッド3を適宜、第2射出ヘッド3B、と称する。
【0093】
図6において、熱交換機構40Cは、少なくともインクが射出される第1,第2射出ヘッド3A,3Bの射出面2が露出するように、第1,第2射出ヘッド3A,3Bを同一の所定空間50Hに収容可能な第2タンク部材50を有する。
【0094】
本実施形態において、第2タンク部材50は、複数の射出ヘッド3を支持可能であり、上述の実施形態で説明したキャリッジ部材11として機能する。
【0095】
また、本実施形態においては、第2タンク部材50の所定空間50Hのインクの少なくとも一部は、所定空間50Hに配置されている第1,第2射出ヘッド3A,3Bの外面に接触する。
【0096】
本実施形態においては、インク収容装置9より第2タンク部材50の所定空間50Hに供給されたインクが、第1射出ヘッド3A及び第2射出ヘッド3Bのそれぞれに供給される。
【0097】
本実施形態によれば、第1,第2射出ヘッド3A,3Bを同一の所定空間50Hに収容可能な第2タンク部材50が設けられており、その第2タンク部材50の所定空間50Hのインクを、第1,第2射出ヘッド3A,3Bのそれぞれに供給しているので、インク収容装置9から第2タンク部材50の所定空間50Hに供給されたインクは、その所定空間50Hにおいて、第1射出ヘッド3Aから熱を奪うとともに、第2射出ヘッド3Bに熱を与える。すなわち、第1,第2射出ヘッド3A,3Bが第2タンク部材50によって形成される同一の所定空間50Hに配置されていることによって、その第1射出ヘッド3Aの温度と第2射出ヘッド3Bの温度との差(所定空間における温度分布)によって、所定空間50Hにおいて、インクの対流が発生する。
【0098】
そのため、第1射出ヘッド3Aから熱を奪った所定空間50Hのインクは、所定空間50Hにおいて対流し、第2射出ヘッド3Bに熱を与えることができる。これにより、第1射出ヘッド3Aと第2射出ヘッド3Bとの間で、熱交換が実行される。
【0099】
また、所定空間50Hにおいてインクが対流するので、その所定空間50Hにおけるインクの温度の均一化が図られる。したがって、熱交換機構40Cは、所定空間50Hから第1射出ヘッド3Aに供給されるインクの温度と、所定空間50Hから第2射出ヘッド3Bに供給されるインクの温度とを、ほぼ同じ値にすることができる。
【0100】
本実施形態においても、熱交換機構40Cは、第1射出ヘッド3Aの温度、第2射出ヘッド3Bの温度、第1射出ヘッド3Aの内部流路のインクの温度、第2射出ヘッド3Bの内部流路のインクの温度、第1射出ヘッド3Aから射出されるインクの温度、及び第2射出ヘッド3Bから射出されるインクの温度を、ほぼ均一にすることができる。
【0101】
以上説明したように、本実施形態によれば、熱交換機構40Cが、第1射出ヘッド3A及び第2射出ヘッド3Bを同一の所定空間50Hに収容可能な第2タンク部材50を備えているので、第2タンク部材50の所定空間50Hのインクは、第1射出ヘッド3Aの熱を奪って、第2射出ヘッド3Bに与えることができる。換言すれば、第1射出ヘッド3Aの熱は、第2タンク部材50の所定空間50Hのインクを介して、第2射出ヘッド3Bに伝達される。したがって、第1,第2射出ヘッド3A,3Bの温度を均一化することができる。また、第2タンク部材50の所定空間50Hのインクは、第1射出ヘッド3A及び第2射出ヘッド3Bのそれぞれから放射される熱によって温度調整される。したがって、所定空間50Hにおけるインクの温度の均一化が図られる。そのため、第1,第2射出ヘッド3A,3Bから射出されるインクの温度を効果的に均一化することができる。
【0102】
また、本実施形態においては、第2タンク部材50の所定空間50Hのインクの少なくとも一部は、その所定空間50Hに配置されている第1,第2射出ヘッド3A,3Bの外面に接触する。すなわち、本実施形態においては、第1、第2射出ヘッド3A,3Bの一部が、第2タンク部材50の所定空間50Hに満たされたインクに浸漬される。これにより、第1射出ヘッド3Aとインクとの熱交換、及び第2射出ヘッド3Bとインクとの熱交換が効率良く行われる。すなわち、インクは、第1射出ヘッド3Aの外面と接触することによって、その第1射出ヘッド3Aの熱を効率良く奪うことができる。また、インクは、第2射出ヘッド3Bの外面と接触することによって、その第2射出ヘッド3Bに熱を効率良く与えることができる。
【0103】
なお、本実施形態においては、第1,第2射出ヘッド3A,3Bの外面と、所定空間50Hのインクとが接触する場合を例にして説明したが、第1射出ヘッド3Aの外面及び第2射出ヘッド3Bの外面の少なくとも一方が、インクと接触しないように配置されてもよい。例えば、第1射出ヘッド3Aの外面を包囲するように、第1射出ヘッド3Aとは別の部材を配置して、その別の部材によって、第1射出ヘッド3Aの外面と所定空間50Hのインクとの接触を阻止してもよい。
【0104】
なお、上述の第1〜第3実施形態においては、熱交換機構40(40B,40C)が、インクを介して、第1射出ヘッド3Aと第2射出ヘッド3Bとの熱交換を実行する場合を例にして説明したが、インクを介さずに、熱交換を実行してもよい。例えば、第1射出ヘッド3Aの外面と、第2射出ヘッド3Bの外面とを、熱伝導率が高い金属製の部材(例えばロッド状の部材)で連結することによっても、その部材を介して、第1射出ヘッド3Aと第2射出ヘッド3Bとの熱交換を実行することができる。
【0105】
また、熱交換機構が、例えば第1射出ヘッド3Aの外面と接触するように配置され、インクとは異なる液体が流れるチューブを備えていてもよい。そのチューブの一部を第2射出ヘッド3Bの外面と接触するように配置することによって、そのチューブを流れる液体を介して、第1射出ヘッド3Aと第2射出ヘッド3Bとの熱交換を実行することができる。そのチューブを流れた液体は、所定の回収機構によって回収される。
【0106】
すなわち、熱交換機構が、第1射出ヘッド3Aの外面及び第2射出ヘッド3Bの外面のそれぞれに接触する流路形成部材を備える構成でもよい。そして、その流路形成部材のうち、第1射出ヘッド3Aに近い一端側から液体を供給し、第2射出ヘッド3Bに近い他端側から液体を排出することによって、そのインクと異なる液体を介して、第1射出ヘッド3Aと第2射出ヘッド3Bとの熱交換を実行することができる。
【0107】
また、第1射出ヘッド3Aのヘッド本体36の内部に、その第1射出ヘッド3Aの射出口1に接続されない第1内部流路を形成するとともに、第2射出ヘッド3Bのヘッド本体36の内部に、その第2射出ヘッド3Bの射出口1に接続されない第2内部流路を形成し、第1内部流路を流れた、インクと異なる液体を、所定のチューブを介して、第2内部流路に供給してもよい。こうすることによっても、第1内部流路を流れる液体は、第1射出ヘッド3Aの熱を奪い、その後、第2内部流路を流れることによって、第2射出ヘッド3Bに熱を与えることができる。その第2内部流路を流れた液体は、所定の回収機構で回収することができる。
【0108】
なお、上述の各実施形態においては、第1射出ヘッド3Aが、ヘッド群の中央部HAに配置された射出ヘッド3であり、第2射出ヘッド3Bが、ヘッド群の周縁部CAに配置された射出ヘッド3である場合を例にして説明したが、例えば、第1射出ヘッド3Aが、ヘッド群の周縁部CAに配置された射出ヘッド3であり、第2射出ヘッド3Bが、ヘッド群の中央部HAに配置された射出ヘッド3であってもよい。例えば、ヘッド群の外側に、ピエゾ素子33とは異なる別の熱源(機器)が配置されている場合、ヘッド群の周縁部CAに配置された射出ヘッド3の温度が、ヘッド群の中央部HAに配置された射出ヘッド3の温度より高くなる可能性がある。その場合、そのヘッド群の周縁部CAに配置された射出ヘッド3の熱を奪って、そのヘッド群の中央部HAに配置された射出ヘッド3に与えることによって、ヘッド群を構成する射出ヘッド3の温度の均一化を図ることができる。
【0109】
上述の各実施形態で説明した液滴吐出装置IJを用いて、例えば液晶ディスプレイのカラーフィルタを製造することにより、均一な膜厚のカラーフィルタを製造することができる。したがって、色むら等の不具合の発生が抑制された、高品質のカラーフィルタを製造することができる。
【0110】
また、上述の各実施形態で説明した液滴吐出装置IJを用いて、例えば配線パターンを製造することにより、均一な膜厚(線幅)の配線を製造することができる。したがって、高品質の配線パターンを製造することができる。
【符号の説明】
【0111】
2…射出面、3A…第1射出ヘッド、3B…第2射出ヘッド、40,40B,40C…熱交換機構、41…第1チューブ、42…第2チューブ、43…第1タンク部材、43H…バッファ空間、44…上面、45…下面、50…第2タンク部材、50H…所定空間、CA…周縁部、HA…中央部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを射出する第1射出ヘッドと、
前記第1射出ヘッドに隣接し、インクを射出する第2射出ヘッドと、
前記第1射出ヘッドの熱を奪って、前記第2射出ヘッドに与える熱交換を行う熱交換機構と、を備える液滴吐出装置。
【請求項2】
前記熱交換機構は、前記インクを介して、前記熱交換する請求項1記載の液滴吐出装置。
【請求項3】
前記第1射出ヘッドに接続され、前記第1射出ヘッドに供給される前記インクが流れる流路が形成された第1チューブと、
前記第2射出ヘッドに接続され、前記第2射出ヘッドに供給される前記インクが流れる流路が形成された第2チューブと、を備え、
前記熱交換機構は、前記第1射出ヘッドの外面と接触するように配置された前記第2チューブを含む請求項1又は2記載の液滴吐出装置。
【請求項4】
前記第2チューブは、可撓性であり、前記外面を包囲するように配置される請求項3記載の液滴吐出装置。
【請求項5】
前記熱交換機構は、前記インクが射出される前記第1,第2射出ヘッドの射出面と反対側の上面と対向するように配置され、前記第1,第2射出ヘッドに供給される前記インクを収容可能なバッファ空間を有する第1タンク部材を含み、
前記バッファ空間に供給された前記インクが、前記第1,第2射出ヘッドのそれぞれに供給される請求項1又は2記載の液滴吐出装置。
【請求項6】
前記第1,第2射出ヘッドの前記上面と対向する前記第1タンク部材の下面の面積は、前記第1,第2射出ヘッドの上面の総面積より大きい請求項5記載の液滴吐出装置。
【請求項7】
前記熱交換機構は、少なくとも前記インクが射出される前記第1,第2射出ヘッドの射出面が露出するように、前記第1,第2射出ヘッドを同一の所定空間に収容可能な第2タンク部材を含み、
前記所定空間に供給された前記インクが、前記第1,第2射出ヘッドのそれぞれに供給される請求項1又は2記載の液滴吐出装置。
【請求項8】
前記所定空間の前記インクの少なくとも一部は、前記所定空間に配置されている前記第1,第2射出ヘッドの外面に接触する請求項7記載の液滴吐出装置。
【請求項9】
所定面内に配置された少なくとも3つの射出ヘッドを有するヘッド群を備え、
前記第1射出ヘッドは、前記ヘッド群の中央部に配置された射出ヘッドであり、
前記第2射出ヘッドは、前記中央部より前記ヘッド群の周縁部に配置された射出ヘッドである請求項1〜8のいずれか一項記載の液滴吐出装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−243535(P2010−243535A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−88669(P2009−88669)
【出願日】平成21年4月1日(2009.4.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】