説明

混合弁装置

【課題】 弁への水供給が滞っても高温の湯のみが誤って流出することが無く、安全性を確保できる混合弁装置を提供する。
【解決手段】 混合水の通常使用温度範囲では弁体30がスプール20と一体に移動して水と湯の流入割合を調整する一方、混合水が異常に高い温度になると、同じハウジング10内に配置される形状記憶材料製の感温ばね40が高温に接して変形し、弁体30を湯の流入口13が閉鎖されるように動かし、また、温度センサ60の異常温度検出を受けて別途混合水の流路が閉鎖されることから、水がハウジング10内に流入しないような異常状態では、感温ばね40が直ちに弁体30を移動させ、弁体30が湯の流入口13を速やかに閉鎖することとなり、ハウジング10内の温度が異常な高温となってから湯の流入が抑えられるまでの時間を短縮して、誤って高温の湯が下流側に流出する事態を防止でき、安全を確保できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水と湯をその混合割合を適宜調整しつつ混合して所定温度の混合水として取出せるようにする混合弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水と湯の供給を受け、これら水と湯の割合を調整しつつ混合状態とし、所定温度の混合水として送出す混合弁は、スプール等の弁本体を手動又は自動で移動させて湯水の混合割合を調整制御し、使用者の所望する温度の混合水を得る通常の調整機構の他に、混合水の温度に応じて変形する感熱素子を内部に備えて、外部要因による水や湯の供給量変化や、使用水量の急変等に伴う混合水温度変化に対応した感熱素子の変形により水と湯の混合割合を自動調整して混合水を適切な温度範囲に維持可能とする別の自動温度制御機構を併用することが多い。
こうした従来の混合弁の一例として、特開平6−131057号公報に開示されるものがある。
【0003】
この従来の混合弁は、混合水の温度を自動調整するための感熱素子として、ワックスの熱による膨張収縮を利用したワックス式感熱伸長装置を用いるものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−131057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の混合弁は前記特許文献に示される構成となっており、混合水の温度変化に対応して感熱素子が作動して自動温度調節が行える仕組みであるが、水の供給を水道など他の水使用機器と共有している場合、他の機器での水使用に伴って水の供給量が急に低下したり供給が停止することもある。こうした状況では、ほとんど湯のみが混合弁内部に供給され、電動式など自動でスプール等の弁本体を移動させて調整を行う場合、混合水温度の検知部が異常な高温を検出してから強制的に弁本体を動かして湯の流入量を減らすまでに多少時間がかかることに加え、感熱素子としてのワックス式感熱伸長装置が高温の湯と接することで湯の流入路を閉鎖するように作動して湯量を抑えるものの、ワックスの性質上急速な動作は困難であることなどから、高温の湯が混合弁より下流側に流出するのを完全には止められず、こうした湯に人が接触する危険をはらんでいるという課題を有していた。
【0006】
本発明は前記課題を解消するためになされたもので、弁への水供給が滞っても高温の湯のみが誤って流出することが無く、安全性を確保できる混合弁装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る混合弁装置は、内部の空隙部に水と湯が流入可能とされるハウジングと、当該ハウジングの空隙部に位置調整可能に配設されるスプールとを有し、前記ハウジングに配置された水と湯の各流入口に対し、前記スプールが各流入口とハウジング内部との連通状態を変化させるよう位置調整され、水と湯の流入量の割合を調整して得られる所定温度の混合水をハウジング外に送出可能とする混合弁装置において、前記スプール上にスプール長手方向へ所定範囲移動可能に取付けられ、ハウジングの水と湯の各流入口の並びに沿って移動して各流入口を開閉する弁体と、当該弁体とスプールに両端をそれぞれ当接させて弁体をスプール長手方向の一方に押圧付勢する配置でハウジング内に配設され、周囲温度が前記混合水の通常使用温度範囲より高温となった場合に両端間の距離を増大させるよう変形する形状記憶材料製の感温ばねと、前記弁体とスプールに両端をそれぞれ当接させて弁体をスプール長手方向の他方に付勢する配置とされ、前記混合水の通常使用温度範囲で弁体位置を一定に保持する一方、前記感温ばねの高温変形状態では当該変形に伴う弁体の移動を許容する弁体保持ばねと、前記混合水の温度を検出する温度センサと、当該温度センサで得られる温度と所定の設定温度との差異に応じて前記スプールを位置調整するアクチュエータと、前記温度センサが混合水の異常温度状態を検出した際に混合水の流路を閉鎖して下流側への混合水の送出を止める制御弁部とを備え、前記ハウジングにおける湯の流入口が、水の流入口に対しスプール長手方向の一方に並べて配置され、前記スプールの位置調整に伴ってスプールと一体に移動する弁体が、スプール長手方向の一方へ動くと、湯の流入量を減らしつつ水の流入量を増やし、スプール長手方向の他方へ動くと、湯の流入量を増やしつつ水の流入量を減らす形状及び配置とされてなり、前記感温ばねの高温変形状態で、前記弁体がスプールに対しスプール長手方向の一方に移動して湯の流入口を閉鎖するものである。
【0008】
このように本発明によれば、混合水の通常使用温度範囲ではスプール上に移動可能に配設される弁体がスプールと一体に移動して水と湯の流入割合を調整する一方、混合水が異常に高い温度になると、同じハウジング内に配置される形状記憶材料製の感温ばねが高温に接して変形し、弁体を湯の流入口が閉鎖されるように動かし、また、温度センサの異常温度検出を受けて制御弁部が別途混合水の流路を閉鎖することにより、水がハウジング内に流入しないような異常状態では、水で冷却されず高温のままの湯に接した感温ばねが直ちに変形して弁体を移動させ、弁体が湯の流入口を速やかに閉鎖することとなり、ハウジング内の温度が異常な高温となってから湯の流入が抑えられるまでの時間を短縮して、誤って高温の湯が下流側に流出する事態を防止でき、安全を確保できると共に、混合水の流路も閉鎖することで、異常状態では混合弁からの送出も停止でき、異常状態のまま水又は湯の流出が起こり得る事態を防いで確実に正常状態に復帰した段階で混合水送出を再開でき、余分な調整や開閉等の操作を不要として混合水送出の省力化が図れる。
【0009】
また、本発明に係る混合弁装置は必要に応じて、前記スプールの一部が、前記制御弁部を兼ね、前記温度センサが混合水の異常温度状態を検出した際にアクチュエータによりスプールが位置調整されて、ハウジングの混合水流路の所定箇所を閉鎖するものである。
【0010】
このように本発明によれば、異常温度状態検出の際に混合水の流路を閉鎖する制御弁部としてスプールを利用し、スプールの位置調整で混合水流路を閉鎖して混合水の流出を防止することにより、混合水の流路閉鎖用の弁を別途設ける必要が無く、混合弁のみで混合水送出停止を実行でき、混合水送出系統の構成を簡略化できる。
【0011】
また、本発明に係る混合弁装置は必要に応じて、前記スプールの感温ばね端部との隣接部分が、スプール中心軸に対し感温ばねの存在範囲より外周側に位置する大径部とされ、前記温度センサが混合水の異常温度状態を検出した際に、アクチュエータによりスプールがスプール長手方向の一方に移動して少なくとも前記弁体が湯の流入口を閉鎖した状態で、ハウジングのスプール及び感温ばねを取囲む混合水流路の端部を前記スプールの大径部で閉鎖するものである。
【0012】
このように本発明によれば、スプールにおける混合水流路を閉鎖する部位として、混合水の流路に位置する感温ばねに隣接する大径部を用い、感温ばね周囲の混合水流路の端部にスプールの大径部を移動させてこれを閉鎖することにより、混合水の異常温度で感温ばねを変形させ、弁体を移動させて外部への混合水流出を確実に防止する機構はそのままに、混合水流路の開閉部分をハウジング内の限定された領域にとどめられ、混合弁をよりコンパクトな構造にできると共に、スプールの大径部が感温ばね周囲の混合水流路部分の端部近傍で邪魔板として働くこととなり、感温ばね周囲での湯と水の混合を促進して感温ばねにおける異常温度への対応をより精度の高いものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る混合弁装置の概略構成図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る混合弁装置の正常時における水と湯の混合送出状態説明図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る混合弁装置の正常時における水のみの送出状態説明図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る混合弁装置の異常時における感温ばね変形状態説明図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る混合弁装置の異常時におけるハウジング内混合水流路閉塞状態説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態に係る混合弁装置を前記図1ないし図5に基づいて説明する。
前記各図において本実施形態に係る混合弁装置1は、内部の空隙部11に水と湯が流入可能とされるハウジング10と、このハウジング10の空隙部11に位置調整可能に配設されるスプール20と、このスプール20上にスプール長手方向へ所定範囲移動可能に配設される弁体30と、ハウジング10内で両端をスプール20と弁体30にそれぞれ当接させて配設される形状記憶材料製の感温ばね40と、この感温ばね40に対し弁体30を挟んだ反対側に配設される弁体保持ばね50と、水と湯の混合した混合水の温度を検出する温度センサ60と、この温度センサ60で得られる温度と所定の設定温度との差異に応じてスプール20を位置調整するアクチュエータ70とを備える構成である。
【0015】
前記ハウジング10は、スプール20を長手方向移動自在に装着される空隙部11及びこの空隙部11に通じる水流入口12、湯流入口13、及び混合水の流出口14をそれぞれ穿設されてなる構成である。このハウジング10における水流入口12と湯流入口13は、スプール長手方向に並べて配置され、湯流入口13が、水流入口12に対しスプール長手方向の一方側に位置する。
この水流入口12は水供給源に、湯流入口13は湯供給源にそれぞれ接続され、流出口14は混合弁の下流側流路80に接続される。
【0016】
ハウジング10の空隙部11のうち、ちょうどスプール20の中間径部12及び感温ばね40の位置する部位が最も狭い形状となっており、このスプール20の中間径部12及び感温ばね40とこれらを取囲むハウジング10の円筒面状の内周部に挟まれた間隙部分が水と湯の混合した混合水の流路となる。
【0017】
前記スプール20は、径の異なる円筒面を軸方向に組合わせた略円筒軸状体で形成され、ハウジング10の空隙部11に長手方向へ移動可能に配設され、ハウジング10における水と湯の各流入口13、14に対し、各流入口とハウジング10内部との連通状態を変化させるようアクチュエータ70で位置調整される構成である。
【0018】
このアクチュエータ70による位置調整で、スプール20は、水流入口12と湯流入口13のハウジング10の空隙部11に対する連通状態を変化させて水と湯の流入量の割合を調整し、水と湯の混合で得られる所定温度の混合水をハウジング10外に送出可能とする仕組みである。
【0019】
スプール20は、その長手方向の一方側端部から順に小径部23、中間径部22、及び大径部21をそれぞれ形成されており、最も外径の小さい小径部23の周りに弁体30及び弁体保持ばね50が配設され、この小径部23より外径の大きい中間径部22の周りに感温ばね40が配設される。
【0020】
前記スプール20の感温ばね40端部との隣接部分は、スプール20中心軸に対し感温ばね40の存在範囲より外周側に位置する大径部21とされる構成である。この大径部21が、前記制御弁部として、温度センサ60が混合水の異常温度状態を検出した際にアクチュエータ70によるスプール移動に伴って、ハウジング10の混合水流路を閉鎖し、混合弁下流側への混合水の送出を止める仕組みである。
【0021】
すなわち、温度センサ60が混合水の異常温度状態を検出した際には、アクチュエータ70によりスプール20がスプール長手方向の一方に移動して弁体30が湯流入口13を閉鎖した後、この閉鎖状態のままさらにアクチュエータ70によりスプール20がスプール長手方向の一方に移動して、ハウジング10のスプール20及び感温ばね40を取囲む空隙部11最挟部分の端部を、スプールの大径部21が閉鎖することとなる。
【0022】
前記弁体30は、中央部にスプール20を貫通させる孔及びその周囲に水や湯を通す孔を穿設される略円筒体で形成され、スプール20の小径部23にスプール長手方向へ所定範囲移動可能に取付けられ、ハウジング10の水流入口12と湯流入口13の並びに沿って移動して各流入口を開閉する構成である。この弁体30のスプール長手方向における大きさは、水流入口12と湯流入口13の間隔に対応させて設定されており、スプール20の位置調整に伴ってスプール20と一体に移動する弁体30が、スプール長手方向の一方へ動くと、湯流入口13と空隙部11との連通領域を狭めて湯の流入量を減らしつつ水流入口12と空隙部11との連通領域を広げて水の流入量を増やし、また、弁体30がスプール長手方向の他方へ動くと、湯流入口13と空隙部11との連通領域を広げて湯の流入量を増やしつつ水流入口12と空隙部11との連通領域を狭めて水の流入量を減らすものとなっている。
【0023】
前記感温ばね40は、スプール20の中間径部22の周りで両端をスプール20の大径部21と弁体30にそれぞれ当接させて、弁体30をスプール20に対しスプール長手方向の一方に押圧付勢する配置で配設される形状記憶材料製のコイルばねとされてなる構成である。この感温ばね40は、その周囲温度が前記混合水の通常使用温度範囲より高温となった場合、例えば、湯のみがハウジング10内に流入した状態など、水で冷却されずに高温を維持した湯が周囲に存在する状況で、変態点を超える周囲温度により変形してコイルばねの両端間の距離が伸びた所定の記憶形状に復帰しようとすることで、通常使用温度範囲の場合より大きな付勢力を発生させ、弁体保持ばね50の付勢力に打勝って弁体30をスプール20に対しスプール長手方向の一方に移動させ、スプール20がその位置調整範囲のどの位置にあっても弁体30で湯流入口13を閉鎖可能とする仕組みである。
【0024】
前記弁体保持ばね50は、水や湯との接触で腐食しにくい性質は有するものの温度によりばね力が大きく変化することはない一般的なばね材料で形成されるコイルばねであり、スプール20の小径部23の周りで弁体30とスプール20に両端をそれぞれ当接させて、弁体30をスプール長手方向の他方、すなわち、弁体30を感温ばね40に押付ける向きに付勢力を与え、弁体30と感温ばね40との接触を維持する構成である。この弁体保持ばね50の付勢力は、前記混合水の通常使用温度範囲で感温ばね40が高温による変形を生じない状態では感温ばね40の付勢力を上回るかこれと釣合って、弁体30をスプール20に対し一定の位置に保持する一方、感温ばね40の高温変形状態ではこの変形に伴う弁体30の移動を許容するものとなっている。
【0025】
前記温度センサ60は、混合水の温度を検出して温度情報を電気信号として出力する公知のセンサであり、詳細な説明を省略する。
前記アクチュエータ70は、温度センサで得られる温度と、使用者によりあらかじめ設定された所定の設定温度との差異に応じて前記スプール20を長手方向に移動させて位置調整するものであり、前記混合水の通常使用温度範囲における動作は、検出温度に基づく動作制御系を備える公知の電動式アクチュエータと同様であり、詳細な説明を省略する。
【0026】
ただし、温度センサ60が混合水の異常温度状態を検出した際には、アクチュエータ70は、スプール20の大径部21が混合水の流路である前記空隙部11最挟部分を閉鎖する位置まで、スプール20を長手方向の一方へ移動させる位置調整制御動作を実行することとなる。
【0027】
次に、本実施形態に係る混合弁装置における動作状態について説明する。前提として、混合弁装置1のアクチュエータ70に対して、使用者が混合水の使用にあたり所望する混合水の温度をあらかじめ入力設定しているものとする。
【0028】
使用者による混合弁下流側のカラン操作等に基づき、混合水の送出開始が指示されると、温度センサ60からの検出出力により弁下流側流路80における混合水の温度が取得され、あらかじめ設定された温度にこの温度センサ60から取得される温度が一致するように、アクチュエータ70によりスプール20が位置調整される。
【0029】
スプール20と一体に位置調整される弁体30が、ハウジング10の水流入口12と湯流入口13を共に空隙部11に連通させている状態(図2参照)では、水を供給される水流入口12と湯を供給される湯流入口13から空隙部11に水と湯が流入し、空隙部11で水と湯が混合して混合水となり、この混合水が感温ばね40やスプール大径部21の周囲を経て流出口14に達し、流出口14から下流側の流路80に混合水を送出する。
【0030】
この場合、スプール20及び弁体30のスプール長手方向位置によって、弁体30の水流入口12や湯流入口13に対する閉塞状態は変化し、水流入口12や湯流入口13の空隙部11に対する連通領域の大きさに応じた量の水や湯が空隙部11に流入し、水と湯の割合に応じた温度の混合水が得られる。こうして、弁体30で水流入口12及び湯流入口13と空隙部11との連通状態を調整することで、水流入口12から流入する水と湯流入口13から流入する湯の割合を適切なものとして所望の混合水温度を得る。設定温度が変更されると、そのつど、この設定温度に温度センサ60から得られる温度が一致するようスプール位置を変えて水と湯の割合を変化させることとなる。
【0031】
ただし、弁体30が湯流入口13を完全に閉塞し、水流入口12のみが空隙部11に連通する状態(図3参照)では、水のみが空隙部11に流入してこの水のみが流出口14に達し、下流側の流路80に水がそのまま供給される。
【0032】
こうして、水流入口12と湯流入口13に水と湯が適切に供給されている間は、空隙部11で水と湯が混合して得られる混合水は通常使用温度範囲にとどまることとなり、感温ばね40が高温変形状態となることはなく、弁体30のスプール20に対する位置もほとんど変化せず、弁体30がスプール20と一体に位置調整される状態が維持される。
【0033】
一方、水供給側における他用途での水使用や供給系統の不具合等に伴って、水の供給量が急に低下したり供給が停止した場合、湯供給源からの湯の供給のみが通常通り継続されることで、ハウジング10内では湯流入口13からの湯の空隙部11への流入割合が異常に大きくなり、そのままでは混合弁の流出口14から水で冷却されず高温を保った湯が出ることになるが、この時、感温ばね40があらかじめ記憶設定された形状に移行する変態点を超える温度に達している湯と接することで、その全長を伸すように急速変形し、弁体30をスプール20とは独立させて湯流入口13が塞がれる位置まで移動させて(図4参照)、湯流入口13から空隙部11への湯の流入を速やかに止めることとなる。
【0034】
ほぼ同時に、水の供給されない状態又はハウジング10への湯のみの流入で過度に温度が上昇した状態等の異常が温度センサ60で検出されることに基づいて、アクチュエータ70がスプール20を長手方向の一方側へ移動させ、スプールの大径部21でハウジング10内の混合水流路をなす空隙部11最挟部分の端部を閉塞する(図5参照)。こうしてハウジング10内で流入口側と流出口14との連通を遮断することで、ハウジング10内から高温の湯が混合弁の外に流出することを確実に防止でき、安全を確保できる。
【0035】
このように、本実施形態に係る混合弁装置は、混合水の通常使用温度範囲ではスプール20上に移動可能に配設される弁体30がスプール20と一体に移動して水と湯の流入割合を調整する一方、混合水が異常に高い温度になると、同じハウジング10内に配置される形状記憶材料製の感温ばね40が高温に接して変形し、弁体30を湯流入口13が閉鎖されるように動かし、また、温度センサ60の異常温度検出を受けてスプールの大径部21が別途混合水流路を閉鎖することから、水がハウジング10内に流入しないような異常状態では、水で冷却されず高温のままの湯に接した感温ばね40が直ちに変形して弁体30を移動させ、弁体30が湯流入口13を速やかに閉鎖することとなり、ハウジング10内の温度が異常な高温となってから湯の流入が抑えられるまでの時間を短縮して、誤って高温の湯が下流側に流出する事態を防止でき、安全を確保できると共に、混合水流路も閉鎖することで、異常状態では混合弁からの送出も停止でき、異常状態のまま水又は湯の流出が起こり得る事態を防いで確実に正常状態に復帰した段階で混合水送出を再開でき、余分な調整や開閉等の操作を不要として混合水送出の省力化が図れる。
【0036】
なお、前記実施形態に係る混合弁装置においては、温度センサ60による混合水の異常温度状態検出の際に混合水の流路を閉鎖する制御弁部として、スプール20の大径部21を用いる構成としているが、これに限らず、スプールの他の部位で混合水の流出を阻止する構成、例えば、水流入口や湯流入口と同様な形態で設けられた混合水の流出口に対し、弁体の形態と同様としたスプールの円筒形の周側面の位置変化で開口面積を調整するようにして、混合水の流出を制御する構成とすることもできる。さらに、ハウジング内にスプールと別の弁を設けたり、ハウジング外に別体で弁を設けて、混合水の流出の可否を制御するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0037】
1 混合弁装置
10 ハウジング
11 空隙部
12 水流入口
13 湯流入口
14 流出口
20 スプール
21 大径部
22 中間径部
23 小径部
30 弁体
40 感温ばね
50 弁体保持ばね
60 温度センサ
70 アクチュエータ
80 流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部の空隙部に水と湯が流入可能とされるハウジングと、当該ハウジングの空隙部に位置調整可能に配設されるスプールとを有し、前記ハウジングに配置された水と湯の各流入口に対し、前記スプールが各流入口とハウジング内部との連通状態を変化させるよう位置調整され、水と湯の流入量の割合を調整して得られる所定温度の混合水をハウジング外に送出可能とする混合弁装置において、
前記スプール上にスプール長手方向へ所定範囲移動可能に取付けられ、ハウジングの水と湯の各流入口の並びに沿って移動して各流入口を開閉する弁体と、
当該弁体とスプールに両端をそれぞれ当接させて弁体をスプール長手方向の一方に押圧付勢する配置でハウジング内に配設され、周囲温度が前記混合水の通常使用温度範囲より高温となった場合に両端間の距離を増大させるよう変形する形状記憶材料製の感温ばねと、
前記弁体とスプールに両端をそれぞれ当接させて弁体をスプール長手方向の他方に付勢する配置とされ、前記混合水の通常使用温度範囲で弁体位置を一定に保持する一方、前記感温ばねの高温変形状態では当該変形に伴う弁体の移動を許容する弁体保持ばねと、
前記混合水の温度を検出する温度センサと、
当該温度センサで得られる温度と所定の設定温度との差異に応じて前記スプールを位置調整するアクチュエータと、
前記温度センサが混合水の異常温度状態を検出した際に混合水の流路を閉鎖して下流側への混合水の送出を止める制御弁部とを備え、
前記ハウジングにおける湯の流入口が、水の流入口に対しスプール長手方向の一方に並べて配置され、
前記スプールの位置調整に伴ってスプールと一体に移動する弁体が、スプール長手方向の一方へ動くと、湯の流入量を減らしつつ水の流入量を増やし、スプール長手方向の他方へ動くと、湯の流入量を増やしつつ水の流入量を減らす形状及び配置とされてなり、
前記感温ばねの高温変形状態で、前記弁体がスプールに対しスプール長手方向の一方に移動して湯の流入口を閉鎖することを
特徴とする混合弁装置。
【請求項2】
前記請求項1に記載の混合弁装置において、
前記スプールの一部が、前記制御弁部を兼ね、前記温度センサが混合水の異常温度状態を検出した際にアクチュエータによりスプールが位置調整されて、ハウジングの混合水流路の所定箇所を閉鎖することを
特徴とする混合弁装置。
【請求項3】
前記請求項2に記載の混合弁装置において、
前記スプールの感温ばね端部との隣接部分が、スプール中心軸に対し感温ばねの存在範囲より外周側に位置する大径部とされ、前記温度センサが混合水の異常温度状態を検出した際に、アクチュエータによりスプールがスプール長手方向の一方に移動して少なくとも前記弁体が湯の流入口を閉鎖した状態で、ハウジングのスプール及び感温ばねを取囲む混合水流路の端部を前記スプールの大径部で閉鎖することを
特徴とする混合弁装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−181006(P2010−181006A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−27331(P2009−27331)
【出願日】平成21年2月9日(2009.2.9)
【出願人】(000207089)大電株式会社 (67)
【Fターム(参考)】