説明

減圧弁

【課題】通常は流体を所定圧力に低減しながら流通させ、必要に応じてその流体の流れを簡単に遮断し、しかも全体をコンパクトに構成して安価に実施する。
【解決手段】減圧弁室(17)に減圧弁座(20)を形成し、減圧弁室(17)内に減圧部材(24)を配置する。開弁ばね(27)で減圧部材(24)を開弁方向へ付勢する。作動室(18)にピストン部材(21)を収容し、減圧部材(24)に連係させる。作動室(18)内でピストン部材(21)の一側に受圧室(25)を形成する。ピストン部材(21)が受ける受圧室(25)の内圧と、開弁ばね(27)の付勢力とのバランスで、減圧部材(24)を減圧弁座(20)に対し進退移動させる。減圧部材(24)を減圧弁座(20)側へ押圧できる強制閉弁手段(34)を設ける。強制閉弁手段(34)を、減圧部材(24)の進退移動を許容する減圧姿勢(R)と、減圧部材(24)を強制的に減圧弁座(20)へ当接させる閉止姿勢(S)とに切換える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は減圧弁に関し、通常は流体を所定圧力に低減しながら流通させることができ、必要に応じてその流体の流れを簡単に遮断できるうえ、全体をコンパクトに構成して安価に実施できる減圧弁に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に水素ガスを燃料とした燃料電池には、長時間に亙って連続運転できるように、例えば複数の貯蔵容器がそれぞれガス取出路を介して接続される場合がある。上記のガス取出路にはそれぞれ減圧弁が付設されており、上記の貯蔵容器から取出された水素ガスは、この減圧弁で所定圧力に減圧されて燃料電池へ供給される。また、上記の貯蔵容器は空になると上記のガス取出路から取外され、新たに水素ガスが充填された貯蔵容器がそのガス取出路に接続される。このとき、上記の各ガス取出路にはそれぞれ閉止弁が設けられており、この閉止弁を操作して各ガス取出路が遮断される。しかしながら、各ガス取出路にそれぞれ減圧弁と閉止弁とを設けたのでは、高価につくうえ、水素ガス供給装置全体が大形化する問題がある。
【0003】
従来、上記の減圧弁と閉止弁とを1つのハウジングに組み込んだバルブ装置がある(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、この従来のバルブ装置は、ハウジング内に形成した流路に、閉止部材を収容した閉止弁室と、減圧部材を収容した減圧弁室とを順に形成してあり、構造が複雑となるうえ、バルブ装置が大形化する問題があった。
【0004】
【特許文献1】特開平2−11599号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の技術的課題は上記の問題点を解消し、通常は流体を所定圧力に低減しながら流通させることができ、必要に応じてその流体の流れを簡単に遮断できるうえ、全体をコンパクトに構成して安価に実施できる、減圧弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記の課題を解決するため、例えば本発明の実施の形態を示す図1から図4に基づいて説明すると、次のように構成したものである。
すなわち本発明は減圧弁に関し、ハウジング(11)内に入口路(16)と減圧弁室(17)と出口路(19)とを順に形成して、上記の減圧弁室(17)に減圧弁座(20)を形成し、上記の減圧弁室(17)内に減圧部材(24)を配置するとともに、この減圧部材(24)を上記の減圧弁座(20)から離隔させる開弁付勢手段(27)を備え、上記のハウジング(11)内に作動室(18)を形成し、この作動室(18)にピストン部材(21)を保密摺動可能に収容して、このピストン部材(21)を上記の減圧部材(24)に連係させ、上記の作動室(18)内で上記のピストン部材(21)の一側に受圧室(25)を形成して、この受圧室(25)を上記の出口路(19)に連通させ、上記のピストン部材(21)が受ける上記の受圧室(25)の内圧と、上記の開弁付勢手段(27)の付勢力とのバランスで、上記の減圧部材(24)を減圧弁座(20)に対し進退移動させて両者間を通過する流体の圧力を減圧する、減圧弁であって、上記の減圧部材(24)を減圧弁座(20)側へ押圧できる強制閉弁手段(34)を備え、この強制閉弁手段(34)を、減圧部材(24)の進退移動を許容する減圧姿勢(R)と、減圧部材(24)を強制的に減圧弁座(20)へ当接させた閉止姿勢(S)とに切換え可能に構成したことを特徴とする。
【0007】
上記の本発明の減圧弁は、強制閉弁手段を減圧姿勢に切換えた状態では、減圧部材の減圧弁座に対する進退移動が許容されるので、一般的な減圧弁と同様に作動する。即ち、入口路から減圧弁室を経て出口路へ流体が流出すると受圧室の内圧が高まり、上記のピストン部材が開弁付勢手段の付勢力に抗して押圧されて、これに連係する減圧部材が減圧弁座へ近接する。これにより入口路から出口路への流出が制限されて、出口路内の流体圧力が低下する。この流体圧力が低下すると、受圧室の内圧に抗してピストン部材が開弁付勢手段に付勢され、減圧部材が減圧弁座から離隔し、両者間を流れる流体が増加して出口路へ流出する流体圧力が上昇する。この結果、受圧室の内圧と開弁付勢手段の付勢力とのバランスで、入口路から出口路へ流出する流体が所定の圧力に減圧される。
【0008】
上記の減圧弁の入口路に接続された貯蔵容器を取外す場合などには、上記の強制閉弁手段が閉止姿勢に切換えられる。これにより、減圧部材が強制的に移動されて減圧弁座と当接し、入口路と出口路との連通が遮断されて流体の流通が不能となる。
【0009】
なお、上記の開弁付勢手段は、例えば入口路から流入する流体圧力や、ピストン部材等を弾圧する開弁ばねなど、一般的な減圧弁に採用される手段で構成することができる。また、上記の減圧弁座は減圧弁室に開口する入口路の端部の周囲に形成してもよく、或いは減圧弁室のガス出口の周囲に形成してもよい。さらに、上記の減圧部材とピストン部材は別体に形成したものを連係手段を介して互いに連係してもよく、或いは両者を一体に形成したものであってもよい。
【0010】
この強制閉弁手段は減圧部材を減圧弁座側へ強制的に移動できればよく、例えばハウジングに付設した専用の部材で構成することも可能である。しかしながら、上記のハウジングを2つのハウジング部分から構成して、一方のハウジング部分を強制閉弁手段に構成すると、減圧弁全体の構成を簡略にして安価に実施でき、好ましい。具体的には、例えば上記のハウジングを第1ハウジング部分と第2ハウジング部分とから構成して、この第2ハウジング部分により上記の強制閉弁手段を構成し、この第2ハウジング部分を上記の第1ハウジング部分へ近接させることにより、上記の減圧部材を減圧弁座側へ移動させるように構成できる。
【0011】
上記の強制閉弁手段は、その一部をハウジングの外面に配置してこの部分を直接操作することで減圧姿勢と閉止姿勢とに切換えてもよく、或いは、ハウジングに操作手段を設けて、この操作手段と上記の強制閉弁手段とを連係させてもよい。この場合、上記の操作手段を制限姿勢と解除姿勢とに切換え可能に構成し、上記の制限姿勢ではこの操作手段を上記の強制閉弁手段に係止させて、この強制閉弁手段の姿勢を切換え不能に構成することができ、これにより、例えば減圧弁が他物と接触することで、減圧作動中に不用意に流体の流通が遮断されたり、或いは閉止作動中に不用意に入口路が出口路に流通したりすることが防止されるので、好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明は上記のように構成され作用することから、次の効果を奏することができる。
上記の強制閉弁手段を減圧姿勢に切換えることにより、減圧部材が減圧弁座に対し進退移動できるので、入口路から減圧弁室に流入した流体を、所定圧力に低減して出口路から流出させることができるうえ、上記の強制閉弁手段を閉止姿勢に切換えることにより、減圧部材を強制的に移動させて減圧弁座へ当接させるので、入口路と出口路との連通を簡単に遮断することができる。しかも、上記の減圧弁室とは別の閉止弁室やこれに挿入する閉止部材などを別途必要とすることがないので、減圧弁全体をコンパクトに維持して安価に実施することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
図1及び図2は本発明の第1実施形態を示し、図1は水素ガス供給装置の概略構成を示す回路図、図2は減圧弁を示し、図2(a)は強制閉弁手段を減圧姿勢に切換えた減圧弁の断面図、図2(b)は強制閉弁手段を閉止姿勢に切換えた減圧弁の断面図である。
【0014】
図1に示すように、この水素ガス供給装置(1)は複数の貯蔵容器(2…)と、各貯蔵容器(2)にそれぞれ接続されたガス取出路(3)と、各ガス取出路(3)に付設された閉止機能を備える減圧弁(4)と、全てのガス取出路(3)が接続されたガス供給路(5)とを備え、このガス供給路(5)が燃料電池(6)に接続してある。上記のガス供給路(5)には主開閉弁(7)が付設され、またこのガス供給路(5)から分岐されたガス逃し路(8)に安全弁(9)が付設してある。なお、上記の主開閉弁(7)は、手動操作であってもよく、或いは遠隔操作が可能な電磁弁等であってもよい。
【0015】
上記の貯蔵容器(2)には水素吸蔵合金が収容されており、この水素吸蔵合金に吸蔵された水素ガスがガス取出路(3)に取り出され、上記の減圧弁(4)で所定圧力に減圧されたのち、ガス供給路(5)を経て上記の燃料電池(6)に供給される。
上記の貯蔵容器(2)は、接続具(10)を介して上記の減圧弁(4)と着脱可能に接続してあり、この貯蔵容器(2)内の水素ガスが消費されてしまうとこの接続具(10)で取り外され、水素ガスを充分に吸蔵した貯蔵容器(2)が新しく接続される。ここで上記の貯蔵容器(2)が取外される際には、上記の減圧弁(4)が備える閉止機能によりガス取出路(3)が強制的に遮断される。
【0016】
次に、図1と図2に基づいて上記の減圧弁の構造を説明する。
図2(a)と図2(b)に示すように、この減圧弁(4)のハウジング(11)の一端には、上記の接続具(10)が装着される接続部(12)を形成してあり、この接続部(12)の端面にガス入口(13)が開口してある。また、上記のハウジング(11)の他端にはガス出口(14)が形成してあり、このガス出口(14)に、ガス取出路(3)の下流部(3b)を接続する急速継手(15)が保密状に螺着固定してある。
【0017】
上記のハウジング(11)内には、上記のガス入口(13)とガス出口(14)との間に入口路(16)と減圧弁室(17)と作動室(18)と出口路(19)とが順に形成してある。上記の減圧弁室(17)には、入口路(16)の開口端の周囲に減圧弁座(20)が形成してある。上記の作動室(18)にはピストン部材(21)が挿入してあり、このピストン部材(21)の大径部(22)を作動室(18)内面に保密摺動させてある。このピストン部材(21)の小径部(23)は上記の減圧弁室(17)内へ保密摺動可能に挿入してあり、この小径部(23)の先端に減圧部材(24)が形成され、この減圧部材(24)が上記の減圧弁座(20)に対面させてある。
【0018】
上記の大径部(22)の一側には受圧室(25)が形成してあり、この受圧室(25)に上記の出口路(19)が開口してある。このピストン部材(21)の内部には連通路(26)が形成してあり、この連通路(26)を介して上記の受圧室(25)と前記の減圧弁室(17)とが連通してある。
上記の作動室(18)内には、上記の大径部(22)の他側に、開弁付勢手段としての開弁ばね(27)が配設してあり、この開弁ばね(27)の弾圧力で上記の大径部(22)を押圧することにより、ピストン部材(21)を介して上記の減圧部材(24)が上記の減圧弁座(20)から離隔する方向へ付勢されている。
【0019】
上記のハウジング(11)は、上記の入口路(16)及び減圧弁室(17)を形成した第1ハウジング部分(28)と、出口路(19)を形成した第2ハウジング部分(29)とからなり、この第2ハウジング部分(29)の先端部を第1ハウジング部分(28)内に螺合させてある。上記の第1ハウジング部分(28)には抜止めピン(30)が固定してあり、この抜止めピン(30)を第2ハウジング部分(29)に形成した係止溝(31)に嵌合させてある。この係止溝(31)は、ハウジング(11)の軸心(32)方向の長さが抜止めピン(30)の直径よりも長く、従って、上記の第2ハウジング部分(29)はこの係止溝(31)が長い分だけ、第1ハウジング部分(28)に対し螺進させることで上記の軸心(32)に沿って移動させることができる。
【0020】
上記の両ハウジング部分(28・29)間には前記の作動室(18)が形成してある。この作動室(18)内で上記の大径部(22)の一側に形成された上記の受圧室(25)は、上記の出口路(19)が開口する内壁(33)をこの大径部(22)に対面させてあり、図2(b)に示すように、第2ハウジング部分(29)を第1ハウジング部分(28)側へ螺進させると、この受圧室(25)の内壁(33)で上記の大径部(22)が減圧弁室(17)側へ押圧されるように構成してある。
【0021】
次に、上記の減圧弁の作動について説明する。
図2(a)に示すように、上記の第2ハウジング部分(29)を第1ハウジング部分(28)から後退させた減圧姿勢(R)に切換えると、前記の作動室(18)はハウジング(11)の軸心(32)方向の長さが長くなる。この結果、ピストン部材(21)の大径部(22)が作動室(18)の内面に沿って移動することが可能となり、このピストン部材(21)の小径部(23)の先端に形成した減圧部材(24)は、減圧弁座(20)に対し進退移動が可能となる。
【0022】
この減圧姿勢(R)では、ピストン部材(21)が開弁ばね(27)の弾圧力で開弁方向に付勢されており、減圧部材(24)は減圧弁座(20)から離隔している。従って、前記の貯蔵容器(2)から取出された水素ガスは、上記の入口路(16)から減圧部材(24)と減圧弁座(20)との間隙を経て減圧弁室(17)に流入し、上記の連通路(26)と受圧室(25)とを順に経て出口路(19)へ流出する。この水素ガスの流出により出口路(19)及び受圧室(25)の内圧が上昇すると、上記のピストン部材(21)の大径部(22)が開弁ばね(27)の弾圧力に抗して減圧弁室(17)側へ押圧され、このピストン部材(21)先端の減圧部材(24)が減圧弁座(20)へ近接する。これにより入口路(16)からの水素ガスの流入が制限されて、出口路(19)内と受圧室(25)内の水素ガス圧力が低下する。
上記の受圧室(25)内の圧力が低下すると、ピストン部材(21)が開弁ばね(27)の弾圧力で押圧され、上記の減圧部材(24)が減圧弁座(20)から離隔する。これにより入口路(16)からの水素ガス流入量が増加し、出口路(19)へ流出する水素ガス圧力が上昇する。
上記の結果、入口路(16)から減圧弁室(17)と連通路(26)と受圧室(25)とを順に経て出口路(19)へ流出する水素ガスが、受圧室(25)の内圧と開弁ばね(27)の弾圧力とのバランスで所定の圧力に減圧される。
【0023】
上記の第2ハウジング部分(29)は強制閉弁手段(34)を構成しており、上記の減圧弁(4)を閉止する場合は、図2(b)に示すように、この第2ハウジング部分(29)を螺進させて、第1ハウジング部分(28)に近接させた閉止姿勢(S)に切換える。この閉止姿勢(S)に切換える際、作動室(18)のハウジング軸心(32)方向の長さが短くなるため、出口路(19)が開口する受圧室(25)の内壁(33)が、ピストン部材(21)の大径部(22)を減圧弁室(17)側へ押圧する。この結果、ピストン部材(21)の小径部(23)先端に形成された減圧部材(24)が、強制的に移動して減圧弁座(20)へ当接し、入口路(16)と減圧弁室(17)との連通が遮断される。この入口路(16)に接続された前記の貯蔵容器(2)は、空になると上記の減圧弁(4)をこの閉止姿勢(S)に切換えた状態で取外される。そして水素ガスが貯蔵された貯蔵容器(2)をこの入口路(16)に接続したのち、上記の強制閉弁手段(34)である第2ハウジング部分(29)を第1ハウジング部分(28)から後退させて、図2(a)に示す減圧姿勢(R)に切換える。これにより、ピストン部材(21)の進退移動が可能となり、減圧部材(24)が減圧弁座(20)から離隔して入口路(16)と減圧弁室(17)とが連通するので、貯蔵容器(2)から取出された水素ガスが、減圧弁(4)で所定圧力に減圧されたのち、出口路(19)からガス取出路(3)の下流部(3b)とガス供給路(5)とを順に経て燃料電池(6)へ案内される。
【0024】
図3は本発明の第2実施形態を示し、図3(a)は強制閉弁手段を減圧姿勢に切換えた減圧弁の断面図、図3(b)は強制閉弁手段を閉止姿勢に切換えた減圧弁の断面図である。
この第2実施形態では、強制閉弁手段(34)である第2ハウジング部分(29)が、ハウジング(11)の軸心(32)方向へ直進可能な状態に、第1ハウジング部分(28)内へ先端部を内嵌してある。
【0025】
上記のハウジング(11)には、カバー筒(35)と係合球(36)とを備えた操作手段(37)が設けてある。上記の第1ハウジング部分(28)には、第2ハウジング部分(29)と重合する部位に支持穴(38)が透設してあり、この支持穴(38)に上記の係合球(36)が挿入してある。ハウジング(11)の外面には、両ハウジング部分(28・29)に亙って、上記のカバー筒(35)が上記の支持穴(38)を覆う状態に装着してある。このカバー筒(35)はハウジング(11)の軸心(32)方向へ移動することができ、図3(a)に示すように第2ハウジング部分(29)側へ移動した制限姿勢(X)と、図3(b)に示すように第1ハウジング部分(28)側へ移動した解除姿勢(Y)とに切換えることができる。
【0026】
上記のカバー筒(35)の内面には、係合解除溝(39)が凹設してある。カバー筒(35)を上記の制限姿勢(X)に切換えた状態では、この係合解除溝(39)が支持穴(38)との対面位置から第2ハウジング部分(29)側へ偏位しており、カバー筒(35)を上記の解除姿勢(Y)に切換えた状態では、この係合解除溝(39)が上記の支持穴(38)と対面している。また、上記のカバー筒(35)内面と第2ハウジング部分(29)の外面との間には姿勢保持ばね(40)が装着してあり、この姿勢保持ばね(40)で第2ハウジング部分(29)側へ弾圧されたカバー筒(35)は、第2ハウジング部分(29)の外面に付設された抜止めリング(41)に受け止められる。
【0027】
上記の第1ハウジング部分(28)に内嵌されている第2ハウジング部分(29)の先端部外面には、先端側から順に、第1係合溝(42)と、これよりも浅い第2係合溝(43)とが凹設してある。この第2ハウジング部分(29)を減圧姿勢(R)に切換えた状態では、図3(a)に示すように上記の第1係合溝(42)が上記の支持穴(38)に対面させてあり、第2ハウジング部分(29)を閉止姿勢(S)に切換えた状態では、図3(b)に示すように上記の第2係合溝(43)が上記の支持穴(38)に対面させてある。
【0028】
この第2実施形態の他の構成は上記の第1実施形態と同様であり、同様に作用する。即ち、図3(a)に示すように、強制閉弁手段(34)である第2ハウジング部分(29)を減圧姿勢(R)に切換えた状態では、入口路(16)から減圧弁室(17)へ流入した水素ガスが所定圧力に減圧されて出口路(19)へ流出し、図3(b)に示すように上記の第2ハウジング部分(29)を閉止姿勢(S)に切換えた状態では、入口路(16)と減圧弁室(17)との連通が遮断される。
【0029】
次に、上記の強制閉弁手段(34)である第2ハウジング部分(29)の姿勢を切換える手順について説明する。
上記の第2ハウジング部分(29)が減圧姿勢(R)にあると、上記の操作手段(37)はカバー筒(35)が姿勢保持ばね(40)に弾圧されて、図3(a)に示すように制限姿勢(X)に切換えてある。この制限姿勢(X)では、上記の係合解除溝(39)が支持穴(38)から第2ハウジング部分(29)側へ偏位しており、係合球(36)はこのカバー筒(35)の内面に押えつけられて上記の第1係合溝(42)に嵌合している。このため、この第2ハウジング部分(29)は上記の係合球(36)に係止されて、第1ハウジング部分(28)側へ移動することができず、減圧姿勢(R)に保持される。従って、この減圧弁(4)が減圧作動中に、不用意に強制閉弁手段(34)が移動して入口路(16)と減圧弁室(17)との連通が遮断されることがなく、水素ガスが出口路(19)へ確実に流出する。
【0030】
上記の操作手段(37)のカバー筒(35)を、図3(b)に示す解除姿勢(Y)に切換えると、上記の係合解除溝(39)が支持穴(38)に対面し、係合球(36)はこの係合解除溝(39)に入り込んで、上記の第1係合溝(42)との係合が解除される。上記の姿勢保持ばね(40)の弾圧力は、ピストン部材(21)を押圧する開弁ばね(27)の弾圧力より大きく設定してある。このため、上記の第2ハウジング部分(29)は、上記の姿勢保持ばね(40)に弾圧されて第1ハウジング部分(28)側へ前進し、閉止姿勢(S)に切換えられて、減圧部材(24)が減圧弁座(20)に当接するとともに、上記の係合球(36)が第2係合溝(43)に係合する。
【0031】
上記の閉止姿勢(S)の第2ハウジング部分(29)を、上記の姿勢保持ばね(40)の弾圧力に抗して第1ハウジング部分(28)から後退させると、上記の第1係合溝(42)が上記の支持穴(38)に対面する。これにより、上記の係合球(36)が上記の係合解除溝(39)から抜け出てこの第1係合溝(42)に嵌まりこみ、カバー筒(35)が姿勢保持ばね(40)に弾圧されて制限姿勢(X)に切換わる。
なお、この実施形態では、第2ハウジング部分(29)が第1ハウジング部分(28)に対し直進するので、前記の第1実施形態と異なり、姿勢を切換える際に第2ハウジング部分(29)を回転させる必要がなく、ガス取出路(3)が捩れる虞がない。
【0032】
図4は本発明の第3実施形態を示し、図4(a)は強制閉弁手段を減圧姿勢に切換えた減圧弁の断面図、図4(b)は操作手段を解除姿勢に切換えた要部の断面図、図4(c)は強制閉弁手段を閉止姿勢に切換えた減圧弁の断面図である。
【0033】
この第3実施形態では、上記の第2実施形態と同様、強制閉弁手段(34)である第2ハウジング部分(29)の先端部が、ハウジング(11)の軸心(32)方向へ直進可能に、第1ハウジング部分(28)内へ内嵌してあり、またカバー筒(35)と係合球(36)とを備えた操作手段(37)が上記のハウジング(11)に設けてある。上記の第1ハウジング部分(28)には、第2ハウジング部分(29)と重合する部位に支持穴(38)が透設してあり、この支持穴(38)に上記の係合球(36)が挿入してある。ハウジング(11)の外面には、両ハウジング部分(28・29)に亙って、上記のカバー筒(35)が上記の支持穴(38)を覆う状態に装着してある。このカバー筒(35)はハウジング(11)の軸心(32)方向へ移動することができ、図4(a)に示すように第2ハウジング部分(29)側へ移動させた制限姿勢(X)と、図4(b)に示すように第1ハウジング部分(28)側へ移動させた解除姿勢(Y)とに切換えることができる。
【0034】
上記のカバー筒(35)の内面には、係合解除溝(39)が凹設してある。カバー筒(35)を上記の制限姿勢(X)に切換えた状態では、この係合解除溝(39)が支持穴(38)との対面位置から第2ハウジング部分(29)側へ偏位しており、カバー筒(35)を上記の解除姿勢(Y)に切換えた状態では、この係合解除溝(39)が上記の支持穴(38)と対面している。
【0035】
上記のカバー筒(35)内面と第1ハウジング部分(28)の外面との間には姿勢保持ばね(40)が装着してあり、この姿勢保持ばね(40)で第2ハウジング部分(29)側へ弾圧されたカバー筒(35)は、第2ハウジング部分(29)の外面に付設された抜止めリング(41)に受け止められる。
【0036】
上記の第1ハウジング部分(28)に内嵌されている第2ハウジング部分(29)の先端部外面には、先端側から順に、同じ深さの第1係合溝(42)と第2係合溝(43)とが凹設してある。第2ハウジング部分(29)を減圧姿勢(R)に切換えた状態では、図4(a)に示すように上記の第1係合溝(42)が上記の支持穴(38)に対面させてあり、第2ハウジング部分(29)を閉止姿勢(S)に切換えた状態では、図4(c)に示すように上記の第2係合溝(43)が上記の支持穴(38)に対面させてある。この第2ハウジング部分(29)の先端と第1ハウジング部分(28)との間には姿勢切換ばね(44)が配設してあり、この姿勢切換ばね(44)の弾圧力で第2ハウジング部分(29)を第1ハウジング部分(28)から離隔する方向へ付勢してある。
【0037】
この第3実施形態のその他の構成は、上記の第1実施形態と同様であり、同様に作用する。即ち図4(a)に示すように、強制閉弁手段(34)である第2ハウジング部分(29)を減圧姿勢(R)に切換えた状態では、入口路(16)から減圧弁室(17)へ流入した水素ガスが所定圧力に減圧されて出口路(19)へ流出し、図4(c)に示すように、上記の第2ハウジング部分(29)を閉止姿勢(S)に切換えた状態では、入口路(16)と減圧弁室(17)との連通が遮断される。
【0038】
次に、上記の強制閉弁手段(34)である第2ハウジング部分(29)の姿勢を切換える手順について説明する。
上記の第2ハウジング部分(29)が減圧姿勢(R)にあると、上記の操作手段(37)はカバー筒(35)が姿勢保持ばね(40)に弾圧されて、図4(a)に示すように制限姿勢(X)に切換えられており、上記の第2実施形態と同様に作用する。即ちこの制限姿勢(X)では、上記の係合解除溝(39)が支持穴(38)から第2ハウジング部分(29)側へ偏位しており、係合球(36)はカバー筒(35)の内面に押えつけられて上記の第1係合溝(42)に嵌合している。このため、この第2ハウジング部分(29)は上記の係合球(36)に係止されて、第1ハウジング部分(28)側へ移動することができず、減圧姿勢(R)に保持される。従って、この減圧弁(4)が減圧作動中に、不用意に強制閉弁手段(34)が移動して入口路(16)と減圧弁室(17)との連通が遮断されることがなく、水素ガスが出口路(19)へ確実に流出する。
【0039】
上記の操作手段(37)のカバー筒(35)を、図4(b)に示す解除姿勢(Y)に切換えると、上記の係合解除溝(39)が支持穴(38)に対面し、係合球(36)はこの係合解除溝(39)に入り込んで、上記の第1係合溝(42)との係合が解除される。この状態で上記の第2ハウジング部分(29)を姿勢切換ばね(44)の弾圧力に抗して第1ハウジング部分(28)側へ押し込むと、この第2ハウジング部分(29)が閉止姿勢(S)に切換えられて減圧部材(24)が減圧弁座(20)に当接するとともに、第2係合溝(43)が上記の支持穴(38)に対面する。次いで上記のカバー筒(35)を、図4(c)に示すように制限姿勢(X)に切換えると、係合解除溝(39)が支持穴(38)との対面位置から第2ハウジング部分(29)側へ偏位し、係合球(36)はこのカバー筒(35)の内面に押えつけられて上記の第2係合溝(43)に嵌合した状態に保持される。上記の第2ハウジング部分(29)はこの係合球(36)に係止されるので、第1ハウジング部分(28)から後退することができず、閉止姿勢(S)に保持される。従って、この減圧弁(4)が閉弁中に、不用意に強制閉弁手段(34)が移動して入口路(16)と減圧弁室(17)とが連通することがなく、水素ガスの流通が確実に遮断される。
【0040】
上記の閉止姿勢(S)の強制閉弁手段(34)は、次の手順で減圧姿勢(R)に切換えられる。
最初に、上記の操作手段(37)のカバー筒(35)を、図4(c)に示す制限姿勢(X)から図4(b)に示す解除姿勢(Y)に切換える。これにより上記の係合解除溝(39)が支持穴(38)に対面し、係合球(36)はこの係合解除溝(39)に入り込んで、上記の第2係合溝(43)との係合が解除される。すると上記の第2ハウジング部分(29)は前記の姿勢切換ばね(44)の弾圧力で押圧されて、第1ハウジング部分(28)から後退し、閉止姿勢(S)から減圧姿勢(R)に切換えられる。その後、図4(a)に示すように、上記のカバー筒(35)を制限姿勢(X)に切換えて上記の係合球(36)を第1係合溝(42)に嵌合させると、これにより上記の第2ハウジング部分(29)が上記の減圧姿勢(R)に保持される。
なお、本発明では、開弁ばね(27)の付勢力が充分に大きい場合や、第2ハウジング部分(29)を手動で減圧姿勢(R)に切換える場合などは、上記の姿勢切換ばね(44)を省略してもよい。
【0041】
上記の各実施形態で説明した減圧弁は、本発明の技術的思想を具体化するために例示したものであり、減圧部材や減圧弁室、減圧弁座、作動室、受圧室、開弁付勢手段、ピストン部材、出口路、強制閉弁手段、操作手段など、各部材の形状や構造、配置等を、これらの実施形態等に限定するものではなく、本発明の特許請求の範囲内において種々の変更を加え得るものであり、また、取り扱う流体も、水素ガスなど特定の種類に限定されないことはいうまでもない。
【0042】
例えば上記の各実施形態では、第2ハウジング部分に出口路を形成し、入口路と出口路をハウジングの軸心に沿って形成したので、貯蔵容器に接続されるガス取出路などへ容易に配置することができる。しかしながら、本発明の減圧弁は、例えば上記の第1ハウジング部分に出口路を、ハウジングの軸心と交叉する方向に形成することも可能である。また上記の実施形態では、複数の貯蔵容器を接続する水素ガス供給装置について説明したが、本発明の減圧弁は、1個の貯蔵容器を接続するガス供給装置に用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の減圧弁は、通常は流体を所定圧力に低減しながら流通させることができ、必要に応じてその流体の流れを簡単に遮断できるうえ、全体をコンパクトに構成して安価に実施できるので、複数の貯蔵容器を接続した水素ガス供給路に付設される減圧弁に特に好適であるが、他の構成や用途の供給路に付設される減圧弁にも好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の第1実施形態の減圧弁を用いた、水素ガス供給装置の概略構成を示す回路図である。
【図2】本発明の第1実施形態の減圧弁を示し、図2(a)は強制閉弁手段を減圧姿勢に切換えた断面図、図2(b)は強制閉弁手段を閉止姿勢に切換えた断面図である。
【図3】本発明の第2実施形態の減圧弁を示し、図3(a)は強制閉弁手段を減圧姿勢に切換えた断面図、図3(b)は強制閉弁手段を閉止姿勢に切換えた断面図である。
【図4】本発明の第3実施形態の減圧弁を示し、図4(a)は強制閉弁手段を減圧姿勢に切換えた断面図、図4(b)は操作手段を解除姿勢に切換えた要部の断面図、図4(c)は強制閉弁手段を閉止姿勢に切換えた断面図である。
【符号の説明】
【0045】
4…減圧弁
11…ハウジング
16…入口路
17…減圧弁室
18…作動室
19…出口路
20…減圧弁座
21…ピストン部材
24…減圧部材
25…受圧室
27…開弁付勢手段(開弁ばね)
28…第1ハウジング部分
29…第2ハウジング部分
34…強制閉弁手段
37…操作手段
R…減圧姿勢
S…閉止姿勢
X…制限姿勢
Y…解除姿勢

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング(11)内に入口路(16)と減圧弁室(17)と出口路(19)とを順に形成して、上記の減圧弁室(17)に減圧弁座(20)を形成し、
上記の減圧弁室(17)内に減圧部材(24)を配置するとともに、この減圧部材(24)を上記の減圧弁座(20)から離隔させる開弁付勢手段(27)を備え、
上記のハウジング(11)内に作動室(18)を形成し、この作動室(18)にピストン部材(21)を保密摺動可能に収容して、このピストン部材(21)を上記の減圧部材(24)に連係させ、
上記の作動室(18)内で上記のピストン部材(21)の一側に受圧室(25)を形成して、この受圧室(25)を上記の出口路(19)に連通させ、
上記のピストン部材(21)が受ける上記の受圧室(25)の内圧と、上記の開弁付勢手段(27)の付勢力とのバランスで、上記の減圧部材(24)を減圧弁座(20)に対し進退移動させて両者間を通過する流体の圧力を減圧する、減圧弁であって、
上記の減圧部材(24)を減圧弁座(20)側へ押圧できる強制閉弁手段(34)を備え、この強制閉弁手段(34)を、減圧部材(24)の進退移動を許容する減圧姿勢(R)と、減圧部材(24)を強制的に減圧弁座(20)へ当接させた閉止姿勢(S)とに切換え可能に構成したことを特徴とする、減圧弁。
【請求項2】
上記の強制閉弁手段(34)は、上記の閉止姿勢(S)へ切換えることにより、上記のピストン部材(21)を介して上記の減圧部材(24)を上記の減圧弁座(20)側へ移動させる、請求項1に記載の減圧弁。
【請求項3】
上記のハウジング(11)を第1ハウジング部分(28)と第2ハウジング部分(29)とから構成して、この第2ハウジング部分(29)により上記の強制閉弁手段(34)を構成し、この第2ハウジング部分(29)を上記の第1ハウジング部分(28)へ近接させることにより、上記の減圧部材(24)を減圧弁座(20)側へ移動させる、請求項1または請求項2に記載の減圧弁。
【請求項4】
上記のハウジング(11)に操作手段(37)を設けて、この操作手段(37)を制限姿勢(X)と解除姿勢(Y)とに切換え可能に構成し、上記の制限姿勢(X)ではこの操作手段(37)を上記の強制閉弁手段(34)に係止させて、この強制閉弁手段(34)の姿勢を切換え不能に構成した、請求項1から3のいずれか1項に記載の減圧弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−151157(P2008−151157A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−336524(P2006−336524)
【出願日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【出願人】(591038602)株式会社ネリキ (54)
【Fターム(参考)】