説明

減衰力可変ダンパ

【課題】 MRFを用いた可変減衰力ダンパに於いて、コンパクトであって、組み立ての容易な減衰力可変ダンパを提供する。
【解決手段】 インナヨークが少なくとも2つの部分を軸線方向に組み合わせてなり、前記両部分間或いは前記両部分の一方とコイルの樹脂モールドのロッド又は筒状延長部との間にOリングを介在させることにより、コイルのリード線を引き出すためのピストンロッド内孔を、シリンダ内の磁性流体に対して好適にシールするようにした。これにより、ピストンの構成部品を単純に組み付けるのみで、好適なシール性が確保され、組み立てを容易かつ低コストに行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用サスペンションを構成するテレスコピック式の減衰力可変ダンパに係り、詳しくは、コンパクトであって、組み立ての容易な減衰力可変ダンパに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車のサスペンションに用いられる筒型ダンパでは、乗り心地や操縦安定性の向上を図るべく、減衰力の可変制御が可能な減衰力可変ダンパが種々開発されている。減衰力可変ダンパとしては、オリフィス面積を変化させるロータリバルブをピストンに設け、このロータリバルブをアクチュエータによって回転駆動する機械式のものが主流であったが、構成の簡素化や応答性の向上等を実現すべく、作動液に磁気粘性流体を用い、ピストンと一体に形成された磁気流体バルブによって磁気粘性流体の粘度を制御するものが出現している(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1の減衰力可変ダンパでは、ピストンが、外周にコイルが巻き回された円柱状のインナヨークと、インナヨークの両端に配置された一対のエンドプレートと、インナヨークと両エンドプレートを収容する円筒状のアウタヨークとから主に構成されている。インナヨークおよびアウタヨークはともに強磁性体を素材としており、エンドプレートによって保持されることによって両者の間に環状流路が形成される。エンドプレートは、非磁性体を素材とした円盤状のものであり、環状流路に連通する複数の円弧状孔と、インナヨーク端部の凸部が係合する環状凹部と、ピストンロッド固定用のリングが係合する環状溝とを有している。また、インナヨークおよびエンドプレートは、アウタヨークの両端外縁を加締めることによって固定されている。
【特許文献1】米国特許6,260,675号公報
【0004】
このような減衰力可変ダンパに於いては、ピストンの内部に、アウタヨーク、インナヨーク、コイル等の構成部品を組み込む必要がある。また、コイルのリード線を、ピストンロッドの内孔を介して外部に引き出す必要がある。そこで、ピストンの内部の構成部品間の隙間から、MRFがピストンロッドの内孔等を介して外部に漏洩しないような対策が必要となる。同時に、ピストンの組み立てを容易かつ低コストに実現し得ることが望まれる。
【0005】
特に、減衰力可変ダンパの減衰力の可変幅を大きくするためには、非励磁時に於ける減衰力を小さくすることが望まれるが、そのためにはピストンの軸線方向長を最小化する必要があり、ピストンの設計を高度に合理化しなければならない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような従来技術の問題点に鑑み、本発明の主な目的は、MRFを用いた可変減衰力ダンパに於いて、コンパクトであって、組み立ての容易な減衰力可変ダンパを提供することにある。
【0007】
本発明の第2の目的は、MRFに対する好適なシール構造を備えた減衰力可変ダンパを提供することにある。
【0008】
本発明の第3の目的は、MRFを用いた可変減衰力ダンパに於いて、磁気回路が組み込まれたピストンの小型化を図り、それにより非通電時の減衰力を小さく、減衰力の可変幅をより一層大きくすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的は、本発明によれば、磁性流体または磁気粘性流体が充填されるとともに車体側部材と車輪側部材とのどちらか一方に連結されたシリンダと、前記シリンダを一側液室と他側液室とに区画するとともに前記磁性流体または磁気粘性流体を当該一側液室と他側液室との間で流通させる流路が形成されたピストンと、前記車体側部材と車輪側部材とのどちらか他方を当該ピストンに連結するピストンロッドと、前記ピストン内に設けられたコイルとを有し、前記コイルに電流を流すことにより発生する磁界を前記流路を通過する前記磁性流体または前記磁気粘性流体に印加することで減衰力が制御される減衰力可変式ダンパであって、前記ピストンロッドが、前記コイルのリード線を引き出すための内孔を有し、前記インナヨークが少なくとも2つの部分を軸線方向に組み合わせてなり、前記両部分が、Oリングを介して互いに嵌合することにより、前記ピストンロッド内孔を、前記シリンダ内の前記磁性流体または磁気粘性流体に対してシールするようにしたこと、或いは前記樹脂モールドのロッド又は筒状延長部が、前記インナヨークのいずれかの部分にOリングを介して嵌合することにより、前記ピストンロッド内孔を、前記シリンダ内の前記磁性流体または磁気粘性流体に対してシールするようにしたことを特徴とする減衰力可変ダンパを提供することにより達成される。
【発明の効果】
【0010】
このような構成によれば、Oリングを介在させ、ピストンの構成部品を単純に組み付けるのみで、好適なシール性が確保され、組み立てを容易かつ低コストに行うことができる。特に、部品の寸法精度をそれ程高める必要もなく、コイル以外については、樹脂モールド等も不要となる。更に、組み立てのために特殊な設備を要することもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明を4輪自動車のリヤサスペンションに適用した実施形態を詳細に説明する。
【0012】
図1に示すように、本実施形態のリヤサスペンション1は、いわゆるH型トーションビーム式サスペンションであり、左右のトレーリングアーム2、3や、両トレーリングアーム2、3の中間部を連結するトーションビーム4、懸架ばねである左右一対のコイルスプリング5、左右一対のダンパ6等から構成されており、左右のリヤホイール7、8を懸架している。ダンパ6は、MRF(Magneto-Rheological Fluid:磁気粘性流体)を作動流体とする減衰力可変型ダンパであり、トランクルーム内等に設置されたECU9によってその減衰力が可変制御される。
【0013】
図2に示すように、本実施形態のダンパ6は、モノチューブ式(ド・カルボン式)であり、MRFが充填された円筒状のシリンダ12と、このシリンダ12に対して軸方向に摺動するピストンロッド13と、ピストンロッド13の先端に装着されてシリンダ12内を上部液室(一側液室)14と下部液室(他側液室)15とに区画するピストン16と、シリンダ12の下部に高圧ガス室17を画成するフリーピストン18と、ピストンロッド13等への塵埃の付着を防ぐカバー19と、フルバウンド時における緩衝を行うバンプストップ20とを主要構成要素としている。
【0014】
シリンダ12は、下端のアイピース12aに嵌挿されたボルト21を介して、車輪側部材であるトレーリングアーム2の上面に連結されている。また、ピストンロッド13は、上下一対のブッシュ22とナット23とを介して、その上部ねじ軸13aが車体側部材であるダンパベース(ホイールハウス上部)24に連結されている。
【0015】
図3はピストン16の詳細を示す。ピストン16の中心部には、円柱状をなす強磁性体からなるインナヨーク26が設けられ、その一方の軸線方向端にピストンロッド13の一端が結合されている。インナヨーク26は、軸線方向に分割された2つの部分26a、26bからなり、ピストンロッド13側の第1の部分26aの、ピストンロッド13から離反する側の端部の中心部には、雌ねじ孔49が設けられ、第2の部分26bの、雌ねじ孔49に対向する部分には、雄ねじ突部48が設けられ、かつ雌ねじ孔49に螺合されている。第2の部分26bの外側の軸線方向端部の中心には、インナヨーク26の両部分を互いに螺合して締結するための工具を係合するための凹部50が設けられている。
【0016】
インナヨーク26の両部分26a、26bの互いに離反する側の軸線方向端面外周には、半径方向フランジ25a、25bが設けられ、これらフランジ25a、25b間には、エンドピース32を介して、強磁性体からなる円筒状のフラックスリング即ちアウタヨーク40が挟持されている。即ち、インナヨーク26の両部分26a、26bを互いに捩じ込むことにより、両フランジ25a、25b間に、エンドピース32及びアウタヨーク40が緩みなく挟持されるようになっている。エンドピース32は、強磁性体又は非磁性体からなり、それぞれ周方向に等間隔に設けられた4つの円弧状スロット36を備えている。また、アウタヨーク40の内周面は、インナヨーク26の外周面に対して同心状に所定の間隔の空隙41をおいて対峙している。エンドピース32及びアウタヨーク40の外周面は、互いに協働して、ピストン16の外周面を画定している。この外周面自体がピストン16の摺動面をなすものでも、或いは別途図示されないピストンリング部材或いはコーティングを用いて、それをピストン16の摺動面とすることもできる。
【0017】
更に、ピストンロッド13は、インナヨーク26の対向端面の中心に設けられた凹部35の底面に対して、摩擦圧接法により結合されている。摩擦圧接法とは、接合する部材(たとえば金属や樹脂など)を高速で擦り合わせ、その
とき生じる摩擦熱によって部材を軟化させると同時に圧力を加えて接合する技術である。
【0018】
インナヨーク26の、外周の軸線方向中間部分には環状溝28が設けられ、その内部にコイル30が受容され、樹脂モールド29内に埋め込まれている。この場合コイル30は、インナヨーク26の周方向に巻かれたコイルをなしている。また、環状溝28の外周部側には、コイル30の外周に向けてオーバーハングするようにインナヨーク26の部分が軸線方向に延出することにより形成される軸線方向延出部31が設けられている。図示された実施例では、この軸線方向延出部31は、環状溝28の両側から軸線方向に対称に延出している。このようにして、インナヨーク26の外周部分は、全体として概ね一定半径の円周面をなす外周面を画定すると共に、環状溝28の両側に位置する部分が、インナヨーク26の両部分26a、26bをなしている。
【0019】
また、インナヨーク26の両部分の分割面33は、ピストンロッド13と離反する側の環状溝28の側面と同一面上に位置している。
【0020】
図5に最も良く示されているように、コイル30は、インナヨーク26の両部分間に画定された環状空間内に、樹脂モールド29により保持されている。樹脂モールド29は、環状の本体部分56に加えて、本体部分56のピストンロッド13側の端面に対して、直径線方向に架設された直径部分51と、該直径部分の中心からピストンロッド13に向けて突出する大径ロッド部52と、大径ロッド部の遊端面から同軸的に突出する小径ロッド部53とを有する。コイル30のリード線44は、コイル30から、直径部分51を経て、大径ロッド部52及び小径ロッド部53の内部を通過して、ピストンロッド13の内孔46内から外部に引き出されている。
【0021】
また、小径ロッド部53は、インナヨーク26の第1の部分26a内の中心孔54内に突入し、かつ両部分間にOリング55が挟持され、これにより、リード線44を引き出すために設けられたピストンロッド13の内孔46を、ダンパ内のMRF流体に対してシールしている。
【0022】
次に、このダンパ6の作動の要領を説明する。車両の走行などにより、車体に対して車輪が相対変位すると、その変位は、ピストンロッド13を介してピストン16に伝達され、ピストン16とシリンダ12との間に相対変位が引き起こされる。その結果、両液室14、15の容積が変化し、その変化に応じて、MRF(Magneto-Rheological Fluid:磁気粘性流体)が、一方のエンドプレート34aの円弧状スロット36、インナヨーク26とアウタヨーク40との間の空隙41及び両エンドピース32の円弧状スロット36を通過する。非通電時であれば、MRFは比較的抵抗を受けることなく流れ、概ねピストン16とシリンダ12との間の相対速度に比例する低い減衰力を発生する。コイル30に通電した場合には、MRFがインナヨーク26とアウタヨーク40との間の空隙を通過するときに、空隙41内に形成された磁界により強い流路抵抗が引き起こされ、概ねピストン16とシリンダ12との間の相対速度に比例する高い減衰力を発生する。このような特性を利用し、コイル30に制御された電流を供給することにより、所望のダンパ制御が実現される。
【0023】
図6は、本発明のダンパ6の第2の実施形態に於けるピストン16の詳細を示す。図6に於いては、前記実施例に対応する部分には同様の符合を付し、その詳しい説明を省略する。
【0024】
本実施例に於いては、インナヨーク26の第1の部分26aの外周から、薄肉円筒部62が、第2の部分26bの方向に延出している。薄肉円筒部62の外周は、インナヨーク26の第1の部分26aの外周の輪郭と同一の円筒面を画定し、薄肉円筒部62の内周は、インナヨーク26の第2の部分26bの外周の輪郭と補完的円筒面を画定し、かつ同外周に対して実質的に隙間無く密接している。インナヨーク26の第2の部分26bの、軸線方向外端近傍の外周には、環状溝63が設けられ、その内部に受容されたOリング64が薄肉円筒部62の内周に当接することにより、ピストン16の内部を、MRF流体に対してシールしている。
【0025】
薄肉円筒部62は、インナヨーク26の第1の部分26aと同様の強磁性体からなる基端部と、コイル30の軸線方向中央部の所定長に渡って、非磁性体からなる磁気的空隙部60と、インナヨーク26の第2の部分26bと同様の強磁性体からなる遊端部61とを有する。この薄肉円筒部62は、異種金属を摩擦溶接、電熱による溶接等の方法により、対応する形状の異種金属のピースを結合することにより形成される。
【0026】
コイル30のリード線44は、環状の樹脂モールド29の内周部から延出するフレキシブルプリント基板状のストリップ65を介して、ピストンロッド13の内孔46内から外部に引き出されている。インナヨーク26の第1の部分26aには、このストリップ65を受容するための半径方向及び軸線方向に延在するスロットが設けられている。
【0027】
図7及び8は、本発明のダンパ6の第3の実施形態に於けるピストン16の詳細を示す。図7及び8に於いては、前記実施例に対応する部分には同様の符合を付し、その詳しい説明を省略する。
【0028】
インナヨーク26は、軸方向で分割された2つの部分からなり、両部分は、コイル30を埋設した樹脂モールド29を挟持するように互いに衝当している。インナヨーク26の第1の部分26aの衝当面の外周には、軸方向フランジ82が設けられ、該フランジにより、円形の凹部80が画定されている。樹脂モールド29は、凹部80の内周面に沿って配置されている。インナヨーク26の第2の部分26bの衝当面の外周にも、同様の軸方向フランジ82が設けられ、第1の部分26aの軸方向フランジ82との間に磁気的な空隙84が画定されている。第2の部分26bの衝当面の中心には円筒形の突部81が設けられ、樹脂モールド29の内周面に嵌め込まれている。第1の部分26aの衝当面には、更に、樹脂モールド29の直径部分を受容する溝が設けられている。
【0029】
本実施例に於いては、強磁性体からなるアウタヨーク71は、有底筒状をなし、ディスク状のスペーサ85を介して、その底面がインナヨーク26の第1の部分26aのピストンロッド側の面に衝当するように、インナヨーク26に同軸的に嵌装されている。アウタヨーク71の開口端即ち遊端は薄肉部73をなし、インナヨーク26の第2の部分26bの外側軸線方向端面に重合されたディスク状の蓋板72を介して、インナヨーク26の第2の部分26bに対してかしめ付けられている。第2の部分26bの外側軸線方向端面及び蓋板72の対向面の一方には凹部、その他方には、同凹部に突入する補完的な突部が設けられている。
【0030】
一方、アウタヨーク71の本体側の底面の中心には、中空ボス74が同軸的に突出し、インナヨーク26の第1の部分26aの中心孔を同軸的に貫通し、かつインナヨーク26の第2の部分26bの中心凹部内に同軸的かつ補完的に嵌入することにより、インナヨーク26が、アウタヨーク71に対して中心位置決めされる。中空ボス74の中心孔内には、樹脂モールド29の直径部分から同軸的に突出するロッド部75が、同軸的かつ補完的に嵌入している。中空ボス74の中心孔の内周面には、環状溝76が設けられ、ロッド部75と中空ボス74の中心孔との間のシールを形成するOリング77が受容されている。前記実施例と同様に、コイル30のリード線44は、樹脂モールド29の直径部分及びロッド部75の内部を経て、ピストンロッド13の内孔46から外部に引き出されている。図9は、このような構造を単純化して示す。
【0031】
図10の実施形態に於いては、環状溝76に代えて、インナヨーク26の第1の部分26aの中心孔54の、ピストンロッド13に対して離反する側の開口部に設けられた大径孔91内に、Oリング77を介してロッド部75が突入している。Oリング77に対しては、樹脂モールド29の直径部分51が当接することにより、Oリング77が大径孔91から脱落するのが回避される。言い換えると、大径孔91と直径部分51の当接面とが協働して、Oリング77を保持するための環状溝を画定している。
【0032】
図11の実施形態は、図10の実施形態と同様であるが、樹脂モールド29のロッド部75が小径部75aと大径部75bとからなり、小径部75aが、Oリング77を介して大径孔91内に突入している。また、小径部75aと大径部75bとの間の環状肩面と大径孔91とが協働して、Oリング77を保持するための環状溝を画定している。従って、Oリング77が、小径部75aの外周と、対向する大径孔91の内周とに当接し、所要のシール性能が発揮される。図12の実施形態は、図11の実施形態に類似するが、小径部(図示せず)には金属製のスリーブ92が嵌装されている。スリーブ92は樹脂モールド29内にインサートモールドされているものであって良い。この場合、Oリング77は、大径部75bの軸線方向を向く肩面と、対向する大径孔91の底面とに当接し、所要のシール性能が発揮される。
【0033】
図13の実施形態は、インナヨーク26の第1の部分26aの中心孔54は平滑な円筒面をなし、この中心孔54に突入している樹脂モールド29のロッド部75の外周に環状溝93が設けられ、その内部にOリング77が受容されている。
【0034】
図14の実施形態では、インナヨーク26の第1の部分26aの、ピストンロッド13に対して離反する側の端面に、中心孔54の外周に同軸的な環状凹部94が、所定の軸線方向深さを有するように設けられている。環状凹部94の内周面に環状溝95が設けられ、その内部にOリング77が受容されている。一方、樹脂モールド29の側には、環状凹部94に対して補完的な環状突部96が設けられ、かつ環状凹部94内に突入している。従って、Oリング77が環状突部96の内周面に当接し、所要のシール効果が達成される。
【0035】
図15の実施形態では、インナヨーク26の第1の部分26aの、ピストンロッド13に対して離反する側の端面の中心には小径突部97が設けられ、その外周に環状凹部94が同軸的に設けられている。樹脂モールド29の側には、環状凹部94に対して略補完的な環状突部96が設けられ、かつ環状凹部94内に突入している。その結果、小径突部97の外周と環状突部96の内周との間に、Oリング77を保持するための環状溝が画定され、該環状溝の両軸線方向端面は、インナヨーク26の第1の部分26a及び樹脂モールド29の直径部分51の両対向面により画定される。
【0036】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。例えば、上記実施形態は4輪自動車のリヤサスペンションを構成する減衰力可変式ダンパに本発明を適用したものであるが、本発明は、フロントサスペンション用の減衰力可変式ダンパにも適用できるし、2輪自動車等の減衰力可変ダンパ等にも適用可能である。また、インナヨークに設けられる環状溝或いは軸線方向延出部の形状、寸法及び配置等についても、上記実施形態における例示に限るものではなく、設計や製造上の要請に応じて自由に設定可能である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明が適用されたリヤサスペンションの斜視図である。
【図2】本発明に基づくダンパの縦断面図である。
【図3】本発明の第1の実施例を示す、図2中のIII部拡大図である。
【図4】図3の断面に対して直交する断面について見た同様の縦断面図である。
【図5】コイルが埋設された樹脂モールドを、その延長部と共に一部を破断して示す斜視図である。
【図6】本発明の第2の実施例を示す図3と同様の縦断面図である。
【図7】本発明の第3の実施例を示す図3と同様の縦断面図である。
【図8】本発明の第3の実施例を示す、図7の断面に対して直交する断面について見た図3と同様の縦断面図である。
【図9】本発明の第3の実施例を単純化して示すダイヤグラム図である。
【図10】本発明の変形実施例を単純化して示すダイヤグラム図である。
【図11】本発明の別の変形実施例を単純化して示すダイヤグラム図である。
【図12】本発明の更に別の変形実施例を単純化して示すダイヤグラム図である。
【図13】本発明の更に別の変形実施例を単純化して示すダイヤグラム図である。
【図14】本発明の更に別の変形実施例を単純化して示すダイヤグラム図である。
【図15】本発明の更に別の変形実施例を単純化して示すダイヤグラム図である。
【符号の説明】
【0038】
2 トレーリングアーム(車輪側部材)
6 ダンパ
12 シリンダ
13 ピストンロッド
14 上部液室(一側液室)
15 下部液室(他側液室)
16 ピストン
22 ダンパベース(車体側部材)
26 インナヨーク
28 環状溝
30 コイル
52 大径ロッド部
53 小径ロッド部
54 中心孔
55、64、77 Oリング
61 遊端部
63 環状溝
74 中空ボス
76 環状溝
75 ロッド部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性流体または磁気粘性流体が充填されるとともに車体側部材と車輪側部材とのどちらか一方に連結されたシリンダと、前記シリンダを一側液室と他側液室とに区画するとともに前記磁性流体または磁気粘性流体を当該一側液室と他側液室との間で流通させる流路が形成されたピストンと、前記車体側部材と車輪側部材とのどちらか他方を当該ピストンに連結するピストンロッドと、前記ピストン内に設けられたコイルとを有し、前記コイルに電流を流すことにより発生する磁界を前記流路を通過する前記磁性流体または前記磁気粘性流体に印加することで減衰力が制御される減衰力可変式ダンパであって、
前記ピストンロッドが、前記コイルのリード線を引き出すための内孔を有し、
前記インナヨークが少なくとも2つの部分を軸線方向に組み合わせてなり、前記両部分が、Oリングを介して互いに嵌合することにより、前記ピストンロッド内孔を、前記シリンダ内の前記磁性流体または磁気粘性流体に対してシールするようにしたことを特徴とする減衰力可変ダンパ。
【請求項2】
磁性流体または磁気粘性流体が充填されるとともに車体側部材と車輪側部材とのどちらか一方に連結されたシリンダと、前記シリンダを一側液室と他側液室とに区画するとともに前記磁性流体または磁気粘性流体を当該一側液室と他側液室との間で流通させる流路が形成されたピストンと、前記車体側部材と車輪側部材とのどちらか他方を当該ピストンに連結するピストンロッドと、前記ピストン内に樹脂モールドを介して設けられたコイルとを有し、前記コイルに電流を流すことにより発生する磁界を前記流路を通過する前記磁性流体または前記磁気粘性流体に印加することで減衰力が制御される減衰力可変式ダンパであって、
前記ピストンロッドが、前記コイルのリード線を引き出すための内孔を有し、
前記インナヨークが少なくとも2つの部分を軸線方向に組み合わせてなり、前記樹脂モールドのロッド又は筒状延長部が、前記インナヨークのいずれかの部分にOリングを介して嵌合することにより、前記ピストンロッド内孔を、前記シリンダ内の前記磁性流体または磁気粘性流体に対してシールするようにしたことを特徴とする減衰力可変ダンパ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−216210(P2009−216210A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−62361(P2008−62361)
【出願日】平成20年3月12日(2008.3.12)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】