説明

減速機付きモータ

【課題】別部品を用いることなくセンサマグネットを減速ギヤの側面に強固に固定することを可能として、減速機付きモータの作動不良を低減させることである。
【解決手段】減速機を構成する樹脂製のウォームホイル22の側面22aに回転位置検出センサ32を構成する円環状のセンサマグネット33を固定する。センサマグネット33を固定するために、出力軸14と同心の円環状の保持壁41をウォームホイル22の側面22aに一体に形成する。センサマグネット33をプラスチックマグネットにより円環状に形成し、その外周部に段差部42を設ける。センサマグネット33を保持壁41の内側に組み込み、保持壁41の先端部分を熱治具により加熱しながら段差部42に向けて押し付け、当該先端部分を段差部42に溶着させるとともに冷却後に形成される係止部46により段差部42を係止させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動モータに減速機を取り付けて1つのユニットとした減速機付きモータに関し、特に、減速機を構成する減速ギヤの側面に出力軸の回転位置検出用のセンサマグネットが固定されるものに関する。
【背景技術】
【0002】
車両に設けられるワイパ装置やパワーウインド装置、サンルーフ装置等の駆動源としては、車両に搭載されたバッテリなどの電源により作動する電動モータに減速機を取り付けて1つのユニットとした減速機付きモータが用いられている。
【0003】
減速機付きモータに用いられる減速機としては、小型で大きな減速比を得られるウォームギヤ機構が多く用いられている。ウォームギヤ機構はウォームとウォームに噛み合うウォームホイルとを備えており、ウォームは電動モータのモータ軸に設けられ、ウォームホイルは減速機の出力軸に固定されている。
【0004】
一方、このような減速機付きモータには、その作動を制御するために、出力軸の回転位置を検出する回転位置検出センサを設けたものがある。回転位置検出センサは、ウォームホイル(減速ギヤ)の側面に固定される円環状のセンサマグネットとセンサマグネットに対向して配置される磁気センサとを備えており、センサマグネットには複数の磁極が周方向に並べて着磁されている。電動モータが作動すると、ウォームホイルとともにセンサマグネットが回転し、その磁極の変化が磁気センサにより検出される。磁気センサにより磁極の変化が検出されると、その検出結果に基づいて出力軸の回転位置が検出され、その回転位置に基づいて、ワイパ装置等の被駆動装置に所望の動作をさせるように電動モータの作動制御が行われることになる。
【0005】
ところで、回転位置検出センサを備えた減速機付きモータでは、その回転位置検出センサの検出精度を高めるために、センサマグネットをウォームホイル(減速ギヤ)の側面に確実に固定する必要がある。そのため、ウォームホイルへのセンサマグネットの固定構造としては種々の方法が提案されている。
【0006】
例えば特許文献1には、ウォームホイルに設けた保持壁の外周面にセンサマグネットの内周面を係合させるとともに保持壁をセンサマグネットに溶着してセンサマグネットをウォームホイルの側面に固定するようにした構造が記載されている。
【0007】
また、特許文献2には、センサマグネットに嵌入孔を設け、ウォームホイルの側面に配置したセンサマグネットの嵌入孔にウォームホイルに設けた固定用突起を挿通させるとともに固定用突起に歯付きリングを締着してセンサマグネットをウォームホイルの側面に固定するようにした構造が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−094821号公報
【特許文献2】特開2008−253121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1の固定構造では、ウォームホイルとセンサマグネットは異なる材質で形成されているので、溶着によって十分な固定強度を得ることは困難である。そのため、場合によってはセンサマグネットがウォームホイルに対してガタを生じ、これにより、出力軸の回転位置の検出に誤差が生じ、この減速機付きモータの性能が大きく低下するおそれがあった。
【0010】
一方、特許文献2の構造は、センサマグネットのウォームホイルへの固定強度を高めることはできるが、ウォームホイルやセンサマグネットとは別に歯付きリングを用いるようにしているので、部品点数や重量が増加し、また、その組み付けが煩雑になるという問題点があった。
【0011】
本発明の目的は、別部品を用いることなくセンサマグネットを減速ギヤの側面に強固に固定することを可能として、減速機付きモータの作動不良を低減させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の減速機付きモータは、電動モータと該電動モータの出力を減速して出力軸から出力する減速機とを備えた減速機付きモータであって、前記出力軸に固定され、前記減速機を構成する樹脂製の減速ギヤと、前記出力軸と同心の円環状に形成され、前記減速ギヤの側面に該減速ギヤと一体に設けられる樹脂製の保持壁と、複数の磁極が周方向に並べて着磁され、外周部を前記保持壁の内周面に当接させて前記減速ギヤの側面に固定されるセンサマグネットと、前記センサマグネットに対向して配置され、該センサマグネットの磁極の変化から前記出力軸の回転位置を検出する磁気センサとを有し、前記センサマグネットの外周部に段差部を設け、前記保持壁を前記段差部に溶着により係合させて前記センサマグネットを前記減速ギヤの側面に固定したことを特徴とする。
【0013】
本発明の減速機付きモータは、前記段差部を前記センサマグネットの外周面から径方向外側に向けて突出するとともに該外周面の全周に亘って延びる帯状に形成し、前記段差部の軸方向を向く両側面に周方向に複数の凹部を設けたことを特徴とする。
【0014】
本発明の減速機付きモータは、前記センサマグネットを軸方向の中心を基準として線対称の形状に形成したことを特徴とする。
【0015】
本発明の減速機付きモータは、前記センサマグネットの内側に配置されて前記出力軸の基端部を収容する中央突出部を前記減速ギヤの側面に一体に設け、前記減速ギヤの側面からの前記センサマグネットの突出高さを該側面からの前記中央突出部の突出高さよりも低く設定し、且つ、前記センサマグネットの内周面と前記中央突出部の外周面との間に隙間を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、減速ギヤの側面に設けた保持壁をセンサマグネットの外周部に溶着により係合させてセンサマグネットを減速ギヤの側面に固定するようにしたので、センサマグネットをその内周部で固定させる場合に比べて、センサマグネットの減速ギヤへの固定強度を高めることができる。また、センサマグネットの外周部に段差部を設け、減速ギヤの側面に設けられた保持壁をこの段差部に溶着により係合させて該センサマグネットを減速ギヤの側面に固定するようにしたので、センサマグネットの減速ギヤへの固定強度を高めることができる。このように、別部品を用いることなくセンサマグネットを減速ギヤの側面に強固に固定して、減速機付きモータの作動不良を低減させることができる。また、別部品を用いることなくセンサマグネットを減速ギヤの側面に強固に固定することができるので、この減速機付きモータの部品点数を減少させるとともにその組み付け作業を容易にして、この減速機付きモータのコストを低減することができる。
【0017】
本発明によれば、段差部をセンサマグネットの外周面から径方向外側に向けて突出するとともに該外周面の全周に亘って延びる帯状に形成し、この段差部の軸方向を向く両側面に周方向に等間隔に並べて複数の凹部を設けるようにしたので、保持壁を段差部に確実に係合させてセンサマグネットの軸方向への固定強度をさらに高めるとともに、保持壁を凹部に溶着によって係合させることによりセンサマグネットの回転方向への固定強度をさらに高めることができる。
【0018】
本発明によれば、センサマグネットを軸方向の中心を基準として線対称の形状に形成するようにしたので、センサマグネットの軸方向についての組み付け方向性を無くして、センサマグネットの減速ギヤへの組み付け方向違いが生じることを防止することができる。
【0019】
本発明によれば、減速ギヤの側面に出力軸の基端部を収容する中央突出部を一体に設け、減速ギヤの側面からのセンサマグネットの突出高さを中央突出部の突出高さよりも低く設定し、且つ、センサマグネットの内周面と中央突出部の外周面との間に隙間を設けるようにしたので、熱衝撃等により収容部が熱膨張しても、その膨張による荷重がセンサマグネットに伝達されないようにして、センサマグネットの割れを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施の形態である減速機付きモータの一部切り欠き断面図である。
【図2】図1に示す減速機付きモータの減速機の内部構造を示す正面図である。
【図3】図1に示す減速機のウォームホイルの部分の拡大断面図である。
【図4】図1に示すカバー体に取り付けられた制御基板を示す正面図である。
【図5】図3に示すセンサマグネットの詳細を示す斜視図である。
【図6】(a)は図5に示すセンサマグネットの平面図であり、(b)は同正面図である。
【図7】図3に示すウォームホイルのセンサマグネットが固定される前の状態を示す断面図である。
【図8】(a)〜(c)は、それぞれ保持壁を溶着によりセンサマグネットの段差部に係合させる手順を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0022】
図1に示す本発明の一実施の形態である減速機付きモータ11は、自動車に搭載されるワイパ装置の駆動源つまりワイパモータとして用いられるものである。
【0023】
この減速機付きモータ11は電動モータ12と減速機13とを備えており、減速機13が電動モータ12に取り付けられて1つのユニットとされている。電動モータ12としてはブラシ付きモータが用いられており、そのモータ軸12aは所定の方向に回転するようになっている。
【0024】
なお、本実施の形態においては、電動モータ12としてブラシ付きモータを用いているが、これに限らず、例えばブラシレス直流モータなど、他の形式の電動モータを用いるようにしてもよい。
【0025】
減速機13は電動モータ12の出力を所定の減速比で減速して出力軸14から出力するものであり、図2に示すように、バスタブ状に形成されたギヤケース15の内部にウォームギヤ機構16を収容した構造となっている。ギヤケース15は電動モータ12のヨーク12bの開口部にねじ部材17を用いて固定されており、これにより、減速機13は電動モータ12に取り付けられている。また、ギヤケース15の開口にはカバー体18が取り付けられ、このカバー体18によりギヤケース15の開口が閉塞されている。
【0026】
ウォームギヤ機構16はウォーム21とウォーム21に噛み合う減速ギヤとしてのウォームホイル22とを備えている。電動モータ12のモータ軸12aはギヤケース15の内部に突出しており、ウォーム21はモータ軸12aのギヤケース15に収容される部分の外周面に一体に形成されている。一方、減速ギヤであるウォームホイル22は、例えばPOMプラスチック(ポリオキシメチレン等を主成分とするアセタールプラスチック)等の樹脂材料により略円板状に形成された樹脂製となっており、その軸心において減速機13の出力軸14の基端部に固定されている。出力軸14はギヤケース15のボス部15aに回転自在に支持されており、これにより、ウォームホイル22は出力軸14とともにギヤケース15の内部で回転自在となっている。
【0027】
このような構成により、電動モータ12が作動してモータ軸12aが回転すると、その回転がウォーム21とウォームホイル22により所定の回転数にまで減速されて出力軸14から出力される。出力軸14の先端はギヤケース15のボス部15aから外部に突出しており、その先端に図示しないワイパ装置のリンク機構が接続されることになる。
【0028】
図1に示すように、ギヤケース15の内部には制御基板23が収容されており、この制御基板23により電動モータ12の作動制御が行われるようになっている。制御基板23は基板上にCPU(中央演算処理装置)やメモリなどの図示しない複数の電子部品を搭載した構造となっており、図4に示すように、カバー体18の内面にねじ部材24により固定されている。そして、カバー体18がギヤケース15に固定されることにより、制御基板23はウォームホイル22の軸方向を向く側面22aに対向した状態となってギヤケース15の内部に収容されるようになっている。また、制御基板23は、その給電端子23aにおいて電動モータ12に接続されるとともにカバー体18に設けられたコネクタ18aを介して図示しないワイパスイッチや車載のバッテリ(電源)に接続されている。
【0029】
図1に示すように、この減速機付きモータ11には、モータ軸12aの回転数を検出する回転センサ31と出力軸14の回転位置を検出する回転位置検出センサ32とが設けられている。これらのセンサ31,32の検出信号は制御基板23に入力され、制御基板23は、これらのセンサ31,32から入力される検出信号に基づいてモータ軸12aの回転数や出力軸14の回転位置を検出するようになっている。つまり、ワイパスイッチが操作され、ワイパスイッチからの指令信号が制御基板23に入力されると、制御基板23は、ワイパスイッチからの指令信号に加えて回転センサ31と回転位置検出センサ32からの入力により検出されるモータ軸12aの回転数や出力軸14の回転位置に基づいて電動モータ12の作動制御を実行することになる。
【0030】
次に、回転位置検出センサ32の詳細な構成について説明する。
【0031】
図2、図3に示すように、回転位置検出センサ32はセンサマグネット33と磁気センサ34とを有している。
【0032】
センサマグネット33は円環状に形成されており、ウォームホイル22の制御基板23に対向する側の側面22aに固定されている。図2に示すように、センサマグネット33の軸方向を向く側面33aには2つの磁極(N極とS極)が周方向に並べて着磁されている。図示する場合では、センサマグネット33の側面33aの周方向の所定の範囲(90°)にN極が着磁され、残りの範囲にS極が着磁されている。
【0033】
一方、磁気センサ34は制御基板23の所定箇所に搭載されており、制御基板23が固定されたカバー体18がギヤケース15に固定されると、センサマグネット33に所定の間隔を空けて対向するようになっている。この磁気センサ34としては、磁極の変化に反応するホール素子(ホールIC)が用いられている。この磁気センサ34はセンサマグネット33の回転により対向する部分の磁極が変化したときに制御基板23に向けて検出信号を出力するようになっている。図示する場合では、ワイパ装置を構成するワイパアームが下反転位置つまり停止位置となったときに、磁気センサ34がセンサマグネット33のN極と対向して検出信号を出力するようになっている。つまり、制御基板23は、磁気センサ34から入力される検出信号に基づいて、出力軸14の回転位置がワイパ装置を停止位置とさせる位置になったことを検出することができる。これにより、ワイパスイッチが無作為のタイミングでオフ操作された場合であっても、制御基板23はワイパ装置が停止位置となるまで電動モータ12の作動を維持し、ワイパ装置が停止位置となったときに電動モータ12を停止させる制御を行うことができる。
【0034】
次に、回転位置検出センサ32を構成するセンサマグネット33のウォームホイル22の側面22aへの固定構造について説明する。
【0035】
本発明では、センサマグネット33のウォームホイル22の側面22aへの固定強度を高めるために、ウォームホイル22の側面22aに保持壁41を設け、この保持壁41の内側にセンサマグネット33を嵌め込むとともに、センサマグネット33の外周部に段差部42を設け、この段差部42に保持壁41を溶着により係合させるようにしている。
【0036】
ウォームホイル22の側面22aに設けられる保持壁41はウォームホイル22の側面22aに当該ウォームホイル22と一体に樹脂材料により形成されている。つまり、保持壁41は樹脂製となっている。この保持壁41はウォームホイル22の側面22aから軸方向に向けて突出する壁状であるとともにウォームホイル22と同心の円環状に形成されており、図7に示すように、その内径寸法D1はセンサマグネット33の外径寸法D2と同一または僅かに小さくなるよう設定されている。
【0037】
ウォームホイル22の側面22aには保持壁41に加えて中央突出部43が設けられており、この中央突出部43の内部には出力軸14の基端部が収容されている。中央突出部43はウォームホイル22と一体に樹脂材料により形成されており、ウォームホイル22と同心のドーム状に形成されてウォームホイル22の軸心に配置されている。図3に示すように、この中央突出部43のウォームホイル22の側面22aからの軸方向への突出高さh1は当該側面22aに固定されたセンサマグネット33の当該側面22aから軸方向への突出高さh2よりも高く設定されている。
【0038】
また、図7に示すように、中央突出部43の外径寸法D3はセンサマグネット33の内径寸法D4よりも小さく設定されている。これにより、図3に示すように、ウォームホイル22に固定されたセンサマグネット33の内周面と中央突出部43の外周面との間には隙間が設けられている。このような隙間を設けることにより、熱衝撃等により中央突出部43が径方向に熱膨張しても、その膨張による荷重がセンサマグネット33に伝達されることを防止することができる。これにより、センサマグネット33が熱膨張した中央突出部43から荷重を受けて割れることを防止することができる。
【0039】
この回転位置検出センサ32に用いられるセンサマグネット33は磁性体の粉体を含んだ樹脂材料を射出成形して円環状に形成されている。つまり、センサマグネット33はプラスチックマグネットとなっている。このセンサマグネット33を形成するための樹脂材料としてはポリアミド樹脂やポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリプロピレン樹脂等が用いられ、これらの樹脂材料に含まれる磁性体の粉体としては、例えばフェライト系、アルニコ系、サマリウム−コバルト系、ネオジウム−鉄−ボロン系のものが用いられる。
【0040】
ここで、図6(a)に示すように、センサマグネット33の外周部には平坦に切り欠かれた切欠き部44が設けられ、磁性体を含んだ樹脂材料によりセンサマグネット33を射出成形する際には、その樹脂材料を射出する射出用のゲートをセンサマグネット33の切欠き部44に向けて配置するようにしている。つまり、射出用のゲートを磁気センサ34と対向することになるセンサマグネット33の軸方向を向く側面33aには配置しないようにしている。これにより、射出用のゲートに対応した部分におけるセンサマグネット33の磁気性状が悪化しても、当該磁気性状が悪化した部分を磁気センサ34に対向させることなく、磁気センサ34によるセンシング精度に悪影響が及ぶことを防止できる。
【0041】
図5、図6に示すように、センサマグネット33の外周面33bは軸方向に平行となっており、センサマグネット33の外周部に設けられる段差部42はこの外周面33bから径方向外側に向けて突出するとともに該外周面33bの全周に亘って延びる断面矩形の帯状に形成されている。段差部42の軸方向を向く両側面42aは、それぞれ軸方向に垂直であるとともにセンサマグネット33の軸方向を向く側面33aに対して軸方向にずれて配置されている。これにより、センサマグネット33の断面形状は、その外周面33bから段差部42が径方向外側に突出する凸形状となっている。
【0042】
また、段差部42の両側面42aには、それぞれ周方向に等間隔に並べて複数の凹部42bが設けられている。これらの凹部42bは、それぞれ周方向に所定の幅を有するとともに段差部42の両側面42aから軸方向に向けて凹んだ形状に形成されており、また、段差部42の外周面42c側にも開口している。つまり、これらの凹部42bは、段差部42の両側面42aを周方向に向けた所定の幅で切り欠いた形状に形成されている。
【0043】
センサマグネット33は、図6(a)、(b)に示すように、その軸方向の中心を基準として、つまり軸方向の中心を通る基準線Lと径方向の中心を通る基準線Rとを挟んで線対称の形状に形成されている。また、センサマグネット33の切欠き部44を側面33aと凹部42bとに悪影響を与えない位置に配置する。これにより、センサマグネット33のウォームホイル22に対する組み付け方向は、その軸方向の表裏のいずれの側と径方向とにも限定されないことになる。これにより、センサマグネット33の軸方向と径方向についての組み付け方向性を無くして、センサマグネット33のウォームホイル22への組み付け方向違いが生じることを防止することができ、よって、その組み付け作業を容易にすることができる。
【0044】
センサマグネット33は、ウォームホイル22の側面22aの保持壁41と中央突出部43との間に形成されるスペースに軸方向から組み付けられる。このとき、センサマグネット33の外径寸法D2と保持壁41の内径寸法D1とが同一または外形寸法D2が内径寸法D1より僅かに小さくなるように設定されているので、センサマグネット33はその外周部が保持壁41の内周面に嵌め込まれる。
【0045】
センサマグネット33が保持壁41の内側に組み込まれると、保持壁41の軸方向の先端部分がセンサマグネット33の段差部42に溶着により係合される。この溶着は、熱治具(不図示)を用いて保持壁41の先端部分を段差部42に向けて熱変形させる熱かしめにより行われる。
【0046】
次に、保持壁41の先端部分を段差部42に溶着させる手順について、図8(a)〜(c)に基づき説明する。
【0047】
センサマグネット33が保持壁41の内側に軸方向から嵌め込まれると、図8(a)に示すように、センサマグネット33は、軸方向を向く一方の側面33aがウォームホイル22の側面22aに当接するとともに外周部つまり段差部42の外周面42cが保持壁41の内周面に当接してウォームホイル22の側面22a上に位置決めされる。つまり、センサマグネット33はその外周部において保持壁41によりウォームホイル22の側面22a上に位置決めされる。このとき、保持壁41の軸方向の先端部分はセンサマグネット33の段差部42の側面42aよりも軸方向外側に突出している。
【0048】
センサマグネット33が保持壁41により位置決めされると、次に、図8(b)に示すように、保持壁41の先端部分が熱治具により加熱され、加熱により軟化した先端部分が径方向内側に向けて加圧されて折り曲げられるように熱変形され、段差部42の側面42aに向けて押し付けられる。保持壁41の先端部分が熱変形により段差部42に押し付けられると、その先端部分は樹脂材料を主成分としたセンサマグネット33の段差部42に互いに連続性があるように溶着される。これにより、センサマグネット33の段差部42は保持壁41に溶着により固定されることになる。
【0049】
なお、保持壁41の先端部分の熱変形は、その周方向の全周に亘って行われる。また、溶着される前の保持壁41の先端部分の外周面側にはテーパ面45が形成され、これにより、保持壁41の先端部分の熱変形を容易に行い得るようにされている。
【0050】
熱変形により段差部42に押し付けられた保持壁41の先端部分が溶着後に冷却されると、図8(c)に示すように、折り曲げられた状態に維持された保持壁41の先端部分が保持壁41から径方向内側に突出する係止部46となってセンサマグネット33の段差部42の側面42aに係合する。これにより、センサマグネット33は段差部42の側面42aに係合する係止部46とウォームホイル22の側面22aとの間に挟み込まれてウォームホイル22に対して軸方向に固定される。
【0051】
このとき、係止部46はセンサマグネット33の段差部42の側面42aとセンサマグネット33の側面33aとの間の範囲に配置され、センサマグネット33の側面33aよりも軸方向外側に突出しないようになっている。これにより、ウォームホイル22が回転したときに、係止部46がセンサマグネット33の側面33aよりも軸方向外側に突出して磁気センサ34に干渉することがない。
【0052】
また、熱変形により段差部42の側面42aに押し付けられた保持壁41の先端部分は、その一部が段差部42の側面42aに設けられた凹部42bの内部に押し込まれることになる。そして、その押し込まれた部分が冷却されることにより、係止部46は凹部42bにも係合することになる。これにより、センサマグネット33は係止部46により、その周方向に向けて、さらに強固に固定(係止)されることになる。
【0053】
上述のように、本発明の減速機付きモータ11では、センサマグネット33は、その外周部に設けられた段差部42に保持壁41が溶着されるとともに、当該保持壁41が段差部42に係合することによりウォームホイル22の側面22aに強固に固定されることになる。したがって、ウォームホイル22に対するセンサマグネット33の固定位置がずれることを防止し、これにより回転位置検出センサ32の検出精度を向上させて、この減速機付きモータ11の作動の精度が高めることができる。
【0054】
このように、この減速機付きモータ11では、センサマグネット33をその外周部においてウォームホイル22の側面22aに設けた保持壁41に溶着、係合させるようにしたので、センサマグネット33をその内周部で保持壁に溶着、係合させる場合に比べて、センサマグネット33のウォームホイル22の側面22aへの固定強度を高めることができる。また、センサマグネット33の外周部に段差部42を設け、ウォームホイル22の側面22aに設けられた保持壁41をこの段差部42に溶着により係合させて該センサマグネット33をウォームホイル22の側面22aに固定するようにしたので、段差部42を設けない場合に比べて、保持壁41によるセンサマグネット33の固定強度を高めることができる。したがって、締結部材等の別部品を用いることなくセンサマグネット33をウォームホイル22の側面22aに強固に固定することができる。そして、センサマグネット33をウォームホイル22の側面22aに強固に固定することにより、減速機付きモータ11の作動不良を低減させることができる。
【0055】
また、締結部材等の別部品を用いることなくセンサマグネット33をウォームホイル22の側面22aに強固に固定することができるので、この減速機付きモータ11の部品点数を減少させるとともに、その組み付け作業を容易にすることができる。これにより、この減速機付きモータ11を製造するためのコストを低減することができる。
【0056】
さらに、センサマグネット33の外周部に設ける段差部42をセンサマグネット33の外周面33bから径方向外側に向けて突出するとともに該外周面33bの全周に亘って延びる帯状に形成し、この段差部42の軸方向を向く両側面42aに周方向に等間隔に並べて複数の凹部42bを設けるようにしたので、保持壁41に熱変形により形成される係止部46によりセンサマグネット33を確実に係止させることができる。これにより、保持壁41を用いたセンサマグネット33のウォームホイル22の側面22aへの固定強度をさらに高めることができる。
【0057】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。例えば、前記実施の形態においては減速機13にはウォームギヤ機構16が用いられているが、これに限らず、複数の平歯車からなる減速歯車列等、出力軸が固定される減速ギヤを備えたものであれば他の形式の減速機構を用いるようにしてもよい。
【0058】
また、前記実施の形態においては、磁気センサ34としてホール素子(ホールIC)が用いられているが、これに限らず、ウォームホイル22に固定されるセンサマグネット33の磁極の変化を検出できるものであれば、他の磁気センサを用いるようにしてもよい。
【0059】
さらに、前記実施の形態においては、センサマグネット33の形状を円環状としたが、これに限らず、センサマグネット33は、センサマグネット33の外周部においてウォームホイル22に設けた保持壁41に溶着、係合させる形状であればよい。
【0060】
さらに、前記実施の形態においては、段差部42の両側面42aに、それぞれ周方向に等間隔に並べて複数の凹部42bが設けられているとしたが、これに限らず、複数の凹部42bは周方向に等間隔に並べて配置しなくてもよい。複数の凹部42b間はそれぞれ周方向に所定の幅を有するが、その幅は等間隔とせずに任意に定めることができる。
【0061】
さらに、前記実施の形態においては、保持壁41をセンサマグネット33の段差部42に溶着させる手段として熱溶着を用いるようにしているが、これに限らず、例えば、超音波を用いて保持壁41を加熱させる超音波溶着や保持壁41に振動を加えて加熱させる振動溶着など、他の溶着方法を用いるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0062】
11 減速機付きモータ
12 電動モータ
12a モータ軸
12b ヨーク
13 減速機
14 出力軸
15 ギヤケース
15a ボス部
16 ウォームギヤ機構
17 ねじ部材
18 カバー体
18a コネクタ
21 ウォーム
22 ウォームホイル(減速ギヤ)
22a 側面
23 制御基板
23a 給電端子
24 ねじ部材
31 回転センサ
32 回転位置検出センサ
33 センサマグネット
33a 側面
33b 外周面
34 磁気センサ
41 保持壁
42 段差部
42a 側面
42b 凹部
42c 外周面
43 中央突出部
44 切欠き部
45 テーパ面
46 係止部
D1 保持壁の内径寸法
D2 センサマグネットの外径寸法
h1 中央突出部の突出高さ
h2 センサマグネットの突出高さ
D3 中央突出部の外径寸法
D4 センサマグネットの内径寸法
L 基準線
R 基準線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータと該電動モータの出力を減速して出力軸から出力する減速機とを備えた減速機付きモータであって、
前記出力軸に固定され、前記減速機を構成する樹脂製の減速ギヤと、
前記出力軸と同心の円環状に形成され、前記減速ギヤの側面に該減速ギヤと一体に設けられる樹脂製の保持壁と、
複数の磁極が周方向に並べて着磁され、外周部を前記保持壁の内周面に当接させて前記減速ギヤの側面に固定されるセンサマグネットと、
前記センサマグネットに対向して配置され、該センサマグネットの磁極の変化から前記出力軸の回転位置を検出する磁気センサとを有し、
前記センサマグネットの外周部に段差部を設け、前記保持壁を前記段差部に溶着により係合させて前記センサマグネットを前記減速ギヤの側面に固定したことを特徴とする減速機付きモータ。
【請求項2】
請求項1記載の減速機付きモータにおいて、前記段差部を前記センサマグネットの外周面から径方向外側に向けて突出するとともに該外周面の全周に亘って延びる帯状に形成し、前記段差部の軸方向を向く両側面に周方向に複数の凹部を設けたことを特徴とする減速機付きモータ。
【請求項3】
請求項2記載の減速機付きモータにおいて、前記センサマグネットを軸方向の中心を基準として線対称の形状に形成したことを特徴とする減速機付きモータ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の減速機付きモータにおいて、前記センサマグネットの内側に配置されて前記出力軸の基端部を収容する中央突出部を前記減速ギヤの側面に一体に設け、前記減速ギヤの側面からの前記センサマグネットの突出高さを該側面からの前記中央突出部の突出高さよりも低く設定し、且つ、前記センサマグネットの内周面と前記中央突出部の外周面との間に隙間を設けたことを特徴とする減速機付きモータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−244562(P2011−244562A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−112974(P2010−112974)
【出願日】平成22年5月17日(2010.5.17)
【出願人】(000144027)株式会社ミツバ (2,083)
【Fターム(参考)】