説明

温度変化に対して改良された反応を有するMEMSパッケージ

大規模なMEMSデバイス(10,100,200,300)は、少なくとも一つの対応するダイマウント(28)によって支持されるMEMSダイ(22)を含む。対応するダイマウント(28)は、MEMSダイ(22)を支持構造(20)に連結する。支持構造(20)は、パッケージ(38,40)の内部に配置される。本発明の態様によれば、パッケージ(38,40)は、MEMSダイ(22)について実質的に対称形である。本発明の別の態様によれば、支持構造(20)および/またはパッケージ(38,40)は、MEMSダイ(22)に沿う中立の屈曲軸を有するように設計されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MEMSデバイス用のパッケージに関する。より詳しくは、本発明は、熱膨張が問題となる比較的大規模なMEMSデバイス用のパッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ電気機械システム(MEMS:Micro Electro Mechanical Systems)は、最初に1970年代に開発され、1990年代において商業化された。通常、MEMSデバイスは、微視的で、小規模の物質界と相互に作用するそれらの能力によって特徴づけられる。MEMSデバイスは、センサ等のような何がしかの機械的な入力を受けるもの、またはアクチュエータのような何がしかの機械的な出力を生み出すデバイスのいずれかとして一般的に分類される。極めて小規模な代表的なMEMSデバイスを考えると、その作動は極めて小規模なものであるが、依然として多様な目的に用いることが可能である。MEMSセンサは、熱学的、光学的、化学的および生物学的でさえある入力に関するデータを収集するのに用いられる。MEMSをベースとしたアクチュエータもまた、応答し、物質の移動、ろ過および/またはポンピングによって環境を制御するデバイス(これに限定されるものではない)を含む多様な目的に用いられている。
【0003】
MEMSデバイスは従来、非常に小規模デバイス(例えば、砂粒サイズ)であったが、より大きいMEMSデバイスもまた非常に有用であることが証明されている。例えば、光通信の分野においては、MEMSアクチュエータにより与えられた動作は、光スイッチ、光多重および/または選択的減衰を与える上で非常に有用である。通常、光学的MEMSデバイスは、従来の微視的な構造よりも大規模である。しかしながら、これらのより大きなMEMSデバイスが事実上電気機械で、製作のための既存のMEMS技術を使用することから、もはや「微小」ではない場合であっても、それらは依然としてマイクロ電気機械システムであると考えられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
MEMSデバイスにおける熱膨張は、当業者にはよく知られている。事実、若干のMEMSデバイスは、作動を生み出すために、異なる材料の熱膨張を使用している。MEMSデバイスは通常、微視的な大きさであり、熱膨張が拡大している本体のサイズと比例することから、MEMS構造の非作動部分の膨張はこれまで問題にはならなかった。しかしながら、より大規模なMEMSデバイス、例えば光通信において使用するものにおいては、MEMS構造は、0.5cmを上回る寸法を有することがあり得る。これは、極めて大規模なMEMSデバイスである。したがって、この種の大きなデバイスと関連する熱膨張は、MEMSデバイスの機械の態様に不利な影響を与えることとなる。例えば、可変光学減衰器で、マイクロ・インチのオーダーの作動は、光学減衰に関する大きな差になり得る。付加的な変位が熱膨張による望ましくない変位によって生じる場合、非線形性および/または予測不可能な結果が起こり得る。したがって、大規模なMEMSデバイスに対する熱影響を最小化することが望まれていた。
【0005】
大規模なMEMSデバイスの望ましくない変位が生じ得る他の要因は、パッケージ自体である。MEMSデバイスは、通常、比較的もろく、環境から保護されていなければならない。したがって、それらは、通常、ある種のパッケージ内に配置される。サイズおよび予算上の制約のために、パッケージ材自体は、通常、MEMS構造の材料と同様でない材料で形成される。このように、パッケージは、通常、MEMS材料と異なる熱膨張率を有する。パッケージ/MEMS組立品全体の温度が変化するにつれて、熱的に誘発された歪が生じる。従来のエレクトロニクス・パッケージ(MEMSパッケージを含む)は、一般にデバイスの片面上にダイマウントを使用する。ダイおよびパッケージ間の熱膨張率(CTE)が異なることにより、ダイを曲がらせることがあり得る。電気接続は通常、ある程度の曲げを許容することから、電子装置用のダイを曲げることは通常、重要な問題でない。しかしながら、MEMSデバイスにとって、小さい屈曲または熱的に誘発された歪は、MEMSデバイスに故障を生じさせるか、または同様にその意図された機能を実行させなくすることがあり得る。
【0006】
熱変化に対して改良した挙動をする大規模なMEMSデバイスを提供することは、非常に有用である。この種のデバイスとしては、例えば、それらのデバイスのコストをかなり上げることのない、例えばマルチプレクサ、スイッチおよび減衰器等の、より精密な光通信デバイスを提供することができる。更に、温度挙動が大きく改善される場合には、MEMSデバイスの熱制御およびこの種のデバイスの温度検出すら不要となる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
大規模なMEMSデバイスは、少なくとも一つの対応するダイマウントによって支持されるMEMSダイを含む。対応するダイマウントは、MEMSダイを支持構造に連結する。支持構造は、パッケージの内部に配置される。本発明の態様によれば、パッケージは、MEMSダイについて実質的に対称形である。本発明の別の態様によれば、支持構造および/またはパッケージは、MEMSダイに沿う中立の屈曲軸を有するように設計されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の実施形態は、熱膨張が望ましくない寸法変化を引き起こし得るいかなる大規模なMEMSデバイスに対しても非常に有用である。本発明の実施形態は、電子的可変光減衰器MEMSデバイスに関して記載されると共に、当業者にとって、本発明の実施形態が、他の適合したMEMSデバイスと同様に、光スイッチやマルチプレクサのような光通信デバイス(これに限られるものではない)を含む、MEMSデバイスの多くの他方式に実践されることがあり得ると認識する。
【0009】
図1は、本発明の実施形態によるMEMS技術に基づく電子的可変光学減衰器の斜視図である。減衰器10は、それぞれ、支持構造20の溝16および18を通して受け取られる一対の光ファイバ導波管12および14を含む。導波管12および14は、周知のMEMS技術により、導波管12および14の端間の光継手を調整するためにマイクロ作動を提供するMEMSダイ22に連結する。MEMSダイ22は、大規模なMEMSデバイスである。ここで使用しているように、大規模なMEMSデバイスは、1.0ミリメートルより大きい寸法を有するいかなるMEMS構造も含む。加えて、大規模なMEMSデバイスは、熱膨張を受ける材料の中で形成される1.0ミリメートルより大きい寸法を有する構造に物理的に連結する従来の小規模のMEMS構造を含んでおり、その熱膨張は、小規模の構造に影響を及ぼす。例えば、MEMSデバイス22の端24および26間の寸法は、好ましくはほぼ3ミリメートルである。MEMS構造22は、望ましくは適切な半導体材料、例えばシリコン、アルミナ、セラミックなどで形成される。通常、この種の材料は比較的高価であり、同一材料から全デバイス10を形成することは極めて高費用となる。このため、支持構造20は、MEMSデバイス22とは異なる材料で形成される。好ましい実施形態においては、支持構造20は、実際は、適切なプリント回路基板材料を使用しているプリント回路基板である。この種の材料の1つの実施形態としては、回路基板のために使用する周知のFR4エポキシ積層材料がある。FR4は、縦方向では約11ミクロン/m/℃、横方向では約15ミクロン/m/℃の熱膨張率を有する。FR5エポキシ積層体も使用することができる。したがって、温度が変化するにつれて、MEMSダイ22は支持構造20の熱膨張率とは異なる熱膨張率で寸法を変える。この熱膨張の差に対応するようにして、比較的小さい隙間が、MEMSダイ22および支持構造20の間に設けられる。支持構造20は、MEMSダイ22が配置される空洞21を含む。図2は、より詳細なこの隙間を例示している。少なくとも1つの、好ましくは4つの対応するダイにおいて、マウントが、MEMSダイ22および支持構造20間の隙間を埋めるために用いられている。マウント28は、図2において例示されている。支持構造20は周知のワイヤ・ボンディング技術を使用しているMEMSダイ22上の関連するボンディングパッド32に連結する多くのボンディングパッド30を備えるのが望ましい。全デバイス10からパッド30への電気接続は、リード枠34によって容易となる。支持構造20および各々のカバー36および38は、支持構造20に関してカバー38および40の正確な配列を促進するために、好ましくは連結位置決め機構40を含む。1つの実施形態において、支持構造20は、頂面42および底面44のそれぞれから伸びているアライメント・ピンを含み、アライメント・ピンは、カバー38および40の整合穴または凹部と相互に係合する。当業者は、あらゆる適切な連結位置決め機構を、支持構造20と、カバー38および40との間の正確な配列を遂行するために使用されることができると認識する。いくつかの実施形態では、カバー38および40は、それ自身、いかなる適切な回路を配置する回路基板であることもできる。
【0010】
光ファイバ構造の堅牢性を強化するため、一対の歪除去ブーツ46および48がケーブル14および12のために、それぞれ好ましく設けられる。
【0011】
本発明の一実施態様によれば、カバー38および40は互いに実質的同一である。このように、これらは、実質的に同一の形状を有し、実質的に同一材料により形成され、実質的に互いに同じ厚みを有する。したがって、カバー38および40が支持構造20に載置されると、温度変化が生じてもカバー38および40の両方は等しく膨張するので、余計なたわみの発生は生じないか、あるいは実質的に生じない。カバー38および40が実質的に同一であることが好ましいが、各々のカバーの曲がりに対する寄与に対して相当な注意が払われる限り、特定の偏差は許容され得る。例えば、1つのカバーにおける形状またはサイズにおけるわずかな変更は、カバーの材料またはカバー厚の変更によって補正され得る。
重要な概念は、熱膨張による支持構造20を一方向へ曲げようとする1つのカバーの相対的な能力が、向かい側のカバーによって実質的に相殺されるということである。このため、全デバイス10の中立の屈曲軸は、MEMSデバイス22の面における、実質的に支持構造20およびMEMSデバイス22の中心の中を実質的に通らなければならない。
【0012】
図2は、対応するダイマウント28によってMEMSデバイス22を支持している支持構造20の平面図である。対応するダイマウント28は、それがMEMSダイ22に実質的にいかなる屈折も与えないような弾性率を有するいかなる適切な材料からも作ることができるが、その代わりにMEMSダイ22および支持構造20間の寸法変化を収める。好ましくは、対応するマウント28は、完成した装置の意図された使用法に適している熱稼動範囲を有するエラストマー材から造られる。図2は、4つの対応するマウント28を例示すると共に、ダイ22および支持構造20間の全ての隙間が単一の対応するマウントで満たされ得ることが明瞭に検討されている。したがって、本発明の実施形態によれば、1つを含む任意の適当な数の対応するマウント28が用いられ得る。
【0013】
図3は、本発明の実施形態によるデバイス10の横断面図である。図3は、デバイス10の中で内部スペースを増やすための凹部50を各々が有する上部カバー38および底部カバー40を示している。それ以上の内部スペースの使用は、デバイス10の中で位置決めをするのが望ましい電子回路を収納することを助けることができる。図3は、支持構造20の厚みと実質的に等しい厚みを有する対応するマウント28を示す。対応するマウント28は、MEMSダイ22の厚みより好ましくは大きい厚みを有する。いくつかの実施形態において、対応するマウント28は、構造の機械の堅牢性を高めるためにMEMSダイ22の端を包囲する小さいチャネルまたは凹部を備えることができる。最後に、図3は、支持構造20の表面より上および下で伸びている整列部材41を例示する。
【0014】
図4は、本発明の実施形態による光通信デバイス100の斜視図である。デバイス100の態様は、デバイス10の態様と類似しており、構成要素には同様の符号がつけられている。デバイス100およびデバイス10の主要な違いは、デバイス100が支持構造20に配置されている回路104を含むということである。回路104は、領域102の中に図示されている。回路104に対応するために、支持構造20、カバー38および40は、付加的な表面積を回路104に提供するために広げられた。デバイス100内に電子機器が設けられると、デバイスに付加的な特徴および特性を与えるだけでなく、デバイス応答時間も改善することができる。通常、表面実装の集積回路、表面実装レジスタ、表面実装コンデンサ等のような表面実装回路である回路104は、支持構造20の熱膨張特性に影響を及ぼすので、回路は比較的対称形の傾向で支持構造20に合わされるのが好ましい。したがって、図4にて図示したように、類似した回路104(少なくともそれらの物理的な寸法という意味において類似の)は、MEMSダイ22の反対側に配置されている。さらに、類似した回路も支持構造20の下側に配置されているということが好ましい。上記のように、カバー38および40は、好ましくは、支持構造20上の回路の付加高さを収める凹部50を含む。回路104は、アナログ/ディジタル変換器、演算増幅器、静電容量計測回路、圧電測定回路、ホイートストンブリッジ回路等(これらに限定されるものではない)を含んだいかなる適切な回路も用いることができる。
【0015】
図5は、本発明の他の実施形態によるMEMSを基礎として形成された光通信デバイス200の斜視図である。デバイス200はデバイス10および100に多くの類似点を有しており、同類構成要素には同様の符号がつけられている。デバイス200は、一方または両方のカバーが、その上におよび/または中に配置された電子回路を備える本発明の他の実施形態を示している。特に、カバー202は、その中またはその上に、電子回路206を有する回路基板204を載置するのに適している。そして、カバー40が同じように構成されるのが好ましいが、本発明の実施形態は、その熱膨張特性がカバー202および回路基板204の熱膨張の複合効果に対して反対に作用するように、カバー40を適応させることによって実践され得る。
【0016】
本発明の実施形態では一般に1チャンネルの光通信デバイスを記載しているが、他の形態として、多数チャンネルのデバイスにも適用することができる。例えば、相対的な左右対称を維持することによって、各々の上に多数のMEMSデバイスを積み重ねて、一対の実質的に同一のカバーの中でそれらを囲むことを可能にしてもよい。図6は、本発明の他の実施形態によるMEMSダイおよびパッケージのその他の実施形態の斜視図である。図6は、各々が内部にMEMSダイ22を配置した複数の支持構造20を囲む一対のカバー38、40を有する大規模なMEMSデバイス300を示す。各々のMEMSダイ22がそれぞれに用いられることができるという点で、デバイス300はマルチデバイスである。また、付加チャネルも、横に並べるやり方で作ることができる。
【0017】
本発明が好ましい実施形態に関して記載されているが、当業者は、本発明の精神と範囲から逸脱することなく、変化が形態および細部においてなされることができると認識する。例えば、本発明の実施形態は、一般的に電子的可変光学減衰器に関して記載されるものであるが、当業者は本発明の実施形態が、熱膨張が問題となる全ての大規模なMEMSデバイスに適用できるものと認識するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態によるMEMS構造およびパッケージの斜視図である。
【図2】本発明の実施形態による支持構造の中に載置されるMEMSダイの平面図である。
【図3】本発明の実施形態によるMEMSダイおよびパッケージの側断面図である。
【図4】本発明のその他の実施形態によるMEMSダイおよびパッケージの斜視図である。
【図5】本発明のその他の実施形態によるMEMSダイおよびパッケージの更にその他の斜視図である。
【図6】本発明のその他の実施形態によるMEMSダイおよびパッケージの更にその他の斜視図である。
【符号の説明】
【0019】
10 デバイス(減衰器)
12,14 ケーブル
20 支持構造
21 空洞
22 MEMSダイ
28 マウント
38,40,202 カバー
50 凹部
104,204,206 回路(電子回路)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空洞を画定する支持構造と、空洞の中に位置づけられ、少なくとも一つの対応するマウントを介して支持構造に連結されたMEMSダイと、支持構造の両側に配置される一対のカバーと、を含む大規模MEMSデバイス。
【請求項2】
一対のカバーの各々が実質的に同一である請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
支持構造がプリント回路基板である請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
プリント回路基板が電子回路を含む請求項3に記載のデバイス。
【請求項5】
電子回路が温度変化に応じた支持構造の曲げを減らすように配置される請求項4に記載のデバイス。
【請求項6】
少なくとも一つの対応するマウントが、4つの対応するマウントを含む請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
少なくとも一つの対応するマウントが、支持構造の厚みに実質的に等しい厚みを有する請求項1に記載のデバイス。
【請求項8】
カバーのうちの少なくとも1つが凹部を含む請求項1に記載のデバイス。
【請求項9】
MEMSダイが約1.0mm以上である少なくとも一つの寸法を有する請求項1に記載のデバイス。
【請求項10】
支持構造がエポキシ積層体で形成される請求項1に記載のデバイス。
【請求項11】
エポキシ積層体がFR4である請求項10に記載のデバイス。
【請求項12】
エポキシ積層体がFR5である請求項10に記載のデバイス。
【請求項13】
更に第二の空洞を画定する第二の支持構造を含むデバイスであって、第二の空洞は、第二のMEMSダイをその中で有し、第二のMEMSダイは、少なくとも一つの対応するマウントによって第二の支持構造に連結している、請求項1に記載のデバイス。
【請求項14】
第一および第二の支持構造が互いに積み重なる請求項13に記載のデバイス。
【請求項15】
デバイスが電子制御可変光学減衰器である請求項1に記載のデバイス。
【請求項16】
更にMEMSダイに連結する少なくとも一つの光ファイバーケーブルを含む請求項1に記載のデバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−528301(P2008−528301A)
【公表日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−551256(P2007−551256)
【出願日】平成17年12月2日(2005.12.2)
【国際出願番号】PCT/US2005/043820
【国際公開番号】WO2006/076089
【国際公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【出願人】(597115727)ローズマウント インコーポレイテッド (240)
【Fターム(参考)】