説明

温度測定ハニカム構造体

【課題】温度を安価かつ簡便に測定することができるハニカム構造体を提供する。
【解決手段】多孔質の隔壁によって気体の流路となる複数のセルが区画形成されたハニカム構造体、前記ハニカム構造体に配設された金属体、前記金属体の抵抗を測定する抵抗測定手段、および、前記抵抗測定手段により測定された抵抗値から温度を算出する温度算出手段を備えた温度測定ハニカム構造体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼルパティキュレートフィルター(DPF)等の微粒子捕集フィルタなどに好適に使用可能な金属体を有するハニカム構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
気体中の微粒子を捕集して気体を浄化する手段としては、フィルタによるろ過が代表的である。フィルタの材質・構造としては、繊維層、セラミックフォーム、金属フォーム等があり、特に、圧力損失を低減できる材質・構造として、多孔質の隔壁によって気体の流路となる複数のセルが区画形成されたハニカム構造体の端面において、各セルの一方の端部を、千鳥状になるように、互い違いに目封止したウォールフロー型のものが良く知られている。
【0003】
これら微粒子捕集フィルタでは、微粒子が堆積して行くにつれてフィルタの目詰まりが進行し、フィルタ性能が低下して行くため、微粒子の堆積量がフィルタの使用限界に達する前に、フィルタ自体を交換するか、あるいは堆積した微粒子を取り除く再生処理が必要である。この交換や再生処理の時期を決めるためには、微粒子堆積量の検知が必要であり、従来は、フィルタ圧力損失によるフィルタ前後の排圧の差圧を差圧センサにより検出して微粒子堆積量を検知するようにしていた(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、微粒子捕集フィルタにおいては、微粒子の堆積量に対して、フィルタの圧力損失がヒステリシスを持つ場合が多く、フィルタ圧力損失によるフィルタ前後の排圧の差圧のみから微粒子堆積量を一義的に検知することは不可能な場合が多い。例えば、ディーゼルエンジンの排気微粒子を捕集するウォールフロー型のセラミックフィルタ(DPF)では、低温で微粒子を捕集し続けた後、フィルタ細孔内にコートされた触媒が活性となる温度に一時的に昇温すると、細孔内に堆積した微粒子が酸化除去され、わずかな細孔内微粒子の酸化消滅により大幅に圧力損失が低下するため、堆積微粒子量と圧力損失との関係はヒステリシスを示し、同一の圧力損失でも、堆積微粒子の量が大きく異なる状態が生じ得ることになる。
【0005】
したがって、このような微粒子捕集フィルタにおいては、圧力損失から一義的に微粒子堆積量を推定することは困難であり、フィルタの交換や再生処理の時期を決定する際には、圧力損失の情報以外に、運転時間、運転条件によるエンジンからの微粒子発生量予測を併用して、フィルタへの微粒子堆積量を推定し、その推定堆積量からフィルタの交換や再生処理の時期を決定しているのが現状である。
【0006】
また、微粒子堆積量を検出するための他の手段として、前記のようなハニカム構造体を使用した微粒子捕集フィルタの外周部に2つ以上の電極を設け、当該電極間のインピーダンスを測定して、その測定値から微粒子堆積量を推定するという方法も検討されている(特許文献2参照)。
【0007】
【特許文献1】特開昭60−47937号公報
【特許文献2】国際公開第2005/078253号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2に開示の方法においては、電極間のインピーダンスは温度により影響を受けるという問題を有する。このため、インピーダンス測定値から微粒子量を推定する方法においては、インピーダンスを測定している微粒子捕集フィルタの温度により補正を行う必要がある。したがって、微粒子捕集フィルタの温度を安価かつ簡便に測定する手段および方法が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため、本発明によれば、以下のハニカム構造体及びハニカム構造体の温度測定方法が提供される。
【0010】
[1] 多孔質の隔壁によって気体の流路となる複数のセルが区画形成されたハニカム構造体、前記ハニカム構造体に配設された金属体、前記金属体の抵抗を測定する抵抗測定手段、および、前記抵抗測定手段により測定された抵抗値から温度を算出する温度算出手段を備えた温度測定ハニカム構造体。
【0011】
[2] 前記金属体を少なくとも2つ備え、それらの前記金属体の形状または材質が互いに異なっており、前記温度算出手段がそれぞれの金属体の抵抗値を比較して温度を算出する上記[1]に記載のハニカム構造体。
【0012】
[3] 前記金属体を少なくとも2つ備え、前記金属体間の交流インピーダンス、直流抵抗、リアクタンス又はキャパシタンスとしての前記ハニカム構造体の電気特性を測定する電気特性測定手段、および、前記電気特性測定手段により測定されたハニカム構造体の電気特性から前記ハニカム構造体に付着した微粒子の量を算出する微粒子量算出手段をさらに備えた上記[1]または[2]に記載のハニカム構造体。
【0013】
[4] 前記微粒子量算出手段が、前記温度算出手段により算出されたハニカム構造体の温度と前記電気特性測定手段により測定されたハニカム構造体の電気特性とから前記ハニカム構造体に付着した微粒子の量を算出する上記[3]に記載のハニカム構造体。
【0014】
[5] 前記金属体のうち少なくとも一つがセラミック体の内部に埋入されている上記[1]〜[4]のいずれかに記載のハニカム構造体。
【0015】
[6] 前記各セルの一方の端部が目封止されている上記[1]〜[5]のいずれかに記載のハニカム構造体。
【0016】
[7] 前記各セルの一方の端部が、前記ハニカム構造体の端面において千鳥状になるように、互い違いに目封止されている上記[1]〜[6]のいずれかに記載のハニカム構造体。
【0017】
[8] 多孔質の隔壁によって気体の流路となる複数のセルが区画形成されたハニカム構造体に金属体を配設し、前記金属体の抵抗を測定して、測定された抵抗値から温度を算出するハニカム構造体の温度測定方法。
【0018】
[9] 前記ハニカム構造体に、形状または材質が互いに異なる2つ以上の金属体を配設し、それぞれの金属体の抵抗を測定し、それぞれの金属体の抵抗値を比較して温度を算出する上記[8]に記載のハニカム構造体の温度測定方法。
【0019】
[10] 多孔質の隔壁によって気体の流路となる複数のセルが区画形成されたハニカム構造体に、2つ以上の金属体を配設し、前記金属体の抵抗を測定して、測定された抵抗値から前記ハニカム構造体の温度を算出し、前記金属体間の交流インピーダンス、直流抵抗、リアクタンス又はキャパシタンスとしての前記ハニカム構造体の電気特性を測定し、算出されたハニカム構造体の温度と、測定されたハニカム構造体の電気特性とから前記ハニカム構造体に付着した微粒子の量を算出する前記ハニカム構造体に付着した微粒子量算出方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明のハニカム構造体を使用すれば、ハニカム構造体の温度を安価かつ簡便に測定することができる。このため、ハニカム構造体の微粒子量測定をより高精度化することができる。本発明のハニカム構造体は、DPF等の微粒子捕集フィルタなどに好適に使用できるものであり、微粒子捕集フィルタに使用した場合において、フィルタ内部に堆積した微粒子の量を簡易かつ高精度で検知でき、フィルタの交換や再生処理の時期の決定を容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の代表的な実施形態を図面を参照しながら具体的に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
【0022】
図1は、本発明の一実施形態に係る円筒形のハニカム構造体を示す模式図である。このハニカム構造体1は、多孔質の隔壁によって気体の流路となる複数のセルが区画形成されたハニカム構造体であって、表面に2つの金属体2を有している。DPF等の微粒子捕集フィルタに使用する場合には、各セルの一方の端部が目封止されていることが好ましく、図1に示すように、ハニカム構造体1の端面において千鳥状になるよう、各セルの一方の端部が目封止部により互い違いに目封止されていることが特に好ましい。このような構造とすることにより、ハニカム構造体1に流入した排ガスは、強制的に各セル間の多孔質の隔壁を通過させられることになり、その隔壁通過の際に、排ガス中の微粒子が隔壁上に捕集される。
【0023】
金属体2は、それぞれその両端が抵抗測定手段100に接続されている。抵抗測定手段100は、金属体2の両端間に直流電流を流し、金属体2の両端間の抵抗を測定する機能を備えている。それぞれの抵抗測定手段100は温度算出手段200に接続されている。温度算出手段200は抵抗測定手段100で測定された抵抗値に基づき、金属体2の温度を算出する。一般に、金属の抵抗は温度に依存して変化するので、温度と抵抗の変化の関係を予め実験等により取得しておけば、抵抗を測定することにより温度を決定することができる。
【0024】
本実施の形態のように金属体2が複数配設されており、それぞれの金属体2に対応して抵抗測定手段100が配設されている場合には、双方の抵抗値を比較して温度を算出することができる。このように構成すると、金属体2が設置されている環境に起因する誤差を軽減することができるので好ましい。この場合、双方の金属体2は、同一温度において、抵抗値が異なるものを選択するのが好ましい。同一温度において抵抗値が異なる組合せの例としては、互いに物理的形状が異なる組合せおよび互いに材質が異なる組合せを例示することができる。
【0025】
このハニカム構造体1は、金属体2を利用することによって、捕集された微粒子の量を検知することが可能である。具体的には、金属体2,2間の交流インピーダンス、直流抵抗、リアクタンス、キャパシタンス等の電気的特性を計測することによって、捕集された微粒子の量を検知する。すなわち、この微粒子捕集フィルタにおいては、ハニカム構造体1の内部に設けられた金属体2,2間の交流インピーダンス等の電気的特性を計測することによって、ハニカム構造体1に微粒子が堆積したことによる、金属体2,2間の静電容量、直流抵抗値等の変化を検知することができる。金属体2,2間の静電容量等は、ハニカム構造体1内の微粒子の絶対量に対応して変化するため、交流インピーダンス等の電気的特性の計測データからハニカム構造体1の微粒子堆積量を一義的に推定することができる。具体的には、堆積した微粒子の質量と交流インピーダンス等の電気的特性との関係を実測値に基づいて予めグラフ化等しておくことにより、交流インピーダンス等の電気的特性を計測するだけで、その計測時点での微粒子の堆積量を推定することができるようになる。
【0026】
なお、ハニカム構造体の内部に金属体が設けられていれば、大きなノイズは生じにくく、高精度で微粒子堆積量を推定することができる。
【0027】
[ハニカム構造体]
本発明において、ハニカム構造体の材質は特に限定されないが、炭化珪素、コージェライト、アルミナタイタネイト、サイアロン、ムライト、窒化珪素、リン酸ジルコニウム、ジルコニア、チタニア、アルミナ及びシリカよりなる群から選ばれる1種以上のセラミックス、又は焼結金属を主成分とする材料から構成されているものが好適である。
【0028】
[金属体]
金属体の材質も特に限定はされないが、タングステン、モリブデン、マンガン、クロム、チタン、ジルコニウム、ニッケル、鉄、金、銀、銅、白金、ロジウム及びパラジウムからなる群から選ばれる少なくとも一種の金属の内の何れかまたはこれらの合金から構成されているものが好適である。金属体の材質が互いに異なる本発明の実施形態においては、これらのうちの任意の組合せを採用することができる。これらのうちで、白金と白金ロジウム合金の組合せが好ましい。
【0029】
金属体の形状は、厚さ10μm〜1000μm程度の薄板状の形状とするのが好ましい。図2は、図1の円筒形のハニカム構造体の胴部の表面を展開した模式図である。例えば、図2に示すように、薄板状の形状の短手方向の両端部から、他の端部に向かって垂直に互い違いにスリットを入れた形状とすることができる。これにより、金属体に電気を流す場合、電流の流路を長くとることができ、効果的に抵抗を測定することができる。金属体の形状が互いに異なる本発明の実施形態においては、スリットを入れる間隔が互いに異なり、電流の流路の長さが互いに異なる組合せを採用することができる。この場合、一方にはスリットを入れ、他方にはスリットを入れない組合せとしても良い。
【0030】
本発明のハニカム構造体において、金属体を配設する部位いずれでもかまわないが、ハニカム構造体の外部およびハニカム構造体の内部を例示することができる。ハニカム構造体の外部に金属体を配設する場合には、容易に配設することができるという利点を有し、ハニカム構造体の内部に金属体を配設する場合には、温度、微粒子量等をより高精度に測定することができるという利点を有する。
【0031】
金属体をハニカム構造体の内部に配設するには、ハニカム構造体に金属体を配設するための溝を設けておき、金属体を挿入する方法や、ハニカム構造体が複数のハニカムセグメントで構成されている場合には、ハニカムセグメントを接合する際にハニカムセグメント間に金属体を挟み込む方法を採用することができる。
【0032】
なお、ハニカム構造体と金属体とは、両者の熱膨張係数の差が20×10−6/℃以下となるように各々の材質を選択することが好ましい。例えば、本発明のハニカム構造体をDPFに使用するような場合には、使用時に高温環境下に晒されるため、ハニカム構造体と金属体との熱膨張係数の差が大きすぎると、両者の熱膨張差によりハニカム構造体が破損したり金属体が剥離したりする恐れがあるが、両者の熱膨張係数の差が20×10−6/℃以下であれば、そのような不具合が生じる可能性が低くなる。
【0033】
また、本発明においては、少なくとも一つの金属体をセラミック体の内部に埋入して構成してもよい。このように、金属体をセラミック体で覆うように構成することによって、金属体が直接排気ガスと接触することがなく、金属体の腐食や劣化を有効に防止することが可能となる。また、本発明においては、全ての金属体を、セラミック体の内部に埋入させてもよい。
【0034】
この際のセラミック体の主成分としては、例えば、窒化珪素や窒化アルミニウム、緻密質コージェライト等、酸化物、窒化物、炭化物、硼化物等の複合(コンポジット)材料が挙げられる。具体的には、セラミック体の主成分が、窒化珪素、窒化アルミニウム、緻密質コージェライト、酸化アルミニウム基複合材料、炭化珪素基複合材料、及びムライト基複合材料からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物であることが好ましい。特に、熱伝導率が高い炭化珪素の電気抵抗を上げることができるBN(窒化硼素)粒子を添加した炭化珪素基複合材料は、誘電体として機能する電極材料に適している。また、熱膨張が小さいが熱伝導が低いムライトに熱伝導を高くする目的で、炭化珪素粒子を分散させたムライト基複合材料も主成分に適している。両材料の熱膨張差は小さいので、内部に発生する残留応力は小さい。両材料は焼結が困難であるが、金属体形状は単純平板であるため、加圧焼成が容易に適用できる。なお、本実施形態において、主成分とは、成分の60質量%以上を占めるものをいう。
【0035】
セラミック体の内部に金属体が埋入されている本発明の実施形態においては、セラミック体としてテープ状のセラミック成形体(グリーンテープ)を用い、上述した金属体は、テープ状のセラミック成形体に塗工して配設しても良い。具体的な塗工の方法としては、例えば、スクリーン印刷、カレンダーロール、スプレー、静電塗装、ディップ、ナイフコータ、化学蒸着、物理蒸着等を好適例として挙げることができる。このような方法によれば、塗工後の表面の平滑性に優れ、かつ厚さの薄い金属体埋入セラミック体を容易に形成することができる。
【0036】
金属体をテープ状のセラミック成形体に塗工する際には、金属体の主成分として挙げた金属の粉末と、有機バインダーと、テルピネオール等の溶剤とを混合して導体ペーストを調製し、上述した方法でテープ状のセラミック成形体に塗工することができる。また、テープ状のセラミック成形体との密着性及び焼結性を向上させるべく、必要に応じて上述した導体ペーストに添加剤を加えてもよい。
【0037】
また、セラミック体をテープ状のセラミック成形体で形成するときのテープ状のセラミック成形体の厚さについては、特に限定されることはないが、0.1〜3mmとすることができる。テープ状のセラミック成形体の厚さが0.1mm未満であると、金属体相互間の電気絶縁性を確保することができないことがある。また、テープ状のセラミック成形体の厚さが3mmを超えると、省スペース化の妨げになることがある。
【0038】
その後、金属体を塗工した未焼成セラミック体と、他の未焼成セラミック体とを、金属体を覆うようにして積層する。最後に、金属体を挟持した状態で積層した未焼成セラミック体を焼成して、セラミック体の内部に埋入された金属体を形成する。
【0039】
ハニカム構造体とセラミック体とを同じ主成分で形成すると好ましい。この場合、金属体埋入セラミック体とハニカム構造体との接着性が良好となる。また、本発明のハニカム構造体は使用時に高温下に晒されるが、両者の熱膨張差は理論上無いので、熱による破損、電極の剥離等を軽減できる。
【0040】
ハニカム構造体とセラミック体とを、共にコージェライトを主成分として構成することができる。
【0041】
[抵抗測定手段]
抵抗測定手段は、金属体の両端に直流電流を流し、金属体の抵抗値を測定する手段である。図3および図4は、本発明の一実施形態に係るハニカム構造体に配接される金属体の平面図である。抵抗の測定方法はいずれでもよいが、図3に示すように金属体2の両端に端子を接続し、ある一定の低電流を流してそのときに端子間に発生する電圧を測定し、電圧値を電流値で割ることで抵抗を測定する方法を例示することができる。さらに、図4に示すように金属体2の両端に端子を2個ずつ接続してI(+)−I(−)間に電流を流し、V(+)−V(−)間に発生する電圧を測定して、電圧値を電流値で割ることで抵抗を測定すると、配線の抵抗分や端子の接触抵抗分の盈虚をなくすことができるため、抵抗測定の精度が上がる。なお、ハニカム構造体が、微粒子捕集フィルタ(DPF)等として自動車の排ガス流路に配設されている場合には、高温、高圧および振動に晒されることになる。このような環境下、ハニカム構造体およびハニカム構造体に配設された金属体は壊れる可能性を常にもっている。抵抗測定手段が無限大の抵抗値を観測した場合には、金属体が破損した可能性がある。さらに、金属体が破損した場合には、ハニカム構造体が破損した可能性がある。したがって、抵抗測定手段は、金属体およびハニカム構造体の破損検知手段としても使用することができる。
【0042】
[電気特性測定手段]
電気特性測定手段は、1対の金属体間の交流インピーダンス、直流抵抗、リアクタンス、キャパシタンス等の電気的特性を計測する手段である。具体的には、1kHz〜10MHzの間のある周波数の交流電圧を一対の電極間に印加し、そのときに流れる電流を測定して、電圧値を電流値で割ることで交流インピーダンスを測定する。さらに印加する交流電圧と流れる交流電流間の位相差を測定することで、直流抵抗、インダクタンス、キャパシタンスも測定することが可能である。
【0043】
[温度算出手段]
温度算出手段は、入力された抵抗値から温度を算出する手段である。金属の抵抗値は一般に温度に依存して変化する。そこで、温度と抵抗値との関係を実験等によりあらかじめ取得しておけば、抵抗値から温度を得ることができる。温度算出手段には、対象となる金属体のあらかじめ取得されている温度と抵抗値との関係が定数、関係式、テーブル等の形式で格納されており、温度算出手段は、当該定数、関係式、テーブル等を使用して、入力された抵抗値から温度を算出する。温度算出手段としては、具体的には、マイクロコンピュータを使用することができる。
【0044】
[微粒子量算出手段]
微粒子量算出手段は、入力された交流インピーダンス、直流抵抗、リアクタンス、キャパシタンス等の電気的特性から微粒子量を算出する手段である。ハニカム構造体の交流インピーダンス、直流抵抗、リアクタンス、キャパシタンス等の電気的特性は、ハニカム構造体に堆積した微粒子量に依存して変化する。そこで、微粒子堆積量と電気的特性との関係を実験等によりあらかじめ取得しておけば、電気的特性から微粒子堆積量を得ることができる。微粒子量算出手段には、対象となるハニカム構造体のあらかじめ取得されている微粒子堆積量と電気的特性との関係が定数、関係式、テーブル等の形式で格納されており、微粒子量算出手段は、当該定数、関係式、テーブル等を使用して、入力された電気的特性から微粒子量を算出する。微粒子量算出手段としては、具体的には、マイクロコンピュータを使用することができる。
【0045】
また、ハニカム構造体の電気的特性は、ハニカム構造体の温度によっても影響を受ける。したがって、ハニカム構造体の電気的特性からハニカム構造体に堆積した微粒子量を算出する際には、温度による補正を行えば、より正確に微粒子量を算出することができる。そこで、微粒子量算出手段は、あらかじめ実験等により取得された、ハニカム構造体の電気的特性と温度との関係を定数、関係式、テーブル等の形で格納しておくのが好ましい。そして、微粒子量算出手段は、格納されている当該定数、関係式、テーブル等を使用して、入力された電気的特性および温度から微粒子量を算出するのが好ましい。
【0046】
温度算出手段と微粒子量算出手段とは、いずれもマイクロコンピュータで構成することができるが、これらの2つの手段を1つのマイクロコンピュータで構成しても良い。この場合には、当該マイクロコンピュータは、抵抗測定手段からの抵抗値測定データと電気特性測定手段からの電気特性測定データとを択一的に受け付けるように構成することができる。このように構成すれば、マイクロコンピュータ資源を有効に活用することができる。
【0047】
参考例:
タルク、カオリン、仮焼カオリン、アルミナ、水酸化アルミニウム、シリカの各粉末を、SiOが42〜56質量%、Alが0〜45質量%、MgOが12〜16質量%という化学組成の範囲に入るように所定の割合で調合したコージェライト化原料に、造孔剤としてグラファイトを15〜25質量%、PET、PMA、フェノール樹脂等の合成樹脂を合計5〜15質量%添加し、更にメチルセルロース類と界面活性剤とを所定量添加し、これに水を加えて混練し坏土とした。次いで、この坏土を真空脱気後、ハニカム構造に押し出し成形し、マイクロ波乾燥および熱風乾燥法により乾燥した後、最高温度を1400〜1435℃として焼成することにより、多孔質のセラミックス(コージェライト)からなるハニカム構造体を製造した。
【0048】
このハニカム構造体の外周面の2カ所に白金ペーストを図2に示すパターンで塗布して焼成して、お互いに抵抗値の異なる2つの金属体を形成した。このハニカム構造体を電気炉で加熱しながら、各金属体に50mAの直流電流を流して得られる電圧の差分を増幅器にて200倍した。結果を図5に示す。図5から2つの金属体の電圧の差分と温度との間には一定の関係があることが分かる。電流が一定の場合、電圧は抵抗に比例するから、2つの金属体の抵抗値の差分と温度との間にも一定の関係があることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、DPF等の微粒子捕集フィルタおよび微粒子の車上診断センサに使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の一実施形態に係る円筒形のハニカム構造体を示す模式図である。
【図2】図1の円筒形のハニカム構造体の胴部の表面の展開模式図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るハニカム構造体に配設される金属体の平面図である。
【図4】本発明の他の実施形態に係るハニカム構造体に配設される金属体の平面図である。
【図5】抵抗の異なる二つの金属体に一定電流を流した際の電圧の差分(増幅器出力)と温度との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0051】
1:ハニカム構造体、2:金属体、100:抵抗測定手段、200:温度算出手段、300:電気特性測定手段、400:微粒子量算出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質の隔壁によって気体の流路となる複数のセルが区画形成されたハニカム構造体、
前記ハニカム構造体に配設された金属体、
前記金属体の抵抗を測定する抵抗測定手段、および、
前記抵抗測定手段により測定された抵抗値から温度を算出する温度算出手段を備えた温度測定ハニカム構造体。
【請求項2】
前記金属体を少なくとも2つ備え、それらの前記金属体の形状または材質が互いに異なっており、
前記温度算出手段がそれぞれの金属体の抵抗値を比較して温度を算出する請求項1に記載のハニカム構造体。
【請求項3】
前記金属体を少なくとも2つ備え、
前記金属体間の交流インピーダンス、直流抵抗、リアクタンス又はキャパシタンスとしての前記ハニカム構造体の電気特性を測定する電気特性測定手段、および、
前記電気特性測定手段により測定されたハニカム構造体の電気特性から前記ハニカム構造体に付着した微粒子の量を算出する微粒子量算出手段をさらに備えた請求項1または2に記載のハニカム構造体。
【請求項4】
前記微粒子量算出手段が、前記温度算出手段により算出されたハニカム構造体の温度と前記電気特性測定手段により測定されたハニカム構造体の電気特性とから前記ハニカム構造体に付着した微粒子の量を算出する請求項3に記載のハニカム構造体。
【請求項5】
前記金属体のうち少なくとも一つがセラミック体の内部に埋入されている請求項1〜4のいずれか一項に記載のハニカム構造体。
【請求項6】
前記各セルの一方の端部が目封止されている請求項1〜5のいずれか一項に記載のハニカム構造体。
【請求項7】
前記各セルの一方の端部が、前記ハニカム構造体の端面において千鳥状になるように、互い違いに目封止されている請求項1〜6のいずれか一項に記載のハニカム構造体。
【請求項8】
多孔質の隔壁によって気体の流路となる複数のセルが区画形成されたハニカム構造体に金属体を配設し、
前記金属体の抵抗を測定して、
測定された抵抗値から温度を算出するハニカム構造体の温度測定方法。
【請求項9】
前記ハニカム構造体に、形状または材質が互いに異なる2つ以上の金属体を配設し、それぞれの金属体の抵抗を測定し、それぞれの金属体の抵抗値を比較して温度を算出する請求項8に記載のハニカム構造体の温度測定方法。
【請求項10】
多孔質の隔壁によって気体の流路となる複数のセルが区画形成されたハニカム構造体に、2つ以上の金属体を配設し、
前記金属体の抵抗を測定して、
測定された抵抗値から前記ハニカム構造体の温度を算出し、
前記金属体間の交流インピーダンス、直流抵抗、リアクタンス又はキャパシタンスとしての前記ハニカム構造体の電気特性を測定し、
算出されたハニカム構造体の温度と、測定されたハニカム構造体の電気特性とから前記ハニカム構造体に付着した微粒子の量を算出する前記ハニカム構造体に付着した微粒子量算出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−223495(P2008−223495A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−58858(P2007−58858)
【出願日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】