説明

測位装置、測位方法、及び、プログラム

【課題】 車両移動を含む移動経路の軌跡の取得精度を向上させることができて、且つ、消費電力量を抑えることのできる測位装置、測位方法、および、プログラムを提供する。
【解決手段】 現在位置を測定する絶対位置測定手段(15)と、方位及びユーザの動きを計測する計測手段(16、17)と、計測手段の計測結果に基づき、ユーザの移動種別又は停止の判定を行う判定手段(21)、及び、ユーザの移動方向を特定する特定手段(22)と、車両による平均移動速度を算出する移動速度算出手段(10)と、車両による移動中に、特定手段で特定された移動方向へのこの平均移動速度での移動距離を、絶対位置測定手段により求められた基準位置情報に積算することにより移動位置を求める位置算出手段(10)と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、衛星測位システムを利用した測位装置、測位方法、および、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、GPS(Global Positioning System)などの衛星測位システムを利用した衛星測位機能と、モーションセンサを利用して移動量や移動方向を計測する自律航法機能とを備えた測位装置がある。これらの機能を併用することにより、測位衛星から電波を受信する頻度を低減させて、消費電力を削減させることができる。
【0003】
自律航法機能用のモーションセンサとしては、例えば、加速度センサ、角速度センサ、大気圧センサ、および、磁気センサが用いられる。これらのセンサの出力波形から特徴を抽出することにより、測位装置を装着したユーザの移動状態を分類することができる。例えば、特許文献1には、加速度センサの波形の違いや大気圧センサによる上下方向速度の有無を用いて移動体の移動手段を判別する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−48589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、自律航法機能を用いた移動距離の算出では、車を利用して移動する場合には、加速度を積分して算出した速度の精度が低く、従って、求められた移動距離にすぐに大きな誤差が蓄積されてしまうという課題がある。また、車の車速パルスやジャイロセンサを用いた移動距離の測定は、機器の設置が簡便ではなく、また、電力消費量を低く抑えられないという課題がある。
【0006】
この発明の目的は、車による移動を含む移動経路の軌跡の取得精度を向上させることができて、且つ、消費電力量を抑えることのできる測位装置、測位方法、および、プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、
現在位置を測定する絶対位置測定手段と、
方位及びユーザの動きを計測する計測手段と、
前記計測手段の計測結果に基づいて、ユーザの移動種別又は停止の判定を行う判定手段と、
前記計測手段の計測結果に基づいて、ユーザの移動方向を特定する特定手段と、
前記判定手段において車両による移動状態であると判定された期間に、平均移動速度を算出する移動速度算出手段と、
前記判定手段において車両による移動状態であると判定された場合には、前記特定手段で特定された移動方向への前記平均移動速度での移動距離を、前記絶対位置測定手段により求められた基準位置情報に積算することにより移動位置を求める位置算出手段と、
を備えることを特徴とする測位装置である。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の測位装置において、
移動方向と当該移動方向への移動時間を示す時間とを順次記憶する移動方向記憶手段と、
移動方向の変化が前記特定手段により検知されると、当該変化前の移動方向への移動時間と、変化後の移動方向とを前記移動方向記憶手段に順次記憶させる移動データ記憶制御手段と、
を備え、
前記移動速度算出手段は、
前記絶対位置測定手段による第1地点の位置の測定時から前記絶対位置測定手段による第2地点の位置の測定時までに前記移動方向記憶手段に記憶された前記移動方向と、当該移動方向への前記移動時間に対応する長さとを有する各移動ベクトルの和を、前記第1地点から前記第2地点への方向及び距離を有するベクトルと一致させる回転伸縮操作を行う変換行列を求め、当該変換行列に基づいて平均移動速度と角度誤差とを算出し、
前記位置算出手段は、
前記特定手段で特定された移動方向と、当該移動方向への移動時間と、前記変換行列とに基づいて求められた移動方向及び移動距離を、前記絶対位置測定手段により求められた基準位置情報に積算することにより移動位置を求める
ことを特徴としている。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の測位装置において、
前記移動ベクトルの長さは、前記移動時間に比例する
ことを特徴としている。
【0010】
請求項4記載の発明は、請求項2又は3記載の測位装置において、
前記判定手段において車両による移動が開始されたと判定されると、前記絶対位置測定手段を動作させて当該移動が開始された第1地点の位置情報を取得し、前記第1地点の位置情報が取得されてから所定の期間の後に、前記絶対位置測定手段を動作させて前記第2地点の位置情報を取得する測位制御手段を備える
ことを特徴としている。
【0011】
請求項5記載の発明は、請求項2〜4の何れか一項に記載の測位装置において、
前記変換行列によって前記各移動ベクトルの回転伸縮操作を行い、当該操作された各移動ベクトルを前記第1地点の位置情報に順番に加算していくことにより前記第1地点から前記第2地点までの移動経路を決定する移動経路決定手段を備える
ことを特徴としている。
【0012】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の測位装置において、
前記位置算出手段は、
前記第2地点を新たな第1地点として設定し、
その後、新たな第2地点の位置情報が取得されるまでは、前記新たな第1地点を前記基準となる位置として前記移動位置を求め、
新たな第2地点の位置情報が取得されると、
前記移動速度算出手段により新たな変換行列が求められるとともに、前記移動経路決定手段により当該新たな変換行列を用いて前記新たな第1地点から前記新たな第2地点までの移動経路が決定される
ことを特徴としている。
【0013】
請求項7記載の発明は、請求項5又は6記載の測位装置において、
前記測位制御手段は、
前記判定手段において車両による移動が停止したと判定されると、当該移動が停止した位置を前記第2地点として設定して、前記絶対位置測定手段を動作させて位置情報を取得する
ことを特徴としている。
【0014】
請求項8記載の発明は、請求項1〜7の何れか一項に記載の測位装置において、
移動経路及び移動位置を表示する表示手段と、
前記表示手段への表示内容及び表示タイミングを制御する表示制御手段とを備え、
当該表示制御手段は、
前記第2地点の位置情報が一度取得された後には、算出された前記移動経路及び前記移動位置を随時前記表示手段に表示させる
ことを特徴としている。
【0015】
請求項9記載の発明は、
現在位置を測定する絶対位置測定手段と、方位及びユーザの動きを計測する計測手段とを備え、移動経路を求める測位方法において、
前記計測手段の計測結果に基づいて、ユーザの移動種別又は停止の判定を行う判定ステップと、
前記計測手段の計測結果に基づいて、ユーザの移動方向を特定する特定ステップと、
前記判定ステップにおいて車両による移動状態であると判定された期間に、平均移動速度を算出する移動速度算出ステップと、
前記判定ステップにおいて車両による移動状態であると判定された場合には、前記特定ステップで特定された移動方向への前記平均移動速度での移動距離を、前記絶対位置測定手段により求められた基準位置情報に積算することにより移動位置を求める位置算出ステップと、
を含むことを特徴とする測位方法である。
【0016】
請求項10記載の発明は、
現在位置を測定する絶対位置測定手段と、方位及びユーザの動きを計測する計測手段とを備えた測位装置に用いられるコンピュータを、
前記計測手段の計測結果に基づいて、ユーザの移動種別又は停止の判定を行う判定手段と、
前記計測手段の計測結果に基づいて、ユーザの移動方向を特定する特定手段と、
前記判定手段において車両による移動状態であると判定された期間に、平均移動速度を算出する移動速度算出手段と、
前記判定手段において車両による移動状態であると判定された場合には、前記特定手段で特定された移動方向への前記平均移動速度での移動距離を、前記絶対位置測定手段により求められた基準位置情報に積算することにより移動位置を求める位置算出手段と、
として機能させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0017】
本発明に従うと、絶対位置測定手段により位置情報が取得された2地点間での平均移動速度が取得される。そして、特定手段により取得される移動方向と、この移動方向への移動時間とに基づいて平均移動速度による移動距離を算出し、積算することにより、絶対位置の測定頻度を増やすことなく電力の消費量を低く抑えたまま、精度の良い経路データを取得することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態の測位装置を示すブロック図である。
【図2】測位処理のフローチャートその1である。
【図3】測位処理のフローチャートその2である。
【図4】測位処理のフローチャートその3である。
【図5】測位処理のフローチャートその4である。
【図6】車による移動経路の測定の具体例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
図1は、測位装置の内部構成を示すブロック図である。
【0021】
測位装置1は、ユーザが装着して利用する携帯型の測位装置である。この測位装置1は、装置全体の統括制御および演算処理を行うCPU10(移動速度算出手段、位置算出手段、移動データ記憶制御手段、測位制御手段、移動経路決定手段、表示制御手段)と、CPUに作業用メモリ空間を提供するRAM(Random Access Memory)11と、CPU10が実行するプログラムや初期データを格納するROM(Read Only Memory)12と、不揮発性メモリ13と、GPS衛星から送信される電波を受信するGPS受信アンテナ14と、受信電波を復調して解読処理を行う絶対位置測定手段としてのGPS受信処理部15と、3軸方向の地磁気を計測する3軸地磁気センサ16と、3軸方向の加速度を計測する3軸加速度センサ17と、CPU10からの出力制御信号に基づいて出力表示を行う表示部18(表示手段)と、CPU10および3軸加速度センサに電力を供給する電源19と、ユーザの入力操作を信号に変換してCPU10へ入力する操作キー20と、ユーザの状態を判定する判定手段としての状態判別処理部21と、ユーザの移動方向を特定する進行方向確定処理部22(特定手段)と、ユーザの移動量を算出する自律測位制御処理部23などを備えている。
【0022】
RAM11には、位置方向時間情報記憶部11a(移動方向記憶手段)が備えられている。この位置方向時間情報記憶部11aは、GPSにより測定された位置(GPS測位位置)と時刻情報、および、車による移動中に測定された車の進行方向とその進行方向へ進み始めた時刻の情報を一時的に記憶する。
【0023】
ROM12には、CPU10が読み出して実行するプログラム12aが含まれている。このプログラム12aは、例えば、測位装置1の制御プログラムや測位処理プログラムである。このプログラム12aは、不揮発性メモリ13に記憶させることも可能である。或いは、CDROMやフラッシュメモリといった可搬型記録媒体に実行プログラム12aを記録し、読み取り装置を介してCPU10が実行可能としても良い。また、プログラム12aは、キャリアウェーブ(搬送波)を媒体として、通信回線を介して測位装置1にダウンロードされる形態を適用することもできる。
【0024】
不揮発性メモリ13は、例えば、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)である。この不揮発性メモリ13には、算出された経路データを記憶させることができる。また、この不揮発性メモリ13に地図データを記憶させて、表示部18への表示に利用される。
【0025】
GPS受信処理部15は、GPS受信アンテナ14を介して受信した複数のGPS衛星からの電波を復調する。そして、このGPS受信処理部15では、復調された複数のGPS衛星からの信号に基づいて現在位置を求め、所定のフォーマットに従って結果をCPU10へと出力する。このGPS受信処理部15は、CPU10からの指令に基づき間欠的に動作する。
【0026】
3軸地磁気センサ16は、例えば、磁気抵抗素子を用いて3軸方向の磁界を計測することが可能なセンサである。近傍に他の磁界の発生源がない場合には、この3軸地磁気センサにより地磁気が測定されてCPU10へ出力される。3軸加速度センサ17は、3軸方向の加速度が計測可能なセンサである。ユーザが静止した状態のときには、この3軸加速度センサ17は、地球の重力加速度を計測してCPU10へ計測データを出力する。これらの3軸地磁気センサ16および3軸加速度センサ17により計測手段が構成される。なお、この他に、例えば、大気圧センサを構成に加えることによって、高度変化を検出可能とすることもできる。
【0027】
表示部18は、例えば、LCD(液晶ディスプレイ)である。或いは、有機ELD(Electro-Luminescent Display)などの他の表示方式を用いることとしてもよい。この表示部18は、CPU10からの信号に基づいて、例えば、測位位置や移動経路の情報を不揮発性メモリ13から読み出す地図データと重ねて表示させることが可能である。
【0028】
状態判別処理部21では、3軸地磁気センサ16、および、3軸加速度センサ17による計測データがCPU10を介して取得され、これらの計測データを用いた演算結果に基づいて、測位装置1のユーザの動作状態に基づいて移動種別を判定する。この実施形態の状態判別処理部21により判定が可能な種別には、ユーザの静止状態、歩行状態、および、自動車を利用しての移動状態が含まれる。更に、自転車などによる移動状態や、エスカレータ、歩く歩道などによる移動状態の判定を可能としても良いし、或いは、歩行状態と走行状態とを判定可能としても良い。
【0029】
歩行状態と車による移動状態との判定は、3軸地磁気センサ16および3軸加速度センサ17によるユーザ動作の計測に基づいて、以下のように行うことができる。まず、歩行状態の場合には、両センサの入力、すなわち、一定の重力加速度、および、地磁気の向きから鉛直方向と移動方向とを定めることができる。測位装置1を装着したユーザの歩行中には、ステップごとにユーザの重心が鉛直方向に移動したり、この重心移動の2倍の周期で横方向に振動したりすることで鉛直方向加速度、および、移動方向に垂直な方向の加速度の周期的な変化が計測される。
【0030】
車による移動の際には、先ず、3軸加速度センサ17の出力は、移動開始の際の加速度により進行方向に増加を示す。また、自動車による移動の場合には、水平面内で進行方向に垂直な方向(横方向)に1−3Hzの特徴的な振動が観測される。従って、3軸加速度センサ17の出力から横方向の成分を取り出してフーリエ変換を行い、この周波数帯の振幅強度を求め、所定の閾値と比較することにより、車による移動であることが同定される。
【0031】
進行方向確定処理部22には、測位装置1のユーザが車により移動している場合に、3軸地磁気センサ16および3軸加速度センサ17の計測データがCPU10を介して入力されて、車の進行方向を検出する。
【0032】
自律測位制御処理部23は、測位装置1のユーザが車以外の方法で移動している場合に、3軸地磁気センサ16および3軸加速度センサ17の計測データがCPU10を介して入力されて、このユーザの移動方向と移動距離とを算出する。そして、この移動期間の始点や終点などの基準位置データを保持している場合には、この基準位置データに移動方向および移動距離のデータを加減算させることによって移動経路の位置(自律測位位置)を求める。
【0033】
次に、本発明の測位処理の動作手順について、フローチャートを用いて説明する。
【0034】
図2は、CPU10が実行する測位処理の制御手順を示したフローチャートである。また、図3〜図5は、図2のフローチャート内でそれぞれ呼び出される停止後処理、歩行後処理、および、車移動後処理の制御手順を示したフローチャートである。
【0035】
この測位処理の制御処理は、操作キー20からの入力信号に基づいて開始される。制御処理が開始されると、図2に示すように、先ず、CPU10は、初期設定を行う(ステップS11)。具体的には、GPS受信処理部15を動作させて、現在位置のデータを取得する。また、CPU10は、状態判別処理部21からユーザの移動種別の判定結果を取得する。停止状態であると判別された場合には、CPU10は、停止フラグを“ON”に設定する。歩行状態であると判別された場合には、CPU10は、歩行フラグを“ON”に設定する。また、車移動状態であると判別された場合には、CPU10は、車フラグを“ON”に設定する。
【0036】
次に、CPU10は、3軸加速度センサ17から入力する計測データのうち、所定の期間の加速度データを状態判別処理部21へ送る(ステップS12)。また、CPU10は、3軸地磁気センサ16から入力する計測データのうち、所定の期間の地磁気データを状態判別処理部21へ送る(ステップS13)。
【0037】
CPU10は、前回(初回は、初期設定(ステップS11)の際に)状態判別処理部21から取得したユーザの停止状態または移動の種別(以下、移動種別と記す)による判別処理を行う(ステップS14)。CPU10は、停止フラグ、歩行フラグ、或いは、車フラグの何れが“ON”であるかを確認することによりこの判別処理を行う。前回の移動種別が停止状態であったと判別された場合には、CPU10の処理は、ステップS101へ移行する。前回の移動種別が歩行状態であったと判別された場合には、CPU10の処理は、ステップS201へ移行する。また、前回の移動種別が車移動状態であったと判別された場合には、CPU10の処理は、ステップS301へ移行する。
【0038】
ステップS101へ移行すると、図3に示すように、CPU10は、状態判別処理部21へ信号を送り、ステップS11、S12の処理で状態判別処理部21へ送られた加速度データ、および、地磁気データで示されるユーザの動作状態に基づいて現在の移動種別を判定させる。そして、CPU10は、状態判別処理部21から移動種別の判定結果を取得して、この移動種別の判別処理を行う。
【0039】
ステップS101の判別処理において、現在の移動種別が前回から継続して停止状態であると判別された場合には、CPU10は、GPS受信処理部15がGPS衛星からの電波を受信処理中であるか否かを判別する(ステップS111)。GPS受信処理部15による受信処理の有無は、それぞれGPSフラグが“ON”であるか、又は、“OFF”であるかによって示される。GPS衛星からの電波の受信処理中であると判別された場合は、引き続きGPS受信処理部15にGPS受信処理を行わせ(ステップS112)、また、受信、復調したGPS衛星からの信号を利用して、位置演算処理を行わせる(ステップS113)。CPU10は、GPS受信処理部15から出力された位置演算結果を取得して、求められた位置、および、時刻を位置方向時間情報記憶部11aに記憶させる(ステップS114)。それから、CPU10の処理は、ステップS115へ移行する。
【0040】
一方、ステップS111の判別処理で、GPS衛星からの電波の受信処理中ではないと判別された場合には、“NO”へ分岐して、ステップS112〜S114の処理を省略してステップS115へ移行する。
【0041】
次に、CPU10は、GPS受信処理が終了しているか否かを判別する。GPS受信処理部15による受信処理が行われておらず、既にGPS受信処理が終了していると判別された場合には、CPU10は、GPSフラグを“OFF”に設定する(ステップS116)。それから、CPU10の処理は、ステップS117へ移行する。GPS受信処理が終了していないと判別された場合、例えば、必要な衛星電波数が受信できていない状況で繰り返し受信処理を実行する場合などは、GPSフラグが“ON”のまま、CPU10の処理は、ステップS117へ移行する。
【0042】
CPU10は、停止処理を実行する(ステップS117)。この停止処理では、CPU10は、進行方向確定処理部22、および、自律測位制御処理部23における処理を停止状態で維持させる。また、GPS受信終了時には、歩行処理(ステップS231)内で行われていた自律測位処理の測定位置の補正処理、或いは、車による移動状態の間に位置時刻記憶処理(ステップS334)および変化時間記憶処理(ステップS132、S232、S338)で位置方向時間情報記憶部11aに記憶されたデータに基づいて、車による移動経路の算出処理を行う。それから、CPU10の処理は、ステップS12へ戻る。
【0043】
ステップS101の判別処理において、現在の状態が歩行状態であると判別された場合には、CPU10は、先ず、歩行処理を実行する(ステップS121)。この歩行処理では、CPU10は、自律測位制御処理部23を動作させて、自律計測された現在位置データを取得する。そして、CPU10は、現在位置データを位置方向時間情報記憶部11aに記憶させるとともに、表示部18へ信号を送って表示画面上に現在位置を表示させる。
【0044】
それから、CPU10は、停止フラグを“OFF”に設定し(ステップS122)、また、歩行フラグを“ON”に設定する(ステップS123)。それから、CPU10は、GPS受信開始処理を行い(ステップS124)、また、GPSフラグを“ON”に設定する(ステップS125)。そして、CPU10の処理は、ステップS12へ戻る。
【0045】
ステップS101の判別処理において、現在の移動種別が車移動状態であると判別された場合には、CPU10は、先ず、車移動処理を実行する(ステップS131)。この車移動処理では、CPU10は、3軸地磁気センサ16および3軸加速度センサ17の計測結果が進行方向確定処理部22へ入力するように設定する。それから、CPU10は、車移動の開始時点からの経過時間のカウントを開始する。また、CPU10は、車移動の開始地点のデータが記憶されていない場合には、GPS受信開始処理を行うとともに、GPSフラグを“ON”に設定する。
【0046】
次に、CPU10は、測位装置1の進行方向が変化したか否かを判別する(ステップS132)。進行方向は、停止状態では存在せず、また、車で移動を開始すれば何れかの方向が特定されることで、通常は“YES”へ分岐する。CPU10は、位置方向時間情報記憶部11aにこの特定された進行方向と、車移動を開始したタイミングからの経過時間とを記憶させる(ステップS133)。そして、CPU10の処理は、ステップS134へ移行する。進行方向に変化がないと判別された場合には、“NO”へ分岐し、CPU10の処理は、そのままステップS134へ移行する。
【0047】
CPU10の処理がステップS134へ移行すると、CPU10は、停止フラグを“OFF”に設定し、また、自動車フラグを“ON”に設定する(ステップS135)。それから、CPU10の処理は、ステップS12へ戻る。
【0048】
ステップS14の判別処理で、前回の移動種別が歩行状態であったと判別された場合(即ち、歩行フラグが“ON”)には、CPU10の処理は、ステップS201へ移行する。図4に示すように、CPU10は、状態判別処理部21からユーザの現在の移動種別を取得する。そして、CPU10は、この移動種別の判別処理を行う。
【0049】
ステップS201の判別処理で、現在の移動種別が停止状態であると判別された場合には、CPU10は、CPU10は、停止処理を行い(ステップS211)、歩行状態の期間に実行させていた自律測位制御処理部23による処理を停止させる。そして、CPU10は、歩行フラグを“OFF”に設定する(ステップS212)とともに、停止フラグを“ON”に設定する(ステップS213)。それから、CPU10の処理は、ステップS12の処理へ戻る。
【0050】
ステップS201の判別処理で、現在の移動種別が継続して歩行状態であると判別された場合には、ステップS221へ移行する。そして、CPU10は、GPS受信処理部15がGPS衛星からの電波を受信処理中であるか否かを判別する。GPS衛星からの電波の受信処理中であると判別された場合には、CPU10は、引き続きGPS受信処理部15にGPS受信処理を行わせ(ステップS222)、また、受信、復調したGPS衛星からの信号を利用して、位置演算処理を行わせる(ステップS223)。CPU10は、GPS受信処理部15から出力された位置演算結果を取得して、この位置、および、時刻を位置方向時間情報記憶部11aに記憶させる(ステップS224)。それから、CPU10の処理は、ステップS225へ移行する。
【0051】
一方、ステップS221の判別処理で、GPS衛星からの電波の受信処理中ではないと判別された場合には、“NO”へ分岐して、CPU10の処理は、ステップS222〜S224を省略してステップS225へ移行する。
【0052】
次に、CPU10は、GPS受信処理が終了しているか否かを判別する(ステップS225)。GPS受信処理部15によるGPS受信処理が行われておらず、既に受信処理が終了していると判別された場合には、CPU10は、GPSフラグを“OFF”に設定する(ステップS226)。それから、CPU10は、歩行処理を実行する(ステップS227)。GPS受信処理が終了していないと判別された場合には、CPU10は、ステップS226の処理を省略して、GPSフラグが“ON”のまま歩行処理を実行する(ステップS227)。
【0053】
このステップS227の歩行処理では、CPU10は、引き続き自律測位制御処理部23に自律測位を行わせるとともに、所定の時間間隔でGPS受信処理部15を動作させて自律測位の基準となる位置データを取得、更新する。また、CPU10は、求められた位置、および、移動経路のデータを表示部18へ表示させる。それから、CPU10の処理は、ステップS12へ戻る。
【0054】
ステップS201の判別処理において、現在の状態が車による移動状態であると判別された場合には、CPU10は、先ず、車移動処理を実行する(ステップS231)。この車移動処理では、CPU10は、自律測位制御処理部23へ出力されていた3軸地磁気センサ16および3軸加速度センサ17の計測結果が進行方向確定処理部22へ出力するように設定する。それから、CPU10は、車移動の開始地点からの経過時間のカウントを開始する。また、CPU10は、車移動の開始地点のGPS測位データが記憶されていない場合には、GPS受信開始処理を行い、また、GPSフラグを“ON”に設定する。
【0055】
次に、CPU10は、測位装置1の進行方向が変化したか否かを判別する(ステップS232)。進行方向は、歩いて車に乗り込む方向と、車で移動を開始する方向とで通常は変化し、“YES”へ分岐する。そして、CPU10は、位置方向時間情報記憶部11aにこの特定された進行方向と、現在時刻とを記憶させ(ステップS233)、その後、ステップS234へ移行する。進行方向に変化がないと判別された場合には、“NO”へ分岐し、そのままステップS234へ移行する。
【0056】
CPU10の処理がステップS234へ移行すると、CPU10は、歩行フラグを“OFF”に設定し、次いで、自動車フラグを“ON”に設定する(ステップS235)。それから、CPU10の処理は、ステップS12へ戻る。
【0057】
ステップS14の判別処理で、前回の移動種別が車による移動状態であったと判別されたとき(即ち、自動車フラグが“ON”)には、CPU10の処理は、ステップS301へ移行する。そして、CPU10は、図5に示すように、状態判別処理部21へ信号を送り、状態判別処理部21からユーザの現在の移動種別を取得し、この移動種別の判別処理を行う。
【0058】
ステップS301の判別処理で、現在の移動種別が停止状態であると判別された場合には、CPU10は、GPS受信処理部15へ指令を送り、GPS衛星からの電波受信処理を開始させる(ステップS311)とともに、GPSフラグを“ON”に設定する(ステップS312)。また、CPU10は、自動車フラグを“OFF”に設定し(ステップS313)、停止フラグを“ON”に設定する(ステップS314)。
【0059】
それから、CPU10は、停止処理を行う(ステップS315)。この停止処理では、進行方向確定処理部22による処理を停止させるとともに、車による移動の開始時点からの経過時間のカウントを停止する。そして、CPU10の処理は、ステップS12へ戻る。
【0060】
ステップS301の判別処理で、現在の移動種別が歩行状態であると判別された場合には、CPU10は、先ず、歩行処理を行う(ステップS321)。この歩行処理では、CPU10は、3軸地磁気センサ16および3軸加速度センサ17の計測データの出力先を進行方向確定処理部22から自律測位制御処理部23へ変更し、進行方向確定処理部22の処理を停止するとともに自律測位制御処理部23の処理を開始させる。
【0061】
次に、CPU10は、GPS受信処理部15へ指令を送り、GPS衛星からの電波受信処理を開始させる(ステップS322)とともに、GPSフラグを“ON”に設定する(ステップS323)。また、CPU10は、自動車フラグを“OFF”に設定し(ステップS324)、歩行フラグを“ON”に設定する(ステップS325)。そして、CPU10の処理は、ステップS12へ戻る。
【0062】
ステップS301の判別処理で、現在の移動種別が継続して車による移動状態であると判別された場合には、ステップS331へ移行する。そして、CPU10は、GPS受信処理部15がGPS衛星からの電波を受信処理中であるか否かを判別する。GPS衛星からの電波の受信処理中であると判別された場合は、CPU10は、引き続きGPS受信処理部15にGPS受信処理を行わせ(ステップS332)、また、受信、復調したGPS衛星からの信号を利用して、位置演算処理を行わせる(ステップS333)。CPU10は、GPS受信処理部15から出力された位置演算結果を取得して、この位置、および、時刻を位置方向時間情報記憶部11aに記憶させる(ステップS334)。それから、CPU10の処理は、ステップS335へ移行する。
【0063】
一方、ステップS331の判別処理で、GPS衛星からの電波の受信処理中ではないと判別された場合には、“NO”へ分岐して、ステップS332〜S334の処理を省略してCPU10の処理は、ステップS335へ移行する。
【0064】
次に、CPU10は、GPS受信処理が終了しているか否かを判別する。GPS受信処理部15による受信処理が行われておらず、既に受信処理が終了していると判別された場合には、CPU10は、GPSフラグを“OFF”に設定する(ステップS336)。それから、CPU10の処理は、ステップS337へ移行する。GPS受信処理が終了していないと判別された場合には、CPU10の処理は、ステップS336を省略して、GPSフラグが“ON”のままステップS337へ移行する。
【0065】
次いで、CPU10は、車の進行方向が変化したか否かを判別する(ステップS337)。車の進行方向が変化したと判別された場合には、CPU10は、変化時間記憶処理を行う(ステップS338)。この変化時間記憶処理では、CPU10は、進行方向確定処理部22から車の新たな進行方向のデータを取得し、車の移動開始からの経過時間とともに位置方向時間情報記憶部11aに記憶させる。
【0066】
それから、CPU10は、車移動処理を実行する(ステップS339)。この車移動処理では、先ず、この車の平均速度が算出されているか否かを判別する。この平均速度が既に算出されている場合には、CPU10は、位置方向時間情報記憶部11aに記憶された移動開始位置から平均速度で移動したと仮定した場合の移動経路を算出して、表示部18に表示させる。一方、平均速度が求められていない場合には、CPU10は、次に、位置時間記憶処理(ステップS334)で車による移動の開始後2度目の位置データが取得されたか否かを判別する。そして、車による移動の開始後2度目の位置データが取得された場合には、CPU10は、1度目と2度目の位置データから平均速度を算出する。この平均速度には、これらの位置データ間の方位が進行方向確定処理部22による進行方向と一致しない場合には、進行方向の補正角度も含むこととすることができる。車による移動開始後2度目の位置データが取得されていない場合には、移動開始からの経過時間が予め設定された所定の時間以上となると、CPU10は、2度目の位置データの取得を開始する。即ち、CPU10は、GPS受信開始処理を行い、また、GPSフラグを“ON”に設定する。
【0067】
車移動処理(ステップS339)が終了すると、CPU10の処理は、ステップS12へ戻る。
【0068】
次に、車による移動の際に上記の測位制御処理が実行される場合の具体的な動作例について、フローチャートを参照しながら説明する。
【0069】
図6は、本実施形態における車による移動状態での測位処理の例を示す図である。
【0070】
先ず、ユーザが地点G1で車に乗り込もうとすると、この動作によって歩行状態となって歩行フラグが“ON”に設定される(ステップS11、S14)。このとき、GPS衛星を用いて求められたGPS測位位置が初期位置に設定され、また、自律航法により車までの移動経路が算出される。車に乗り込んだ後、車が動き出すまでは、停止状態であることが検出され(ステップS12、S13、S201)、停止処理(ステップS211)により、自律測位制御処理部23の処理が停止される。また、歩行フラグが“OFF”に設定され、停止フラグが“ON”に設定される。停止状態が継続して検出されると(ステップS12〜S14、S101)、停止処理が繰り返される(ステップS117)。
【0071】
次に、ユーザが車の運転を開始すると、車による移動状態であることが検出される(ステップS12〜S14、S101)。先ず、車移動処理が実行され(ステップS131)、進行方向確定処理部22の動作が開始される。車の移動によって進行方向が生じ、この進行方向が進行方向確定処理部22により検出されて、車の移動経過時間の初期値“0”とともに位置方向時間情報記憶部11aに記憶される(ステップS132、S133)。次いで、停止フラグが“OFF”に設定され(ステップS134)、また、自動車フラグが“ON”に設定される(ステップS135)。
【0072】
車による移動が継続され(ステップS12〜S14、S301)、地点G2で移動開始からの経過時間が所定の時間以上となると、車移動処理(ステップS339)により、2度目のGPS受信開始処理が行われ、また、GPSフラグが“ON”に設定される。そして、GPS受信処理、位置演算処理が行われ(ステップS331〜S333)、求められた現在位置と現在時刻とが移動開始からの経過時間とともに位置方向時間情報記憶部11aに記憶される(ステップS334)。
【0073】
GPS受信処理が終了すると、GPSフラグは“OFF”に設定される(ステップS335、S336)。また、2度目のGPS測位位置が位置方向時間情報記憶部11aに記憶されると、車移動処理(ステップS339)で初期位置と2度目の位置の間の平均速度が算出される。そして、初期位置、初期位置からの進行方向、初期位置からの経過時間、および、この平均速度に基づいて、暫定的な移動経路が算出されて、表示部18に表示される。
【0074】
その後、車による移動状態が更に継続されている途中に(ステップS12〜S14、S301)、例えば、交差点で、地点M1〜M3で車の進行方向が変化したことが検出されると(ステップS337で“YES”)、変化後の新たな進行方向が移動開始からの経過時間とともに位置方向時間情報記憶部11aに記憶される(ステップS338)。また、方向の変化した時点からの継続時間と、算出されている平均速度とに基づいて、新たな進行方向への移動距離が暫定的に算出されて表示部18に表示される(ステップS339)。
【0075】
車が、例えば、赤信号により、地点G3で停止すると、車による移動状態から停止状態に変化する(ステップS12〜S14、S301)。そして、GPS受信開始処理が行われ(ステップS311)、GPSフラグが“ON”に設定される(ステップS312)。また、自動車フラグが“OFF”に設定され(ステップS313)、停止フラグが“ON”に設定される(ステップS314)。
【0076】
停止状態が継続して検出されると(ステップS12〜S14、S101)、この間にGPS受信処理、および、位置演算処理が行われ(ステップS111〜S113)、求められた位置データが位置方向時間情報記憶部11aに記憶される(ステップS114)。そして、GPS受信処理を終了し、GPSフラグを“OFF”に設定する(ステップS116)。
【0077】
次いで、停止処理(ステップS117)が実行される。先ず、進行方向確定処理部22による処理が中止される。それから、地点G2の位置データに対し、暫定的に求められていた地点M4と正確に求められた地点G3とのずれの角度および距離比が求められて、続いて、地点M1〜M3の位置データに対しても同様に地点G2から同一の角度ずれおよび距離比のずれがあるとして、位置データの補正を行う。
【0078】
GPS受信処理が終了しないうちに車が再び走り出した場合には(ステップS12〜S14、S101)、進行方向確定処理部22による処理が再開され、停止フラグが“OFF”に設定され、自動車フラグが“ON”に設定される。また、車の走行が継続している間にGPS受信処理が行われ(ステップS331〜S336)、取得された位置データを用いて地点G3の位置が確定されるとともに、車移動処理(ステップS339)の中で地点M1〜M3の位置データの補正が行われる。
【0079】
バスなどの公共交通機関などを利用し、車に乗り込むと同時に発車する場合には、歩行状態から直接車による移動状態へ変化する(ステップS12〜S14、S201)。この場合でも、自律測位処理を中止する点を除き、停止状態から車による移動状態に移行した場合と同様に車移動処理が行われ(ステップS231)、車による移動状態が継続すると(ステップS12〜S14、S301)、以降は、同一の処理が行われることとなる。
【0080】
同様に、車の停止と同時に下車する場合は、車による移動状態から歩行状態へ直接変化する(ステップS12〜S14、S301)。この場合にも、先ず、歩行処理が行われて(ステップS321)、進行方向確定処理部22による処理から自律測位制御処理部23による処理に切り替える点を除き、車による移動状態から停止状態へ変化した場合と同様の処理が行われる(ステップS322〜S325)。そして、歩行状態が継続される間に(ステップS12〜S14、S201)、GPS受信処理および位置演算処理が行われ(ステップS221〜S223、S225、S226)、求められて位置方向時間情報記憶部11aに記憶された(ステップS224)地点G3の位置データに基づいて、歩行処理(ステップS227)の中で地点M1〜M3の位置データが補正される。
【0081】
以上のように、上記の実施形態の測位装置1によれば、3軸加速度センサ17の波形パターンから車による移動状態を判定することにより、車による移動状態のときには、自律航法処理を行わず、進行方向確定処理部22において進路方向のデータのみを取得する。また、車による移動が開始されてから所定の時間間隔を開けて2度のGPS受信処理部15を用いた位置の測定処理を行うことで、車の平均移動速度が算出される。そして、取得された進行方向への移動時間でのこの平均移動速度による移動距離を算出することにより、GPSを利用した測位の回数を増やさずに、車による移動時の位置データの取得精度を上げることができる。
【0082】
また、特に、車移動のように移動速度が大きく、自律測位による移動速度の算出精度が低い場合には、GPS測位により取得した移動速度を利用することで、効果的に精度を向上させることができる。
【0083】
また、移動途中で車の進行方向の転換があった場合でも、3軸方位センサで取得された精度の良い進行方向のデータと、各進行方向への移動継続時間のデータとを位置方向時間情報記憶部11aに記憶させることができるので、一定速度での移動であるとみなして移動の始点および終点における2度のGPSを利用した測位処理のみで途中の移動経路のデータを精度良く取得することができる。
【0084】
また、特に車による移動開始時に平均移動速度を取得することにより、その後、車による移動が継続する間は、頻度の高いGPS測位に頼らず、この平均移動速度を用いて現在位置と移動経路をリアルタイムで取得することができる。
【0085】
また、車による移動の停止後に改めてGPS衛星を利用した測位処理を行い、上述の位置データと移動経路とを補正して取得することができるので、リアルタイムで得られた移動経路より更に精度の良い軌跡データを取得することができる。
【0086】
また、必要に応じてGPS衛星を利用した測位処理を挟み、随時上述の移動位置の算出データを補正して改善するので、平均速度による移動量の計測と実際の移動量のずれが大きくなることによる精度の低下を防ぐことができる。
【0087】
また、特に、車による移動が交差点や赤信号などにより停止されるごとにこのような移動経路の算出を更新するので、各移動の始点、及び、終点のデータを精度良く求め、従って、移動途中のデータの精度も向上させることができる。
【0088】
更に、この測位装置1に表示部18を備え、移動経路を表示させることができるので、測位装置一台で手軽に精度の良い移動経路のデータをリアルタイムで認識することができる。
【0089】
なお、本発明は、上記実施の形態に限られるものではなく、様々な変更が可能である。例えば、上記説明では自動車の利用の際の経路決定に用いたが、自転車やバイク、路面電車といった他の移動手段でも用いることができる。
【0090】
また、上述の実施の形態ではGPS衛星を用いた位置の測定を行ったが、他の衛星測位システム、例えば、GLONASS(Global Navigation Satellite System)を用いることとしても良いし、携帯電話と携帯電話の基地局との通信を利用した位置測定を利用することも可能である。
【0091】
また、上述の実施の形態では、車移動が一定速度であるとして計算を行ったが、例えば、進行方向の変化の間隔が狭いときは速度を下げて計算を行うこともできる。また、不揮発性メモリ13に記憶させた地図データを参照し、高速道路の使用時は速度を変更させたりすることも可能である。また、不揮発性メモリ13に記憶させた地図データを参照し測位位置を限定することにより、移動経路のデータを精度良く取得することも可能である。
【0092】
また、上述の実施形態では、車による移動の停止の際にGPS衛星を利用した測位を行ったが、このタイミングに限られない。例えば、一定時間間隔で行わせることも可能である。或いは、自律航法により求められる移動速度を相対値として比較して、求められている相対速度と大きく異なったときにGPS衛星を利用した測位を行い、平均速度を計算しなおすようにしても良い。
【0093】
また、上述の実施の形態では、ROM12に格納されたプログラム12aに基づいて、CPU10がGPS受信処理部15、状態判別処理部21、進行方向確定処理部22に各処理を実行させる形態を示したが、これらの処理を全てCPU10の演算によるソフトウェア処理として行わせることとしても良い。その他、実施形態の説明で示した数値や構成などの細部は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0094】
1 測位装置
10 CPU
11 RAM
11a 位置方向時間情報記憶部
12 ROM
12a プログラム
13 不揮発性メモリ
14 受信アンテナ
15 GPS受信処理部
16 3軸地磁気センサ
17 3軸加速度センサ
18 表示部
19 電源
20 操作キー
21 状態判別処理部
22 進行方向確定処理部
23 自律測位制御処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現在位置を測定する絶対位置測定手段と、
方位及びユーザの動きを計測する計測手段と、
前記計測手段の計測結果に基づいて、ユーザの移動種別又は停止の判定を行う判定手段と、
前記計測手段の計測結果に基づいて、ユーザの移動方向を特定する特定手段と、
前記判定手段において車両による移動状態であると判定された期間に、平均移動速度を算出する移動速度算出手段と、
前記判定手段において車両による移動状態であると判定された場合には、前記特定手段で特定された移動方向への前記平均移動速度での移動距離を、前記絶対位置測定手段により求められた基準位置情報に積算することにより移動位置を求める位置算出手段と、
を備えることを特徴とする測位装置。
【請求項2】
移動方向と当該移動方向への移動時間を示す時間とを順次記憶する移動方向記憶手段と、
移動方向の変化が前記特定手段により検知されると、当該変化前の移動方向への移動時間と、変化後の移動方向とを前記移動方向記憶手段に順次記憶させる移動データ記憶制御手段と、
を備え、
前記移動速度算出手段は、
前記絶対位置測定手段による第1地点の位置の測定時から前記絶対位置測定手段による第2地点の位置の測定時までに前記移動方向記憶手段に記憶された前記移動方向と、当該移動方向への前記移動時間に対応する長さとを有する各移動ベクトルの和を、前記第1地点から前記第2地点への方向及び距離を有するベクトルと一致させる回転伸縮操作を行う変換行列を求め、当該変換行列に基づいて平均移動速度と角度誤差とを算出し、
前記位置算出手段は、
前記特定手段で特定された移動方向と、当該移動方向への移動時間と、前記変換行列とに基づいて求められた移動方向及び移動距離を、前記絶対位置測定手段により求められた基準位置情報に積算することにより移動位置を求める
ことを特徴とする請求項1記載の測位装置。
【請求項3】
前記移動ベクトルの長さは、前記移動時間に比例する
ことを特徴とする請求項2記載の測位装置。
【請求項4】
前記判定手段において車両による移動が開始されたと判定されると、前記絶対位置測定手段を動作させて当該移動が開始された第1地点の位置情報を取得し、前記第1地点の位置情報が取得されてから所定の期間の後に、前記絶対位置測定手段を動作させて前記第2地点の位置情報を取得する測位制御手段を備える
ことを特徴とする請求項2又は3記載の測位装置。
【請求項5】
前記変換行列によって前記各移動ベクトルの回転伸縮操作を行い、当該操作された各移動ベクトルを前記第1地点の位置情報に順番に加算していくことにより前記第1地点から前記第2地点までの移動経路を決定する移動経路決定手段を備える
ことを特徴とする請求項2〜4の何れか一項に記載の測位装置。
【請求項6】
前記位置算出手段は、
前記第2地点を新たな第1地点として設定し、
その後、新たな第2地点の位置情報が取得されるまでは、前記新たな第1地点を前記基準となる位置として前記移動位置を求め、
新たな第2地点の位置情報が取得されると、
前記移動速度算出手段により新たな変換行列が求められるとともに、前記移動経路決定手段により当該新たな変換行列を用いて前記新たな第1地点から前記新たな第2地点までの移動経路が決定される
ことを特徴とする請求項5記載の測位装置。
【請求項7】
前記測位制御手段は、
前記判定手段において車両による移動が停止したと判定されると、当該移動が停止した位置を前記第2地点として設定して、前記絶対位置測定手段を動作させて位置情報を取得する
ことを特徴とする請求項5又は6記載の測位装置。
【請求項8】
移動経路及び移動位置を表示する表示手段と、
前記表示手段への表示内容及び表示タイミングを制御する表示制御手段とを備え、
当該表示制御手段は、
前記第2地点の位置情報が一度取得された後には、算出された前記移動経路及び前記移動位置を随時前記表示手段に表示させる
ことを特徴とする請求項1〜7の何れか一項に記載の測位装置。
【請求項9】
現在位置を測定する絶対位置測定手段と、方位及びユーザの動きを計測する計測手段とを備え、移動経路を求める測位方法において、
前記計測手段の計測結果に基づいて、ユーザの移動種別又は停止の判定を行う判定ステップと、
前記計測手段の計測結果に基づいて、ユーザの移動方向を特定する特定ステップと、
前記判定ステップにおいて車両による移動状態であると判定された期間に、平均移動速度を算出する移動速度算出ステップと、
前記判定ステップにおいて車両による移動状態であると判定された場合には、前記特定ステップで特定された移動方向への前記平均移動速度での移動距離を、前記絶対位置測定手段により求められた基準位置情報に積算することにより移動位置を求める位置算出ステップと、
を含むことを特徴とする測位方法。
【請求項10】
現在位置を測定する絶対位置測定手段と、方位及びユーザの動きを計測する計測手段とを備えた測位装置に用いられるコンピュータを、
前記計測手段の計測結果に基づいて、ユーザの移動種別又は停止の判定を行う判定手段と、
前記計測手段の計測結果に基づいて、ユーザの移動方向を特定する特定手段と、
前記判定手段において車両による移動状態であると判定された期間に、平均移動速度を算出する移動速度算出手段と、
前記判定手段において車両による移動状態であると判定された場合には、前記特定手段で特定された移動方向への前記平均移動速度での移動距離を、前記絶対位置測定手段により求められた基準位置情報に積算することにより移動位置を求める位置算出手段と、
として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−52937(P2012−52937A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−196306(P2010−196306)
【出願日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】